説明

バケットの駆動装置

【課題】可変速(停止を含む)で、かつ、高効率化及び軽量化が可能であり、さらに、モータ制御装置とバケット(モータ)との間を接続する信号線に付随するノイズ等の問題点を解消するようにしたバケットの駆動装置を提供すること。
【解決手段】バケットの開閉動作を、バケットに搭載した磁石モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作して行うようにしたバケットの駆動装置であって、クレーンのクラブ上にモータ制御装置7を設置するとともに、このモータ制御装置7とバケットとの間をケーブルで接続し、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号をモータ制御装置7に導入してモータ制御装置7に予め設定した回転数パターンによってモータ4の回転数を制御し、バケットシリンダ1を操作するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットの駆動装置に関し、特に、磁石モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにしたバケットの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バケットの駆動装置として、モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにしたものが汎用されている。
【0003】
ところで、バケットの駆動装置の方式として、代表的なものとして、モータに誘導電動機を使用し、この誘導電動機をインバータ制御する方式のものが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、この方式のバケットの駆動装置は、モータの停止、再始動時の突入電流が大きく、このため、損失が大きく、また、運転時の発生損失も大きいことから、エネルギ効率が悪いという問題があった。また、モータ自体も体格が大きく、重量が重いという問題があった。
なお、モータに磁石モータであるACサーボモータを使用することにより、可変速(停止を含む)で、かつ、高効率化及び軽量化が可能なバケットの駆動装置を構成することができる。しかしながら、ACサーボモータを使用した場合、エンコーダによるフィードバック制御が必須となるため、クレーンのクラブ上にモータ制御装置を設置すると、このモータ制御装置とバケット(モータ)との間を、動力線とは別に、速度制御用のセンサからの信号をモータ制御装置に導くための信号線で接続する必要がある。そして、この速度制御用の信号は、動力線からのノイズの影響を受けやすいため、動力線とは別のケーブルにしたり、同一のケーブルにする場合は特殊なシールド線を組み込む必要があり、コストがかかるだけでなく、耐久性が劣り、さらに、ノイズの影響を完全には除去できないという問題があった。
【特許文献1】特開平6−92588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来のバケットの駆動装置の有する問題点に鑑み、可変速(停止を含む)で、かつ、高効率化及び軽量化が可能であり、さらに、モータ制御装置とバケット(モータ)との間を接続する信号線に付随するノイズ等の問題点を解消するようにしたバケットの駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のバケットの駆動装置は、バケットの開閉動作を、バケットに搭載した磁石モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにしたバケットの駆動装置であって、クレーンのクラブ上にモータ制御装置を設置するとともに、該モータ制御装置とバケットとの間をケーブルで接続し、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号を前記モータ制御装置に導入してモータ制御装置に予め設定した回転数パターンによってモータの回転数を制御し、前記バケットシリンダを操作するようにしたことを特徴とする。
【0006】
この場合において、油圧回路の作動油の圧力値を、油圧回路に設けた圧力センサにより検出するようにしたり、モータの電流値により検出するようにすることができる。
【0007】
また、バケットシリンダを操作しない場合に、モータを停止するようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバケットの駆動装置によれば、バケットの開閉動作を、バケットに搭載した磁石モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにしたバケットの駆動装置であって、クレーンのクラブ上にモータ制御装置を設置するとともに、該モータ制御装置とバケットとの間をケーブルで接続し、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号を前記モータ制御装置に導入してモータ制御装置に予め設定した回転数パターンによってモータの回転数を制御し、前記バケットシリンダを操作するようにすることにより、バケットの駆動装置を、可変速(停止を含む)で、かつ、高効率化及び軽量化が可能に構成することができる。
そして、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号は、ON、OFFの接点信号から構成されるため、動力線からのノイズの影響を受けにくく、敢えて動力線とは別のケーブルにする必要はなく、コスト及び耐久性の点で優れている。
【0009】
また、油圧回路の作動油の圧力値を、油圧回路に設けた圧力センサにより検出するようにしたり、モータの電流値により検出するようにすることにより、モータの回転数の制御に用いることができ、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号を簡易に取り出すことができる。
【0010】
また、バケットシリンダを操作しない場合に、モータを停止するようにすることにより、モータの停止、再始動時の損失が小さい磁石モータの利点を生かして高効率化を実現しながら、作動油の温度上昇を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のバケットの駆動装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図4に、本発明のバケットの駆動装置の一実施例を示す。
