説明

バイオプシ装置、ファントム、空間範囲測定装置及び空間範囲測定方法

【課題】生検針が生検部位の組織を採取可能な空間範囲を予め測定する。
【解決手段】バイオプシ装置(10)は、検査対象物(22)に穿刺して該検査対象物(22)中の生検部位の組織を採取可能な生検針(62)と、検査対象物(22)を模擬したファントムに生検針(62)を穿刺して該ファントムの一部を採取した後に撮影されたファントムの画像に基づいて、生検針(62)が生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定する空間範囲測定部(94)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等の生体の検査対象物に生検針を穿刺して該検査対象物中の生検部位の組織を採取するためのバイオプシ装置に関する。また、本発明は、生検針が生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定するための空間範囲測定装置及び空間範囲測定方法に関する。さらに、本発明は、バイオプシのトレーニングや前記空間範囲の測定に用いられるファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医師が人体等の生体の検査対象物に生検針を穿刺して該検査対象物中の生検部位の組織を採取するバイオプシが広く行われている。一般に、外部から検査対象物中の生検部位(例えば、乳房中の病変)を視認することが困難であるため、バイオプシでは、検査対象物に放射線を照射するステレオ撮影を行って、前記検査対象物のステレオ画像を取得した後に、該ステレオ画像から前記生検部位の3次元座標位置を算出し、次に、算出された前記3次元座標位置に基づいて医師が前記検査対象物に生検針を穿刺することにより、前記生検部位の組織を前記生検針で採取する。
【0003】
このように、バイオプシでは、外部から視認することが困難な生検部位の組織を採取する必要がある一方で、生体をあまり傷つけることなく検査対象物に生検針を穿刺して、生検部位の組織を確実に且つ正確に採取できることが望ましい。そこで、近年、バイオプシに対する医師の熟練度を向上させる目的で、人体の検査対象物及び生検部位の組織を模擬したファントムが開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1のファントムは、検査対象物としての乳房を模擬したゼラチンに、生検部位の組織としての腫溜を模擬したヨウ素の液状物(黒色顔料)を内蔵させている。この場合、前記ゼラチンは、放射線及び光を透過する材料であり、前記黒色顔料は、前記放射線及び前記光に対して不透過な材料である。従って、医師は、前記ファントムに生検針を穿刺して、前記黒色顔料と該黒色顔料近傍の前記ゼラチンの一部とを採取物として採取し、前記ファントムから前記生検針を抜き取って前記採取物を取り出すことにより、該ファントムを用いたバイオプシのトレーニングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5273435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際にバイオプシを行う場合、医師は、生検針により生検部位の組織を採取可能な空間範囲を知ることができないため、現状では、これまでの該医師の経験及び勘に依存してバイオプシを行っている。従って、生検部位から空間的に離れた箇所に生検針を穿刺すると、前記生検針により採取可能な空間範囲から前記生検部位が外れて、該生検部位の組織を採取できない場合がある。この結果、検査対象物に一度穿刺した前記生検針を該検査対象物から一旦引き抜いて、前記検査対象物に再度穿刺することになり、人体(患者)等の生体の肉体的負担が増大する。
【0007】
また、生検針が採取可能な空間範囲は、該生検針の特性等の要因で変化する可能性があるため、上記のように、医師の経験及び勘に頼って検査対象物に前記生検針を穿刺すると、バイオプシがうまくいかない場合もある。
【0008】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、生検針が生検部位の組織を採取可能な空間範囲を予め測定することができるバイオプシ装置、ファントム、空間範囲測定装置及び空間範囲測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るバイオプシ装置は、生体の検査対象物に穿刺して該検査対象物中の生検部位の組織を採取可能な生検針と、前記検査対象物を模擬したファントムに前記生検針を穿刺して該ファントムの一部を採取した後に撮影された前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定する空間範囲測定部とを有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る空間範囲測定装置は、生体の検査対象物を模擬したファントムに生検針を穿刺して該ファントムの一部を採取した後に撮影された前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記検査対象物中の生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定する空間範囲測定部を有することを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明に係る空間範囲測定方法は、生体の検査対象物を模擬したファントムに生検針を穿刺して該ファントムの一部を採取し、採取後の前記ファントムを撮影して該ファントムの画像を取得し、前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記検査対象物中の生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定することを特徴としている。
【0012】
上記の各発明によれば、ファントムの一部の採取後に撮影された前記ファントムの画像に基づいて、生検針が生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定するので、検査対象物に前記生検針を穿刺して前記生検部位の組織を採取するバイオプシを実行する前に、該生検部位の組織を採取可能な空間範囲を予め測定することが可能となる。
【0013】
これにより、前記生検部位から空間的に離れた箇所に前記生検針を穿刺することを回避することができる。また、前記生検針の特性等の要因で空間範囲が変化する可能性があっても、測定された空間範囲に従ってバイオプシを行うことにより、該バイオプシがうまくいかないことを回避することができる。
【0014】
ところで、前記ファントムと人体等の実際の生体との間では互いに物性が異なるため、前記生検針により採取可能な空間範囲が互いに異なる場合があり得る。
【0015】
そこで、前記空間範囲測定部は、前記ファントムの画像に基づいて、前記ファントムの一部の採取によって該ファントム内に形成された前記ファントムの一部に応じた第1空間範囲を測定し、測定した前記第1空間範囲を前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な第2空間範囲に補正する。
【0016】
このように、前記空間範囲測定部は、実際のバイオプシにおいて前記生検針が採取可能な前記第2空間範囲を求めるので、前記生検部位が前記第2空間範囲内に入るように前記検査対象物に前記生検針を穿刺することにより、前記生検部位の組織を確実に採取することが可能となる。
【0017】
また、前記空間範囲測定部が前記ファントムの物性及び前記検査対象物の物性に基づく補正データを用いて前記第1空間範囲を前記第2空間範囲に補正すれば、該第2空間範囲を精度よく求めることが可能となる。
【0018】
この場合、前記補正データは、前記生検針が前記ファントムの一部を採取可能な空間範囲及び該生検針が前記生検部位の組織を採取可能な空間範囲に基づくデータ、あるいは、前記ファントムを構成する物質の特性値及び前記検査対象物を構成する物質の特性値に基づくデータであればよい。このようなデータを使用して前記第1空間範囲を前記第2空間範囲に補正することにより、前記第2空間範囲を正確に求めることが可能となる。
【0019】
なお、空間範囲に基づくデータとは、例えば、前記ファントム及び前記検査対象物に前記生検針を予め穿刺して採取を行うことにより、採取後の前記ファントム及び前記検査対象物に形成された空間範囲をいう。また、特定値に基づくデータとは、前記ファントムを構成する物質の弾性係数や、前記検査対象物を構成する物質の弾性係数である。従って、前記空間範囲測定部は、前記ファントムの画像中、前記第1空間範囲と周囲の物質との間のコントラストから該第1空間範囲を特定し、特定した第1空間範囲と予め測定された空間範囲との比較に基づいて、前記第2空間範囲を求めることが可能であるし、あるいは、特定した第1空間範囲を示すデータに前記各弾性係数に基づく補正係数を乗ずることにより前記第2空間範囲を求めることが可能となる。
【0020】
また、前記空間範囲測定部による前記第2空間範囲の算出は、前記ファントムの画像を取得したときに行ってもよいし、あるいは、バイオプシを行う直前に行ってもよい。そこで、前記バイオプシ装置は、前記空間範囲測定部による前記第1空間範囲の測定結果を記憶する第1空間範囲記憶部と、前記補正データを記憶する補正データ記憶部と、前記空間範囲測定部による前記第2空間範囲の補正結果を記憶する第2空間範囲記憶部とをさらに有することが望ましい。これにより、前記ファントムの画像を取得した直後や、医師がバイオプシを実施する直前等、適宜、前記空間範囲測定部による前記第1空間範囲の測定及び前記第2空間範囲への補正を行うことが可能となる。
【0021】
さらに、[発明が解決しようとする課題]の項目でも説明したように、前記生検針の特性等の要因によって、前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な空間範囲(第2空間範囲)が変化する可能性がある。
【0022】
このような問題を解決するために、前記バイオプシ装置は、
前記生検針が採取すべき生検部位を指示する生検部位指示部と、
前記生検部位指示部により指示された前記生検部位の位置を算出する生検部位位置算出部と、
前記第2空間範囲の変化要因を示す変化要因データを記憶する変化要因データ記憶部と、
前記第2空間範囲記憶部から前記第2空間範囲を読み出すと共に、前記変化要因データ記憶部から前記変化要因データを読み出し、前記生検部位の位置と、読み出した前記第2空間範囲及び前記変化要因データとに基づいて、前記生検部位指示部により指示された前記生検部位の組織を前記生検針により採取可能であるか否かを判定する判定部と、
をさらに有することが望ましい。
【0023】
この場合、医師が前記生検部位指示部を操作して前記生検部位を指示し、前記生検部位位置算出部が前記生検部位の位置を算出すると、前記判定部は、前記生検部位の位置、前記第2空間範囲及び前記変化要因データに基づいて、前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能であるか否かを判定する。このように、前記第2空間範囲の変化要因を考慮して前記生検部位の組織を採取可能であるか否かが判定されるので、肯定的な判定結果(採取可能の判定結果)である場合には、バイオプシを行うことが可能となり、一方で、否定的な判定結果(採取不可能の判定結果)である場合には、誤って前記生検針が前記検査対象物に穿刺されることを防止することができる。
【0024】
また、前記判定部の判定結果を報知部を介して外部に報知すれば、医師は、バイオプシを実行すべきか否かを容易に認識することができる。
【0025】
また、前記バイオプシ装置は、前記生検部位指示部が前記生検部位を指示した際に、前記生検針の位置を算出する生検針位置算出部と、前記生検部位の位置及び前記生検針の位置に基づいて、前記生検部位に対する前記生検針の移動量を算出する生検針移動量算出部とをさらに有し、
前記判定部は、
前記生検針による前記生検部位の組織の採取が可能と判定した場合には、前記生検部位の組織が採取可能であることを前記報知部を介して外部に報知すると共に、前記生検針移動量算出部による前記生検針の移動量の算出及び前記報知部による前記移動量の報知を許可し、
一方で、前記生検針による前記生検部位の組織の採取が不可能と判定した場合には、前記生検針による前記生検部位の組織の採取禁止を前記報知部を介して外部に報知すると共に、前記生検針移動量算出部による前記生検針の移動量の算出を禁止してもよい。
【0026】
