説明

バイオメディカルマテリアルのプレポリマー

【課題】分子基の数を変えることによってその透気性、酸素透過性、保湿性の調整および他の親水性分子との相容性の改善が可能なバイオメディカルマテリアルのプレポリマーを提供する。
【解決手段】下記化学式のプレポリマー:


(式中、X1は脂肪族化合物または芳香族化合物であり、X3はオレフィン官能基含有化合物であり、X2は下記化学式を有するシロキサン化合物である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオメディカルマテリアルのプレポリマーに関し、特に透気性、酸素透過性および保湿性のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
材料をバイオメディカル装置に適用するのは幾つかの因素により決められ、これらの因素は材料の保湿性、酸素透過性、粘着性またはその他の生物材料、例えばタンパク質および脂質との反応特性などを含んでいる。一般的には、現在、医療関係者は、傷口の暴露、感染を避けるためにガーゼを傷口敷材のプレポリマーとして用いる。しかしながら、ガーゼは、水分が傷口表面から揮発することを防止することができず、かつ傷口の薬を交換する際に傷口の結痂を破壊しやすいという欠点を持っている。近頃、研究開発者は、高分子材料から作製された敷材(例えば、シロキサンを含有する高分子材料)を開発し、ガーゼの欠点の改善を可能にした。また、眼科の応用方面においては、例えば、コンタクトレンズおよび眼内の植込み物とか、酸素透過性も重要な考慮の一つであり、酸素透過性が高いほど通常はよく、良好な保湿性および粘着防止性または生物材料との反応防止性を有するからである。
【0003】
シロキサン高分子材料は、先行技術の欠点を克服することができ、かつ上記バイオメディカルマテリアルの長所を有するため、研究開発者はシロキサン高分子材料の多くの方面における応用を試した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分子基の数を変えることによってその透気性、酸素透過性、保湿性の調整および他の親水性分子との相容性の改善が可能なバイオメディカルマテリアルのプレポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーの一実施例は、下記化学式:
【化1】

【0006】
(式中、X1は脂肪族化合物または芳香族化合物であり、X3はオレフィン官能基含有化合物であり(該プレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点として)、X2は下記化学式を有するシロキサン化合物である。本発明の一実施例においては、nは1ないし20の間にあり、mは10ないし20の間にあり、yは1ないし7の間にある。)を有する。
【化2】

【0007】
上文には、本発明の技術特徴および長所が既に幅広く概括され、下文の本発明の詳細な記述をよく理解させる。本発明の特許請求の範囲の標的を構成する他の技術特徴および長所は下文に記載される。下文に掲示した概念と特定の実施例とを利用して他の構造またはプロセスを修正または設計して本発明と同じ目的を実現するのは相当に容易なことであることを当業者が知らなければならない。このような同じ効果な構築は後ろに添付した特許請求の範囲で限定された本発明の精神と範囲から離脱することができないことも当業者が知らなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1実施例のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーは、下記化学式:
【化3】

【0009】
〔式中、X1は脂肪族化合物(例えば、ブタン(butane)、オクタン(octane)、ヘキサン(hexane))または芳香族化合物(例えば、フェニレン(Phenylene))である。X3は、オレフィン官能基含有化合物であり、該プレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点とする。X2は下記化学式を有するシロキサン化合物である。〕を有する。
【化4】

【0010】
高酸素透過性および高保湿性を必要とする材料(例えば、人体敷材、コンタクトレンズ)を製造するために、X2のm値を変えることによって前記プレポリマーの透気性/酸素透過性を調整することができ、X2のn値を変えることによって前記プレポリマーの保湿性および他の親水性分子との相容性を調整することができる。本発明の一実施例においては、nは1ないし20の間にあり、mは10ないし20の間にある。
【0011】
また、X2のケイ素原子とエーテル基との間の炭素数(y値)を調整することができ、炭素数を増加すると延性を増加することができるが、短縮すると強度を増加することができる。本発明の一実施例においては、X2のケイ素原子とエーテル基との間の炭素数(y値)は1ないし7の間にある。
【0012】
製造方法:
イソシアネート基を2つ含有する化合物(例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート(1,3-Phenylene diisocyanate)、1,4−ジイソシアナートブタン(1,4-Diisocyanatobutane)、1,6−ジイソシアナートヘキサン(1,6-Diisocyanatohexane)、1,4−フェニレンイソシアネート(1,4-Phenylene diisocyanate)、1,8−ジイソシアナートオクタン(1,8-Diisocyanatooctane)、トルエン2,4−ジイソシアネート(Toluene2,4-diisocyanate))を、シロキサンおよび2つのヒドロキシル基(hydroxy)を含有する化合物(例えば、下式の化合物)と反応させ、ヒドロキシル基はイソシアネート基と反応して化学結合する。
【化5】

【0013】
次に、イソシアネート基およびアクリレート基(acrylate)またはメチルアクリレート基(methacrylate)を含むオレフィン官能基含有化合物を反応に加えれば、第1実施例のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーを作製することができる。その後、オレフィン含有官能基はこのプレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点とすることができる。
【0014】
本発明の第2実施例のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーは、下記化学式:
【化6】

