説明

バックル及びシートベルト装置

【課題】バックルの構造部品の間にガタが生じにくく、振動や異音の発生を抑制することができ、乗員に与える不快感を低減することができる、バックル及びシートベルト装置を提供する。
【解決手段】バックル1は、タングを挿入するタング挿入口2と、タングに係合するラッチ部材3と、ラッチ部材3の係合を解除する操作ボタン4と、ラッチ部材3及び操作ボタン4を支持するベース部材5と、ベース部材5が装着されるアッパーカバー6と、アッパーカバー6に接続されベース部材5を覆うロワーカバー7と、ベース部材5に固定される固定部材10を挿通する開口部8と、を有し、アッパーカバー6に形成され開口部8の一部を形成するとともにベース部材5の上部を覆う縁部61と、ロワーカバー7の内面に突出するように形成された凸部71と、ベース部材5に形成され凸部71を挿通可能な係止孔51と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の乗物の座席に装備されるバックル及びシートベルト装置に関し、特に、バックルカバーの組み立てに特徴を有するバックル及び該バックルを有するシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物には、一般に、乗員が着座する腰掛部と乗員の背面に位置する背もたれ部とを備えた座席に乗員を拘束する三点式のシートベルト装置が設けられている。かかるシートベルト装置は、乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、車体側に設けられ前記ウェビングを案内するガイドアンカーと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、座席側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたタングと、を有し、前記タングを前記バックルに嵌着させることによって前記ウェビングで乗員を拘束している。
【0003】
前記バックルは、例えば、タングを挿入するタング挿入口と、挿入されたタングに係合するラッチ部材と、該ラッチ部材の係合を解除する操作ボタンと、前記ラッチ部材及び前記操作ボタンを支持するベース部材と、前記タング挿入口が形成されるとともに前記ベース部材が装着されるアッパーカバーと、該アッパーカバーに接続され前記ベース部材を覆うロワーカバーと、を有する(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたバックルは、ベース部材(基板部)にロワーカバー(ベースカバー)に係合する傾斜部が形成されている。したがって、特許文献1に記載されたバックルは、バックルを組み立てる際に、傾斜部をロワーカバーに係合させつつベース部材をロワーカバーの凹部に押し込んで固定し、ロワーカバーの上にアッパーカバー(蓋カバー)を被せてアッパーカバーの爪部をロワーカバーの係止部に係止させるようにしている。
【0005】
また、特許文献2に記載されたバックルは、アッパーカバー(上カバー)にベース部材(フレーム)を装着した状態で、ロワーカバー(下カバー)とアッパーカバー(上カバー)とを螺子で接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−290号公報
【特許文献2】国際公開2007/032168号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載されたバックルでは、ベース部材がロワーカバーに支持され、アッパーカバーがロワーカバーに接続されているものの、ベース部材はアッパーカバーに挿入されて装着されているだけであり、係止する部分を有していたとしても緩い係止部となっていた。
【0008】
また、上述した特許文献2に記載されたバックルでは、アッパーカバーとロワーカバーとは螺子で強固に接続されているものの、ベース部材はアッパーカバーに挿入されて装着されているだけであり、係止する部分を有していたとしても緩い係止部となっていた。
【0009】
さらに、アッパーカバー及びロワーカバーは樹脂により成型され、ベース部材は金属により形成されており、熱膨張率の異なる部品となっていた。
【0010】
したがって、製造工程や組立工程における誤差、使用環境における温度変化等の条件によって、ベース部材、ロワーカバー及びアッパーカバーの間にガタが生じ、振動や異音が発生し、乗員に不快感を与えてしまうという問題があった。
【0011】
