説明

バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法及びそのシステム

【課題】有機ELと有機フォトダイオード機能を有するダイオード部により、発光と光検出を行い、一つの光経路により双方向の光通信を可能とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法及びそのシステムを提供する。
【解決手段】発光と受光機能を備え、有機材料を含む第1の素子及び第2の素子を、各々、光を用いた通信手段の信号発信部及び信号受信部として用い、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号受信部との間に少なくとも光ファイバ3を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法及びそのシステムに係り、詳細には、有機ELと有機フォトダイオード機能を有するダイオード部により、発光と光検出を行い、一つの経路により双方向の光通信を可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
電子情報機器を支えるデバイスの主役としてSi半導体が挙げられ、それによる集積回路で電子機器、コンピュータ、通信機器、民生品等、数多くの製品展開が成されてきた。しかしながら、Si半導体には、発光しない、デバイスサイズがウエハにより制限される、重量が重いなどの欠点があり、そのため、発光デバイスについては化合物半導体が、大面積パネルでは非晶質ないしは多結晶Si半導体が展開を拡げてきた。
【0003】
そのなか、大面積・軽量・省スペース・フレキシブルの特長を有する電子情報機器の実現を目指し、有機デバイスの研究が開始されている。これまで有機材料は、数百万種を数える材料の豊富さと新機能発現を特徴として、有機電子感光体、液晶表示素子等の分野を確立してきた。最近では、液晶表示素子を補完する自発光デバイスとして、有機EL素子が脚光を浴びており、小型表示パネルとして実用化が進んでいる。また、それに続く展開として有機トランジスタ、有機太陽電池、有機フォトダイオード等の新規有機デバイスの研究が開始されており、今後の研究開発と市場創出に期待がかかっている。
【0004】
また、最近の研究開発の傾向としては、デバイスの複合集積化が挙げられる。デバイス多層化した報告としては、プリンストン大学によるマルチカラー素子(下記非特許文献1)、城戸らによるマルチフォトンエミッション素子(下記非特許文献2)、九州大学によるタンデム型太陽電池(下記非特許文献3)、近松らによる有機EL素子と有機フォトダイオードの積層化(下記非特許文献4)、松下らによる有機EL/有機フォトダイオード複合積層パネル(下記非特許文献5)、宮下らによる両面に異なる画像を表示可能な発光パネル(下記非特許文献6)、さらに、有機膜を多層化して発光と発電を行うタイム・ワーナー・エンターテインメントからの報告(下記特許文献1)と、筒井他による機能性膜と導電体薄膜層を組合せることを特徴とする有機半導体素子の報告(下記特許文献2)が挙げられる。また、平面内に集積化を考えた例としては、各画素毎に表示素子および受光素子を有する表示パネルについての提案がある(下記特許文献3)。
【特許文献1】特開2002−8851号公報
【特許文献2】特開2003−264085号公報
【特許文献3】特開2004−336203号公報
【非特許文献1】S.R.Forrest et al.:Appl.Phys.Lett.,74,305(1999).
【非特許文献2】J.Kido,T.Matsumoto,T.Nakada,J.Endo,K.Mori,N.Kawamura,A.Yokoi:SID Int’l.Symp.Dig.Tech.Pap.,VolumeXXXIV,964(2003).
【非特許文献3】K.Triyana,T.Yasuda,K,Fujita and T.Tsutsui:Ext.Abst.SSDM,784(2003).
【非特許文献4】M.Chikamatsu,Y.Ichino,N.Takada,M.Yoshida,T.Kamata and K.Yase:Appl.Phys.Lett.,81,769(2002).
【非特許文献5】Y.Matsushita,H.Shimada,T.Miyashita,M.Shibata,S.Naka,H.Okada and H.Onnagawa:“Organic Bi−function Matrix Array”,Jpn.J.Appl.Phys.,44(4B),2826(2005).
