説明

ハードコートフィルムおよびその製造方法

【課題】ハードコート層の密着性がよく、耐擦傷性および硬度に優れるとともに、防汚性が高く、かつ防汚性が持続するハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】トリアセチルセルロースフィルム12の一方の面にハードコート層14を備え、該ハードコート層14が最表面に位置するハードコートフィルム1であって、前記トリアセチルセルロースフィルム12と前記ハードコート層14との間にプライマー層13を備え、該ハードコート層14表面の鉛筆硬度が3H以上であり、且つ、該ハードコート層14表面の水の接触角が90°以上であり、且つ、該ハードコート層14表面のヘキサデカンの接触角が45°以上であり、且つ、該ハードコート層14形成面と反対側のトリアセチルセルロースフィルム12がケン化処理されていることを特徴とするハードコートフィルム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性ハードコート層が最表面に位置したハードコートフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、CRT、LCD、PDP表示装置等のディスプレイには、一般にその表面に耐引っ掻き性、耐擦り傷性を有する透明性プラスチックフィルムが貼着されている。しかしながらこのようなプラスチックフィルムの表面における硬度が不十分な場合には、前記表面にハードコート層が形成されている。
【0003】
液晶表示装置、CRT、LCD、PDP表示装置等のディスプレイが普及し、一般庶民に身近なものになってきている。これに伴い、搭載されたハードコートフィルムは、様々な環境下に晒される場面が増えてきている。例えば、直接指で触れられる機会、幼児にいたずらされる機会が増えてきている。このように人に直接触れられる機会が増えて来ることで、指紋、サインペン、化粧、汗などの汚れが付着する機会が急激に増えてきている。
【0004】
液晶表示装置、CRT、LCD、PDP表示装置等のディスプレイが普及し、より低価格で、高い物理強度を持ち、汚れが付着し難い(または除去し易い)液晶表示装置が市場で要求されてきている。従って、汚れが付着し難く、その汚れ付着防止性が持続し、耐擦傷性が強く低コストで作成できるハードコートフィルムの開発が望まれている。
【0005】
また、画像表示装置やタッチパネルの保護やガラス飛散防止のため設けたハードコート層は、人が使用するに際し、指紋、サインペン、化粧、汗などの汚れが付着しやすく、一度付着するとその汚れは除去しにいという問題を有していた。これに対して、特許文献1には多官能アクリレート100質量部に対して放射線硬化型シリコーン樹脂0.1〜100質量部を含む樹脂組成物からなるコート層を設け、ハードコート性能に加えて防汚性をもたせる技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、該文献に記載されたハードコートフィルムは、汚れの拭き取りを繰り返すと表面の防汚性組成物が脱落し防汚性が持続しなかったり、また表面組成が不均一なため表面に欠陥が生じたりする問題があることが分かった。
【0007】
ところで、トリアセチルセルロースフィルムをポリビニルアルコール等の偏光素子フィルムと貼合させて偏光板とするにあたって、偏光素子フィルムとの接着性を上げるため及び静電防止のためにケン化処理を行なっていた。前記のようにハードコート処理及びその他のコート処理(例えば、反射防止処理、帯電防止処理等)を施したトリアセチルセルロースフィルムのケン化処理をする場合には、これらのコート処理が施されたトリアセチルセルロースフィルムにアルカリによるケン化処理を行ない、その後、偏光素子フィルムと貼合させて偏光板を製造するか、又はトリアセチルセルロースフィルムに予めアルカリ処理行ない、その後、ハードコート層を形成することによって得られたフィルムを偏光素子フィルムに貼合させて偏光板を製造していた。
【0008】
上記のケン化処理をトリアセチルセルロースフィルムに施すことにより、トリアセチルセルロースフィルムの表面は官能基である酸素原子と結合したアセチル基が水酸基へ変換されることになり、偏光素子との密着性が向上し、且つ静電防止の効果を付与することができる。
【特許文献1】特開平11−29720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来のトリアセチルセルロースフィルムのアルカリによるケン化処理においては、ハードコート処理されたトリアセチルセルロースフィルムにケン化処理を行った場合、ハードコート層及がアルカリ溶液に浸食されその機能が充分に発揮されないという問題があった。
【0010】
特にハードコート層が最表面に位置し、防汚機能を備える防汚性ハードコートフィルムにあっては、防汚性ハードコート層を形成した後、ケン化処理をおこなった場合に、防汚性能が低下するという問題があった。
【0011】
また前記従来の予めケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層を形成するのに、ハードコート層が電離放射線硬化型樹脂により形成された場合、そのハードコート層がトリアセチルセルロースに対して密着性が悪いという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題を解決し、ハードコート層の密着性がよく、耐擦傷性および硬度に優れるとともに、防汚性が高く、かつ防汚性が持続するハードコートフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、トリアセチルセルロースフィルムの一方の面にハードコート層を備え、該ハードコート層が最表面に位置するハードコートフィルムであって、
前記トリアセチルセルロースフィルムと前記ハードコート層との間にプライマー層を備え、
該ハードコート層表面の鉛筆硬度が3H以上であり、且つ、