これにより、前記判定部が肯定的な判定(採取可能の判定)を行った場合には、該判定結果と前記生検針の移動量とが前記報知部により報知されるので、医師は、報知内容に従ってバイオプシを正確且つ確実に実行することができる。なお、前記生検針移動量算出部は、前記肯定的な判定結果に従って前記生検針の移動量を算出するので、算出された前記移動量だけ前記生検針を移動させれば、前記生検部位指示部により指示された前記生検部位の組織が前記第2空間範囲内に確実に入ることになり、この結果、該生検部位の組織を効率よく採取することが可能となる。
【0027】
一方、前記判定部が否定的な判定(採取不可能の判定)を行った場合には、該判定結果のみが前記報知部により報知されるので、医師は、バイオプシが実行できないことを容易に認識することができる。
【0028】
また、前記生検針の特性等の要因によって前記第2空間範囲が変化する(小さくなる)ことにより、前記検査対象物に対して前記生検針を正確に穿刺しても、前記生検部位の組織が前記第2空間範囲から外れてしまうか、あるいは、前記生検部位の組織を採取できない場合もある。
【0029】
そこで、前記判定部は、前記第2空間範囲が前記変化要因データに基づく閾値を下回る場合には、前記生検針による前記生検部位の組織の採取が不可能と判定してもよい。これにより、前記第2空間範囲の変化に起因してバイオプシがうまくいかない可能性がある場合に、バイオプシの実行を確実に中止させることができる。
【0030】
また、前記検査対象物における前記生検針の穿刺可能範囲が予め設定されている場合に、前記判定部は、前記生検部位の位置が前記穿刺可能範囲から外れていれば、前記生検針による前記生検部位の組織の採取が不可能と判定してもよい。前記生検部位の位置が前記穿刺可能範囲から外れている場合でもバイオプシがうまくいかない可能性があるので、上記判定を行うことにより、バイオプシの実行を確実に中止させることができる。
【0031】
また、前記バイオプシ装置は、前記生検針の移動を制御する生検針移動制御部をさらに有し、前記生検針の移動量の算出を前記判定部が許可した場合に、前記生検針移動量算出部は、算出した前記生検針の移動量を前記生検針移動制御部に出力し、前記生検針移動制御部は、入力された前記生検針の移動量に基づいて、前記検査対象物に前記生検針を穿刺させてもよい。これにより、前記バイオプシ装置は、前記生検針の移動量に基づき該生検針を移動させて、前記検査対象物に対するバイオプシを自動的に実行する。これにより、バイオプシに関わる医師の作業負担を軽減することができる。
【0032】
さらに、前記生検針の先端部近傍の側面に前記生検部位の組織又は前記ファントムの一部を吸引して採取する採取部を設け、前記採取部が吸引通路を介して前記生検部位の組織又は前記ファントムの一部に対する吸引動作を行う吸引装置と接続されてもよい。この場合、前記変化要因データが前記採取部を含めた前記生検針の特性、前記吸引通路の特性及び前記吸引装置の特性を示すデータであれば、前記判定部は、前記生検部位の組織を採取可能であるか否かを一層正確に判定することができる。
【0033】
そして、上記の各発明において、放射線源から前記ファントムの一部を採取した後の前記ファントムに放射線を照射し、該ファントムを透過した前記放射線を放射線検出器により放射線画像に変換することで前記ファントムの画像が取得されることが望ましい。
【0034】
また、前記生検針に前述した採取部を設けた場合に、前記生検部位が前記生検針の穿刺方向に沿って前記採取部から空間的に離間しているときには、該採取部が前記生検部位の位置に近づくように前記穿刺方向に沿って前記生検針を移動させれば、前記第2空間範囲内に前記生検部位の組織が入ることになるので、該生検部位の組織を採取することが可能となる。これに対して、前記生検部位が前記生検針の径方向に沿って前記採取部から空間的に離間し、且つ、前記第2空間範囲から外れている場合には、前記生検部位が前記第2空間範囲に入るように前記生検針を径方向に移動させることは困難である。このような場合には、前記検査対象物から前記生検針を一旦引き抜いて、該検査対象物に再度穿刺する必要がある。
【0035】
このような不都合を回避するために、前記放射線源は、少なくとも前記ファントムに対する前記生検針の穿刺方向に沿って前記放射線を照射し、前記放射線検出器は、前記ファントムを透過した前記放射線を、前記穿刺方向に略直交する前記放射線の投影面の放射線画像に変換することが望ましい。これにより、前記放射線画像は、前記生検針の径方向(前記穿刺方向に直交する方向)に沿った平面(前記投影面)の画像となるため、該径方向に沿った前記第2空間範囲の幅を求めることにより、実際にバイオプシを実行する前に、前記生検部位が前記第2空間範囲に入るか否かを容易に判定することが可能となる。
【0036】
また、前記ファントムに前記生検針を複数回穿刺して前記ファントムの一部をそれぞれ採取することにより、前記ファントムの内部に該ファントムの一部に応じた複数の採取空間を形成し、側面視で、前記各採取空間を互いに重ならないように形成してもよい。
【0037】
前記各採取空間を前記ファントムに形成させることにより、該各採取空間に対応する前記検査対象物中の位置での第2空間範囲を容易に求めることが可能となる。また、特性の異なる複数の生検針を前記ファントムに穿刺して前記各採取空間を形成した場合には、前記各採取空間に応じた第2空間範囲は、互いに異なる可能性がある。従って、前記各生検針に応じた第2空間範囲を予め求めておき、バイオプシを実行する際に、前記生検部位の位置及び大きさに応じた生検針を選択すれば、該バイオプシを確実に且つ効率よく実行することができる。
【0038】
さらに、前記ファントムは、人体の乳房を模擬し、前記人体の胸壁から離間するように前記ファントムに前記生検針を複数回穿刺することにより、前記ファントムの内部に前記各採取空間を形成してもよい。この場合でも、前記各採取空間に応じた前記乳房中の第2空間範囲を容易に求めることができる。
【0039】
ここで、上述したファントムは、下記の構成であることが望ましい。
【0040】
すなわち、本発明に係るファントムは、生体の検査対象物を模擬した第1部材と、該検査対象物中の生検部位の組織を模擬し且つ前記第1部材に内蔵される第2部材とを有するファントムであって、前記第1部材は、放射線を透過可能な物質であり、前記第2部材は、前記第1部材と比較して前記放射線に対する透過率が低い物質であるか、又は、前記放射線に対して不透過な物質であり、前記ファントムに生検針を穿刺して該ファントムの一部を採取した後に該ファントムの画像を撮影し、撮影した前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な空間範囲が測定されることを特徴としている。
【0041】
本発明に係るファントムによれば、前記生検部位の組織を模擬した前記第2部材が前記第1部材に内蔵されているので、該組織を採取するためのバイオプシのトレーニングを行うことが可能になる。従って、医師が前記ファントムを用いてバイオプシのトレーニングを行うことにより、例えば、乳房内部の石灰化組織を採取するバイオプシに対する該医師の熟練度を向上させることができる。また、前記第2部材が前記第1部材と比較して前記放射線に対する透過率が低い物質であるか、又は、前記放射線に対して不透過な物質であるため、放射線撮影を行って放射線画像(前記ファントムの画像)を取得した場合、前記第1部材と前記第2部材とを容易に識別することが可能となる。さらに、前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定することで、上述したバイオプシ装置、空間範囲測定装置及び空間範囲測定方法における各効果を容易に得ることができる。
【0042】
この場合、前記第1部材の内部に粒子状の複数の前記第2部材を略均一に配置すれば、前記生検部位の組織に前記生検針を正確に位置決めさせるためのトレーニングを医師に行わせることが可能となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、ファントムの一部の採取後に撮影された前記ファントムの画像に基づいて、生検針が生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定するので、検査対象物に前記生検針を穿刺して前記生検部位の組織を採取するバイオプシを実行する前に、該生検部位の組織を採取可能な空間範囲を予め測定することが可能となる。
【0044】
これにより、前記生検部位から空間的に離れた箇所に前記生検針を穿刺することを回避することができる。また、前記生検針の特性等の要因で空間範囲が変化する可能性があっても、測定された空間範囲に従ってバイオプシを行うことにより、該バイオプシがうまくいかないことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係るバイオプシ装置を組み込んだマンモグラフィシステムの斜視図である。
【図2】図1のマンモグラフィシステムの一部省略側面図である。
【図3】マンモに対するステレオ撮影を模式的に説明するための説明図である。
【図4】図1のバイオプシ装置を含むマンモグラフィシステムの構成ブロック図である。
【図5】図5Aは、本実施形態で用いられるファントムの斜視図であり、図5Bは、図5Aのファントムを容器に収容した状態を示す斜視図である。
【図6】図6Aは、容器に生検針を穿刺する前の斜視図であり、図6Bは、図6Aの生検針、ファントム及び容器の断面図である。
【図7】図7Aは、生検針の先端部が容器の一部を切り裂いた状態を示す断面図であり、図7Bは、前記生検針をファントム内部に穿刺した状態を示す斜視図である。
【図8】図8Aは、ファントムの一部に対する吸引を生検針が開始した状態を示す断面図であり、図8Bは、生検針がファントムの一部を採取物として採取した状態を示す断面図である。
【図9】図9Aは、採取物を吸引する状態を示す断面図であり、図9Bは、ファントム及び容器から生検針を抜き取った状態を示す断面図である。
【図10】図10Aは、生検針が抜き取られたファントム及び容器に対して、該生検針の穿刺方向に沿って放射線を照射する場合を示す斜視図であり、図10Bは、生検針が抜き取られたファントム及び容器に対して、前記穿刺方向に略直交する方向から放射線を照射する場合を示す斜視図である。
【図11】図11A及び図11Bは、生検針が抜き取られたファントム及び容器に対する放射線撮影の例を示す説明図である。
【図12】図12A及び図12Bは、図11A及び図11Bの放射線撮影により得られた放射線画像の説明図である。
【図13】図13A及び図13Bは、図12A及び図12Bの放射線画像に対して所定の画像処理を行った場合を示す説明図である。
【図14】図14A〜図14Cは、生検部位の位置と該生検部位の採取可能範囲との関係を示す説明図である。
【図15】図1、図2及び図4のバイオプシ装置及びマンモグラフィ装置を用いた空間範囲の測定を説明するためのフローチャートである。
【図16】図1、図2及び図4のバイオプシ装置及びマンモグラフィ装置を用いた生検部位の組織の採取を説明するためのフローチャートである。
【図17】図17Aは、複数の空洞及び抜け跡が形成されたファントムに対する放射線撮影を示す斜視図であり、図17B及び図17Cは、図17Aの放射線撮影により得られた放射線画像の説明図である。
【図18】図18Aは、複数の空洞及び抜け跡が形成されたファントムに対する放射線撮影を示す斜視図であり、図18B及び図18Cは、図18Aの放射線撮影により得られた放射線画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明に係るバイオプシ装置について、ファントム、空間範囲測定装置及び空間範囲測定方法との関連で、好適な実施形態を、図1〜図18Cを参照しながら、詳細に説明する。
【0047】
本実施形態に係るバイオプシ装置10は、図1及び図2に示すように、マンモグラフィシステム12に組み込まれている。
【0048】
マンモグラフィシステム12は、基本的には、立設状態に設置される基台14と、該基台14の略中央部に配設された旋回軸16の先端部に固定されるアーム部材18と、被検体(人体、生体)20のマンモ22に対して放射線24を照射する放射線源26を収容し、アーム部材18の一端部に固定される放射線源収容部28と、マンモ22を透過した放射線24を検出する固体検出器(放射線検出器)30が収容され、アーム部材18の他端部に固定される撮影台32と、該撮影台32に対してマンモ22を圧迫して保持する圧迫板34と、該圧迫板34に装着され、マンモ22の生検部位36から必要な組織を採取するバイオプシハンド部38と、基台14と有線を介して電気的に接続されたコンソール(空間範囲測定装置)40とを備える。
【0049】
なお、図1及び図2では、座位の体勢にある被検体20のマンモ22を圧迫板34及び撮影台32により圧迫固定した状態において、マンモ22に対する放射線24の照射や、生検部位36の組織の採取が行われる場合を図示している。また、基台14には、被検体20の撮影部位等の撮影条件や被検体20のID情報等を設定可能な表示操作部(報知部)42が配設される。
【0050】
