バッテリシステム及び入出力電力推定方法
【課題】 多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できるバッテリシステム及び入出力電力推定方法を提供すること。
【解決手段】 バッテリ6の内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータR1,R2,C1,C2を有する等価回路が設定され、バッテリの状態と等価回路に基づき、等価回路のパラメータを逐次推定する等価回路パラメータ推定部21と、逐次推定されるパラメータに基づいて、バッテリ6の内部抵抗となる電流電圧特性の傾きRを算出し、電流電圧特性の傾きRに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出する内部抵抗及び最大電流算出部22を備えた。
【解決手段】 バッテリ6の内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータR1,R2,C1,C2を有する等価回路が設定され、バッテリの状態と等価回路に基づき、等価回路のパラメータを逐次推定する等価回路パラメータ推定部21と、逐次推定されるパラメータに基づいて、バッテリ6の内部抵抗となる電流電圧特性の傾きRを算出し、電流電圧特性の傾きRに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出する内部抵抗及び最大電流算出部22を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリシステム及び入出力電力推定方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、事前にバッテリにおける電流−電圧特性を測定し、この直線から下限電圧での電流を計算して、最大電流とし、この最大電流に下限電圧を乗じてバッテリが出力できる電力を算出している(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、逐次パラメータ推定で算出した内部抵抗値から、最大電流を推定し、電圧を乗じてバッテリが出力できる電力を算出しているものもある(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】冨永、宮下、「EV用電池の出力特性評価に関する考察」、第49回電池討論会要旨集、電気化学会、平成20年11月、P.128
【非特許文献2】湯本、外3名、「適応デジタルフィルタ理論を用いた電池内部状態量の推定方法」、学術講演会前刷集、自動車技術会、平成15年5月、文献番号20035031、P.5〜P.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、事前に電流−電圧特性を測定したものを用いる場合、SOCによって変化してしまうため、SOCに対応する入出力テーブルを多数用意する必要があるという課題がある。
【0006】
また、従来技術のバッテリモデルでは、大電流での内部抵抗推定に誤差が生じ、最大電流の推定値にも誤差が生じるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できるバッテリシステム及び入出力電力推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、充放電を行うバッテリを有するバッテリシステムであって、前記バッテリの状態を測定する電池状態測定手段と、前記バッテリの内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータを有する等価回路が設定され、前記バッテリの状態と前記等価回路に基づき、前記等価回路のパラメータを逐次推定する等価回路パラメータ推定手段と、前記バッテリの状態と前記パラメータに基づいて、SOC推定値を算出するSOC算出手段と、逐次推定される前記パラメータに基づいて、前記バッテリの内部抵抗となる電流電圧特性の傾きを算出し、電流電圧特性の傾きに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出する内部抵抗及び最大電流算出手段と、前記バッテリの状態と前記SOC、電流電圧特性の傾き、及び前記最大電流に基づいて前記バッテリの入出力可能な電力を演算する入出力電力演算手段と、を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明にあっては、多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のバッテリ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1のバッテリ装置のバッテリコントローラが備えるバッテリシステムのブロック図である。
【図3】実施例1における等価回路パラメータ推定部のブロック構成を示す説明図である。
【図4】実施例1のバッテリモデルの等価回路構成を示す図である。
【図5】実施例1のバッテリ装置1のバッテリコントローラ2で実行される入出力電力演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1におけるバッテリの電流−電圧特性を示すグラフ図である。
【図7】実施例1における電流電圧特性の傾きを算出する場合の電流閾値範囲外で算出する状態を示すグラフ図である。
【図8】実施例1における電流電圧特性の傾きを算出する場合の電流閾値範囲内の状態を示すグラフ図である。
【図9】実施例1における最大電流推定状態を示す説明グラフ図である。
【図10】電流−電圧特性を作成する際のバッテリ電流とバッテリ電圧のタイムチャートである。
【図11】作成した電流−電圧特性の例を示す説明グラフ図である。
【図12】入出力可能な電力とSOCの関係を示す説明グラフ図である。
【図13】バッテリの電流電圧特性において、最大電流を算出する状態を示す説明グラフ図である。
【図14】バッテリの等価回路の例を示す説明図である。
【図15】放電状態のバッテリの最大電流を推定した結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のバッテリシステム及び入出力電力推定方法を実現する実施の形態を、請求項1〜7に係る発明に対応する実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のバッテリ装置の構成を示すブロック図である。
実施例1のバッテリ装置1は、バッテリコントローラ2、電流センサ3、温度センサ4、電圧センサ5、バッテリ6、負荷7を備えている。
バッテリコントローラ2は、バッテリ6の全体の容量(バッテリ容量)や、入出力可能電力を計算する。
電流センサ3は、バッテリ6から出力されるバッテリ電流を測定する。
温度センサ4は、バッテリ6のバッテリ温度を検出する。なお、温度センサ4で測定されるバッテリ温度は、バッテリ6の単位電池セルの外部で構成物の一部もしくは単位電池セルを収容した構成物の内部空気を測定するものであり、単位電池セルの内部温度を測定するものではない。
電圧センサ5は、バッテリ6から出力されるバッテリ電圧を測定する。
【0013】
バッテリ6は、単位電池セル61を複数接続して組電池としたものであり、以下本明細書では、バッテリ6として説明する。実施例1では、リチウムイオン電池を例とする。
なお、SOC(State of charge、以下SOCと省略する)はバッテリ容量(%)である。
負荷7は、バッテリ6を電源として駆動される負荷である。負荷7の例として、車両の駆動に用いられるモータを挙げておく。
【0014】
図2は実施例1のバッテリ装置のバッテリコントローラ2が備えるバッテリシステムのブロック図である。(なお、ここで説明するバッテリシステムが入出力電力推定方法を実行する)
バッテリコントローラ2は、等価回路パラメータ推定部21、内部抵抗及び最大電流算出部22、SOC算出部23、入出力電力演算部24を備えている。
等価回路パラメータ推定部21は、電流センサ3からのバッテリ電流、電圧センサ5からのバッテリ電圧に基づいて等価回路パラメータを推定する。
内部抵抗及び最大電流算出部22は、等価回路パラメータ推定部21からの等価回路パラメータに基づいてバッテリ6の電流−電圧特性による内部抵抗と、最大電流を算出する。
