説明

ハードディスクドライブ装置

【課題】 単一の装置でありながら、安全性の高い自動バックアップ機能を有し、過去の履歴を逐次保存するのにも適した装置を提供する。
【解決手段】 ユニット100内には、3.5インチドライブ規格の接続端子120と、2.5インチドライブ130と、コントローラ140と、が設けられ、ユニット200内には、不揮発性メモリ230が設けられる。ユニット100,200は着脱自在であり、両者を接合した場合、装置の外形は3.5インチドライブの規格を満たす。コントローラ140は、通常モードでは、ドライブ130とメモリ230とをミラーリングして使用し、ドライブ130内のデータはメモリ230内に自動バックアップされる。復元モードでは、メモリ230内のデータをドライブ130内にコピーする処理が行われる。ユニット200を複数組用意しておき、定期的に交換して保存することによって、過去のデータ履歴を逐次保存することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ装置に関し、特に、自動バックアップ機能を備えたハードディスクドライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ装置は、磁性体を塗布した円盤と磁気ヘッドとを用いた典型的な磁気記録装置であり、パソコンやビデオレコーダなど、様々な電子機器用の記憶装置として広く利用されている。このハードディスクドライブ装置は、比較的高速にランダムアクセスが可能であり、また、大容量化にも適しているため、多くの電子機器にデータ記憶装置として組み込まれている。このため、その仕様も標準化されており、たとえば、寸法規格としては、5インチ、3.5インチ、2.5インチ等の標準規格が定められており、同一の寸法規格の製品であれば、供給元にかかわらず、互換性を有している。
【0003】
一般に、ハードディスクドライブ装置の寿命は、毎日8時間使用した場合に、3年〜5年とされている。また、衝撃などを加えると、データの読み書きが不能になる場合もある。このため、ハードディスクドライブ装置に記録したデータについては、バックアップを行うことが不可欠である。このような事情から、ハードディスクドライブ装置内のデータファイルを、定期的に、テープストリーマーに書き出してバックアップを行ったり、別なハードディスクドライブ装置にそっくりコピーしたり、光学的記録媒体にバックアップをとったりする作業を行うのが一般的である。
【0004】
また、サーバやデスクトップパソコンなどでは、一般にRAIDシステムと呼ばれている冗長性を付加した自動バックアップ機能を備えた装置の利用も普及している。下記の特許文献1には、このようなRAIDシステム等において、複数のドライブ装置のうちの特定のドライブ装置のみを選択的に稼働させることにより、消費電力を低減させる技術が開示されている。一方、ノート型パソコンなど、物理的な容量制限からRAIDシステムを用いることが困難な場合には、ソフトウエアによるミラーリングの技術も普及している。たとえば、下記の特許文献2,3には、ハードディスクドライブ装置の記録領域を、ソフトウエアによって複数の領域に分割して取り扱うようにし、単一のドライブ装置でありながら、データの自動バックアップを実現する手法が開示されている。また、下記の特許文献4には、障害発生時に、バックアップされていたデータを復元するための方法が開示されている。更に、下記の特許文献5には、LAN経由で、サーバ装置に対してバックアップを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−032198号公報
【特許文献2】特開2004−213365号公報
【特許文献3】特開2007−025892号公報
【特許文献4】特開2004−038931号公報
【特許文献5】特開2004−021634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハードディスクドライブ装置に自動バックアップ機能をもたせる方法には、上述したように、ハードウエア的な手法とソフトウエア的な手法が存在する。ここで、ソフトウエア的な手法を採れば、単一のハードディスクドライブ装置のみを用いて自動バックアップを実現することが可能であるが、当該単一のハードディスクドライブ装置に障害が生じ、ミラーリング保存していた複数のデータのいずれにもアクセスできない状態になると、データが失われてしまう危険性がある。
【0007】
したがって、安全性の観点からは、ハードウエア的な手法によるバックアップの方が優れている。しかしながら、ハードウエア的な従来の手法を採ると、バックアップの対象となるハードディスクドライブ装置の他に、別個の記憶装置を用意する必要があり、余分な設置スペースが必要になるという問題が生じる。たとえば、一般的なRAIDシステムによってミラーリングを行う場合、バックアップ対象となるハードディスクドライブ装置と同じ容量のドライブ装置がもう一台必要になる。また、LAN経由でサーバ装置にバックアップをとる場合は、当然ながら、当該サーバ装置が不可欠である。
【0008】
また、バックアップデータとして、過去の履歴を逐次保存しておく運用をとる場合、現時点で利用しているハードディスクドライブ装置の設置スペースのみならず、過去の履歴を保持している記憶装置の収納スペースも必要になり、また、履歴を保存するための作業も必要になるという問題も生じる。たとえば、月末ごとに、格納されているデータファイルのバックアップをとる作業を行えば、4月末時点のデータファイル、5月末時点のデータファイル、6月末時点のデータファイル、というように、データファイルの状態を月ごとの履歴として逐次保存してゆくことが可能になり、必要があれば、過去の特定の月末時点のデータファイルを復元することが可能になる。ところが、従来装置を用いてこのような運用を採るためには、月末ごとに、特別な履歴保存作業が必要になり、また、これら履歴を保存した記憶装置を収納するスペースも必要になる。
【0009】
本発明の第1の目的は、単一の装置でありながら、安全性の高いバックアップを自動的に行うことが可能なハードディスクドライブ装置を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、単純な作業により、過去の履歴を逐次保存しておくことが可能であり、かつ、履歴保存のために必要な収納スペースをできるだけ低減することが可能なハードディスクドライブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、磁気記録装置を内蔵した磁気記録ユニットと、不揮発性メモリを内蔵したメモリユニットと、を有するハードディスクドライブ装置において、
磁気記録ユニット用の筐体と、メモリユニット用の筐体とを、着脱手段によって、互いに結合したり分離したりすることができるように構成し、両者を結合して得られる合成筐体が、ハードディスクドライブ装置に関する第1の寸法規格に合致するようにし、
磁気記録ユニット用の筐体もしくはメモリユニット用の筐体には、第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子を設け、
磁気記録装置を、第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置であって、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子を備える装置によって構成し、
磁気記録ユニットもしくはメモリユニットには、コントローラを設け、
少なくとも磁気記録ユニット用の筐体とメモリユニット用の筐体とが結合された状態において、コントローラが、第1の外部接続用端子と第2の外部接続用端子と不揮発性メモリとに直接もしくは間接的に接続されるように、必要な配線を施し、
コントローラが、
ユーザの設定操作に基づいて、通常モードか復元モードかのいずれか一方のモードを設定するモード設定手段と、
通常モードが設定された状態で、外部装置から第1の外部接続用端子を介してファイル書込コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して、書込対象となる同一のデータファイルを書き込む処理を行う書込処理手段と、
通常モードが設定された状態で、外部装置から第1の外部接続用端子を介してファイル削除コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して、削除対象となる同一のデータファイルを削除する処理を行う削除処理手段と、
通常モードが設定された状態で、外部装置から第1の外部接続用端子を介してファイル読出コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置および不揮発性メモリの少なくとも一方から、読出対象となるデータファイルを読み出す処理を行う読出処理手段と、
通常モードが設定された状態で、所定の同期開始条件の成立を検知した場合に、磁気記録装置に格納されているデータファイルと不揮発性メモリに格納されているデータファイルとが一致するように不揮発性メモリを書き換える同期処理を行う同期処理手段と、
復元モードが設定された状態で、所定の復元開始条件の成立を検知した場合に、磁気記録装置に格納されているデータファイルと不揮発性メモリに格納されているデータファイルとが一致するように磁気記録装置を書き換える復元処理を行う復元処理手段と、
を有するようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
コントローラが磁気記録ユニット内に設けられ、第1の外部接続用端子が磁気記録ユニット用の筐体に備わっているようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
少なくとも磁気記録ユニット用の筐体とメモリユニット用の筐体とが結合された状態において、外部装置から第1の外部接続用端子に対して与えられた電源が、磁気記録装置とコントローラと不揮発性メモリとに供給されるように、必要な配線を施すようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1または第2の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
磁気記録ユニットもしくはメモリユニットに、電池もしくはバッテリを組み込むようにし、少なくとも磁気記録ユニット用の筐体とメモリユニット用の筐体とが結合された状態において、電池もしくはバッテリからの電力が、磁気記録装置とコントローラと不揮発性メモリとに供給されるように、必要な配線を施すようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1〜第4の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
磁気記録ユニット用の筐体とメモリユニット用の筐体とに、それぞれ中継端子を設け、両筐体を結合したときに、中継端子を介して、磁気記録ユニット側の配線とメモリユニット側の配線とが接続されるようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係るハードディスクドライブ装置を、
1台の磁気記録ユニットと、当該磁気記録ユニットに対して結合可能な複数台のメモリユニットとによって構成し、複数台のメモリユニットのいずれか1つを選択的に1台の磁気記録ユニットに結合して利用できるようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、第1の寸法規格に合致した筐体内に、磁気記録装置と、不揮発性メモリと、コントローラと、を備えたハードディスクドライブ装置において、
装置筐体には、第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子を設け、
磁気記録装置を、第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置であって、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子を備える装置によって構成し、
不揮発性メモリを、筐体に設けられたメモリソケットを利用して抜き差し可能なカード型メモリによって構成し、
コントローラが、第1の外部接続用端子と第2の外部接続用端子と不揮発性メモリとに直接もしくは間接的に接続されるようにし、
更に、このコントローラが、
ユーザの設定操作に基づいて、通常モードか復元モードかのいずれか一方のモードを設定するモード設定手段と、
通常モードが設定された状態で、外部装置から第1の外部接続用端子を介してファイル書込コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して、書込対象となる同一のデータファイルを書き込む処理を行う書込処理手段と、
通常モードが設定された状態で、外部装置から第1の外部接続用端子を介してファイル削除コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して、削除対象となる同一のデータファイルを削除する処理を行う削除処理手段と、
通常モードが設定された状態で、外部装置から第1の外部接続用端子を介してファイル読出コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置および不揮発性メモリの少なくとも一方から、読出対象となるデータファイルを読み出す処理を行う読出処理手段と、
通常モードが設定された状態で、所定の同期開始条件の成立を検知した場合に、磁気記録装置に格納されているデータファイルと不揮発性メモリに格納されているデータファイルとが一致するように不揮発性メモリを書き換える同期処理を行う同期処理手段と、
復元モードが設定された状態で、所定の復元開始条件の成立を検知した場合に、磁気記録装置に格納されているデータファイルと不揮発性メモリに格納されているデータファイルとが一致するように磁気記録装置を書き換える復元処理を行う復元処理手段と、
を有するようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
不揮発性メモリとして、複数N枚のカード型メモリを設け、このN枚のカード型メモリに対応して、N個のLEDを設け、
コントローラが、N枚のカード型メモリのそれぞれについて、格納されているデータの有無を、対応するLEDの点灯/消灯によって報知する機能を有するようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第7または第8の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
装置筐体内に電池もしくはバッテリを組み込み、電池もしくはバッテリからの電力が、磁気記録装置とコントローラと不揮発性メモリとに供給されるようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第9の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
モード設定手段が、ユーザの物理的な操作によって2通りの切替状態のいずれかを維持することができる機械式切替スイッチによって構成されており、当該切替スイッチの第1の切替状態によって通常モード、第2の切替状態によって復元モードの設定がなされるようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第9の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
モード設定手段が、少なくとも1ビットの情報を記録する不揮発性のビット記憶部と、外部装置から第1の外部接続用端子を介して与えられるモード設定コマンドによって当該1ビットの情報を書き換えるビット設定部と、によって構成されており、当該1ビットの情報が第1の論理状態であるときに通常モード、第2の論理状態であるときに復元モードの設定がなされるようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第1〜第11の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
コントローラにバッファメモリを設け、
書込処理手段が、外部装置から与えられた書込対象となるデータを、このバッファメモリに一時的に格納した上で、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して書き込む処理を行うようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第1〜第12の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
同期処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、同期処理もしくは復元処理を行う際に、磁気記録装置に格納されているデータファイルと不揮発性メモリに格納されているデータファイルとの整合性を調べ、不一致が生じたデータファイルについてのみ書き換えを行うようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第1〜第13の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
ユーザのリセット操作によりコントローラにリセット信号を送信するリセットスイッチを更に設け、
同期処理手段が、このリセット信号が送信されることを同期開始条件として、同期処理を行うようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第1〜第13の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
同期処理手段が、外部装置から第1の外部接続用端子を介して同期開始コマンドが与えられることを同期開始条件として、同期処理を行うようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第1〜第13の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
