説明

バルブ開閉装置

【課題】ハウジング2とシャフト3との線膨張差により、空気通路2aを形成するハウジング2の内周面に弁体4がかじることを防止できる吸気管切替用バルブ1を提供する。
【解決手段】吸気管切替用バルブ1は、空気通路2aを形成するハウジング2と、このハウジング2を径方向に貫通して配置されるシャフト3と、空気通路2aを開閉できる弁体4と、シャフト3の回転を弁体4に伝達するウェーブワッシャ5とで構成される。ウェーブワッシャ5は、2枚のウェーブ板に谷部5aと山部5bとが設けられ、弁体4に形成される内部空間4bの内周面に山部5bが弾力を有して当接し、シャフト3の二平面に谷部5aが弾力を有して当接している。また、ウェーブワッシャ5は、山部5bで内部空間4bの内周面との間に働くスラスト方向の摩擦力より、谷部5aでシャフト3の二平面との間に働くスラスト方向の摩擦力の方が小さく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気通路を開閉するバルブ開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内燃機関では、広範囲なトルク特性を得るために、吸気経路の一部に管長の異なる2種類の吸気管を並列に設け、機関の低回転域では管長の長い長吸気管を用いて吸気を内燃機関に供給し、機関の高回転域では管長の短い短吸気管を用いて吸気を内燃機関に供給する可変吸気装置が知られている。この可変吸気装置では、例えば、短吸気管側に吸気管切替用バルブが設けられ、この吸気管切替用バルブを機関の回転速度および負荷に応じて開閉制御することにより、長吸気管と短吸気管とを切り替えて、内燃機関に吸気を供給している。すなわち、機関の低回転域では、吸気管切替用バルブを全閉にして短吸気管を閉じることで吸気経路が長くなり、機関の高回転域では、吸気管切替用バルブを全開にして短吸気管を開放することで吸気経路が短くなる。
【0003】
ところで、上記の吸気管切替用バルブは、吸気管を開閉するための弁体と、この弁体を支持するシャフトとで構成されるが、例えば、弁体の中央部にバルブ軸を設けて、このバルブ軸に断面矩形の貫通穴を形成し、この貫通穴に断面矩形の角シャフトを挿入する構造がある。この構造では、弁体側の貫通穴とシャフトとの間に組付け上、隙間がある設計をする場合がある。しかし、全開時の流量や全閉時の弁体とボア(吸気管の内径)との間の漏れ量がエンジン出力に効いてくる吸気管切替用バルブでは、弁体側の貫通穴とシャフトとの間に隙間があると、吸気管切替用バルブの開度にばらつきが生じ、圧損や全閉時の漏れ量が増大するため、エンジン出力が低下する原因となる。さらに、弁体側の貫通穴とシャフトとの間に隙間を設ける設計では、弁体とシャフトとが相対的に動くため、摩耗等により更なる隙間増大の原因となっている。
【0004】
これを解決できる従来技術として、弁体側に設けた貫通穴にシャフトを圧入して固定する方法が提案されている(特許文献1参照)。この場合、弁体側の貫通穴にシャフトを圧入することで、シャフトと弁体との間の緩みを防止できるので、摩耗による振動や弁漏れを低減できる。また、同従来技術では、軽量化および低コスト化を図る目的で、吸気管および弁体とシャフトを樹脂化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−85191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の特許文献1に開示された従来技術では、例えば吸気管および弁体とシャフトを樹脂化した場合、エンジンルーム内での温度変化により、樹脂材料やガラス配合の違いによる線膨張の差による変形や変位が考えられる。例えば、シャフトと弁体とが圧入により固定されているため、線膨張の差による吸気管の変形量とシャフトの変形量との差によって、弁体が吸気管の内周面にかじる恐れがある。