説明

バイオマスの炭化処理装置、及び炭化物の製造方法

【課題】補助燃料による燃焼排ガスの追い焚き不要な燃費改善されたバイオマスの炭化処理装置及び炭化物の製造方法を提供する。
【解決手段】乾燥物を生成する乾燥機と、乾燥物から熱分解ガスを生成する炭化炉と、熱分解ガスを燃焼して乾燥機での乾燥用の燃焼排ガスを生成する燃焼炉とを含み、燃焼炉は、熱分解ガス導入口と、1次燃焼空気を熱分解ガスの流れに沿って導入することによって還元雰囲気領域を形成する1次燃焼空気導入口と、還元雰囲気領域よりも下流において酸化雰囲気領域を形成する2次燃焼空気を導入する2次燃焼空気導入口と、酸化雰囲気領域よりも下流において乾燥機から排出される乾燥排ガスを導入して自己脱硝領域を形成する乾燥排ガス導入口と、燃焼排ガスを自己脱硝領域から排出する燃焼排ガス送出口と、炭化炉での熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを酸化雰囲気領域から抽気する燃焼炉高温ガス抽気口とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスの炭化処理装置、及び炭化物の製造方法に関し、特に、その燃費の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場(終末処理場)から大量に発生する脱水ケーキと呼ばれる有機性廃棄物が減容化される方法の一つとして炭化処理がある。有機性廃棄物から炭化処理によって生成される炭化物が有用なバイオマスによる発電燃料として利用される設備が稼動している。一方で、炭化処理による副生成物である可燃性の熱分解ガス(乾留ガス)は燃焼されることによって、自身が分解、及び無害化されると共にその燃焼熱がエネルギとして回収されている。
【0003】
炭化処理の工程において温度が不足する場合には、処理対象である有機性廃棄物のガス化率が低下する。ガス化率が低い、すなわち炭化の進行が充分でない場合には低い発火温度、及び高い自己発熱性を有する低品質の炭化物が生成されると共に熱分解ガスの発生量の減少による燃費悪化が生じる。このため、炭化炉でのガス化率向上のためには高温の熱源が必要となる。
【0004】
熱分解ガスが完全燃焼されることによって生じる燃焼排ガスは炭化炉の熱源として用いられる。しかし、燃焼排ガスは、炭化炉において高温が確保されるための熱源としては充分でない。このため、炭化炉での高温の熱源が得られるためには、補助燃料が用いられる燃焼排ガスの追い焚きが必要となる。このような補助燃料の投入によって、炭化処理の工程における燃費悪化が生じる。より高温の熱源が必要とされる外熱(間接加熱)式の炭化炉においてはその影響が特に顕著である。
【0005】
上の記述に関連して、汚泥の炭化処理方法及び装置並びに発電方法が特開2005−199157号公報に開示されている。この例による方法では、汚泥を炭化処理する炭化処理工程と、該炭化処理工程で得られる熱分解ガスを高温還元雰囲気の一次燃焼ゾーンで一次燃焼させることにより主にNH(アンモニア)を分解すると共にNO(亜酸化窒素)を分解し、かつNO(Nitrogen Oxide:窒素酸化物)を還元する一次燃焼工程と、熱分解ガスの未燃ガスを低温酸化雰囲気の二次燃焼ゾーンで燃焼させる二次燃焼行程とを含むこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−199157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、補助燃料が用いられる燃焼排ガスの追い焚きが不要とされることを実現することで、燃費の改善されたバイオマスの炭化処理装置、及び炭化物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、発明を実施するための形態で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明のバイオマスの炭化処理装置は、バイオマス(1)を乾燥して乾燥物を生成する乾燥機(20)と、乾燥物から熱分解ガスを生成する炭化炉(30)と、熱分解ガスを燃焼して乾燥機(20)での乾燥に用いられる燃焼排ガスを生成する燃焼炉(40)とを含み、燃焼炉(40)は、燃焼炉(40)の最上部に設けられ熱分解ガスを鉛直下向きに導入する熱分解ガス導入口(101)と、1次燃焼空気を熱分解ガスの流れに沿って導入することによって還元雰囲気領域(Z1)を形成する1次燃焼空気導入口(102)と、還元雰囲気領域(Z1)よりも下流において酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)を形成する2次燃焼空気を導入する2次燃焼空気導入口(104)と、酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)よりも下流において乾燥機(20)から排出される乾燥排ガスを導入して自己脱硝領域(Y2)を形成する乾燥排ガス導入口(106)と、熱分解ガスを燃焼することによって生成する燃焼排ガスを自己脱硝領域(Y2)から排出する燃焼排ガス送出口(108)と、炭化炉(30)での熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)から抽気する燃焼炉高温ガス抽気口(90)とを有する。
【0010】
また、本発明のバイオマスの炭化処理装置は更に、酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)に、他の2次燃焼空気を導入する他の2次燃焼空気導入口(105)を有し、燃焼炉高温ガス抽気口(109)は、他の2次燃焼空気導入口(105)よりも上流に位置する。
【0011】
また、本発明のバイオマスの炭化処理装置は更に、還元雰囲気領域(Z1)に、他の乾燥排ガスを導入する他の乾燥排ガス導入口(103)を有する。
【0012】