このバケットの駆動装置は、従来のバケットの駆動装置と同様、バケットの開閉動作を、バケットに搭載したモータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作して行うように構成されている。
そして、オイルタンク5の作動油を、モータ4にて駆動される油圧ポンプ3によって、電磁切換弁2を配した油圧回路Lを介して、バケットシリンダ1へ供給し、バケットの開閉動作を行うようにしている。
【0013】
この場合において、モータ4には、磁石モータであるDCブラシレスモータを使用するとともに、クレーンのクラブ上にモータ制御装置7を設置し、このモータ制御装置7とバケットとの間をケーブルCで接続し、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路Lの作動油の圧力値の信号をモータ制御装置7に導入してモータ制御装置7に予め設定した回転数パターンによってモータ4の回転数を制御するようにする。
なお、モータ4には、DCブラシレスモータ以外の磁石モータ、例えば、永久磁石界磁型モータ等を使用することもできる。
【0014】
そして、油圧回路Lの適宜位置には、油圧回路Lの作動油の圧力値を表示する圧力計6及び圧力値を検出するための圧力センサ9を配設するとともに、余剰の作動油を逃がすリリーフ弁10を接続するようにする。
【0015】
また、油圧ポンプ3を駆動するモータ4の電源回路Eには、モータ4に流れる電流値を検出する電流センサ8を配設するようにする。
【0016】
そして、このバケットの駆動装置は、バケットの開閉動作を、モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作して行う際に、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路Lの油圧値の信号に基づいて、モータ制御装置7に予め設定した回転数パターンによってモータ4の回転数を制御するようにし、これにより、油圧回路Lの油圧が所要の油圧値を維持しながら、必要以上の油圧ポンプ3の稼働を防止して、バケットの開閉動作を高頻度に行っても、作動油の温度の上昇を抑制してバケットの安定した挟持力を維持することができるようにしている。
ちなみに、作動油の温度が上昇すると、作動油の粘度が低くなり、油圧回路Lの油圧値が低下して、必然的にバケットの挟持力が減少し、ごみを確実に挟持することができなくなったり、さらには、バケットの吊り上げ時に挟持したごみがバケットからこぼれ落ちるという問題が発生することが予想される。
なお、モータ制御装置7により行うモータ4の回転数の制御は、例えば、高速回転、中速回転、低速回転のように段階的に行うことも、無段階に行うこともできる。
【0017】
ここで、モータ制御装置7に予め設定しておく回転数パターンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(1)〜(3)の要素から回転数パターンA、Bを設定するようにする(図3参照)。
(1)軽負荷時→高速運転(高速回転)→開閉時間の短縮
(2)通常負荷時→定格速度運転(定格速度回転)→開閉時間の短縮
(3)圧縮保持時→増締め運転(微速回転)→作動油の温度の上昇の抑制

回転数パターンA:(1)〜(3)の組み合わせパターン
回転数パターンB:クレーンの巻き上げと(1)〜(3)の組み合わせパターン
なお、図3において、遊休循環運転(アンロード運転)は、バケットシリンダ1を操作した後に、作動油の温度に応じて作動油の循環量を調節し、オイルタンクにおける放熱効果を高めるものであるが、作動油の温度に応じて、図4に示すように、モータ4を停止するようにすることもできる。
【0018】
また、油圧回路Lの作動油の圧力値の検出は、油圧回路Lに設けた圧力センサ9の出力に基づいて、油圧回路Lの油圧値が設定した油圧値に達したことを検出することにより行うようにするほか、電流センサ8により検出したモータ4に流れる電流値(この場合、モータ4に流れる電流値が設定した電流値に達したことを検出することにより行う。モータ4に流れる電流値を検出することにより、モータ4のトルク値を測定することができ、このモータ4のトルク値により、油圧回路Lの油圧値を知ることができる。)を、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路Lの作動油の圧力値として置き換え、いずれの場合も、油圧回路Lの作動油の圧力値の信号として、モータ4の回転数の制御に用いることができる。
そして、この油圧回路Lの油圧値の検出は、上記2つの手段のいずれかを選択して用いるようにしても、2つの手段を組み合わせて用いるようにしてもよい。
なお、油圧回路Lに設けたリリーフ弁10の動作に基づいて、油圧回路Lの油圧値が設定した油圧値に達したことを検出することにより行うようにすることもできる。
【0019】
次に、上記のように構成されたバケットの駆動装置を用いて、ごみを掴む場合の動作について説明する。
【0020】
まず、バケットを開動作させる。
バケットを開動作する場合は、電磁切換弁2のソレノイドaを励磁することにより、モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作する。
バケットが開くと、電磁切換弁2のソレノイドaを解除すると電磁切換弁2は中立位置に戻り、バケットは、そのまま開いた状態を維持する。
バケットを開動作する場合は、負荷が小さいことから、通常、油圧ポンプ3から供給される作動油の吐出量が大となるように、油圧ポンプ3を駆動するモータ4の回転数を制御するようにして、作業を効率化するようにする。
【0021】
次に、バケットを開いた状態で、バケットをごみ山上に降下させる。
バケットがごみ山上に着地することにより、バケットの重量にてバケットの挟持爪がごみ山内に侵入し、次に、バケットを閉動作することにより、ごみを掴むことができる。
バケットを閉動作する場合は、電磁切換弁2のソレノイドbを励磁することにより、モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作する。
そして、通常は、この状態で、バケットの開閉動作を数回繰り返すこと(沈み掴み)により、バケットによるごみの掴み量を増大させながら、ごみを確実に掴むようにする。
バケットを沈み掴みする場合は、特に、掴み時の負荷が大きくなることから、通常、少なくとも掴み時の油圧ポンプ3から供給される作動油の吐出量が小となるように、油圧ポンプ3を駆動するモータ4の回転数を、クレーンの巻下動作及びバケットの開閉動作と連動して、自動制御するようにして、作業を効率化するようにする。