この場合、弁体を駆動する際に必要な摺動性が得られなくなり、弁体やシャフトが破損する問題が生じる。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、空気通路を形成するハウジングとシャフトとの線膨張差により、シャフトとハウジングとの間にスラスト方向の変形が生じた場合でも、ハウジングの内周面に弁体がかじることを防止できるバルブ開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1に係る発明)
本発明のバルブ開閉装置は、内部に空気通路が形成されたハウジングと、空気の流れ方向と直交してハウジングを貫通し、軸受を介してハウジングに回転自在に支持されるシャフトと、空気通路に配置され、シャフトの回転が伝達されて空気通路を開閉する弁体と、シャフトと弁体との間に弾力を有して配置され、シャフトの回転を弁体に伝達する弾性体とを備え、シャフトは、自身の長手方向と直交する断面形状が多角形状に形成され、弁体には、隙間を有してシャフトを通すための挿通孔が形成されると共に、この挿通孔の一部または全体が弾性体を組み込むための内部空間として形成され、弾性体は、弁体の内部空間に組み込まれてシャフトの外周に配置されると共に、シャフト及び弁体に対し相対回転不能に組み付けられ、且つ、内部空間の内周面に弾力を有して接触する弁体側接触部と、シャフトの外周面に弾力を有して接触するシャフト側接触部とを有し、弁体側接触部で弁体との間に働くスラスト方向の摩擦力より、シャフト側接触部でシャフトとの間に働くスラスト方向の摩擦力の方が小さく設定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のバルブ開閉装置は、弁体に形成される挿通孔にシャフトが圧入される構造ではなく、挿通孔に隙間を有してシャフトが挿通され、且つ、シャフトと弁体との間に配置される弾性体を介してシャフトの回転が弁体に伝達される。ここで、弾性体は、弁体側接触部で弁体との間に働くスラスト方向の摩擦力より、シャフト側接触部でシャフトとの間に働くスラスト方向の摩擦力の方が小さく設定されているので、温度変化によるハウジングとシャフトとの線膨張差により、ハウジングとシャフトとの間にスラスト方向の変形が生じた場合(例えば、ハウジングがシャフトの長手方向に変位した場合)でも、弁体がハウジングの変位に追従できる。つまり、弁体がシャフトに圧入等によって固定されていないので、シャフトと弁体とが相対変位できるため、ハウジングがスラスト方向に変形しても、弁体がハウジングの内周面にかじることはなく、弁体の摺動性を良好に維持できる。
【0009】
また、弁体に形成された挿通孔とシャフトとの間に隙間を有しているが、シャフトと弁体との間に弾性体が配設されるので、シャフトと弁体との間にガタツキが生じることはなく、バルブ開度のばらつきを抑制できる。
さらに、弁体とシャフトとの線膨張差により上記隙間が拡大しても、弾性体の弾力によって隙間の拡大を吸収できるので、弁体とシャフトとの間で叩きによる異音が発生することもなく、弁体の破損を防止できる。
【0010】
(請求項2に係る発明)
請求項1に記載したバルブ開閉装置において、弁体に形成された内部空間は、シャフトの長手方向と直交する断面形状が矩形状であり、弾性体は、谷部と山部とが波状に交互に形成される2枚のウェーブ板と、この2枚のウェーブ板を互いの谷部同士が所定の間隔を有して向かい合う様に配置した状態で、その2枚のウェーブ板の少なくとも一端側を連結する連結板とを有し、この連結板には、シャフトを通すためのシャフト通し孔が形成され、2枚のウェーブ板は、それぞれの山部が弁体側接触部を構成して内部空間の平坦面に線接触し、それぞれの谷部がシャフト側接触部を構成してシャフトの平坦面に線接触していることを特徴とする。
