説明

バラン

【課題】プッシュプル電力増幅器に適用できるバランであって、バランを介してプッシュプル電力増幅器に、2次高調波を注入もしくは抽出し得る、または直流バイアスを印加し得るバランを提供する。
【解決手段】基本波f0に対して1/4波長の長さを有し、性能が同等の2つの結合伝送線路11,12を用いて構成され、2次高調波を注入もしくは抽出し、または直流バイアスを印加できるように、入力される周波数により短絡および開放を切り換える周波数選択性インピーダンス回路23を設け、これによりバラン103を介してプッシュプル電力増幅器に、2次高調波を注入もしくは抽出することを可能にするとともに、直流バイアスの印可を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波集積回路技術を用いて構成されるバランに関し、特に2次高調波を注入または抽出し得るバランに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信等の高周波を利用する装置において、平衡モードの信号および不平衡モードの信号を変換するバランは、アンテナ、ミキサおよびプシュプル増幅器などの多くの回路に用いられている。特に、マイクロ波集積回路技術を用いて形成でき、広帯域で良好な特性が得られるとして、平面構造(プレーナタイプ)のマーチャントバランが提案され、広く用いられている。
【0003】
このようなマーチャントバランの一例として、非特許文献1に示されたマーチャントバラン(1000)の回路構成図を図12に示す。
2つの1/4波長の結合伝送線路(1011),(1012)を組み合わせて構成され、入力端子(1001)から入力された不平衡モード信号は、第1結合伝送線路(1011)および第2結合伝送線路(1012)を順次伝播し、2つの出力端子(1003),(1008)に、逆相で同振幅の平衡モード信号として出力され、バランとして動作する。
【非特許文献1】K.S.Ang and I.D.Robertson:"Analysis and Design of Impedance-Transforming Planar Marchand Baluns", IEEE Trans. On MTT, Vol.49, No.2, pp.402-406, Feb. 2001.
【0004】
ところで、電力増幅器においては、高調波を増幅素子に注入することによって、増幅器の電力付加効率を向上できることが知られている。本発明者らは、HEMT増幅器に高調波を注入して、効率を改善する効果について、実験的に検討し、非特許文献2にて報告した。この報告では、高調波のうち特に次数が低い2次高調波を適切な位相と振幅で、増幅器に注入することにより、電力付加効率を大きく改善できることを明らかにした。
【非特許文献2】藤井憲一,辻岡孝作,高木直:“L帯10W GaN HEMT増幅器の高調波注入による効率改善効果の実験的検討”,信学技報,MW2010-121(2010-11), pp.93-98, 2010年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バランを用いる用途の一つとして、プシュプル電力増幅器がある。しかし、プシュプル電力増幅器に用いられてきたバランでは、2次高調波を含む偶数次高調波を伝達することができない。このため、バランを経由して高調波を増幅素子に注入できず、高調波の注入による電力付加効率の向上を図れていなかった。
【0006】
また、図12に示したマーチャントバランの一例において、平衡モード信号に対する出力端子である(1003)および(1008)が、直流には短絡された状態になっている。このため、平衡モード信号に対する負荷である(1042)および(1043)に対して、バランを介して直流バイアスを印加できなかった。
【0007】
そこで本発明は、プッシュプル電力増幅器に適用でき、2次高調波を注入または抽出し得るバランを提供する。さらには、直流バイアスを印加し得るバランを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるバランは、基本波f0に対して1/4波長の長さを有し、性能が同等の2つの結合伝送線路を用いて構成され、2次高調波を注入もしくは抽出し、または直流バイアスを印加できるようにするために、入力される周波数により短絡および開放を切り換える周波数選択性インピーダンス回路を設け、これによりバランを介してプッシュプル電力増幅器に、2次高調波を注入もしくは抽出することを可能にするとともに、直流バイアスの印可を可能にすることを特徴とする。
【0009】
すなわち、本発明の第1発明は、
基本波f0に対して1/4波長の長さを有し、性能が同等である、第1結合伝送線路および第2結合伝送線路を有して構成されるバランであって、
前記第1結合伝送線路は、互いに対向し近接して並行に配置された、第1伝送線路および第2伝送線路で構成され、
前記第1伝送線路は、第1端子および第2端子を有し、前記第2伝送線路は、前記第1端子に対応する第4端子および前記第2端子に対応する第3端子を有し、
前記第2結合伝送線路は、互いに対向し近接して並行に配置された、第3伝送線路および第4伝送線路で構成され、
前記第3伝送線路は、第5端子および第6端子を有し、前記第4伝送線路は、前記第5端子に対応する第8端子および前記第6端子に対応する第7端子を有しており、
前記第1端子は第1負荷に接続され、前記第3端子は第2負荷に接続され、前記第8端子は第2負荷とそのインピーダンスの等しい第3負荷に接続されており、
前記第6端子は開放され、前記第2端子および前記第5端子は互いに接続され、前記第4端子および前記第7端子は互いに接続されており、
