バッテリの充電システムおよび車両の充電システム
【課題】効率よく多様な充電電力を実現する。
【解決手段】充電システム400は、複数の充電器410,420,430と、充電器410,420,430を制御するコントローラ450とを備える。コントローラ450は、バッテリの残存容量から定まる必要電力Pc[W]と充電器410,420,430の定格出力電力Pr[W]とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する。
【解決手段】充電システム400は、複数の充電器410,420,430と、充電器410,420,430を制御するコントローラ450とを備える。コントローラ450は、バッテリの残存容量から定まる必要電力Pc[W]と充電器410,420,430の定格出力電力Pr[W]とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの充電システムおよび車両の充電システムに関し、特に、バッテリに対して電力を供給する充電器の数を変更可能な充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動モータからの駆動力で走行する電気自動車が知られている。一般的に、電気自動車には、電動モータに供給する電力を蓄えるバッテリが搭載されている。バッテリは、たとえば充電ステーションおよび自宅などにおいて、電気自動車の外部から供給される電力により充電される。
【0003】
充電ステーションなどの施設では、不特定多数の電気自動車のバッテリを充電する必要がある。したがって、複数のバッテリを充電する充電システムが必要である。
【0004】
特開平9−233710号公報(特許文献1)は、交流電源を整流する充電用整流回路と、この充電用整流回路と逆並列に接続され複数に分割された蓄電池の電気量を交流電源に回生する回生用整流回路と、充電用整流回路と分割された蓄電池との間に設けられた複数の昇降圧コンバータとを備える蓄電池化成用充放電装置を開示する。この公報に記載の蓄電池化成用充放電装置によれば、各昇降圧コンバータが個別に蓄電池の充電又は放電を行うことができる。したがって、複数の蓄電池の充電と放電を同時に行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−233710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両に搭載されたバッテリは多種多様であるため、充電ステーションにおいては様々な充電電力に対応しなければならない。しかしながら、個々の充電器(たとえば昇降圧コンバータ)を、想定し得る最大の充電電力を実現可能に構成することは、そのような充電器で小さな充電電力を出力する場合もあることを考慮すると非効率である。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、効率よく多様な充電電力を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施例において、バッテリの充電システムは、複数の充電器と、複数の充電器を制御する制御装置とを備える。制御装置は、バッテリの残存容量から定まる必要電力と充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する。
【0009】
この構成によると、たとえば充電器の数を増やすことにより、定格の電力を充電器に出力させながら、定格出力電力を超える充電電力を実現できる。逆に、充電器の数を減らすことにより、定格の電力を充電器に出力させながら、小さい充電電力を実現できる。充電器は、定格の電力を出力するため、効率良く稼動することができる。
【0010】
別の実施例においては、電力を供給する充電器の定格出力電力の合計が必要電力以上にされる。
【0011】
この構成によると、必要電力を満たすことができる。
さらに別の実施例においては、残存容量が大きいほど必要電力が小さくされる。
【0012】
この構成によると、バッテリが満充電に近い状態において電力が過剰に充電されることを抑制できる。
【0013】
さらに別の実施例においては、充電システムに複数のバッテリが接続された状態において、複数の充電器のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリが、残存容量が増大したバッテリから別のバッテリに変更される。
【0014】
この構成によると、複数のバッテリを順番に充電できる。
さらに別の実施例においては、複数のバッテリのうち、残存容量が低いバッテリに優先して電力が供給される。優先して電力が供給されたバッテリの残存容量が増大すると、複数の充電器のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリが、優先して電力が供給されたバッテリから別のバッテリに変更される。
【0015】
この構成によると、残存容量が低いバッテリから順番に複数のバッテリを充電できる。
さらに別の実施例においては、充電器がバッテリを放電する際、バッテリを放電する充電器の数が、充電システムに接続された機器の消費電力に応じて変更される。
【0016】
この構成によると、たとえばバッテリを放電させる充電器の数を増やすことにより、大きな消費電力に対応できる。逆に、バッテリを放電させる充電器の数を減らすことにより、小さい消費電力に対応できる。
【0017】
さらに別の実施例においては、充電システムに接続された機器の消費電力が小さいほど、バッテリを放電する充電器の数が減らされる。
【0018】
この構成によると、バッテリを放電させる充電器の数を減らすことにより、小さな消費電力に対応できる。
【0019】
さらに別の実施例においては、バッテリの残存容量から定まる必要電力と充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数が減らされる。
【0020】
この構成によると、バッテリを放電させる充電器の数を減らすことにより、小さな消費電力に対応できる。
【0021】
さらに別の実施例において、バッテリを搭載した車両の充電システムは、複数の充電器と、複数の充電器を制御する制御装置とを備える。制御装置は、バッテリの残存容量から定まる必要電力と充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する。
【0022】
この構成によると、たとえば充電器の数を増やすことにより、定格の電力を充電器に出力させながら、定格出力電力を超える充電電力を実現できる。逆に、充電器の数を減らすことにより、定格の電力を充電器に出力させながら、小さい充電電力を実現できる。充電器は、定格の電力を出力するため、効率良く稼動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電気自動車を示す概略構成図である。
【図2】電気自動車の電気システムを示す図である。
【図3】充電システムを示す図である。
【図4】充電器を示す図である。
【図5】3つの充電器が、単一の車両に搭載されたバッテリに接続された状態を示す図である。
【図6】1つの充電器のみが、単一の車両に搭載されたバッテリに接続された状態を示す図である。
