説明

バルブユニット

【課題】工具類の到達がし難く、また目視も困難な構造であっても、シャフトへの弁体の取り付けが容易なバルブユニットの提供。
【解決手段】バルブユニットは、流体通路11を備えるバルブハウジング1と、流体通路11を開閉するバタフライバルブ2とからなる。バタフライバルブ2は、流体通路11と交差して配されたシャフト3に、流体通路11の開度調整するための弁体4が、バネ力で固されている。シャフト3へ弁体4をバネ力で固着する手段としては、板状弾性体で弁体4を形成し、この弁体4の中央部を半筒状に曲げて略半筒部43を形成し、流体通路11に露出したシャフト3の中間部に外嵌めするか、またはシャフト3に、弁体4を、別体の固着バネを用いて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体通路を有するバルブハウジングに、シャフトを回転自在に配し、このシャフトにバタフライバルブ等の弁体を取り付けたバルブユニットに関するものであり、とくに、シャフトへの弁体の組付けの改善にかかわる。
このバルブユニットは、たとえば内燃機関(エンジン)のEGR(排気ガス再循環)装置に用いられ、吸気(スロットル)バルブハウジングとEGRバルブハウジングとを一体とした、低圧EGRバルブユニットまたは高圧EGRバルブユニットに好適である。
【背景技術】
【0002】
[従来技術]
バルブユニットとして、従来より図5に示す如く(特許文献1参照)、流体通路11を有するバルブハウジング1にシャフト3を回転自在に配し、このシャフト3にバタフライバルブ等の弁体4をねじN等の締結手段で締結したバルブユニットが多用されている。また、弁体をシャフトに固定する場合に、図6に示す如く(特許文献2参照)、流体通路に弁体4を配しておき、この弁体4に設けた貫通孔30にシャフト3を圧入する方法も採用される。
【0003】
エンジンの燃焼温度を低く保つことにより、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)の発生を低減させる高圧EGR装置が周知である。この高圧EGR装置は、一般的にEGR装置と呼ばれているものであり、排気通路を流れる排気ガスの一部をEGRガスとして、吸気通路のスロットル弁(吸気絞り弁)の下流(高吸気負圧発生域)に戻すことで、吸気の一部に不燃ガスであるEGRガスを混入させて、エンジンの燃焼温度を抑え、NOxの発生を低減させるものである。
【0004】
なお、高圧EGR装置においてEGRガスを吸気側へ戻す高圧EGR流路には、高圧EGR流路の開度調整を行う高圧EGR調整弁が設けられており、この高圧EGR調整弁は、エンジンの運転条件(エンジン回転数、エンジン負荷など)に応じたEGR量が得られるようにECU(エンジンコントロールユニット)により開度制御される。
【0005】
近年、広い運転条件で、NOxの発生を少なくするため、高圧EGR装置とは別に、低圧EGR装置を搭載する技術が提案されている(特許文献3参照)。この低圧EGR装置は、排気通路における低排気圧範囲の排気ガスの一部を、吸気通路における低吸気負圧発生範囲に戻すことで、少量のEGRガスをエンジンの吸気側へ戻す装置である。
【0006】
低圧EGR装置では、EGRガスを吸気側へ戻す低圧EGR流路に、開度調整を行うための低圧EGR調整弁が設けられている。この低圧EGR調整弁も、高圧EGR調整弁と同様に、エンジンの運転条件に応じたEGR量が得られるように、ECUにより開度制御される。また、低圧EGR装置がEGRガスを戻す部位の吸気通路に、吸気負圧を発生可能な吸気負圧発生弁(吸気絞り弁)を設け、低圧EGR装置を用いて大きなEGR量を得たい運転領域では、吸気負圧発生弁で吸気負圧を発生させて多量のEGRガスをエンジンに戻す。
【0007】
スロットル弁(吸気絞り弁)または吸気負圧発生弁(吸気絞り弁)には、流体通路11を有するバルブハウジング1に回転自在に支持されたシャフト3に弁体4を取り付けた前記のバタフライバルブ2が使用されている。従来のバタフライバルブ2は、前記の如く、バルブハウジング1にシャフト3を配し、このシャフト3に弁体4をねじN等の締結手段で締結するなどの方法で固着した構成を有する。
【0008】
[従来技術の問題点]
