バイオマーカーの収集のためのスマートヒドロゲル粒子
溶液から検体を収集するための捕獲粒子、及びその使用方法が開示される。該捕獲粒子は、捕獲粒子に検体が侵入することを可能にするポアサイズを有するポリマーマトリクスからなる。捕獲粒子のポアサイズは、粒子に対する刺激の適用により変化し得、粒子のポアサイズは、興味のある検体が粒子内部に隔離されたままであるように変化することが可能とされる。捕獲粒子のポリマーマトリクスは、構造モノマー及び親和性モノマーを有するコポリマー材料から製造することができ、親和性モノマーは、検体を捕獲粒子に誘引する特性を有している。捕獲粒子は、混合物中に存在する検体を分離及び同定するために用いることができる。それらは、通常、分解に去れされる検体を保護し、体液中に少量存在する検体を収集するために用いることもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年3月19日に出願された米国仮特許出願第60/895,674号及び2007年11月9日に出願された米国仮特許出願第60/986,803号の優先権を有し、2006年9月27日に出願された米国特許出願第11/527,727号の一部継続出願であり、その開示又はそれらは本明細書において参照として組み入れられる。
【0002】
本発明は、混合物由来のバイオマーカーの収集のための粒子、及びその粒子の使用方法に関する。特に、本発明は混合物からバイオマーカーを捕捉することができ、混合物からバイオマーカーを分離することができる粒子、並びにバイオマーカーを捕捉する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオマーカーは、多種多様の疾患の初期段階での検出を提供し得る。そのため、精度が高い、特定の疾患の検出を提供する、新規なバイオマーカーの急を要する発見することについて必要性がある(Aebersold et al.,Proteome Res 2005,4,(4),1104−9;Srinivas et al.,Clin Chem 2002,48,(8),1160−9)。バイオマーカーは、臨床病理所見の前に疾患を診断する方法を提供し、これは疾患の初期段階での治療を可能にし、通常良好な結果をもたらす。
【0004】
例えば、癌は、主として、各種の疾患が、通常は癌が転移した後に診断されるという事実に起因し、米国において多くの人口集団についての死因を急速にもたらすようになる。この疾患の後期においては、治療は、一般的に侵襲的かつ効果のないものである。転移より前の癌の早期発見が治療成果における劇的な向上をもたらすであろうと広く信じられている。
【0005】
アルツハイマー病及び糖尿病のようなバラエティに富む種々の病状及び状態を示すバイオマーカーも絶えず発見されている。これらの多くの疾患については、疾患の早期診断は、後期治療よりも成功のチャンスが大きい治療法の選択を可能にする。更に、あるケースにおいては、疾患又は疾患に対するかかりやすさの早期診断は、診断した人々に、より多くの治療を伴うことの必要性なしで、疾患の経過を予防及び逆転することを補助し得る生活様式を変化させることを可能にする。
【0006】
バイオマーカーは、疾患の縮小又は存在の危険性と関連がある、特定の生物学的状態を示す、核酸、タンパク質、タンパク質断片又は代謝産物である(Frank and Hargreaves;Nature reviews 2003,2,(7),566−80)。バイオマーカーの研究は、少量の血中タンパク質及びペプチドが、全体として生命体の状態に関する豊富な情報源を示すことを示している(Espina et al.Proteomics 2003,3,(11),2091−100)。2つの主な障害物:すなわち1)血中又は体液中の疾患に関連するバイオマーカーは生体分子の複合混合物中に非常に低濃度で存在し、アルブミンのような多量の種により隠すことができること、及び2)タンパク質バイオマーカーの分解は、内因性及び外因性プロテイナーゼの結果として血液又は体液の収集の直後に起こり得ることが、これらの発見が臨床的有用性に達することを阻んできた。
【0007】
血中プロテオームを含むタンパク質及びペプチドの濃度は、アルブミンのような、数種の高分子量タンパク質、及び全タンパク質含有量の90%の割合を占める免疫グロブリンと一緒になって10−12mg/mL〜10−3mg/mLと10桁にかかる範囲である(Anderson and Anderson,Mol Cell Proteomics 2002,1,(11),845−67)。しかし、血中にも存在する少量かつ低分子量のタンパク質及び代謝産物は、豊富な情報を提供し、新規なバイオマーカー源としての見込みがある。二次元電気泳動のような従来の方法は、少量で低分子量のタンパク質及び代謝産物を検出し定量する感度及び分解能を有していない。また、近代の質量分析計の中程度に高い感度にもかかわらず(アトモル濃度)、その運転範囲は3〜4桁上に及び、この結果、少量のタンパク質はより多いタンパク質に隠されてしまう。その結果として、質量分析法(MS)実験用の通常の試料調製は、市販の免疫親和性枯渇カラム(Agilent,Sigma,及びBeckman−Coulter)を用いた大量のタンパク質の枯渇から開始する。枯渇の後、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び/又は等電点電気泳動を用いて分別を実施する。しかし、非常に大部分の少量のバイオマーカーは、除去されるキャリアタンパク質と非共有的及び内生的に関連しているので、大量の天然の高分子量タンパク質の除去はバイオマーカーの候補の収量を減少し得る(Lopez et al.,Clinical chemistry 2007,53,(6),1067−74;Conrads et al.,BioTechniques 2006,40,(6),799−805;Lowenthal et al.,Clin Chem 2005,51,(10),1933− 45;Lopez et al.,Clinical chemistry 2005,51,(10),1946−54)。変性条件下でのサイズ排除限外ろ過(Zolotarjova et al.,Proteomics 2005,5,(13),3304−13)、連続溶出変性電気泳動(continuous elution denaturing electrophoresis)(Camerini et al.,Proteomics Clin.Appl.2007,1,176−184)、又はナノポーラスを用いた血清の分別(Geho et al.,Bioconjug Chem 2006,17,(3),654−61)のような方法が、この問題を解決するために提案されてきた。更に、これらと同じ最近の発見は、バイオマーカー候補の豊富かつ未開発の源としてのプロテオームの低分子量領域を指摘している(Tirumalai et al.,Molecular & cellular proteomics 2003,2,(10),1096−103;Merrell et al,J of biomolecular techniques 2004,15,(4),238−48;Orvisky et al.,Proteomics 2006,6,(9),2895−902)。
【0008】
複合天然タンパク質混合物(血液等)に由来するバイオマーカーの候補の収集及び濃縮に関連する困難さに加え、これらの可能性のあるバイオマーカーの安定性は難題をもたらす。血液入手(例えば、静脈穿刺)の直後に、血清中のタンパク質は、血液凝固過程、血液細胞から流れる酵素、又は細菌汚染に関連するような、内因性プロテアーゼ又は外因性の環境のプロテアーゼにより分解されやすくなる。従って、血中の候補となる診断バイオマーカーは、搬送及び保存の間の分解にさらされ得る。これは、試料が凍結されることなく輸送された、種々の施設及び場所から集められた、血清及び体液の大きな保存場所内のバイオマーカーの忠実度にとって、なおさら重要な問題となる。
【0009】
そのため、当該技術分野において、血清のような生体分子の複合混合物由来の選択されたタンパク質及びペプチドの濃縮及び不溶化、並びに次の試料の取り扱いの間に分解から粒子を保護することを可能にする粒子が必要とされている。次いで、次の定量的解析を可能にする電気泳動により、捕獲された検体を粒子から容易に抽出することができる。このタイプの粒子は、癌のような後期疾患のための新規なバイオマーカーの発見に他に類を見ないほどに適している強力な手段を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Aebersold et al.,Proteome Res 2005,4,(4),1104−9;Srinivas et al.,Clin Chem 2002,48,(8),1160−9
【非特許文献2】Frank and Hargreaves;Nature reviews 2003,2,(7),566−80
【非特許文献3】Espina et al.Proteomics 2003,3,(11),2091−100
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、バイオマーカー収集のための捕獲粒子を提供することである。捕獲粒子は、混合物からバイオマーカーを隔離し、抽出し、それを分解から保護することを可能にする材料からなる。本発明の一実施態様においては、捕獲粒子は規定の分子サイズ、質量及び又は親和性特性を有する分子種を特に捕獲する能力を有し、通常複数の異なる分子種を含む試料から興味のある分子を分離するために用いられる。捕獲粒子は試料に添加され、次いで興味のある分子種を捕獲するために利用される。
【0012】
本発明の更なる目的は、バイオマーカー収集のためのスマート(smart)ヒドロゲル粒子を提供することである。本発明のスマートヒドロゲル粒子は、スマートヒドロゲル粒子の周囲の環境を変化させることにより変えることができる孔及び全てのサイズを有していてもよい。スマートヒドロゲル粒子は、バイオマーカーが特定の条件下でヒドロゲルに入ることを可能にする孔を有していてもよく、その後、スマートヒドロゲル粒子の周囲環境は、バイオマーカーがスマートヒドロゲル粒子の内部に隔離することができるように、変化し得る。
【0013】
本発明の更なる目的は、バイオマーカーを誘因し、相互作用することのできるバイオマーカー収集のための捕獲粒子を提供することである。特定の実施態様においては、前記誘因は、捕獲粒子の内部に存在するであろう。他の実施態様においては、誘因は、捕獲粒子事態を製造するための材料の一部である。
【0014】
本発明の更なる目的は、以下の特性、すなわち:a)捕獲すべき分子のサイズ及び/又は質量を選択する能力、b)捕獲すべき分子の親和性特性を選択する能力、及び/又はc)物理的又は化学的処理に応答し、所望の分子を捕獲及び/又は放出する能力の1種以上を有するバイオマーカー収集のための捕獲粒子を提供することである。
【0015】
本発明の更に他の目的は、バイオマーカーの隔離が完了した後に、容易に隔離及び分離することができるバイオマーカー収集のための捕獲粒子を提供することである。本発明の特定の実施態様においては、物理的な力、電場又は磁場を通して、又は標的とする粒子上の一部における誘因により、混合物から分離することを可能にする特性を有し、又は修飾を有している。
【0016】
本発明の更に他の目的は、混合物又は溶液中に存在する検体の特定のためのキットを提供することである。本発明のキットは、通常、捕獲粒子で満たされているか、又はコーティングされているある種の収集装置を有する。検体を含む溶液又は他の混合物は、収集装置に供され、捕獲粒子が、分析のための所望の検体を隔離及び分離することを可能にする。
【0017】
本発明の更に他の目的は、溶液から捕獲した検体の分析のためのマイクロ流体システムを提供することである。このマイクロ流体システムは本発明の捕獲粒子を含むであろう。分析すべき検体を含む試料を、マイクロ流体システムに導入し、そこで、捕獲粒子は検体を隔離する。次いで、捕獲粒子を分離された場所に移動し、そこで、当該技術分野において公知の方法を用いて検体を遊離し、分析する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、バイオマーカーを収集するための捕獲粒子、及びこれらの粒子を用いる方法を提供する。本発明の捕獲粒子は、混合物から特定のバイオマーカーを選択的に選択することができ、その後、捕獲粒子を混合物から除去され、バイオマーカーは捕獲粒子から放出される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】粒子の化学組成。(A)N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)及びそのポリマー、(B)メチレンビスアクリルアミド及び(C)NIPAm及びアクリル酸並びにそのポリマー。
【図2】粒子の特徴。(A)温度の関数としてのNIPAmの粒径の光散乱測定(温度が上昇すると直径が小さくなる)。(B)温度(温度が上昇すると直径が小さくなる)及びpH(pHが低下すると直径が小さくなる)を伴う、NIPAm/AAc粒子のサイズの相関のプロット。雲母上の(C)NIPAm粒子及び(D)NIPAm/AAc粒子のAFM像。
【図3】溶液中の粒子の分子ふるいの概略図。低分子量タンパク質を集め;高分子量タンパク質を排除する。
【図4】FITCでインキュベートした粒子のフローサイトメトリー解析。(A)取り込みは濃度依存的である。(B)取り込みは、20μM濃度のFITCを用いて急速に飽和に達する。また、NIPAm粒子を、FITC標識したウシ血清アルブミン(BSA)、MW66,000Da(FITC−BSA,Sigma)と1:1の色素:分子比で、FITC標識したインシュリン、MW3,500Da(Invitrogen)と1:7の色素:分子比で、又はFITC標識したミオグロビン、MW17,000Daと1:36の色素:分子比でインキュベートした。ミオグロビン(Sigma)は、HOOK−Dye Labeling Kit(G Bioscience)を用いて、製造供給元の使用説明書に従い、FITC標識した。全ての蛍光種の濃度は、蛍光シグナルを等しくするように調製した。
【図5】NIPAm粒子をFITC及びFITC標識したタンパク質とインキュベートした:(A)BSA及びインシュリン、(B)ミオグロビン及びフリーのFITCのフローサイトメトリー測定。(C)インシュリンとインキュベートした粒子のSDS−PAGE:レーン1)インシュリン溶液(コントロール)、2)NIPAm上清(Out、粒子から排除された基材)、3)洗浄液1)、4)洗浄液2)、5)NIPAm粒子(In、粒子により捕獲された基材)。(D)BSA及びミオグロビンとインキュベートしたNIPAm粒子のSDS−PAGE:1)BSA及びミオグロビン(コントロール)、2)NIPAm上清(Out)、3)洗浄液2、4)NIPAm粒子(In)。BSAは全体として排除される。
【図6】親和性をベースとする隔離の概略図。
【図7】NIPAm粒子(−bait)に対するNIPAm/AAc粒子(+bait)によるタンパク質配列決定、粒子+及び−baitによるミオグロビン(水溶液、pH5.5)隔離のSDS−PAGE(A)。レーン1)ミオグロビン、2)NIPAm上清(Out)、3)NIPAm粒子(In)、4)NIPAm/AAc上清(Out)、5)NIPAm/AAc粒子(In)、6)NIPAm/AAc粒子1:64、7)NIPAm/AAc粒子:1:32、8)NIPAm/AAc粒子1:128、及び9)NIPAm/AAc粒子(In)1:256。(B)2種のpH値における粒子+baitによるBSA及びミオグロビンの隔離。レーン1)BSA及びミオグロビン、pH5.5、2)NIPAm/AAc上清(Out)pH5.5、3)洗浄液3、pH5.5、4)NIPAm/AAc粒子(In)pH5.5、5)洗浄液2、pH5.5、6)洗浄液1、pH5.5、7)BSA及びミオグロビン、pH8、8)NIPAm/AAc上清(Out)pH8、及び9)NIPAm/AAc粒子(In)pH8。
【図8】(A)BSA及びライソザイムとインキュベートした、−及び+bait粒子のSDS−PAGE解析。レーン1)粒子導入前のBSA及びライソザイム溶液、2)NIPAm(−bait)上清(Out)、3)洗浄液3、4)NIPAm(−bait)粒子(In)、5)洗浄液2、6)洗浄液1、7)NIPAm/AAc(+bait)上清(Out)、8)洗浄液3、及び9)NIPAm/AAc(+bait)粒子(In)。分子量(MW)マーカーとインキュベートしたNIPAm/AAc粒子(+bait)のSDS−PAGE解析:1)MWマーカー、2)NIPAm/AAc上清(Out)、及び3)NIPAm/AAc粒子(In)。
【図9】PDGF B及びBSAとインキュベートした粒子+baitのSDS PAGE解析。レーン1)BSA及びPDGF B、2)NIPAm/AAc上清(Out)、3)NIPAm/AAc粒子(In)。
【図10】FITC標識されたインシュリン水溶液とインキュベートした(A)NIPAm及び(B)NIPAm/AAc粒子、及び血清中でスパイクされたFITC標識されたインシュリンのフローサイトメトリー解析。
【図11】FITC標識されたインシュリンとインキュベートした(A)NIPAm及び(B)NIPAm/AAc粒子のフローサイトメトリー経時変化試験。
【図12】取り込みの経時変化試験(A)RPPAsにより測定される、2種の量のNIPAm/AAc粒子とインキュベートした、溶液中のライソザイムの初期量と比較した割合の平均値(3種の再現分析及び標準偏差を示す)。(B)NIPAm/AAc粒子とインキュベートしたライソザイム及びBSA溶液のSDS−PAGE解析。レーン1)BSA及びライソザイム溶液。2〜11)それぞれ5、10、20、30及び60分間のインキュベーション時間についての交互の上清(Out)及び粒子(In)。ライソザイムの取り込みは急速かつ完全であるが、BSAの排除は全てである。
【図13】酵素分解からタンパク質を保護する粒子の能力を説明する概略図。
【図14】存在し得る酵素による分解から結合タンパク質を保護するNIPAm/AAc粒子(+bait)。(A)ライソザイム及びトリプシンを含む溶液で1時間インキュベートしたNIPAm/AAc粒子。1)ライソザイム、2)トリプシンとインキュベートしたライソザイム、3)NIPAm/AAc上清(Out)、4)NIPAm/AAc粒子(In)、5)BSA及びライソザイム、6)BSA及びライソザイム+プロテアーゼ、7)NIPAm/AAc粒子上清(Out)、及び8)NIPAm/AAc粒子(In)。(B)BSA、ライソザイム及びトリプシンと一晩インキュベートしたNIPAm/AAc粒子。レーン1)ライソザイム、2)トリプシン、3)ライソザイム+トリプシン、4)NIPAm/AAc粒子上清(Out)、5)NIPAm/AAC粒子(In)、6)ライソザイム及びBSA、7)BSA及びライソザイム+プロテアーゼ、(8)NIPAm/AAc上清(Out)、及び9)NIPAm/AAc粒子(In)。
【図15】トリプシン消化にさらされ、+bait及び−bait粒子でインキュベートされた、還元及びアルキル化されたライソザイムのSDS−PAGE解析。(A)NIPAm/AAc粒子とインキュベートした、還元及びアルキル化されたライソザイム+トリプシン:レーン1)ライソザイム、2)還元及びアルキル化されたライソザイム、3)+トリプシン、4)NIPAm/AAc上清(Out)、5)NIPAm/AAc粒子(In)。(B)NIPAm粒子とインキュベートした、還元及びアルキル化されたライソザイム:レーン1)NIPAm粒子上清(Out)、2)NIPAm粒子(In)、3)+トリプシンNIPAm上清(Out)、4)+トリプシンNIPAm粒子(In)、5)+トリプシン、6)NIPAm粒子、上清(Out)とインキュベートしたBSA+還元及びアルキル化したタンパク質溶液、7)NIPAm粒子(In)。
【図16】NIPAm/AAc粒子として同じ分子量ふるいを有するコアシェル粒子。コントロールタンパク質溶液を、NIPAm/AAc及びコアシェル粒子とインキュベートした。レーン1)コントロールタンパク質溶液、2)NIPAm/AAc粒子上清(Out)、3)NIPAm/AAc粒子(In)、4)コアシェル粒子上清(Out)、5)コアシェル粒子(In)。
【図17】コアシェル粒子は、ライソザイムをキモトリプシンタンパク質分解から保護する。レーン1)ライソザイム、2)キモトリプシン、3)ライソザイム+キモトリプシン、4)コアシェル粒子、上清(Out)とインキュベートしたライソザイム+キモトリプシン、5)コアシェル粒子、粒子(In)とインキュベートしたライソザイム+キモトリプシン、6)ライソザイム+BSA+キモトリプシン、7)コアシェル粒子、上清とインキュベートしたライソザイム+BSA+キモトリプシン、8)コアシェル粒子、粒子(In)とインキュベートしたライソザイム+BSA+キモトリプシン、9)ライソザイム+BSA。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特定の実施態様においては、捕獲粒子は、以下の特徴:すなわちa)捕獲すべき分子のサイズ及び/又は質量を選択する能力、b)捕獲すべき分子の親和性を選択する能力、及び/又はc)物理的又は科学的処理に対して所望の分子を捕獲及び/又は放出する能力の1種以上を有する。本発明の粒子は、例えば、アフィニティーカラム、逆相カラム及び分子ふるい工程のような従来の多段階工程の必要なしで、微量でこの課題を達成し得る。捕獲粒子の特徴は、捕獲粒子を構築するために用いられる材料に依存する。特定の材料から製造される特定のタイプの捕獲粒子を本明細書で説明するが、製造される方法から確定することができる特徴を有し、以下に説明する請求の範囲ないである、本明細書に明白に説明しない捕獲粒子の多の組み合わせ及び変形があることは当業者に明らかであろう。
【0021】
本明細書の記載を通じて、バイオマーカー又は他の検体の収集が開示される。本発明の捕獲粒子及び方法は、興味のある任意のタイプの分子又は化合物、生体起源又は他の検体のいずれかにより製造されるバイオマーカーの収集に適応される。本発明の特定の実施態様においては、収集すべき検体は、代謝産物、タンパク質、RNA、ミクロRNA、DNA、糖タンパク質、脂質、糖脂質、プロテオリピド、ホルモン、サイトカイン、成長因子、バイオマーカー、薬剤、合成有機化合物、揮発性臭気物質、毒物及び汚染物質であり得る。本発明が、特定のタイプの分子の収集に多少なりとも限定されず、任意のタイプの混合物中に存在する任意の源に由来する分子が本発明の組成物及び方法を用いて収集され得ることが当業者には明らかであろう。
【0022】
特定の実施態様においては、本発明の捕獲粒子は分子ふるい材料から構成され得る。これにより、材料は多孔質、格子状、蜂の巣状であるか、検体に、侵入する明確な分子の量又は重量を許容することを可能にする多の特性を有することを意味する。分子ふるい孔のサイズは、検体が捕獲粒子に浸透することができるかどうかにより決定される。粒子は、それ自体、適切なサイズ、例えば、その中の任意及び全ての値を含む、1nm以下;約1nm〜100μm;約5nm〜50μm;約10nm〜20nm;約10nm〜10μmであり得る。本発明の粒子は、球、チューブ、分岐構造、多面体及びマイクロ流体バルブが含まれるがこれらに限定されない、任意の適切な形状であり得る。
【0023】
本発明の捕獲粒子を製造するために用いられる分子ふるい材料は、特定のサイズの検体のみが捕獲粒子に侵入することを許容するように設計され得る。捕獲粒子のカットオフサイズは、粒子が用いられる方法に依存するであろう。本明細書で用いられる場合、カットオフサイズは、捕獲粒子に侵入し得る検体に近似するサイズを表現することを意味する。例えば、50kDaの分子量(Mw)カットオフサイズは、約50kDa以下のサイズの分子が捕獲粒子に侵入し得るが、約50kDaを越える分子が粒子から排除されることを意味する。特定の実施態様においては、粒子は約5kDa〜約100kDaのMWカットオフサイズを有し得るが、この範囲意外の他のMWカットオフサイズを有する粒子も意図される。本明細書に記載される場合、本発明の捕獲粒子は、刺激に対してサイズを変化することができる「スマート」材料から製造することができる。このようなケースにおいては、粒子のMWカットオフサイズは、粒径の変化により変化し得、例えば、特定条件下で粒子は特定のMWカットオフサイズを、他の条件下で異なるMWカットオフサイズを有し得る。
【0024】
本発明の捕獲粒子の特徴は、検体がいったん粒子に侵入すると、それを「捕捉」又は隔離する能力である。捕捉は、粒子を製造するための物理的又は化学的処理に対して収縮及び/又は膨張し得る分子ふるい材料を用いることにより達成される。例えば、化学的又は物理的処理にさらされた場合に収縮し、又は縮む材料を用い、それによって検体を内側に捕捉することができる。このような材料は、物理的又は化学的処理にさらすことにより、形状又はサイズを変化する能力を有する「スマート材料」と呼ぶことができる。
【0025】
これらの性質を有する任意の材料を、本発明の捕獲粒子を製造するために制限なく用いることができる。特定の実施態様においては、これらの材料は、アクリルアミド及びその誘導体、N−イソプロピルアクリルアミド(例えば、Jones and Lyon,Macromolecules,36:1988−1993,2003;Jones and Lyon,Macromolecules,33:8310−8306,2000)及び他のN−アルキル置換アクリルアミド;N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−シスタミンビスアクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アリルアミン、スチレン、ベンジルグルタメート、2−エチルアクリル酸、4−ビニルピリジン、シリコーン、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレンオキシド、ブチレンテレフタレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ビニルピロリドン及びエチレン−酢酸ビニルからなるポリマーである。本発明の他の実施態様においては、捕獲粒子は、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン及びヒドロキシアルカノエートで構成される生分解性ポリマーで構成され得る。本発明の更なる他の実施態様においては、ポリマーは、キトサン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース及びアガロースで構成され得る。本発明の捕獲粒子を製造するために用いられるポリマーは、架橋可能な単位で構成されていても、されていなくてもよい。架橋可能なポリマーの場合、架橋は、恒久的又は可逆的のいずれかで形成してもよい。本発明によって意図されるポリマーは単一の繰り返し単位を有しているか、又はポリマーに含まれる2種以上のモノマー単位を有するコポリマーであってもよい。
【0026】
用いられる材料の他の具体例は、強誘電性液晶エラストマー;圧電性ポリマー;「スマート」ヒドロゲル、ゲル、セラミック、合金及びポリマー等であり得る。適切な材料の他の具体例は、Galaev et al.,Pages 835−849;Zentel;Pages 850−860;Harrison and Ounaies,Pages 860−873;Encyclopedia of Small Materials,Volumes 1−2,Edited by,Schwartz,Mel(C)2002 John Wiley & Sonsに見ることができる。分子ふるい材料として適切な他の材料の具体例は、編んである、又は架橋ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、金属コロイド、クラスリン、コラーゲン、修飾多糖類、シリコン、シリカ、アミノ酸からなる結合ペプチド、核酸からなるポリマー(例えば、Chittamalla et al.,J.Am.Chem.Soc.,2005,127(32),11436−41を参照されたい)、アミノ酸ポリマー,脂質(例えば、Advanced Drug Delivery Reviews,Lipid Nanoparticles:Recent Advances,2007,59(6),375−530を参照されたい)、自己集合ウイルス及び自己集合タンパク質である。捕獲粒子は、当該技術分野において公知の方法により、又は前記文献のいずれかに記載された方法により、通常に製造することができる。
【0027】
分子ふるい材料を収縮及び/又は膨張させるために用いることができる物理的及び/又は化学的処理には、熱、電気、磁気、超音波、圧力、放射、レーザー、浸透圧、pH、塩、酵素、酸化/還元、脱水/再水和、紫外線、放射線、強い赤光及び当該技術分野において公知の同様の処理が含まれる。
【0028】
分子ふるい材料は、可逆的又は不可逆的に収縮又は縮小され得る。例えば、捕獲粒子は、検体が浸透することが可能である混合物中に置かれ、検体を捕獲するために不可逆的に縮小し得る。これは、対象が溶液から汚染物質を除去する場合に有用であり得、捕獲された検体を解析又は更に評価する必要はなく、その結果、それを膨張させる必要はない。また、不可逆的捕獲粒子は、超音波処理又は粒子の完全性を破壊する他の破壊的な力によって破壊され得る。
【0029】
捕獲粒子は、バイオマーカーを誘因し、相互作用し得る誘引物質を更に含んでもよい。本発明の誘引物質は、興味のある検体と特異的に相互作用し得る任意の物質であり得る。特定の実施態様においては、誘引物質は親和性リガンドであり;抗体及びその誘導体(例えば、Fab画分及び単一鎖抗体);修飾タンパク質を含む結合タンパク質及びペプチド(例えば、特異的リガンド及びポリヒスチジンペプチドについての受容体又はその断片);結合ペア(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン);基質;金属;キレート剤;核酸;アプタマー;酵素結合ポケット:レクチン;小分子を取り込むためのカリックスアレーン;金属又は金属塩(例えば、ヘム基についてのFe、リン酸化ペプチド及びタンパク質についてのTiO2);親和性色素;薬理活性化合物;ペプチド及びフラーレン、親油性化合物、芳香族化合物及び/又は興味のある検体に特異的な親和性基であってもよい。捕獲粒子は、当該技術分野において公知の分子インプリンティング法を用いて形成することもできる。本発明のこれらの実施態様においては、捕獲粒子は、特定の分子又は分子のファミリーと結合するようにインプリントしてもよい。
【0030】
本発明の特定の他の実施態様においては、誘引物質は、検体と化学的又は静電気的に相互作用し得る化学的部分であってもよい。本発明のこれらの実施態様においては、誘引物質には、カルボキシル基、アミン基、脂質、リン酸基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、アクリル基、チオール基、アクリル酸、疎水性表面、親水性表面、又は検体と化学的又は静電気的に相互作用し得る他の部分が含まれる。
【0031】
誘引物質は、任意の適切な方法で捕獲粒子と結合され得る。例えば、分子ふるい材料が積層又は蒸着/核となる核又は周囲のコアとして用いることができ;それらは粒子が形成される前に分子ふるい材料に直接組み込まれ(すなわち、誘引物質は分子ふるい材料の成分である);それらは、通常、分子ふるい材料の多孔質表面に結合することができる(共有結合又は非共有結合)。誘引物質は、分子ふるい材料を適切な物理的又は化学的処理によって分子ふるい材料を膨張させ、リガンドが入ることを許容するのに十分に大きい空隙率に到達させ、次いで、分子ふるい材料を、粒子が侵入するのに効果的な条件下で誘引物質と接触させることにより、捕獲粒子中に取り込むこともできる。いったん粒子に誘引物質が取り込まれると、適切な物理的又は化学的処理により縮小することができ、その結果、検体が粒子に浸透できるままであるが、より大きい検体は排除されるように、分子ふるい材料の空隙率を低下させることができる。分子ふるいの空隙率は、誘引物質取り込み工程の後に、拡散からの親和性リガンドを遮断するのに十分に小さいポアサイズまで低下させることができ、分子ふるい材料に誘引物質を結合することを不要にする。しかし、所望であれば、結合工程は、分子ふるい材料に誘引物質を結合させるために用いることができる。
【0032】
親和性リガンドで誘引された捕獲粒子は、検体のサイズ又は質量についての選択に加え、検体選択工程を提供する。例えば、捕獲粒子は、検体が捕獲粒子中に浸透するのを可能にするように膨張し得、検体は、捕獲粒子と関連する親和性リガンドに特異的に結合する能力によって更に選択され得る。結合工程が達成された(例えば、平衡に達した)後、粒子を分離し、洗浄工程に供し、未結合の非標的検体を除去することができ、次いで、化学的又は物理的処理によって縮小させてもよい。
【0033】
本発明の特定の実施態様においては、誘引物質は分子ふるい材料の成分である。例えば、分子ふるい材料は、帯電を有するモノマー単位を有するコポリマーであってもよい。特定の実施態様においては、コポリマーは、分子ふるい材料自体が、捕獲すべき検体を誘引することができるように、帯電していない構造モノマー単位及び親和性モノマー単位で構成されている。特定の実施態様においては、分子ふるい材料が全体として帯電するように、親和性モノマー単位は、正又は負に帯電していてもよい。これらの実施態様においては、分子ふるい材料の環境が変化することにより、例えば、捕獲粒子の周囲の媒体のpH又は温度が変化することにより、その電荷が変化し得るようなものである帯電しモノマー単位はそのようであることが意図される。これらの実施態様においては、捕獲粒子は、検体のサイズ及び親和性の両者の選択をもたらす。
【0034】
分子ふるい材料が帯電したコポリマーである特定の実施態様においては、帯電したモノマー単位は、特定の条件下で帯電することを可能にする部分を有していてもよい。例えば、負に帯電したモノマーは、カルボン酸基、ヒドロキシル基、チオール基、リン酸基又は負電荷を有し得る他の置換基を有する。本発明の特定の実施態様においては、負に帯電したモノマーはアクリル酸又はカルボン酸基を有する他のモノマーである。正に帯電したモノマーは、アミン、アミド基又は正の電荷を有し得る他の置換基を有する。本発明の特定の実施態様においては、正に帯電したモノマーはアリルアミン又はキトサンである。
【0035】