ユーザのリセット操作によりコントローラにリセット信号を送信するリセットスイッチを更に設け、
復元処理手段が、このリセット信号が送信されることを復元開始条件として、復元処理を行うようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第1〜第13の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
復元処理手段が、外部装置から第1の外部接続用端子を介して復元開始コマンドが与えられることを復元開始条件として、復元処理を行うようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第1〜第17の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
書込処理手段および同期処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリへの書き込みを行う際に、書込対象となるデータファイルを圧縮してから書き込む処理を行い、
読出処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリからの読み出しを行う際に、読み出したデータファイルを伸張する処理を行うようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第1〜第18の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
書込処理手段および同期処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリへの書き込みを行う際に、書込対象となるデータファイルを暗号化してから書き込む処理を行い、
読出処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリからの読み出しを行う際に、読み出したデータファイルを復号化する処理を行うようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第19の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
ユーザの設定操作により複数ビットの論理値を設定可能なDIPスイッチを更に設け、
書込処理手段および同期処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、DIPスイッチによって設定されている論理値を暗号キーとして用いた暗号化を行い、
読出処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、DIPスイッチによって設定されている論理値を暗号キーとして用いた復号化を行うようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第19の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
コントローラに、不揮発性メモリ内の管理領域に所定の暗号キーを書き込む機能と、外部装置から第1の外部接続用端子を介して、所定のパスワードについての認証コマンドが与えられたときに、当該パスワードが正しいか否かを判定する機能と、当該パスワードが正しいと判断された場合に、不揮発性メモリから暗号キーを読み出す機能と、を設け、
書込処理手段および同期処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリから読み出された暗号キーを用いた暗号化を行い、
読出処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリから読み出された暗号キーを用いた復号化を行うようにしたものである。
【0031】
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第1〜第21の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
復元処理手段が、復元処理を行うたびに、不揮発性メモリ内の管理領域に復元処理の累積実行回数を書き込む処理を行い、累積実行回数が所定の上限回数に達していた場合には、復元処理を行わないようにしたものである。
【0032】
(23) 本発明の第23の態様は、上述した第1〜第22の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
復元処理手段が、復元処理を行う前に、不揮発性メモリ内の管理領域に書き込まれている復元可能期間を示す情報を読み出してチェックし、当該復元可能期間内の時点にのみ、復元処理を行うようにしたものである。
【0033】
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第1〜第23の態様に係るハードディスクドライブ装置において、
コントローラに、
通常モードが設定されており、外部装置から第1の外部接続用端子を介して初期化コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して、初期化処理を行う初期化処理手段を更に設けたものである。
【0034】
(25) 本発明の第25の態様は、磁気記録装置と、着脱可能な不揮発性メモリと、コントローラと、を有するハードディスクドライブ装置において、
少なくとも、不揮発性メモリを装着した状態において、ハードディスクドライブ装置に関する第1の寸法規格に合致する装置筐体を構成する外形をなすようにし、装置筐体には、第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子を設け、
磁気記録装置を、第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置であって、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子を備える装置によって構成し、
コントローラが、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して、同一のデータファイルを書き込む処理および削除する処理と、磁気記録装置および不揮発性メモリの少なくとも一方から所定のデータファイルを読み出す処理と、磁気記録装置に格納されているデータファイルを不揮発性メモリにコピーする処理と、不揮発性メモリに格納されているデータファイルを磁気記録装置にコピーする処理と、を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るハードディスクドライブ装置によれば、第1の寸法規格に合致した筐体内に、第2の寸法規格に合致した磁気記録装置と不揮発性メモリとが組み込まれ、通常モードにおいて、コントローラによるミラーリング動作が実行される。これにより、磁気記録装置内のデータは常に不揮発性メモリ内にも格納される。このため、単一の装置でありながら、安全性の高いバックアップが自動的に行われることになり,トラブル発生時には、不揮発性メモリ内のデータを用いて、磁気記録装置内にデータ復元を行うことができる。また、不揮発性メモリの部分は必要に応じて簡単に取り外すことが可能なので、単純な作業により、過去の履歴を逐次保存しておくことが可能になる。ここで、不揮発性メモリは、比較的小型の記憶装置であるため、履歴保存のための収納スペースを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来から利用されている一般的なハードディスクドライブ装置(寸法規格が異なる2種類)を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るハードディスクドライブ装置の斜視図である(内部の構成要素の一部を破線で示す)。
【図3】図2に示すハードディスクドライブ装置を、2つのユニット100,200に分離した状態を示す斜視図である。
【図4】図2に示すハードディスクドライブ装置の基本構成を示すブロック図である。
【図5】図2に示すハードディスクドライブ装置を利用して、過去の履歴を逐次保存する運用を採る場合に必要なユニットを示すブロック図である。
【図6】図5に示すユニットを用いた4月中の運用状況を示すブロック図である。
【図7】図5に示すユニットを用いた4月末〜5月中の運用状況を示すブロック図である。
【図8】図5に示すユニットを用いて4月〜8月まで運用を行った場合の保管対象ユニットを示すブロック図である。
【図9】図5に示すユニットを用いた運用中に、過去の状態を復元する処理を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るハードディスクドライブ装置の斜視図である(内部の構成要素の一部を破線で示す)。
【図11】図10に示すメモリインターフェイス220(メモリソケット)および不揮発性メモリ230(カード型メモリ)の背面図である。
【図12】図10に示すハードディスクドライブ装置の基本構成を示すブロック図である。
【図13】本発明に係るハードディスクドライブ装置において、データ圧縮を行う変形例を示すブロック図である。
【図14】本発明に係るハードディスクドライブ装置において、データ暗号化を行う変形例を示すブロック図である。
【図15】データ暗号化に用いる暗号キーをDIPスイッチによって設定する変形例を示すブロック図である。
【図16】データ暗号化に用いる暗号キーを不揮発性メモリ内に格納する変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0038】
<<< §1.本発明の基本概念 >>>
既に述べたとおり、ハードディスクドライブ装置は、様々な電子機器に組み込まれる汎用性のある装置であり、現在、5インチ、3.5インチ、2.5インチ等の標準の寸法規格が定められている。
【0039】
図1に、従来から利用されている一般的なハードディスクドライブ装置を示す。ここで、上段に示す装置10は、第1の寸法規格に合致した装置であり、装置筐体11の側面に外部接続用端子12が設けられ、内部にはプラッタ13が組み込まれている。これに対して、下段に示す装置20は、第2の寸法規格に合致した装置であり、装置筐体21の側面に外部接続用端子22が設けられ、内部にはプラッタ23が組み込まれている。なお、各装置の内部には、この他、プラッタを回転させるスピンドルモータ、データの読み書きを行う磁気ヘッド、この磁気ヘッドを駆動する駆動モータ、これらの制御を行うコントローラなどが組み込まれているが、ここでは説明を省略する。
【0040】
ここでは、一例として、第1の寸法規格が、3.5インチハードディスクドライブの規格であり、第2の寸法規格が、2.5インチハードディスクドライブの規格であるものとする。現在、3.5インチ規格の装置は、デスクトップパソコンに広く利用されており、2.5インチ規格の装置は、ノート形パソコンに広く利用されている。3.5インチ規格の装置10の場合、直径3.5インチのプラッタ13が用いられ、装置筐体11の外形も所定の規格寸法が定められている。また、外部接続用端子12も、3.5インチ規格に合致したものとなっている。図には、外部接続用端子12として、信号用端子12Aと電源用端子12Bが設けられた例が示されている。一方、2.5インチ規格の装置20の場合、直径2.5インチのプラッタ23が用いられ、装置筐体21の外形も所定の規格寸法が定められている。また、外部接続用端子22も、2.5インチ規格に合致したものとなっている。図には、外部接続用端子22として、信号用端子22Aと電源用端子22Bが設けられた例が示されている。なお、本願の図に示す端子構成は、説明の便宜のためのものであり、正しい規格どおりのものではない。
【0041】
本発明の第1の着眼点は、第1の寸法規格に合致した装置10の筐体11内に、この第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置20を組み込むようにして、筐体11内に余分な収納スペースを確保し、当該余分な収納スペースに不揮発性メモリを組み込む、という点にある。そうすれば、外形は第1の寸法規格に合致した単一のハードディスクドライブ装置でありながら、内部には、ハードディスクドライブ装置(第2の寸法規格)と不揮発性メモリとの双方が組み込まれているため、双方に同一のデータを書き込むことにより、いわゆるミラーリングによる冗長保存が可能になる。すなわち、ハードディスクドライブ装置に格納されたデータファイルは、自動的に不揮発性メモリへバックアップされる。
【0042】
したがって、ここでは、第1の寸法規格として3.5インチの規格、第2の寸法規格として2.5インチの規格をそれぞれ選択した例を述べるが、本発明を実施する上では、第1の寸法規格よりも第2の寸法規格の方が小さい規格であれば、両規格として、どのような寸法規格の組み合わせを選択してもかまわない。
【0043】
一方、本発明の第2の着眼点は、バックアップデータが格納された不揮発性メモリを取り外し可能とする点にある。そうすれば、必要に応じて、不揮発性メモリの部分を交換することができ、単純な作業により、過去の履歴を逐次保存しておくことが可能になる。また、履歴保存のために必要な収納スペースは、ハードディスクドライブ装置全体ではなく、不揮発性メモリの部分だけで足りるため、収納スペースを大幅に削減することができる。
【0044】
<<< §2.第1の実施形態の構造 >>>
図2は、本発明の第1の実施形態に係るハードディスクドライブ装置30の斜視図である(内部の構成要素の一部を破線で示す)。図示のとおり、この装置30は、磁気記録ユニット100とメモリユニット200とによって構成されている。
【0045】
磁気記録ユニット100用の筐体110の側面には、第1の寸法規格(たとえば、3.5インチ規格)に合致した第1の外部接続用端子120が設けられている。この例の場合、第1の外部接続用端子120は、信号用端子120Aと電源用端子120Bとによって構成されている。また、筐体110の内部には、磁気記録装置130とコントローラ140とが内蔵されており、第1の外部接続用端子120の上方には、DIPスイッチ150が設けられている。ここで、磁気記録装置130は、第2の寸法規格(たとえば、2.5インチ規格)のハードディスクドライブ装置によって構成されており、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子132を備えている。別言すれば、図2に示す磁気記録装置130は、図1の下段に示すハードディスクドライブ装置20をそのまま利用したものである。
【0046】
一方、メモリユニット200用の筐体210内には、メモリインターフェイス220と不揮発性メモリ230とが内蔵されている。ここに示す例の場合、不揮発性メモリ230として、8枚のカード型メモリを用いており、メモリインターフェイス220は、これらカード型メモリを抜き差しするためのメモリソケットによって構成されている。カード型メモリとしては、たとえば、マイクロSDカード、ミニSDカードなどのSDメモリカードや、その他のカード型フラッシュメモリを用いればよい。
【0047】
ここに示す基本的実施形態の場合、不揮発性メモリ230の全記憶容量(たとえば、128GB)が、磁気記録装置130の全記憶容量(たとえば、120GB)以上となるように設定されており、磁気記録装置130に格納されている全データファイルを、不揮発性メモリ230へバックアップすることができる。
【0048】
このように、図2に示すハードディスクドライブ装置30は、磁気記録装置130を内蔵した磁気記録ユニット100と、不揮発性メモリ230を内蔵したメモリユニット200と、によって構成される装置であり、磁気記録ユニット100用の筐体110と、メモリユニット200用の筐体210とは、着脱手段(図2では、図示省略)によって、互いに結合したり分離したりすることができるように構成されている。しかも、両者を結合して得られる合成筐体が、ハードディスクドライブ装置に関する第1の寸法規格(ここに示す例の場合、3.5インチ規格)に合致するように設計されている。
【0049】
図3は、図2に示すハードディスクドライブ装置30を、2つのユニット100,200に分離した状態を示す斜視図である。図示のとおり、磁気記録ユニット100用の筐体110の結合面近傍には、中継端子115、嵌合用突起部116,117が設けられており、メモリユニット200用の筐体210の結合面近傍には、中継端子215、嵌合用孔部216,217が設けられている(これらの構成要素は、図2では図示が省略されている)。
【0050】
2つの筐体110,210を結合させると、中継端子115,215の対応する電極が接触し、磁気記録ユニット100側の配線とメモリユニット200側の配線とが接続される。また、嵌合用突起部116の先端爪部が嵌合用孔部216に嵌合し、嵌合用突起部117の先端爪部が嵌合用孔部217に嵌合することにより、2つのユニット100,200が結合状態に維持される。嵌合用突起部116,117は、弾性材料によって構成されているため、必要に応じて弾性変形させることにより、嵌合状態を解除し、2つのユニット100,200を図示のとおり分離させることが可能である。
【0051】
このように、嵌合用突起部116,117および嵌合用孔部216,217は、磁気記録ユニット100とメモリユニット200とを互いに結合したり分離したりするための着脱手段として機能する。もちろん、着脱手段としては、寸法規格を逸脱しない限り、この他にも様々な構造のものを用いることが可能であり、具体的な着脱方法も、様々なものを利用可能である。たとえば、ネジを用いて両筐体を固定するような着脱手段を用いることもできるし、磁石の吸引力を利用して両筐体を固定するような着脱手段を用いることもできる。
【0052】
図2に示すように、磁気記録ユニット100とメモリユニット200とを互いに結合した状態にすると、上述したとおり、両者を結合して得られる合成筐体は、第1の寸法規格に合致し、かつ、外部接続用端子120も第1の寸法規格に合致したものであるため、外形上、この図2に示すハードディスクドライブ装置30は、図1に示す従来のハードディスクドライブ装置10と同等の装置として取り扱うことができる。また、§3で述べるように、当該装置30は、従来装置10と同等のデータ保存機能を有しているため、結局、外形のみならず機能の点においても、従来装置10と変わりはない。