バルブハウジング1は、内燃機関への搭載性等により、流体通路11への他の部品の介入、通路の分岐(交差)、湾曲、伸長などの構造となる場合がある。このため、弁体4をシャフト3へのねじN等により締結する際に、工具類の挿入が不可能であったり、視認不能であるなど、シャフト3と弁体4との組付け作業に困難を生じる。
また、シャフト3を弁体4に設けた貫通孔30に圧入する方法は、弁体4、シャフト3の精密加工にコストがかかるとともに、圧入時の加重で弁体4がひずむ恐れがある。
【0009】
高圧EGR装置または低圧EGR装置は、EGR調整弁と吸気絞り弁とを、一体化した共通バルブハウジング内に設けて、ユニット化することが部品数および組付け工数の低減の観点から有利である。
とくに、EGR調整弁と吸気絞り弁とをリンク装置を介して連結して、1つのアクチュエータで駆動する場合は、低圧EGR調整弁と吸気負圧発生弁とを、一体化した共通バルブハウジングに設ける利点が大きい。
【0010】
ここで、EGR調整弁は、組み付け上の制約から、バルブハウジングに対して回転自在に支持されるEGRシャフトと、EGR流路内に配置されるEGR弁体とが分離して設けられており、EGR流路の内部において、EGRシャフトにEGR弁体を取り付けている。
また、スロットル弁または吸気負圧発生弁(吸気絞り弁)も、EGR調整弁と同様に、バルブハウジングに対して回転自在に支持されるシャフトと、吸気通路内に配置される弁体とが分離されており、吸気通路の内部において、シャフトに弁体を取り付けている。
【0011】
一方、低圧EGR調整弁と吸気負圧発生弁とが組み付けられるバルブハウジングは、車両に搭載されるものであるため、バルブハウジングは車両搭載上の制約を受ける。その結果、バルブハウジングに形成されるEGR流路および吸気通路も、車両搭載上の制約を受ける。そのため、弁体の組付け性が悪化する問題があった。
【0012】
具体的に、弁体は、バルブハウジングの奥方に設けられる。そして、バルブハウジングに形成されるEGR流路および吸気通路が、車両搭載上の制約から、曲がったり、長くなることで、バルブハウジングの外部からシャフトまで工具類が到達し難くなり、且つ目視も困難になる。その結果、バルブハウジングに組付けられたシャフトに弁体を固定する作業が困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平7−103341号公報
【特許文献2】特開平8−14407号公報
【特許文献3】特開2008−150955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
請求項1〜5に記載の発明の目的は、シャフトへの弁体の取り付けを、締結による場合のように工具類を必要とせず、また、圧入による場合のように弁体のひずみが生じる不具合を防止できるバルブユニットの提供にある。すなわち、バルブハウジングに形成される流体通路が、車両搭載上の制約などにより、シャフトへの工具類の到達がし難く、また目視も困難な構造であっても、弁体の組付け性の悪化を招かないバルブユニットの提供にある。
【0015】
請求項6または7に記載の発明の目的は、一体のバルブハウジングに形成される吸気通路およびこの吸気通路と交差するEGR流路が、車両搭載上の制約などにより、シャフトへの工具類の到達がし難く、また目視も困難な構造であっても、吸気通路に設置したシャフトにバタフライバルブ等の弁体の組付けが可能なEGRバルブユニットの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
[請求項1の手段]
バルブハウジングに回転自在に支持されたシャフトにバネ力で弁体を固着させている。このため、シャフトに弁体をビスで固定する必要がなく、車両搭載上の制約などにより、シャフトへの工具類の到達がし難く、また目視も困難な構造であっても、弁体の組付け性の悪化を招かない。なお、弁体は、シャフトと別体で形成され、板状であるのが一般的であるが、必ずしもバタフライバルブ(蝶弁)に限定されず、流体通路の中央以外に配されたシャフトに、弁体の片側を固着するなど他の構造であってもよい。
【0017】
[請求項2の手段]
弁体にシャフトの外周に締り嵌めする略半筒部を設け、この略半筒部を流体通路に露出したシャフトに外嵌めして固着させている。このため、シャフトに弁体をビスで固定する必要がなく、車両搭載上の制約などにより、シャフトへの工具類の到達がし難く、また目視も困難な構造であっても、弁体の組付け性の悪化を招かない。
