説明

バイオ用途用のスチレン−無水マレイン酸コポリマ及びそれらの製剤

本発明は、無溶媒の技術を用いたスチレン−無水マレイン酸コポリマの調製を開示するものである。本無溶媒法の結果、未反応のスチレン及び/又は無水マレイン酸モノマなどの残留物の量が減るため、本コポリマはバイオ用途に特に適したものになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、引用をもってその全文をここに援用することとする、2006念3月30日出願の米国仮特許出願60/787,166号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は部分的にスチレン−無水マレイン酸コポリマに関する。それは、部分的に加水分解したポリマを酸性型で生じるバルク重合法を用いてこのようなポリマを合成する方法に関する。更に本発明は、低いモノマ(スチレン及びマレイン酸)残留含有量を有すると共に、医療での生物工学、組織工学、医薬製品、衛生ケア、美容、バイオテクノロジー、食品業、農業、吸収性繊維用等で溶液、ヒドロゲル又は固体としてバイオ用途に向くスチレン−無水マレイン酸コポリマを調製する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
スチレン−無水マレイン酸コポリマ(SMAコポリマ)は数多くの用途で用いられているが、それらのバイオ用途での利用には、それらが純度に欠けることや残留する有害な混入物という妨げがある。
【0004】
FDAは、食品に接触する物品又は物品成分として用いるためにSMAコポリマを間接的食品添加剤として認可した(Code of Federal
Regulations, Sec. 177.1820 "Styrene-maleic anhydride copolymers”, Title
21, Volume 3 p 304-305、2000年4月1日に改定)。FDAは、SMAコポリマは70,000の最小平均分子質量を有すると共に、15重量パーセントを超えない無水マレイン酸と、0.3重量パーセントを越えない残留スチレンモノマと、0.1重量パーセントを越えない残留無水マレイン酸モノマと、1時間、還流温度で0.006重量パーセントを越えない、蒸留水中抽出可能最大画分と、2時間、華氏73℃で0.02重量パーセントを越えないn-ヘプタン中抽出可能最大画分とを含有するものと明示している。
【非特許文献1】Code of FederalRegulations, Sec. 177.1820 "Styrene-maleic anhydride copolymers”, Title21, Volume 3 p 304-305
【0005】
Sethi, N. らは市販のSMA製品の生体適合性を実証したが、利用化の前に、他段階の複雑な精製法が必要だった。Sethi, N. et al. Contraception 1989, 39, 217-226、同じ結論は Lohiya, N. K らによって報告されている。Lohiya, N. K. et al. Int. J. Androl. 2000, 23, 36-42。
【非特許文献2】Sethi, N. etal. Contraception1989, 39, 217-226
【非特許文献3】Lohiya, N. K.et al. Int. J. Androl. 2000, 23,36-42
【0006】
Wagner J. G. らは米国特許第2,897,121号で、そしてChen, Y. R. らはColloids and Surfaces A:
Physicochem. Eng. Aspects, 2004, 242, 17-20 で、経口投与用の医薬担体のための添加剤としてSMAコポリマを利用することを提示している。これらの著者らは当該ポリマをバイオ用途に用いることができると主張しているが、純度など、裏付けとなるデータは提示されていない。
【特許文献1】米国特許第2,897,121号
【非特許文献4】Colloids and Surfaces A:Physicochem. Eng.Aspects, 2004, 242, 17-20
【0007】
Patel, H. A. らはSMAに結合させたアクリフラビンの合成、放出研究、及び抗菌特性を開示している。Patel, H. A. et al. Die
Angewandte Makromolekulare Chemie 1998, 263, 25-30。Patel, H. A. らはSMAに結合させたアンピシリンについて同様な発見を報告している。Patel, H. A. et al. Die
Angewandte Makromolekulare Chemie 1999, 271, 24-27。両者の場合とも、当該組成物をバイオ用途に適したものにするには、進歩したSMAコポリマ精製法がひつようであった。
【非特許文献5】Patel, H. A. et al. Die AngewandteMakromolekulare Chemie 1998, 263, 25-30
【非特許文献6】Patel, H. A. et al. Die AngewandteMakromolekulare Chemie 1999,271, 24-27
【0008】
Ottenbrite, R. M. 及びSpiridon, Dは抗腫瘍エフェクタとしてのSMAコポリマの利用を開示している。Ottenbrite,
R. M. 及びSpiridon, Dは、SMAコポリマの生体適合性を実証しているが、それは入念な精製ステップの後で初めて可能なものである。Ottenbrite, R. M. J. Macromol. Sci.-Chem. 1985, A22(5-7), 819-832; Spiridon D. Polymer
International, 1997, 43, 175-181。
【非特許文献7】Ottenbrite, R.M. J.Macromol. Sci.-Chem. 1985, A22(5-7), 819-832
【非特許文献8】Spiridon D. PolymerInternational, 1997, 43, 175-181
【0009】