前記第4端子および前記第7端子の接続部分に、基本波f0に対してグランドと短絡となり、直流に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路が接続されていることを特徴とする。
【0010】
第1発明のバランにおいて、
前記第1結合伝送線路および前記第2結合伝送線路における、偶モード特性インピーダンスZoeおよび奇モード特性インピーダンスZooは、前記第1負荷のインピーダンスZS、ならびに、前記第2負荷および前記第3負荷のインピーダンスZLに対して、
(数1)
1/2(1/Zoo−1/Zoe)=√(1/(2ZS・ZL))
の関係式を満足するように設定されているとよい。
【0011】
第1発明のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、基本波f0に対してはグランドと短絡となり、直流および2次高調波に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路であり、
前記第4端子および前記第7端子の接続部分に、さらに2次高調波を注入または抽出する注入抽出用端子が接続されていてもよい。さらにまた、前記2次高調波を注入または抽出する注入抽出用端子は、直流バイアスを印加する直流バイアス印加用端子も兼ねていてもよい。
【0012】
第1発明のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、基本波f0に対して1/4波長の長さを有する先端開放伝送線路であるとよい。
【0013】
第1発明のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、インダクタL1およびキャパシタC1とで構成される直列共振回路、ならびに、該直列共振回路に並列に接続されたキャパシタC2で構成される第1集中定数回路であり、
前記L1,前記C1および前記C2の各値が、
(数2)
0=1/(2π√(L11))
(数3)
1=C2
の関係式を満足するように設定されているとよい。
【0014】
また、本発明の第2発明のバランは、
基本波f0に対して1/4波長の長さを有し、性能が同等である、第1結合伝送線路および第2結合伝送線路を有して構成されるバランであって、
前記第1結合伝送線路は、互いに対向し近接して並行に配置された、第1伝送線路および第2伝送線路で構成され、
前記第1伝送線路は、第1端子および第2端子を有し、前記第2伝送線路は、前記第1端子に対応する第4端子および前記第2端子に対応する第3端子を有し、
前記第2結合伝送線路は、互いに対向し近接して並行に配置された、第3伝送線路および第4伝送線路で構成され、
前記第3伝送線路は、第5端子および第6端子を有し、前記第4伝送線路は、前記第5端子に対応する第8端子および前記第6端子に対応する第7端子を有しており、
前記第1端子は第1負荷に接続され、前記第3端子は第2負荷に接続され、前記第8端子は第2負荷とそのインピーダンスの等しい第3負荷に接続されており、
前記第2端子および前記第5端子は互いに接続されてグランドに短絡され、
前記第4端子および前記第7端子は互いに接続され、
前記第6端子はグランドに短絡されていることを特徴とする。
【0015】
第2発明のバランにおいて、
前記第1結合伝送線路および前記第2結合伝送線路における、偶モード特性インピーダンスZoeおよび奇モード特性インピーダンスZooは、前記第1負荷のインピーダンスZS、ならびに、前記第2負荷および前記第3負荷のインピーダンスZLに対して、
(数4)
1/2(1/Zoo−1/Zoe)=√(2/(ZS・ZL))
の関係式を満足するように設定されているとよい。
【0016】
第2発明のバランにおいて、
前記第4端子および前記第7端子の接続部分に、基本波f0,直流および2次高調波につきグランドに対して開放となる回路が設けられているとよい。
前記第4端子および前記第7端子の接続部分に、さらに2次高調波を注入または抽出する注入抽出用端子が接続されていてもよい。さらにまた、前記2次高調波を注入または抽出する注入抽出用端子は、直流バイアスを印加する直流バイアス印加用端子も兼ねていてもよい。
【0017】
第2発明のバランにおいて、
前記回路は、基本波f0に対して1/2波長の長さを有する先端開放伝送線路であり、
前記注入抽出用端子が、前記先端開放伝送線路の長さ方向の中央部に設けられているとよい。
【0018】
第2発明のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、インダクタL3およびキャパシタC3で構成される並列共振回路、ならびに、該並列共振回路に直列に接続されたインダクタL4で構成される第2集中定数回路であり、
前記L3,前記L4および前記C3の各値が、
(数5)
0=1/(2π√(L33))
(数6)
3=L4
の関係式を満足するように設定されており、
前記第2集中定数回路における、前記第4端子および前記第7端子の接続部分の反対側に、前記注入抽出用端子が接続されているとよい。
【0019】
さらに、本発明の第3発明は、本発明の第1発明や第2発明に記載のいずれかのバランを、プッシュプル電力増幅器の入力側および出力側の少なくとも一方に組み合わせたことを特徴とするプッシュプル電力増幅装置である。
【0020】
本発明の第3発明のプッシュプル電力増幅器は、さらに高調波の位相および振幅を調整する、位相および振幅調整回路を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるバランをプッシュプル電力増幅器に適用すれば、平衡モードおよび不平衡モードの変換回路として基本波信号を伝達するとともに、プッシュプル電力増幅器に2次高調波を注入することが可能となる。この結果、プッシュプル電力増幅器において、2次高調波の注入により、その電力付加効率を向上できる。
