説明

バスシステム

【課題】共通バスに接続された複数の電子機器の動作確認が短時間でできる安価なバスシステムを提供する。
【解決手段】車両ネットワークシステム1の下位ネットワークN2では、共通データ信号線43aに、電子機器33〜36と、中継コネクタユニット22と、が接続されている。各電子機器33〜36は、中継コネクタユニット22からの動作確認命令信号を受信したとき、共通データ信号線43aから所定時間にわたり電流を引き込む。各電子機器は、それぞれ同一の基準引込量の電流を引き込むように構成されている。中継コネクタユニット22は、各電子機器に対して動作確認命令信号を同報送信したのち、共通データ信号線43aから引き込まれる電流量を測定して、この電流量及び基準引込量から電子機器の応答数を算出し、この応答数及び電子機器の接続数に基づいて、各電子機器が正常に動作しているか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通バスと、共通バスに接続された複数の電子機器と、共通バスを通じて複数の電子機器と通信を行う電子制御装置と、を有するバスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図11に示される従来の車両ネットワークシステム901は、共通バス910と、複数の電子機器920と、電子制御装置930と、を有し、これら複数の電子機器920と電子制御装置930とが、共通バス910に含まれる1本の共通データ信号線910aを共有して互いに接続されている。
【0003】
複数の電子機器920は、共通データ信号線910aから電流を引き込むドライバ回路921を有しており、このドライバ回路921を用いて、電子制御装置930からの命令信号に対する応答信号を共通データ信号線910aに出力する。複数の電子機器920は、それぞれのドライバ回路921の1つが電流を引き込んだときに、共通データ信号線910aの電圧レベルが論理値「0」を示し、複数の電子機器920のいずれもが電流を引き込まないとき、論理値「1」を示すように構成されている。電子制御装置930は、共通データ信号線910aに出力された電圧レベルを検知する信号検知部931と、共通データ信号線910aを抵抗器932aを介して電源電圧Vに接続する電流供給部932と、を有している。
【0004】
複数の電子機器920は、それぞれ固有の識別情報が割り当てられており、図示しない命令受信部で電子制御装置930から送信された命令信号を受信すると、当該命令信号に含まれる識別情報が自身のものか判断して、自身のものであれば当該命令信号に対する応答信号を共通データ信号線910aに出力し、自身のものでなければ当該命令信号を破棄するように動作する。つまり、電子制御装置930をマスタ装置とし、複数の電子機器920をそれぞれスレーブ装置として、電子制御装置930が識別情報により電子機器920を指定してマスタ−スレーブ通信を行うことにより、電子制御装置930と複数の電子機器920とで共通データ信号線910aを共通に用いていた。
【0005】
このようなネットワークシステムでは、共通データ信号線を用いてマスタ−スレーブ通信を行うので、同時に複数の通信を行うことができず、そのため、例えば、システム起動時などにおいて、図12に示すように、マスタ装置は共通データ信号線に接続された複数のスレーブ装置と1つずつ順番に通信を行うことにより、スレーブ装置の動作確認を行っていた。しかしながら、このような方法では、全ての確認を終えるまでに非常に時間を要してしまい、システム起動に時間がかかってしまうなどの問題があった。そして、このような問題を解決する技術が特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されたバスシステムは、図13に示すように、マスタ装置としてのバスマスタM1〜M4がバスマスタ共有バス10に接続され、スレーブ装置としてのバススレーブS1〜S4がバススレーブ共有バス20に接続され、そして、バスマスタ共有バス10とバススレーブ共有バス20とが接続バス30で互いに接続されている。
【0007】
そして、バスマスタM1は、論理値「0」、「1」に対応して電流量0A、10μAを出力し、バスマスタM2は、論理値「0」、「1」に対応して電流量0A、20μAを出力し、バスマスタM3は、論理値「0」、「1」に対応して電流量0A、40μAを出力し、バスマスタM4は、論理値「0」、「1」に対応して電流量0A、80μAを出力するように構成されている。また、バススレーブS1〜S4についても同様に構成されている。つまり、バスマスタM1〜M4は、論理値「1」の出力時にそれぞれ異なる電流量を出力し、バススレーブS1〜S4も同様に構成されている。
【0008】