放射線源収容部28及び撮影台32を連結するアーム部材18は、旋回軸16を中心として旋回することで、被検体20のマンモ22に対する方向が調整可能に構成される。また、放射線源収容部28は、ヒンジ部44を介してアーム部材18に連結されており、矢印θ方向に撮影台32とは独立に旋回可能に構成される。アーム部材18の矢印X方向に沿った両側部には、被検体20が把持するための取手部46がそれぞれ設けられている。
【0051】
圧迫板34は、アーム部材18に形成された溝部48に連結された状態で放射線源収容部28及び撮影台32間に配設されており、矢印Z方向に変位可能に構成される。この圧迫板34の変位量d(図3参照)は、変位量検出部50(図4参照)によって検出可能となっている。
【0052】
圧迫板34の上面(圧迫板34の放射線源26側に位置する面)における溝部48近傍には、バイオプシ装置10を構成するバイオプシハンド部38が取り付けられている。また、圧迫板34における被検体20の胸壁52側には、バイオプシハンド部38を用いた組織採取のための矩形状の開口部54が形成されている。なお、圧迫板34は、溝部48に対して着脱可能に構成されていてもよい。この場合、形状の異なる開口部54が形成された圧迫板34を複数用意しておけば、被検体20に無理な体勢を強いることなくバイオプシを行うことができる。
【0053】
バイオプシハンド部38は、圧迫板34に固定されたポスト56と、該ポスト56に一端部が軸支され、圧迫板34の面に沿って旋回可能な第1アーム58と、該第1アーム58の他端部に一端部が軸支され、圧迫板34の面に沿って旋回可能な第2アーム60とを備える。第2アーム60の他端部には、矢印Z方向に移動可能な生検針62が装着される。
【0054】
生検針62は、マンモ22の生検部位36の組織(例えば、石灰化組織)を吸引して採取する採取部64を有する。生検針62の採取部64は、バイオプシハンド部38の第1アーム58及び第2アーム60を圧迫板34の面に沿ったX−Y平面内で移動させると共に、生検針62を矢印Z方向に移動させることにより、生検部位36の近傍に配置することができる。なお、生検針62の矢印Z方向への移動(上昇又は下降)は、バイオプシハンド部38により自動的に行ってもよいし、あるいは、医師により手動で行ってもよい。
【0055】
図3に示すように、マンモグラフィシステム12では、固体検出器30の垂直軸(中心軸)66に対して斜め(A位置及びB位置)に配置された放射線源26からマンモ22に対して放射線24a、24bを照射するステレオ撮影を行い、固体検出器30は、ステレオ撮影によりマンモ22を透過した放射線24a、24bを検出して放射線画像(ステレオ画像)に変換する。
【0056】
マンモグラフィシステム12では、ステレオ撮影の撮影枚数や撮影順序は適宜設定される。また、A位置及びB位置間の放射線源26の移動は、上述したように、ヒンジ部44を中心として放射線源収容部28を回動させることにより行われる。なお、本実施形態では、A位置及びB位置に放射線源26を配置した状態で放射線24a、24bをそれぞれ照射する場合について説明したが、垂直軸66上のC位置及びA位置に放射線源26を配置した状態で放射線24、24aをそれぞれ照射するステレオ撮影や、C位置及びB位置に放射線源26を配置した状態で放射線24、24bをそれぞれ照射するステレオ撮影も可能であることは勿論である。
【0057】
図1及び図4に示すように、コンソール40には、表示部(報知部)68と、指示部(生検部位指示部)70が接続されている。表示部68は、ステレオ撮影により得られた2枚の放射線画像(ステレオ画像)を表示する。指示部70は、マウス等のポインティングデバイスである。表示部68の表示内容(ステレオ画像)を視た医師は、前記ポインティングデバイスを用いて、各ステレオ画像中の複数の病変の中から、組織を採取したい病変(ターゲット、生検部位36)を指示することが可能である。なお、タッチパネル式の表示部68を用いることにより、表示部68と指示部70とを一体に構成してもよいことは勿論である。
【0058】
また、表示部68は、2枚の放射線画像の表示に代えて、該2枚の放射線画像を用いて作成された3次元の放射線画像を表示してもよい。この場合、該放射線画像には、複数の病変も3次元表示される。従って、指示部70が3次元マウス等の3次元のポインティングデバイスであれば、医師は、該指示部70を操作することにより、3次元表示された複数の病変の中から、採取したい病変を容易に指示することができる。
【0059】
さらに、コンソール40は、ステレオ撮影(放射線撮影)に関わる構成要素として、撮影条件設定部80、放射線源駆動制御部82、圧迫板駆動制御部84、検出器制御部88、画像情報記憶部90、及び、CAD(Computer Aided Diagnosis)処理部92を有する。
【0060】
撮影条件設定部80は、管電流、管電圧、放射線24(24a、24b)の照射線量、照射時間、撮影方法、撮影順序等の撮影条件を設定する。また、撮影条件設定部80は、ステレオ撮影での撮影角度(A位置、B位置、C位置の角度)や、撮影台32の位置データ、圧迫板34の初期位置データ、及び、開口部54の位置データ等の位置情報も撮影条件の一部として設定してもよい。
【0061】
撮影台32の位置データとしては、図3に示す原点(基準点)Oから撮影台32上面(撮影台32のうちマンモ22に接触する面、圧迫板34に対向する面)までの矢印Z方向に沿った距離L1が用いられ、圧迫板34の初期位置データとしては、初期状態における原点Oから圧迫板34の下面(圧迫板34のうちマンモ22に接触する面、撮影台32に対向する面)までの矢印Z方向に沿った距離L2が用いられる。なお、原点Oは、任意に設定可能であるが、本実施形態においては、垂直軸66上に設定されている。また、初期状態とは、マンモ22を圧迫する前の状態を意味し、この場合、圧迫板34は、図3の2点鎖線の位置に配置される。さらに、開口部54の位置データとしては、開口部54のうち、圧迫板34の下面側の開口を構成する4つの線分の各交点の原点Oに対する3次元座標位置が用いられる。
【0062】
圧迫板駆動制御部84は、圧迫板34を矢印Z方向に移動させる。放射線源駆動制御部82は、圧迫板34及び撮影台32によりマンモ22が圧迫保持された状態において、前記撮影条件に従って放射線源26を駆動制御する。検出器制御部88は、固体検出器30を制御して、該固体検出器30で放射線24(24a、24b)から変換された放射線画像を画像情報記憶部90に記憶する。なお、マンモ22に対する放射線撮影では、2つの撮影角度(ステレオ角度)での2枚の放射線画像(ステレオ画像)が記憶される。CAD処理部92は、画像情報記憶部90に記憶された放射線画像に対して所定の画像処理を行い、表示部68及び/又は表示操作部42に画像処理後の放射線画像(ステレオ画像)を表示させる。なお、CAD処理部92は、2枚の放射線画像を表示部68及び/又は表示操作部42に2次元表示させるような画像処理を行ってもよいし、あるいは、前述のように、前記2枚の放射線画像を用いて3次元の放射線画像を生成し、生成した3次元の放射線画像を表示部68及び/又は表示操作部42に表示させてもよい。
【0063】
また、コンソール40は、バイオプシに関わる構成要素として、圧迫板位置算出部86、吸引空間算出部(空間範囲測定部)94、ファントム吸引範囲記憶部(第1空間範囲記憶部)96、吸引可能範囲記憶部(第2空間範囲記憶部)98、補正データ記憶部100、変化要因データ記憶部102、ターゲット位置算出部(生検部位位置算出部)104、生検針位置算出部106、判定部108、生検針移動量算出部110、及び、生検針駆動制御部(生検針移動制御部)112をさらに有する。
【0064】
従って、本実施形態に係るバイオプシ装置10は、コンソール40内部のバイオプシに関わる上記の各構成要素と、バイオプシハンド部38、表示操作部42、開口部54、生検針62、表示部68及び指示部70とから構成される。
【0065】
ここで、バイオプシ装置10を構成するコンソール40内の各構成要素のうち、マンモ22に対する生検針62の穿刺に直接関係する一部の構成要素について、その基本的な構成を説明する。
【0066】
圧迫板位置算出部86は、圧迫板34の初期位置データと変位量検出部50からの出力信号とに基づいて、原点Oに対する圧迫板34の下面のZ方向の位置を算出する。
【0067】
ターゲット位置算出部104は、指示部70で指示された生検部位36の3次元座標位置(以下、ターゲット座標位置ともいう。)を算出し、該ターゲット座標位置の情報を判定部108及び生検針移動量算出部110に出力する。生検針位置算出部106は、マンモ22のステレオ画像に写り込んだ生検針62の3次元座標位置を算出し、算出した3次元座標位置の情報を判定部108及び生検針移動量算出部110に出力する。なお、ターゲット座標位置及び生検針62の3次元座標位置は、ステレオ撮影における公知の3次元座標位置の算出方法に基づき算出される。
【0068】
判定部108は、基本的には、ターゲット座標位置、生検針62の3次元座標位置、圧迫板34の下面のZ方向の位置、及び、開口部54の位置データ等に基づいて、生検針62が生検部位36の組織を採取できるか否かを判定する。なお、判定部108における判定処理の詳細については後述する。
【0069】
そして、判定部108は、生検針62が生検部位36の組織を採取可能と判定した場合、表示部68及び/又は表示操作部42に肯定的な判定結果(生検部位36の組織を採取可能であるとの判定結果、すなわち、バイオプシの実行許可を示す判定結果)を表示させて医師に報知すると共に、生検針移動量算出部110に対して、生検針62の移動量の算出処理と、算出した移動量の表示部68及び/又は表示操作部42への出力とを許可する。一方、判定部108は、生検針62による生検部位36の組織の採取が不可能と判定した場合、表示部68及び/又は表示操作部42に否定的な判定結果(生検部位36の組織が採取不可能であるとの判定結果、すなわち、バイオプシの実行禁止を示す判定結果)を表示させて医師に警告すると共に、生検針移動量算出部110に対して生検針62の移動量の算出禁止を通知する。
【0070】
生検針移動量算出部110は、判定部108から生検針62の移動量の算出許可、及び、算出した移動量の表示部68及び/又は表示操作部42への出力許可を示す情報が通知された場合、ターゲット座標位置、生検針62の3次元座標位置、圧迫板34の下面のZ方向の位置、及び、開口部54の位置データ等に基づいて、生検部位36に対する生検針62の移動量、すなわち、生検針62の現在位置と、採取部64が生検部位36の組織を採取可能な生検針62の位置との間の距離を算出し、算出した移動量(距離)を生検針駆動制御部112と表示部68及び/又は表示操作部42とに出力する。従って、表示部68及び/又は表示操作部42は、上述した肯定的な判定結果を表示すると共に、生検針62の移動量も表示することができる。
【0071】
なお、判定部108から生検針62の移動量の算出禁止を示す情報が通知された場合、生検針移動量算出部110は、上記の算出処理を行わないことは勿論である。この場合、表示部68及び/又は表示操作部42は、上述したように、否定的な判定結果のみを表示する。
【0072】
生検針駆動制御部112は、生検針移動量算出部110で算出された生検針62の移動量に基づき、バイオプシハンド部38を介して生検針62を所定位置に移動させる。
【0073】
また、生検針62の採取部64は、バキュームホース(吸引通路)114を介してバキューム装置(吸引装置)116に接続されている。従って、マンモ22に生検針62が穿刺された状態でバキューム装置116が吸引動作を開始した場合、採取部64は、バキューム装置116の吸引作用下に、該採取部64近傍の生検部位36の組織を吸引して採取することができる。
【0074】
本実施形態に係るバイオプシ装置10を組み込んだマンモグラフィシステム12の基本的な構成は、上述した通りであり、次に、本実施形態に係るバイオプシ装置10の特徴的な機能について説明する。
【0075】
バイオプシ装置10の特徴的な機能とは、マンモ22を模擬したファントム120に生検針62を穿刺して該ファントム120の一部を採取し、採取後のファントム120に対して放射線24を照射することにより該ファントム120の放射線画像を取得し、取得した放射線画像に基づいて、生検針62の採取部64が実際に生検部位36の組織を採取可能な空間範囲(第2空間範囲、吸引範囲、採取範囲)を、バイオプシの実行前に予め測定する、というものである。
【0076】
次に、バイオプシ装置10の特徴的な機能について、図5A〜図14Cを参照しながら詳細に説明する。ここでは、図1〜図4の説明において具体的に説明しなかったバイオプシ装置10の構成要素についても併せて説明する。
【0077】