【0022】
また、本発明によるバランをプッシュプル電力増幅器に適用すれば、プッシュプル電力増幅器から2次高調波を抽出することが可能となる。プッシュプル電力増幅器において、基本波の入力信号が入力されることにより発生する2次高調波を、入力側バランから抽出できると、それを適切に調整した後、出力側バランから注入することが可能となる。したがって、別途2次高調波の発生器を準備する必要がなく、簡単な構成で2次高調波の注入による電力付加効率の向上を図ることができる。
【0023】
さらに、本発明によるバランをプッシュプル電力増幅器に適用すれば、注入抽出用端子を介して直流バイアスを印加することが可能となる。
【0024】
なお、本明細書において、「結合伝送線路の性能」とは、いわゆるSパラメータで示される性能をいい、「2つの結合伝送線路の性能が同等である」とは、2つの結合伝送線路の構造および寸法がそれぞれ同等であり、その結果、偶モード特性インピーダンスZoe,奇モード特性インピーダンスZoo,および電気長がそれぞれ同等であることをいう。つまり、2つの結合伝送線路の特性を表す4ポートSパラメータの性能が、同等であることをいう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1によるバランの回路構成図である。
【図2A】本発明の実施形態2によるバランにおける、第1端子の電圧反射特性のグラフである。
【図2B】同じく、第1端子から第3端子への電圧伝達特性のグラフである。
【図2C】同じく、第1端子から第8端子への電圧伝達特性のグラフである。
【図2D】同じく、第1端子から第3端子に通過する信号の通過位相∠S21と、第1端子から第8端子に通過する信号の通過位相∠S31を示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態3によるバランの回路構成図である。
【図4】本発明の実施形態4によるバランの回路構成図である。
【図5】本発明の実施形態5によるバランの回路構成図である。
【図6】本発明の実施形態6によるバランの回路構成図である。
【図7A】本発明の実施形態7によるバランにおける、第1端子の電圧反射特性のグラフである。
【図7B】同じく、第1端子から第3端子への電圧伝達特性のグラフである。
【図7C】同じく、第1端子から第8端子への電圧伝達特性のグラフである。
【図7D】同じく、第1端子から第3端子に通過する信号の通過位相∠S21と、第1端子から第8端子に通過する信号の通過位相∠S31を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態8によるバランの回路構成図である。
【図9】本発明の実施形態9によるバランの回路構成図である。
【図10】本発明の実施形態10によるバランの回路構成図である。
【図11】本発明によるバランを、プッシュプル電力増幅器の入力側および出力側に用いる回路構成図である。
【図12】従来のマーチャントバランの構成を示す回路構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施形態1)
まず、本発明の第1発明である実施形態1のバランについて説明する。実施形態1におけるバラン(101)の回路構成図を図1に示す。
【0027】
実施形態1におけるバランは、
基本波f0に対して1/4波長の長さを有し、性能が同等である、第1結合伝送線路(11)および第2結合伝送線路(12)を有して構成されるバラン(101)であって、
前記第1結合伝送線路(11)は、互いに対向し近接して並行に配置された、第1伝送線路(111)および第2伝送線路(112)で構成され、
前記第1伝送線路(111)は、第1端子(1)および第2端子(2)を有し、前記第2伝送線路(112)は、前記第1端子(1)に対応する第4端子(4)および前記第2端子(2)に対応する第3端子(3)を有し、
前記第2結合伝送線路(12)は、互いに対向し近接して並行に配置された、第3伝送線路(123)および第4伝送線路(124)で構成され、
前記第3伝送線路(123)は、第5端子(5)および第6端子(6)を有し、前記第4伝送線路(124)は、前記第5端子(5)に対応する第8端子(8)および前記第6端子(6)に対応する第7端子(7)を有しており、
前記第1端子(1)は第1負荷(41)に接続され、前記第3端子(3)は第2負荷(42)に接続され、前記第8端子(8)は第2負荷(42)とそのインピーダンスの等しい第3負荷(43)に接続されており、
前記第6端子(6)は開放され、前記第2端子(2)および前記第5端子(5)は互いに接続され、前記第4端子(4)および前記第7端子(7)は互いに接続されており、
前記第4端子(4)および前記第7端子(7)の接続部分に、基本波f0に対してグランドと短絡となり、直流に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路(21)が接続されていることを特徴とする。
【0028】
本発明の第1発明である実施形態1のバラン(101)は上述のように構成され、基本波f0に対してマーチャントバランと同等の構成となっているので、バランとして動作する。
すなわち、第1結合伝送線路(11)の第1端子(1)から入力された基本波f0の不平衡モード信号は、第1結合伝送線路(11)および第2結合伝送線路(12)を順次伝播し、第3端子(3)および第8端子(8)に、互いに逆相で同振幅の平衡モード信号として出力される。
【0029】