そのため、論理値「1」を出力するバススレーブS1〜S4の全ての組み合わせにおいて、出力された電流量の総和がそれぞれ異なる値になるので、バスマスタM1〜M4において、どのバススレーブから論理値「1」が出力されているかを判定することができ、これにより、共通のバスを用いて同時に複数の通信を行うことができた。そして、この技術を利用して、マスタ装置と複数のスレーブ装置との間で同時に複数の通信を行うことにより、複数のスレーブ装置の動作確認を短時間で行うことができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−148511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようなバスシステムでは、複数のスレーブ装置のそれぞれが出力する電流量が全て異なるので、スレーブ装置を共通化することが困難であり製造コストが増加してしまうという問題があった。また、出力する電流量が同一のスレーブ装置を誤って複数個組み付けてしまうとシステムが正常に動作しなくなるので、システムの組み立てを慎重に行う必要があり、そのため、製造工数などが増加して、製造コストがさらに増加してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、共通バスに接続された複数の電子機器の動作確認が短時間でできる安価なバスシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、共通バスと、前記共通バスに接続された複数の電子機器と、前記共通バスに接続され当該共通バスを通じて前記複数の電子機器と通信を行う電子制御装置と、を有するバスシステムであって、前記電子機器が、前記共通バスから電流を引き込むことにより当該共通バス上に信号を出力する信号出力手段と、前記電子制御装置から送信された動作確認命令信号を前記共通バスを通じて受信したとき、前記共通バスから所定時間にわたり電流を引き込むように前記信号出力手段を制御する動作確認応答信号制御手段と、を有し、前記複数の電子機器の前記信号出力手段が、それぞれ同一の基準引込量の電流を前記共通バスから引き込むように構成されており、前記電子制御装置が、前記共通バスに接続された前記複数の電子機器の数が記憶された接続数記憶手段と、前記複数の電子機器によって引き込まれる電流を前記共通バスを通じて供給する電流供給手段と、前記電流供給手段によって供給された供給電流量を測定する電流量測定手段と、前記共通バスを通じて前記動作確認命令信号を前記複数の電子機器に同報送信する信号送信手段と、前記信号送信手段によって前記動作確認命令信号が同報送信されたあとに前記電流量測定手段によって測定された前記供給電流量を前記基準引込量で除した値を、前記動作確認命令信号に対して応答した前記電子機器の数として算出する応答数算出手段と、前記応答数算出手段によって算出された前記電子機器の応答数と前記接続数記憶手段に記憶された前記電子機器の接続数とに基づいて、前記共通バスに接続された前記複数の電子機器が正常に動作しているか否かを判定する動作判定手段と、を有していることを特徴とするバスシステムである。
【0013】
本発明によれば、複数の電子機器が、それぞれ動作確認命令信号を受信したときに同一の基準引込量の電流を共通バスから引き込むように構成されているので、共通バスから引き込まれる電流量は、共通バスから電流を引き込む動作を行っている電子機器、つまり、動作確認命令信号に正常に応答した電子機器の数(即ち、応答数)に基準引込量を乗じた値となる。また、電子制御装置が、複数の電子機器に対して動作確認命令信号を同報送信するとともに、この同報送信の後に共通バスに供給している電流量、つまり、電子機器によって共通バスから引き込まれる電流量を測定する。そして、電子制御装置が、測定した電流量を基準引込量で除して電子機器の応答数を算出し、この応答数と予め記憶された共通バスに接続された電子機器の接続数とに基づいて、複数の電子機器が正常に動作しているか否かを判定する。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明によれば、電子制御装置から動作確認命令信号を同報送信して、そのあとに、この動作確認命令信号に応答した複数の電子機器によって共通バスから引き込まれている電流量を測定し、この測定した電流量を上記基準引込量で除することによって正常に応答した電子機器の応答数を算出して、この応答数と予め記憶された電子機器の接続数とに基づいて、複数の電子機器が正常に動作しているか否かを判定するので、複数の電子機器の応答を一時に受けて複数の電子機器の動作確認を行うことができ、そのため、動作確認命令信号とその応答、即ち、1回の通信のみで複数の電子機器全ての動作確認を行うことができ、短時間で動作確認をすることができる。また、複数の電子機器が、共通バスから同一の基準引込量の電流を引き込み可能に構成されているので、電子機器の共通化を図ることができるとともに容易に組み立てることができ、製造コストを低減してシステムを安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のバスシステムの一実施形態である下位ネットワークを含む車両ネットワークシステムの概略構成図の一例である。
