説明

バイオマスガス化発電装置及び移動体

【課題】バイオマスを含む炭素水素酸素含有化合物から電気エネルギーを簡便に取り出すことが可能なバイオマスガス化発電装置、及び、これを備えた移動体を提供すること。
【解決手段】以下の構成を備えたバイオマスガス化発電装置30及びこれを備えた移動体10。(1)バイオマスガス化発電装置30は、エネルギーガス製造・発電装置40を備えている。(2)エネルギーガス製造・発電装置40は、炭素水素酸素含有化合物及び各種添加剤を含むバイオマス型燃料102を一時的に貯蔵する貯蔵手段50と、貯蔵手段50に貯蔵されたバイオマス型燃料102を加熱し、エネルギーガスを発生させる反応手段60と、反応手段60において発生させたエネルギーガスを貯蔵するエネルギーガス貯蔵手段80と、エネルギーガス貯蔵手段80に貯蔵されたエネルギーガスを燃料電池92に供給し、エネルギーガスを電力に変換する発電手段90とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスガス化発電装置及び移動体に関し、さらに詳しくは、バイオマス、プラスチック廃材などの炭素水素酸素含有化合物から水素、メタン、一酸化炭素などのエネルギーガスを製造し、得られたエネルギーガスを用いて発電するバイオマスガス化発電装置、及び、このようなバイオマスガス化発電装置を備えた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源で、化石資源を除いたものをいう。また、バイオ燃料とは、バイオマスの持つエネルギーを利用した燃料(例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、ジエチルエーテル、水素ガス、メタンガス、合成ガスなど)をいう。バイオ燃料の原料は、トウモロコシ、サトウキビ、食用油、木材、糞尿、おがくず、トウモロコシの茎など多岐にわたり、食料や飼料に用いることができない有機廃棄物も利用することができる。
バイオ燃料の内、アルコール状態にあるものは、ディーゼルエンジンの燃料に利用することができ、一部の国々では一般的に使用されている。また、バイオ燃料と石油燃料の合成油は、バイオマス利用燃料と呼ばれ、ガソリンの代替燃料として米国を中心にその利用が検討されている。
【0003】
また、バイオマスからガス燃料又は固体燃料を得る方法についても、従来から種々の提案がなされている。
このような方法としては、例えば、
(1)セルロースにCa(OH)2及びNi(OH)2を加えて混合粉砕し、混合粉砕物を加熱する水素発生方法(非特許文献1)、
(2)セルロースと鉄粉との混合物をミリング処理する水素の製造方法(特許文献1)、
(3)杉材、Ca(OH)2、及び水をオートクレーブに導入し、650℃、3〜25気圧で10分間保持する水素製造方法(特許文献2)、
(4)セルロース、水、ニッケル金属触媒を加圧反応容器に入れ、容器内を350℃に加熱し(水の飽和蒸気圧:170気圧以上)、60分間保持する水素の製造方法(特許文献3)、
などが知られている。
【0004】
さらに、バイオマスから電気を取り出す技術は、数十年前から研究が行われ、多くの実績がある(非特許文献2参照)。その多くは、バイオマスを直接燃焼させ、ボイラーやタービンを通して発電機から電気を得るものである。直接燃焼以外には、熱分解やガス化、発酵なども数多く研究されている。また、直接燃焼以外の方法によりバイオマスから電気を得ることが可能な高温作動型の燃料電池も研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−312690号公報
【特許文献2】特開2005−041733号公報
【特許文献3】特開平8−059202号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】張 其武 他、”メカノケミカル処理と加熱法を組み合わせたセルロースからの水素発生”、化学工学会第39回秋季大会講演予稿集
【非特許文献2】「新エネルギーの展望 バイオマス発電」、財団法人エネルギー総合工学研究所、2003年3月発行、(株)日新社(http//:www.jae.or.jp/publish/pdf/2002-2.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
地球環境の保護の観点から、ハイブリッド車(HV)の多くが、今後、プラグインハイブリッド(PHV)車になることが予想されている。PHV車は、エンジンを小さくし、バッテリーを大きくしているため、充電の機会が増大する。今後、PHV車が普及すれば、あらゆる場所での自動車のバッテリー急速充電が必要になると考えられる。しかしながら、既存の発電システムは、化石燃料に依存したシステムであり、化石燃料に依存しない発電システム及びこれを利用した移動体が提案された例は、従来にはない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、バイオマスを含む炭素水素酸素含有化合物から電気エネルギーを簡便に取り出すことが可能なバイオマスガス化発電装置、及び、このようなバイオマスガス化発電装置を備えた移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係るバイオマスガス化発電装置は、以下の構成を備えている。
(1)前記バイオマスガス化発電装置は、エネルギーガスを製造し、製造された前記エネルギーガスを電力に変換するエネルギーガス製造・発電装置を備えている。
(2)前記エネルギーガス製造・発電装置は、
炭素水素酸素含有化合物と、アルカリ金属若しくはその化合物及び/又はアルカリ土類金属若しくはその化合物とを含むバイオマス型燃料を一時的に貯蔵する貯蔵手段と、
前記貯蔵手段に貯蔵された前記バイオマス型燃料を加熱し、エネルギーガスを発生させる反応手段と、
前記反応手段において発生させた前記エネルギーガスを貯蔵するエネルギーガス貯蔵手段と、
前記エネルギーガス貯蔵手段に貯蔵された前記エネルギーガスを燃料電池に供給し、前記エネルギーガスを電力に変換する発電手段と
を備えている。
【0010】
本発明に係る移動体は、以下の構成を備えている。
(1)前記移動体は、
車軸と、
前記車軸に動力を伝達するためのエンジンと、
前記車軸に動力を伝達し、又は、前記車軸若しくは前記エンジンから伝達される動力を電力に変換するためのモーターと、