本発明のバルブ開閉装置は、弁体およびシャフトに対し2枚のウェーブ板が線接触する構成であり、特許文献1に開示された従来技術(弁体側に設けた貫通孔にシャフトを圧入する構造)と比較して、面圧および摩耗係数を設計しやすいため、コストダウンに寄与できる。
【0011】
(請求項3に係る発明)
請求項1に記載したバルブ開閉装置において、弁体に形成された内部空間は、シャフトの長手方向と直交する断面形状が円筒形であり、弾性体は、外径が大きく形成された大径部と、外径が小さく形成された小径部とを有するコイルスプリングであり、大径部が弁体側接触部を形成し、小径部がシャフト側接触部を形成していることを特徴とする。
本発明の弾性体には、コイルスプリングを用いることができる。コイルスプリングは、単純な形状で高い剛性を確保できるので、信頼性が向上する。
また、弁体の内部空間へコイルスプリングを回転させながら押し込むことにより、容易に組み付けることができる。
【0012】
(請求項4に係る発明)
請求項3に記載したバルブ開閉装置において、コイルスプリングは、シャフトの長手方向と直交する小径部の外周形状が楕円形を含む長円形状あるいは多角形状に設けられて、シャフトに対し相対回転不能に係合していることを特徴とする。
例えば、断面形状が四角形のシャフトに対し、小径部の外周形状が長円形状あるいは多角形状のコイルスプリングを用いることにより、コイルスプリングに対し小径部を相対回転不能に係合させることができる。その結果、コイルスプリングを介してシャフトの回転を弁体に伝達できる。
【0013】
(請求項5に係る発明)
請求項1〜4に記載した何れかのバルブ開閉装置において、弁体には、挿通孔の一端側が内部空間として形成され、その内部空間の他端側には、挿通孔との間に段差が形成され、この段差が、弾性体を内部空間へ組み込む時の位置決め面として働くことを特徴とする。この場合、内部空間へ組み入れた弾性体の一端を位置決め面に当てることで、弾性体を内部空間の所定位置に精度良く配置できる。また、挿通孔の一端側に内部空間を形成することによって生じる段差を位置決め面として使用するので、専用の位置決め手段を設ける必要はない。
【0014】
(請求項6に係る発明)
請求項3または4に記載したバルブ開閉装置において、弁体には、挿通孔の全体が内部空間として形成され、且つ、内部空間の内周面より径方向の内側へ突き出る突起が設けられ、コイルスプリングは、内部空間に組み込まれた状態で突起に係合することにより、長手方向の移動が規制されていることを特徴とする。
本発明では、内部空間を弁体の径方向全体に設けている、言い換えると、内部空間が弁体の径方向に貫通して形成されている。この場合、コイルスプリングを弁体の径方向全体に配置できるので、シャフトに対し弁体を片寄りなく安定して保持できる。
また、内部空間に組み込んだコイルスプリングは、突起に係合することで長手方向の移動が規制されるので、コイルスプリングの抜け防止を図ることができる。
【0015】
(請求項7に係る発明)
請求項1〜6に記載した何れかのバルブ開閉装置において、ハウジングは樹脂製であり、シャフトは金属製、弁体は樹脂製であることを特徴とする。
本発明では、ハウジング及び弁体を樹脂製とすることにより軽量化を図ることができ、且つ、弁体に回転力を伝達するための強度部品であるシャフトを金属製とすることにより、シャフトの強度を維持でき、信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)実施例1に係る吸気管切替用バルブの断面図、(b)同図(a)のA−A断面図である。
【図2】実施例1に係るウェーブワッシャの斜視図である。
【図3】全閉時の吸気管切替用バルブの断面図である。
【図4】全開時の吸気管切替用バルブの断面図である。
【図5】実施例2に係る吸気管切替用バルブの断面図である。
【図6】実施例2に係るウェーブワッシャの斜視図である。
【図7】(a)実施例3に係る吸気管切替用バルブの断面図、(b)同図(a)のB−B断面図である。
