説明

バイナリー発電システム

【課題】地熱フラッシュ蒸気サイクルと水以外の作動媒体サイクルとを複合させたバイナリー発電システムの高効率化を図る。
【解決手段】バイナリー発電システムは、地熱熱源水を減圧して水蒸気と熱水に分離する第1の減圧気液分離器12と、地熱水蒸気によって駆動される蒸気タービン14と、地熱熱源水を熱源として媒体液を蒸発させて得られた媒体蒸気によって駆動される媒体タービン31と、蒸気タービン14から排出された水蒸気の熱を媒体液に伝えて水蒸気が復水して媒体液が蒸発するように構成された復水・蒸発器20と、媒体タービン31から排出された作動媒体を導くことによって復水・蒸発器20で得られた復水を冷却して復水中に含まれていた不凝縮ガスを分離して排出するガスクーラー22と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、地熱を利用するバイナリー発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化現象の原因の一つとして、COによる温室効果が指摘され、地球環境を守る上でその対策が急務となっている。COの発生源としては、化石燃料を燃焼させる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が強まっている。これに伴い、大量の化石燃料を使用する火力発電所などはCOを排出するということで、新規設置が滞っている状況にある。
【0003】
また、COを発生させない太陽光、太陽熱、風力、地熱、潮力等の再生エネルギーを用いた発電方式への需要が高まっている。その中でも1950年代から地熱蒸気、地熱水を用いた発電システムは商用化されている。化石燃料の低コスト化時代ではプラント建設費高の理由でしばらく下火になっていたが、近年またその需要が高まっている。一方、既設の地熱発電プラントの中には、地熱蒸気の熱エネルギーが徐々に衰退してきたため、地熱蒸気で蒸気タービンを駆動するフラッシュ型地熱発電システムから、熱水の熱源から有機作動媒体を蒸発させて発電するバイナリー型地熱発電システムへ移行するものもある。
【0004】
このバイナリー型地熱発電システムでは、水よりも低沸点の媒体を作動媒体として使用する。低沸点媒体としては、たとえば、冷凍機の作動媒体として1990年まで利用されていたフロンがある。しかし既存のフロン物質はオゾン層を破壊するということ、それに代わる有力な低沸点媒体が見つからないこともあって、バイナリー型地熱発電システムの国内での実用化は滞っていた。
【0005】
これに対して、可燃性であるが生産量の多いブタン(C10)やペンタン(C12)を作動媒体としたバイナリー型発電システムが商用化されている。
【0006】
特許文献1に開示された技術は、地熱水の減圧気液分離器でフラッシュした蒸気と熱水を分離し、エンタルピーの低い熱水で作動媒体を予熱し、フラッシュ蒸気で作動媒体を蒸発させるものである。このシステムはフラッシュ蒸気の割合が少ない場合に有効である。
【0007】
有機作動媒体蒸気は、タービンで膨張させると、過熱度が高くなっていき、凝縮器での凝縮温度よりも高い温度のガス(蒸気)を凝縮させることになる。そこで、特許文献2に開示された技術では、作動媒体タービンの途中段落に予熱器出口媒体液を注入することにより、過熱度の高いガスと飽和液とを混合させる。これにより、過熱度のエネルギーをタービンの駆動流量の増大に繋げるとともに、サイクル効率を向上させることができる。
【0008】
特許文献3に開示された技術は、地熱水の減圧気液分離器からのフラッシュ蒸気で蒸気タービンを駆動し、その排蒸気で媒体を蒸発させ、減圧気液分離器から分離した熱水で蒸発した媒体を過熱するもので、変形例として次のことが提案されている。
【0009】
(1)媒体タービン出口に再生器を設置する。
【0010】
(2)媒体タービンを2段とし、過熱器出口の熱水で、媒体蒸気を再熱する。
【0011】
特許文献4に開示された技術および特許文献5に開示された技術は、地熱水の減圧気液分離器からのフラッシュ蒸気の一部で蒸気タービンを駆動し、残りのフラッシュ蒸気で媒体を蒸発させ、蒸気タービンの排蒸気と減圧気液分離器からの熱水で媒体を予熱させるもので、媒体タービン出口に再生器がある。変形実施例としては、媒体タービンを2段とし、過熱器出口の熱水で、媒体蒸気を再熱するものが開示されている。