SOC算出部23は、等価回路パラメータ推定部21からの等価回路パラメータと電流センサ3からのバッテリ電流に基づいて、SOCを算出する。
入出力電力演算部24は、温度センサ4からのバッテリ温度、内部抵抗及び最大電流算出部22からの内部抵抗、最大電流、電流センサ3からのバッテリ電流、SOC算出部23からのSOCに基づいて、バッテリ6の入出力可能な電力を算出する。
【0015】
次に、等価回路パラメータ推定部21の詳細構成について説明する。
図3は実施例1における等価回路パラメータ推定部のブロック構成を示す説明図である。
等価回路パラメータ推定部21は、適応デジタルフィルタであり、バッテリ演算部211、バッテリモデル212、適応機構213、減算器214を備えている。そして、内部のパラメータを自己修正するフィルタである。
バッテリ演算部211は、この制御系への入力となる測定されるバッテリ電流(等価回路パラメータ推定部21の内部ではi(k)とする)を入力とし、測定されるバッテリ電圧(等価回路パラメータ推定部21の内部ではV(k)とする)を出力するように、適応デジタルフィルタに設定される演算部分である。このバッテリ演算部211は実値を扱うものとして設定されたものである。
【0016】
バッテリモデル212は、バッテリ6のモデルとなる等価回路であり、適応機構213による修正出力で等価回路のパラメータを調整し、電圧モデル推定値V^(k)を出力する。さらに、等価回路のパラメータを等価回路パラメータ推定部21の出力として出力する。例えば抵抗値R0〜R2、コンデンサ容量C1,C2である。
適応機構213は、減算器214で演算される偏差に応じて、バッテリモデル212の演算内容を修正する出力を行う。
減算器214は、等価回路パラメータ推定部21の出力、つまり測定されるバッテリ電圧V(k)と、電圧モデル推定値V^(k)の偏差を演算する。
【0017】
次に、バッテリモデル212でパラメータが推定される等価回路について説明する。
図4は実施例1のバッテリモデルの等価回路構成を示す図である。
バッテリモデル212の等価回路は、図4に示すように、開放電圧OCV、抵抗R0,R1,R2、コンデンサ容量C1,C2を備えている。
そして、開放電圧OCV、抵抗R0、抵抗R1とコンデンサ容量C1の並行接続部分、抵抗R2とコンデンサ容量C2の並行接続部分を直列接続した構成にする。
ここで、抵抗R0は、バッテリ6における電解液の抵抗として設けたものである。抵抗R1,C1はバッテリ6における電荷移動抵抗(電極反応抵抗)として設けたものである。
また、抵抗R2、コンデンサC2は、拡散抵抗等を考慮したものである。
【0018】
作用を説明する。
[入出力電力演算処理]
図5に示すのは、実施例1のバッテリ装置1のバッテリコントローラ2で実行される入出力電力演算処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0019】
ステップS1では、バッテリコントローラ2が、電流センサ3、温度センサ4、電圧センサ5から、バッテリ電流、バッテリ温度、バッテリ電圧を入力する。
【0020】
ステップS2では、等価回路パラメータ推定部21が、適応デジタルフィルタを用いて、等価回路パラメータである抵抗R0〜R2,コンデンサC1,C2を推定する。そして、SOC算出部23が、センサ電流を積算して電流積算値を得て、この電流積算値と等価回路パラメータである抵抗R0〜R2,コンデンサC1,C2からSOCを算出する。
【0021】
ステップS3では、内部抵抗及び最大電流算出部22が、バッテリ電流が予め設定した閾値範囲外かどうかを判断し、閾値範囲外ならばステップS4へ進み、閾値範囲内ならばステップS5へ進む。
【0022】
ステップS4では、内部抵抗及び最大電流算出部22が、等価回路パラメータである抵抗R0〜R2,コンデンサC1,C2から、電流電圧特性の傾き、つまり内部抵抗Rを算出する。
【0023】
ステップS5では、内部抵抗及び最大電流算出部22が、電流電圧特性の傾き、つまり内部抵抗Rを前回の演算値とする。
【0024】
ステップS6では、内部抵抗及び最大電流算出部22が、内部抵抗である電流電圧特性の傾きと、センサ検出したバッテリ電流、バッテリ電圧から最大電流を算出する。
【0025】
ステップS7では、入出力電力演算部24が、バッテリ電流の値からバッテリ6が放電状態かどうかを判断し、放電状態ならばステップS8へ進み、充電状態ならばステップS9へ進む。
【0026】
ステップS8では、入出力電力演算部24が、出力可能な電力を算出し、入力可能な電力は、放電が一定時間続いた後は、テーブルを参照し、それ以外は、前回充電時の演算値とする。なお、このテーブルデータは、予めSOCと電力の関係を測定し、テーブルデータ化したものを用いるようにする。
【0027】
ステップS9では、入出力電力演算部24が、入力可能な電力を算出し、出力可能な電力は、充電が一定時間続いた後は、テーブルを参照し、それ以外は前回放電時の演算値とする。
【0028】
ステップS10では、バッテリコントローラ2が車両から得る情報、もしくは信号等から車両が停止しているかどうかを判断し、車両停止ならば処理を終了し、車両停止でなければステップS1へ戻る。
【0029】
[バッテリの入出力可能電力の推定精度向上作用]
図6は実施例1におけるバッテリの電流−電圧特性を示すグラフ図である。
バッテリ6のあるSOCでの電流−電圧特性は、図6のようになる。バッテリコントローラ2は、SOCの他に上位のコントローラに対してバッテリが入力(充電)可能な電力と出力(放電)可能な電力を送信する。そして、上位のコントローラは、この電力に応じてバッテリ6の充放電を行う電流を制御する。
【0030】
ここで、図6に示す最大電流を精度よく算出できれば、最大電流(放電)と下限電圧(例えば2.5V)の積から出力可能な電力を計算し、最大電流(充電)と上限電圧(例えば4.2V)の積から入力可能な電力を計算することが可能となる。
なお、下限電圧は、バッテリの放電の限界値として設定するものであり、上限電圧は、バッテリの充電の限界値として設定するものである。
上限電圧と下限電圧はシステムによって決定する値である。しかし、バッテリ6の温度や劣化状態に応じて最大電流が変化するため、入出力可能な電力を算出するのは難しい。
実施例1では、状態変化による最大電流に対応し、精度よく入出力可能な電力を算出する。
【0031】
(等価回路のパラメータ推定)
等価回路パラメータ推定部21では、バッテリモデル212で図4に時定数の大きい拡散抵抗と、これに比較して時定数の小さい電極反応抵抗を有する等価回路を設けていることにため、バッテリ6の過渡的な状態を含め、より実際の状態に近いモデルで演算がされる。このため、SOC、バッテリ温度、バッテリ電流、劣化状態による影響が大きくあらわれる抵抗R1,R2が設定されることが推定精度を向上させる。
そして、等価回路パラメータ推定部21では、実値のものとして設定されるバッテリ演算部211の出力として測定されるバッテリ電圧V(k)と、電圧モデル推定値V^(k)の偏差が小さくなるように、適応機構213がバッテリモデル212のパラメータを変更する。これは、演算中で逐次、変更されるため、逐次状態推定となり、バッテリモデル212のパラメータは、実際のバッテリ状態を非常によく捉えたものとなる。(V^は、Vの推定値を表し、実際はVの上に^がある表記になる)
【0032】
このバッテリモデル212のパラメータが出力され、その後の演算を行うことにより、バッテリ6の入出力電力の推定精度がさらに向上する。なお、等価回路パラメータ推定部21の処理はステップS2の処理として行われる。
【0033】
(電流電圧特性の傾きの算出)
図7は実施例1における電流電圧特性の傾きを算出する場合の電流閾値範囲外で算出する状態を示すグラフ図である。図8は実施例1における電流電圧特性の傾きを算出する場合の電流閾値範囲内の状態を示すグラフ図である。
等価回路のパラメータを推定したならば、次に電流電圧特性の傾きを算出する。この処理はステップS3〜S5で行う。この電流電圧特性の傾きが内部抵抗Rとなる。
図7には、電流閾値範囲を符号102で示す。そして、バッテリ6の電流−電圧特性を符号101で示す。そして、電流値が図7に符号103で示す範囲(算出範囲)であって、電流閾値範囲外の場合に電流電圧特性の傾きを逐次算出する。
その際には、等価回路パラメータ推定部21で推定された等価回路パラメータから次の式を用いて電流電圧特性の傾きを逐次算出する。