分子ふるい材料がコポリマーである本発明の他の実施態様においては、親和性モノマーが分子ふるい材料中に組み入れられ、これは種々のタイプの検体の誘因を可能にする。例えば、コポリマーは、タンパク質及びペプチドに対する親和性を有する親和性色素;炭水化物、核酸及び糖ペプチド又は糖タンパク質に対する親和性を有するボロン酸基;低分子量化合物に対する親和性を有するシクロデキストリン;低分子量化合物に対する親和性を有するカリックスアレーン;金属イオンに対する親和性を有するポルフィリン;及び脂質に対する親和性を有する脂肪族基を有するモノマーを用いて組み入れられる。
【0036】
本発明の特定の実施態様においては、分子ふるい材料は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)、ペンダントカルボン酸(CO2H)基が広い範囲のアミノ又はアルコール末端分子で官能化されているアクリル酸(AAc)コポリマーである。これらの分子には、アルカン、溶液の脂質含有量を獲得するための他の脂肪性部分又は色素が含まれる。本発明の特定の実施態様においては、粒子は、NIPAmのみから構成されるシェルポリマー層によって囲まれた、NIPAm AAcコポリマーからなるコアを有する。
【0037】
捕獲粒子は、更に検出可能な標識を含んでもよい。検出可能な標識な任意の手段により検出することができる任意の部分又は基質であり得る。これらには、量子ドット、蛍光標識、酵素、磁気粒子等が含まれる。検出可能な標識は、その孔及び外部表面を含む、捕獲粒子の任意の領域と関連し得る。
【0038】
検出可能な標識は、選別のための種々のクラスの捕獲粒子を含む多くの方法において有用である。例えば、種々のクラスの捕獲粒子を製造することができ、ここで、各クラスは
種々の特徴(例えば、種々のポアサイズ及び/又は種々の吸引性)を有し、それぞれは、粒子の各クラスと関連する種々の検出可能な標識を有する。これは、それがどの検出可能な標識を有するかを決定することによって、粒子クラスの特性(例えば、特定の誘因物質に対する結合能力)を識別することを可能にする。例えば、PSAに対する単鎖抗体を有する粒子はFITCで標識することができ、α−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)に対する抗体を含む粒子はTRITCで標識することができる。取り込み工程を実施した後、蛍光活性化細胞分別を用いたフローサイトメトリーにより粒子を選別し、PSA含有粒子をAMACR含有粒子から分離することができる。他の実施態様においては、捕獲粒子は、親油性カルボシアニン色素で官能化し、その脂質成分を、薄層クロマトグラフィーを用いて分離することができる。
【0039】
捕獲粒子は、電場、磁場の適用により、レーザーピンセットの使用を介して、又は溶媒との親和力により、溶液又は他の媒体中で移動し得る。捕獲粒子が全体的な電荷を有している場合、それらは電場の適用により移動することができる。分子ふるい材料が帯電を有するように分子ふるい材料を修飾する場合、それらは特に適用可能である。例えば、電場は負に帯電した捕獲粒子を含む媒体の全域で適用することができ、捕獲粒子は、電場を適用する装置の正電極に向かって移動する。
【0040】
捕獲粒子は、磁石に誘引される磁気部分を有するように修飾されてもよい。本発明の特定の実施態様においては、これは、Fe3O4コアのような磁気コアの周囲に分子ふるい材料を形成することによって実施することができる。他の実施態様においては、捕獲粒子の表面は、磁気ナノ粒子によって完全又は部分的にコーティングされていてもよい(例えば、Wong et al.,J.Magnetism and Magnetic Materials,2007,311(1),219−23を参照されたい)。更に、ポリマーに直接組み込まれた磁気成分を有するコポリマーが形成されることが意図される。
【0041】
捕獲粒子は、特定の標的に容易に結合し得る表面マーカーを有するように、例えば、粒子が、それぞれストレプトアビジン、グルタチオン及びニッケル基質により結合し得るビオチン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ又は6−ヒスチジンタグを有するように修飾することができる。粒子は、DTTによる逆転し得るジスルフィド結合から形成されるような、可逆性架橋剤を用いて形成することもできる。本発明のこれらの実施態様においては、捕獲粒子を含む溶液を適切な基質を有するビーズと混合することができる。例えば、ビオチン標識粒子をストレプトアビジン標識ビーズと混合することができる。お互いに結合させた後、遠心分離又は当該技術分野において公知の他の技術を用いて溶液からビーズを除去し、それにより捕獲粒子を戻すことができる。
【0042】
本発明の特定の実施態様は、溶液相捕獲粒子、及び下記工程の1種以上、例えば、捕獲粒子が、所定の分子量又は粒径の検体を可逆的かつ選択的に捕捉するのに効果的な条件下で、検体を含む試料を溶液相捕獲粒子と接触させる工程(ここで、捕獲粒子は、所定の粒径又は分子量の検体を可逆的に捕捉及び放出し得る分子ふるい材料から構成されている)を有する、試料から検体を分離するための捕獲粒子の使用方法に関する。
【0043】
本発明の捕獲粒子は、プロテアーゼ及び他の要因による分解から検体を保護することを可能にする。捕獲粒子は、粒子のサイズカットオフ及び/又は親和性により粒子からプロテアーゼを排除することによりこれを実施し得る。捕獲粒子は、検体とプロテアーゼは、プロテアーゼが検体を切断するのに必要な立体配置を防止するほど硬く結合するので、捕獲粒子は、プロテアーゼが検体を分解することも防止し得る。これらのケースにおいては、プロテアーゼは捕獲粒子中に侵入し得るが、検体は内部にあるままである。
【0044】
本発明の捕獲粒子は、少量の検体を液体から濃縮するためにも用いることができる。検体が、液体中に低濃度で存在する場合、本発明の捕獲粒子を、元の液体から検体を集めるために用いることができる。検体を集めた後、少量の第二の液体中に溶出させることができる。この方法において、元の液体中に、種々の分析方法の検出限界より低い濃度を有する検体を、容易に検出し、分析することができる濃度を有するように濃縮することができる。
【0045】
本発明の特定の実施態様においては、開示された捕獲粒子は、検体を分離及び/又は特定することができるキットの一部であり得る。キットは、検体を含む溶液又は他のタイプの混合物を集めるための任意のタイプの収集装置を有していてもよい。ある実施態様においては、収集装置は、バクテイナー(vacu −tainer)、チューブ,カートリッジ、又はマイクロ流体素子のような容器である。捕獲粒子が容器中に存在し得るか、又は捕獲粒子の層が容器上に形成され得ることが意図される。他の実施態様においては、収集装置は、捕獲粒子の層を含み得る繊維又はポリマー材料のシートである。これらの実施態様においては、捕獲粒子は表面に塗布されるパッチのタイプに形成され、ここから興味のある検体が分離されるか、又は興味のある検体が通過する。一実施態様においては、パッチは、皮膚に塗布し得るパッチであってもよく、皮膚表面から検体が分離されることを可能にする。
【0046】
本発明により、粒子が種々の工程の間を連続的に移動するシステムも意図される。一般的に:
工程1:捕獲粒子を検体を含む試料と混合し:
工程2:捕獲粒子を、捕獲されなかった溶液相部分から分離し:
工程3:検体を粒子から溶出し、分析する。
【0047】
本発明のこれらの実施態様においては、試料をシステムに導入し、あらゆる他の使用者の操作の必要なしで結果を得られるように、システムは、完全に内蔵型であり、自動化されている。このようなシステムはマイクロ流体システム中に含まれているか、大きいベンチトップ型のシステムであってもよい。
【0048】
一般に、捕獲粒子を含むチャンバーに試料を加え、興味のある検体を隔離する。次いで、捕獲粒子を、明細書に記載されたサイズまで減少させ、検体を内部に捕捉するようにチャンバーの環境条件を変化させる。次いで、捕獲粒子を、本明細書に記載された方法を用いて新しいチャンバーまで移動させ、検体を残りの試料から分離することができる。
【0049】
分析は、質量分析法、核磁気共鳴、赤外分析法、固相免疫測定法(例えば、ELISA等)、免疫沈降法、比色分析法、放射分析アッセイ、蛍光アッセイ、フロービーズ/
サイトメトリー、ウェスタンブロッティング、タンパク質配列決定及び代謝産物、薬剤、低分子化合物又はタンパク質の分析のための化学的分析法を含む、当該技術分野において公知の方法を用いて実施することができる。
【0050】
溶液相捕獲工程以上に、粒子は、層を浸透し、平板を満たすために、支持体表面をコーティングするためにも用いることができる。他の具体例には、メッシュを維持する粒子を有するパッチのコーティング、皮膚の上又は中に存在する検体を捕獲するための、このパッチの患者の皮膚への塗布が含まれる。
【0051】
血液、血液成分、脳脊髄液、リンパ液、細胞可溶化液、組織可溶化液、大便、尿、リンパ液、腹水、精液のような体液;土壌試料又は抽出物、海、池又は川の水のような環境試料;給水塔及び飲用水試料;化学合成反応に由来する試料;食品試料等が含まれるあらゆる試料が利用できるが、これらに限定されない。例えば、本明細書で議論する方法は、食品、飲用水及び環境試料中の汚染物質を検出するために用いることができる。有機分子、無機分子、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、薬剤、抗体、リガンド、リポタンパク質、糖タンパク質、脂肪酸、グリカン、それらの誘導体及びそれらの組み合わせを含む、興味のあるあらゆる分子を、本発明を用いて収集することができる。検体は、細胞表面から流れ、細胞から放出される(例えば、エクソサイトーシス、溶解等により)生体分子、代謝産物、分解産物、プロテアーゼ分解産物等を含むが、これらに限定されない。本発明の一実施態様においては、前記方法は、体液中の低分子量の分子、特に、可溶性であり、体液中で浮遊性であるか、キャリアタンパク質と関連する、正常な糸球体(腎臓)ろ過(例えば、30,000ダルトン未満の分子)により身体から排除されるものを捕獲するために用いることができる。一般に、本発明は、検出が望まれる興味のある検体を捕獲するために用いることができる。粒子は、反応生成物を選択的に捕獲するためのあらゆる化学反応の間、溶液中で用い、その結果、溶液中の生成物濃度を低下させることができる。これは、化学反応を完了させるか、時間とともにそれらが蓄積するように、1種以上の反応種を隔離することによって完了を促進することを可能にする。体液に関しては、本発明の捕獲粒子は、外因性分子、すなわち、試料が得られた被験者から、被験者の身体に取り込まれた分子を検出するためにも用いることができる。外因性分子は、被験者に積極的又は受動的に取り込まれ得る。外因性分子の具体例には、薬剤、食品、たばこ、環境製品及び汚染物質(例えば、殺虫剤、一酸化炭素等)中に含まれる分子又はそれらの形状の分子が含まれ、基本的に、あらゆる経路を通じて被験者の身体に侵入する任意の分子が含まれる。外因性分子は、身体において処理され、変換された代謝産物、副産物及び分解産物をも含む。粒子は、血液に由来する毒素を除去する手段としても用いることができる。粒子は、心臓麻痺を予防するために、尿素を除去し、又はコレステロールを過度に除去することによって身体の透析のために適用することができる。
【0052】
異なる型の捕獲粒子を同時に用いることができ、それぞれが捕獲することができる分子種に関して種々の特徴を有していることをも意図する。異なる型は、例えば蛍光色素により標識することができ、後に、例えば、フローサイトメトリーを用いて分離することができる。この方法は、複数の種の全体の抽出及び分離を単一工程で実施することを可能にする。
【0053】
本発明の更なる実施態様
【0054】
バイオマーカーの濃縮及び保存のためのナノ粒子技術
【0055】
低濃度及び保存の課題に対処するため、特定の実施態様においては、本発明は、血漿のようなタンパク質の複合混合物に加えた場合に、溶液中の選択したクラスのタンパク質を収集(蓄積する)「スマート」ナノ粒子を形成し、評価することを目的とする。送達可能な技術は、サイズ及び/又は親和性の両方に基づいて溶液中の分子を分類することができるユニークな構造を有する新規な多孔性収集粒子であろう。更に、粒子の空隙率は、捕獲した検体(例えば、タンパク質)を、後に分析のために遊離することができるように、熱的に修飾可能であり得る。更に、粒子中に捕獲されたタンパク質又は化学物質は、酵素又は微生物の増殖による分解から保護され得る。
【0056】
この提案された技術は、血液、尿及び組織中の少量のタンパク質及びペプチドを濃縮、分離及び保存する手段にのための要求に対処することができる。このような低濃度分子は、小さい疾患、障害の状態にに関する特定の情報を含むことが予想される。一実施態様においては、提案された技術は、収集管中に予め分配され得るスマート粒子からなる。いったん、ナノ粒子が体液又は組織可溶化液中に懸濁されると、例えば、溶液中で、粒子は自動的に(一工程で)アフィニティクロマトグラフィー及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーを実施する。従って、スマート粒子中に捕獲されたタンパク質及び他の代謝産物(バイオマーカーの候補)は、結合及び/又は隔離され、実質的な分解から保護される。スマート粒子集団のポアサイズ及び親和性を同調させることにより、非常に特異的なバイオマーカーのサブセットが捕獲され、入手した液体の全体の容量から濃縮することができる。これは、低分子量のプロテオミックバイオマーカーの室温での保存及び濃縮を可能にする。収集管の分析研究室への輸送に次ぎ、任意の分析技術を用いた特徴づけのために、結合/隔離バイオマーカーの積み荷を遊離することができるように、ナノ粒子を容易に分離することができる。他の方法においては、バイオマーカーはナノ粒子の破壊的処理によって接近することができる。
【0057】
この技術は低価格であり、継ぎ目のない収集及び血液バイオマーカーの即時の保存のための所定の臨床の場において適用可能である。これは、大規模研究の病院環境を越え、多くの患者が治療を受ける自由診療に非常に強く広がっている。均一の「スマート」の1ミクロンサイズのナノ粒子の大量生産が確実に可能であるが、大きいか小さい、他のサイズのものも可能であり、同様に適用可能である。後述するように、粒子は、血清のような分子の複合混合物に由来する標識された分子のサブセットを捕獲、蓄積及び精製することができる。
【0058】
バイオマーカー収集のためのスマート粒子選択の原理
熱応答性ポリマーゲルは、一般に、「スマートゲル」と呼ばれ、局所的な溶液温度、pH又は外部エネルギー適用の変化に応答して制御可能な、非線形な応答を示す(Saunders,et al.,1999 Advances in Colloid and Interface Science 80,1;Pelton,2000,Advances in Colloid and Interface Science 85,1)。このようなポリマーは、ゲル容量の変化をもたらす熱動力学的に有利な相分離を受ける架橋された鎖から構成される(Tanaka,et al.,1979,Phys.Rev.Lett.42,1556;Tanaka,et al.,1978,Phys.Rev.Lett.40,820)。ゲルは、容器の形状を示すために大量に合成され、又は直径4nm〜100μmの範囲の粒子中に合成することができる(Tanaka,et al.,1980,Phys.Rev. Lett.45,1636;Tanaka,et al.,1985,Phys.Rev.Lett.55,2455)。各ケースにおいて、材料の内部構造は、軟質で、多孔質構造を作製する柔軟な鎖から構成され、これは溶液の局所的な状態に従って可逆的に拡大または縮小され得る。「スマート」ポリマーの例は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(pNIPAm)であり、これは水中で31℃の低臨界溶液温度(LCST)を有する(Jones,2003,School of Chemistry and Biochemistry,Georgia Institute of Technology,Atlanta,GA,p.193)。この温度以下では、ポリマーマトリクスは、溶媒分子ともに膨張し、ここで、ポリマー骨格に沿って水とアミド基との間に水素結合が生じる(Jones,2003,School of Chemistry and Biochemistry,Georgia Institute of Technology,Atlanta,GA,p.193)。温度がLCSTを超えて上昇すると、水素結合が破壊され、水は内部マトリクスから排除され、一方、疎水性相互作用がイソプロピル基間で顕著になり始め、全体の容量の減少をもたらす。この技術は、同定のための生体マーカーを分離するために適用することができる。
【0059】
本発明の一態様は、捕獲粒子の分子ふるい部分を記載するが、他の態様は、検体結合(バイト捕獲)部分に関する。バイト捕獲及び分子ふるいを単一の粒子中に組み合わせることは可能である。タンパク質の複合混合物を分画する一般的な手段は、親和性及び分子の大きさに基づく2種の連続的なクロマトグラフィー工程を用いることである(Adkins,et al.,2002,Mol Cell Proteomics 1,947)。血漿のような複雑で非常に濃縮された混合物の分析は、通常、試料の希釈、並びにクロマトグラフィー及びゲル電気泳動の前の、アルブミンのような大量に含まれるタンパク質の除去から開始される。本明細書に開示されるスマート粒子技術は、クロマトグラフィー又は希釈を使用せずに分離工程の両方を達成する。より具体的には、付加される選択性は、バイオマーカーの制限された集団を結合/隔離する粒子中へのバイト分子の添加を介して可能にされる。例えば、アクリル酸(AAc)は、粒子中に組込まれ、同調可能な親和性樹脂として機能し得る。 例えば、低いpH(3.5)において、粒子内のAAcは、優先的にプロトン化され、そのpHで正の電荷を有する。より高いpH条件下で、AAc分子は、部分的又は優先的に脱プロトン化され、これは内因性の、正に帯電耐電したタンパク質についての電荷ベースの親和性エレメントを作製する。マイクロゲルにAAcを組み込むことにより、電荷特性及び粒子のポアサイズ両方が、血清のような複合混合物からタンパク質を二重に分画する手段を提供する。
【0060】
本発明の他の態様は、検体の隔離/結合による保存を扱い、それ故、室温において溶液中の検体(例えば、バイオマーカーの候補)を安定化することを可能にする。 これは、多孔質ナノ粒子内へのそれらの隔離により達成され得る。ナノ粒子内に隔離されたタンパク質又は分子は、液相分解酵素による接近に利用可能ではないと仮説が立てられる。このような酵素は、それらのより大きな大きさのために粒子の孔を浸透することができないかもしれない。
【0061】
さらに、バイオマーカー候補分子の親和性捕獲及び固定化は、酵素基質複合体が粒子中で機能的に形成し得ないようにバイオマーカー分子の3−D利用能を妨げるであろう。この概念は、沈降又は沈降固定によるタンパク質の安定化にある程度類似する。キャピラリー電気泳動及び質量分析配列決定を適用することで、本発明者らは、外因性セリン又はメタロプロテイナーゼにより誘導される分解を研究することができ、粒子中に捕獲されたタンパク質対溶液中に遊離するそれらの、断片化の速度を比較することができる。公知の、及び予め特徴付けられた、または予め標識されたタンパク質の所定の混合物から開始して、本発明者らはヒト血清及び血漿参考試中ののタンパク質の捕獲及び安定化を進行することができる。
【0062】
捕獲−粒子
特定の実施態様においては、本発明は、試料から分子種を分離及び捕獲するための、方法及び組成物を提供する。本発明の一実施態様においては、所定の分子サイズ、質量及び/又は親和性を有する分子種を特異的に捕獲する能力を有するスマート粒子は、様々な大きさを有する、種々の複数の分子種を典型的に含む試料から興味のある分子を単離するために用いられる。粒子は試料に添加され得、次いで、興味のある分子種を捕獲するために利用され得る。
【0063】
粒子は、以下の機能、すなわち:a)捕獲すべき分子のサイズ、質量、及び/又は親和性を選択する能力、及び/又はb)物理的又は化学的な処理に応じて所望の分子を捕獲及び/又は放出する能力の1種以上を有し得る。粒子は、この課題を微量中で達成し得、親和性カラム、逆相カラム、並びに他の標準的な精製試薬及び装置を利用する従来の多段階の手順についての必要性を排除する。更に、種々のクラスの捕獲−粒子を用いることができ、それぞれは、それらが捕獲し得る分子種に関して種々の特性を有し、従って複数の種の全体的な抽出プロフィールを単一工程において実施することを可能にする。
【0064】
本発明の一態様は、液相捕獲−粒子、及び試料から検体を単離することにおいて、それらを用いる方法を提供し、この方法は、1つ以上の以下を含む工程:検体を含む試料と液相捕獲−粒子とを、該捕獲−粒子が選択的に及び場合により可逆的に、所定の分子量または粒径の分析物を捕捉するのに効果的な条件下で、接触する工程を包含し、ここで前記捕獲−粒子は、所定の粒径又は分子量の検体を捕捉し得、場合により放出し得る分子ふるい材料を含む。本発明の他の態様は、以下により詳細に記載されるように、不可逆的に検体を捕捉する特定の捕獲−粒子を用いる。
【0065】
血液、血液成分、脳脊髄液、リンパ液、細胞可溶化液、組織可溶化液、大便、尿、リンパ液、腹水、精液のような体液;土壌試料又は抽出物、海、池又は川の水のような環境試料;給水塔及び飲用水試料;化学合成反応に由来する試料;食品試料;食品加工試料(例えば、鶏肉処理工場由来の)等を含む、あらゆる試料を、制限なく用いることができる。例えば、方法は、食品、飲用水及び環境試料中の汚染を検出するために用いることができる。
【0066】
検体
「検体」なる用語は、興味のある任意の分子を意味し、有機分子、無機分子、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせが含まれる。検体には、分析物は、制限されないが、細胞表面から流れ、細胞から遊離する(例えば、エキソサイトーシス、溶解等により)代謝産物、分解産物、プロテアーゼ分解産物等が含まれるが、これらに限定されない。本発明の一態様においては、前記方法は、生物学的液体中の低分子量の分子、特に通常の糸球体(腎臓)ろ過により身 体から排除され、液体中で可溶性であり、浮遊するか、又はキャリアタンパク質と結合する分子(例えば、30,000ダルトン未満の分子)を捕捉することを利用し得る。一般に、本発明は、約60,000Da未満、約50,000Da未満、約40,000Da未満、約30,000Da未満、約20,000Da未満、約10,000Da未満、約8,000Da未満、約6,000Da未満、約4,000Da未満、約2,000Da未満、約 1,000Da未満を含むが、これらに限定されない、その検出が所望される興味のある任意の検体を捕獲するために用いることができ、それぞれ記載された範囲内の全ての個々の値を含む。
【0067】
体液に関して、本発明の捕獲−粒子は、外因性分子、すなわち、試料が得られた被験者の身体に導入された分子を検出するためにも用いることができる。外因性分子は、被験者に積極的又は受動的に導入され得る。外因性分子の具体例には、薬物、食品、タバコ、環境的産物、および汚染物質(例えば、殺虫剤、一酸化炭素等)、及び任意の経路を介して被験者に入る本質的に任意の分子が含まれる。外因性分子には、身体中で処理又は転換されるような、それらの代謝物、副生成物及び分解産物が含まれる。
【0068】
捕獲粒子は、生体内、生体外及び試験管内を含む任意の環境において用いることができる。例えば、粒子は、生体内又は生体外の情況において血液から毒素を除去するための手段としても用いることができる。例えば、粒子は、血液からクレアチニン及び尿素のような毒性の老廃物を除去するために用いることができ、従来の透析についての要件を置き換える。
【0069】
分子ふるい材料
本発明の捕獲−粒子は、分子ふるい材料(又は分子ふるい部分)から構成され得る。これにより、材料は、多孔質、格子状、蜂の巣状であるか、又は所定の分子の質量又は重量の、他の分子を排除しながらの通過を可能にする。分子ふるいの孔のサイズは、検体が捕獲−粒子を浸透し得るか否かの決定要因である。粒子は、それ自体、任意の適切な大きさ、例えば、それぞれ記載される範囲内の全ての個々の値を含む、約10μm未満、約10μm〜約1μm、約1μm〜約100nm、約1nm〜約100nm、約5nm〜と約50nm;約10nm〜約20nm;約10nm〜約1nmであり得る。
【0070】
分子ふるい材料中の孔は、所望されない分子の排除に必要な直径に対して、提供される方法に基づいて設計することができる。約2〜約20nm、1nm〜1μm、 1nm〜10nm、1nm〜50nm、10nm〜50nm、50nm〜100nm、10nm〜200nm、50nm〜500nm、1nm〜10nm、1nm〜5nm、および他の範囲の平均孔径が想定される。
【0071】
捕獲−粒子の任意の特徴は、いったん検体が分子ふるい材料に侵入すると、これを「捕捉する」能力である。捕捉することは、物理的又は化学的な処理に応じて収縮及び/又は膨張し得る分子ふるい材料を用いることにより達成することができる。例えば、材料は、化学的又は物理的処理に供される場合、検体を収縮又は縮小し、それにより検体を内部に捕捉する材料が用いられ得る。このような材料は、「スマート材料」とも呼ばれ、これは物理的又は化学的な処理に供することにより、形状及び大きさを変化する能力を有する。この特性を有する任意の材料が制限なく用いられ、例えば、ポリアクリルアミド及びその誘導体(例えば、Jones and Lyon,Macromolecules,36:1988−1993,2003;Jones and Lyon,Macromolecules,33:8310−8306,2000)及び他のN−アルキル置換アクリルアミド;ポリ(N−ビニルアルキルアミド);ポリ(メタクリル酸);ポリ(ベンジルグルタメート);ポリ(2−エチルアクリル酸);ポリ(4−ビニルピリジン);強誘電性液晶エラストマー;圧電性ポリマー;「スマート」ゲル、セラミクス、合金及びポリマーが含まれるが、これらに限定されない。例えば、Galaev et at.,Pages 835−849;Zentel;Pages 850−860;Harrison and Ounaies,Pages 860−873;in Encyclopedia of Smart Materials,Volumes 1−2,Edited by,Schwartz,Mel(C)2002 John Wiley & Sonsも参照されたい。捕獲−粒子は当該分野において知られるように、または上記の参考文献のいずれかにおいて記載されるように、日常的に製造することができる。
【0072】
本発明の一実施態様において、捕獲−粒子はポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)構成要素を何ら含まない。さらに、この実施態様における捕獲粒子はまた、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−アクリル酸)を排除する。
【0073】
分子ふるい材料の物理的又は化学的な処理
分子ふるい材料を収縮及び/又は膨張するために用いることができる物理的及び/又は化学的な処理は、熱、電気、磁気、超音波、圧力、放射、レーザー、浸透圧、pH、塩、酵素、酸化/還元、脱水/再水和、紫外線、照射、強い赤色光の処理を含み得る。
【0074】
分子ふるい材料は、可逆的又は不可逆的に収縮又は縮小し得る。例えば、捕獲−粒子は溶液中に配置され、ここでは検体が浸透され得、次いで検体を捕獲するために不可逆的に縮小し得る。このことは、目的が溶液から混入物を除去することである場合に有用であり得、捕獲された検体の性質を分析する、又は更に評価する必要がなく、従ってこれが膨張されることを要求しない。又は、不可逆的な捕獲−粒子は、粒子の完全性を破壊する超音波又は他の破壊的な力により分解され得る。
【0075】
一実施態様においては、捕獲−粒子は検体の捕獲及び/又は隔離を許容するために膨張及び収縮し得る。
【0076】
他の実施態様においては、捕獲−粒子は、検体の取り込みを増加又は減少し得る任意の有意な程度に膨張又は収縮しない。すなわち、粒子の容量が実質的に固定される。このような捕獲粒子の例としてはウイルスタンパク質、クラセリン、炭素ナノチューブ、又は以前に記載される膨張/収縮を許容しない種を含む粒子が含まれる。クラセリンに由来する多角形の構造の調製を説明する例は、本明細書中に参考として援用される、Jaarsveld ら、Biochemistry 1981、20、4129〜4135において開示されている。
【0077】
検体結合(親和性)部分
捕獲粒子は、選択的な検体結合のために表面タンパク質特性を含み得、及び/又はこのような結合特性を付与する部分の付着により改変され得る。
【0078】
捕獲−粒子は、更に、検体を結合する、親和性リガンド又は「バイト」を含み得る。このような用語は、興味のある検体を特異的に付着し得る物質を意味し得る。典型的な具体例には、抗体及びその誘導体(例えば、Fabフラグメント及び単鎖抗体);結合タンパク質(例えば、特異的なリガンドについての受容体又はそれらのフラグメント);結合対(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン);基質;金属;キレート剤;核酸;アプタマー;酵素結合ポケッ ト;レクチン;及び/又は興味のある検体に特異的な親和性基が含まれるが、これらに限定されない。「特異的」なる用語は、親和性リガンドが、試料中の興味のある検体に選択的に結合し、非標的検体からそれを区別するために用いることができる。これが背景ノイズ(「非特異的結合」)を上回る検体を検出するために用いることができるという意味において、これは特異的である。親和性リガンドは、これが、試料中の他の成分よりも、興味のある検体について高い親和性を有するように選択することができ、検体について、任意のネイティブな結合タンパク質と競合しないことを可能にする。
【0079】
親和性リガンドは、任意の適切な方法において、捕獲−粒子と会合され得る。例えば、それらは、その周りで捕獲−粒子を形成するために分子ふるい材料が重層又は蒸着/核形成され得る核として用いられ;それらは、粒子を形成する前に分子ふるい材料に直接的に取り込まれ得(すなわち、ここではリガンドは、分子ふるい材料の成分である);それらは分子ふるい材料の孔表面に通常結合され得る(共有結合的に又は非共有結合的に);等である。親和性リガンドはまた、リガンドを収容するのに十分大きい孔隙率を達成するために適切な物理的又は化学的な処理を介して分子ふるい材料を膨張させ、次いでこれが粒子中に侵入するのに有効な条件下で分子ふるい材料とリガンドとを接触させることにより、捕獲粒子中に負荷され得る。粒子が、いったん親和性リガンドとともに負荷されると、これは、適切な物理的又は化学的な処理により縮小し得、それにより分子ふるい材料の空隙率を減少し、そのため標的検体はなお粒子に浸透し得るが、より大きな検体は排除される。分子ふるいの空隙率は、親和性リガンド負荷工程の後に、親和性リガンドの分散をブロックするのに十分に小さいポアサイズに減少され得、親和性リガンドを分子ふるい材料に連結することを不要にする。しかし、所望であれば、結合プロセスが、これを分子ふるい材料に連結するために用いられれ得る。
【0080】
親和性リガンドで誘引された捕獲−粒子は、検体の大きさ又は質量についての選択に加えて、検体選択工程を提供する。例えば、捕獲−粒子は、検体がその中に浸透することを可能にするために膨張することができ、次いで検体、更に捕獲−粒子と会合される親和性リガンドに特異的に結合するその能力により選択され得る。結合工程が達成された後(例えば、平衡が達成された後)、粒子は、分離され、未結合の非標的検体を除去するための洗浄工程に供され、次いで必要に応じて化学的又は物理的な処理により縮小する。
【0081】
捕獲−粒子は、更に親和性部分として抗体をも含み得る。他の親和性部分の候補としては、可溶性受容体、ポリアミン類似体、アンチセンスオリゴヌクレオ チド、RNAiポリヌクレオチド、リボザイム等が含まれるが、これらに限定されない。抗体及び可溶性受容体は、それらが興味のある検体を標的とする親和性の部分として特に興味深い。
【0082】
抗体
親和性部分には、抗体と、検体と特異的に結合するそれらの機能的等価物とが含まれる。「免疫グロブリン」及び「抗体」は、交換可能に、及びそれらの最も広い意味において、本明細書中で用いられる。従って、それらは、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2個の無傷の抗体から構成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを、それらが所望の生物学的活性を示す限り包含する。
【0083】
抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域は、同種抗体の特定のエピトープを認識するか、又はそれに結合する。「エピトープ」なる用語は、免疫グロブリンの可変領域と結合する抗原上の特異的な結合部位又は抗原決定基を意味するとして用いられる。エピトープは、線状、すなわち、アミノ酸残基の配列、免疫グロブリンが 3−D構造を認識するような配座、又はそれらの組み合わせから構成され得る。
【0084】
モノクローナル及びポリクローナル抗体
本発明の免疫グロブリンは、ポリクローナル又はモノクローナルであり得、当該技術分野において周知の任意の方法により生成することができる
【0085】
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)、腹腔内(ip)又は筋肉内(im)注射により動物に若起される。免疫される種において免疫原性であるタンパク質に関連の抗原を結合させることは有用であり得る。さらに、ミョウバンのような凝集剤が、免疫応答を増強するために適切に使用される。
【0086】
「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に相同的な抗体の集団から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向される。更に、異なる決定基に対して指向される異なる抗体を、典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、 抗原上の単一の決定基に対して指向される。
【0087】
