説明

バルクモールディングコンパウンド及びその成形品

【課題】溶剤を一切使用することなく強化繊維材料にポリイミド樹脂を含浸させた保存安定性の優れたBMCと、このBMCから製作される成形品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】強化繊維材料にマトリックス樹脂が含浸されて成るBMC材料であって、前記マトリックス樹脂は、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂である。この融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂は、少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物、少なくとも1種の芳香族ジアミン、および少なくとも1種の末端停止剤の反応生成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルクモールディングコンパウンド(以下、BMCと略称する。)及びこのBMCを成形して得られる耐熱性、寸法安定性に優れた成形品に関する。詳しくは融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂と強化繊維材料からなるBMCに関するものである。
【背景技術】
【0002】
BMCは、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維材料と熱硬化性樹脂を混合、含浸させた成形用材料である。通常、このBMCはプレス成形やトランスファー成形、射出成形といった加熱・加圧手段を用いた成形方法により目的とする成形品を得ることができる。これらのBMCを用いて得られる成形品は、耐久性、耐熱性、機械特性、不燃性などの特性に優れ、自動車、航空・宇宙分野、電気・電子装置分野、半導体製造装置、あるいは人造大理石、建築材料などの一般産業用途においても注目され、その需要は年々高まりつつある。
【0003】
これらのBMCは、このBMCを用いて製造される成形品の用途や必要特性に応じて、強化繊維材料及びマトリックス樹脂が選定され、マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられている。また、強化繊維材料としては、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミドイミド繊維、及びその他プラスチック繊維などが一般的に使用されている。
【0004】
ところで、近年、様々な用途にBMCが使用される機会が多くなってきておりBMCに要求される特性も多岐にわたり、その要求特性として、(1)軽量化、(2)寸法安定性、(3)機械的特性、(4)耐熱性、(5)耐薬品性などの特性が挙げられている。しかし、従来のBMCを用いた成形品では上記(1)〜(5)の要求特性を満たすことが困難になりつつある。
【0005】
このような問題を解決するために、マトリックス樹脂としてポリイミド樹脂を用いたBMCの開発が進められている。すなわち、ポリイミド樹脂は、その高い耐熱性に加え、機械的特性、寸法安定性に優れ、さらに不燃性、電気絶縁性などの特性も合わせ持つため電気・電子機器、宇宙・航空用機器等の広い分野で使用され、永年の優れた実績を有するからである。
【0006】
これらのポリイミド樹脂をBMCのマトリックス樹脂として使用した技術は、特許文献1では、線状芳香族ポリイミド樹脂中に強化繊維が分散され、線状芳香族ポリイミド樹脂と強化繊維との重量比率が95:5〜35:65である繊維強化ポリイミドが開示されている。また、特許文献2ではテトラカルボン酸ジメチルエステル化合物、ジアミン化合物並びにエキソ−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物及び/又はエキソ−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸モノエステル化合物からなる付加型ポリイミド樹脂原料組成物及びそのプレポリマー含有組成物が開示されている。
【0007】
次に特許文献3には、有機溶媒中に付加型のイミドオリゴマーが重量比で20%以上溶解しているイミドオリゴマー溶液を、リキッドモールディング法によって強化繊維もしくは繊維織物に含浸し、有機溶媒を揮発させた後に、イミドオリゴマーを付加反応させることによって複合材料を成形する方法が開示されている。さらに、特許文献4では、芳香族ビスイミド化合物にポリイミド樹脂を含有させてなるポリイミド樹脂組成物、またこれらの芳香族ビスイミド化合物を炭素繊維の表面に塗布し、この炭素繊維をポリイミド樹脂と含有させてなる炭素繊維強化ポリイミド系樹脂組成物が開示されている。
【0008】
しかしながら上記特許文献に記載のBMCの製造方法は、強化繊維材料にポリイミド樹脂を含浸させる方法が、いずれも、溶媒を含む液状、溶液、ゲル状のポリイミド樹脂やポリイミド前駆体に強化繊維材料を投入し、混合、含浸させる方法であり、BMCの保存安定性が悪いという問題があった。また、このような方法で製造したBMCを用いて成形品を製作する場合には、加熱成形工程で溶剤の蒸発やイミド転化に伴う縮合水などの発生により成形品にボイドが発生して機械的特性が低下する問題、あるいはポリイミド樹脂の流れが悪いなどの問題があった。
【特許文献1】特開2000−239524
【特許文献2】特開2003−292619
【特許文献3】特開2006−117788
【特許文献4】特開2001−131147