米国特許第3,980,663号及び米国特許第4,381,784 号は衛生ケア用の水吸収性材料としてSMAコポリマを用いることを開示している。米国特許第 3,939,108号及び米国特許第 6,590,019号はビンのラベル接着に有用な接着剤としてのSMAコポリマを開示している。米国特許第5,080,888号は、美容におけるSMAコポリマを開示している。米国特許第4,980,403号;米国特許第5,104,957号;米国特許第5,480,427号;及び米国特許第6,127,451号は生体材料としてSMAコポリマを用いることを開示している。また米国特許第4,153,682号;米国特許第 6,500,447号;及び米国特許第6,531,160 号は薬物送達系として医薬製品中にSMAコポリマを用いることを開示している。
【特許文献2】米国特許第3,980,663号
【特許文献3】米国特許第4,381,784 号
【特許文献4】米国特許第 3,939,108号
【特許文献5】米国特許第 6,590,019号
【特許文献6】米国特許第5,080,888号
【特許文献7】米国特許第4,980,403号
【特許文献8】米国特許第5,104,957号
【特許文献9】米国特許第5,480,427号
【特許文献10】米国特許第6,127,451号
【特許文献11】米国特許第4,153,682号
【特許文献12】米国特許第 6,500,447号
【特許文献13】米国特許第6,531,160 号
【0010】
バイオ用途でSMAコポリマを用いる条件の一つは、その化学的純度ができる限り高いことと同時に、その有害な混入物質含有量ができる限り低いことである。SMAコポリマへの混入には、用いる重合プロセスを由来とする二つの原因があり、1)反応しなかったモノマと、2)有機溶媒等、重合の添加剤である。
【0011】
例えばSMAコポリマは溶媒ベースの方法により主に調製されるが、これらの方法は、未反応のモノマ及び開始物質の他にも、取り除かれねばならない残留溶媒があるために、最も混入性が高くもある。米国特許第2,286,062号;米国特許第2,378,629号;米国特許第2,866,775号;米国特許第3,157,595号;米国特許第3,989,586号;第4,105,649号;及び米国特許第4,126,549号を参照されたい。必要となる付加的な精製ステップがあることから、他の種類のポリマに比較してバイオ用途でSMAコポリマを用いる際の重要な経済的制限が分かる。
【特許文献14】米国特許第2,286,062号
【特許文献15】米国特許第2,378,629号
【特許文献16】米国特許第2,866,775号
【特許文献17】米国特許第3,157,595号
【特許文献18】米国特許第3,989,586号
【特許文献19】米国特許第4,105,649号
【特許文献20】米国特許第4,126,549号
【0012】
バルク重合には有機溶媒はないため、溶媒重合法よりも混入性が低い。過酸化性開始物質を用いた、あるいは用いない、バルク重合法によるスチレン、酢酸ビニル、及び他のものの無水マレイン酸コポリマを開示した米国特許第2,047,398号のVoss, A. ら;米国特許第2,205,882号の Graves, G. D.、及び米国特許第4,051,311号の Lee Y. C. らを参照されたい。無水マレイン酸モノマの含有量は、当初のコモノマ混合物では重量で55% 未満である。Baer, M. は米国特許第2,971,939号で、無水マレイン酸含有量が重量で12%未満であるバルク重合法を用いたスチレン無水マレイン酸コポリマの合成を紹介している。これらの開示では、スチレンと過酸化性開始物質との混合物を3乃至5%の転化率まで穂も重合化させる。この時点で無水マレイン酸モノマを一定の速度で加えて無水マレイン酸のスチレン溶液を形成する。次にSMAコポリマをこの反応塊からベンゼンで抽出して、最終的にはメタノールによる沈殿により溶液から分離する。
【特許文献21】米国特許第2,047,398号
【特許文献22】米国特許第2,205,882号
【特許文献23】米国特許第4,051,311号
【特許文献24】米国特許第2,971,939号
【0013】
これらのバルク重合法での欠点には、a)反応塊の粘性が増していくために、反応中心に向かって反応物質の拡散インピーダンスが高くなることから、モノマからコポリマへの転化が不完全となること;b)未反応のモノマを取り除くための精製が難しく、また、特定の溶媒(アセトン又はベンゼンなど)への溶解と、それに続くアルコール又は水による沈殿、抽出、そして乾燥、といったことにより実現されること;c)大量の反応熱が発生し、爆発の危険性があること;d)反応塊の操作が困難であること;及びe)沈殿後の固体の抽出による精製が対費用効果もなく、環境に優しくもないこと、がある。
【0014】
Cutter, L. A.らは米国特許第4,145,375号で、一連の操作を含む、スチレン及び無水マレイン酸を共重合させるプロセスを紹介しているが、ここではまず無水マレイン酸を塊段階で重合条件下でスチレンに段階的に混合することで、スチレン−無水マレイン酸ポリマを急速に形成させる。次に、このスチレン・リッチな混合物を水中に懸濁させ、スチレン重合反応を従来の塊/懸濁重合系と同じように完了させる。この懸濁ステップでは、無水物基を開環させてポリマ鎖条に遊離カルボン酸基を形成させることにより、このポリマが更に修飾される。加熱時間後、重合混合物を冷却する;ポリマ・ビーズを固体−ボウル遠心分離により水から分離し、回転空気乾燥器で乾燥させる。その結果得られるポリマは100,000 - 500,000の分子量を有し、残留スチレンの含有量は重量で0.02 乃至 0.1 %の間である。このプロセスの欠点は 最終生成物がポリスチレン及びSMAコポリマの混成物であることであるが、該ポリスチレンは主要な混入物質であり、複数の筋から、それがバイオ用途には望ましくないことが示唆されている。同様な問題は過剰量のスチレンを用いたフロント重合法でも存在する。Szalay, J. et al., Macromol.
Rapid Commun. 1999, 20, 315-318。
【特許文献25】米国特許第4,145,375号
【非特許文献9】Szalay, J. etal., Macromol. Rapid Commun. 1999, 20, 315-318
【0015】
水性媒質中での無水マレイン酸及び他のモノマの共重合法が開示されてきた。Bomer B. らの米国特許第4,737,549号;Saraydin D. らのJ. Appl. Polym. Sci. 2001, 79, 1809-1815;Caycara, T. らの J. Polym. Sci. A: Polym.
Chem. 2001, 39,
277-283;Akkas, P. らの J.