それらの特異性に加え、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンにより汚染されていながら、合成され得るという点において有利である。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法により、または組換えDNA法により生成することができる。モノクローナル抗体はまた、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0088】
抗体フラグメント
「抗体フラグメント」は、無傷の抗体の部分、好ましくはその抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体フラグメントの具体例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、二重特異性抗体、線状抗体、単鎖抗体分子、及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0089】
種々の技術が、抗体フラグメントの生成のために開発されている。伝統的に、これらのフラグメントは無傷の抗体のタンパク質分解を介して得られる。当該技術分野において周知の2種の分解方法には、パパイン消化及びペプシン処理が含まれる。抗体フラグメントは現在では、更に組換え宿主細胞により直接的に生成することができる。
【0090】
二重特異性抗体
本発明の二重特異性抗体は、2種の抗原結合部位を伴う小さな抗体フラグメントである。各フラグメントは、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメインに連結された重鎖可変ドメインを含む。短かすぎて同じ鎖上の2個のドメイン間での対を形成しないリンカーを用いることにより、ドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対合することを余儀なくされ、2個の抗原結合部位を作製する。
【0091】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野において周知である。完全長の二重特異性抗体の伝統的な生成は、2個の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、ここでは2個の鎖は異なる特異性を有している。しかし、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して生成することもできる。
【0092】
捕獲−粒子は、更に、検出可能な標識を含んでもよい。「検出可能な標識」なる用語は、、任意の手段により検出することができる任意の部分又は物質を意味する。これらには、量子ドット、蛍光標識、酵素、磁性粒子等が含まれる。検出可能な標識は、捕獲−粒子の任意の領域と会合することができ、その孔及び外部表面を包含する。検出可能な標識は、多くの方法において有用であり、異なるクラスの捕獲−粒子を分別するための方法を包含する。例えば、種々のクラスの捕獲−粒子を生成することができ、ここでは各クラスは異なる特性を有し(例えば、種々のポアサイズ及び/又は種々の親和性リガンド)、それぞれは、各クラスの粒子と会合される、種々の検出可能な標識を有する。これは、粒子のクラスの特性(例えば、特異的な抗原に結合し得る)が、それが保持する検出可能な標識を決定することにより同定されることを可能にする。例えば、PSAについての単鎖抗体を伴う粒子は、FITCで標識することができ、[アルファ]−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)に対する抗体を含む粒子は、TRITCで標識することができる。捕捉工程を実施した後、粒子は、蛍光活性化セルソーティングを用いて、フローサイトメトリーにより分別され、AMACRを含有する粒子からHAを含有する粒子を分離することができる。
【0093】
精製法
本発明の捕獲粒子は、試料から、興味のある検体を単離するための精製プロトコルにおいて用いられ得る。上述したように、捕獲粒子は、大きさ及び親和性に基づく検体の精製を可能にし、本発明は、興味のある検体を保存及び研究するために、試料からの興味のある検体の迅速な単離を可能にする。これらの検体は、試料中の酵素又は他の分子からの分解を防止するために、捕獲粒子中に保存される。
【0094】
診断法
本発明はまた、所定の分子量、粒径、又は所定の親和性の検体を、捕獲−粒子が選択的に結合するために有効な条件下で、検体を含む試料と、液相捕獲−粒子とを接触させ、次いで捕獲粒子に選択的に結合される検体を同定することにより、疾患を診断する方法を包含する。同定された濃度における試料中の検体の存在は、病状の特徴である。検体の存在を検出することは、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、質量分析法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、マイクロアレイ法、免疫蛍光法、ノーザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及びインサイチュハイブリダイゼーションのような当業者に周知の方法を用いて実施することができた。
【0095】
キット
特定のキットの実施態様においては、捕獲粒子は、精製又は診断の方法における使用に適切な形態において提供される。キットは一般に、捕獲粒子、並びに説明書、及び精製または診断方法を実施するために必要な物質を提供する。これらのキットは、試料を保存する医療機関における医師による、又は血清検体の精製および単離を開始するその他の人による使用について想定されている。
【0096】
上記で引用された全ての刊行物の開示は、それぞれが個々に参照として組み入れられるのと同じ程度に、それらの全体が本明細書中に参照として明らかに組み入れられる。
【0097】
ある実施態様においては、捕獲−粒子は分子ふるい部分及び検体結合部分を含み、ここで分子ふるい部分、検体結合部分、又はその両方は、改変された空隙率を有する架橋された領域を更に含む。
【0098】
ある実施態様においては、捕獲粒子は、分子ふるい部分及び検体結合部分を含み、ここで分子ふるい部分、検体結合部分、又はその両方は、約60kDaよりも大きな分子を排除するのに十分な孔の寸法を含む。
【0099】
一実施態様においては、前記検体結合部分は、検体を化学的又は静電的に結合又は隔離することができる少なくとも1種のタイプの部分を含む。従って、検体は捕獲−粒子内の領域に効果的に保持される。検体と検体結合領域との間の力は、共有結合、ファンデルワールス力、疎水性−疎水性、水素結合、親水性の引力、イオン性の引力、又はそれらの任意の組み合わせの力であり得る。
【0100】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、その間の全ての個々の値を伴う約2〜約20ナノメートルのポアサイズを含む。
【0101】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、その範囲内の全ての個々の値を含む、約100nm未満のポアサイズを含む。
【0102】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、約60kDaよりも大きい大きさを有する分子を排除するようにされたポアサイズを含む。
【0103】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、アルブミンを排除するようにされたポアサイズを含む。
【0104】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、アルブミン、約60kDaよりも大きな大きさを有する分子を排除しながら、1404Daの大きさの分子の浸透を可能にするのに十分な大きさにされた孔を含む。
【0105】
前記、及び図面中に引用された全ての出願、特許及び出版物は、全体として参照として本明細書に組み入れられる。本発明の特定の実施態様は、以下の非限定的実施例において説明される。請求項に記載された本発明の範囲及び精神の範囲内である、本明細書に明確に示されていない他の実施態様があることは当業者に明らかであろう。
【0106】
本明細書中に記載される実施例は、本発明の具体例であり、それらに限定されることは意図されない。本発明の種々の実施態様が、本発明に従って記載されてきた。多くの修飾及び変化が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載及び明される技術に対してなされ得る。従って、実施例は単に実例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0107】
実施例1−N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)を組み込んだ捕獲粒子
界面活性剤を含まない沈殿重合により、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)を組み込んだ捕獲粒子を生成した。BISは架橋剤として用いられ、BIS:NIPAmのモノマー比は、得られるネットワーク密度、従って平均孔径を決定する。更に、(AAc)を含む粒子の製造は、電荷ベースの親和性バイトを取り込むために製造された。
【0108】
N−イソプロピルアクリルアミド(NIP Am)及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)、過硫酸アンモニウム(APS)、アクリル酸(AAc)は、MO,St.Louis,Sigma−Aldricから購入した。反応、洗浄及び負荷のための水は、Millipore Milli−Q水精製系で、18MΩの耐性に精製され得、0.2μmフィルターを通過される。
【0109】
全モノマー濃度(NIPAm及びBIS)は0.3Mである。粒子は、重合化の間、種々の量の架橋剤を用いて製造され、粒子の孔の大きさを代えるために 2%及び5%の総濃度の架橋剤を含む。モノマーを、コンデンサー及び温度計を備えた、250mLの三つ口の丸底フラスコの内部で、中程度の攪拌速度(磁気攪拌子)にて190mLの水中に十分に溶解した。溶液を、窒素流れの下で70℃で1時間加熱した。安定な最大攪拌速度に達した時、1.0mLの6mM APS溶液を用いて重合を開始した。窒素雰囲気下、反応を3時間継続させた。一晩、室温まで冷却した後、ミクロゲル溶液の0.5mLの一定量と、個々の1.5mL容量の遠心チューブ中にいれ、1.0mLの水で希釈した。次いで、Eppendorf 541 SRを用いて、16,100rcf、23℃で20分間遠心分離した。
【0110】
上清を他の容器に移し、ミクロゲルを、1.5mLの容量まで再懸濁させた。遠心分離/再懸濁工程を合計5回、処理を繰り返した。光子相関分光法(PCS submicron particles analyzer,Beckman Coulter)、原子間力顕微鏡(AFM)、光学顕微鏡、並びに蛍光顕微鏡による可視化による蛍光色素の取り込みを用いて、均一性及び大きさの範囲を評価した。フローサイトメトリーも、市販の蛍光標識された識別粒子の、標準としての使用を介して、相対的な大きさが割り当てられることを可能にした。
【0111】
粒子の分子排除特性を調べるめに、2%濃度の架橋剤を用いて製造した粒子を、5種の分子種:FITC(MW389)、小さいペプチドアンジオテンシンIIと結合した蛍光色素(MW1404)、インシュリンと結合したFITC(MW3500)、ストレプトアビジン(MW53000)及びアルブミン(MW66000)とインキュベートした。5種の分子の溶液中分離を実施した。5種の蛍光分子のそれぞれについて、0.1mLの精製ミクロゲルを、1.5mLの遠心チューブ中に入れた。このため、0.1mLの分子溶液を加え、ボルテックスで穏やかに混合した。粒子による蛍光色素の取り込みを、FACScan(Becton Dickinson)を用いて測定した。実験を、異なるインキュベーション時間、異なる蛍光色素分子の濃度において実施した。これらの実験は、早ければ10分以内に、小さいFITC分子が容易に粒子内に移動し、応答は濃度依存的であることを示した。蛍光標識したペプチドも粒子中に移動するが、FITCと比べるとシグナルシフトは非常に弱く、これは、粒子がサイズ介在性の選択性を有することを示す。FITC及び蛍光色素標識ペプチドの両方について、内面化のレベルは、5%架橋剤の集団よりも2%架橋剤の粒子集団が高かった。これは、高度に架橋した粒子集団の中で、より小さいナノポアサイズと一致しており、これは、ペプチドの内面化をより困難にするであろう。2%及び5%の両方の集団において、アルブミンは排除されていた。蛍光シグナル中におけるシフトがないので、ストレプトアビジン及びBSAは粒子から排除されていた。FITC標識したインシュリンは、水溶液、及びヒト血清中に混合し、その両者で調査した。血清とインキュベートした粒子は、蛍光シグナル中でシフトし、これは、複合生体液からインシュリンが収集されたことを証明する。FITC標識したインシュリンの水溶液とインキュベートした粒子は、血清と比べ、非常に強い蛍光シフトを生じた。
【0112】
2%濃度の架橋剤を用いた粒子についてSDS PAGE実験を実施し、インシュリン(MW3500)及びミオグロビン(MW17000)の取り込み、 BSA(MW66000)の排除を示した。アクリル酸官能化粒子を20mMミオグロビン溶液とインキュベートし、溶液中の全てのタンパク質を捕獲し、単純な粒子と比べた場合に、より高い取り込みを示した。
【0113】
実施例2−粒子の電子伝達
2%架橋剤を有する粒子とインキュベートした血清を、5mm長の30%アクリルアミド/ビスゲルスライスを前もって重合化した、centrilutor micro−electroeluter (Millipore)の試験管内に負荷した。電場を形成した場合、粒子が、そのタンパク質含有量を損失することなく、ゲルスライスを通って正電極へ向かって移動した。
【0114】
実施例3−ヒドロゲル粒子
溶液中で一工程で直接的に血清中の低分子量タンパク質の分配、アフィニティー分離、濃縮及び安定化を実施するためのヒドロゲル粒子の能力を、バイオマーカー分離及び分析に由来する血液のための新規な迅速な方法として分析した。定義によれば、ヒドロゲルは、大量の水を吸収することのできる三次元架橋ポリマーネットワークである(Pelton,R.Adv Colloid Interface Sci 2000,85,(1),1−33)。それらは、通常、架橋剤の存在下、通常、少なくとも2種の重合可能な官能基を有するモノマーであるモノマーの重合により製造される。ゲルは、非応答性(単純なポリマーネットワークは、水にさらされることにより劇的に膨潤する)又は応答性ゲル(追加の機能性を有し、溶媒中で温度(Li and Tanaka,The Journal of Chemical Physics 1990,92,(2),1365−1371)、pH(Jones and Lyon,Macromolecules 2000,33,(22),8301−8306;Moselhy et al.,Journal of Biomaterials Science,Polymer Edition 2000,11,(2),123−147)、イオン強度(Duracher et al.,Colloid & Polymer Science 1998,276,(3),219−231;Duracher et al.,Colloid & Polymer Science 1998,276,(10),920−929)、光(Sershen et al.,Temperature−sensitive polymer−nanoshell composites for photothermally modulated drug delivery,In 2000;Vol.51,pp293−298;Suzuki and Tanaka,Nature 1990, 346,(6282),345−347)及び電場(Tanaka et al.,Science,1982,218,467−9)のような特定の刺激に対する応答において変化を示す)に分類することができる。
【0115】
ポリ(N−アルキルアクリルアミド)は、その熱反応性が広範に研究されてきており(Pelton,R.Adv Colloid Interface Sci 2000,85,(1),1−33;Inomata et al.,Macromolecules,1990,23,4887−8)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(NIPAm)が、この群中で最も強い温度感受性を示すヒドロゲルである。粒子を含むNIPAmは、粒子中で物理的−化学的修飾を生じる容易さについての、その安定性、均一性及び多様性のために、潜在的な生物工学的応用について非常に興味がそそられる。NIPAm粒子は、溶質脱離(Kawaguchi et al.,Colloid & Polymer Science 1992,270,(1),53−57;Achiha et al.,Polym.Adv.Technol,1995,6,(7),534−540;Delair et al.,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects 1999,153,(1−3),341−353;Mattiasson et al.,Nat.Protocols 2007,2,(1),213−220;Sparnacci et al.,J Biomater Sci Polym Ed 2005,16,(12),1557−74;Haruyuki Hiratani,Macromolecular Bioscience 2005,5,(8),728−733;Nahar et al.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 2006,23,(4),259−318;Wu et al.,Journal of Controlled Release 2005,102,(2),361−372;Zhang et al.,Biomaterials 2005,26,(16),3299−309;Woo et al.,Pharm Res 2001,18,(11),1600−6;Basinska,Macromol Biosci2005,5,(12),1145−68)、細胞との相互作用(Achiha et al.,Polym.Adv.Technol,1995,6,(7),534−540)、及びハイブリダイゼーションのための固相としてのオリゴデオキシリボヌクレオチド(OND)との結合(Delair et al.,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects 1999,153,(1−3),341−353)のために、遅延した放出及び標的として放出の薬剤送達のために研究されてきた。大きさ及び空隙率は温度により調整することができるので、化学物質の取り込み及び放出を調製するための温度処理の使用は、薬物放出の制御のための媒体としての最も広範に特徴づけられたNIPAm粒子の応用の1つである(Sparnacci et al.,J Biomater Sci Polym Ed 2005,16,(12),1557−74;Haruyuki Hiratani,Macromolecular Bioscience 2005,5,(8),728−733;Nahar et al.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 2006,23,(4),259−318;Wu et al.,Journal of Controlled Release 2005,102,(2),361−372;Zhang et al.,Biomaterials 2005,26,(16),3299−309;Woo et al.,Pharm Res 2001,18,(11),1600−6;Basinska,Macromol Biosci 2005,5,(12),1145−68)。
【0116】
本研究においては、親和性バイト及び所定の空隙率を有するヒドロゲル粒子が開発され、a)血清タンパク質、ペプチド及び代謝産物の低分子量画分の迅速かつ一工程隔離、b)溶液からの標的分子の除去及び濃縮、及びc)酵素分解からの捕獲タンパク質の保護を示した。
【0117】
その高い水分含有量、同調可能な空隙率、合成に続く一貫性及び均一性、凍結乾燥に続く機能的再構成のため、NIPAmをベースとする粒子が選択される。架橋剤の割合及び温度を代えることにより、粒径及び有効空隙率を制御することが可能である。本明細書で研究された応用についての著しい利点は、そのオープン構造、高い水分含有量、ポリマー中で置換し得る二重の疎水性及び親水性化学的部分、並びに大きい表面積のために、分子を迅速に取り込む、これらの粒子の能力である。これは、溶液中の不安定な低分子量タンパク質の迅速な収集及びタンパク質の分解からの保護という目的のための重大な要求である。NIPAmの小さいサイズ、粒子径の均一性及びバッチ毎の再現性は、フローサイトメトリーにおける応用について特別な利益をもたらす。
【0118】
実施例4−ヒドロゲル粒子の合成及び特徴づけ
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)を製造し、分子ふるい特性について評価した。NIPAm及びアクリル酸(AAc)をいずれも含む第二の粒子クラス、NIPAm/AAcを製造し、図1に示すように、電荷に基づいた親和性バイトを粒子中に導入した(Pelton,Adv Colloid Interface Sci 2000,85,(1),1−33;Jones and Lyon,Macromolecules 2000,33,(22),8301−8306;Saunders and Vincent,Advances in Colloid and Interface Science 1999,80,(1),1−25)。
【0119】
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)粒子を得るため、NIPAm(1.4g)及びBIS(0.04g)を150mLの水に溶解し、メンブランフィルター(Pall Gelman Metricel)を通し、2回ろ過した。溶液を減圧下で少なくとも20分間脱気した。次いで、SDS(0.057g)をモノマー溶液に溶解し、再度ろ過した。ろ過の間、40mLの水を用いて移動及び線上した。溶液を、中程度の速度で攪拌しながら(Coning磁気攪拌子)、コンデンサー及び温度計を備えた250mLの3ツ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、溶液を70℃で1時間加熱した。安定した最大攪拌速度に到達し、10mLの脱気水に溶解したAPS(0.069g)を加えることにより重合を開始した。窒素雰囲気下、反応を70℃の温度で続行した。NIPAm/アクリル酸(AAc)粒子を、上記NIPAm粒子と同じ反応条件を用いて製造した。NIPAm(1.3g)、BIS(0.10g)及びAAc(0.072g)を150mLの水に溶解することにより初期モノマー溶液を得た。頻繁に交換する攪拌した水に対し、4℃で2週間、透析(Spectra/Por 7 dialysis membranes,MWCO 10,000,VWR)することにより全ての粒子を精製した。
【0120】
実施例5−温度及びpHに依存する粒径
温度及びpHに依存する粒径を、Photon Correlation Spectroscopy(PCS,Submicron Particle Size Analyzer,Beckman Coulter)により測定した。200秒積分時間を用いた3回の測定について平均値を計算し、各測定前に10分間、溶液を熱的に平衡化した。次いで、測定した値を、ストークス−アインシュタインの関係により粒径に変換した(Pecora,Dynamic Light Scattering:Applications of Photo Correlation Spectroscopy.Springer:1985;p436)。温度の上昇に従い、NIPAmの粒径は小さくなり(図2A)、これは熱反応性ヒドロゲルの独特の特性である(Sparnacci et al.,J Biomater Sci Polym Ed 2005,16,(12),1557−74;Haruyuki Hiratani,Macromolecular Bioscience 2005,5,(8),728−733;Nahar et al.,Crit Rev TherDrug Carrier Syst 2006,23,(4),259−318;Wu et al.,Journal of Controlled Release 2005,102,(2),361−372;Zhang et al.,Biomaterials 2005,26,(16),3299−309;Woo et al.,Pharm Res 2001,18,(11),1600−6)。NIPAm/AAc粒子は、粒径に関して同じ温度依存性を示したが、それらはpH依存挙動をも示した(図2B)。低いpH(3.5)においては、AAc基はプロトン化され、温度依存性のNIPAm/AAcの粒径は、誘導体化されていない粒子と同じである。より高いpH(4.5及び6.5)においては、AAc基は部分的にプロトン化され、粒子中の対イオン侵入により得られるポリマー鎖及び浸透圧の間のクーロン力相互作用のために平均粒径が大きくなっていると思われる(Fernandez−Nieves et al.,Macromolecules 2000,33,2114−2118;Ito et al.,Langmuir 1999,15,(12),4289−4294)。
【0121】
NSCRIPTOR(登録商標)DPN(登録商標)System(Nanolnk)を用いて、原子間力顕微鏡(AFM)により粒子を更に特徴づけた。300kHzの共振周波数及び10nmより小さい半径でシリコンチップを用いてACモードで画像を得た。1%w/vの粒子の一定量(50μL)を新たに開裂した雲母の上に蒸着し;試料を、室温で湿気の多い条件に10分間インキュベートし、蒸着を可能にし、次いで窒素フローの下で乾燥させた。これらの粒子のAFM画像(図2C及び2D)は、それらがサイズにおいて一様であり、粒子の直径が光散乱で測定したものと一致していることを示す。
【0122】
実施例6−ヒドロゲル粒子による分子ふるい
図3に概略的に示したように、溶液中で、NIPAm粒子を分子ふるい特性について試験し;ペプチドームがバイオマーカー源を豊富に含むと考えられるので(Tirumalai et al.,Molecular & cellular proteomics 2003,2,(10),1096−103;Merrell et al.,Journal of biomolecular techniques 2004,15,(4),238−48;Orvisky et al.,Proteomics 2006,6,(9),2895−902)、目的は、タンパク質及び20,000Da未満の分子量を有する低分子化合物を捕獲する粒子を作成することである。
【0123】
このサイズ範囲は、2−Dゲル電気泳動又はカラムクロマトグラフィーを用いて適切な生産量を伴う複合タンパク質混合物(例えば血清又は血漿)から分離することが困難であるか、もしそうでないなら不可能である、有益なタンパク質、ペプチド及び代謝産物を含む。粒子中の架橋の程度は、粒子のカットオフポアサイズよりも小さいサイズの分子を捕獲している間に、アルブミン及び他の大量にある分子の排除を可能にする。効果的な20,000Daの排除ポアサイズを示すものが確認されるまで、種々の架橋の程度を有する粒子を調査した。更に、粒子を、粒子をそのふるい効率を評価するために調査した。血清アルブミンは、興味のあるタンパク質及びペプチドと比べ大量に(106〜109倍)存在するので、アルブミン排除の効果及び完全性を調べる必要がある。
【0124】
2種の独立した方法:フローサイトメトリー及びゲル電気泳動を用いて、分子ふるい特性を測定した。
一定量のNIPAm粒子(50μL,10mg/mL)を、標的分子種とインキュベートし、粒子を収集した(7分、25℃、16,100rcf)。上清を除去し、粒子を1mLの水に再懸濁した。遠心分離及び洗浄を3回繰り返し、粒子の蛍光強度を、FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson)を用いて測定した。未処理の粒子のバックグラウンド蛍光シグナルを、全ての測定の基準として用いた。フルオレセインイソチオシアネート(FITC、MW 389Da)を、小さい分子の取り込み、並びにインキュベーション時間及び濃度における取り込みの依存を試験するためのモデルとして用いた。種々の濃度(5μM、20μM及び100μM)のFITCとインキュベートした粒子は、飽和に向かって濃度依存的取り込み速度を示した(図4A)。経時変化試験は、FITCの取り込みが10%v/v粒子濃度において急速に起こることを示した(図4B)。
【0125】
図5A及び5Bに示すように、FITC−BSA(MW66,000Da)とインキュベートした粒子は、粒子のバックグラウンドの蛍光と比較し、蛍光シグナルにおいて検出可能なシフトを示さず、これは、検出可能なBSAの取り込みがないか、粒子による特異的結合がないことを示す。一方、FITC−インシュリン(MW3,500Da)とのインキュベーションは、コントロールと比較し、蛍光において右方移動をもたらし、粒子によるインシュリンの取り込みが裏付けられた。FITC単独(MW389Da)、多くの代謝産物の粒径範囲における分子、及びFITC−ミオグロビン(MW17,000Da)、粒子の効果的なサイズカットオフより小さい他のタンパク質は、いずれも急速に捕獲された。
【0126】
これらの研究結果は、SDS−PAGE分析により確認された。タンパク質溶液とのインキュベーション及び洗浄後に、粒子を直接ゲルに積層した。インシュリン(図5C)及びミオグロビン(図5D)は粒子により捕捉されたが、BSAは全体的に排除された(図5FD)。
【0127】
実施例7−分子ふるい粒子への帯電したバイトの取り込みは、取り込みを有意に増進する
粒子中に捕獲されたタンパク質の濃度は、タンパク質の排出速度、及び粒子の侵入速度及びバルク溶液中の標的タンパク質濃度の間の平衡に依存依存するので、不活性の分子ふるいは、溶液中の全ての標的タンパク質を直接的に収集及び濃縮するこができない。その結果、標的タンパク質の収集を容易にし、捕獲したタンパク質が粒子から排出されるのを防止するために親和性バイトを取り込んだ粒子が構成された。
【0128】
正の正味電荷を有するタンパク質及び分子のためのバイトとして負に帯電する部分が選択された。粒子内への負に帯電したバイトの取り込みは、粒子が正に帯電したタンパク質、ペプチド及び他の生体分子を優先的に隔離及び濃縮することを可能にする。従って、粒子は、3.5よりも大きいpH値において大きい負の正味電荷を有する、NIPAm/AAcコポリマーをベースにして製造された。図6に概略的に示したように、原則として、帯電したバイトの存在は、Keqを十分に向上させ、その結果、粒子外部の溶液と比べ、粒子内部における標的タンパク質の著しく高い濃縮を達成する。
【0129】
図7Aに示すように、NIPAm/AAc粒子は、所望でないNIPAm粒子と比較し、十分に効率よく溶液から検体を濃縮した。NIPAm及びNIPAm/AAc粒子の懸濁液(10mg/mL)を、ミオグロビン(MW17,000Da,水中で20μM)と1時間インキュベートした。NIPAm粒子とのインキュベーションに次ぎ、有意なレベルのミオグロビンがバルク溶液中に残存し、多少のタンパク質が粒子に結合しており、アニオン性親和性バイトを欠如していた(図7A)。アニオン性親和性バイトを含むNIPAm/AAc粒子とのインキュベーション後、全てのミオグロビンはNIPAm/AAc粒子に捕獲され、バルク溶液には検出可能なミオグロビンは残存していなかった。NIPAm/AAc粒子の連続希釈についてのミオグロビンのバンドの強度NPIAm粒子の強度と関連させることは、NIPAm/AAc粒子が、親和性バイトを欠如する粒子と比較し、128倍優れた効率でミオグロビンを隔離することを示す。
【0130】
NIPAm/AAc粒子に関連する優れたタンパク質取り込みが実施されることを証明するため、pH5.5又はpH8のいずれかまで滴定したリン酸バッファー中、ミオグロビン(20μM)及びBSA(20μM)を含む溶液の一定量を、NIPAm/AAc粒子とインキュベートした(図7B)。遠心分離により粒子を分離し、MilliQ水で3回洗浄した。pH5.5で、ミオグロビン(pI7)は正に帯電していると予想され、タンパク質とNIPAm/AAc粒子の負に帯電したカルボキシル基との間の静電相互作用は魅力的である。しかし、pH8においては、ミオグロビンは負に帯電し、アニオン性粒子とのあらゆる静電相互作用は、実際に反発的である。これらの予想に一致し、ミオグロビンは、タンパク質及び粒子が反対の正味電荷を有するpH5.5でNIPAm/AAc粒子により効果的に隔離され、pH8においては、ミオグロビンとインキュベートしたミオグロビンが粒子中に検出されなかった(図7B)。
【0131】
約20,000Daより小さいMWを有するタンパク質及びペプチドを結合及び濃縮するためのNIPAm/AAc親和性粒子の効果を図8Aに示す。NIPAm/AAc及びNIPAm粒子を、Tris(pH7,50mM)中で、それぞれライソザイム(20μM)及びBSA(20μM)と1時間インキュベートした。次いで、粒子を1mL容量の水で洗浄し、捕獲されたタンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。
【0132】
NIPAm/AAc粒子は、溶液中に存在する全てのライソザイムを捕獲すると思われるが、BSAが粒子によって非特異的に結合することは示されなかった。ミオグロビンで観察されたように、親和性バイトを欠如するNIPAmは、ライソザイムを有意に濃縮するとは思われなかった。
【0133】
