説明

バス乗車誘導システムおよびバス乗車誘導方法

【課題】同一経路を運行する路線バスの混み具合をなるべく同程度のものとして車内の混雑を軽減・解消するとともに、乗客のバスの降り降りに要する時間の低減化を図る等によりタイムテーブルどおりの運行を可能とすること。
【解決手段】路線バスに搭載され当該路線バスの乗客数を管理可能な車載装置100と、路線バスの運行管理センタに設けられたセンタ装置200と、バス路線の停留所毎や路線バス内に設置された乗車状況提示装置300とによりシステム構成する。路線バスに搭載された車載装置100により、自車の速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に自車のID情報を付して路線バス情報を生成し、バス路線の停留所毎に設置された乗車状況提示装置300が、路線バス情報を後続路線バス情報と比較して、後続路線バスの乗車率が路線バスの乗車率を下回っている場合に後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス乗車誘導のためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、バス停の路線経路内を走行予定の路線バスのうちから、より低い乗車率の路線バスへの乗車を促すシステムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路線バスを利用する客は、目的地に運行が予定されている路線バスをバス停留所において待ち、乗客数が多すぎて乗り切れないといったような場合以外は、最初に到着したバスに乗るのが通常である。
【0003】
しかし、実際には、目的地までの同一経路を運行する次のバスは比較的空いており、1本多く待てば混雑したバスに乗らずに済むといったケースは頻繁に生じている。また、既に混雑した路線バスに乗車してしまっている客であっても、一旦その路線バスを降りて後続の比較的空いている路線バスに乗り換えてしまうほうが好ましいという場合もあり得る。さらに、路線バスを運行する側からすると、特に、利用客が集中し易い時間帯において、後続のバスは比較的空いているにも係わらず先行するバスに乗客が集中してしまう結果、降り乗りに時間がかかってしまう等の理由からタイムテーブルどおりの運行が困難となってしまう。
【0004】
このような事態が生じる背景には、バス停で待つ客は、運行時刻表以外の情報を提供されておらず、乗車を予定している路線バスと後続の路線バスの混み具合については知る術がないという事情がある。また、路線バス内の乗客においても、自らが乗車しているバス内の混み具合は分かるが、後続の路線バスの混み具合等については知る術がない。つまり、待客や乗客は、後続のバスが到着する予定時刻は時刻表等で確認できても、そのバスがどの程度の混み具合であるのかについての情報は入手する術がないため、目的地に最も早く到着できるバスを結果的に選択することとなるのである。そして、バス停の待客や乗客は同様の選択をする傾向にあるから、結果的に、当該バス停の運行経路内を走行する特定の路線バスだけが混雑し、その後続の路線バスは比較的空いているといった現象が生じてしまうのである。
【0005】
このような事情も背景となり、「停留所において、次に到着するバスの乗車率を表示できる路線バスの停留所案内システムを提供することを目的」とした路線バスの停留所案内システムも提案されている(特開平9−153196号公報:特許文献1)が、当該停留所案内システムにおいて解決されるのは「次に到着するバスの運行位置あるいは到着時間が知らされても、そのバスが満員でかつ、その停留所で降りる乗客もいない時にはバスは素通りしてしまうことがあり、その場合、停留所で待っていた利用客は不快感をおぼえる。」といった問題にとどまり、同一経路を運行する路線バスの混み具合をなるべく同程度のものとすることや、乗客のバスの降り降りに要する時間の低減化を図る等によりタイムテーブルどおりの運行を可能とすることまでをも解決するには至らない。
【特許文献1】特開平9−153196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、同一経路を運行する路線バスの混み具合をなるべく同程度のものとして、車内の混雑を軽減・解消するとともに、乗客のバスの降り降りに要する時間の低減化を図る等によりタイムテーブルどおりの運行を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明のバス乗車誘導システムは、路線バスに搭載された当該路線バスの乗客数を管理可能な車載装置と、前記路線バスの運行管理センタに設けられたセンタ装置と、バス路線の停留所毎または路線バス内の乗客の少なくとも一方に設置された乗車状況提示装置とにより構成されたバス乗車誘導システムであって、前記車載装置は;自車のIDを管理するID管理部と、自車の速度情報を管理する速度情報管理部と、自車の走行地点情報を管理する位置情報管理部と、自車の乗客数から乗車率を算出する乗車率算出部と、