ファントム120は、図5Aに示すように、マンモ22を模擬した第1部材122と、マンモ22中の生検部位36の組織(石灰化組織)を模擬した第2部材124とを有しており、医師が生検針62を穿刺して第2部材124を採取するためのバイオプシのトレーニング用ファントムとして用いられる。この場合、矩形状の第1部材122の内部に粒子状の複数の第2部材124を略均一に配置(分布)させることによりファントム120が構成される。
【0078】
ここで、第1部材122は、放射線24及び光を透過可能で、且つ、採取部64が吸引可能な物質を含み構成されている。このような物質としては、例えば、ゼラチンや多糖類がある。前記多糖類は、微生物発酵法により産出され且つゼラチンよりも粘度の高い水溶性の天然高分子多糖類、より好ましくは、ジェランガムである。
【0079】
一方、第2部材124は、第1部材122と比較して放射線24及び光に対する透過率の低い物質、又は、放射線24及び光に対して不透過な物質からなる。具体的に、第2部材124は、金属又はセラミックス、より好ましくは、鉛又はアルミナ(酸化アルミニウム)からなる。また、第2部材124は、マンモ22中の実際の石灰化組織と略同等のサイズである100μm〜500μmの直径を有する粒子であり、このサイズは、生検針62の外径、より好ましくは、生検針62の中空部分134の内径(数mm程度)や、採取部64の開口部136よりも小さなサイズである。
【0080】
そして、ファントム120は、例えば、ジェランガムの粉末を水に溶かしてゾル状にしたものに粒子状の複数の第2部材124を混入させ、次に、図示しない矩形状の型枠に流し込んで固化させ(ゲル状にし)、その後、固化したファントム120を前記型枠から取り出すことにより製造される。そして、ファントム120は、放射線24及び光を透過可能な容器126内に収容される(図5B参照)。特に、ゲル状のジェランガムから第1部材122を構成した場合には、該第1部材122が外気に触れるとカビ等が発生する可能性があるため、容器126にファントム120を収容することで、該容器126内部と外気とを遮断することができる。なお、容器126の厚みは、生検針62の先端部132によって該容器126を突き破ることが可能な程度の薄さであればよい。
【0081】
次に、このように構成されるファントム120に対する生検針62の穿刺及び該生検針62の採取部64によるファントム120の一部の採取と、採取後のファントム120に対する放射線撮影(ファントム120の放射線画像の取得)と、取得した放射線画像に基づく採取部64が生検部位36の組織を採取可能な空間範囲(第2空間範囲)の測定とについて、図6A〜図13Bを参照しながら説明する。
【0082】
生検針62は、中空円筒の針本体130の先端部132が鋭利な形状に加工され、該先端部132近傍の針本体130の側面には、中空部分134に連通し且つ採取部64として機能する開口部136が形成されている。また、中空部分134には、中空の円筒カッター138が先端部132の方向に対して進退自在に配設されている。そして、中空部分134及び円筒カッター138の中空部分140には、前述したバキュームホース114(図4参照)を介してバキューム装置116が連結されている。
【0083】
従って、生検針62では、バキューム装置116の駆動によって、開口部136、中空部分134、140及びバキュームホース114を介し、開口部136近傍の物体を中空部分134内に吸引しつつ、円筒カッター138を先端部132の方向に進行させることにより、吸引した物体の一部を切断するVAB(Vacuum Assisted Biopsy)を行うことが可能である。
【0084】
なお、図6A〜図9Bでは、生検針62の構造を詳しく図示するために、該生検針62を誇張して図示している。
【0085】
このように構成される生検針62の先端部132をバイオプシハンド部38によりファントム120の上方に移動させた後、該生検針62をファントム120に向かって進行(下降)させる。これにより、生検針62の先端部132は、図7Aに示すように、薄厚の容器126を突き破って該容器126内に進入し、ファントム120の上面に到達する。この場合、生検針62の先端部132を第1部材122の内部に進入させてもよい。
【0086】
その後、図7B及び図8Aに示すように、生検針62の先端部132がファントム120内の所定位置にまで進入するように該生検針62をさらに穿刺させる。
【0087】
なお、生検針62は、医師が手動により下降させてもよいし、あるいは、バイオプシハンド部38により自動的に下降させてもよい。また、図7Aに示す状態から図7B及び図8Aに示す状態にまで生検針62をファントム120に穿刺させる場合には、例えば、医師が図示しない生検針62の操作部を操作することにより、該生検針62がバネの弾発力によって所定位置までファントム120内に一気に進入するようにしてもよい。さらに、後述するファントム120に対する放射線撮影では、該ファントム120の一部が採取されることにより形成される空洞(第1空間範囲、採取範囲、吸引範囲)144の画像を取得できればよく、第2部材124を採取できたか否かは問題とはされないので、ファントム120に対する生検針62の穿刺深さや、該ファントム120に対する生検針62の穿刺位置は適宜設定すればよい。
【0088】
そして、図8Aに示すように、生検針62の中空部分134及び円筒カッター138の中空部分140に連結されたバキューム装置116(図4参照)を駆動させて、開口部136に対向するファントム120の一部(例えば、第2部材124及び該第2部材124近傍の第1部材122の一部)を開口部136を介して中空部分134内に吸引する。
【0089】
バキューム装置116の吸引動作によって、中空部分134における開口部136に対向する箇所が、ファントム120の一部で満たされている状態において、円筒カッター138を先端部132に向かって下降させることによりファントム120の一部が切断され、略円筒状の採取物142として採取される(図8B参照)。これにより、ファントム120における開口部136近傍の箇所には、ファントム120の一部が生検針62によって切り取られた空洞144が形成される。なお、円筒カッター138の移動は、例えば、生検針駆動制御部112により制御すればよい。
【0090】
図9Aに示すように、バキューム装置116の吸引動作によって、採取物142を中空部分134、140を介し吸引する一方で、図9Bに示すように、生検針62をファントム120から上方に抜き取って、該生検針62をファントム120及び容器126から離間させる。これにより、ファントム120には、空洞144に連通する生検針62の抜け跡146が形成される。ファントム120の一部である採取物142は、バキュームホース114又はバキューム装置116から外部に排出される。
【0091】
次に、図10Aに示すように、抜け跡146の形成方向、すなわち、生検針62の穿刺方向(矢印Z方向)に沿って放射線24を照射する1回目の放射線撮影を行うことにより、矢印Z方向に直交するX−Y平面に沿ったファントム120の放射線画像(1回目のファントム120の画像)を取得し、その後、図10Bに示すように、生検針62の穿刺方向に略直交する方向(矢印X方向)に沿って放射線24を照射する2回目の放射線撮影を行うことにより、矢印X方向に直交するY−Z平面に沿ったファントム120の放射線画像(2回目のファントム120の画像)を取得する。
【0092】
図11A及び図11Bは、図10A及び図10Bに示す放射線撮影をマンモグラフィシステム12において具体的に実現するための説明図である。なお、図11A及び図11Bでは、説明の容易化のために、容器126等の図示を省略している。
【0093】
図11Aは、1回目の放射線撮影の場合を図示したものであり、圧迫板34と撮影台32との間にファントム120が保持された状態で、C位置に配置された放射線源26からファントム120に放射線24cを照射する。この場合、圧迫板34及び撮影台32は、ファントム120が動かない程度に矢印Z方向に該ファントム120を保持している。また、圧迫板34の開口部54の直下に空洞144及び抜け跡146が形成されている。すなわち、図11Aは、圧迫板34及び撮影台32によりファントム120が保持された状態で、マンモ22に対するバイオプシと同様に、生検針62によるファントム120の一部の採取が行われ、その後、圧迫板34及び撮影台32による保持状態を維持したままで、採取後のファントム120に対して放射線24cを照射する場合を図示している。
【0094】
図10A及び図11Aの場合には、空洞144及び抜け跡146の形成方向(生検針62の穿刺方向)に沿ってファントム120に放射線24(24c)が照射されるので、固体検出器30は、ファントム120を透過した放射線24(24c)を、前記穿刺方向に略直交する投影面(X−Y平面)の放射線画像に変換する。検出器制御部88は、該投影面の放射線画像を画像情報記憶部90に記憶させる。
【0095】
図11Bは、2回目の放射線撮影の場合を図示しており、空洞144及び抜け跡146が矢印X方向に延在するように、採取後のファントム120を撮影台32に配置し直した後に、圧迫板34及び撮影台32によって該ファントム120を再度保持し、この状態でC位置に配置された放射線源26からファントム120に放射線24cを照射する。
【0096】
図11Bの場合には、空洞144及び抜け跡146の形成方向(生検針62の穿刺方向)と略直交する方向に沿ってファントム120に放射線24(24c)が照射されるので、固体検出器30は、ファントム120を透過した放射線24(24c)を、前記穿刺方向と略平行な投影面(X−Y平面)の放射線画像に変換する。検出器制御部88は、該投影面の放射線画像を画像情報記憶部90に記憶させる。
【0097】
なお、図11Bの例では、図11Aのファントム120を撮影台32上で横倒しとした状態で圧迫板34及び撮影台32により保持するため、放射線24cの照射方向は矢印Z方向であり、従って、図10Bに示す放射線24の照射方向(矢印X方向)とは異なる。
【0098】
図12Aは、図11Aの1回目の放射線撮影により得られた放射線画像を、表示部68及び/又は表示操作部42にそのまま表示させた場合を図示したものであり、図12Bは、図11Bの2回目の放射線撮影により得られた放射線画像を、表示部68及び/又は表示操作部42にそのまま表示させた場合を図示したものである。従って、図12A及び図12Bは、CAD処理部92での画像処理が何ら施されていないファントム120の画像を図示している。
【0099】
図12A及び図12Bにおいて、表示部68及び/又は表示操作部42の画面には、ファントム120を示す画像152、162の外側に素抜け画像150、160が表示され、該画像152、162の内側に、空洞144及び抜け跡146を示す画像154、164が表示されている。しかしながら、図12A及び図12Bに示す画像表示では、画像152、162と画像154、164との間のコントラストが低いので、該画像154、164から空洞144の範囲(第2空間範囲)を特定することが困難である。
【0100】
そこで、CAD処理部92は、各放射線画像に対してコントラスト強調やエッジ強調等の所定の画像処理を施すことにより、図13A及び図13Bに示すように、画像152、162と、空洞144及び抜け跡146を示す画像168、170との間のコントラストが高い放射線画像を生成する。なお、図13Aは、図12Aに示す放射線画像に対して前記画像処理を施した場合を図示し、図13Bは、図12Bに示す放射線画像に対して前記画像処理を施した場合を図示したものである。そして、CAD処理部92は、画像処理後の各放射線画像を吸引空間算出部94に出力する。
【0101】
吸引空間算出部94は、図13A及び図13Bに示す放射線画像中、画像168、170における空洞144の箇所のX方向、Y方向及びZ方向の長さ(幅)x1、y1、y2、z1を測定した後に、測定した各長さに応じた実際の空洞144のX方向、Y方向及びZ方向の長さ(範囲)を逆算し、逆算した各範囲を採取部64によって吸引された第1空間範囲として、測定対象となった放射線画像と共にファントム吸引範囲記憶部96に記憶する。
【0102】
なお、y1とy2との間では、理想的には、y1=y2であることが望ましいが、図11A及び図11Bに示すように、1回目の放射線撮影と2回目の放射線撮影とでは、放射線源26から空洞144までの距離が互いに異なるので、y1≠y2となる場合もあり得る。そこで、Y方向の範囲を精度よく求めるために、両者の平均値y(y=(y1+y2)/2)を求め、求めた平均値yから実際の空洞144のY方向の範囲を求めてもよい。
【0103】
また、ファントム吸引範囲記憶部96には、上述した第1空間範囲に加え、ファントム120に穿刺された生検針62の3次元座標位置も併せて記憶してもよい。
【0104】