【図7】複数の車両の夫々に搭載されたバッテリが充電システムに接続された状態を示す図である。
【図8】1つのバッテリに対して電力を供給する充電器の数を「3」から「2」に変更した状態を示す図である。
【図9】1つのバッテリに対して電力を供給する充電器の数を「2」から「1」に変更した状態を示す図である。
【図10】1つのバッテリに対して電力の供給を終了した状態を示す図である。
【図11】バッテリを充電するためにコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
【図12】電力を供給する充電器の数を減らすことによって充電電力を低減した場合の出力効率と、単一の充電器が出力する電力を減らすことによって充電電力を低減した場合の出力効率とを比較する図である。
【図13】3つの充電器によって単一のバッテリを放電するときの充電システムを示す図である。
【図14】1つの充電器によって単一のバッテリを放電するときの充電システムを示す図である。
【図15】バッテリを放電する際にコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
図1を参照して、電気自動車には、電動モータ100と、バッテリ110と、ECU(Electronic Control Unit)120とが搭載される。電気自動車は、電動モータ100からの駆動力により走行する。すなわち、電動モータ100が駆動源として電気自動車に搭載される。
【0026】
電動モータ100は、たとえば、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。電動モータ100は、バッテリ110に蓄えられた電力により駆動する。電動モータ100の駆動力は、駆動輪130に伝えられる。
【0027】
電気自動車の回生制動時には、駆動輪130により電動モータ100が駆動され、電動モータ100が発電機として作動する。これにより電動モータ100は、制動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。電動モータ100により発電された電力は、バッテリ110に蓄えられる。
【0028】
バッテリ110は、複数のバッテリセルを一体化したバッテリモジュールを、さらに複数直列に接続して構成された組電池である。バッテリ110の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ110には、電動モータ100の他、電気自動車の外部の電源から供給される電力が充電される。
【0029】
なお、本実施の形態においては、一例として電気自動車を用いるが、内燃機関などのエンジンを搭載したハイブリッド車または航続距離拡張機能付電気自動車を用いてもよい。燃料電池を搭載した燃料電池車を用いてもよい。
【0030】
図2を参照して、電気自動車の電気システムについてさらに説明する。電気自動車には、コンバータ200と、インバータ210とが設けられる。
【0031】
コンバータ200は、リアクトルと、二つのnpn型トランジスタと、二つダイオードとを含む。リアクトルは、各バッテリの正極側に一端が接続され、2つのnpn型トランジスタの接続点に他端が接続される。
【0032】
2つのnpn型トランジスタは、直列に接続される。npn型トランジスタは、ECU120により制御される。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにダイオードがそれぞれ接続される。
【0033】
なお、npn型トランジスタとして、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。npn型トランジスタに代えて、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いることができる。
【0034】
バッテリ110から放電された電力を電動モータ100に供給する際、電圧がコンバータ200により昇圧される。逆に、電動モータ100により発電された電力をバッテリ110に充電する際、電圧がコンバータ200により降圧される。
【0035】
インバータ210は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つのnpn型トランジスタを有する。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードがそれぞれ接続される。そして、各アームにおける各npn型トランジスタの接続点は、電動モータ100の各コイルの中性点とは異なる端部にそれぞれ接続される。
【0036】
インバータ210は、バッテリ110から供給される直流電流を交流電流に変換し、電動モータ100に供給する。また、インバータ210は、電動モータ100により発電された交流電流を直流電流に変換する。コンバータ200およびインバータ210は、ECU120により制御される。
【0037】
図3を参照して、バッテリを充電する充電ステーションについて説明する。充電ステーションには、AC/DC変換回路402と、充電器410,420,430と、リレー440と、コントローラ450とを備える充電システム400が設けられる。図3においては、3つの充電器410,420,430を示すが、2つ、または4つ以上の充電器を設けてもよい。また、リレー440の数および構成は、図示するものに限定されない。
【0038】
一例として、充電システム400は、3台の車両のバッテリを接続可能であるように、3つのポート471,472,473が設けられる。なお、2台、または4台以上の車両のバッテリを接続可能であるように構成してもよい。充電システム400、特に充電器410,420,430は、コントローラ450により制御される。
【0039】
AC/DC変換回路402は、単相ブリッジ回路から成る。AC/DC変換回路402は、たとえば電力会社が所有する施設(発電所、変電所など)から供給された交流電力を直流電力に変換する。また、AC/DC変換回路402は、コイルをリアクトルとして用いることにより電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路としても機能し得る。
【0040】
充電器410,420,430は、AC/DC変換回路402とバッテリとの間に接続される。充電器410,420,430は、一例としてバッテリ114,116,118を充電するための電力を出力する。充電器410,420,430は、絶縁トランスを有する絶縁型充電器である。絶縁型の充電器を用いなくてもよい。
【0041】
DC/DCコンバータが充電器410,420,430として用いられる。複数の充電器410,420,430の全てが、双方向インバータである。複数の充電器410,420,430の各々は、バッテリ114,116,118の充電が停止された状態においてバッテリ114,116,118を放電可能である。
【0042】
図4に示すように、充電器410は、DC/AC変換回路412と、絶縁トランス414と、DC/AC変換回路416とを含む。
【0043】