自車の速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に自車のID情報を付して路線バス情報として前記センタ装置に通信網を介して送信するバス通信部とを備え、前記センタ装置は;前記車載装置からの路線バス情報を受信すると共に該路線バス情報を前記通信網を介して前記乗車状況提示装置に送信するセンタ通信部を備え、前記乗車状況提示装置は;前記センタ通信部から前記路線バス情報を受信する受信部と、前記路線バス情報が前記バス停の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定する判定部と、前記路線バス情報が前記路線経路内を走行予定の路線バスのものであると判定された場合に、前記路線バス情報を前記路線バスの次に停車予定の後続路線バスの路線バス情報である後続路線バス情報と比較して、前記後続路線バスの乗車率が前記路線バスの乗車率を下回っている場合に前記後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成するデータ処理部と、前記乗車バス推奨情報を提示する提示部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明のバス乗車誘導システムにおいて、前記データ処理部は、前記後続路線バスの到着予定時間(t)と前記路線バスの到着予定時間(t)を算出し、前記後続路線バスに乗車した場合の待ち時間(Δt=t−t)が所定の時間内である場合に前記乗車バス推奨情報を生成するように構成してもよい。
【0009】
また、本発明のバス乗車誘導システムにおいて、前記乗車率算出部は;前記路線バスに設けられた空気圧センサで検知したタイヤ空気圧のデータを格納する空気圧記憶部と、タイヤ空気圧の変化量を乗客数の増減に変換するデータを格納した変換データ記憶部と、運行時のタイヤ空気圧と空車時のタイヤ空気圧との差分から乗車率を算出する演算部と、を備える構成としてもよい。
【0010】
本発明のバス乗車誘導システムは、路線バスに搭載された車載装置により、自車の速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に自車のID情報を付して路線バス情報を生成し、バス路線の停留所毎または路線バス内の乗客の少なくとも一方に設置された乗車状況提示装置が、路線バス情報を後続路線バス情報と比較して、後続路線バスの乗車率が路線バスの乗車率を下回っている場合に後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成させる構成としたので、同一経路を運行する路線バスの混み具合をなるべく同程度のものとして、車内の混雑を軽減・解消するとともに、乗客のバスの降り降りに要する時間の低減化を図る等によりタイムテーブルどおりの運行を可能とするという効果を奏する。
【0011】
本発明のバス乗車誘導方法は、バス路線内の停留所でバス待ちをする客または路線バス内の乗客の少なくとも一方に混み具合の少ない路線バスの到着予定を知らせてバス乗車を誘導する方法であって、路線バスのそれぞれについて、速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に該路線バスのID情報を付して路線バス情報として生成するステップと、前記路線バス情報が前記停留所の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定するステップと、前記路線バス情報が前記路線経路内を走行予定の路線バスのものであると判定された場合に、前記路線バス情報を前記路線バスの次に停車予定の後続路線バスの路線バス情報である後続路線バス情報と比較するステップと、前記後続路線バスの乗車率が前記路線バスの乗車率を下回っている場合に前記後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成して提示するステップと、を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明のバス乗車誘導方法において、前記乗車バス推奨情報を生成して提示するステップは、前記後続路線バスの到着予定時間(t)と前記路線バスの到着予定時間(t)を算出し、前記後続路線バスに乗車した場合の待ち時間(Δt=t−t)が所定の時間内である場合に前記乗車バス推奨情報を生成するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明のバス乗車誘導方法において、前記路線バス情報に含まれる乗車率情報を、運行時のタイヤ空気圧と空車時のタイヤ空気圧との差分から算出するようにしてもよい。
【0014】