さらに、上記の説明では、吸引空間算出部94は、X方向、Y方向及びZ方向の長さx1、y1、y2、z1を測定しているが、これに代えて、放射線画像中の各箇所について、生検針62により採取されたか否かを調べ、それぞれの箇所の3次元位置データ(x、y、z)と採取結果とを、第1空間範囲を示すデータとしてファントム吸引範囲記憶部96に記憶してもよい。このようにしてファントム吸引範囲記憶部96にデータを記憶した場合、後述する吸引可能範囲記憶部98に記憶される第2空間範囲を示すデータについても、マンモ22中の各箇所の3次元位置データ(x、y、z)と採取の有無とを示すデータであることが望ましい。なお、以下の説明では、上述したx1、y1、y2、z1に基づく第1空間範囲を用いた場合について説明する。
【0105】
ところで、ファントム120とマンモ22との間では互いに物性が異なるため、ファントム120における生検針62の採取可能な空間範囲(第1空間範囲)と、マンモ22における生検針62の採取可能な空間範囲(第2空間範囲)とが互いに異なる場合があり得る。
【0106】
そこで、補正データ記憶部100には、ファントム120の物性及びマンモ22の物性に基づく補正データが記憶されている。ここで、補正データとは、具体的には、生検針62がファントム120の一部を採取可能な空間範囲及び生検針62が生検部位36の組織を採取可能な空間範囲に基づくデータ、あるいは、ファントム120を構成する物質(第1部材122)の特性値及びマンモ22を構成する物質の特性値に基づくデータである。なお、空間範囲に基づくデータとは、例えば、ファントム120及びマンモ22に生検針62を予め穿刺して採取を行うことにより、採取後のファントム120及びマンモ22に形成された生検針62の採取範囲(空間範囲)を示す画像データをいう。また、特定値に基づくデータとは、ファントム120を構成する第1部材122の弾性係数や、マンモ22を構成する物質の弾性係数である。
【0107】
そして、吸引空間算出部94は、ファントム吸引範囲記憶部96から放射線画像を読み出すと共に、補正データ記憶部100から生検針62の採取範囲を示す画像データを読み出し、読み出した放射線画像中、画像152、162と、画像168、170における空洞144の箇所とのコントラストから該空洞144の箇所(第1空間範囲の画像領域)を特定し、前記空洞144の箇所と採取範囲を示す画像データとの比較に基づいて、マンモ22の第2空間範囲を求めればよい。あるいは、吸引空間算出部94は、ファントム吸引範囲記憶部96から第1空間範囲を示す空洞144のX方向、Y方向及びZ方向の範囲を読み出すと共に、補正データ記憶部100から各弾性係数を読み出し、X方向、Y方向及びZ方向の範囲に、前記各弾性係数に基づく補正係数を乗ずることにより、マンモ22中の第2空間範囲を示すX方向、Y方向及びZ方向の範囲を求めればよい。
【0108】
吸引空間算出部94は、求めたマンモ22の第2空間範囲、あるいは、該第2空間範囲を示すX方向、Y方向及びZ方向の範囲を、生検針62により実際のマンモ22で吸引可能な範囲を示すデータとして吸引可能範囲記憶部98に記憶する。
【0109】
なお、吸引空間算出部94では、採取範囲を示す画像データに基づいて第2空間範囲を求める方法、及び、補正係数を用いて第2空間範囲を求める方法のうち、いずれか一方の方法により第2空間範囲を求めてもよいし、第2空間範囲の算出精度を高めるため、2つの方法を併用して第2空間範囲を求めてもよい。
【0110】
また、生検針62の特性、バキュームホース114の特性、及び、バキューム装置116の特性によって、生検針62の採取部64により生検部位36の組織を採取可能な第2空間範囲が変化する可能性がある。
【0111】
そこで、変化要因データ記憶部102は、第2空間範囲の変化要因を示す変化要因データを記憶する。
【0112】
変化要因データとは、第2空間範囲の変化要因となる生検針62の特性、バキュームホース114の特性、及び、バキューム装置116の特性に関するデータであって、具体的には、下記のデータをいう。
【0113】
生検針62の特性とは、生検針62の型式、先端部132の形状、開口部136の面積、針本体130の直径、開口部136の形状、生検針62のシリアル番号等である。
【0114】
バキュームホース114の特性とは、バキュームホース114の型式、バキュームホース114の内径、累積使用時間、これまでにバイオプシを実施した被検体20の人数又は吸引回数、メンテナンス後の使用時間、被検体20の人数又は吸引回数等である。
【0115】
バキューム装置116の特性とは、バキューム装置116の型式、バキューム圧(設定値、設定値に対するバキューム圧の変動の最大値又は最小値、リアルタイムで検出したバキューム圧の実測値)、累積使用時間、これまでにバイオプシを実施した被検体20の人数又は吸引回数、メンテナンス後の使用時間、被検体20の人数又は吸引回数等である。
【0116】
そして、吸引空間算出部94は、指示部70により生検部位36が指示されてバイオプシが実行される場合に、変化要因データ記憶部102から変化要因データを読み出すと共に、吸引可能範囲記憶部98から第2空間範囲(を示すX方向、Y方向及びZ方向の範囲)を読み出し、前記変化要因データに基づいて前記第2空間範囲を補正し、補正後の第2空間範囲と前記変化要因データとを判定部108に出力する。あるいは、吸引空間算出部94は、第2空間範囲の補正は行わず、前記第2空間範囲と該第2空間範囲に対応する変化要因データとを判定部108に出力してもよい。
【0117】
なお、吸引空間算出部94は、前記変化要因データに基づいて前記第2空間範囲を補正した場合に、補正後の第2空間範囲(変化要因データに応じた第2空間範囲)を吸引可能範囲記憶部98に記憶してもよい。これにより、例えば、生検針62の型式毎の第2空間範囲を吸引可能範囲記憶部98に記憶させておき、バイオプシが実行される際に、吸引空間算出部94を介して判定部108に読み出すことができる。
【0118】
判定部108では、変化要因データと、(該変化要因データにより補正された)第2空間範囲と、ターゲット座標位置と、生検針62の3次元座標位置と、圧迫板34の下面のZ方向の位置と、開口部54の位置データとに基づいて、生検針62により生検部位36の組織を採取できるか否かを判定する。この場合、判定部108は、変化要因データに基づく閾値(採取部64と生検部位36とを対向させたときに該採取部64が生検部位36の組織を採取可能な第2空間範囲の最小値)と、吸引空間算出部94にて求められた第2空間範囲とを比較して、求められた第2空間範囲が閾値を上回る場合には、生検針62による生検部位36の組織の採取が可能と判定する。一方、第2空間範囲が閾値を下回る場合に、判定部108は、生検針62による生検部位36の組織の採取が不可能と判定する。
【0119】
また、図14A〜図14Cに示すように、圧迫板34には開口部54が形成され、生検針62は、矢印Z方向に移動するため、圧迫状態のマンモ22における開口部54と撮影台32との間の領域が生検針62の採取部64による生検部位36の組織の採取可能範囲(穿刺可能範囲)172となる。
【0120】
そこで、判定部108は、上記の判定処理に加え、生検部位36が採取可能範囲172に入っているか否かを判定することも可能である。この場合、図14Aのように、生検部位36の位置が採取可能範囲172内であれば、判定部108は、生検針62による生検部位36の組織の採取が可能と判定する。一方、図14Bのように、生検部位36が採取可能範囲172から外れている場合や、図14Cのように、生検部位36が採取可能範囲172内であっても採取部64の吸引範囲174(第2空間範囲)が小さいために生検部位36の組織を吸引できない場合には、判定部108は、生検針62による生検部位36の組織の採取が不可能と判定する。
【0121】
なお、判定部108は、圧迫板34の下面のZ方向の位置、開口部54の位置データ、及び、撮影台32の位置データとを用いて採取可能範囲172を特定し、特定した採取可能範囲172と生検部位36の位置と吸引範囲174とに基づいて、前述の判定処理を行えばよい。
【0122】
判定部108における上記の各判定結果は、表示部68及び/又は表示操作部42に表示される。また、肯定的な判定結果(バイオプシの許可を示す判定結果)であれば、生検針移動量算出部110による生検針62の移動量の算出処理が行われ、否定的な判定結果(バイオプシの禁止を示す判定結果)であれば、生検針移動量算出部110による生検針62の移動量の算出処理が禁止されることは勿論である。
【0123】
なお、上記の説明では、2次元表示の画像152、154、162、164、168、170に基づいて第1空間範囲を測定し、測定した前記第1空間範囲を用いて第2空間範囲を求め、求めた前記第2空間範囲に対して所定の補正処理等を行っている。前述したように、CAD処理部92は、3次元の放射線画像を生成可能であるため、ファントム120の3次元画像を生成し、生成した3次元画像に基づいて第1空間範囲を測定し、測定した前記第1空間範囲を用いて第2空間範囲を求め、求めた前記第2空間範囲に対して前記補正処理等を行ってもよい。
【0124】
本実施形態に係るバイオプシ装置10の特徴的な機能は、上述した通りである。
【0125】
次に、バイオプシ装置10及びファントム120を使用した空間範囲の測定(空間範囲測定方法)と、バイオプシ装置10及びマンモグラフィシステム12を使用したバイオプシの実行とについて、図15及び図16のフローチャートを参照しながら説明する。
【0126】
先ず、バイオプシ装置10及びファントム120を使用した空間範囲の測定(空間範囲測定方法)について、図15を参照しながら説明する。
【0127】
図15のステップS1において、医師は、撮影条件設定部80(図4参照)を用いてファントム120(図5A及び図5B参照)に応じた撮影条件を設定する。設定した撮影条件は、放射線源駆動制御部82に設定される。
【0128】
ステップS2において、医師は、ファントム120のポジショニングを行う。すなわち、ファントム120を収容した容器126を撮影台32の所定位置(開口部54に対向する位置)に配置した後、圧迫板駆動制御部84により圧迫板34を撮影台32に向かって矢印Z方向に移動させて、容器126が動かない程度に該容器126をポジショニングする。これにより、容器126は、撮影台32及び圧迫板34により保持される。なお、圧迫板位置算出部86は、圧迫板34の初期位置データと変位量検出部50からの出力信号とに基づいて、原点Oに対する圧迫板34の下面のZ方向の位置を算出する。
【0129】
ステップS3において、圧迫板位置算出部86が算出した圧迫板34の下面のZ方向の位置が、容器126の保持状態における位置である場合に、生検針駆動制御部112は、生検針62を移動させてファントム120に穿刺させる。この場合、生検針駆動制御部112は、バイオプシハンド部38の第1アーム58及び第2アーム60をX−Y平面内で移動させ、生検針62を所定の穿刺位置に対向する開口部54上方の位置に位置決めした後に、該生検針62を撮影台32側に移動させる。これにより、生検針62は、容器126を突き破って第1部材122に穿刺され(図7A参照)、該生検針62の先端部132は、ファントム120内の所定位置にまで進行する(図7B参照)。なお、生検針62の矢印Z方向への移動に関しては、前述したように、バイオプシハンド部38により自動的に行ってもよいし、医師が手動により行ってもよい。
【0130】
ステップS4において、バキューム装置116(図4参照)が吸引動作を開始すると、採取部64は、該バキューム装置116の吸引作用下に、採取部64近傍の生検部位36の組織を吸引して採取する。すなわち、バキューム装置116の駆動によって、開口部136近傍のファントム120の一部が中空部分134内に吸引された状態で(図8A参照)、円筒カッター138を生検針62の先端部132側に進行させることにより、該ファントム120の一部が切断され、採取物142として採取される(図8B参照)。この結果、ファントム120における開口部136近傍の箇所には、ファントム120の一部が採取されることにより空洞144が形成される。
【0131】
採取物142は、バキューム装置116の吸引動作によって中空部分134、140を介し吸引され(図9A参照)、バキュームホース114又はバキューム装置116から外部に排出される。また、採取後の生検針62は、ファントム120から矢印Z方向に沿って上方に抜き取られ、ファントム120及び容器126から離間される(ステップS5、図9B参照)。この結果、ファントム120には、空洞144及び抜け跡146が形成される。
【0132】
ステップS6において、ファントム120及び容器126から生検針62が離間し、且つ、バキューム装置116が駆動停止したことを条件に、放射線源駆動制御部82は、放射線源26を駆動して、ファントム120に対する1回目の放射線撮影を行う。この場合、C位置から放射線24cを照射することにより(図11A参照)、ファントム120を透過した放射線24cが撮影台32の固体検出器30によって放射線画像として検出される。そして、検出器制御部88は、固体検出器30を制御して前記放射線画像を取得し、該放射線画像を画像情報記憶部90に一旦記憶させる(ステップS7)。