DC/AC変換回路412は、単相ブリッジ回路から成る。電力会社から供給された電力を用いてバッテリを充電する場合、DC/AC変換回路412は、直流電力を高周波の交流電力に変換して絶縁トランス414へ出力する。一方、バッテリを放電する場合、DC/AC変換回路412は、絶縁トランス414から出力される交流電力を直流電力に整流する。
【0044】
絶縁トランス414は、磁性材から成るコアと、コアに巻回された一次コイルおよび二次コイルを含む。一次コイルおよび二次コイルは、電気的に絶縁されており、それぞれDC/AC変換回路412およびDC/AC変換回路416に接続される。絶縁トランス414は、DC/AC変換回路412から受ける高周波の交流電力を一次コイルおよび二次コイルの巻数比に応じた電圧レベルに変換してDC/AC変換回路416へ出力する。
【0045】
DC/AC変換回路416は、単相ブリッジ回路から成る。電力会社から供給された電力を用いてバッテリを充電する場合、DC/AC変換回路416は、絶縁トランス414から出力される交流電力を直流電力に整流する。一方、バッテリを放電する場合、DC/AC変換回路416は、直流電力を高周波の交流電力に変換して絶縁トランス414へ出力する。充電器410の電流I1は、電流センサ451により検出され、電圧V1は、電圧センサ461により検出され、コントローラ450に入力される。
【0046】
充電器420および充電器430は、充電器410と同様の構成を備えるため、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。本実施の形態おいて、3つの充電器410,420,430の定格出力電圧Pr[W]は同じである。
【0047】
図5を参照して、リレー440は、充電器410,420,430の各々に接続されるバッテリを切り替える。一例として、図5に示す状態では、全ての充電器410,420,430が、単一の車両に搭載されたバッテリ140に接続される。この状態では、全ての充電器410,420,430が、単一のバッテリ140に対して電力を供給する。したがって、電力を供給する充電器の数は「3」である。図6に示す状態では、充電器410のみに、バッテリ140が接続される。この状態では、充電器410のみが、単一のバッテリ140に対して電力を供給する。したがって、電力を供給する充電器の数は「1」である。各充電器410,420,430は、出力電力が定格出力電力になるように稼動する。
【0048】
本実施の形態において、コントローラ450は、バッテリの残存容量(SOC:State Of Charge)から定まる必要電力と充電器410,420,430の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する。
【0049】
バッテリの残存容量は、充電システム400に接続された車両の電池情報監視ユニット122から、有線または無線によりコントローラ450に通知される。その他、コントローラ450は、電池情報監視ユニット122から、車両に搭載されたバッテリの残存容量に対する充電電流の特性を示すデータ、ならびに残存容量に対する電圧の特性を示すデータを取得する。これらの特性ならびに取得した残存容量に基づき、コントローラ450は、充電システム400に接続されたバッテリの充電に必要な必要電力Pc[W]を算出する。必要電力Pcは、残存容量が大きいほど小さくされる。なお、コントローラ450が必要電力Pcを算出する代わりに、各車両の電池情報監視ユニット122が必要電力Pcを算出し、コントローラ450に通知するようにしてもよい。
【0050】
電力を供給する充電器の数Mは、充電器410,420,430の定格出力電力Pr[W]の合計が必要電力Pc以上になるように定められる。より具体的には、充電システム400に設けられた充電器の数を「N(本実施の形態においては「3」)」とし、
〔数1〕
Pc≦Pr×N・・・(1)
である場合、
〔数2〕
Pr×(M−1)<Pc≦Pr×M・・・(2)
を満たす「M」が、電力を供給する充電器の数として定められる。ただし、
〔数3〕
Pc>Pr×N・・・(3)
である場合、
M=Nである。したがって、本実施の形態においては、M=3である。
【0051】
さらに、本実施の形態においては、図7に示すように複数の車両の夫々に搭載されたバッテリ141,142,143が充電システム400に接続された場合、コントローラ450は、充電器410,420,430に、残存容量が低いバッテリに優先して電力を供給させる。図7に示す例において、バッテリ141、バッテリ142、バッテリ143の順に残存容量が低いと想定すると、バッテリ141に優先して電力が供給される。図7中の斜線で示す領域が各バッテリの残存容量を表す。
【0052】
一例として、バッテリ141の充電に必要な必要電力Pc>定格出力電力Pr×3であると想定する。したがって、全ての充電器410,420,430がバッテリ141に接続され、バッテリ141のみに全ての充電器410,420,430から電力が供給される。
【0053】
その後、図8に示すように、Pr×1<Pc≦Pr×2となる値501まで、優先して電力が供給されたバッテリ141の残存容量が増大すると、コントローラ450は、複数の充電器410,420,430のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリを、優先して電力が供給されたバッテリ141から別のバッテリに変更する。図8に示す例では、充電器430が電力を供給するバッテリが、バッテリ141からバッテリ142に変更される。その結果、バッテリ141に電力を供給する充電器の数が「3」から「2」に変更される。
【0054】
さらにその後、図9に示すように、Pr×0<Pc≦Pr×1となる値502まで、優先して電力が供給されたバッテリ141の残存容量が増大すると、コントローラ450は、さらに、充電器420が電力を供給するバッテリを、バッテリ141からバッテリ142に変更する。その結果、バッテリ141に電力を供給する充電器の数が「2」から「1」に変更される。一方、バッテリ142に電力を供給する充電器の数が「1」から「2」に変更される。
【0055】
さらにその後、図10に示すように、Pc=0となる値503まで、優先して電力が供給されたバッテリ141の残存容量が増大すると、バッテリ141への充電を完了すべく、コントローラ450は、充電器410が電力を供給するバッテリを、バッテリ141からバッテリ142に変更する。その結果、バッテリ141に電力を供給する充電器の数が「1」から「0」に変更される。
【0056】
また、図10に示す状態では、Pr×1<Pc≦Pr×2となる値501まで、バッテリ142の残存容量が増大しているため、バッテリ142に電力を供給する充電器の数を「2」のままにすべく、充電器430が電力を供給するバッテリが、バッテリ142からバッテリ143に変更されている。一方、バッテリ143に電力を供給する充電器の数が「0」から「1」に変更される。したがって、バッテリ143への充電が開始される。以降、バッテリ142ならびにバッテリ143の充電が停止されるまで、同様の動作が繰り返される。
【0057】
図11を参照して、バッテリを充電するためにコントローラ450が実行する処理について説明する。
【0058】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリの残存容量に対する充電電流の特性を示すデータ、ならびに残存容量に対する電圧の特性を示すデータが取得される。