【0053】
したがって、たとえば、第1の寸法規格に応じた従来装置10を用いているデスクトップパソコンについて、従来装置10を、図2に示す本発明に係る装置30に交換しても何ら支障はなく、ハードディスクドライブ装置としての同等の機能を果たすことができる。その上、本発明に係る装置30には、§3で述べるように、自動バックアップ機能が備わっているので、万一、磁気記録装置130に障害が生じてデータファイルが失われるような事態が生じても、不揮発性メモリ230に格納されているバックアップデータによって、データファイルの復元が可能になる。
【0054】
コントローラ140は、このような自動バックアップ処理や復元処理を行う機能をもった電子回路であり、その具体的な処理機能については後述する。なお、図には配線は示されていないが、実際には、第1の外部接続用端子120とコントローラ140との間には所定の配線が施されており、コントローラ140は信号用端子120Aを介して、外部装置(たとえば、パソコン)との間で信号のやりとりを行うことができる。また、電源用端子120Bからコントローラ140に対して電源が供給される。同様に、第2の外部接続用端子132とコントローラ140との間にも所定の配線が施されており、磁気記録装置130は、第2の外部接続用端子132を介して、コントローラ140から電源の供給を受けるとともに、コントローラ140との間で信号のやりとりを行うことができる。
【0055】
更に、コントローラ140と中継端子115(図3参照)との間にも配線が施されており、中継端子215(図3参照)とメモリインターフェイス(メモリソケット)220との間にも配線が施されている。したがって、図2に示すように、磁気記録ユニット用の筐体110とメモリユニット用の筐体210とが結合された状態においては、コントローラ140と不揮発性メモリ(カード型メモリ)230とは、中継端子115,215を介して間接的に接続された状態になる。このため、不揮発性メモリ230は、コントローラ140から電源の供給を受けるとともに、コントローラ140によるアクセスを受けることができる。
【0056】
なお、図2および図3には、コントローラ140が磁気記録ユニット100内に設けられ、第1の外部接続用端子120が磁気記録ユニット用の筐体110に備わっている典型例を示すが、コントローラ140はメモリユニット200内に設けることも可能であり、また、第1の外部接続用端子120をメモリユニット用の筐体210側に設けることも可能である。すなわち、本発明の第1の実施形態を実施する場合、コントローラ140は、磁気記録ユニット100もしくはメモリユニット200のいずれに設けてもかまわない。同様に、第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子120も、磁気記録ユニット用の筐体110もしくはメモリユニット用の筐体210のいずれに設けてもかまわない。
【0057】
コントローラ140や第1の外部接続用端子120をどこに設けた場合でも、少なくとも、磁気記録ユニット用の筐体110とメモリユニット用の筐体210とが結合された状態において、コントローラ140は、第1の外部接続用端子120と、第2の外部接続用端子132と、不揮発性メモリ230と、に対して、直接もしくは間接的に接続されるように、必要な配線を施しておけば、コントローラ140は、必要な機能を果たすことができる。また、少なくとも、磁気記録ユニット用の筐体110とメモリユニット用の筐体210とが結合された状態において、外部装置から第1の外部接続用端子120に対して与えられた電源が、磁気記録装置130とコントローラ140と不揮発性メモリ230とに供給されるように、必要な配線を施しておけば、各構成要素に対して、外部装置からの電源供給が可能になる。
【0058】
ここに示す例の場合、図3に示すように、磁気記録ユニット用の筐体110とメモリユニット用の筐体210とに、それぞれ中継端子115,215が設けられている。このため、両筐体を結合したときに、この中継端子115,215を介して、磁気記録ユニット100側の配線とメモリユニット200側の配線とが接続されることになり、必要な電源供給や信号のやりとりが行われることになる。
【0059】
<<< §3.第1の実施形態の動作 >>>
続いて、図2に示す第1の実施形態に係るハードディスクドライブ装置30の動作を説明する。図4は、図2に示すハードディスクドライブ装置30の基本構成を示すブロック図である。§2で述べたとおり、このハードディスクドライブ装置30は、相互に脱着自在な磁気記録ユニット100とメモリユニット200とによって構成されており、両者を結合した状態において、第1の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置として機能する。
【0060】
磁気記録ユニット100用の筐体110内には、磁気記録装置130とコントローラ140が組み込まれており、筐体110の側面には、第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子120と中継端子115とが設けられている。ここで、磁気記録装置130は、第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置によって構成され、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子132を備えている。
【0061】
一方、メモリユニット200用の筐体210内には、メモリインターフェイス220と、不揮発性メモリ230が組み込まれており、筐体210の側面には、中継端子215が設けられている。
【0062】
両筐体110,210を結合すると、中継端子115,215が電気的に接続され、磁気記録ユニット100側の配線とメモリユニット200側の配線とが接続される。その結果、コントローラ140は、第1の外部接続用端子120と、第2の外部接続用端子132と、不揮発性メモリ230と、に接続された状態になる。また、図示のとおり、第1の外部接続用端子120には、外部装置500が接続される。外部装置500は、たとえば、パソコン等の電子機器であり、当該ハードディスクドライブ装置30は、この外部装置500用のデータ記憶装置として機能する。
【0063】
第1の外部接続用端子120には、図2に示すように、電源用端子120Bが含まれており、この電源用端子120Bには、外部装置500から電源が供給される。この電源は、装置内の配線を通じて、コントローラ140,磁気記録装置130,不揮発性メモリ230へと供給される。
【0064】
コントローラ140は、ハードディスクドライブ装置30の動作を統括管理する機能をもった電子回路であり、マイクロプロセッサと、このマイクロプロセッサが実行するプログラムを格納したメモリと、処理対象となるデータを一時的に格納するバッファメモリと、を備えている。結局、コントローラ140が行う様々な処理は、所定のプログラムに基づくマイクロプロセッサの動作によって実行されることになるが、ここでは、このコントローラ140を、個々の処理機能をもった複数の処理手段の集合体として捉え、各処理手段が実行する処理内容を説明することにする。
【0065】
図4の下段に、このコントローラ140を構成する複数の処理手段を、それぞれブロックとして示す。図示のとおり、コントローラ140を構成する処理手段は、モード設定手段141,書込処理手段142,削除処理手段143,読出処理手段144,同期処理手段145,初期化処理手段146,復元処理手段147である。以下、これら各手段の処理内容を順に説明する。
【0066】
<1> モード設定手段の処理内容
モード設定手段141は、ユーザの設定操作に基づいて、通常モードか復元モードかのいずれか一方のモードを設定する構成要素である。本発明に係るハードディスクドライブ装置は、通常モードと復元モードとの2通りのモードで動作する。コントローラ140は、通常モードでは、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230とをミラーリングして使用し、磁気記録装置130内に格納すべきデータを不揮発性メモリ230内にもコピーして、自動バックアップを行う。一方、復元モードでは、逆に、不揮発性メモリ230内のデータを磁気記録装置130内にコピーする処理が行われる。
【0067】
このように、通常モードと復元モードとでは、その処理内容が正反対と言えるほど異なっている。すなわち、通常モードでは、磁気記録装置130の格納内容を、不揮発性メモリ230にバックアップする、という基本的考え方に基づいて、不揮発性メモリ230の格納内容が、常に磁気記録装置130の格納内容に一致するような処理が行われる。これに対して、復元モードでは、磁気記録装置130の格納内容に支障が生じたという前提で、不揮発性メモリ230にバックアップされていた内容を、磁気記録装置130へ転送して復元する処理が行われる。そこで、本発明では、これら2つの処理を「モード」という形式で明確に区別し、通常モード中に復元処理が誤って行われることがないようにするとともに、復元モード中に通常処理が誤って行われることがないように配慮している。
【0068】
すなわち、ユーザは、通常、このハードディスクドライブ装置30に対して、通常モードの設定を行って使用すればよい。図4の下段に示すように、この通常モードの設定では、書込処理手段142,削除処理手段143,読出処理手段144,同期処理手段145,初期化処理手段146は各処理を実行するが、復元処理手段147は復元処理を実行しないように構成されている。したがって、通常モードに設定しておく限り、誤って復元処理手段147による復元処理が行われることはない。
【0069】
一方、磁気記録装置130に何らかの支障が生じた場合には、復元処理が必要になる。この場合、ユーザは復元モードの設定を行って、復元処理手段147を動作させることになる。復元モードの設定では、復元処理手段147のみがその処理を実行するように構成されているので、誤って不揮発性メモリ230の内容が改変されることはない。
【0070】
モード設定手段141としては、ユーザの物理的な操作によって2通りの切替状態のいずれかを維持することができる機械式切替スイッチ(いわゆる、トグルスイッチ)を用いるのが好ましい。当該切替スイッチの第1の切替状態によって通常モード、第2の切替状態によって復元モードの設定がなされるようにしておけば、ユーザは、スイッチの物理的な切替操作によって、確実に所望のモード設定を行うことができる。
【0071】
このような切替スイッチとしては、たとえば、図2に示すDIPスイッチ150の1ビット分のスイッチを利用することができる。ただ、上述したように、モード設定手段141によるモード設定を誤ると、データの逸失など致命的な結果がもたらされる可能性があるので、実用上は、より大きなトグルスイッチを用い、操作パネル上に「通常モード」および「復元モード」を明記するのが好ましい。もちろん、このような切替スイッチは、磁気記録ユニット用の筐体110側に設けてもよいし、メモリユニット用の筐体210側に設けてもよい。
【0072】
別な構成例として、モード設定手段141を、少なくとも1ビットの情報を記録する不揮発性のビット記憶部と、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介して与えられるモード設定コマンドによって当該1ビットの情報を書き換えるビット設定部と、によって構成することも可能である。この場合、当該1ビットの情報が第1の論理状態であるときに通常モード、第2の論理状態であるときに復元モードの設定がなされるようにしておけば、ユーザは、モード設定コマンドによる切替操作によって、所望のモード設定を行うことができる。
【0073】
具体的には、ビット設定部には、外部装置500から与えられるモード設定コマンドを解釈する機能を設けておき、当該コマンドが、通常モードに設定するコマンドであった場合には、ビット記憶部の該当ビットを第1の論理状態(たとえば、「0」)とし、復元モードに設定するコマンドであった場合には、ビット記憶部の該当ビットを第2の論理状態(たとえば、「1」)とする処理を実行させればよい。この場合、外部装置500側には、モード設定コマンドに対応するデジタル信号を生成して、第1の外部接続用端子120に与える機能を付加しておく必要があるが、このような機能は、外部装置500に所定のプログラム(ハードディスクドライブ装置30用のドライバプログラム)をインストールする操作によって付加することができる。
【0074】
前述したとおり、書込処理手段142,削除処理手段143,読出処理手段144,同期処理手段145,初期化処理手段146は、モード設定手段141の設定モードが「通常モード」であった場合にのみその処理を実行し、復元処理手段147は、モード設定手段141の設定モードが「復元モード」であった場合にのみその処理を実行する。続いて、これら個々の処理手段による処理内容を順に説明する。
【0075】
<2> 書込処理手段の処理内容
書込処理手段142は、通常モードが設定された状態で、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介してファイル書込コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に対して、書込対象となる同一のデータファイルを書き込む処理を行う。上述したとおり、コントローラ140は、処理対象となるデータを一時的に格納するバッファメモリを備えているので、書込処理手段142は、外部装置500から与えられた書込対象となるデータを、このバッファメモリに一時的に格納した上で、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に対して書き込む処理を行うようにすればよい。
【0076】
磁気記録装置130への書込処理は、多くの場合、外部装置500から第1の外部接続用端子120に対して与えられたファイル書込コマンドを、そのまま第2の外部接続用端子132に転送するだけの処理で済む。たとえば、磁気記録装置130が、現在最も普及している「FAT32」の仕様でフォーマットされたハードディスクドライブ装置であり、外部装置500が当該仕様のハードディスクドライブ装置への読み書きに対応するOSを用いていた場合には、外部装置500は磁気記録装置130に対して直接アクセスすることが可能であるから、コントローラ140は、両者間でやりとりされる信号を中継する役割を果たすだけでよい。
【0077】
一般に、ハードディスクドライブ装置内におけるプラッタへのデータの読み書きは、トラックの各セクター単位で行われる。このため、特定のデータファイルをプラッタへ書き込む場合、どのようなファイル名が付されたデータファイルが、どのセクターに書き込まれたかを示すFAT(ファイルアロケーションテーブル)を作成し、これを特定の管理セクターに格納して管理する処理が必要になる。ただ、このようなファイル管理機能は、磁気記録装置130内に組み込まれた既存のコントローラ(コントローラ140とは別な構成要素)の機能として既に用意されているので、磁気記録装置130への書込処理を行う場合、本発明に用いるコントローラ140にこのようなファイル管理機能を用意しておく必要はない。別言すれば、磁気記録装置130への実質的な書込処理は、磁気記録装置130に内蔵されているコントローラによって実行されるので、コントローラ140は、第1の外部接続用端子120と第2の外部接続用端子132との間を行き来する信号を中継する機能を果たせば足りる。
【0078】
これに対して、不揮発性メモリ230への実質的な書込処理は、コントローラ140によってなされなければならない。したがって、コントローラ140は、不揮発性メモリ230への書き込みを行う際には、そのアドレス空間を複数のセクターに分割し、所定の管理セクターにFATを作成し、ファイル管理を行う必要がある。このようなファイル管理の方法は公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。なお、上述した例は、あくまでも一実施形態であり、利用するOSによっては、コントローラ140が受けもつ処理内容やファイル管理の方法が異なるケースもある。したがって、本発明を実施する上で、コントローラの処理内容やファイル管理の方法は、ここで述べる実施形態に限定されるものではない。
【0079】
このように、外部装置500からファイル書込コマンドが与えられた場合、コントローラ140によって、書込対象となる同一のデータファイルを、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に対して書き込む処理が行われるため、磁気記録装置130に格納されたデータファイルは、常に、不揮発性メモリ230内にも格納されていることになり、両者に格納されているデータファイルの構成は常に一致することになる。
【0080】
<3> 削除処理手段の処理内容
このようなデータファイルの構成一致は、ファイルの削除が行われた場合にも維持される。すなわち、通常モードが設定された状態で、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介してファイル削除コマンドが与えられた場合、削除処理手段143によって、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に対して、削除対象となる同一のデータファイルを削除する処理が行われる。この場合も、磁気記録装置130内のファイルを削除する実質的な処理は、磁気記録装置130に内蔵されているコントローラによって実行されるので、コントローラ140は、ファイル削除コマンドを中継する機能を果たせば足りる。これに対して、不揮発性メモリ230内のファイルを削除する実質的な処理は、コントローラ140が行う必要があるので、コントローラ140は、不揮発性メモリ230内のFATの書き換えなど、必要な処理を実行する。
【0081】
<4> 読出処理手段の処理内容