【0034】
【数1】
電流閾値範囲102の範囲内の場合には、前回値とする。これは、電流が0(A)に近い電流閾値範囲102の範囲内において、推定される電流電圧特性の傾きの値が、実際の閾値範囲における電流電圧特性の傾きより大きな値となり、最大電流推定値が実際の値より小さな値になるのを防ぐ処理である。
なお、前回値を使っても問題ないのは、傾きの大きな電流から電流閾値範囲102へ電流が変化することはなく、実際には、図8に矢印104で示すように、電流と電圧の測定周期により範囲外で電流閾値範囲102の範囲内と傾きが同じ電流から、電流閾値範囲102の範囲内に電流が変化するからである。
また、図8に矢印105で示すように電流の符号が変化しても、電流閾値範囲102の範囲内で傾きがほぼ同じであるので、問題はない。
【0035】
(最大電流の推定)
図9は実施例1における最大電流推定状態を示す説明グラフ図である。
電流電圧特性の傾きを算出したならば、次に最大電流の推定を行う。この処理はステップS6の処理で行う。
なお、図9において、上限電圧、下限電圧はシステムから予め設定されている。例えば、図9において、a点106やb点107のバッテリ電流、バッテリ電圧、推定した内部抵抗を直線の傾き(Ra,Rb)とすると、a点やb点それぞれにおける最大電流を以下の式により算出することができる。
【0036】
(数2)
【0037】
下限電圧−v=R×(最大電流−i)
【0038】
数式2より、
【0039】
(数3)
【0040】
最大電流=(下限電流−v)/R+i
【0041】
ここで、a点ならばi=ia、v=va、R=Ra、b点ならば、i=ib、v=vb、R=Rbとする。なお、図9には、傾きRa(内部抵抗)を符号108で、傾きRb(内部抵抗)を符号109で示す。
【0042】
このようにして、算出した最大電流と下限電圧の積から、a点106やb点107における出力可能な電力を逐次推定する。
特に大電流のb点107においては、図4のバッテリ6の等価回路において拡散を表す抵抗R2、コンデンサC2の変化を逐次推定するため、b点107での傾きRbが精度よく算出され、出力電力の推定精度が向上する。
なお、a点106の電流はb点107に比べて小さいため、最大電流が大きくなり出力可能な電力もb点107に比べて大きな値となる。これは、小電流放電では放電容量が維持されていることを表している。また、b点107で出力可能電力が減少するのは、大電流放電のため、放電容量が減少することを表している。
また、充電の場合も同様に最大電流を算出すれば、上限電圧の積から入力可能な電力を逐次推定することになる。
【0043】
実施例1の作用を明確にするために、さらに説明を加える。
図10は電流−電圧特性を作成する際のバッテリ電流とバッテリ電圧のタイムチャートである。図11は作成した電流−電圧特性の例を示す説明グラフ図である。
入出力可能な電力を推定するには、以下のようにして推定することが考えられる。
あるSOCにおいて、電流i1(A)で放電し、t(s)後の端子電圧v1(V)を測定する。同様にして、電流i2,i3(A)での端子電圧v2,v3(V)を測定する(図10参照)。測定した、電流と電圧から電流−電圧特性を作成し、直線を延長して電圧が2.5(V)での電流を最大電流として、最大電流と電圧2.5(V)の積がこのSOCでの出力(放電)可能な電力となる(図11参照)。
充電の場合も同様にして最大電流を計算し、最大電流と電圧4.2(V)の積から、あるSOCにおける入力(充電)可能な電力を算出する。
【0044】
図12は、入出力可能な電力とSOCの関係を示す説明グラフ図である。なお、図12(a)には、SOCを変化して作成した、入力可能な電力と出力可能な電力のSOCとの関係を示す。
図10、図11を用いて上記説明した内容では、図11に示すように、最大電流値の推定値と実際の最大電流とに誤差が生じてしまう。そのため、図12(a)に示す入出力可能な電力とSOCの関係に誤差が生じてしまう。
さらに、バッテリ温度や劣化に応じてテーブルデータを補正するか、事前に多数のテーブルデータを準備する必要がある。
【0045】
図10、図11を用いて上記説明した内容で算出した入力可能な電力(符号110)と、実施例1で算出した入力可能な電力(符号111)の比較を図12(b)に示す。
図10、図11を用いて上記説明した内容で算出した入力可能な電力には誤差があるため、実際の電力よりも低い値でテーブルデータを設定することになる。これに対して実施例1では、入力可能な電力が正確に算出されるため、図12(b)にAで示す分、電力をバッテリに入力(充電)することにより、バッテリの使用時間が延びることになる。これにより、バッテリの小型化が可能となる。また、出力においても同様で、バッテリの容量を無駄なく使えるため、小型化が可能となる。
【0046】
また、等価回路モデルのパラメータは、ローパスフィルタの時定数で決定することが考えられる。
図13はバッテリの電流電圧特性において、最大電流を算出する状態を示す説明グラフ図である。
図13に示すように電流電圧特性はカーブしているため、適切なローパスフィルタが設定されていないと大電流でのモデルに誤差を生じてしまう。等価回路モデル自体においても、異なる2つの時定数を含むモデルになっていないため、拡散の影響で傾きが変化する電流での傾き、つまり内部抵抗を精度よく算出できない。またこの場合には、最大電流の推定値が、次に示す式で算出されることになるが、図13に示すように、小さい値となり、算出される入力可能な電力に誤差を生じてしまう。
【0047】
(数4)
電流電圧特性の傾きR=(開放電圧−下限電圧)/最大電流
数式4より、
【0048】
(数5)
最大電流推定値=(開放電圧−下限電圧)/電流電圧特性の傾きR
【0049】
図14に示すのは、バッテリの等価回路の例を示す説明図である。
バッテリ6の等価回路としては、図14に示すものを考えることができる。しかし、図14に示す等価回路では、電極反応抵抗と拡散抵抗の分離がされてなく時定数があいまいなため、数式4、数式5を使わずに、電流電圧特性の傾きRの直線と、a点106の直線と、a点の電流値、電圧値から最大電流を求めた場合でも、バッテリ6の実際の最大電流に比べると大きくなってしまう。
これに対して、実施例1では、等価回路として図4に示す構成となり、電極反応抵抗と拡散抵抗が分離され、より実際のバッテリ状態に近い推定を行う点が有利である。
【0050】
さらに説明を加える。
図15は放電状態のバッテリの最大電流を推定した結果を示すグラフ図である。なお、図15において、最大電流を符号Pで示し、実際のバッテリ6を測定したものを符号112で示し、図10、図11を用いて上記説明した内容で、図14の等価回路を用いて推定したものを符号114で示し、実施例1において推定したものを符号113で示す。
実施例1では、図15に示すように、最大電流の推定精度が向上し、より実際のバッテリ6に近い推定ができていることがわかる。
【0051】
効果を説明する。実施例1のバッテリシステム及び入出力電力推定方法にあっては、下記に列挙する効果を有する。
(1)充放電を行うバッテリ6を有するバッテリコントローラ2であって、バッテリ6の状態を測定する電流センサ3と温度センサ4、及び電圧センサ5と、バッテリ6の内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータR1,R2,C1,C2を有する等価回路が設定され、バッテリの状態と等価回路に基づき、等価回路のパラメータを逐次推定する等価回路パラメータ推定部21と、バッテリ6の状態とパラメータに基づいて、SOC推定値を算出するSOC算出部23と、逐次推定されるパラメータに基づいて、バッテリ6の内部抵抗となる電流電圧特性の傾きRを算出し、電流電圧特性の傾きRに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出する内部抵抗及び最大電流算出部22と、バッテリの状態とSOC、電流電圧特性の傾き、及び最大電流に基づいてバッテリの入出力可能な電力を演算する入出力電力演算部24を備えたため、等価モデルのパラメータから時定数の大小で分離した内部抵抗を逐次推定し、内部抵抗を電流電圧特性の傾きとして精度よく逐次推定し、この逐次推定により多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できる。