【図2】図1の車両ネットワークシステムが備える主制御装置の概略構成図である。
【図3】図1の車両ネットワークシステムが備える中継コネクタユニットの概略構成図である。
【図4】図1の車両ネットワークシステムが備える電子機器の概略構成図である。
【図5】図1の車両ネットワークに含まれる下位ネットワークの構成を説明する図である。
【図6】図5の下位ネットワークの電子機器が有する電流源の回路の一例を示す図である。
【図7】図5の下位ネットワークの動作の一例(全ての電子機器が正常)を説明するシーケンス図である。
【図8】図7の動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】図5の下位ネットワークの動作の他の一例(1つの電子機器に不具合あり)を説明するシーケンス図である。
【図10】図9の動作を説明するタイミングチャートである。
【図11】従来の車両ネットワークシステムの概略構成図である。
【図12】図11の車両ネットワークシステムの動作を説明するタイミングチャートである。
【図13】従来の他の車両ネットワークシステムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のバスシステムの一実施形態である下位ネットワークを含む車両ネットワークシステムを、図1〜図10を参照して説明する。
【0017】
自動車などの車両には、ヘッドライト、デフォッガ、エアコン、パワーウィンドウなどの電子機器が搭載され、これら電子機器は、ワイヤハーネスを介して主制御装置に接続されるとともにこの主制御装置によって制御される。これら電子機器や主制御装置は、車両ネットワークシステムを構成している。そして、これら電子機器毎に専用の接続回路(即ち、電線)を設けた構成にすると、主制御装置によって制御される電子機器が増えるに従い、主制御装置と電子機器とを接続するワイヤハーネスの回路数(即ち、電線数)が増加してしまう。
【0018】
そのため、本実施形態の車両ネットワークシステムでは、主制御装置と電子機器との間に補助的な電子制御装置としての中継コネクタユニットを設けて、この中継コネクタユニットによって制御信号(即ち、各種命令信号、応答信号)を中継することにより、間接的に電子機器を制御している。中継コネクタユニットにより電子機器を機能毎にまとめて下位ネットワークN1、N2を構成するとともに、主制御装置と中継コネクタユニットとで上位ネットワークを構成している。
【0019】
本実施形態の車両ネットワークシステム1は、図1に示すように、主制御装置11と、電子制御装置としての複数の中継コネクタユニット21、22と、複数の電子機器31〜36と、を有している。車両ネットワークシステム1は、さらに、主制御装置11と中継コネクタユニット21、22とを接続する通信回線としてのワイヤハーネスからなる上位ネットワーク回線41と、各中継コネクタユニット21、22とこれらに制御される電子機器31〜36とを接続する共通バスとしてのワイヤハーネスからなる下位ネットワーク回線42、43と、を有している。
【0020】
主制御装置11は、図2に示すように、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロプロセッサ(MPU)10と、外部接続部15と、を有している。このMPU10は、車両ネットワークシステム1全体の制御を司る。このMPU10は、図2に示すように、予め定められたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)10a、CPU10aのための処理プログラムや各種情報等を格納した読み出し専用のメモリであるROM10b、各種のデータを格納するとともにCPU10aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM10c等を有して構成している。
【0021】
外部接続部15は、通信用モジュールなどで構成されており、MPU10と上位ネットワーク回線41とを接続する外部インタフェース部として機能する。この外部接続部15は、上位ネットワーク回線41を介して、中継コネクタユニット21、22との間で周知のCAN(Controller Area Network)プロトコルを用いた通信(CAN通信)が可能なように構成されている。勿論、CAN以外のプロトコルを用いて通信を行っても良い。
【0022】