一方、通常モードが設定された状態で、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介してファイル読出コマンドが与えられた場合には、読出処理手段144によって、読出対象となるデータファイルを読み出し、これを第1の外部接続用端子120を介して外部装置500へ送信する処理が実行される。上述したとおり、書込処理手段142および削除処理手段143の機能により、磁気記録装置130に格納されているデータファイル構成と、不揮発性メモリ230に格納されているデータファイル構成とは、常に一致するように維持されるので、ファイル読出コマンドが与えられた場合、読出対象となるデータファイルは、磁気記録装置130から読み出すこともできるし、不揮発性メモリ230から読み出すこともできる。したがって、読出処理手段144は、磁気記録装置130および不揮発性メモリ230の少なくとも一方から、読出対象となるデータファイルを読み出し、これを外部装置500へと送信する処理を行えばよい。
【0082】
ここで述べる実施形態の場合、読出処理手段144は、通常、磁気記録装置130から読出対象となるデータファイルを読み出し、これを外部装置500へと送信する処理を行う。ただ、磁気記録装置130からの読み出しに失敗した場合には、代わりに不揮発性メモリ230から同じデータファイルを読み出し、これを外部装置500へと送信する処理を行う。この場合、磁気記録装置130からの読み出しに失敗したことを示すエラー情報も外部装置500へと送信されるので、ユーザは、所望のデータファイルを取得することができるものの、磁気記録装置130に何らかの異常が生じたことを認識できる。
【0083】
もちろん、双方から読み出したデータファイルをバッファメモリに一時的に格納した上で、両者を比較して一致を確認してから、これを外部装置500へと送信する処理を行ってもよい。この場合、両者が一致しなかった場合には、何らかの異常が発生したと判断できるので、外部装置500に対して、たとえば、不一致となった2通りのデータファイルを送信するとともに、エラー情報を併せて送信するなどの処理を行うことができる。
【0084】
さて、これまで述べたとおり、このハードディスクドライブ装置30を通常の形態で使用する限り、モード設定手段141を「通常モード」に設定して、書込処理手段142,削除処理手段143,読出処理手段144に各処理を実行させれば、支障なく、データファイルの書き込み、削除、読み出し操作を行うことができる。このとき、上述したとおり、磁気記録装置130に格納されている内容が、不揮発性メモリ230に自動的にバックアップされることになる。ただ、場合によって、以下に述べる同期処理、初期化処理、復元処理といった特殊な処理を行う必要が生じるケースがある。
【0085】
<5> 同期処理手段の処理内容
同期処理は、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との間で、データファイル構成に不一致が生じるような状況が生じた場合に、両者を強制的に一致させるよう同期をとる処理である。同期処理手段145は、通常モードが設定された状態で、所定の同期開始条件の成立を検知した場合に、磁気記録装置130に格納されているデータファイルと不揮発性メモリ230に格納されているデータファイルとが一致するように、不揮発性メモリ230を書き換える同期処理を行う。
【0086】
具体的には、磁気記録装置130に格納されているデータファイルを、コントローラ140内のバッファメモリに読み出し、これを不揮発性メモリ230内に書き込む処理を、磁気記録装置130に格納されている全データファイルについて実行すればよい。別言すれば、磁気記録装置130に格納されている全データファイルを、不揮発性メモリ230へコピーする処理が行われることになる。このとき、もし不揮発性メモリ230に対して初期化処理(フォーマット処理)が必要な場合には、初期化処理を実行した後に、コピーが実行される。
【0087】
なお、この同期処理を実行する際に、磁気記録装置130に格納されているデータファイルと不揮発性メモリ230に格納されているデータファイルとの整合性を調べ、不一致が生じたデータファイルについてのみ書き換えを行うようにしてもよい。すなわち、磁気記録装置130に格納されているが不揮発性メモリ230には格納されていないファイルがあった場合には、これを不揮発性メモリ230へコピーする処理を行い、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に格納されているが、その内容が一致しないファイルがあった場合には、磁気記録装置130内のファイルを不揮発性メモリ230へ上書きする処理を行い、磁気記録装置130に格納されていないのに不揮発性メモリ230にのみ格納されているファイルがあった場合には、当該ファイルを削除する処理を行えばよい。
【0088】
同期処理が必要になる典型的なケースは、不揮発性メモリ230を交換した場合である。具体的な運用例は§4で詳述するが、図4に示す構成において、磁気記録ユニット100からメモリユニット200を取り外し、新たなメモリユニット200を結合した場合、磁気記録装置130と新たなメモリユニット内の不揮発性メモリ230とは、データファイルの構成が一致しないことになる。このような場合、通常の形態での利用を開始する前に、同期処理を行って、データファイルの構成を一致させる処理が必要になる。
【0089】
このように、同期処理は、意図的に、不揮発性メモリ230内のデータファイルの構成を磁気記録装置130内のデータファイルの構成に一致させる必要があるときに実行すべき処理であるので、同期処理手段145は、通常モードが設定された状態で、所定の同期開始条件の成立を検知した場合にのみ、同期処理を実行する。
【0090】
同期開始条件としては、本発明に係るハードディスクドライブ装置の設計時に、ユーザの利便性を考慮して任意の条件を設定しておくことができる。ハードウエアを利用して設定可能な最も単純な同期開始条件は、「所定のスイッチが操作されること」という条件である。たとえば、ユーザのリセット操作によりコントローラ140にリセット信号を送信するリセットスイッチを設けておき、同期処理手段145が、このリセット信号が送信されることを同期開始条件として、同期処理を行うようにしておけばよい。
【0091】
リセットスイッチは、磁気記録ユニット用の筐体110側に設けておいてもよいし、メモリユニット用の筐体210側に設けておいてもよい。たとえば、押圧操作を検知したときにリセット信号をコントローラ140に伝達する機能をもったリセットスイッチ(リセットボタン)を設けておけば、ユーザが、当該リセットボタンを押した時点で、コントローラ140にリセット信号が与えられ、同期処理手段145が同期処理を開始することになる。この場合、「リセットボタンが押されること」が同期開始条件として設定されていることになり、ユーザがリセットボタンを押すことにより、同期開始条件が成立したことになる。ユーザは、同期処理を行いたい場合には、リセットボタンを押す操作を行えばよい。
【0092】
なお、リセットスイッチをON/OFFの2つのいずれかの状態に切り替えることができるトグルスイッチによって構成しておけば、ハードディスクドライブ装置30に電源供給が行われていない状態でも、リセット操作を行うことができる。たとえば、同期処理手段145に、電源供給を受けた時点で、当該トグルスイッチのON/OFF状態をチェックし、ON状態であった場合には、同期開始条件が成立したと判断して、同期処理を開始する機能をもたせておけばよい。
【0093】
一般に、メモリユニット200の交換作業は、電気的なトラブル発生を避けるため、ハードディスクドライブ装置30への電源供給が行われていない状態(外部装置500に電源が投入されていない状態か、ハードディスクドライブ装置30が外部装置500から取り外されている状態)で行われることになろう。そこで、ユーザは、この交換作業時に、リセットスイッチをON状態に切り替える操作を行えばよい。この状態では、電源供給がなされていないため、まだ、コントローラ140は動作していないが、その後、外部装置500からの電源供給が行われるようになれば、コントローラ140は、リセットスイッチがON状態になっていることを検知し、同期開始条件の成立が認識されるので、同期処理を開始することになる。こうして、同期処理が完了した後、ユーザは、リセットスイッチをOFF状態に切り替える操作を行えばよい。
【0094】
もちろん、ソフトウエアによって設定可能な同期開始条件を用いることも可能である。たとえば、予め所定の同期開始コマンドを定めておき、「同期開始コマンドが与えられること」を同期開始条件として設定しておけば、同期処理手段145は、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介して、当該同期開始コマンドが与えられることを同期開始条件として、同期処理を行うことができる。ユーザは、同期処理を行いたい場合、外部装置500を操作して、ハードディスクドライブ装置30に対して同期開始コマンドが与えられるようにすればよい。このように、同期開始コマンドを発生させる機能は、外部装置500に所定のプログラム(ハードディスクドライブ装置30用のドライバプログラム)をインストールすることによって付加することができる。
【0095】
<6> 初期化処理手段の処理内容
一般的なデータ記録装置は、使用開始時に初期化処理が必要である。たとえば、ハードディスクドライブ装置の場合、初期化処理によって、トラックおよびセクタを設定する物理フォーマットとFATなどの記録領域を設定する論理フォーマットとが実行される。また、不揮発性メモリについても、これに類似した初期化処理が必要になる。
【0096】
初期化処理手段146は、通常モードが設定されており、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介して初期化コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に対して、初期化処理を行う機能を有する。このような記録媒体に対する初期化処理は、既に公知の技術であるため、ここではこの初期化処理自体についての詳しい説明は省略する。
【0097】
初期化処理を行うと、磁気記録装置130および不揮発性メモリ230に格納されていたデータファイルはすべて消去される。したがって、ユーザが、この初期化処理を実行するのは、ハードディスクドライブ装置30の利用を新たに開始するときということになる。初期化コマンドを発生させる機能も、外部装置500に所定のプログラム(ハードディスクドライブ装置30用のドライバプログラム)をインストールすることによって付加することができる。
【0098】
なお、磁気記録ユニット100やメモリユニット200を製品として販売する場合、実用上は、工場出荷時に、パソコン用の一般的なOSに適した標準フォーマット(たとえば、FAT32)で、初期化処理を行っておくのが好ましい。そうすれば、ユーザが、当該標準フォーマットに対応した外部装置500に接続して利用する限り、初期化処理の作業を省略することができる。このような観点から、この初期化処理手段146は、本発明を実施する上で必須の構成要素ではない。すなわち、ユーザは、工場出荷時に初期化が完了している製品を利用する限り、初期化処理を行う必要はない。
【0099】
<7> 復元処理手段の処理内容
復元処理は、復元モードにおいてのみ実行される特殊な処理であり、その目的は、磁気記録装置130内のデータファイル構成を、不揮発性メモリ230内のデータファイル構成に一致させることにある。
【0100】
ユーザが、この復元処理を必要とする第1のケースは、現在利用中の磁気記録装置130に何らかの支障が生じ、正常に動作しなくなった場合である。一般に、ハードディスクドライブ装置の寿命は3〜5年とされており、磁気記録装置130が、やがて正常に読み書きできない状態に陥ることは避けられない。このように、磁気記録装置130が正常に読み書きできなかった場合には、書込処理手段142や読出処理手段144によって、外部装置500に対してエラー情報(ファイル書込コマンドやファイル読出コマンドに対する失敗を示すレスポンス)が伝達されることになる。
【0101】
このようなエラー情報により、現在利用中の磁気記録装置130に何らかのトラブルが生じたことを認識したユーザは、磁気記録装置130を正常なものに交換することにより、当該トラブルに対処することになる。具体的には、磁気記録装置130のみを新品に交換するか、あるいは、磁気記録ユニット100ごと新品に交換すればよい。いずれの場合も、新品の磁気記録装置130内には、これまで蓄積されてきたデータファイルは格納されていないので、これまで利用してきたメモリユニット200を、新品の磁気記録装置130を含む磁気記録ユニット100に接続し、復元処理を行うことになる。
【0102】
ユーザが、復元処理を必要とする第2のケースは、現在利用中の磁気記録装置130には何らトラブルは生じていないが、磁気記録装置130内のデータファイルの構成を、過去の状態に戻したい事情が生じた場合である。磁気記録装置130に対しては、様々なデータファイルが、新規書き込みされたり、上書き書き込み(書き換え)されたり、削除されたりし、データファイルの構成は逐次変化してゆくことになる。そして、この磁気記録装置130内に格納されているデータファイルのバックアップを保持する役割を果たす不揮発性メモリ230内のデータファイルの構成も、同様に、逐次変化してゆくことになる。
【0103】
ただ、§4で例示する利用形態のように、ユーザは、所望の時点でメモリユニット200を交換することができる。この場合、磁気記録装置130内のデータファイルの構成は逐次変化してゆくが、交換のために取り外されたメモリユニット200の不揮発性メモリ230内のデータファイルの構成は、交換当時のまま保持される。したがって、後日、交換当時のデータファイルの構成を復元したい場合には、当該メモリユニット200を再び磁気記録ユニット100に接続し、不揮発性メモリ230の内容を磁気記録装置130内へコピーする復元処理を行えばよい。
【0104】
この復元処理は、一方の記録媒体の内容を他方の記録媒体へコピーする処理という点において、前述した同期処理と共通する処理ということができる。両者の相違は、コピーの方向である。すなわち、前述した同期処理では、磁気記録装置130の内容が不揮発性メモリ230へコピーされるのに対して、ここで述べる復元処理では、不揮発性メモリ230の内容が磁気記録装置130へコピーされることになる。
【0105】
要するに、復元処理手段147は、復元モードが設定された状態で、所定の復元開始条件の成立を検知した場合に、磁気記録装置130に格納されているデータファイルと不揮発性メモリ230に格納されているデータファイルとが一致するように、磁気記録装置130を書き換える復元処理を行う。
【0106】
具体的には、不揮発性メモリ230に格納されているデータファイルを、コントローラ140内のバッファメモリに読み出し、これを磁気記録装置130内に書き込む処理を、不揮発性メモリ230に格納されている全データファイルについて実行すればよい。このとき、もし磁気記録装置130に対して初期化処理(フォーマット処理)が必要な場合には、初期化処理を実行した後に、コピーが実行される。
【0107】
なお、この同期処理を実行する際に、磁気記録装置130に格納されているデータファイルと不揮発性メモリ230に格納されているデータファイルとの整合性を調べ、不一致が生じたデータファイルについてのみ書き換えを行うようにしてもよい。すなわち、不揮発性メモリ230に格納されているが磁気記録装置130には格納されていないファイルがあった場合には、これを磁気記録装置130へコピーする処理を行い、不揮発性メモリ230と磁気記録装置130との双方に格納されているが、その内容が一致しないファイルがあった場合には、不揮発性メモリ230内のファイルを磁気記録装置130へ上書きする処理を行い、不揮発性メモリ230に格納されていないのに磁気記録装置130にのみ格納されているファイルがあった場合には、当該ファイルを削除する処理を行えばよい。
【0108】
上述したように、復元処理は、意図的に、磁気記録装置130内のデータファイルの構成を不揮発性メモリ230内のデータファイルの構成に一致させる必要があるときに実行すべき処理であるので、復元処理手段147は、復元モードが設定された状態で、所定の復元開始条件の成立を検知した場合にのみ、復元処理を実行する。
【0109】
この復元開始条件としては、前述した同期開始条件と同様の条件設定を行うことができる。ハードウエアを利用して設定可能な最も単純な復元開始条件は、「所定のスイッチが操作されること」という条件である。たとえば、ユーザのリセット操作によりコントローラ140にリセット信号を送信するリセットスイッチを設けておき、復元処理手段147が、このリセット信号が送信されることを復元開始条件として、同期処理を行うようにしておけばよい。
【0110】
このリセットスイッチは、前述した同期開始条件の設定に利用するリセットスイッチと兼用にしておいてもかまわない。したがって、磁気記録ユニット用の筐体110側に設けておいてもよいし、メモリユニット用の筐体210側に設けておいてもよい。また、ユーザの押圧操作によってリセット信号を発生させるリセットボタンによって構成してもよいし、ON/OFFの2つのいずれかの状態に切り替えることができるトグルスイッチによって構成しておいてもよい。
【0111】
あるいは、「電源の供給が開始されること」を復元開始条件とする設定も可能である。この場合、モード設定手段141によって復元モードが設定されている状態において、コントローラ140に対して電源の供給が開始された時点で、復元開始条件が成立することになり、ユーザが何ら特別な操作を行うことなしに、復元処理が実行されることになる。たとえば、ユーザが、ハードディスクドライブ装置30を外部装置500から取り外し、メモリユニット200を復元対象となる別なメモリユニットに交換し、モード設定手段141により復元モードの設定を行い(たとえば、DIPスイッチを復元モード側に切り替えればよい)、再び、ハードディスクドライブ装置30を外部装置500に接続して電源供給を行えば、コントローラ140は、直ちに復元開始条件が成立したことを認識し、復元処理を開始することになる。復元処理が完了した後、ユーザが、モード設定手段141を通常モードに切り替える操作を行えば、以後、復元後の磁気記録装置130を用いて、通常の利用形態が可能になる。
【0112】
