説明

バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート。

【課題】 光の吸収性能の低下を抑制しつつ薄型化し得るバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを提供することにある。
【解決手段】 積層構造を有し、表面層が黒色のシリコーンゴムにより形成されてなり、バックライト式液晶パネルディスプレイの液晶モジュール表面に前記表面層を当接させることによりこの当接された表面層にバックライトの光が吸収されるバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートであって、前記表面層は、液状シリコーンゴムを用いて形成され、且つ、前記表面層とは別に黒色に着色された黒色層が表面層よりも裏面側に少なくとも1層形成されていることを特徴とするバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイパネルは、表示素子として広く用いられている。
この液晶ディスプレイパネルの液晶モジュールにおいては、図1に示すように液晶11を挟持する電極板12などの複数のガラス板や、配向フィルム15、偏光板16などの機能性樹脂フィルム材などによる積層体が形成されており、通常、面中央部が液晶表示領域となるよう形成され、周縁の液晶表示領域外にて金属などからなるフレーム材13により前記積層体が前面側と背面側とから挟持され一体化されている。
このとき、液晶モジュール1に用いられるガラス板12が衝撃で割れたりすることを抑制し得るように、この前面側と背面側とのいずれか一方のフレーム材13と積層体との間には、シリコーンゴムが用いられたシート14が配されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、このような液晶モジュールが用いられた液晶パネルディスプレイには、外光を液晶モジュールの背面側の反射板で反射させ表示を行う反射式と呼ばれるものや、液晶モジュールの背面側に光源が備えられ液晶表示部をこの光源からの光を透過させ表示を行うバックライト式と呼ばれるものが知られている。このバックライト式液晶パネルディスプレイは、明るく、表示が見やすいことから広く用いられている。このバックライト式液晶パネルディスプレイのバックライト2には、例えば、液晶モジュール1の幅と略同長の冷陰極管21、液晶モジュール1と略同一面積の導光板22、光拡散板23などが用いられる側光式と呼ばれるものなどが知られている。そして、この導光板22は側端面から光を導入して一方の表面全体から発光させるよう形成されており、上記の側光式液晶パネルディスプレイでは、冷陰極管21が液晶モジュール1の背面側の側方位置に配され、冷陰極管21から発生する光を導光板22で液晶モジュール1の背面全体で発光させている。このとき、液晶表示領域内で輝度にムラがあると液晶パネルディスプレイの表示が見難くなるため、導光板22と液晶モジュールとの間に光拡散板23が用いられ、導光板22から発せられる光を拡散させて輝度にムラが生じることを抑制させている。
【0004】
ところで、ガラスやゴム、プラスチックなどの樹脂材料は、空気とは屈折率が大きく異なり、これら屈折率が異なるものの界面では、その屈折率の差に応じて光が屈折することが知られている。例えば、ガラス/空気界面を斜めに透過する光線がこの界面となす角度は、空気中に比べてガラス中の方が大きな角度となる。そのため、ガラス中をガラス/空気界面に向かって進んできた光線については、ある程度以上に浅い角度となると空気側に透過することができずに全反射される。バックライト式液晶パネルディスプレイの液晶モジュールにおいては、特に、周縁部では光拡散板からの拡散光が浅い角度で入射され易くフレアと呼ばれる光の迷走が生じることが知られており、このフレアが生じると液晶表示領域内で輝度にムラが生じるおそれがあることから、特許文献2には、液晶モジュールの液晶表示領域外(周縁部)に黒色テープなどの黒色部材を当接させて光を吸収させることが記載されている。すなわち、液晶モジュールの前面側や背面側の表面のガラス材や樹脂材に樹脂材料を当接させて屈折率の大きく異なるガラス/空気界面や樹脂/空気界面が形成されることを抑制させて、界面での光の反射を抑制させている。しかも、黒色に着色されているために光が吸収され易く光の反射がさらに抑制され、フレアが生じることが抑制されることとなる。
【0005】
このような液晶モジュールの前面側や背面側の表面に当接させて用いられる黒色のシートには、バックライトの発熱に耐える優れた耐熱性とガラス材の割れを防止する優れたクッション性が必要なことから、通常、表面層には黒色のシリコーンゴムが用いられている。また、このシリコーンゴム表面層は、従来、ミラブルタイプのシリコーンゴムを用いてカレンダー成形されたり、液状シリコーンゴムを用いてコーティング成膜されたりしてポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ともいう)フィルムなどの基材層上に、厚さ200μm程度に形成されている。
【0006】
近年のバックライト式液晶パネルディスプレイは、より薄型化が要望されるようになり、この黒色シートにも薄型化が要望されるようになってきている。
このような要望に対して、ミラブルタイプのシリコーンゴムを用いる場合には、従来よりも薄いものを製造することが困難であり、この薄型化するという要望を満足させることは実質不可能である。一方、液状シリコーンゴムを用いる場合においては、薄く形成しようとするとハジキやピンホールが発生し易くなり、面内に光が吸収されずに透過する個所が生じたりして、光の吸収性能を低下させることとなる。
すなわち、従来のバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートにおいては、光の吸収性能の低下を抑制しつつ薄型化を行うことが困難であるという問題を有している。
【0007】
【特許文献1】特開2001−200221号公報
【特許文献2】特開平10−123964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、光の吸収性能の低下を抑制しつつ薄型化し得るバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートの光の吸収性能の低下抑制と薄型化とについて鋭意検討を行った結果、シートの積層構造中に表面層とは別に黒色に着色された黒色層を設けることで表面層の厚さを低下させた場合であっても光の吸収性能低下を抑制し得ることを見出し、本発明の完成に到ったのである。