本発明のバス乗車誘導方法は、路線バスのそれぞれについて、速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報にID情報を付して路線バス情報を生成し、当該路線バス情報を後続路線バス情報と比較して、後続路線バスの乗車率が路線バスの乗車率を下回っている場合に後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成する構成としたので、同一経路を運行する路線バスの混み具合をなるべく同程度のものとして、車内の混雑を軽減・解消するとともに、乗客のバスの降り降りに要する時間の低減化を図る等によりタイムテーブルどおりの運行を可能とするという効果を奏する。
【0015】
本発明のバス乗車誘導プログラムは、バス路線内の停留所でバス待ちをする客または路線バス内の乗客の少なくとも一方に混み具合の少ない路線バスの到着予定を知らせてバス乗車を誘導するためのプログラムであって、コンピュータに、路線バスのそれぞれについて生成された、速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に該路線バスのID情報が付された路線バス情報を受信して、該路線バス情報が前記停留所の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定する処理と、前記路線バス情報が前記路線経路内を走行予定の路線バスのものであると判定された場合に、前記路線バス情報を前記路線バスの次に停車予定の後続路線バスの路線バス情報である後続路線バス情報と比較する処理と、前記後続路線バスの乗車率が前記路線バスの乗車率を下回っている場合に前記後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成して提示する処理と、を実行させることを特徴とする。
【0016】
本発明のバス乗車誘導プログラムにおいて、前記乗車バス推奨情報を生成して提示する処理は、前記後続路線バスの到着予定時間(t)と前記路線バスの到着予定時間(t)を算出し、前記後続路線バスに乗車した場合の待ち時間(Δt=t−t)が所定の時間内である場合に前記乗車バス推奨情報を生成するようにしてもよい。
【0017】
本発明のバス乗車誘導プログラムは、路線バスのそれぞれについて生成された、速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報にID情報が付された路線バス情報を、後続路線バス情報と比較して、後続路線バスの乗車率が路線バスの乗車率を下回っている場合に後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成する処理をコンピュータに実行させる構成としたので、同一経路を運行する路線バスの混み具合をなるべく同程度のものとして、車内の混雑を軽減・解消するとともに、乗客のバスの降り降りに要する時間の低減化を図る等によりタイムテーブルどおりの運行を可能とするという効果を奏する。
【発明の効果】
【0018】
上述したように、本発明によれば、従来は、路線バスの待ち客や乗客に提示されることがなかった乗車バス推奨情報が提示可能となるため、同一経路を運行する路線バスの混み具合をなるべく同程度のものとすることができ、車内の混雑を軽減・解消するとともに、乗客のバスの降り降りに要する時間の低減化を図る等によりタイムテーブルどおりの運行が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明においては、乗車状況提示装置はバス停にのみ設けられている態様として説明するが、同様の装置を路線バス内にも設ける態様としてもよい。路線バス内に乗車状況提示装置を設置しておけば、既に混雑した路線バスに乗車してしまっている客であっても、一旦その路線バスを降りて後続の比較的空いている路線バスに乗り換えてしまうということが可能となる。なお、当該乗車状況提示装置を、バス停と路線バス内の双方に設置する態様としてもよいことはいうまでもない。
【0020】
図1は、本発明のバス乗車誘導システムの全体構成の概略を説明するためのブロック図で、このバス乗車誘導システムは、路線バスに搭載され当該路線バスの乗客数を管理可能な車載装置100と、路線バスの運行管理センタに設けられたセンタ装置200と、バス路線の停留所毎に設置された乗車状況提示装置300とにより構成されている。
【0021】
図2乃至図4はそれぞれ、上記車載装置100と、センタ装置200と、乗車状況提示装置300の構成の概略を説明するためのブロック図である。
【0022】
先ず、図2を参照して路線バスに搭載され当該路線バスの乗客数を管理可能な車載装置100の構成について説明する。この車載装置100は、運行管理センタで予め付与された自車のIDを管理するID管理部11と、自車の速度情報を管理する速度情報管理部12と、自車の走行地点情報を管理する位置情報管理部13と、自車の乗客数から乗車率を算出する乗車率算出部14と、自車の速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む当該路線バスの運行状況に関する車両情報を生成する車両情報生成部15と、当該車両情報に自車のID情報を付して路線バス情報としてセンタ装置200に通信網を介して送信するバス通信部16とを備えている。