【図8】実施例4に係る吸気管切替用バルブの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
この実施例1では、本発明のバルブ開閉装置を内燃機関の可変吸気装置に使用される吸気管切替用バルブに適用した一例を説明する。
図1は吸気管切替用バルブ1の断面図である。
なお、可変吸気装置は、内燃機関の吸気経路の一部に管長の異なる2種類の吸気管を並列に設け、機関の低回転域では管長の長い長吸気管を用いて吸気を内燃機関の燃焼室に供給し、機関の高回転域では管長の短い短吸気管を用いて吸気を内燃機関の燃焼室に供給する周知のシステムであり、短吸気管に吸気管切替用バルブ1が設けられている。
吸気管切替用バルブ1は、図1(a)に示す様に、内部に空気通路2aを形成するハウジング2と、このハウジング2を径方向に貫通して配置されるシャフト3と、このシャフト3の回転が伝達されて空気通路2aを開閉する弁体4と、シャフト3の回転を弁体4に伝達するウェーブワッシャ5(本発明の弾性体)とで構成される。
【0019】
ハウジング2は、円筒形状を有する樹脂成形品であり、その径方向両側には、一組の軸受け部2bが一体に設けられている。
シャフト3は、鉄等の金属製で、図1(b)に示す様に、自身の長手方向と直交する断面形状が四角形(四角形以外の多角形状でも良い)に形成され、シャフト3の外周に嵌合する軸受6を介してハウジング2の軸受け部2bに回転自在に支持されている。このシャフト3は、図示しないアクチュエータにより回転駆動される。アクチュエータは、例えば、回転力を発生する電動モータと、この電動モータの回転を減速してシャフト3に伝達する動力伝達機構(例えば歯車減速装置)により構成され、内燃機関の運転状態を制御する電子制御装置(図示せず)により電動モータの作動が制御される。
【0020】
弁体4は、円板形状を有する樹脂成形品であり、ハウジング2に形成される空気通路2aを全閉する全閉位置(図3参照)と、空気通路2aを全開する全開位置(図4参照)との間で回動可能に設けられ、機関の運転状態に応じて全閉位置と全開位置の何方か一方に選択的に切り替えられる。
この弁体4には、図1(a)に示す様に、弁体4にシャフト3を通すための挿通孔4aと、この挿通孔4aの一部を拡大した内部空間4bとが形成され、この内部空間4bにウェーブワッシャ5が組み込まれる。挿通孔4aは、弁体4の径方向一端側に形成され、挿通孔4aの一端が弁体4の一方の径方向側面に開口し、挿通孔4aの他端が弁体4の内部で内部空間4bに連通している。この挿通孔4aは、シャフト3の外周形状に相似する孔形状、つまり、断面形状が四角形に形成され、挿通孔4aの内周に若干の隙間を有してシャフト3を通すことができる。
【0021】
内部空間4bは、挿通孔4aより弁体4の径方向他端側に形成され、内部空間4bの他端が弁体4の他方の径方向側面に開口している。すなわち、弁体4の一方の径方向側面には、挿通孔4aの一端が開口し、弁体4の他方の径方向側面には、内部空間4bの他端が開口して、挿通孔4aと内部空間4bとが連通して弁体4を径方向に貫通している。
この内部空間4bは、弁体4の幅方向(図3に示す弁体4の上下方向)、および、シャフト3と直交する弁体4の平面方向(図4に示す弁体4の上下方向)に、それぞれ挿通孔4aの寸法より大きく形成され、且つ、弁体4の幅方向より平面方向に大きな寸法を有する矩形の断面形状に形成されている。また、挿通孔4aと内部空間4bは、弁体4の幅方向および平面方向において、それぞれ両者の中心位置が一致して形成されている。
【0022】
ウェーブワッシャ5は、図2に示す様に、谷部5aと山部5bとが波状に交互に形成されるバネ材から成る2枚のウェーブ板5Aと、この2枚のウェーブ板5Aを互いの谷部5a同士が所定の間隔を有して向かい合う様に配置した状態で、その2枚のウェーブ板5Aの両端を連結する一対の連結板5Bとで構成される。