【非特許文献6】T.Miyashita,S.Naka,H.Okada and H.Onnagawa:“Dual Drive and Emission Panel”,Jpn.J.Appl.Phys.,44(6A),3682(2005).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、確立されている化合物半導体等による外付け方式での光通信系を用いようとすると、大面積パネル上へ付加的デバイスの実装が必要であるばかりでなく電気→光、光→電気両方向の経路を確保する必要がある。ここで、光通信系へ有機電子デバイスを用いるようにする。原理的には、有機EL素子と有機フォトダイオードを用いることによる光通信が可能と考えられる。しかしながら、有機デバイスの特徴を考えあわせ従来からの基幹網光通信の置き換えを考えると、その発光波長と応答速度の観点より、優位性を確保できるとは言い難い。すなわち、従来光通信を単純に有機デバイスに置き換えたのでは、その特徴を発揮しづらい。また、上記した特許文献3の方式では、平面内で別々に送信器と受信器が存在することとなり、同一経路を用いた双方向通信とは言えなかった。
【0006】
そこで、例として、大面積パネル上での光配線応用について考える。大面積化に伴うパネル上では配線長増加に伴う信号遅延が問題となる。そこへ有機EL素子・有機ダイオード積層化による光信号伝送を考える。そうすると、信号遅延の問題が解消されるのみならず、単一経路による光通信系の構築が可能となる。以上の方式は、従来無かった光通信方式として注目に値する。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、有機ELと有機フォトダイオード機能を有するダイオード部により、発光と光検出を行い、一つの光経路により双方向の光通信を可能とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法及びそのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は、上記目的を達成するために
〔1〕バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法において、発光と受光機能を備え、有機材料を含む第1の素子及び第2の素子を、各々、光を用いた通信手段の信号発信部及び信号受信部として用い、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部の間に光伝搬手段を接続することを特徴とする。
【0009】
〔2〕バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法において、発光と受光機能を備え、有機材料を含む第1の素子及び第2の素子を、各々、光を用いた通信手段の信号発信部及び信号受信部として用い、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部の間に光伝搬手段を接続し、前記信号発信部及び信号受光部で、ある時間期間において信号受光部で吸収した光エネルギーにより蓄電作用を起こさせ、それを用いることで、外部電源からの電圧供給の無い独立した光通信系を構築することを特徴とする。
【0010】
〔3〕バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法において、発光と受光機能を備え、有機材料を含む第1の素子及び第2の素子を、各々、光を用いた通信手段の信号発信部及び信号受信部として用い、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部の間に光伝搬手段を接続し、前記信号発信部及び信号受信部を二次元面内に複数形成し、多重化された光通信系を構築することを特徴とする。
【0011】
〔4〕バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第1の素子と、信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第2の素子と、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部との間に配置される光伝搬手段を具備することを特徴とする。
【0012】
〔5〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記第1の素子及び第2の素子が、有機EL素子と有機フォトダイオードの積層構造であることを特徴とする。
【0013】
〔6〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記第1及び第2の素子が、有機EL素子と有機フォトダイオードの二機能を実現できる多機能ダイオード構造であることを特徴とする。
【0014】
〔7〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部の発光波長が1.55μm波長帯であり、かつ前記光伝搬手段が石英を含む材料系であることを特徴とする。
【0015】
〔8〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部の発光波長が1.3μm波長帯であり、かつ前記光伝搬手段が石英を含む材料系であることを特徴とする。
【0016】
〔9〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部の発光波長が可視光であることを特徴とする。
【0017】
〔10〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が光ファイバであることを特徴とする。
【0018】
〔11〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が光導波路であることを特徴とする。
【0019】
〔12〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる発光性有機材料が蛍光発光をすることを特徴とする。
【0020】
〔13〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる正孔輸送性有機材料の移動度が10-6cm2 /Vs以上であることを特徴とする。
【0021】
〔14〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる電子輸送性有機材料の移動度が10-6cm2 /Vs以上であることを特徴とする。
【0022】
〔15〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる少なくとも有機EL素子の機能を示す素子の正孔注入用電極近傍に正孔輸送層を有することを特徴とする。
【0023】
〔16〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる少なくとも有機EL素子の機能を示す素子の電子注入用電極近傍に電子輸送層を有することを特徴とする。