【0018】
[請求項3の手段]
弁体またはシャフトに嵌合面の相対回転および軸方向への相対変位を止めるための係止機構を設けている。このため、シャフトと弁体との相対変位を、回転方向および軸方向に阻止できる。
【0019】
[請求項4の手段]
弁板とシャフトとを、バネ線材を弁板とシャフトとの交差部の投影面に対応した略矩形形状に折り曲げて形成するとともに、その両端にフック部を設けたバネ材で、固着している。このため、シャフトに弁体をビスで固定する必要がなく、車両搭載上の制約などにより、シャフトへの工具類の到達がし難く、また目視も困難な構造であっても、弁体の組付け性の悪化を招かない。
【0020】
[請求項5の手段]
弁板とシャフトとは、それぞれの当接面が平面などの回転防止面となっている。このため、シャフトと弁体との接合面に所定幅の平面を設けるという簡単な構成で、シャフトと弁体との相対変位を、回転方向および軸方向に阻止できる。
【0021】
[請求項6の手段]
請求項1から5のいずれか1つに記載のバルブユニットにおいて、一体のバルブハウジングに、吸気通路などの流体通路と、この流体通路に交差するEGR流路などの交差流体通路とが設けられている。流体通路の交差部付近と、交差流体通路との双方に、それぞれシャフトが設けられている。このため、流体通路の交差部付近に配したシャフトに弁体を固着する作業は、シャフトへの工具類の到達がし難く、また目視も困難である。この発明では、流体通路から弁体をシャフトに取り付けることが可能である。
【0022】
[請求項7の手段]
請求項6の手段を採用するEGRバルブユニットにおいて、バルブハウジングに形成されるEGR流路および吸気通路が、車両搭載上の制約を受けるような場合であっても、吸気通路から吸気絞シャフトに吸気絞弁体を固定する作業を容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1のバルブユニットの斜視図および要部の断面図である。
【図2】実施例2のバルブユニットの斜視図および要部の断面図である。
【図3】実施例2のバルブユニットのシャフトおよび弁体の斜視図である。
【図4】実施例3のEGRバルブユニットの断面図である。
【図5】従来のシャフトと弁体の組付け斜視図である。
【図6】従来のシャフトと弁体の組付け斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
このバルブユニットは、流体通路11を備えるバルブハウジング1と、流体通路11の開閉度合いを調整するバタフライバルブ2とからなる。バタフライバルブ2は、バルブハウジング1に回転自在に支持されるとともに、流体通路11と交差して配されたシャフト3を備える。シャフト3には、流体通路11の開度調整するための弁体4が、バネ力で保持されている。
【0025】
シャフト3へ弁体4をバネ力で保持する手段としては、
1)板状弾性体(たとえば板バネ材、板状の弾性樹脂材)で弁体4を形成し、この弁体4を流体通路11の断面に対応して、中央部を半筒状に曲げて略半筒部43を形成し、流体通路11に露出したシャフト3の中間部に外嵌めする(実施例1)。
2)シャフト3に、弁体4を、別体の固着バネ5を用いて固定する(実施例2)。
【0026】
シャフト3へ弁体4をバネ力で保持することにより、シャフト3への工具類の到達がし難く、また目視も困難な構造であっても、バタフライバルブ2の組付けが可能となる。特にこの構成は、流体通路11と交差する交差流路(実施例3のEGR流路)が存在し、流体通路11の交差部付近にシャフト3が設けられ、かつ交差流路にも弁体4のシャフト3が設けられている構造のバルブユニットにおいて、流体通路11の交差部付近のシャフト3に弁体4を取り付ける場合に有効である。
【0027】
[実施例1]
この発明の他の実施例にかかるバルブユニットV1を、図1とともに説明する。
この実施例のバルブユニットV1は、断面が略円形の流体通路11を有するバルブハウジング1と、バルブハウジング1に装着され流体通路11を開閉するバタフライバルブ2とからなる。このバルブユニットV1は、例えば内燃機関の吸気通路に装着される吸気バルブユニットである。バタフライバルブ2は、バルブハウジング1に回転自在に保持されたシャフト3と、シャフト3に固着された弁体4とからなる。弁体4は、バネ力による固着機構21によりシャフト3に固着されるとともに、係止機構22によりシャフト3との相対変位が阻止されている。