【0133】
1回目の放射線撮影後、圧迫板駆動制御部84は、圧迫板34を上方に移動させて、圧迫板34及び撮影台32によるファントム120の保持状態を解除する。この場合、圧迫板位置算出部86は、原点Oに対する圧迫板34の下面のZ方向の位置を算出しているので、コンソール40では、該圧迫板34のZ方向の位置からファントム120の保持状態が解除されたことを容易に把握することができる。
【0134】
次に、医師は、ファントム120を図11Aの状態から図11Bの状態に配置し直し、その後、圧迫板駆動制御部84は、圧迫板34を撮影台32側に移動させて、ファントム120を圧迫板34及び撮影台32により再度保持させる。この場合、圧迫板位置算出部86により算出されたZ方向の位置から、コンソール40では、ファントム120が再度保持状態に至ったことを容易に把握することができる。
【0135】
ファントム120が再度保持状態に至ったことを確認した後に、放射線源駆動制御部82は、放射線源26を駆動して、該ファントム120に対する2回目の放射線撮影を行う(ステップS6)。この場合も、1回目の放射線撮影と同様に、C位置から放射線24cを照射することにより(図11B参照)、ファントム120を透過した放射線24cが撮影台32の固体検出器30によって放射線画像として検出され、検出器制御部88は、固体検出器30を制御して前記放射線画像を取得し、該放射線画像を画像情報記憶部90に一旦記憶させる(ステップS7)。2回目の放射線撮影後、圧迫板駆動制御部84は、圧迫板34を上方に移動させてファントム120の保持状態を解除する。
【0136】
ステップS8において、CAD処理部92(図4参照)は、画像情報記憶部90に記憶された2枚の放射線画像(図12A及び図12B参照)に対してコントラスト強調やエッジ強調等の所定の画像処理を施すことにより、画像152、162と画像168、170(図13A及び図13B参照)との間のコントラストが高い2枚の放射線画像を生成し、これらの放射線画像を吸引空間算出部94に出力すると共に、表示部68及び/又は表示操作部42に表示させる。なお、ステップS8では、画像処理前の2枚の放射線画像を表示部68及び/又は表示操作部42に最初に表示させ、その後、画像処理が施された2枚の放射線画像を表示部68及び/又は表示操作部42に表示させてもよい。
【0137】
ステップS9において、吸引空間算出部94は、画像168、170における空洞144の箇所のX方向、Y方向及びZ方向の長さx1、y1、y2、z1を測定し、測定した各長さに応じた実際の空洞144のX方向、Y方向及びZ方向の範囲(第1空間範囲)を逆算し、逆算した第1空間範囲と、該第1空間範囲の算出に使用した放射線画像とを共にファントム吸引範囲記憶部96に記憶する(ステップS10)。この場合、吸引空間算出部94は、前述したように、y1、y2の平均値yを求め、該平均値yから実際の空洞144のY方向の範囲を求めてもよい。
【0138】
ステップS11において、吸引空間算出部94は、ファントム吸引範囲記憶部96から放射線画像を読み出すと共に、補正データ記憶部100から採取範囲の画像データを読み出し、読み出した放射線画像中、画像152、162と、画像168、170における空洞144の箇所とのコントラストから空洞144の箇所を特定し、該空洞144の箇所と採取範囲の画像データとの比較に基づいて、マンモ22の第2空間範囲を求め(第2の空間範囲に補正し)、求めたマンモ22の第2空間範囲を吸引可能範囲記憶部98に記憶する(ステップS12)。
【0139】
あるいは、吸引空間算出部94は、ファントム吸引範囲記憶部96から第1空間範囲を示す空洞144のX方向、Y方向及びZ方向の範囲を読み出すと共に、補正データ記憶部100から各弾性係数を読み出し、X方向、Y方向及びZ方向の範囲に、前記各弾性係数に基づく補正係数を乗ずることにより、マンモ22中の第2空間範囲を示すX方向、Y方向及びZ方向の範囲を求め(範囲に補正し)、求めたX方向、Y方向及びZ方向の範囲を吸引可能範囲記憶部98に記憶する(ステップS12)。
【0140】
なお、ステップS8〜S12では、2次元の画像152、162、168、170に代えて、CAD処理部92で生成したファントム120の3次元画像に基づいて第1空間範囲を測定し、測定した前記第1空間範囲を用いて第2空間範囲を求め、求めた前記第2空間範囲に対して所定の補正処理を行ってもよい。
【0141】
次に、バイオプシ装置10及びマンモグラフィシステム12を使用したバイオプシの実行について、図16を参照しながら説明する。
【0142】
図16のステップS21において、医師は、撮影条件設定部80(図4参照)を用いてマンモ22(図2〜図4参照)に応じた撮影条件を設定する。設定した撮影条件は、放射線源駆動制御部82に設定される。
【0143】
ステップS22において、医師は、被検体20のマンモ22のポジショニングを行う。すなわち、マンモ22を撮影台32の所定位置(開口部54に対向する位置)に配置した後、圧迫板駆動制御部84により圧迫板34を撮影台32に向かって矢印Z方向に移動させ、マンモ22を圧迫してポジショニングを行う。これにより、マンモ22は、撮影台32及び圧迫板34で圧迫固定される。
【0144】
このとき、圧迫板位置算出部86は、原点O(図3参照)に対する圧迫板34の下面の矢印Z方向の位置を算出する(ステップS23)。具体的に、圧迫板位置算出部86は、圧迫板初期位置データに変位量検出部50にて検出された変位量を加算する(L2+d)。
【0145】
ステップS24において、放射線源駆動制御部82は、放射線源26を駆動して、マンモ22に対するステレオ撮影を行う。この場合、ヒンジ部44を中心として放射線源収容部28を移動させ、A位置及びB位置から放射線24a、24bをそれぞれ照射することにより、マンモ22を透過した放射線24a、24bが撮影台32の固体検出器30によって放射線画像として検出される。検出器制御部88は、固体検出器30を制御して2枚の放射線画像を取得し、これら2枚の放射線画像を画像情報記憶部90に一旦記憶させる。
【0146】
ステップS25において、CAD処理部92は、画像情報記憶部90に記憶されたマンモ22の2枚の放射線画像に対する画像処理を行い、画像処理後の2枚のステレオ画像を表示部68及び/又は表示操作部42に表示させる。
【0147】
ステップS26において、医師は、2枚のステレオ画像を視ながらマウス等のポインティングデバイスである指示部70を操作して、各ステレオ画像中の複数の病変の中から組織を採取したい病変(ターゲット、生検部位36)を指示する。
【0148】
なお、ステップS25において、CAD処理部92は、画像情報記憶部90に記憶されたマンモ22の2枚の放射線画像を用いて該マンモ22の3次元画像を生成し、生成した3次元画像を表示部68に表示させてもよい。この場合、ステップS26において、医師は、3次元表示のマンモ22の画像を視ながら3次元マウス等の指示部70を操作して、3次元画像中の複数の病変の中から組織を採取したい病変を指示すればよい。
【0149】
ステップS27において、ターゲット位置算出部104は、各ステレオ画像において指示された生検部位36の3次元座標位置を算出し、算出した3次元座標位置の情報を判定部108及び生検針移動量算出部110に出力する。また、生検針位置算出部106は、2枚のステレオ画像に写り込んだ生検針62の3次元座標位置を算出し、算出した3次元座標位置の情報を判定部108及び生検針移動量算出部110に出力する。
【0150】
さらに、吸引空間算出部94は、変化要因データ記憶部102から変化要因データを読み出すと共に、吸引可能範囲記憶部98から第2空間範囲を読み出し、前記変化要因データに基づいて前記第2空間範囲を補正し、補正後の第2空間範囲及び前記変化要因データを判定部108に出力する。あるいは、吸引空間算出部94は、第2空間範囲の補正は行わず、前記第2空間範囲と該第2空間範囲に対応する変化要因データとを判定部108に出力する。
【0151】
ステップS28において、判定部108は、変化要因データ、第2空間範囲、ターゲット座標位置、生検針62の3次元座標位置、圧迫板34の下面のZ方向の位置、及び、開口部54の位置データに基づいて、生検針62が生検部位36の組織を採取できるか否かを判定する。
【0152】
具体的に、判定部108は、変化要因データに基づく閾値と、吸引空間算出部94にて求められた第2空間範囲とを比較して、前記第2空間範囲が前記閾値を上回るか否かを判定する。また、判定部108は、生検部位36が採取可能範囲172(図14A及び図14B参照)に入っているか否かを判定する。さらに、判定部108は、生検部位36が採取可能範囲172に入っている場合(図14C参照)には、採取部64の吸引範囲174(第2空間範囲)で生検部位36の組織を吸引できるか否かも判定する。
【0153】
判定部108は、これら3つの判定処理を行った結果、全ての判定処理について肯定的な判定結果(生検針62による生検部位36の組織の採取が可能であるとの判定結果)が得られた場合には(ステップS28:YES)、肯定的な判定結果を表示部68及び/又は表示操作部42に表示させて医師に報知すると共に、生検針移動量算出部110に対して生検針62の移動量の算出処理と、算出した移動量の表示部68及び/又は表示操作部42への出力とを許可する通知を行う。
【0154】
ステップS29において、生検針62の移動量の算出許可と、算出した移動量の表示部68及び/又は表示操作部42への出力許可とを示す情報が判定部108から通知された場合、生検針移動量算出部110は、ターゲット座標位置、生検針62の3次元座標位置、圧迫板34の下面のZ方向の位置、及び、開口部54の位置データに基づいて、生検部位36に対する生検針62の移動量を算出し、算出した移動量を生検針駆動制御部112と表示部68及び/又は表示操作部42とに出力する。これにより、表示部68及び/又は表示操作部42は、肯定的な判定結果と共に、生検針62の移動量を表示することができる。
【0155】
ステップS30において、生検針駆動制御部112は、生検針62の移動量に基づいてバイオプシハンド部38を制御することにより、生検針62をマンモ22に穿刺させる。すなわち、生検針駆動制御部112は、バイオプシハンド部38の第1アーム58及び第2アーム60をX−Y平面内で移動させ、生検針62をターゲット(生検部位36)に対向する位置(生検部位36に対向する矢印Z方向に沿った所定位置)に位置決めした後に、生検針62を撮影台32側に移動させる。これにより、採取部64が生検部位36の組織近傍に位置するようにマンモ22に生検針62が穿刺され、この結果、採取部64の採取範囲(第2空間範囲)内に生検部位36の組織を含ませることができる。
【0156】
ステップS31において、第2空間範囲内に生検部位36の組織が入っている状態において、バキューム装置116の吸引動作を開始させることにより、生検針62の採取部64による生検部位36の組織の吸引処理が開始され、該生検部位36の組織が採取される。
【0157】
ステップS32において、組織採取後の生検針62を圧迫板34側に移動させることにより、生検針62がマンモ22から抜き取られ、その後、圧迫板駆動制御部84により圧迫板34を上方に移動させて、マンモ22を圧迫保持状態から解放させることでバイオプシが終了する。
【0158】
ところで、ステップS28において、3つの判定処理のうち、いずれか1つの判定処理の結果について否定的な判定結果である場合、すなわち、第2空間範囲が閾値を下回るか、生検部位36が採取可能範囲172に入っていないか、あるいは、生検部位36が採取可能範囲172に入っていても現状の吸引範囲174では生検部位36の組織を吸引できない場合(ステップS28:NO)、生検針移動量算出部110に対して生検針62の移動量の算出処理を禁止する通知を行うと共に(ステップS33)、否定的な判定結果を表示部68及び/又は表示操作部42に表示させて医師に警告する(ステップS34)。
【0159】
また、判定部108は、否定的な判定結果を圧迫板駆動制御部84に通知して圧迫板34の位置を初期位置に戻させることにより(ステップS35)、マンモ22を圧迫状態から解放してもよい。すなわち、ステップS33、S34によりバイオプシの実行禁止が明確であっても、マンモ22が圧迫保持状態のままでは、医師が誤ってバイオプシを行う可能性があったり、あるいは、被検体20の肉体的負担が増大するおそれがあるためである。
【0160】
これにより、マンモグラフィシステム12では、ステップS35後、ステップS22に戻り、否定的な判定結果となった原因を解決(例えば、第2空間範囲が閾値を下回る場合には、閾値を上回るような第2空間範囲を有する別の生検針62に交換)した後に、ステップS22を再度実行して、マンモ22のポジショニングを行えばよい。
【0161】