タンパク質分子量マーカーの溶液を、粒子により隔離されるタンパク質の分子量カットオフ(MWCO)を更に評価するために用いた(図8B)。溶液は、以下のタンパク質:Tris(pH7,50mM)に溶解したアプロチニン(MW6,500Da,Sigma− Aldrich)、ライソザイム(MW14,400Da,Sigma−Aldrich)、トリプシン阻害剤(MW21,500Da,Invitrogen)、炭酸脱水酵素(MW31,000Da,Sigma−Aldrich)、オブアルブミン(MW45,000Da,Sigma−Aldrich)及びBSA(MW66,000Da,Fisher Scientific)のそれぞれ0.5mg/mLで構成される。タンパク質溶液とインキュベートした、NIPAm/AAcを含む粒子が、21,500Da未満のMWを有するタンパク質分子を捕獲及び濃縮し、21,500Da以上のMWを有するあらゆるタンパク質を結合しないことがわかった。NIPAm粒子は、14,400Da以下のMWを有する、同じMWCOを示すか、14,000Da以上のMWのタンパク質を結合しない。NIPAm/AAc及びNIPAm粒子を用いて達成されたMWCO分解能は、標準的分子ふるいクロマトグラフィー41と関連づけられたものと好都合に比較され、又はそれを越える。ビーズの分子ふるい特性を更に測定するため、NIPAm/AAc粒子を、Tris(100mM,pH7)中、血小板由来成長因子B(0.003mg/mL,14,5000Da、Cell Signaling)及びBSA(0.067mg/mL)とインキュベートした。洗浄工程は上述したのと同様であった。図9におけるSDS PAGEは、完全なPDGFの取り込み及びBSAの排除を示した。PDGFは、血中に存在する少量の低分子量タンパク質の代表的モデルであり、血中のPDGF−B濃度は3.3ng/mLである(Eppley et al.,Plastic and reconstructive surgery 2004,114,(6),1502−842)。
【0134】
溶液の温度が変わった場合に粒径の劇的な変化が起こるので、MWCOにおける温度の影響を調べた。前記分子量マーカーの溶液を、25、37及び45℃でNIPAm/AAc粒子とインキュベートし、温度はMWCOに影響を及ぼさない因子であった(データは示さず)。
【0135】
実施例8−血清からの隔離
次いで、前記結果に基づき、血清のような複合溶液中に混合されている小さい分子を捕獲するための粒子の性能を現実の世界のバイオマーカーの発見及びタイプの実験の解析を模倣するための試験を行った。血清で1:10に希釈した、FITC標識したインシュリンの一定量(最終濃度40μM)を、NIPAm及びNIPAm/AAc粒子とインキュベートした。フローサイトメトリー分析は、FITC−インシュリンを含む血清中でインキュベートしたNIPAm粒子が、コントロール粒子及び血清のみでインキュベートした粒子に比べ、蛍光強度において右方移動することを示した(図10A)。
【0136】
この結果は、血清のような複合マトリクスからインシュリンを捕獲する、NIPAm粒子の性能を証明した。しかし、インシュリンのみを含む簡単な水溶液とインキュベートしたNIPAm粒子の捕獲効率は、血清とインキュベートしたNIPAm粒子で達成した効率よりも低かった。水溶液中で、2種のクラスの粒子が同じ取り込みを示したが、帯電したバイトを有する粒子は、誘導体化されていない粒子に比べ、血清中に含まれるインシュリンの捕獲において、より効率的であった。
【0137】
小さい分子、FITCについて得られたデータを確認し、延長するために、FITC標識したインシュリン(pI5.3)とインキュベートしたNIPAm及びNIPAm/AAc粒子についての経時変化取り込み試験を実施した。種々の時間間隔で集めた、FITC標識したインシュリンとインキュベートしたNIPAm及びNIPAm/AAc粒子のフローサイトメトリー分析と関連する蛍光強度のヒストグラムを図11に示す。このデータは、隔離が急速に(5分)起こり、時間を越えて一定であることを示す。
【0138】
実施例9−バイトを含む粒子による標的タンパク質取り込みの急速な経時変化
タンパク質取り込みの反応速度論が非常に急速であることを証明するため、NIPAm/AAc粒子とインキュベーションした後のバルク溶液中に残存するタンパク質量を、逆相タンパク質アレイ(RPPA)(Gulmann et al,The Journal of pathology 2006,208,(5),595−606)により測定した。Bradfordアッセイのような他の方法は十分な感度を有さず、我々の目的はバルク溶液からのタンパク質除去がどのように完了するかを証明することであるので、粒子上清中のタンパク質濃度を測定するための手段としてRPPAを選択した。種々の量のNIPAm/AAc粒子(115万及び1150万)を、総量100μLのTris(pH7,50mM)中、ライソザイム(20μM)と1及び10分間インキュベートした。粒子を遠心分離した後、一定量の上清を、Aushon2470ロボットアレイヤー(Aushon Biosystems)を用いてニトロセルロースをコーティングしたスライド(FASTスライド、Whatman)にスポットした。アレイを、コロイド性金溶液、AuroDye Forte Kit(Amersham)を用いて染色し、PowerLook 1120スキャナー(Umax)を用いて画像を得、ImageQuant(GE Healthcare)を用いて画像から数値を得、SigmaPlot(Systat)に供した。1分間のインキュベーション後、115万個の粒子を含むバルク溶液は、28%の初期タンパク質量を、10分後には15%を含んでいた。更に、1及び10分間後の1150万個の粒子によって回復した溶液は、それぞれ、5%及び9%の初期量を含んでいた(図12A)。全ての経時変化実験においては、溶液からの粒子の分離が遠心分離によって得られているので、報告された掲示変化値はインキュベーション時間間隔のみを意味することに注意すべきである。その上、更に7分間、溶液と接触した粒子が遠心分離のために必要であった。
【0139】
NIPAm/AAc粒子によるタンパク質取り込みの反応速度論は、更に、粒子を、Tris(pH7,50mM)中、室温でBSA(20μM)及びライソザイム(20μM)とインキュベートし、SDS−PAGEを用いて、1、10、20、30及び60分の時間ポイントにおけるライソザイムの取り込みを監視することにより調べた(図12B)。この実験の結果は、ライソザイムの隔離が1分後にほとんど完了し、60分で完了し、前述したフローサイトメトリーの経時変化試験において示したように、非常に早く起こることが確認された。予想されるように、BSAは粒子により排除され、実験の間(60分間)、NIPAm/AAcによりBSAは取り込まれなかった。
【0140】
実施例10−血清からの低分子量かつ少量の検体の分離及び濃縮の証明
プロテオソーム解析のための血清に由来する低濃度のタンパク質バイオマーカーの候補を隔離及び濃縮するためのNIPAm及びNIPAm/AAc粒子の能力を、水中で、1:10v/vの希釈で粒子と1時間インキュベートすることにより評価した。捕捉されたタンパク質を、変性条件下、粒子から電気泳動的に溶出した。粒子を、SDS試料バッファー中、100℃で5分間加熱し、4〜20%Tris Glicineゲル(Invitrogen)に積載した。30kDa未満のバンドを切り取り、ゲル内トリプシン消化を実施した(Camerini et al.,Proteomics Clin.Appl.2007,1,176−184)。得られたペプチド断片を、LTQ−Orbitrap質量分析計(Thermo Fisher)を用いて、オンライン液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレイイオン化質量分析(LC/ESIMS)により解析した。逆相カラムは、レーザーがけん引されたチップを供える100mmi.d.×10cmの長の融合化シリカゲルキャピラリー(Polymicro Technologies,Phoenix,AZ)中、5μm、20Åのポアサイズの18C樹脂(Michrom BioResources,CA)でスラリーパックした。試料の注入後、カラムを移動相A(0.1%ギ酸)で5分間洗浄し、200nl/分で50分間、0%移動層B(0.1%ギ酸、80%アセトニトリル)から50%移動相Bまでの、次いで更に5分間の100%Bまでの直線勾配を用いてペプチドを溶出した。LTQ質量分析器を、データ依存モードにおいて操作し、それぞれ、全てのMSスキャン後に5種のMS/MSスキャンが続き、ここでは5つの最も豊富な分子イオンが、規格化された35%の衝突エネルギーを用いて、衝突誘導性の解離(CID)について動的に選択される。MS/MSデータを、完全なトリプシン切断条件を用いて、プログラムSEQUEST(Bioworks software,Thermo)を用いたNCBI(National Center for Biotechnology Information)ヒトタンパク質データベースに対してマッチさせた。高信頼性ペプチド同定は、調査結果に対して以下のフィルター:相関スコア(XCorr)=1+について1.9、2+について2.2、3+について3.5、無作為の0.01の無作為同定について最大の可能性を適用することにより得られた。表1及び表2中で同定されたタンパク質のリストは、アルブミン及び他の大量に含まれる血清タンパク質が粒子中に存在しないことを示す。一方、同定されたタンパク質のリストは、粒子が、まれに小さいサイズの血清タンパク質及びペプチドを隔離することを示す。
【0141】
【表1】
表1.1:10v/v希釈した血清と1時間インキュベートした後のNIPAm粒子から電気的に溶出したタンパク質の質量スペクトル分析、P(pep)は、ペプチドについての確率値を示し、Sfは、タンパク質適合がどのようい良好であるかを示す最終スコアを示し、スコアは、ペプチドがスペクトルデータにランダムに適合する可能性に基づいた値を示す。受け入れ番号は、配列についてのユニークなタンパク質同定番号を示す。
【0142】
【表2】
【0143】
表2.1:10v/v希釈した血清と1時間インキュベートした後のNIPAm粒子から電気的に溶出したタンパク質の質量スペクトル分析、P(pep)は、ペプチドについての確率値を示し、Sfは、タンパク質適合がどのようい良好であるかを示す最終スコアを示し、スコアは、ペプチドがスペクトルデータにランダムに適合する可能性に基づいた値を示す。受け入れ番号は、配列についてのユニークなタンパク質同定番号を示す。
【0144】
実施例11−プロテアーゼ分解を阻止する粒子によるタンパク質隔離
体液と関連する主要な問題の1つは、収集、輸送、保存及び解析の間の試料の分解の可能性である。内因性凝固カスケード酵素、損傷された細胞から放出される酵素、外因性酵素(汚染細菌に由来する)は、図13に概略的に示すように、診断上重要なタンパク質の分解に寄与する。
【0145】
標準化された保存方法の欠如は、血清及び血漿のハイスループット解析における偏りをもたらし得る(Ayache et al.,American journal of clinical pathology 2006,126,(2),174−84)。粒子のMWCO(〜20,000Da)より大きいMWを有するプロテアーゼが粒子の内部空間から排除され、その結果、捕獲されたタンパク質に接近することを拒絶することが予想されるが、トリプシン(23,800Da)のような、より小さいプロテアーゼは粒子に侵入できそうである。更に、基質タンパク質及び酵素の両方が粒子によって隔離された場合、帯電バイト粒子に侵入したプロテアーゼが酵素能力を保持し続けているかどうかは知られていなかった(図12)。従って、NIPAm/AAc粒子を、ライソザイム(0.5mg/mL)及びトリプシン(0.05mg/mL,Promega)を含むpH7のNH4HCO3(100mM)中、37℃でインキュベートした。トリプシンは、その小さいサイズ、及びライソザイムのトリプシン消化が、非常に特徴的な切断生成物を産生するという事実に基づき、これらの研究のために選択された。この実験において用いられた条件は、ライソザイム及びトリプシンが、いずれも粒子に侵入することを可能にするであろう。1時間及び一晩のインキュベーション後のSDS PAGEによる捕獲タンパク質の解析は、2本のバンドのみを示し、1本はトリプシンに相当し、他方は完全長のライソザイムに相当し、これは、タンパク質の分解が起こらなかったことを示す(図14)。NIPAm/AAc粒子の非存在下での、pH7のNH4HCO3(100mM)中、37℃における、ライソザイム(0.5mg/mL)のトリプシン(0.05mg/mL)とのインキュベーションは、ライソザイムの分解をもたらした。1時間及び一晩のインキュベーション後の反応物のSDS−PAGE解析は、明らかに低分子量ペプチドの存在を示し、これは、ライソザイムがNIPAm/AAc粒子の非存在下にトリプシンによって分解されることを示す。これらの結果は、明らかに、親和性バイト粒子による低分子量タンパク質の隔離が、粒子内部に侵入することができるタンパク質を含む結合タンパク質を、プロテアーゼから効果的に隠蔽し得ることを示す。
【0146】
NIPAm/AAc親和性バイト粒子によるタンパク質の隔離に関し、更に理解するため、NIPAm/AAc粒子を、100mM NH4HCO3(pH7)中のBSA(0.5mg/mL)、ライソザイム(0.5mg/mL)及びトリプシン(0.05mg/mL)の組み合わせとともに37℃でインキュベートした。以前の保護試験と同様に、1時間及び一晩インキュベーションした後にSDS−PAGEを用いて反応を解析した。NIPAm/AAc粒子の非存在下で、大部分のBSAは1時間後に消化され、完全長のBSAに相当するバンドは一晩のインキュベーション後に消失した(図14B)。以前に示したように、NIPAm/AAc粒子は、ライソザイム及びトリプシンをいずれも効果的に隔離し、ライソザイムを、トリプシンのタンパク質分解から保護する。しかし、粒子はBSAに結合せず、完全長のBSAに相当するバンドの強度の減少に伴う1時間及び一晩のインキュベーション後の上清中の低分子量バンドの存在は、BSAがトリプシンによる分解から保護されなかったことを示す。帯電したバイト粒子による酵素の固定化が、基質タンパク質の結合からそれらを保護するので、トリプシンのような、粒子に侵入するのに十分に小さい酵素によるタンパク質分解活性の抑制が起こり、又は粒子中の親和性バイト基による基質の捕捉と関連する立体障害の結果であり得、その結果として、粒子中の生産的に結合した標的タンパク質から酵素を抑制する。
【0147】
酵素的分解の産物が前記結果に明らかに示されていたとしても、ライソザイムの広がった状態は、トリプシンのタンパク質分解に抵抗性があることが知られている(Noda et al.,Biopolymers,1994,34,(2),217−226)。従って、粒子とのインキュベーションは、あらゆる偏りを排除するために、還元及びアルキル化されたライソザイムを用いて繰り返した。ライソザイムは、尿素(2M)を含むNH4HCO3バッファー(50mM,pH8)中のジチオスレイトール(DTT)(10mM)を用いて室温で1時間インキュベーションすることにより還元した。最終濃度が50mMとなるように、溶液にヨードアセトアミドを加え、暗所で30分間反応させた。バッファーを交換し、3,000DaのMWCOを有するCentricon遠心フィルターユニット(Millipore)を用いて、MilliQ水でタンパク質を洗浄した。ライソザイムを、NH4HCO3(pH8,100mM)に、推測される最終濃度が0.5mg/mLとなるように再懸濁した;トリプシン(0.05mg/mL)及びNIPAm/AAc粒子を加え、溶液を37℃で1時間インキュベートした。既に記載したようにして粒子を洗浄し、SDS PAGEに積載した。図15Aにおいて、還元及びアルキル化された形態であっても、ライソザイムを分解から保護し得ることが示される。
【0148】
タンパク質分解からの保護のメカニズムを更に理解するために、単なる粒子を用いて実験を実施した。NIPAm粒子を、還元及びアルキル化されたライソザイム(0.5mg/mL)及びトリプシン(0.05mg/mL,)を含むpH7のNH4HCO3(100mM)溶液中、37℃で1時間インキュベートした。結果を図15Bに示し、粒子内部に分解したライソザイムの産物を示した。
【0149】
液体から低分子量分子検体及びバイオマーカーの候補を収集し濃縮し、少量かつ低分子量化合物の高スループット解析を可能にするための新規な手段としてヒドロゲルバイト−含有粒子の開発及び応用を開示した。これらのナノ粒子は、原料のままの体液中の直接的有用性のための迅速かつ直接的なワークフローを示すが、明細書に開示された作業は、優先的にカチオン性種に結合する負電荷を有する粒子を開示し、NIPAm/アリルアミンコポリマーのような正に帯電した粒子は、体液からアニオン性種を選択的に収集及び濃縮するために用いることができた。同様に、疎水性代謝産物は、NIPAm/スチレンコポリマーのような更に疎水性の粒子を用いることにより、総合的なメタボロミクスのために捕獲することができた。検体特異的な化学物質又はタンパク質又は核酸親和性バイトを取り込むことができる。例えば、糖類を結合することが知られているボロン酸含有粒子は、溶液からの糖タンパク質を隔離するために用いることができる(Ivanov et al.,Journal of molecular recognition 2006,19,(4),322−31)。その結果、アニオン性タンパク質のためのバイトを含むNIPAm−アリルアミンコポリマーが、現在合成されている。更に、p−ビニルフェニルボロン酸(VPBA)は、糖類及び核酸の収集のためのコポリマーとして考慮中である。トリアジニルをベースとする色素(タンパク質に対する親和性を有する)、ヘキサデシルアミン(脂質の取り込みのため)及びシクロデキストリン(低分子量の分子と関連し得る)のような、更なる親和性バイトは、粒子内で非共有的又は共有的に結合している。特に、前記バイト化合物は、以下の低分子量代謝産物、すなわち、L−ドーパ、ホモゲンチジン酸、ドーパミン、ドーパミン中間代謝物(Dopac)及び5−ヒドロキシインドール酢酸を収集するために用いられる。これは、メタボロミクスの領域に対する技術の有用性を広げる。
【0150】
一段階工程におけるサイズふるい分け手段の種々の親和性化学物質への結合は、疾患マーカーの発見及び分析ワークフローのための莫大な有用性を有し得る。
【0151】
本研究において示されるワークフローにおいては、タンパク質は粒子から溶出された時に変性しており、バイオマーカーの発見のための質量分析において分析される。それにもかかわらず、収集条件が天然のタンパク質混合物を用いて実施されることに気づくことが重要である。これは、興味のある検体を天然の状態で要求する、更なる応用を可能にする。これらの応用のため、タンパク質が粒子から放出される時に変性されていないことが重要である。Ahmad及び共同研究者らは、円偏光二色法を用い、薬剤送達のための分子が、天然の立体配座状態を維持し続け、温度変化によりNiPam粒子から放出されることを証明した(Ahmad et al.,Colloid & Polymer Science 2002,280,(4),310−315)。その結果、粒子から天然のタンパク質を溶出される可能な手段は、界面活性剤の非存在下に、非変性条件下、溶液の温度又はpHを変更し、イオン強度を上昇させ、又はタンパク質を電気的に溶出させることを含む。
【0152】
実施例12−NIPAm/Accコア−NIPAmシェル粒子の合成
この実践的な構造において、親和性バイト部分を含むコアは、NIPAmシェルによって包囲される。NIPAmシェルの分子ふるい性能はコア、並びに存在し、コア中で親和性バイトに結合するための、意図する少量かつ低分子量の分子標的と競合し得る大きい分子に由来する親和性バイト基を遮蔽するであろう。シェル溶液は、NIPAm、それぞれH2O中の0.02モル同等物のBIS及びSを溶解し、この溶液を博膜フィルターでろ過することにより製造した。減圧下、数分間、溶液を脱気し、室温で攪拌しながら2時間窒素でパージした。シェル溶液をパージしながら、NIPAm、0.08モル同等物のAAc及び0.02モル同等物のBISをH2O中に溶解し、溶液をろ過することによりコア溶液を調製した。次いで、コア溶液を脱気し、NIPAm粒子の製造について記載したようにして、70℃で窒素でパージした。いったん、溶液が70℃で平衡に達し、窒素雰囲気下で1時間攪拌したら、APS(0.005モル同等物)をコア溶液に加えた。NIPAm/AAcコア反応物を、窒素雰囲気下、70℃で3時間インキュベートした後、シェル溶液を、次いで、APSの追加の一定量を反応フラスコに加えた。次いで、反応物を窒素雰囲気下、70℃で更に3時間攪拌した。この時点で、反応物を熱から取り出し、窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。次いで、NIPAm粒子について記載したようにして、粒子を集め、洗浄した。
【0153】
実施例13−コアシェル粒子は、NIPAm/AAcと同じ分子ふるいカットオフを有していた。
コアシェルの直径の光散乱測定は、NIPAm/AAcコアについて1048nm及びNIPAmシェルを加えた時に1198nmの値を示した。コアシェル粒子が、NIPAm/AAc粒子と同じ分子量カットオフ(MWCO)を有するかどうかを調べるために、タンパク質分子量パーカーの溶液を用いた。溶液は、Tris(pH7,50mM)に、溶解した、アプロチニン(MW6,500Da,Sigma−Aldrich)、ライソザイム(MW14,400Da,Sigma−Aldrich)、トリプシン阻害剤(MW21,500Da,Invitrogen)、炭酸脱水酵素(MW31,000Da,Sigma−Aldrich)、オブアルブミン(MW45,000Da,Sigma− Aldrich)及びBSA(MW66,000Da,Fisher Scientific)を、それぞれそれぞれ0.5mg/mLで含む。インキュベーション時間は1時間であり、原稿に記載されたようにして粒子を洗浄した。SPD PAGE分析は、図16において、2種の粒子について、MWCO値の実質的な一致を示した。
【0154】
実施例14−コアシェル粒子は、キモトリプシン酵素分解からライソザイムを保護する。
他のプロテアーゼ、α−キモトリプシン(MW25,000Da,pI=8.75,Sigma)を、分解からタンパク質を保護する粒子の能力を証明するために用いた。ライソザイムの消化は、10mM CaCl2を含む100mM Tris HCl,pH7.8中、30℃で30分間実施した。コアシェル粒子を、前述の消化条件中、ライソザイム及びトリプシンとインキュベートした。このケースにおいては、粒子は、キモトリプシン分解からライソザイムを保護した(図17、レーン5)。ライソザイム分解は、粒子なしのインキュベーションにおいても明らかである(図17、レーン3)。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年3月19日に出願された米国仮特許出願第60/895,674号及び2007年11月9日に出願された米国仮特許出願第60/986,803号の優先権を有し、2006年9月27日に出願された米国特許出願第11/527,727号の一部継続出願であり、その開示又はそれらは本明細書において参照として組み入れられる。
【0002】
本発明は、混合物由来のバイオマーカーの収集のための粒子、及びその粒子の使用方法に関する。特に、本発明は混合物からバイオマーカーを捕捉することができ、混合物からバイオマーカーを分離することができる粒子、並びにバイオマーカーを捕捉する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオマーカーは、多種多様の疾患の初期段階での検出を提供し得る。そのため、精度が高い、特定の疾患の検出を提供する、新規なバイオマーカーの急を要する発見することについて必要性がある(Aebersold et al.,Proteome Res 2005,4,(4),1104−9;Srinivas et al.,Clin Chem 2002,48,(8),1160−9)。バイオマーカーは、臨床病理所見の前に疾患を診断する方法を提供し、これは疾患の初期段階での治療を可能にし、通常良好な結果をもたらす。
【0004】
例えば、癌は、主として、各種の疾患が、通常は癌が転移した後に診断されるという事実に起因し、米国において多くの人口集団についての死因を急速にもたらすようになる。この疾患の後期においては、治療は、一般的に侵襲的かつ効果のないものである。転移より前の癌の早期発見が治療成果における劇的な向上をもたらすであろうと広く信じられている。
【0005】
アルツハイマー病及び糖尿病のようなバラエティに富む種々の病状及び状態を示すバイオマーカーも絶えず発見されている。これらの多くの疾患については、疾患の早期診断は、後期治療よりも成功のチャンスが大きい治療法の選択を可能にする。更に、あるケースにおいては、疾患又は疾患に対するかかりやすさの早期診断は、診断した人々に、より多くの治療を伴うことの必要性なしで、疾患の経過を予防及び逆転することを補助し得る生活様式を変化させることを可能にする。
【0006】
バイオマーカーは、疾患の縮小又は存在の危険性と関連がある、特定の生物学的状態を示す、核酸、タンパク質、タンパク質断片又は代謝産物である(Frank and Hargreaves;Nature reviews 2003,2,(7),566−80)。バイオマーカーの研究は、少量の血中タンパク質及びペプチドが、全体として生命体の状態に関する豊富な情報源を示すことを示している(Espina et al.Proteomics 2003,3,(11),2091−100)。2つの主な障害物:すなわち1)血中又は体液中の疾患に関連するバイオマーカーは生体分子の複合混合物中に非常に低濃度で存在し、アルブミンのような多量の種により隠すことができること、及び2)タンパク質バイオマーカーの分解は、内因性及び外因性プロテイナーゼの結果として血液又は体液の収集の直後に起こり得ることが、これらの発見が臨床的有用性に達することを阻んできた。
【0007】
血中プロテオームを含むタンパク質及びペプチドの濃度は、アルブミンのような、数種の高分子量タンパク質、及び全タンパク質含有量の90%の割合を占める免疫グロブリンと一緒になって10−12mg/mL〜10−3mg/mLと10桁にかかる範囲である(Anderson and Anderson,Mol Cell Proteomics 2002,1,(11),845−67)。しかし、血中にも存在する少量かつ低分子量のタンパク質及び代謝産物は、豊富な情報を提供し、新規なバイオマーカー源としての見込みがある。二次元電気泳動のような従来の方法は、少量で低分子量のタンパク質及び代謝産物を検出し定量する感度及び分解能を有していない。また、近代の質量分析計の中程度に高い感度にもかかわらず(アトモル濃度)、その運転範囲は3〜4桁上に及び、この結果、少量のタンパク質はより多いタンパク質に隠されてしまう。その結果として、質量分析法(MS)実験用の通常の試料調製は、市販の免疫親和性枯渇カラム(Agilent,Sigma,及びBeckman−Coulter)を用いた大量のタンパク質の枯渇から開始する。枯渇の後、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び/又は等電点電気泳動を用いて分別を実施する。しかし、非常に大部分の少量のバイオマーカーは、除去されるキャリアタンパク質と非共有的及び内生的に関連しているので、大量の天然の高分子量タンパク質の除去はバイオマーカーの候補の収量を減少し得る(Lopez et al.,Clinical chemistry 2007,53,(6),1067−74;Conrads et al.,BioTechniques 2006,40,(6),799−805;Lowenthal et al.,Clin Chem 2005,51,(10),1933− 45;Lopez et al.,Clinical chemistry 2005,51,(10),1946−54)。変性条件下でのサイズ排除限外ろ過(Zolotarjova et al.,Proteomics 2005,5,(13),3304−13)、連続溶出変性電気泳動(continuous elution denaturing electrophoresis)(Camerini et al.,Proteomics Clin.Appl.2007,1,176−184)、又はナノポーラスを用いた血清の分別(Geho et al.,Bioconjug Chem 2006,17,(3),654−61)のような方法が、この問題を解決するために提案されてきた。更に、これらと同じ最近の発見は、バイオマーカー候補の豊富かつ未開発の源としてのプロテオームの低分子量領域を指摘している(Tirumalai et al.,Molecular & cellular proteomics 2003,2,(10),1096−103;Merrell et al,J of biomolecular techniques 2004,15,(4),238−48;Orvisky et al.,Proteomics 2006,6,(9),2895−902)。
【0008】
複合天然タンパク質混合物(血液等)に由来するバイオマーカーの候補の収集及び濃縮に関連する困難さに加え、これらの可能性のあるバイオマーカーの安定性は難題をもたらす。血液入手(例えば、静脈穿刺)の直後に、血清中のタンパク質は、血液凝固過程、血液細胞から流れる酵素、又は細菌汚染に関連するような、内因性プロテアーゼ又は外因性の環境のプロテアーゼにより分解されやすくなる。従って、血中の候補となる診断バイオマーカーは、搬送及び保存の間の分解にさらされ得る。これは、試料が凍結されることなく輸送された、種々の施設及び場所から集められた、血清及び体液の大きな保存場所内のバイオマーカーの忠実度にとって、なおさら重要な問題となる。
【0009】
そのため、当該技術分野において、血清のような生体分子の複合混合物由来の選択されたタンパク質及びペプチドの濃縮及び不溶化、並びに次の試料の取り扱いの間に分解から粒子を保護することを可能にする粒子が必要とされている。次いで、次の定量的解析を可能にする電気泳動により、捕獲された検体を粒子から容易に抽出することができる。このタイプの粒子は、癌のような後期疾患のための新規なバイオマーカーの発見に他に類を見ないほどに適している強力な手段を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Aebersold et al.,Proteome Res 2005,4,(4),1104−9;Srinivas et al.,Clin Chem 2002,48,(8),1160−9
【非特許文献2】Frank and Hargreaves;Nature reviews 2003,2,(7),566−80
【非特許文献3】Espina et al.Proteomics 2003,3,(11),2091−100
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、バイオマーカー収集のための捕獲粒子を提供することである。捕獲粒子は、混合物からバイオマーカーを隔離し、抽出し、それを分解から保護することを可能にする材料からなる。本発明の一実施態様においては、捕獲粒子は規定の分子サイズ、質量及び又は親和性特性を有する分子種を特に捕獲する能力を有し、通常複数の異なる分子種を含む試料から興味のある分子を分離するために用いられる。捕獲粒子は試料に添加され、次いで興味のある分子種を捕獲するために利用される。
【0012】
本発明の更なる目的は、バイオマーカー収集のためのスマート(smart)ヒドロゲル粒子を提供することである。本発明のスマートヒドロゲル粒子は、スマートヒドロゲル粒子の周囲の環境を変化させることにより変えることができる孔及び全てのサイズを有していてもよい。スマートヒドロゲル粒子は、バイオマーカーが特定の条件下でヒドロゲルに入ることを可能にする孔を有していてもよく、その後、スマートヒドロゲル粒子の周囲環境は、バイオマーカーがスマートヒドロゲル粒子の内部に隔離することができるように、変化し得る。
【0013】
本発明の更なる目的は、バイオマーカーを誘因し、相互作用することのできるバイオマーカー収集のための捕獲粒子を提供することである。特定の実施態様においては、前記誘因は、捕獲粒子の内部に存在するであろう。他の実施態様においては、誘因は、捕獲粒子事態を製造するための材料の一部である。
【0014】
本発明の更なる目的は、以下の特性、すなわち:a)捕獲すべき分子のサイズ及び/又は質量を選択する能力、b)捕獲すべき分子の親和性特性を選択する能力、及び/又はc)物理的又は化学的処理に応答し、所望の分子を捕獲及び/又は放出する能力の1種以上を有するバイオマーカー収集のための捕獲粒子を提供することである。
【0015】
本発明の更に他の目的は、バイオマーカーの隔離が完了した後に、容易に隔離及び分離することができるバイオマーカー収集のための捕獲粒子を提供することである。本発明の特定の実施態様においては、物理的な力、電場又は磁場を通して、又は標的とする粒子上の一部における誘因により、混合物から分離することを可能にする特性を有し、又は修飾を有している。
【0016】
本発明の更に他の目的は、混合物又は溶液中に存在する検体の特定のためのキットを提供することである。本発明のキットは、通常、捕獲粒子で満たされているか、又はコーティングされているある種の収集装置を有する。検体を含む溶液又は他の混合物は、収集装置に供され、捕獲粒子が、分析のための所望の検体を隔離及び分離することを可能にする。
【0017】
本発明の更に他の目的は、溶液から捕獲した検体の分析のためのマイクロ流体システムを提供することである。このマイクロ流体システムは本発明の捕獲粒子を含むであろう。分析すべき検体を含む試料を、マイクロ流体システムに導入し、そこで、捕獲粒子は検体を隔離する。次いで、捕獲粒子を分離された場所に移動し、そこで、当該技術分野において公知の方法を用いて検体を遊離し、分析する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、バイオマーカーを収集するための捕獲粒子、及びこれらの粒子を用いる方法を提供する。本発明の捕獲粒子は、混合物から特定のバイオマーカーを選択的に選択することができ、その後、捕獲粒子を混合物から除去され、バイオマーカーは捕獲粒子から放出される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】粒子の化学組成。(A)N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)及びそのポリマー、(B)メチレンビスアクリルアミド及び(C)NIPAm及びアクリル酸並びにそのポリマー。
【図2】粒子の特徴。(A)温度の関数としてのNIPAmの粒径の光散乱測定(温度が上昇すると直径が小さくなる)。(B)温度(温度が上昇すると直径が小さくなる)及びpH(pHが低下すると直径が小さくなる)を伴う、NIPAm/AAc粒子のサイズの相関のプロット。雲母上の(C)NIPAm粒子及び(D)NIPAm/AAc粒子のAFM像。
【図3】溶液中の粒子の分子ふるいの概略図。低分子量タンパク質を集め;高分子量タンパク質を排除する。
