説明

ハードコート層付フィルムの製造方法およびガラス付フィルムの製造方法

【課題】ハードコート層の割れの発生を抑制する。
【解決手段】ガラス面に貼り付けられるハードコート層付フィルムの製造方法であって、
一面に光学用透明粘着層を介して剥離フィルムを貼り付けた基材フィルムの他面に半硬化状態のハードコート層を形成する工程と、前記光学用透明粘着層、前記基材フィルム及び前記半硬化状態のハードコート層を、前記剥離フィルムを残して前記ガラス面の形状に合わせて抜き加工する工程と、抜き加工した後に、前記半硬化状態のハードコート層を硬化させて鉛筆硬度が2H以上となるようにアフタキュアする工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層付フィルムの製造方法及びガラス付フィルムの製造方法に関し、特にタッチパネルを搭載した携帯用の多機能端末に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
飛散防止フィルムは、多機能端末のタッチパネルのセンサガラスや液晶表示ガラスが破損した際にガラスが飛び散ってしまうことを防止するためにガラス面に貼り付けられる。最近は、ハードコート層付飛散防止フィルム(以下、単に飛散防止フィルムという)がガラス面に貼り付けられている場合が主流である。この飛散防止フィルムは、ガラス面に貼り付けるために、ガラス面の形状に合わせて抜き加工される。
【0003】
しかし、飛散防止フィルムに貼り付けられるハードコート層は、硬度が高く、柔軟性や靭性が不足するために、抜き加工時、抜き加工面にエッジが出やすく、抜き加工面近くに割れが入りやすいため、加工性が大きな問題であった。
【0004】
そこで、ハードコート層の厚さの適正化を図ることによって、鉛筆硬度H以上の硬度を維持しつつ、抜き加工適性を改善するようにした飛散防止フィルムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−168652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものは、ハードコート層をプレキュアしてから抜き加工しているため、ハードコート層の厚さの適正化だけでは、柔軟性や靭性を十分にカバーできず、割れなどが依然として生じやすく、なお改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の問題点を解消して、高い硬度を維持しながら、抜き加工性を向上して、ハードコート層の割れの発生を容易に抑制することが可能なハードコート層付フィルムの製造方法及びガラス付フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
ガラス面に貼り付けられるハードコート層付フィルムの製造方法であって、
一面に光学用透明粘着層を介して剥離フィルムを貼り付けた基材フィルムの他面に半硬化状態のハードコート層を形成する工程と、
前記光学用透明粘着層、前記基材フィルム及び前記半硬化状態のハードコート層を、前記剥離フィルムを残して前記ガラス面の形状に合わせて抜き加工する工程と、
抜き加工した後に、前記半硬化状態のハードコート層を硬化させて鉛筆硬度が2H以上となるようにアフタキュアする工程と
を含むハードコート層付フィルムの製造方法が提供される。
【0009】
好ましくは、前記ハードコート層を形成する工程では、該ハードコート層を30%以上60%以下の半硬化状態にさせる。
【0010】
また、好ましくは、前記アフタキュアする工程では、前記ハードコート層を100%に硬化させる。
【0011】
また、好ましくは前記ハードコート層付フィルムが飛散防止フィルムである。
【0012】
また、好ましくは、前記ハードコート層付フィルムが、
基材フィルムの一面に枠状の印刷層、該印刷層を覆う前記光学用透明粘着層、該光学用透明粘着層を介して貼り付けられる前記剥離フィルム、及び前記基材フィルムの他面に前記ハードコート層を有するタッチパネル用印刷フィルムである。
【0013】
また、好ましくは、前記ハードコート層付フィルムが、
基材フィルムの一面に枠状の印刷層、該印刷層に貼り付けられる前記剥離フィルムとしての微粘着フィルム、及び前記基材フィルムの他面に前記ハードコート層を有するタッチパネル用印刷フィルムである。
【0014】
また、好ましくは、上述したハードコート層付フィルムの製造方法で得られたハードコート層付フィルムから剥離フィルムを剥離する工程と、
前記剥離フィルムの剥離された前記ハードコート層付フィルムに、前記剥離フィルムの剥離により露出した前記光学用透明粘着層を介して前記ガラスを貼り付ける工程と
を含む。
【0015】
また、好ましくは、上述したハードコート層付フィルムの製造方法で得られたハードコート層付フィルムの前記ハードコート層に剥離可能なキャリアフィルムを貼り合わせる工程と、
