説明

バイオオイル改質装置

【課題】 多種多様なバイオマスからバイオオイルを製造し、バイオオイルから水性ガスを製造プロセスにおいて、バイオオイルを効率よく改質して、水性ガスを収率良く製造する装置を提供する。
【解決手段】 非磁性体で形成された筒状の容器であって、前記容器の一端に設けられバイオオイル生成装置と連通する入口と、バイオオイル生成装置から供給されるバイオオイルを常圧で気化させる膨脹部と、前記容器の内部に設けられ磁性体で形成された発熱体と、前記容器の他端に設けられ固体と気体とを分離する気体・固体分離装置に連通する出口と、を有し、外周に高周波電磁誘導コイルが卷回された外管と、
前記外管の内部に設けられ、水素透過膜を有し、前記外管を貫通して水素ガス出口と連通する1以上の内管と、を有するバイオオイル改質装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスから製造したバイオオイルの改質装置に係り、より詳しくは、バイオオイルを改質して水素ガスと一酸化炭素を含む水性ガスを効率良く製造するバイオオイル改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス、未利用天然資源、及び廃棄物等の再生可能資源(以下これらをまとめて「バイオマス」と略記する)を化石燃料の代替燃料、或いは工業用の原料として利用し、化石燃料の使用量を削減して大気中の二酸化炭素含有量を削減する方法の開発が進められている。
【0003】
バイオマスを工業的に利用するためには、バイオマス特有の次のような問題点を解決しなければならない。
(1)バイオマスは、石炭、石油、又は天然ガスのような化石燃料に比べて単位重量当たりの発熱量が低い、不純物を多く含み純度が低い、不揮発成分(チャー)が多量に生成する、という問題点がある。そのために各種の効率が低下する。
(2)バイオマスは、種類や形状が多様で、一種類当たりの生産量が少なく、生産量が季節的に変動するものが多く、大部分が体積がかさばる固体であって輸送が困難である。
そのために、バイオマスを処理する装置は、少量多品種の原料を、生産地において、同一の装置で処理しなければならないことが多い。このためには、バイオマスの種類や性状にかかわらず、一定の条件で操作できるような装置であることが望ましい。
(3)バイオマスは、例えば海藻や汚泥のように多量の水分を含むものがある。これらを単純に乾燥させて水分を除くためには大量のエネルギーが必要なので、バイオマスに含まれる水分を有効に除去及び/又は利用する方法の開発も重要な課題である。
【0004】
固体燃料から工業原料を製造するためのアプローチとしては、石炭を水蒸気の存在下に不完全燃焼させて一酸化炭素と水素を含む水成ガスを製造する方法が、石炭化学の基礎反応として19世紀から20世紀前半にかけて確立された。水性ガスは様々な工業製品の原料となる。第2次世界大戦中のドイツと、アパルトヘイト問題下で石油の輸入が制限された南アフリカとでは、水性ガスから、フィッシャー・トロプシュ反応によってガソリンが製造された。
【0005】
この反応をバイオマスに応用してバイオマスから合成ガスを製造し、燃料や工業原料を製造することが試みられている。
バイオマスから水素と一酸化炭素を含む水成ガスを製造し、これを用いてエタノール、ジメチルエーテル(特許文献1を参照)、メタノール(特許文献2を参照)等を製造する方法は、既に開示されている。
【0006】
しかし、水成ガスの製造は、通常900℃以上の温度で行われるため、反応温度を保つためにはバイオマスの一部を燃料として使用しなければならない。このために、バイオマスの水性ガス化反応は収率が低下するという問題点がある。また、この反応は基本的には不完全燃焼反応なので、反応が不安定で反応の制御が難しく、特に生成する一酸化炭素と水素の混合比率の調整が不可能であるという問題点もある。
【0007】
これらの問題及びバイオマス共通の問題点のため、バイオマスの直接ガス化は、下記に定義する炭素収率(%)は、20%が限度とも言われている。
炭素収率 = (生産物中の炭素原子数/原料中の炭素原子数) ×100 (1)
(但し、製造工程で消費するエネルギー量は、同量の燃焼エネルギーを有する炭素量に換算し、生成物中の炭素量から差し引く)
また、バイオマスの、下記に定義するエネルギー回収率も0.2が限度であると言われている。
エネルギー回収率 = 生産物のもつエネルギー/(原料のエネルギー + 製造工程で消費するエネルギー)
バイオマスをガス化して水性ガスを製造する方法は、現在までのところ実用化されていない。
【0008】
バイオマスを加熱して炭化し、これから水性ガスを製造することも可能である。しかし、バイオマス等を高温で乾留して炭化する従来の炭化方法は、得られる炭化物の重量及びエネルギー量が大きく減少するので、使用したバイオマス等に対する炭素収率及びエネルギー回収率は低いものになる。又水分を多く含むもの、及び炭素の含有量の低いものを炭化するのは困難であり、炭化できるバイオマスの種類は限られたものである。
【0009】
バイオマスをマイクロ波加熱器で加熱して炭素材料を製造する方法が提案されている(例えば特許文献3を参照)。マイクロ波加熱器を使用して水素と一酸化炭素を含む水性ガスを製造する方法が報告されている(例えば特許文献4、5を参照)。この反応を組み合わせて、バイオマスから水性ガスを製造することができる。しかし、この方法も炭素収率及びエネルギー回収率が低く、現在までのところ経済的に成立していない。
【0010】
バイオマス等を工業利用可能な素材に変換する第3の方法として、バイオマスの液化がある。バイオマスと水に金属塩を加えてマイクロ波を照射してバイオマスを液化して「バイオオイル」を製造する方法が開示されている(例えば特許文献6を参照)。この方法の炭素収率は80〜90%であると言われている。しかし生成する「バイオオイル」は、不安定で、単位重量当たりの発熱量が低いという問題点があり、用途が限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−277179号公報
