説明

ハードコート塗液およびハードコートフィルム

【課題】しなやかさに優れたハードコート層を形成するためのハードコート塗液およびこれを用いて形成されたハードコートフィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含むハードコート塗液であって、前記電離放射線硬化型材料が、以下の条件を満たすことを特徴とするハードコート塗液。(1)重合性基当量が130g/当量以下、100g/当量以上であり、(2)1分子中の重合性基数の重量平均が2.8個以上であり、かつ(3)水酸基当量が270g/当量以下、120g/当量以上である。フィルム基材11の少なくとも一方の面にハードコート層12を備え、該ハードコート層12が、前記ハードコート塗液をフィルム基材11上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成されているハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層を形成するためのハードコート塗液に関する。特に、耐擦傷性等の硬さだけでなくしなやかさに優れたハードコート層を形成するためのハードコート塗液に関する。本発明のハードコート塗液を用い各種基材にハードコート層を設けることにより、耐擦傷性、耐割れ性に優れたハードコート物品が得られ、種々の分野での応用が可能である。例えば、透明フィルムや透明プラスチック板に本発明のハードコート層を設けることにより、ハードコートフィルムやハードコート処理プラスチック板となり、LCD、PDP、FED、EL等のディスプレイ、タッチパネルに好適に設けることができる。また、CD、DVD等の記録媒体、化粧板、ガラス板等の表面に本発明のハードコート塗液によりハードコート層を形成することにより耐擦傷性を付与することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック製品は加工性、軽量化の観点で良好であることから、様々な製品がガラス製品からプラスチック製品に置き換わりつつあるが、これらプラスチック製品の表面は傷つきやすいため、表面硬度や耐擦傷性を付与する目的で表面にハードコート層を設けたり、ハードコート層を設けたフィルムを貼合して用いる場合が多い(例えば特許文献1〜4を参照)。
【0003】
また、従来のガラス製品についても、破損した際の飛散防止のためにプラスチックフィルムを貼合する場合が増えており、これらのフィルム表面の硬度強化のためにもその表面にハードコート層を形成することが広く行われ、特にLCD、PDP、FED、EL等の表示装置、タッチパネルなどの最表面等に用いられている。
【0004】
このようなハードコート層を設けたフィルムのハードコート層に通常用いられるハードコート樹脂としては多官能(メタ)アクリロイル化合物が挙げられる。多官能(メタ)アクリロイル化合物は高い表面硬度を有し、他にも透明性、擦傷性、光沢性に優れることから、多くの製品の表面保護を目的としたハードコート剤に利用されている。しかしながら、多官能(メタ)アクリロイル化合物の硬化物は柔軟性に欠けるものとなる。例えば後加工においてフィルムを曲げた時や、局所的な強い衝撃が加えられた時に硬化塗膜が割れる等問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−197670号公報
【特許文献2】特開2000−111706号公報
【特許文献3】特開平7−151902号公報
【特許文献4】特開2003−205563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この問題の対策として、下記で示す手段が挙げられるが表面硬度が劣化と硬化塗膜割れがトレードオフとなり、両立しないという問題がある。
1)多官能アクリレートモノマーの一部を単官能もしくは二官能(メタ)アクリロイル化合物に変更し、三次元架橋の度合を減少させる。
2)多官能(メタ)アクリロイル化合物の分子量を大きくし重合性基当量を増やす。
3)多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレートを用いる。
【0007】
本発明にあっては、しなやかさに優れたハードコート層を形成するためのハードコート塗液およびハードコートフィルムを提供することを課題とする。しなやかなハードコート層によってタッチペン等による打鍵、摺動及びハードコート層を曲げた際に、割れや欠けが発生し難くなる。
また本発明の別の課題は、該ハードコートフィルムを備えた偏光板、透過型液晶表示装置、タッチパネル用上部電極板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含むハードコート塗液であって、
前記電離放射線硬化型材料が、以下の条件を満たすことを特徴とするハードコート塗液である。
(1)重合性基当量が130g/当量以下、100g/当量以上であり、
(2)1分子中の重合性基数の重量平均が2.8個以上であり、かつ
(3)水酸基当量が270g/当量以下、120g/当量以上である。
請求項2に記載の発明は、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が、請求項1に記載のハードコート塗液をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成されていることを特徴とするハードコートフィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記ハードコート層の層厚が4μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のハードコートフィルムである。