【0015】
〔式中、X1は脂肪族化合物(例えば、ブタン(butane)、オクタン(octane)、ヘキサン(hexane))または芳香族化合物(例えば、フェニレン(Phenylene))である。X3は、オレフィン官能基含有化合物であり、該プレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点とする。X2は下記化学式を有するシロキサン化合物である。〕を有する。
【化7】

【0016】
高酸素透過性および高保湿性を必要とする材料(例えば、人体敷材、コンタクトレンズ)を製造するために、X2のm値を変えることによって前記プレポリマーの透気性/酸素透過性を調整することができ、X2のn値を変えることによって前記プレポリマーの保湿性および他の親水性分子との相容性を調整することができる。本発明の一実施例においては、nは1ないし20の間にあり、mは10ないし20の間にある。
【0017】
また、X2のケイ素原子とエーテル基との間の炭素数(y値)を調整することができ、炭素数を増加すると延性を増加することができるが、短縮すると強度を増加することができる。本発明の一実施例においては、X2のケイ素原子とエーテル基との間の炭素数(y値)は1ないし7の間にある。
【0018】
製造方法:
イソシアネート基を2つ含有する化合物(例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート(1,3-Phenylene diisocyanate)、1,4−ジイソシアナートブタン(1,4-Diisocyanatobutane)、1,6−ジイソシアナートヘキサン(1,6-Diisocyanatohexane)、1,4−フェニレンイソシアネート(1,4-Phenylene diisocyanate)、1,8−ジイソシアナートオクタン(1,8-Diisocyanatooctane)、トルエン2,4−ジイソシアネート(Toluene2,4-diisocyanate))を、シロキサンおよび2つのアミノ基(amino)を含有する化合物(例えば、下式の化合物)と反応させ、アミノ基はイソシアネート基と反応して化学結合する。
【化8】

【0019】
次に、イソシアネート基およびアクリレート基(またはメチルアクリレート基)を含むオレフィン官能基含有化合物を反応に加えれば、第2実施例のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーを作製することができる。その後、オレフィン含有官能基はこのプレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点とすることができる。
【0020】
本発明の第3実施例のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーは、下記化学式:
【化9】

【0021】
〔式中、X1は脂肪族化合物(例えば、ブタン(butane)、オクタン(octane)、ヘキサン(hexane))または芳香族化合物(例えば、フェニレン(Phenylene))である。X3は、オレフィン官能基含有化合物であり、該プレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点とする。X2は下記化学式を有するシロキサン化合物である。〕を有する。
【化10】

【0022】
高酸素透過性および高保湿性を必要とする材料(例えば、人体敷材、コンタクトレンズ)を製造するために、X2のm値を変えることによって前記プレポリマーの透気性/酸素透過性を調整することができ、X2のn値を変えることによって前記プレポリマーの保湿性および他の親水性分子との相容性を調整することができる。本発明の一実施例においては、nは1ないし20の間にあり、mは10ないし20の間にある。
【0023】
また、X2のケイ素原子とエーテル基との間の炭素数(y値)を調整することができ、炭素数を増加すると延性を増加することができるが、短縮すると強度を増加することができる。本発明の一実施例においては、X2のケイ素原子とエーテル基との間の炭素数(y値)は1ないし7の間にある。
【0024】
製造方法:
イソシアネート基を2つ含有する化合物(例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート(1,3-Phenylene diisocyanate)、1,4−ジイソシアナートブタン(1,4-Diisocyanatobutane)、1,6−ジイソシアナートヘキサン(1,6-Diisocyanatohexane)、1,4−フェニレンイソシアネート(1,4-Phenylene diisocyanate)、1,8−ジイソシアナートオクタン(1,8-Diisocyanatooctane)、トルエン2,4−ジイソシアネート(Toluene2,4-diisocyanate))を、シロキサンおよび2つのヒドロキシル基を含有する化合物(例えば、下式の化合物)と反応させ、ヒドロキシル基はイソシアネート基と反応して化学結合する。
【化11】

【0025】
次に、塩素およびアクリレート基(またはメチルアクリレート基)を含むオレフィン官能基含有化合物(例えば、塩化メタクリロイル(methacryloyl chloride)、塩化アクリロイル(acryloyl chloride))を反応に加えれば、第3実施例のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーを作製することができる。その後、オレフィン含有官能基はこのプレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点とすることができる。
【0026】
本発明の第4実施例のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーは、下記化学式:
【化12】

【0027】
〔式中、X1は脂肪族化合物(例えば、ブタン(butane)、オクタン(octane)、ヘキサン(hexane))または芳香族化合物(例えば、フェニレン(Phenylene))である。X3は、オレフィン官能基含有化合物であり、該プレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点とする。X2は下記化学式を有するシロキサン化合物である。〕を有する。
【化13】