もちろん、ソフトウエアによって設定可能な復元開始条件を用いることも可能である。たとえば、予め所定の復元開始コマンドを定めておき、「復元開始コマンドが与えられること」を復元開始条件として設定しておけば、復元処理手段147は、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介して、当該復元開始コマンドが与えられることを復元開始条件として、復元処理を行うことができる。ユーザは、復元処理を行いたい場合、外部装置500を操作して、ハードディスクドライブ装置30に対して復元開始コマンドが与えられるようにすればよい。このように、復元開始コマンドを発生させる機能は、外部装置500に所定のプログラム(ハードディスクドライブ装置30用のドライバプログラム)をインストールすることによって付加することができる。
【0113】
<<< §4.第1の実施形態の利用形態 >>>
ここでは、これまで述べてきた第1の実施形態に係るハードディスクドライブ装置30についての具体的な利用形態の一例を説明する。
【0114】
図5は、このハードディスクドライブ装置30を利用して、過去の履歴を逐次保存する運用を行う場合に必要なユニットを示すブロック図である。この例の場合、1台の磁気記録ユニット100と、当該磁気記録ユニット100に対して結合可能な複数台のメモリユニット200A,200B,200C,200D,200E,... が用意されている。ここで述べる例は、1ヶ月ごとにメモリユニット200を交換する運用を行うので、1年間の運用を行うと、12台のメモリユニット200が必要になる。
【0115】
既に述べたとおり、磁気記録ユニット100内には、ハードディスクドライブ装置からなる磁気記録装置130が組み込まれており、各メモリユニット200A,200B,200C,200D,200E,... には、それぞれ不揮発性メモリ230が組み込まれている。ユーザは、これら複数台のメモリユニットのいずれか1つを選択的に1台の磁気記録ユニット100に結合して利用することになる。
【0116】
さて、ここでは4月1日から上記運用を開始する場合のユーザの作業手順を説明する。まず、4月1日(運用開始の初日)に、図6(a) に示すように、4月分保存用のメモリユニット200Aを磁気記録ユニット100に結合してハードディスクドライブ装置30を構成し、これを外部装置500(この例ではパソコン)に接続する。この時点では、磁気記録ユニット100もメモリユニット200Aも未使用状態であり、ユーザのデータファイルは何ら保存されていない。また、モードは通常モードに設定されており、以下、基本的には通常モードのまま利用を続けることになる。
【0117】
なお、必要があれば、ユーザは外部装置500から初期化コマンドを与え、初期化処理手段146によって、磁気記録装置130や不揮発性メモリ230に対する初期化処理を行う(前述したとおり、磁気記録ユニット100やメモリユニット200Aが、工場出荷時に初期化されていれば、ユーザによる初期化作業は不要である)。
【0118】
ユーザは、この状態で、当該ハードディスクドライブ装置30を利用することになる。すなわち、図6(b) に示すように、磁気記録ユニット100およびメモリユニット200A内に、4月の内容が蓄積されてゆくことになる。既に述べたとおり、外部装置500から、データファイルの書込処理(新規ファイルの書込処理や、既存ファイルに対する上書処理)あるいは削除処理を行えば、磁気記録ユニット100およびメモリユニット200Aの双方に対して同一のファイル書き込みおよびファイル削除が行われるので、両者に格納されたデータファイルの構成は常に同一になる。
【0119】
こうして、4月1日〜4月30日まで、図6(b) に示す構成で利用すれば、最終的に、磁気記録ユニット100およびメモリユニット200Aに格納されているデータファイルの構成は、図7(a) に示すように、いずれも4月末の内容になる。ここで、ユーザは、月末の交換作業を実行する。すなわち、外部装置500を用いた一日の作業が終了したら、メモリユニット200Aをメモリユニット200Bに交換する作業を行う。電気的なトラブル発生を避けるため、この交換作業は、ハードディスクドライブ装置30への電源供給が行われていない状態(外部装置500に電源が投入されていない状態か、ハードディスクドライブ装置30が外部装置500から取り外されている状態)で行うのが好ましい。
【0120】
図7(b) は、この交換作業が完了した状態を示す。図示のとおり、磁気記録ユニット100に格納されているデータファイルは4月末の内容のままであるが、交換されたメモリユニット200Bは未使用の状態である。そこで、ユーザは、同期処理を実行させるための作業を行う。たとえば、「リセットボタンの押圧操作」を同期開始条件とする実施形態の場合、ユーザは、交換作業完了後に、リセットボタンを押す操作を行うことにより、同期処理手段145に同期処理を実行させる。あるいは、「同期開始コマンドが与えられること」を同期開始条件とする実施形態の場合であれば、ユーザは、交換作業完了後に、外部装置500を操作して同期開始コマンドを送信し、同期処理手段145に同期処理を実行させることになる。
【0121】
図7(c) は、こうして同期処理が完了した状態を示す。図示のとおり、磁気記録ユニット100内のデータファイル(4月末の内容)が、そのままそっくりメモリユニット200Bへとコピーされることになり(このとき、必要に応じて不揮発性メモリに対する初期化が行われる)、両者に格納されたデータファイルの構成は同一になる。以上で月末処理は完了である。取り外したメモリユニット200A(4月末の内容が格納されている)は、任意の保管場所に保管しておけばよい。
【0122】
ユーザは、5月1日から、この状態で、当該ハードディスクドライブ装置30を引き続き利用することになる。すなわち、図7(d) に示すように、磁気記録ユニット100およびメモリユニット200B内に、5月の内容が蓄積されてゆくことになる。もちろん、両者に格納されたデータファイルの構成は常に同一になる。
【0123】
こうして、5月1日〜5月31日まで、図7(d) に示す構成で利用すれば、最終的に、磁気記録ユニット100およびメモリユニット200Bに格納されているデータファイルの構成は、いずれも5月末の内容になる。ここで、ユーザは、5月末の交換作業を実行する。すなわち、メモリユニット200Bをメモリユニット200Cに交換する作業を行う。
【0124】
図7(e) は、この交換作業が完了した状態を示す。図示のとおり、磁気記録ユニット100に格納されているデータファイルは5月末の内容のままであるが、交換されたメモリユニット200Cは未使用の状態である。そこで、同期処理を実行すれば、図7(f) に示すとおり、磁気記録ユニット100内のデータファイル(5月末の内容)が、そのままそっくりメモリユニット200Cへとコピーされることになり、両者に格納されたデータファイルの構成は同一になる。以上で5月末の月末処理は完了である。取り外したメモリユニット200B(5月末の内容が格納されている)は、任意の保管場所に保管しておけばよい。
【0125】
こうして、毎月の月末にメモリユニットを交換し、同期処理を行うようにすれば、ハードディスクドライブ装置30自体は継続して使い続けることができる。一方、保管場所には、取り外されたメモリユニットが蓄積されてゆく。図8は、このような運用を4月〜8月まで行った場合の保管対象となるメモリユニットを示すブロック図である。図示のとおり、各メモリユニット200A,200B,200C,200D,200Eには、それぞれ4月末,5月末,6月末,7月末,8月末の内容が格納された状態となっている。これは、必要があれば、任意の月末におけるデータファイルの構成を復元できることを意味する。
【0126】
一般に、ミラーリングによって自動バックアップを作成する冗長システムでは、一方の媒体に障害が生じたとしても、他方の媒体からデータを取り出すことが可能である。しかしながら、ユーザが意図的に削除や改変を行った場合、削除されたファイルや改変前のファイルを復元することはできない。たとえば、図示の例の場合、9月15日時点のハードディスクドライブ装置30のデータファイル構成は、図9(a) に示すように、磁気記録ユニット100およびメモリユニット200Fのいずれもが、9月15日の内容に更新されてしまっているので、6月の作業時に削除されたり改変されてしまったファイルを取り出すことはできない。ところが、図8に示すように、月末ごとの内容がそれぞれ別個のメモリユニットに保管されていれば、過去に削除されたファイルや改変されたファイルの復元が可能になる。
【0127】
ここでは、一例として、9月15日の時点で、5月末におけるデータファイルの構成を復元する必要が生じた場合を考えてみよう。たとえば、6月の作業時に削除してしまったファイルを復活させたい場合や、6月の作業時に内容を改変してしまったファイルについて改変前の状態を復活させたい場合には、5月末におけるデータファイルの構成を復元すればよい。
【0128】
この場合、ユーザは、メモリユニット200Fをメモリユニット200Bに交換する作業を行う。図9(b) は、この交換作業が完了した状態を示す。図示のとおり、磁気記録ユニット100に格納されているデータファイルは9月15日時点の内容であるが、交換されたメモリユニット200Bに格納されているデータファイルは5月末の内容である。そこで、ユーザは、復元処理を実行させるための作業を行う。
【0129】
まず、モード設定を、これまでの通常モードから復元モードに切り替える。具体的には、切替スイッチによってモード設定を行う実施形態の場合は、スイッチを「復元モード」に切り替える設定を行う。あるいは、モード設定コマンドよってモード設定を行う実施形態の場合は、外部装置500から「復元モード」を設定するコマンドを送信する。図では、ブロックの輪郭を太線で描くことによって、「復元モード」の設定が行われていることを示している。
【0130】
続いて、復元開始条件を満足させるための作業を行う。たとえば、「リセットボタンの押圧操作」を復元開始条件とする実施形態の場合、リセットボタンを押す操作を行うことにより、復元処理手段147に復元処理を実行させる。あるいは、「復元開始コマンドが与えられること」を復元開始条件とする実施形態の場合であれば、外部装置500から復元開始コマンドを送信する(上記モード設定コマンドと復元開始コマンドとを兼用するコマンドを送信するようにしてもよい)。なお、「電源の供給が開始されること」を復元開始条件とする実施形態の場合は、復元開始条件を満足させるための特別な作業は不要であり、ハードディスクドライブ装置30への電源供給が行われると、自動的に復元処理が開始することになる。
【0131】
図9(c) は、こうして同期処理が完了した状態を示す。図示のとおり、メモリユニット200B内のデータファイル(5月末の内容)が、そのままそっくり磁気記録ユニット100へとコピーされることになり、両者に格納されたデータファイルの構成は同一になる。磁気記録ユニット100に格納されていた9月15日の内容は失われてしまうが、当該内容は、取り外したメモリユニット200Fに残されている。
【0132】
この状態で、当該ハードディスクドライブ装置30を引き続き利用して作業を進めるには、メモリユニット200Bを新たなメモリユニット200Gに交換する作業を行う。図9(d) は、この交換作業が完了した状態を示す。図示のとおり、磁気記録ユニット100に格納されているデータファイルは5月末の内容であるが、交換されたメモリユニット200Gは未使用の状態である。そこで、ユーザは、モード設定を「通常モード」に戻した上で、同期処理を実行させるための作業を行う。
【0133】
図9(e) は、こうして同期処理が完了した状態を示す。図示のとおり、磁気記録ユニット100内のデータファイル(5月末の内容)が、そのままそっくりメモリユニット200Gへとコピーされることになり、両者に格納されたデータファイルの構成は同一になる。したがって、ユーザは、この後、5月末時点のデータファイルを利用して、必要なデータファイルを外部装置500に読み出し、所望の作業を行うことができる。もちろん、当該作業の結果は、磁気記録ユニット100に保存されるとともに、メモリユニット200Gにバックアップされることになる。
【0134】
このように、格納されているデータファイルを過去の特定時点の内容に戻し、その状態で利用を継続することは、特に、ハードディスクドライブ装置30を外部装置500の起動ディスクとして利用している場合に有用である。起動ディスクには、OS用のプログラムが組み込まれることになるので、たとえば、OSをバージョンアップする作業を行うと、起動ディスクのOS用プログラムが新バージョンに書き換えられることになる。ところが、この新バージョンのOSで作業を行った結果、古いアプリケーションプログラムが正常動作しなかったり、周辺機器が動作しなかったりする不都合が判明し、旧バージョンのOSに戻したい、という要望が生じることも少なくない。このような場合、上例のように、OSをバージョンアップする前の状態(5月末時点の状態)に戻し、そのまま利用を継続することができる。
【0135】
もちろん、図9(e) に示す状態から、再び、図9(a) に示す9月15日の本来の状態に戻すことも可能である。この場合は、メモリユニット200Gをメモリユニット200Fに交換する作業を行い、復元モードに設定した上で、再度、復元処理を実行すればよい。復元処理完了後に、通常モードに戻せば、図9(a) に示す状態から利用を再開することができる。
【0136】
このように、本発明に係るハードディスクドライブ装置は、磁気記録装置内のデータが常に不揮発性メモリ内にバックアップされるため、トラブル発生時には、不揮発性メモリ内のデータを用いて、磁気記録装置内にデータ復元を行うことができる、という利点を有するだけでなく、不揮発性メモリの部分は必要に応じて簡単に取り外すことが可能なので、単純な作業により、過去の履歴を逐次保存しておくことが可能になる、という利点も有することになる。実際、図3に示す例のように、磁気記録ユニット100とメモリユニット200とは、簡単に着脱することができ、ユーザの利便性は極めて高い。
【0137】
図8に示す例のように、メモリユニット200を毎月交換する運用を行うと、保管場所には、1年間に12組のメモリユニット200が蓄積されることになるが、メモリユニット200は、マイクロSDカード、ミニSDカードなどの半導体メモリを利用して構成することができるので、比較的小型の装置になる。したがって、一般的なハードディスクドライブ装置を毎月交換して蓄積保存する場合に比べれば、履歴保存のための収納スペースを大幅に低減できる。また、図2に示すメモリユニット200をそのまま保存する代わりに、メモリソケット220からカード型メモリ230の部分を抜き取り、カード型メモリ230のみを保存するようにすれば、更に収納効率を向上させることができる。
【0138】
しかも、マイクロSDカード、ミニSDカードなどの半導体メモリは、長期保存にも適している。たとえば、テープストリーマーなどの磁気記録媒体を長期保存する場合、カビの発生などを避けるために、保管場所の温度管理や湿度管理に配慮する必要がある。また、DVDなどの光学的記録媒体を長期保存する場合も、表面に傷がつかないよう配慮が必要である。これに対して、半導体メモリは、長期保存する場合であっても、それほど慎重な取り扱いをする必要はない。
【0139】
また、半導体メモリは、破棄作業も容易である。たとえば、業務用のデータファイルの場合、5年間経過したものは破棄する、というような基準で、古いものを順次破棄してゆく運用がとられることが多い。テープストリーマーやDVDなどの光学的記録媒体の場合、データを完全に破棄するためには、媒体を溶解したり、粉砕したりする必要があり、その作業負担はかなり大きい。これに対して、半導体メモリの場合、チップを2つに破断するだけで、もはやデータの読み出しは不可能になるので、データ破棄の作業負担は非常に軽い。
【0140】
更に、本発明に係るメモリユニット200は、磁気記録ユニット100に結合した状態において、汎用性のあるハードディスクドライブ装置として取り扱うことができるので、極めて汎用性の高い媒体としての機能を有している。これまで、データ記録媒体として、様々な規格に基づく多種多様な媒体が市販されてきているが、時代の流れとともに市場から姿を消した媒体も少なくない。このような廃れた媒体は、再生装置の入手も困難になりつつあり、将来、データの読み出し手段が存在しない状況になる可能性が高い。これに対して、ハードディスクドライブ装置は、これまで最も汎用性の高いデータ記録媒体として利用されてきており、今後も、データの読み出しが全くできなくなってしまうような事態に陥る可能性は低い。このような点から、本発明に係るメモリユニット200は、将来的にも、その読み出し手段が安定して供給され続けるであろう媒体と言える。
【0141】
<<< §5.第2の実施形態の構造および動作 >>>
図10は、本発明の第2の実施形態に係るハードディスクドライブ装置40の斜視図である(内部の構成要素の一部を破線で示す)。図2に示すハードディスクドライブ装置30は、脱着自在な磁気記録ユニット100とメモリユニット200とによって構成されていたが、この図10に示すハードディスクドライブ装置40は、単一の装置筐体400からなる単一のユニットによって構成されている。装置筐体400は、図示のとおり、磁気記録装置収納部410とメモリ収納部420とによって構成されるが、両者は接合されており、分離することはない。この装置筐体400は、ハードディスクドライブ装置に関する第1の寸法規格(ここに示す例の場合、3.5インチ規格)に合致するように設計されている。
【0142】
磁気記録装置収納部410は、図2に示す装置30の磁気記録ユニット100に対応するものであり、その側面には、第1の寸法規格(たとえば、3.5インチ規格)に合致した第1の外部接続用端子120が設けられている。この例の場合も、第1の外部接続用端子120は、信号用端子120Aと電源用端子120Bとによって構成されている。また、磁気記録装置収納部410の内部には、磁気記録装置130とコントローラ140とが内蔵されており、第1の外部接続用端子120の上方には、DIPスイッチ150が設けられている。ここで、磁気記録装置130は、第2の寸法規格(たとえば、2.5インチ規格)のハードディスクドライブ装置によって構成されており、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子132を備えている。