【0023】
速度情報管理部12は、当該路線バスに設けられている速度センサ17で検知された自車の速度情報を管理する。また、位置情報管理部13は、GPSセンサ18などにより検知された自車が走行している地点(緯度および経度)の位置情報を管理する。乗客数検知部19は自車に乗車している客数を検知するためのもので、乗車率算出部14は当該乗客数データに基づいて自車の乗車率を算出する。
【0024】
上述の乗客数検知部19としては、例えば、乗車した客の積算数と降車した客の積算数の差を求める演算部や、車内をモニタしている画像を処理して乗客数を求める画像処理部などがあり得る。前者の場合、乗車客積算数と降車客積算数を運転手がマニュアルで入力する仕様のものでもよいし、発券された乗車券の積算数と回収された乗車券の積算数とから自動的に乗客数を算出する仕様のものでもよい。
【0025】
図3に図示したように、路線バスの運行管理センタに設けられたセンタ装置200は、車載装置100から通信網を介して送信される上述の路線バス情報の受信部21aおよび該路線バス情報を通信網を介して乗車状況提示装置300に送信する送信部21bを含むセンタ通信部21を備えている。当該センタ通信部21で受信した路線バス情報は、運行管理センタ内に設置されたバス状態DB22に一旦記憶され、送信部21bから乗車状況提示装置300へと送信される。
【0026】
図4を参照すると、バス路線の停留所毎に設置される乗車状況提示装置300は、センタ通信部21から送信された路線バス情報を通信網を介して受信するバス停通信部(受信部)31と、受信した路線バス情報が該バス停の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定する判定部32と、乗車バス推奨情報を生成するデータ処理部33と、その乗車バス推奨情報を提示する提示部34とを含む。
【0027】
上記乗車バス推奨情報とは、次に到着予定の路線バスの乗車率と、当該路線バスの次に到着予定(つまり、次の次に到着予定)の路線バス(後続路線バス)の乗車率との比較の結果、後続路線バスの乗車率のほうが低い場合に、後続路線バスへの乗車を促すために提示される情報である。
【0028】
乗車状況提示装置300には、受信した路線バス情報が当該バス停の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定する処理と、該路線バス情報が路線経路内を走行する次に到着予定の路線バス(次の路線バス)のものであると判定された場合に、この路線バス情報を、後続の路線バス(次の次の路線バス)の路線バス情報(後続路線バス情報)と比較する処理と、後続路線バスの乗車率が上記路線バスの乗車率を下回っている場合に後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成して提示する処理とを実行させるプログラムが格納されている。
【0029】
判定部32は、受信した路線バス情報に含まれているID情報をバス経路情報DB35に格納された情報と照合するなどして、当該路線バス情報が、該バス停に次に到着予定の路線バスのものであるか否かを判定する。
【0030】
上記判定の結果、受信した路線バス情報が、該バス停に次に到着予定の路線バスのものである場合、データ処理部33は、当該路線バス情報に含まれている乗車率情報と、その後続の路線バス(つまり、次の次に到着予定の路線バス)の路線バス情報に含まれている乗車率情報とを比較し、後続路線バスの乗車率のほうが低い場合に上述の乗車バス推奨情報を生成する。この乗車バス推奨情報は、ディスプレイやスピーカなどを含む提示部34により、待ち客に提示される。
【0031】
図5は、上述した車載装置の別の態様の概要を説明するためのブロック図で、この形態の車載装置100では、乗客数検知部19として、当該路線バスに設けられたタイヤの空気圧センサを利用している。
【0032】
当該態様の車載装置100が備える乗車率算出部14は、空気圧センサ14で感知されたタイヤの空気圧のデータを記憶する空気圧記憶部14aと、タイヤ空気圧の変化量を乗客数の増減に変換するデータが予め格納されている変換データ記憶部14bと、当該路線バスの運行時のタイヤ空気圧と乗客を乗せていない状態(空車時)のタイヤ空気圧との差分を求め、当該差分から乗客数を推定して乗車率を算出する演算部14cとを備えている。
【0033】
このような乗車率の算出手法は、既存の空気圧センサを乗客数検知部19として利用しているため、乗車客の積算数と降車客の積算数の差から乗客数を求める手法や車内モニタリング画像の処理から乗客数を求める手法に比較して、低コスト化が図れるという利点がある。
【0034】
空気圧記憶部14aは、空車時(乗客数=0)のタイヤの空気圧を予め記憶している。また、バス停に停車した時から発車まで、タイヤ空気圧の変化状態の記録を行いその結果を記憶する。
【0035】