中継コネクタユニット21は、図示しないコネクタハウジングと、該コネクタハウジングに収容され、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロプロセッサ(MPU)20と、上位接続部25と、下位接続部26と、を有している。このMPU20は、中継コネクタユニット21全体の制御を司る。このMPU20は、図3に示すように、主制御装置11のMPU10と同様に、CPU20a、ROM20b、RAM20c等を有している。なお、中継コネクタユニット21での処理は、主制御装置11での処理より簡易なものであるので、中継コネクタユニット21のMPU20は、主制御装置11のMPU10より低機能で安価なものを用いており、これにより、車両ネットワークシステム1全体の製造コストの低減を図っている。
【0023】
上位接続部25は、通信用モジュールなどで構成されており、MPU20と上位ネットワーク回線41とを接続する外部インタフェース部として機能する。この上位接続部25は、上位ネットワーク回線41を介して、主制御装置11との間でCAN通信等が可能なように構成されている。
【0024】
下位接続部26は、通信用モジュールなどで構成されており、MPU20と下位ネットワーク回線42とを接続する外部インタフェース部として機能する。この下位接続部26は、下位ネットワーク回線42を介して、電子機器31、32との間で所定のマスタ−スレーブ通信が可能なように構成されている。
【0025】
中継コネクタユニット21は、例えば、主制御装置11から上位接続部25を通じて所定の命令信号を受信すると、当該命令信号を中継するとともに、当該命令信号に送信先となる電子機器の識別情報、又は、同報送信であることを示す識別情報を含めて、各電子機器31、32に対して下位接続部26を通じて当該命令信号を送信し、また、各電子機器31、32から下位接続部26を通じて上記命令信号に対する応答信号を受信すると、当該応答信号を中継して、主制御装置11に対して上位接続部25を通じて当該応答信号を送信する、などの動作を行う。
【0026】
中継コネクタユニット22は、上述した中継コネクタユニット21と同一に構成されており、図示しないコネクタハウジングと、該コネクタハウジングに収容され、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロプロセッサ(MPU)20と、上位接続部25と、下位接続部26と、を有している。また、上位接続部25及び下位接続部26は、上述した中継コネクタユニット21と同様に、上位ネットワーク回線41及び下位ネットワーク回線43に接続されている。中継コネクタユニット22の下位接続部26は、下位ネットワーク回線43を介して、電子機器33〜36との間で所定のマスタ−スレーブ通信が可能なように構成されている。中継コネクタユニット22は、上述した中継コネクタユニット21と同様に、各種命令信号、応答信号を中継する動作などを行う。
【0027】
複数の電子機器31〜36は、車両に搭載される周知のヘッドライト(電子機器31)、デフォッガ(電子機器32)、パワーウィンドウ(電子機器33〜36)である。勿論、これらに限定されるものではなく、他の種類の電子機器であってもよい。図4に電子機器31の概略構成を示す。
【0028】
電子機器31は、図示しないコネクタハウジングと、該コネクタハウジングに収容され、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロプロセッサ(MPU)30と、回線接続部37と、駆動部38と、コネクタハウジングとは別体に設けられ、コネクタハウジング内のMPU30にリード線などを介して接続された負荷部39と、を有している。このMPU30は、電子機器31全体の制御を司る。このMPU30は、図4に示すように、中継コネクタユニット21のMPU20と同様に、CPU30a、ROM30b、RAM30c、を有している。
【0029】
回線接続部37は、通信用モジュールなどで構成されており、MPU30と下位ネットワーク回線42とを接続する外部インタフェース部として機能する。この回線接続部37は、下位ネットワーク回線42を介して、中継コネクタユニット21との間で所定のマスタ−スレーブ通信が可能なように構成されている。
【0030】
駆動部38は、負荷部を駆動するための駆動信号を出力するドライバ回路などで構成され、MPU30と負荷部39とを接続する外部インタフェース部として機能する。この駆動部38は、リード線を介して負荷部39に接続される。
【0031】
負荷部39は、例えば、ライト点灯スイッチや電熱線スイッチを構成するリレー、モータを駆動するためのパワーMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)など負荷駆動回路と、この負荷駆動回路によって駆動されるライトや電熱線、モータなどの各電子機器に固有の負荷と、を有している。
【0032】
他の電子機器32〜36についても、この電子機器31と同様の構成を備えており、それぞれ、中継コネクタユニット21、22に下位ネットワーク回線42、43を介して接続されている。
【0033】