以上説明したように、本実施形態に係るバイオプシ装置10、空間範囲測定装置としてのコンソール40及び空間範囲測定方法では、マンモ22を模擬したファントム120に生検針62を穿刺して該ファントム120の一部を採取し、採取後のファントム120を撮影して該ファントム120の放射線画像を取得し、該放射線画像に基づいて、生検針62がマンモ22中の生検部位36の組織を採取可能な空間範囲(第2空間範囲)を測定する。
【0162】
このように、ファントム120の一部の採取後に撮影されたファントム120の放射線画像に基づいて、生検針62が生検部位36の組織を採取可能な第2空間範囲を測定するので、マンモ22に生検針62を穿刺する前に生検部位36の組織を採取可能な第2空間範囲を予め測定することが可能となる。
【0163】
これにより、生検部位36から空間的に離れた箇所に生検針62を穿刺することを回避することができる。また、生検針62の特性等の要因で第2空間範囲が変化する可能性があっても、測定された第2空間範囲に従ってバイオプシを行うことにより、該バイオプシがうまくいかないことを回避することができる。
【0164】
ところで、ファントム120と実際のマンモ22との間では互いに物性が異なるため、生検針62により採取可能な空間範囲(第1空間範囲、第2空間範囲)が互いに異なる場合があり得る。
【0165】
そこで、吸引空間算出部94は、ファントム120の放射線画像に基づいて、ファントム120の一部の採取によって該ファントム120内に形成された第1空間範囲を測定し、測定した第1空間範囲を生検針62が生検部位36の組織を採取可能な第2空間範囲に補正する。
【0166】
このように、吸引空間算出部94は、実際のバイオプシにおいて生検針62が採取可能な第2空間範囲を求めるので、医師は、生検部位36が第2空間範囲内に入るようにマンモ22に生検針62を穿刺すれば、生検部位36の組織を確実に採取することができる。
【0167】
また、吸引空間算出部94がファントム120の物性及びマンモ22の物性に基づく補正データを用いて第1空間範囲を第2空間範囲に補正すれば、該第2空間範囲を精度よく且つ正確に求めることが可能となる。
【0168】
さらに、吸引空間算出部94による第2空間範囲の算出は、ファントム120の放射線画像を取得したときに行ってもよいし、あるいは、バイオプシを行う直前に行ってもよい。そこで、バイオプシ装置10は、吸引空間算出部94による第1空間範囲の測定結果を記憶するファントム吸引範囲記憶部96と、補正データを記憶する補正データ記憶部100と、吸引空間算出部94による第2空間範囲の補正結果を記憶する吸引可能範囲記憶部98とをさらに有する。これにより、ファントム120の放射線画像を取得した直後や、医師がバイオプシを実施する直前等、適宜、吸引空間算出部94による第1空間範囲の測定及び第2空間範囲への補正を行うことが可能となる。
【0169】
さらに、生検針62の特性等の要因によって第2空間範囲が変化する可能性がある。そこで、医師が指示部70を操作して生検部位36を指示し、ターゲット位置算出部104が生検部位36の位置を算出すると、判定部108は、生検部位36の位置、第2空間範囲及び変化要因データに基づいて、生検針62が生検部位36の組織を採取可能であるか否かを判定する。このように、第2空間範囲の変化要因を考慮して生検部位36の組織を採取可能であるか否かが判定されるので、肯定的な判定結果(採取可能の判定結果)である場合には、バイオプシを行うことが可能となり、一方で、否定的な判定結果(採取不可能の判定結果)である場合には、誤って生検針62がマンモ22に穿刺されることを防止することができる。
【0170】
また、判定部108の判定結果を表示部68及び/又は表示操作部42を介して外部に報知すれば、医師は、バイオプシを実行すべきか否かを容易に認識することができる。
【0171】
また、判定部108は、生検針62が生検部位36の組織を採取可能と判定した場合には、採取可能であることを表示部68及び/又は表示操作部42を介して医師に報知すると共に、生検針移動量算出部110による生検針62の移動量の算出及び表示部68及び/又は表示操作部42による前記移動量の報知を許可し、一方で、生検針62が生検部位36の組織を採取不可能と判定した場合には、採取禁止を表示部68及び/又は表示操作部42を介して医師に警告すると共に、生検針移動量算出部110による生検針62の移動量の算出を禁止する。
【0172】
これにより、判定部108が肯定的な判定結果(採取可能の判定結果)を行った場合には、該判定結果と生検針62の移動量とが表示部68及び/又は表示操作部42により報知されるので、医師は、報知内容に従ってバイオプシを正確且つ確実に実行することができる。なお、生検針移動量算出部110は、肯定的な判定結果に従って生検針62の移動量を算出するので、算出された前記移動量だけ生検針62を移動させれば、指示部70により指示された生検部位36の組織が第2空間範囲内に確実に入ることになり、この結果、該生検部位36の組織を効率よく採取することが可能となる。
【0173】
一方、判定部108が否定的な判定結果(採取不可能の判定結果)を行った場合には、該判定結果のみが表示部68及び/又は表示操作部42により報知されるので、医師は、バイオプシが実行できないことを容易に認識することができる。
【0174】
また、生検針62の特性等の要因によって第2空間範囲が変化する(小さくなる)ことにより、マンモ22に対して生検針62を正確に穿刺しても、生検部位36の組織が第2空間範囲から外れてしまうか、あるいは、生検部位36の組織を採取できない場合もある。
【0175】
そこで、判定部108は、第2空間範囲が閾値を下回る場合には、生検針62が生検部位36の組織を採取不可能と判定してもよい。これにより、第2空間範囲の変化に起因してバイオプシがうまくいかない可能性がある場合に、バイオプシの実行を確実に中止させることができる。
【0176】
また、マンモ22における生検針62の採取可能範囲172が予め設定されている場合に、判定部108は、生検部位36の位置が採取可能範囲172から外れていれば、生検針62による生検部位36の組織の採取が不可能と判定してもよい。生検部位36の位置が採取可能範囲172から外れている場合でもバイオプシがうまくいかない可能性があるので、上記判定を行うことにより、バイオプシの実行を確実に中止させることができる。
【0177】
また、生検針62の移動量の算出を判定部108が許可した場合に、生検針移動量算出部110は、算出した生検針62の移動量を生検針駆動制御部112に出力し、生検針駆動制御部112は、入力された生検針62の移動量に基づいて、マンモ22に生検針62を穿刺させてもよい。これにより、バイオプシ装置10は、生検針62の移動量に基づき該生検針62を移動させて、マンモ22に対するバイオプシを自動的に実行することになる。この結果、バイオプシに関わる医師の作業負担を軽減することができる。
【0178】
さらに、生検針62の先端部132近傍の側面に生検部位36の組織又はファントム120の一部を吸引して採取する採取部64を設け、採取部64がバキュームホース114を介して生検部位36の組織又はファントム120の一部に対する吸引動作を行うバキューム装置116と接続されてもよい。この場合、変化要因データが採取部64を含めた生検針62の特性、バキュームホース114の特性及びバキューム装置116の特性を示すデータであれば、判定部108は、生検部位36の組織を採取可能であるか否かを一層正確に判定することができる。
【0179】
また、生検部位36が生検針62の穿刺方向に沿って採取部64から空間的に離間しているときには、該採取部64が生検部位36の位置に近づくように穿刺方向に沿って生検針62を移動させれば、第2空間範囲内に生検部位36の組織が入ることになるので、該生検部位36の組織を採取することが可能となる。これに対して、生検部位36が生検針62の径方向に沿って採取部64から空間的に離間し、且つ、第2空間範囲から外れている場合には、生検部位36が第2空間範囲に入るように生検針62を径方向に移動させることは困難である。このような場合、マンモ22から生検針62を一旦引き抜いて、マンモ22に再度穿刺する必要がある。
【0180】
このような不都合を回避するために、放射線源26は、少なくともファントム120に対する生検針62の穿刺方向に沿って放射線24を照射し、固体検出器30は、ファントム120を透過した放射線24を、穿刺方向に略直交する放射線24の投影面の放射線画像に変換することが望ましい。これにより、放射線画像は、生検針62の径方向(穿刺方向に直交する方向)に沿った平面(投影面)の画像となるため、該径方向に沿った第2空間範囲の幅を求めることにより、実際にバイオプシを実行する前に、生検部位36が第2空間範囲に入るか否かを容易に判定することが可能となる。
【0181】
なお、上記の説明では、1回目の放射線撮影において生検針62の穿刺方向に沿って放射線24(24c)を照射して放射線画像を取得し、その後、2回目の放射線撮影において生検針62の穿刺方向と略直交する方向に沿って放射線24(24c)を照射することにより放射線画像を取得する場合について説明した。本実施形態は、この説明に限定されることはなく、少なくとも1回目の放射線撮影で取得された放射線画像に基づいて、第1空間範囲及び第2空間範囲(X方向及びY方向の範囲)を求めることが望ましい。
【0182】
すなわち、採取部64としての開口部136のZ方向の吸引範囲(Z方向の長さ)は、X方向及びY方向の吸引範囲(X方向及びY方向の長さ)よりも広いため、1回目の放射線撮影で取得された放射線画像のみに基づいて、第1空間範囲及び第2空間範囲(X方向及びY方向の範囲)を求め、Z方向の範囲については、予め設定された規定値(所定値)で代用してもよい。
【0183】
さらに付言すれば、図8A〜図13Bに示すように、生検針62の側面に採取部64としての開口部136が設けられ、該開口部136は、生検針62の径方向に沿って対向するファントム120の一部や生検部位36の組織を採取する。従って、生検針62の穿刺方向(Z方向)の情報よりも、生検針62の径方向(X方向及びY方向)の情報の方が、第1空間範囲及び第2空間範囲として重要な情報となる。そのため、本実施形態では、少なくとも、X方向及びY方向の位置情報が含まれている1回目の放射線撮影により取得された放射線画像を用いて、第1空間範囲及び第2空間範囲を求めることが望ましい。
【0184】
また、本実施形態では、ファントム120に対して生検針62を1回穿刺した場合での第1空間範囲及び第2空間範囲の測定について説明したが、ファントム120中の同一位置に対して生検針62を複数回穿刺して、該ファントム120の一部を採取した場合での第1空間範囲及び第2空間範囲の測定も可能である。この場合、1回の穿刺で得られた第2空間範囲と、複数回の穿刺で得られた第2空間範囲とを吸引可能範囲記憶部98に記憶させておけば、バイオプシを実行する際に、医師は、表示操作部42を操作することにより、所望の第2空間範囲を選択することが可能となる。
【0185】
さらに、本実施形態では、バイオプシを実行する場合に、判定部108による判定処理等を行うが、それ以外にも、1日の開始時に(毎朝)、判定部108による判定処理を行うことも可能である。このように、バイオプシを実行する毎に、又は、毎朝、上記の判定処理等を実行することにより、バイオプシ装置10のQC(品質管理)を確保することができる。あるいは、さらなる品質管理の向上のために、ファントム120を用いた第1空間範囲及び第2空間範囲の測定を毎朝行ってもよいし、あるいは、所定回数毎に行ってよいことは勿論である。
【0186】
また、本実施形態において、ファントム120は、マンモ22を模擬した第1部材122と、生検部位36の組織を模擬し且つ第1部材122に内蔵される第2部材124とを有し、第1部材122は、放射線24を透過可能な物質であり、第2部材124は、第1部材122と比較して放射線24に対する透過率が低い物質であるか、又は、放射線24に対して不透過な物質であることが望ましい。
【0187】
生検部位36の組織を模擬した第2部材124が第1部材122に内蔵されているので、該組織を採取するためのバイオプシのトレーニングを行うことが可能になる。従って、医師がファントム120を用いてバイオプシのトレーニングを行うことにより、例えば、マンモ22内部の石灰化組織を採取するバイオプシに対する該医師の熟練度を向上させることができる。また、第2部材124が第1部材122と比較して放射線24に対する透過率が低い物質であるか、又は、放射線24に対して不透過な物質であるため、放射線撮影を行って放射線画像を取得した場合、第1部材122と第2部材124とを容易に識別することが可能となる。さらに、ファントム120の画像に基づいて、生検針62が生検部位36の組織を採取可能な空間範囲を測定することで、上述したバイオプシ装置10、コンソール40及び空間範囲測定方法における各効果を容易に得ることができる。
【0188】