【図4】FITCでインキュベートした粒子のフローサイトメトリー解析。(A)取り込みは濃度依存的である。(B)取り込みは、20μM濃度のFITCを用いて急速に飽和に達する。また、NIPAm粒子を、FITC標識したウシ血清アルブミン(BSA)、MW66,000Da(FITC−BSA,Sigma)と1:1の色素:分子比で、FITC標識したインシュリン、MW3,500Da(Invitrogen)と1:7の色素:分子比で、又はFITC標識したミオグロビン、MW17,000Daと1:36の色素:分子比でインキュベートした。ミオグロビン(Sigma)は、HOOK−Dye Labeling Kit(G Bioscience)を用いて、製造供給元の使用説明書に従い、FITC標識した。全ての蛍光種の濃度は、蛍光シグナルを等しくするように調製した。
【図5】NIPAm粒子をFITC及びFITC標識したタンパク質とインキュベートした:(A)BSA及びインシュリン、(B)ミオグロビン及びフリーのFITCのフローサイトメトリー測定。(C)インシュリンとインキュベートした粒子のSDS−PAGE:レーン1)インシュリン溶液(コントロール)、2)NIPAm上清(Out、粒子から排除された基材)、3)洗浄液1)、4)洗浄液2)、5)NIPAm粒子(In、粒子により捕獲された基材)。(D)BSA及びミオグロビンとインキュベートしたNIPAm粒子のSDS−PAGE:1)BSA及びミオグロビン(コントロール)、2)NIPAm上清(Out)、3)洗浄液2、4)NIPAm粒子(In)。BSAは全体として排除される。
【図6】親和性をベースとする隔離の概略図。
【図7】NIPAm粒子(−bait)に対するNIPAm/AAc粒子(+bait)によるタンパク質配列決定、粒子+及び−baitによるミオグロビン(水溶液、pH5.5)隔離のSDS−PAGE(A)。レーン1)ミオグロビン、2)NIPAm上清(Out)、3)NIPAm粒子(In)、4)NIPAm/AAc上清(Out)、5)NIPAm/AAc粒子(In)、6)NIPAm/AAc粒子1:64、7)NIPAm/AAc粒子:1:32、8)NIPAm/AAc粒子1:128、及び9)NIPAm/AAc粒子(In)1:256。(B)2種のpH値における粒子+baitによるBSA及びミオグロビンの隔離。レーン1)BSA及びミオグロビン、pH5.5、2)NIPAm/AAc上清(Out)pH5.5、3)洗浄液3、pH5.5、4)NIPAm/AAc粒子(In)pH5.5、5)洗浄液2、pH5.5、6)洗浄液1、pH5.5、7)BSA及びミオグロビン、pH8、8)NIPAm/AAc上清(Out)pH8、及び9)NIPAm/AAc粒子(In)pH8。
【図8】(A)BSA及びライソザイムとインキュベートした、−及び+bait粒子のSDS−PAGE解析。レーン1)粒子導入前のBSA及びライソザイム溶液、2)NIPAm(−bait)上清(Out)、3)洗浄液3、4)NIPAm(−bait)粒子(In)、5)洗浄液2、6)洗浄液1、7)NIPAm/AAc(+bait)上清(Out)、8)洗浄液3、及び9)NIPAm/AAc(+bait)粒子(In)。分子量(MW)マーカーとインキュベートしたNIPAm/AAc粒子(+bait)のSDS−PAGE解析:1)MWマーカー、2)NIPAm/AAc上清(Out)、及び3)NIPAm/AAc粒子(In)。
【図9】PDGF B及びBSAとインキュベートした粒子+baitのSDS PAGE解析。レーン1)BSA及びPDGF B、2)NIPAm/AAc上清(Out)、3)NIPAm/AAc粒子(In)。
【図10】FITC標識されたインシュリン水溶液とインキュベートした(A)NIPAm及び(B)NIPAm/AAc粒子、及び血清中でスパイクされたFITC標識されたインシュリンのフローサイトメトリー解析。
【図11】FITC標識されたインシュリンとインキュベートした(A)NIPAm及び(B)NIPAm/AAc粒子のフローサイトメトリー経時変化試験。
【図12】取り込みの経時変化試験(A)RPPAsにより測定される、2種の量のNIPAm/AAc粒子とインキュベートした、溶液中のライソザイムの初期量と比較した割合の平均値(3種の再現分析及び標準偏差を示す)。(B)NIPAm/AAc粒子とインキュベートしたライソザイム及びBSA溶液のSDS−PAGE解析。レーン1)BSA及びライソザイム溶液。2〜11)それぞれ5、10、20、30及び60分間のインキュベーション時間についての交互の上清(Out)及び粒子(In)。ライソザイムの取り込みは急速かつ完全であるが、BSAの排除は全てである。
【図13】酵素分解からタンパク質を保護する粒子の能力を説明する概略図。
【図14】存在し得る酵素による分解から結合タンパク質を保護するNIPAm/AAc粒子(+bait)。(A)ライソザイム及びトリプシンを含む溶液で1時間インキュベートしたNIPAm/AAc粒子。1)ライソザイム、2)トリプシンとインキュベートしたライソザイム、3)NIPAm/AAc上清(Out)、4)NIPAm/AAc粒子(In)、5)BSA及びライソザイム、6)BSA及びライソザイム+プロテアーゼ、7)NIPAm/AAc粒子上清(Out)、及び8)NIPAm/AAc粒子(In)。(B)BSA、ライソザイム及びトリプシンと一晩インキュベートしたNIPAm/AAc粒子。レーン1)ライソザイム、2)トリプシン、3)ライソザイム+トリプシン、4)NIPAm/AAc粒子上清(Out)、5)NIPAm/AAC粒子(In)、6)ライソザイム及びBSA、7)BSA及びライソザイム+プロテアーゼ、(8)NIPAm/AAc上清(Out)、及び9)NIPAm/AAc粒子(In)。
【図15】トリプシン消化にさらされ、+bait及び−bait粒子でインキュベートされた、還元及びアルキル化されたライソザイムのSDS−PAGE解析。(A)NIPAm/AAc粒子とインキュベートした、還元及びアルキル化されたライソザイム+トリプシン:レーン1)ライソザイム、2)還元及びアルキル化されたライソザイム、3)+トリプシン、4)NIPAm/AAc上清(Out)、5)NIPAm/AAc粒子(In)。(B)NIPAm粒子とインキュベートした、還元及びアルキル化されたライソザイム:レーン1)NIPAm粒子上清(Out)、2)NIPAm粒子(In)、3)+トリプシンNIPAm上清(Out)、4)+トリプシンNIPAm粒子(In)、5)+トリプシン、6)NIPAm粒子、上清(Out)とインキュベートしたBSA+還元及びアルキル化したタンパク質溶液、7)NIPAm粒子(In)。
【図16】NIPAm/AAc粒子として同じ分子量ふるいを有するコアシェル粒子。コントロールタンパク質溶液を、NIPAm/AAc及びコアシェル粒子とインキュベートした。レーン1)コントロールタンパク質溶液、2)NIPAm/AAc粒子上清(Out)、3)NIPAm/AAc粒子(In)、4)コアシェル粒子上清(Out)、5)コアシェル粒子(In)。
【図17】コアシェル粒子は、ライソザイムをキモトリプシンタンパク質分解から保護する。レーン1)ライソザイム、2)キモトリプシン、3)ライソザイム+キモトリプシン、4)コアシェル粒子、上清(Out)とインキュベートしたライソザイム+キモトリプシン、5)コアシェル粒子、粒子(In)とインキュベートしたライソザイム+キモトリプシン、6)ライソザイム+BSA+キモトリプシン、7)コアシェル粒子、上清とインキュベートしたライソザイム+BSA+キモトリプシン、8)コアシェル粒子、粒子(In)とインキュベートしたライソザイム+BSA+キモトリプシン、9)ライソザイム+BSA。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特定の実施態様においては、捕獲粒子は、以下の特徴:すなわちa)捕獲すべき分子のサイズ及び/又は質量を選択する能力、b)捕獲すべき分子の親和性を選択する能力、及び/又はc)物理的又は科学的処理に対して所望の分子を捕獲及び/又は放出する能力の1種以上を有する。本発明の粒子は、例えば、アフィニティーカラム、逆相カラム及び分子ふるい工程のような従来の多段階工程の必要なしで、微量でこの課題を達成し得る。捕獲粒子の特徴は、捕獲粒子を構築するために用いられる材料に依存する。特定の材料から製造される特定のタイプの捕獲粒子を本明細書で説明するが、製造される方法から確定することができる特徴を有し、以下に説明する請求の範囲ないである、本明細書に明白に説明しない捕獲粒子の多の組み合わせ及び変形があることは当業者に明らかであろう。
【0021】
本明細書の記載を通じて、バイオマーカー又は他の検体の収集が開示される。本発明の捕獲粒子及び方法は、興味のある任意のタイプの分子又は化合物、生体起源又は他の検体のいずれかにより製造されるバイオマーカーの収集に適応される。本発明の特定の実施態様においては、収集すべき検体は、代謝産物、タンパク質、RNA、ミクロRNA、DNA、糖タンパク質、脂質、糖脂質、プロテオリピド、ホルモン、サイトカイン、成長因子、バイオマーカー、薬剤、合成有機化合物、揮発性臭気物質、毒物及び汚染物質であり得る。本発明が、特定のタイプの分子の収集に多少なりとも限定されず、任意のタイプの混合物中に存在する任意の源に由来する分子が本発明の組成物及び方法を用いて収集され得ることが当業者には明らかであろう。
【0022】
特定の実施態様においては、本発明の捕獲粒子は分子ふるい材料から構成され得る。これにより、材料は多孔質、格子状、蜂の巣状であるか、検体に、侵入する明確な分子の量又は重量を許容することを可能にする多の特性を有することを意味する。分子ふるい孔のサイズは、検体が捕獲粒子に浸透することができるかどうかにより決定される。粒子は、それ自体、適切なサイズ、例えば、その中の任意及び全ての値を含む、1nm以下;約1nm〜100μm;約5nm〜50μm;約10nm〜20nm;約10nm〜10μmであり得る。本発明の粒子は、球、チューブ、分岐構造、多面体及びマイクロ流体バルブが含まれるがこれらに限定されない、任意の適切な形状であり得る。
【0023】
本発明の捕獲粒子を製造するために用いられる分子ふるい材料は、特定のサイズの検体のみが捕獲粒子に侵入することを許容するように設計され得る。捕獲粒子のカットオフサイズは、粒子が用いられる方法に依存するであろう。本明細書で用いられる場合、カットオフサイズは、捕獲粒子に侵入し得る検体に近似するサイズを表現することを意味する。例えば、50kDaの分子量(Mw)カットオフサイズは、約50kDa以下のサイズの分子が捕獲粒子に侵入し得るが、約50kDaを越える分子が粒子から排除されることを意味する。特定の実施態様においては、粒子は約5kDa〜約100kDaのMWカットオフサイズを有し得るが、この範囲意外の他のMWカットオフサイズを有する粒子も意図される。本明細書に記載される場合、本発明の捕獲粒子は、刺激に対してサイズを変化することができる「スマート」材料から製造することができる。このようなケースにおいては、粒子のMWカットオフサイズは、粒径の変化により変化し得、例えば、特定条件下で粒子は特定のMWカットオフサイズを、他の条件下で異なるMWカットオフサイズを有し得る。
【0024】
本発明の捕獲粒子の特徴は、検体がいったん粒子に侵入すると、それを「捕捉」又は隔離する能力である。捕捉は、粒子を製造するための物理的又は化学的処理に対して収縮及び/又は膨張し得る分子ふるい材料を用いることにより達成される。例えば、化学的又は物理的処理にさらされた場合に収縮し、又は縮む材料を用い、それによって検体を内側に捕捉することができる。このような材料は、物理的又は化学的処理にさらすことにより、形状又はサイズを変化する能力を有する「スマート材料」と呼ぶことができる。
【0025】
これらの性質を有する任意の材料を、本発明の捕獲粒子を製造するために制限なく用いることができる。特定の実施態様においては、これらの材料は、アクリルアミド及びその誘導体、N−イソプロピルアクリルアミド(例えば、Jones and Lyon,Macromolecules,36:1988−1993,2003;Jones and Lyon,Macromolecules,33:8310−8306,2000)及び他のN−アルキル置換アクリルアミド;N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−シスタミンビスアクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アリルアミン、スチレン、ベンジルグルタメート、2−エチルアクリル酸、4−ビニルピリジン、シリコーン、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレンオキシド、ブチレンテレフタレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ビニルピロリドン及びエチレン−酢酸ビニルからなるポリマーである。本発明の他の実施態様においては、捕獲粒子は、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン及びヒドロキシアルカノエートで構成される生分解性ポリマーで構成され得る。本発明の更なる他の実施態様においては、ポリマーは、キトサン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース及びアガロースで構成され得る。本発明の捕獲粒子を製造するために用いられるポリマーは、架橋可能な単位で構成されていても、されていなくてもよい。架橋可能なポリマーの場合、架橋は、恒久的又は可逆的のいずれかで形成してもよい。本発明によって意図されるポリマーは単一の繰り返し単位を有しているか、又はポリマーに含まれる2種以上のモノマー単位を有するコポリマーであってもよい。
【0026】
用いられる材料の他の具体例は、強誘電性液晶エラストマー;圧電性ポリマー;「スマート」ヒドロゲル、ゲル、セラミック、合金及びポリマー等であり得る。適切な材料の他の具体例は、Galaev et al.,Pages 835−849;Zentel;Pages 850−860;Harrison and Ounaies,Pages 860−873;Encyclopedia of Small Materials,Volumes 1−2,Edited by,Schwartz,Mel(C)2002 John Wiley & Sonsに見ることができる。分子ふるい材料として適切な他の材料の具体例は、編んである、又は架橋ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、金属コロイド、クラスリン、コラーゲン、修飾多糖類、シリコン、シリカ、アミノ酸からなる結合ペプチド、核酸からなるポリマー(例えば、Chittamalla et al.,J.Am.Chem.Soc.,2005,127(32),11436−41を参照されたい)、アミノ酸ポリマー,脂質(例えば、Advanced Drug Delivery Reviews,Lipid Nanoparticles:Recent Advances,2007,59(6),375−530を参照されたい)、自己集合ウイルス及び自己集合タンパク質である。捕獲粒子は、当該技術分野において公知の方法により、又は前記文献のいずれかに記載された方法により、通常に製造することができる。
【0027】
分子ふるい材料を収縮及び/又は膨張させるために用いることができる物理的及び/又は化学的処理には、熱、電気、磁気、超音波、圧力、放射、レーザー、浸透圧、pH、塩、酵素、酸化/還元、脱水/再水和、紫外線、放射線、強い赤光及び当該技術分野において公知の同様の処理が含まれる。
【0028】
分子ふるい材料は、可逆的又は不可逆的に収縮又は縮小され得る。例えば、捕獲粒子は、検体が浸透することが可能である混合物中に置かれ、検体を捕獲するために不可逆的に縮小し得る。これは、対象が溶液から汚染物質を除去する場合に有用であり得、捕獲された検体を解析又は更に評価する必要はなく、その結果、それを膨張させる必要はない。また、不可逆的捕獲粒子は、超音波処理又は粒子の完全性を破壊する他の破壊的な力によって破壊され得る。
【0029】
捕獲粒子は、バイオマーカーを誘因し、相互作用し得る誘引物質を更に含んでもよい。本発明の誘引物質は、興味のある検体と特異的に相互作用し得る任意の物質であり得る。特定の実施態様においては、誘引物質は親和性リガンドであり;抗体及びその誘導体(例えば、Fab画分及び単一鎖抗体);修飾タンパク質を含む結合タンパク質及びペプチド(例えば、特異的リガンド及びポリヒスチジンペプチドについての受容体又はその断片);結合ペア(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン);基質;金属;キレート剤;核酸;アプタマー;酵素結合ポケット:レクチン;小分子を取り込むためのカリックスアレーン;金属又は金属塩(例えば、ヘム基についてのFe、リン酸化ペプチド及びタンパク質についてのTiO2);親和性色素;薬理活性化合物;ペプチド及びフラーレン、親油性化合物、芳香族化合物及び/又は興味のある検体に特異的な親和性基であってもよい。捕獲粒子は、当該技術分野において公知の分子インプリンティング法を用いて形成することもできる。本発明のこれらの実施態様においては、捕獲粒子は、特定の分子又は分子のファミリーと結合するようにインプリントしてもよい。
【0030】
本発明の特定の他の実施態様においては、誘引物質は、検体と化学的又は静電気的に相互作用し得る化学的部分であってもよい。本発明のこれらの実施態様においては、誘引物質には、カルボキシル基、アミン基、脂質、リン酸基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、アクリル基、チオール基、アクリル酸、疎水性表面、親水性表面、又は検体と化学的又は静電気的に相互作用し得る他の部分が含まれる。
【0031】
誘引物質は、任意の適切な方法で捕獲粒子と結合され得る。例えば、分子ふるい材料が積層又は蒸着/核となる核又は周囲のコアとして用いることができ;それらは粒子が形成される前に分子ふるい材料に直接組み込まれ(すなわち、誘引物質は分子ふるい材料の成分である);それらは、通常、分子ふるい材料の多孔質表面に結合することができる(共有結合又は非共有結合)。誘引物質は、分子ふるい材料を適切な物理的又は化学的処理によって分子ふるい材料を膨張させ、リガンドが入ることを許容するのに十分に大きい空隙率に到達させ、次いで、分子ふるい材料を、粒子が侵入するのに効果的な条件下で誘引物質と接触させることにより、捕獲粒子中に取り込むこともできる。いったん粒子に誘引物質が取り込まれると、適切な物理的又は化学的処理により縮小することができ、その結果、検体が粒子に浸透できるままであるが、より大きい検体は排除されるように、分子ふるい材料の空隙率を低下させることができる。分子ふるいの空隙率は、誘引物質取り込み工程の後に、拡散からの親和性リガンドを遮断するのに十分に小さいポアサイズまで低下させることができ、分子ふるい材料に誘引物質を結合することを不要にする。しかし、所望であれば、結合工程は、分子ふるい材料に誘引物質を結合させるために用いることができる。
【0032】
親和性リガンドで誘引された捕獲粒子は、検体のサイズ又は質量についての選択に加え、検体選択工程を提供する。例えば、捕獲粒子は、検体が捕獲粒子中に浸透するのを可能にするように膨張し得、検体は、捕獲粒子と関連する親和性リガンドに特異的に結合する能力によって更に選択され得る。結合工程が達成された(例えば、平衡に達した)後、粒子を分離し、洗浄工程に供し、未結合の非標的検体を除去することができ、次いで、化学的又は物理的処理によって縮小させてもよい。
【0033】
本発明の特定の実施態様においては、誘引物質は分子ふるい材料の成分である。例えば、分子ふるい材料は、帯電を有するモノマー単位を有するコポリマーであってもよい。特定の実施態様においては、コポリマーは、分子ふるい材料自体が、捕獲すべき検体を誘引することができるように、帯電していない構造モノマー単位及び親和性モノマー単位で構成されている。特定の実施態様においては、分子ふるい材料が全体として帯電するように、親和性モノマー単位は、正又は負に帯電していてもよい。これらの実施態様においては、分子ふるい材料の環境が変化することにより、例えば、捕獲粒子の周囲の媒体のpH又は温度が変化することにより、その電荷が変化し得るようなものである帯電しモノマー単位はそのようであることが意図される。これらの実施態様においては、捕獲粒子は、検体のサイズ及び親和性の両者の選択をもたらす。
【0034】
分子ふるい材料が帯電したコポリマーである特定の実施態様においては、帯電したモノマー単位は、特定の条件下で帯電することを可能にする部分を有していてもよい。例えば、負に帯電したモノマーは、カルボン酸基、ヒドロキシル基、チオール基、リン酸基又は負電荷を有し得る他の置換基を有する。本発明の特定の実施態様においては、負に帯電したモノマーはアクリル酸又はカルボン酸基を有する他のモノマーである。正に帯電したモノマーは、アミン、アミド基又は正の電荷を有し得る他の置換基を有する。本発明の特定の実施態様においては、正に帯電したモノマーはアリルアミン又はキトサンである。
【0035】
分子ふるい材料がコポリマーである本発明の他の実施態様においては、親和性モノマーが分子ふるい材料中に組み入れられ、これは種々のタイプの検体の誘因を可能にする。例えば、コポリマーは、タンパク質及びペプチドに対する親和性を有する親和性色素;炭水化物、核酸及び糖ペプチド又は糖タンパク質に対する親和性を有するボロン酸基;低分子量化合物に対する親和性を有するシクロデキストリン;低分子量化合物に対する親和性を有するカリックスアレーン;金属イオンに対する親和性を有するポルフィリン;及び脂質に対する親和性を有する脂肪族基を有するモノマーを用いて組み入れられる。
【0036】
本発明の特定の実施態様においては、分子ふるい材料は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)、ペンダントカルボン酸(CO2H)基が広い範囲のアミノ又はアルコール末端分子で官能化されているアクリル酸(AAc)コポリマーである。これらの分子には、アルカン、溶液の脂質含有量を獲得するための他の脂肪性部分又は色素が含まれる。本発明の特定の実施態様においては、粒子は、NIPAmのみから構成されるシェルポリマー層によって囲まれた、NIPAm AAcコポリマーからなるコアを有する。
【0037】
捕獲粒子は、更に検出可能な標識を含んでもよい。検出可能な標識な任意の手段により検出することができる任意の部分又は基質であり得る。これらには、量子ドット、蛍光標識、酵素、磁気粒子等が含まれる。検出可能な標識は、その孔及び外部表面を含む、捕獲粒子の任意の領域と関連し得る。
【0038】
検出可能な標識は、選別のための種々のクラスの捕獲粒子を含む多くの方法において有用である。例えば、種々のクラスの捕獲粒子を製造することができ、ここで、各クラスは
種々の特徴(例えば、種々のポアサイズ及び/又は種々の吸引性)を有し、それぞれは、粒子の各クラスと関連する種々の検出可能な標識を有する。これは、それがどの検出可能な標識を有するかを決定することによって、粒子クラスの特性(例えば、特定の誘因物質に対する結合能力)を識別することを可能にする。例えば、PSAに対する単鎖抗体を有する粒子はFITCで標識することができ、α−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)に対する抗体を含む粒子はTRITCで標識することができる。取り込み工程を実施した後、蛍光活性化細胞分別を用いたフローサイトメトリーにより粒子を選別し、PSA含有粒子をAMACR含有粒子から分離することができる。他の実施態様においては、捕獲粒子は、親油性カルボシアニン色素で官能化し、その脂質成分を、薄層クロマトグラフィーを用いて分離することができる。
【0039】
捕獲粒子は、電場、磁場の適用により、レーザーピンセットの使用を介して、又は溶媒との親和力により、溶液又は他の媒体中で移動し得る。捕獲粒子が全体的な電荷を有している場合、それらは電場の適用により移動することができる。分子ふるい材料が帯電を有するように分子ふるい材料を修飾する場合、それらは特に適用可能である。例えば、電場は負に帯電した捕獲粒子を含む媒体の全域で適用することができ、捕獲粒子は、電場を適用する装置の正電極に向かって移動する。
【0040】
捕獲粒子は、磁石に誘引される磁気部分を有するように修飾されてもよい。本発明の特定の実施態様においては、これは、Fe3O4コアのような磁気コアの周囲に分子ふるい材料を形成することによって実施することができる。他の実施態様においては、捕獲粒子の表面は、磁気ナノ粒子によって完全又は部分的にコーティングされていてもよい(例えば、Wong et al.,J.Magnetism and Magnetic Materials,2007,311(1),219−23を参照されたい)。更に、ポリマーに直接組み込まれた磁気成分を有するコポリマーが形成されることが意図される。
【0041】
捕獲粒子は、特定の標的に容易に結合し得る表面マーカーを有するように、例えば、粒子が、それぞれストレプトアビジン、グルタチオン及びニッケル基質により結合し得るビオチン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ又は6−ヒスチジンタグを有するように修飾することができる。粒子は、DTTによる逆転し得るジスルフィド結合から形成されるような、可逆性架橋剤を用いて形成することもできる。本発明のこれらの実施態様においては、捕獲粒子を含む溶液を適切な基質を有するビーズと混合することができる。例えば、ビオチン標識粒子をストレプトアビジン標識ビーズと混合することができる。お互いに結合させた後、遠心分離又は当該技術分野において公知の他の技術を用いて溶液からビーズを除去し、それにより捕獲粒子を戻すことができる。
【0042】
本発明の特定の実施態様は、溶液相捕獲粒子、及び下記工程の1種以上、例えば、捕獲粒子が、所定の分子量又は粒径の検体を可逆的かつ選択的に捕捉するのに効果的な条件下で、検体を含む試料を溶液相捕獲粒子と接触させる工程(ここで、捕獲粒子は、所定の粒径又は分子量の検体を可逆的に捕捉及び放出し得る分子ふるい材料から構成されている)を有する、試料から検体を分離するための捕獲粒子の使用方法に関する。
【0043】
本発明の捕獲粒子は、プロテアーゼ及び他の要因による分解から検体を保護することを可能にする。捕獲粒子は、粒子のサイズカットオフ及び/又は親和性により粒子からプロテアーゼを排除することによりこれを実施し得る。捕獲粒子は、検体とプロテアーゼは、プロテアーゼが検体を切断するのに必要な立体配置を防止するほど硬く結合するので、捕獲粒子は、プロテアーゼが検体を分解することも防止し得る。これらのケースにおいては、プロテアーゼは捕獲粒子中に侵入し得るが、検体は内部にあるままである。
【0044】
本発明の捕獲粒子は、少量の検体を液体から濃縮するためにも用いることができる。検体が、液体中に低濃度で存在する場合、本発明の捕獲粒子を、元の液体から検体を集めるために用いることができる。検体を集めた後、少量の第二の液体中に溶出させることができる。この方法において、元の液体中に、種々の分析方法の検出限界より低い濃度を有する検体を、容易に検出し、分析することができる濃度を有するように濃縮することができる。
【0045】
本発明の特定の実施態様においては、開示された捕獲粒子は、検体を分離及び/又は特定することができるキットの一部であり得る。キットは、検体を含む溶液又は他のタイプの混合物を集めるための任意のタイプの収集装置を有していてもよい。ある実施態様においては、収集装置は、バクテイナー(vacu −tainer)、チューブ,カートリッジ、又はマイクロ流体素子のような容器である。捕獲粒子が容器中に存在し得るか、又は捕獲粒子の層が容器上に形成され得ることが意図される。他の実施態様においては、収集装置は、捕獲粒子の層を含み得る繊維又はポリマー材料のシートである。これらの実施態様においては、捕獲粒子は表面に塗布されるパッチのタイプに形成され、ここから興味のある検体が分離されるか、又は興味のある検体が通過する。一実施態様においては、パッチは、皮膚に塗布し得るパッチであってもよく、皮膚表面から検体が分離されることを可能にする。
【0046】
本発明により、粒子が種々の工程の間を連続的に移動するシステムも意図される。一般的に:
工程1:捕獲粒子を検体を含む試料と混合し:
工程2:捕獲粒子を、捕獲されなかった溶液相部分から分離し:
工程3:検体を粒子から溶出し、分析する。
【0047】
本発明のこれらの実施態様においては、試料をシステムに導入し、あらゆる他の使用者の操作の必要なしで結果を得られるように、システムは、完全に内蔵型であり、自動化されている。このようなシステムはマイクロ流体システム中に含まれているか、大きいベンチトップ型のシステムであってもよい。
【0048】
一般に、捕獲粒子を含むチャンバーに試料を加え、興味のある検体を隔離する。次いで、捕獲粒子を、明細書に記載されたサイズまで減少させ、検体を内部に捕捉するようにチャンバーの環境条件を変化させる。次いで、捕獲粒子を、本明細書に記載された方法を用いて新しいチャンバーまで移動させ、検体を残りの試料から分離することができる。
【0049】
分析は、質量分析法、核磁気共鳴、赤外分析法、固相免疫測定法(例えば、ELISA等)、免疫沈降法、比色分析法、放射分析アッセイ、蛍光アッセイ、フロービーズ/
サイトメトリー、ウェスタンブロッティング、タンパク質配列決定及び代謝産物、薬剤、低分子化合物又はタンパク質の分析のための化学的分析法を含む、当該技術分野において公知の方法を用いて実施することができる。
【0050】
溶液相捕獲工程以上に、粒子は、層を浸透し、平板を満たすために、支持体表面をコーティングするためにも用いることができる。他の具体例には、メッシュを維持する粒子を有するパッチのコーティング、皮膚の上又は中に存在する検体を捕獲するための、このパッチの患者の皮膚への塗布が含まれる。
【0051】
血液、血液成分、脳脊髄液、リンパ液、細胞可溶化液、組織可溶化液、大便、尿、リンパ液、腹水、精液のような体液;土壌試料又は抽出物、海、池又は川の水のような環境試料;給水塔及び飲用水試料;化学合成反応に由来する試料;食品試料等が含まれるあらゆる試料が利用できるが、これらに限定されない。例えば、本明細書で議論する方法は、食品、飲用水及び環境試料中の汚染物質を検出するために用いることができる。有機分子、無機分子、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、薬剤、抗体、リガンド、リポタンパク質、糖タンパク質、脂肪酸、グリカン、それらの誘導体及びそれらの組み合わせを含む、興味のあるあらゆる分子を、本発明を用いて収集することができる。検体は、細胞表面から流れ、細胞から放出される(例えば、エクソサイトーシス、溶解等により)生体分子、代謝産物、分解産物、プロテアーゼ分解産物等を含むが、これらに限定されない。本発明の一実施態様においては、前記方法は、体液中の低分子量の分子、特に、可溶性であり、体液中で浮遊性であるか、キャリアタンパク質と関連する、正常な糸球体(腎臓)ろ過(例えば、30,000ダルトン未満の分子)により身体から排除されるものを捕獲するために用いることができる。一般に、本発明は、検出が望まれる興味のある検体を捕獲するために用いることができる。粒子は、反応生成物を選択的に捕獲するためのあらゆる化学反応の間、溶液中で用い、その結果、溶液中の生成物濃度を低下させることができる。これは、化学反応を完了させるか、時間とともにそれらが蓄積するように、1種以上の反応種を隔離することによって完了を促進することを可能にする。体液に関しては、本発明の捕獲粒子は、外因性分子、すなわち、試料が得られた被験者から、被験者の身体に取り込まれた分子を検出するためにも用いることができる。外因性分子は、被験者に積極的又は受動的に取り込まれ得る。外因性分子の具体例には、薬剤、食品、たばこ、環境製品及び汚染物質(例えば、殺虫剤、一酸化炭素等)中に含まれる分子又はそれらの形状の分子が含まれ、基本的に、あらゆる経路を通じて被験者の身体に侵入する任意の分子が含まれる。外因性分子は、身体において処理され、変換された代謝産物、副産物及び分解産物をも含む。粒子は、血液に由来する毒素を除去する手段としても用いることができる。粒子は、心臓麻痺を予防するために、尿素を除去し、又はコレステロールを過度に除去することによって身体の透析のために適用することができる。
【0052】
異なる型の捕獲粒子を同時に用いることができ、それぞれが捕獲することができる分子種に関して種々の特徴を有していることをも意図する。異なる型は、例えば蛍光色素により標識することができ、後に、例えば、フローサイトメトリーを用いて分離することができる。この方法は、複数の種の全体の抽出及び分離を単一工程で実施することを可能にする。
【0053】
本発明の更なる実施態様
【0054】
バイオマーカーの濃縮及び保存のためのナノ粒子技術
【0055】
低濃度及び保存の課題に対処するため、特定の実施態様においては、本発明は、血漿のようなタンパク質の複合混合物に加えた場合に、溶液中の選択したクラスのタンパク質を収集(蓄積する)「スマート」ナノ粒子を形成し、評価することを目的とする。送達可能な技術は、サイズ及び/又は親和性の両方に基づいて溶液中の分子を分類することができるユニークな構造を有する新規な多孔性収集粒子であろう。更に、粒子の空隙率は、捕獲した検体(例えば、タンパク質)を、後に分析のために遊離することができるように、熱的に修飾可能であり得る。更に、粒子中に捕獲されたタンパク質又は化学物質は、酵素又は微生物の増殖による分解から保護され得る。
【0056】
この提案された技術は、血液、尿及び組織中の少量のタンパク質及びペプチドを濃縮、分離及び保存する手段にのための要求に対処することができる。このような低濃度分子は、小さい疾患、障害の状態にに関する特定の情報を含むことが予想される。一実施態様においては、提案された技術は、収集管中に予め分配され得るスマート粒子からなる。いったん、ナノ粒子が体液又は組織可溶化液中に懸濁されると、例えば、溶液中で、粒子は自動的に(一工程で)アフィニティクロマトグラフィー及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーを実施する。従って、スマート粒子中に捕獲されたタンパク質及び他の代謝産物(バイオマーカーの候補)は、結合及び/又は隔離され、実質的な分解から保護される。スマート粒子集団のポアサイズ及び親和性を同調させることにより、非常に特異的なバイオマーカーのサブセットが捕獲され、入手した液体の全体の容量から濃縮することができる。これは、低分子量のプロテオミックバイオマーカーの室温での保存及び濃縮を可能にする。収集管の分析研究室への輸送に次ぎ、任意の分析技術を用いた特徴づけのために、結合/隔離バイオマーカーの積み荷を遊離することができるように、ナノ粒子を容易に分離することができる。他の方法においては、バイオマーカーはナノ粒子の破壊的処理によって接近することができる。