【0143】
一方、メモリ収納部420は、図2に示す装置30のメモリユニット200に対応するものであり、メモリインターフェイス220と不揮発性メモリ230とが組み込まれている。ここに示す例の場合も、図2に示す装置30と同様に、不揮発性メモリ230として、8枚のカード型メモリが用いられており、メモリインターフェイス220は、これらカード型メモリを抜き差しするためのメモリソケットによって構成されている。カード型メモリとしては、やはりマイクロSDカード、ミニSDカードなどのSDメモリカードや、その他のカード型フラッシュメモリを用いればよい。ここでも、不揮発性メモリ230の全記憶容量が、磁気記録装置130の全記憶容量以上となるように設定されており、磁気記録装置130に格納されている全データファイルを、不揮発性メモリ230へバックアップすることができる。
【0144】
図示のとおり、メモリ収納部420は、実質的に底板のみからなる構造体であり、その上面には、メモリソケット220が取り付けられている。8枚のカード型メモリ230は、このメモリソケット220に差し込まれた状態になっており、自由に抜き差しが可能である。図2に示す装置30の場合、カード型メモリ230を交換する場合、メモリユニット200ごと交換する方法をとることになるが、図10に示す装置40の場合、カード型メモリ230を直接抜き差しする方法をとることになる。図10に示す例の場合、このような抜き差し作業を容易にするため、メモリ収納部420を底板のみによって構成し、メモリソケット220およびカード型メモリ230が露出した状態になるようにしているが、必要に応じて、メモリ交換時に着脱自在もしくは開閉自在なカバーを設け、メモリソケット220およびカード型メモリ230を覆うようにしてもかまわない。
【0145】
結局、図10に示す装置40は、第1の寸法規格に合致した筐体400内に、磁気記録装置130と、不揮発性メモリ230と、コントローラ140と、を備えたハードディスクドライブ装置ということになる。この筐体400には、第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子120が備わっており、磁気記録装置130は、この第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置によって構成され、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子132を備えている。また、不揮発性メモリ230は、筐体400に設けられたメモリソケット220を利用して抜き差し可能なカード型メモリであり、コントローラ140は、第1の外部接続用端子120と第2の外部接続用端子132と不揮発性メモリ230とに直接もしくは間接的に接続されている。
【0146】
筐体400は、第1の寸法規格に合致し、かつ、外部接続用端子120も第1の寸法規格に合致したものであるため、外形上、この図10に示すハードディスクドライブ装置40は、図1に示す従来のハードディスクドライブ装置10と同等の装置として取り扱うことができる。また、コントローラ140の機能により、当該装置40は、従来装置10と同等のデータ保存機能を有しているため、結局、外形のみならず機能の点においても、従来装置10と変わりはない。また、図2に示す装置30と同様に、自動バックアップ機能が備わっているので、万一、磁気記録装置130に障害が生じてデータファイルが失われるような事態が生じても、不揮発性メモリ230に格納されているバックアップデータによって、データファイルの復元が可能になる。
【0147】
なお、図には配線は示されていないが、実際には、第1の外部接続用端子120とコントローラ140との間には所定の配線が施されており、コントローラ140は信号用端子120Aを介して、外部装置(たとえば、パソコン)との間で信号のやりとりを行うことができる。また、電源用端子120Bからコントローラ140に対して電源が供給される。同様に、第2の外部接続用端子132とコントローラ140との間にも所定の配線が施されており、磁気記録装置130は、第2の外部接続用端子132を介して、コントローラ140から電源の供給を受けるとともに、コントローラ140との間で信号のやりとりを行うことができる。更に、コントローラ140とメモリソケット220との間にも配線が施されており、不揮発性メモリ230は、コントローラ140から電源の供給を受けるとともに、コントローラ140によるアクセスを受けることができる。
【0148】
図10には現れていないが、メモリソケット220の背面側には、8個のLEDが設けられている。図11は、図10に示すメモリソケット220および不揮発性メモリ230の背面図である。不揮発性メモリ230は、合計8枚のカード型メモリ231〜238(たとえば、マイクロSDカード)によって構成されており、メモリソケット220における各カード型メモリ231〜238の装着位置に、それぞれLED241〜248が配置されている。これらLED241〜248は、コントローラ140によって点灯/消灯状態が制御され、対応するカード型メモリに格納されているデータの有無を報知する機能を有する。すなわち、データの格納が行われているカード型メモリに対応するLEDは点灯状態になり、データの格納が行われていないカード型メモリに対応するLEDは消灯状態になる。
【0149】
たとえば、コントローラ140が、8枚のカード型メモリ231〜238を、この順番で使用するようにプログラムされている場合、まず、ファイル管理に必要なFAT用データがメモリ231内の所定のセクタに書き込まれ、メモリ231内のその他のセクタに、データファイルが順次保存されてゆく。保存対象となるデータファイルの総容量が小さいうちは、FAT用データを含めたすべてのデータがメモリ231内に収容されることになろう。この場合、データが格納されているメモリは、メモリ231のみであるから、これに対応するLED241のみが点灯状態となり、LED242〜248は消灯状態となる。やがて、保存対象となるデータファイルの総容量が増えると、メモリ231内に収容しきれなかったデータは、メモリ232に格納されることになる。この場合、LED241,242が点灯状態となり、LED243〜248は消灯状態となる。
【0150】
ここでは、8枚のカード型メモリ231〜238を用いた場合を例にとって説明するが、一般的に、不揮発性メモリ230として、複数N枚のカード型メモリを設ける場合、このN枚のカード型メモリに対応して、N個のLEDを設けるようにし、コントローラ140が、このN枚のカード型メモリのそれぞれについて、格納されているデータの有無を、対応するLEDの点灯/消灯によって報知する機能を果たすようにすればよい。なお、LEDは、必ずしもメモリソケット220に配置する必要はなく、個々のLEDと個々のカード型メモリとの対応関係が認識できるよう配慮されていれば、任意の場所に配置してかまわない。ただ、実用上は、メモリとの対応関係を直感的に把握できるように、図11に示す例のように、メモリソケット220上の各メモリの装着位置に対応させて配置するのが好ましい。
【0151】
図12は、図10に示すハードディスクドライブ装置40の基本構成を示すブロック図である。上述したとおり、装置筐体400は、磁気記録装置収納部410とメモリ収納部420とによって構成されており、磁気記録装置収納部410には、第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子120、磁気記録装置130、コントローラ140が設けられる。ここで、磁気記録装置130は、第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置によって構成され、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子132を備えている。一方、メモリ収納部420には、メモリインターフェイス220と、不揮発性メモリ230が組み込まれる。ここに示す例の場合、不揮発性メモリ230は、8枚のカード型メモリ231〜238によって構成され、メモリインターフェイス220は、これらのメモリを抜き差し可能なメモリソケットによって構成される。また、このメモリソケット220には、各メモリに対応した8個のLED241〜248が設けられている。
【0152】
図示のとおり、第1の外部接続用端子120には、外部装置500が接続される。外部装置500は、たとえば、パソコン等の電子機器であり、当該ハードディスクドライブ装置40は、この外部装置500用のデータ記憶装置として機能する。第1の外部接続用端子120には、図10に示すように、電源用端子120Bが含まれており、この電源用端子120Bには、外部装置500から電源が供給される。この電源は、装置内の配線を通じて、コントローラ140,磁気記録装置130,不揮発性メモリ230へと供給される。
【0153】
コントローラ140の基本機能は、第1の実施形態に係る装置30におけるコントローラ(図4参照)の機能と同じである。すなわち、この図12に示す装置40におけるコントローラ140も、ハードディスクドライブ装置40の動作を統括管理する機能をもった電子回路であり、マイクロプロセッサと、このマイクロプロセッサが実行するプログラムを格納したメモリと、処理対象となるデータを一時的に格納するバッファメモリと、を備えている。その機能に着目すれば、コントローラ140は、図12の下段に示すとおり、モード設定手段141,書込処理手段142,削除処理手段143,読出処理手段144,同期処理手段145,初期化処理手段146,復元処理手段147の集合体として捉えることができ、これら各手段の機能は§3で述べたとおりである。
【0154】
すなわち、モード設定手段141は、ユーザの設定操作に基づいて、通常モードか復元モードかのいずれか一方のモードを設定する機能を有し、書込処理手段142は、通常モードが設定された状態で、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介してファイル書込コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に対して、書込対象となる同一のデータファイルを書き込む処理を行う機能を有し、削除処理手段143は、通常モードが設定された状態で、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介してファイル削除コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に対して、削除対象となる同一のデータファイルを削除する処理を行う機能を有し、読出処理手段144は、通常モードが設定された状態で、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介してファイル読出コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置130および不揮発性メモリ230の少なくとも一方から、読出対象となるデータファイルを読み出す処理を行う機能を有する。
【0155】
また、同期処理手段145は、通常モードが設定された状態で、所定の同期開始条件の成立を検知した場合に、磁気記録装置130に格納されているデータファイルと不揮発性メモリ230に格納されているデータファイルとが一致するように不揮発性メモリ230を書き換える同期処理を行う機能を有し、初期化処理手段146は、通常モードが設定されており、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介して初期化コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に対して、初期化処理を行う機能を有し、復元処理手段147は、復元モードが設定された状態で、所定の復元開始条件の成立を検知した場合に、磁気記録装置130に格納されているデータファイルと不揮発性メモリ230に格納されているデータファイルとが一致するように磁気記録装置130を書き換える復元処理を行う機能を有する。
【0156】
なお、LED制御手段148は、この第2の実施形態に係る装置40において新たに設けられた構成要素であり、LED241〜248の点灯/消灯状態を制御する機能を有する。すなわち、書込処理手段142,削除処理手段143,同期処理手段145,初期化処理手段146の機能によって、不揮発性メモリ230内に保存されているデータの更新が行われるたびに、LED制御手段148は、各カード型メモリ231〜238内にデータが格納されているか否かをチェックし(たとえば、FATをチェックすればよい)、データが格納されているカード型メモリに対応するLEDを点灯状態とし、データが格納されていないカード型メモリに対応するLEDを消灯状態とする制御を行う。
【0157】
この第2の実施形態に係るハードディスクドライブ装置40の利用形態は、§4で述べた第1の実施形態に係るハードディスクドライブ装置30の利用形態とほぼ同様である。ただ、ユーザは、メモリユニット200を交換する代わりに、カード型メモリ230を交換する作業を行うことになる。したがって、§4で述べたように、月末ごとにメモリ交換を行う運用を採る場合、第1の実施形態では、図8に示すように、月ごとのメモリユニット200を蓄積して保存してゆくことになるが、ここで述べる第2の実施形態では、月ごとのカード型メモリ230を蓄積して保存してゆくことになる。
【0158】
しかも、月末ごとのメモリ交換作業では、8枚のカード型メモリのすべてを交換する必要はなく、点灯しているLEDに対応するカード型メモリのみを交換すれば足りる。たとえば、4月1日から運用を開始した場合、4月末の時点では、磁気記録ユニット100に格納されているデータの総容量はそれほど多くないであろうから、不揮発性メモリ230にそのバックアップをとったとしても、8枚のカード型メモリのすべてが使用されていることはないであろう。
【0159】
ユーザは、LEDの点灯状態を確認することにより、現時点でデータ格納が行われているカード型メモリを把握することができる。たとえば、4月末の時点で、LED241,242のみが点灯状態であったとすれば、これに対応するメモリ231,232の2枚だけを交換すれば足り、残りの6枚のメモリ233〜238は交換する必要はない。この場合、ユーザは、取り外した2枚のメモリ231,232について、「4月末における第1番目および第2番目のソケットに挿入するメモリ」であることを明記して保管しておくようにすればよい。そうすれば、もし4月末の状態に復元する必要が生じた場合には、これら2枚のメモリを、第1番目および第2番目のソケットに挿入して復元処理を行うことができる。
【0160】
同様に、5月末の時点で、格納されているデータの総容量が若干増えて、3つのLED241,242,243が点灯状態であったとすれば、これに対応するメモリ231,232,233の3枚を交換すればよい。この場合、ユーザは、取り外した3枚のメモリ231,232,233について、「5月末における第1番目〜第3番目のソケットに挿入するメモリ」であることを明記して保管しておくようにすればよい。このように、LEDによってデータの格納状態を報知する機能を設けておけば、1枚1枚のメモリ単位で交換および保管を行うことができるので、より効率的な運用が可能になる。
【0161】
なお、LED241〜248およびLED制御手段148を設けることは、この第2の実施形態を実施する上での必須要件ではない。LEDによるデータの格納状態報知機能が備わっていない場合、ユーザは、常に8枚のメモリすべてを交換するようにすればよい。ただ、実用上は、LEDによるデータの格納状態報知機能を設けておき、上例のように、メモリ単位で必要な交換のみを行うことができるようにし、効率的な運用が可能になるようにするのが好ましい。
【0162】
<<< §6.いくつかの変形例 >>>
本発明の本質的な特徴は、磁気記録装置と、着脱可能な不揮発性メモリと、コントローラと、を有するハードディスクドライブ装置において、少なくとも、不揮発性メモリを装着した状態において、ハードディスクドライブ装置に関する第1の寸法規格に合致する装置筐体を構成する外形をなすようにし、装置筐体には、第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子を設け、磁気記録装置を、第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置であって、第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子を備える装置によって構成した点にある。そして、コントローラには、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して、同一のデータファイルを書き込む処理および削除する処理と、磁気記録装置および不揮発性メモリの少なくとも一方から所定のデータファイルを読み出す処理と、磁気記録装置に格納されているデータファイルを不揮発性メモリにコピーする処理と、不揮発性メモリに格納されているデータファイルを磁気記録装置にコピーする処理と、を実行する機能を設けた点にある。ここでは、このような特徴をもった本発明に係るハードディスクドライブ装置について適用可能ないくつかの変形例を述べる。
【0163】
<1> 内蔵電池による駆動
これまで述べた実施形態に係る装置30,40は、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介して電源供給を行う構成をとっていたが、装置内に電池もしくはバッテリ(二次電池)を内蔵させて駆動させるようにしてもよい。
【0164】
たとえば、第1の実施形態に係るハードディスクドライブ装置30の場合、磁気記録ユニット100もしくはメモリユニット200に、電池もしくはバッテリを組み込んでおき、少なくとも磁気記録ユニット用の筐体110とメモリユニット用の筐体210とが結合された状態において、バッテリもしくは電池からの電力が、磁気記録装置130とコントローラ140と不揮発性メモリ230とに供給されるように、必要な配線を施しておけば、外部装置500からの電源供給なしに動作させることができる。
【0165】