【0052】
(2)上記(1)において、等価回路パラメータ推定部21のバッテリモデル212のパラメータは、バッテリ6の拡散反応を時定数の大きい成分R2,C2として備え、バッテリの電極反応を時定数の小さい成分R1,C1として備えたため、逐次推定されるパラメータを拡散反応と電極反応に分け、パラメータの推定精度を、より実際に近づけることができ、これにより入出力電力の推定精度を向上させることができる。
【0053】
(3)上記(1)又は(2)において、電池状態測定手段は、バッテリ6のバッテリ電流を検出する電流センサ3と、バッテリ6のバッテリ電圧を検出する電圧センサ5を備え、内部抵抗及び最大電流算出部22は、バッテリの電流電圧特性において、電流値が0の近傍となる電流電圧領域として設定した電流閾値範囲102と、バッテリ6の電流電圧特性において、電流閾値範囲外で最大電流を囲む電流電圧領域として設定した範囲103を備えて、バッテリ電流が範囲103にある場合に、バッテリ6の電流電圧特性の傾きRを逐次算出するため、推定する電流電圧特性の傾きRの値が実際の値より大きな値となり、最大電流推定値が実際の値より小さな値となるのを防ぐことができ、電流電圧特性の傾きRの推定精度を向上でき、これにより入出力電力の推定精度を向上させることができる。
【0054】
(4)上記(3)において、内部抵抗及び最大電流算出部22は、バッテリ電流が電流閾値範囲103にある場合は、前回算出した電流電圧特性の傾きを算出結果とするため、最大電流推定値が実際の値より小さな値となるのを防ぐことができつつ、問題のない範囲で前回値を用いることにより処理負荷を軽減することができる。
【0055】
(5)上記(1)〜(4)において、バッテリの放電の限界を示す下限電圧と、バッテリの充電の限界を示す上限電圧とを予め設定し、入出力電力演算部24は、電流電圧特性の傾きRと下限電圧又は上限電圧から入力可能電力又は出力可能電力を算出するため、上下限電圧と傾きRが交わる点を算出して入力可能電力又は出力可能電力とし、使用されるシステムから設定される上下限電圧を考慮して、入出力電力を推定できるようにし、実際に使用されるシステムに適した推定算出を行うようにできる。
【0056】
(6)上記(5)において、入出力電力演算部24は、SOCと入出力電力の関係を予め図12(a)に示すデータとして備え、バッテリ電流から判断する入出力どちらかのバッテリ状態の入力可能電力又は出力可能電力を、電流電圧特性の傾きと下限電圧又は上限電圧から算出し、他方のバッテリ状態の入力可能電力又は出力可能電力を、SOCと入出力電力の関係のデータから算出するため、テーブルデータの数を少なくして、入力可能電力と出力可能電力の両方を精度よく推定することができる。
【0057】
(7)充放電を行うバッテリ6の状態を測定し(ステップS1)、バッテリ6の内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータR1,C1,R2,C2を有する等価回路を設定し、バッテリの状態と等価回路に基づき、等価回路のパラメータを逐次推定し(ステップS2)、バッテリの状態とパラメータに基づいて、SOC推定値を算出し(ステップS2)、逐次推定されるパラメータに基づいて、バッテリの内部抵抗となる電流電圧特性の傾きを算出し(ステップS4)、電流電圧特性の傾きに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出し(ステップS6)、バッテリの状態とSOC、電流電圧特性の傾き、及び最大電流に基づいてバッテリの入出力可能な電力を演算する(ステップS8)ため、等価モデルのパラメータから時定数の大小で分離した内部抵抗を逐次推定し、内部抵抗を電流電圧特性の傾きとして精度よく逐次推定し、この逐次推定により多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できる。
【0058】
以上、本発明のバッテリシステム及び入出力電力推定方法を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0059】
例えば実施例1では、等価回路パラメータ推定部21では、適応デジタルフィルタを備えたが、カルマンフィルタを備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 バッテリ装置
2 バッテリコントローラ
21 等価回路パラメータ推定部
211 バッテリ演算部
212 バッテリモデル
213 適応機構
214 減算器
22 最大電流算出部
23 SOC算出部
24 入出力電力演算部
3 電流センサ
4 温度センサ
5 電圧センサ
6 バッテリ
61 単位電池セル
7 負荷
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリシステム及び入出力電力推定方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、事前にバッテリにおける電流−電圧特性を測定し、この直線から下限電圧での電流を計算して、最大電流とし、この最大電流に下限電圧を乗じてバッテリが出力できる電力を算出している(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、逐次パラメータ推定で算出した内部抵抗値から、最大電流を推定し、電圧を乗じてバッテリが出力できる電力を算出しているものもある(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】冨永、宮下、「EV用電池の出力特性評価に関する考察」、第49回電池討論会要旨集、電気化学会、平成20年11月、P.128
【非特許文献2】湯本、外3名、「適応デジタルフィルタ理論を用いた電池内部状態量の推定方法」、学術講演会前刷集、自動車技術会、平成15年5月、文献番号20035031、P.5〜P.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、事前に電流−電圧特性を測定したものを用いる場合、SOCによって変化してしまうため、SOCに対応する入出力テーブルを多数用意する必要があるという課題がある。
【0006】
また、従来技術のバッテリモデルでは、大電流での内部抵抗推定に誤差が生じ、最大電流の推定値にも誤差が生じるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できるバッテリシステム及び入出力電力推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、充放電を行うバッテリを有するバッテリシステムであって、前記バッテリの状態を測定する電池状態測定手段と、前記バッテリの内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータを有する等価回路が設定され、前記バッテリの状態と前記等価回路に基づき、前記等価回路のパラメータを逐次推定する等価回路パラメータ推定手段と、前記バッテリの状態と前記パラメータに基づいて、SOC推定値を算出するSOC算出手段と、逐次推定される前記パラメータに基づいて、前記バッテリの内部抵抗となる電流電圧特性の傾きを算出し、電流電圧特性の傾きに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出する内部抵抗及び最大電流算出手段と、前記バッテリの状態と前記SOC、電流電圧特性の傾き、及び前記最大電流に基づいて前記バッテリの入出力可能な電力を演算する入出力電力演算手段と、を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明にあっては、多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のバッテリ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1のバッテリ装置のバッテリコントローラが備えるバッテリシステムのブロック図である。
【図3】実施例1における等価回路パラメータ推定部のブロック構成を示す説明図である。
【図4】実施例1のバッテリモデルの等価回路構成を示す図である。