【0012】
特許文献6に開示された技術では、システムとして地熱発電に限らず太陽熱や火力発電等の排熱も視野に入れており、高温用の媒体と低温用媒体の二種類を用いて、カスケードのランキンサイクルを構成しており、カスケード型の基本である。
【0013】
また、特許文献7には、複数圧の蒸発器を有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5400598号明細書
【特許文献2】米国特許第5531073号明細書
【特許文献3】米国特許第6009711号明細書
【特許文献4】米国特許第7775045号明細書
【特許文献5】米国特許第7797940号明細書
【特許文献6】米国特許第7823386号明細書
【特許文献7】特開2009−221961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、地球温暖化の観点から地熱発電の需要が高まっている中、良質な地熱源のある地点、地熱源泉のエンタルピーが高く減圧(フラッシュ)した蒸気割合が多い地点は既に発電プラントが設置されている。また、既設の地熱発電プラントでは、その地点全体での熱源の減衰が報告されており、蒸気割合が減少し熱水割合が増加する傾向にある。このような状況下においては、蒸気タービンではなく有機媒体等の低沸点作動媒体を用いたバイナリー型地熱発電システムが有利となる。しかし、地熱源から蒸気が完全に枯れて熱水だけになることは少ないので、フラッシュ型とバイナリー型を合体させた発電システムが最も有利である。
【0016】
上述したフラッシュ型地熱発電システムとバイナリー型地熱発電システムを合体させたシステムについては、地熱源泉を減圧(フラッシュ)した後に熱水だけをバイナリー発電に利用するものと、フラッシュした蒸気で駆動したタービン排気と熱水の両方をバイナリー発電に利用するものとがある。熱水の熱源だけでバイナリー発電するものは、バイナリー発電システムが小容量で出力割合が低くなり、バイナリー発電の発電単価が高くなる。
【0017】
また、フラッシュ蒸気で駆動するタービンの背圧を大気圧以上とし、その100℃以上の蒸気の潜熱で有機媒体等の作動媒体を蒸発させ、その媒体蒸気を、タービンの排蒸気よりも温度が高い減圧気液分離器出口の熱水で過熱し、媒体タービンを駆動し、媒体タービン出口の過熱蒸気と凝縮器からの媒体液と熱交換する再生器を有するシステムが考えられる。しかしそのようなシステムでは、もともとタービン出口で過熱度が高い媒体蒸気と凝縮液を熱交換させると再生器での媒体蒸気側の圧力損失が大きくなり、媒体タービンの出口圧力が上がり、あまり効果がない。また、蒸気タービン排ガスにはもともと不凝縮ガスが含まれているので、その不凝縮ガスを抽出・回収する必要がある。
【0018】
本発明の実施形態は、上記事情に鑑みてなされたものであって、地熱フラッシュ蒸気サイクルと水以外の作動媒体サイクルとを複合させたバイナリー発電システムの高効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係るバイナリー発電システムの一つの態様は、地熱熱源水を減圧して水蒸気と熱水に分離する第1の減圧気液分離器と、前記水蒸気によって駆動される蒸気タービンと、前記地熱熱源水を熱源として媒体液を蒸発させて得られた媒体蒸気によって駆動される媒体タービンと、前記蒸気タービンから排出された水蒸気の熱を媒体液に伝えて前記水蒸気が復水して前記媒体液が蒸発するように構成された復水・蒸発器と、前記媒体タービンから排出された媒体を冷熱源として、前記復水・蒸発器に残っていた気体をさらに冷却することにより当該気体中に含まれていた不凝縮ガスを分離して排出するガスクーラーと、前記蒸気タービンおよび前記媒体タービンによって駆動される少なくとも一つの発電機と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の実施形態に係るバイナリー発電システムの他の一つの態様は、地熱熱源水を減圧して水蒸気と熱水に分離する第1の減圧気液