【0059】
その後、S102にて、充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリの残存容量が取得され、S104にて、バッテリの充電に必要な必要電力Pcが算出される。必要電力Pcが算出されると、S106にて、バッテリに電力を供給する充電器の数が決定され、S108にて、決定された数の充電器を用いてバッテリが充電される。
【0060】
バッテリの残存容量が増大し、バッテリの充電に必要な必要電力Pcが減少するにともなって、電力を供給する充電器を減らすことにより、定格出力電力を充電器に出力させながら、小さい充電電力を実現できる。充電器は定格出力電力を出力するときに出力効率が最も良くなり、出力電力が定格出力電力よりも小さくなるほど出力効率が低下するという特性を有するため、図12に示すように、稼動する充電器に定格出力電力を出力させつつ、稼動する充電器の数を減らしながら、バッテリを充電することにより、たとえば上記した充電器410,420,430よりも大きな定格出力電力を有する単一の充電器の出力電力を定格出力電力よりも減少させながらバッテリを充電する場合に比べて、充電システムの全体的な出力効率を良くできる。すなわち、充電器の出力が定格出力電力よりも小さくなるにつれ、その出力効率は減少するものの、電力を供給する充電器の数を減らし、稼動する充電器から定格出力電力を出力させることによって、バッテリに供給される総電力を減少させつつ、高い出力効率を維持できる。
【0061】
以下、図13を参照して、充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリ600を放電する場合について説明する。充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリ600を放電する場合、図13に示すように、まず、全ての充電器410,420,430がバッテリ600に接続されるとともに、全ての充電器410,420,430がバッテリ600を放電するように稼動する。バッテリ600が放電した電力は、充電システム400に負荷として接続された、テレビおよび電子調理器具などの電気機器700に供給される。
【0062】
コントローラ450は、電圧センサ(図示せず)および電流センサ(図示せず)を用いて検出された、各充電器410,420,430の電流および電圧と、バッテリ600の放電時間とから、電気機器700の消費電力量(電力と放電時間の積)を監視し、消費電力(消費電力量を放電時間で除算した値)に応じて、バッテリ600を放電する充電器の数を変更する。一例として、電気機器700の消費電力が小さいほど、バッテリを放電する充電器の数が減らされる。図14に示す例では、バッテリ600を放電する充電器の数が「3」から「1」に変更される。したがって、充電器410のみがバッテリ600に接続され、バッテリ600を放電する。充電器420,430は停止される。なお、その後消費電力が増大するに伴って、バッテリ600を放電する充電器の数を増やすようにしてもよい。
【0063】
図15を参照して、バッテリを放電するためにコントローラ450が実行する処理について説明する。
【0064】
ステップ(以下、ステップをSと略す)200にて、充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリを放電するように、充電システム400の全ての充電器が稼動する。その後、S202にて、消費電力量から消費電力が算出され、S204にて、消費電力が小さいほど、バッテリを放電する充電器の数が減らされる。
【0065】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
100 電動モータ、110,114,116,118,140,141,142,143,600 バッテリ、120 ECU、122 電池情報監視ユニット、130 駆動輪、200 コンバータ、210 インバータ、400 充電システム、402 AC/DC変換回路、410,420,430 充電器、412,416 DC/AC変換回路、414 絶縁トランス、440 リレー、450 コントローラ、451 電流センサ、461 電圧センサ、471,472,473 ポート、700 電気機器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの充電システムおよび車両の充電システムに関し、特に、バッテリに対して電力を供給する充電器の数を変更可能な充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動モータからの駆動力で走行する電気自動車が知られている。一般的に、電気自動車には、電動モータに供給する電力を蓄えるバッテリが搭載されている。バッテリは、たとえば充電ステーションおよび自宅などにおいて、電気自動車の外部から供給される電力により充電される。
【0003】
充電ステーションなどの施設では、不特定多数の電気自動車のバッテリを充電する必要がある。したがって、複数のバッテリを充電する充電システムが必要である。
【0004】
特開平9−233710号公報(特許文献1)は、交流電源を整流する充電用整流回路と、この充電用整流回路と逆並列に接続され複数に分割された蓄電池の電気量を交流電源に回生する回生用整流回路と、充電用整流回路と分割された蓄電池との間に設けられた複数の昇降圧コンバータとを備える蓄電池化成用充放電装置を開示する。この公報に記載の蓄電池化成用充放電装置によれば、各昇降圧コンバータが個別に蓄電池の充電又は放電を行うことができる。したがって、複数の蓄電池の充電と放電を同時に行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−233710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両に搭載されたバッテリは多種多様であるため、充電ステーションにおいては様々な充電電力に対応しなければならない。しかしながら、個々の充電器(たとえば昇降圧コンバータ)を、想定し得る最大の充電電力を実現可能に構成することは、そのような充電器で小さな充電電力を出力する場合もあることを考慮すると非効率である。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、効率よく多様な充電電力を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施例において、バッテリの充電システムは、複数の充電器と、複数の充電器を制御する制御装置とを備える。制御装置は、バッテリの残存容量から定まる必要電力と充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する。
【0009】
この構成によると、たとえば充電器の数を増やすことにより、定格の電力を充電器に出力させながら、定格出力電力を超える充電電力を実現できる。逆に、充電器の数を減らすことにより、定格の電力を充電器に出力させながら、小さい充電電力を実現できる。充電器は、定格の電力を出力するため、効率良く稼動することができる。