前記キャリアフィルムを貼り合わせた前記ハードコート層付フィルムから前記剥離フィルムを剥離する工程と、
前記剥離フィルムの剥離された前記ハードコート層付フィルムに、前記剥離フィルムの剥離により露出した前記光学用透明粘着層を介して前記ガラスを貼り合わせる工程と
を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い硬度を維持しながら、抜き加工性を向上して、ハードコート層の割れの発生を容易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるガラス付飛散防止フィルムの製造工程を示す説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態におけるガラス付飛散防止フィルムの製造工程を示す説明図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態におけるガラス付飛散防止フィルムの製造工程を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における飛散防止フィルムのラインを示す製造装置の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるガラス付飛散防止シートのラインを示す製造装置の説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるフィルム付液晶表示パネルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〈第1の実施の形態〉
本発明のハードコート層付フィルムは、主に飛散防止フィルムである。以下に、この飛散防止フィルムの製造方法に係る第1の実施の形態の説明する。この製造方法は、飛散防止フィルムのハードコート層を抜き加工前にプレキュアするのではなく、抜き加工を行ってからアフタキュアして硬化(以下、キュア前抜き加工という場合もある)させるようにした点に特徴がある。
【0019】
前述したように、ハードコート層は、硬度は高いものの柔軟性や靭性が不足する。このためプレキュアしてからハードコート層の抜き加工をすると、割れが生じやすい。そこで、本発明の一態様では、図1に示すように、基材フィルム15の一面に光学用透明粘着層14を介して剥離フィルム11を貼り付ける工程と(図1(a))、この基材フィルム15の他面に半硬化状態のハードコート層12を形成する工程と(図1(b))、前記光学用透明粘着層14、前記基材フィルム15及び前記半硬化状態のハードコート層12を、前記剥離フィルム11を残してカバーガラスなどのガラス面の形状に合わせて抜き加工して剥離フィルム11上に加工フィルム21を形成する工程と(図1(c))、抜き加工した後に、前記半硬化状態のハードコート層12を硬化させて鉛筆硬度が2H以上となるようにアフタキュアして完全硬化したハードコート層13を有する飛散防止フィルム22を形成する工程と(図1(d))、を含むようにしている。
【0020】
ガラス付飛散防止フィルムを製造するには、上記工程に加えて、さらに飛散防止フィルム22のハードコート層13上に剥離可能なキャリアフィルム26を貼り合わせる工程と(図1(e))、前記キャリアフィルム26を貼り合わせた前記飛散防止フィルム22から前記剥離フィルム11を剥離し、剥離された前記飛散防止フィルム22に、前記剥離フィルム11の剥離により露出した前記光学用透明粘着層14を介してカバーガラス17を貼り合わせる工程と(図1(f))が必要である。
【0021】
ここで、図1(b)に示す硬化前のフィルムを加工前フィルム20、この加工前フィルム20に剥離フィルム11を加えたものを加工前フィルム体、図1(c)に示す抜き加工後のフィルムを加工フィルム21、この加工フィルム21に剥離フィルム11を加えたものを加工フィルム体41、そして図1(d)に示すアフタキュア後のフィルムを飛散防止フィルム22、この飛散防止フィルム22に剥離フィルム11を加えたものを飛散防止フィルム体42とそれぞれいう。また、飛散防止フィルム体42にキャリアフィルムを加えた図1(e)に示すフィルムをキャリアフィルム体43、キャリアフィルム体43から剥離フィルム11を剥がしたものにカバーガラス17を貼り合わせた図1(f)に示すフィルムをガラス付飛散防止フィルム体という。
【0022】
上述したように、本発明の一態様によれば、ハードコート層を半硬化状態で抜き加工するので、抜き加工時、柔軟性や靭性をカバーでき、ハードコート層の抜き加工性が向上し、ハードコート層の割れの発生を有効に抑制できる。また、抜き加工を行ってからアフタキュアするので、加工性を考慮することなくハードコート層の硬さを容易に鉛筆硬度の硬さ2H以上または3H以上とすることができる。