また、ベース部材、ロワーカバー及びアッパーカバーを螺子で接続する場合には、螺子穴の製造公差が厳しくなって製造工程の工数が増加したり、螺子を締め付ける工程が必要なことから組立工程の工数が増加したりしてしまうという問題もあった。
【0012】
本発明はかかる課題に鑑み創案されたものであり、バックルの構造部品の間にガタが生じにくく、振動や異音の発生を抑制することができ、乗員に与える不快感を低減することができる、バックル及びシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、乗員を座席に拘束するシートベルト装置のタングと着脱可能に係合するバックルであって、前記タングを挿入するタング挿入口と、挿入された前記タングに係合するラッチ部材と、該ラッチ部材の係合を解除する操作ボタンと、前記ラッチ部材及び前記操作ボタンを支持するベース部材と、前記タング挿入口が形成されるとともに前記ベース部材が装着されるアッパーカバーと、該アッパーカバーに接続され前記ベース部材を覆うロワーカバーと、前記タング挿入口の反対側に形成され前記ベース部材に固定される固定部材を挿通する開口部と、を有し、前記アッパーカバーに形成され前記開口部の一部を形成するとともに前記ベース部材の上部を覆う縁部と、前記ロワーカバーの内面に突出するように形成された凸部と、前記ベース部材に形成され前記凸部を挿通可能な係止孔と、を有することを特徴とするバックルが提供される。
【0014】
また、本発明によれば、乗員を座席に拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、車体側に設けられ前記ウェビングを案内するガイドアンカーと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、前記座席の側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたタングと、を有し、前記タングを前記バックルに嵌着させることによって乗員を前記ウェビングで拘束するシートベルト装置であって、前記バックルは、前記タングを挿入するタング挿入口と、挿入された前記タングに係合するラッチ部材と、該ラッチ部材の係合を解除する操作ボタンと、前記ラッチ部材及び前記操作ボタンを支持するベース部材と、前記タング挿入口が形成されるとともに前記ベース部材が装着されるアッパーカバーと、該アッパーカバーに接続され前記ベース部材を覆うロワーカバーと、前記タング挿入口の反対側に形成され前記ベース部材に固定される固定部材を挿通する開口部と、を有し、前記アッパーカバーに形成され前記開口部の一部を形成するとともに前記ベース部材の上部を覆う縁部と、前記ロワーカバーの内面に突出するように形成された凸部と、前記ベース部材に形成され前記凸部を挿通可能な係止孔と、を有することを特徴とするシートベルト装置が提供される。
【0015】
上述した本発明のバックル及びシートベルト装置において、前記アッパーカバーは、前記縁部に対して略垂直に内面に形成された補強リブを有していてもよい。
【0016】
また、前記補強リブは、一対の主補強リブと、該主補強リブの間に前記縁部と略平行に形成された副補強リブと、により構成されていてもよい。さらに、前記ラッチ部材又は前記操作ボタンの駆動部品との干渉を回避可能な切欠部を有していてもよい。また、前記補強リブは、前記縁部よりも肉厚が薄く形成されていてもよい。
【0017】
また、前記縁部の下端は、例えば、前記ベース部材の高さの50%以上を覆い得る位置に配置されている。
【0018】
また、前記凸部は、少なくとも部分的に前記ロワーカバーの内面に形成された背面リブよりも厚く形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明に係るバックル及びシートベルト装置によれば、所定の縁部を構成することによってアッパーカバーによりベース部材の端部を十分に保持することができ、ロワーカバーとベース部材とを凸部と係止孔とにより係止させたことによりロワーカバーのベース部材の保持力を向上させることができ、ベース部材、ロワーカバー及びアッパーカバーの間における相互の保持力を向上させることができる。したがって、バックルの構造部品の間にガタが生じにくく、振動や異音の発生を抑制することができ、乗員に与える不快感を低減することができる。
【0020】
また、縁部に補強リブを形成することにより、縁部の強度を向上させることができる。
【0021】
また、補強リブを主補強リブと副補強リブとで構成することにより、効果的に縁部の強度を向上させることができる。
【0022】
