説明

バイオレメディエーション用コンポストとその製造方法と微生物を利用して環境汚染を浄化・修復する方法。

【課題】本発明は、微生物等の働きを利用して汚染物質を分解・無害化することによって、実環境でも環境汚染の浄化・修復を図るバイオレメディエーション用コンポストとその製造方法と微生物を利用して環境汚染を浄化・修復する方法に関する。
【解決手段】食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させることにより、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにしたことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポストである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物等の働きを利用して汚染物質を分解・無害化することによって、環境汚染の浄化・修復を図るバイオレメディエーション用コンポストとその製造方法と微生物を利用して環境汚染を浄化・修復する方法に関する。
【0002】
本発明は特に石油類や分解が遅い化学物質(トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物、ドリン系農薬、有機塩素系農薬、ダイオキシン類等多環芳香族)や金属類による土壌、地下水、焼却灰等の環境汚染を浄化・修復するための技術である。
【背景技術】
【0003】
近年、ダイオキシン類や重油による土壌環境汚染、発ガン物質であるトリクロロエチレンによる土壌や地下水の汚染は、人への健康影響や土地の有効再利用において社会問題となっている。また、我国の農業分野では、長年の農薬使用により農耕地汚染と農作物汚染が進んでおり、生産現場で深刻な問題となっている。環境庁の公表によれば、このような我国の環境汚染の場所は1500〜1600ヶ所もあるとされている。
【0004】
従来より、このような環境汚染を浄化・修復するための手法として、物理的手法、化学的手法、微生物等の働きを利用した生物学的手法が存在する。そのうち微生物を利用して汚染物質を分解・無害化する環境汚染の浄化・修復する技術的手法はバイオレメディエーションと称されている。当該微生物を利用するバイオレメディエーションは、多様な汚染物質を対象とする可能性があり、投入エネルギーが少なくて済むうえ、一般的にはコストも安価になるとして、今後有望な技術の一つとされ、利用拡大が期待されている。
【0005】
日本における当該バイオレメディエーションの研究はかなり進んでおり、欧米諸国に負けていない。しかし、日本での実環境での実証例はほとんどないというのが現状である。
【0006】
1985年米国ミシガン州立大学のBumpusらは、白色腐朽菌(Phanerochaete chrisosporinm)がダイオキシンを分解すると報告し、リグニン分解酵素がダイオキシンの分解に関与していることを明らかにした。それ以来、米国を中心に酵素の基礎研究や汚染土壌を用いた浄化などの実用研究が盛んに行われるようになった。日本でも1990年代に入って研究がはじまり、1995年頃から研究成果が発表されるようになった。例えば、先行技術として特願平11−320522号、特願平11−327640号、特願平11−327641号、特願平11−342801号「塩素化ダイオキシン類の分解方法」、特願平11−351126号「塩素化ダイオキシン類土壌の浄化法」などがある。
【0007】
それらの文献には、ダイオキシン類の分解能を有する微生物として、シゾフィラム(Schizophyllum)属、トラメテス(Trametes)属、プレウロタス(Pleurotus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物があり、それらはダイオキシン類を分解するリグニンパーオキシダーゼ、マンガンパーオキシダーゼ又はラッカーゼなどの酵素を生産する。しかし、これら微生物による分解の場合、三塩素体以下のダイオキシンはある程度分解するものの、毒性の強い四塩素体以上のダイオキシンはほとんど分解できず、研究と実用面での課題が乖離している。また上記白色腐朽菌は、酵素生産に窒素や炭素源の供給を制御しなければならないが、これでは実際の汚染土壌でのダイオキシン分解は困難である。
【0008】
更に、トリクロロエチレンの汚染浄化には、芳香族化合物分解菌のフェノール資化生菌(Janibacter sp)がフェノール等により活性化されて、分解酵素の基質認識の緩さからトリクロロエチレンが分解されるものとされている。これは酵素の基質認識が広く増殖基質ではない物質が付随的に分解されるものと考えられ、一般に共代謝として知られている。フェノール分解菌以外にもトリクロロエチレンを共代謝できる菌は、メタン資化生菌、アンモニア酸化細菌、プロパン酸化細菌、トルエンやフェノールを基質とする芳香族化合物資化生菌などが知られている。
【0009】
更にまた、アゾトバクター、根粒菌、硫黄細菌、硝化菌、繊維素分解菌、酵母菌、乳酸菌、酪酸菌、酢酸菌、光合成細菌、枯草菌、シュウドモナス菌、放線菌、糸条菌のうち2種以上からなる複合微生物群を含有するダイオキシン、PCB、有機塩素化合物、有機りん化合物、残留農薬を分解する複合微生物群含有資材が提案されている。そして当該複合微生物群含有資材は、粒状培地、粉状培地、液体培地で培養したものであるとされている(特許公開2000−232876号)。