一方、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分に、基本波f0に対してグランドと短絡となり、直流に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路(21)が接続されていることにより、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分から、直流バイアスを第2負荷(42)および第3負荷(43)に、印加することが可能となっている。
なお、直流バイアスは、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分に、プローブなどの接触端子を介して印加してもよいし、直流バイアス印加用の端子を設けてもよい。
【0030】
(実施形態2)
本発明による実施形態2のバランは、図1に示した回路構成のバランにおいて、
第1結合伝送線路(11)と第2結合伝送線路(12)における、偶モード特性インピーダンスZoeおよび奇モード特性インピーダンスZooは、第1負荷(41)のインピーダンスZS、ならびに、第2負荷(42)および第3負荷(43)のインピーダンスZLに対して、
(数1)
1/2(1/Zoo−1/Zoe)=√(1/(2ZS・ZL)) 式(1)
の関係式を満足するように設定されている。
【0031】
このような構成により、第1負荷(41)、ならびに、第2負荷(42)および第3負荷(43)の間における、インピーダンス整合がなされている。
【0032】
上述した式(1)を満足すれば、バランとして動作するとともに、インピーダンス整合がなされていることを、以下のシミュレーションにより検証する。
一例として、以下の条件でシミュレーションした。
0=50GHz
S=50Ω
L=25Ω
oo=20.7Ω
oe=120Ω
なお、このシミュレーションでは、基本波f0に対してグランドと短絡となり、直流に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路(21)として、大容量のキャパシタを用いた。
【0033】
シミュレーション結果を図2A〜図2Dに示す。この結果から、38〜62GHzの帯域にわたり、
|S21|=|S31|=−3.0〜−3.5dB
∠S31−∠S21=180°
|S11|≦−10dB
であり、インピーダンス整合されていることが分かった。つまり、式(1)の妥当性が示された。
なおここで、S11は第1端子(1)の電圧反射特性、S21は第1端子(1)から第3端子(3)への電圧伝達特性、S31は第1端子(1)から第8端子(8)への電圧伝達特性である。
【0034】
(実施形態3)
本発明による実施形態3のバラン(103)の回路構成図を図3に示す。実施形態3のバランは、図1に示した実施形態1または実施形態2における周波数選択性インピーダンス回路(21)に代えて、基本波f0に対してグランドと短絡となり、直流および2次高調波に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路(23)が接続されており、さらに周波数選択性インピーダンス回路(23)には、2次高調波の注入または抽出と直流バイアスの印加を兼ねた注入抽出用端子(9)が接続されている。
【0035】
このような構成により、実施形態3のバランは、周波数選択性インピーダンス回路(23)が基本波f0に対してグランドと短絡になっているので、実施形態1または実施形態2と同等に、バランとして動作する。
【0036】
すなわち、実施形態3のバランにおいて、第1結合伝送線路(11)の第1端子(1)から入力された不平衡モード信号は、第1結合伝送線路(11)および第2結合伝送線路(12)を順次伝播し、第3端子(3)および第8端子(8)に、逆相で同振幅の平衡モード信号として出力され、バランとして動作する。
【0037】
さらに、周波数選択性インピーダンス回路(23)が2次高調波に対して開放となっているので、注入抽出用端子(9)から注入された2次高調波は、周波数選択性インピーダンス回路(23)の影響を受けることなく、第4端子(4)および第7端子(7)を介して、第2負荷(42)および第3負荷(43)に注入される。
【0038】
さらにまた、直流バイアスは周波数選択性インピーダンス回路(23)の影響を受けることなく、第4端子(4)および第7端子(7)を介して、第2負荷(42)および第3負荷(43)に印加される。
【0039】
このように実施形態3のバランは、注入抽出用端子(9)から2次高調波を注入するとともに、直流バイアスも印加できるので、この実施形態3のバランをプッシュプル電力増幅器に組み合わせると、2次高調波の注入効果によりその電力付加効率を向上することができるとともに、基本波f0の信号に影響を与えないようにバイアス回路を構成できるので、損失を低減でき、その結果、電力付加効率を向上することができる。
【0040】
(実施形態4)
本発明による実施形態4のバラン(104)の回路構成図を図4に示す。実施形態4のバランは、図3に示した実施形態3における周波数選択性インピーダンス回路(23)として、基本波f0に対して1/4波長の長さを有する先端開放伝送線路(24)を用いて、構成されている。
【0041】
この先端開放伝送線路(24)は、基本波f0に対して1/4波長の長さを有していることにより、グランドとの間が基本波f0に対して短絡であり、また、直流および2次高調波に対して開放の回路となっている。また、注入抽出用端子(9)が接続されており、当該注入抽出用端子(9)から2次高調波を注入するとともに、直流バイアスを印加することができる。したがって、実施形態4のバラン(104)は、実施形態3と同等の構成をしており、同等の動作をする。
【0042】
(実施形態5)