また、副補強リブに切欠部を形成することにより、バックルの駆動部品と副補強リブとの干渉を回避することができ、アッパーカバーの形状(大きさ)を変更することなく、縁部の強度を向上させることができる。
【0023】
また、縁部に肉厚の薄い補強リブを形成することにより、成型時における縁部表面の樹脂のヒケを抑制することができ、きれいな意匠面を形成することができる。
【0024】
また、縁部の下端をベース部材の高さの50%以上の部分を覆い得る位置に配置することにより、ベース部材の端部を効果的に保持することができる。
【0025】
また、凸部を他の背面リブよりも厚く形成することにより、凸部の強度を向上させることができ、ベース部材の保持力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るバックルの部品展開図である。
【図2】図1に示したベース部材を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は側面図、である。
【図3】図1に示したアッパーカバーを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は側面図、(D)は図3(B)におけるD矢視図、(E)は図3(B)におけるE矢視図、である。
【図4】図1に示したロワーカバーを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は図4(B)におけるC矢視図、である。
【図5】ベース部材、アッパーカバー及びロワーカバーの接続状態を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るシートベルト装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態に係るバックルの部品展開図である。図2は、図1に示したベース部材を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は側面図、である。図3は、図1に示したアッパーカバーを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は側面図、(D)は図3(B)におけるD矢視図、(E)は図3(B)におけるE矢視図、である。図4は、図1に示したロワーカバーを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は図4(B)におけるC矢視図、である。
【0028】
本発明の実施形態に係るバックル1は、図1〜図4に示すように、乗員を座席に拘束するシートベルト装置のタングと着脱可能に係合するバックル1であって、タングを挿入するタング挿入口2と、挿入されたタングに係合するラッチ部材3と、ラッチ部材3の係合を解除する操作ボタン4と、ラッチ部材3及び操作ボタン4を支持するベース部材5と、タング挿入口2が形成されるとともにベース部材5が装着されるアッパーカバー6と、アッパーカバー6に接続されベース部材5を覆うロワーカバー7と、タング挿入口2の反対側に形成されベース部材5に固定される固定部材10を挿通する開口部8と、を有し、アッパーカバー6に形成され開口部8の一部を形成するとともにベース部材5の上部を覆う縁部61と、ロワーカバー7の内面に突出するように形成された凸部71と、ベース部材5に形成され凸部71を挿通可能な係止孔51と、を有する。
【0029】
前記タング挿入口2は、タングの挿入を案内する部分である。具体的には、タング挿入口2は、図1に示したように、アッパーカバー6の前方に形成された開口部である。また、タング挿入口2の外周には、タングの先端を円滑にバックル1内に進入させるためのテーパ部21が形成されている。なお、タング挿入口2と隣接する開口部は、操作ボタン4が挿入される操作ボタン用開口部62である。
【0030】
前記ラッチ部材3は、挿入されたタングに係合してタングを拘束する部品である。具体的には、ラッチ部材3は、図1に示したように、ベース部材5に回動可能に支持される一対のフランジ部31と、タングの進入方向に対して略垂直な方向に回動してタングの開口部に係合する爪部32と、を有する。また、ラッチ部材3は、ラッチ部材3の上面部上でスライド可能に配置されたスライダ33と、スライダ33をフランジ部31側から爪部32側に向かって付勢するスライダスプリング34と、を有する。スライダ33は、バックル1の側面方向に延出された一対の腕部33aを有し、腕部33aは操作ボタン4に係止可能に構成されている。
【0031】