一対の連結板5Bには、それぞれ、シャフト3を通すためのシャフト通し孔5cが形成されている。このシャフト通し孔5cは、シャフト3の外周形状と同じく断面形状が四角形に形成され、シャフト通し孔5cの内周に微小な隙間を有してシャフト3を通すことができる。また、ウェーブワッシャ5の横幅(山部5bの稜線に沿った方向の幅)は、図3に示される様に、弁体4の幅方向に形成される内部空間4bに丁度収まる寸法に設定されている。これにより、ウェーブワッシャ5は、シャフト3及び弁体4に対し、それぞれ相対回転不能に組み付けられている。
【0023】
上記のウェーブワッシャ5は、一対の連結板5Bに形成されたシャフト通し孔5cにシャフト3を通した状態〔図1(a)に示す状態〕で、シャフト3と弁体4との間に弾力を持って組み込まれている。具体的には、2枚のウェーブ板5Aに設けられたそれぞれの山部5bが、シャフト3と直交する弁体4の平面方向〔図1(a)の上下方向〕に対向する内部空間4bの内周面に弾力を有して当接(線接触)し、且つ、2枚のウェーブ板5Aに設けられたそれぞれの谷部5aが、内部空間4bの内周面に対向するシャフト3の二平面に弾力を有して当接(線接触)している。但し、このウェーブワッシャ5は、2枚のウェーブ板5Aの各山部5bで内部空間4bの内周面との間に働くスラスト方向の摩擦力より、2枚のウェーブ板5Aの各谷部5aでシャフト3の二平面との間に働くスラスト方向の摩擦力の方が小さく設定されている。
【0024】
なお、ウェーブワッシャ5は、弁体4の挿通孔4aにシャフト3を通す前に、弁体4の内部空間4bに組み込まれる。つまり、ウェーブワッシャ5を内部空間4bに組み込んだ状態で、一対の連結板5Bに形成されたシャフト通し孔5c、および、弁体4に形成された挿通孔4aにシャフト3を通して組み付けられる。
また、ウェーブワッシャ5は、弁体4の内部空間4aへ治具(図示せず)を用いて組み込むことができる。例えば、ウェーブワッシャ5の一方の連結板5Bに治具を当てて、その治具によりウェーブワッシャ5をスラスト方向へ押し込んで内部空間4aへ挿入し、弁体4の挿通孔4aと内部空間4bとの間に形成される段差4c〔図1(a)参照〕に他方の連結板5Bを当接させることで位置決めできる。
【0025】
次に、本実施例の作用効果を説明する。
本実施例の吸気管切替用バルブ1は、弁体4に形成される挿通孔4aにシャフト3が圧入される構造ではなく、挿通孔4aに隙間を有してシャフト3が挿通され、且つ、シャフト3の回転がウェーブワッシャ5を介して弁体4に伝達される。ここで、ウェーブワッシャ5は、2枚のウェーブ板5Aの各山部5bで弁体4に形成された内部空間4bの内周面に働くスラスト方向の摩擦力より、2枚のウェーブ板5Aの各谷部5aでシャフト3の二平面との間に働くスラスト方向の摩擦力の方が小さく設定されている。
【0026】
上記の構成によれば、樹脂製であるハウジング2と金属製であるシャフト3との線膨張差により、ハウジング2とシャフト3との間にスラスト方向の変形が生じた場合(例えば、ハウジング2がシャフト3の長手方向に変位した場合)でも、弁体4がハウジング2の変位に追従できる。つまり、弁体4がシャフト3に圧入等によって固定されていないので、シャフト3と弁体4とが相対変位できるため、ハウジング2がスラスト方向に変形しても、弁体4がハウジング2の内周面にかじることはなく、弁体4の摺動性を良好に維持できる。
【0027】
また、弁体4に形成された挿通孔4aとシャフト3との間に隙間を有しているが、シャフト3と弁体4との間に弾性体であるウェーブワッシャ5が配設され、且つ、ウェーブワッシャ5は、シャフト3と弁体4に対し、それぞれ相対回転不能に組み付けられているので、シャフト3と弁体4との間にガタツキが生じることはなく、バルブ開度のばらつきを抑制できる。さらに、弁体4とシャフト3との線膨張差により上記隙間が拡大しても、ウェーブワッシャ5の弾力によって隙間の拡大を吸収できるので、弁体4とシャフト3との間で叩きによる異音が発生することもなく、樹脂成形品である弁体4が破損することを防止できる。