【0010】
別の実施例においては、電力を供給する充電器の定格出力電力の合計が必要電力以上にされる。
【0011】
この構成によると、必要電力を満たすことができる。
さらに別の実施例においては、残存容量が大きいほど必要電力が小さくされる。
【0012】
この構成によると、バッテリが満充電に近い状態において電力が過剰に充電されることを抑制できる。
【0013】
さらに別の実施例においては、充電システムに複数のバッテリが接続された状態において、複数の充電器のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリが、残存容量が増大したバッテリから別のバッテリに変更される。
【0014】
この構成によると、複数のバッテリを順番に充電できる。
さらに別の実施例においては、複数のバッテリのうち、残存容量が低いバッテリに優先して電力が供給される。優先して電力が供給されたバッテリの残存容量が増大すると、複数の充電器のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリが、優先して電力が供給されたバッテリから別のバッテリに変更される。
【0015】
この構成によると、残存容量が低いバッテリから順番に複数のバッテリを充電できる。
さらに別の実施例においては、充電器がバッテリを放電する際、バッテリを放電する充電器の数が、充電システムに接続された機器の消費電力に応じて変更される。
【0016】
この構成によると、たとえばバッテリを放電させる充電器の数を増やすことにより、大きな消費電力に対応できる。逆に、バッテリを放電させる充電器の数を減らすことにより、小さい消費電力に対応できる。
【0017】
さらに別の実施例においては、充電システムに接続された機器の消費電力が小さいほど、バッテリを放電する充電器の数が減らされる。
【0018】
この構成によると、バッテリを放電させる充電器の数を減らすことにより、小さな消費電力に対応できる。
【0019】
さらに別の実施例においては、バッテリの残存容量から定まる必要電力と充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数が減らされる。
【0020】
この構成によると、バッテリを放電させる充電器の数を減らすことにより、小さな消費電力に対応できる。
【0021】
さらに別の実施例において、バッテリを搭載した車両の充電システムは、複数の充電器と、複数の充電器を制御する制御装置とを備える。制御装置は、バッテリの残存容量から定まる必要電力と充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する。
【0022】
この構成によると、たとえば充電器の数を増やすことにより、定格の電力を充電器に出力させながら、定格出力電力を超える充電電力を実現できる。逆に、充電器の数を減らすことにより、定格の電力を充電器に出力させながら、小さい充電電力を実現できる。充電器は、定格の電力を出力するため、効率良く稼動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電気自動車を示す概略構成図である。
【図2】電気自動車の電気システムを示す図である。
【図3】充電システムを示す図である。
【図4】充電器を示す図である。
【図5】3つの充電器が、単一の車両に搭載されたバッテリに接続された状態を示す図である。
【図6】1つの充電器のみが、単一の車両に搭載されたバッテリに接続された状態を示す図である。
【図7】複数の車両の夫々に搭載されたバッテリが充電システムに接続された状態を示す図である。
【図8】1つのバッテリに対して電力を供給する充電器の数を「3」から「2」に変更した状態を示す図である。
【図9】1つのバッテリに対して電力を供給する充電器の数を「2」から「1」に変更した状態を示す図である。
【図10】1つのバッテリに対して電力の供給を終了した状態を示す図である。
【図11】バッテリを充電するためにコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
【図12】電力を供給する充電器の数を減らすことによって充電電力を低減した場合の出力効率と、単一の充電器が出力する電力を減らすことによって充電電力を低減した場合の出力効率とを比較する図である。
【図13】3つの充電器によって単一のバッテリを放電するときの充電システムを示す図である。
【図14】1つの充電器によって単一のバッテリを放電するときの充電システムを示す図である。
【図15】バッテリを放電する際にコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
図1を参照して、電気自動車には、電動モータ100と、バッテリ110と、ECU(Electronic Control Unit)120とが搭載される。電気自動車は、電動モータ100からの駆動力により走行する。すなわち、電動モータ100が駆動源として電気自動車に搭載される。
【0026】
電動モータ100は、たとえば、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。電動モータ100は、バッテリ110に蓄えられた電力により駆動する。電動モータ100の駆動力は、駆動輪130に伝えられる。
【0027】
電気自動車の回生制動時には、駆動輪130により電動モータ100が駆動され、電動モータ100が発電機として作動する。これにより電動モータ100は、制動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。電動モータ100により発電された電力は、バッテリ110に蓄えられる。
【0028】
バッテリ110は、複数のバッテリセルを一体化したバッテリモジュールを、さらに複数直列に接続して構成された組電池である。バッテリ110の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ110には、電動モータ100の他、電気自動車の外部の電源から供給される電力が充電される。
【0029】
なお、本実施の形態においては、一例として電気自動車を用いるが、内燃機関などのエンジンを搭載したハイブリッド車または航続距離拡張機能付電気自動車を用いてもよい。燃料電池を搭載した燃料電池車を用いてもよい。
【0030】
図2を参照して、電気自動車の電気システムについてさらに説明する。電気自動車には、コンバータ200と、インバータ210とが設けられる。
【0031】
コンバータ200は、リアクトルと、二つのnpn型トランジスタと、二つダイオードとを含む。リアクトルは、各バッテリの正極側に一端が接続され、2つのnpn型トランジスタの接続点に他端が接続される。
【0032】
2つのnpn型トランジスタは、直列に接続される。npn型トランジスタは、ECU120により制御される。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにダイオードがそれぞれ接続される。
【0033】
なお、npn型トランジスタとして、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。npn型トランジスタに代えて、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いることができる。