前記操作ボタン4は、ラッチ部材3の係合を解除してタングをバックル1から引き抜き可能にする部品である。具体的には、操作ボタン4は、図1に示したように、ベース部材5の長手方向に沿ってスライド可能に構成されており、前面に配置され乗員が押圧する操作部41と、操作部41からベース部材5の内側に配置されるように延出された内側ガイド部42と、操作部41からベース部材5の外側に配置されるように延出された外側ガイド部43と、を有する。
【0032】
前記ベース部材5は、ラッチ部材3や操作ボタン4等の駆動部品を支持する基板となる部品である。また、バックル1は、図1に示したように、ラッチ部材3及び操作ボタン4の他に、ベース部材5に支持されタングに係合したラッチ部材3の係合解除方向の移動を拘束するロックピン52と、ベース部材5の長手方向に摺動可能に配置されタングをバックル1から離脱させる方向に付勢可能なエジェクタ53と、エジェクタ53を付勢するエジェクタスプリング54と、ベース部材5に回動可能に支持されタングとラッチ部材3との係合時にスライダ33の移動を拘束するレバー部材55と、を有する。
【0033】
タングをタング挿入口2に挿入するとエジェクタ53がタングによって押し込まれ、エジェクタ53がフランジ部31に接触し、ラッチ部材3をタングに係合する方向に回動させる。ラッチ部材3の回動に伴ってスライダ33も回動し、ロックピン52の側面部により拘束されていたスライダ33がスライダスプリング34の付勢力によってロックピン52の下側に滑り込む。かかる操作によって、ラッチ部材3がタングに係合し、バックル1によってタングを拘束することができる。
【0034】
一方、タングを解除する場合には、操作ボタン4を押し込むことによって、スライダ33が押し込まれ、スライダスプリング34の付勢力によって、スライダ33はロックピン52の下側から側面部に押し出される。それに伴ってラッチ部材3が係合解除方向に回動し、タングはラッチ部材3から解放される。そして、タングは、エジェクタスプリング54の付勢力によって、エジェクタ53を介してバックル1の外部に放出される。
【0035】
また、ベース部材5は、図2(A)に示したように、平板状の底部5aと、底部5aの両側部に立設された一対の側面部5bと、を有する。
【0036】
底部5aには、図2(B)に示したように、エジェクタ53をスライド可能に保持するエジェクタ通路5cと、エジェクタスプリング54を支持するエジェクタスプリング保持部5dと、固定部材10の一部を挿通可能な固定用開口部5eと、ロワーカバー7に形成された凸部71を挿通可能な係止孔51と、が形成されている。なお、係止孔51は、貫通孔であってもよいし、底部5aに形成された窪みであってもよい。
【0037】
側面部5bには、図2(C)に示したように、ラッチ部材3のフランジ部31を回動可能に支持するラッチ部材支持部5fと、スライダ33の移動を許容するスライダ通路5gと、ロックピン52を支持するロックピン支持部5hと、操作ボタン4の外側ガイド部43に形成された凸部や爪部等を案内する操作ボタンガイド孔5i,5jと、レバー部材55を回動可能に支持するレバー部材支持部5kと、が形成されている。また、ベース部材5は、一般に金属部品であるため軽量化のために肉抜孔5m,5nが適宜形成される。
【0038】
前記アッパーカバー6は、ラッチ部材3や操作ボタン4が配置されたベース部材5を収容する部品である。具体的には、アッパーカバー6は、図3(A)に示したように、バックル1の上面を形成する上面部6aと、上面部6aの両側部に立設された一対の側面部6bと、を有する。図3(A)〜(C)に示したように、アッパーカバー6の前方には、側面部6b間に掛け渡されてタング挿入口2を構成するブリッジ部6cが形成されている。図3(C)に示したように、ブリッジ部6cの後方には凹部6dが形成されており、この凹部6dにロワーカバー7が接続される。また、図3(D)に示したように、ブリッジ部6cの前面にはタング挿入口2の外周にテーパ部21が形成されている。また、タング挿入口2と連通するように隣接された操作ボタン用開口部62には、操作ボタン4の操作部41が挿入される。
【0039】
図3(C)に示したように、上面部6aは、前方(タング挿入口2側)と反対側の後方でなだらかに傾斜した傾斜面を有し、その端部に縁部61が立設されている。図6(E)に示したように、縁部61は、開口部8の一部を構成する凹部8aを有する。
【0040】