また、本実施例の吸気管切替用バルブ1は、弁体4に形成された内部空間4bの内周面およびシャフト3の二平面に対し、2枚のウェーブ板5Aの山部5bと谷部5aとが、面接触ではなく、線接触する構成であるため、特許文献1に開示された従来技術(弁体4側に設けた貫通孔にシャフト3を圧入する構造)と比較して、面圧および摩耗係数を設計しやすく、コストダウンに寄与できる。
【0028】
さらに、本実施例のウェーブワッシャ5は、2枚のウェーブ板5Aの両端を一対の連結板5Bによって連結しているので、このウェーブワッシャ5を弁体4の内部空間4bへ挿入して組み込む際に、一方の連結板5Bを簡易的な治具(例えば単純な棒状の治具)により押し込んで容易に組み付けることができる。つまり、ウェーブワッシャ5を弁体4の内部空間4bへ押し込むために特殊な治具は不要である。
また、ウェーブワッシャ5は、左右対称形状であり、弁体4の内部空間4bへウェーブワッシャ5を挿入する際に、挿入方向を特定する必要はないので、ウェーブワッシャ5の誤組み付けが生じることはなく、作業性が向上する。
【0029】
さらに、弁体4には、挿通孔4aと内部空間4bとの間に段差4cが形成されるので、この段差4cをウェーブワッシャ5の位置決め面として利用できる。つまり、ウェーブワッシャ5を弁体4の内部空間4bへ押し込む際に、他方の連結板5Bを段差4cに当てることで、ウェーブワッシャ5を所定の位置に精度良く組み付けることができる。
実施例1に記載した吸気管切替用バルブ1は、ハウジング2と弁体4を樹脂成形品とすることで軽量化及びコストダウンを図ることができ、且つ、強度部品であるシャフト3を金属製とすることにより、シャフト3の強度を維持でき、信頼性を確保できる。但し、必要な強度が確保できれば、シャフト3を樹脂化することも可能である。
【実施例2】
【0030】
図5は実施例2に係る吸気管切替用バルブ1の断面図である。
この実施例2は、実施例1に記載したウェーブワッシャ5の一変形例であり、図6に示す様に、2枚のウェーブ板5Aの一端側だけを連結板5Bにより連結し、2枚のウェーブ板5Aの他端側をフリーとしている。
このウェーブワッシャ5は、実施例1の場合と同じく、治具により弁体4の内部空間4bへ押し込んで組み付けられ、図5に示す様に、弁体4の挿通孔4aと内部空間4bとの間に形成される段差4cに連結板5Bを当てた状態で位置決めされる。本実施例に示すウェーブワッシャ5は、内部空間4bへの挿入方向を特定する必要はあるが、それ以外の作用効果は実施例1と同じである。
【実施例3】
【0031】
図7(a)は実施例3に係る吸気管切替用バルブ1の断面図である。
この実施例3は、本発明の弾性体にコイルスプリング7を用いた一例である。
本実施例のコイルスプリング7は、図7(a)に示す様に、長手方向の中央がくびれた略鼓形に形成されている。つまり、長手方向の両端部に外径が大きく形成された大径部7aが設けられ、長手方向の中央に外径が小さく形成された小径部7bが設けられている。但し、小径部7bは、図7(b)に示す様に、楕円形状あるいは長円形状に加工されて、シャフト3との相対回転が規制されている。小径部7bの楕円形状、長円形状は、例えば、径方向に対向する二方向からプレスにより小径部7bを押圧加工することで容易に形成できる。また、小径部7bの外周形状は、楕円形状、長円形状でなくても、シャフト3との相対回転を規制できる形状(例えば多角形状)であれば良い。
【0032】
ハウジング2、弁体4、シャフト3に関する構成は、実施例1と同じである。但し、弁体4の内部空間4bは、断面形状が円形(円筒形)に形成されている。