【0034】
バッテリ110から放電された電力を電動モータ100に供給する際、電圧がコンバータ200により昇圧される。逆に、電動モータ100により発電された電力をバッテリ110に充電する際、電圧がコンバータ200により降圧される。
【0035】
インバータ210は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つのnpn型トランジスタを有する。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードがそれぞれ接続される。そして、各アームにおける各npn型トランジスタの接続点は、電動モータ100の各コイルの中性点とは異なる端部にそれぞれ接続される。
【0036】
インバータ210は、バッテリ110から供給される直流電流を交流電流に変換し、電動モータ100に供給する。また、インバータ210は、電動モータ100により発電された交流電流を直流電流に変換する。コンバータ200およびインバータ210は、ECU120により制御される。
【0037】
図3を参照して、バッテリを充電する充電ステーションについて説明する。充電ステーションには、AC/DC変換回路402と、充電器410,420,430と、リレー440と、コントローラ450とを備える充電システム400が設けられる。図3においては、3つの充電器410,420,430を示すが、2つ、または4つ以上の充電器を設けてもよい。また、リレー440の数および構成は、図示するものに限定されない。
【0038】
一例として、充電システム400は、3台の車両のバッテリを接続可能であるように、3つのポート471,472,473が設けられる。なお、2台、または4台以上の車両のバッテリを接続可能であるように構成してもよい。充電システム400、特に充電器410,420,430は、コントローラ450により制御される。
【0039】
AC/DC変換回路402は、単相ブリッジ回路から成る。AC/DC変換回路402は、たとえば電力会社が所有する施設(発電所、変電所など)から供給された交流電力を直流電力に変換する。また、AC/DC変換回路402は、コイルをリアクトルとして用いることにより電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路としても機能し得る。
【0040】
充電器410,420,430は、AC/DC変換回路402とバッテリとの間に接続される。充電器410,420,430は、一例としてバッテリ114,116,118を充電するための電力を出力する。充電器410,420,430は、絶縁トランスを有する絶縁型充電器である。絶縁型の充電器を用いなくてもよい。
【0041】
DC/DCコンバータが充電器410,420,430として用いられる。複数の充電器410,420,430の全てが、双方向インバータである。複数の充電器410,420,430の各々は、バッテリ114,116,118の充電が停止された状態においてバッテリ114,116,118を放電可能である。
【0042】
図4に示すように、充電器410は、DC/AC変換回路412と、絶縁トランス414と、DC/AC変換回路416とを含む。
【0043】
DC/AC変換回路412は、単相ブリッジ回路から成る。電力会社から供給された電力を用いてバッテリを充電する場合、DC/AC変換回路412は、直流電力を高周波の交流電力に変換して絶縁トランス414へ出力する。一方、バッテリを放電する場合、DC/AC変換回路412は、絶縁トランス414から出力される交流電力を直流電力に整流する。
【0044】
絶縁トランス414は、磁性材から成るコアと、コアに巻回された一次コイルおよび二次コイルを含む。一次コイルおよび二次コイルは、電気的に絶縁されており、それぞれDC/AC変換回路412およびDC/AC変換回路416に接続される。絶縁トランス414は、DC/AC変換回路412から受ける高周波の交流電力を一次コイルおよび二次コイルの巻数比に応じた電圧レベルに変換してDC/AC変換回路416へ出力する。
【0045】
DC/AC変換回路416は、単相ブリッジ回路から成る。電力会社から供給された電力を用いてバッテリを充電する場合、DC/AC変換回路416は、絶縁トランス414から出力される交流電力を直流電力に整流する。一方、バッテリを放電する場合、DC/AC変換回路416は、直流電力を高周波の交流電力に変換して絶縁トランス414へ出力する。充電器410の電流I1は、電流センサ451により検出され、電圧V1は、電圧センサ461により検出され、コントローラ450に入力される。
【0046】
充電器420および充電器430は、充電器410と同様の構成を備えるため、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。本実施の形態おいて、3つの充電器410,420,430の定格出力電圧Pr[W]は同じである。
【0047】
図5を参照して、リレー440は、充電器410,420,430の各々に接続されるバッテリを切り替える。一例として、図5に示す状態では、全ての充電器410,420,430が、単一の車両に搭載されたバッテリ140に接続される。この状態では、全ての充電器410,420,430が、単一のバッテリ140に対して電力を供給する。したがって、電力を供給する充電器の数は「3」である。図6に示す状態では、充電器410のみに、バッテリ140が接続される。この状態では、充電器410のみが、単一のバッテリ140に対して電力を供給する。したがって、電力を供給する充電器の数は「1」である。各充電器410,420,430は、出力電力が定格出力電力になるように稼動する。
【0048】
本実施の形態において、コントローラ450は、バッテリの残存容量(SOC:State Of Charge)から定まる必要電力と充電器410,420,430の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する。
【0049】
バッテリの残存容量は、充電システム400に接続された車両の電池情報監視ユニット122から、有線または無線によりコントローラ450に通知される。その他、コントローラ450は、電池情報監視ユニット122から、車両に搭載されたバッテリの残存容量に対する充電電流の特性を示すデータ、ならびに残存容量に対する電圧の特性を示すデータを取得する。これらの特性ならびに取得した残存容量に基づき、コントローラ450は、充電システム400に接続されたバッテリの充電に必要な必要電力Pc[W]を算出する。必要電力Pcは、残存容量が大きいほど小さくされる。なお、コントローラ450が必要電力Pcを算出する代わりに、各車両の電池情報監視ユニット122が必要電力Pcを算出し、コントローラ450に通知するようにしてもよい。
【0050】
電力を供給する充電器の数Mは、充電器410,420,430の定格出力電力Pr[W]の合計が必要電力Pc以上になるように定められる。より具体的には、充電システム400に設けられた充電器の数を「N(本実施の形態においては「3」)」とし、
〔数1〕
Pc≦Pr×N・・・(1)
である場合、
