説明

バイオポリマーとアクリルコポリマーとのブレンド

本発明は、1種以上のバイオポリマーと、バイオポリマーの特性を改善させることを目的とした1種以上のアクリルコポリマーとのブレンドに関する。このバイオポリマー組成物は、30〜99.9重量%のバイオポリマーと0.1〜15重量%の1種以上のアクリルコポリマーとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年1月27日に出願された米国仮出願第60/762,657号及び2006年8月31日に出願された同第60/841,644号に基づく利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、1種以上のバイオポリマーと、バイオポリマーの特性を改善させることを目的とした1種以上のアクリルコポリマーとのブレンドに関する。このバイオポリマー組成物は、30〜99.9重量%のバイオポリマーと0.1〜15重量%の1種以上のアクリルコポリマーとを含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
バイオポリマーは、主用途、例えば、包装材料及び瓶詰め用途において、多くの一般的なプラスチックの環境に優しい代替物として使用されている。
【0004】
多くのバイオポリマー、例えばポリラクチドに関連する問題の一つは、ガラス転移温度(ポリラクチドについては〜50℃)よりも高く加熱するときに金属からの剥離に乏しいことである。この特性は、当該バイオポリマーの溶融温度(ポリラクチドについては>150℃)よりも高く加熱する場合には、さらに悪化する。このポリラクチドの乏しい金属固着剥離によって、型(射出成形、吹込成形、熱成形)及びカレンダー装置からの剥離のような溶融処理が困難になる。カレンダー操作の場合には、純粋のポリラクチド樹脂を処理加工することは可能でない。
【0005】
アクリルコポリマーは、米国特許出願第11/053364号のようにPVCとポリスチレンとのブレンドの加工助剤として使用されてきたが、しかしながら、金属剥離の改善だけでなく、溶融強度のような他の特性の改善を達成するためにバイオポリマーと共に同様の加工助剤を使用することは自明ではないであろう。例えば、ポリカーボネートでは、アクリルコポリマー加工助剤を使用しても溶融強度の有意な改善は認められなかった。
【特許文献1】米国特許出願公開第11/053364号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことに、ある種のアクリルコポリマーをバイオポリマー又はバイオポリマーブレンドに少量添加すると、金属剥離の問題なしにバイオポリマーを溶融処理することが可能になることを見出した。さらに、本発明の組成物により、溶融強度の改善、引落率の改善及び溶融粘度の改善が得られることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要約
本発明は、バイオポリマー組成物であって、
(a)85〜99.9重量%の1種以上のバイオポリマーと、
(b)0.1〜15重量%の1種以上のアクリルコポリマーと
を含むバイオポリマー組成物に関する。
【0008】
好ましくは、当該バイオポリマー組成物は、少なくとも1種の合成バイオポリマー、例えば、ポリラクチド又はポリヒドロキシブチレートを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、1種以上のバイオポリマーと、金属剥離が良好なだけでなく溶融強度のような他の特性も改善されたバイオポリマー組成物を生じさせるための1種以上のアクリルコポリマーとのブレンドに関する。
【0010】
本明細書において使用するときに、「バイオポリマー」とは、単一のバイオポリマー又は2種以上のバイオポリマーの混合物をいう。「バイオポリマー」は、限定されないが多糖類(セルロース、デンプンなど)を含めた天然ポリマー;限定されないがナイロン12、ポリカプロラクタム及び脂肪族又は芳香族ポリエステルを含めた天然産物及び副産物から合成されるポリマー;限定されないがポリラクチド及びポリヒドロキシブチレートを含めた生物分解性ポリマーを表すために使用する。
【0011】
このバイオポリマー組成物は、1種以上の生物分解性ポリマーを85〜99.9重量%含む。
【0012】
一実施形態では、当該バイオポリマー組成物は、30〜99.9重量%のポリラクチド及び/又はポリヒドロキシブチレートを含むが、これらは、標準的な分子量又は低い分子量のものであることができる。
【0013】
1種以上のアクリルコポリマーは、生物分解性ポリマーのための加工助剤として使用される。本明細書において使用するときに、「コポリマー」とは、2個以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを意味し、これには、ターポリマー及び3種以上の異なるモノマーを有するポリマーが含まれる。当該コポリマーは、ランダム、ブロック、グラジエント又は他の構造のものであることができる。本明細書において使用するときに、「アクリルコポリマー」とは、アクリル及び/又はメタクリルモノマー単位を60パーセント以上有するコポリマーをいう。本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はアクリレートとメタクリレートとの混合物を包含するように使用する。有用なアクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアクリルモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル及びメタクリル酸ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
アクリルモノマー単位の他に、本発明のアクリルコポリマーは、アクリルモノマーと共に重合可能な他のエチレン系不飽和モノマーを40パーセントまで含むこともできる。これらのモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、弗化ビニリデン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルスルホン、硫化ビニル及びビニルスルホキシドが挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、当該コポリマーはスチレンを含む。
【0015】