【特許文献2】特開平2006−169095号公報
【特許文献3】特開2002−161278号公報
【特許文献4】特開2007−146115号公報
【特許文献5】特開2001−192675号公報
【特許文献6】特表2009−543926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
かかる現状における問題を解決するためになされた本発明の課題は、バイオマスは単位重量当たりの発熱量が低く、不純物を多く含み純度が低く、不揮発成分(チャー)が多量に生成する、という問題点と、種類や形状が多様で、一種類当たりの生産量が少なく、生産量が季節的に変動するものが多いという問題点と、多量の水分を含むものがあるという問題点と、を解決するために、多種多様なバイオマスから製造したバイオオイルを効率よく改質して、水性ガスを収率良く製造する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するためになされた本発明のバイオオイル改質装置は、(1)非磁性体で形成された筒状の容器の一端に設けられ、高温で加圧されたバイオオイルを供給するする入口と、バイオオイルを常圧で気化させる膨脹部と、容器の内部に設けられ磁性体で形成された発熱体と、容器の他端に設けられた出口と、を有し、外周に高周波電磁誘導コイルが卷回された外管と、(2)外管の内部に設けられ、水素透過膜を有し、外管を貫通して水素ガス出口と連通する1以上の内管と、(3)磁性体の材料で形成され前記外管と前記内管との間の空間を加熱する発熱外管と内管との間に設けられ、磁性体の材料で形成された発熱体と、を有することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、内管が、水素透過性を有する金属膜を含んで形成されることが好ましい。
また本発明は、内管が、水素透過性を有するゼオライト膜を含んで形成され、更に、水素ガス出口と連通して水素ガスと水蒸気の中の何れか一方のみを透過させる気体分離装置を備えることができる。
【0015】
また本発明は、水素透過性を有する金属膜が、白金と、パラジウムと、バナジウムと、ニオブと、タングステンと、モリブデンと、の中から選ばれる1以上の金属元素を含む金属膜であることが好ましく、水素透過性を有する金属膜が、白金と、パラジウムと、ニオブにタングステン又は及びモリブデンを添加した合金と、の中から選ばれる金属膜であることがより好ましい。
【0016】
また本発明は、発熱体が、水素透過性を有する金属膜を含んで形成された内管であることが好ましく、外管と内管との間に、更に増感熱触媒を充填することができる。
また本発明は、増感熱触媒が、ニッケルをドープしたペロブスカイト酸化物触媒であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、バイオオイルの温度が120〜347℃の範囲であり、圧力が0.2〜22hPaの圧力であり、膨脹部で常圧に放出されて気化したバイオオイルを外管に卷回された高周波電磁誘導コイルと発熱体を用いて加熱する温度が380〜850℃の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバイオオイル改質装置は、多種多様なバイオマスを、同一の製造装置を用いて、製造条件の複雑な検討を必要とせずに、水性ガスを高収率で製造することができた。
また本発明のバイオオイル改質装置は、原料のバイオマスに含まれる水分をそのまま取り込んで製造したバイオオイルを用いたので、水分を含む原料バイオマスも乾燥することなく使用することができた。
また本発明のバイオオイル改質装置は、バイオオイルの溶媒である水を水素ガスと一酸化炭素を製造するための原料として用いたので、別途の水蒸気を供給する必要がなくエネルーギ−効率が高かった。
また本発明のバイオオイル改質装置は、反応装置内において、生成した水性ガスから水素ガスを水素透過性を有する気体透過膜で形成した内管を用いて取り出したので、反応の平衡を生成物側に移動させて反応収率を上げることができた。また、水素ガスと一酸化炭素ガスの比率を調整して混合して水性ガスを製造できるので、水素ガスと一酸化炭素の比率の調整が可能になると共に、何れか一方のガスが余った場合も、余ったガスを有効利用することができた。
また本発明のバイオオイル改質装置は、水素透過膜を水素透過性金属膜で形成したので、別途の発熱体を必要とせず、装置を簡素化することができた。
また本発明のバイオオイル改質装置は、増感熱触媒を充填したことによって、バイオオイルを水性ガスまで分解させることができたので、別途の水性ガス製造設備を必要としなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】バイオマスからバイオオイルと炭素材料とを経由して水性ガスを製造する水素ガス製造方法の第1実施形態の概略図である。
【図2】バイオマスからバイオオイルを経由して水性ガスを製造する水素ガス製造方法の第2実施形態の概略図である。
【図3】バイオマス供給装置及びバイオオイル製造装置の構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るバイオオイル改質装置の第1実施例の模式断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るバイオオイル改質装置の第2実施例の模式断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るバイオオイル改質装置の第3実施例の模式断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るバイオオイル改質装置の第4実施例の模式断面図である。(A)は中心線に沿った縦断面図であり、(B)は(A)のa−a線に沿った横断面図である。