【図5】実施例1のバッテリ装置1のバッテリコントローラ2で実行される入出力電力演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1におけるバッテリの電流−電圧特性を示すグラフ図である。
【図7】実施例1における電流電圧特性の傾きを算出する場合の電流閾値範囲外で算出する状態を示すグラフ図である。
【図8】実施例1における電流電圧特性の傾きを算出する場合の電流閾値範囲内の状態を示すグラフ図である。
【図9】実施例1における最大電流推定状態を示す説明グラフ図である。
【図10】電流−電圧特性を作成する際のバッテリ電流とバッテリ電圧のタイムチャートである。
【図11】作成した電流−電圧特性の例を示す説明グラフ図である。
【図12】入出力可能な電力とSOCの関係を示す説明グラフ図である。
【図13】バッテリの電流電圧特性において、最大電流を算出する状態を示す説明グラフ図である。
【図14】バッテリの等価回路の例を示す説明図である。
【図15】放電状態のバッテリの最大電流を推定した結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のバッテリシステム及び入出力電力推定方法を実現する実施の形態を、請求項1〜7に係る発明に対応する実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のバッテリ装置の構成を示すブロック図である。
実施例1のバッテリ装置1は、バッテリコントローラ2、電流センサ3、温度センサ4、電圧センサ5、バッテリ6、負荷7を備えている。
バッテリコントローラ2は、バッテリ6の全体の容量(バッテリ容量)や、入出力可能電力を計算する。
電流センサ3は、バッテリ6から出力されるバッテリ電流を測定する。
温度センサ4は、バッテリ6のバッテリ温度を検出する。なお、温度センサ4で測定されるバッテリ温度は、バッテリ6の単位電池セルの外部で構成物の一部もしくは単位電池セルを収容した構成物の内部空気を測定するものであり、単位電池セルの内部温度を測定するものではない。
電圧センサ5は、バッテリ6から出力されるバッテリ電圧を測定する。
【0013】
バッテリ6は、単位電池セル61を複数接続して組電池としたものであり、以下本明細書では、バッテリ6として説明する。実施例1では、リチウムイオン電池を例とする。
なお、SOC(State of charge、以下SOCと省略する)はバッテリ容量(%)である。
負荷7は、バッテリ6を電源として駆動される負荷である。負荷7の例として、車両の駆動に用いられるモータを挙げておく。
【0014】
図2は実施例1のバッテリ装置のバッテリコントローラ2が備えるバッテリシステムのブロック図である。(なお、ここで説明するバッテリシステムが入出力電力推定方法を実行する)
バッテリコントローラ2は、等価回路パラメータ推定部21、内部抵抗及び最大電流算出部22、SOC算出部23、入出力電力演算部24を備えている。
等価回路パラメータ推定部21は、電流センサ3からのバッテリ電流、電圧センサ5からのバッテリ電圧に基づいて等価回路パラメータを推定する。
内部抵抗及び最大電流算出部22は、等価回路パラメータ推定部21からの等価回路パラメータに基づいてバッテリ6の電流−電圧特性による内部抵抗と、最大電流を算出する。
SOC算出部23は、等価回路パラメータ推定部21からの等価回路パラメータと電流センサ3からのバッテリ電流に基づいて、SOCを算出する。
入出力電力演算部24は、温度センサ4からのバッテリ温度、内部抵抗及び最大電流算出部22からの内部抵抗、最大電流、電流センサ3からのバッテリ電流、SOC算出部23からのSOCに基づいて、バッテリ6の入出力可能な電力を算出する。
【0015】
次に、等価回路パラメータ推定部21の詳細構成について説明する。
図3は実施例1における等価回路パラメータ推定部のブロック構成を示す説明図である。
等価回路パラメータ推定部21は、適応デジタルフィルタであり、バッテリ演算部211、バッテリモデル212、適応機構213、減算器214を備えている。そして、内部のパラメータを自己修正するフィルタである。
バッテリ演算部211は、この制御系への入力となる測定されるバッテリ電流(等価回路パラメータ推定部21の内部ではi(k)とする)を入力とし、測定されるバッテリ電圧(等価回路パラメータ推定部21の内部ではV(k)とする)を出力するように、適応デジタルフィルタに設定される演算部分である。このバッテリ演算部211は実値を扱うものとして設定されたものである。
【0016】
バッテリモデル212は、バッテリ6のモデルとなる等価回路であり、適応機構213による修正出力で等価回路のパラメータを調整し、電圧モデル推定値V^(k)を出力する。さらに、等価回路のパラメータを等価回路パラメータ推定部21の出力として出力する。例えば抵抗値R0〜R2、コンデンサ容量C1,C2である。
適応機構213は、減算器214で演算される偏差に応じて、バッテリモデル212の演算内容を修正する出力を行う。
減算器214は、等価回路パラメータ推定部21の出力、つまり測定されるバッテリ電圧V(k)と、電圧モデル推定値V^(k)の偏差を演算する。
【0017】
次に、バッテリモデル212でパラメータが推定される等価回路について説明する。
図4は実施例1のバッテリモデルの等価回路構成を示す図である。
バッテリモデル212の等価回路は、図4に示すように、開放電圧OCV、抵抗R0,R1,R2、コンデンサ容量C1,C2を備えている。
そして、開放電圧OCV、抵抗R0、抵抗R1とコンデンサ容量C1の並行接続部分、抵抗R2とコンデンサ容量C2の並行接続部分を直列接続した構成にする。
ここで、抵抗R0は、バッテリ6における電解液の抵抗として設けたものである。抵抗R1,C1はバッテリ6における電荷移動抵抗(電極反応抵抗)として設けたものである。
また、抵抗R2、コンデンサC2は、拡散抵抗等を考慮したものである。
【0018】
作用を説明する。
[入出力電力演算処理]
図5に示すのは、実施例1のバッテリ装置1のバッテリコントローラ2で実行される入出力電力演算処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0019】
ステップS1では、バッテリコントローラ2が、電流センサ3、温度センサ4、電圧センサ5から、バッテリ電流、バッテリ温度、バッテリ電圧を入力する。
【0020】
ステップS2では、等価回路パラメータ推定部21が、適応デジタルフィルタを用いて、等価回路パラメータである抵抗R0〜R2,コンデンサC1,C2を推定する。そして、SOC算出部23が、センサ電流を積算して電流積算値を得て、この電流積算値と等価回路パラメータである抵抗R0〜R2,コンデンサC1,C2からSOCを算出する。
【0021】
ステップS3では、内部抵抗及び最大電流算出部22が、バッテリ電流が予め設定した閾値範囲外かどうかを判断し、閾値範囲外ならばステップS4へ進み、閾値範囲内ならばステップS5へ進む。
【0022】
ステップS4では、内部抵抗及び最大電流算出部22が、等価回路パラメータである抵抗R0〜R2,コンデンサC1,C2から、電流電圧特性の傾き、つまり内部抵抗Rを算出する。
【0023】
ステップS5では、内部抵抗及び最大電流算出部22が、電流電圧特性の傾き、つまり内部抵抗Rを前回の演算値とする。
【0024】
ステップS6では、内部抵抗及び最大電流算出部22が、内部抵抗である電流電圧特性の傾きと、センサ検出したバッテリ電流、バッテリ電圧から最大電流を算出する。
【0025】
ステップS7では、入出力電力演算部24が、バッテリ電流の値からバッテリ6が放電状態かどうかを判断し、放電状態ならばステップS8へ進み、充電状態ならばステップS9へ進む。
【0026】
ステップS8では、入出力電力演算部24が、出力可能な電力を算出し、入力可能な電力は、放電が一定時間続いた後は、テーブルを参照し、それ以外は、前回充電時の演算値とする。なお、このテーブルデータは、予めSOCと電力の関係を測定し、テーブルデータ化したものを用いるようにする。
【0027】
ステップS9では、入出力電力演算部24が、入力可能な電力を算出し、出力可能な電力は、充電が一定時間続いた後は、テーブルを参照し、それ以外は前回放電時の演算値とする。
【0028】
ステップS10では、バッテリコントローラ2が車両から得る情報、もしくは信号等から車両が停止しているかどうかを判断し、車両停止ならば処理を終了し、車両停止でなければステップS1へ戻る。