【0024】
〔17〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる陽極の仕事関数が4.8eV以上であることを特徴とする。
【0025】
〔18〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる陰極の仕事関数が4.3eV以下であることを特徴とする。
【0026】
〔19〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる発光材料がユーロピウム錯体系であることを特徴とする。
【0027】
〔20〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部からの発光スペクトル半値幅が25nm以下であることを特徴とする。
【0028】
〔21〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部の発光スペクトルと光信号受光部の吸収スペクトルに重なりがあることを特徴とする。
【0029】
〔22〕上記〔4〕〜〔11〕何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号受光部での電子及び正孔の移動度が、両者とも10-6cm2 /Vs以上であることを特徴とする。
【0030】
〔23〕上記〔4〕〜〔11〕の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号受光部での有機材料としてN,N′−ditridecyl−3,4,9,10−perylene−tetracarboxylicdiimide,3,4,9,10−perylenetetracarboxylicdianhydride、N,N′−bis(2,5−di−tert−butylphenyl)−3,4,9,10−perylenedicarboximideの何れかを用いることを特徴とする。
【0031】
〔24〕上記〔4〕〜〔11〕の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号受光部での有機材料として、4−[2−[5−[4−(Diethylamino)phenyl]−4,5−dihydro−1−phenyl−1H−pyrazol−3−yl]−ethenyl]−N,N−diethyl−anilineを用いることを特徴とする。
【0032】
〔25〕上記〔4〕〜〔11〕の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段がプラスチック材料系であることを特徴とする。
【0033】
〔26〕上記〔4〕〜〔11〕の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段がフレキシブル材料であることを特徴とする。
【0034】
〔27〕上記〔4〕〜〔11〕の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段がポリイミド材料であることを特徴とする。
【0035】
〔28〕上記〔4〕〜〔11〕の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が空気であることを特徴とする。
【0036】
〔29〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が集積回路を用いた光伝送路であることを特徴とする。
【0037】
〔30〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段がディスプレイ内に構成された光伝送路であることを特徴とする。
【0038】
〔31〕上記〔4〕記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が光カプラを用いた光伝送路であることを特徴とする。
【0039】
〔32〕バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第1の素子と、信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第2の素子と、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部との間に配置される光伝搬手段と、前記発光と受光機能を備えた信号発信部及び信号受光部で、ある時間期間において受光部で吸収した光エネルギーにより蓄電作用を行い、それを用いることで、外部電源からの電圧供給の無い独立した光通信系を構築する手段を具備することを特徴とする。
【0040】
〔33〕バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第1の素子と、信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第2の素子と、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部との間に配置される光伝搬手段と、前記信号発信部及び信号受信部を二次元面内に複数形成し、多重化された光通信系を構築する手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、有機ELと有機フォトダイオード機能を有するダイオード部により、発光と光検出を行い、一つの光経路により双方向の光通信を可能とするものである。電流注入モードによる有機レーザの使用が可能となれば、光源の単一モード化へ向けて一層の拍車がかかるものと期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムは、発光と受光機能を備え、有機材料を含む第1及び第2の素子構成を、各々、光を用いた通信手段の光信号発信部及び光信号受信部として用い、その間に少なくとも光伝搬手段を設ける。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0044】
図1は本発明の第1実施を示すバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムの構成例を示す模式図である。
【0045】