【0023】
また、本発明の一態様によれば、ガラスを貼り付けるまでは剥離フィルムが飛散防止フィルムのキャリアとなり、ガラスを付けた後はキャリアフィルムがガラス付飛散防止フィルムのキャリアとなるので、ロールツウロールによる製造が可能となる。このため枚葉処理と異なり、量産が可能となる。
【0024】
以下、各フィルム材及び各工程について順に説明する。
【0025】
剥離フィルム11は機械的強度を保つためのフィルムであって、後に剥離除去されるものであるから、材料は特に限定されず、また透明度も要求されない。したがって、剥離フ
ィルム3としては、市販の種々のプラスチックシート、フィルムが使用できるが、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
【0026】
光学用透明粘着層14は、ゲル状で透明性を有するものであれば特に限定されず、例えばアクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを用いることができる。この中でも、粘着力や剪断貯蔵弾性率の制御の容易さからアクリル系粘着剤が特に好ましい。光学用透明粘着層14の厚さは、例えば10μm以上50μm以下となることが好ましい。
【0027】
基材フィルム15としては、種々の透明なプラスチックシート、フィルムが使用できる。基材フィルムの具体例としては、例えば光学用のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などが挙げられる。これらの中でも、安価で物性に優れることからPETが好ましい。基材フィルムの厚さは、例えば50μm以上125μm以下とすることができる。
【0028】
半硬化状態のハードコート層12は液状硬化性樹脂組成物から形成する。この液状硬化性樹脂組成物はハードコート剤からなる塗布液である。ハードコート剤には、透明のシリコーン系、メラミン系などの熱硬化型のハードコート剤、あるいはアクリル系の感光型のハードコート剤が用いられる。感光型ハードコート剤は、紫外線などの光を照射することによって、直ちに硬化して硬い皮膜を形成するために、加工処理のスピードが速く、また、耐擦傷性などに優れた性能を持ち、コスト的に安価になるので、特に好ましい。ハードコート用塗布液は、硬化性樹脂組成物からなるハードコート剤を溶媒で希釈した溶液である。塗布条件は従来公知の条件で行われる。塗布により形成される塗膜は、必要に応じて乾燥させた後、熱または紫外線を照射して半硬化状態にする。半硬化状態のハードコート層12は、好ましくは30%以上60%以下に硬化しているのがよい。30%未満だと液体に近くなってカットすることが出来なくなり、60%を超えると硬度が高くなってカットできないからである。
【0029】
抜き加工は、剥離フィルム11を残して、光学用透明粘着層14、基材フィルム15、及び半硬化状態のハードコート層12を所定パターンに打ち抜くハーフ抜き加工である。所定パターンは、例えば被着体となる枚葉のカバーガラス17の形状と合致する形状とする。ハーフ抜き加工した前記抜き加工された半硬化状態のハードコート層12Aは、さらに熱または紫外線を照射して硬化させる。このとき100%に硬化させることが好ましい。この硬化により成形されるハードコート層13は、鉛筆硬度が2H以上好ましくは3H以上であることが必要である。また、ハードコート層13の厚さは、例えば6μm以上15μm以下とすることができる。
【0030】
キャリアフィルム26は、剥離フィルム11と同様に、市販の種々のプラスチックシート、フィルムでよいが、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
【0031】
(製造装置)
本実施の形態の製造ラインを図4、図5を用いて説明する。この製造ラインは、図4に示す前半部分の飛散防止フィルム製造ラインと、図5に示す後半部分の飛散防止フィルム付カバーガラス製造ラインとから構成される。ここで取り扱う剥離フィルム11は、四角いシート状ではなく、ロール状に巻回した長尺状のフィルムである。前半部のラインと後半部のラインとは連続して設けるようにしても、不連続に設けるようにしても良い。本実施の形態では不連続の場合を例示する。
【0032】