複数の電子機器31〜36は、各下位ネットワークN1、N2において、それぞれ固有の識別情報が割り当てられており、中継コネクタユニット21、22から下位ネットワーク回線42、43を通じて送信された命令信号を受信すると、当該命令信号に含まれる識別情報が自身のものか判断して、自身のものであれば自身宛であるとして当該命令信号に基づいて駆動部38を通じて負荷部39を駆動するとともに応答信号を下位ネットワーク回線42、43に出力し、自身のものでなければ当該命令信号を破棄するように動作する。
【0034】
電子機器31〜36は、主制御装置11から中継コネクタユニット21、22を経由して送られる命令信号に基づいて、例えば、ライトの点灯、消灯や、電熱線への通電、遮断、モータ回転などの動作を行い、動作結果や機器の状態を示す応答信号を中継コネクタユニット21、22を経由して主制御装置11に送り返す。
【0035】
また、複数の電子機器31〜36は、下位ネットワーク回線42、43を通じて受信した命令信号に含まれる識別情報が同報送信を示すものであるとき、当該命令信号を自身宛のものとして取り込むとともに当該命令信号に基づいた動作を行い、特に、同報送信として受信した命令信号が所定の動作確認命令信号であったとき、この動作確認要求信号に対して後述する動作確認応答信号を出力するように動作する。
【0036】
次に、下位ネットワーク回線43と、電子機器33〜36と、中継コネクタユニット22と、によって構成されるバスシステムとしての下位ネットワークN2の機能ブロックの構成について、図5、図6を参照して具体的に説明する。
【0037】
下位ネットワーク回線43には1本の共通データ信号線43aが含まれており、中継コネクタユニット22と電子機器33〜36とが共通データ信号線43aを共有して互いに接続されている。中継コネクタユニット22と電子機器33〜36とは、共通データ信号線43aを用いて互いにシリアル通信を行い、論理信号としての上述した命令信号及び応答信号の送受信を行う。また、電子機器33〜36と中継コネクタユニット22とは、図示しない車両電源から供給される電源電圧Vccにより動作する。
【0038】
中継コネクタユニット22は、所定の動作を命令する命令信号を共通データ信号線43aを通じて電子機器33〜36に送信し、電子機器33〜36は、命令信号に対する応答信号を共通データ信号線43aを通じて中継コネクタユニット22に送信する。
【0039】
中継コネクタユニット22は、図5に示すように、制御部22aと、信号出力部22bと、信号入力部22cと、電流供給部22dと、電流量測定部22eと、測定値入力部22fと、を有している。制御部22aは、上述したMPU20で構成され、信号出力部22b、信号入力部22c、電流供給部22d、電流量測定部22e、及び、測定値入力部22fは、上述した下位接続部26で構成されている。
【0040】
制御部22aは、主制御装置11からの命令信号を中継して、信号出力部22bを通じて共通データ信号線43aに当該命令信号を出力する。また、制御部22aは、信号入力部22cを通じて共通データ信号線43a上の応答信号を入力する。制御部22aは当該応答信号に応じた処理、例えば、応答信号が、上記命令信号に応じて電子機器が正常に負荷部を駆動したことを示すものであれば当該正常動作結果を主制御装置11に通知するなどの所定処理を行い、又は、応答信号が、負荷部の駆動において異常が生じたことを示すものであれば、当該異常発生を主制御装置11に通知したり、直前に送信した命令信号を再送したりする。
【0041】
電流供給部22dは、図示しない電源から共通データ信号線43aを介して各電子機器33〜36に電流を供給する。電流供給部22dは、図示しない電源と共通データ信号線43aとを接続する抵抗器を備えている。電流量測定部22eは、電流供給部22dから共通データ信号線43aに供給される電流量を測定する。電流量測定部22eは、例えば、電流供給部22dと共通データ信号線43aとを接続する配線に直列に挿入された電流検知抵抗器と、当該電流検知抵抗器の両端の電位差を増幅するオペアンプと、で構成されている。電流供給部22dから共通データ信号線43aに電流が供給されると、電流検知抵抗器に電流が流れてその両端に電位差が生じ、この電位差がオペアンプによって増幅されて、電流供給部22dから供給される電流量に応じた電圧が出力される。つまり、電流量測定部22eは、電流供給部22dから供給される電流量を測定して、当該電流量に応じた大きさのアナログ電圧を出力する。測定値入力部22fは、周知のアナログ−デジタル変換器で構成されており、電流量測定部22eからのアナログ電圧を、上記電流量を示すデジタル値に変換して制御部22aに入力する。
【0042】