【図8】固体・気体分離装置の模式断面図である。
【図9】水性ガス製造装置の模式断面構成図である。
【図10】ジメチルエーテル製造装置の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、バイオマスから製造したバイオオイルから、水性ガスを製造する、バイオオイル改質装置に関する。
本発明で用いる「バイオマス」という語は、狭義のバイオマスのみでなく、未利用資源、及び廃棄物等の再生可能資源を含むものとする。
「バイオマス」の具体例としては、木材、竹材、稲わら、麦わら、草本、農産物、海藻、生ごみ、家庭廃棄物、工業廃棄物、農産廃棄物、畜産廃棄物、活性汚泥廃棄物をあげることができる。
本発明で用いるバイオマスは、構成元素として炭素、水素、及び酸素からなるものが好ましい。炭素、水素、及び酸素からなるバイオマスを、模式的に(C)と表すことができる。
【0021】
また、「水性ガス」は、コークスなどの炭素化合物と水蒸気を900℃以上で反応させて得られる水素ガスと一酸化炭素を含む混合ガスのことをさすが、本発明では水素ガスと一酸化炭素とを含む混合ガスを「水性ガス」と称するものとする。本発明では、炭素化合物と水蒸気から、水性ガスを製造し、水素ガスと一酸化炭素それぞれを膜分離装置を用いて別個の取り出した後、成分比を調整して混合し「水性ガス」とする。
【0022】
また、「バイオオイル」は、「バイオマス」を高温高圧の水で炭化・分解させて得たバイオマス分解物の水溶液であり、原料と分解の程度によって組成が異なる複雑な混合物である。
「バイオオイル」は、分解中間体が重合した重質炭化水素及び芳香族化合物を主成分とする高分子タール成分と、さらに分解が進んだチャー(炭化物)と、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、及び水素ガスを主成分とする非凝縮成分と、を含む。
【0023】
バイオマスの分解反応は、炭酸ガスと水素ガスとが副反応によって生成するという還元性の条件で、水酸基の脱離反応がトリガーとなって分解が進行するので、バイオオイル中の高分子タール成分は、比較的酸素含有量の少ない重質炭化水素化合物と芳香族化合物の混合物が主成分となる。
高分子タール成分を模式的に(C)と表すと、バイオマスからバイオオイルの生成反応は次のように表わすことができる。
(C) => C、C、CO、H,CO (2)
【0024】
バイオオイルから水素ガスと一酸化炭素を製造する反応は、バイオオイルに含まれるバイオマス分解物を過熱水蒸気で分解する気体反応である。
バイオオイルに含まれるバイオマス分解物を模式的に(C)と表した場合、バイオオイルの改質反応は、式〜のように表わすことができる。
+ xHO => xCO + (x + y/2)H (3)
(y=0〜2)
+ xCO => xCO + y/2H (4)
CO + HO=> CO + H (5)
【0025】
バイオオイルの分解反応は、(3)式の反応が主反応である。(3)式の(C)の重量を1とした場合, (C)を分解するのに必要な水蒸気の重量は(C)の重量の1.3〜1.5倍になる。従って、濃度の高いバイオオイルを製造すれば、溶媒の水は、バイオオイルの分解反応によって消費することができる。本発明では、原料のバイオマスに含まれていた水分は、バイオオイルの中に取り込まれるので、原料のバイオマスに含まれていた水を生成物の水性ガスの原料として利用することができる。従って、原料のバイオマスを乾燥する必要がなく、効率が良い。
【0026】
バイオオイルは、炭素収率が80〜90%という高率であると共に、反応条件を一定にすれば、品質が比較的一定したバイオオイルが得られるという長所がある。
バイオオイルは水溶液であるから、原料のバイオマスを乾燥することなく用いることができる。但し、例えば海藻のように、水分量が非常に高いバイオマスを用いる場合は、予め乾燥するか、例えば木材のように、水分量の低いバイオマスと混合し、原料全体の水分量を調節して用いる必要がある。
バイオオイルが不安定であるという問題点は、製造直後のバイオオイルを用いることによって解消される。
【0027】
以下に添付した図面を参照して本発明のバイオオイル改質装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、バイオマスからバイオオイルと炭素材料とを経由して水性ガスを製造する水素ガス製造システムの第1の実施態様の概略図である。
本発明では、好ましくは、バイオマスからマイクロ波加熱装置を用いて製造したバイオオイルを用いる。
バイオマス10は、水と、マイクロ波を吸収し発熱するための発熱材である炭素材料と共に、水蒸気を搬送気体として粉体輸送され、バイオオイル製造装置120に供給され、マイクロ波加熱装置により急速加熱されて、バイオオイル60に変換される。
【0028】
本発明に係るバイオオイル改質装置150は、高周波誘導式加熱装置を備えるインラインヒータであり、水素透過性を有する金属膜が多孔質体で形成された水素透過膜によって形成された内管を有する。水素透過性を有する金属膜は、高周波電磁誘導加熱装置の発熱体として作用することができる。
【0029】
バイオオイル製造装置120で製造された直後の高温高圧のバイオオイル60は、本発明に係るバイオオイル改質装置150に送られ、大気圧下で膨脹されて水が気化し、水蒸気になる。バイオマスの分解物であるタール分とチャーとは粉末になり、水蒸気を搬送気体として粉体輸送される。
なお、水素透過膜を非磁性体の水素透過膜で形成し、これとは別に磁性体の発熱体を設けても良い。また、バイオオイル改質装置150に、増感熱触媒を充填することができる。本実施形態で用いる増感熱触媒はバイオマス分解物の更なる分解を促進させ、装置にチャーやタール分が付着するのを防ぐことができる。
【0030】