本発明のバイオマスの炭化処理装置は、バイオマス(1)を乾燥して乾燥物を生成する乾燥機(20)と、乾燥物から熱分解ガスを生成する炭化炉(30)と、熱分解ガスを燃焼して乾燥機(20)での乾燥に用いられる燃焼排ガスを生成する燃焼炉(40)とを含み、燃焼炉(40)は、熱分解ガスが流れる流れ方向の上流側から順に、熱分解ガスを導入する熱分解ガス導入口(101)と、1次燃焼空気を導入する1次燃焼空気導入口(102)と、2次燃焼空気を導入する2次燃焼空気導入口(104)と、乾燥機(20)から排出される乾燥排ガスを導入する乾燥排ガス導入口(106)と、熱分解ガスを燃焼することによって生成する燃焼排ガスを排出する燃焼排ガス送出口(108)とを有し、燃焼炉(40)は、更に、2次燃焼空気導入口(104)と乾燥排ガス導入口(106)との間に位置して、炭化炉(30)での熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを抽気する燃焼炉高温ガス抽気口(109)とを有する。
【0013】
また、本発明のバイオマスの炭化処理装置は更に、2次燃焼空気導入口(104)と乾燥排ガス導入口(106)との間に、他の2次燃焼空気を導入する他の2次燃焼空気導入口(105)を有し、燃焼炉高温ガス抽気口(109)は、他の2次燃焼空気導入口(105)よりも上流に位置する。
【0014】
そして、本発明のバイオマスの炭化処理装置は更に、1次燃焼空気導入口(102)と2次燃焼空気導入口(104)との間に、他の乾燥排ガスを導入する他の乾燥排ガス導入口(103)を有する。
【0015】
本発明のバイオマスの炭化物の製造方法は、乾燥機(20)が、バイオマス(1)を乾燥して乾燥物を生成するステップと、炭化炉(30)が、乾燥物から熱分解ガスを生成するステップと、燃焼炉(40)が、熱分解ガスを燃焼して乾燥機(20)での乾燥に用いられる燃焼排ガスを生成するステップとを備え、燃焼炉(40)が、燃焼排ガスを生成するステップは、熱分解ガス導入口(101)から熱分解ガスを導入するステップと、1次燃焼空気導入口(102)から1次燃焼空気を導入して熱分解ガスと混合することによって還元雰囲気領域(Z1)を形成するステップと、2次燃焼空気導入口(104)から2次燃焼空気を導入して還元雰囲気領域(Z1)よりも下流において酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)を形成するステップと、酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)よりも下流において乾燥機(20)から排出される乾燥排ガスを乾燥排ガス導入口(106)から導入して自己脱硝領域(Y2)を形成するステップと、燃焼排ガス送出口(108)から、熱分解ガスを燃焼することによって生成する燃焼排ガスを自己脱硝領域(Y2)から排出するステップと、燃焼炉高温ガス抽気口(109)から、炭化炉(30)での熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)から抽気するステップとを含む。
【0016】
また、本発明のバイオマスの炭化物の製造方法は更に、他の2次燃焼空気導入口(105)から他の2次燃焼空気を導入して酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)よりも下流において自己脱硝準備域(Y1)を形成するステップを含み、燃焼炉高温ガス抽気口(109)から、炭化炉(30)での熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)から抽気するステップを含む。
【0017】
また、本発明のバイオマスの炭化物の製造方法は更に、還元雰囲気領域(Z1)に、他の乾燥排ガス導入口(103)から他の乾燥排ガスを導入するステップを含む。
【0018】
また、本発明のバイオマスの炭化物の製造方法は更に、酸化雰囲気領域(Z2、及びY1)を略1100〜1200℃に調整するステップを含む。
【0019】
そして、本発明のバイオマスの炭化物の製造方法は、乾燥機(20)から排出される乾燥排ガスの40〜60%を乾燥排ガス導入口(106)から導入するステップと、乾燥機(20)から排出される乾燥排ガスの残りの40〜60%である他の乾燥排ガスを他の乾燥排ガス導入口(103)から導入するステップとを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、補助燃料が用いられる燃焼排ガスの追い焚きが不要とされることを実現し、燃費の改善されたバイオマスの炭化処理装置、及び炭化物の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施形態におけるバイオマスの炭化処理装置の一例を示す系統図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における熱分解ガス燃焼炉の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態によるバイオマスの炭化処理装置、及び炭化物の製造方法を詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明によるバイオマスの炭化処理装置の構成を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態におけるバイオマスの炭化処理装置の一例を示す系統図である。図1を参照すると、処理対象である高含水バイオマス1から炭化物6を生成する本実施形態によるバイオマスの炭化処理装置は、主として、乾燥機20と、炭化炉(炭化ガス化炉)30と、熱分解ガス燃焼炉40とを含んでいる。
【0025】
ここで、本実施形態での高含水バイオマス1は特に、高含水含窒素有機物を処理対象としている。高含水含窒素有機物としては下水汚泥が例示される。また、バイオマスの水分が高い程、乾燥に多くの熱源が必要とされるため本実施形態は特に効果的である。なお、本実施形態においては下水汚泥に限らず、例えば食品汚泥、製紙汚泥、ビルピット汚泥、消化汚泥、活性汚泥、高含水木材片等の有機物に適用できる。また、生成された炭化物6は例えば、火力発電所の石炭焚きボイラで石炭と共に混焼する固体燃料として用いることができる。