図4に示す飛散防止フィルム製造ラインでは、その製造ラインの始点に加工前フィルム40をロール状に巻装したドラム10を配置する。製造ラインの上流側から下流側に向かって、まず加工前フィルム40を繰り出す複数のローラ25を配設する。つぎに前記ローラ25の下流側に、加工前フィルム40の最下層の剥離フィルム11を残して、光学用透明粘着層14、基材フィルム15、及びハードコート層12を所定パターンに打ち抜く単発プレス機23を配設する。ここでは、単発プレス機23として1往復で単発(1回)の加圧成形を行う単発のプレス機が採用される。所定パターンは、後述する枚葉のカバーガラスの形状に合わせたパターンとなる。さらに単発プレス機23のカッタ8により所定パターンに打ち抜かれた最上層の抜き加工された半硬化状態のハードコート層12Aに紫外線を照射する紫外線照射装置24を配設する。この紫外線照射装置24により抜き加工された半硬化状態のハードコート層12Aは高い鉛筆硬度を有する所定パターンのハードコート層13となる。紫外線を照射するとき、光学用透明粘着層14が一緒に硬化しないように、光学用透明粘着剤は熱硬化型とすることが好ましい。
【0033】
単発プレス機23における抜き加工速度と紫外線照射装置24における硬化速度とは異なり、硬化速度の方が抜き加工速度よりも遅い。このため、図示例では、単発プレス機23と紫外線照射装置24との間に、搬送速度を低下させるループ形成部18を設けてある。ループ形成部18は、紫外線照射装置24へ送る加工前フィルム40の搬送速度をダウン制御する。
【0034】
紫外線照射装置24の下流側に複数のローラ25を配設し、この複数のローラ25の下流側となるラインの終点に所定パターンの飛散防止フィルム22を形成したテープ状の飛散防止フィルム体(中間品)42をロール状に巻き取るドラム19を配置する。
【0035】
図5に示すガラス付飛散防止シート製造ラインでは、その製造ラインの始点に、キャリアフィルム体43をロール状に巻装したドラム19を配置する。このキャリアフィルム体43は、前述したラインで製造した飛散防止フィルム体42のハードコート層13にキャリアフィルム26を貼り付けたものである。製造ラインの上流側から下流側に向かって、まずキャリアフィルム体43を繰り出す複数のローラ25を配設する。次にキャリアフィルム体43の剥離フィルム11を剥離しつつ、飛散防止フィルム22にカバーガラス17を加熱圧着して貼り合わせるラミネート加工機27を配置する。
【0036】
さらに前記ラミネート加工機27の下流側に、カバーガラス17を貼り合わせたことにより重量の増したガラス付飛散防止フィルム体44を支持するガイド28を配置する。そして、ガラス付飛散防止フィルム体44を、カバーガラス17単位の大きさにシート状にカットする裁断機29を配設し、この裁断機29の下流側となるラインの終点にがガラス付飛散防止シート(製品)45を収納する収納箱30を配置する。
【0037】
(製造方法)
図4及び図5に、図1を加えて説明する。ドラム10からラインに送出されるフィルムは、最上層に半硬化状態のハードコート層12を有する加工前フィルム40である(図1(a)、(b))。この半硬化状態のハードコート層12は、前述したようにハードコート用塗布液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を半硬化させたものである。ハードコート用塗布液は、例えば、紫外線硬化型樹脂に、レベリング剤を加え、メチルエーテルで希釈したものである。半硬化状態のハードコート層12の硬化度は30%以上60%以下である。30%未満であると軟らか過ぎて抜き加工が困難となり、60%を超えると硬度が2H以上となり、抜き加工が困難になり割れの発生を抑制できない。
【0038】
半硬化状態のハードコート層12が形成された加工前フィルム40は、単発プレス機23において、剥離フィルム11を残して半硬化状態のハードコート層12、基材フィルム
15、光学用透明粘着層14が、カバーガラス面の形状に合わせて打ち抜かれる(図1(c)の符号12A)。すなわち、ゲル状の光学用透明粘着層14、基材フィルム15、及び半硬化状態のハードコート層12がまとめて抜き加工される。抜き加工時、光学用透明粘着層14は浮き上がりの問題があるが、これは光学用透明粘着層14の厚さを規定することにより解消できる。また、基材フィルム15はハードコート層13よりも硬度が低いため抜き加工上の問題はない。そして、半硬化状態のハードコート層12Aは硬度が低いため容易に抜き加工できる。したがって、光学用透明粘着層14、基材フィルム15、半硬化状態にあるハードコート層12をまとめて抜き加工しても問題はない。この抜き加工により、剥離フィルム11上に加工フィルム21を多数個取りできるようになる。
【0039】
抜き加工した後に、紫外線照射装置24において抜き加工された半硬化状態のハードコート層12Aに紫外線を照射してアフタキュアすると、抜き加工された半硬化状態のハードコート層12Aは100%硬化したハードコート層13となる。これにより、高い鉛筆硬度2H以上を有するハードコート層13を有する飛散防止フィルム体42が形成される(図1(d))。
【0040】
このようにハードコート層13については、抜き加工を行ってからアフタキュアをしており、抜き加工時は半硬化状態なので、ハードコート層の柔軟性や靭性をカバーでき、ハードコート層の抜き加工性が良好となり、ハードコート層13の割れの発生を有効に抑制できる。