〔数2〕
Pr×(M−1)<Pc≦Pr×M・・・(2)
を満たす「M」が、電力を供給する充電器の数として定められる。ただし、
〔数3〕
Pc>Pr×N・・・(3)
である場合、
M=Nである。したがって、本実施の形態においては、M=3である。
【0051】
さらに、本実施の形態においては、図7に示すように複数の車両の夫々に搭載されたバッテリ141,142,143が充電システム400に接続された場合、コントローラ450は、充電器410,420,430に、残存容量が低いバッテリに優先して電力を供給させる。図7に示す例において、バッテリ141、バッテリ142、バッテリ143の順に残存容量が低いと想定すると、バッテリ141に優先して電力が供給される。図7中の斜線で示す領域が各バッテリの残存容量を表す。
【0052】
一例として、バッテリ141の充電に必要な必要電力Pc>定格出力電力Pr×3であると想定する。したがって、全ての充電器410,420,430がバッテリ141に接続され、バッテリ141のみに全ての充電器410,420,430から電力が供給される。
【0053】
その後、図8に示すように、Pr×1<Pc≦Pr×2となる値501まで、優先して電力が供給されたバッテリ141の残存容量が増大すると、コントローラ450は、複数の充電器410,420,430のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリを、優先して電力が供給されたバッテリ141から別のバッテリに変更する。図8に示す例では、充電器430が電力を供給するバッテリが、バッテリ141からバッテリ142に変更される。その結果、バッテリ141に電力を供給する充電器の数が「3」から「2」に変更される。
【0054】
さらにその後、図9に示すように、Pr×0<Pc≦Pr×1となる値502まで、優先して電力が供給されたバッテリ141の残存容量が増大すると、コントローラ450は、さらに、充電器420が電力を供給するバッテリを、バッテリ141からバッテリ142に変更する。その結果、バッテリ141に電力を供給する充電器の数が「2」から「1」に変更される。一方、バッテリ142に電力を供給する充電器の数が「1」から「2」に変更される。
【0055】
さらにその後、図10に示すように、Pc=0となる値503まで、優先して電力が供給されたバッテリ141の残存容量が増大すると、バッテリ141への充電を完了すべく、コントローラ450は、充電器410が電力を供給するバッテリを、バッテリ141からバッテリ142に変更する。その結果、バッテリ141に電力を供給する充電器の数が「1」から「0」に変更される。
【0056】
また、図10に示す状態では、Pr×1<Pc≦Pr×2となる値501まで、バッテリ142の残存容量が増大しているため、バッテリ142に電力を供給する充電器の数を「2」のままにすべく、充電器430が電力を供給するバッテリが、バッテリ142からバッテリ143に変更されている。一方、バッテリ143に電力を供給する充電器の数が「0」から「1」に変更される。したがって、バッテリ143への充電が開始される。以降、バッテリ142ならびにバッテリ143の充電が停止されるまで、同様の動作が繰り返される。
【0057】
図11を参照して、バッテリを充電するためにコントローラ450が実行する処理について説明する。
【0058】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリの残存容量に対する充電電流の特性を示すデータ、ならびに残存容量に対する電圧の特性を示すデータが取得される。
【0059】
その後、S102にて、充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリの残存容量が取得され、S104にて、バッテリの充電に必要な必要電力Pcが算出される。必要電力Pcが算出されると、S106にて、バッテリに電力を供給する充電器の数が決定され、S108にて、決定された数の充電器を用いてバッテリが充電される。
【0060】
バッテリの残存容量が増大し、バッテリの充電に必要な必要電力Pcが減少するにともなって、電力を供給する充電器を減らすことにより、定格出力電力を充電器に出力させながら、小さい充電電力を実現できる。充電器は定格出力電力を出力するときに出力効率が最も良くなり、出力電力が定格出力電力よりも小さくなるほど出力効率が低下するという特性を有するため、図12に示すように、稼動する充電器に定格出力電力を出力させつつ、稼動する充電器の数を減らしながら、バッテリを充電することにより、たとえば上記した充電器410,420,430よりも大きな定格出力電力を有する単一の充電器の出力電力を定格出力電力よりも減少させながらバッテリを充電する場合に比べて、充電システムの全体的な出力効率を良くできる。すなわち、充電器の出力が定格出力電力よりも小さくなるにつれ、その出力効率は減少するものの、電力を供給する充電器の数を減らし、稼動する充電器から定格出力電力を出力させることによって、バッテリに供給される総電力を減少させつつ、高い出力効率を維持できる。
【0061】
以下、図13を参照して、充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリ600を放電する場合について説明する。充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリ600を放電する場合、図13に示すように、まず、全ての充電器410,420,430がバッテリ600に接続されるとともに、全ての充電器410,420,430がバッテリ600を放電するように稼動する。バッテリ600が放電した電力は、充電システム400に負荷として接続された、テレビおよび電子調理器具などの電気機器700に供給される。
【0062】
コントローラ450は、電圧センサ(図示せず)および電流センサ(図示せず)を用いて検出された、各充電器410,420,430の電流および電圧と、バッテリ600の放電時間とから、電気機器700の消費電力量(電力と放電時間の積)を監視し、消費電力(消費電力量を放電時間で除算した値)に応じて、バッテリ600を放電する充電器の数を変更する。一例として、電気機器700の消費電力が小さいほど、バッテリを放電する充電器の数が減らされる。図14に示す例では、バッテリ600を放電する充電器の数が「3」から「1」に変更される。したがって、充電器410のみがバッテリ600に接続され、バッテリ600を放電する。充電器420,430は停止される。なお、その後消費電力が増大するに伴って、バッテリ600を放電する充電器の数を増やすようにしてもよい。
【0063】
図15を参照して、バッテリを放電するためにコントローラ450が実行する処理について説明する。
【0064】
ステップ(以下、ステップをSと略す)200にて、充電システム400に接続された車両に搭載されたバッテリを放電するように、充電システム400の全ての充電器が稼動する。その後、S202にて、消費電力量から消費電力が算出され、S204にて、消費電力が小さいほど、バッテリを放電する充電器の数が減らされる。
【0065】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