【0026】
乾燥機20は、図示せぬ脱水機によって所定の水分になるまで脱水された処理対象物の温度を上げて、その水分を炭化に適した状態になるまで効率良く除去する装置である。乾燥機20には、高含水バイオマス1に熱風を直接吹き付ける方式である熱風乾燥機が好適に用いられる。なお、乾燥機20は、高含水バイオマス1が燃焼せずに乾燥する装置であれば直接加熱方式であっても、間接加熱方式であっても良い。
【0027】
乾燥機20はライン11で、図示せぬ脱水機と接続されている。このライン11には、図示せぬ圧送ポンプによって高含水バイオマス1を圧送することのできる配管、及び圧送された高含水バイオマス1を一時貯留して乾燥機20に連続的に供給するケーキ定量フィーダが好適に用いられる。また、乾燥機20はライン21で炭化炉30と接続されている。ライン21は、乾燥後の高含水バイオマス1を乾燥機20から炭化炉30に搬送する経路である。このライン21にはコンベア、及び定量フィーダが好適に用いられる。
【0028】
炭化炉30は、乾燥後の高含水バイオマス1を酸素の供給が遮断された状態で加熱して高含水バイオマス1内の有機物を熱分解して炭化物6を生成する装置である。本実施形態による炭化炉30には、内筒が回転して処理対象に対して均一な加熱が行われることで安定した生成物の品質が確保される間接加熱式ロータリーキルン炭化炉が好適に用いられた例が示されている。高含水バイオマス1の加熱後における炭化炉30の内筒には、生成物である炭化物6と、副生成物である可燃性の熱分解ガス(乾留ガス)とが溜まっている。なお、炭化炉30には、例えば直接加熱方式等の他の方式が用いられても良い。
【0029】
炭化炉30の内筒の出口には、生成された炭化物6の排出用のライン33が接続されている。また、炭化炉30の内筒は、ガス用の配管である熱分解ガスライン31で熱分解ガス燃焼炉40と接続されている。熱分解ガスライン31には、熱分解ガス中の熱分解残渣である炭化物6を分離除去する図示せぬサイクロン(炭化炉集塵機)と、熱分解ガスを熱分解ガス燃焼炉40に送り込む熱分解ガスファン35とを設けることがある。図示せぬサイクロンの底部からは溜まった炭化物6が同様に排出される。
【0030】
熱分解ガス燃焼炉40は、炭化炉30から排出される熱分解ガスを燃焼して乾燥機20、及び炭化炉30の熱源となる燃焼排ガスを生成すると共に、熱分解ガスと、乾燥機20から排出される乾燥排ガスとに含まれる有害物質を分解、及び無害化する装置である。
【0031】
熱分解ガス燃焼炉40は、燃焼排ガス(熱源)の送気先である乾燥機20とは燃焼排ガスライン43、及び燃焼排ガスライン43につながる燃焼排ガスライン44で接続されている。燃焼排ガスライン44は高含水バイオマス1に燃焼排ガスが直接吹き付けられる形態で乾燥機20と接続されている。また、熱分解ガス燃焼炉40は、燃焼排ガス(熱源)のもう一つの送気先である炭化炉30の外筒(外熱部)とは燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン90で接続されている。
【0032】
一方で、熱分解ガス燃焼炉40は上述したように、熱分解ガスの排出元である炭化炉30の内筒とは熱分解ガスライン31で接続されている。熱分解ガス燃焼炉40は熱分解ガス以外にも、燃焼空気、及び乾燥排ガスの導入用の経路と接続されている。
【0033】
燃焼空気の経路は、一端が燃焼用空気ファン60と接続されて、中途に設けられた空気予熱器(A/H:Air (pre)Heater)38の内部を経た燃焼用空気ライン61の他端が、3つの燃焼用空気ライン62と、63と、64とに分岐されている。ここで、燃焼用空気ファン60は、外気から取り入れた空気を送り込む装置である。また、空気予熱器38は、排ガスの熱を回収して燃焼用に送り込む空気を暖める装置である。熱分解ガス燃焼炉40は燃焼用空気ライン62と、63と、64と各々接続されている。燃焼用空気ライン62と、63と、64とにはそれぞれ、流量調節弁56と、55と、54とが設けられている。燃焼用空気ライン62から熱分解ガス燃焼炉40に送り込まれる空気は1次燃焼空気として用いられる。また、燃焼用空気63と、64とから熱分解ガス燃焼炉40に送り込まれる空気は2次燃焼空気として用いられる。
【0034】
乾燥排ガスの経路は、乾燥機20と接続されて、乾燥用ファン25が中途に設けられた乾燥排ガスライン24と、熱交換器(GGH1:Gas−Gas Heat exchanger)22と、乾燥排ガスライン26と、熱交換器(GGH2)27と、乾燥排ガスライン23とが順に接続されており、その先が、乾燥排ガスライン28と、29とに分岐されている。熱分解ガス燃焼炉40は乾燥排ガスライン28と、29と各々接続されている。ここで、熱交換器(GGH1)22、及び熱交換器(GGH2)27は乾燥排ガスの経路中においては乾燥排ガスの加温(蓄熱)用に機能する。なお、熱交換器は、廃熱回収の一手段であり、例示した配列以外での実施もありうる。
【0035】
熱交換器(GGH1)22の高温(放熱)側には燃焼排ガスライン45が接続されている。燃焼排ガスライン45は、熱分解ガス燃焼炉40に接続されている燃焼排ガスライン43から乾燥機20側につながる燃焼排ガスライン44と分岐して設けられている。熱交換器(GGH1)22には、燃焼排ガスライン45内の燃焼排ガスの有する熱源の放出後の経路として燃焼排ガスライン37が接続されている。燃焼排ガスライン37は更に、熱交換器(GGH3)68と、燃焼排ガスライン69と、排ガス処理装置39との順に接続されており、そこから、燃焼排ガスライン70で、熱交換器(GGH3)68と再度接続されてからファン46を介して煙突47に通じている。なお、熱交換器(GGH3)68は、燃焼排ガスライン70内の燃焼排ガスの温度を上げて、煙突47からの燃焼排ガスの排出時における白煙の発生を抑制するために設けられている。
【0036】