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、溶剤を一切使用することなく強化繊維材料にポリイミド樹脂を含浸させた保存安定性の優れたBMCと、このBMCから製作される成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、融点を有しかつ、熱硬化性のポリイミド樹脂と、このポリイミド樹脂を強化繊維材料に含浸させる条件や方法について、研究開発を継続した結果、強化繊維材料にポリイミド樹脂を溶融させて混合及び含浸することによって強化繊維材料のストランドの内部にもスムーズにポリイミド樹脂を浸透させ含浸させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本出願に係る第1の発明は、強化繊維材料にマトリックス樹脂が含浸されて成るBMCであって、前記マトリックス樹脂は、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂であることを特徴とする。次に本願に係る第2の発明は、請求項1に記載された発明において前記融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂が、少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物、少なくとも1種の芳香族ジアミン、および少なくとも1種の末端停止剤の反応生成物である。
【0012】
次に、本願に係る第3の発明は、請求項2に記載された発明において、前記融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂は、第1の芳香族テトラカルボン酸二無水物、第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物、少なくとも1種の芳香族ジアミンおよび少なくとも1種の末端停止剤の反応生成物であり、前記第1の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、前記第1及び第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物の総重量に対して約5〜40重量%の量で存在し、前記第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、前記第1及び第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物の総重量に対して60重量%以上95重量%以下の量で存在しているBMCである。
【0013】
本願に係る第4の発明は、請求項2及び3に記載された発明において、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、その化学構造中に2つ以上の芳香環を有しているBMCである。本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の調製において用いるのに適していると考えられる芳香属テトラカルボン酸二無水物は、以下の式(I)
【0014】
【化1】


または以下の一般式(II)
【0015】
【化2】



(ただし、Zは−CO−、−O−、−SO2−または直接結合を表す)によって表される
一般に2つ以上の芳香環を化学構造中に有するテトラカルボン酸二無水物である。
【0016】
構造(I)を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物は、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物またはPMDAともいう)であり、構造(II)を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物は、例えば3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4'−オキシジフタル酸無水物(OPDA)、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)などが好ましい。
【0017】
本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の調製には1種以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いる。2種の芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いる場合は、第1の芳香族テトラカルボン酸二無水物(例えばBTDA)は、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総重量に対して5重量%以上40重量%以下(より好ましくは10重量%25重量%、最も好ましくは20重量%25重量%)の量で存在しているのが好ましく、第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物(例えばBPDA)は、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総重量に対して60重量%以上95重量%以下(より好ましくは75重量%以上90重量%以下、最も好ましくは75重量%80重量%以下)の量で存在しているのが好ましい。
【0018】
次に本願に係る第5の発明は、請求項2に記載された発明において、前記融点を有する熱硬化ポリイミド樹脂は、少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物、2種の芳香族ジアミンおよび少なくとも1種以上の末端停止剤の反応生成物であり、前記2種の芳香族ジアミンのうち少なくとも一方は、その化学構造中に1つ以上の酸素結合を有し、かつ前記2種の芳香族ジアミンの総重量に対して少なくとも50重量%の量で存在しているBMCである。
【0019】