【0057】
この技術は低価格であり、継ぎ目のない収集及び血液バイオマーカーの即時の保存のための所定の臨床の場において適用可能である。これは、大規模研究の病院環境を越え、多くの患者が治療を受ける自由診療に非常に強く広がっている。均一の「スマート」の1ミクロンサイズのナノ粒子の大量生産が確実に可能であるが、大きいか小さい、他のサイズのものも可能であり、同様に適用可能である。後述するように、粒子は、血清のような分子の複合混合物に由来する標識された分子のサブセットを捕獲、蓄積及び精製することができる。
【0058】
バイオマーカー収集のためのスマート粒子選択の原理
熱応答性ポリマーゲルは、一般に、「スマートゲル」と呼ばれ、局所的な溶液温度、pH又は外部エネルギー適用の変化に応答して制御可能な、非線形な応答を示す(Saunders,et al.,1999 Advances in Colloid and Interface Science 80,1;Pelton,2000,Advances in Colloid and Interface Science 85,1)。このようなポリマーは、ゲル容量の変化をもたらす熱動力学的に有利な相分離を受ける架橋された鎖から構成される(Tanaka,et al.,1979,Phys.Rev.Lett.42,1556;Tanaka,et al.,1978,Phys.Rev.Lett.40,820)。ゲルは、容器の形状を示すために大量に合成され、又は直径4nm〜100μmの範囲の粒子中に合成することができる(Tanaka,et al.,1980,Phys.Rev. Lett.45,1636;Tanaka,et al.,1985,Phys.Rev.Lett.55,2455)。各ケースにおいて、材料の内部構造は、軟質で、多孔質構造を作製する柔軟な鎖から構成され、これは溶液の局所的な状態に従って可逆的に拡大または縮小され得る。「スマート」ポリマーの例は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(pNIPAm)であり、これは水中で31℃の低臨界溶液温度(LCST)を有する(Jones,2003,School of Chemistry and Biochemistry,Georgia Institute of Technology,Atlanta,GA,p.193)。この温度以下では、ポリマーマトリクスは、溶媒分子ともに膨張し、ここで、ポリマー骨格に沿って水とアミド基との間に水素結合が生じる(Jones,2003,School of Chemistry and Biochemistry,Georgia Institute of Technology,Atlanta,GA,p.193)。温度がLCSTを超えて上昇すると、水素結合が破壊され、水は内部マトリクスから排除され、一方、疎水性相互作用がイソプロピル基間で顕著になり始め、全体の容量の減少をもたらす。この技術は、同定のための生体マーカーを分離するために適用することができる。
【0059】
本発明の一態様は、捕獲粒子の分子ふるい部分を記載するが、他の態様は、検体結合(バイト捕獲)部分に関する。バイト捕獲及び分子ふるいを単一の粒子中に組み合わせることは可能である。タンパク質の複合混合物を分画する一般的な手段は、親和性及び分子の大きさに基づく2種の連続的なクロマトグラフィー工程を用いることである(Adkins,et al.,2002,Mol Cell Proteomics 1,947)。血漿のような複雑で非常に濃縮された混合物の分析は、通常、試料の希釈、並びにクロマトグラフィー及びゲル電気泳動の前の、アルブミンのような大量に含まれるタンパク質の除去から開始される。本明細書に開示されるスマート粒子技術は、クロマトグラフィー又は希釈を使用せずに分離工程の両方を達成する。より具体的には、付加される選択性は、バイオマーカーの制限された集団を結合/隔離する粒子中へのバイト分子の添加を介して可能にされる。例えば、アクリル酸(AAc)は、粒子中に組込まれ、同調可能な親和性樹脂として機能し得る。 例えば、低いpH(3.5)において、粒子内のAAcは、優先的にプロトン化され、そのpHで正の電荷を有する。より高いpH条件下で、AAc分子は、部分的又は優先的に脱プロトン化され、これは内因性の、正に帯電耐電したタンパク質についての電荷ベースの親和性エレメントを作製する。マイクロゲルにAAcを組み込むことにより、電荷特性及び粒子のポアサイズ両方が、血清のような複合混合物からタンパク質を二重に分画する手段を提供する。
【0060】
本発明の他の態様は、検体の隔離/結合による保存を扱い、それ故、室温において溶液中の検体(例えば、バイオマーカーの候補)を安定化することを可能にする。 これは、多孔質ナノ粒子内へのそれらの隔離により達成され得る。ナノ粒子内に隔離されたタンパク質又は分子は、液相分解酵素による接近に利用可能ではないと仮説が立てられる。このような酵素は、それらのより大きな大きさのために粒子の孔を浸透することができないかもしれない。
【0061】
さらに、バイオマーカー候補分子の親和性捕獲及び固定化は、酵素基質複合体が粒子中で機能的に形成し得ないようにバイオマーカー分子の3−D利用能を妨げるであろう。この概念は、沈降又は沈降固定によるタンパク質の安定化にある程度類似する。キャピラリー電気泳動及び質量分析配列決定を適用することで、本発明者らは、外因性セリン又はメタロプロテイナーゼにより誘導される分解を研究することができ、粒子中に捕獲されたタンパク質対溶液中に遊離するそれらの、断片化の速度を比較することができる。公知の、及び予め特徴付けられた、または予め標識されたタンパク質の所定の混合物から開始して、本発明者らはヒト血清及び血漿参考試中ののタンパク質の捕獲及び安定化を進行することができる。
【0062】
捕獲−粒子
特定の実施態様においては、本発明は、試料から分子種を分離及び捕獲するための、方法及び組成物を提供する。本発明の一実施態様においては、所定の分子サイズ、質量及び/又は親和性を有する分子種を特異的に捕獲する能力を有するスマート粒子は、様々な大きさを有する、種々の複数の分子種を典型的に含む試料から興味のある分子を単離するために用いられる。粒子は試料に添加され得、次いで、興味のある分子種を捕獲するために利用され得る。
【0063】
粒子は、以下の機能、すなわち:a)捕獲すべき分子のサイズ、質量、及び/又は親和性を選択する能力、及び/又はb)物理的又は化学的な処理に応じて所望の分子を捕獲及び/又は放出する能力の1種以上を有し得る。粒子は、この課題を微量中で達成し得、親和性カラム、逆相カラム、並びに他の標準的な精製試薬及び装置を利用する従来の多段階の手順についての必要性を排除する。更に、種々のクラスの捕獲−粒子を用いることができ、それぞれは、それらが捕獲し得る分子種に関して種々の特性を有し、従って複数の種の全体的な抽出プロフィールを単一工程において実施することを可能にする。
【0064】
本発明の一態様は、液相捕獲−粒子、及び試料から検体を単離することにおいて、それらを用いる方法を提供し、この方法は、1つ以上の以下を含む工程:検体を含む試料と液相捕獲−粒子とを、該捕獲−粒子が選択的に及び場合により可逆的に、所定の分子量または粒径の分析物を捕捉するのに効果的な条件下で、接触する工程を包含し、ここで前記捕獲−粒子は、所定の粒径又は分子量の検体を捕捉し得、場合により放出し得る分子ふるい材料を含む。本発明の他の態様は、以下により詳細に記載されるように、不可逆的に検体を捕捉する特定の捕獲−粒子を用いる。
【0065】
血液、血液成分、脳脊髄液、リンパ液、細胞可溶化液、組織可溶化液、大便、尿、リンパ液、腹水、精液のような体液;土壌試料又は抽出物、海、池又は川の水のような環境試料;給水塔及び飲用水試料;化学合成反応に由来する試料;食品試料;食品加工試料(例えば、鶏肉処理工場由来の)等を含む、あらゆる試料を、制限なく用いることができる。例えば、方法は、食品、飲用水及び環境試料中の汚染を検出するために用いることができる。
【0066】
検体
「検体」なる用語は、興味のある任意の分子を意味し、有機分子、無機分子、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせが含まれる。検体には、分析物は、制限されないが、細胞表面から流れ、細胞から遊離する(例えば、エキソサイトーシス、溶解等により)代謝産物、分解産物、プロテアーゼ分解産物等が含まれるが、これらに限定されない。本発明の一態様においては、前記方法は、生物学的液体中の低分子量の分子、特に通常の糸球体(腎臓)ろ過により身 体から排除され、液体中で可溶性であり、浮遊するか、又はキャリアタンパク質と結合する分子(例えば、30,000ダルトン未満の分子)を捕捉することを利用し得る。一般に、本発明は、約60,000Da未満、約50,000Da未満、約40,000Da未満、約30,000Da未満、約20,000Da未満、約10,000Da未満、約8,000Da未満、約6,000Da未満、約4,000Da未満、約2,000Da未満、約 1,000Da未満を含むが、これらに限定されない、その検出が所望される興味のある任意の検体を捕獲するために用いることができ、それぞれ記載された範囲内の全ての個々の値を含む。
【0067】
体液に関して、本発明の捕獲−粒子は、外因性分子、すなわち、試料が得られた被験者の身体に導入された分子を検出するためにも用いることができる。外因性分子は、被験者に積極的又は受動的に導入され得る。外因性分子の具体例には、薬物、食品、タバコ、環境的産物、および汚染物質(例えば、殺虫剤、一酸化炭素等)、及び任意の経路を介して被験者に入る本質的に任意の分子が含まれる。外因性分子には、身体中で処理又は転換されるような、それらの代謝物、副生成物及び分解産物が含まれる。
【0068】
捕獲粒子は、生体内、生体外及び試験管内を含む任意の環境において用いることができる。例えば、粒子は、生体内又は生体外の情況において血液から毒素を除去するための手段としても用いることができる。例えば、粒子は、血液からクレアチニン及び尿素のような毒性の老廃物を除去するために用いることができ、従来の透析についての要件を置き換える。
【0069】
分子ふるい材料
本発明の捕獲−粒子は、分子ふるい材料(又は分子ふるい部分)から構成され得る。これにより、材料は、多孔質、格子状、蜂の巣状であるか、又は所定の分子の質量又は重量の、他の分子を排除しながらの通過を可能にする。分子ふるいの孔のサイズは、検体が捕獲−粒子を浸透し得るか否かの決定要因である。粒子は、それ自体、任意の適切な大きさ、例えば、それぞれ記載される範囲内の全ての個々の値を含む、約10μm未満、約10μm〜約1μm、約1μm〜約100nm、約1nm〜約100nm、約5nm〜と約50nm;約10nm〜約20nm;約10nm〜約1nmであり得る。
【0070】
分子ふるい材料中の孔は、所望されない分子の排除に必要な直径に対して、提供される方法に基づいて設計することができる。約2〜約20nm、1nm〜1μm、 1nm〜10nm、1nm〜50nm、10nm〜50nm、50nm〜100nm、10nm〜200nm、50nm〜500nm、1nm〜10nm、1nm〜5nm、および他の範囲の平均孔径が想定される。
【0071】
捕獲−粒子の任意の特徴は、いったん検体が分子ふるい材料に侵入すると、これを「捕捉する」能力である。捕捉することは、物理的又は化学的な処理に応じて収縮及び/又は膨張し得る分子ふるい材料を用いることにより達成することができる。例えば、材料は、化学的又は物理的処理に供される場合、検体を収縮又は縮小し、それにより検体を内部に捕捉する材料が用いられ得る。このような材料は、「スマート材料」とも呼ばれ、これは物理的又は化学的な処理に供することにより、形状及び大きさを変化する能力を有する。この特性を有する任意の材料が制限なく用いられ、例えば、ポリアクリルアミド及びその誘導体(例えば、Jones and Lyon,Macromolecules,36:1988−1993,2003;Jones and Lyon,Macromolecules,33:8310−8306,2000)及び他のN−アルキル置換アクリルアミド;ポリ(N−ビニルアルキルアミド);ポリ(メタクリル酸);ポリ(ベンジルグルタメート);ポリ(2−エチルアクリル酸);ポリ(4−ビニルピリジン);強誘電性液晶エラストマー;圧電性ポリマー;「スマート」ゲル、セラミクス、合金及びポリマーが含まれるが、これらに限定されない。例えば、Galaev et at.,Pages 835−849;Zentel;Pages 850−860;Harrison and Ounaies,Pages 860−873;in Encyclopedia of Smart Materials,Volumes 1−2,Edited by,Schwartz,Mel(C)2002 John Wiley & Sonsも参照されたい。捕獲−粒子は当該分野において知られるように、または上記の参考文献のいずれかにおいて記載されるように、日常的に製造することができる。
【0072】
本発明の一実施態様において、捕獲−粒子はポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)構成要素を何ら含まない。さらに、この実施態様における捕獲粒子はまた、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−アクリル酸)を排除する。
【0073】
分子ふるい材料の物理的又は化学的な処理
分子ふるい材料を収縮及び/又は膨張するために用いることができる物理的及び/又は化学的な処理は、熱、電気、磁気、超音波、圧力、放射、レーザー、浸透圧、pH、塩、酵素、酸化/還元、脱水/再水和、紫外線、照射、強い赤色光の処理を含み得る。
【0074】
分子ふるい材料は、可逆的又は不可逆的に収縮又は縮小し得る。例えば、捕獲−粒子は溶液中に配置され、ここでは検体が浸透され得、次いで検体を捕獲するために不可逆的に縮小し得る。このことは、目的が溶液から混入物を除去することである場合に有用であり得、捕獲された検体の性質を分析する、又は更に評価する必要がなく、従ってこれが膨張されることを要求しない。又は、不可逆的な捕獲−粒子は、粒子の完全性を破壊する超音波又は他の破壊的な力により分解され得る。
【0075】
一実施態様においては、捕獲−粒子は検体の捕獲及び/又は隔離を許容するために膨張及び収縮し得る。
【0076】
他の実施態様においては、捕獲−粒子は、検体の取り込みを増加又は減少し得る任意の有意な程度に膨張又は収縮しない。すなわち、粒子の容量が実質的に固定される。このような捕獲粒子の例としてはウイルスタンパク質、クラセリン、炭素ナノチューブ、又は以前に記載される膨張/収縮を許容しない種を含む粒子が含まれる。クラセリンに由来する多角形の構造の調製を説明する例は、本明細書中に参考として援用される、Jaarsveld ら、Biochemistry 1981、20、4129〜4135において開示されている。
【0077】
検体結合(親和性)部分
捕獲粒子は、選択的な検体結合のために表面タンパク質特性を含み得、及び/又はこのような結合特性を付与する部分の付着により改変され得る。
【0078】
捕獲−粒子は、更に、検体を結合する、親和性リガンド又は「バイト」を含み得る。このような用語は、興味のある検体を特異的に付着し得る物質を意味し得る。典型的な具体例には、抗体及びその誘導体(例えば、Fabフラグメント及び単鎖抗体);結合タンパク質(例えば、特異的なリガンドについての受容体又はそれらのフラグメント);結合対(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン);基質;金属;キレート剤;核酸;アプタマー;酵素結合ポケッ ト;レクチン;及び/又は興味のある検体に特異的な親和性基が含まれるが、これらに限定されない。「特異的」なる用語は、親和性リガンドが、試料中の興味のある検体に選択的に結合し、非標的検体からそれを区別するために用いることができる。これが背景ノイズ(「非特異的結合」)を上回る検体を検出するために用いることができるという意味において、これは特異的である。親和性リガンドは、これが、試料中の他の成分よりも、興味のある検体について高い親和性を有するように選択することができ、検体について、任意のネイティブな結合タンパク質と競合しないことを可能にする。
【0079】
親和性リガンドは、任意の適切な方法において、捕獲−粒子と会合され得る。例えば、それらは、その周りで捕獲−粒子を形成するために分子ふるい材料が重層又は蒸着/核形成され得る核として用いられ;それらは、粒子を形成する前に分子ふるい材料に直接的に取り込まれ得(すなわち、ここではリガンドは、分子ふるい材料の成分である);それらは分子ふるい材料の孔表面に通常結合され得る(共有結合的に又は非共有結合的に);等である。親和性リガンドはまた、リガンドを収容するのに十分大きい孔隙率を達成するために適切な物理的又は化学的な処理を介して分子ふるい材料を膨張させ、次いでこれが粒子中に侵入するのに有効な条件下で分子ふるい材料とリガンドとを接触させることにより、捕獲粒子中に負荷され得る。粒子が、いったん親和性リガンドとともに負荷されると、これは、適切な物理的又は化学的な処理により縮小し得、それにより分子ふるい材料の空隙率を減少し、そのため標的検体はなお粒子に浸透し得るが、より大きな検体は排除される。分子ふるいの空隙率は、親和性リガンド負荷工程の後に、親和性リガンドの分散をブロックするのに十分に小さいポアサイズに減少され得、親和性リガンドを分子ふるい材料に連結することを不要にする。しかし、所望であれば、結合プロセスが、これを分子ふるい材料に連結するために用いられれ得る。
【0080】
親和性リガンドで誘引された捕獲−粒子は、検体の大きさ又は質量についての選択に加えて、検体選択工程を提供する。例えば、捕獲−粒子は、検体がその中に浸透することを可能にするために膨張することができ、次いで検体、更に捕獲−粒子と会合される親和性リガンドに特異的に結合するその能力により選択され得る。結合工程が達成された後(例えば、平衡が達成された後)、粒子は、分離され、未結合の非標的検体を除去するための洗浄工程に供され、次いで必要に応じて化学的又は物理的な処理により縮小する。
【0081】
捕獲−粒子は、更に親和性部分として抗体をも含み得る。他の親和性部分の候補としては、可溶性受容体、ポリアミン類似体、アンチセンスオリゴヌクレオ チド、RNAiポリヌクレオチド、リボザイム等が含まれるが、これらに限定されない。抗体及び可溶性受容体は、それらが興味のある検体を標的とする親和性の部分として特に興味深い。
【0082】
抗体
親和性部分には、抗体と、検体と特異的に結合するそれらの機能的等価物とが含まれる。「免疫グロブリン」及び「抗体」は、交換可能に、及びそれらの最も広い意味において、本明細書中で用いられる。従って、それらは、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2個の無傷の抗体から構成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを、それらが所望の生物学的活性を示す限り包含する。
【0083】
抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域は、同種抗体の特定のエピトープを認識するか、又はそれに結合する。「エピトープ」なる用語は、免疫グロブリンの可変領域と結合する抗原上の特異的な結合部位又は抗原決定基を意味するとして用いられる。エピトープは、線状、すなわち、アミノ酸残基の配列、免疫グロブリンが 3−D構造を認識するような配座、又はそれらの組み合わせから構成され得る。
【0084】
モノクローナル及びポリクローナル抗体
本発明の免疫グロブリンは、ポリクローナル又はモノクローナルであり得、当該技術分野において周知の任意の方法により生成することができる
【0085】
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)、腹腔内(ip)又は筋肉内(im)注射により動物に若起される。免疫される種において免疫原性であるタンパク質に関連の抗原を結合させることは有用であり得る。さらに、ミョウバンのような凝集剤が、免疫応答を増強するために適切に使用される。
【0086】
「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に相同的な抗体の集団から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向される。更に、異なる決定基に対して指向される異なる抗体を、典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、 抗原上の単一の決定基に対して指向される。
【0087】
それらの特異性に加え、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンにより汚染されていながら、合成され得るという点において有利である。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法により、または組換えDNA法により生成することができる。モノクローナル抗体はまた、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0088】
抗体フラグメント
「抗体フラグメント」は、無傷の抗体の部分、好ましくはその抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体フラグメントの具体例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、二重特異性抗体、線状抗体、単鎖抗体分子、及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0089】
種々の技術が、抗体フラグメントの生成のために開発されている。伝統的に、これらのフラグメントは無傷の抗体のタンパク質分解を介して得られる。当該技術分野において周知の2種の分解方法には、パパイン消化及びペプシン処理が含まれる。抗体フラグメントは現在では、更に組換え宿主細胞により直接的に生成することができる。
【0090】
二重特異性抗体
本発明の二重特異性抗体は、2種の抗原結合部位を伴う小さな抗体フラグメントである。各フラグメントは、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメインに連結された重鎖可変ドメインを含む。短かすぎて同じ鎖上の2個のドメイン間での対を形成しないリンカーを用いることにより、ドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対合することを余儀なくされ、2個の抗原結合部位を作製する。
【0091】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野において周知である。完全長の二重特異性抗体の伝統的な生成は、2個の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、ここでは2個の鎖は異なる特異性を有している。しかし、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して生成することもできる。
【0092】
捕獲−粒子は、更に、検出可能な標識を含んでもよい。「検出可能な標識」なる用語は、、任意の手段により検出することができる任意の部分又は物質を意味する。これらには、量子ドット、蛍光標識、酵素、磁性粒子等が含まれる。検出可能な標識は、捕獲−粒子の任意の領域と会合することができ、その孔及び外部表面を包含する。検出可能な標識は、多くの方法において有用であり、異なるクラスの捕獲−粒子を分別するための方法を包含する。例えば、種々のクラスの捕獲−粒子を生成することができ、ここでは各クラスは異なる特性を有し(例えば、種々のポアサイズ及び/又は種々の親和性リガンド)、それぞれは、各クラスの粒子と会合される、種々の検出可能な標識を有する。これは、粒子のクラスの特性(例えば、特異的な抗原に結合し得る)が、それが保持する検出可能な標識を決定することにより同定されることを可能にする。例えば、PSAについての単鎖抗体を伴う粒子は、FITCで標識することができ、[アルファ]−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)に対する抗体を含む粒子は、TRITCで標識することができる。捕捉工程を実施した後、粒子は、蛍光活性化セルソーティングを用いて、フローサイトメトリーにより分別され、AMACRを含有する粒子からHAを含有する粒子を分離することができる。
【0093】
精製法
本発明の捕獲粒子は、試料から、興味のある検体を単離するための精製プロトコルにおいて用いられ得る。上述したように、捕獲粒子は、大きさ及び親和性に基づく検体の精製を可能にし、本発明は、興味のある検体を保存及び研究するために、試料からの興味のある検体の迅速な単離を可能にする。これらの検体は、試料中の酵素又は他の分子からの分解を防止するために、捕獲粒子中に保存される。
【0094】
診断法
本発明はまた、所定の分子量、粒径、又は所定の親和性の検体を、捕獲−粒子が選択的に結合するために有効な条件下で、検体を含む試料と、液相捕獲−粒子とを接触させ、次いで捕獲粒子に選択的に結合される検体を同定することにより、疾患を診断する方法を包含する。同定された濃度における試料中の検体の存在は、病状の特徴である。検体の存在を検出することは、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、質量分析法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、マイクロアレイ法、免疫蛍光法、ノーザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及びインサイチュハイブリダイゼーションのような当業者に周知の方法を用いて実施することができた。
【0095】
キット
特定のキットの実施態様においては、捕獲粒子は、精製又は診断の方法における使用に適切な形態において提供される。キットは一般に、捕獲粒子、並びに説明書、及び精製または診断方法を実施するために必要な物質を提供する。これらのキットは、試料を保存する医療機関における医師による、又は血清検体の精製および単離を開始するその他の人による使用について想定されている。
【0096】
上記で引用された全ての刊行物の開示は、それぞれが個々に参照として組み入れられるのと同じ程度に、それらの全体が本明細書中に参照として明らかに組み入れられる。
【0097】
ある実施態様においては、捕獲−粒子は分子ふるい部分及び検体結合部分を含み、ここで分子ふるい部分、検体結合部分、又はその両方は、改変された空隙率を有する架橋された領域を更に含む。
【0098】
ある実施態様においては、捕獲粒子は、分子ふるい部分及び検体結合部分を含み、ここで分子ふるい部分、検体結合部分、又はその両方は、約60kDaよりも大きな分子を排除するのに十分な孔の寸法を含む。
【0099】
一実施態様においては、前記検体結合部分は、検体を化学的又は静電的に結合又は隔離することができる少なくとも1種のタイプの部分を含む。従って、検体は捕獲−粒子内の領域に効果的に保持される。検体と検体結合領域との間の力は、共有結合、ファンデルワールス力、疎水性−疎水性、水素結合、親水性の引力、イオン性の引力、又はそれらの任意の組み合わせの力であり得る。
【0100】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、その間の全ての個々の値を伴う約2〜約20ナノメートルのポアサイズを含む。
【0101】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、その範囲内の全ての個々の値を含む、約100nm未満のポアサイズを含む。
【0102】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、約60kDaよりも大きい大きさを有する分子を排除するようにされたポアサイズを含む。
【0103】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、アルブミンを排除するようにされたポアサイズを含む。
【0104】
他の実施態様においては、捕獲粒子は、アルブミン、約60kDaよりも大きな大きさを有する分子を排除しながら、1404Daの大きさの分子の浸透を可能にするのに十分な大きさにされた孔を含む。
【0105】
前記、及び図面中に引用された全ての出願、特許及び出版物は、全体として参照として本明細書に組み入れられる。本発明の特定の実施態様は、以下の非限定的実施例において説明される。請求項に記載された本発明の範囲及び精神の範囲内である、本明細書に明確に示されていない他の実施態様があることは当業者に明らかであろう。
【0106】
本明細書中に記載される実施例は、本発明の具体例であり、それらに限定されることは意図されない。本発明の種々の実施態様が、本発明に従って記載されてきた。多くの修飾及び変化が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載及び明される技術に対してなされ得る。従って、実施例は単に実例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0107】
実施例1−N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)を組み込んだ捕獲粒子
界面活性剤を含まない沈殿重合により、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)を組み込んだ捕獲粒子を生成した。BISは架橋剤として用いられ、BIS:NIPAmのモノマー比は、得られるネットワーク密度、従って平均孔径を決定する。更に、(AAc)を含む粒子の製造は、電荷ベースの親和性バイトを取り込むために製造された。
【0108】
N−イソプロピルアクリルアミド(NIP Am)及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)、過硫酸アンモニウム(APS)、アクリル酸(AAc)は、MO,St.Louis,Sigma−Aldricから購入した。反応、洗浄及び負荷のための水は、Millipore Milli−Q水精製系で、18MΩの耐性に精製され得、0.2μmフィルターを通過される。
【0109】
全モノマー濃度(NIPAm及びBIS)は0.3Mである。粒子は、重合化の間、種々の量の架橋剤を用いて製造され、粒子の孔の大きさを代えるために 2%及び5%の総濃度の架橋剤を含む。モノマーを、コンデンサー及び温度計を備えた、250mLの三つ口の丸底フラスコの内部で、中程度の攪拌速度(磁気攪拌子)にて190mLの水中に十分に溶解した。溶液を、窒素流れの下で70℃で1時間加熱した。安定な最大攪拌速度に達した時、1.0mLの6mM APS溶液を用いて重合を開始した。窒素雰囲気下、反応を3時間継続させた。一晩、室温まで冷却した後、ミクロゲル溶液の0.5mLの一定量と、個々の1.5mL容量の遠心チューブ中にいれ、1.0mLの水で希釈した。次いで、Eppendorf 541 SRを用いて、16,100rcf、23℃で20分間遠心分離した。
【0110】
上清を他の容器に移し、ミクロゲルを、1.5mLの容量まで再懸濁させた。遠心分離/再懸濁工程を合計5回、処理を繰り返した。光子相関分光法(PCS submicron particles analyzer,Beckman Coulter)、原子間力顕微鏡(AFM)、光学顕微鏡、並びに蛍光顕微鏡による可視化による蛍光色素の取り込みを用いて、均一性及び大きさの範囲を評価した。フローサイトメトリーも、市販の蛍光標識された識別粒子の、標準としての使用を介して、相対的な大きさが割り当てられることを可能にした。
【0111】
粒子の分子排除特性を調べるめに、2%濃度の架橋剤を用いて製造した粒子を、5種の分子種:FITC(MW389)、小さいペプチドアンジオテンシンIIと結合した蛍光色素(MW1404)、インシュリンと結合したFITC(MW3500)、ストレプトアビジン(MW53000)及びアルブミン(MW66000)とインキュベートした。5種の分子の溶液中分離を実施した。5種の蛍光分子のそれぞれについて、0.1mLの精製ミクロゲルを、1.5mLの遠心チューブ中に入れた。このため、0.1mLの分子溶液を加え、ボルテックスで穏やかに混合した。粒子による蛍光色素の取り込みを、FACScan(Becton Dickinson)を用いて測定した。実験を、異なるインキュベーション時間、異なる蛍光色素分子の濃度において実施した。これらの実験は、早ければ10分以内に、小さいFITC分子が容易に粒子内に移動し、応答は濃度依存的であることを示した。蛍光標識したペプチドも粒子中に移動するが、FITCと比べるとシグナルシフトは非常に弱く、これは、粒子がサイズ介在性の選択性を有することを示す。FITC及び蛍光色素標識ペプチドの両方について、内面化のレベルは、5%架橋剤の集団よりも2%架橋剤の粒子集団が高かった。これは、高度に架橋した粒子集団の中で、より小さいナノポアサイズと一致しており、これは、ペプチドの内面化をより困難にするであろう。2%及び5%の両方の集団において、アルブミンは排除されていた。蛍光シグナル中におけるシフトがないので、ストレプトアビジン及びBSAは粒子から排除されていた。FITC標識したインシュリンは、水溶液、及びヒト血清中に混合し、その両者で調査した。血清とインキュベートした粒子は、蛍光シグナル中でシフトし、これは、複合生体液からインシュリンが収集されたことを証明する。FITC標識したインシュリンの水溶液とインキュベートした粒子は、血清と比べ、非常に強い蛍光シフトを生じた。
【0112】
2%濃度の架橋剤を用いた粒子についてSDS PAGE実験を実施し、インシュリン(MW3500)及びミオグロビン(MW17000)の取り込み、 BSA(MW66000)の排除を示した。アクリル酸官能化粒子を20mMミオグロビン溶液とインキュベートし、溶液中の全てのタンパク質を捕獲し、単純な粒子と比べた場合に、より高い取り込みを示した。