バイオマスの分解物は、過熱水蒸気中で450〜850℃に加熱され、更に分解して炭化する。分解反応で生成する水素ガス40は、バイオオイル改質装置150に設けられた水素透過膜を有する内管によって取り出される。炭素材料20と、一酸化炭素50及び水蒸気30を含む気体成分70は固体・気体分離装置160に送られる。
【0031】
固体・気体分離装置160は、炭素材料20と気体成分70とを分離する。炭素材料20は、水性ガス製造装置200に送られ、気体成分70は、水蒸気分離器170に送られる。なお、炭素材料20の一部は、マイクロ波吸収材としてバイオオイル製造装置120に送られる。
水蒸気分離器170は、水蒸気を選択的に通過させるSOD型ゼオライト膜を備える。SOD型ゼオライト膜を通過した水蒸気30は、水性ガス製造装置200に送られる。SOD型ゼオライト膜を通過しなかった気体は一酸化炭素50を含み、一酸化炭素50は水素ガス40と混合されて水性ガス52とに変換される。
【0032】
水性ガス製造装置200において、炭素材料20と水蒸気30から水性ガス52が製造される。本発明の水性ガス製造装置200は二重管であって、内管は水素透過膜で形成されるので、水素ガスと一酸化炭素とを分離して製造することができる。
水性ガス製造装置200に、水蒸気分離器170で回収した水蒸気30を供給することによって、水性ガス製造装置200で大量に必要とされる水蒸気の生成エネルギーを節減することができる。
【0033】
水性ガス52からは、多様な製品を製造することが可能であるが、ここではジメチルエーテル301を製造するジメチルエーテル製造装置300を例示する。
ジメチルエーテルを製造すために用いる水性ガスは、水素ガスと一酸化炭素のモル比率が1:2であることが好ましい。本発明は、水素ガスと一酸化炭素を別々に製造するので、水性ガスの組成を調整してジメチルエーテル製造装置に供給することができる。
水素ガスが不足する場合は、公知技術である水性ガスシフト反応装置を用いて一酸化炭素と水蒸気から水素ガスを製造することができる。
【0034】
水素ガスが余る場合は、例えば、固体酸化物形燃料電池燃料電池(SOFC)を用いて、水素ガスから40%以上の燃料効率で発電することができる。固体酸化物形燃料電池燃料電池は、動作温度が800〜1000℃であり、電解質として酸化物イオンの透過性が高い安定化ジルコニアやランタン、ガリウムのペロブスカイト酸化物などのイオン伝導性セラミックスを用い、空気極で生成した酸化物イオンが電解質を透過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。このため800〜1000℃の水蒸気を発生するので、この水蒸気をバイオオイル改質装置150に供給し、水蒸気とエネルギーの補給に利用することができる。得られた電力は、本製造工程で使用する電力として使用すると共に、余剰が出れば売電することも可能である。
【0035】
本実施例では、水性ガスからジメチルエーテルを製造する例を例示したが、本発明はこれに限定されない。水性ガスからは、公知の方法によって、メタノール、エタノール、メタン、フィッシャートロプッシュによる炭化水素など、多くの化学製品を製造することが可能である。
【0036】
図2は、バイオマスからバイオオイルを経由して水性ガスを製造する水素ガス製造方法の第2実施形態の概略図である。
図2は、図1とバイオオイル改質装置の機能が異なる。図2に示したバイオオイル改質装置150には増感熱触媒が充填され、バイオマスの分解物が過熱水蒸気中380〜850℃に過熱され、水素ガスと一酸化炭素への変換反応がバイオオイル改質装置150内で行われるように配備されている。バイオオイル改質装置150で製造された水素ガス40は、バイオオイル改質装置150に設けられた水素透過膜を有する内管によって取り出される。
【0037】
分解ガスは、固体・気体分離器162に送られ、固体成分22と気体成分70とに分離される。固体成分22は、未分解のチャー(炭素材料20)を含むので、マイクロ波吸収材としてバイオオイル製造装置120に送られる。気体成分70は、水蒸気分離器170に送られ、水蒸気と一酸化炭素に分離される。
このように配備することによって、バイオオイル改質装置で水性ガスを製造することができ、第2実施形態は水性ガス製造装置を必要としない。
【0038】
以下に、添付した図面を参照して本発明のバイオオイル改質装置について詳細に説明する。
本発明の原料として用いるバイオオイルは、本発明に係るバイオオイル改質装置が好適に用いることができるバイオオイルであれば製造方法は特に制限されないが、好ましい実施例として、マイクロ波発振器122を用いるバイオオイル製造装置を例示する。
【0039】
図3は、バイオマス供給装置及びバイオオイル製造装置の構成図である。第3図に示すように、バイオマス供給装置110は、バイオマス10を粉末化する粉砕機111と、粉末化されたバイオマス10を水蒸気30に浮遊させて供給する粉体輸送機112と、を備えることができる。
【0040】
バイオマスは、バイオオイル製造装置120において無酸素状態で120〜347℃に加熱されることによってバイオオイルに変換される。バイオマス10は水分を含むので、反応容器124内は加圧状態となる。加熱温度は150〜347℃がより好ましく、最も好ましい実例として200〜347℃の温度範囲を例示することができる。圧力は、0.2〜22hPaの範囲である。マイクロ波発振器122は被照射物を急速に加熱できるので、反応時間は10〜600秒の範囲であることができる。
【0041】
バイオオイル製造部120は、バイオマスが浮遊する水蒸気30を加圧して供給する加圧ポンプ121と、マイクロ波発振器122と、少なくとも内面が金属製の円筒形空間126を有する容器124と、を備え、
円筒形空間126内に、向きが円筒形空間126の中心軸128に平行で、大きさが円筒形空間126の中心軸方向及び円周方向に一定な軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器129と、