熱交換器(GGH2)27の高温(放熱)側には、燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン36が接続されている。燃焼炉高温ガス抽気ライン36は、炭化炉30の外筒(外熱部)を介して燃焼炉高温ガス抽気ライン90と接続される燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)の経路である。言い換えると、燃焼炉高温ガス抽気による熱源が炭化炉30で使われた後の燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)の経路である。熱交換器(GGH2)27には、燃焼炉高温ガス抽気ライン36内の燃焼排ガスの有する熱源の放出後の経路として燃焼炉高温ガス抽気ライン65が接続されている。燃焼炉高温ガス抽気ライン65は更に、空気予熱器38と、燃焼炉高温ガス抽気ライン67との順に接続されており、そこから、燃焼炉高温ガス抽気ライン67は燃焼排ガスライン37と合流する。燃焼炉高温ガス抽気ライン67は中途に、ファン66が設けられている。空気予熱器38においては、燃焼炉高温ガス抽気ライン65内の燃焼排ガスは高温(放熱)側となり、その燃焼排ガスの有する熱が上述した、燃焼用空気ライン61内の燃焼用空気を暖めるための排ガスの熱となる。
【0037】
次に、本実施形態による熱分解ガス燃焼炉40の構成を詳細に説明する。
【0038】
図2は、本発明の実施形態における熱分解ガス燃焼炉の一例を示す断面図である。図2を参照すると、本実施形態によるバイオマスの炭化処理装置の熱源を生成すると共に、有害物質を分解、及び無害化する本実施形態による熱分解ガス燃焼炉40はその炉内40dに空間を有する中空円筒状の構造である。熱分解ガス燃焼炉40を構成する円筒体のケース110は、円筒外径面と、片方の円板状端面とを有している。円筒状の熱分解ガス燃焼炉40は、そのケース110の外周方向、及び径方向に対して垂直方向で円板状端面に向かう側を流れ方向として熱分解ガス燃焼炉内40dを熱分解ガスが通過するように形成されている。本実施形態においては熱分解ガスが鉛直下向きに流れる例が示されている。
【0039】
熱分解ガス燃焼炉40のケース110の円盤状端面と対向する他方の端面の位置、すなわち熱分解ガス燃料炉40における熱分解ガスの最上流部には、熱分解ガスライン31に接続される熱分解ガス導入口101が設けられている。熱分解ガス導入口101は、円筒状の熱分解ガス燃焼炉40のその径の略中心の位置から熱分解ガス燃焼炉内40dに熱分解ガスが流れ方向で導入されるように形成されている。
【0040】
また、熱分解ガス燃料炉40の上流部には、燃焼用空気ライン62(1次燃焼空気)に接続される1次燃焼空気導入口102が設けられている。1次燃焼空気導入口102は、1次燃焼空気が、熱分解ガスの外周から、熱分解ガスの流れに沿って、熱分解ガス燃焼炉内40dに導入されるように形成されている。
【0041】
熱分解ガス導入口101、及び1次燃焼空気導入口102よりも下流側のケース110には乾燥排ガスライン28に接続される乾燥排ガス上部導入口103がケース110から径方向に突出して設けられている。乾燥排ガス上部導入口103は、熱分解ガス燃焼炉内40dを流れる熱分解ガスの外周から乾燥排ガスが導入されるように形成されている。
【0042】
また、乾燥排ガス上部導入口103よりも下流側には同様に、燃焼用空気ライン(2次燃焼空気)63に接続される2次燃焼空気導入口104がケース110から径方向に突出して設けられている。2次燃焼空気導入口104は、熱分解ガス燃焼炉内40dを流れる熱分解ガスの外周から2次燃焼空気が導入されるように形成されている。また、2次燃焼空気導入口104は、より上流側の乾燥排ガス上部導入口103から2次燃焼空気導入口104までの領域を流れる熱分解ガスの滞留時間が1.5秒以上になるような位置に設けられている。
【0043】
また、2次燃焼空気導入口104よりも下流側には同様に、燃焼用空気ライン(2次燃焼空気)64に接続される2次燃焼空気導入口105がケース110から径方向に突出して設けられている。2次燃焼空気導入口105は、熱分解ガス燃焼炉内40dを流れる熱分解ガスの外周から2次燃焼空気が導入されるように形成されている。また、2次燃焼空気導入口105は、より上流側の2次燃焼空気導入口104から2次燃焼空気導入口105までの領域を流れる熱分解ガスの滞留時間が1秒以上になるような位置に設けられている。
【0044】
そして、2次燃焼空気導入口105よりも下流側には同様に、乾燥排ガスライン29に接続される乾燥排ガス下部導入口106がケース110から径方向に突出して設けられている。乾燥排ガス下部導入口106は、熱分解ガス燃焼炉内40dを流れる熱分解ガスの外周から乾燥排ガスが導入されるように形成されている。また、乾燥排ガス下部導入口106は、熱分解ガス燃焼炉内40dのより下流側の領域を流れる熱分解ガスの滞留時間が2秒以上確保できるような位置に設けられている。
【0045】
これらのケース110から突出して設けられた乾燥排ガス上部導入口103、2次燃焼空気導入口104、2次燃焼空気導入口105、及び乾燥排ガス下部導入口106は図中においてはそれぞれについて1箇所が示されている。しかし、熱分解ガスの流れ方向に対して垂直方向に当たるケース110の同一円周上にそれぞれの導入口が複数設けられることでそれぞれのガスの熱分解ガス燃焼炉内40dへの導入時における濃度むらが防止されてより効率の良い熱分解ガスの燃焼が行われる。好適には、それぞれの導入口は放射状に4箇所設けられる。
【0046】
ケース110の円筒外径面における円板状端面に最も近い位置、すなわち熱分解ガス燃料炉内40dにおける熱分解ガスの最下流部付近には燃焼排ガス送出口107と、108とがそれぞれ、ケース110から径方向に突出して設けられている。燃焼排ガス送出口108は燃焼排ガスライン43に接続されている。熱分解ガスが、熱分解ガス燃焼炉内40dを流れ方向に通過しながら燃焼されることによって生成された燃焼排ガスが、熱分解ガス燃料炉内40dにおける最下流部付近で径方向に進行方向を変えて燃焼排ガスライン43に排出されるように燃焼排ガス送出口108は形成されている。一方、燃焼排ガスの追い焚きの経路として用意されている燃焼排ガス送出口107は本実施形態においては遮断されている。なお、燃焼排ガス送出口107は敢えて設ける必要はない。