前記モータに電力を供給し、又は、前記モータにより発電された電力を貯蔵するための2次電池と
を備えている。
(2)前記移動体は、前記2次電池に電力を供給するための本発明に係るバイオマスガス化発電装置を備えている。
【発明の効果】
【0011】
炭素水素酸素含有化合物からエネルギーガスを取り出す場合において、炭素水素酸素含有化合物にアルカリ金属若しくはその化合物及び/又はアルカリ土類金属若しくはその化合物を添加すると、単一又は複数のエネルギーガスを取り出すことができる。しかも、その際に水蒸気改質を用いる必要が無く、タールの発生を伴うことも少ない。また、添加剤の種類、添加量及び混合方法を最適化すると、エネルギーガス(特に、水素ガス)の発生温度を低温下させ、あるいは、複数のエネルギーガスを選択的に取り出すことができる。さらに、このようにして得られたエネルギーガスを用いて燃料電池で発電すると、バイオマス型燃料から電気を取り出すことができる。
このような構成を備えたバイオマスガス化発電装置を移動体(いわゆるHV車又はPHV車)に搭載すると、移動体の燃費が向上する。また、移動体に搭載するバイオマスガス化発電装置の容量が大きい場合には、他の移動体への急速充電も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る移動体の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るバイオマスガス化発電装置に備えられるエネルギーガス製造・発電装置の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るバイオマスガス化発電装置に備えられる成形体製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。
[1. バイオマス型燃料]
本発明に係るバイオマスガス化発電装置において、エネルギーガスを発生させるための燃料には、バイオマス型燃料が用いられる。
本発明において「バイオマス型燃料」とは、炭素水素酸素含有化合物と、アルカリ金属若しくはその化合物及び/又はアルカリ土類金属若しくはその化合物とを含む燃料をいう。バイオマス型燃料は、さらに、遷移金属又はその化合物を含んでいても良い。
本発明において「エネルギーガス」とは、H2、CH4、COなどのC、H又はOを含む可燃性ガスをいう。
【0014】
[1.1. 炭素水素酸素含有化合物]
炭素水素酸素含有化合物(以下、「CHO化合物」という)とは、C、H及び/又はOで構成されるすべての有機化合物をいう。すなわち、CHO化合物には、再生可能な生物由来の有機資源(いわゆる、バイオマス)だけでなく、一般的にはバイオマスに分類されない有機化合物やその廃棄物なども含まれる。また、CHO化合物には、天然物やその廃棄物だけでなく、人工的に合成、抽出又は精製された有機化合物、化石燃料に由来する有機化合物やその廃棄物なども含まれる。
CHO化合物としては、具体的には、
(1)農業、畜産業、水産業又は林業で生産される生産物及びその廃棄物(例えば、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなどの農産物及び食料用途や家畜の飼料として用いられる部分以外の植物の部分、家畜排泄物、木材及びその廃材、おがくず、落ち葉など)
(2)食品加工業、厨房などから排出される食品廃棄物(例えば、コーヒー出し殻など)、
(3)古紙、
(4)油類、脂肪類、天然高分子、合成高分子などの有機物及びその廃棄物(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)など)、
(5)下水汚泥、
などがある。
CHO化合物は、湿潤状態にあるものでも良く、あるいは、乾燥状態にあるものでも良い。湿潤状態にあるCHO化合物を出発原料に用いるときには、バイオマスガス化発電装置として、乾燥手段を備えたものを用いるか、あるいは、バイオマスガス化発電装置に投入する前に乾燥処理を施すのが好ましい。
【0015】
[1.2. アルカリ金属又はその化合物]
アルカリ金属又はその化合物(以下、これらを総称して「アルカリ添加剤」という)は、CHO化合物をCO、CO2、H2、CH4などに分解する作用があると考えられている。また、ある種のアルカリ添加剤には、さらに分解生成したCO2を炭酸塩の形で固定する作用があると考えられている。
アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)は、純金属又はアルカリ金属を含む合金の状態で用いても良く、あるいは化合物の状態で用いても良い。
アルカリ添加剤としては、例えば、
(1)アルカリ金属からなる純金属、又は、2種以上のアルカリ金属を含む合金、
(2)LiCoO2、LiNiO、LiFeO、LiMn24、K2CrO4、K3[Fe(CN)6]、K4[Fe(CN)6]、K4Nb617などのアルカリ金属を含む酸化物若しくは錯塩、
(3)LiOH、NaOH、KOHなどの水酸化物、
(4)Li2CO3、Na2CO3、K2CO3などの炭酸塩、
(5)CH3COOLi、CH3COONa、CH3COOKなどの酢酸塩、
(6)C755Li、C755Na、C755Kなどの安息香酸塩、
(7)HCOOLi、HCOONa、HCOOKなどのギ酸塩、
などがある。上述したアルカリ添加剤は、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの中でも、K及び/又はNaを含む金属、合金又は化合物は、エネルギーガス(特に、水素)の発生温度を低下させる作用が大きい。また、K又はその化合物は、Naと異なり、CH4の発生量が少ないという特徴がある。
【0016】
アルカリ添加剤の添加量は、CHO化合物の種類、後述する他の添加剤の種類や量などに応じて、最適な添加量を選択する。一般に、アルカリ添加剤の添加量が少なすぎると、エネルギーガス(特に、水素ガス)の発生温度が高くなる。また、アルカリ添加剤の添加量が少なくなるほど、水素ガス以外のエネルギーガスを含む混合ガスが得られる。
一方、アルカリ添加剤の添加量が多くなるほど、発生するエネルギーガスに占める水素ガスの割合が増加する。しかしながら、アルカリ添加剤の添加量が多くなりすぎると、原料全体に占めるCHO化合物の割合が小さくなり、エネルギーガスの放出量が少なくなる。また、アルカリ添加剤の過剰添加は、エネルギーガスの発生温度をかえって高くする場合もある。