前記マイクロ波共振器の中心軸と中心軸を共有して前記マイクロ波共振器129の内部を貫通し、一端で前記加圧ポンプ121と連結するマイクロ波を吸収しない材質で形成された円筒130と、
前記非磁性体の円筒の他端に設けられた圧力制御弁132と、を有する。
【0042】
図4は、本発明の第1実施形態に係るバイオオイル改質装置の第1実施例の模式断面図である。図4に示すように、バイオオイル改質装置150は、外管157と内管159とを有するインライン式高周波誘導加熱器であることが好ましい。
外管157は、非磁性体で形成された筒状の容器であって、外管157の一端に設けられ、バイオオイル製造装置120の出口である圧力制御弁132と連通するバイオオイル改質装置入口154と、バイオオイルを常圧で気化させる膨脹部141と、外管157の内部に設けられ磁性体で形成された発熱体156と、外管157の他端に設けられ、固体・気体分離装置160に連通するバイオオイル改質装置出口155と、外管157の外周に卷回された高周波電磁誘導コイル158と、を備えることが好ましい。
【0043】
内管159は、前記外管の内部に設けられた1以上の管であって、水素透過膜222から形成され、外管157の側壁を貫通して水素ガス出口218と連通することが好ましい。
内管159を形成する水素透過膜222は、水素透過性を有するゼオライト膜226と多孔質体で形成された支持体220とを含んで形成されることができる。ゼオライト膜226は、SODゼオライトが好ましい。
【0044】
SODゼオライトは、水素ガス40と水蒸気30とを共に通過させるので、SODゼオライト膜226を有する水素透過膜223から形成された内管159を用いる場合は、更に、水素ガス40と水蒸気30との中の何れか一方のみを通過させる分離装置を備えることが好ましい。
【0045】
磁性体で形成された発熱体156は、外管157の外周に卷回された高周波電磁誘導コイル158から発信される高周波によって誘導電流を発生して発熱する磁性体であればよい。外管内部の温度分布を均一にするためには均一に配置されることが好ましく、外管内部の圧力損失が少ないことが望ましく、伝熱効果を上げるためには表面積の広いものが好ましい。
【0046】
バイオマスの分解物は、380℃以上に加熱すると発熱しながら自己分解する。従って、反応開始時は高周波誘導加熱器で加熱し、反応が定常状態になった後は温度制御を行えばよい。反応温度は380〜850℃の範囲が好ましく、より好ましくは500〜800℃の範囲である。380℃以下では自発分解が進行せず、450℃以下では、下記(1)に示す逆シフト反応が進行して、一酸化炭素の含有量が減少する。850℃より高温では、自己分解反応が急速に進みすぎる。
【0047】
CO + HO = CO + H (1)
バイオオイル60は、炭化し、乾燥されて炭素材料20と気体成分70とを与える。炭素材料20と気体成分70は固体・気体分離装置160に送られる。
【0048】
図5は、本発明の第1実施形態に係るバイオオイル改質装置の第2実施例の模式断面図である。
図5に示すように、本実施例のバイオオイル改質装置151は、内管159を形成する水素透過膜223が、水素透過性を有する金属膜224と多孔質体で形成された支持体220とを含んで形成されることを特徴とする。水素透過性を有する金属膜224は、高周波電磁誘導加熱装置の発熱体を兼ねるので、本実施例のバイオオイル改質装置151は別途の発熱体は必要がない。
【0049】
図6は、本発明の第2実施形態に係るバイオオイル改質装置の第31実施の模式断面図である。図6に示すように、本実施例のバイオオイル改質装置152は、第2の実施例のバイオオイル改質装置151の外管157の内部に、更に増感熱触媒142が充填されることを特徴とする。増感熱触媒142はバイオオイルを改質する速度を増大させ、温度を低下させると共に、反応容器に炭化物が付着するのを防ぐことができる。
【0050】
増感熱触媒142としては、鉄、マンガン、亜鉛、銅、ニッケル等の遷移金属を含む触媒が好ましい。これらの中で、ニッケルをドープしたペロブスカイト酸化物触媒が特に好ましい。
ペロブスカイト酸化物とは、ペロブスカイト(灰チタン石、CaTiO3)と同じ結晶構造からなる遷移金属酸化物である。
【0051】
図7は、本発明の第2実施形態に係るバイオオイル改質装置の第4実施例の模式断面図である。(A)は中心線に沿った縦断面図であり、(B)は(A)のa−a線に沿った横断面図である。
図7に示すように、本実施例のバイオオイル改質装置153の内管159は、水素透過性を有する金属膜224と多孔質体で形成された支持体220とを有する水素透過膜223から形成され、一端が封鎖され相互に隔離された複数の管からなり、複数の管それぞれの他端が水素ガス出口218に連通されるように形成されることを特徴とする。本実施例に係るバイオオイル改質装置は、外管157の内部に、更に増感熱触媒142が充填されることが好ましい。増感熱触媒142はバイオオイルを改質する速度を増大させ、温度を低下させると共に、反応容器に炭化物が付着するのを防ぐことができる。
内管の上記のように形成することによって水素透過膜223に表面積を広くし、水素の回収率を上げることができる。
【0052】
図8は、固体・気体分離装置の模式断面図である。固体・気体分離装置160は、バイオオイル改質装置150から供給される炭素材料20と気体成分70の混合物から、炭素材料20と水蒸気30それぞれを単離できる装置であれば特に制限されない。
【0053】
好ましい実施例として、図8に示す、バイオオイル改質装置出口155に連通するサイクロン式の固体・気体分離器162と、固体・気体分離器162の気体成分出口166に連通して設けられ、水蒸気通過膜を備える水蒸気分離器170と、水蒸気分離器170の水蒸気透過膜を通過した気体の出口173に連通する水素分離器175を有し、固体・気体分離器162の固体出口である炭素材料出口164と、水素分離器175の水素透過膜を通過した水素ガス40の出口である水素ガス出口171と、水素透過膜を通過しなかった水蒸気30の出口である水蒸気出口172と、前記水蒸気分離器170の水蒸気透過膜を通過しなかった排ガス71の出口である排ガス出口177と、を備える固体・気体分離装置160を挙げることができる。炭素材料20と水蒸気30とは水性ガス製造装置200に供給され、水素ガス40は一酸化炭素50と混合されて水性ガス52に変換される。