【0047】
また、更に、2次燃焼空気導入口104よりも下流側で、乾燥排ガス下部導入口106よりも上流側には、燃焼炉高温ガス抽気口109がケース110から径方向に突出して設けられている。燃焼炉高温ガス抽気口109は、燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン90に接続されている。燃焼炉高温ガス抽気口109は、抽気された燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス)が、燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン90を介して炭化炉30の外筒(外熱部)に導入されるように形成されている。燃焼炉高温ガス抽気口109は好適には、2次燃焼空気導入口105よりも上流側に設けられる。
【0048】
次に、本発明によるバイオマスの炭化処理装置の動作を詳細に説明する。
【0049】
まず、図1を参照すると、図示せぬ脱水機によって脱水された高含水バイオマス1はライン11を通じて乾燥機20に投入される。乾燥機20は、水分が70〜80%程度になるまで脱水された高含水バイオマス1の水分を15%程度になるまで乾燥する。乾燥機20での乾燥の熱源には、熱分解ガス燃料炉40で生じて、燃焼排ガスライン43、及び44を介して、乾燥機20内の高含水バイオマス1に直接吹き付ける方式で導入される850℃程度(通常800〜900℃)の燃焼排ガスが用いられる。この温度の燃焼排ガスは、そのまま乾燥機20に導入してもその耐久性に影響を与えないため、本実施形態では、高含水バイオマス1を効率良く乾燥する効果、乾燥機の耐久性を維持する効果、並びに温度調節用の機器、及びエネルギを必要とせずに設備を単純化する効果を有する。
【0050】
次に、乾燥機20による乾燥後の高含水バイオマス1はライン21を通じて炭化炉30に投入される。炭化炉30は、乾燥後の高含水バイオマス1を酸素の供給が遮断された状態で約300〜600℃に加熱することによって炭化処理して、高含水バイオマス1内の有機物を熱分解することによって炭化物6と、熱分解ガスとを生成する。生成された炭化物6は、排出用のライン33を通して排出される。炭化炉30での炭化処理の熱源には、熱分解ガス燃料炉40から抽気されて、燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン90を介して炭化炉30の外筒(外熱部)に導入される1150℃程度(通常1100〜1200℃)の燃焼炉高温ガスが用いられる。この燃焼炉高温ガスは、炭化炉30での炭化処理の熱源として充分な温度を有しているため補助燃料を用いての追い焚きが必要とならない。よって、本実施形態では、燃費向上の効果を有する。より高温の熱源が必要とされる外熱(間接加熱)式の炭化炉においてはその影響が特に顕著である。
【0051】
次に、炭化炉30での炭化処理によって生じた熱分解ガスは熱分解ガスファン35によって熱分解ガスライン31を通じて熱分解ガス燃焼炉40に導入される。熱分解ガス燃焼炉40に導入された熱分解ガスは、同じく熱分解ガス燃焼炉40に導入される燃焼空気、及び乾燥排ガスと混合されて熱分解ガス燃焼炉内40dで燃焼される。熱分解ガスが、熱分解ガス燃焼炉内40dで燃焼されることによって生じた燃焼炉排ガスは炭化炉30、及び乾燥機20での熱源となる。炭化炉30には、1150℃程度(通常1100〜1200℃)の燃焼炉高温ガスが抽気されて用いられ、乾燥機20には、熱分解ガス燃焼炉内40dでの熱分解ガスの燃焼後に生じた900℃程度(通常850〜950℃)の燃焼排ガスが送気されて用いられる。
【0052】
熱分解ガス燃焼炉40に導入される乾燥排ガスは、900℃程度(通常850〜950℃)の燃焼排ガス、及び炭化炉30での加熱によって650℃程度(通常600〜700℃)にまで温度の下がった燃焼炉高温ガスとの熱交換によって予め加温されている。より詳細にはまず、熱分解ガス燃焼炉40から燃焼排ガスライン43へと送出されてきた燃焼排ガスの内で乾燥機20での熱源としては必要量以上であった900℃程度(通常850〜950℃)の燃焼排ガスが燃焼排ガスライン45に分岐された経路を進んで熱交換器(GGH1)22内に入る。乾燥用ファン25によって乾燥排ガスライン24経由で熱交換器(GGH1)22内に導入された200℃程度(通常180〜220℃)の乾燥排ガスは900℃程度(通常850〜950℃)の燃焼排ガスによって400℃程度(通常350〜450℃)にまで暖められる。次に、炭化炉30での加熱後の650℃程度(通常600〜700℃)の燃焼炉高温ガスはファン66によって、熱交換器(GGH2)27内に入る。乾燥排ガスライン26経由で熱交換器(GGH2)27内に導入された400℃程度(通常350〜450℃)の乾燥排ガスは650℃程度(通常600〜700℃)の燃焼炉高温ガスによって500℃程度(通常450〜600℃)にまで暖められる。このように、500℃程度(通常450〜600℃)にまで加温された乾燥排ガスは乾燥排ガスライン23経由で、乾燥排ガスライン28、及び29に分岐された経路で熱分解ガス燃焼炉40に導入される。なお、乾燥排ガスライン23から、乾燥排ガスライン28、及び29への乾燥排ガス流量の分配は図示せぬ流量調節弁によって行われる。
【0053】
一方で、熱交換器(GGH1)22内で乾燥排ガスを暖めたことで放熱して300℃程度(通常250〜350℃)にまで温度を下げた燃焼排ガスはファン46によって、燃焼排ガスライン37を経由して熱交換器(GGH3)68に導入される。熱交換器(GGH3)68では、300℃程度(通常250〜350℃)の燃焼排ガスは、自身の熱を更に放出してから、燃焼排ガスライン69経由で排ガス処理装置39に導入される。燃焼排ガスは、排ガス処理装置39で所要の浄化処理がなされた後、燃焼排ガスライン70経由で、熱交換器(GGH3)68に再度導入されて白煙の発生を抑制するために自身の温度を上げられてから煙突47を通じて大気に放出される。