【0113】
実施例2−粒子の電子伝達
2%架橋剤を有する粒子とインキュベートした血清を、5mm長の30%アクリルアミド/ビスゲルスライスを前もって重合化した、centrilutor micro−electroeluter (Millipore)の試験管内に負荷した。電場を形成した場合、粒子が、そのタンパク質含有量を損失することなく、ゲルスライスを通って正電極へ向かって移動した。
【0114】
実施例3−ヒドロゲル粒子
溶液中で一工程で直接的に血清中の低分子量タンパク質の分配、アフィニティー分離、濃縮及び安定化を実施するためのヒドロゲル粒子の能力を、バイオマーカー分離及び分析に由来する血液のための新規な迅速な方法として分析した。定義によれば、ヒドロゲルは、大量の水を吸収することのできる三次元架橋ポリマーネットワークである(Pelton,R.Adv Colloid Interface Sci 2000,85,(1),1−33)。それらは、通常、架橋剤の存在下、通常、少なくとも2種の重合可能な官能基を有するモノマーであるモノマーの重合により製造される。ゲルは、非応答性(単純なポリマーネットワークは、水にさらされることにより劇的に膨潤する)又は応答性ゲル(追加の機能性を有し、溶媒中で温度(Li and Tanaka,The Journal of Chemical Physics 1990,92,(2),1365−1371)、pH(Jones and Lyon,Macromolecules 2000,33,(22),8301−8306;Moselhy et al.,Journal of Biomaterials Science,Polymer Edition 2000,11,(2),123−147)、イオン強度(Duracher et al.,Colloid & Polymer Science 1998,276,(3),219−231;Duracher et al.,Colloid & Polymer Science 1998,276,(10),920−929)、光(Sershen et al.,Temperature−sensitive polymer−nanoshell composites for photothermally modulated drug delivery,In 2000;Vol.51,pp293−298;Suzuki and Tanaka,Nature 1990, 346,(6282),345−347)及び電場(Tanaka et al.,Science,1982,218,467−9)のような特定の刺激に対する応答において変化を示す)に分類することができる。
【0115】
ポリ(N−アルキルアクリルアミド)は、その熱反応性が広範に研究されてきており(Pelton,R.Adv Colloid Interface Sci 2000,85,(1),1−33;Inomata et al.,Macromolecules,1990,23,4887−8)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(NIPAm)が、この群中で最も強い温度感受性を示すヒドロゲルである。粒子を含むNIPAmは、粒子中で物理的−化学的修飾を生じる容易さについての、その安定性、均一性及び多様性のために、潜在的な生物工学的応用について非常に興味がそそられる。NIPAm粒子は、溶質脱離(Kawaguchi et al.,Colloid & Polymer Science 1992,270,(1),53−57;Achiha et al.,Polym.Adv.Technol,1995,6,(7),534−540;Delair et al.,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects 1999,153,(1−3),341−353;Mattiasson et al.,Nat.Protocols 2007,2,(1),213−220;Sparnacci et al.,J Biomater Sci Polym Ed 2005,16,(12),1557−74;Haruyuki Hiratani,Macromolecular Bioscience 2005,5,(8),728−733;Nahar et al.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 2006,23,(4),259−318;Wu et al.,Journal of Controlled Release 2005,102,(2),361−372;Zhang et al.,Biomaterials 2005,26,(16),3299−309;Woo et al.,Pharm Res 2001,18,(11),1600−6;Basinska,Macromol Biosci2005,5,(12),1145−68)、細胞との相互作用(Achiha et al.,Polym.Adv.Technol,1995,6,(7),534−540)、及びハイブリダイゼーションのための固相としてのオリゴデオキシリボヌクレオチド(OND)との結合(Delair et al.,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects 1999,153,(1−3),341−353)のために、遅延した放出及び標的として放出の薬剤送達のために研究されてきた。大きさ及び空隙率は温度により調整することができるので、化学物質の取り込み及び放出を調製するための温度処理の使用は、薬物放出の制御のための媒体としての最も広範に特徴づけられたNIPAm粒子の応用の1つである(Sparnacci et al.,J Biomater Sci Polym Ed 2005,16,(12),1557−74;Haruyuki Hiratani,Macromolecular Bioscience 2005,5,(8),728−733;Nahar et al.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 2006,23,(4),259−318;Wu et al.,Journal of Controlled Release 2005,102,(2),361−372;Zhang et al.,Biomaterials 2005,26,(16),3299−309;Woo et al.,Pharm Res 2001,18,(11),1600−6;Basinska,Macromol Biosci 2005,5,(12),1145−68)。
【0116】
本研究においては、親和性バイト及び所定の空隙率を有するヒドロゲル粒子が開発され、a)血清タンパク質、ペプチド及び代謝産物の低分子量画分の迅速かつ一工程隔離、b)溶液からの標的分子の除去及び濃縮、及びc)酵素分解からの捕獲タンパク質の保護を示した。
【0117】
その高い水分含有量、同調可能な空隙率、合成に続く一貫性及び均一性、凍結乾燥に続く機能的再構成のため、NIPAmをベースとする粒子が選択される。架橋剤の割合及び温度を代えることにより、粒径及び有効空隙率を制御することが可能である。本明細書で研究された応用についての著しい利点は、そのオープン構造、高い水分含有量、ポリマー中で置換し得る二重の疎水性及び親水性化学的部分、並びに大きい表面積のために、分子を迅速に取り込む、これらの粒子の能力である。これは、溶液中の不安定な低分子量タンパク質の迅速な収集及びタンパク質の分解からの保護という目的のための重大な要求である。NIPAmの小さいサイズ、粒子径の均一性及びバッチ毎の再現性は、フローサイトメトリーにおける応用について特別な利益をもたらす。
【0118】
実施例4−ヒドロゲル粒子の合成及び特徴づけ
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)を製造し、分子ふるい特性について評価した。NIPAm及びアクリル酸(AAc)をいずれも含む第二の粒子クラス、NIPAm/AAcを製造し、図1に示すように、電荷に基づいた親和性バイトを粒子中に導入した(Pelton,Adv Colloid Interface Sci 2000,85,(1),1−33;Jones and Lyon,Macromolecules 2000,33,(22),8301−8306;Saunders and Vincent,Advances in Colloid and Interface Science 1999,80,(1),1−25)。
【0119】
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)粒子を得るため、NIPAm(1.4g)及びBIS(0.04g)を150mLの水に溶解し、メンブランフィルター(Pall Gelman Metricel)を通し、2回ろ過した。溶液を減圧下で少なくとも20分間脱気した。次いで、SDS(0.057g)をモノマー溶液に溶解し、再度ろ過した。ろ過の間、40mLの水を用いて移動及び線上した。溶液を、中程度の速度で攪拌しながら(Coning磁気攪拌子)、コンデンサー及び温度計を備えた250mLの3ツ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、溶液を70℃で1時間加熱した。安定した最大攪拌速度に到達し、10mLの脱気水に溶解したAPS(0.069g)を加えることにより重合を開始した。窒素雰囲気下、反応を70℃の温度で続行した。NIPAm/アクリル酸(AAc)粒子を、上記NIPAm粒子と同じ反応条件を用いて製造した。NIPAm(1.3g)、BIS(0.10g)及びAAc(0.072g)を150mLの水に溶解することにより初期モノマー溶液を得た。頻繁に交換する攪拌した水に対し、4℃で2週間、透析(Spectra/Por 7 dialysis membranes,MWCO 10,000,VWR)することにより全ての粒子を精製した。
【0120】
実施例5−温度及びpHに依存する粒径
温度及びpHに依存する粒径を、Photon Correlation Spectroscopy(PCS,Submicron Particle Size Analyzer,Beckman Coulter)により測定した。200秒積分時間を用いた3回の測定について平均値を計算し、各測定前に10分間、溶液を熱的に平衡化した。次いで、測定した値を、ストークス−アインシュタインの関係により粒径に変換した(Pecora,Dynamic Light Scattering:Applications of Photo Correlation Spectroscopy.Springer:1985;p436)。温度の上昇に従い、NIPAmの粒径は小さくなり(図2A)、これは熱反応性ヒドロゲルの独特の特性である(Sparnacci et al.,J Biomater Sci Polym Ed 2005,16,(12),1557−74;Haruyuki Hiratani,Macromolecular Bioscience 2005,5,(8),728−733;Nahar et al.,Crit Rev TherDrug Carrier Syst 2006,23,(4),259−318;Wu et al.,Journal of Controlled Release 2005,102,(2),361−372;Zhang et al.,Biomaterials 2005,26,(16),3299−309;Woo et al.,Pharm Res 2001,18,(11),1600−6)。NIPAm/AAc粒子は、粒径に関して同じ温度依存性を示したが、それらはpH依存挙動をも示した(図2B)。低いpH(3.5)においては、AAc基はプロトン化され、温度依存性のNIPAm/AAcの粒径は、誘導体化されていない粒子と同じである。より高いpH(4.5及び6.5)においては、AAc基は部分的にプロトン化され、粒子中の対イオン侵入により得られるポリマー鎖及び浸透圧の間のクーロン力相互作用のために平均粒径が大きくなっていると思われる(Fernandez−Nieves et al.,Macromolecules 2000,33,2114−2118;Ito et al.,Langmuir 1999,15,(12),4289−4294)。
【0121】
NSCRIPTOR(登録商標)DPN(登録商標)System(Nanolnk)を用いて、原子間力顕微鏡(AFM)により粒子を更に特徴づけた。300kHzの共振周波数及び10nmより小さい半径でシリコンチップを用いてACモードで画像を得た。1%w/vの粒子の一定量(50μL)を新たに開裂した雲母の上に蒸着し;試料を、室温で湿気の多い条件に10分間インキュベートし、蒸着を可能にし、次いで窒素フローの下で乾燥させた。これらの粒子のAFM画像(図2C及び2D)は、それらがサイズにおいて一様であり、粒子の直径が光散乱で測定したものと一致していることを示す。
【0122】
実施例6−ヒドロゲル粒子による分子ふるい
図3に概略的に示したように、溶液中で、NIPAm粒子を分子ふるい特性について試験し;ペプチドームがバイオマーカー源を豊富に含むと考えられるので(Tirumalai et al.,Molecular & cellular proteomics 2003,2,(10),1096−103;Merrell et al.,Journal of biomolecular techniques 2004,15,(4),238−48;Orvisky et al.,Proteomics 2006,6,(9),2895−902)、目的は、タンパク質及び20,000Da未満の分子量を有する低分子化合物を捕獲する粒子を作成することである。
【0123】
このサイズ範囲は、2−Dゲル電気泳動又はカラムクロマトグラフィーを用いて適切な生産量を伴う複合タンパク質混合物(例えば血清又は血漿)から分離することが困難であるか、もしそうでないなら不可能である、有益なタンパク質、ペプチド及び代謝産物を含む。粒子中の架橋の程度は、粒子のカットオフポアサイズよりも小さいサイズの分子を捕獲している間に、アルブミン及び他の大量にある分子の排除を可能にする。効果的な20,000Daの排除ポアサイズを示すものが確認されるまで、種々の架橋の程度を有する粒子を調査した。更に、粒子を、粒子をそのふるい効率を評価するために調査した。血清アルブミンは、興味のあるタンパク質及びペプチドと比べ大量に(106〜109倍)存在するので、アルブミン排除の効果及び完全性を調べる必要がある。
【0124】
2種の独立した方法:フローサイトメトリー及びゲル電気泳動を用いて、分子ふるい特性を測定した。
一定量のNIPAm粒子(50μL,10mg/mL)を、標的分子種とインキュベートし、粒子を収集した(7分、25℃、16,100rcf)。上清を除去し、粒子を1mLの水に再懸濁した。遠心分離及び洗浄を3回繰り返し、粒子の蛍光強度を、FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson)を用いて測定した。未処理の粒子のバックグラウンド蛍光シグナルを、全ての測定の基準として用いた。フルオレセインイソチオシアネート(FITC、MW 389Da)を、小さい分子の取り込み、並びにインキュベーション時間及び濃度における取り込みの依存を試験するためのモデルとして用いた。種々の濃度(5μM、20μM及び100μM)のFITCとインキュベートした粒子は、飽和に向かって濃度依存的取り込み速度を示した(図4A)。経時変化試験は、FITCの取り込みが10%v/v粒子濃度において急速に起こることを示した(図4B)。
【0125】
図5A及び5Bに示すように、FITC−BSA(MW66,000Da)とインキュベートした粒子は、粒子のバックグラウンドの蛍光と比較し、蛍光シグナルにおいて検出可能なシフトを示さず、これは、検出可能なBSAの取り込みがないか、粒子による特異的結合がないことを示す。一方、FITC−インシュリン(MW3,500Da)とのインキュベーションは、コントロールと比較し、蛍光において右方移動をもたらし、粒子によるインシュリンの取り込みが裏付けられた。FITC単独(MW389Da)、多くの代謝産物の粒径範囲における分子、及びFITC−ミオグロビン(MW17,000Da)、粒子の効果的なサイズカットオフより小さい他のタンパク質は、いずれも急速に捕獲された。
【0126】
これらの研究結果は、SDS−PAGE分析により確認された。タンパク質溶液とのインキュベーション及び洗浄後に、粒子を直接ゲルに積層した。インシュリン(図5C)及びミオグロビン(図5D)は粒子により捕捉されたが、BSAは全体的に排除された(図5FD)。
【0127】
実施例7−分子ふるい粒子への帯電したバイトの取り込みは、取り込みを有意に増進する
粒子中に捕獲されたタンパク質の濃度は、タンパク質の排出速度、及び粒子の侵入速度及びバルク溶液中の標的タンパク質濃度の間の平衡に依存依存するので、不活性の分子ふるいは、溶液中の全ての標的タンパク質を直接的に収集及び濃縮するこができない。その結果、標的タンパク質の収集を容易にし、捕獲したタンパク質が粒子から排出されるのを防止するために親和性バイトを取り込んだ粒子が構成された。
【0128】
正の正味電荷を有するタンパク質及び分子のためのバイトとして負に帯電する部分が選択された。粒子内への負に帯電したバイトの取り込みは、粒子が正に帯電したタンパク質、ペプチド及び他の生体分子を優先的に隔離及び濃縮することを可能にする。従って、粒子は、3.5よりも大きいpH値において大きい負の正味電荷を有する、NIPAm/AAcコポリマーをベースにして製造された。図6に概略的に示したように、原則として、帯電したバイトの存在は、Keqを十分に向上させ、その結果、粒子外部の溶液と比べ、粒子内部における標的タンパク質の著しく高い濃縮を達成する。
【0129】
図7Aに示すように、NIPAm/AAc粒子は、所望でないNIPAm粒子と比較し、十分に効率よく溶液から検体を濃縮した。NIPAm及びNIPAm/AAc粒子の懸濁液(10mg/mL)を、ミオグロビン(MW17,000Da,水中で20μM)と1時間インキュベートした。NIPAm粒子とのインキュベーションに次ぎ、有意なレベルのミオグロビンがバルク溶液中に残存し、多少のタンパク質が粒子に結合しており、アニオン性親和性バイトを欠如していた(図7A)。アニオン性親和性バイトを含むNIPAm/AAc粒子とのインキュベーション後、全てのミオグロビンはNIPAm/AAc粒子に捕獲され、バルク溶液には検出可能なミオグロビンは残存していなかった。NIPAm/AAc粒子の連続希釈についてのミオグロビンのバンドの強度NPIAm粒子の強度と関連させることは、NIPAm/AAc粒子が、親和性バイトを欠如する粒子と比較し、128倍優れた効率でミオグロビンを隔離することを示す。
【0130】
NIPAm/AAc粒子に関連する優れたタンパク質取り込みが実施されることを証明するため、pH5.5又はpH8のいずれかまで滴定したリン酸バッファー中、ミオグロビン(20μM)及びBSA(20μM)を含む溶液の一定量を、NIPAm/AAc粒子とインキュベートした(図7B)。遠心分離により粒子を分離し、MilliQ水で3回洗浄した。pH5.5で、ミオグロビン(pI7)は正に帯電していると予想され、タンパク質とNIPAm/AAc粒子の負に帯電したカルボキシル基との間の静電相互作用は魅力的である。しかし、pH8においては、ミオグロビンは負に帯電し、アニオン性粒子とのあらゆる静電相互作用は、実際に反発的である。これらの予想に一致し、ミオグロビンは、タンパク質及び粒子が反対の正味電荷を有するpH5.5でNIPAm/AAc粒子により効果的に隔離され、pH8においては、ミオグロビンとインキュベートしたミオグロビンが粒子中に検出されなかった(図7B)。
【0131】
約20,000Daより小さいMWを有するタンパク質及びペプチドを結合及び濃縮するためのNIPAm/AAc親和性粒子の効果を図8Aに示す。NIPAm/AAc及びNIPAm粒子を、Tris(pH7,50mM)中で、それぞれライソザイム(20μM)及びBSA(20μM)と1時間インキュベートした。次いで、粒子を1mL容量の水で洗浄し、捕獲されたタンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。
【0132】
NIPAm/AAc粒子は、溶液中に存在する全てのライソザイムを捕獲すると思われるが、BSAが粒子によって非特異的に結合することは示されなかった。ミオグロビンで観察されたように、親和性バイトを欠如するNIPAmは、ライソザイムを有意に濃縮するとは思われなかった。
【0133】
タンパク質分子量マーカーの溶液を、粒子により隔離されるタンパク質の分子量カットオフ(MWCO)を更に評価するために用いた(図8B)。溶液は、以下のタンパク質:Tris(pH7,50mM)に溶解したアプロチニン(MW6,500Da,Sigma− Aldrich)、ライソザイム(MW14,400Da,Sigma−Aldrich)、トリプシン阻害剤(MW21,500Da,Invitrogen)、炭酸脱水酵素(MW31,000Da,Sigma−Aldrich)、オブアルブミン(MW45,000Da,Sigma−Aldrich)及びBSA(MW66,000Da,Fisher Scientific)のそれぞれ0.5mg/mLで構成される。タンパク質溶液とインキュベートした、NIPAm/AAcを含む粒子が、21,500Da未満のMWを有するタンパク質分子を捕獲及び濃縮し、21,500Da以上のMWを有するあらゆるタンパク質を結合しないことがわかった。NIPAm粒子は、14,400Da以下のMWを有する、同じMWCOを示すか、14,000Da以上のMWのタンパク質を結合しない。NIPAm/AAc及びNIPAm粒子を用いて達成されたMWCO分解能は、標準的分子ふるいクロマトグラフィー41と関連づけられたものと好都合に比較され、又はそれを越える。ビーズの分子ふるい特性を更に測定するため、NIPAm/AAc粒子を、Tris(100mM,pH7)中、血小板由来成長因子B(0.003mg/mL,14,5000Da、Cell Signaling)及びBSA(0.067mg/mL)とインキュベートした。洗浄工程は上述したのと同様であった。図9におけるSDS PAGEは、完全なPDGFの取り込み及びBSAの排除を示した。PDGFは、血中に存在する少量の低分子量タンパク質の代表的モデルであり、血中のPDGF−B濃度は3.3ng/mLである(Eppley et al.,Plastic and reconstructive surgery 2004,114,(6),1502−842)。
【0134】
溶液の温度が変わった場合に粒径の劇的な変化が起こるので、MWCOにおける温度の影響を調べた。前記分子量マーカーの溶液を、25、37及び45℃でNIPAm/AAc粒子とインキュベートし、温度はMWCOに影響を及ぼさない因子であった(データは示さず)。
【0135】
実施例8−血清からの隔離
次いで、前記結果に基づき、血清のような複合溶液中に混合されている小さい分子を捕獲するための粒子の性能を現実の世界のバイオマーカーの発見及びタイプの実験の解析を模倣するための試験を行った。血清で1:10に希釈した、FITC標識したインシュリンの一定量(最終濃度40μM)を、NIPAm及びNIPAm/AAc粒子とインキュベートした。フローサイトメトリー分析は、FITC−インシュリンを含む血清中でインキュベートしたNIPAm粒子が、コントロール粒子及び血清のみでインキュベートした粒子に比べ、蛍光強度において右方移動することを示した(図10A)。
【0136】
この結果は、血清のような複合マトリクスからインシュリンを捕獲する、NIPAm粒子の性能を証明した。しかし、インシュリンのみを含む簡単な水溶液とインキュベートしたNIPAm粒子の捕獲効率は、血清とインキュベートしたNIPAm粒子で達成した効率よりも低かった。水溶液中で、2種のクラスの粒子が同じ取り込みを示したが、帯電したバイトを有する粒子は、誘導体化されていない粒子に比べ、血清中に含まれるインシュリンの捕獲において、より効率的であった。
【0137】
小さい分子、FITCについて得られたデータを確認し、延長するために、FITC標識したインシュリン(pI5.3)とインキュベートしたNIPAm及びNIPAm/AAc粒子についての経時変化取り込み試験を実施した。種々の時間間隔で集めた、FITC標識したインシュリンとインキュベートしたNIPAm及びNIPAm/AAc粒子のフローサイトメトリー分析と関連する蛍光強度のヒストグラムを図11に示す。このデータは、隔離が急速に(5分)起こり、時間を越えて一定であることを示す。
【0138】
実施例9−バイトを含む粒子による標的タンパク質取り込みの急速な経時変化
タンパク質取り込みの反応速度論が非常に急速であることを証明するため、NIPAm/AAc粒子とインキュベーションした後のバルク溶液中に残存するタンパク質量を、逆相タンパク質アレイ(RPPA)(Gulmann et al,The Journal of pathology 2006,208,(5),595−606)により測定した。Bradfordアッセイのような他の方法は十分な感度を有さず、我々の目的はバルク溶液からのタンパク質除去がどのように完了するかを証明することであるので、粒子上清中のタンパク質濃度を測定するための手段としてRPPAを選択した。種々の量のNIPAm/AAc粒子(115万及び1150万)を、総量100μLのTris(pH7,50mM)中、ライソザイム(20μM)と1及び10分間インキュベートした。粒子を遠心分離した後、一定量の上清を、Aushon2470ロボットアレイヤー(Aushon Biosystems)を用いてニトロセルロースをコーティングしたスライド(FASTスライド、Whatman)にスポットした。アレイを、コロイド性金溶液、AuroDye Forte Kit(Amersham)を用いて染色し、PowerLook 1120スキャナー(Umax)を用いて画像を得、ImageQuant(GE Healthcare)を用いて画像から数値を得、SigmaPlot(Systat)に供した。1分間のインキュベーション後、115万個の粒子を含むバルク溶液は、28%の初期タンパク質量を、10分後には15%を含んでいた。更に、1及び10分間後の1150万個の粒子によって回復した溶液は、それぞれ、5%及び9%の初期量を含んでいた(図12A)。全ての経時変化実験においては、溶液からの粒子の分離が遠心分離によって得られているので、報告された掲示変化値はインキュベーション時間間隔のみを意味することに注意すべきである。その上、更に7分間、溶液と接触した粒子が遠心分離のために必要であった。
【0139】
NIPAm/AAc粒子によるタンパク質取り込みの反応速度論は、更に、粒子を、Tris(pH7,50mM)中、室温でBSA(20μM)及びライソザイム(20μM)とインキュベートし、SDS−PAGEを用いて、1、10、20、30及び60分の時間ポイントにおけるライソザイムの取り込みを監視することにより調べた(図12B)。この実験の結果は、ライソザイムの隔離が1分後にほとんど完了し、60分で完了し、前述したフローサイトメトリーの経時変化試験において示したように、非常に早く起こることが確認された。予想されるように、BSAは粒子により排除され、実験の間(60分間)、NIPAm/AAcによりBSAは取り込まれなかった。
【0140】
実施例10−血清からの低分子量かつ少量の検体の分離及び濃縮の証明
プロテオソーム解析のための血清に由来する低濃度のタンパク質バイオマーカーの候補を隔離及び濃縮するためのNIPAm及びNIPAm/AAc粒子の能力を、水中で、1:10v/vの希釈で粒子と1時間インキュベートすることにより評価した。捕捉されたタンパク質を、変性条件下、粒子から電気泳動的に溶出した。粒子を、SDS試料バッファー中、100℃で5分間加熱し、4〜20%Tris Glicineゲル(Invitrogen)に積載した。30kDa未満のバンドを切り取り、ゲル内トリプシン消化を実施した(Camerini et al.,Proteomics Clin.Appl.2007,1,176−184)。得られたペプチド断片を、LTQ−Orbitrap質量分析計(Thermo Fisher)を用いて、オンライン液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレイイオン化質量分析(LC/ESIMS)により解析した。逆相カラムは、レーザーがけん引されたチップを供える100mmi.d.×10cmの長の融合化シリカゲルキャピラリー(Polymicro Technologies,Phoenix,AZ)中、5μm、20Åのポアサイズの18C樹脂(Michrom BioResources,CA)でスラリーパックした。試料の注入後、カラムを移動相A(0.1%ギ酸)で5分間洗浄し、200nl/分で50分間、0%移動層B(0.1%ギ酸、80%アセトニトリル)から50%移動相Bまでの、次いで更に5分間の100%Bまでの直線勾配を用いてペプチドを溶出した。LTQ質量分析器を、データ依存モードにおいて操作し、それぞれ、全てのMSスキャン後に5種のMS/MSスキャンが続き、ここでは5つの最も豊富な分子イオンが、規格化された35%の衝突エネルギーを用いて、衝突誘導性の解離(CID)について動的に選択される。MS/MSデータを、完全なトリプシン切断条件を用いて、プログラムSEQUEST(Bioworks software,Thermo)を用いたNCBI(National Center for Biotechnology Information)ヒトタンパク質データベースに対してマッチさせた。高信頼性ペプチド同定は、調査結果に対して以下のフィルター:相関スコア(XCorr)=1+について1.9、2+について2.2、3+について3.5、無作為の0.01の無作為同定について最大の可能性を適用することにより得られた。表1及び表2中で同定されたタンパク質のリストは、アルブミン及び他の大量に含まれる血清タンパク質が粒子中に存在しないことを示す。一方、同定されたタンパク質のリストは、粒子が、まれに小さいサイズの血清タンパク質及びペプチドを隔離することを示す。
【0141】
【表1】
表1.1:10v/v希釈した血清と1時間インキュベートした後のNIPAm粒子から電気的に溶出したタンパク質の質量スペクトル分析、P(pep)は、ペプチドについての確率値を示し、Sfは、タンパク質適合がどのようい良好であるかを示す最終スコアを示し、スコアは、ペプチドがスペクトルデータにランダムに適合する可能性に基づいた値を示す。受け入れ番号は、配列についてのユニークなタンパク質同定番号を示す。
【0142】
【表2】
【0143】
表2.1:10v/v希釈した血清と1時間インキュベートした後のNIPAm粒子から電気的に溶出したタンパク質の質量スペクトル分析、P(pep)は、ペプチドについての確率値を示し、Sfは、タンパク質適合がどのようい良好であるかを示す最終スコアを示し、スコアは、ペプチドがスペクトルデータにランダムに適合する可能性に基づいた値を示す。受け入れ番号は、配列についてのユニークなタンパク質同定番号を示す。
【0144】
実施例11−プロテアーゼ分解を阻止する粒子によるタンパク質隔離
体液と関連する主要な問題の1つは、収集、輸送、保存及び解析の間の試料の分解の可能性である。内因性凝固カスケード酵素、損傷された細胞から放出される酵素、外因性酵素(汚染細菌に由来する)は、図13に概略的に示すように、診断上重要なタンパク質の分解に寄与する。
【0145】
標準化された保存方法の欠如は、血清及び血漿のハイスループット解析における偏りをもたらし得る(Ayache et al.,American journal of clinical pathology 2006,126,(2),174−84)。粒子のMWCO(〜20,000Da)より大きいMWを有するプロテアーゼが粒子の内部空間から排除され、その結果、捕獲されたタンパク質に接近することを拒絶することが予想されるが、トリプシン(23,800Da)のような、より小さいプロテアーゼは粒子に侵入できそうである。更に、基質タンパク質及び酵素の両方が粒子によって隔離された場合、帯電バイト粒子に侵入したプロテアーゼが酵素能力を保持し続けているかどうかは知られていなかった(図12)。従って、NIPAm/AAc粒子を、ライソザイム(0.5mg/mL)及びトリプシン(0.05mg/mL,Promega)を含むpH7のNH4HCO3(100mM)中、37℃でインキュベートした。トリプシンは、その小さいサイズ、及びライソザイムのトリプシン消化が、非常に特徴的な切断生成物を産生するという事実に基づき、これらの研究のために選択された。この実験において用いられた条件は、ライソザイム及びトリプシンが、いずれも粒子に侵入することを可能にするであろう。1時間及び一晩のインキュベーション後のSDS PAGEによる捕獲タンパク質の解析は、2本のバンドのみを示し、1本はトリプシンに相当し、他方は完全長のライソザイムに相当し、これは、タンパク質の分解が起こらなかったことを示す(図14)。NIPAm/AAc粒子の非存在下での、pH7のNH4HCO3(100mM)中、37℃における、ライソザイム(0.5mg/mL)のトリプシン(0.05mg/mL)とのインキュベーションは、ライソザイムの分解をもたらした。1時間及び一晩のインキュベーション後の反応物のSDS−PAGE解析は、明らかに低分子量ペプチドの存在を示し、これは、ライソザイムがNIPAm/AAc粒子の非存在下にトリプシンによって分解されることを示す。これらの結果は、明らかに、親和性バイト粒子による低分子量タンパク質の隔離が、粒子内部に侵入することができるタンパク質を含む結合タンパク質を、プロテアーゼから効果的に隠蔽し得ることを示す。
【0146】
NIPAm/AAc親和性バイト粒子によるタンパク質の隔離に関し、更に理解するため、NIPAm/AAc粒子を、100mM NH4HCO3(pH7)中のBSA(0.5mg/mL)、ライソザイム(0.5mg/mL)及びトリプシン(0.05mg/mL)の組み合わせとともに37℃でインキュベートした。以前の保護試験と同様に、1時間及び一晩インキュベーションした後にSDS−PAGEを用いて反応を解析した。NIPAm/AAc粒子の非存在下で、大部分のBSAは1時間後に消化され、完全長のBSAに相当するバンドは一晩のインキュベーション後に消失した(図14B)。以前に示したように、NIPAm/AAc粒子は、ライソザイム及びトリプシンをいずれも効果的に隔離し、ライソザイムを、トリプシンのタンパク質分解から保護する。しかし、粒子はBSAに結合せず、完全長のBSAに相当するバンドの強度の減少に伴う1時間及び一晩のインキュベーション後の上清中の低分子量バンドの存在は、BSAがトリプシンによる分解から保護されなかったことを示す。帯電したバイト粒子による酵素の固定化が、基質タンパク質の結合からそれらを保護するので、トリプシンのような、粒子に侵入するのに十分に小さい酵素によるタンパク質分解活性の抑制が起こり、又は粒子中の親和性バイト基による基質の捕捉と関連する立体障害の結果であり得、その結果として、粒子中の生産的に結合した標的タンパク質から酵素を抑制する。