請求項4に記載の発明は、偏光層と該偏光層の少なくとも一方の面に設けられた保護フィルムとからなる偏光板であって、該保護フィルムが、請求項2または3に記載のハードコートフィルムを含むことを特徴とする偏光板である。
請求項5に記載の発明は、第1偏光板と、液晶セルと、第2偏光板と、バックライトユニットとをこの順に備え、該第1偏光板が請求項4に記載の偏光板であり、前記ハードコート層が最表面となることを特徴とする透過型液晶表示装置である。
請求項6に記載の発明は、請求項2または3に記載のハードコートフィルムのハードコート層の反対面側に、少なくとも透明導電層が積層されていることを特徴とするタッチパネル用上部電極板である。
請求項7に記載の発明は、請求項2または3に記載のハードコートフィルムのハードコート層の反対面側に、粘着剤層、透明樹脂フィルムおよび透明導電層をこの順で設けたことを特徴とするタッチパネル用上部電極板である。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のハードコート塗液を用いることにより、しなやかさに優れたハードコート層を形成することができた。フィルム基材上に本発明のハードコート塗液を用いハードコート層を形成することにより、しなやかさに優れたハードコートフィルムを作製することができた。
また本発明によれば、上記特性を有するハードコートフィルムを備えた偏光板、透過型液晶表示装置、タッチパネル用上部電極板を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明のハードコートフィルムの模式断面図である。
【図2】図2は本発明の偏光板の模式断面図である。
【図3】図3は本発明のハードコートフィルムを備える透過型液晶ディスプレイの断面模式図である。
【図4】図4は本発明のタッチパネル用上部電極板の模式断面図である。
【図5】図5はダイコーティング法によるダイコーター塗布装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のハードコート塗液、ハードコートフィルム、偏光板、透過型液晶表示装置、タッチパネル用上部電極板について説明する。
【0012】
本発明のハードコート塗液は、少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含むハードコート塗液であって、
前記電離放射線硬化型材料が、以下の条件を満たすことを特徴とする。
(1)重合性基当量が130g/当量以下、100g/当量以上であり、
(2)1分子中の重合性基数の重量平均が2.8個以上であり、かつ
(3)水酸基当量が270g/当量以下、120g/当量以上である。
【0013】
本発明者らは、上記(1)〜(3)で示す条件をすべて満たすハードコート塗液をフィルム基材上に設けることにより、しなやかさに優れたハードコートフィルムとすることができることを見出した。
【0014】
ここで、本発明でいう重合性基当量とは、電離放射線硬化型材料の分子量を重合性基の個数で除した値、即ち、重合性基当量=M/N(M:分子量、N:重合性基の個数)で算出される値である。電離放射線硬化型材料が複数種類使用される場合は、それぞれの材料の重合性基当量を算出した後、それぞれの重合性基当量の平均値を、本発明でいう重合性基当量とする。
また、本発明でいう水酸基当量とは、上記の重合性基当量と同様に、電離放射線硬化型材料の分子量を水酸基の個数で除した値、即ち、重合性基当量=M/N’(M:分子量、N’:水酸基の個数)で算出される値である。電離放射線硬化型材料が複数種類使用される場合は、それぞれの材料の水酸基当量を算出した後、それぞれの水酸基当量の平均値を、本発明でいう水酸基当量とする。
【0015】
重合性基当量が130g/当量以下、100g/当量以上であり、1分子中の重合性基数の重量平均が2.8個以上とすることによる効果は、重合後に重合が密に発生し、かつ、分子鎖が高次に絡まりあって十分に硬い膜となることが出来ることである。
水酸基当量が270g/当量以下、120g/当量以上とすることによる効果は、重合後に残る水酸基による自由度の高い水素結合により膜がしなやかとなることである。
【0016】
本発明において電離放射線硬化型材料としては、炭素−炭素二重結合を有するアクリル化合物を指す。上記の範囲を達成するための電離放射線硬化型材料として、水酸基を有し、複数の(メタ)アクリレート基を有する化合物を好適に用いることができる。
【0017】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート基」とは「アクリレート基」と「メタクリレート基」の両方を示している。
【0018】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するアクリル単官能化合物が挙げられる。
【0019】
また、電離放射線硬化型材料としては水酸基を少なくとも2つ有する化合物であるポリオールの誘導体で、水酸基を少なくとも1つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを用いることができる。
このとき、ポリオールとしては、任意の適切なポリオールが用いられる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリジメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類が挙げられる。
水酸基を少なくとも1つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