Appl. Polym. Sci. 2000, 78, 284-289;Sen, M. らのPolymer 1999, 40, 913-917;Sen, M. らの Polymer 1998, 39, 1165-1172;Karadag, E. らのJ. Appl. Polym. Sci. 1997, 66, 733-739;Saraydin, D. らのBiomaterials 1994, 15,
917-920及び Karadag, E. らのBiomaterials
1996, 17,
6770を参照されたい。 しかしながら、これらの方法は、2つのコモノマの可溶性に違いがあるため、スチレンを共重合させるために用いることはできない。加えて、結果的に得られるポリマはほとんどカルボン酸基を有さず、潜在的なバイオ用途の数に制限が出るであろう。
【特許文献26】米国特許第4,737,549号
【非特許文献10】J. Appl. Polym. Sci. 2001,79, 1809-1815
【非特許文献11】J. Polym. Sci. A: Polym. Chem. 2001, 39, 277-283
【非特許文献12】J. Appl. Polym. Sci. 2000,78, 284-289
【非特許文献13】Polymer 1999, 40, 913-917
【非特許文献14】Polymer 1998, 39, 1165-1172
【非特許文献15】J. Appl. Polym. Sci. 1997,66, 733-739
【非特許文献16】Biomaterials 1994, 15,917-920
【非特許文献17】Biomaterials 1996, 17, 6770
【0016】
共重合収率が最も高くなる(ほぼ95%)のは、等モル量のモノマ供給量を用い、反応物質の良好な質量移動(例えば有機溶媒中での重合反応で達成されるものなど)を達成するプロセスを用いた場合である。等モル量のモノマ供給量を用いないプロセスでは、最も少ない量しか存在しないモノマについてのみ、高い数値の転化が誘導される。Klumperman, B. et al. Polymer 1993, 34, 1032-1037; Klumperman, B. Macromolecules,
1994, 27, 6100-6101; Klumperman, B.
et al. Eur. Polym. J. 1994, 30, 955-960。
【非特許文献18】Klumperman, B.et al. Polymer 1993, 34,1032-1037
【非特許文献19】Klumperman, B.Macromolecules, 1994, 27, 6100-6101
【非特許文献20】Klumperman, B.et al. Eur. Polym. J. 1994, 30, 955-960
【0017】
SMAコポリマを精製する場合に最も困難な局面は未反応のスチレンの除去である。なぜならそれは有機化合物の液体であり、水には不溶性であるが、有機溶媒には可溶性であり、沸点が高いため、たとえ高圧下であっても乾燥が難しいからである。Boundy, R. H. "Styrene, its polymers, Copolymers and
Derivatives," Reinhold Publishing Corporation, New York, 1952, pp. 860-865。
【非特許文献21】Boundy, R. H."Styrene, its polymers, Copolymers and Derivatives," ReinholdPublishing Corporation, New York,1952, pp. 860-865
【0018】
未反応の無水マレイン酸は水による簡単な加水分解で取り除くことができ、それにより、水溶性の高い(25℃で4.4 x 105 ppm(wt) を越える;Yaws C.L. in "Chemical Properties Handbook " McGraw-Hill
Companies,Inc. New York, 1999)マレイン酸が形成されるため、コポリマからそれを効率的かつ経済的に取り除くことができる。加えて、遊離無水マレイン酸の加水分解率は、重合体化した無水マレイン酸のそれよりも遥かに高い。Ratzch, M. et al. J. Macromol. Sci-Chem. 1987, A24, 949-965; Wang, M. et al. J. AppL. Polym. Sci. 2000, 75, 267-274。
【非特許文献22】Yaws C.L. in"Chemical Properties Handbook " McGraw-Hill Companies,Inc. New York, 1999
【非特許文献23】Ratzch, M. etal. J.Macromol. Sci-Chem. 1987, A24, 949-965
【非特許文献24】Wang, M. etal. J. AppL. Polym. Sci. 2000, 75, 267-274
【0019】
発明の概要
ある局面では、本発明は、重量で0.050%未満の未反応のスチレンモノマを有するスチレン−無水マレイン酸コポリマに関する。
【0020】
更なる実施態様では、本スチレン−無水マレイン酸コポリマは、重量で合わせて0.090%未満の未反応の無水マレイン酸及びマレイン酸を有する。
【0021】
更なる実施態様では、スチレン/(無水マレイン酸+マレイン酸)で定義される、スチレンモノマの無水マレイン酸及びマレイン酸モノマに対する重量パーセントは42:58 - 52:48である。
【0022】
更なる実施態様では、スチレン−無水マレイン酸コポリマの粘度測定分子量Mvは200,000-2,500,000である。
【0023】
更なる実施態様では、スチレン−無水マレイン酸コポリマ中の未反応のスチレンの量は重量で0.015% 乃至0.042% である。
【0024】
更なる実施態様では、スチレン−無水マレイン酸コポリマ中の未反応の無水マレイン酸及びマレイン酸を合わせた量は重量で0.045% 乃至 0.2%である。
【0025】
別の局面では、本発明は、本発明のスチレン−無水マレイン酸コポリマを含む医薬に関する。
【0026】
別の局面では、本発明は、本発明のスチレン−無水マレイン酸コポリマを含む製品に関する。
【0027】
更なる実施態様では、前記製品は、医療での生物工学、組織工学、医薬製品、身体の衛生、美容、バイオテクノロジー、食品業、農業、吸収性繊維の分野で用いられる。
【0028】
別の局面では、本発明は、a)ある量の無水マレイン酸モノマを融解させるステップと;b)溶解した開始物質を含有する、ある量のスチレンを前記無水マレイン酸に加えるステップと;c)スチレン−無水マレイン酸コポリマを形成するのに有効な時間、前記無水マレイン酸、スチレン及び開始物質の混合物を攪拌するステップとを含む、スチレン−無水マレイン酸コポリマを調製する方法に関する。
【0029】
更なる実施態様では、前記開始物質は遊離ラジカル開始物質である。
【0030】