分離器と、前記水蒸気によって駆動される蒸気タービンと、前記地熱熱源水を熱源として作動媒体を蒸発させて高圧媒体蒸気を生成する高圧蒸発器と、前記高圧媒体蒸気によって駆動される高圧媒体タービンと、前記高圧媒体タービンから排出された媒体蒸気とこれとは別に供給された媒体液とを混合させるとともに、前記蒸気タービンから排出された水蒸気の熱を前記作動媒体に伝えて、前記水蒸気が復水して前記高圧媒体蒸気よりも低圧の低圧媒体蒸気が生成されるように構成された復水・蒸発器と、前記低圧媒体蒸気によって駆動される低圧媒体タービンと、前記低圧媒体タービンから排出された媒体蒸気を凝縮させて前記媒体液を生成する凝縮器と、前記蒸気タービン、前記高圧媒体タービンおよび前記低圧媒体タービンによって駆動される少なくとも一つの発電機と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によれば、地熱フラッシュ蒸気サイクルと水以外の作動媒体サイクルとを複合させたバイナリー発電システムの高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るバイナリー発電システムの第1の実施形態の構成を示す系統図である。
【図2】本発明に係るバイナリー発電システムの第2の実施形態の構成を示す系統図である。
【図3】第2の実施形態における復水・蒸発器の具体的構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係るバイナリー発電システムの第3の実施形態の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0024】
これらの実施形態は、供給された地熱熱源水の流れに沿う熱源水系統と、この熱源水系統から熱を受けて動作する媒体系統とを備えている。媒体系統で用いられる作動媒体としては、大気圧で水よりも沸点が低い有機媒体などの利用が可能である。
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係るバイナリー発電システムの第1の実施形態の構成を示す系統図である。
【0026】
<熱源水系統>
はじめに、供給された地熱熱源水の流れに沿って熱源水系統の構成を説明する。
【0027】
地熱熱源水配管11は第1の減圧気液分離器(フラッシャー)12に接続されている。地熱熱源水配管11を通して第1の減圧気液分離器12に供給された地熱熱源水は、そこで減圧して高圧水蒸気と高圧熱水に分離される。ここで発生した水蒸気は水蒸気加減弁13を介して蒸気タービン14に送られる。蒸気タービン14で仕事をした後の低圧蒸気は、蒸気タービン戻り配管15を通じて排出される。
【0028】
第1の減圧気液分離器12で生成された高圧熱水は媒体過熱器16に送られて、さらに、第2の減圧気液分離器17に送られる。第2の減圧気液分離器17は上流側の減圧弁18とその下流側に接続された気液分離器19とを備えている。第2の減圧気液分離器17に送られた熱水はここで低圧水蒸気と低圧熱水とに分離される。
【0029】
第2の減圧気液分離器17で生成された低圧水蒸気は、蒸気タービン戻り配管15に合流して、復水・蒸発器20に送られる。復水・蒸発器20に送られた低圧水蒸気は、ここで放熱して、90%以上が凝縮して復水となる。復水・蒸発器20で得られた復水は、復水配管50を経由して予熱器21へ送られて、ここでさらに放熱してさらに低温の水になる。
【0030】
復水・蒸発器20に送られる低圧水蒸気には不凝縮ガス成分が含まれている。復水・蒸発器20に送られた低圧水蒸気のうちで凝縮せずに残ったガスは、ガスクーラー入口配管51を経由してガスクーラー22に送られる。ここでさらに冷却されて残ったガスが不凝縮ガスとして大気に排出される。第2の減圧気液分離器17で得られた低圧熱水は復水配管50に合流して予熱器21へ送られる。
【0031】
<媒体系統>
つぎに媒体系統について説明する。
【0032】
媒体過熱器16には媒体蒸気が供給され、第1の減圧気液分離器12で生成された高圧熱水から熱を受けることにより、媒体過熱蒸気が生成される。この媒体過熱蒸気は、媒体蒸気加減弁30を介して媒体タービン31に供給される。媒体タービン31で仕事をした後の低圧の媒体蒸気は、再生器32で冷却され、さらに媒体凝縮器33に送られて、そこで冷却されて凝縮する。媒体凝縮器33は、冷水ポンプ34を備えた冷水系35によって冷却される。