該ハードコート層表面の水の接触角が90°以上であり、且つ、
該ハードコート層表面のヘキサデカンの接触角が45°以上であり、且つ、
該ハードコート層形成面と反対側のトリアセチルセルロースフィルムがケン化処理されていることを特徴とするハードコートフィルムである。
請求項2に記載の発明は、前記ハードコート層が(メタ)アクリレートオリゴマーあるいは(メタ)アクリレートモノマーおよび電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤を硬化して形成されることを特徴とする請求項1記載のハードコートフィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤が、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレートおよびフッ素化エポキシアクリレートから選択されることを特徴とする請求項2記載のハードコートフィルムである。
請求項4に記載の発明は、前記プライマー層が、ポリ酢酸ビニルとイソシアネート化合物を含み、ポリ酢酸ビニル100重量部に対しイソシアネート化合物を1重量部以上20重量部以下含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハードコートフィルムである。
請求項5に記載の発明は、トリアセチルセルロースフィルムの一方の面にハードコート層を備え、該ハードコート層が最表面に位置するハードコートフィルムの製造方法であって、
トリアセチルセルロースフィルムをケン化処理する工程と、
該ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルムの一方の面にプライマー層を形成する工程と、
該プライマー層上に(メタ)アクリレートオリゴマーあるいは(メタ)アクリレートモノマーおよび電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤を含む塗布液を塗布し、電離放射線を照射することによりハードコート層を形成する工程と
を備えることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
請求項6に記載の発明は、前記電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤が、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレートおよびフッ素化エポキシアクリレートから選択されることを特徴とする請求項5記載のハードコートフィルムの製造方法である。
請求項7に記載の発明は、前記プライマー層が、ポリ酢酸ビニルとイソシアネート化合物を含み、ポリ酢酸ビニル100重量部に対しイソシアネート化合物を1重量部以上20重量部以下含むことを特徴とする請求項5または請求項6記載のハードコートフィルムの製造方法である。
請求項8に記載の発明は、前記ハードコート層表面における鉛筆硬度が3H以上であり、水の接触角が90°以上であり、且つ、ヘキサデカンの接触角が45°以上であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法である。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のハードコートフィルムを偏光素子の一面に貼り合わせてなる偏光板である。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは、ハードコート層の機械的物性の向上にむけて鋭意研究を重ねた。その結果、ケン化処理を行ったトリアセチルセルロースフィルム上にプライマー層を介したハードコート層を設けることにより、密着性がよく、耐擦傷性および硬度に優れるとともに、防汚性が高く、かつ防汚性が持続するハードコートフィルムが得られることを見出し、本発明に想到した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、ケン化処理を行ったトリアセチルセルロースフィルム上にプライマー層を介したハードコート層を設けることによって、密着性がよく、耐擦傷性および硬度に優れるとともに、防汚性が高く、かつ防汚性が持続するハードコートフィルムが得られることを見出した。
【0016】
本発明において、対象とした汚れは主に指紋、サインペンであって、防汚とはこれらの汚れが付着しないこと、または付着しにくいこと、または容易に拭き取りが可能であることを意味する。
【0017】
トリアセチルセルロースフィルムにアルカリ処理(即ち、ケン化処理)を行なう目的は、トリアセチルセルロースフィルム表面の酸素原子と結合したアセチル基を水酸基に変換することにより、このトリアセチルセルロースフィルムと偏光素子フィルムとを接着剤で接着するときの密着性を高めるためである。
【0018】
ケン化処理においては、通常のアルカリ溶液が使用できるが、好ましくは、3N程度のKOHが用いられる。このアルカリ溶液を用いた浸漬処理は、好ましくは60℃程度で1分間前後行うことができる。この浸漬処理後の中和処理には、1N程度のHClが好適に用いられ、室温で約1分間中和処理し、水洗浄を行い、乾燥処理する。
【0019】
前記ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム上に形成されるプライマー層には、ポリ酢酸ビニルを主成分とするプライマーが使用されるのが好ましい。即ち、ポリ酢酸ビニル100重量部に対し、ジイソシアネート化合物、特に好ましくはキシリレンジイソシアネートを1〜20重量部、好ましくは12重量部加えたものをプライマーとして好適に用いることができる。このプライマーをケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、好ましくは60℃程度で1分程度乾燥し、プライマー層を形成する。形成されるプライマー層の膜厚は0.1〜5μm、好ましくは0.3〜1.0μmである。