【0054】
水蒸気分離器170に適用される水蒸気分離膜は、本発明の目的にかなうものであれば特に制限されないが、好ましい例としてSOD型ゼオライト膜を挙げることができる。また、水素分離器175に適用される水素分離膜も、本発明の目的にかなうものであれば特に制限されないが、好ましい例として、例えば白金と、パラジウムと、ニオブにタングステン又は及びモリブデンを添加した合金と、の中から選ばれる金属の薄膜を多孔質の支持体に担持させたものを挙げることができる。
【0055】
図9は、水性ガス製造装置の部分模式断面図である。水性ガス製造装置は、炭素材料20と水蒸気30から水性ガス52を製造できる装置であれば何れでも良いが、好ましい実施例として、マイクロ波発振器206を備える水性ガス製造装置200を例示することができる。
図9に示すように、水性ガス製造装置200は、固体・気体分離器162の炭素材料出口164から供給された炭素材料20と、水蒸気出口172から供給された水蒸気30とを混合し、水蒸気30に炭素材料20の粉末を浮遊させた混合気体91を製造する噴流混合器202と、混合気体91を加圧して水性ガス製造装置200に供給する加圧ポンプ204と、を有することが好ましい。
【0056】
水性ガス製造装置200は、更に、マイクロ波発振器206と、マイクロ波発振器206と連通し、内面が金属製のマイクロ波が導入される円筒形の空間208を有し、円筒形の空間208内に、向きが円筒形の空間208の中心軸212に平行して大きさが円筒形の空間208の中心軸212方向及び円筒形の空間208の円周方向に一定な、軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器210と、を有することが好ましい。
【0057】
水性ガス製造装置200は、更に、マイクロ波共振器210の内部に形成され、一端が加圧ポンプ204と連通し、他端側に一酸化炭素出口216を有するマイクロ波を吸収しない材質の外管214と、外管214の他端側から外管214の内部に挿入して形成され、他端側に水素ガス出口232が設けられた多孔質支持体の支持管230と、支持管230の外側に設けられた水素透過膜234と、水素透過膜222の外側に設けられた水性ガス化反応触媒236と、を備えることが好ましい。
【0058】
水性ガス化反応触媒236は、炭素材料20と水蒸気30を、水素ガス40と一酸化炭素50とに変換する触媒であれば特に制限されないが、好ましい実例として、ペロブスカイト酸化物にニッケルなどの遷移金属を担持した触媒を挙げることができる。
多孔質支持体の支持管230の外側に水素透過膜234を設け、その外側に水性ガス化反応触媒236を設けることによって、発生した水素ガス40を反応系外に取り出し、水性ガス化反応を促進させることが好ましい。
【0059】
水性ガス製造装置200で製造された水素ガス40と一酸化炭素50は、ジメチルエーテル製造装置300に供給することができる。ジメチルエーテル製造装置300は、メタノールを製造してメタノールからジメチルエーテルを製造する装置と、一工程でジメチルエーテルを製造する装置とがある。何れの装置でもよいが、マイクロ波発振器305を備え、メタノールを製造し、メタノールからジメチルエーテルを製造する装置を例示する。
一酸化炭素50と水素ガス40を含む混合ガスを、Cu、Zn、Cr、Al、Au、又はZrの何れかの元素を1種類以上含む触媒を用いて、マイクロ波加熱によって120〜300℃で加熱してメタにールを製造し、メタノールをアルミナ、シリカ等の公知の脱水触媒を用いて、マイクロ波加熱器で200〜350℃に加熱することによってジメチルエーテルを製造することができる。
【0060】
図10は、ジメチルエーテル製造装置の一例を示す模式断面図である。
図10に示すように、本実施例のジメチルエーテル製造装置は、メタノール製造装置302と、エーテル化装置303と、冷却捕集装置304と、エーテル化装置303および冷却捕集装置304を加熱するマイクロ波加熱装置305と、を有する。
一酸化炭素50と水素ガス40を、成分比が1:2になるように混合して水性ガス52を製造する。水性ガス52を水素還元処理したCuO−ZnO−Cr系触媒が充填されたマイクロ波加熱装置メタノール製造装置302を通過させ、マイクロ波加熱装置305で200℃に加熱し、次いでAl系触媒を充填したエーテル化装置303を通過させ、マイクロ波加熱装置305で300℃に加熱し、冷却捕集装置304をジメチルエーテル301を製造する。
【0061】
以下に、実施例を挙げて、本発明のバイオオイル改質装置を更に詳細に説明する。
(製造例1)
ニッケルドープペロブスカイト酸化物触媒の製造
クエン酸63gとエチレングリコール56mlを約350mlの水に溶かし、この水溶液に炭酸カルシウム10gを徐々に溶解後、全量を水で500mlとした溶液をカルシウム原液とした。クエン酸63gとエチレングリコール56mlを約350mlの水に溶かし、この水溶液に炭酸ストロンチウムは14.8gを徐々に溶解後、全量を水で500mlとした溶液をストロンチウム原液とした。クエン酸105gとエチレングリコール112mlを約350mlの水に溶かし、この水溶液にオルトチタン酸テトライソプロピル28.4gを加える。溶液を激しく撹拌すると、生じた白色沈殿は溶解して透明な溶液となる。これに水を加えて全量を500mlとしたものをチタン原液とした。クエン酸42gとエチレングリコール56mlを約250mlの水に溶かし、これに硝酸ニッケル6水和物29.1gを加えて、ロータリーエバポレーター中90℃で撹拌する。数時間後黄褐色のガスが発生し、このガスの発生が止まった時点で、液体に水を加えて全量を250mlとし、これをニッケル原液とした。