【0017】
例えば、セルロース(C6(H2O)5)をLiOH共存下で分解させる場合において、セルロースに含まれる炭素をすべてLi2CO3に変換するには、1モルのセルロースに対して12モルのLiOHが必要となる。換言すれば、CHO化合物に含まれる1モルの炭素に対して、2モルのLiが必要となる。しかしながら、CHO化合物に含まれる炭素のすべてを炭酸塩に誘導固定する必要はなく、用途により部分的に可燃性ガスであるCOとして取り出しても良い。また、後述するアルカリ土類金属又はその化合物にも炭酸塩を固定する作用を持つものがあるので、CHO化合物に含まれる炭素のすべてをアルカリ金属炭酸塩として固定する必要もない。
CHO化合物から効率よくエネルギーガス(特に、水素ガス)を取り出すためには、アルカリ添加剤の添加量は、CHO化合物に含まれる炭素1モル当たり0.5〜2モルとするのが好ましい。
【0018】
[1.3. アルカリ土類金属又はその化合物]
アルカリ土類金属又はその化合物(以下、これらを総称して「アルカリ土類添加剤」という)は、アルカリ添加剤と同様に、CHO化合物をCO2、H2、CH4などに分解する作用があると考えられている。また、ある種のアルカリ土類添加剤には、さらに分解生成したCO2を炭酸塩の形で固定する作用があると考えられている。
アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)は、純金属又はアルカリ土類金属を含む合金の状態で添加しても良く、あるいは化合物の状態で添加しても良い。
アルカリ土類添加剤としては、例えば、
(1)アルカリ土類金属からなる純金属、又は、2種以上のアルカリ土類金属の合金、
(2)Mg−Zn、Mg−Ce、Ca−Znなどのアルカリ土類金属と他の金属との合金、
(3)Mg(OH)2、Ca(OH)2、Ba(OH)2などの水酸化物、
(4)MgCO3、CaCO3、BaCO3などの炭酸塩、
(5)(CH3COO)2Mg、(CH3COO)2Ca、(CH3COO)2Baなどの酢酸塩、
(6)MgO、CaO、BaOなどの酸化物、
(7)MgC24、CaC24、BaC24などのシュウ酸塩、
(8)(HCOO)2Mg、(HCOO)2Ca、(HCOO)2Baなどのギ酸塩、
などがある。上述したアルカリ土類添加剤は、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの中でも、Caを含む金属、合金、又は化合物は、水素ガスと他のエネルギーガス(CO、CH4など)の発生温度を分離させ、水素ガスを選択的に取り出すのを容易化する作用がある。
【0019】
アルカリ土類添加剤の添加量は、CHO化合物の種類、他の添加剤の種類や量などに応じて、最適な添加量を選択する。一般に、アルカリ土類添加剤の添加量が少なすぎると、エネルギーガス(特に、水素ガス)の発生温度が高くなる。一方、アルカリ土類添加剤の添加量が多くなりすぎると、原料全体に占めるCHO化合物の割合が小さくなり、エネルギーガスの放出量が少なくなる。また、アルカリ土類添加剤の過剰添加は、エネルギーガスの発生温度をかえって高くする場合もある。
【0020】
例えば、セルロース(C6(H2O)5)をCa(OH)2共存下で分解させる場合において、セルロースに含まれる炭素をすべてCaCO3に変換するには、1モルのセルロースに対して6モルのCa(OH)2が必要となる。換言すれば、CHO化合物に含まれる1モルの炭素に対して、1モルのCaが必要となる。しかしながら、CHO化合物に含まれる炭素のすべてを炭酸塩に誘導固定する必要はなく、用途により部分的に可燃性ガスであるCOとして取り出しても良い。また、前述したアルカリ添加剤にも炭酸塩を固定する作用を持つものがあるので、CHO化合物に含まれる炭素のすべてをアルカリ土類金属炭酸塩として固定する必要もない。
CHO化合物から効率よくエネルギーガス(特に、水素ガス)を取り出すためには、アルカリ土類添加剤の添加量は、CHO化合物に含まれる炭素1モル当たり0.25〜1モルとするのが好ましい。
【0021】
[1.4. 遷移金属又はその化合物]
遷移金属又はその化合物(以下、これらを総称して「遷移金属添加剤」という)は、CHO化合物を分解して各種エネルギーガスを発生させる反応に対する触媒的機能を有すると考えられている。従って、遷移金属添加剤は、必ずしも必要ではないが、アルカリ添加剤及び/又はアルカリ土類添加剤と併用すると、各種エネルギーガスの発生を促進させることができる。
【0022】
本発明において、「遷移金属」とは、第3〜11族元素(21Sc〜29Cu、39Y〜47Ag、57La〜79Au、89Ac〜111Rg)をいう。遷移金属は、金属又は合金の状態で添加しても良く、あるいは、化合物の状態で添加してもよい。
遷移金属添加剤は、第1遷移元素(21Sc〜29Cu)を含むものが好ましい。また、第1遷移元素の中でも、Mn、Fe、Co、Ni及びCuのいずれか1以上の元素を含む金属、合金又は化合物は、触媒的機能が高い。特に、Ni化合物は、CHO化合物中にナノレベルの状態で高分散しやすいので、添加剤として特に好適である。
【0023】
遷移金属添加剤としては、具体的には、
(1)Ni、Ni−Cu、Ni−Fe、Ni−Mo、Ni−Cr、Ni−Cr−Fe、Ni−Mo−Cr、Ni−Si、Fe−Ni−Co、Ni−Zn、Ni−Tiなどの金属、又は合金、
(2)酢酸ニッケル((CH3COO)2Ni)、酢酸コバルト(II)((CH3COO)2Co)、酢酸銅(II)((CH3COO)2Cu)、酢酸鉄(II)(C46FeO4)、酢酸銅(I)(C23CuO2)などの酢酸塩、
(3)臭化ニッケル(II)(NiBr2)、臭化コバルト(II)(CoBr2)、臭化銅(CuBr、CuBr2)、臭化鉄(II)無水(FeBr2)などのハロゲン化物、
(4)ギ酸ニッケル(II)((HCOO)2Ni)、ギ酸銅(II)((HCOO)2Cu)などのギ酸塩、
(5)乳酸ニッケル(C610NiO6)、乳酸鉄(II)(Fe(CH3CHOHCOO)2)などの乳酸塩、
(6)シュウ酸ニッケル(NiC24)、シュウ酸鉄(FeC24)、シュウ酸銅(CuC24)などのシュウ酸塩、