また、電離放射線硬化型材料としては二官能以上のエポキシ化合物とアクリル酸を反応せしめて得られる化合物を用いることができる。たとえば、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物等の(メタ)アクリル2官能化合物や、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、グリセロールエポキシトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル3官能化合物などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
また、電離放射線硬化型材料としては、(メタ)アクリロイル基を3個以上好ましくは3〜20個有する化合物が好適に用いられる。具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの電離放射線硬化型材料は、上記の発明の範囲の調整のため水酸基を含まなくてもよい。
【0022】
これらの電離放射線硬化型材料は単独で用いてもよく、混合体であってもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明のハードコート塗液には、好適には、フッ素系表面調整剤あるいはシリコーン系表面調整剤が含まれる。フッ素系表面調整剤としてはパーフルオロアルキル基を備える化合物が用いられる。シリコーン系表面調整剤としてはポリジメチルシロキサンを基本構造とする誘導体であり、ポリジメチルシロキサン構造の側鎖を変性したものを用いることができる。これらのフッ素系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤は、分子内に炭素−炭素不飽和二重結合を有していることが好ましい。分子内に炭素−炭素不飽和二重結合を有し、架橋型の表面調整剤とすることにより、ハードコート塗液からなる塗膜を硬化させる際に電離放射線硬化型材料のアクリル基もしくはメタクリル基と反応してマトリックスを形成することができ、化学的に結合するため、形成されるハードコート層から表面調整剤が脱落しにくくすることができる。
【0024】
また、本発明のハードコート塗液にあっては、他の添加剤を加えることもできる。他の添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤、他の表面調整剤などを使用できる。また、ハードコート塗液に粒子を含ませることによりハードコート層表面に凹凸を形成し、ハードコート層に防眩機能を付与してもよい。ハードコート層に粒子を含有させることにより表面に凹凸を形成しフィルム表面に移りこむ反射像の眩しさを抑えることができる。また、ハードコート材料との屈折率差のある粒子を用い透過光を拡散することにより、表示画像のギラツキを抑えることができ、液晶表示装置特有の斜め方向から視認した場合の色変化や、階調変化を抑えることができる。
【0025】
また、電離放射線硬化型材料を硬化するための電離放射線として紫外線を用いる場合、ハードコート塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤は、公知の光重合開始剤を用いることができるが、用いる電離放射線硬化型材料にあったものを用いることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−ヒドロキシケトン、ベンジルジメチルケタール、α−アミノケトン、アシルフォスフィンオキサイド等を混合することが望ましい。光重合開始剤の使用量は、電離放射線硬化型材料100重量部に対して0.5重量部以上20重量部以下の範囲内であることが好ましい。さらには、1重量部以上5重量部以下の範囲内であることが好ましい。
【0026】
また、ハードコート塗液には溶媒が加えられる。溶媒の種類としては、エステル系、ケトン系、エーテル系、アルコール系、芳香族炭化水素系などの種類は特に限定されないが、沸点が50℃以上、120℃以下のものが望ましい。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、1−ブタノール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等を用いることができる。なお、溶媒は1種類に限定されるものではなく、複数の溶媒を混合して上記の沸点の範囲内であれば、混合溶媒としてもよい。
【0027】
本発明のハードコートフィルムについて説明する。図1に本発明のハードコートフィルムの模式断面図を示した。本発明のハードコートフィルム1は、フィルム基材11の少なくとも一方の面にハードコート層12を備え、本発明のハードコート塗液をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成される。
【0028】
このとき、フィルム基材としては、ガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。中でも、液晶表示装置の前面にハードコートフィルムを設ける場合、トリアセチルセルロース(TAC)は光学異方性がないため、好ましく用いられる。また、タッチパネルの上部電極として用いる場合には、機械強度等の面からポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく用いられる。
【0029】
ハードコート塗液はフィルム基材上に塗布され、フィルム基材上に塗膜が形成される。フィルム基材へのコーティング方法は、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、バーコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を用いることができる。
【0030】