また、制御部22aは、主制御装置11から所定の動作確認命令信号を受信すると、共通データ信号線43aに当該動作確認命令信号を同報送信として出力し、そのあとに上記デジタル値を、電流供給部22dから共通データ信号線43aに供給される電流量として取得する。そして、制御部22aは、当該電流量を後述する各電子機器33〜36の基準引込量で除した値を、上記動作確認命令信号に応答した電子機器の数(応答数)として算出する。そして、制御部22aは、この電子機器の応答数と、予めROM20bに記憶された、下位ネットワーク回線43(即ち、共通データ信号線43a)に接続されている複数の電子機器33〜36の数(即ち、接続数)とを比較する。そして、応答数と接続数とが一致したとき、共通データ信号線43aに接続された複数の電子機器33〜36の全てが正常に動作しているものと判定し、または、応答数と接続数とが不一致のとき、複数の電子機器33〜36のいずれかが正常に動作していないものと判定し、その後、これら判定に応じた動作を行う。
【0043】
電子機器33は、制御部33aと、信号入力部33bと、信号出力部33cと、を有している。制御部33aは、上述した電子機器33のMPU30で構成され、信号入力部33bと信号出力部33cとは、上述した回線接続部37で構成されている。
【0044】
信号入力部33bは、共通データ信号線43a上の命令信号を検知するとともに、検知した命令信号が自身宛であれば、当該命令信号を制御部33aに出力する。制御部33aは、当該命令信号に応じて負荷部39の駆動等の処理を行うとともに、信号出力部33cを制御して、上記処理結果を示す応答信号を共通データ信号線43aに出力する。
【0045】
信号出力部33cには、例えば、図6に示すような、帰還型のVBE依存型電流源回路で構成された電流源33dが設けられている。図6から判るように、NPN型のトランジスタQ2に流れる電流は、NPN型のトランジスタQ1のベースに流れる電流が非常に小さく無視できるので、抵抗R2に流れる電流に等しく、そのため、この電流源回路の出力電流Ioutは、Iout=VBE/R2となる。
【0046】
また、図6のトランジスタQ2のコレクタ端子は、共通データ信号線43aに接続されている。また、電流源33dにおける電源電圧Vccとの接続線にはスイッチ素子として機能するPNP型のトランジスタQ3が設けられており、このトランジスタQ3のベース端子には、制御部33aが接続されている。制御部33aが、このトランジスタQ3のコレクタ−エミッタ間が通電されるようにベース端子に信号を入力することで、共通データ信号線43aから上記出力電流Ioutが引き込まれ(即ち、ON)、共通データ信号線43aの電圧レベルが論理値「0」を示す値となり、又は、このトランジスタのコレクタ−エミッタ間が遮断されるようにベース端子に信号を入力することで、共通データ信号線43aからの電流の引き込みが停止され(即ち、OFF)、共通データ信号線43aの電圧レベルが論理値「1」を示す値となる。制御部33aは、電流源33dを制御して共通データ信号線43aから論理値に応じた量の電流を引き込むことにより共通データ信号線43aの電圧レベルを変化させて応答信号を共通データ信号線43aに出力する。
【0047】
電子機器33は、信号入力部33bによって検知された命令信号が上述した動作確認命令信号であると、制御部33aが、共通データ信号線43aから所定時間にわたって電流を引き込むように信号出力部33cを制御する、即ち、所定時間にわたって論理値「0」となる動作確認応答信号を出力する。
【0048】
電子機器34〜36についても、上記電子機器33と同様に、制御部34a〜36aと、信号入力部34b〜36bと、信号出力部34c〜36cと、を有して構成されており、信号出力部34c〜36cには、電流源34d〜36dが設けられている。
【0049】
電流源33d〜36dによって引き込まれる出力電流Ioutは、それぞれ同一の基準引込量に設定されている。また、各電子機器33〜36は、それぞれの動作確認応答信号を出力する期間が互いに重なるように、上記動作確認命令信号を受信した後、一定のタイミング(例えば、上記動作確認命令信号を受信してから0.1秒経過するまでの間)で動作確認応答信号を出力するように構成されている。
【0050】
次に、上述した下位ネットワークN2における本発明に係る動作(作用)について、図5〜図10を参照して説明する。
【0051】
まず、下位ネットワークN2の構成の一例を説明すると、電流供給部22dは、5kΩの抵抗器を備えており、共通データ信号線43aがこの抵抗器を通じて12Vの直流電源に接続されている。また、各電子機器33〜36(図中、電子機器(1)〜(4)で示し、これらの動作又は信号にはそれぞれ(1)〜(4)を付して対応を表す)の電流源33d〜36dは、共通データ信号線43aに論理値「0」を出力するときにそれぞれ基準引込量0.5mAの電流を引き込むように構成されている。表1に、各電子機器33〜36の出力状態(即ち、電流引き込みOFF/ON)、共通データ信号線43aの電流値Ibus(即ち、電流供給部22dによって供給される電流量)及び共通データ信号線43aの電圧値Vbus、並びに、共通データ信号線43aの示す論理値の関係の一例を示す。なお、表1に示される数値はあくまで一例であり、電流供給部22dの中の抵抗器の値や基準引込量の値は装置構成などに応じて適宜設定されるので、これら数値に限定されるものではない。