【0033】
媒体凝縮器33で凝縮してできた媒体液は媒体ポンプ36によって昇圧される。媒体ポンプ36で昇圧された媒体液は、再生器32で、媒体タービン31から送られて媒体凝縮器33で凝縮する前の媒体蒸気と熱交換して加熱された後に、ガスクーラー22に送られる。ガスクーラー22では、不凝縮ガスから作動媒体に熱が伝えられる。ガスクーラー22で加熱された媒体液は予熱器21に送られる。予熱器21では、熱水から媒体液に熱が伝えられ、媒体液が予熱される。
【0034】
予熱器21で予熱された媒体液は、予熱器媒体液出口配管53を経由して、復水・蒸発器20に送られ、ここで、媒体液は、水蒸気が復水になる際に発生する潜熱によって加熱されて蒸発し媒体蒸気が生成される。この媒体蒸気は媒体過熱器16に送られる。
【0035】
蒸気タービン14および媒体タービン31には、それぞれ、発電機37および発電機38が同軸で結合されている。
【0036】
本実施形態によれば、地熱熱源水に含まれる不凝縮ガス成分をガスクーラー22から大気放出することができるので、復水・蒸発器20で復水した水を円滑に予熱器21に導くことができる。
【0037】
また、ガスクーラー22の冷熱源として、再生器32を出た後の温度低い媒体液を用い、この冷熱で濃度の高い不凝縮ガスを排出することができ、かつ媒体液を加熱することで再生効果が生まれる。
【0038】
このようにして、地熱フラッシュ蒸気サイクルと水以外の作動媒体サイクルとを複合させたバイナリー発電システムの高効率化を図ることができる。
【0039】
[第2の実施形態]
図2は、本発明に係るバイナリー発電システムの第2の実施形態の構成を示す系統図である。図3は、第2の実施形態における復水・蒸発器の具体的構成を示す縦断面図である。
【0040】
<熱源水系統>
地熱熱源水配管11は第1の減圧気液分離器12に接続されている。地熱熱源水配管11を通して第1の減圧気液分離器12に供給された地熱熱源水は、そこで減圧して高圧水蒸気と高圧熱水に分離される。ここで発生した水蒸気は水蒸気加減弁13を介して蒸気タービン14に送られる。蒸気タービン14で仕事をした後の低圧蒸気は、蒸気タービン戻り配管15を通じて排出される。
【0041】
第1の減圧気液分離器12で生成された高圧熱水は高圧蒸発器41に送られて、そこで作動媒体と熱交換して冷却され、その後に高圧予熱器42に送られて、そこで媒体液と熱交換してさらに冷却される。
【0042】
蒸気タービン戻り配管15を通じて蒸気タービン14から排出された低圧水蒸気は、復水・蒸発器20に送られる。復水・蒸発器20に送られた低圧水蒸気は、ここで放熱して、90%以上が凝縮して復水となる。復水・蒸発器20で得られた復水は、復水配管50を経由して予熱器21へ送られて、ここでさらに放熱してさらに低温の水になる。
【0043】
復水・蒸発器20に送られる低圧水蒸気には不凝縮ガス成分が含まれている。復水・蒸発器20に送られた低圧水蒸気のうちで凝縮せずに残ったガスは、ガスクーラー入口配管51を経由してガスクーラー22に送られる。ここでさらに冷却されて残ったガスが不凝縮ガスとして大気に排出される。
【0044】
<媒体系統>
つぎに媒体系統について説明する。
【0045】
高圧蒸発器41には高温の媒体液が供給され、第1の減圧気液分離器12で生成された高圧熱水から熱を受けることにより、高圧媒体蒸気が生成される。この高圧媒体蒸気は、高圧媒体蒸気加減弁30aを介して高圧媒体タービン31aに供給される。高圧媒体タービン31aで仕事をした後の低圧の媒体蒸気は、高圧媒体タービン戻り配管52を経由して、復水・蒸発器20に送られる。
【0046】
予熱器21には媒体液が供給されて、ここで媒体液が復水からの熱を受け取って予熱される。予熱器21で予熱された媒体液は、予熱器媒体液出口配管53を経由して、復水・蒸発器20に送られる。復水・蒸発器20では、供給された媒体液および媒体蒸気が復水からの熱を受け取って蒸発して低圧媒体蒸気が生成される。復水・蒸発器20で生成された低圧媒体蒸気は、低圧媒体蒸気供給配管54を経由して、低圧媒体蒸気加減弁30bを介して低圧媒体タービン31bに供給される。低圧媒体タービン31bに供給される低圧媒体蒸気は、高圧媒体タービン31aに供給される高圧媒体蒸気よりも低圧である。