上記のコイルスプリング7は、弁体4の内部空間4bに組み込まれて、大径部7aが内部空間4bの内周面に弾力を持って接触し、小径部7bがシャフト3の外周面に弾力を持って接触している。また、コイルスプリング7は、大径部7aで内部空間4bの内周面との間に働くスラスト方向の摩擦力より、小径部7bでシャフト3の外周面との間に働くスラスト方向の摩擦力の方が小さく設定されている。
本実施例のコイルスプリング7を用いた構成でも、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、温度変化によるハウジング2とシャフト3との線膨張差により、ハウジング2とシャフト3との間にスラスト方向の変形が生じた場合(例えば、ハウジング2がシャフト3の長手方向に変位した場合)でも、シャフト3と弁体4とが相対変位できるため、弁体4がハウジング2の内周面にかじることはなく、弁体4の摺動性を良好に維持できる。
【0033】
また、コイルスプリング7は、弁体4の内部空間4bへ回転させながら挿入できるので、組み付け時の摩擦抵抗が少なく、組み付けが容易である。
また、実施例1と同様に、弁体4の挿通孔4aと内部空間4bとの間に形成される段差4cをコイルスプリング7の位置決め面として利用できるので、コイルスプリング7を所定の位置に精度良く組み付けることができる。
さらに、コイルスプリング7は、単純な形状で高い剛性を確保できるので、内部空間4bへ挿入する際に変形することはなく、信頼性が向上する。
【実施例4】
【0034】
図8は実施例4に係る吸気管切替用バルブ1の断面図である。
この実施例4は、図8に示す様に、弁体4の径方向全体に内部空間4bが貫通して形成され、その内部空間4bの全長に渡ってコイルスプリング7を組み込んだ一例である。
コイルスプリング7は、実施例3と同様に、大径部7aと小径部7bとが設けられ、小径部7bでシャフト3との相対回転が規制されている。
また、弁体4には、内部空間4bの長手方向の略中央部に径方向の内側へ突き出る突起8が設けられ、この突起8にコイルスプリング7の大径部7aが係合することで、コイルスプリング7の長手方向の移動が規制されている。
【0035】
上記の構成によれば、コイルスプリング7の全長を実施例3の場合より長くして、弁体4の径方向全体に配置できるので、シャフト3に対し弁体4を片寄りなく安定して保持できる。また、内部空間4bに組み込んだコイルスプリング7は、突起8に係合して長手方向の移動が規制されるので、コイルスプリング7が内部空間4bから抜け出ることを防止できる。なお、内部空間4bに突起8を設けても、実施例3の場合と同様に、コイルスプリング7を回しながら内部空間4bへ挿入することにより、突起8にコイルスプリング7が干渉して挿入途中で止まることはなく、内部空間4bの全長に渡ってコイルスプリング7を組み込むことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 吸気管切替用バルブ(バルブ開閉装置)
2 ハウジング
2a 空気通路
3 シャフト
4 弁体
4a 挿通孔
4b 内部空間
4c 段差(位置決め面)
5 ウェーブワッシャ(弾性体)
5A ウェーブ板
5B 連結板
5a 谷部(シャフト3側接触部)
5b 山部(弁体側接触部)
5c シャフト通し孔
6 軸受
7 コイルスプリング(弾性体)
7a コイルスプリングの大径部(弁体側接触部)
7b コイルスプリングの小径部(シャフト側接触部)
8 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気通路が形成されたハウジングと、
空気の流れ方向と直交して前記ハウジングを貫通し、軸受を介して前記ハウジングに回転自在に支持されるシャフトと、
前記空気通路に配置され、前記シャフトの回転が伝達されて前記空気通路を開閉する弁体と、
前記シャフトと前記弁体との間に弾力を有して配置され、前記シャフトの回転を前記弁体に伝達する弾性体とを備え、