【0054】
また、熱交換器(GGH2)27内で乾燥排ガスを暖めたことで放熱した燃焼炉高温ガスは燃焼炉高温ガス抽気ライン65を経由して空気予熱器38に導入される。空気予熱器38では燃焼炉高温ガスは、300℃程度(通常250〜350℃)になるまで自身の熱を更に放出してから燃焼炉高温ガス抽気ライン67を経由して、燃焼排ガスライン37を流れる燃焼排ガスと合流する。燃焼炉高温ガスはその後、上述した排ガス処理等が行われてから大気に放出される。
【0055】
空気予熱器38では、燃焼炉高温ガスの放出した熱によって、燃焼用空気ファン60から供給された燃焼用空気が暖められる。暖められた燃焼用空気は、燃焼用空気ライン61を経由で、3つの燃焼用空気ライン62と、63と、64とに分岐された経路で熱分解ガス燃焼炉40に導入される。なお、熱分解ガス燃焼炉40への導入量は、燃焼用空気ライン62と、63と、64とのそれぞれに設けられている、流量調節弁56と、55と、54とによって調整される。
【0056】
次に、図2を参照して、本実施形態による熱分解ガス燃焼炉40の動作を詳細に説明する。
【0057】
まず、熱分解ガスが、熱分解ガス燃焼炉40の熱分解ガス導入口101から熱分解ガス燃焼炉内40dに導入される。熱分解ガスは、熱分解ガス燃焼炉40のケース110の円板状端面に向かう側を流れ方向として熱分解ガス燃焼炉内40dを流動する。熱分解ガスは窒素分を含んでいる。また、熱分解ガスの理論燃焼温度は一例として1800℃程度である。なお、本実施形態においては熱分解ガスが鉛直下向きに流れる例によって説明する。
【0058】
また、1次燃焼空気が、1次燃焼空気導入口102から熱分解ガス燃焼炉内40dに導入される。熱分解ガス燃焼炉内40dに導入された1次燃焼空気は、熱分解ガスの外周から熱分解ガスに沿って流れることによって熱分解ガスと混合される。1次燃焼空気は低空気比で導入される。好適には、1次燃焼空気は空気比を0.7〜0.8にして導入される。熱分解ガスと、1次燃焼空気とが混合されることによって、還元雰囲気領域での燃焼が行われる還元燃焼域Z1が形成される。還元燃焼域Z1は、2次燃焼空気導入口104よりも上流側の領域である。
【0059】
更に、乾燥排ガスが、乾燥排ガス上部導入口103から熱分解ガス燃焼炉内40dに導入される。乾燥排ガス上部導入口103から導入される乾燥排ガスは、図示せぬ流量調節弁によって、乾燥機20から排出される乾燥排ガスの内の所定流量に調整される。好適には、乾燥排ガス上部導入口103から導入される乾燥排ガスは、乾燥機20から排出される乾燥排ガスの内の40〜60%の流量に調整される。導入された乾燥排ガスは、熱分解ガス、及び1次燃焼空気と混合される。アンモニア、シアン等の窒素分が含まれている乾燥排ガスは空気比が0.1程度(通常0.05〜0.15)を示し、その温度は500℃程度(通常450〜600℃)である。このようにして、還元燃焼域Z1では、熱分解ガスと、1次燃焼空気と、乾燥排ガスとが混合されて空気比が0.8程度で、温度が1300℃程度になる。よって、熱分解ガスは、還元雰囲気で燃焼されてアンモニア、亜酸化窒素等が分解され、また発生したNO(Nitrogen Oxide:窒素酸化物)が乾燥排ガス中のアンモニアによって還元されて熱分解ガス燃焼時における窒素酸化物の発生量を低減することができる。また、熱分解ガス燃焼炉40d内の温度を1300℃以下にすることによって熱分解ガス燃焼炉40の耐久性が向上される。
【0060】
次に、2次燃焼空気が、2次燃焼空気導入口104から熱分解ガス燃焼炉内40dに導入される。熱分解ガス燃焼炉内40dに導入された2次燃焼空気は還元燃焼域Z1での燃焼後の熱分解ガスと混合される。好適には、2次燃焼空気は、混合後の熱分解ガスの空気比が1.1程度(通常1.05〜1.15)となるように導入される。還元燃焼域Z1での燃焼後の熱分解ガスと、2次燃焼空気とが混合されることによって、酸化雰囲気領域での燃焼が行われる酸化燃焼域Z2が形成される。酸化燃焼域Z2は、2次燃焼空気導入口105よりも上流側の領域である。このようにして、酸化燃焼域Z2では、還元燃焼域Z1での燃焼後の熱分解ガスと、2次燃焼空気とが混合されて空気比が1.1程度(通常1.05〜1.15)で、温度が1150℃程度(通常1100〜1200℃)になる。よって、還元燃焼域Z1での燃焼後の熱分解ガスは、酸化雰囲気で燃焼され、還元燃焼域Z1での未燃ガスを完全燃焼することができる。こうして、還元燃焼域Z1と、酸化燃焼域Z2とを含む熱分解ガス燃焼域Zにおいて熱分解ガスは燃焼される。
【0061】
次に、2次燃焼空気が、2次燃焼空気導入口105から熱分解ガス燃焼炉内40dに導入される。熱分解ガス燃焼炉内40dに導入された2次燃焼空気は酸化燃焼域Z2での燃焼後の熱分解ガスと混合される。好適には、2次燃焼空気は、混合後の熱分解ガスの空気比が1.2程度(通常1.15〜1.25)となるように導入される。酸化燃焼域Z2での燃焼後の熱分解ガスと、2次燃焼空気とが混合されることによって自己脱硝準備領域Y1が形成される。自己脱硝準備領域Y1は、乾燥排ガス下部導入口106よりも上流側の領域である。このようにして、自己脱硝準備領域Y1では、酸化燃焼域Z2での燃焼後の熱分解ガスと、2次燃焼空気とが混合されて空気比が1.2程度(通常1.15〜1.25)で、温度が900℃程度(通常850〜950℃)になる。また、自己脱硝準備領域Y1では、自己脱硝に必要な酸素濃度である3〜4%が確保される。
【0062】