一実施形態では、当該アクリルコポリマーは、アクリレートモノマー単位とメタクリレートモノマー単位の両方を含有する。本発明の一実施形態は、メタクリル酸ブチル含有量が20%で、300,000g/molの重量平均分子量を有するメタクリル酸メチル・アクリル酸ブチル・メタクリル酸ブチルのターポリマーである。
【0016】
別の実施形態では、アクリルコポリマーは、10〜75重量%のメタクリル酸メチル単位、10〜50重量%のアクリル酸ブチル単位、0〜50重量%のメタクリル酸ブチル単位及び0〜80重量%のスチレンを含む(合計して全100%)。
【0017】
本発明のコポリマーは、従来の重合技術で作ることができる。当該技術としては、塊状重合、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合及び逆エマルジョン重合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明のアクリルコポリマーは、一般に、10,000〜3,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。
【0019】
本発明のアクリルコポリマーは、2種以上のアクリルコポリマーのブレンドであることができる。一実施形態では、様々な分子量と単量体含有量とを有するアクリル−メタクリルコポリマーのブレンドを使用することができる。>500000g/molの分子量を有する1種のコポリマーと<500000g/molの分子量を有する1種のコポリマーとを有するブレンドを使用して、透明性を保持しつつ二重金属剥離及び溶融強度の改善を与えることができることが分かった。
【0020】
本発明のバイオポリマー組成物は、バイオポリマーを85〜99.9重量%、アクリルコポリマーを0.1〜15重量%含有する。これらの成分は、処理の前に混合してもよいし、又は1回以上の処理工程中、例えば溶融ブレンド操作中に混合してもよい。これは、例えば、一軸押出、二軸押出、Buss kneader、2本ロールミル、インペラー混合で行うことができる。バイオポリマー中でアクリル−メタクリルコポリマーの均一な分布を生じさせるいかなる混合操作も条件を満たす。ブレンドの形成は、単一工程の形成には限定されない。また、1〜85%のキャリヤーポリマー中15〜99%のアクリル−メタクリルコポリマーのマスターバッチを形成させ、その後バイオポリマーに添加して最終ブレンドを得ることも予想される。このキャリヤーポリマーは、1種以上のバイオポリマー、アクリル−メタクリルコポリマー及びメタクリルホモポリマーであることができるが、これらに限定されない。
【0021】
これらのバイオポリマー及びアクリルコポリマーに加えて、本発明の組成物は、様々な添加剤を、当該バイオポリマー+アクリルコポリマーの重量に基づき、0〜100重量%でさらに含有することができる。この添加剤としては、熱安定剤、内部及び外部潤滑剤、衝撃改質剤、加工助剤、充填剤及び顔料を挙げることができるが、これらに限定されない。衝撃改質剤、すなわち、少なくとも1個の低Tgブロック又は層及び少なくとも1種の高Tgブロック又は層を有するコア/シェル又はブロックコポリマーは、当該バイオポリマー組成物に特に有用である。一実施形態では、当該衝撃改質剤は、アクリレート又は弾性コアを有するコア−シェルポリマー、例えば、1,3−ジエン(また、ビニル芳香族とのコポリマー)又は4個以上の炭素を含有するアルキル基を有するアクリル酸アルキルとのエチレン−プロピレン系コポリマーであり、当該シェルは、当該コアにグラフトしており、かつ、ビニル芳香族(例えば、スチレン)、メタクリル酸アルキル(1〜4個の炭素を有するアルキル基)、アクリル酸アルキル(1〜4個の炭素を有するアルキル基)及びアクリロニトリルのようなモノマーから構成される。
【0022】
本発明のバイオポリマー組成物は、バイオポリマー単独を超える多くの改善された特性を有することが分かった。これらの改善された特性としては、代表的なポリラクチド/コポリマーブレンドについて、次のものが挙げられる:
・透明性(0.018”の厚さについて曇度<10)、
・金属剥離(>1分の2本ロールミル固着時間で評価される)、
・改善された溶融強度(ポリラクチドを超える>100%の改善)、及び
・改善された曲げ特性(破断点伸びにおいて>10%増加)。
【0023】
本発明の組成物は、処理中に、トルクの減少及びさらに高い流れ; 深絞り熱成形、吹込成形及び発泡成形についての溶融強度の改善;熱成形における引落率の改善;引張強度及び曲げ強度の改善;並びに耐衝撃性の改善といった追加の利益を与えることができる。
【0024】
本発明の組成物は、公知のあらゆる方法を使用して物品に加工できる。この方法としては、射出成形、押出成形、カレンダー加工、吹込成形、発泡成形及び熱成形が挙げられるが、これらに限定されない。生物分解性組成物を使用して作成できる有用な物品としては、包装材料、フィルム及びボトルが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、本明細書の開示及び実施例に基づき、様々な他の有用な物品及びこれらの物品の成形方法を想像することができる。
【実施例】
【0025】
例:
1〜5重量%のアクリル−メタクリルコポリマーを含有する95〜99%のポリラクチドブレンドを、二軸押出器を使用して溶融押出することによって形成させた。押出中における処理温度及び溶融温度をポリラクチドの溶融温度よりも高く(>152℃)維持して均質な溶融を確保した。押出物をペレット化し、そして射出成形により又は2本ロールミルにより処理加工した。射出成形をポリラクチド溶融温度よりも高いノズル温度(>152℃)で実行し、そして型温度をポリラクチドのガラス転移温度よりも低く(<50℃)維持した。<60秒のサイクル時間及び二重空洞ASTM屈曲バー型を使用した。離型を、排出中に部分的な反りが観察されるまで成形試料を集めることによって評価した。清浄な型表面(離型剤なし)上で処理されたショットの数を溶融剥離特性の基準として使用した。2本ロールミル処理を、ポリラクチドの溶融温度よりも高く(>152℃)これらのロールを加熱することによって実行した。それぞれのロール速度、ギャップ寸法及びロールrpmを、それぞれ1から1.3、0.02から0.1mm及び10から30rpmまで変化させた。このブレンドを、連続フィルムがこれらのロール上で形成されるまで(帯状物)これらのロールに導入した。次いで、このフィルムを切断し、そしてこのフィルムがロールから引っ張ることができなくなるまで30秒ごとにロールから引っ張った。固着に要した時間をミル固着の測定値として記録した。