次に本願に係る第6の発明は、請求項5に記載された発明において、前記芳香族ジアミンがその化学構造中に少なくとも1つのエーテル結合を有しているBMCである。本発明において用いるのに適していると考えられる芳香族ジアミンは、m−フェニレンジアミン(m−PDA)、3,4'−オキシジアニリン(3,4'−ODA)、4,4’−オキシジアニリン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS−M)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)などの芳香族ジアミンである。
【0020】
本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の調製には1種以上の芳香族ジアミンを用いる。2種の芳香族ジアミンを用いる場合は、少なくとも1方の芳香族ジアミンが1つ以上の酸素結合を有しており、この芳香族ジアミンが芳香族ジアミンの総重量に対して少なくとも50重量%以上の量で存在しているのが好ましい。
【0021】
次に本願に係る第7の発明は、請求項2,3,5のいずれかに記載された発明において、前記末端停止剤は、不飽和炭素環式モノマー酸無水物であり、前記不飽和炭素環式モノマー酸無水物は、融点が250度C未満であり、200度Cでの溶融粘度が500cps以上50,000cps以下であるオリゴマーを形成するBMCである。
【0022】
本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の調製において用いるのに適した末端停止剤は、融点が約250℃未満で200℃での溶融粘度が500cps以上50,000cps以下であるオリゴマーを形成する不飽和炭素環式モノマー酸無水物である。このようなモノマー酸無水物としては、ナジック酸無水物(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物:HA)、マレイン酸無水物のアルキル誘導体、すなわちメチルマレイン酸無水物(シトラコン酸無水物:CA)、イタコン酸無水物(IA)、ジメチルマレイン酸無水物、2−オクテン−1−イルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0023】
次に、本願に係る第8の発明は、請求項1〜7に記載のいずれかに記載された発明において、前記融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の融点が200度C未満であり、200度Cでの溶融粘度が50,000cps以下であることを特徴とするBMCである。本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂は、融点が250度C以下(好ましくは225度C以下)であり、200度Cでの溶融粘度が低く、50,000cps以下(好ましくは1,000cps以上25,000cps以下)である。したがってこれらの樹脂はポリイミド樹脂の加工温度としては比較的低い温度で加工することができる。さらに、本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の200度Cにおける加工窓(最低溶融粘度である時間)は、少なくとも約60分であり、硬化温度は300度C以上375度C以下、好ましくは320度C以上350度C以下である。本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の理論平均分子量は、4,000以下、好ましくは2,000以上3,000以下である。
【0024】
本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の合成は、まずアミド酸溶液を調製し、その後イミド粉末を調製することによって行う。
【0025】
アミド酸溶液は、例えば、
(1)少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物(例えばBPDA)および少なくとも1種の芳香属ジアミン(例えばBAPP)を別々の反応容器に仕込み、
(2)所定の溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP))を各反応容器に添加して、一方の容器に芳香族テトラカルボン酸二無水物のスラリーまたは溶液、他方の容器に芳香属ジアミンのスラリーまたは溶液を生成し、
(3)各反応容器中のスラリーまたは溶液を50度C〜120度Cの温度まで加熱して、芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香属ジアミンを溶解し、
(4)各反応容器中の溶液を周囲の温度または室温まで冷却し、
(5)芳香族テトラカルボン酸二無水物溶液をジアミン溶液に10分〜60分間にわたって徐々に添加し、
(6)末端停止剤(例えばNMPに溶解したシトラコン酸無水物(CA))を反応容器に添加し、
(7)溶液を15〜120分間攪拌することにより調製される。この際、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンと末端停止剤とのモル比が、約1.0/1.95/2.10〜1.0/2.1/2.0となるように調整する。
【0026】
ところで、上述したアミド酸溶液の調製工程において、芳香族テトラカルボン酸二無水物溶液を、芳香族ジアミン溶液に反応温度を制御しながら徐々に添加すると、得られる樹脂の分子量が減少し、その結果、得られる樹脂の融点および溶融粘度が好ましく低減する。
【0027】
本発明のポリイミド樹脂の製造方法において用いるのに適した溶媒としては、NMP、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム等のようなアミド系溶媒が挙げられ、これらの中では、NMP、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0028】