【0047】
低圧媒体タービン31bで仕事をした後の低圧の媒体蒸気は、再生器32で冷却され、さらに媒体凝縮器33に送られて、さらに冷却されて凝縮する。媒体凝縮器33は、冷水ポンプ34を備えた冷水系35によって冷却される。
【0048】
媒体凝縮器33で凝縮した媒体は媒体ポンプ36によって昇圧される。媒体ポンプ36で昇圧された媒体液は、再生器32で、低圧媒体タービン31bから送られて媒体凝縮器33で凝縮する前の媒体蒸気と熱交換して加熱された後に、分岐部43を通って予熱器21に送られる。
【0049】
分岐部43を通った媒体液の一部は予熱器21へ行かずに媒体加圧ポンプ44で加圧され、ガスクーラー22へ送られる。ガスクーラー22では、不凝縮ガスから媒体液に熱が伝えられる。ガスクーラー22で加熱された媒体液は高圧予熱器42に送られる。高圧予熱器42では、熱水から媒体液に熱が伝えられ、媒体液は予熱されて高圧蒸発器41へ送られる。
【0050】
蒸気タービン14、高圧媒体タービン31a、低圧媒体タービン31bには、それぞれ、発電機37、発電機38aおよび発電機38bが同軸で結合されている。
【0051】
<復水・蒸発器>
ここで、図3を参照して、復水・蒸発器20の構成を説明する。
【0052】
復水・蒸発器20は、上部蒸発器60と、この上部蒸発器60の下方に配置された下部蒸発器61とを備えている。さらに復水・蒸発器20は、上部蒸発器60と下部蒸発器61とを接続する媒体蒸気連通管62および媒体液下降管72を有する。
【0053】
上部蒸発器60は、水平方向に延びる筒状の上部蒸発器胴63を有し、上部蒸発器胴63の頂部には、低圧媒体蒸気排出部64が設けられていて、低圧媒体蒸気排出部64には、低圧媒体蒸気供給配管54が接続されている。また、上部蒸発器胴63の上部には、予熱器媒体液出口配管53(図2)から分岐した上部媒体液導入部65が接続されて、上部蒸発器胴63内上部に挿入されて設けられている。上部媒体液導入部65は上部蒸発器胴63内で水平方向に延び、水平方向に分散して多数のノズル75が設けられている。
【0054】
上部蒸発器胴63内には、水平方向に広がる複数の多孔板66が、互いに上下方向に間隔をあけて平行に配置されている。
【0055】
下部蒸発器61は、上部蒸発器胴63と平行に水平方向に延びる筒状の下部蒸発器胴67を有する。下部蒸発器胴67の底部には、予熱器媒体液出口配管53(図2)から分岐した下部媒体液導入部68が接続されている。下部蒸発器胴67の上部には、高圧媒体タービン戻り配管52が接続されている。
【0056】
下部蒸発器胴67内には、互いに平行な多数の伝熱管69が設置されている。伝熱管69は、水平方向に直線的に延びる直管部と上下方向に曲がった曲管部とを有するU字管である。伝熱管69の入口側の下部蒸発器胴67には、蒸気タービン戻り配管15(図2)に接続された蒸気タービン戻り配管接続部70が形成されている。伝熱管69の出口側の下部蒸発器胴67には、復水配管50およびガスクーラー入口配管51(図2)に接続された復水・蒸気排出部71が形成されている。蒸気タービン戻り配管接続部70は復水・蒸気排出部71よりも上方に位置している。
【0057】
媒体蒸気連通管62は上部蒸発器胴63と下部蒸発器胴67とを連通するべく上下に延びており、媒体蒸気連通管62の上端は上部蒸発器胴63の底部から上方に少し突出して開口している。媒体蒸気連通管62の下端は下部蒸発器胴67の頂部で開口している。
【0058】
媒体液下降管72の上端は上部蒸発器胴63の底部に開口している。媒体液下降管72の下部は下部蒸発器胴67の上部を貫通して、その下端は下部蒸発器胴67内の底部近くで開口している。
【0059】
つぎに復水・蒸発器20の作用について説明する。
【0060】