【0010】
しかし、このように複合微生物群を人工的に含有させたものや、複合微生物群を培地培養したものは、実験室では、ある程度の効果を確認することが出来るが、実汚染土壌系では、当初の期待した成果を得ることは困難である。なぜなら汚染対象環境媒体である汚染土壌や地下水などは、多種多様な微生物が共存・共生・共同して活動する複合系であるため、たとえ上記のような特定の複合微生物群を単に導入したとしても、定着しないからである。利用微生物は、汚染作業地域の位置、周辺状況、汚染状況、地質条件(土壌種、有機物含量、物理・化学特性)、及び水利地質学的特性などによって、定着する微生物もその分解活性化も大きく相違する。また、温度、栄養源、pH、電子受容体などの条件によって、定着したり、増殖したり、活性化する微生物が異なってくるからである。
【0011】
以上のように、これまでに各方面で生物学修復技術の開発が行われ、ダイオキシン類、トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物、残留農薬などを分解する微生物の特定や単離や組み合わせ特性等が報告されている。しかし、単一微生物を利用したり、複数の微生物群を組み合わせ利用したとしても、それが定着するとは限らず、休止状態になったり、消滅したり、増殖や分解が限界になったりすることが多く、ほとんどの場合完全分解することは困難である。
【0012】
つまり、実験室環境と実環境とでは環境条件が大きく異なっており、実験室環境で分解したとしても実環境では、導入条件が整わないので利用微生物がその分解能を発現するとは限らない。これまでの多くの報告では、実環境では有機質物を腐敗させる細菌類や分解・無害化を阻害させる細菌類が存在するため、利用微生物の活性化が低下したり、汚染物質が土壌粒子への強固に吸着したり、土壌団粒構造の微細孔へ侵入してしまって利用微生物が汚染物質に接触できなくなったり、焼却灰や汚染土壌が貧栄養状態であるために微生物の分解活性が低下するなどによって、既存の生物学的修復技術では有効に処理されていないというのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、上記のような事情に鑑み、実環境でも実効性のある生物学修復技術を開発すべく鋭意研究した結果、次のような技術的知見を得た。
(イ)多種多様な有機質物と栄養素を含んでいるうえ安全性も高いので、食品残渣を原料とすること。
(ロ)食品残渣をまず破砕し、加熱し、乾燥させること。原料である食品残渣を破砕によって均一化した細片状となしたうえ、加熱によって熱変性させてその細胞組織を熱破壊し、加熱殺菌により腐敗菌や雑菌を除去し、加熱乾燥させて保存性を高めるようにすることによって、食品残渣の分解を補助するとともに、微生物による発酵分解をし易くしたこと。
(ハ)食品残渣から腐敗菌や雑菌等を除去して腐敗しにくい品質の安定した有機質物となし、これによって分解能をもった利用微生物が定着し、優先的に増殖し、発酵過程における菌叢の変遷が円滑になされるようにすること。
(ニ)加熱により食品残渣を前もって熱変性させ、加熱殺菌し、乾燥させた乾燥発酵基材となし、これに加水しながら水分調整して発酵・分解させてコンポストを製造したものであること。
【0014】
上記のような条件で製造された食物残渣由来のコンポストは、有機質物の分解能を有する多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物を栄養物質として含み、且つコンポスト製造過程で産生された酵素も含んだ汚染環境浄化資材となる。しかも、当該食物残渣由来のコンポストは、条件さえ整えれば反復してほぼ同様の微生物が順次発生・増殖・変遷して予定された発酵分解過程を経てコンポスト化することができることが解った。コンポスト資材の汚染対象物質に対する発酵分解適用性を調製できることになったのである。更に、当該食物残渣由来の完熟したコンポストは、ダイオキシンやトリクロロエチレンや農薬などの残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants)を分解浄化する能力を有していることも実験により確認した。このため、当該食物残渣由来のコンポストは、残留性有機汚染物質の分解能を有する微生物の抽出基材ともなり得るなどの新しい技術的知見を得た。
【0015】
本発明は、このような新しい技術的知見に基づき、食品残渣由来コンポストを利用して実環境でも汚染環境を確実に浄化・修復することのできるバイオレメディエーション用コンポストと、その製造方法と、微生物を利用して環境汚染を浄化・修復する方法とを具現化したものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
特許を受けようとする第1発明は、食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させることにより、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにしたことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポストである。
【0017】