(7)水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化銅(II)(Cu(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)などの水酸化物、
(8)酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(Fe34)、酸化銅(CuO)、酸化コバルト(CoO)などの酸化物、
(9)炭酸ニッケル(NiCO3)、炭酸コバルト(CoCO3)などの炭酸塩、
などがある。
上述した各種の遷移金属添加剤は、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0024】
遷移金属添加剤の添加量は、CHO化合物の種類、他の添加剤の種類や量などに応じて、最適な添加量を選択する。一般に、遷移金属添加剤の添加量が少なすぎると、十分な触媒的機能が得られない。一方、遷移金属添加剤の添加量が多くなりすぎると、原料全体に占めるCHO化合物の割合が小さくなり、エネルギーガスの放出量が少なくなる。
【0025】
次の(1)式及び(2)式に、遷移金属添加剤の一種であるNi(OH)2共存下におけるセルロース(C6(H2O)5)の分解反応の一例を示す。
6(H2O)5+6Ca(OH)2+0.5Ni(OH)2
11.5H2+6CaCO3+0.5Ni ・・・(1)
6(H2O)5+12LiOH+Ni(OH)2
6Li2CO3+Ni+H2O+11H2 ・・・(2)
遷移金属添加剤共存下における水素発生機構の詳細は不明であるが、セルロース(C6(H2O)5)の分解反応が(1)式に従って進むと仮定すると、1モルのセルロースに対して0.5モルのNi(OH)2が必要となる。また、セルロース(C6(H2O)5)の分解反応が(2)式に従って進むと仮定すると、1モルのセルロースに対して1モルのNi(OH)2が必要となる。
しかしながら、CHO化合物に含まれる炭素のすべてを炭酸塩に誘導固定する必要はなく、用途により部分的に可燃性ガスであるCOとして取り出しても良い。また、遷移金属化合物だけでなく、金属状態の遷移金属又はその合金であっても、CHO化合物の分解反応に対する触媒的機能を持つ。
CHO化合物から効率よくエネルギーガス(特に、水素ガス)を取り出すためには、遷移金属添加剤の添加量は、CHO化合物に含まれる炭素1モル当たり0.02〜1モルとするのが好ましい。
【0026】
[1.5. 混合]
バイオマス型燃料は、CHO化合物と各種添加剤との混合物からなる。バイオマス型燃料は、アルカリ添加剤又はアルカリ土類添加剤のいずれか一方を含むものでも良く、あるいは、双方を含むものでも良い。また、バイオマス型燃料は、アルカリ添加剤及び/又はアルカリ土類添加剤に加えて、さらに遷移金属添加剤を含んでいても良い。
混合は、
(1)CHO化合物と各種添加剤とを単に混合するだけの弱混合、又は、
(2)混合と同時に粉砕する強混合(メカニカルグラインディング)、
のいずれでも良い。
一般に、強混合を行うほど、CHO化合物と各種添加剤との均一混合物が得られるので、エネルギーガスの発生が容易化する。但し、添加剤の種類や量によっては、弱混合でも容易にエネルギーガスを発生させることができる。
【0027】
[1.6. 加熱]
バイオマス型燃料を加熱すると、エネルギーガスが得られる。バイオマス型燃料が遷移金属添加剤を含まない場合、エネルギーガスを発生させた後に残る残渣は、理想的にはCと炭酸塩(例えば、K系添加剤を用いたときは、K2CO3)の混合物となる。生成した炭酸塩は水溶性であるため、残渣を水洗するとCが得られる。Cは、後述する燃料電池の燃料として使用することもできる。
加熱は、バイオマス型燃料に含まれる可燃性ガスを容易に取り出しやすくする(高効率にガスを収集する)ために、不活性雰囲気下(例えば、Ar中、N2中など)で行うのが好ましい。
加熱温度は、通常、300〜500℃である。最適な加熱温度は、バイオマス型燃料の組成や混合条件に応じて最適な温度を選択する。また、各種添加剤の種類、添加量、混合方法などの混合条件によっては、異なるエネルギーガスがそれぞれ異なる温度で発生する場合がある。そのような場合には、加熱温度を段階的に変化させると、比較的純度の高いガスを分離して取り出すことができる。
【0028】
[2. 移動体]
図1に、本発明の一実施の形態に係る移動体の概略構成図を示す。図1において、移動体10は、いわゆるHV車又はPHV車であり、車軸12と、エンジン14と、モーター16と、2次電池18とを備えている。
エンジン14は、車軸12に動力を伝達するためのものである。モーター16は、車軸12に動力を伝達し、又は、車軸12若しくはエンジン14から伝達される動力を電力に変換するためのものである。すなわち、移動体10において、モーター16は、動力源又は発電機として用いられる。2次電池18は、モータ16に電力を供給し、又は、モーター16により発電された電力を貯蔵するためのものである。
移動体10は、外部電源20から供給される電力を2次電池18に貯蔵するための手段をさらに備えていても良い。また、移動体10は、これに加えて又はこれに代えて、2次電池18に貯蔵された電力を、外部2次電池(例えば、他の移動体に搭載された2次電池)22に供給する手段を備えていても良い。
【0029】
移動体10は、後述するバイオマスガス化発電装置30を備えている。バイオマスガス化発電装置30は、バイオマス型燃料からエネルギーガスを製造し、製造されたエネルギーガスを用いて発電するためのエネルギーガス製造・発電装置40を備えている。エネルギーガス製造・発電装置40で得られた電力は、2次電池18に供給され、2次電池18で貯蔵されるようになっている。また、得られた電力を直接、外部2次電池22に供給するための手段をさらに備えていても良い。
【0030】
バイオマスガス化発電装置30は、バイオマス型燃料からなる成形体を製造する成形体製造装置100をさらに備えていても良い。成形体製造装置100で製造された成形体は、エネルギーガス製造・発電装置40に搬送され、エネルギーガスの製造及び製造されたエネルギーガスによる発電に用いられる。
この場合、移動体10は、成形体製造装置100に備えられる後述する粗粉砕手段にエンジン14の動力を伝達する動力伝達手段を備えているのが好ましい。