次に、このようにして準備された雰囲気中に乾燥排ガスが、乾燥排ガス下部導入口106から熱分解ガス燃焼炉内40dに導入される。乾燥排ガス下部導入口106から導入される乾燥排ガスは、図示せぬ流量調節弁によって、乾燥機20から排出される乾燥排ガスの内の所定流量に調整される。好適には、乾燥排ガス下部導入口106から導入される乾燥排ガスは、乾燥機20から排出される乾燥排ガスの内の40〜60%の流量に調整される。自己脱硝準備領域Y1の雰囲気中に乾燥排ガスが混合されることによって自己脱硝域Y2が形成される。自己脱硝域Y2は、乾燥排ガス下部導入口106よりも下流側である。自己脱硝域Y2に導入された乾燥排ガスは、自身に含まれる多量のアンモニアによる自己脱硝作用によって、酸化燃焼域Z2での熱分解ガスの燃焼時に生成された窒素酸化物を還元して最終的には低窒素酸化物燃焼を実現することができる。こうして、自己脱硝準備領域Y1と、自己脱硝域Y2とを含む乾燥排ガス燃焼域Yにおいて乾燥排ガスは燃焼される。なお、本実施形態においては、熱分解ガスの温度はいずれの燃焼域においても850℃以上となっており、ダイオキシンの発生が防止されている。
【0063】
そして、このようにして、熱分解ガスと、乾燥機20から排出される乾燥排ガスとに含まれる有害物質が分解、及び無害化された燃焼排ガスは、熱分解ガス燃焼炉40の最下流に設けられた燃焼排ガス送出口108から乾燥機20に熱源として送られる。
【0064】
更に、2次燃焼空気導入口104と乾燥排ガス下部導入口106との間の酸化燃焼域Z2、及び自己脱硝準備域Y1に設けられた燃焼炉高温ガス抽気口109からは炭化炉30の熱源として燃焼炉高温ガスが抽気されている。還元燃焼域Z1、及び酸化燃焼域Z2での燃焼を終えて熱分解ガス中の有害物質が略分解、及び無害化されて、かつ高温が維持されるこれらの領域から炭化炉30の熱源として燃焼炉高温ガスが抽気されることで、有害物質の排出を抑えつつ熱効率を向上することができる。好適には、燃焼炉高温ガス抽気口109は2次燃焼空気導入口105よりも上流側に設けられる。これによって、更に、熱効率を向上することができる。
【0065】
燃焼炉高温ガスが抽気されることによって、燃焼炉高温ガス抽気口109よりも下流側において燃焼炉高温ガスが抽気されない場合よりも熱分解ガスの温度が下がる。しかし、燃焼排ガス送出口108付近の燃焼排ガスの温度は900℃程度(通常850〜950℃)であり、乾燥機の熱源としては充分である。また、いずれの燃焼域においても熱分解ガスの温度は、ダイオキシンの発生が防止される850℃以上となっている。
【0066】
以上に、本実施形態によるバイオマスの炭化処理装置、及び炭化物の製造方法の説明を行った。
【0067】
本実施形態では、炭化処理の工程において必要となる高温の熱源が得られることで処理対象である有機性廃棄物のガス化率の低下を阻止する効果を有する。したがって、本実施形態では、ガス化率が確保されて、炭化の進行が充分であることによって、発火温度が高く、自己発熱性が低い高品質の炭化物が生成されると共に熱分解ガス(乾留ガス)の量が充分に確保されて燃費が良いという効果を有する。
【0068】
また、本実施形態では、炭化炉での高温熱源を得るための補助燃料を用いての追焚が必要ないことによって炭化炉での補助燃料使用量を低減する効果を有する。
【0069】
そして、本実施形態では、熱効率が改善することによって炭化処理装置全体での燃費が向上する効果を有する。なお、本実施形態では、高温還元燃焼と、乾燥排ガス中のアンモニア分が用いられる自己脱硝技術との組み合わせによる熱分解ガスの燃焼方法によって形成された燃焼炉中における高温場を流用するため有害物質等の無害化、及び燃費の向上の両立が可能となっている。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 高含水バイオマス
6 炭化物
11 ライン(高含水バイオマス圧送配管)
20 乾燥機
21 ライン(搬送コンベア)
22 熱交換器(GGH1)
23 乾燥排ガスライン
24 乾燥排ガスライン
25 乾燥用ファン(乾燥排ガスライン24)
26 乾燥排ガスライン
27 熱交換器(GGH2)
28 乾燥排ガスライン
29 乾燥排ガスライン
30 炭化炉
31 熱分解ガスライン
33 炭化物6の排出用のライン
35 熱分解ガスファン(熱分解ガスライン31)
36 燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン
37 燃焼排ガスライン
38 空気予熱器(A/H)
39 排ガス処理装置
40 熱分解ガス燃焼炉
40d 熱分解ガス燃焼炉の炉内
43 燃焼排ガスライン
44 燃焼排ガスライン(乾燥機20側)
45 燃焼排ガスライン((GGH1)22側)
46 ファン(燃焼排ガスライン70)
47 煙突
54 流量調節弁(燃焼用空気ライン64)
55 流量調節弁(燃焼用空気ライン63)
56 流量調節弁(燃焼用空気ライン62)
60 燃焼用空気ファン(燃焼用空気ライン61)
61 燃焼用空気ライン
62 燃焼用空気ライン(1次燃焼空気)
63 燃焼用空気ライン(2次燃焼空気)
64 燃焼用空気ライン(2次燃焼空気)
65 燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン
66 ファン(燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン67)
67 燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン
68 熱交換器(GGH3)
69 燃焼排ガスライン
70 燃焼排ガスライン
90 燃焼排ガス(燃焼炉高温ガス抽気)ライン
101 熱分解ガス導入口
102 1次燃焼空気導入口
103 乾燥排ガス上部導入口
104 2次燃焼空気導入口
105 2次燃焼空気導入口
106 乾燥排ガス下部導入口
107 燃焼排ガス送出口(遮断)
108 燃焼排ガス送出口
109 燃焼炉高温ガス抽気口
110 熱分解ガス燃焼炉のケース
Y 乾燥排ガス燃焼域
Y1 自己脱硝準備領域
Y2 自己脱硝域
Z 熱分解ガス燃焼域
Z1 還元燃焼域
Z2 酸化燃焼域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を乾燥して乾燥物を生成する乾燥機と、
前記乾燥物から熱分解ガスを生成する炭化炉と、
前記熱分解ガスを燃焼して前記乾燥機での乾燥に用いられる燃焼排ガスを生成する燃焼炉と