本発明による実施形態5のバラン(105)の回路構成図を図5に示す。実施形態5のバランは、図3に示した実施形態3の周波数選択性インピーダンス回路(23)として、インダクタL1およびキャパシタC1で構成される直列共振回路、ならびに、該直列共振回路に並列に接続されたキャパシタC2で構成される第1集中定数回路(31)を備えており、
前記L1,前記C1および前記C2の各値が、
(数2)
0=1/(2π√(L11)) 式(2)
(数3)
1=C2 式(3)
の関係式を満足するように、選ばれて構成されている。
【0043】
前記第1集中定数回路(31)は、グランドに対して基本波f0には短絡されており、直流および2次高調波に対して開放の回路となっている。したがって、実施形態5のバラン(105)は、実施形態3と同等の構成をしており、同等の動作をする。
【0044】
(実施形態6)
次に、本発明の第2発明である実施形態6のバランについて説明する。本発明の実施形態6によるバラン(106)の回路構成図を図6に示す。
実施形態6のバラン(106)は、図1に示した実施形態1のバラン(101)に比べて、
(1)インピーダンスの関係式が異なる、
(2)周波数選択性インピーダンス回路が基本波に対して開放である、
(3)第2端子および第5端子の接続部分、ならびに第6端子が、グランドに接続されている、
ことが異なっている。
【0045】
すなわち、実施形態6のバランは、
基本波f0に対して1/4波長の長さを有し、性能が同等である、第1結合伝送線路(11)と第2結合伝送線路(12)とを用いて構成されるバラン(106)であって、
前記第1結合伝送線路(11)は、互いに対向し近接して並行に配置された、第1伝送線路(111)および第2伝送線路(112)で構成され、
前記第1伝送線路(111)は、第1端子(1)および第2端子(2)を有し、前記第2伝送線路(112)は、前記第1端子(1)に対応する第4端子(4)および前記第2端子(2)に対応する第3端子(3)を有し、
前記第2結合伝送線路(12)は、互いに対向し近接して並行に配置された、第3伝送線路(123)および第4伝送線路(124)で構成され、
前記第3伝送線路(123)は、第5端子(5)および第6端子(6)を有し、前記第4伝送線路(124)は、前記第5端子(5)に対応する第8端子(8)および前記第6端子(6)に対応する第7端子(7)を有しており、
前記第1端子(1)は第1負荷(41)に接続され、前記第3端子(3)は第2負荷(42)に接続され、前記第8端子(8)は第2負荷(42)とそのインピーダンスの等しい第3負荷(43)に接続されており、
前記第2端子(2)および前記第5端子(5)とは互いに接続されてグランドに短絡され、
前記第4端子(4)および前記第7端子(7)とは互いに接続され、
前記第6端子(6)はグランドに短絡されていることを特徴とする。
【0046】
本発明の第2発明である実施形態6のバラン(106)は、上述のように構成され、第1結合伝送線路(11)の第1端子(1)から入力された基本波f0の不平衡モード信号は、第1結合伝送線路(11)および第2結合伝送線路(12)とを順次伝播し、第3端子(3)および第8端子(8)に、互いに逆相で同振幅の平衡モード信号として出力され、バランとして動作する。
【0047】
一方、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分は、グランドに接続されていないので、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分から、第2負荷(42)および第3負荷(43)に、直流バイアスを印加することが可能となっている。
なお、直流バイアスは、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分に、プローブなどの接触端子を介して印加してもよいし、直流バイアス印加用の端子を設けてもよい。
【0048】
本発明の第2発明である実施形態6のバランは、従来のマーチャントバランと比べると、2つの結合伝送線路の各端子における接続が異なっている。
実施形態6のバランでは、第2端子および第5端子とは互いに接続されてグランドに短絡され、第4端子および第7端子とは互いに接続され、第6端子はグランドに短絡されている。
【0049】
これに対して、図12に示したマーチャントバランでは、第2端子および第5端子とは互いに接続されているがグランドに短絡されておらず、第4端子および第7端子とはそれぞれグランドに短絡されているが直接接続されておらず、第6端子はオープンになっておりグランドに短絡されていない。
【0050】
このように、実施形態6のバランの特徴的である、2つの結合伝送線路の各端子における接続の構成は、新規なものである。上述のように、実施形態6のバランでは、入力された不平衡モード信号を平衡モード信号として出力できる。さらに、第4端子および第7端子の接続部分はグランドに接続されていないので、この接続部分から、第2負荷および第3負荷に、直流バイアスを印加することが可能となっている。このように、実施形態6のバランは、バランとして動作するとともに、直流バイアスを印加することが可能な構成を有しており、マーチャントバランでは得られない効果を発揮することができる。
【0051】
(実施形態7)
本発明による実施形態7のバランは、図6に示した回路構成において、
第1結合伝送線路と第2結合伝送線路における、偶モード特性インピーダンスZoeおよび奇モード特性インピーダンスZooは、前記第1負荷のインピーダンスZS、ならびに、前記第2負荷および前記第3負荷のインピーダンスZLとに対して、
(数4)
1/2(1/Zoo−1/Zoe)=√(2/(ZS・ZL)) 式(4)
の関係式を満足するように設定されている。
【0052】
このような構成により、第1負荷(41)、ならびに、第2負荷(42)および第3負荷(43)の間における、インピーダンス整合がなされている。