この図において、1は有機発光部、2は有機受光部、3は光ファイバ、11は第1の電極、12は第2の電極、13は第3の電極、21は有機発光部1への印加電圧、22は有機受光部2の端子、41は電気信号、42は光信号である。基本として、双方向通信用の発光・受光デバイスは、第1の電極11、有機発光部1、第2の電極12、有機受光部2、第3の電極13から成る。発光・受光デバイスについては、特殊な有機材料系を単に第1の電極11と第2の電極12間に積層形成するだけで、すなわち単一の有機EL素子と同一の構造を特殊な有機材料を用いて構成するのみで、順方向バイアスでは発光を、逆方向バイアスでは受光機能を発現できる双方向光通信デバイスが実現できる。例えば、ここでの特殊な有機材料としては、ピラゾリン誘導体4−[2−[5−[4−(Diethylamino)phenyl]−4,5−dihydro−1−phenyl−1H−pyrazol−3−yl]−ethenyl]−N,N−diethyl−aniline PPRが挙げられる。さらに、通常信号伝送パターンでは有り得ない切り替え信号・回路系を組み合わせることで、待機タイミングにおいて光による蓄電作用を生じさせる、すなわち有機受光部を太陽電池として動作させることで、外部電源からの電圧供給の無い独立した光通信系も構築可能となり、原理的に無電源供給双方向光通信システムが実現できる。現状のデバイスでは応答時間の課題があるが、原理的には光ファイバによる長距離光伝送、例えば海底ケーブルやメンテナンスフリーとしたいビル内光配線などの要求が有り得る。
【0046】
図2には、双方向光通信で使用する発光・受信パルス列を示した。基本的には単一方向光通信の場合と同様であり、図2(a)にはRZ(リターンゼロ)、図2(b)にはNRZ(ノンリターンゼロ、連続するパルス列では0を挟まない方式。通信系統として二倍の高速化が図れる)でのパルス列を示してある。図2(c)、(d)は、オシロスコープで観察した各々RZ,NRZのアイパターンパルス列の例である。個々では、半周期ずらした波形を同時に出力することで、瞬時に通信系の応答の良否が分かるようにしてある。すなわち、アイパターンの中心が開いていれば良好な系となる。図2(a)、(b)に記入してある数値はディジタル信号のビット値、A,A′,B,Cは信号のタイミングを示す。これらの信号のタイミングをオシロスコープ上に記載することで、図2(c)及び(d)のアイパターンが出来上がる。
【0047】
発光デバイスの波長については、光ファイバ3内の伝搬及び集光の関係上、単一波長での発光ないしはスペクトル幅の広い発光が望ましいが、短距離光通信となる加入者系やローカルエリアネットワーク(LAN)系ではその制約は緩やかとなり、ある程度の発光半値幅を持っても許される。石英を伝搬媒質(光伝搬手段)として用いる場合には、伝送損失が最小となる1.55μm帯や色分散が最小となる1.3μm帯発光が用いられる。光ファイバ3は、基幹網・幹線網等では信号歪みを抑えるためシングルモードが、加入者系、LANではファイバ内に屈折率分布を与え、コア系が比較的大きな状態でも使用可能なグレーデッドインデックス・マルチモードがある。最近、近距離簡易用途として、または電気ノイズの解消用途としてはプラスチックファイバが用いられる場合もある。
【0048】
図3は本発明の第2実施例を示す光導波路とプリズムを用いた双方向光通信システムの模式図である。
【0049】
発光・受光デバイスについては、図1の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。図3において、5は光路、31が薄膜光導波部、32が基板、33がプリズムである。薄膜光導波部31に、基板32より屈折率の高い材料を用いることで光閉じ込めが可能となる。図中では、レーザ光がプリズム33に入り、プリズム底面で全反射となる条件での説明を行っている。プリズム33と薄膜光導波路31のエアーギャップが小さいときに、プリズム33の減衰電界と薄膜光導波路31の電界で相互作用が起こり、位相整合条件において、レーザ光は、薄膜光導波路31に入射する。光導波路については、埋め込み、スラブ、リッジ型等の選択が考えられる。
【0050】
図4は本発明の第3実施例を示す光導波路を用いた双方向光通信システムの模式図である。
【0051】
ここでは、34は光導波部、35が基板、36がミラーを示す。
【0052】
図4では、有機発光部1からの発光が基板35に垂直方向から入りミラー36を介して平行方向に伝搬し、再度ミラー36を介して受光側へ入射する構成を示した。
【0053】
また、上記実施例では、1つの経路を利用した光通信系について説明しているが、発光・受光機能を持つ積層構造素子を二次元的、あるいは一次元的に配置し、光ファイバ3(図1参照)や光導波路31(図3参照)を多重化した形で設けるならば、大容量並列光通信系を確立することができる。
【0054】
図5には、集積回路を含む形の光伝送路を示した。通信手段としてOEIC(光電気集積回路)に見られるように、集積回路55を通じて外部信号(ここでは記載なし)に対する送信及び受信信号を生成することが可能となる。ここで、光通信系信号の遅延や、デバイスに対する信号レベルを適宜合わせるために、集積回路との組み合わせが有効となる。
【0055】
図6には、ディスプレイ内に構成された光伝送系について示してある。50はパネル、51は光信号経路、52は電気ライン、53は光電気変換を含む周辺駆動回路、54は電気−光変換回路となる。発光と受光機能を備えた素子は、53及び54の回路内に含まれる。本構成では簡単のため電源ライン等は示さず、簡単な構成として複数個に分割した周辺駆動回路53への信号供給を行う形の構成として記載した。本系では、特に双方向であることの長所はなく、むしろメーターサイズを超える大面積ディスプレイデバイスに対して、電気的抵抗と容量に伴う遅延なく、光により瞬時に回路部に信号を送れる点と、ディスプレイデバイスを構成する発光素子と53、54内の発光素子を同時に形成することができる点が特徴となる。
【0056】
図7には、フォトカプラの例を示した。図中、符号は図1と同様で、その他42が光信号、6がシールドボックスとなる。電気的なノイズが伴い、それにより信号劣化が起こる系や、直流的な電圧レベルに大きな差があり、交流的成分のみの伝搬を必要とする系で有効となる。
【0057】
以下、発光・受光デバイスの必要条件を示す。
【0058】
有機ELデバイスの発光機構は、蛍光と燐光とに分けられるが、蛍光がマイクロ秒以下の比較的短時間で終了するのに対し、燐光は長くてミリ秒から短くてマイクロ秒程度と比較的発光時間が長く、高速の光通信には適さず使用が大幅に限定される。発光デバイスの有機層構成としては、単層構造、正孔輸送層/電子輸送性発光層の二層構造、正孔輸送層/発光層/電子輸送層の三層構造、そして実用デバイスでは機能細分化が進み、正孔注入層/正孔輸送・電子ブロッキング層/発光層/電子輸送・ホールブロッキング層/電子注入層構成も使用されるに至っている。ディスプレイ用途として有機ELデバイスに使用されている材料を以下に挙げる。ホール注入材料として4,4′,4″−tris(3−methylphenylphenyl amino)triphenylamine(m−MTDATA)、銅フタロシアニン(CuPc)、poly(ethylenedioxythiophene)/poly(styrenesulfonate)(PEDOT:PSS)、正孔輸送材料としてN,N′−diphenyl−N,N′−(3−methylphenyl)−1,1′−biphenyl−4,4′−diamine(TPD)とBis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl]benzidine(α−NPD)、ホスト材料4,4′−bis(N−carbazolyl)biphenyl(CBP)、電子輸送材料Tris(8−hydroxyquinolinato)aluminum(III ).