当該第1発明は、バイオレメディエーション用に好適なコンポストの基本発明である。その特徴は、食品残渣を原料とし、これを破砕して分解消化し易い細片状にし、加熱することにより殺菌して腐敗菌や雑菌を除去するとともに、原料である食品残渣を加熱変性させて細胞組織を熱破壊し、更に加熱によって乾燥させることによって取り扱い易く、水分が吸収され易い乾燥発酵基材となした点にある。これによって食品残渣の分解を物理的に補助するとともに、微生物による発酵分解が容易になるようにした。
【0018】
また、乾燥発酵基材に加水しながら水分調整して発酵・分解させて製造した食物残渣由来のコンポストは、有機質物の分解能を有する多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物を栄養物質として含み、且つコンポスト製造過程で産生された酵素も含む資材となっており、バイオレメディエーション用に好適である。
【0019】
また、当該食物残渣由来のコンポストは、条件さえ整えれば反復してほぼ同様の微生物が順次発生・増殖・変遷して予定された発酵分解過程を経てコンポスト化するので、汚染対象物質の種類によって、任意にその発酵分解適用性を設計調製することができる。この点でも、バイオレメディエーション用資材として好適である。
【0020】
更に、完熟した当該食物残渣由来のコンポストは、上記残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants)を分解浄化する能力を有していることが解った。このため、当該食物残渣由来のコンポストは、残留性有機汚染物質の分解能を有する微生物を特定抽出する基材ともなり得るものである。
【0021】
特許を受けようとする第2発明は、食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、当該乾燥発酵基材に副資材としてバイオサーファクタントを加えたうえ、加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させて、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにしたことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポストである。
【0022】
当該第2発明は、第1発明に係るバイオレメディエーション用コンポストの実施態様である。本発明は、第1発明と同じ特徴を有すると共に、食物残渣由来のコンポストに副資材としてバイオサーファクタントを加えた点にある。当該バイオサーファクタント(生物界面活性剤)は、微生物が両親媒性構造を有する物質を細胞外に分泌生産させたものである。尚、両親媒性物質とは、糖質やリン酸などの親水性物質と、脂質などの疎水性物質が結合し、同一分子内に親水性と疎水性の部分が共存している物質のことである。またバイオサーファクタントは、重金属類や多環芳香族類の除去を効率化して重金属汚染を除去する効果と、油・炭化水素類による土壌蓄積型汚染を除去促進させることが出来る。本発明は、各種分解菌の複合系である食物残渣由来のコンポストと、生分解性のバイオサーファクタントを併用することにより、汚染化合物の脱離が促進され、分解速度が上昇する効果がある。
【0023】
特許を受けようとする第3発明は、食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間発酵分解させて、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにコンポスト化するが、そのコンポスト化のための発酵分解過程を経時的に複数段階に分け、各段階の発酵分解過程コンポスト毎に含まれている微生物群集構造解析と優先微生物種を特定し、その解析された微生物群集構造と特定された優先微生物種の中から利用微生物の種類ごとに、生態系への影響や浄化対象物質若しくは浄化対象環境媒体への影響についての科学的知見に基づく評価と、環境導入資材としての安全性評価とを行い、各段階の発酵分解過程コンポスト中から浄化対象物質や浄化対象環境媒体や浄化事業目的に適合した利用微生物が活性化している特定段階の発酵分解過程コンポストを選定したことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポストの製造方法である。
【0024】
当該第3発明は、バイオレメディエーション用コンポストの基本的製造方法である。その製造工程は、(イ)乾燥発酵基材となす、(ロ)副資材を必要に応じて加える、(ハ)乾燥発酵基材の水分調整と空気供給と攪拌しながら所定期間発酵分解させコンポスト化する、(二)発酵分解過程を経時的に複数段階に分け、各段階の発酵分解過程コンポスト毎に微生物群集構造解析と優先微生物種を特定する、(ホ)解析され特定された利用微生物の種類毎に、生態系への影響や浄化対象物質や浄化対象環境媒体への影響評価と、安全性評価を行う、(へ)発酵分解過程コンポスト中から浄化対象物質や浄化対象環境媒体や浄化事業目的に適合した特定段階の発酵分解過程コンポストを選定して食物残渣由来のコンポストとする。
【0025】