融点が250℃度以下であり200度Cでの溶融粘度が50,000センチポイズ以下であるポリイミド樹脂を生成するためには、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンと末端停止剤とのモル比を、少なくとも1つの末端停止ラジカルを有し、鎖延長および架橋に適した低分子量のプレポリマーが溶液の攪拌によって生成されるようなモル比とすることが望ましい。典型的には、プレポリマーの理論平均分子量は、例えば1モル当り4,000グラム(即ち、4,000g/モル)以下であり、好ましくは2000g/モル以上3000g/モル以下である。
【0029】
また、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンと末端停止剤とのモル比は、芳香族テトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミン/末端停止剤=1.0/2.0/2.01が好ましく、芳香族テトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミン/末端停止剤=n/n+1/2がより好ましい。
【0030】
本発明によるイミド粉末の合成は、化学イミド化または熱イミド化のいずれかを必要とする。好ましい実施形態においては、イミド粉末は化学イミド化によって調製され、その際、閉環を促進するために強酸性物質が用いられ、共沸水を除去するために共沸剤が用いられる。さらに、より好ましい実施形態においては、メタンスルホン酸のような強酸性物質が触媒として使用され、共沸水はトルエンのような第三級アミン共溶媒を用いて除去される。
【0031】
より具体的には、例えばイミド粉末は、
(1)20重量%以上40重量%以下(好ましくは25重量%以上35重量%以下)のアミド酸溶液および60重量%以上80重量%以下(好ましくは65重量%以上75重量%以下)の共沸剤(例えばトルエン)を反応容器に入れ、
(2)0.05重量%以上0.5重量%以下(好ましくは0.1重量%以上0.2重量%以下)の強酸性触媒(例えばメタンスルホン酸)を反応容器に仕込んで混合物を生成し、
(3)反応容器中の混合物を、100度C〜130度C(好ましくは120度C〜125度C)の温度になるまで2〜6時間加熱し、
(4)混合物を周囲の温度または室温まで冷却し、
(5)共沸剤を反応容器から除去し、
(6)反応容器中の残留溶液から固形分またはイミド粉末を単離および回収することによって調製される。
【0032】
ところで、上述したイミド粉末の調製工程において、強酸性物質および共沸剤を上記の分量で用いると、閉環温度を有効に制御することができる。より具体的には、強酸性物質によって、より多くの水が生成され、共沸剤が系の還流点を低減させる。
【0033】
次に、本願に係る第9の発明は、請求項1に記載された発明において強化繊維材料が、炭素繊維、ガラス繊維、及び芳香属ポリアミド繊維の少なくとも1つの強化繊維材料からなるBMC材料である。
【0034】
次に本願に係る第10の発明は、請求項9記載された発明において前記炭素繊維が、ピッチ系の炭素繊維からなるBMCである。ピッチ系の炭素繊維であると導電性特性以外に負の線膨張係数を有するため成形体の各立体面での寸法安定性にすぐれ特に好ましい。
【0035】
次に本願に係る第11の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載された発明において前記強化繊維材料に対して前記融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の含有率が20重量%以上60重量%以下のBMCである。
【0036】
次に本願に係る第12の発明は、請求項1〜11のいずれかに記載されたBMCを成形して製造される成形体である。
【0037】
次に本願に係る第13の発明は、成形体の製造方法において、請求項1〜11のいずれかに記載されたBMCを溶融させて所定の形状に成形した後、前記BMCの融点以上の温度に加熱して熱硬化させることを特徴とする成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0038】
本発明のBMCは溶剤を一切含んでいないため貯蔵期間は半永久的であり、貯蔵する環境も高温等の異常な環境状態を除けば一切問題にすることがなく長期間貯蔵できる。次に、本発明のBMCの成形品は、BMCのマトリックス樹脂がポリイミド樹脂であるため耐熱性、機械的特性、寸法安定性など優れた特性を有する。また、本発明のBMCを用いた成形品の製造に際しては、所定の金型にBMCを投入して前記ポリイミド樹脂の融点まで加熱し成形した後、さらにポリイミド樹脂の熱硬化温度まで昇温させることにより、強化繊維材料に含浸されているポリイミド樹脂が再度溶融し「流れ」が生じ強化繊維材料と一体化して均一な成形品を製作することができる。また、BMCの製造方法及びこのBMCを使用した成形品の製造方法が非常にシンプルな操作や工程で製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明のバルクモールディングコンパウンド(BMC)について詳細に説明する。本発明のBMCは、強化繊維材料に融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂を溶融させて含浸させたものである。そしてこれらのBMCは射出成形や加熱圧縮成形などの成形方法によって所望の成形品を得るための成形材料として用いられる。
【0040】
上記した本発明の「融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂」は、少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の末端停止剤の反応生成物であり、融点が250度C以下であり、200度Cでの溶融粘度が50,000cps以下である。すなわち、「融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂」とは室温では粉末の固形物であり、この粉末を加熱していくと、粘度が低下し溶融していき、250度C近辺では融点を示し、この温度での粘度は50,000cps以下であり、液体の性状を示す。