更なる実施態様では、前記開始物質は、過酸化ジアシル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-t-ブチル、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルエチルヘキソノエート、ペルエステル、t-ブチルペルピバレート、脂肪族のアゾ、アゾイソブチロニトリル、アゾ-4-シアノペンタン酸、ペルオキソ二硫酸、及び過酸化水素から成る群より選択される。
【0031】
更なる実施態様では、前記開始物質は過酸化ジベンゾイル又はアゾイソブチロニトリルである。
【0032】
更なる実施態様では、合成中のスチレン:対無水マレイン酸の量は重量で1 : 6 乃至1 : 14 の間である。
【0033】
更なる実施態様では、合成中のスチレン:対無水マレイン酸の量は重量で1 : 8 乃至 1 : 12 の間である。
【0034】
更なる実施態様では、開始物質の量は、反応塊の重量に対して0.01% 乃至 0.05%の間である。
【0035】
更なる実施態様では、開始物質の量は、反応塊の重量に対して0.025% 乃至 0.035%の間である。
【0036】
更なる実施態様では、無水マレイン酸の融解は、無水マレイン酸を少なくとも75℃まで加熱することにより、行なわれる。
【0037】
更なる実施態様では、スチレンを無水マレイン酸に55°C
乃至100°Cの間で加える。
【0038】
更なる実施態様では、スチレンを無水マレイン酸に65°C
乃至90°Cの間で加える。
【0039】
更なる実施態様では、スチレンを無水マレイン酸に10
分間乃至60 分間の時間にわたって加える。
【0040】
更なる実施態様では、スチレンを無水マレイン酸20
分間乃至40 分間の時間にわたって加える。
【0041】
更なる実施態様では、無水マレイン酸、スチレン、及び開始物質の混合は、大気圧下で60°C 乃至150°Cの間の温度で45分間乃至300 分間の間の時間にわたって行なわれる。
【0042】
更なる実施態様では、無水マレイン酸、スチレン、及び開始物質の混合は、大気圧下で85°C 乃至115°Cの間の温度で60分間乃至180 分間の間の時間にわたって行なわれる。
【0043】
更なる実施態様では、本方法は、ステップc)で形成されたスチレン−無水マレイン酸コポリマを55°C 乃至85°Cの間まで冷ますステップを更に含む。
【0044】
更なる実施態様では、ステップc)で形成されたスチレン−無水マレイン酸コポリマは60°C 乃至80°Cの間まで冷まされる。
【0045】
更なる実施態様では、本方法は、当該スチレン−無水マレイン酸コポリマに水を加えることにより、当該無水マレイン酸の少なくとも一部分をマレイン酸に加水分解させるステップを更に含む。
【0046】
更なる実施態様では、水の量は、当該スチレン−無水マレイン酸コポリマの重量で5 % 乃至40%の間である。
【0047】
更なる実施態様では、水の量は、当該スチレン−無水マレイン酸コポリマの重量で10 % 乃至35%の間である。
【0048】
更なる実施態様では、水は30乃至180分間の間の時間にわたって加えられる。
【0049】
更なる実施態様では、水は60至120分間の間の時間にわたって加えられる。
【0050】
更なる実施態様では、水が加えられた後、混合物は20乃至90分間の間の時間にわたって混合される。
【0051】
更なる実施態様では、混合物は30乃至60分間の間の時間にわたって混合される。
【0052】
更なる実施態様では、本方法は、当該コポリマを室温まで冷ますステップを更に含む。
【0053】
更なる実施態様では、本方法は、遊離マレイン酸を水で抽出することにより当該コポリマを精製するステップを更に含む。
【0054】
更なる実施態様では、当該コポリマは、当該コポリマの重量の約6倍の量の水であって、該水を取り除く前で5°C 乃至40°C の間の温度の水に混合される。
【0055】
更なる実施態様では、当該コポリマは15°C乃至35°Cの間の温度の水に混合される。
【0056】
更なる実施態様では、当該コポリマは、該水を取り除く前に1乃至6時間の間の時間にわたって、水と混合される。
【0057】
更なる実施態様では、当該コポリマは、該水を取り除く前に2乃至4時間の間の時間にわたって、水と混合される。
【0058】
更なる実施態様では、該水は圧力下でのろ過により、取り除かれる。
【0059】
更なる実施態様では、該抽出は、上清中のマレイン酸含有量が重量で0.001未満になるまで、繰り返される。
【0060】
更なる実施態様では、本方法は、当該コポリマを50°C
乃至90°Cの間の温度で乾燥させる乾燥ステップを更に含む。
【0061】
更なる実施態様では、当該コポリマを60°C乃至80°Cの間の温度で乾燥させる。
【0062】
更なる実施態様では、当該コポリマを50 mバール以下の真空下で乾燥させる。
【0063】
更なる実施態様では、当該コポリマを4 乃至 10時間の間の時間にわたって乾燥させる。
【0064】
更なる実施態様では、当該コポリマを6 乃至 8時間の間の時間にわたって乾燥させる。
【0065】
発明の詳細な説明
定義
ここで用いられる場合の用語「バイオ用途」とは、最も重要な特性が生体適合性であるような全ての用途を言う。
【0066】
ここで用いられる場合の用語「生体適合性」とは、ある物質が持つ生化学的特徴であって、その生化学的特徴のおかげで、その物質が、自発的又は時間が経つにつれて何らかの反発的もしくは毒性の現象の症状を炎症、感染及び他のものの形で有することなく、生物(ヒト、動物及び植物)の一体的部分として生物にとって許容可能になっているようなものを言う (Black J., "Biological Performance of Materials: Fundamentals
of Biocompatibility", 2d ed. M. Dekker,
N.Y., 1992)。この解釈は純粋な物質(100%の純度、他の物質が検出されない)や、(混入物質を含有するために)100%未満の純度を有するものの両者に与えられる。
【非特許文献25】Black J.,"Biological Performance of Materials: Fundamentals ofBiocompatibility", 2d ed. M. Dekker, N.Y., 1992
【0067】
生体適合性検査の指針となってきた標準は、1)トリパルタイト・ガイダンス(原語:Tripartite Guidance);2)インターナショナル・オーガニゼーション・フォー・スタンダーダイゼーション(原語:International Organization for Standardization )(ISO) 10993 スタンダード (これは医療器具の生物学的評価として知られており、国際間で開発中である);及び3)FDA ブルーブック・メモランダ(原語:FDA Blue Book Memoranda)である。
【0068】
重合化の方法
ある実施態様では、本発明は、バルク重合化法及び遊離ラジカル開始物質を用い、スチレン(Sty):無水マレイン酸 (MAnh)