【0026】
溶融強度をレオテンス溶融強度測定装置に連結された毛管レオメータで評価した。ブレンドを一定の速度で毛管を介して押出し、そしてこのレオテンスを使用して加速した。押出物を加速するのに要した力及び押出と引き取り(引落)との速度差をストランドが破断するまで記録した。>1,000,000の分子量を有するアクリルコポリマー及びメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのコポリマーの組成物を5%添加すると、引落率が>20%改善し、溶融強度が>100%改善することが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオポリマー組成物であって、
(a)85〜99.9重量%の1種以上のバイオポリマーと、
(b)0.1〜15重量%の1種以上のアクリルコポリマー
とを含むバイオポリマー組成物。
【請求項2】
前記バイオポリマー組成物が30〜99.9重量%のポリラクチド、ポリヒドロキシブチレート又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のバイオポリマー組成物 。
【請求項3】
前記バイオポリマーの重量を基準にして、10重量%までという低レベルの衝撃改質剤をさらに含む、請求項1に記載のバイオポリマー組成物。
【請求項4】
前記衝撃改質剤が少なくとも2種の異なるタイプの衝撃改質剤を含む、請求項3に記載のバイオポリマー組成物。
【請求項5】
前記バイオポリマーが10,000〜3,000,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項1に記載のバイオポリマー組成物。
【請求項6】
前記アクリルコポリマーが2種以上のコポリマーのブレンドである、請求項1に記載のバイオポリマー組成物。
【請求項7】
前記組成物が透明である、請求項1に記載のバイオポリマー組成物。
【請求項8】
前記バイオポリマー組成物がデンプン、セルロース、多糖類,脂肪族又は芳香族ポリエステル、ナイロン11及びポリカプロラクタムよりなる群から選択される1種以上のポリマーを0〜69.9重量%含む、請求項1に記載のバイオポリマー組成物。
【請求項9】
バイオポリマー又はバイオポリマーブレンドの特性を改善させるための方法であって、1種以上のアクリルコポリマー0.1〜15重量%と該バイオポリマー又はバイオポリマーブレンド85〜99.9重量%とを混合してバイオポリマー組成物を形成させることを含む、前記方法。
【請求項10】
前記特性の改善は、50〜250℃の温度及び0.1〜60分の処理時間で金属(例えば、クロム)から前記バイオポリマー組成物が剥離するのを促進させることである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記特性の改善は、溶融強度が10%を超えて増大することである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記特性の改善は、引張及び/又は曲げ応力下における破断点伸びが>10%増大することである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記特性の改善は、耐衝撃性が非改質生物分解性ポリマーと比較して>10%増大することである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記特性の改善は、前記物質の引落率が>10%増大することである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記特性の改善は、前記樹脂の処理粘度(1〜10000秒-1の剪断速度)が>10%減少し、トルクの減少(これは、>10%の溶融流れ速度の増加としても測定できる)を生じさせることである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記特性の改善は、前記樹脂の処理粘度(1〜10000秒-1の剪断速度)が>10%増加し、>10%の溶融流れ速度の減少としても測定される溶融強度の改善を生じさせることである、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記特性の改善は、樹脂の成形色がゲートブラシ及びタイガーストライプのような欠陥から改善されることである、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記特性の改善が金属剥離と高い溶融強度との組合せである、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記特性の改善が10%を超える光沢の増大である、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記特性の改善が10%を超える光沢の減少である、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
前記特性の改善が10%を超える弾性率の増加である、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
前記特性の改善は、弾性率が>10%減少することである、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
前記特性の改善は、熱撓み温度が>10%上昇することであり、また、これは、耐用温度が>10%上昇することを意味する、請求項8に記載の方法。
【請求項24】
前記特性の改善は、熱安定性及び加水分解安定性が増大することである、請求項8に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載のバイオポリマー組成物を含む成形物品。

【公表番号】特表2009−524726(P2009−524726A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552333(P2008−552333)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/001425
【国際公開番号】WO2007/089451
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】