予熱器媒体液出口配管53(図2)からの媒体液の一部は、上部媒体液導入部65のノズル75を通して、上部蒸発器胴63内上部で散布される。この媒体液は、下降して多孔板66に当たり、そこを下方に通過し、上部蒸発器胴63内の下部に溜まり、上部蒸発器胴内媒体液面80が形成される。上部蒸発器胴内媒体液面80は、最も低い位置にある多孔板66よりも低い位置にあるように制御される。さらに、上部蒸発器胴63内の媒体液は、媒体液下降管72を通じて下部蒸発器胴67内に導入される。
【0061】
予熱器媒体液出口配管53からの媒体液の一部は、下部媒体液導入部68を通して下部蒸発器胴67内に底部から導入される。
【0062】
下部蒸発器胴67内の媒体液は、下部蒸発器胴内媒体液面81を形成する。下部蒸発器胴内媒体液面81は、伝熱管69の最上部よりも高い位置で、しかも、高圧媒体タービン戻り配管52が下部蒸発器胴67に接続される部分よりも低い位置になるように制御される。
【0063】
高圧媒体タービン戻り配管52を通じて、下部蒸発器胴67の上部に高圧媒体タービン31a(図2)から排出された、過熱度の高い媒体ガスが導入される。
【0064】
蒸気タービン戻り配管15(図2)から蒸気タービン戻り配管接続部70を通じて、伝熱管69内に、蒸気タービンから排出された蒸気が導入される。ただし、この蒸気には不凝縮ガスが含まれている。伝熱管69内の蒸気は伝熱管69の外側の媒体液によって冷却されて大部分が凝縮し、気液二相流として、復水・蒸気排出部71から排出され、復水配管50およびガスクーラー入口配管51に送られる。図2では復水配管50およびガスクーラー入口配管51が復水・蒸発器20から別々に出ているように示されているが、これらの配管は、図3に示すように、復水・蒸発器20を出るときは1箇所の復水・蒸気排出部71として、下流側で分岐してもよい。
【0065】
下部蒸発器胴67内で、伝熱管69の外側の媒体液は伝熱管69に接する部分から加熱されて蒸発し、気泡となって下部蒸発器胴内媒体液面81の上方に上昇する。ここで、高圧媒体タービン戻り配管52を通じて導入された媒体蒸気と合流し、媒体蒸気連通管62内を上向きに通って上部蒸発器胴63内に流入する。
【0066】
上部蒸発器胴63内では、上昇する媒体蒸気と下降する媒体液とが直接接触して混ざりながら熱交換が行なわれる。最終的に、飽和温度に近い媒体蒸気が、低圧媒体蒸気排出部64を通じて低圧媒体蒸気供給配管54に送り出される。
【0067】
この実施形態によれば、地熱フラッシュ蒸気サイクルと作動媒体サイクルとを複合させたバイナリー発電システムの高効率化を図ることができる。
【0068】
また、ガスクーラー22の冷熱源として、再生器32を出た後の温度低い媒体液を用い、この冷熱で濃度の高い不凝縮ガスを排出することができ、かつ媒体液を加熱することで再生効果が生まれる。
【0069】
特に、温度の高い第1の減圧気液分離器12からの熱水を用いて、より高圧の作動媒体を蒸発させ、2圧力の媒体ガスでタービンを駆動させることで、出口過熱度を高めることなく、発電出力を増加させることができる。すなわち、地熱蒸気・熱水の温度レベルを活かして、媒体タービン出口ガスの過熱度を下げることができる。
【0070】
[第3の実施形態]
図4は、本発明に係るバイナリー発電システムの第3の実施形態の構成を示す系統図である。
【0071】
この実施形態は第2の実施形態の一部を変更したものである。したがって、ここでは第2の実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0072】
この実施形態では、蒸気タービン14で、途中段からの抽気が行なわれる。この抽気蒸気は、蒸気タービン戻り配管15を通じて復水・蒸発器20に送られる。
【0073】
蒸気タービン14の最下段から排出される水蒸気は、蒸気タービン排出配管90を通して復水器91へ送られる。復水器91には、冷水ポンプ92を備えた冷水系93が接続されている。冷水系93によって復水器91内の水蒸気は冷却され、復水となる。復水器91内の圧力は大気圧以下であることが好ましい。
【0074】
以上説明したように、この実施形態では、蒸気タービン戻り配管15を通じて復水・蒸発器20に送られる水蒸気が抽気蒸気であるという点と、蒸気タービン14の最下段から排出される水蒸気を復水器91へ送るという点で第2の実施形態と異なるが、その他の構成および作用は第2の実施形態と同様である。