カルシウム原液40ml、ストロンチウム原液10ml、チタン原液50ml及びニッケル原液5mlを混合し、減圧下に濃縮した後にホットプレート上で乾固した。これを電気炉に入れて空気中300℃に加熱して、白煙の発生が止まった時点で、温度を500℃まで上げて5時間焼成した。ここで得られた固形物を乳鉢で粉末にし、良く混合した。再度空気中850℃で10時間焼成し、ニッケルドープペロブスカイト酸化物触媒を得た。
【0062】
(製造例2)
(バイオオイル製造装置)
含水率31%に調整したおが屑2029kg(おが屑1400kg、水629kg)に回収炭素材料400kgを加え、均一に混合したバイオマス原料を、500℃の過熱水蒸気を搬送気体とし、粉体輸送機を用いて2MPaに加圧して内径20mmのセラミック管を有する連続式マイクロ波処理装置(日本化学機械製造株式会社製、マイクロ波出力5.0KW)に、おが屑供給量に換算して25kg/hr(炭素に換算して10.0kg/hr)の速度で供給し、マイクロ波で200℃に加熱したことによって、バイオオイル製造装置の出口に設けられた圧力調整弁から高温高圧のバイオオイル4105kgが得られた。搬送気体の500℃の過熱水蒸気は、過熱水蒸気発生装置 DHF Super−Hi(第一高周波工業株式会社製)で供給した。
原料のバイオマス、及び製造したバイオオイルの燃焼熱を、燃焼熱量計を用いて測定したところ、それぞれ16.7MJ/kg(Dry)及び6.7MJ/kgであり、エネルギー回収率は0.85であった。
【0063】
(第1実施形態)
(第1実施例)
本実施例で用いるバイオオイル改質装置150(図4参照)は、外周に高周波電磁誘導コイル158が卷回されたインラインヒーター(第一高周波工業株式会社製)である。
本実施形態の磁性体のバイオオイル改質装置150は、磁性体で形成された発熱体156と、水素透過性を有するゼオライト膜226と多孔質体で形成された支持体220とを含んで形成された水素透過膜222と、を有する。バイオオイル改質装置150のバイオオイル改質装置入口154を、バイオオイル製造装置120の出口である圧力制御弁132と連結し、バイオオイル改質装置150から供給される高温のバイオオイルを膨脹部141で常圧で気化させた。バイオオイルに含まれていたバイオマスの分解物は、バイオオイルが気化して得られた水蒸気で粉体輸送された。バイオマスの分解物をインラインヒーターで450℃に加熱し、生成物を図8に示した固体・気体分離器に送って炭素材料5.8kg/hr及び一酸化炭素1.4kg/hrを得た。炭素回収率は64%であった。
【0064】
(第1実施形態)
(第2実施例)
本実施例で用いるバイオオイル改質装置151(図5参照)は、外周に高周波電磁誘導コイル158が卷回されたインラインヒーター(第一高周波工業株式会社製)である。
本実施形態の磁性体のバイオオイル改質装置151は、内管159を形成する水素透過膜223が、水素透過性を有する金属膜226と多孔質体で形成された支持体220とを含んで形成されることを特徴とする。水素透過性を有する金属膜226は、高周波電磁誘導加熱装置の発熱体を兼ねるので、本実施例のバイオオイル改質装置151は別途の発熱体は必要ではない。
バイオオイル改質装置151のバイオオイル改質装置入口154を、バイオオイル製造装置120の出口である圧力制御弁132と連結し、高温のバイオオイルを膨脹部141で常圧で気化させた。バイオオイルに含まれていたバイオマスの分解物は、バイオオイルが気化して得られた水蒸気で粉体輸送された。バイオマスの分解物をインラインヒーターで600℃に加熱し、生成物を、図8に示した固体・気体分離器に送って炭素材料5.5kg/hr及び一酸化炭素2.3kg/hrを得た。炭素回収率は65%であった。
【0065】
(第2実施形態)
(第3実施例)
本実施例で用いるバイオオイル改質装置152(図6参照)は、外周に高周波電磁誘導コイル158が卷回されたインラインヒーター(第一高周波工業株式会社製)である。
本実施形態の磁性体のバイオオイル改質装置151は、内管159を形成する水素透過膜223が、水素透過性を有する金属膜226と多孔質体で形成された支持体220とを含んで形成され、外管の内部に更に増感熱触媒142が充填されることを特徴とする。
バイオオイル改質装置152のバイオオイル改質装置入口154を、バイオオイル製造装置120の出口である圧力制御弁132と連結し、高温のバイオオイルを膨脹部141で常圧で気化させた。バイオオイルに含まれていたバイオマスの分解物は、バイオオイルが気化して得られた水蒸気で粉体輸送された。バイオマスの分解物をインラインヒーターで700℃に加熱し、生成物を、図8に示した固体・気体分離器に送って炭素材料1.8kg/hr、水素ガス0.9kg/hr及び一酸化炭素13.5kgを得た。ここで得られた炭素材料は、マイクロ波吸収材としてバイオマス製造装置に供給され、循環された。一酸化炭素の炭素回収率は58%であった。
【0066】
増感熱触媒142はバイオオイルを改質する速度を増大させ、温度を低下させると共に、反応容器に炭化物が付着するのを防ぐことができた。
増感熱触媒142としては、鉄、マンガン、亜鉛、銅、ニッケル等の遷移金属を含む触媒が好ましい。これらの中で、ニッケルをドープしたペロブスカイト酸化物触媒が特に好ましい。
バイオオイルに含まれていたバイオマスの分解物は、バイオオイルが気化して得られた水蒸気で粉体輸送された。バイオマスの分解物をインラインヒーターで700℃に加熱し、生成物を、図8に示した固体・気体分離器に送って炭素材料4.3kg/hrを得た。
を得た。
【0067】
(第2施形態)
(第4実施例)
本実施例で用いるバイオオイル改質装置153(図6参照)は、外周に高周波電磁誘導コイル158が卷回されたインラインヒーター(第一高周波工業株式会社製)である。