【0028】
シャフト3は、両端部31、32がバルブハウジング1に設けた軸孔12、13に回転自在に保持され、流体通路11の中心と直交して設置されている。シャフト3の中間部33は、流体通路11内に露出しており、中間部33と両端部31、32との境には、周溝34、35が形成されている。中間部33の中央部には、軸方向に長い凹部36が設けてある。
【0029】
弁体4は、長円形の金属板または樹脂板の中央部を略Ω状に曲げて形成され、両側の略半円状平板部41、42と、中央の略半筒部43とからなる。略半筒部43となる、弁体4の少なくとも中央部は、バネ性(弾性)材で形成されている。略半筒部43は、断面が180度以上の円弧となっており、内径Dは中間部33の外径より幾分径小に設定されている。
【0030】
シャフト3の中間部33と略半筒部43との寸法設定および断面形状は、略半筒部43のバネ力によりシャフト3に弁体4を固着する固着機構21を構成している。すなわち、略半筒部43は、開口44が中間部33に押圧されて、弾性により拡開し中間部33に外嵌めされる。
【0031】
バタフライバルブ2の組付けは、バルブハウジング1にシャフト3を取り付け、弁体4を流体通路11から挿入して、略半筒部43の開口44をシャフト3の中間部33に押圧し、外嵌めしてなされる。これにより、弁体4は、シャフト3の中間部33に締り嵌め(固着)状態で取り付けられる。また、図1の(ロ)に示す如く、略半筒部43の開口44の幅Wは、内径Dより小さく設定されており、シャフト3から弁体4が脱落することが阻止されている。
【0032】
シャフト3と弁体4との間には、相対変位を阻止するための係止機構22が設けてある。この実施例の係止機構22としては、略半筒部43の両端に内側に折り曲げた爪部45、46が設けてあり、中央には前記凹部36に嵌まり込む内側膨出部47が設けてある。爪部45、46は、周溝34、35に嵌まり込み、内側膨出部47は凹部36に嵌まり込む。これにより、弁体4は、シャフト3に対し、回転方向および軸方向に固定され相対変位が阻止される。なお、係止機構22は、シャフト3と弁体4との固着強度が大きい場合には省略することも可能である。
【0033】
略半筒部43の断面形状は、シャフト3の中間部33の断面形状に対応したものであり、シャフト3の中間部33の断面形状が、たとえば略三角形、略矩形、略楕円形などの異形ならば、これに対応して略半筒部43の断面形状も略三角形、略矩形、略楕円形などの異形であることが望ましい。
さらに、係止機構22は、断面形状が、たとえば略三角形、略矩形、略楕円形などの異形ならば、弁体4はシャフト3に対し回転方向に固定されるため、軸方向の固定手段のみでよい。
【0034】
バルブユニットV1は、シャフト3に連結した駆動機構(図示せず)によってシャフト3が回動する。バタフライバルブ2は、両側の略半円状平板部41、42は、流体通路11の軸と略平行に設定されたとき最大開度となり、流体通路11の軸と略直交に設定されたとき流体通路11を全閉する。
【0035】
このバルブユニットV1は、シャフト3の両端部31、32をバルブハウジング1に設けた軸孔12、13に回転自在に保持させた状態で、流体通路11から弁体4を取り付けできる。この取り付け作業は、略半筒部43の開口44をシャフト3の中間部33に押圧すればよく、工具などで締結する必要がない。このため、流体通路11の形状が複雑で、シャフト3への工具類の到達がし難く、また目視も困難な構造であっても、弁体4の組付けが容易である。
【0036】
[実施例2]
図2、図3は、実施例2にかかるバルブユニットV2を示し、同一符号は、実施例1と同機能物を示す。バルブユニットV2は、バルブハウジング1に回転自在に保持されたバタフライバルブ2を有し、バタフライバルブ2は、バルブハウジング1に回転自在に保持されたシャフト3、シャフト3に固定された弁体4と、シャフト3に弁体4を固着する固着用バネ5とからなる。
【0037】
シャフト3には、中間部33に、軸方向に長い平面部37が設けてある。この平面部37は、上記の凹部36と同様の作用を有する。弁体4には、表面4Aの中央部に平面部37に当接する段付き平面48が形成され、裏面4Bには段付き平面48に平行に平行溝49、40が形成されている。