【0075】
この第3の実施形態の作用効果は、基本的には第2の実施形態と同様であるが、フラッシュ蒸気量が多い場合、つまり蒸気タービン14の排気水蒸気の体積流量が大きい場合に有利である。
【0076】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0077】
たとえば、上記実施形態ではタービンごとに別個の発電機を取り付けるものとしているが、各タービンの軸を互いに結合したり、また、変速ギアを介して連結することにより、複数のタービンに共通の発電機を取り付けることもできる。
【0078】
また、上記の第2の実施形態で、上部蒸発器胴63に配置される多孔板66に代えて、水平に広がる多孔トレイを配置してもよい。
【符号の説明】
【0079】
11…地熱熱源水配管、12…第1の減圧気液分離器、13…水蒸気加減弁、14…蒸気タービン、15…蒸気タービン戻り配管、16…媒体過熱器、17…第2の減圧気液分離器、18…減圧弁、19…気液分離器、20…復水・蒸発器、21…予熱器、22…ガスクーラー、30…媒体蒸気加減弁、30a…高圧媒体蒸気加減弁、30b…低圧媒体蒸気加減弁、31…媒体タービン、31a…高圧媒体タービン、31b…低圧媒体タービン、32…再生器、33…媒体凝縮器、34…冷水ポンプ、35…冷水系、36…媒体ポンプ、37…発電機、38…発電機、38a…発電機、38b…発電機、41…高圧蒸発器、42…高圧予熱器、43…分岐部、44…媒体加圧ポンプ、50…復水配管、51…ガスクーラー入口配管、52…高圧媒体タービン戻り配管、53…予熱器媒体液出口配管、54…低圧媒体蒸気供給配管、60…上部蒸発器、61…下部蒸発器、62…媒体蒸気連通管、63…上部蒸発器胴、64…低圧媒体蒸気排出部、65…上部媒体液導入部、66…多孔板、67…下部蒸発器胴、68…下部媒体液導入部、69…伝熱管、70…蒸気タービン戻り配管接続部、71…復水・蒸気排出部、72…媒体液下降管、75…ノズル、80…上部蒸発器胴内媒体液面、81…下部蒸発器胴内媒体液面、90…蒸気タービン排出配管、91…復水器、92…冷水ポンプ、93…冷水系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱熱源水を減圧して水蒸気と熱水に分離する第1の減圧気液分離器と、
前記水蒸気によって駆動される蒸気タービンと、
前記地熱熱源水を熱源として媒体液を蒸発させて得られた媒体蒸気によって駆動される媒体タービンと、
前記蒸気タービンから排出された水蒸気の熱を媒体液に伝えて前記水蒸気が復水して前記媒体液が蒸発するように構成された復水・蒸発器と、
前記媒体タービンから排出された媒体を冷熱源として、前記復水・蒸発器に残っていた気体をさらに冷却することにより当該気体中に含まれていた不凝縮ガスを分離して排出するガスクーラーと、
前記蒸気タービンおよび前記媒体タービンによって駆動される少なくとも一つの発電機と、
を有することを特徴とするバイナリー発電システム。
【請求項2】
前記媒体タービンから排出された媒体蒸気を冷却して凝縮させて媒体液を生成する媒体凝縮器をさらに有し、
前記ガスクーラーは、前記媒体凝縮器で生成された媒体液を冷熱源とすること、
を特徴とする請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項3】
前記媒体タービンから排出された媒体蒸気を冷却するとともに媒体蒸気の冷却によって得られた熱を前記媒体凝縮器で生成された媒体液に伝える再生器をさらに有し、
前記ガスクーラーは、前記再生器で加熱された媒体液を冷熱源とすること、
を特徴とする請求項2に記載のバイナリー発電システム。
【請求項4】
前記地熱熱水からの熱を前記媒体蒸気に伝えて媒体過熱蒸気を生成して、その媒体過熱蒸気を前記媒体タービンに供給する媒体過熱器をさらに有すること、
を特徴とする請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項5】
前記媒体過熱器から排出された前記地熱熱水を減圧して水蒸気と熱水に分離する第2の減圧気液分離器と、
を有し、