を 1 : 6、 1 : 14 、1: 8、又は1 :12 のモノマ供給量にし、反応塊に対して0.01% 以上0.05% 以下の量の開始物質として、スチレン−無水マレイン酸コポリマを得るプロセスに関する。別の実施態様では、開始物質の量は0.025 %以上0.035 %以下である。
【0069】
重合化を開始させるのに適した開始物質の例は、熱分解により遊離ラジカルを形成する従来の薬剤である。非限定的な例には;過酸化ジアシル、例えば過酸化ジベンゾイル、過酸化ジ-t-ブチル、t-ブチルペルベンゾエート又はt-ブチルペルエチルヘキソノエートペルエステル、例えばt-ブチルペルピバレート、脂肪族のアゾ化合物、例えばアゾイソブチロニトリル、アゾ-4-シアノペンタン酸、又は他の水溶性の脂肪族のアゾ化合物、ペルオキソ二硫酸の塩類、又は過酸化水素がある。ある実施態様では、開始物質は過酸化ジベンゾイル及びアゾイソブチロニトリルである。
【0070】
重合反応は、5-7℃の温度に冷却された凝結水のためのトラップと、過熱−冷却マントルと、温度計と、所定量の工業銘柄の無水マレイン酸が大気圧で中に充填される液体用計量供給じょうごとを含む、真空に接続された混練器−押出器内で行なわれる。無水マレイン酸を約75°Cの温度で約30分間混合して、融解した無水マレイン酸の透明な液体を生じさせる。半透明な融解物が残っていることは、マレイン酸の存在の指標である。マレイン酸の無水マレイン酸への転化は、混練器を真空蒸留装置に接続し、上記の温度で圧力を400mバールに30分間、調節することにより、達成することができる。大気圧で融解したこの無水マレイン酸を55°C以上100°C以下の温度にする。別の実施態様では、該温度は65°C 乃至90°Cの間である。工業銘柄のスチレンと、溶解させた開始物質とをこの無水マレイン酸融解物に10分以上60分以下の時間にわたって加える。別の実施態様では、時間は20 乃至40分の間である。混合は大気圧下で、そして60°C 以上150°C 以下の温度で、45 分以上300分以下の時間にわたって続行される。別の実施態様では、混合温度は85°C 乃至115°Cの間に維持される。別の実施態様では、混合時間は60乃至180 分の間である。
【0071】
黄色乃至茶色の、粘性で透明な反応塊を加水分解により処理して未反応の過剰な無水マレイン酸をマレイン酸にする。混練器の内容物に脱イオン水(10μSの導電率を持つ)を加えることにより、55°C以上85°C以下に冷却する。別の実施態様では、混練器の内容物を60°C 乃至80°Cの間に冷却する。加える脱イオン水の量は反応塊に対して重量で5 % 以上40 %以下である。別の実施態様では、加える脱イオン水の量は、30分以上180分以下の時間にわたって重量で10 % 乃至 35 % の間である。別の実施態様では、脱イオン水は60分乃至120分の間、加えられる。脱イオン水添加終了後、反応塊を20分以上90 分以下の時間にわたって混合する。別の実施態様では、反応塊を30分乃至60分の間の時間にわたって混合する。選択的には、反応塊を5-7°Cの温度のマントル液体を通して循環させることにより、周囲温度まで冷却する。
【0072】
次にマレイン酸を混練器の内容物から以下のプロセスに従って抽出する。Nuceフィルタを付け、混連器のそれの3倍の有効容積を有するステンレス鋼製の混合容器を用いる。この混合容器は更に、二枚のブレードを持つインペラー攪拌具と、加熱・冷却用のマントルと、温度計と、液体用の計量供給ニップルと、圧縮空気用の注入パイプ接続と、吐出ニップルと、内部の、二枚の穿孔されたステンレス鋼製プレートの間にポリアミドの布(100ミクロン・メッシュ)を挟んだものから成るフィルタとを備える。該容器を、5°C 以上40°C以下の温度で、反応塊の容積のほぼ6倍である量の脱イオン水(10μS未満の導電率を持つ)で充填する。別の実施態様では、該温度は15°C乃至35°Cの間である。この脱イオン水をやさしく攪拌(攪拌具の速度 = 40-60 rpm)中、反応塊をらせんコンベヤーを介して加える。形成される粗い水性懸濁液を1時間異常6時間以下、混合する。別の実施態様では、該懸濁液を2乃至4時間の間、混合する。その後攪拌を停止し、加圧下でのろ過により、水相を除去する。
【0073】
該プロセスを、NaOH 0.01Nの溶液を用いた容積滴定で調べて重量で上清中マレイン酸含有量が0.01%未満になるまでの回数、繰り返す。
【0074】
マレイン酸を実質的に含まず、70%の水分量を持つ、その湿潤した固体を、加熱・冷却マントル、温度計、らせん攪拌具、回転ナイフを持つ破砕器を備えた円形乾燥器に移し、サッククロス付きのフィルタ、凝縮器、及び凝結水のための回収容器を含む真空蒸留装置に接続する。顆粒状の塊を、50°C以上90°C以下の温度で乾燥させる。別の実施態様では、乾燥温度は60°C乃至80°Cの間であり、真空は 4時間以上10時間以上の間の時間にわたって50mバールである。別の実施態様では、乾燥時間は6 乃至8時間の間である。最後に材料を周囲温度まで冷まし、乾燥器から取り出し、溶接されたポリエチレン製袋内に梱包する。
【0075】
抽出で出来たマレイン酸の水溶液を、当業で公知であると共に本発明に適合させた処理法の一つを用いて熱脱水で処理して無水マレイン酸を得る(例えば米国特許第3,993,671号;米国特許第4,118,403号;米国特許第4,414,898 号又は米国特許第4,659,433号を参照されたい)。
【特許文献27】米国特許第3,993,671号
【特許文献28】米国特許第4,118,403号
【特許文献29】米国特許第4,414,898 号
【特許文献30】米国特許第4,659,433号
【0076】
SMAコポリマ
上述の方法に従って調製されたPMAコポリマは以下の特徴を有する:
1. Sty:Mal = 42:58 - 52:48 重量パーセント(スチレン/[無水マレイン酸+マレイン酸])。
2. MAnh / Mal = 0.17 -
0.79。
3. 粘度測定分子量 (Mv) = 200,000 - 2,500,000。
4. 残留スチレン=0.015 - 0.042 重量パーセント。
5. 残留Mal (無水マレイン酸+マレイン酸)=0.045 - 0.2 重量パーセント。
【0077】
上記の特徴は以下の手法により判定された:
a)残留スチレンの量は、Sohxlet抽出法によりベンゼン(分光等級)で1gのポリマーを12時間抽出することで測定された。その後、このベンゼン抽出法をガス分光で分析した(パーキン−エルマー装置)。
【0078】
b)残留マレイン酸の量は、蒸留水で2gのポリマー試料を 40°C でSpectr/Por CE 透析メンブレンを用い、それぞれ24時間の14回のサイクル(1サイクル当り500 mlの水)透析することで測定され、水は各サイクル後に取り替えられた。蓄積された水をマレイン酸についてHPLC法(WATERS 装置)により分析した。
c) Sty : Mal(スチレン:マレイン酸コモノマ [無水マレイン酸+マレイン酸]) で表されるモノマー濃度を、0.1 g の乾燥ポリマーをNaOH 0.5
N 及びHCl 0.5Nの溶液に溶解させることにより調製された溶液の導電率滴定により、推定した。
d)MAnh : Mal(無水マレイン酸 [無水マレイン酸+マレイン酸] )、[(mol/g) :