図3(A)及び(B)に示したように、アッパーカバー6は、縁部61に対して略垂直に内面に形成された補強リブ63を有する。かかる補強リブ63を形成することにより、縁部61の強度を向上させることができる。また、補強リブ63は、一対の主補強リブ63aと、主補強リブ63aの間に縁部61と略平行に形成された複数の副補強リブ63bと、により構成されている。かかる構成により、縁部61の強度を容易に向上させることができる。また、縁部61に接続された主補強リブ63aは、縁部61よりも肉厚が薄く形成される。縁部61に肉厚の薄い主補強リブ63aを形成することにより、成型時における縁部表面の樹脂のヒケを抑制することができ、きれいな意匠面を形成することができる。また、副補強リブ63bは、ラッチ部材3又は操作ボタン4の駆動部品(例えば、スライダ33)との干渉を回避可能な切欠部63cを有する。かかる切欠部63cを形成することにより、バックル1の駆動部品と副補強リブ63bとの干渉を回避することができ、アッパーカバー6の形状(大きさ)を変更することなく、縁部61の強度を向上させることができる。
【0041】
前記ロワーカバー7は、アッパーカバー6に装着されたベース部材5を覆い隠す蓋部材である。具体的には、ロワーカバー7は、図4(A)に示したように、バックル1の下面を形成する下面部7aと、下面部7aの両側部に立設された一対の側面部7bと、を有する。また、図4(C)に示したように、ロワーカバー7の後方には、下面部7a及び側面部7bに連設された縁部7cを有し、縁部7cには開口部8の一部を構成する凹部8bが形成されている。また、図4(A)及び(C)に示したように、下面部7aには、アッパーカバー6への接続時にアッパーカバー6の側面部6bの内面に形成された窪みに係合する一対の爪部7dが立設されている。一対の爪部7dの隙間には、ベース部材5が配置され、一対の爪部7dは、ベース部材5を案内するガイド部材としての機能も有する。
【0042】
また、図4(B)及び(C)に示したように、爪部7dの対峙する根元部には、ベース部材5の肉抜孔5nに係止可能な矩形のガイドリブ7eが配置されている。ガイドリブ7eは、ベース部材5のバックル1の長手方向の移動を拘束する部品でもあるため、ロワーカバー7の内面に形成された他の背面リブ7fよりも厚く形成されている。
【0043】
また、一対のガイドリブ7eの中間部には、凸部71が立設されている。かかる凸部71は、ベース部材5の係止孔51に挿通される。凸部71もガイドリブ7eと同様に、ベース部材5のバックル1の長手方向の移動を拘束する部品であるため、少なくとも部分的にロワーカバー7の内面に形成された他の背面リブ7fよりも厚く形成されている。かかる構成により、凸部71の強度を容易に向上させることができ、ベース部材5の保持力を向上させることができる。なお、凸部71の肉厚を、係止孔51に係止可能な均一な厚さに形成するようにしてもよい。
【0044】
前記開口部8は、バックル1の内部から外部に導出される部品(例えば、固定部材10等)を挿通する開口である。具体的には、ロワーカバー7をアッパーカバー6に接続したときに、アッパーカバー6の凹部8aとロワーカバー7の凹部8bとが組み合わされて一つの開口部8を構成する(図5参照)。
【0045】
前記固定手段10は、例えば、図1に示したように、車体側に接続されるブラケット10aと、ブラケット10aをベース部材5に固定するリベット10bと、を有する。ブラケット10aは、ベース部材5に形成された固定用開口部5e(図2参照)にリベット10bを介して固定される。
【0046】
また、バックル1は、図1に示したように、可動接点91と固定接点92を有するバックルスイッチ9を有していてもよい。可動接点91は、エジェクタ53とともにバックル1の長手方向に移動可能なスイッチスライダ93に保持されている。固定接点92は、ベース部材5に配置される固定接点保持手段94に固定されている。また、固定接点保持手段94の上部には接点部を保護するシールドプレート95が配置されていてもよい。
【0047】
かかるバックルスイッチ9は、タングがバックル1内に挿通されるとエジェクタ53が後方に押し込まれ、それと同時にスイッチスライダ93も移動する。そして、ラッチ部材3がタングに係合した状態で可動接点91は固定接点92と接触し通電される。かかる通電によってタングがバックル1に係合した信号が所定の電子制御ユニット(ECU)に送信される。バックルスイッチ9の配線(ハーネス)は、開口部8から外部に導出される。なお、バックルスイッチ9は、上述したスライドスイッチに限定されるものではなく、磁界を利用したホールスイッチであってもよい。
【0048】
ここで、図5は、ベース部材5、アッパーカバー6及びロワーカバー7の接続状態を示す断面図である。なお、図5において、ラッチ部材3や操作ボタン4等の他の部品については、図を省略してある。