発酵分解過程を経時的に複数段階に分けるとは、例えば、乾燥発酵基材の水分調整したものを一次発酵品となし、発酵日数7日目、30日目、75日目、117日目、141日目、1年目の完熟製品と7つの発酵分解過程コンポストに分ける。そして各段階の発酵分解過程コンポスト毎に微生物群集構造解析と優先微生物種を特定をする。ここに微生物群集構造解析とは、例えばPCR-DGGE法による微生物群集構造変化の解析がある。これは主成分分析(PCA)により食品残渣由来コンポスト中の微生物群集構造を解析するものである。また、優先微生物種を特定する方法としては、例えば、クローンライブラリー法による微生物群集構造解析がある。この方法は、DNAシークエンスにより食品残渣由来コンポスト中の優占微生物種の特定するものである。これらは分子生物学的手法による微生物叢解析である。その結果、細菌・真菌類とも、発酵過程における菌叢の変遷が確認された。また、細菌・真菌類ともいくつかの優先種が存在することが確認された。つまり、細菌・真菌類とも、発酵過程において微生物の多様性が確認されたため、コンポストの核発行段階における使い分け(高度利用)ができるのである。
【0026】
尚、利用微生物の種類ごとに生態系への影響についての評価と、環境導入資材としての安全性評価とは、
イ) 利用微生物が浄化作業の終了後に増殖する可能性。
ロ)作業区域における他の微生物群への影響。
ハ)作業区域及びその周辺における主要な動植物及び人に対する、利用微生物の病原性及び有害物質の産生性の有無その他の有害な影響を及ぼす可能性。
二)浄化作業に伴う浄(必要に応じ、中間生成生物を含む)の拡散の可能性。
ホ)浄化に当って栄養物質等を転化する場合は、浄化作業の終了後の当該物質の有意な残留の可能性。
へ)浄化作業の終了後の有害な分解生成物等の有意な残留の可能性。
以上の項目ごとに評価した結果を踏まえて、生態系等への影響が生ずるおそれがあるか否かを総合的に判断する。生態系等への影響評価の実施に当っては、最新の科学的知見による情報を用いることが必要である。
【0027】
特許を受けようとする第4発明は、食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させて、腐敗細菌がなく、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにコンポスト化するが、
そのコンポスト化のための発酵分解過程を経時的に複数段階に分け、各段階の発酵分解過程コンポスト毎に含まれている微生物群集構造解析と優先微生物種を特定し、その解析された微生物群集構造と特定された優先微生物種の中から利用微生物の種類ごとに生態系への影響についての評価と環境導入資材としての安全性評価とを行い、各段階の微生物群集の中から浄化対象物質や浄化対象環境媒体や浄化事業目的に適合した利用微生物の種類を選定して、これを分離したうえ増殖培養しておき、当該増殖培養しておいた利用微生物の種類を、特定の発酵分解過程コンポストにもどし混入し、当該利用微生物の種類を発酵分解過程コンポストになじませるようにしたことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポストの製造方法である。
【0028】
当該第4発明は、浄化対象物質や浄化対象環境媒体に適合する分解微生物群を多く含んだバイオレメディエーション用コンポストの製造方法である。本発明は、食物残渣の発酵分解過程コンポストから微生物群集構造解析と優先微生物種を特定し、その利用微生物の種類を評価し、浄化対象物質や浄化対象環境媒体や浄化事業目的に適合した利用微生物の種類を選定して、これを分離して利用微生物の種類を増殖させたうえ、特定の発酵分解過程コンポストにもどし混入し、当該利用微生物の種類を優先微生物種として当該発酵分解過程コンポストになじませるようにした点に特徴がある。このようにして製造された食物残渣由来のコンポストは、浄化対象物質や浄化対象環境媒体に適合する優先微生物種を多く含んでいるうえ、もともと共存した複合微生物系と、多種多様な栄養物質と、コンポスト製造過程で産生された酵素とが多く含まれているので、修復現場の環境が悪くても優先微生物種が活性化して、汚染物質の発酵分解を進めることができるのでほぼ確実に効率的な環境修復をすることができるようになった。
【0029】
特許を受けようとする第5発明は、副資材とは、栄養物質、酵素、外部で培養した微生物、バイオサーファクタント、ゼオライトのいずれか又はこれらの組み合わせであることを特徴とする第1発明、第2発明に記載するバイオレメディエーション用コンポストである。
【0030】
特許を受けようとする第6発明は、利用微生物の種類とは、分類・同定された単一微生物若しくはそれらを混合した微生物系又は自然環境から採取された複合微生物系であることを特徴とする第1発明、第2発明に記載するバイオレメディエーション用コンポストである。
【0031】
特許を受けようとする第7発明は、浄化対象物質とは、石油類、トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物、ドリン系農薬等の有機塩素系農薬、ダイオキシン類等多環芳香族又は金属類であることを特徴とする第1発明、第2発明に記載するバイオレメディエーション用コンポストである。
【0032】
前記第5発明、第6発明、第7発明は、本願発明の副資材、利用微生物の種類、浄化対象物質の概念とその技術的範囲を明確にした従属項である。尚、当該副資材、利用微生物の種類、浄化対象物質の概念は、第3発明、第4発明、第8発明においても同じ意味である。
【0033】