【0029】
[バッテリの入出力可能電力の推定精度向上作用]
図6は実施例1におけるバッテリの電流−電圧特性を示すグラフ図である。
バッテリ6のあるSOCでの電流−電圧特性は、図6のようになる。バッテリコントローラ2は、SOCの他に上位のコントローラに対してバッテリが入力(充電)可能な電力と出力(放電)可能な電力を送信する。そして、上位のコントローラは、この電力に応じてバッテリ6の充放電を行う電流を制御する。
【0030】
ここで、図6に示す最大電流を精度よく算出できれば、最大電流(放電)と下限電圧(例えば2.5V)の積から出力可能な電力を計算し、最大電流(充電)と上限電圧(例えば4.2V)の積から入力可能な電力を計算することが可能となる。
なお、下限電圧は、バッテリの放電の限界値として設定するものであり、上限電圧は、バッテリの充電の限界値として設定するものである。
上限電圧と下限電圧はシステムによって決定する値である。しかし、バッテリ6の温度や劣化状態に応じて最大電流が変化するため、入出力可能な電力を算出するのは難しい。
実施例1では、状態変化による最大電流に対応し、精度よく入出力可能な電力を算出する。
【0031】
(等価回路のパラメータ推定)
等価回路パラメータ推定部21では、バッテリモデル212で図4に時定数の大きい拡散抵抗と、これに比較して時定数の小さい電極反応抵抗を有する等価回路を設けていることにため、バッテリ6の過渡的な状態を含め、より実際の状態に近いモデルで演算がされる。このため、SOC、バッテリ温度、バッテリ電流、劣化状態による影響が大きくあらわれる抵抗R1,R2が設定されることが推定精度を向上させる。
そして、等価回路パラメータ推定部21では、実値のものとして設定されるバッテリ演算部211の出力として測定されるバッテリ電圧V(k)と、電圧モデル推定値V^(k)の偏差が小さくなるように、適応機構213がバッテリモデル212のパラメータを変更する。これは、演算中で逐次、変更されるため、逐次状態推定となり、バッテリモデル212のパラメータは、実際のバッテリ状態を非常によく捉えたものとなる。(V^は、Vの推定値を表し、実際はVの上に^がある表記になる)
【0032】
このバッテリモデル212のパラメータが出力され、その後の演算を行うことにより、バッテリ6の入出力電力の推定精度がさらに向上する。なお、等価回路パラメータ推定部21の処理はステップS2の処理として行われる。
【0033】
(電流電圧特性の傾きの算出)
図7は実施例1における電流電圧特性の傾きを算出する場合の電流閾値範囲外で算出する状態を示すグラフ図である。図8は実施例1における電流電圧特性の傾きを算出する場合の電流閾値範囲内の状態を示すグラフ図である。
等価回路のパラメータを推定したならば、次に電流電圧特性の傾きを算出する。この処理はステップS3〜S5で行う。この電流電圧特性の傾きが内部抵抗Rとなる。
図7には、電流閾値範囲を符号102で示す。そして、バッテリ6の電流−電圧特性を符号101で示す。そして、電流値が図7に符号103で示す範囲(算出範囲)であって、電流閾値範囲外の場合に電流電圧特性の傾きを逐次算出する。
その際には、等価回路パラメータ推定部21で推定された等価回路パラメータから次の式を用いて電流電圧特性の傾きを逐次算出する。
【0034】
【数1】
電流閾値範囲102の範囲内の場合には、前回値とする。これは、電流が0(A)に近い電流閾値範囲102の範囲内において、推定される電流電圧特性の傾きの値が、実際の閾値範囲における電流電圧特性の傾きより大きな値となり、最大電流推定値が実際の値より小さな値になるのを防ぐ処理である。
なお、前回値を使っても問題ないのは、傾きの大きな電流から電流閾値範囲102へ電流が変化することはなく、実際には、図8に矢印104で示すように、電流と電圧の測定周期により範囲外で電流閾値範囲102の範囲内と傾きが同じ電流から、電流閾値範囲102の範囲内に電流が変化するからである。
また、図8に矢印105で示すように電流の符号が変化しても、電流閾値範囲102の範囲内で傾きがほぼ同じであるので、問題はない。
【0035】
(最大電流の推定)
図9は実施例1における最大電流推定状態を示す説明グラフ図である。
電流電圧特性の傾きを算出したならば、次に最大電流の推定を行う。この処理はステップS6の処理で行う。
なお、図9において、上限電圧、下限電圧はシステムから予め設定されている。例えば、図9において、a点106やb点107のバッテリ電流、バッテリ電圧、推定した内部抵抗を直線の傾き(Ra,Rb)とすると、a点やb点それぞれにおける最大電流を以下の式により算出することができる。
【0036】
(数2)
【0037】
下限電圧−v=R×(最大電流−i)
【0038】
数式2より、
【0039】
(数3)
【0040】
最大電流=(下限電流−v)/R+i
【0041】
ここで、a点ならばi=ia、v=va、R=Ra、b点ならば、i=ib、v=vb、R=Rbとする。なお、図9には、傾きRa(内部抵抗)を符号108で、傾きRb(内部抵抗)を符号109で示す。
【0042】
このようにして、算出した最大電流と下限電圧の積から、a点106やb点107における出力可能な電力を逐次推定する。
特に大電流のb点107においては、図4のバッテリ6の等価回路において拡散を表す抵抗R2、コンデンサC2の変化を逐次推定するため、b点107での傾きRbが精度よく算出され、出力電力の推定精度が向上する。
なお、a点106の電流はb点107に比べて小さいため、最大電流が大きくなり出力可能な電力もb点107に比べて大きな値となる。これは、小電流放電では放電容量が維持されていることを表している。また、b点107で出力可能電力が減少するのは、大電流放電のため、放電容量が減少することを表している。
また、充電の場合も同様に最大電流を算出すれば、上限電圧の積から入力可能な電力を逐次推定することになる。
【0043】
実施例1の作用を明確にするために、さらに説明を加える。
図10は電流−電圧特性を作成する際のバッテリ電流とバッテリ電圧のタイムチャートである。図11は作成した電流−電圧特性の例を示す説明グラフ図である。
入出力可能な電力を推定するには、以下のようにして推定することが考えられる。
あるSOCにおいて、電流i1(A)で放電し、t(s)後の端子電圧v1(V)を測定する。同様にして、電流i2,i3(A)での端子電圧v2,v3(V)を測定する(図10参照)。測定した、電流と電圧から電流−電圧特性を作成し、直線を延長して電圧が2.5(V)での電流を最大電流として、最大電流と電圧2.5(V)の積がこのSOCでの出力(放電)可能な電力となる(図11参照)。
充電の場合も同様にして最大電流を計算し、最大電流と電圧4.2(V)の積から、あるSOCにおける入力(充電)可能な電力を算出する。
【0044】
図12は、入出力可能な電力とSOCの関係を示す説明グラフ図である。なお、図12(a)には、SOCを変化して作成した、入力可能な電力と出力可能な電力のSOCとの関係を示す。
図10、図11を用いて上記説明した内容では、図11に示すように、最大電流値の推定値と実際の最大電流とに誤差が生じてしまう。そのため、図12(a)に示す入出力可能な電力とSOCの関係に誤差が生じてしまう。
さらに、バッテリ温度や劣化に応じてテーブルデータを補正するか、事前に多数のテーブルデータを準備する必要がある。
【0045】
図10、図11を用いて上記説明した内容で算出した入力可能な電力(符号110)と、実施例1で算出した入力可能な電力(符号111)の比較を図12(b)に示す。
図10、図11を用いて上記説明した内容で算出した入力可能な電力には誤差があるため、実際の電力よりも低い値でテーブルデータを設定することになる。これに対して実施例1では、入力可能な電力が正確に算出されるため、図12(b)にAで示す分、電力をバッテリに入力(充電)することにより、バッテリの使用時間が延びることになる。これにより、バッテリの小型化が可能となる。また、出力においても同様で、バッテリの容量を無駄なく使えるため、小型化が可能となる。
【0046】
また、等価回路モデルのパラメータは、ローパスフィルタの時定数で決定することが考えられる。
図13はバッテリの電流電圧特性において、最大電流を算出する状態を示す説明グラフ図である。