前記シャフトは、自身の長手方向と直交する断面形状が多角形状に形成され、
前記弁体には、隙間を有して前記シャフトを通すための挿通孔が形成されると共に、この挿通孔の一部または全体が前記弾性体を組み込むための内部空間として形成され、
前記弾性体は、前記弁体の内部空間に組み込まれて前記シャフトの外周に配置されると共に、前記シャフト及び前記弁体に対し相対回転不能に組み付けられ、且つ、前記内部空間の内周面に弾力を有して接触する弁体側接触部と、前記シャフトの外周面に弾力を有して接触するシャフト側接触部とを有し、前記弁体側接触部で前記弁体との間に働くスラスト方向の摩擦力より、前記シャフト側接触部で前記シャフトとの間に働くスラスト方向の摩擦力の方が小さく設定されていることを特徴とするバルブ開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載したバルブ開閉装置において、
前記弁体に形成された内部空間は、前記シャフトの長手方向と直交する断面形状が矩形状であり、
前記弾性体は、谷部と山部とが波状に交互に形成される2枚のウェーブ板と、
この2枚のウェーブ板を互いの谷部同士が所定の間隔を有して向かい合う様に配置した状態で、その2枚のウェーブ板の少なくとも一端側を連結する連結板とを有し、この連結板には、前記シャフトを通すためのシャフト通し孔が形成され、
前記2枚のウェーブ板は、それぞれの山部が前記弁体側接触部を構成して前記内部空間の平坦面に線接触し、それぞれの谷部が前記シャフト側接触部を構成して前記シャフトの平坦面に線接触していることを特徴とするバルブ開閉装置。
【請求項3】
請求項1に記載したバルブ開閉装置において、
前記弁体に形成された内部空間は、前記シャフトの長手方向と直交する断面形状が円筒形であり、
前記弾性体は、外径が大きく形成された大径部と、外径が小さく形成された小径部とを有するコイルスプリングであり、前記大径部が前記弁体側接触部を形成し、前記小径部が前記シャフト側接触部を形成していることを特徴とするバルブ開閉装置。
【請求項4】
請求項3に記載したバルブ開閉装置において、
前記コイルスプリングは、前記シャフトの長手方向と直交する前記小径部の外周形状が楕円形を含む長円形状あるいは多角形状に設けられて、前記シャフトに対し相対回転不能に係合していることを特徴とするバルブ開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載した何れかのバルブ開閉装置において、
前記弁体には、前記挿通孔の一端側が前記内部空間として形成され、その内部空間の他端側には、前記挿通孔との間に段差が形成され、この段差が、前記弾性体を前記内部空間へ組み込む時の位置決め面として働くことを特徴とするバルブ開閉装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載したバルブ開閉装置において、
前記弁体には、前記挿通孔の全体が前記内部空間として形成され、且つ、前記内部空間の内周面より径方向の内側へ突き出る突起が設けられ、
前記コイルスプリングは、前記内部空間に組み込まれた状態で前記突起に係合することにより、長手方向の移動が規制されていることを特徴とするバルブ開閉装置。
【請求項7】
請求項1〜6に記載した何れかのバルブ開閉装置において、
前記ハウジングは樹脂製であり、前記シャフトは金属製、前記弁体は樹脂製であることを特徴とするバルブ開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−174735(P2010−174735A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18050(P2009−18050)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】