(Alq3 )、bis(2−methyl−8−quinolinolato)(p−phenylphenolato)aluminum(Balq)、2,5−bis(6′−(2′−2″−bipyridyl))−1,1−dimethyl−3,4−diphenylsilole(PyPySPyPy)、2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCP)、発光材料4,4′−bis(2,2−diphenylvinyl)−1,1′−biphenyl(DPVBi)(青)、perylene(青)、quinacridone(緑)、coumarin6(緑)、rubrene(黄)、4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran(DCM)(オレンジ)、4−dicyanomethylene−6−cp−julolidinostyryl−2−tert−butyl−4H−pyran(DCJTB)(赤)、燐光(三重項)材料としてiridium(III )bis(4,6−di−fluorophenyl)−pyridinato−N,C2)picolinate(Firpic)(青)、fac tris(2−phenylpyridine)iridium (Ir(ppy)3 )(緑)、bis(2−phenylbenzothiozolate−N,C2′)iridium(acetylacetonate)(btp2 Ir(acac))(赤)、共役系発光高分子2−methoxy,5−(2′−ethyl−hexyloxy)−1,4−phenylene vinylene(MEH−PPV)、ポリフルオレン誘導体(PFO)を挙げた。ここで、Alq3 は過去発光材料として用いられてきたが、実用上は現在、温度上昇時にも安定な電子輸送材料として用いられており電子輸送材料として分類した。その他、各層の効果を示す。ガラス基板上の透明電極としては、高仕事関数を示すインジュウムスズ酸化物(ITO)陽極を用いる。ホール注入層は、キャリア注入効果を向上させるのみならず、密着性、熱的安定性、電子ブロッキング性及び平坦性向上の目的で使用される。ホール輸送層は、過去、非晶質、均一形成可能、かつ高いホール移動度(10-3cm2 /Vs)のTPDが用いられてきたが、現在ガラス転移温度が96℃と高いα−NPDへと移行している。燐光用ホスト材料としては、禁制帯幅が広い材料が求められ、代表としてCBPが挙げられる。電子輸送材料には、良好な電子注入特性、ホールブロッキング特性と安定性が望まれる。陰極からの電子注入は、一般に厚さ0.5nm程度、密度1014cm-2eV-1程度の界面準位の存在によりオーミック特性とは成り得ず、例えばAl合金系では陰極印加電圧の1/4程度しか有機EL素子に印加されない。有機材料−陰極界面からは低仕事関数金属が望ましいが、酸化され易い。そのため、LiFやLiO等の極薄絶縁材料を用い、トンネル注入を促進することで電子注入の改善が図られている。また、一部、界面で有機材料と陰極を混合・拡散させることで、障壁の低減と密着性改善を図る試みも有る。
【0059】
以上が材料系の概略だが、実用上は(1)バンドギャップを考慮した材料系の組合せ、(2)ダークスポットの低減、(3)平坦化や封止を含めた信頼性向上、を考える必要がある。第一に、材料系の組合せとしては、電子またはホールの一方が、デバイス内を通過、蓄積ないしはトラップされないようバンド設計する必要がある。キャリアの通過は、効率を低減させる。蓄積ないしはトラップは、有効な電圧がデバイスに印加されないのみならず、ヒステリシスを招く。加えて非発光再結合が有ると、特性低下や熱発生を伴う。第二に、ダークスポットの低減では、クリーンルーム化は元より、基板形成・加工・洗浄時の塵低減、真空装置排気時のダスト低減などを抑える必要がある。第三に、種々の信頼性向上については、陽極上面及びエッジの平坦化、アクティブ素子形成等を伴う実デバイス形成部の平滑化、水分及び酸素を取り除いた環境での充分な封止と、脱ガスの無い周辺材料の使用等、を考慮する必要がある。また、バンド構造と信頼性向上に関連して、混合発光層の適用も興味深い。
【0060】
光通信用有機材料系としては、例えば1.55μmや1.3μm帯での赤外発光が期待されるが、例えばEu、Pr錯体材料の利用が考えられる。
【0061】
以上、一般的に使用可能な材料系について挙げたが、有機材料については、現在なお種々の材料系が開発中であり、発光/光導電性の両性質を有する材料系については、ほとんど検討されておらず、今回挙げた材料系に制限されることなく種々の材料の採用と組合せが考えられる。
【0062】
次に、受光デバイスに必要とされる条件について示す。
【0063】
フォトダイオードに必要とされる条件としては、(1)高い光導電を示すこと、(2)低い暗導電を示すこと、(3)高速応答が可能なこと、(4)低電圧動作すること、(5)ヒステリシスが小さいこと、(6)低雑音であること、(7)外部擾乱が小さいこと、等が挙げられる。上記(1)については、有機材料自身の高い光導電率に伴う高い光−電気変換能に加え、有機膜内にキャリアトラップとなる準位が少ないことや、積層に伴うポテンシャルバリアが存在しないこと、などが必要となる。上記(2)については、後述で必要となる高移動度の必要性とは一部反する面が有るが、暗電流は低い方が良い。改善すべき課題としては、有機膜内での欠陥等によるバンド内レベルによる不要なキャリア発生が無いことが挙げられる。上記(3)については、有機材料としては移動度が高いことが挙げられる。また、デバイス構造上では、全面に有機薄膜を形成する構造を考えると、光導電状態では基板全面の有機膜が導通状態となるため、それに伴う寄生容量の増大とキャリア吐き出しを必要とするため、特に立下りでの応答遅れに問題を生ずる。上記(4)については、フォトダイオードの動作自身は低電圧で動作することが望ましい。反面、耐圧は高い方が望ましい。例えばフォトダイオードと有機ELデバイスを積層する場合を考えると、10V程度の電圧が有機フォトダイオードにも印加されることが考えられる。そのため、応答自身は犠牲にすることなく、耐圧を上げるための工夫が必要となる。上記(5)については、デバイス動作上は、特に光信号が切り替わる際に問題となる。有機膜及び有機膜/電極界面での電荷トラップ、膜劣化や温度上昇などが伴うとヒステリシスにつながる。上記(6)、上記(7)については、有機材料内での伝導がキャリアのホッピング伝導を基本とするものと考えるならば、通常単結晶材料と比較して伝導揺らぎによる雑音を生じやすい点は否めない。また、特に温度変動により、その影響が大となる。この点に関しては、非分散型伝導材料の開発や、分散型伝導を示す系においては統計的に偏りがない秩序を示す系の開発が課題と言える。
【0064】
反面、広い禁制帯幅とキャリア密度数の低さに伴う熱的活性キャリア数の少なさから、外乱等の影響自体も小さく済む可能性がある。上記デバイス動作に適した有機材料系としては、例えば可視光帯では、ペリレン誘導体、銅・亜鉛フタロシアニン、N,N′−bis (2,5−di−tert−butylphenyl) −3,4,9,10−perylene dicarboximide (BPPC) 等とその混合物が挙げられる。