【0041】
この液体の性状は、その温度を200度C近辺で一定に保つと、粘度もほぼ一定に保つことができ、この状態であれば60分程度は温度と粘度の関係を一定に保持することができる。そして、200度Cからさらに温度を上昇させていくと、熱硬化が始まり330度C近辺の温度で完全に固形化し、その後はポリイミド樹脂としての優れた耐熱性及び機械特性を発揮することになる。
【0042】
なお、本明細書中で用いる用語「融点」は、溶融した本発明の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂が安定した溶融粘度を示し始める最低温度を意味するものである。また、前記「安定した」とは、溶融粘度の変動が少なくとも1時間にわたって100cpsを超えないことを意味する。
粘度の測定は、ティー・エイ・インスツルメンツ社(TA Instruments)のAR1000型レオメーターを使用し、パラレルモード(直径40mm、ギャップ500μm)にて、ひずみ1.0%で測定を行った。また、測定する際、10℃/分の温度走査速度で温度を走査し、3秒ごとに37分間データを記録した。
【0043】
次に融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の調整において、(a)BPDAを、BAPP、BAPP/SR、APB、TPE−Rおよび3,4−ODAからなる群から選択された芳香族ジアミンと反応させ、すべての残留アミン基をCA、HAおよびIAからなる群から選択された不飽和炭素環式モノマー酸無水物で末端停止することによって、ポリイミド樹脂を調製する場合、例えば、以下の組み合わせが考えられる。
(i)BPDA//BAPP//CA
(ii)BPDA//APB//CA
(iii)BPDA//APB//HA
(iv)BPDA//BAPP//HAおよび
(v)BPDA//BAPP/IA。
【0044】
(b)BTDAを、BAPS−M、BAPP/BAPS−M、m−PDA/BAPS−M、3,4'−ODA/APB、APBからなる群から選択された芳香族ジアミンと反応させ、すべての残留アミン基をCA、HAおよびIAからなる群から選択された不飽和炭素環式モノマー酸無水物で末端停止することによって、ポリイミド樹脂を調製する場合。例えば、以下の組み合わせが考えられる。
(i)BTDA//BAPS−M//CA
(ii)BTDA//BAPP/BAPS−M//CA
(iii)BTDA//m−PDA/BAPS−M//CA
(iv)BTDA//3,4'−ODA/APB//CA
(v)BTDA//APB//CA
(vi)BTDA//BAPS−M//HA
(vii)BTDA//APB//HAおよび
(viii)BTDA//BAPS−M/IA。
【0045】
(c)BTDA/BPDAをBAPPと反応させ、更にCAと反応させてBTDA/BPDA//BAPP//CAを生成することによって、ポリイミド樹脂を調製する場合。
【0046】
(d)PMDAをBAPS−Mと反応させ、更にCAと反応させてPMDA//BAPS−M//CAを生成することによって、ポリイミド樹脂を調製する場合。
【0047】
(e)OPDAを、BAPPおよびBAPS−Mからなる群から選択された芳香族ジアミンと反応させ、更にCAと反応させてOPDA//BAPP//CAまたはOPDA//BAPS−M//CAを生成することによって、ポリイミド樹脂を調製する場合。
【0048】
(f)DSDAを、BAPS−MおよびBAPPからなる群から選択されたジアミンならびにCAと反応させて、DSDA//BAPS−M//CAまたはDSDA//BAPP//CAを生成することによって、ポリイミド樹脂を調製する場合。
【0049】
次に本発明のBMCにおいて、強化繊維材料は、炭素繊維、ガラス繊維、芳香属ポリアミドイミド繊維が好ましく、中でも炭素繊維はより好ましい強化繊維材料である。また、炭素繊維はピッチ系、PAN系いずれの炭素繊維も使用できる。成形品の熱膨張が問題視される用途には負の線膨張係数を有するピッチ系の炭素繊維を用いることが好ましい。
【0050】
また、強化繊維材料の形態はチョップドファイバーの形態が好ましく、強化繊維材料が炭素繊維であれば平均繊維長は5mm以上20mm以下の繊維を用いることが好ましい。平均繊維径は例えば0.1μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下、さらに好ましくは1μm以上20μm以下である。
【0051】
次に本発明のBMCの製造方法は、強化繊維材料と、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂を用いて製造することができる。強化繊維材料には、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂が均一に分散されかつ強化繊維間に含浸されている。これらの強化繊維材料に対する融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の含有率は20重量%以上60重量%以下であることが好ましい。前記含有量は成形品の特性によって選択することができるがより好ましい含有率は30重量%以上55重量%以下の範囲である。この範囲であると、高い機械的物性に加えて寸法安定性に優れ好ましい。
【0052】
本発明のBMCの製造方法は、強化繊維材料(チョップドファイバー)を加熱混合機などで攪拌しながら少なくともポリイミド樹脂の融点まで加熱する。例えば実施例に記載の融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(A)をマトリックス樹脂として使用する場合には強化繊維材料をあらかじめ200〜260度C(好ましくは220〜240度C)の温度まで加熱する。次いで強化繊維材料が前記温度に達してから融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂粉末を添加し、前記ポリイミド樹脂を溶融させて強化繊維材料に含浸させその後、加熱混合機から室温に直接取出し冷却してポリイミド樹脂含浸強化繊維の集塊物を製造することができる。上記の含浸工程において融点を有するポリイミド樹脂の添加方法は、粉末状で添加してもよく、また、あらかじめ加熱して溶融させた状態で添加してもよい。