【0038】
固着バネ5は、バネの線材を略長方形に折り曲げ形成された矩形枠状を呈し、直線状で平行の長辺51、52と、その両端をそれぞれの直交面内で連結する略半円弧状の短辺53、54とを有する。長辺51の一端と短辺54の先端とは交差状となっており、長辺51の一端部には、先端を折り曲げて形成した鉤状部55が設けてある。短辺54の先端は、延長されて鉤状部55と係脱可能に係合する係止部56となっている。なお、係止部56も鉤状とし、係合を強固にしてもよい。
【0039】
固着バネ5は、長辺51、52が平行溝49、40に嵌まり込み、短辺53、54が周溝34、35に嵌まり込む寸法に設定されている。弁体4は、段付き平面48がシャフト3の平面部37に当接した状態で、固着バネ5によりシャフト3に羽交い締めされ固着(締結)される。すなわち、鉤状部55と係止部56とは、固着機構21を構成している。また、弁体4の段付き平面48とシャフト3の平面部37とは、係止機構22を構成している。
【0040】
このバタフライバルブ2は、つぎのように組付けされる。バルブハウジング1にシャフト3を挿通させ、流体通路11から鉤状部55と係止部56とからなる固着機構21を解除状態としたら、固着バネ5を、シャフト3に、短辺53、54が周溝34、35に嵌まり込むようにして取り付ける。つぎに、流体通路11から弁体4を挿入し、シャフト3と長辺51、52の隙間に弁体4を差し込むとともに長辺51、52を平行溝49、40に係合させる。これにより、係止機構22も係合される。
【0041】
実施例2において、弁体4はバネ性(弾性)材で形成されている必要はなく、固着バネ5は上記の矩形枠状の線材以外の構造体であってもよく、固着方法は襷掛けなど他の締結方法が採用できる。なお、実施例1の構造に、さらに実施例2の固着バネ5を補強として使用することも可能である。
【0042】
[実施例3]
図4は、内燃機関の吸気通路(流体通路)11に排気ガスの一部を還流させるためのEGRバルブユニット(低圧EGRバルブユニットまたは高圧EGRバルブユニット)V3を示し、同一符号は実施例1と同機能物を指す。EGRバルブユニットV3のバルブハウジング1は、内燃機関の吸気通路11と、吸気通路11と略直交的に交差するEGR流路(交差流体通路)14とを備えている。このバルブハウジング1には、吸気通路11の合流部15に吸気負圧を発生させるスロットル弁ないし吸気負圧発生弁としてのバタフライバルブ2と、EGR流路14の開度調整を行うEGR調整弁としての第2バタフライバルブ6とが設置されている。
【0043】
バルブハウジング1は、たとえばアルミニウム等のダイキャストにより、一体成型されて形成される。EGRバルブユニットV3は、第2バタフライバルブ6を駆動する1つの電動アクチュエータ61と、電動アクチュエータ61の出力特性を変化してバタフライバルブ2を駆動するリンク装置62とを備える。
【0044】
バタフライバルブ2は、図1に示す実施例1と同様な構成を有し、バルブハウジング1に回転自在に装置されたシャフト3に、弁体4を固着している。シャフト3への弁体4の固着は、略半筒部43を、シャフト3の中間部33に外嵌めしてなされ、係止機構22により、シャフト3と弁体4との軸方向への相対変位が規制されている。また、第2バタフライバルブ6は、図5に示す従来のバタフライバルブと同様な構成を有し、バルブハウジング1に回転自在に装置されたシャフト7に、ねじNにより弁体8を固着している。
【0045】
このEGRバルブユニットV3において、シャフト3への弁体4の取り付けは、第2バタフライバルブ6のシャフト7が存在しなければ、ねじNなどによる締結が可能である。しかるに、シャフト7が存在する場合は、ドライバー等の工具を、EGR流路14から吸気通路11の合流部15挿入することができない。
このため、本願発明の要旨である、シャフト3に弁体4をバネ力で固着する構成が有効になる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明のバルブユニットは、シャフト3に弁体4をバネ力で固着しているので、工具が到達し難い場所や目視が困難な位置にあるシャフト3に弁体4を取り付けることが可能となる。