すなわち、本発明は、前記課題を解決すべく、積層構造を有し、表面層が黒色のシリコーンゴムにより形成されてなり、バックライト式液晶パネルディスプレイの液晶モジュール表面に前記表面層を当接させることによりこの当接された表面層にバックライトの光が吸収されるバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートであって、前記表面層は、液状シリコーンゴムを用いて形成され、且つ、前記表面層とは別に黒色に着色された黒色層が表面層よりも裏面側に少なくとも1層形成されていることを特徴とするバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液状シリコーンゴムを用いて表面層を形成することから従来よりも表面層を薄いものとすることができる。また、表面層とは別に黒色に着色された黒色層が表面層よりも裏面側に形成されていることから表面層にハジキやピンホールなどが生じたとしても、このハジキやピンホール個所を透過した光を表面層の裏面側に形成された別の黒色層で吸収させることができる。
すなわち、バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを光の吸収性能の低下を抑制しつつ薄型化させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図2に基づき説明する。
本実施形態におけるバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート14は、積層構造を有しており、シリコーンゴムが用いられた表面層31を備えている。
また、バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート14は、表面層31に次いでプライマー層32、黒色層33、基材層34、粘着層36の順に積層された積層構造を有している。
【0012】
前記表面層31は、液状シリコーンゴムが用いられて形成されており、黒色に着色され、通常、30〜300μm厚さとされている。
また、この液状シリコーンゴムとしては、縮合型液状シリコーンゴムのようにアセトンやアルコールなどの縮合生成物が形成されることがなく、液晶モジュールが汚染されるおそれを抑制させ得る点において、付加型液状シリコーンゴムが用いられることが好ましい。
また、この表面層31は、通常、シリコーンゴムに1〜10重量%のカーボンブラックが含有された黒色シリコーンゴムを用いることができる。
なお、本明細書中において、液状シリコーンゴムとは、常温で流動性を示すシリコーンゴムを意図しており、通常、100〜2000程度の重合度を示すものである。
【0013】
前記プライマー層32は、シランカップリング剤が用いられており、通常、乾燥皮膜として0.1〜2.0g/m2となる厚さとされている。
このシランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、官能基としてビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基などを含有するものを単独または複数組み合わせて用いることができる。
【0014】
前記黒色層33は、カーボンブラックが1重量%以上含有されたカーボンブラック含有ウレタン樹脂塗料などにより形成されて、通常、1〜8μm厚さ、好ましくは、2〜5μm厚さとされる。
このような、カーボンブラック含有ウレタン樹脂塗料による黒色層33の厚さが2〜5μmであることが好ましいのは、2μmよりも薄い場合には、黒色層33にピンホールを発生させ、光を透過させるおそれを有し、5μmを超える厚さとしてもそれ以上ピンホール抑制効果を向上させ、光の透過防止性を向上させることが困難であるばかりでなくバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートの厚さを厚くさせるおそれがあるためである。
また、ピンホールが形成され、光が透過するおそれを抑制させる点から、この黒色層33は、ウレタン樹脂塗料を2回以上の重ね塗りにより形成されることが好ましい。
【0015】
前記基材層34は、バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートをフレーム材に貼り付ける場合など、バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを容易に取り扱うことができる強度とし得るものが好ましく、例えば、合成樹脂製のフィルムなどを用いることができる。
なかでも、耐熱性と強度に優れ、しかも、材料費が安価である点においてPETフィルムが好適である。このPETフィルムが基材層に用いられる場合には、通常、25〜150μm厚さとされる。
なお、このPETフィルムは、コロナ処理など表面改質されたものであっても無処理のものであってもよい。
【0016】
前記粘着層36は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系粘着剤などを用いて20〜70μm厚さに形成することができる。
【0017】
次いで、このようなバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートの製造方法について説明する。
【0018】
まず、基材層34となるPETフィルムに、グラビアコートにより黒色層33を形成させる。このとき、要すれば、黒色層33のカーボンブラック含有ウレタン樹脂塗料を適宜溶剤で希釈するなどしてもよい。
次いで、この黒色層33を乾燥処理した後にプライマー層32をスプレーコートする。このとき、ウレタン樹脂塗料(黒色層33)がPETフィルム上に形成されているために、PETフィルム上に直接プライマー層32を形成させる場合に比べてプライマー層32のハジキを抑制させることができる。
さらに、液状シリコーンゴムをプライマー層32上にコーティングし、加熱硬化させ表面層31を形成する。このとき、黒色層33によりプライマー層32が均一に形成されているため、液状シリコーンゴムにハジキ、ピンホールが発生することを抑制し得る。また、シリコーンゴムは、PETに比べてウレタン樹脂に対する濡れ性が高く、この黒色層33により表面層31にハジキ、ピンホールが発生することをさらに抑制し得る。