【0053】
また、前記ポリイミド樹脂の添加方法は、強化繊維材料を前記好ましい温度に保持しながら強化繊維材料の総投入量に対して10〜20重量%を5〜10分間隔で投入する方法が好ましい。前記投入方法であると強化繊維材料に均一に含浸させることができる。
【0054】
また、本発明のBMCには、その成形品の基本的な特性を損なわない範囲において、次のような公知の添加剤を用いても差し支えない。例えば、充填材、顔料、固体潤滑剤、導電材料、熱伝導性材料などである。添加方法は、特に限定されない。BMCの製造時であってもよいし、成形体の製造時であってもよい。
【0055】
次に室温まで冷却されたポリイミド樹脂含浸強化繊維の集塊物はバンバリーミキサー、やロールミルなどによって所定の大きさに粉砕し、BMCとしての製造が完了する。
【0056】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
まず、融点を有するポリイミド樹脂の調整について説明する。
(1)融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(A)の調整(BPDA//BAPP//ODA//CA)
(アミド酸溶液の合成)
第1のビーカー内のNMP(70g)中にBPDA(7.35g、0.025モル)を入れ、第2のビーカー内のNMP(70g)中にBAPP(20.5g、0.05モル)を入れ、さらに第3のビーカー内のNMP(70g)にODA(6.00g、0.03モル)を入れた。そして、各ビーカーを加熱して各モノマーを完全に溶解した。得られた溶液を室温に冷却し、BAPP溶液及びODA溶液を、機械攪拌機、温度計およびBPDA溶液を添加するための滴下漏斗を備えた500mlの三つ口丸底フラスコに移した。各容器につき5.0gの追加のNMPを用いて各ビーカーをすすぎ、すべての反応物をNMPに溶解させた。次いで、BPDA溶液を3時間にわたってBAPP溶液とODA溶液の混合溶液に滴下して添加した。その後、末端停止剤としてCA(5.6g、0.05モル)を約1時間にわたって丸底フラスコに滴下して添加した。その後、温度がわずかに上昇した混合液を1時間攪拌し、固形分30重量%のアミド酸溶液を生成した。BPDA溶液およびCAの添加は室温で行った。
【0058】
(イミド粉末の合成)
トルエンで満たされたディーン・スターク(Dean-Stark)トラップが取り付けられ、還流凝縮器と、窒素導入口/排出口と、温度制御装置を介して接続された温度センサとを備えた500mlの三つ口丸底フラスコに、50gの分量の上記アミド酸溶液および116gのトルエンを入れた。次いで、0.3gの分量のメタンスルホン酸触媒を溶液に添加し、得られた混合物をマントルヒーターによって加熱して120〜125℃で還流し、3〜4時間保持した。この工程中に生成された水は、ディーン・スタークトラップの底に回収した。次いで、反応溶液を室温まで冷却させた。その後、反応溶液を回転式エバポレータのフラスコに移した。回転式エバポレータ(真空度:30ヘクトパスカル、加熱油浴温度:120度C)を用いて反応溶液からトルエンを除去した。次いで、回転式エバポレータのフラスコ中に残った溶液を、約1リットルの水道水が入った混合機に移し、5分間混合して溶液を沈殿させた。次に、真空ろ過を行い得られた沈殿物を単離し、水道水で2回洗浄し、強制通風乾燥器中105度Cで一晩乾燥を行って、黄色の粉末を得た(定量的収率:99.5%)。なお、調製したポリイミド樹脂の理論平均分子量は、1,266g/モルであった。また、融点は250度C未満で200度Cにおける溶融粘度は1000cpsであった。なお、ポリイミド樹脂粉末は約20〜50μmの粒径にロールミルで粉砕した。
【0059】
上記(1)融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(A)の調整と同じ方法で以下のアミド酸溶液の合成及びイミド粉末の合成を実施した。
(2)融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(B)の調整(BPDA//BAPP//HA)
BPDA(7.35g、0.025モル、NMP70g)、BAPP(20.5g、0.05モル、NMP70g)、HA(8.2g、0.05モル)。合成したポリイミド粉末の融点は200度Cであり、溶融粘度は1000cpsであった。
【0060】
(3)融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(C)の調整(α−BPDA//4,4−ODA//m−PDA//CA)
α−BPDA(8.82g、0.03モル、NMP70g)、4,4−ODA(10g、0.05モル、NMP70g)、m−PDA(0.65g、0.006モル、NMP70g)、CA(7.7g、0.07モル)。合成したポリイミド粉末の融点は200度Cであり、溶融粘度は1000cpsであった。
【0061】
(4)融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(D)の調整(BPDA//BAPP//CA)
BPDA(7.52g、0.026モル、NMP70g)、BAPP(20.9g、0.10モル、NMP70g)、CA(8.0g、0.07モル)。合成したポリイミド粉末の融点は200度Cであり、溶融粘度は1000cpsであった。
(実施例1)
【0062】