また、移動体10は、成形体製造装置100に備えられる後述する混合手段及び/又は成形手段にエンジン14の排熱を供給し、混合手段により得られる混合物及び/又は成形手段により得られる成形体を乾燥させる乾燥手段を備えているのが好ましい。
【0031】
[3. バイオマスガス化発電装置]
バイオマスガス化発電装置30は、エネルギーガス製造・発電装置40と、成形体製造装置100を備えている。
エネルギーガス製造・発電装置40は、バイオマス型燃料からエネルギーガスを発生させ、エネルギーガスを電力に変換するための装置である。成形体製造装置100は、バイオマス型燃料を成形体にするための装置である。成形体製造装置100は、必ずしも必要ではないが、これを備えていると、移動体10において使用可能なバイオマス型燃料の範囲が広がり、あるいは、添加剤の添加量の制御が容易化するという利点がある。
【0032】
[3.1. エネルギーガス製造・発電装置]
図2に、エネルギーガス製造・発電装置の概略構成図を示す。図2において、エネルギーガス製造・発電装置40は、貯蔵手段50と、反応手段60と、エネルギーガス貯蔵手段80と、発電手段90とを備えている。
【0033】
[3.1.1. 貯蔵手段]
貯蔵手段50は、バイオマス型燃料を一時的に貯蔵するための手段である。貯蔵手段50は、バイオマス型燃料を反応手段60に搬送するまでの間、バイオマス型燃料を一時的に貯蔵可能なものであればよい。図2に示す例において、貯蔵手段50は、バイオマス型燃料102を貯蔵するホッパー52と、ホッパー52の入り口側に設けられたガス置換室54とを備えている。ガス置換室54には、バイオマス型燃料102の投入口側に設けられたシャッターA(54a)と、ガス置換室54とホッパー52の間に設けられたシャッターB(54b)とを備えている。さらに、ガス置換室54には、ガス置換を行うためのポンプ56(及び、必要に応じて不活性ガス源(図示せず))が設けられている。
なお、図2において、バイオマス型燃料102は、ペレット状に描かれているが、これは単なる例示であり、ホッパー52及び反応手段60への搬送が可能である限り、その形状は、特に限定されるものではない。
【0034】
[3.1.2. 反応手段]
反応手段60は、貯蔵手段50に貯蔵されたバイオマス型燃料102を加熱し、エネルギーガスを発生させる手段である。反応手段60は、特に限定されるものではなく、バイオマス型燃料102の搬送、反応、及び、反応生成物の排出が可能なものであれば良い。図2に示す例において、反応手段60は、反応室62と、バーナー64と、残渣貯蔵室66と、搬送管72と、搬送用スクリュー74とを備えている。
【0035】
反応室62は、その内部においてバイオマス型燃料102を加熱し、エネルギーガスを発生させるためのものである。搬送管72は、反応室62内を貫通している。搬送管72の一端は、ホッパー52の下端に接続され、搬送管72の他端は、残渣貯蔵室66に接続されている。
搬送管72内には、搬送用スクリュー74が設けられている。搬送用スクリュー74は、ホッパー52内に貯蔵されたバイオマス型燃料102を反応室62に搬送し、バイオマス型燃料102からエネルギーガスを放出させた後に残る反応生成物(残渣)を残渣貯蔵室66に搬送するためのものである。
なお、反応室62内でエネルギーガスを発生させるためには、予め反応室62内及びこれに連通する密閉空間内を不活性雰囲気にしておく必要がある。
反応室62内等を不活性雰囲気にする方法としては、具体的には、
(1)反応室62内等を予め不活性ガス(例えば、N2ガス)で満たしておく方法、
(2)エネルギーガス製造・発電装置40に不活性ガス源(例えば、N2ボンベ)を設置し、これとポンプ56を用いて反応室62内等をガス置換する方法、
(3)後述するエネルギータンク84に蓄えられたエネルギーガスとポンプ56を用いて、反応室62内等をガス置換する方法、
などがある。
【0036】
バーナー64は、反応室62内の搬送管72を加熱するためのものであり、反応室62内に設けられている。反応室62内の搬送管72には、搬送管72内で発生したエネルギーガスを反応室62内に排出するための通気口72a、72a…と、搬送管72内で発生したタール状のCH化合物(チャー)を排出するための排出口72b、72b…が設けられている。反応室62内には、排出口72b、72b…から排出されたチャーを一時的に貯蔵するための受け皿68が設けられている。
【0037】
反応室62とホッパー52の上部は、配管74aで繋がれている。また、配管74aには、反応室62からホッパー52へのエネルギーガスの逆流を防ぐための逆止弁76aが設けられている。
同様に、反応室62と残渣貯蔵室66の上部は、配管74bで繋がれている。また、配管74bには、反応室62から残渣貯蔵室66へのエネルギーガスの逆流を防ぐための逆止弁76bが設けられている。
【0038】
[3.1.3. エネルギーガス貯蔵手段]
エネルギーガス貯蔵手段80は、反応手段60において発生させたエネルギーガスを貯蔵するための手段である。エネルギーガス貯蔵手段80は、特に限定されるものではなく、エネルギーガスを貯蔵可能なものであれば良い。図2に示す例において、貯蔵手段80は、CO2トラップ82と、エネルギーガスタンク84とを備えている。
【0039】
CO2トラップ82は、反応室62内で発生したガスから主としてCO2を選択的に除去するためのものである。CO2を選択的に除去する方法には、種々の方法がある。図2に示す例において、CO2トラップ82には、K2CO3水溶液が用いられている。反応室62内で発生したガスを、CO2トラップ82内のK2CO3溶液にバブリングさせると、ガス中に含まれるCO2及びH2Oを容易に除去することができる。
エネルギーガスタンク84は、H2を主成分とするエネルギーガスを貯蔵するためのものである。
【0040】
CO2トラップ82と反応室62とは、配管86aで繋がれている。配管86aには、CO2トラップ82から反応室62へのエネルギーガスの逆流を防ぐための逆止弁88aが設けられている。また、配管86aには、CO2トラップ82と逆止弁88aのと間に、反応室62内で発生したエネルギーガスをCO2トラップ82側に強制的に排出するためのポンプ89が設けられている。
【0041】
CO2トラップ82とエネルギーガスタンク84は、配管86bで繋がれている。また、配管86bには、開閉弁88bが設けられている。さらに、エネルギーガスタンク84は、バーナー64及び発電手段90に接続され、貯蔵されたエネルギーガスをバーナー64又は発電手段90に供給できるようになっている。