【0022】
次に、バケットを閉動作させ、ごみを圧縮しながら挟持するとともに、挟持したごみをこぼれ落ちることなく確実に保持するようにする。
バケットを閉動作する場合は、バケットを沈み掴みする場合と同様、電磁切換弁2のソレノイドbを励磁することにより、モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作する。
バケットを閉動作する場合は、負荷が大きくなることから、通常、油圧ポンプ3から供給される作動油の吐出量が小となるように、油圧ポンプ3を駆動するモータ4の回転数を制御するようにする。
【0023】
ところで、このバケットの閉動作を確実に行ってごみを挟持するとともに、挟持したごみをこぼれ落ちることなく確実に保持するために、挟持力を一定時間保持し続けるように、バケットシリンダ1を操作する必要がある。
従来は、この操作によって、バケットが閉じた後は、モータ4に大きな負荷がかかって温度が上昇するだけでなく、作動油の圧力値が高くなって、作動油がリリーフ弁を通過することによって、作動油の温度が上昇するという問題があったが、本実施例においては、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路Lの作動油の圧力値の信号として、モータ4の回転数の制御、具体的には、図2に示すように、油圧回路の油圧値Pが設定した油圧値γ、γに達したことを検出することにより、モータ制御装置7によりモータ4の回転数を増減する(P<γ:回転数を上げる、P>γ:回転数を下げる)ようにし、これにより、油圧回路の油圧が所要の油圧値(γ〜γ)を維持しながら、必要以上の油圧ポンプ3の稼働を防止して、バケットの開閉動作を高頻度に行っても、作動油の温度の上昇を抑制してバケットの安定した挟持力を維持することができるようにしている。
【0024】
なお、バケットシリンダ1を操作しない場合は、図4に示すように、モータ4を停止したり、回転数を最小限まで下げることにより、図5に示す従来の方式(モータの回転数、作動油の流量を一定に維持する方式)と比較して、モータ4の消費電力を低減することができ、温度上昇を抑制することができるとともに、エネルギコストを低減することができる。
【0025】
このバケットの駆動装置によれば、油圧ポンプ3の駆動を行うモータ4に、磁石モータ、より具体的には、DCブラシレスモータを使用することにより、バケットの駆動装置を、可変速(停止を含む)で、かつ、高効率化及び軽量化が可能に構成することができる。
【0026】
そして、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路Lの作動油の圧力値の信号は、ON、OFFの接点信号から構成されるため、動力線からのノイズの影響を受けにくく、敢えて動力線とは別のケーブルにする必要はなく、コスト及び耐久性の点で優れたものとなる。
【0027】
以上、本発明のバケットの駆動装置について、ごみ処理場に設置されるバケットを例に説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものであり、また、その対象も、本実施例に記載したごみ処理場に設置されるバケットに限定されず、これ以外の用途の油圧バケットにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のバケットの駆動装置は、可変速(停止を含む)で、かつ、高効率化及び軽量化が可能であり、さらに、モータ制御装置とバケット(モータ)との間を接続する信号線に付随するノイズ等の問題点を解消することができることから、ダイオキシン等の有害物質の発生量を低減するために長時間の連続稼働の要請が高まっているごみ処理場に設置されるバケットの駆動装置に好適に用いることができるほか、過酷な条件下において長時間に亘って稼働する必要のあるバケットの駆動装置等に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の油圧バケットの一実施例の油圧回路図である。
【図2】同油圧バケットの動作のフローチャートである。
【図3】同油圧バケットの制御方法の例を示す説明図である。
【図4】同油圧バケットの制御方法の例を示す説明図である。
【図5】従来の油圧バケットの制御方法の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 バケットシリンダ
2 電磁切換弁
3 油圧ポンプ
4 DCブラシレスモータ(磁石モータ)
5 オイルタンク
6 圧力計
7 モータ制御装置
8 電流センサ
9 圧力センサ
10 リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケットの開閉動作を、バケットに搭載した磁石モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにしたバケットの駆動装置であって、クレーンのクラブ上にモータ制御装置を設置するとともに、該モータ制御装置とバケットとの間をケーブルで接続し、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号を前記モータ制御装置に導入してモータ制御装置に予め設定した回転数パターンによってモータの回転数を制御し、前記バケットシリンダを操作するようにしたことを特徴とするバケットの駆動装置。
【請求項2】
油圧回路の作動油の圧力値を、油圧回路に設けた圧力センサにより検出するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバケットの駆動装置。
【請求項3】
油圧回路の作動油の圧力値を、モータの電流値により検出するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバケットの駆動装置。
【請求項4】
バケットシリンダを操作しない場合に、モータを停止することを特徴とする請求項1、2又は3記載のバケットの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−214047(P2008−214047A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55050(P2007−55050)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】