次に、上記した融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂を用いたBMCの製造について説明する。ピッチ系チョップド炭素繊維(ダイアリードK223HG:三菱化学産資(株)製)を135gと融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(A)90gを用意した。前記炭素繊維の平均単繊維径は11μm、ストランド引張強度3,800MPa、ストランド引張弾性率900GPa、繊維長6mmのものを用いた。まず、前記炭素繊維を加熱混合機に投入し混合させながら240度Cまで加熱した。次いで融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(A)の粉末を約15gずつ40分間で投入した。ポリイミド樹脂(A)の含有率Wfが40重量%になるように混合した。前記ポリイミド樹脂の投入が完了した後、加熱混合機からステンレスバットへ取り出すとともに、速やかに薄く広げ、そのまま室温まで冷却しBMCの集魂物を得た。その後、前記BMCの集塊物をマグネティック・ピストン粉砕機により炭素繊維を壊さないように繊維の束で外径2〜5mm長さ6〜12mくらいの大きさに粉砕した。次いで前記粉砕品40gを600mLのプラスチック容器の中へ入れ直径φ25mm、長さ90mm、重さ350gの金属製の円柱棒を入れて密封し、シェイカーにより30秒攪拌し炭素繊維を1次構造である11μm、繊維長6mmにまで分解し本発明のBMC(A40)を得た。
(実施例2)
【0063】
実施例1と同様に炭素繊維と、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(A)の含有率Wfが70重量%のBMC(A70)を製作した。
(実施例3)
【0064】
実施例1と同様に炭素繊維と、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(A)の含有率Wfが15重量%のBMC(A15)を製作した。
(実施例4)
【0065】
実施例1と同様に炭素繊維と、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(B)の含有率Wfが40重量%のBMC(B40)を製作した。
(実施例5)
【0066】
実施例1と同様に炭素繊維と、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(C)の含有率Wfが40重量%のBMC(C40)を製作した。
(実施例6)
【0067】
実施例1と同様に炭素繊維と、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂(D)の含有率Wfが40重量%のBMC(D40)を製作した。
(実施例7)
【0068】
次に、本発明のBMCを用いた成形品の製造方法について説明する。実施例1で合成したBMC(A40)を用いて成形品を製作した。まずBMC(A40)を240度Cに予備加熱し、ポリイミド樹脂が溶融した状態に保持した。また、あらかじめ凹凸状の成型金型も240度Cに予備加熱しておき、凹型内の中央部に240度Cに加熱したBMC(A40)180gを投入した。その後、凸型を載置し、凸型の自重(約11kg)のみで5分間静置した。次いで3Mpaまで加圧し3分静置、5Mpaまで加圧し3分静置、さらに10Mpaまで加圧し3分静置の条件で段階的に加圧した。その後、20Mpaまで直接加圧し、20Mpaで圧力が変動しないことを確認した後、成形機の温度を1度C/分の昇温速度で335度Cまで上昇させ、この温度で4時間焼成を行なった。焼成後は自然冷却し金型の温度が室温になった時点で圧力を開放した。得られたパネルは厚さ4.5mm、重量168gであった。図1に本実施例の超音波探傷試験結果を示す。なお超音波探傷試験装置は日立製作所製の装置を用い、プローブは10MHz、測定ピッチは1mmでおこなった。図1から明快なようにボイドなどの欠陥が無い成形品(150mm角パネル)を製作することができた。
(実施例8)
【0069】
実施例7と同じ条件でBMC(B40)を用いて成形品を製作した。この成形品の超音波探傷試験を行った結果、ボイドなどの欠陥の無い成形品(150mm角パネル)を得ることができた。
(実施例9)
【0070】
実施例7と同じ条件でBMC(C40)を用いて成形品を製作した。この成形品の超音波探傷試験を行った結果、ボイドなどの欠陥が無い成形品(150mm角パネル)を得ることができた。
(実施例10)
【0071】
実施例7と同じ条件でBMC(D40)を用いて成形品を製作した。この成形品の超音波探傷試験を行った結果、ボイドなどの欠陥が一切無い成形品(150mm角パネル)を得ることができた。
(比較例1)
【0072】
実施例7と同じ条件でBMC(A70)を用いて成形品を製作した。BMC(A70)180gを金型内に投入し、段階的に加圧していくうちに成形型内部の樹脂が外部へ流れ出した。成形品は強化繊維材料の不足であり、金型から成形品を取り出す時に一部破損してしまった。ポリイミド樹脂の含有量が過多であると金型から樹脂が外部へ流れ出しBMSの製造段階で設定したWf値に相当する成形品を製作することができなく、その結果、ボイドが多発し正常な成形品を得ることができなかった。本比較例の成形品の超音波探傷試験結果を図2に示す。
(比較例2)
【0073】
実施例7と同じ条件でBMC(A15)を用いて成形品を製作した。ほぼ正常な成形品を得ることができたが、充分な機械的特性を得ることができなかった。これは、強化繊維同士を結着する働きのポリイミド樹脂が少なすぎるために繊維同士が一体化されていなく成形品は外観上からも空隙が認められる不良品であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のBMCの成形品は優れた機械特性、耐熱性、寸法安定性、低線膨張特性などを有しており、電気・電子機器、機械、自動車、航空・宇宙機器、半導体製造装置のウエハー固定台、及び一般産業用機器などあらゆる産業における部品の素材として広く活用することができるので、その工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施例1に係るWfが40重量%の成形体の超音波探傷写真である。