(mol/g)] で表される官能価比を、FTIR 定量分析 (SHIMAZU 装置)を用いて推定した: 無水マレイン酸p.a. (ACROSS) 及びマレイン酸 p.a.(ACROSS)、 対、特徴的な吸収バンド: 無水には1770-1790 cm1 、そしてCOOHには1700-1720 cm1
e)粘度測定平均分子量 Mv を、計算式を用い、25℃のテトラヒドロフラン中、一方のポリマー溶液濃度をc = 0.5 g/100 mlにしたときに相対粘度[η]に基づく固有粘度[ηrel]の評価を用いて推定した (Raju K.V.S.N.,Yaseen M. J.Appl.Polym.Sci., 45, 677-681, 1992;
Chee K. K. J. Appl. Polym. Sci., 34,
891-899, 1987 and Spiridon D. et al. Polymer
International, 43, 175-181, 1997)。
【非特許文献26】RajuK.V.S.N.,Yaseen M. J.Appl.Polym.Sci.,45, 677-681, 1992
【非特許文献27】Chee K. K. J. Appl. Polym. Sci., 34, 891-899, 1987
【非特許文献28】Spiridon D. etal. Polymer International, 43,175-181, 1997
【0079】
【数1】

【0080】
本発明を実現するための更なる例を以下に紹介する。

【実施例1】
【0081】
5-7°Cの温度に冷却された凝結水のためのトラップと、加熱・冷却マントルと、温度計と、液体用の計量供給じょうごとを含有する真空に接続した混練−押出装置(60リットル)内に 25 kg の工業銘柄の無水マレイン酸を周囲温度で加えた。この無水マレイン酸を混合し、75℃で約30分間、加熱して、融解した無水マレイン酸の透明な液体を得た。8gの溶解させた過酸化ジベンゾイルを加えた工業銘柄のスチレンを大気圧下で20分間にわたって加えて、混合物の温度を65°Cにした。スチレンを添加後、重合反応のせいで、反応液の温度は15分間のうちに急速に78°C から116°C まで上昇した。重合反応の発熱段階が終了後も、さらに60分間、大気圧下で100℃で混合を続行した。当該反応塊は粘性で透明、黄色から茶色の溶液であったが、60分間の間混合しながらこれに8リットルの脱イオン水(導電率は10μS未満)を加えることで 65°C まで冷ました。水を計量供給終了後、反応塊を更に45分間、65°Cで混合した。代替的には、冷却水(5-7°C)を混練器のマントルに循環させることにより、反応塊を周囲温度まで冷却することもできる。
【0082】
反応塊は、当該装置の内側の中央域に位置するヘリカル・コンベヤーから、18℃の160リットルの脱イオン水を容れてステンレス鋼製の容器(Nutsche製 フィルタ)に、中程度に攪拌(攪拌器の速度は40-60rpmに調節されている)しながら移される。このNutsche製フィルタは、混練器のそれの3倍の有効容積を有する。該Nutsche社製フィルタは加熱・冷却用のマントルと、攪拌器と、温度計と、液体用の計量供給ニップルと、圧縮空気用の注入パイプ接続と、吐出ニップルと、内部の、二枚の穿孔されたステンレス鋼製プレートの間にポリアミドの布(100ミクロン・メッシュ)を挟んだものから成るフィルタ材料とを有する。粗い水性懸濁液を2時間、混合した。その後、加圧下でのろ過により、水相を取り除いた。
【0083】
該プロセスを3回、繰り返した。最後の上清は、重量で僅かに0.00073%のマレイン酸濃度を有していた。
【0084】
湿潤した固体は68.3% の水分含有量を有しており、加熱・冷却マントル、温度計、らせん攪拌具、回転ナイフを持つ破砕器を備えた円形乾燥器に移され、真空に接続された。その湿潤した塊を5時間、50mバール下で65℃で乾燥させた。最後に、材料を周囲温度まで冷却し、乾燥器から取り出し、溶接されたポリエチレン製袋内に梱包した。
【0085】
抽出でできるマレイン酸の水溶液は無水マレイン酸の回収に向けて採集された。
【0086】
このプロセスから5.17 kgのSMAコポリマが白色粉末として得られた:94.598% SMA コポリマ;5.31% 水;0.029% スチレン及び 0.063% (無水マレイン酸+マレイン酸)、全て、重量パーセントで。精製後のSMAコポリマは以下の構造上の特徴を有していた:My = 1,251,000; Sty : Mal = 46 : 54 及び MAnh : Mal = 0.49。

【実施例2】
【0087】
6.8グラムの過酸化ジベンゾイルを中に溶解させた3.4リットルのスチレンを80℃で加えたことを除き、実施例1で解説したのと同じ装置及び手法。発熱段階中の最高温度は121 ℃だった。抽出での最後の上清は重量で0.00095%のマレイン酸含有量を有し、 乾燥は80℃ で6時間、行なわれた。
【0088】
該プロセスで6.28 kg のSMAコポリマが白色粉末として生成した:95.267% SMA;4.63 % 水;0.031 スチレン及び0.072 %(無水マレイン酸+マレイン酸)、全て、重量パーセントで。精製後のSMAコポリマは以下の構造上の特徴を有していた:Mv = 546,000; Sty: Ma1 = 48: 52 及びMAnh : Mal = 0.68 。
【実施例3】
【0089】
8.5グラムの開始物質を中に溶解させた2.5リットルのスチレンを40分間にわたって加えたことを除き、実施例1で解説したのと同じ装置及び手法。発熱段階中の最高温度は128℃だった。重合反応は180分後に完了し、最終温度は85℃だった。加水分解では6リットルの水を120分間にわたって用い、抽出は35℃で行なわれた。
【0090】
該プロセスで4.72 kg のSMAコポリマが白色粉末として生成した:93.08% SMA; 6.82 % 水;0.018% スチレン及び 0.082% (無水マレイン酸+マレイン酸)、全て、重量パーセントで。精製後のSMAコポリマは以下の構造上の特徴を有していた:Mv = 726,000;
Sty : Mal = 51 : 49 and MAnh : Mal = 0.27。
【実施例4】
【0091】
25kgの工業銘柄の無水マレイン酸を周囲温度で充填したことを除き、実施例1と同じ種類の混練・押出装置を用いた。無水マレイン酸を加熱し、75℃で30分間、加熱して、融解した無水マレイン酸の流動性の透明な塊を生成させた。9.8グラムの過酸化ジベンゾイルを中に溶解させた3リットルの工業銘柄のスチレンを、大気圧で40分間にわたって加えた。スチレン添加後、反応物の温度は12分の間に83℃から132℃に急速に上昇した。反応の発熱段階終了後、大気圧で115℃での混合を120分間、続行した。この時点で9.8 リットルの脱イオン水(導電率は10μS未満)を120分間にわたって加え、反応塊を60°Cまで冷却した。該反応塊を60 分間、60°Cで混合した。代替的には、冷却水(5-7°C) をマントルに循環させることで反応塊を周囲温度まで冷却することもできる。
【0092】