【0147】
酵素的分解の産物が前記結果に明らかに示されていたとしても、ライソザイムの広がった状態は、トリプシンのタンパク質分解に抵抗性があることが知られている(Noda et al.,Biopolymers,1994,34,(2),217−226)。従って、粒子とのインキュベーションは、あらゆる偏りを排除するために、還元及びアルキル化されたライソザイムを用いて繰り返した。ライソザイムは、尿素(2M)を含むNH4HCO3バッファー(50mM,pH8)中のジチオスレイトール(DTT)(10mM)を用いて室温で1時間インキュベーションすることにより還元した。最終濃度が50mMとなるように、溶液にヨードアセトアミドを加え、暗所で30分間反応させた。バッファーを交換し、3,000DaのMWCOを有するCentricon遠心フィルターユニット(Millipore)を用いて、MilliQ水でタンパク質を洗浄した。ライソザイムを、NH4HCO3(pH8,100mM)に、推測される最終濃度が0.5mg/mLとなるように再懸濁した;トリプシン(0.05mg/mL)及びNIPAm/AAc粒子を加え、溶液を37℃で1時間インキュベートした。既に記載したようにして粒子を洗浄し、SDS PAGEに積載した。図15Aにおいて、還元及びアルキル化された形態であっても、ライソザイムを分解から保護し得ることが示される。
【0148】
タンパク質分解からの保護のメカニズムを更に理解するために、単なる粒子を用いて実験を実施した。NIPAm粒子を、還元及びアルキル化されたライソザイム(0.5mg/mL)及びトリプシン(0.05mg/mL,)を含むpH7のNH4HCO3(100mM)溶液中、37℃で1時間インキュベートした。結果を図15Bに示し、粒子内部に分解したライソザイムの産物を示した。
【0149】
液体から低分子量分子検体及びバイオマーカーの候補を収集し濃縮し、少量かつ低分子量化合物の高スループット解析を可能にするための新規な手段としてヒドロゲルバイト−含有粒子の開発及び応用を開示した。これらのナノ粒子は、原料のままの体液中の直接的有用性のための迅速かつ直接的なワークフローを示すが、明細書に開示された作業は、優先的にカチオン性種に結合する負電荷を有する粒子を開示し、NIPAm/アリルアミンコポリマーのような正に帯電した粒子は、体液からアニオン性種を選択的に収集及び濃縮するために用いることができた。同様に、疎水性代謝産物は、NIPAm/スチレンコポリマーのような更に疎水性の粒子を用いることにより、総合的なメタボロミクスのために捕獲することができた。検体特異的な化学物質又はタンパク質又は核酸親和性バイトを取り込むことができる。例えば、糖類を結合することが知られているボロン酸含有粒子は、溶液からの糖タンパク質を隔離するために用いることができる(Ivanov et al.,Journal of molecular recognition 2006,19,(4),322−31)。その結果、アニオン性タンパク質のためのバイトを含むNIPAm−アリルアミンコポリマーが、現在合成されている。更に、p−ビニルフェニルボロン酸(VPBA)は、糖類及び核酸の収集のためのコポリマーとして考慮中である。トリアジニルをベースとする色素(タンパク質に対する親和性を有する)、ヘキサデシルアミン(脂質の取り込みのため)及びシクロデキストリン(低分子量の分子と関連し得る)のような、更なる親和性バイトは、粒子内で非共有的又は共有的に結合している。特に、前記バイト化合物は、以下の低分子量代謝産物、すなわち、L−ドーパ、ホモゲンチジン酸、ドーパミン、ドーパミン中間代謝物(Dopac)及び5−ヒドロキシインドール酢酸を収集するために用いられる。これは、メタボロミクスの領域に対する技術の有用性を広げる。
【0150】
一段階工程におけるサイズふるい分け手段の種々の親和性化学物質への結合は、疾患マーカーの発見及び分析ワークフローのための莫大な有用性を有し得る。
【0151】
本研究において示されるワークフローにおいては、タンパク質は粒子から溶出された時に変性しており、バイオマーカーの発見のための質量分析において分析される。それにもかかわらず、収集条件が天然のタンパク質混合物を用いて実施されることに気づくことが重要である。これは、興味のある検体を天然の状態で要求する、更なる応用を可能にする。これらの応用のため、タンパク質が粒子から放出される時に変性されていないことが重要である。Ahmad及び共同研究者らは、円偏光二色法を用い、薬剤送達のための分子が、天然の立体配座状態を維持し続け、温度変化によりNiPam粒子から放出されることを証明した(Ahmad et al.,Colloid & Polymer Science 2002,280,(4),310−315)。その結果、粒子から天然のタンパク質を溶出される可能な手段は、界面活性剤の非存在下に、非変性条件下、溶液の温度又はpHを変更し、イオン強度を上昇させ、又はタンパク質を電気的に溶出させることを含む。
【0152】
実施例12−NIPAm/Accコア−NIPAmシェル粒子の合成
この実践的な構造において、親和性バイト部分を含むコアは、NIPAmシェルによって包囲される。NIPAmシェルの分子ふるい性能はコア、並びに存在し、コア中で親和性バイトに結合するための、意図する少量かつ低分子量の分子標的と競合し得る大きい分子に由来する親和性バイト基を遮蔽するであろう。シェル溶液は、NIPAm、それぞれH2O中の0.02モル同等物のBIS及びSを溶解し、この溶液を博膜フィルターでろ過することにより製造した。減圧下、数分間、溶液を脱気し、室温で攪拌しながら2時間窒素でパージした。シェル溶液をパージしながら、NIPAm、0.08モル同等物のAAc及び0.02モル同等物のBISをH2O中に溶解し、溶液をろ過することによりコア溶液を調製した。次いで、コア溶液を脱気し、NIPAm粒子の製造について記載したようにして、70℃で窒素でパージした。いったん、溶液が70℃で平衡に達し、窒素雰囲気下で1時間攪拌したら、APS(0.005モル同等物)をコア溶液に加えた。NIPAm/AAcコア反応物を、窒素雰囲気下、70℃で3時間インキュベートした後、シェル溶液を、次いで、APSの追加の一定量を反応フラスコに加えた。次いで、反応物を窒素雰囲気下、70℃で更に3時間攪拌した。この時点で、反応物を熱から取り出し、窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。次いで、NIPAm粒子について記載したようにして、粒子を集め、洗浄した。
【0153】
実施例13−コアシェル粒子は、NIPAm/AAcと同じ分子ふるいカットオフを有していた。
コアシェルの直径の光散乱測定は、NIPAm/AAcコアについて1048nm及びNIPAmシェルを加えた時に1198nmの値を示した。コアシェル粒子が、NIPAm/AAc粒子と同じ分子量カットオフ(MWCO)を有するかどうかを調べるために、タンパク質分子量パーカーの溶液を用いた。溶液は、Tris(pH7,50mM)に、溶解した、アプロチニン(MW6,500Da,Sigma−Aldrich)、ライソザイム(MW14,400Da,Sigma−Aldrich)、トリプシン阻害剤(MW21,500Da,Invitrogen)、炭酸脱水酵素(MW31,000Da,Sigma−Aldrich)、オブアルブミン(MW45,000Da,Sigma− Aldrich)及びBSA(MW66,000Da,Fisher Scientific)を、それぞれそれぞれ0.5mg/mLで含む。インキュベーション時間は1時間であり、原稿に記載されたようにして粒子を洗浄した。SPD PAGE分析は、図16において、2種の粒子について、MWCO値の実質的な一致を示した。
【0154】
実施例14−コアシェル粒子は、キモトリプシン酵素分解からライソザイムを保護する。
他のプロテアーゼ、α−キモトリプシン(MW25,000Da,pI=8.75,Sigma)を、分解からタンパク質を保護する粒子の能力を証明するために用いた。ライソザイムの消化は、10mM CaCl2を含む100mM Tris HCl,pH7.8中、30℃で30分間実施した。コアシェル粒子を、前述の消化条件中、ライソザイム及びトリプシンとインキュベートした。このケースにおいては、粒子は、キモトリプシン分解からライソザイムを保護した(図17、レーン5)。ライソザイム分解は、粒子なしのインキュベーションにおいても明らかである(図17、レーン3)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリクスを含む、混合物から検体を分離するための捕獲粒子であって、
前記ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有する、捕獲粒子。
【請求項2】
前記検体が:代謝産物、タンパク質、RNA、ミクロRNA、DNA、糖タンパク質、脂質、糖脂質、プロテオリピド、ホルモン、サイトカイン、成長因子、バイオマーカー、薬剤、合成有機化合物、揮発性臭気物質、毒物及び汚染物質からなる群から選択される、請求項1記載の捕獲粒子。
【請求項3】
前記ポリマーマトリクスが膨張性かつ収縮性である、請求項1記載の捕獲粒子。
【請求項4】
ポリマーマトリクスが膨張又は収縮する場合、ゲルマトリクスのポアサイズが、それぞれ膨張又は収縮する、請求項3記載の捕獲粒子。
【請求項5】
適用された刺激に応答し、ポリマーマトリクスが膨張性又は収縮性である、請求項3記載の捕獲粒子。
【請求項6】
前記適用された刺激が、熱、電気、磁気、超音波、圧力、放射、レーザー、浸透圧、又はpHの変化である、請求項5記載の捕獲粒子。
【請求項7】
前記ポリマーマトリクスが、酵素を用いた処理により膨張性又は収縮性である、請求項3記載の捕獲粒子。
【請求項8】
更に誘引物質を含む、請求項1記載の捕獲粒子。
【請求項9】
前記誘引物質が前記捕獲粒子により隔離されている、請求項8記載の捕獲粒子。
【請求項10】
前記誘引物質が前記捕獲粒子に共有結合している、請求項8記載の捕獲粒子。
【請求項11】
前記誘引物質が前記ポリマーマトリクス中に組み入れられている、請求項8記載の捕獲粒子。
【請求項12】
前記誘引物質が親和性リガンドである、請求項8記載の捕獲粒子。
【請求項13】
前記親和性リガンドが、抗体又はタンパク質、アプタマー、核酸、薬剤、化学物質、代謝産物、脂質、糖脂質、リン脂質、ポリペプチド、親和性基又は金属基を含む、請求項12記載の捕獲粒子。
【請求項14】
更に検出可能な標識を含む、請求項1記載の捕獲粒子。
【請求項15】
構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含む、混合物から検体を分離する捕獲粒子であって、
前記ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有する、捕獲粒子。
【請求項16】
前記検体が、代謝産物、タンパク質、RNA、ミクロRNA、DNA、糖タンパク質、脂質、糖脂質、プロテオリピド、ホルモン、サイトカイン、成長因子、バイオマーカー、薬剤、合成有機化合物、揮発性臭気物質、毒物及び汚染物質からなる群から選択される、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項17】
前記捕獲粒子が、約5〜約100kDaの分子量カットオフサイズを有する、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項18】
前記捕獲粒子が、約20〜約50kDaの分子量カットオフサイズを有する、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項19】
前記構造モノマーが:アクリルアミド及びその誘導体、N−アルキル置換アクリルアミド;N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−シスタミンビスアクリルアミド、N−ビニルアルキルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アリルアミン、スチレン、ベンジルグルタメート、2−エチルアクリル酸、4−ビニルピリジン、シリコーン、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレンオキシド、ブチレンテレフタレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニル、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、ヒドロキシアルカノエート、キトサン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース及びアガロースからなる群から選択される、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項20】
前記構造モノマーがN−イソプロピルアクリル酸である、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項21】
前記親和性モノマーが正に帯電した部分を含む、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項22】
前記正に帯電した部分が:アミン基及びアミド基からなる群から選択される、請求項21記載の捕獲粒子。
【請求項23】
前記親和性モノマーが、負に帯電した部分を含む、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項24】
前記負に帯電した部分が:カルボン酸基、ヒドロキシル基、チオール基及びリン酸基からなる群から選択される、請求項23記載の捕獲粒子。
【請求項25】
前記親和性モノマーが:親和性色素、ボロン酸基、核酸、糖ペプチド、糖タンパク質、シクロデキストリン、カリックスアレーン、ポルフィリン基及び脂肪族基からなる群から選択される、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項26】
前記親和性モノマーがアクリル酸である、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項27】
構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含有するコア;及び
シェルモノマーを含むポリマーマトリクスを含有するシェルとを含む、混合物から検体を分離するための捕獲粒子であって、
前記コポリマーマトリクス及びポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有する、捕獲粒子。
【請求項28】
混合物を、ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有するポリマーマトリクスを含む捕獲粒子と接触させ;
捕獲粒子が検体を隔離するのに十分な時間、混合物と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
前記検体を前記捕獲粒子から放出することを含む、混合物から検体を分離する方法。
【請求項29】
前記捕獲粒子の分離が、粒子を物理的に移動することにより実施される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記粒子が、磁場、電場、pH勾配、溶媒勾配、液体の流れ、マイクロ流体の流れ又は物理的力にさらすことにより物理的に移動される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記粒子が、粒子を基材に結合することにより物理的に移動される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記基材がビーズである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記基材が平面である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
混合物を、ポリマーマトリクスが、第一の条件下で、検体が孔を通過することを可能にするポアサイズを有し、第二の条件下で、検体が孔を通過しないことを可能にするポアサイズを有するポリマーマトリクスを含む補角粒子と接触させ;
捕獲粒子が検体を隔離するのに十分な時間、捕獲粒子を第一の条件にさらしている間、混合物と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を第二の条件にさらし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
前記捕獲粒子を第一の条件に再度さらし、検体を捕獲粒子から放出させることを含む、混合物から検体を分離する方法。
【請求項35】
前記検体を、検体を分解し得る混合物の他の成分から保護する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
混合物を、構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含む捕獲粒子と接触させることを含む、混合物から検体を分離する方法であって、
ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら、検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有しており;
捕獲粒子が検体を隔離するのに十分な時間混合物と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
前記捕獲粒子から検体を放出させる方法。
【請求項37】
前記検体を、検体を分解し得る混合物の他の成分から保護する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
液体を、構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含有する捕獲粒子と接触させることを含む、液体中に少量存在する検体を濃縮する方法であって、
コポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の液体に由来する他の化合物を排除しながら、検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有しており;
前記捕獲粒子が検体を濃縮するのに十分な時間、液体と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
適切な容量で捕獲粒子から検体を放出させ、検体の濃縮溶液を形成する方法。
【請求項39】
液体中の少量の検体が、検体を濃縮しない分析法による検体の検出を阻止する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記検体が、前記捕獲粒子を用いた濃縮後の分析法により検出可能である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
混合物を収集するための収集装置;及び
検体を分離するのに十分な量の、構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含有する捕獲粒子を含む、混合物中の検体を分離するためのキットであって、
ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有するキット。
【請求項42】
前記収集装置が、バクテイナー(vacu−tainer)、管、層、カートリッジ、パッチ及びマイクロ流体素子からなる群から選択される、請求項41記載のキット。
【請求項43】
容器の表面が、捕獲粒子の層でコーティングされている、請求項41記載のキット。
【請求項44】
混合物から検体を分離するための自動システムであって、
前記自動化システムは、
混合物を、ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有するポリマーマトリクスを含む捕獲粒子と接触させ;
捕獲粒子が検体を隔離するのに十分な時間、混合物と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
前記検体を前記捕獲粒子から放出し;
分析法を用いて検体を解析することを含む方法を実施する自動化システム。
【請求項45】
前記分析法が:質量分析法、核磁気共鳴、赤外分析法、固相免疫測定法、ELISA、免疫沈降法、比色分析法、放射分析アッセイ、蛍光アッセイ、フロービーズ/フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング及びタンパク質配列決定からなる群から選択される、請求項44記載の自動化システム。
【請求項1】
ポリマーマトリクスを含む、混合物から検体を分離するための捕獲粒子であって、
前記ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有する、捕獲粒子。
【請求項2】
前記検体が:代謝産物、タンパク質、RNA、ミクロRNA、DNA、糖タンパク質、脂質、糖脂質、プロテオリピド、ホルモン、サイトカイン、成長因子、バイオマーカー、薬剤、合成有機化合物、揮発性臭気物質、毒物及び汚染物質からなる群から選択される、請求項1記載の捕獲粒子。
【請求項3】
前記ポリマーマトリクスが膨張性かつ収縮性である、請求項1記載の捕獲粒子。
【請求項4】
ポリマーマトリクスが膨張又は収縮する場合、ゲルマトリクスのポアサイズが、それぞれ膨張又は収縮する、請求項3記載の捕獲粒子。
【請求項5】
適用された刺激に応答し、ポリマーマトリクスが膨張性又は収縮性である、請求項3記載の捕獲粒子。
【請求項6】
前記適用された刺激が、熱、電気、磁気、超音波、圧力、放射、レーザー、浸透圧、又はpHの変化である、請求項5記載の捕獲粒子。
【請求項7】
前記ポリマーマトリクスが、酵素を用いた処理により膨張性又は収縮性である、請求項3記載の捕獲粒子。
【請求項8】
更に誘引物質を含む、請求項1記載の捕獲粒子。
【請求項9】
前記誘引物質が前記捕獲粒子により隔離されている、請求項8記載の捕獲粒子。
【請求項10】
前記誘引物質が前記捕獲粒子に共有結合している、請求項8記載の捕獲粒子。
【請求項11】
前記誘引物質が前記ポリマーマトリクス中に組み入れられている、請求項8記載の捕獲粒子。
【請求項12】
前記誘引物質が親和性リガンドである、請求項8記載の捕獲粒子。
【請求項13】
前記親和性リガンドが、抗体又はタンパク質、アプタマー、核酸、薬剤、化学物質、代謝産物、脂質、糖脂質、リン脂質、ポリペプチド、親和性基又は金属基を含む、請求項12記載の捕獲粒子。
【請求項14】
更に検出可能な標識を含む、請求項1記載の捕獲粒子。
【請求項15】
構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含む、混合物から検体を分離する捕獲粒子であって、
前記ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有する、捕獲粒子。
【請求項16】
前記検体が、代謝産物、タンパク質、RNA、ミクロRNA、DNA、糖タンパク質、脂質、糖脂質、プロテオリピド、ホルモン、サイトカイン、成長因子、バイオマーカー、薬剤、合成有機化合物、揮発性臭気物質、毒物及び汚染物質からなる群から選択される、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項17】
前記捕獲粒子が、約5〜約100kDaの分子量カットオフサイズを有する、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項18】
前記捕獲粒子が、約20〜約50kDaの分子量カットオフサイズを有する、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項19】
前記構造モノマーが:アクリルアミド及びその誘導体、N−アルキル置換アクリルアミド;N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−シスタミンビスアクリルアミド、N−ビニルアルキルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アリルアミン、スチレン、ベンジルグルタメート、2−エチルアクリル酸、4−ビニルピリジン、シリコーン、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレンオキシド、ブチレンテレフタレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニル、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、ヒドロキシアルカノエート、キトサン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース及びアガロースからなる群から選択される、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項20】
前記構造モノマーがN−イソプロピルアクリル酸である、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項21】
前記親和性モノマーが正に帯電した部分を含む、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項22】
前記正に帯電した部分が:アミン基及びアミド基からなる群から選択される、請求項21記載の捕獲粒子。
【請求項23】
前記親和性モノマーが、負に帯電した部分を含む、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項24】
前記負に帯電した部分が:カルボン酸基、ヒドロキシル基、チオール基及びリン酸基からなる群から選択される、請求項23記載の捕獲粒子。
【請求項25】
前記親和性モノマーが:親和性色素、ボロン酸基、核酸、糖ペプチド、糖タンパク質、シクロデキストリン、カリックスアレーン、ポルフィリン基及び脂肪族基からなる群から選択される、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項26】
前記親和性モノマーがアクリル酸である、請求項15記載の捕獲粒子。
【請求項27】
構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含有するコア;及び
シェルモノマーを含むポリマーマトリクスを含有するシェルとを含む、混合物から検体を分離するための捕獲粒子であって、
前記コポリマーマトリクス及びポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有する、捕獲粒子。
【請求項28】
混合物を、ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有するポリマーマトリクスを含む捕獲粒子と接触させ;
捕獲粒子が検体を隔離するのに十分な時間、混合物と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
前記検体を前記捕獲粒子から放出することを含む、混合物から検体を分離する方法。
【請求項29】
前記捕獲粒子の分離が、粒子を物理的に移動することにより実施される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記粒子が、磁場、電場、pH勾配、溶媒勾配、液体の流れ、マイクロ流体の流れ又は物理的力にさらすことにより物理的に移動される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記粒子が、粒子を基材に結合することにより物理的に移動される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記基材がビーズである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記基材が平面である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
混合物を、ポリマーマトリクスが、第一の条件下で、検体が孔を通過することを可能にするポアサイズを有し、第二の条件下で、検体が孔を通過しないことを可能にするポアサイズを有するポリマーマトリクスを含む補角粒子と接触させ;
捕獲粒子が検体を隔離するのに十分な時間、捕獲粒子を第一の条件にさらしている間、混合物と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を第二の条件にさらし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
前記捕獲粒子を第一の条件に再度さらし、検体を捕獲粒子から放出させることを含む、混合物から検体を分離する方法。
【請求項35】
前記検体を、検体を分解し得る混合物の他の成分から保護する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
混合物を、構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含む捕獲粒子と接触させることを含む、混合物から検体を分離する方法であって、
ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら、検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有しており;
捕獲粒子が検体を隔離するのに十分な時間混合物と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
前記捕獲粒子から検体を放出させる方法。
【請求項37】
前記検体を、検体を分解し得る混合物の他の成分から保護する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
液体を、構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含有する捕獲粒子と接触させることを含む、液体中に少量存在する検体を濃縮する方法であって、
コポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の液体に由来する他の化合物を排除しながら、検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有しており;
前記捕獲粒子が検体を濃縮するのに十分な時間、液体と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
適切な容量で捕獲粒子から検体を放出させ、検体の濃縮溶液を形成する方法。
【請求項39】
液体中の少量の検体が、検体を濃縮しない分析法による検体の検出を阻止する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記検体が、前記捕獲粒子を用いた濃縮後の分析法により検出可能である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
混合物を収集するための収集装置;及び
検体を分離するのに十分な量の、構造モノマー及び親和性モノマーを含むコポリマーマトリクスを含有する捕獲粒子を含む、混合物中の検体を分離するためのキットであって、
ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有するキット。
【請求項42】
前記収集装置が、バクテイナー(vacu−tainer)、管、層、カートリッジ、パッチ及びマイクロ流体素子からなる群から選択される、請求項41記載のキット。
【請求項43】
容器の表面が、捕獲粒子の層でコーティングされている、請求項41記載のキット。
【請求項44】
混合物から検体を分離するための自動システムであって、
前記自動化システムは、
混合物を、ポリマーマトリクスが、特定の条件下で、侵入するポリマーマトリクス由来の混合物に由来する他の化合物を排除しながら検体がポリマーマトリクスに侵入することを可能にするポアサイズを有するポリマーマトリクスを含む捕獲粒子と接触させ;
捕獲粒子が検体を隔離するのに十分な時間、混合物と捕獲粒子とを接触させたままにし;
前記捕獲粒子を前記混合物から分離し;
前記検体を前記捕獲粒子から放出し;
分析法を用いて検体を解析することを含む方法を実施する自動化システム。
【請求項45】
前記分析法が:質量分析法、核磁気共鳴、赤外分析法、固相免疫測定法、ELISA、免疫沈降法、比色分析法、放射分析アッセイ、蛍光アッセイ、フロービーズ/フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング及びタンパク質配列決定からなる群から選択される、請求項44記載の自動化システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−522069(P2010−522069A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554614(P2009−554614)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/054568
【国際公開番号】WO2008/115653
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509262851)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/054568
【国際公開番号】WO2008/115653
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509262851)
【Fターム(参考)】
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