特許を受けようとする第8発明は、食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させることにより、腐敗細菌がなく、食物残渣由来の多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物や栄養物質や酵素とを含み、且つ浄化対象物質の分解能を有する特定の利用微生物を活性化させてなるバイオレメディエーション用コンポストを用意する。次に、環境汚染媒体の浄化対象物質と想定される濃度と浄化作業を行う作業区域と浄化目標とを設定する。それから、前記バイオレメディエーション用コンポストを当該作業区域に導入して、バイオレメディエーション用コンポストと作業区域に生息する複合微生物系の各種分解能を有する多種多様な微生物が連携して、浄化対象物質をより効率的に且つ充分に分解させて前記設定した浄化目標を達成させる。同時に利用微生物や分解生成物や栄養物質が浄化作業終了後に有意に残留しないという安全評価をしたうえで、浄化作業を終了するようにしたことを特徴とする微生物を利用して環境汚染を浄化・修復する方法である。
【0034】
当該第8発明は、本願第1発明、第2発明に係るバイオレメディエーション用コンポストを利用した環境汚染を浄化・修復する方法である。バイオレメディエーション用コンポストが、多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物や栄養物質や酵素とを含み、且つ浄化対象物質の分解能を有する特定の利用微生物を活性化させているので、コンポスト内の複合微生物系だけでも浄化対象物質を発酵分解させるが、コンポスト内に含まれる有機質物や栄養物質や酵素によって作業区域の発酵条件を改善するので、現場に生息する複合微生物も活性化し、両者が協働して浄化対象物質を発酵分解させることが出来る。このため、本発明に係る環境汚染を浄化・修復する方法は、現環境においても実効性のある汚染浄化・修復が可能になった。
【発明の効果】
【0035】
第1発明は、食品残渣を破砕し、加熱殺菌し、細胞組織を熱破壊し、乾燥させてなる乾燥発酵基材となして発酵分解が容易になるようにしたうえで発酵・分解させ食物残渣由来のコンポストとなしたものであり、有機質物の分解能を有する多様な微生物群の共存する複合微生物系と、多種多様な栄養物質と、コンポスト製造過程で産生された酵素とを多量に含むバイオレメディエーション用コンポストである。当該食物残渣由来のコンポストは、条件さえ整えれば反復してほぼ同様の微生物が順次発生・増殖・変遷して予定された発酵分解過程を経てコンポスト化するので、任意にその発酵分解適用性を設計調製することができる。また、完熟した当該食物残渣由来のコンポストは、上記残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants)を分解浄化する能力を有している。
【0036】
第2発明は、第1発明と同じ特徴を有すると共に、食物残渣由来のコンポストに副資材としてバイオサーファクタントを加えた点にある。当該バイオサーファクタントは、重金属類や多環芳香族類の除去を効率化して重金属汚染を除去する効果と、油・炭化水素類による土壌蓄積型汚染を除去促進させることが出来る。本発明は、各種分解菌の複合系である食物残渣由来のコンポストと、生分解性のバイオサーファクタントを併用することにより、汚染化合物の脱離が促進され、分解速度が上昇する効果がある。
【0037】
第3発明は、バイオレメディエーション用コンポストの製造方法である。その製造工程の重要な特徴は、まず食品残渣原料を乾燥発酵基材となした点にある。これによって食品残渣の分解を物理的に前処理することにより微生物による発酵分解が迅速且つ容易になるようにした。また、乾燥発酵基材を発酵分解させるが、一般に食品残渣は生ごみとして水分含量の多く、腐敗しやすい物であるのに対し、本発明は逆に乾燥品であり、殺菌されていて、腐敗しにくい物の発酵分解である。このため分解過程が一般的な生ごみのものとは大きく異なっている。この発酵分解過程を経時的に複数段階に分け、各段階の発酵分解過程コンポスト毎に微生物群集構造解析と優先微生物種を特定し、その解析され特定された利用微生物の種類毎に、生態系への影響や浄化対象物質や浄化対象環境媒体への影響評価と、安全性評価を行ったうえで、発酵分解過程コンポスト中から浄化対象物質や浄化対象環境媒体や浄化事業目的に適合した特定段階の発酵分解過程コンポストを選定して食物残渣由来のコンポストとする。本発明は、このように発酵分解過程で発生する微生物構成と微生物の種類を特定し、分析評価して、浄化対象物質や浄化対象環境媒体に合わせて好適な分解能を有するバイオレメディエーション用コンポストを設計製造するというコンポストの製造法である。このようなコンポストの製造方法は、従来にはない新しい発想である。
【0038】
第4発明は、浄化対象物質や浄化対象環境媒体に適合する優先微生物群を多く含んだバイオレメディエーション用コンポストの製造方法である。本発明は、食物残渣の発酵分解過程コンポストから優先微生物種類を特定し、評価し、浄化対象物質や事業目的に適合した利用微生物の種類を選定して、これを分離して別途増殖させたうえ、発酵分解過程コンポストにもどして、なじませるようにした。このようにして製造された食物残渣由来のコンポストは、浄化対象物質や浄化対象環境媒体に適合する優先微生物種を多く含んでいるうえ、もともと共存した複合微生物系と、多種多様な栄養物質と、コンポスト製造過程で産生された酵素とが多く含まれているので、修復現場の発酵分解環境が悪くても優先微生物と現場に生息する複合微生物群を活性化して、汚染物質をより確実に且つ効率的に発酵分解して環境浄化・修復をすることができる。
【0039】