本実施形態の磁性体のバイオオイル改質装置153は、水素透過性を有する金属膜224と多孔質体で形成された支持体220とを有する水素透過膜222から形成された内管159が、水素ガス出口143に連通し、分岐され、相互に離隔して外管157の内側に設けられたことを特徴とする。本発明に係るバイオオイル改質装置153は、更に外管157の内部に、更に増感熱触媒142が充填される。
【0068】
バイオオイル改質装置15のバイオオイル改質装置入口154を、バイオオイル製造装置120の出口である圧力制御弁132と連結し、高温のバイオオイルを膨脹部141で常圧で気化させた。バイオオイルに含まれていたバイオマスの分解物は、バイオオイルが気化して得られた水蒸気で粉体輸送された。バイオマスの分解物をインラインヒーターで700℃に加熱し、生成物を、図8に示した固体・気体分離器に送って炭素材料1.8kg/hr、水素ガス1.1kg/hr、及び一酸化炭素14.5kg/hrを得た。一酸化炭素の炭素回収率は62%であった。
【符号の説明】
【0069】
10 バイオマス
20 炭素材料
22 固体成分
30 水蒸気
40 水素ガス
50 一酸化炭素
52 水性ガス
60 バイオオイル
70 気体成分
71 排ガス
80 搬送気体
81 バイオマスが浮遊する気体
91 混合気体
110 バイオマス供給装置
111 粉砕機
112 粉体輸送機
113 出口
120 バイオオイル製造装置
121 加圧ポンプ
122 マイクロ波発振器
124 容器
126 円筒形空間
128 中心軸
129 マイクロ波共振器
130 マイクロ波を吸収しない材質で形成された円筒
132 圧力制御弁
141 膨脹部
142 増感熱触媒
143 水素ガス出口
150〜153 バイオオイル改質装置
154 バイオオイル改質装置入口
155 バイオオイル改質装置出口
156 発熱体
157 外管
158 高周波電磁誘導コイル
159 内管
160 固体・気体分離装置
162 固体・気体分離器
164 炭素材料出口
166 気体成分出口
170 水蒸気分離器
171 水素ガス出口
172 水蒸気出口
173 水蒸気透過膜を通過した気体の出口
175 水素分離器
177 排ガス出口
200 水性ガス製造装置
202 噴流混合器
204 加圧ポンプ
206 マイクロ波発振器
208 円筒形の空間
210 マイクロ波共振器
212 中心軸
214 外管
216 一酸化炭素出口
218 水素ガス出口
220 支持体
222、223 水素透過膜
224 金属膜
226 ゼオライト膜
228 水素分離装置
230 支持管
232 水素ガス出口
234 水素透過膜
236 水性ガス化反応触媒
300 ジメチルエーテル製造装置
301 ジメチルエーテル
302 メタノール製造装置
303 エーテル化装置
304 冷却捕集装置
305 マイクロ波加熱装置
310 燃料電池
320 電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体で形成された筒状の容器であって、その一端に設けられ、高温で加圧されたバイオオイルを供給する入口と、前記バイオオイルを常圧で気化させる膨脹部と、前記容器の他端に設けられた出口と、を有し、外周に高周波電磁誘導コイルが卷回された外管と、
前記外管の内部に設けられ、水素透過膜を有し、前記外管の側壁を貫通して水素ガス出口と連通する1以上の内管と、
磁性体の材料で形成され前記外管と前記内管との間の空間を加熱する発熱体と、
を有することを特徴とするバイオオイル改質装置。
【請求項2】
前記内管は、水素透過性を有する金属膜を含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載のバイオオイル改質装置。
【請求項3】
前記内管は、水素透過性を有するゼオライト膜を含んで形成され、更に、前記水素ガス出口と連通して水素ガスと水蒸気の中の何れか一方のみを透過させる気体分離装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のバイオオイル改質装置。
【請求項4】
前記水素透過性を有する金属膜が、白金と、パラジウムと、バナジウムと、ニオブと、タングステンと、モリブデンと、の中から選ばれる1以上の金属元素を含む金属膜であることを特徴とする請求項2に記載のバイオオイル改質装置。
【請求項5】
前記水素透過性を有する金属膜が、白金と、パラジウムと、ニオブにタングステン又は及びモリブデンを添加した合金と、の中から選ばれる金属膜であることを特徴とする請求項4に記載のバイオオイル改質装置
【請求項6】
前記発熱体が、前記水素透過性を有する金属膜を含んで形成された前記内管であることを特徴とする請求項2に記載のバイオオイル改質装置。
【請求項7】
前記外管と前記内管との間に、更に増感熱触媒を充填することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のバイオオイル改質装置。
【請求項8】
前記増感熱触媒が、ニッケルをドープしたペロブスカイト酸化物触媒であることを特徴とする請求項6に記載のバイオオイル改質装置。
【請求項9】
前記バイオオイルの温度が120〜347℃の範囲であり、圧力が0.2〜22hPaの範囲であり、前記膨脹部で常圧に放出されて気化したバイオオイルを前記外管に卷回された高周波電磁誘導コイルと前記発熱体を用いて加熱する温度が380〜850℃の範囲であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のバイオオイル改質装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−6753(P2013−6753A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152019(P2011−152019)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(507146658)
【Fターム(参考)】