【0042】
[3.1.4. 発電手段]
発電手段90は、エネルギーガス貯蔵手段80に貯蔵されたエネルギーガスを燃料電池に供給し、エネルギーガスを電力に変換するための手段である。図2において、発電手段90は、燃料電池92と、急速充電器94とを備えている。
燃料電池92は、H2を主成分とするエネルギーガス(例えば、H2/CO混合ガス)を燃料として使用可能なものであれば良い。燃料電池92としては、具体的には、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、アルカリ電解質型燃料電池(AFC)などがある。また、これらに加えて、直接カーボン型燃料電池(DCFC)を用いても良い。残渣貯蔵室66に貯蔵される反応生成物は、炭素を主成分とする。DCFCは、反応生成物に含まれるC、COを燃料に使用することができるので、これとH2を燃料とする燃料電池とを併用すると、発電効率が向上する。急速充電器94は、燃料電池92で得られた電力を2次電池(例えば、移動体10に備えられる2次電池18や、外部2次電池22)に充電するためのものである。
また、燃料電池92で発電すると、温水が生成する。生成した温水は、廃棄しても良く、あるいは、CO2トラップ82で利用しても良い。
【0043】
[3.2. 成形体製造装置]
成形体製造装置100は、バイオマス型燃料からなる成形体を製造するための装置である。図3において、成形体製造装置100は、粗粉砕手段110と、混合手段120と、成形手段130と、搬送手段140とを備えている。
【0044】
[3.2.1. 粗粉砕手段]
粗粉砕手段110は、CHO化合物を粗粉砕するための手段である。エネルギーガスの原料となるCHO化合物は、後述するように、種々の有機化合物が含まれる。これを用いて効率よくエネルギーガスを発生させるためには、CHO有化合物と各種添加剤とを均一に混合する必要がある。そのためには、CHO化合物は、細かいほど良い。
【0045】
粗粉砕手段110は、特に限定されるものではなく、CHO化合物を所定の粒度に粉砕可能なものであればよい。図3に示す例において、粗粉砕手段110には、二軸ドラム機構を備えた多段式の粉砕機が用いられている。
【0046】
粉砕手段110の動力源は、特に限定されるものではなく、例えば、モータや油圧ポンプでも良い。しかしながら、相対的に硬いCHO化合物を粉砕するには強力な動力が必要となる場合がある。従って、このような成形体製造装置100を移動体10に搭載する場合、移動体10は、成形体製造装置100の粗粉砕手段110にエンジン14の動力を伝達する動力伝達手段を備えているのが好ましい。
エンジン14の動力を粗粉砕手段110に伝達する方法としては、例えば、エンジンとクラッチ間、トランスミッションなどに出力軸を設け、出力軸からの動力で直接装置を駆動したり、油圧ポンプの駆動に利用する方法がある。この方法は、エンジンの回転数に比例したり、比例しないものがある。この方法は、一般に、パワーテイクオフと呼ばれ、車両駆動用のエンジン動力を作動機の駆動のために取り出す機構が各種開発されている。
【0047】
[3.2.2. 混合手段]
混合手段120は、粗粉砕されたCHO化合物と、アルカリ金属若しくはその化合物及び/又はアルカリ土類金属若しくはその化合物とを混合するための手段である。混合手段120は、さらに遷移金属又はその化合物を加えて混合するものでも良い。
【0048】
混合手段120で行われる混合は、CHO化合物と各種添加剤とを単に混合するだけ(弱混合)でも良く、混合と同時に粉砕も行うメカニカルグラインディング(強混合)でも良い。一般に、強混合を行うほど、CHO化合物と各種添加剤との均一混合物が得られるので、エネルギーガスの発生が容易化する。但し、添加剤の種類や量によっては、弱混合でも容易にエネルギーガスを発生させることができる。
【0049】
混合手段120は、特に限定されるものではなく、エネルギーガスの発生が容易な混合物が得られるものであればよい。図3に示す例において、混合手段120には、ボールミルが用いられている。
ポット122は、上部が開放しており、粗粉砕されたCHO化合物が上部から投入されるようになっている。また、各種添加剤は、図示しない添加装置によりポット122内に所定量添加されるようになっている。ポット122は、z軸の周りに回転できるようになっており、ポット122内には、混合用のボール124、124…が挿入されている。さらに、ポット122の底面には、細孔122a、122a…が設けられ、混合物104を下方に落下させるようになっている。
【0050】
混合手段120の動力源は、特に限定されるものではなく、例えば、モータや油圧ポンプでも良い。しかしながら、相対的に硬いCHO化合物を混合粉砕するには強力な動力が必要となる場合がある。従って、このような成形体製造装置100を移動体10に搭載する場合、移動体10は、成形体製造装置100の混合手段120にエンジン14の動力を伝達する動力伝達手段を備えているのが好ましい。
エンジン14の動力を混合手段120に伝達する方法は、粗粉砕手段110に動力を伝達する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
成形体製造装置100に投入されるCHO化合物は、乾燥状態にあるものが好ましいが、湿潤状態にあるものでも良い。CHO化合物が湿潤状態のまま成形体製造装置100に投入される場合、混合手段120は、混合物104を乾燥させるための乾燥手段を備えているのが好ましい。
乾燥手段は、独立したヒーター等でも良い。しかしながら、成形体製造装置100が移動体10に搭載される場合には、移動体10のエンジン14の排熱を用いて混合物104を乾燥するのが好ましい。
エンジン14の排熱を用いて混合物を乾燥104する方法としては、
(1)エンジン14の冷却水をポット122の周囲に循環させ、冷却水の熱を用いて混合物を乾燥させる方法、
(2)エンジン14の排気ガスをポット122の周囲に循環させ、排気ガスの熱を用いて混合物を乾燥させる方法、
などがある。
【0052】
[3.2.3. 成形手段]
成形手段130は、混合手段120で得られた混合物104を成形し、バイオマス型燃料からなる成形体102’を得るための手段である。