一方、第2の実施形態に係るハードディスクドライブ装置40の場合は、装置筐体400内のいずれかの場所に電池もしくはバッテリを組み込んでおき、電池もしくはバッテリからの電力が、磁気記録装置130とコントローラ140と不揮発性メモリ230とに供給されるような配線を施しておけばよい。
【0166】
なお、バッテリを組み込んだ場合、外部装置500を接続したときに供給される電源を利用して充電を行うことができる。
【0167】
もちろん、電池やバッテリを組み込んだ場合でも、書込処理手段142,削除処理手段143,読出処理手段143を動作させる際には、外部装置500から所定のコマンド信号が与えられることが前提となるので、外部装置500から供給される電源を利用して装置を駆動させればよい。これに対して、同期処理手段145や復元処理手段147は、リセットスイッチの操作などによって同期開始条件や復元開始条件を成立させるようにしておけば、外部装置500が接続されていなくても、内蔵の電池やバッテリからの電源供給によって、同期処理や復元処理を実行させることができる。
【0168】
また、第2の実施形態において、LED241〜248を設ける場合、外部装置500が接続されていなくても、内蔵の電池やバッテリからの電源供給によって、LED241〜248を点灯させることができるので、ユーザは、図10に示すように、ハードディスクドライブ装置40を取り外した状態においても、LEDの点灯状態を確認することが可能になる。
【0169】
<2> データの圧縮処理
これまで述べた実施形態に係る装置30,40では、不揮発性メモリ230の全記憶容量が、磁気記録装置130の全記憶容量以上となるように設定し、磁気記録装置130に格納されている全データファイルを、不揮発性メモリ230へバックアップできるようにしていた。
【0170】
しかしながら、書込処理手段142および同期処理手段145(もしくはその一方)が、不揮発性メモリ230への書き込みを行う際に、書込対象となるデータファイルを圧縮してから書き込む処理を行い、読出処理手段144および復元処理手段147(もしくはその一方)が、不揮発性メモリ230からの読み出しを行う際に、読み出したデータファイルを伸張する処理を行うようにしておけば、不揮発性メモリ230の全記憶容量が、磁気記録装置130の全記憶容量よりも小さくても、磁気記録装置130に格納されている全データファイルを圧縮して不揮発性メモリ230へバックアップすることができるようになる。
【0171】
図13は、このようなデータ圧縮を行う変形例を示すブロック図である。コントローラ140は、磁気記録装置130に対してデータファイルを書き込む場合には、そのままの状態で書き込みを行い、磁気記録装置130からデータファイルを読み出す場合には、単に読出処理のみを行う。ところが、不揮発性メモリ230に対してデータファイルを書き込む場合には、所定のアルゴリズムに基づく圧縮処理を実行し、圧縮されたデータを書き込む処理を行い、不揮発性メモリ230からデータファイルを読み出す場合には、読み出したデータに対して前記圧縮処理に対応した伸張処理を行って目的のデータファイルを取り出す処理を行う。
【0172】
§4で述べた利用形態のように、毎月、不揮発性メモリ230を交換するような運用を行う場合、図8に示すように、保管対象となる不揮発性メモリ230は毎月増え続けることになる。このような場合、図13に示すように、不揮発性メモリ230への書き込み時にデータ圧縮を行うようにすれば、メモリ230の容量を節約することができ、メモリ230の調達コストを節約するとともに、メモリ230の保管スペースを節約することができる。なお、磁気記録装置130に保存したデータファイルについては、データ圧縮は行わないので、通常の読み出し処理を磁気記録装置130から行うようにしておけば、データ伸張処理による読出遅延が生じる弊害を避けることができる。
【0173】
<3> データの暗号化処理
バックアップとして保管される不揮発性メモリ230について、セキュリティを高めるためには、データファイルを暗号化した上で保存するようにするとよい。すなわち、書込処理手段142および同期処理手段145(もしくはその一方)が、不揮発性メモリ230への書き込みを行う際に、書込対象となるデータファイルを暗号化してから書き込む処理を行い、読出処理手段144および復元処理手段147(もしくはその一方)が、不揮発性メモリ230からの読み出しを行う際に、読み出したデータファイルを復号化する処理を行うようにしておけば、不揮発性メモリ230には、データファイルが暗号化された状態で保存されることになるので、万一、不正者の手にわたった場合でも、不正利用される可能性を低減することができる。
【0174】
図14は、このようなデータの暗号化を行う変形例を示すブロック図である。コントローラ140は、磁気記録装置130に対してデータファイルを書き込む場合には、そのままの状態で書き込みを行い、磁気記録装置130からデータファイルを読み出す場合には、単に読出処理のみを行う。ところが、不揮発性メモリ230に対してデータファイルを書き込む場合には、所定のアルゴリズムに基づく暗号化処理を実行し、暗号化されたデータを書き込む処理を行い、不揮発性メモリ230からデータファイルを読み出す場合には、読み出したデータに対して前記暗号化処理に対応した復号化処理を行って目的のデータファイルを取り出す処理を行う。
【0175】
この場合も、磁気記録装置130に保存したデータファイルについては、暗号化は行わないので、通常の読み出し処理を磁気記録装置130から行うようにしておけば、復号化処理による読出遅延が生じる弊害を避けることができる。
【0176】
なお、現在、一般的に利用されている多くの暗号化アルゴリズムでは、暗号キーを用いた暗号化が行われる。このように暗号キーを用いた暗号化を行う場合、暗号キーをDIPスイッチによって設定するようにしておくと、セキュリティを更に高めることができる。すなわち、ユーザの設定操作により複数ビットの論理値を設定可能なDIPスイッチを設けておき、書込処理手段142もしくは同期処理手段145が、このDIPスイッチによって設定されている論理値を暗号キーとして用いた暗号化を行い、読出処理手段144もしくは復元処理手段145が、このDIPスイッチによって設定されている論理値を暗号キーとして用いた復号化を行うようにする。DIPスイッチは、たとえば、図2や図10に示すDIPスイッチ150のように、装置筐体のいずれかの箇所に設けておけばよい。
【0177】
図15は、データ暗号化に用いる暗号キーをDIPスイッチによって設定する変形例を示すブロック図である。図示のとおり、データファイルFを不揮発性メモリ230に書き込む際には、まず、暗号化処理P1を行い、暗号化データファイルCを作成し、この暗号化データファイルCの形で書き込みを行う。一方、読み出し時には、不揮発性メモリ230から読み出された暗号化データファイルCに対して、復号化処理P2を実行し、元のデータファイルFを得る。ここで、暗号化処理P1と復号化処理P2とは、同一の暗号キーKを用いた所定のアルゴリズムに基づく数学的な処理になっており、復号化処理P2を行う際に用いた暗号キーが、暗号化処理P1を行う際に用いた暗号キーと相違していると、正しいデータファイルFを得ることはできない。
【0178】
そこで、DIPスイッチによって設定されている論理値を暗号キーKとして用いるようにする。図示の例では、8ビットのDIPスイッチDによって、「10011010」なる論理値が設定された例が示されている。この場合、当該8ビットの論理値を暗号キーKとして用いた暗号化処理P1が実行されることになる。したがって、復号化処理P2を行う場合にも、DIPスイッチDに同じ論理値を設定する必要がある。
【0179】
図2や図10に示す実施形態において、§4に示すように、毎月、メモリを交換して保存する運用をとる場合であれば、ユーザは、図示のDIPスイッチ150に、毎月、特定の論理値を暗号キーKとして設定すればよい。たとえば、図8に示す例の場合、4月末の内容が格納されたメモリユニット200A,5月末の内容が格納されたメモリユニット200B,6月末の内容が格納されたメモリユニット200C,... というように、月ごとのメモリユニットが蓄積保管されることになるが、毎月、異なる論理値を暗号キーKとして設定するように決めておけば、個々のメモリユニットごとに、それぞれ正しい暗号キーをDIPスイッチ150に設定しない限り、正しいデータファイルの復元処理を行うことはできない。
【0180】
たとえば、図8に示すメモリユニット200Bを用いて、5月末の内容を復元する場合、5月中に設定してあった暗号キーKと同じ論理値をDIPスイッチ150に設定して復元処理を行わない限り、正しいデータファイルを復元することはできなくなる。したがって、万一、図8に示すメモリユニット200A〜200Eが不正者の手に渡ったとしても、それぞれについての正しい暗号キーKを知らない限り、保存されているデータファイルを取り出すことはできない。
【0181】
なお、図2に示す第1の実施形態の場合、DIPスイッチは、メモリユニット用の筐体210側に設けることも可能である。この場合、図8に示す個々のメモリユニット200A〜200Eのそれぞれに独立したDIPスイッチが設けられていることになる。そこで、ユーザは、各メモリユニット200A〜200Eを磁気記録ユニット100に接続して用いる際にのみ、当該メモリユニットのDIPスイッチを所定の正しい暗号キーKにセットするようにし(各メモリユニットごとに異なる暗号キーKをセットしてもよいし、共通した暗号キーKをセットしてもよい)、磁気記録ユニット100から取り外して保管する際には、DIPスイッチの論理値をデタラメな値にセットするようにすればよい。
【0182】
暗号化処理に用いる暗号キーの別な取り扱い方法は、図16に示すように、不揮発性メモリ230内に管理領域Mを設け、この管理領域M内に暗号キーKを格納する方法である。管理領域Mは、任意の場所に設けることができるが、たとえば、FATデータを記録する領域に隣接して設けておけばよい。この場合、コントローラ140には、暗号化処理の実行に先立って、不揮発性メモリ230内の管理領域Mに所定の暗号キーKを書き込む機能をもたせておく。暗号キーKは、コントローラ140自身が所定のアルゴリズムに基づいて発生させた値でもよいし、外部装置500から与えられた値でもよい。
【0183】
また、コントローラ140には、外部装置500から第1の外部接続用端子120を介して、所定のパスワードについての認証コマンドが与えられたときに、当該パスワードが正しいか否かを判定する機能をもたせておく。パスワード判定のアルゴリズムは任意のものでかまわない。たとえば、与えられたパスワードについてのハッシュ値を計算し、得られたハッシュ値が特定の値に一致した場合に正しいとの判定を行うようなアルゴリズムでもよい。そして、管理領域M内に書き込まれた暗号キーKは、与えられたパスワードが正しいと判断された場合にのみ、不揮発性メモリ230から読み出されるようにしておき、書込処理手段142もしくは同期処理手段145が、この不揮発性メモリ230から読み出された暗号キーKを用いた暗号化を行い、読出処理手段144もしくは復元処理手段147が、不揮発性メモリ230から読み出された暗号キーKを用いて復号化を行うようにしておく。
【0184】
このような方法をとれば、外部装置500から正しいパスワードを与えない限り、管理領域Mから暗号キーKを読み出すことはできないので、不正者によるデータファイルの復号化を防止する効果が得られる。
【0185】
<4> 復元処理に対する制限
既に述べたとおり、本発明に係るハードディスクドライブ装置では、ユーザは、必要に応じて、任意の不揮発性メモリ230を用いた復元処理を行うことにより、当該不揮発性メモリ230内のデータファイルを、磁気記録装置130内に復元することができる。§3で述べた基本的実施形態では、読出処理手段144は、磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方からデータファイルの読み出しを行う機能を有しているが、もし、読出処理手段144の読み出し機能を、磁気記録装置130からの読み出し機能のみに限定しておけば、不揮発性メモリ230内のデータファイルを取り出す唯一の方法は、復元処理手段147による復元処理ということになる。
【0186】
この場合、復元処理手段147による復元処理に制限を付加することは、不揮発性メモリ230内のデータファイルを不正アクセスから保護する上で有用である。図16に示す例において、管理領域Mに記録されている累積実行回数Nおよび復元可能期間Tは、このような復元処理に制限を付加するために用いる情報である。
【0187】
まず、累積実行回数Nは、復元処理の回数に制限を加えるために用いる情報である。この情報に基づいて回数制限を行うには、復元処理手段147に、復元処理を行うたびに、不揮発性メモリ230内の管理領域Mに復元処理の累積実行回数Nを書き込む処理を行う機能をもたせておき、当該累積実行回数Nが所定の上限回数に達していた場合には、復元処理が行われないようにしておけばよい。
【0188】
たとえば、初期化処理時には、管理領域M内に、累積実行回数Nとして初期値0を書き込むようにする。一方、復元処理手段147には、復元処理を実行する前に、この累積実行回数Nの値を読み出し、所定の上限回数に達しているか否かをチェックさせるようにする。ここで、もし、上限回数に達していた場合には、復元処理が行われないようにする。上限回数に達していなかった場合には、復元処理を実行するとともに、当該累積実行回数Nの値を1だけ増加させた値に書き換えるようにする。そうすれば、無制限に復元処理が実行されることを防止することができる。
【0189】
具体的には、上限回数を1に設定しておけば、1回復元処理を実行してしまうと、累積実行回数Nが上限値1に達してしまうため、以後、復元処理を行うことはできなくなる。もちろん、このような復元処理の回数制限は、不正者によって復元処理が行われること自体を防ぐことはできない。しかしながら、復元処理が無制限に行われることを防止することができるため、不正利用による被害拡大に歯止めをかける効果は得られる。また、正規のユーザに、不正者による復元処理が行われた事実を知らしめる機会を与えるメリットもある。たとえば、上限回数を1に設定した場合、不正者による復元処理が行われた後は、正規のユーザであっても復元処理を行うことはできなくなる。したがって、正規のユーザは、復元処理を行った覚えがないにも拘わらず、復元処理ができなくなっている事実から、不正者による復元処理が行われた疑念を抱くことができる。
【0190】
一方、復元可能期間Tは、復元処理の実行期間を制限する情報である。この情報に基づいて期間制限を行うには、復元処理手段147に、復元処理を行う前に、不揮発性メモリ230内の管理領域に書き込まれている復元可能期間を示す情報を読み出してチェックさせ、当該復元可能期間内の時点にのみ、復元処理が行われるようにすればよい。管理領域M内の復元可能期間Tは、外部装置500から与えられる期間設定コマンドによって、ユーザが所望する任意の期間を設定できるようにしておけばよい。あるいは、初期化処理が実行された場合に、自動的に、当該初期化処理の時点を基準として所定の復元可能期間Tが設定されるようにしてもよい。なお、一度、復元可能期間Tを設定した後は、初期化処理を行わない限り、再設定を行うことができないようにしておけば、不正者によって期間の書き換えが行われることを防ぐことができる。
【0191】
復元可能期間Tは、復元処理を実行することが可能な期間を示すものであれば、どのような情報であってもかまわない。たとえば、「2010年6月30日まで」というような期間の終端を示す情報でもよいし、「2010年6月30日から」というような期間の始端を示す情報でもよい。あるいは、「午前10時〜午後5時」というように毎日の時間帯を示す情報でもよいし、「月曜日〜金曜日」というような曜日を示す情報でもよい。また、管理領域M内には「2010年6月15日」のような1つの時点を示す情報のみを記録しておき、復元処理手段147側において、たとえば、「管理領域M内の記録時点から3ヶ月以内を復元可能期間とする」というような取り扱いを行ってもよい。
【0192】
なお、復元処理を実行しようとしている時点が、復元可能期間T内の時点であるかどうかを判定するためには、現時点がいつであるかを認識するための時計機能が必要である。このような時計機能を得るためには、コントローラ140内に時計回路(パソコンなどで利用されている計時回路でよい)を設けておけばよい。なお、パソコンなどの外部装置500と接続した時点で、コントローラ140内の時計回路の時刻を、外部装置500内の時計回路の時刻に同期させる機能を設けておけば、常に正しい時刻設定が可能になる。
【0193】
<5> RAIDシステムの構築
本発明に係るハードディスクドライブ装置では、同じデータファイルが磁気記録装置130と不揮発性メモリ230との双方に格納されるため、冗長性が確保されることになるが、冗長度を更に向上させるために、磁気記録装置130や不揮発性メモリ230にRAIDシステムを構築することも可能である。
【0194】
たとえば、図2に示すハードディスクドライブ装置30において、磁気記録装置130として、より小さな寸法規格のハードディスクドライブ装置を2台組み込むようにすれば、この2台のハードディスクドライブ装置によってRAIDシステムを構築することができる。このRAIDシステムをミラーリングモードで動作させれば、1つのデータファイルが2台のハードディスクドライブ装置に格納されることになり、かつ、当該データファイルのバックアップが不揮発性メモリ230にも格納されることになるので、冗長度は更に向上する。
【0195】
もちろん、不揮発性メモリ230側にRAIDシステムを構築することも可能である。たとえば、図2に示す例では、8枚のカード型メモリによって不揮発性メモリ230を構成しているが、これを4枚ずつ2つのグループに分け、これら2グループのメモリによってRAIDシステムを構築し、ミラーリングモードで動作させれば、同一のデータファイルを2つのグループに分散させて格納することができ、冗長度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0196】
10:ハードディスクドライブ装置(第1の寸法規格)
11:装置筐体(第1の寸法規格)
12:外部接続用端子(第1の寸法規格)
12A:信号用端子