を含み、
前記燃焼炉は、
前記燃焼炉の最上部に設けられ前記熱分解ガスを鉛直下向きに導入する熱分解ガス導入口と、1次燃焼空気を前記熱分解ガスの流れに沿って導入することによって還元雰囲気領域を形成する1次燃焼空気導入口と、前記還元雰囲気領域よりも下流において酸化雰囲気領域を形成する2次燃焼空気を導入する2次燃焼空気導入口と、前記酸化雰囲気領域よりも下流において前記乾燥機から排出される乾燥排ガスを導入して自己脱硝領域を形成する乾燥排ガス導入口と、前記燃焼排ガスを自己脱硝領域から排出する燃焼排ガス送出口と、前記炭化炉での前記熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを前記酸化雰囲気領域から抽気する燃焼炉高温ガス抽気口とを有する
バイオマスの炭化処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマスの炭化処理装置であって、
更に、前記酸化雰囲気領域に、他の2次燃焼空気を導入する他の2次燃焼空気導入口を有し、
前記燃焼炉高温ガス抽気口は、
前記他の2次燃焼空気導入口よりも上流に位置する
バイオマスの炭化処理装置。
【請求項3】
請求項1、又は2に記載のバイオマスの炭化処理装置であって、
更に、前記還元雰囲気領域に、他の乾燥排ガスを導入する他の乾燥排ガス導入口を有する
バイオマスの炭化処理装置。
【請求項4】
バイオマスを乾燥して乾燥物を生成する乾燥機と、
前記乾燥物から熱分解ガスを生成する炭化炉と、
前記熱分解ガスを燃焼して前記乾燥機での乾燥に用いられる燃焼排ガスを生成する燃焼炉と
を含み、
前記燃焼炉は、
前記熱分解ガスが流れる流れ方向の上流側から順に、前記熱分解ガスを導入する熱分解ガス導入口と、1次燃焼空気を導入する1次燃焼空気導入口と、2次燃焼空気を導入する2次燃焼空気導入口と、前記乾燥機から排出される乾燥排ガスを導入する乾燥排ガス導入口と、前記熱分解ガスを燃焼することによって生成する前記燃焼排ガスを排出する燃焼排ガス送出口とを有し、
前記燃焼炉は、
更に、前記2次燃焼空気導入口と前記乾燥排ガス導入口との間に位置して、前記炭化炉での前記熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを抽気する燃焼炉高温ガス抽気口とを有する
バイオマスの炭化処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のバイオマスの炭化処理装置であって、
更に、前記2次燃焼空気導入口と前記乾燥排ガス導入口との間に、他の2次燃焼空気を導入する他の2次燃焼空気導入口を有し、
前記燃焼炉高温ガス抽気口は、
前記他の2次燃焼空気導入口よりも上流に位置する
バイオマスの炭化処理装置。
【請求項6】
請求項4、又は5に記載のバイオマスの炭化処理装置であって、
更に、
前記1次燃焼空気導入口と前記2次燃焼空気導入口との間に、他の乾燥排ガスを導入する他の乾燥排ガス導入口を有する
バイオマスの炭化処理装置。
【請求項7】
乾燥機が、バイオマスを乾燥して乾燥物を生成するステップと、
炭化炉が、前記乾燥物から熱分解ガスを生成するステップと、
燃焼炉が、前記熱分解ガスを燃焼して前記乾燥機での乾燥に用いられる燃焼排ガスを生成するステップと
を備え、
前記燃焼炉が、燃焼排ガスを生成するステップは、
熱分解ガス導入口から前記熱分解ガスを導入するステップと、
1次燃焼空気導入口から1次燃焼空気を導入して前記熱分解ガスと混合することによって還元雰囲気領域を形成するステップと、
2次燃焼空気導入口から2次燃焼空気を導入して前記還元雰囲気領域よりも下流において酸化雰囲気領域を形成するステップと、
前記酸化雰囲気領域よりも下流において前記乾燥機から排出される乾燥排ガスを乾燥排ガス導入口から導入して自己脱硝領域を形成するステップと、
燃焼排ガス送出口から、前記熱分解ガスを燃焼することによって生成する燃焼排ガスを自己脱硝領域から排出するステップと、
燃焼炉高温ガス抽気口から、前記炭化炉での前記熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを前記酸化雰囲気領域から抽気するステップとを含む
炭化物の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の炭化物の製造方法であって、
更に、他の2次燃焼空気導入口から他の2次燃焼空気を導入して前記酸化雰囲気領域よりも下流において自己脱硝準備域を形成するステップ
を含み、
燃焼炉高温ガス抽気口から、前記炭化炉での前記熱分解ガスの生成に用いられる燃焼炉高温ガスを前記酸化雰囲気領域から抽気するステップ
を含む
炭化物の製造方法。
【請求項9】
請求項7、又は8に記載の炭化物の製造方法であって、
更に、前記還元雰囲気領域に、他の乾燥排ガス導入口から他の乾燥排ガスを導入するステップ
を含む
炭化物の製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の炭化物の製造方法であって、
更に、前記酸化雰囲気領域を略1100〜1200℃に調整するステップ
を含む
炭化物の製造方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか1項に記載の炭化物の製造方法であって、
前記乾燥機から排出される前記乾燥排ガスの40〜60%を前記乾燥排ガス導入口から導入するステップと、
前記乾燥機から排出される前記乾燥排ガスの残りの40〜60%である他の乾燥排ガスを前記他の乾燥排ガス導入口から導入するステップと
を含む
炭化物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−31335(P2012−31335A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173915(P2010−173915)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】