【0065】
以下、本発明により実現される素子特性の実施例について示す。
【0066】
今回は、複合マトリクスアレイの基本動作を示すために、以下の具体例1のデバイスを試作した。まず、ガラス基板上に、インジュウム−スズ酸化物電極 (ITO) (図1の第1電極11に対応)/銅フタロシアニン(CuPc)(5nm)/4,4′−bis[N−(1−naphtyl)−N−phenyl−amino]biphenyl(α−NPD) (50nm) /tris− (8−hydroxyquinoline)aluminum(Alq3 )(50nm)/CuPc(5nm)/インジュウム−亜鉛酸化物電極(IZO)(図1の第2電極12に対応)/ N,N′−bis (3−methylphenyl)−(1,1′−biphenyl) 4,4′−diamine(TPD)(50nm)/N,N′−Ditridecyl−3,4,9,10−perylene−tetracarboxylic diimide(td−PTC) (ペリレン誘導体、50nm) /Al電極(図1の第2電極13に対応)構造を作製し、基板側より発光・光吸収させた。中間IZO電極(図1の第2電極12に対応)は透明電極とし、スパッタ形成した。積層作製した発光EL素子の電圧−輝度特性を考える。発光EL素子としては、上下電極とも透明となる所謂「透明EL素子」となるが、輝度770cd/m2 (J=217mA/cm2 )を得た。積層作製したフォトダイオードの特性を示す。明状態は、キセノンランプ、光量33mW/cm2 下での測定を行った。その結果、導電率比103 (−2V)を得た。また、受光フォトダイオードとして、Al(70nm)/td−PTC(50nm)/α−NPD(100nm)/MoO3 (10nm)/IZOデバイスの導電率比は、2.5×103 であった。
【0067】
また、ガラス基板上に、具体例2としてインジュウム−スズ酸化物電極(ITO)/銅フタロシアニン(CuPc)(5nm)/4,4′−bis[N−(1−naphtyl)−N−phenyl−amino]biphenyl(α−NPD)(50nm)/tris−(8−hydroxyquinoline)aluminum(Alq3 )+Coumarin6(50nm)/CuPc(5nm)/インジュウム−亜鉛酸化物電極(IZO)/N,N′−bis(3−methylphenyl)−(1,1′−biphenyl)4,4′−diamine(TPD)(100nm)/N,N′−Ditridecyl−3,4,9,10−perylene−tetracarboxylic diimide(td−PTC)(ペリレン誘導体、50nm)/Al構造を作製し、基板側より発光・光吸収させた。中間IZO電極は透明電極とし、スパッタ形成した。積層作製したEL素子の電圧−輝度特性を考える。このとき、輝度1,130cd/m2 (J=231mA/cm2 )を得た。積層作製したフォトダイオードの特性を示す。明状態は、キセノンランプ、光量33mW/cm2 下での測定を行った。その結果、導電率比103 (−2V)を得た。
【0068】
図8に、具体例2の複合デバイスを対向させ、一方の複合デバイスの有機EL素子を発光デバイスとし、他方の複合デバイスのフォトダイオードを受光デバイスとし、光伝搬媒体を空気としたときの、有機EL素子の電流密度を横軸に、縦軸に有機フォトダイオードの出力電流密度を取った特性を示す。両者の関係は、二桁以上に渡りほぼ線形であった。これより、光通信に適した歪みの無い特性が得られることになる。また、以上の構成により得られた遮断周波数として300kHzが得られた。これは、主に有機フォトダイオード自体の応答遅れによる。
【0069】
さらに、具体例3として、単一デバイス構造により実現される発光・受光デバイスの例について示す。発光/光導電の性質を示す材料として、ピラゾリン誘導体4−[2−[5−[4−(Diethylamino)phenyl]−4,5−dihydro−1−phenyl−1H−pyrazol−3−yl]−ethenyl]−N,N−diethyl−aniline PPRを用いた。陰極材料にはIndium Zinc Oxide(IZO)をスパッタした基板を、正孔輸送の性質を有するバッファ層としてCuPc、poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/poly(styrenesulfonate)(PEDOT、H.C.Starck)、MoO3 を、電子注入/正3ブロック層としてBCP、BAlqを、電子注入用絶縁膜/陰極としてLiF/Alを使用した。有機材料、バッファ層その他は、すべて抵抗加熱蒸着法で蒸着した。光源はXeランプ33mW/cm2 である。検討したデバイス積層構造は、IZO/CuPc(30nm)/PPR(50nm)/BCP(20nm)/LiF(1nm)/Alである。素子構造の輝度(電流J=100mA/cm2 )と導電率比σp / σd は、各々2,190cd/m2 、2,210であった。太陽電池特性としては、光源がXeランプ33mW/cm2 であるため、通常のAM1ないしはAM1.5太陽光100mW/cm2 時の特性とは異なり比較できないが、参考のため開放電圧2V、短絡電流1.93×10-3mA/cm2 であった。また、スピンコート溶液系で作製した素子の特性を示す。素子構造は、ITO/CuPc(60nm)/PPR(110nm)/BCP(20nm/LiF(1nm)/Al(100nm)で、輝度(電流J=100mA/cm2 )と導電率比σp /σd は、各々457cd/m2 、2.51×105 であった。また、最高輝度は640cd/m2 であった。特性としては、蒸着系に比べ一桁程度劣るものの、溶液系素子で、発光/フォトダイオード動作が同一構造で確認されている。また、今後の光強度増大が課題となる。
【0070】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、バイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムに関する。詳細には、有機ELと有機フォトダイオード機能を有するダイオード部により、発光と光検出を行い、一つの光経路により双方向の光通信を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施を示すバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムの構成例を示す模式図である。
【図2】図1における双方向光通信で使用する発光・受信パルス列を示した模式図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す光導波路を用いたバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムの模式図である。
【図4】本発明の第3実施例を示す光導波路を用いた双方向光通信システムの模式図である。