【0041】
アフタキュアして得られた上述の飛散防止フィルム体42は、図5に示す後半の製造ラインへ送る前に、そのハードコート層13上に、キャリアフィルム26を貼り合わせてキャリアフィルム体を得ておく(図1(e))。ここで、剥離フィルム11に加えてキャリアフィルム26を飛散防止フィルム22に貼り合わせる理由は、次工程以後、剥離フィルム11に代わってキャリアフィルム26を、飛散防止フィルム22を担うキャリアとするためである。これにより、本ラインでもロールツウロールを実行できる。得られたキャリアフィルム体43をドラム19にロール状に巻き取った形で図5に示すライン上に供給する。
【0042】
ライン供給後、キャリアフィルム体43から剥離フィルム11を剥離しつつ、前記剥離フィルム11の剥離により露出した光学用透明粘着層14を介してカバーガラス17を飛散防止フィルム22に貼り付ける(図1(f))。ガラス付飛散防止フィルム体44は、裁断機29においてシート状にカットされた後、ガラス付飛散防止シート45として収納箱30に収納される。収納箱30に収納されたキャリアフィルム26の付いたガラス付飛散防止シート45はキャリアフィルム26を剥がされて飛散防止フィルム付カバーガラス製品となる。これにより、ハードコート層割れの少ない飛散防止フィルム付カバーガラスが得られる。
【0043】
(実施の形態の効果)
本実施の形態の飛散防止フィルムの製造方法によれば、ハードコート層13をプレキュアして硬化させてから抜き加工を行うのではなく、抜き加工を行ってからアフタキュアして硬化させるようにしているので、抜き加工時、ハードコート層の柔軟性や靭性の不足をカバーでき、ハードコート層抜き加工面にエッジが出たり、ハードコート層の抜き加工面近くに割れが入ったりするといった不具合の発生を抑制でき、抜き加工性を大幅に向上できる。しかも100%硬化のアフタキュアによりハードコート層13の鉛筆硬度を2H以上、または3h以上に維持できる。
【0044】
また、本実施の形態では、飛散防止フィルム体42を得た後、その剥離フィルム11とは反対のハードコート層13の表面にキャリアフィルム26を貼り付けるようにしたので
、カバーガラス17を貼り合わせるために剥離フィルム11を剥離しても、キャリアフィルム26が飛散防止フィルム22のキャリアとして存在する。したがって、キャリアフィルム体43が連続供給できるロール状であれば、各工程を連続的に処理することができる。ここで、各工程として少なくとも前記抜き加工工程、前記アフタキュア工程、前記貼付工程、及び前記カット工程が連続的に実行されるのがよい。連続処理は、枚葉処理またはバッチ処理と比べて、飛散防止フィルム付カバーガラスを高速、大量処理することができる。飛散防止フィルム22上に貼り付けるカバーガラス17は、後にカットする大判のガラスではなく、既にカットされた枚葉ガラスであるため、製造当初からロール状ではなくシート単位で飛散防止フィルム付カバーガラスを製造するのが通常であるが、ロール状の加工前フィルム40を繰り出しながら連続して上記工程を実行すると、生産効率を大幅に向上できる。
【0045】
本発明は以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0046】
例えば、実施の形態のように、供給フィルムであるキャリアフィルム体43が連続供給できるロール状のフィルムであれば連続貼付けが可能となるが、キャリアフィルム体43が一枚一枚の飛散防止フィルムを形成した枚葉シート状であれば枚葉貼付けが可能となる。更に、複数の飛散防止フィルムを形成したフィルム状であればバッジ貼付けが可能となる。枚葉貼り付けないしバッチ貼り付けでは、図4において、ループ形成部18を廃止し、単発プレス機23で抜き加工して形成したハーフ抜き加工フィルム体41を、ここで一旦ロール状に巻き取る。そして、巻き取ったハーフ抜き加工フィルム体41を、あらためて紫外線照射装置24に送り、抜き加工された半硬化状態のハードコート層12Aを硬化させた後、紫外線照射装置24の下流側に裁断機を設けて、この裁断機でシート状にカットする。
【0047】
また、図5において、ラミネート加工機27と裁断機29との速度の相違を解消する必要がある場合は、ラミネート加工機27と裁断機29との間にループ形成部を設けてガラス付飛散防止フィルム体44の搬送速度の調整を行うようにしてもよい。
【0048】
また、上述した第1の実施の形態では、プレス機を、1往復で単発(1回)の加圧成形を行う単発プレス機23としたが、これに代えて1回転で多発(複数回)の加圧成形を連続して行うロータリプレス機とすることも可能である。ロータリプレス機を用いると、単発プレス機と比べて、抜き加工時、抜き加工面にエッジが出たり、抜き加工面近くに割れが入ったりするといった不具合の発生を一層抑制でき、抜き加工性をより大幅に向上できる。