第8発明は、当該第8発明は、バイオレメディエーション用コンポストを利用した環境汚染を浄化・修復する方法である。バイオレメディエーション用コンポストを利用することにより、共存する複合微生物系と栄養物質と酵素とを含むので、コンポスト内の複合微生物系を活性化するとともに現場に生息する複合微生物も活性化するので、両者が協働して浄化対象物質を効率的に発酵分解させることが出来る。その結果、本発明による環境汚染を浄化・修復する方法は、現環境においても実効性のある汚染浄化・修復が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明にかかるバイオレメディエーション用コンポストを図示実施例に基づいて説明する。図1は、発酵分解過程コンポストにおける発酵日数と温度変化を示すグラフであり、図2は、PCR-DGGE法・クローンライブラリー法の細菌用プライマーと菌類用プライマーを示す説明図であり、図3は、発酵分解過程コンポストにおける細菌群集の主成分分析(PCA)であり、図4は、発酵分解過程コンポストにおける菌類群集の主成分分析(PCA)であり、図5−a, 図5−b, 図5−cは、発酵分解過程コンポストにおける細菌類クローンライブラリーの表であり、図6−a, 図6−b, 図6−cは、発酵分解過程コンポストにおける菌類クローンライブラリーの表であり、図7コンポスト施用土壌における菌類クローンライブラリーの表であり、図8は、本発明にかかる食物残渣由来のコンポストによるダイオキシン汚染土壌の浄化・修復度を測定分析した結果を示す表である。
【0041】
従来より、有機性廃棄物の処理は、大別すると廃棄物の無害化処理と積極的な堆肥化処理とに大別される。しかし有機性物質は多種多様であり、それを分解する微生物群の種類や構成や動向は、水分、温度、作業区域の環境などによっても変化するので、その把握が難しく研究が充分には進んでいない。そして出来たコンポストの品質も安定していない。しかるに、ホテルや旅館などの宿泊施設、レストラン、工場、学校、病院など限られたエリア内に設置された厨房から排出された食品残渣(生ごみ)は、その多種多様な食材が混在しており、多様で豊富な有機質と栄養源が含まれているし、その出所が明確で、その品質や量が年間を通して安定しているうえ、食品として安全性も立証されている。従って、均質なコンポストを得るための原料資材として好適であり、コンポスト内の複合微生物群集構造解析と優先微生物種の特定が可能になってきた。そこで限られたエリア内に設置された厨房から排出された食品残渣由来のコンポストを用いてバイオレメデーション(生物による環境修復技術)に利用することになった。
【0042】
大型都市ホテル由来の食物残渣をモーターで駆動する破砕機にかけて破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となしたものを攪拌機にかけて均一に混合する。次にこれを上記乾燥手段に投入して加熱殺菌するとともに、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させて乾燥発酵基材とする。例えば、ボイラーから130℃の蒸気を乾燥手段に送り間接的に加熱して、ボイルおよび乾燥させる。これによって、生ものの細胞組織が破壊されるとともに、細胞組織内の水分が除去され、さらに殺菌処理される。このようになると、嫌気性発酵により細胞を破壊する工程が不要となり、嫌気性発酵から好気性発酵への移行工程も不要となる。
【0043】
次に、当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整する。副資材とは、栄養物質、酵素、外部で培養した微生物、バイオサーファクタント、ゼオライトのいずれか又はこれらの組み合わせである。特にバイオサーファクタントとして、サクシノイルトレハノースを加えると土壌から汚染物質を離脱させ、利用微生物(分解菌)との接触効率を向上させることにより分解を促進させることができた。
【0044】
更に、前記乾燥発酵基材に副資材を加えたものを発酵層に投入し、下方からエアレーションによって空気を供給すると、好気性発酵が開始し、70〜85℃位まで発熱しながら盛んに発酵分解する。一日に1度か2度、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させる。本実施例では、乾燥発酵基材の水分調整したものを一次発酵品となし、その後発酵日数7日目、30日目、75日目、117日目、141日目、1年目の完熟製品と7つの発酵分解過程コンポストに分ける。そのうえで各段階の発酵分解過程コンポスト毎に微生物群集構造解析や優先微生物種や温度変化などを観察した。その各段階の発酵分解過程コンポストにおける発酵日数と温度変化は、図1に示した通りである。
【0045】
当該発酵分解過程コンポストは、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含んでいる。
【0046】
そして各段階の発酵分解過程コンポスト毎に微生物群集構造解析と優先微生物種の特定をする。当該PCR-DGGE法・クローンライブラリー法の細菌用プライマーと菌類用プライマーを図2に示す説明図であり、する。本実施例における微生物群集構造解析は、PCR-DGGE法による微生物群集構造変化の解析である。これは主成分分析(PCA)により食品残渣由来コンポスト中の微生物群集構造を解析するものである。コンポストサンプルから全土壌微生物を抽出し、その溶液にローデイングダイを混合し、電気泳動に供し、泳動終了後染色し、プリントグラフを用いて短波によりDNAを可視化して確認した。また、図3は発酵分解過程コンポストにおける細菌群集の主成分分析(PCA)であり、図4は、発酵分解過程コンポストにおける菌類群集構造の主成分分析(PCA)である。尚、この際、細菌群集構造と菌類群集構造に分けて解析した。