【図2】本発明の比較例1に係るWfが70重量%の成形体の超音波探傷写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維材料にマトリックス樹脂が含浸されて成るバルクモールディングコンパウンドであって、前記マトリックス樹脂は、融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂であることを特徴とするバルクモールディングコンパウンド。
【請求項2】
前記融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂は、少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物、少なくとも1種の芳香族ジアミン、および少なくとも1種の末端停止剤の反応生成物である請求項1に記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項3】
前記融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂は、第1の芳香族テトラカルボン酸二無水物、第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物、少なくとも1種の芳香族ジアミンおよび少なくとも1種の末端停止剤の反応生成物であり、前記第1の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、前記第1及び第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物の総重量に対して5重量%以上40重量%以下の量で存在し、前記第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、前記第1及び第2の芳香族テトラカルボン酸二無水物の総重量に対して60重量%以上95重量%以下の量で存在している請求項2に記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項4】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、その化学構造中に2つ以上の芳香環を有している請求項2及び3に記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項5】
前記融点を有する熱硬化ポリイミド樹脂は、少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物、2種の芳香族ジアミンおよび少なくとも1種以上の末端停止剤の反応生成物であり、前記2種の芳香族ジアミンのうち少なくとも一方は、その化学構造中に1つ以上の酸素結合を有し、かつ前記2種の芳香族ジアミンの総重量に対して少なくとも50重量%の量で存在している請求項2に記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項6】
前記芳香族ジアミンが、その化学構造中に少なくとも1つのエーテル結合を有している請求項5に記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項7】
前記末端停止剤は、不飽和炭素環式モノマー酸無水物であり、前記不飽和炭素環式モノマー酸無水物は、融点が250度C未満であり、200度Cでの溶融粘度が500センチポイズ(cps)以上50,000cps以下であるオリゴマーを形成することを特徴とする請求項2、3、5のいずれかに記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項8】
前記融点を有する熱硬化ポリイミド樹脂の融点が250度C以下であり、200度Cでの溶融粘度が50,000cps以下である請求項1〜7のいずれかに記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項9】
前記強化繊維材料は、炭素繊維、ガラス繊維、及び芳香属ポリアミド繊維の少なくとも1つの強化繊維材料である請求項1に記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項10】
前記炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維である請求項9に記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項11】
前記強化繊維材料に対して融点を有する熱硬化性ポリイミド樹脂の含有率は、20重量%以上60重量%以下である請求項1〜10のいずれかに記載のバルクモールディングコンパウンド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のバルクモールディングコンパウンドを成形してなる成形品。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載のバルクモールディングコンパウンドを溶融させて所定の形状に成形した後、前記バルクモールディングコンパウンドの融点以上の温度に加熱して熱硬化させる請求項12に記載の成形品の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−203252(P2009−203252A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43785(P2008−43785)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】