12B:電源用端子
13:プラッタ(第1の寸法規格)
20:ハードディスクドライブ装置(第2の寸法規格)
21:装置筐体(第2の寸法規格)
22:外部接続用端子(第2の寸法規格)
22A:信号用端子
22B:電源用端子
23:プラッタ(第2の寸法規格)
30:ハードディスクドライブ装置(第1の寸法規格)
40:ハードディスクドライブ装置(第1の寸法規格)
100:磁気記録ユニット
110:磁気記録ユニット用の筐体
115:中継端子
116:嵌合用突起部(着脱手段)
117:嵌合用突起部(着脱手段)
120:第1の外部接続用端子(第1の寸法規格)
120A:信号用端子
120B:電源用端子
130:磁気記録装置(第2の寸法規格のハードディスクドライブ装置)
132:第2の外部接続用端子(第2の寸法規格)
140:コントローラ
141:モード設定手段
142:書込処理手段
143:削除処理手段
144:読出処理手段
145:同期処理手段
146:初期化処理手段
147:復元処理手段
148:LED制御手段
150:DIPスイッチ
200:メモリユニット
200A〜200E:メモリユニット
210:メモリユニット用の筐体
215:中継端子
216:嵌合用孔部(着脱手段)
217:嵌合用孔部(着脱手段)
220:メモリインターフェイス(メモリソケット)
230:不揮発性メモリ(カード型メモリ)
231〜238:不揮発性メモリ(カード型メモリ)
241〜248:LED
400:装置筐体
410:磁気記録装置収納部
420:メモリ収納部
500:外部装置(パソコン)
C:暗号化データファイル
D:DIPスイッチ
F:データファイル
K:暗号キー
M:管理領域
N:累積実行回数
P1:暗号化処理
P2:復号化処理
T:復元可能期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録装置を内蔵した磁気記録ユニットと、不揮発性メモリを内蔵したメモリユニットと、を有するハードディスクドライブ装置であって、
前記磁気記録ユニット用の筐体と、前記メモリユニット用の筐体とは、着脱手段によって、互いに結合したり分離したりすることができるように構成され、両者を結合して得られる合成筐体は、ハードディスクドライブ装置に関する第1の寸法規格に合致し、
前記磁気記録ユニット用の筐体もしくは前記メモリユニット用の筐体には、前記第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子が備わっており、
前記磁気記録装置は、前記第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置によって構成され、前記第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子を備えており、
前記磁気記録ユニットもしくは前記メモリユニットには、コントローラが設けられ、
少なくとも前記磁気記録ユニット用の筐体と前記メモリユニット用の筐体とが結合された状態において、前記コントローラが、前記第1の外部接続用端子と前記第2の外部接続用端子と前記不揮発性メモリとに直接もしくは間接的に接続されるように、必要な配線が施されており、
前記コントローラが、
ユーザの設定操作に基づいて、通常モードか復元モードかのいずれか一方のモードを設定するモード設定手段と、
前記通常モードが設定された状態で、外部装置から前記第1の外部接続用端子を介してファイル書込コマンドが与えられた場合に、前記磁気記録装置と前記不揮発性メモリとの双方に対して、書込対象となる同一のデータファイルを書き込む処理を行う書込処理手段と、
前記通常モードが設定された状態で、外部装置から前記第1の外部接続用端子を介してファイル削除コマンドが与えられた場合に、前記磁気記録装置と前記不揮発性メモリとの双方に対して、削除対象となる同一のデータファイルを削除する処理を行う削除処理手段と、
前記通常モードが設定された状態で、外部装置から前記第1の外部接続用端子を介してファイル読出コマンドが与えられた場合に、前記磁気記録装置および前記不揮発性メモリの少なくとも一方から、読出対象となるデータファイルを読み出す処理を行う読出処理手段と、
前記通常モードが設定された状態で、所定の同期開始条件の成立を検知した場合に、前記磁気記録装置に格納されているデータファイルと前記不揮発性メモリに格納されているデータファイルとが一致するように前記不揮発性メモリを書き換える同期処理を行う同期処理手段と、
前記復元モードが設定された状態で、所定の復元開始条件の成立を検知した場合に、前記磁気記録装置に格納されているデータファイルと前記不揮発性メモリに格納されているデータファイルとが一致するように前記磁気記録装置を書き換える復元処理を行う復元処理手段と、
を有することを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハードディスクドライブ装置において、
コントローラが磁気記録ユニット内に設けられ、第1の外部接続用端子が磁気記録ユニット用の筐体に備わっていることを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハードディスクドライブ装置において、
少なくとも磁気記録ユニット用の筐体とメモリユニット用の筐体とが結合された状態において、外部装置から第1の外部接続用端子に対して与えられた電源が、磁気記録装置とコントローラと不揮発性メモリとに供給されるように、必要な配線が施されていることを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のハードディスクドライブ装置において、
磁気記録ユニットもしくはメモリユニットに、電池もしくはバッテリが組み込まれており、少なくとも磁気記録ユニット用の筐体とメモリユニット用の筐体とが結合された状態において、前記電池もしくは前記バッテリからの電力が、磁気記録装置とコントローラと不揮発性メモリとに供給されるように、必要な配線が施されていることを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
磁気記録ユニット用の筐体とメモリユニット用の筐体とに、それぞれ中継端子が設けられており、両筐体を結合したときに、前記中継端子を介して、磁気記録ユニット側の配線とメモリユニット側の配線とが接続されることを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
1台の磁気記録ユニットと、当該磁気記録ユニットに対して結合可能な複数台のメモリユニットとを有し、前記複数台のメモリユニットのいずれか1つを選択的に前記1台の磁気記録ユニットに結合して利用できるように構成されたことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項7】
第1の寸法規格に合致した筐体内に、磁気記録装置と、不揮発性メモリと、コントローラと、を備えたハードディスクドライブ装置であって、
前記筐体には、前記第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子が備わっており、
前記磁気記録装置は、前記第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置によって構成され、前記第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子を備えており、
前記不揮発性メモリは、前記筐体に設けられたメモリソケットを利用して抜き差し可能なカード型メモリであり、
前記コントローラは、前記第1の外部接続用端子と前記第2の外部接続用端子と前記不揮発性メモリとに直接もしくは間接的に接続されており、
更に、前記コントローラは、
ユーザの設定操作に基づいて、通常モードか復元モードかのいずれか一方のモードを設定するモード設定手段と、
前記通常モードが設定された状態で、外部装置から前記第1の外部接続用端子を介してファイル書込コマンドが与えられた場合に、前記磁気記録装置と前記不揮発性メモリとの双方に対して、書込対象となる同一のデータファイルを書き込む処理を行う書込処理手段と、
前記通常モードが設定された状態で、外部装置から前記第1の外部接続用端子を介してファイル削除コマンドが与えられた場合に、前記磁気記録装置と前記不揮発性メモリとの双方に対して、削除対象となる同一のデータファイルを削除する処理を行う削除処理手段と、
前記通常モードが設定された状態で、外部装置から前記第1の外部接続用端子を介してファイル読出コマンドが与えられた場合に、前記磁気記録装置および前記不揮発性メモリの少なくとも一方から、読出対象となるデータファイルを読み出す処理を行う読出処理手段と、
前記通常モードが設定された状態で、所定の同期開始条件の成立を検知した場合に、前記磁気記録装置に格納されているデータファイルと前記不揮発性メモリに格納されているデータファイルとが一致するように前記不揮発性メモリを書き換える同期処理を行う同期処理手段と、
前記復元モードが設定された状態で、所定の復元開始条件の成立を検知した場合に、前記磁気記録装置に格納されているデータファイルと前記不揮発性メモリに格納されているデータファイルとが一致するように前記磁気記録装置を書き換える復元処理を行う復元処理手段と、
を有することを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のハードディスクドライブ装置において、
不揮発性メモリとして、複数N枚のカード型メモリが設けられており、このN枚のカード型メモリに対応して、N個のLEDが設けられており、
コントローラが、前記N枚のカード型メモリのそれぞれについて、格納されているデータの有無を、対応するLEDの点灯/消灯によって報知する機能を有することを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載のハードディスクドライブ装置において、
筐体内に電池もしくはバッテリが組み込まれており、前記電池もしくは前記バッテリからの電力が、磁気記録装置とコントローラと不揮発性メモリとに供給されることを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
モード設定手段が、ユーザの物理的な操作によって2通りの切替状態のいずれかを維持することができる機械式切替スイッチによって構成されており、当該切替スイッチの第1の切替状態によって通常モード、第2の切替状態によって復元モードの設定がなされることを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
モード設定手段が、少なくとも1ビットの情報を記録する不揮発性のビット記憶部と、外部装置から第1の外部接続用端子を介して与えられるモード設定コマンドによって前記1ビットの情報を書き換えるビット設定部と、によって構成されており、前記1ビットの情報が第1の論理状態であるときに通常モード、第2の論理状態であるときに復元モードの設定がなされることを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
コントローラがバッファメモリを備え、
書込処理手段が、外部装置から与えられた書込対象となるデータを、前記バッファメモリに一時的に格納した上で、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して書き込む処理を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
同期処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、同期処理もしくは復元処理を行う際に、磁気記録装置に格納されているデータファイルと不揮発性メモリに格納されているデータファイルとの整合性を調べ、不一致が生じたデータファイルについてのみ書き換えを行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
ユーザのリセット操作によりコントローラにリセット信号を送信するリセットスイッチを更に有し、
同期処理手段が、前記リセット信号が送信されることを同期開始条件として、同期処理を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
同期処理手段が、外部装置から第1の外部接続用端子を介して同期開始コマンドが与えられることを同期開始条件として、同期処理を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
ユーザのリセット操作によりコントローラにリセット信号を送信するリセットスイッチを更に有し、
復元処理手段が、前記リセット信号が送信されることを復元開始条件として、復元処理を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
復元処理手段が、外部装置から第1の外部接続用端子を介して復元開始コマンドが与えられることを復元開始条件として、復元処理を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
書込処理手段および同期処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリへの書き込みを行う際に、書込対象となるデータファイルを圧縮してから書き込む処理を行い、
読出処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリからの読み出しを行う際に、読み出したデータファイルを伸張する処理を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
書込処理手段および同期処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリへの書き込みを行う際に、書込対象となるデータファイルを暗号化してから書き込む処理を行い、
読出処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、不揮発性メモリからの読み出しを行う際に、読み出したデータファイルを復号化する処理を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項20】
請求項19に記載のハードディスクドライブ装置において、
ユーザの設定操作により複数ビットの論理値を設定可能なDIPスイッチを更に有し、
書込処理手段および同期処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、前記DIPスイッチによって設定されている論理値を暗号キーとして用いた暗号化を行い、
読出処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、前記DIPスイッチによって設定されている論理値を暗号キーとして用いた復号化を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項21】
請求項19に記載のハードディスクドライブ装置において、
コントローラが、不揮発性メモリ内の管理領域に所定の暗号キーを書き込む機能と、外部装置から第1の外部接続用端子を介して、所定のパスワードについての認証コマンドが与えられたときに、前記パスワードが正しいか否かを判定する機能と、前記パスワードが正しいと判断された場合に、前記不揮発性メモリから前記暗号キーを読み出す機能と、を備えており、
書込処理手段および同期処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、前記不揮発性メモリから読み出された暗号キーを用いた暗号化を行い、
読出処理手段および復元処理手段のいずれか一方、もしくは双方が、前記不揮発性メモリから読み出された暗号キーを用いた復号化を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
復元処理手段が、復元処理を行うたびに、不揮発性メモリ内の管理領域に復元処理の累積実行回数を書き込む処理を行い、前記累積実行回数が所定の上限回数に達していた場合には、復元処理を行わないことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
復元処理手段が、復元処理を行う前に、不揮発性メモリ内の管理領域に書き込まれている復元可能期間を示す情報を読み出してチェックし、前記復元可能期間内の時点にのみ、復元処理を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載のハードディスクドライブ装置において、
コントローラが、
通常モードが設定されており、外部装置から第1の外部接続用端子を介して初期化コマンドが与えられた場合に、磁気記録装置と不揮発性メモリとの双方に対して、初期化処理を行う初期化処理手段を更に有することを特徴とするハードディスクドライブ装置。
【請求項25】
磁気記録装置と、着脱可能な不揮発性メモリと、コントローラと、を有するハードディスクドライブ装置であって、
少なくとも、前記不揮発性メモリを装着した状態において、ハードディスクドライブ装置に関する第1の寸法規格に合致する装置筐体を構成する外形をなし、前記装置筐体には、前記第1の寸法規格に合致した第1の外部接続用端子が備わっており、
前記磁気記録装置は、前記第1の寸法規格よりも小さい第2の寸法規格に合致したハードディスクドライブ装置によって構成され、前記第2の寸法規格に合致した第2の外部接続用端子を備えており、
前記コントローラは、前記磁気記録装置と前記不揮発性メモリとの双方に対して、同一のデータファイルを書き込む処理および削除する処理と、前記磁気記録装置および前記不揮発性メモリの少なくとも一方から所定のデータファイルを読み出す処理と、前記磁気記録装置に格納されているデータファイルを前記不揮発性メモリにコピーする処理と、前記不揮発性メモリに格納されているデータファイルを前記磁気記録装置にコピーする処理と、を行うことを特徴とするハードディスクドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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