【0049】
図5に示したように、アッパーカバー6に形成された縁部61は、ベース部材5の側面部5bに形成された段差部5pと十分に対峙する幅Aに形成されている。また、縁部61の下端は、ベース部材5の高さHの50%以上を覆い得る位置に配置されている。すなわち、縁部61の下端は、ベース部材5の最上部から距離Zだけ離れた位置に配置されており、距離Z/高さH≧1/2の条件を満たす位置に配置されている。また、ロワーカバー7をアッパーカバー6に接続した状態で、ロワーカバー7に立設された凸部71は、ベース部材5に形成された係止孔51に挿通される。
【0050】
したがって、本発明の実施形態に係るバックル1によれば、幅Aを有する縁部61を構成することによってアッパーカバー6によりベース部材5の端部(段差部5p)を十分に保持することができ、ロワーカバー7とベース部材5とを凸部71と係止孔51とにより係止させたことによりロワーカバー7のベース部材5の保持力を向上させることができ、ベース部材5、アッパーカバー6及びロワーカバー7の間における相互の保持力を向上させることができる。その結果、バックル1の構造部品の間に大きなガタが生じにくく、振動や異音の発生を抑制することができ、乗員に与える不快感を低減することができる。
【0051】
最後に、本発明の実施形態に係るシートベルト装置について説明する。ここで、図6は、本発明の実施形態に係るシートベルト装置の全体構成図である。なお、図1に示した部品と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0052】
図6に示した本発明の実施形態に係るシートベルト装置は、乗員を座席11に拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うシートベルトリトラクタ12と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー13と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー14と、座席11の側面に配置されたバックル1と、ウェビングWに配置されたタング15と、を有し、タング15をバックル1に嵌着させることによって乗員をウェビングWで拘束するシートベルト装置であって、バックル1は図1〜図4に示した構成を有する。
【0053】
座席11は、例えば、乗員が着座する腰掛部11aと、乗員の背面に位置する背もたれ部11bと、乗員の頭部を支持するヘッドレスト部11cと、を備えている。シートベルトリトラクタ12は、例えば、車体側のセンターピラー16内に格納される。また、一般に、バックル1は腰掛部11aの側面に配置されることが多く、ベルトアンカー14は腰掛部11aの下面に配置されることが多い。また、ガイドアンカー13は、車体のセンターピラー16に配置されることが多い。
【0054】
そして、乗員がシートベルトを装着する場合には、タング15をバックル1に嵌着させる。このとき、ウェビングWは、シートベルトリトラクタ12から引き出され、ガイドアンカー13及びバックル1に固定されたタング15を介して、ベルトアンカー14及びシートベルトリトラクタ12の間に展張され、乗員を拘束する。また、乗員の降車時にようにシートベルトを解除した場合(タング15をバックル1から解除した場合)には、ウェビングWはシートベルトリトラクタ12に巻き戻される。
【0055】
かかるシートベルト装置には、上述した本発明の実施形態に係るバックル1が採用されている。したがって、アッパーカバー6によりベース部材5の端部を十分に保持することができ、ロワーカバー7のベース部材5の保持力を向上させることができ、ベース部材5、アッパーカバー6及びロワーカバー7の間における相互の保持力を向上させることができる。その結果、バックル1の構造部品の間にガタが生じにくく、振動や異音の発生を抑制することができ、乗員に与える不快感を低減することができる。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されず、運転席用シートベルト装置、助手席用シートベルト装置、後部座席用シートベルト装置、チャイルドシート、車両以外の航空機、船舶、遊具等の種々の乗物に使用されるシートベルト装置に適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1…バックル
2…タング挿入口
3…ラッチ部材
4…操作ボタン
5…ベース部材
5a…底部
5b…側面部
5c…エジェクタ通路
5d…エジェクタスプリング保持部