【0049】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、ハードコート層のキュア前抜き加工技術をタッチパネル用印刷フィルムに適用したものである。すなわち、第1の実施の形態では、キュア前抜き加工技術の対象となるフィルムをハードコート層付の飛散防止フィルム22としたが、本実施の形態では、ハードコート層付のタッチパネル用印刷フィルム22Aとしている。このタッチパネル用印刷フィルムは、図2に示すように、基材フィルム15の一面にハードコート層12が形成され、他面に枠状の印刷層9が形成され、この印刷層9を覆うようにさらに光学用透明粘着層14が形成されたものである(図2(a)、(b))。この場合において、基材フィルムの厚さは38μm以上250μm以下、光学用透明粘着層の厚さは25μm以上175μm以下が好ましい。その他の点は、第1の実施の形態と同じである。このようなタッチパネル用印刷フィルムにも、そのハードコート層にアフタキュア技術を適用可能である。これによれば、タッチパネル用印刷フィルム22Aにおいても、それに抜き加工を行ってからハードコート層13をアフタキュアすると、半硬化状態のハードコート
層12の抜き加工時、半硬化状態のハードコート層12の柔軟性や靭性をカバーできるので、半硬化状態のハードコート層12の抜き加工性が向上し、ハードコート層13の割れの発生を有効に抑制できる。
【0050】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、ハードコート層のキュア前抜き加工技術を変形タッチパネル用印刷フィルム22Bに適用したものである。すなわち、図3に示すように、変形タッチパネル用印刷フィルム22Bは、図2に示す第2の実施の形態において、光学用透明粘着層14を形成していないものをいう。この場合、変形タッチパネル用印刷フィルム22B側に粘着層が無いので、変形タッチパネル用印刷フィルム22Bを担持するキャリアは、粘着層を有さない剥離フィルム11に代えて粘着層を有する微粘着フィルム11Bとする必要がある(図1(b)〜図1(e))。微粘着フィルム11Bの厚さは50μm以上100μm以下である。その他の点は、第1の実施の形態と同じである。このような変形タッチパネル用印刷フィルム22Bにも、そのハードコート層13にキュア前抜き加工技術を適用可能である。これによれば、変形タッチパネル用印刷フィルム22Bにおいても、それに抜き加工を行ってからハードコート層13をアフタキュアすると、抜き加工時、半硬化状態のハードコート層12の柔軟性や靭性をカバーできるので、半硬化状態のハードコート層12の抜き加工性が向上し、ハードコート層13の割れの発生を有効に抑制できる。
【0051】
図6は、本発明の実施の形態により得られた飛散防止フィルム22またはタッチパネル用印刷フィルム22A、22Bのタッチパネル31または液晶表示パネル32、さらには多機能端末への適用例を示す。図6(a)及び図6(b)にそれぞれ示すように、上述した飛散防止フィルム付カバーガラス及びタッチパネル用印刷フィルムの製造方法で得られたフィルム付カバーガラスをタッチパネル(センサガラス)31に貼り付けると、ハードコート層割れの少ない飛散防止フィルムないしハードコート層を有する印刷フィルム付タッチパネルが得られる。これをさらに液晶表示(LCD)パネル32に貼り付けると、ハードコート層割れの少ない飛散防止フィルムないし印刷フィルム付液晶パネルが得られる。そして、これを多機能形態端末に取り付けると、ハードコート層割れの少ない飛散防止フィルムないし印刷フィルム付多機能端末が得られる。
【0052】
[付記]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0053】
本発明の一態様によれば、飛散防止フィルムの製造方法で得られた飛散防止フィルムから剥離フィルムを剥離する工程と、
前記剥離フィルムの剥離された前記飛散防止フィルムに、前記剥離フィルムの剥離により露出した前記光学用透明粘着層を介して前記カバーガラスを貼り付ける工程と
を含む飛散防止フィルム付カバーガラスの製造方法が提供される。
【0054】
また、本発明の他の態様によれば、上述した飛散防止フィルム付カバーガラスの製造方法で得られた飛散防止フィルム付カバーガラスをタッチパネルに貼り付けた飛散防止フィルム付タッチパネルが提供される。
【0055】
また、本発明の別な態様によれば、上述した飛散防止フィルム付カバーガラスの製造方法で得られた飛散防止フィルム付カバーガラスを液晶パネルに貼り付けた飛散防止フィルム付液晶パネルが提供される。
【0056】