【0047】
他方、優先微生物種を特定する方法として、クローンライブラリー法による微生物群集構造解析をおこなった。この方法は、DNAシークエンスにより食品残渣由来コンポスト中の優占微生物種の特定するものである。コンポスト微生物種を解析するため、細菌類と菌類とコンポスト施用土壌とに分けてクローンライブラリーの作成とシーククエンス解析を行った。クローンライブラリーとしては、発酵分解過程コンポストにおける細菌類のクローンライブラリー結果を図5−a, 図5−b, 図5−cに示し、発酵分解過程コンポストにおける菌類のクローンライブラリー結果を図6−a, 図6−b, 図6−cに示し、コンポスト施用土壌における菌類クローンライブラリー結果を図7に示す。
【0048】
この解析結果、コンポスト製造過程の初期から中期にかけて温度の上昇による細菌群集構造の変化が認められた。後期から終期にかけての細菌叢はほぼ一定であり、病原菌は検出されなかった。コンポスト製造中の菌類は、ほとんどが子嚢菌類で担子菌類は検出されなかった。コンポスト導入土壌に病原菌は検出されなかった。これらの結果から、発酵過程コンポストは、細菌、菌類共に多様性が確認でき、バイオレメデーション(生物による環境修復技術)に利活用できることが解った。
【実施例1】
【0049】
ダイオキシン汚染土壌(試料)に本発明にかかる1年目の完熟した食物残渣由来のコンポスト製品を投入し、環境庁水質保全局土壌農薬課の「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニアル」により土壌中ダイオキシン類分析を行った。その結果、ダイオキシン類の毒性が大幅に低減し、当該食物残渣由来のコンポストには、ダイオキシン汚染土壌の分解修復能力があることが確認された。図7は、本発明にかかる食物残渣由来のコンポストによるダイオキシン汚染土壌の浄化・修復度を測定分析した結果を示す表である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】発酵分解過程コンポストにおける発酵日数と温度変化を示すグラフである。
【図2】PCR-DGGE法・クローンライブラリー法の細菌用プライマーと菌類用プライマーを示す説明図であり、
【図3】発酵分解過程コンポストにおける細菌群集の主成分分析(PCA)結果である。
【図4】発酵分解過程コンポストにおける菌類群集の主成分分析(PCA)結果である。
【図5−a】図5−aは発酵分解過程コンポストにおける細菌類クローンライブラリー結果の表である。
【図5−b】図5−bは発酵分解過程コンポストにおける細菌類クローンライブラリー結果の表である。
【図5−c】図5−cは発酵分解過程コンポストにおける細菌類クローンライブラリー結果の表である。
【図6−a】図6−aは発酵分解過程コンポストにおける菌類クローンライブラリー結果の表である。
【図6−b】図6−bは発酵分解過程コンポストにおける菌類クローンライブラリー結果の表である。
【図6−c】図6−cは発酵分解過程コンポストにおける菌類クローンライブラリー結果の表である。
【図7】コンポスト施用土壌における菌類クローンライブラリー結果の表である。
【図8】本発明にかかる食物残渣由来のコンポストによるダイオキシン汚染土壌の浄化・修復度を測定分析した結果を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、
当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させることにより、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにしたことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポスト。
【請求項2】
食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、
当該乾燥発酵基材に副資材としてバイオサーファクタントを加えたうえ、加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させて、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにしたことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポスト。
【請求項3】
食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、
当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間発酵分解させて、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにコンポスト化するが、
そのコンポスト化のための発酵分解過程を経時的に複数段階に分け、各段階の発酵分解過程コンポスト毎に含まれている微生物群集構造解析と優先微生物種を特定し、