【0019】
その後、表面層31に使用時までにホコリなどの異物が付着することを防止すべく表面層31の上に表面保護フィルム35を貼り、さらに、基材層34の裏面側に粘着層36を形成してバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート14を製造する。なお、要すれば、粘着層36保護のためシリコーン表面処理PETフィルムやシリコーン表面処理クラフト紙などをセパレーター37として設けることも可能である。
【0020】
なお、本実施形態においては、プライマー層や液状シリコーンゴムの濡れを改良して、液状シリコーンゴムにハジキ、ピンホールが発生することを抑制させ得る点においてウレタン樹脂が用いられた黒色層を例に説明したが、本発明においては、黒色層をウレタン樹脂が用いられたものに限定するものではない。
また、本実施形態においては、黒色層を基材層とプライマー層との間に形成させた例を説明したが、本発明においては、プライマー層を用いずに、表面層と基材層との間にこの黒色層を形成させてもよく、要すれば、基材層の裏面側に設けることも可能である。さらには、この基材層に黒色フィルムを用いて、この基材層と表面層以外に別途黒色に着色された層を設けない場合も本発明の意図する範囲である。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ50μmのPETフィルムにグラビアコーターにて固形分中のカーボンブラック濃度が3重量%のウレタン樹脂塗料を乾燥時厚さ1μmとなるように塗布し、120℃5分の乾燥を行い、さらに、同条件でウレタン樹脂塗料を塗布乾燥させ、2回の重ね塗りによる総厚さ2μmの黒色層を形成させた。
次いで、この黒色層表面にキスコーターを用いてシランカップリング剤を乾燥皮膜で0.5g/m2となるように塗布し、120℃数十秒の乾燥を施しプライマー層を形成させた。
さらに、黒色の付加型シリコーンゴム(カーボンブラック5重量%含有)を前記プライマー層上にコンマダイレクト方式で塗布し、150℃10分の加熱を行い、黒色シリコーンゴムを架橋させて50μm厚さの表面層を形成させてバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを製造した。
(実施例2)
ウレタン樹脂塗料を乾燥時厚さ1μmに代えて1.5μmとなるように塗布乾燥させ、2回の重ね塗りによる総厚さ3μmの黒色層を形成させたこと以外は実施例1と同様にバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを製造した。
(比較例1)
黒色シリコーンゴムによる表面層以外に黒色層を形成させずに(ウレタン樹脂塗料を用いずに)製造した以外は実施例1と同様にバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを製造した。
【0022】
(評価)
各実施例、比較例のバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートの背面側に1mの距離を設けて40Wの蛍光灯を点灯させ、バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートの前面側30cm離れた位置から目視にて蛍光灯の明かりが透けて見える明点を観察し、バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート10cm×10cmあたりに観察される明点の数を計測した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

この結果からも、また、表面層とは別に黒色に着色された黒色層が表面層よりも裏面側に形成されていることで表面層にハジキやピンホールなどが生じたとしても、このハジキやピンホール個所を透過した光を表面層の裏面側に形成された別の黒色層で吸収させることができバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを光の吸収性能の低下を抑制しつつ薄型化させ得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】バックライト式液晶パネルディスプレイを示す概略断面図。
【図2】一実施形態のバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートを示す概略断面図。
【符号の説明】
【0025】
1:液晶モジュール、2:バックライト、14:バックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート、31:表面層、33:黒色層、34:基材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造を有し、表面層が黒色のシリコーンゴムにより形成されてなり、バックライト式液晶パネルディスプレイの液晶モジュール表面に前記表面層を当接させることによりこの当接された表面層にバックライトの光が吸収されるバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シートであって、
前記表面層は、液状シリコーンゴムを用いて形成され、且つ、前記表面層とは別に黒色に着色された黒色層が表面層よりも裏面側に少なくとも1層形成されていることを特徴とするバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート。
【請求項2】
前記表面層の裏面側で表面層と接する層にはシランカップリング剤が含有されたプライマー層が形成されている請求項1に記載のバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート。
【請求項3】
前記プライマー層の裏面側でプライマー層と接する層には、黒色に着色されたウレタン樹脂が用いられた黒色層が形成されている請求項2に記載のバックライト式液晶パネルディスプレイ用黒色シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−93726(P2007−93726A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279841(P2005−279841)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】