変換データ記憶部14bには、タイヤ空気圧の変化量を乗客数の増減に変換するデータが予め格納されている。換言すれば、当該路線バスに乗車している客数と当該客数が乗車した状態におけるタイヤの空気圧の相関データが予め格納されている。例えば、乗客の平均体重を50kgと仮定すると、n人の客が乗車している場合には、乗客の総体重は(50×n)kgとなり、この付加が加わる分だけタイヤ内の空気圧は高くなる。従って、乗客数とタイヤ空気圧の関係さえ予め調べておけば、タイヤ空気圧の変化量を乗客数の増減に容易に変換することができる。
【0036】
演算部14cには、運行時のタイヤ空気圧と空車時のタイヤ空気圧との差分を求める処理と、タイヤ空気圧の変化量を乗客数の増減に変換するデータを参照してタイヤ空気圧の差分から乗車率を算出する処理を実行するプログラムが格納されている。そして、変換データ記憶部14bに格納されている上述の「変換データ」に基づいて、当該路線バスの運行時の乗客数nの場合のタイヤ空気圧と乗客を乗せていない状態(空車時:n=0)のタイヤ空気圧との差分を求め、当該差分から乗客数を推定して乗車率を算出する。
【0037】
図6は、車載装置が実行する各処理の概要を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、乗客数検知部19として路線バスに設けられたタイヤの空気圧センサを利用する上述の態様の場合が例示されている。
【0038】
車載装置100は、先ず、速度情報管理部12が速度センサ17から自車の速度情報を入手し、位置情報管理部13がGPSセンサ18から自車の位置情報(緯度・軽度情報)を入手する(S102)。そして、これらの情報に基づいて「バス停前で停車中か否か」を判断する(S103)。
【0039】
「バス停前で停車中」であると判断された場合(S103:YES)には、乗車率演算部14は自車のタイヤ空気圧から乗車率を算出する(S104)。一方、「バス停前で停車中」ではないと判断された場合(S103:NO)には、自車の速度情報と位置情報の入手処理を継続する。
【0040】
速度情報管理部12は、当該路線バスがバス停を出発して動き始めたか否かを判断し(S105)、「バスが動き始めた」と判断された場合(S105:YES)には、速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に自車のID情報が付された路線バス情報が送信される(S106)。一方、「バスが動き始めた」と判断されなかった場合(S105:NO)には、乗車率の算出処理を継続する。
【0041】
このようにして送信される路線バス情報は、通信網を介して、バス路線の停留所毎に設置された乗車状況提示装置300により受信される。
【0042】
図7は、乗車状況提示装置が実行する各処理の概要を説明するためのフローチャートである。先ず、通信部31により路線バス情報を受信すると(S302)、判定部32は、受信した路線バス情報が該バス停の路線経路内を走行予定の路線バスのものであって「次の到着予定バス」のものであるか否かを判定する(S303)。そして、当該判定により、路線バス情報が該バス停の路線経路内を走行予定の路線バスのものである場合には(S303:YES)、センタ装置から「次の次の到着予定バス」に関する路線バス情報(後続路線バス情報)が入手される(S304)。
【0043】
データ処理部33は、「次の到着予定バス」の路線バス情報に含まれている乗車率情報を、表示部34により待ち客に対して提示する(S305)。このとき、「次の到着予定バス」の到着予測時間も同時に提示するようにしてもよい。さらに、S304で入手した「次の次の到着予定バス」の路線バス情報に基づいて、当該「次の次の到着予定バス」の乗車率情報と到着予測時間も併せて提示するようにしてもよい。
【0044】
データ処理部33は更に、「次の次の到着予定バス」に関する路線バス情報(後続路線バス情報)に含まれている乗車率情報と「次の到着予定バス」乗車率を比較して、前者が後者よりも低いか否かを判断し(S306a)、後続路線バスのほうが空いていると判断した場合に(S306a:YES)、後続路線バスの乗車率に関する情報を提示して当該後続路線バスへの乗車を促す(S307a)。
【0045】
なお、図8に示したように、データ処理部33は、上述の処理に続いて、「次の次の後続路線バス」(後続路線バス)の到着予定時間(t)と「次の路線バス」の到着予定時間(t)を算出し、後続路線バスに乗車した場合の待ち時間(Δt=t−t)が所定の時間内である場合に、後続路線バスの乗車率と「待ち時間」に関する情報を提示して当該後続路線バスへの乗車を促すようにしてもよい(S307b)。それぞれの路線バス情報には位置情報と速度情報が含まれているから、情報に基づいて上記待ち時間(Δt=t−t)を算出することができる。
【0046】