その解析された微生物群集構造と特定された優先微生物種の中から利用微生物の種類ごとに、生態系への影響や浄化対象物質若しくは浄化対象環境媒体への影響についての科学的知見に基づく評価と、環境導入資材としての安全性評価とを行い、
各段階の発酵分解過程コンポスト中から浄化対象物質や浄化対象環境媒体や浄化事業目的に適合した利用微生物が活性化している特定段階の発酵分解過程コンポストを選定したことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポストの製造方法。
【請求項4】
食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、
当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させて、腐敗細菌がなく、食物残渣由来の有機質物の分解能を有する多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物と栄養物質と酵素とを含むようにコンポスト化するが、
そのコンポスト化のための発酵分解過程を経時的に複数段階に分け、各段階の発酵分解過程コンポスト毎に含まれている微生物群集構造解析と優先微生物種を特定し、
その解析された微生物群集構造と特定された優先微生物種の中から利用微生物の種類ごとに生態系の影響についての評価と環境導入資材としての安全性評価とを行い、
各段階の微生物群集の中から浄化対象物質や浄化対象環境媒体や浄化事業目的に適合した利用微生物の種類を選定して、これを分離したうえ増殖培養しておき、
当該増殖培養しておいた利用微生物の種類を、特定の発酵分解過程コンポストにもどし混入し、当該利用微生物の種類を優先微生物種として発酵分解過程コンポストになじませるようにしたことを特徴とするバイオレメディエーション用コンポストの製造方法。
【請求項5】
副資材とは、栄養物質、酵素、外部で培養した微生物、バイオサーファクタント、ゼオライトのいずれか又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1、2に記載するバイオレメディエーション用コンポスト。
【請求項6】
利用微生物の種類とは、分類・同定された単一微生物若しくはそれらを混合した微生物系又は自然環境から採取された複合微生物系であることを特徴とする請求項1、2に記載するバイオレメディエーション用コンポスト。
【請求項7】
浄化対象物質が、石油類、トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物、ドリン系農薬等の有機塩素系農薬、ダイオキシン類等多環芳香族又は金属類であることを特徴とする請求項1、2に記載するバイオレメディエーション用コンポスト。
【請求項8】
食物残渣を破砕して細胞組織のほとんどが破壊された細片状となし、これを加熱殺菌したうえ、含水率がほぼ一律に10%〜20%になるよう乾燥させてなる乾燥発酵基材となし、
当該乾燥発酵基材に副資材を加えるか、または加えることなく加水して含水率が40%〜50%に水分調整するとともに、空気を供給して発酵を開始させ、断続的に攪拌しながら1週間〜1年間ほど発酵分解させることにより、腐敗細菌がなく、食物残渣由来の多種多様な微生物群の共存する複合微生物系と、食物残渣由来の多種多様な有機質物や栄養物質や酵素とを含み、且つ浄化対象物質の分解能を有する特定の利用微生物を活性化させてなるバイオレメディエーション用コンポストを用意し、
環境汚染媒体の浄化対象物質と想定される濃度と浄化作業を行う作業区域と浄化目標とを設定し、
前記バイオレメディエーション用コンポストを当該作業区域に導入して、バイオレメディエーション用コンポストと作業区域に生息する複合微生物系の各種分解能を有する多種多様な微生物が連携して、浄化対象物質をより効率的に且つ充分に分解させて前記設定した浄化目標を達成させるとともに、利用微生物や分解生成物や栄養物質が浄化作業終了後に有意に残留しないという安全評価をしたうえで、浄化作業を終了するようにしたことを特徴とする微生物を利用して環境汚染を浄化・修復する方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−a】
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【図5−b】
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【図5−c】
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【図6−a】
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【図6−b】
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【図6−c】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−265010(P2006−265010A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82556(P2005−82556)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(505104249)
【Fターム(参考)】