このため、高圧または低圧EGRバルブユニットなど、内燃機関の吸気通路11とEGR流路14との合流部15を備え、吸気通路11の合流部15に吸気負圧を発生させるバタフライバルブ2と、EGR流路14の開度調整を行う第2バタフライバルブ6とが設置されている構造において、バルブハウジング1を2分割するなど複雑な構成を採用しなくても、バタフライバルブ2の組付けが可能になる。
なお、この発明のバルブユニットは、内燃機関のスロットルバルブなど、他の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
V1、V2 バルブユニット
1 バルブハウジング
11 流体通路
14 EGR流路(交差流体通路)
2 バタフライバルブ(吸気負圧発生弁)
21 バネ力による固着機構
22 係止機構
3 シャフト
4 弁体
5 固着バネ
V3 EGRバルブユニット
6 第2バタフライバルブ(EGR調整弁)
7 第2バタフライバルブのシャフト
8 第2バタフライバルブの弁体
N ねじ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を備えるバルブハウジングと、
このバルブハウジングに回転自在に支持されるとともに、前記流体通路と交差して配されたシャフトと、
前記シャフトにバネ力で固着され前記流体通路の開度調整する弁体とからなるバルブユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブユニットにおいて、前記弁体は、前記シャフトの外周に締り嵌めする略半筒部を有し、この略半筒部を前記流体通路に露出したシャフトに外嵌めされて前記シャフトに固着されることを特徴とするバルブユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブユニットにおいて、前記弁体または前記シャフトに嵌合面の相対回転および軸方向への相対変位を止めるための係止機構を設けたことを特徴とするバルブユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のバルブユニットにおいて、前記弁体と前記シャフトとは、バネ線材を前記弁体と前記シャフトとの交差部の投影面に対応した略矩形形状に折り曲げて形成され、その両端にフック部を設けたバネ材で固着されていることを特徴とするバルブユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のバルブユニットにおいて、前記弁体と前記シャフトとは、それぞれの当接面が円筒面以外の相対回転および軸方向への相対変位を止めるための係止面となっていることを特徴とするバルブユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のバルブユニットにおいて、前記バルブハウジングは、前記シャフトが設けられた流体通路に交差する交差流体通路を有し、2つの流体通路の交差部付近に前記シャフトが設けられており、前記交差流体通路にも他のシャフトが設けられていることを特徴とするバルブユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のバルブユニットにおいて、バルブユニットは、EGRが導かれるEGR流路と吸気が通過する吸気通路の合流部を備えるバルブハウジングと、
このバルブハウジングに設けられて前記EGR流路の開度調整を行うEGR調整弁と、
前記バルブハウジングに設けられて前記吸気通路の前記合流部に吸気負圧を発生させる吸気負圧発生のための吸気負圧発生弁と、
を具備するEGRバルブユニットであり、
前記吸気負圧発生弁は、前記バルブハウジングに対して回転自在に支持される吸気絞シャフトおよび前記吸気通路内に配置される吸気絞弁体を備え、
前記バルブハウジングは一体であり、前記吸気絞弁体は前記吸気絞シャフトにバネ力で固着されていることを特徴とするバルブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−87876(P2012−87876A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235088(P2010−235088)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】