成形手段130は、特に限定されるものではなく、混合物104を所定の形状の成形体102’に成形可能なものであればよい。成形方法としては、例えば、押し出し成形、プレス成形などがある。図3に示す例において、成形手段130には、リングダイ方式の成形機が用いられている。
【0053】
ダイ132は、上部が開放している円筒形をしており、混合手段120から排出される混合物104が上部から投入されるようになっている。ダイ132の側面には、ダイ132内に投入された混合物104を押し出すための複数の穴132a、132a…が設けられている。ダイ132の外周は、ケース133により覆われている。
ダイ132内には、一対の加圧ローラー134、134が設けられている。ダイ132は、回転可能になっており、加圧ローラー134、134は、回転するダイ132の内壁面に沿って転動するようになっている。
【0054】
さらに、ダイ132の外周面には、カッター136が設けられる。カッター136は、ダイ132の側面に設けられた穴132a、132a…から押し出された押出体106を所定の長さに切断し、成形体102’にするためのものである。得られた成形体102’は、ダイ132の外周とケース133の内周との間の空間に一時的に貯蔵される。
【0055】
成形手段130の動力源は、特に限定されるものではなく、例えば、モータや油圧ポンプでも良い。しかしながら、混合物104から多量の成形体102’を短時間で製造するには強力な動力が必要となる場合がある。従って、このような成形体製造装置100を移動体10に搭載する場合、移動体10は、成形体製造装置100の成形手段130にエンジン14の動力を伝達する動力伝達手段を備えているのが好ましい。
エンジン14の動力を成形手段130に伝達する方法は、粗粉砕手段110に動力を伝達する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0056】
CHO化合物が湿潤状態のまま成形体製造装置100に投入される場合、成型手段130は、混合物104、押出体106又は成形体102’を乾燥させるための乾燥手段を備えているのが好ましい。
乾燥手段は、独立したヒーターでも良い。しかしながら、成形体製造装置100が移動体10に搭載される場合には、移動体10のエンジン14の排熱を用いて混合物104、押出体106又は成形体102’を乾燥するのが好ましい。
エンジン14の排熱を用いて混合物等を乾燥する方法としては、
(1)エンジン14の冷却水をダイ132の周囲に循環させ、冷却水の熱を用いて混合物104、押出体106又は成形体102’を乾燥させる方法、
(2)エンジン14の排気ガスをダイ132の周囲に循環させ、排気ガスの熱を用いて混合物104、押出体106又は成形体102’を乾燥させる方法、
などがある。
【0057】
[3.2.4. 搬送手段]
搬送手段140は、成形体102’をエネルギーガス製造・発電装置40の貯蔵手段50に搬送するための手段である。ダイ132の外周に多数の成形体102’が溜まると、ダイ132の回転振動などにより、固定されたケース133の一部を切り抜いた成形体放出口133aから成形体102’が排出される。排出された成形体102’は、搬送手段140により貯蔵手段50まで搬送される。
搬送手段140は、特に限定されるものではなく、種々の手段を用いることができる。搬送手段140としては、例えば、
(1)シャッターA(54a)を開いた状態でのポンプ56による吸引搬送、
(2)成形体102’とホッパーの52高低差を利用した自然落下、
などがある。
【0058】
[4. バイオマスガス化発電装置及びこれを備えた移動体の作用]
まず、図3に示す成形体製造装置100にCHO化合物を投入し、多段に配置された二軸式ドラム機構により、CHO化合物を適度な粒度に粗粉砕する。粗粉砕されたCHO化合物は、そのまま混合手段120のポット122内に排出される。
ボール124の入ったポット122にCHO化合物が投入された後、ポット122内にさらに各種添加剤を添加する。これと同時に、ポット122をz軸の周りに回転させ、これらを混合する。成形体製造装置100が乾燥手段を備えている場合において、CHO化合物が湿潤状態にあるときには、混合と同時に乾燥手段による乾燥も行われる。得られた混合物104は、連続的にポット122の細孔122a、122a…から排出され、成形手段130に送られる。
【0059】
成形手段130に排出された混合物104は、回転するダイ132とダイ132の内周面に沿って転動する加圧ローラー134の間で加圧される。その結果、混合物104は、ダイ132の周壁に形成された穴132a、132a…から押し出され、押出体106となる。押出体106は、カッターにより切断され、成形体102’となる。
得られた成形体102’は、搬送手段140により図2に示すエネルギーガス製造・発電装置40に搬送される。
【0060】
成形体製造装置100を備えたバイオマスガス化発電装置30の場合、成形体製造装置100で製造された成形体102’がガス置換室54に搬送される。一方、成形体製造装置100を備えていないバイオマスガス化発電装置30の場合、別個に処理されたバイオマス型燃料102がガス置換室54に搬送される。
シャッターB(54b)を閉じた状態で、シャッターA(54a)を開き、ガス置換室54にバイオマス型燃料102を挿入する。次いで、シャッターA(54a)を閉じ、ポンプ56でガス置換室54内を排気又はガス置換する。排気又はガス置換後、シャッターB(54b)を開き、ガス置換室54内のバイオマス型燃料102をホッパー52に投入する。
【0061】
ホッパー52に投入されたバイオマス型燃料102は、搬送用スクリュー74により搬送管72内を通って反応室62に搬送される。反応室62内に搬送されたバイオマス型燃料102は、バーナー64で加熱される。その結果、バイオマス型燃料102からエネルギーガスが発生する。発生したエネルギーガスは、通気口72a、72a…を通って、反応室62内に充満する。また、バイオマス型燃料102の熱分解により生じたチャーは、排出口72b、72b…を通って受け皿68に溜まる。反応生成物は、搬送用スクリュー74により残渣貯蔵室66まで搬送される。
【0062】
反応室62内にエネルギーガスが充満したところで、ポンプ89を作動させると、反応室62内のエネルギーガスがCO2トラップ82に送られる。