【0053】
上述した式(4)を満足すれば、バランとして動作し、かつ、インピーダンス整合することを、以下のシミュレーションにより検証する。
一例として、以下の条件でシミュレーションした。
0=50GHz
S=50Ω
L=100Ω
oo=20.7Ω
oe=120Ω
【0054】
シミュレーション結果を図7A〜図7Dに示す。この結果から、38〜62GHzの帯域にわたり、
|S21|=|S31|=−3.0〜−3.5dB
∠S31−∠S21=180°
|S11|≦−10dB
であり、インピーダンス整合されていることが分かった。つまり、式(4)の妥当性が示された。
なおここで、S11は第1端子(1)の電圧反射特性、S21は第1端子(1)から第3端子(3)への電圧伝達特性、S31は第1端子(1)から第8端子(8)への電圧伝達特性である。
【0055】
(実施形態8)
本発明の実施形態8によるバラン(108)の回路構成図を図8に示す。実施形態8のバランは、図6に示した実施形態6または実施形態7の回路構成において、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分に、基本波、直流および2次高調波に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路(26)が接続されており、さらに周波数選択性インピーダンス回路(26)には、2次高調波の注入または抽出と直流バイアスの印加を兼ねた注入抽出用端子(9)が接続されている。
【0056】
実施形態8のバラン(108)は、図8に示された回路構成を有し、基本波に対して図6に示した実施形態6または実施形態7と同等の構成となっているので、バランとして動作する。すなわち、第1端子(1)から入力された不平衡モード信号は、第1結合伝送線路(11)および第2結合伝送線路(12)を順次伝播し、第3端子(3)および第8端子(8)に、逆相で同振幅の平衡モード信号として出力され、バランとして動作する。
【0057】
さらに、周波数選択性インピーダンス回路(26)が2次高調波に対して開放となっているので、注入抽出用端子(9)から注入された2次高調波は、周波数選択性インピーダンス回路(26)の影響を受けることなく、第4端子(4)および第7端子(7)を介して、第2負荷(42)および第3負荷(43)に注入される。
【0058】
またさらに、周波数選択性インピーダンス回路(26)が直流に対して開放となっているので、注入抽出用端子(9)から印加された直流バイアスは、周波数選択性インピーダンス回路(26)の影響を受けることなく、第4端子(4)および第7端子(7)を介して、第2負荷(42)および第3負荷(43)に印加される。
【0059】
(実施形態9)
本発明の実施形態9によるバラン(109)の回路構成図を図9に示す。実施形態9によるバラン(109)は、図8に示した実施形態8における周波数選択性インピーダンス回路(26)に代えて、基本波に対して1/2波長先端開放伝送線路(29)を用いて構成するとともに、当該1/2波長先端開放伝送線路21の長さ方向の中央部に、2次高調波を注入または抽出する注入抽出用端子(9)を設けたものである。
【0060】
1/2波長先端開放伝送線路(29)は、基本波、直流および2次高調波に対してグランドと開放となっているので、この実施形態9のバランは、実施形態8のバランと同等の構成を有しており、同等の動作をする。
【0061】
(実施形態10)
本発明の実施形態10によるバラン(110)の回路構成図を図10に示す。実施形態10によるバランは、実施形態8のバランおける周波数選択性インピーダンス回路(26)として、インダクタL3およびキャパシタC3で構成される並列共振回路、ならびに、該並列共振回路に直列に接続されたインダクタL4で構成される第2集中定数回路(32)を備えており、
前記L3,前記C3および前記L4の各値が、
(数5)
0=1/(2π√(L33)) 式(5)
(数6)
3=L4 式(6)
の関係式を満足するように選ばれるとともに、前記第2集中定数回路(32)における、前記第4端子(4)と前記第7端子(7)の接続部分の反対側に、前記2次高調波を注入または抽出する注入抽出用端子(9)が接続されて構成されている。
【0062】
第2集中定数回路(32)において、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分、ならびにグランドの間は、基本波、直流、および2次高調波に対して開放となっており、また、第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分、ならびに注入抽出用端子(9)の間は、2次高調波および直流に対して導通となっている。
【0063】
このため、注入抽出用端子(9)から注入された2次高調波、または印加された直流バイアスは、第2集中定数回路(32)の影響を受けることなく、そのまま第4端子(4)および第7端子(7)の接続部分を介して、第2負荷(42)および第3負荷(43)に、注入または印加される。したがって、この実施形態10は、実施形態8のバランと同等の構成を有しており、同等の動作をする。
【0064】
(プッシュプル電力増幅器への適用例)
本発明によるバランは、プッシュプル電力増幅器の入力側および出力側バランとして用いることができる。例えば、実施形態3のバラン(103)を、プッシュプル電力増幅器の入力側および出力側に適用した回路構成図を図11に示す。
【0065】
基本波入力信号Vinは、入力側バラン(103a)により逆相で同振幅の信号V1inおよびV2inに変換されて、2つの増幅素子T1およびT2に入力され、それぞれV1outおよびV2outに増幅され、出力側バラン(103b)にて合成され、出力信号Voutとして出力される。なお図11では、信号の流れを白抜き矢印で表している。