【0052】
【表1】

【0053】
複数の電子機器33〜36が正常である場合の動作の一例を、図7、図8を参照して説明する。
【0054】
車両のイグニッションスイッチがオンされると、上述した車両ネットワークシステム1に電源が投入されて、主制御装置11、中継コネクタユニット22、電子機器33〜36が起動する。そして、初期化処理において、主制御装置11は、上位ネットワーク回線41を通じて中継コネクタユニット22に動作確認命令信号を送信する(S11)。
【0055】
そして、中継コネクタユニット22は、上記動作確認命令信号を受信すると、この動作確認命令信号に同報送信を示す識別情報を含めて、共通データ信号線43aに出力する(T11)。
【0056】
そして、電子機器33〜36は、それぞれ正常に動作しているので、共通データ信号線43a上の動作確認命令信号を検知すると、これに対して動作確認応答信号を出力する(U11(1)〜(4))。
【0057】
そして、中継コネクタユニット22は、上記動作確認命令信号を出力した時点から所定の監視時間経過するまで、共通データ信号線43aに供給される電流量を監視し、当該電流量の最大値を供給電流量として取得する(T12)。そして、この供給電流量を、上記基準引込量で除して、上記動作確認命令信号に応答した電子機器の数(応答数)を算出する(T13)。このとき、応答数として「4」が算出される。そして、この応答数と下位ネットワーク回線43に接続されている複数の電子機器33〜36の数(即ち、接続数)とを比較すると、これらが一致するので(T14)、各電子機器33〜36が正常であることを示す動作確認応答信号を主制御装置11に送信する(T15)。
【0058】
そして、主制御装置11は、上記動作確認応答信号を受信すると、各電子機器33〜36が正常であるものとして、次の所定処理を実行する(S20)。
【0059】
上記動作時の波形を図8に示す。図8に示すように、各電子機器33〜36によって電流が引き込まれることにより、共通データ信号線43aの供給電流量が基準引込量の4倍になり、この倍数は、電子機器33〜36の接続数と一致する。これにより、電子機器33〜36が正常に動作していることが確認できる。
【0060】
次に、複数の電子機器33〜36のうち、電子機器33〜35が正常で且つ電子機器36に不具合がある場合の動作の一例を、図9、図10を参照して説明する。なお、図9のステップS11、T11については、図7と同一であるので、説明を省略する。
【0061】
電子機器33〜35は、それぞれ正常に動作しているので、共通データ信号線43a上の動作確認命令信号を検知すると、これに対して動作確認応答信号を出力する(U11(1)〜(3))。また、このとき、電子機器36は、不具合があるので、動作確認応答信号を出力しない。
【0062】
そして、中継コネクタユニット22は、上記動作確認命令信号を出力した時点から所定の監視時間経過するまで、共通データ信号線43aに供給される電流量を監視し、当該電流量の最大値を供給電流量として取得する(T12)。そして、この供給電流量を、上記基準引込量で除して、上記動作確認命令信号に応答した電子機器の数(応答数)を算出する(T13)。このとき、応答数として「3」が算出される。そして、この応答数と下位ネットワーク回線43に接続されている複数の電子機器33〜36の数(即ち、接続数)とを比較すると、これらが一致しないので(T16)、各電子機器33〜36のいずれかが異常であることを示す動作確認応答信号を主制御装置11に送信する(T17)。
【0063】
そして、主制御装置11は、上記動作確認応答信号を受信すると、各電子機器33〜36のいずれかが異常であるものとして、警告処理を実行する(S21)。
【0064】
上記動作時の波形を図10に示す。図10に示すように、各電子機器33〜35によって電流が引き込まれ、且つ、電子機器36によって電流が引き込まれないと、共通データ信号線43aの供給電流量が基準引込量の3倍になり、この倍数は、電子機器33〜36の接続数と一致しない。これにより、電子機器33〜36のいずれかが正常に動作していないことが確認できる。
【0065】
なお、下位ネットワークN1についても、上記と同様の構成であり、同様の動作を行う。
【0066】