この場合、第1部材122の内部に粒子状の複数の第2部材124を略均一に配置すれば、生検部位36の組織に生検針62を正確に位置決めさせるためのトレーニングを医師に行わせることが可能となる。
【0189】
また、本実施形態では、図17A〜図18Cのように、複数の第1空間範囲がファントム120に形成されている場合でも、各第1空間範囲を測定し、測定した各第1空間範囲から第2空間範囲を特定することが可能である。
【0190】
図17Aでは、ファントム120内で矢印Y方向に沿って複数の空洞144及び抜け跡146が所定距離離間して一列に形成されている。なお、矢印Y方向は、被検体20のマンモ22に対して近接又は離間する方向でもある(図1及び図2参照)。従って、図17Bに示す1回目の放射線撮影により得られた放射線画像においては、空洞144及び抜け跡146を示す画像168が矢印Y方向に沿って一列に表示(配列)されている。また、図17Cに示す2回目の放射線撮影により得られた放射線画像(側面視の画像)においては、空洞144及び抜け跡146を示す画像170が互いに重ならないように表示(配列)されている。
【0191】
これに対して、図18Aでは、ファントム120内でX−Y平面に沿って斜め方向に複数の空洞144及び抜け跡146が所定距離離間して一列に形成されている。従って、図18Bに示す1回目の放射線撮影により得られた放射線画像においては、空洞144及び抜け跡146を示す画像168が斜め方向に沿って一列に表示(配列)されている。また、図18Cに示す2回目の放射線撮影により得られた放射線画像(側面視の画像)においては、空洞144及び抜け跡146を示す画像170が互いに重ならないように表示(配列)されている。
【0192】
このように、採取空間としての複数の空洞144及び抜け跡146をファントム120に形成させることにより、複数の空洞144及び抜け跡146に対応するマンモ22内の位置における第2空間範囲を容易に求めることが可能となる。また、特性の異なる複数の生検針62をファントム120に穿刺して複数の空洞144及び抜け跡146を形成した場合には、複数の空洞144及び抜け跡146に応じた第2空間範囲は、互いに異なる可能性がある。従って、各生検針62に応じた第2空間範囲を予め求めておき、バイオプシを実行する際に、生検部位36の位置及び大きさに応じた生検針62を選択するようにすれば、該バイオプシを確実に且つ効率よく実行することができる。
【0193】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0194】
10…バイオプシ装置
12…マンモグラフィシステム
20…被検体
22…マンモ
24、24a〜24c…放射線
26…放射線源
30…固体検出器
32…撮影台
34…圧迫板
38…バイオプシハンド部
40…コンソール
42…表示操作部
54、136…開口部
62…生検針
64…採取部
68…表示部
70…指示部
94…吸引空間算出部
96…ファントム吸引範囲記憶部
98…吸引可能範囲記憶部
100…補正データ記憶部
102…変化要因データ記憶部
104…ターゲット位置算出部
106…生検針位置算出部
108…判定部
110…生検針移動量算出部
112…生検針駆動制御部
114…バキュームホース
116…バキューム装置
120…ファントム
122…第1部材
124…第2部材
144…空洞
152、154、162、164、168、170…画像
172…採取可能範囲
174…吸引範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の検査対象物に穿刺して該検査対象物中の生検部位の組織を採取可能な生検針と、
前記検査対象物を模擬したファントムに前記生検針を穿刺して該ファントムの一部を採取した後に撮影された前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定する空間範囲測定部と、
を有することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記空間範囲測定部は、前記ファントムの画像に基づいて、前記ファントムの一部の採取によって該ファントム内に形成された前記ファントムの一部に応じた第1空間範囲を測定し、測定した前記第1空間範囲を前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な第2空間範囲に補正することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記空間範囲測定部は、前記ファントムの物性及び前記検査対象物の物性に基づく補正データを用いて、前記第1空間範囲を前記第2空間範囲に補正することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記補正データは、前記生検針が前記ファントムの一部を採取可能な空間範囲及び前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な空間範囲に基づくデータ、あるいは、前記ファントムを構成する物質の特性値及び前記検査対象物を構成する物質の特性値に基づくデータであることを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の装置において、
前記空間範囲測定部による前記第1空間範囲の測定結果を記憶する第1空間範囲記憶部と、
前記補正データを記憶する補正データ記憶部と、
前記空間範囲測定部による前記第2空間範囲の補正結果を記憶する第2空間範囲記憶部と、
をさらに有することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記生検針が採取すべき生検部位を指示する生検部位指示部と、
前記生検部位指示部により指示された前記生検部位の位置を算出する生検部位位置算出部と、
前記第2空間範囲の変化要因を示す変化要因データを記憶する変化要因データ記憶部と、
前記第2空間範囲記憶部から前記第2空間範囲を読み出すと共に、前記変化要因データ記憶部から前記変化要因データを読み出し、前記生検部位の位置と、読み出した前記第2空間範囲及び前記変化要因データとに基づいて、前記生検部位指示部により指示された前記生検部位の組織を前記生検針により採取可能であるか否かを判定する判定部と、
をさらに有することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記判定部の判定結果を報知する報知部をさらに有することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、
前記生検部位指示部が前記生検部位を指示した際に、前記生検針の位置を算出する生検針位置算出部と、
前記生検部位の位置及び前記生検針の位置に基づいて、前記生検部位に対する前記生検針の移動量を算出する生検針移動量算出部と、
をさらに有し、
前記判定部は、
前記生検針による前記生検部位の組織の採取が可能と判定した場合には、前記生検部位の組織が採取可能であることを前記報知部を介して外部に報知すると共に、前記生検針移動量算出部による前記生検針の移動量の算出及び前記報知部による前記移動量の報知を許可し、
一方で、前記生検針による前記生検部位の組織の採取が不可能と判定した場合には、前記生検針による前記生検部位の組織の採取禁止を前記報知部を介して外部に報知すると共に、前記生検針移動量算出部による前記生検針の移動量の算出を禁止することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記判定部は、前記第2空間範囲が前記変化要因データに基づく閾値を下回る場合には、前記生検針による前記生検部位の組織の採取が不可能と判定することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載の装置において、
前記判定部は、前記生検部位の位置が前記検査対象物における前記生検針の穿刺可能範囲から外れていれば、前記生検針による前記生検部位の組織の採取が不可能と判定することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項11】
請求項8記載の装置において、
前記生検針の移動を制御する生検針移動制御部をさらに有し、
前記生検針の移動量の算出を前記判定部が許可した場合に、前記生検針移動量算出部は、算出した前記生検針の移動量を前記生検針移動制御部に出力し、
前記生検針移動制御部は、入力された前記生検針の移動量に基づいて、前記検査対象物に前記生検針を穿刺させることを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記生検針の先端部近傍の側面には、前記生検部位の組織又は前記ファントムの一部を吸引して採取する採取部が設けられ、
前記採取部は、吸引通路を介して前記生検部位の組織又は前記ファントムの一部に対する吸引動作を行う吸引装置と接続され、
前記変化要因データは、前記採取部を含めた前記生検針の特性、前記吸引通路の特性、及び、前記吸引装置の特性を示すデータであることを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置において、
放射線源から前記ファントムの一部を採取した後の前記ファントムに放射線を照射し、該ファントムを透過した前記放射線を放射線検出器により放射線画像に変換することで前記ファントムの画像が取得されることを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項14】
請求項13記載の装置において、
前記生検針の先端部近傍の側面には、前記生検部位の組織又は前記ファントムの一部を吸引して採取する採取部が設けられ、
前記放射線源は、少なくとも前記ファントムに対する前記生検針の穿刺方向に沿って前記放射線を照射し、
前記放射線検出器は、前記ファントムを透過した前記放射線を、前記穿刺方向に略直交する前記放射線の投影面の放射線画像に変換することを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項15】
請求項14記載の装置において、
前記ファントムに前記生検針が複数回穿刺されて前記ファントムの一部がそれぞれ採取されることにより、前記ファントムの内部に該ファントムの一部に応じた複数の採取空間が形成され、
前記各採取空間は、側面視で、互いに重ならないように形成されていることを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項16】
請求項15記載の装置において、
前記ファントムは、人体の乳房を模擬し、
前記人体の胸壁から離間するように前記ファントムに前記生検針を複数回穿刺することにより、前記ファントムの内部に前記各採取空間が形成されることを特徴とするバイオプシ装置。
【請求項17】
生体の検査対象物を模擬した第1部材と、該検査対象物中の生検部位の組織を模擬し且つ前記第1部材に内蔵される第2部材とを有するファントムであって、
前記第1部材は、放射線を透過可能な物質であり、
前記第2部材は、前記第1部材と比較して前記放射線に対する透過率が低い物質であるか、又は、前記放射線に対して不透過な物質であり、
前記ファントムに生検針を穿刺して該ファントムの一部を採取した後に該ファントムの画像を撮影し、撮影した前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記生検部位の組織を採取可能な空間範囲が測定されることを特徴とするファントム。
【請求項18】
請求項17記載のファントムにおいて、
前記第1部材の内部に粒子状の複数の前記第2部材が略均一に配置されていることを特徴とするファントム。
【請求項19】
生体の検査対象物を模擬したファントムに生検針を穿刺して該ファントムの一部を採取した後に撮影された前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記検査対象物中の生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定する空間範囲測定部を有することを特徴とする空間範囲測定装置。
【請求項20】
生体の検査対象物を模擬したファントムに生検針を穿刺して該ファントムの一部を採取し、
採取後の前記ファントムを撮影して該ファントムの画像を取得し、
前記ファントムの画像に基づいて、前記生検針が前記検査対象物中の生検部位の組織を採取可能な空間範囲を測定する
ことを特徴とする空間範囲測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−85713(P2012−85713A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233305(P2010−233305)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】