【図5】本発明の第4実施例を示す集積回路を含む形の光伝送路の模式図である。
【図6】本発明の第5実施例を示すディスプレイ内に構成された光伝送系の模式図である。
【図7】本発明の第6実施例を示すフォトカプラの例を示した光伝送系の模式図である。
【図8】本発明の有機EL素子の電流密度対有機フォトダイオードの出力電流密度の特性を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 有機発光部
2 有機受光部
3 光ファイバ
5 光路
6 シールドボックス
11 第1の電極
12 第2の電極
13 第3の電極
21 有機発光部への印加電圧
22 有機受光部の端子
31 薄膜光導波部
32,35 基板
33 プリズム
34 光導波部
36 ミラー
41 電気信号
42 光信号
50 パネル
51 光信号経路
52 電気ライン
53 光電気変換を含む周辺駆動回路
54 電気−光変換回路
55 集積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光と受光機能を備え、有機材料を含む第1の素子及び第2の素子を、各々、光を用いた通信手段の信号発信部及び信号受信部として用い、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部の間に光伝搬手段を接続することを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法。
【請求項2】
発光と受光機能を備え、有機材料を含む第1の素子及び第2の素子を、各々、光を用いた通信手段の信号発信部及び信号受信部として用い、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部の間に光伝搬手段を接続し、前記信号発信部及び信号受光部で、ある時間期間において信号受光部で吸収した光エネルギーにより蓄電作用を起こさせ、それを用いることで、外部電源からの電圧供給の無い独立した光通信系を構築することを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法。
【請求項3】
発光と受光機能を備え、有機材料を含む第1の素子及び第2の素子を、各々、光を用いた通信手段の信号発信部及び信号受信部として用い、前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部の間に光伝搬手段を接続し、前記信号発信部及び信号受信部を二次元面内に複数形成し、多重化された光通信系を構築することを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信方法。
【請求項4】
(a)信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第1の素子と、
(b)信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第2の素子と、
(c)前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部との間に配置される光伝搬手段を具備することを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項5】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記第1の素子及び第2の素子が、有機EL素子と有機フォトダイオードの積層構造であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項6】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記第1及び第2の素子が、有機EL素子と有機フォトダイオードの二機能を実現できる多機能ダイオード構造であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項7】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部の発光波長が1.55μm波長帯であり、かつ前記光伝搬手段が石英を含む材料系であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項8】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部の発光波長が1.3μm波長帯であり、かつ前記光伝搬手段が石英を含む材料系であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項9】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部の発光波長が可視光であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項10】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が光ファイバであることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項11】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が光導波路であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項12】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる発光性有機材料が蛍光発光をすることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項13】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる正孔輸送性有機材料の移動度が10-6cm2 /Vs以上であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項14】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる電子輸送性有機材料の移動度が10-6cm2 /Vs以上であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項15】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる少なくとも有機EL素子の機能を示す素子の正孔注入用電極近傍に正孔輸送層を有することを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項16】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる少なくとも有機EL素子の機能を示す素子の電子注入用電極近傍に電子輸送層を有することを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項17】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる陽極の仕事関数が4.8eV以上であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項18】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる陰極の仕事関数が4.3eV以下であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項19】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部に用いる発光材料がユーロピウム錯体系であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項20】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部からの発光スペクトル半値幅が25nm以下であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項21】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号発信部の発光スペクトルと光信号受光部の吸収スペクトルに重なりがあることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項22】
請求項4〜11何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号受光部での電子及び正孔の移動度が、両者とも10-6cm2 /Vs以上であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項23】
請求項4〜11の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号受光部での有機材料としてN,N′−ditridecyl−3,4,9,10−perylene−tetracarboxylicdiimide,3,4,9,10−perylenetetracarboxylicdianhydride、N,N′−bis(2,5−di−tert−butylphenyl)−3,4,9,10−perylenedicarboximideの何れかを用いることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項24】
請求項4〜11の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光信号受光部での有機材料として、4−[2−[5−[4−(Diethylamino)phenyl]−4,5−dihydro−1−phenyl−1H−pyrazol−3−yl]−ethenyl]−N,N−diethyl−anilineを用いることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項25】
請求項4〜11の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段がプラスチック材料系であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項26】
請求項4〜11の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段がフレキシブル材料であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項27】
請求項4〜11の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段がポリイミド材料であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項28】
請求項4〜11の何れか一項記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が空気であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項29】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が集積回路を用いた光伝送路であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項30】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段がディスプレイ内に構成された光伝送路であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項31】
請求項4記載のバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システムにおいて、前記光伝搬手段が光カプラを用いた光伝送路であることを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項32】
(a)信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第1の素子と、
(b)信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第2の素子と、
(c)前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号発信部との間に配置される光伝搬手段と、
(d)前記発光と受光機能を備えた信号発信部及び信号受光部で、ある時間期間において受光部で吸収した光エネルギーにより蓄電作用を行い、それを用いることで、外部電源からの電圧供給の無い独立した光通信系を構築する手段を具備することを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。
【請求項33】
(a)信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第1の素子と、
(b)信号発信部及び信号受信部を備える、有機材料を含む第2の素子と、
(c)前記第1の素子の信号発信部と前記第2の素子の信号受信部との間に配置される光伝搬手段と、
(d)前記信号発信部及び信号受信部を二次元面内に複数形成し、多重化された光通信系を構築する手段を具備することを特徴とするバイファンクション有機ダイオードによる双方向光通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−60078(P2007−60078A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240822(P2005−240822)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】