【0020】
ハードコート層のベースとなる硬化樹脂としては1分子中に少なくとも1個以上の架橋性二重結合である炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。例えば、光硬化型樹脂としては、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリオールアクリレートなどのアクリル系樹脂が好ましい。具体的には、架橋性オリゴマー、単官能または多官能モノマー、光重合開始剤、光開始助剤などを含むものである。
【0021】
架橋性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリートオリゴマーが好ましい。具体的にはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ポリウレタンのジアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等がある。
【0022】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、ウレタン(メタ)アクリレートは、「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタクリレート」の両方を示している。
【0023】
単官能または多官能モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリルモノマーが好ましい。具体的には2官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等がある。3官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等がある。4官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはテトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等がある。6官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等がある。
【0024】
本発明において、活性エネルギー線が紫外線である場合には、光増感剤(光重合開始剤)を添加する必要があり、ラジカル発生型の光重合開始剤としてベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2、2、-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントン、2、4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4、4-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。
【0025】
光硬化型樹脂を硬化させるのに用いる光は電離放射線、例えば紫外線、電子線、あるいはガンマ線などであり、電子線あるいはガンマ線の場合、必ずしも光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。これらの線源としては高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプや加速電子などが使用できる。
【0026】
電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤としては炭素−炭素不飽和二重結合を有するフッ素系有機化合物が挙げられ、具体的にはアクリレートあるいはメタクリレートの水素原子をフッ素原子に置換した、いわゆるフッ素化アクリレートあるいはフッ素化メタクリレートやフッ素化エポキシアクリレートなどがある。
【0027】
電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤としては、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化エポキシアクリレートが防汚性に優れ、かつ、ベース樹脂に対する相溶性にも優れている点で好ましい。例えば、パーフロロオクチルエチルアクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルアクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート等が挙げられる。
【0028】
電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤はハードコート層中、0.01〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%含有される。電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤が0.01重量%未満では本発明の効果が十分発現せず、電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤が5重量%を越えると粘度変化が生じ、膜厚制御が困難になるばかりでなく、硬化物の表面硬度が低下し、傷が付きやすくなったり、表面に曇りを生じたりして好ましくない。
【0029】
ハードコート層の防汚性は接触角を測定することにより評価が可能であり、この接触角が大きければ防汚性に優れていることを示す。水の接触角が90°以上、ヘキサデカンの接触角が45°以上であると良好な防汚性を得ることができる。
また本発明のハードコート層は、鉛筆硬度が3H以上であり、優れた硬度を示す。
ハードコート層の厚さは、2〜20μmが好ましい。
【0030】