図5にダイコーティング法によるダイコーター塗布装置の模式図を示した。ダイコーター塗布装置は、ダイヘッド70と塗液タンク72が配管71によって接続され、送液ポンプ73によって、塗液タンク72のハードコート塗液がダイヘッド70内に送液される構造となっている。ダイヘッド70に送液された塗液はスリット間隙から塗液を吐出し、フィルム基材11上に塗膜が形成される。巻き取り式のフィルム基材11を用い回転ロール75を使用することにより、ロール・ツー・ロール方式により連続してフィルム基材上に塗膜を形成することができる。
【0031】
ハードコート塗液を塗布し、フィルム基材上に形成された塗膜は溶媒を除去するために乾燥される。塗膜中の溶媒を除去するための乾燥工程が設けられる。なお、乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。また、自然乾燥により溶媒を除去することも可能である。
【0032】
本発明において、形成されるハードコート層の膜厚は、必要とされる高度と柔軟性により決定されるが、好ましい膜厚としては4μm以上25μm以下の範囲内であることが好ましい。ハードコート層の膜厚が4μm未満の場合は十分な塗膜強度を得られず傷が付きやすいものとなってしまう。また膜厚がばらつきやすくなるため干渉縞が発生するなど不具合が生じてしまう。一方、ハードコート層の膜厚が25μmを超えると曲げによるクラックが発生する場合があり、また、形成さされるハードコートフィルムにカールが発生しやすくなってしまう。
【0033】
続いて、フィルム基材上の塗膜に対し、電離放射線を照射することにより塗膜は硬化され、ハードコート層は形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線、あるいはガンマ線などを用いることができる。電離放射線として電子線あるいはガンマ線を用いた場合、必ずしもハードコート塗液に光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。また、電子線としては、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。以上により、本発明のハードコートフィルムは形成される。なお、図5に示したようなロール・ツー・ロール方式でハードコートフィルムを製造するにあっては、連続的に搬送されるフィルム基材を塗布ユニット、乾燥ユニット、電離放射線照射ユニットを通過させることによりハードコートフィルムを製造することができる。
【0034】
次に、本発明の偏光板、透過型液晶表示装置について説明する。図2に本発明の偏光板の模式断面図について示した。本発明の偏光板2にあっては、偏光層と該偏光層の少なくとも一方の面に設けられた保護フィルムとからなる偏光板であり、すなわち、ハードコートフィルム1のフィルム基材11のハードコート層12形成面と反対側の面に偏光層22、フィルム基材21を順に備える。偏光板2は2枚のフィルム基材11、21に偏光層22を挟持し、表面にハードコート層12を備える。本発明の偏光板に用いられる偏光層としては公知のものを使用でき、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)からなるものを例示することができる。このとき、偏光層は本発明のハードコートフィルムとフィルム基材に狭持されている。フィルム基材21としては、ハードコートフィルムのフィルム基材に例示したものを用いることができ、特に、トリアセチルセルロースフィルムを好適に用いることができる。
【0035】
図3に本発明のハードコートフィルムを備える透過型液晶ディスプレイの断面模式図を示した。図3の透過型液晶ディスプレイにおいては、バックライトユニット5、第2偏光板4、液晶セル3、ハードコートフィルム1を含む偏光板2(第1偏光板)をこの順に備えている。このとき、ハードコートフィルムにおけるハードコート層12が観察側すなわち表示装置の最表面となる。
本発明の透過型液晶表示装置における液晶セル3、第2偏光板4、バックライトユニット5としては公知のものを使用できる。バックライトユニット5は、光源と光拡散板を備える。液晶セル3は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。第2偏光板4は基材フィルム41、43に偏光層42を挟持した構造を備える。2つの偏光板は液晶セルを挟むように設けられる。
【0036】
また、本発明の透過型液晶表示装置にあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶表示装置はこれらに限定されるものではない。
【0037】
次に、本発明のタッチパネル用上部電極板について説明する。
本発明のタッチパネル用上部電極板は、前記ハードコートフィルムのハードコート層の反対面側に、少なくとも透明導電層が積層されている。なお、ハードコート層の反対面側に、粘着剤層、透明樹脂フィルムおよび透明導電層をこの順で設け、タッチパネル用上部電極板としてもよい。
図4に本発明のタッチパネル用上部電極板の模式断面図を示した。図4の本発明のタッチパネル用上部電極板6にあっては、ハードコート層12の反対面側のフィルム基材11上に粘着剤層61、透明樹脂フィルム62および透明導電層63を順に備える。
粘着剤層61としては、アクリル系粘着剤もしくはゴム系粘着剤からなる層を挙げることができ、厚さは10〜50μmである。さらには、アクリル系粘着剤からなる層を好適に用いることができる。
また、透明樹脂フィルム62としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができ、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを好適に用いることができる。
【0038】