以上より、本実施形態によれば、複数の電子機器33〜36が、それぞれ動作確認命令信号を受信したときに同一の基準引込量の電流を共通データ信号線43aから引き込むように構成されているので、共通データ信号線43aから引き込まれる電流量は、共通データ信号線43aから電流を引き込む動作を行っている電子機器、つまり、動作確認命令信号に正常に応答した電子機器の数(即ち、応答数)に基準引込量を乗じた値となる。また、中継コネクタユニット22が、複数の電子機器33〜36に対して動作確認命令信号を同報送信するとともに、この同報送信の後に共通データ信号線43aに供給している電流量、つまり、電子機器によって共通データ信号線43aから引き込まれる電流量を測定する。そして、中継コネクタユニット22が、測定した電流量を基準引込量で除して電子機器33〜36の応答数を算出し、この応答数と予め記憶された共通データ信号線43aに接続された電子機器33〜36の接続数とに基づいて、複数の電子機器33〜36が正常に動作しているか否かを判定する。
【0067】
即ち、中継コネクタユニット22から動作確認命令信号を同報送信して、そのあとに、この動作確認命令信号に応答した複数の電子機器33〜36によって共通データ信号線43aから引き込まれている電流量を測定し、この測定した電流量を上記基準引込量で除することによって正常に応答した電子機器33〜36の応答数を算出して、この応答数と予め記憶された電子機器33〜36の接続数とに基づいて、複数の電子機器33〜36が正常に動作しているか否かを判定するので、複数の電子機器33〜36の応答を一時に受けて複数の電子機器33〜36の動作確認を行うことができ、そのため、動作確認命令信号とその応答、即ち、1回の通信のみで複数の電子機器33〜36全ての動作確認を行うことができ、短時間で動作確認をすることができる。また、複数の電子機器33〜36が、共通データ信号線43aから同一の基準引込量の電流を引き込み可能に構成されているので、電子機器33〜36の共通化を図ることができるとともに容易に組み立てることができ、製造コストを低減して車両用ネットワークシステム1を安価に提供できる。
【0068】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 車両用ネットワークシステム
11 主制御装置
20 中継コネクタユニットのMPU
20a 中継コネクタユニットのCPU(信号送信手段、応答数算出手段、動作判定手段)
20b 中継コネクタユニットのROM(接続数記憶手段)
21、22 中継コネクタユニット(電子制御装置)
25 上位接続部
26 下位接続部(電流供給手段、電流量測定手段)
31〜36 電子機器
30 電子機器のMPU
30a 電子機器のCPU(動作確認応答信号制御手段)
37 回線接続部(信号出力手段)
31d〜36d 電流源
41 上位ネットワーク回線
42、43 下位ネットワーク回線
43a 共通データ信号線(共通バス)
N1、N2 下位ネットワーク(バスシステム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通バスと、前記共通バスに接続された複数の電子機器と、前記共通バスに接続され当該共通バスを通じて前記複数の電子機器と通信を行う電子制御装置と、を有するバスシステムであって、
前記電子機器が、
前記共通バスから電流を引き込むことにより当該共通バス上に信号を出力する信号出力手段と、
前記電子制御装置から送信された動作確認命令信号を前記共通バスを通じて受信したとき、前記共通バスから所定時間にわたり電流を引き込むように前記信号出力手段を制御する動作確認応答信号制御手段と、を有し、
前記複数の電子機器の前記信号出力手段が、それぞれ同一の基準引込量の電流を前記共通バスから引き込むように構成されており、
前記電子制御装置が、
前記共通バスに接続された前記複数の電子機器の数が記憶された接続数記憶手段と、
前記複数の電子機器によって引き込まれる電流を前記共通バスを通じて供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段によって供給された供給電流量を測定する電流量測定手段と、
前記共通バスを通じて前記動作確認命令信号を前記複数の電子機器に同報送信する信号送信手段と、
前記信号送信手段によって前記動作確認命令信号が同報送信されたあとに前記電流量測定手段によって測定された前記供給電流量を前記基準引込量で除した値を、前記動作確認命令信号に対して応答した前記電子機器の数として算出する応答数算出手段と、
前記応答数算出手段によって算出された前記電子機器の応答数と前記接続数記憶手段に記憶された前記電子機器の接続数とに基づいて、前記共通バスに接続された前記複数の電子機器が正常に動作しているか否かを判定する動作判定手段と、
を有している
ことを特徴とするバスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−235189(P2012−235189A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100548(P2011−100548)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】