この時、ホッパー52内に漏洩したエネルギーガスは、配管74aから反応室62を通ってCO2トラップ82まで送られる。同様に、残渣貯蔵室66に漏洩したエネルギーガスは、配管74bから反応室66を通ってCO2トラップ82まで送られる。
【0063】
エネルギーガスがCO2トラップ82に送られると、エネルギーガスからCO2(及び、必要に応じてH2O)が取り除かれる。その結果、CO2トラップ82内には、H2を主成分とするエネルギーガスが充満する。CO2トラップ82内が所定の圧力になったところで、開閉弁88bを開け、CO2トラップ内のエネルギーガスをエネルギーガスタンク84に送り込む。
エネルギーガスタンク84に蓄えられたガスの一部は、バーナー64に送られ、バイオマス型燃料102の加熱に用いられる。残りのガスは、燃料電池92に送られ、発電に用いられる。生成した電力は、急速充電器94を用いて2次電池18又は外部2次電池22に貯蔵される。
【0064】
CHO化合物からエネルギーガスを取り出す場合において、CHO化合物にアルカリ金属若しくはその化合物又はアルカリ土類金属若しくはその化合物を添加すると、単一又は複数のエネルギーガスを取り出すことができる。しかも、その際に水蒸気改質を用いる必要が無く、タールの発生を伴うことも少ない。また、添加剤の種類、添加量及び混合方法を最適化すると、エネルギーガス(特に、水素ガス)の発生温度を低温下させ、あるいは、複数のエネルギーガスを選択的に取り出すことができる。さらに、このようにして得られたエネルギーガスを用いて燃料電池で発電すると、バイオマス型燃料から電気を取り出すことができる。
【0065】
図1に示すように、このようなバイオマスガス化発電装置30を移動体10に搭載すると、バイオマスガス化発電装置30で発電した電力を移動体10の2次電池18に貯蔵することができる。そのため、移動体10の燃費が向上する。また、バイオマス型燃料102は、必ずしも化石燃料に由来しないので、システム全体としてCO2排出量の削減が期待できる。
さらに、発電容量の大きなバイオマスガス化発電装置30を搭載した移動体10の場合には、自ら消費する以上の電力をバイオマス型燃料102から得ることができる。そのため、他の移動体に備えられる外部2次電池22への急速充電も可能となる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係るバイオマスガス化発電装置は、定置型の小型発電機、移動体に搭載する補助電源などに使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 移動体
30 バイオマスガス化発電装置
40 エネルギーガス製造・発電装置
50 貯蔵手段
60 反応手段
80 エネルギーガス貯蔵手段
90 発電手段
100 バイオマスペレット製造装置
102 バイオマス型燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えたバイオマスガス化発電装置。
(1)前記バイオマスガス化発電装置は、エネルギーガスを製造し、製造された前記エネルギーガスを電力に変換するエネルギーガス製造・発電装置を備えている。
(2)前記エネルギーガス製造・発電装置は、
炭素水素酸素含有化合物と、アルカリ金属若しくはその化合物及び/又はアルカリ土類金属若しくはその化合物とを含むバイオマス型燃料を一時的に貯蔵する貯蔵手段と、
前記貯蔵手段に貯蔵された前記バイオマス型燃料を加熱し、エネルギーガスを発生させる反応手段と、
前記反応手段において発生させた前記エネルギーガスを貯蔵するエネルギーガス貯蔵手段と、
前記エネルギーガス貯蔵手段に貯蔵された前記エネルギーガスを燃料電池に供給し、前記エネルギーガスを電力に変換する発電手段と
を備えている。
【請求項2】
以下の構成をさらに備えた請求項1に記載のバイオマスガス化発電装置。
(3)前記バイオマスガス化発電装置は、前記バイオマス型燃料からなる成形体を製造する成形体製造装置を備えている。
(4)前記成形体製造装置は、
前記炭素水素酸素含有化合物を粗粉砕する粗粉砕手段と、
粗粉砕された前記炭素水素酸素含有化合物に、アルカリ金属若しくはその化合物及び/又はアルカリ土類金属若しくはその化合物を添加し、これらを混合する混合手段と、
前記混合手段で得られた混合物を成形し、前記バイオマス型燃料からなる成形体を得る成形手段と、
前記成形体を前記エネルギーガス製造・発電装置の前記貯蔵手段に搬送する搬送手段と
を備えている。
【請求項3】
以下の構成をさらに備えた請求項2に記載のバイオマスガス化発電装置。
(5)前記成形体製造装置は、前記混合手段及び/又は前記成形手段に熱を供給し、前記混合物及び/又は前記成形体を乾燥させる乾燥手段を備えている。
【請求項4】
以下の構成を備えた移動体。
(1)前記移動体は、
車軸と、
前記車軸に動力を伝達するためのエンジンと、
前記車軸に動力を伝達し、又は、前記車軸若しくは前記エンジンから伝達される動力を電力に変換するためのモーターと、
前記モータに電力を供給し、又は、前記モータにより発電された電力を貯蔵するための2次電池と
を備えている。
(2)前記移動体は、前記2次電池に電力を供給するための請求項1に記載のバイオマスガス化発電装置を備えている。
【請求項5】
以下の構成をさらに備えた請求項4に記載の移動体。
(3)前記バイオマスガス化発電装置は、請求項2に記載の成形体製造装置をさらに備えている。
【請求項6】
以下の構成をさらに備えた請求項5に記載の移動体。
(4)前記移動体は、前記成形体製造装置の前記粗粉砕手段に前記エンジンの動力を伝達する動力伝達手段を備えている。
【請求項7】
以下の構成をさらに備えた請求項5又は6に記載の移動体。
(5)前記移動体は、前記成形体製造装置に備えられる前記混合手段及び/又は前記成形手段に前記エンジンの排熱を供給し、前記混合物及び/又は前記成形体を乾燥させる乾燥手段を備えている。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126997(P2011−126997A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286745(P2009−286745)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】