アクリレートオリゴマーあるいはアクリレートモノマーとフッ素系界面活性剤を含む塗布液から最表面に防汚性ハードコート層が位置するハードコートフィルムを製造するにあっては、防汚性ハードコート層を形成後にケン化処理をおこなった場合にはアルカリ溶液によってフッ素系界面活性剤が欠落し、ケン化処理によって防汚性能が低下するという傾向にある。本発明にあっては、防汚性ハードコート層を設ける前にトリアセチルセルロースフィルムに対してケン化処理がおこなわれているため、防汚性ハードコート層はケン化処理されることなく、硬い防汚性を保持することができる。
【0031】
トリアセチルセルロースフィルム基材へのコーティング方法は、特に限定されるものではないが、実用的には、ダイコーター、カーテンフローコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、スピンコーター、マイクログラビアコーター等によるコーティングが一般的である。
【0032】
図1は、本発明のハードコートフィルムの一実施形態の断面図である。本発明のハードコートフィルム1は、トリアセチルセルロースフィルム12の一方の面に防汚性のハードコート層14を備え、ハードコート層14が最表面に位置するように構成されている。そしてトリアセチルセルロースフィルム12とハードコート層14との間にプライマー層13が設けられている。
図2は、本発明のハードコート層を用いた偏光板の一実施形態の断面図である。偏光板2は、本発明のハードコートフィルム1を、例えば延伸ボリビニルアルコールを主体とする偏光素子22の一面に貼り合わせ、他面には例えばトリアセチルセルロースフィルム24が保護フィルムとして貼り合わされている。
【実施例】
【0033】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部は特に断りの無い限り重量基準である。
【0034】
[ケン化処理]
トリアセチルセルロースフィルム(FT−UV−80:商品名、富士フィルム株式会社製、厚み80μm)を60℃に加温した3N KOH水溶液に1分間浸漬し(ケン化処理)、その後水洗浄した。さらに、室温の1N HCl水溶液に1分間浸漬し、その後水洗浄を行ない中和した。
[プライマー層塗布液の調整]
酢酸ビニル樹脂であるデンカサクノール(電気化学工業株式会社製)100重量部に対し、硬化剤としてXDI(キシリレンジイソシアネート)を12重量部加えてなる樹脂組成物を、酢酸エチル/メチルエチルケトン/酢酸メチル=50:30:80からなる混合溶剤に固形分濃度が15%となるように溶解して、プライマー層塗布液を調製した。
[ハードコート塗布液(H−1)の調整]
紫光 UV−7605B(日本合成化学社製ウレタンアクリレートオリゴマー)100部、イルガキュア184(チバガイギー社製)4部、ビスコート 8F(大阪有機化学工業株式会社製、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート)2部、酢酸メチル50部、2−ブタノン50部を混合し、ハードコート塗布液を調製した。
[ハードコート塗布液(H−2)の調整]
UN−3320HC(根上工業株式会社製ウレタンアクリレートオリゴマー)100部、イルガキュア184(チバガイギー社製)4部、ビスコート 8F(大阪有機化学工業株式会社製、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート)2部、酢酸メチル50部、2−ブタノン50部を混合し、ハードコート塗布液を調製した。
[ハードコート塗布液(H−3)の調整]
UA−306T(共栄社化学株式会社製ウレタンアクリレートオリゴマー)100部、イルガキュア184(チバガイギー社製)4部、ビスコート 8F(大阪有機化学工業株式会社製、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート)2部、酢酸メチル50部、2−ブタノン50部を混合し、コーティング剤を調液した。
[ハードコート塗布液(H−4)の調整]
CN983(サートマー社製ウレタンアクリレートオリゴマー)100部、イルガキュア184(チバガイギー社製)4部、ビスコート 8F(大阪有機化学工業株式会社製、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート)2部、酢酸メチル50部、2−ブタノン50部を混合し、コーティング剤を調液した。
[ハードコート塗布液(H−5)の調整]
UA−306T(共栄社化学株式会社製ウレタンアクリレートオリゴマー)100部、イルガキュア184(チバガイギー社製)4部、酢酸メチル50部、2−ブタノン50部を混合し、ハードコート塗布液を調製した。
【0035】
[プライマー層の作成]
表1に記載の組合せで、ケン化処理を行ったトリアセチルセルロースフィルム上にプライマー層塗布液をバーコーターにて塗布、乾燥を行い、膜厚1μmのプライマー層を形成した。
【0036】
[ハードコート層の作成]
表1に記載の組合せで、ケン化処理を行ったトリアセチルセルロースフィルム上にプライマー層を形成後、ハードコート塗布液をバーコーターにて塗布、乾燥、紫外線照射を行い、膜厚10μmのハードコート層を形成した。作製したそれぞれのハードコート層の密着性、マジック拭取り性、指紋拭取り性、鉛筆硬度、耐擦傷性、接触角を調べた結果を表1に示す。
【0037】
<評価方法>
実施例1〜4、比較例1〜3で作製したハードコートフィルムについて、以下に示した方法にて評価した。また、実施例及び比較例で作製したハードコートフィルムの評価結果を表1に示した。
・密着性:塗膜に碁盤目の切り込み(1mm×1mm、100枡)を入れ、セロハン粘着テープによる剥離試験を実施した。数値は残存数で示した(100;塗膜剥がれ無し、0;すべて剥離)。
・マジック拭取り性:フイルム表面に書いた速乾性油性インキ(ゼブラ製、「マッキー」(登録商標))をティッシュペーパー(ネピア 王子ネピア株式会社製)を用いて数回擦ってふき取った状態の評価(○は書いた跡が完全にふき取れた状態、△は一部がふき取れずに残った状態、×は大部分がふき残った状態)。