混練器から出たか粒状の塊をヘリカル・コンベヤーを介して、160リットルの15℃の水を容れた容器に中程度に攪拌しながら移した。粗い水性懸濁液を4時間、混合してから、加圧下でのろ過により水相を取り除いた。このプロセスを3回、繰り返した。取り出された最後の上清は、重量で0.00091%のマレイン酸含有量を有していた。
【0093】
精製後の湿潤した固体は72.8%の水分量を有しており、真空に接続された円形乾燥器に移され、80°C で50 mバールで4時間、乾燥させた。最後に、材料を周囲温度まで冷却し、乾燥器から取り出し、溶接されたポリエチレン製袋内に梱包した。
【0094】
抽出で得られたマレイン酸の水溶液は、無水マレイン酸の回収に向けて採集された。
【0095】
このプロセスで6.93 kg のSMAコポリマが白色粉末として生成した:92.114% SMA;7.82% 水;0.021% スチレン及び 0.045% (無水マレイン酸+マレイン酸)、全て、重量パーセントで。精製後のSMAコポリマは以下の構造上の特徴を有していた:Mv = 251,000; Sty : Ma1 = 42: 58 及びMAnh : Mal = 0.17。
【実施例5】
【0096】
実施例4と同じ種類の装置及び手法を用いたが、例外として6.8グラムの過酸化ジベンゾイルを中に溶解させた2.4リットルのスチレンが加えられ、反応塊は2.1リットルの脱イオン水に加えられ、乾燥は80℃で8時間、行なわれた。
【0097】
このプロセスで4.72 kg のSMAコポリマが白色粉末として生成した:96.121% SMA;3.78% 水;0.041% スチレン及び0.058% (無水マレイン酸+マレイン酸)、全て、重量パーセントで。精製後のSMAコポリマは以下の構造上の特徴を有していた: Mv = 1,780,000; Sty : Mal = 49 : 51 及びMAnh : Mal = 0.79。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量で0.050%未満の未反応のスチレンモノマを有する、スチレン−無水マレイン酸/マレイン酸コポリマ。
【請求項2】
重量で合わせて0.045乃至0.2%の未反応の無水マレイン酸及びマレイン酸を有する、スチレン−無水マレイン酸/マレイン酸コポリマ。
【請求項3】
スチレン/(無水マレイン酸+マレイン酸)で定義される、スチレンモノマ、対、無水マレイン酸及びマレイン酸モノマの比が42:58−52:48である、請求項1又は2に記載のスチレン−無水マレイン酸/マレイン酸コポリマ。
【請求項4】
無水マレイン酸/(マレイン酸+無水マレイン酸)の比が0.17−0.79である、請求項1乃至3のいずれかに記載のスチレン−無水マレイン酸/マレイン酸コポリマ。
【請求項5】
前記コポリマの粘度測定分子量MVが200,000−2,500,000である、請求項1乃至4のいずれかに記載のスチレン−無水マレイン酸/マレイン酸コポリマ。
【請求項6】
未反応のスチレンの量が重量で0.015%乃至0.2%である、請求項1乃至5のいずれかに記載のスチレン−無水マレイン酸/マレイン酸コポリマ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のスチレン−無水マレイン酸/マレイン酸コポリマを含む製品。
【請求項8】
医療での生物工学、医療器具、組織工学、医薬製品、身体の衛生、美容、バイオテクノロジー、食品業、農業、又は吸収性繊維の分野で用いられる、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
a)ある量の無水マレイン酸モノマを融解させるステップと;
b)溶解させた開始物質を含有するある量のスチレンを前記無水マレイン酸に加えて混合物を形成するステップと;
c)スチレン−無水マレイン酸コポリマを形成するのに有効な時間、前記無水マレイン酸、スチレン及び開始物質の混合物を混合するステップと
を含む、スチレン−無水マレイン酸コポリマを溶媒なしで調製する方法。
【請求項10】
系にない溶媒が有機溶媒である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記開始物質が遊離ラジカル開始物質である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記開始物質が、過酸化ジアシル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-t-ブチル、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルエチルヘキソノエート、ペルエステル、t-ブチルペルピバレート、脂肪族のアゾ、アゾイソブチロニトリル、アゾ-4-シアノペンタン酸、ペルオキソ二硫酸、及び過酸化水素から成る群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記開始物質が過酸化ジベンゾイル又はアゾイソブチロニトリルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
スチレン:無水マレイン酸の量が反応混合物中、重量で1:6乃至1:14の間である、請求項9乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
スチレン:無水マレイン酸の量が反応混合物中、重量で1:8乃至1:12の間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
開始物質の量が反応混合物に対して重量で0.01%乃至0.05%の間である、請求項9乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
開始物質の量が反応混合物に対して重量で0.025%乃至0.035%の間である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
無水マレイン酸の融解が、無水マレイン酸をその融解点まで加熱することにより行なわれる、請求項9乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
スチレンが55℃乃至100℃の間で無水マレイン酸に加えられる、請求項9乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
スチレンが65℃乃至90℃の間で無水マレイン酸に加えられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
スチレンが無水マレイン酸に5乃至180分間の間の時間にわたって加えられる、請求項9乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
スチレンが無水マレイン酸に10乃至60分間の間の時間にわたって加えられる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
スチレンが無水マレイン酸に20乃至40分間の間の時間にわたって加えられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