【0028】
高酸素透過性および高保湿性を必要とする材料(例えば、人体敷材、コンタクトレンズ)を製造するために、X2のm値を変えることによって前記プレポリマーの透気性/酸素透過性を調整することができ、X2のn値を変えることによって前記プレポリマーの保湿性および他の親水性分子との相容性を調整することができる。本発明の一実施例においては、nは1ないし20の間にあり、mは10ないし20の間にある。
【0029】
また、X2のケイ素原子とエーテル基との間の炭素数(y値)を調整することができ、炭素数を増加すると延性を増加することができるが、短縮すると強度を増加することができる。本発明の一実施例においては、X2のケイ素原子とエーテル基との間の炭素数(y値)は1ないし7の間にある。
【0030】
製造方法:
イソシアネート基を2つ含有する化合物(例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート(1,3-Phenylene diisocyanate)、1,4−ジイソシアナートブタン(1,4-Diisocyanatobutane)、1,6−ジイソシアナートヘキサン(1,6-Diisocyanatohexane)、1,4−フェニレンイソシアネート(1,4-Phenylene diisocyanate)、1,8−ジイソシアナートオクタン(1,8-Diisocyanatooctane)、トルエン2,4−ジイソシアネート(Toluene2,4-diisocyanate))を、シロキサンおよび2つのアミノ基(amino)を含有する化合物(例えば、下式の化合物)と反応させ、アミノ基はイソシアネート基と反応して化学結合する。
【化14】

【0031】
次に、塩素およびアクリレート基(またはメチルアクリレート基)を含むオレフィン官能基含有化合物(例えば、塩化メタクリロイル(methacryloyl chloride)、塩化アクリロイル(acryloyl chloride))を反応に加えれば、第4実施例のバイオメディカルマテリアルのプレポリマーを作製することができる。その後、オレフィン含有官能基はこのプレポリマーの後に続くバイオメディカルマテリアルを製造する反応の端点とすることができる。
【0032】
本発明の技術内容および技術特徴は既に以上のように掲示したが、後ろに添付した特許請求の範囲で限定された本発明の精神と範囲に背かずに、本発明の教え、例示、および掲示を様々に取り換えるおよび修飾することができることを当業者が知らなければならない。例えば、上文に掲示した多くのプロセスを異なる方法で実施するまたは他のプロセスに取り換えることが可能であり、または上記二種形態の組み合わせを採用してもよい。
【0033】
また、本案の権利範囲は、上文に掲示された特定の実施例のプロセス、機台、製造、物質の成分、装置、方法または工程に制限されるものではない。本発明の教え、例示および掲示のプロセス、機台、製造、物質の成分、装置、方法または工程に基づいて、現在に既に存在するものまたは後日に開発するものに関わらず、本案の実施例に掲示されたものと実質的に同じ形態で実質的に同じ機能を執行して実質的に同じ効果を達成するものは、本発明に用いることもできることを当業者が知らなければならない。したがって、以下の特許請求の範囲は、これらのプロセス、機台、製造、物質の成分、装置、方法または工程のカバーに用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式:
【化1】

式中、X1は脂肪族化合物または芳香族化合物であり、X2はシロキサン化合物であり、X3はオレフィン官能基含有化合物である;
を有する化合物を含む、バイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項2】
X2が、下記化学式:
【化2】

を有する、請求項1に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項3】
nが1ないし20の間にある、請求項2に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項4】
mが10ないし20の間にある、請求項2に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項5】
yが1ないし7の間にある、請求項2に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項6】
下記化学式:
【化3】

式中、X1は脂肪族化合物または芳香族化合物であり、X2はシロキサン化合物であり、X3はオレフィン官能基含有化合物である;
を有する化合物を含む、バイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項7】
X2が、下記化学式:
【化4】

を有する、請求項6に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項8】
nが1ないし20の間にある、請求項7に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項9】
mが10ないし20の間にある、請求項7に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項10】
yが1ないし7の間にある、請求項7に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項11】
下記化学式:
【化5】

式中、X1は脂肪族化合物または芳香族化合物であり、X2はシロキサン化合物であり、X3はオレフィン官能基含有化合物である;
を有する化合物を含む、バイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項12】
X2が、下記化学式:
【化6】

を有する、請求項11に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項13】
nが1ないし20の間にある、請求項12に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項14】
mが10ないし20の間にある、請求項12に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項15】
yが1ないし7の間にある、請求項12に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項16】
下記化学式:
【化7】

式中、X1は脂肪族化合物または芳香族化合物であり、X2はシロキサン化合物であり、X3はオレフィン官能基含有化合物である;
を有する化合物を含む、バイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項17】
X2が、下記化学式:
【化8】

を有する、請求項16に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項18】
nが1ないし20の間にある、請求項17に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項19】
mが10ないし20の間にある、請求項17に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。
【請求項20】
yが1ないし7の間にある、請求項17に記載のバイオメディカルマテリアルのプレポリマー。

【公開番号】特開2010−261041(P2010−261041A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107183(P2010−107183)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(510126139)
【氏名又は名称原語表記】OUYANG, YUN LIANG
【出願人】(510126140)
【氏名又は名称原語表記】CHANG, CHIH HUNG
【Fターム(参考)】