なお、これまでの実施の形態では、路線バス情報がバス停の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定する判定部を乗車状況提示装置側に設ける構成としたが、上記処理はセンタ装置側で実行する構成としてもよい。この場合には、乗車状況提示装置には、センタ装置から当該バス停の路線経路内を走行予定の路線バスの路線バス情報のみが送信されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明によれば、従来は待ち客や乗客に提示されることがなかった乗車バス推奨情報が提示可能となるため、同一経路を運行する路線バスの混み具合をなるべく同程度のものとすることができ、車内の混雑を軽減・解消するとともに、乗客のバスの降り降りに要する時間の低減化を図る等によりタイムテーブルどおりの運行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のバス乗車誘導システムの全体構成の概略を説明するためのブロック図である。
【図2】車載装置の概要を説明するためのブロック図である。
【図3】センタ装置の概要を説明するためのブロック図である。
【図4】乗車状況提示装置の概要を説明するためのブロック図である。
【図5】車載装置の別の態様の概要を説明するためのブロック図である。
【図6】車載装置が実行する各処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【図7】乗車状況提示装置が実行する各処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【図8】乗車状況提示装置が実行する各処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
100 車載装置
200 センタ装置
300 乗車状況提示装置
11 バスID管理部
12 速度情報管理部
13 位置情報管理部
14 乗車率算出部
14a 空気圧記憶部
14b 変換データ記憶部
14c 乗車率演算部
15 車両情報生成部
16 通信部
17 速度センサ
18 GPSセンサ
19 乗客数検知部
21 センタ通信部
21a バス情報受信部
21b バス情報送信部
22 バス状態DB
31 通信部
32 判定部
33 データ処理部
34 提示部
35 バス経路情報DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路線バスに搭載された当該路線バスの乗客数を管理可能な車載装置と、前記路線バスの運行管理センタに設けられたセンタ装置と、バス路線の停留所毎または前記路線バス内の少なくとも一方に設置された乗車状況提示装置とにより構成されたバス乗車誘導システムであって、
前記車載装置は;
自車のIDを管理するID管理部と、
自車の速度情報を管理する速度情報管理部と、
自車の走行地点情報を管理する位置情報管理部と、
自車の乗客数から乗車率を算出する乗車率算出部と、
自車の速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に自車のID情報を付して路線バス情報として前記センタ装置に通信網を介して送信するバス通信部と、を備え、
前記センタ装置は;
前記車載装置からの路線バス情報を受信すると共に該路線バス情報を前記通信網を介して前記乗車状況提示装置に送信するセンタ通信部を備え、
前記乗車状況提示装置は;
前記センタ通信部から前記路線バス情報を受信する受信部と、
前記路線バス情報が前記バス停の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定する判定部と、
前記路線バス情報が前記路線経路内を走行予定の路線バスのものであると判定された場合に、前記路線バス情報を前記路線バスの次に停車予定の後続路線バスの路線バス情報である後続路線バス情報と比較して、前記後続路線バスの乗車率が前記路線バスの乗車率を下回っている場合に前記後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成するデータ処理部と、
前記乗車バス推奨情報を提示する提示部と、
を備えていることを特徴とするバス乗車誘導システム。
【請求項2】
前記データ処理部は、
前記後続路線バスの到着予定時間(t)と前記路線バスの到着予定時間(t)を算出し、前記後続路線バスに乗車した場合の待ち時間(Δt=t−t)が所定の時間内である場合に前記乗車バス推奨情報を生成する、請求項1に記載のバス乗車誘導システム。
【請求項3】
前記乗車率算出部は;
前記路線バスに設けられた空気圧センサで検知したタイヤ空気圧のデータを格納する空気圧記憶部と、
タイヤ空気圧の変化量を乗客数の増減に変換するデータを格納した変換データ記憶部と、
運行時のタイヤ空気圧と空車時のタイヤ空気圧との差分から乗車率を算出する演算部と、
を備えている請求項1に記載のバス乗車誘導システム。
【請求項4】
路線バスに搭載され、該路線バスの乗車率を算出する装置であって、
前記路線バスに設けられたタイヤ空気圧センサで検知した空気圧のデータを格納する空気圧記憶部と、
タイヤ空気圧の変化量を乗客数の増減に変換するデータを格納した変換データ記憶部と、
運行時のタイヤ空気圧と空車時のタイヤ空気圧との差分から乗車率を算出する演算部と、