図13に示すように電流電圧特性はカーブしているため、適切なローパスフィルタが設定されていないと大電流でのモデルに誤差を生じてしまう。等価回路モデル自体においても、異なる2つの時定数を含むモデルになっていないため、拡散の影響で傾きが変化する電流での傾き、つまり内部抵抗を精度よく算出できない。またこの場合には、最大電流の推定値が、次に示す式で算出されることになるが、図13に示すように、小さい値となり、算出される入力可能な電力に誤差を生じてしまう。
【0047】
(数4)
電流電圧特性の傾きR=(開放電圧−下限電圧)/最大電流
数式4より、
【0048】
(数5)
最大電流推定値=(開放電圧−下限電圧)/電流電圧特性の傾きR
【0049】
図14に示すのは、バッテリの等価回路の例を示す説明図である。
バッテリ6の等価回路としては、図14に示すものを考えることができる。しかし、図14に示す等価回路では、電極反応抵抗と拡散抵抗の分離がされてなく時定数があいまいなため、数式4、数式5を使わずに、電流電圧特性の傾きRの直線と、a点106の直線と、a点の電流値、電圧値から最大電流を求めた場合でも、バッテリ6の実際の最大電流に比べると大きくなってしまう。
これに対して、実施例1では、等価回路として図4に示す構成となり、電極反応抵抗と拡散抵抗が分離され、より実際のバッテリ状態に近い推定を行う点が有利である。
【0050】
さらに説明を加える。
図15は放電状態のバッテリの最大電流を推定した結果を示すグラフ図である。なお、図15において、最大電流を符号Pで示し、実際のバッテリ6を測定したものを符号112で示し、図10、図11を用いて上記説明した内容で、図14の等価回路を用いて推定したものを符号114で示し、実施例1において推定したものを符号113で示す。
実施例1では、図15に示すように、最大電流の推定精度が向上し、より実際のバッテリ6に近い推定ができていることがわかる。
【0051】
効果を説明する。実施例1のバッテリシステム及び入出力電力推定方法にあっては、下記に列挙する効果を有する。
(1)充放電を行うバッテリ6を有するバッテリコントローラ2であって、バッテリ6の状態を測定する電流センサ3と温度センサ4、及び電圧センサ5と、バッテリ6の内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータR1,R2,C1,C2を有する等価回路が設定され、バッテリの状態と等価回路に基づき、等価回路のパラメータを逐次推定する等価回路パラメータ推定部21と、バッテリ6の状態とパラメータに基づいて、SOC推定値を算出するSOC算出部23と、逐次推定されるパラメータに基づいて、バッテリ6の内部抵抗となる電流電圧特性の傾きRを算出し、電流電圧特性の傾きRに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出する内部抵抗及び最大電流算出部22と、バッテリの状態とSOC、電流電圧特性の傾き、及び最大電流に基づいてバッテリの入出力可能な電力を演算する入出力電力演算部24を備えたため、等価モデルのパラメータから時定数の大小で分離した内部抵抗を逐次推定し、内部抵抗を電流電圧特性の傾きとして精度よく逐次推定し、この逐次推定により多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できる。
【0052】
(2)上記(1)において、等価回路パラメータ推定部21のバッテリモデル212のパラメータは、バッテリ6の拡散反応を時定数の大きい成分R2,C2として備え、バッテリの電極反応を時定数の小さい成分R1,C1として備えたため、逐次推定されるパラメータを拡散反応と電極反応に分け、パラメータの推定精度を、より実際に近づけることができ、これにより入出力電力の推定精度を向上させることができる。
【0053】
(3)上記(1)又は(2)において、電池状態測定手段は、バッテリ6のバッテリ電流を検出する電流センサ3と、バッテリ6のバッテリ電圧を検出する電圧センサ5を備え、内部抵抗及び最大電流算出部22は、バッテリの電流電圧特性において、電流値が0の近傍となる電流電圧領域として設定した電流閾値範囲102と、バッテリ6の電流電圧特性において、電流閾値範囲外で最大電流を囲む電流電圧領域として設定した範囲103を備えて、バッテリ電流が範囲103にある場合に、バッテリ6の電流電圧特性の傾きRを逐次算出するため、推定する電流電圧特性の傾きRの値が実際の値より大きな値となり、最大電流推定値が実際の値より小さな値となるのを防ぐことができ、電流電圧特性の傾きRの推定精度を向上でき、これにより入出力電力の推定精度を向上させることができる。
【0054】
(4)上記(3)において、内部抵抗及び最大電流算出部22は、バッテリ電流が電流閾値範囲103にある場合は、前回算出した電流電圧特性の傾きを算出結果とするため、最大電流推定値が実際の値より小さな値となるのを防ぐことができつつ、問題のない範囲で前回値を用いることにより処理負荷を軽減することができる。
【0055】
(5)上記(1)〜(4)において、バッテリの放電の限界を示す下限電圧と、バッテリの充電の限界を示す上限電圧とを予め設定し、入出力電力演算部24は、電流電圧特性の傾きRと下限電圧又は上限電圧から入力可能電力又は出力可能電力を算出するため、上下限電圧と傾きRが交わる点を算出して入力可能電力又は出力可能電力とし、使用されるシステムから設定される上下限電圧を考慮して、入出力電力を推定できるようにし、実際に使用されるシステムに適した推定算出を行うようにできる。
【0056】
(6)上記(5)において、入出力電力演算部24は、SOCと入出力電力の関係を予め図12(a)に示すデータとして備え、バッテリ電流から判断する入出力どちらかのバッテリ状態の入力可能電力又は出力可能電力を、電流電圧特性の傾きと下限電圧又は上限電圧から算出し、他方のバッテリ状態の入力可能電力又は出力可能電力を、SOCと入出力電力の関係のデータから算出するため、テーブルデータの数を少なくして、入力可能電力と出力可能電力の両方を精度よく推定することができる。
【0057】
(7)充放電を行うバッテリ6の状態を測定し(ステップS1)、バッテリ6の内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータR1,C1,R2,C2を有する等価回路を設定し、バッテリの状態と等価回路に基づき、等価回路のパラメータを逐次推定し(ステップS2)、バッテリの状態とパラメータに基づいて、SOC推定値を算出し(ステップS2)、逐次推定されるパラメータに基づいて、バッテリの内部抵抗となる電流電圧特性の傾きを算出し(ステップS4)、電流電圧特性の傾きに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出し(ステップS6)、バッテリの状態とSOC、電流電圧特性の傾き、及び最大電流に基づいてバッテリの入出力可能な電力を演算する(ステップS8)ため、等価モデルのパラメータから時定数の大小で分離した内部抵抗を逐次推定し、内部抵抗を電流電圧特性の傾きとして精度よく逐次推定し、この逐次推定により多数のテーブルデータを必要とせず、バッテリの入出力可能な電力を精度よく推定できる。
【0058】
以上、本発明のバッテリシステム及び入出力電力推定方法を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0059】
例えば実施例1では、等価回路パラメータ推定部21では、適応デジタルフィルタを備えたが、カルマンフィルタを備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 バッテリ装置
2 バッテリコントローラ
21 等価回路パラメータ推定部
211 バッテリ演算部
212 バッテリモデル
213 適応機構
214 減算器
22 最大電流算出部
23 SOC算出部
24 入出力電力演算部
3 電流センサ
4 温度センサ
5 電圧センサ
6 バッテリ
61 単位電池セル
7 負荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電を行うバッテリを有するバッテリシステムであって、
前記バッテリの状態を測定する電池状態測定手段と、
前記バッテリの内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータを有する等価回路が設定され、前記バッテリの状態と前記等価回路に基づき、前記等価回路のパラメータを逐次推定する等価回路パラメータ推定手段と、