100 電動モータ、110,114,116,118,140,141,142,143,600 バッテリ、120 ECU、122 電池情報監視ユニット、130 駆動輪、200 コンバータ、210 インバータ、400 充電システム、402 AC/DC変換回路、410,420,430 充電器、412,416 DC/AC変換回路、414 絶縁トランス、440 リレー、450 コントローラ、451 電流センサ、461 電圧センサ、471,472,473 ポート、700 電気機器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの充電システムであって、
複数の充電器と、
前記複数の充電器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記バッテリの残存容量から定まる必要電力と前記充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する、バッテリの充電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、電力を供給する充電器の定格出力電力の合計が前記必要電力以上にされる、請求項1に記載のバッテリの充電システム。
【請求項3】
残存容量が大きいほど前記必要電力が小さくされる、請求項2に記載のバッテリの充電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記充電システムに複数のバッテリが接続された状態において、前記複数の充電器のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリを、残存容量が増大したバッテリから別のバッテリに変更する、請求項3に記載のバッテリの充電システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記複数のバッテリのうち、残存容量が低いバッテリに優先して電力を供給させ、
前記優先して電力が供給されたバッテリの残存容量が増大すると、前記複数の充電器のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリを、前記優先して電力が供給されたバッテリから別のバッテリに変更する、請求項4に記載のバッテリの充電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記充電器が前記バッテリを放電する際、前記バッテリを放電する充電器の数を、前記充電システムに接続された機器の消費電力に応じて変更する、請求項1に記載のバッテリの充電システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記充電システムに接続された機器の消費電力が小さいほど、前記バッテリを放電する充電器の数を減らす、請求項6に記載のバッテリの充電システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記バッテリの残存容量から定まる必要電力と前記充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を減らす、請求項1に記載のバッテリの充電システム。
【請求項9】
バッテリを搭載した車両の充電システムであって、
複数の充電器と、
前記複数の充電器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記バッテリの残存容量から定まる必要電力と前記充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する、車両の充電システム。
【請求項1】
バッテリの充電システムであって、
複数の充電器と、
前記複数の充電器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記バッテリの残存容量から定まる必要電力と前記充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する、バッテリの充電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、電力を供給する充電器の定格出力電力の合計が前記必要電力以上にされる、請求項1に記載のバッテリの充電システム。
【請求項3】
残存容量が大きいほど前記必要電力が小さくされる、請求項2に記載のバッテリの充電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記充電システムに複数のバッテリが接続された状態において、前記複数の充電器のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリを、残存容量が増大したバッテリから別のバッテリに変更する、請求項3に記載のバッテリの充電システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記複数のバッテリのうち、残存容量が低いバッテリに優先して電力を供給させ、
前記優先して電力が供給されたバッテリの残存容量が増大すると、前記複数の充電器のうちの少なくともいずれか1つの充電器が電力を供給するバッテリを、前記優先して電力が供給されたバッテリから別のバッテリに変更する、請求項4に記載のバッテリの充電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記充電器が前記バッテリを放電する際、前記バッテリを放電する充電器の数を、前記充電システムに接続された機器の消費電力に応じて変更する、請求項1に記載のバッテリの充電システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記充電システムに接続された機器の消費電力が小さいほど、前記バッテリを放電する充電器の数を減らす、請求項6に記載のバッテリの充電システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記バッテリの残存容量から定まる必要電力と前記充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を減らす、請求項1に記載のバッテリの充電システム。
【請求項9】
バッテリを搭載した車両の充電システムであって、
複数の充電器と、
前記複数の充電器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記バッテリの残存容量から定まる必要電力と前記充電器の定格出力電力とに応じて、電力を供給する充電器の数を変更する、車両の充電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−27236(P2013−27236A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162063(P2011−162063)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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