無水マレイン酸、スチレン、及び開始物質の混合が大気圧下、そして60℃乃至150℃の間の温度で、45分乃至300分間の間の時間にわたって行なわれる、請求項9乃至23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
無水マレイン酸、スチレン、及び開始物質の混合が大気圧下、そして85℃乃至115℃の間の温度で、60分乃至180分間の間の時間にわたって行なわれる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
無水マレイン酸が反応媒質及び反応物の両方として働く、請求項9乃至25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
ステップc)で形成されたスチレン−無水マレイン酸コポリマを55℃乃至85℃の間の温度まで冷却するステップを更に含む、請求項9乃至26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ステップc)で形成されたスチレン−無水マレイン酸コポリマを60℃乃至80℃の間まで冷却する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
スチレン−無水マレイン酸コポリマに水を加えるステップを更に含む、請求項9乃至28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
コポリマを形成する前に無水マレイン酸モノマの一部分を加水分解させるステップを更に含む、請求項9乃至29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
コポリマを形成した後で無水マレイン酸モノマの一部分を加水分解させるステップを更に含む、請求項9乃至29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
スチレン−無水マレイン酸コポリマに水を加えることにより、無水マレイン酸の10-85%を加水分解させる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記水の量がスチレン−無水マレイン酸コポリマに対して重量で5%乃至40%の間である、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記水の量がスチレン−無水マレイン酸コポリマに対して重量で10%乃至35%の間である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記水が5乃至360分間の間の時間にわたって加えられる、請求項29乃至34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記水が30乃至180分間の間の時間にわたって加えられる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記水が60乃至120分間の間の時間にわたって加えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記水がコポリマに加えられた後、混合物が20乃至90分間の間の時間にわたって混合される、請求項29乃至37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記混合物が30乃至60分間の間の時間にわたって混合される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
コポリマを室温まで冷却するステップを更に含む、請求項9乃至39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
未反応のマレイン酸を除去する又は水で抽出することにより、コポリマを精製するステップを更に含む、請求項9乃至40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
コポリマが重量でコポリマの約6倍の量の水と混合される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
コポリマが5℃乃至40℃の間の温度の水と混合される、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
コポリマが15℃乃至35℃の間の温度の水と混合される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
コポリマが1乃至6時間の間の時間にわたって水と混合される、請求項41乃至44に記載の方法。
【請求項46】
コポリマが2乃至4時間の間の時間にわたって水と混合される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
水が加圧下でのろ過により取り除かれる、請求項41乃至46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記除去又は抽出が、上清中のマレイン酸含有量が重量で0.001%未満になるまで繰り返される、請求項41乃至47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
コポリマを湿潤状態に維持するステップを更に含む、請求項9乃至48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
コポリマを50℃乃至90℃の間の温度で乾燥させるステップを更に含む、請求項9乃至49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
コポリマを60℃乃至80℃の間の温度で乾燥させるステップを更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
コポリマを50mバール以下の真空下で乾燥させる、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
コポリマを4乃至10時間の間の時間にわたって乾燥させる、請求項50乃至52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
コポリマを6乃至8時間の間の時間にわたって乾燥させる、請求項53に記載の方法。

【公表番号】特表2009−532532(P2009−532532A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503308(P2009−503308)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/065633
【国際公開番号】WO2007/115165
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508286821)ジェレシス, インク. (3)
【出願人】(508286832)エグゾテック バイオ ソリューションズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】