【0066】
一方、2つの増幅素子T1およびT2の入力側には、同相で同振幅の2次高調波(SHa1)および(SHa2)が発生し、入力側バランに入力され、そこで合成され、入力側バランの注入抽出用端子(9a)から抽出される。さらに、この2次高調波は、位相および振幅調整回路にて、その位相と振幅が適切に調整された後に、出力側バランの注入抽出用端子(9b)から出力側バランに注入され、そこで同相で同振幅の2次高調波(SHb1)および(SHb2)に変換されて、2つの増幅素子T1およびT2の出力側から、同相で同振幅にて注入される。このため、2つの増幅素子T1およびT2の効率を同時に向上することができるので、プッシュプル電力増幅器の電力付加効率を向上できる。なお図11では、2次高調波の流れを破線矢印で表している。
【0067】
以上説明したように、本発明によるバランを、プッシュプル電力増幅器の入力側および出力側バランとして用いると、以下のような効果を奏する。つまり、プッシュプル電力増幅器の入力側バランから2次高調波を抽出し、抽出した2次高調波の位相および振幅を調整した後に、出力側バランからプッシュプル電力増幅器に注入できるので、電力付加効率をより高めることができる。
【0068】
さらに、図11に示したプッシュプル電力増幅器では、高調波の位相および振幅を調整する回路を備えているので、抽出した2次高調波の位相および振幅を調整することができる。したがって、より高効率なプッシュプル電力増幅器を実現できる。
【0069】
また、図11に示したプッシュプル電力増幅器では、入力側直流バイアスを、入力側バイアス回路(28a)から入力側バランの注入抽出用端子(9a)を介して、増幅素子T1およびT2の入力側に印加することが可能である。また、出力側直流バイアスを、出力側バイアス回路(28b)から出力側バランの注入抽出用端子(9b)を介して、増幅素子T1およびT2の出力側に印加することも可能である。なお図11では、直流バイアスの流れを黒塗り矢印で表している。
【0070】
図11に示したように、入力側バイアス回路(28a)および出力側バイアス回路(28b)は、基本波が伝播する経路とは別に構成されているので、基本波信号に対する回路損失を低減でき、増幅器の利得および電力付加効率の低下を防ぐ効果もある。このように、注入抽出用端子(9)は、直流バイアスを印加する端子として利用可能である。
【0071】
以上では、2次高調波を注入または抽出するバランについて説明したが、これに限らず、任意の偶数次高調波を注入または抽出する場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によるバランは、プッシュプル電力増幅器の入力側および出力側バランとして用いることができ、プッシュプル電力増幅器の電力付加効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0073】
101,103,104,105,106,108,109,110 バラン
103a,103b プッシュプル電力増幅器に適用されたバラン
11 第1結合伝送線路
12 第2結合伝送線路
1 第1端子
2 第2端子
3 第3端子
4 第4端子
5 第5端子
6 第6端子
7 第7端子
8 第8端子
9 2次高調波を注入もしくは抽出し、または直流バイアスを印加する注入抽出用端子
21 基本波f0に対して短絡となり、直流に対して開放となる回路
22 基本波f0に対して開放となる回路
23 基本波f0に対して短絡となり、直流および2次高調波に対して開放となる回路
24 基本波f0に対して1/4波長を有する先端開放伝送線路
26 直流、基本波f0および2次高調波に対して開放となる回路
27 基本波f0に対して1/2波長を有する先端開放伝送線路
28a 入力側バイアス回路
28b 出力側バイアス回路
29 位相および振幅調整回路
31 第1集中定数回路
32 第2集中定数回路
41 第1負荷
42 第2負荷
43 第3負荷
111 第1伝送線路
112 第2伝送線路
123 第3伝送線路
124 第4伝送線路
200 プッシュプル電力増幅器
1000 マーチャントバラン
1011 結合伝送線路
1012 結合伝送線路
1001 入力端子
1003 出力端子
1008 出力端子
1041 第1負荷
1042 第2負荷
1043 第3負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波f0に対して1/4波長の長さを有し、性能が同等である、第1結合伝送線路および第2結合伝送線路を有して構成されるバランであって、
前記第1結合伝送線路は、互いに対向し近接して並行に配置された、第1伝送線路および第2伝送線路で構成され、
前記第1伝送線路は、第1端子および第2端子を有し、前記第2伝送線路は、前記第1端子に対応する第4端子および前記第2端子に対応する第3端子を有し、
前記第2結合伝送線路は、互いに対向し近接して並行に配置された、第3伝送線路および第4伝送線路で構成され、
前記第3伝送線路は、第5端子および第6端子とを有し、前記第4伝送線路は、前記第5端子に対応する第8端子および前記第6端子に対応する第7端子を有しており、
前記第1端子は第1負荷に接続され、前記第3端子は第2負荷に接続され、前記第8端子は第2負荷とそのインピーダンスの等しい第3負荷に接続されており、
前記第6端子は開放され、前記第2端子および前記第5端子は互いに接続され、前記第4端子および前記第7端子は互いに接続されており、
前記第4端子および前記第7端子の接続部分に、基本波f0に対してグランドと短絡となり、直流に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路が接続されていることを特徴とするバラン。