・指紋拭取り性:表面についた指紋をティッシュペーパー(ネピア 王子ネピア株式会社製)を用いて拭取った時の取れ易さを評価した(○は軽い力で数回でとれるもの、×は力をこめて擦って取れるもの、△は中間のもの)。
・鉛筆硬度:JIS K 5400に準拠し、500g荷重で測定した。
・耐擦傷性;#0000のスチールウールを用い、500g/cm2の荷重をかけ、10往復擦った後、表面の傷を観察した(傷が見えないものを○、僅かに見えるものを△、傷がはっきり見えるものを×とした)。
・接触角;接触角計(モデル;FACE CA−X型、協和界面科学社製)にて水およびヘキサデカンの接触角測定を行った。
【0038】
<防汚耐久試験>
テッシュペーパー(ネピア 王子ネピア株式会社製)を用い、500g/cm2の荷重をかけ、10往復擦った後、前述と同様にマジック拭取り性、指紋拭取り性の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1および表2の結果から、本発明のハードコートフィルムは、比較例に比べて、ハードコート層の密着性がよく、耐擦傷性および硬度に優れるとともに、防汚性が高く、かつ防汚性が持続することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のハードコートフィルムの一実施形態の断面図である。
【図2】本発明のハードコート層を用いた偏光板の一実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ハードコートフィルム
12 トリアセチルセルロースフィルム
13 プライマー層
14 ハードコート層
2 偏光板
22 偏光素子
24 トリアセチルセルロースフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロースフィルムの一方の面にハードコート層を備え、該ハードコート層が最表面に位置するハードコートフィルムであって、
前記トリアセチルセルロースフィルムと前記ハードコート層との間にプライマー層を備え、
該ハードコート層表面の鉛筆硬度が3H以上であり、且つ、
該ハードコート層表面の水の接触角が90°以上であり、且つ、
該ハードコート層表面のヘキサデカンの接触角が45°以上であり、且つ、
該ハードコート層形成面と反対側のトリアセチルセルロースフィルムがケン化処理されていることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層が(メタ)アクリレートオリゴマーあるいは(メタ)アクリレートモノマーおよび電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤を硬化して形成されることを特徴とする請求項1記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤が、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレートおよびフッ素化エポキシアクリレートから選択されることを特徴とする請求項2記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記プライマー層が、ポリ酢酸ビニルとイソシアネート化合物を含み、ポリ酢酸ビニル100重量部に対しイソシアネート化合物を1重量部以上20重量部以下含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
トリアセチルセルロースフィルムの一方の面にハードコート層を備え、該ハードコート層が最表面に位置するハードコートフィルムの製造方法であって、
トリアセチルセルロースフィルムをケン化処理する工程と、
該ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルムの一方の面にプライマー層を形成する工程と、
該プライマー層上に(メタ)アクリレートオリゴマーあるいは(メタ)アクリレートモノマーおよび電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤を含む塗布液を塗布し、電離放射線を照射することによりハードコート層を形成する工程と
を備えることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記電離放射線反応基を有するフッ素系界面活性剤が、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレートおよびフッ素化エポキシアクリレートから選択されることを特徴とする請求項5記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記プライマー層が、ポリ酢酸ビニルとイソシアネート化合物を含み、ポリ酢酸ビニル100重量部に対しイソシアネート化合物を1重量部以上20重量部以下含むことを特徴とする請求項5または請求項6記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ハードコート層表面における鉛筆硬度が3H以上であり、水の接触角が90°以上であり、且つ、ヘキサデカンの接触角が45°以上であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載のハードコートフィルムを偏光素子の一面に貼り合わせてなる偏光板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−38945(P2010−38945A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198165(P2008−198165)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】