前記第2の気液分離器で分離された水蒸気が前記蒸気タービンから排出された水蒸気とともに前記復水・蒸発器に導かれるように構成されていること、を特徴とする請求項4に記載のバイナリー発電システム。
【請求項6】
前記媒体タービンから排出された作動媒体を冷却するとともに前記ガスクーラーに送られる上流側の作動流体を加熱する再生器と、
前記再生器で冷却された作動媒体をさらに冷却して凝縮させる凝縮器と、
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のバイナリー発電システム。
【請求項7】
地熱熱源水を減圧して水蒸気と熱水に分離する第1の減圧気液分離器と、
前記水蒸気によって駆動される蒸気タービンと、
前記地熱熱源水を熱源として作動媒体を蒸発させて高圧媒体蒸気を生成する高圧蒸発器と、
前記高圧媒体蒸気によって駆動される高圧媒体タービンと、
前記高圧媒体タービンから排出された媒体蒸気とこれとは別に供給された媒体液とを混合させるとともに、前記蒸気タービンから排出された水蒸気の熱を前記作動媒体に伝えて、前記水蒸気が復水して前記高圧媒体蒸気よりも低圧の低圧媒体蒸気が生成されるように構成された復水・蒸発器と、
前記低圧媒体蒸気によって駆動される低圧媒体タービンと、
前記低圧媒体タービンから排出された媒体蒸気を凝縮させて前記媒体液を生成する凝縮器と、
前記蒸気タービン、前記高圧媒体タービンおよび前記低圧媒体タービンによって駆動される少なくとも一つの発電機と、
を有することを特徴とするバイナリー発電システム。
【請求項8】
前記蒸気タービンから排出された地熱水蒸気を大気圧以下まで膨張させて冷却して凝縮させる復水器をさらに有することを特徴とする請求項7に記載のバイナリー発電システム。
【請求項9】
前記凝縮器から排出された媒体液を冷熱源として前記復水・蒸発器に残っていた気体をさらに冷却することにより、当該気体中に含まれていた不凝縮ガスを分離して排出するガスクーラーをさらに有すること、を特徴とする請求項7または請求項8に記載のバイナリー発電システム。
【請求項10】
前記凝縮器から排出された媒体液と前記復水・蒸発器から排出された復水とを熱交換させて前記復水から得られた熱によって前記媒体液を予熱する予熱器をさらに有し、
前記復水・蒸発器は、
前記予熱器で予熱された前記媒体液の一部を導入する上部媒体液導入部と、前記低圧媒体蒸気を排出する低圧媒体蒸気排出部とを備えた上部蒸発部と、
前記上部蒸発部の下方に配置され、前記高圧媒体タービンから排出された前記媒体蒸気を導入する高圧媒体タービン戻り配管接続部と、前記蒸気タービンから排出された水蒸気を導入する蒸気タービン戻り配管接続部と、前記蒸気タービン戻り配管接続部から導入された水蒸気またはその水蒸気から生じた復水が通る伝熱管と、前記伝熱管を通った復水および水蒸気を前記予熱器および前記ガスクーラーへ排出する復水・蒸気排出部と、前記予熱器で予熱された前記媒体液を導入する下部媒体液導入部と、を備えた下部蒸発部と、
前記上部蒸発器内の前記媒体蒸気と前記下部蒸発器内で前記伝熱管外側の前記媒体蒸気とを連通する媒体蒸気連通管と、
を有することを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載のバイナリー発電システム。
【請求項11】
前記上部蒸発器胴の底部と前記下部蒸発器胴の底部近くとを連絡する媒体液下降管をさらに有することを特徴とする請求項10に記載のバイナリー発電システム。
【請求項12】
前記低圧媒体タービンから排出された媒体蒸気を冷却するとともに前記凝縮器で生成された媒体液を加熱する再生器、をさらに有し、
前記再生器で加熱された媒体液を前記ガスクーラーの冷熱源とすることを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれか一項に記載のバイナリー発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79587(P2013−79587A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219123(P2011−219123)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】