【請求項2】
請求項1に記載のバランにおいて、
前記第1結合伝送線路および前記第2結合伝送線路における、偶モード特性インピーダンスZoeおよび奇モード特性インピーダンスZooは、前記第1負荷のインピーダンスZS、ならびに、前記第2負荷および前記第3負荷のインピーダンスZLに対して、
(数1)
1/2(1/Zoo−1/Zoe)=√(1/(2ZS・ZL)) 式(1)
の関係式を満足するように設定されているバラン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、基本波f0に対してはグランドと短絡となり、直流および2次高調波に対してグランドと開放となる周波数選択性インピーダンス回路であり、
さらに直流バイアスを印加し、または、2次高調波を注入もしくは抽出する注入抽出用端子が設けられているバラン。
【請求項4】
請求項3に記載のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、基本波f0に対して1/4波長の長さを有する先端開放伝送線路であるバラン。
【請求項5】
請求項3に記載のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、インダクタL1およびキャパシタC1とで構成される直列共振回路と、該直列共振回路に並列に接続されたキャパシタC2とで構成される第1集中定数回路であり、
前記L1,前記C1,前記C2の値が、
(数2)
0=1/(2π√(L11)) 式(2)
(数3)
1=C2 式(3)
の関係式を満足するように設定されているバラン。
【請求項6】
基本波f0に対して1/4波長の長さを有し、性能が同等である、第1結合伝送線路および第2結合伝送線路を用いて構成されるバランであって、
前記第1結合伝送線路は、互いに対向し近接して並行に配置された、第1伝送線路および第2伝送線路で構成され、
前記第1伝送線路は、第1端子および第2端子を有し、前記第2伝送線路は、前記第1端子に対応する第4端子および前記第2端子に対応する第3端子を有し、
前記第2結合伝送線路は、互いに対向し近接して並行に配置された、第3伝送線路および第4伝送線路で構成され、
前記第3伝送線路は、第5端子および第6端子を有し、前記第4伝送線路は、前記第5端子に対応する第8端子および前記第6端子に対応する第7端子を有しており、
前記第1端子は第1負荷に接続され、前記第3端子は第2負荷に接続され、前記第8端子は第2負荷とそのインピーダンスの等しい第3負荷に接続されており、
前記第2端子および前記第5端子は互いに接続されてグランドに短絡され、
前記第4端子および前記第7端子は互いに接続され、
前記第6端子はグランドに短絡されていることを特徴とするバラン。
【請求項7】
請求項6に記載のバランにおいて、
前記第1結合伝送線路および前記第2結合伝送線路における、偶モード特性インピーダンスZoeおよび奇モード特性インピーダンスZooは、前記第1負荷のインピーダンスZS、ならびに、前記第2負荷および前記第3負荷のインピーダンスZLに対して、
(数4)
1/2(1/Zoo−1/Zoe)=√(2/(ZS・ZL)) 式(4)
の関係式を満足するように設定されているバラン。
【請求項8】
請求項6または7に記載のバランにおいて、
前記第4端子および前記第7端子の接続部分に、基本波f0,直流および2次高調波につきグランドに対して開放となる周波数選択性インピーダンス回路が接続されているとともに、直流バイアスを印加し、または、2次高調波を注入もしくは抽出する注入抽出用端子が設けられているバラン。
【請求項9】
請求項8に記載のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、基本波f0に対して1/2波長の長さを有する先端開放伝送線路であり、
前記注入抽出用端子が、前記先端開放伝送線路の長さ方向の中央部に設けられているバラン。
【請求項10】
請求項8に記載のバランにおいて、
前記周波数選択性インピーダンス回路は、インダクタL3およびキャパシタC3とで構成される並列共振回路、ならびに、該並列共振回路に直列に接続されたインダクタL4で構成される第2集中定数回路であり、
前記L3,前記L4および前記C3の各値が、
(数5)
0=1/(2π√(L33)) 式(5)
(数6)
3=L4 式(6)
の関係式を満足するように設定されており、
前記第2集中定数回路における、前記第4端子および前記第7端子の接続部分の反対側に、前記注入抽出用端子が接続されているバラン。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載されたバランを、プッシュプル電力増幅器の入力側および出力側の少なくとも一方に組み合わせたことを特徴とするプッシュプル電力増幅装置。
【請求項12】
請求項11に記載されたプッシュプル電力増幅装置において、
前記プッシュプル電力増幅器は、さらに高調波の位相および振幅を調整する、位相および振幅調整回路を備えているプッシュプル電力増幅装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−90166(P2013−90166A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229347(P2011−229347)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(711003749)株式会社Wave Technology (3)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】