を備えている乗車率算出装置。
【請求項5】
バス路線の停留所または路線バス内の少なくとも一方に設置される乗車状況提示装置であって、
路線バスの運行管理センタから路線バス情報を通信網を介して受信する受信部と、
前記路線バス情報が前記バス停の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定する判定部と、
前記路線バス情報が前記路線経路内を走行予定の路線バスのものであると判定された場合に、前記路線バス情報を前記路線バスの次に停車予定の後続路線バスの路線バス情報である後続路線バス情報と比較して、前記後続路線バスの乗車率が前記路線バスの乗車率を下回っている場合に前記後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成するデータ処理部と、
前記乗車バス推奨情報を提示する提示部と、
を備えている乗車状況提示装置。
【請求項6】
前記データ処理部は、
前記後続路線バスの到着予定時間(t)と前記路線バスの到着予定時間(t)を算出し、前記後続路線バスに乗車した場合の待ち時間(Δt=t−t)が所定の時間内である場合に前記乗車バス推奨情報を生成する、請求項5に記載の乗車状況提示装置。
【請求項7】
バス路線内の停留所でバス待ちをする客または路線バス内の乗客の少なくとも一方に混み具合の少ない路線バスの到着予定を知らせてバス乗車を誘導する方法であって、
路線バスのそれぞれについて、速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に該路線バスのID情報を付して路線バス情報として生成するステップと、
前記路線バス情報が前記停留所の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定するステップと、
前記路線バス情報が前記路線経路内を走行予定の路線バスのものであると判定された場合に、前記路線バス情報を前記路線バスの次に停車予定の後続路線バスの路線バス情報である後続路線バス情報と比較するステップと、
前記後続路線バスの乗車率が前記路線バスの乗車率を下回っている場合に前記後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成して提示するステップと、
を備えていることを特徴とするバス乗車誘導方法。
【請求項8】
前記乗車バス推奨情報を生成して提示するステップは、
前記後続路線バスの到着予定時間(t)と前記路線バスの到着予定時間(t)を算出し、前記後続路線バスに乗車した場合の待ち時間(Δt=t−t)が所定の時間内である場合に前記乗車バス推奨情報を生成する、請求項7に記載のバス乗車誘導方法。
【請求項9】
前記路線バス情報に含まれる乗車率情報を、運行時のタイヤ空気圧と空車時のタイヤ空気圧との差分から算出する、請求項7に記載のバス乗車誘導方法。
【請求項10】
バス路線内の停留所でバス待ちをする客または路線バス内の乗客の少なくとも一方に混み具合の少ない路線バスの到着予定を知らせてバス乗車を誘導するためのプログラムであって、
コンピュータに、
路線バスのそれぞれについて生成された、速度情報、位置情報、及び乗車率情報を含む車両情報に該路線バスのID情報が付された路線バス情報を受信して、該路線バス情報が前記停留所の路線経路内を走行予定の路線バスのものであるか否かを判定する処理と、
前記路線バス情報が前記路線経路内を走行予定の路線バスのものであると判定された場合に、前記路線バス情報を前記路線バスの次に停車予定の後続路線バスの路線バス情報である後続路線バス情報と比較する処理と、
前記後続路線バスの乗車率が前記路線バスの乗車率を下回っている場合に前記後続路線バスへの乗車を促す乗車バス推奨情報を生成して提示する処理と、
を実行させるバス乗車誘導プログラム。
【請求項11】
前記乗車バス推奨情報を生成して提示する処理は、
前記後続路線バスの到着予定時間(t)と前記路線バスの到着予定時間(t)を算出し、前記後続路線バスに乗車した場合の待ち時間(Δt=t−t)が所定の時間内である場合に前記乗車バス推奨情報を生成する、請求項10に記載のバス乗車誘導プログラム。
【請求項12】
路線バスの乗車率を算出するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記路線バスに設けられた空気圧センサで検知したタイヤ空気圧と空車時のタイヤ空気圧との差分を求める処理と、
タイヤ空気圧の変化量を乗客数の増減に変換するデータを参照して、前記差分から乗車率を算出する処理と、
を実行させるバス乗車率算出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−237891(P2010−237891A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83956(P2009−83956)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】