また、透明導電層63としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛等の酸化物あるいはその混合酸化物等の導電性材料からなる層を挙げることができる。特に酸化インジウムと酸化錫の混合酸化物(ITO)が好適に用いられる。また、この導電性材料には、必要に応じて、Al、Zr、Ga、Si、W等の添加物を含有させることができる。透明導電層にあっては、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の真空成膜法により形成される。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0040】
フィルム基材として、PETフィルム(東洋紡社製A4300−125μm)を用いた。(実施例1)〜(実施例6)、(比較例1)〜(比較例3)において、(表1)に示した電離放射線硬化型材料に光重合開始剤にIRGACURE184(チバスペシャリティーケミカルズ製) 5重量部 、溶媒にジオキソラン 150重量部を用いそれぞれ調液した。PETフィルム上にダイコーター塗布装置により塗布し乾燥をおこない塗膜に含まれる溶媒を除去し、その後、高圧水銀灯を用いて酸素濃度が0.03%以下の雰囲気下で400mJ/cmの紫外線照射により、塗膜を硬化させハードコートフィルムを作製した。硬化後のハードコート膜厚は5μmであった。
上記の実施例、比較例に対して以下の評価をおこなった。
【0041】
(ペン書き試験)
50mm角にカットしたハードコートフィルムを2mmの青板ガラスに4辺をセロハンテープに貼り付け、GRAPHTEC社製ペンプロッタFP8300にペン先がR0.8のポリアセタールペンを装着し250g荷重でハードコート層上の同一箇所に「−:ハイフン」を20万回印字する。サンプルの外観の変化を、暗室にて、3波長蛍光灯( 松下電器産業株式会社製ナショナルパルック3波長形蛍光灯(FLR40S・EX-N/M-X)の直下40cmで、印字箇所の状態を観察した。
印字跡が見えない: ◎
反射光で弱い印字跡が見える: ○
透過光で弱い印字跡が見える: △
塗膜が割れている: ×
【0042】
(曲げ試験)
200mm×30mmにカットしたハードコートフィルムをハードコート側を外側にして円柱に沿わせ、加重0.5kgで15秒間固定する。暗室にて、3波長蛍光灯( 松下電器産業株式会社製ナショナルパルック3波長形蛍光灯(FLR40S・EX-N/M-X)の直下40cmで目視で評価した。ハードコート塗膜の割れによる外観の変化を観察する。円柱径:2mm〜20mmの2mm間隔で試験し、割れの発生しない最も小さい径を試験結果とした。
〜 6 mm: ◎
8 mm 〜 12mm: ○
12mm 〜 20mm: ×
【0043】
(鉛筆硬度)
JIS K5400に示された試験方法に基づき評価した。
【0044】
(耐擦傷性)
スチールウール(#0000)を用い1500g/cmの荷重をかけハードコート層上を10往復擦り、サンプルの擦り跡やキズなどによる外観の変化を、暗室にて、3波長蛍光灯(パナソニック社製ナショナルパルック3波長形蛍光灯(FLR40S・EX-N/M-X)の直下40cmで目視で評価した。
外観の変化が確認されない: ◎
外観の変化は確認されるものの目立たない: ○
外観の変化が目立つ: ×
【0045】
結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
なお、使用した電離放射線硬化型材料の分子量、重合性基数、水酸基数、重合性基当量、水酸基当量を表2に示す。
【0048】
【表2】

【符号の説明】
【0049】
1 ハードコートフィルム
2 フィルム基材
12 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含むハードコート塗液であって、
前記電離放射線硬化型材料が、以下の条件を満たすことを特徴とするハードコート塗液。
(1)重合性基当量が130g/当量以下、100g/当量以上であり、
(2)1分子中の重合性基数の重量平均が2.8個以上であり、かつ
(3)水酸基当量が270g/当量以下、120g/当量以上である。
【請求項2】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が、請求項1に記載のハードコート塗液をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成されていることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層の層厚が4μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
偏光層と該偏光層の少なくとも一方の面に設けられた保護フィルムとからなる偏光板であって、該保護フィルムが、請求項2または3に記載のハードコートフィルムを含むことを特徴とする偏光板。
【請求項5】
第1偏光板と、液晶セルと、第2偏光板と、バックライトユニットとをこの順に備え、該第1偏光板が請求項4に記載の偏光板であり、前記ハードコート層が最表面となることを特徴とする透過型液晶表示装置。
【請求項6】
請求項2または3に記載のハードコートフィルムのハードコート層の反対面側に、少なくとも透明導電層が積層されていることを特徴とするタッチパネル用上部電極板。
【請求項7】
請求項2または3に記載のハードコートフィルムのハードコート層の反対面側に、粘着剤層、透明樹脂フィルムおよび透明導電層をこの順で設けたことを特徴とするタッチパネル用上部電極板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−180372(P2010−180372A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27126(P2009−27126)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】