また、本発明のさらに別な態様によれば、フィルムを前記飛散防止フィルムに代えてタッチパネル印刷フィルムとすることにより、タッチパネル用印刷フィルム付カバーガラスの製造方法、タッチパネル用印刷フィルム付タッチパネル、タッチパネル印刷フィルム付
液晶パネルがそれぞれ提供される。
【符号の説明】
【0057】
11 剥離フィルム
12 半硬化状態のハードコート層
12A 抜き加工された半硬化状態のハードコート層
13 ハードコート層
14 光学用透明粘着層
15 基材フィルム
16 ハードコートフィルム
17 カバーガラス
18 ループ形成部
22 飛散防止フィルム
22A タッチパネル用印刷フィルム
22B 変形タッチパネル用印刷フィルム
23 単発プレス機
24 紫外線照射装置
26 キャリアフィルム
28 ガイド
31 タッチパネル
32 液晶表示(LCD)パネル
40 加工前フィルム
41 ハーフ抜き加工フィルム
42 飛散防止フィルム体
43 キャリアフィルム体
44 ガラス付飛散防止フィルム体
45 ガラス付飛散防止シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス面に貼り付けられるハードコート層付フィルムの製造方法であって、
一面に光学用透明粘着層を介して剥離フィルムを貼り付けた基材フィルムの他面に半硬化状態のハードコート層を形成する工程と、
前記光学用透明粘着層、前記基材フィルム及び前記半硬化状態のハードコート層を、前記剥離フィルムを残して前記ガラス面の形状に合わせて抜き加工する工程と、
抜き加工した後に、前記半硬化状態のハードコート層を硬化させて鉛筆硬度が2H以上となるようにアフタキュアする工程と
を含むハードコート層付フィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のハードコート層付フィルムの製造方法において、
前記ハードコート層を形成する工程では、該ハードコート層を30%以上60%以下の半硬化状態にさせるハードコート層付フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のハードコート層付フィルムの製造方法において、
前記アフタキュアする工程では、前記ハードコート層を100%に硬化させるハードコート層付フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ハードコート層付フィルムが飛散防止フィルムである請求項1に記載のハードコート層付フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ハードコート層付フィルムが、
基材フィルムの一面に枠状の印刷層、該印刷層を覆う前記光学用透明粘着層、該光学用透明粘着層を介して貼り付けられる前記剥離フィルム、及び前記基材フィルムの他面に前記ハードコート層を有するタッチパネル用印刷フィルムである
請求項1に記載のハードコート層付フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ハードコート層付フィルムが、
基材フィルムの一面に枠状の印刷層、該印刷層に貼り付けられる前記剥離フィルムとしての微粘着フィルム、及び前記基材フィルムの他面に前記ハードコート層を有するタッチパネル用印刷フィルムである請求項1に記載のハードコート層付フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のハードコート層付フィルムの製造方法で得られたハードコート層付フィルムから剥離フィルムを剥離する工程と、
前記剥離フィルムの剥離された前記ハードコート層付フィルムに、前記剥離フィルムの剥離により露出した前記光学用透明粘着層を介して前記ガラスを貼り付ける工程と
を含むガラス付フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のハードコート層付フィルムの製造方法で得られたハードコート層付フィルムの前記ハードコート層に剥離可能なキャリアフィルムを貼り合わせる工程と、
前記キャリアフィルムを貼り合わせた前記ハードコート層付フィルムから前記剥離フィルムを剥離する工程と、
前記剥離フィルムの剥離された前記ハードコート層付フィルムに、前記剥離フィルムの剥離により露出した前記光学用透明粘着層を介して前記ガラスを貼り合わせる工程と
を含むガラス付フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111949(P2013−111949A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262713(P2011−262713)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(511291049)
【Fターム(参考)】