5e…固定用開口部
5f…ラッチ部材支持部
5g…スライダ通路
5h…ロックピン支持部
5i,5j…操作ボタンガイド孔
5k…レバー部材支持部
5m,5n…肉抜孔
5p…段差部
6…アッパーカバー
6a…上面部
6b…側面部
6c…ブリッジ部
6d…凹部
7…ロワーカバー
7a…下面部
7b…側面部
7c…縁部
7d…爪部
7e…ガイドリブ
7f…背面リブ
8…開口部
8a,8b…凹部
9…バックルスイッチ
10…固定部材
11…座席
11a…腰掛部
11b…背もたれ部
11c…ヘッドレスト部
12…シートベルトリトラクタ
13…ガイドアンカー
14…ベルトアンカー
15…タング
16…センターピラー
21…テーパ部
31…フランジ部
32…爪部
33…スライダ
33a…腕部
34…スライダスプリング
41…操作部
42…内側ガイド部
43…外側ガイド部
51…係止孔
52…ロックピン
53…エジェクタ
54…エジェクタスプリング
55…レバー部材
61…縁部
62…操作ボタン用開口部
63…補強リブ
63a…主補強リブ
63b…副補強リブ
63c…切欠部
71…凸部
91…可動接点
92…固定接点
93…スイッチスライダ
94…固定接点保持手段
95…シールドプレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を座席に拘束するシートベルト装置のタングと着脱可能に係合するバックルであって、
前記タングを挿入するタング挿入口と、挿入された前記タングに係合するラッチ部材と、該ラッチ部材の係合を解除する操作ボタンと、前記ラッチ部材及び前記操作ボタンを支持するベース部材と、前記タング挿入口が形成されるとともに前記ベース部材が装着されるアッパーカバーと、該アッパーカバーに接続され前記ベース部材を覆うロワーカバーと、前記タング挿入口の反対側に形成され前記ベース部材に固定される固定部材を挿通する開口部と、を有し、
前記アッパーカバーに形成され前記開口部の一部を形成するとともに前記ベース部材の上部を覆う縁部と、
前記ロワーカバーの内面に突出するように形成された凸部と、
前記ベース部材に形成され前記凸部を挿通可能な係止孔と、
を有することを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記アッパーカバーは、前記縁部に対して略垂直に内面に形成された補強リブを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記補強リブは、一対の主補強リブと、該主補強リブの間に前記縁部と略平行に形成された副補強リブと、により構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記副補強リブは、前記ラッチ部材又は前記操作ボタンの駆動部品との干渉を回避可能な切欠部を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のバックル。
【請求項5】
前記補強リブは、前記縁部よりも肉厚が薄く形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のバックル。
【請求項6】
前記縁部の下端は、前記ベース部材の高さの50%以上を覆い得る位置に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項7】
前記凸部は、少なくとも部分的に前記ロワーカバーの内面に形成された背面リブよりも厚く形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項8】
乗員を座席に拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、車体側に設けられ前記ウェビングを案内するガイドアンカーと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、前記座席の側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたタングと、を有し、前記タングを前記バックルに嵌着させることによって乗員を前記ウェビングで拘束するシートベルト装置であって、
前記バックルは、請求項1〜請求項7のいずれかに記載されたバックルである、ことを特徴とするシートベルト装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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