前記バッテリの状態と前記パラメータに基づいて、SOC推定値を算出するSOC算出手段と、
逐次推定される前記パラメータに基づいて、前記バッテリの内部抵抗となる電流電圧特性の傾きを算出し、電流電圧特性の傾きに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出する内部抵抗及び最大電流算出手段と、
前記バッテリの状態と前記SOC、電流電圧特性の傾き、及び前記最大電流に基づいて前記バッテリの入出力可能な電力を演算する入出力電力演算手段と、
を備えた、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリシステムにおいて、
前記等価回路のパラメータは、前記バッテリの拡散反応を時定数の大きい成分として備え、前記バッテリの電極反応を時定数の小さい成分として備えた、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバッテリシステムにおいて、
電池状態測定手段は、
前記バッテリのバッテリ電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリのバッテリ電圧を検出する電圧検出手段と、
を備え、
前記内部抵抗及び最大電流算出手段は、
バッテリの電流電圧特性において、電流値が0の近傍となる電流電圧領域として設定した電流閾値範囲と、
バッテリの電流電圧特性において、前記電流閾値範囲外で最大電流を囲む電流電圧領域として設定した算出範囲と、
を備えて、バッテリ電流が前記算出範囲にある場合に、前記バッテリの電流電圧特性の傾きを逐次算出する、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリシステムにおいて、
前記内部抵抗及び最大電流算出手段は、
バッテリ電流が前記電流閾値範囲にある場合は、前回算出した電流電圧特性の傾きを算出結果とする、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバッテリシステムにおいて、
前記バッテリの放電の限界を示す下限電圧と、前記バッテリの充電の限界を示す上限電圧とを予め設定し、
前記入出力電力演算手段は、
電流電圧特性の傾きと前記下限電圧又は前記上限電圧から入力可能電力又は出力可能電力を算出する、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリシステムにおいて、
前記入出力電力演算手段は、
SOCと入出力電力の関係を予めデータとして備え、
前記バッテリ電流から判断する入出力どちらかのバッテリ状態の入力可能電力又は出力可能電力を、電流電圧特性の傾きと前記下限電圧又は前記上限電圧から算出し、
他方のバッテリ状態の入力可能電力又は出力可能電力を、SOCと入出力電力の関係のデータから算出する、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項7】
充放電を行うバッテリの状態を測定し、
前記バッテリの内部抵抗成分に電極反応と拡散反応を考慮したパラメータを有する等価回路を設定し、
前記バッテリの状態と前記等価回路に基づき、前記等価回路のパラメータを逐次推定し、
前記バッテリの状態と前記パラメータに基づいて、SOC推定値を算出し、逐次推定される前記パラメータに基づいて、前記バッテリの内部抵抗となる電流電圧特性の傾きを算出し、
電流電圧特性の傾きに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出し、
前記バッテリの状態と前記SOC、電流電圧特性の傾き、及び前記最大電流に基づいて前記バッテリの入出力可能な電力を演算する、
ことを特徴とする入出力電力推定方法。
【請求項1】
充放電を行うバッテリを有するバッテリシステムであって、
前記バッテリの状態を測定する電池状態測定手段と、
前記バッテリの内部抵抗成分に時定数の大きい成分と時定数の小さい成分を考慮したパラメータを有する等価回路が設定され、前記バッテリの状態と前記等価回路に基づき、前記等価回路のパラメータを逐次推定する等価回路パラメータ推定手段と、
前記バッテリの状態と前記パラメータに基づいて、SOC推定値を算出するSOC算出手段と、
逐次推定される前記パラメータに基づいて、前記バッテリの内部抵抗となる電流電圧特性の傾きを算出し、電流電圧特性の傾きに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出する内部抵抗及び最大電流算出手段と、
前記バッテリの状態と前記SOC、電流電圧特性の傾き、及び前記最大電流に基づいて前記バッテリの入出力可能な電力を演算する入出力電力演算手段と、
を備えた、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリシステムにおいて、
前記等価回路のパラメータは、前記バッテリの拡散反応を時定数の大きい成分として備え、前記バッテリの電極反応を時定数の小さい成分として備えた、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバッテリシステムにおいて、
電池状態測定手段は、
前記バッテリのバッテリ電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリのバッテリ電圧を検出する電圧検出手段と、
を備え、
前記内部抵抗及び最大電流算出手段は、
バッテリの電流電圧特性において、電流値が0の近傍となる電流電圧領域として設定した電流閾値範囲と、
バッテリの電流電圧特性において、前記電流閾値範囲外で最大電流を囲む電流電圧領域として設定した算出範囲と、
を備えて、バッテリ電流が前記算出範囲にある場合に、前記バッテリの電流電圧特性の傾きを逐次算出する、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリシステムにおいて、
前記内部抵抗及び最大電流算出手段は、
バッテリ電流が前記電流閾値範囲にある場合は、前回算出した電流電圧特性の傾きを算出結果とする、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバッテリシステムにおいて、
前記バッテリの放電の限界を示す下限電圧と、前記バッテリの充電の限界を示す上限電圧とを予め設定し、
前記入出力電力演算手段は、
電流電圧特性の傾きと前記下限電圧又は前記上限電圧から入力可能電力又は出力可能電力を算出する、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリシステムにおいて、
前記入出力電力演算手段は、
SOCと入出力電力の関係を予めデータとして備え、
前記バッテリ電流から判断する入出力どちらかのバッテリ状態の入力可能電力又は出力可能電力を、電流電圧特性の傾きと前記下限電圧又は前記上限電圧から算出し、
他方のバッテリ状態の入力可能電力又は出力可能電力を、SOCと入出力電力の関係のデータから算出する、
ことを特徴とするバッテリシステム。
【請求項7】
充放電を行うバッテリの状態を測定し、
前記バッテリの内部抵抗成分に電極反応と拡散反応を考慮したパラメータを有する等価回路を設定し、
前記バッテリの状態と前記等価回路に基づき、前記等価回路のパラメータを逐次推定し、
前記バッテリの状態と前記パラメータに基づいて、SOC推定値を算出し、逐次推定される前記パラメータに基づいて、前記バッテリの内部抵抗となる電流電圧特性の傾きを算出し、
電流電圧特性の傾きに基づいてバッテリの入出力可能な最大電流を算出し、
前記バッテリの状態と前記SOC、電流電圧特性の傾き、及び前記最大電流に基づいて前記バッテリの入出力可能な電力を演算する、
ことを特徴とする入出力電力推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−169609(P2010−169609A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13911(P2009−13911)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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