説明

バンク角制限装置

【課題】車両の挙動量が大きく変化する場合、あるいは、カーブが逆バンクである場合に、推定バンク角を制限して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにする。
【解決手段】バンク角制限装置10Aは、ローパスフィルタ16を備えるローパスフィルタ部12と、車両の挙動量が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する車両挙動判定部14とを有し、ローパスフィルタ部12は、前記挙動量が前記閾値よりも大きいと車両挙動判定部14が判定したときに、前記車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角をローパスフィルタ16を介して出力し、一方で、前記挙動量が前記閾値以下であると車両挙動判定部14が判定したときに、前記推定バンク角を直接出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角を制限するためのバンク角制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の車速、ヨーレート及び横加速度等の前記車両の挙動量に基づいて、前記車両が走行する路面のバンク角(推定バンク角)を推定し、該推定バンク角を用いて前記車両の挙動を制御することが広く行われている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−138800号公報
【特許文献2】特開2006−236238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、推定バンク角は、車両の挙動量に基づき推定されるので、前記車両が走行している路面の実際のバンク角が該車両の移動に対してほとんど変化していないにも関わらず、走行中の前記車両の挙動の変化や前記路面の状況に応じて前記挙動量が大きく変化した場合には、前記推定バンク角も大きく変化して、該推定バンク角の値が不安定になるおそれがある。また、カーブの内側が高く且つ外側が低い、いわゆる逆バンクにおけるバンク角を推定する際に、推定バンク角が誤推定されて、該推定バンク角の値が不安定になる場合がある。
【0005】
この発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、車両の挙動量が大きく変化する場合、あるいは、カーブが逆バンクである場合に、推定バンク角を制限して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにするバンク角制限装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るバンク角制限装置は、ローパスフィルタを備えるローパスフィルタ部と、車両の挙動量が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する車両挙動判定部とを有し、前記ローパスフィルタ部は、前記挙動量が前記閾値よりも大きいと前記車両挙動判定部が判定したときに、前記車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角を前記ローパスフィルタを介して出力し、一方で、前記挙動量が前記閾値以下であると前記車両挙動判定部が判定したときに、前記推定バンク角を直接出力することを特徴としている。
【0007】
この構成によれば、前記車両の挙動量が前記閾値よりも大きい場合には、前記推定バンク角を前記ローパスフィルタを介して出力するので、前記挙動量が大きく変化する場合であっても、前記推定バンク角を制限して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにすることができる。
【0008】
一方、前記車両の挙動量が前記閾値以下である場合には、前記推定バンク角を前記ローパスフィルタを介することなく直接出力するので、前記推定バンク角の位相遅れを抑制することができる。
【0009】
この場合、前記車両のヨーレートの微分値を前記挙動量とすれば、前記車両が大きく旋回したときに、前記推定バンク角を確実に制限することができる。
【0010】
また、この発明に係るバンク角制限装置は、車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角の変化率の限界値を車速に応じて設定する限界値設定部と、前記推定バンク角の変化率が前記限界値を越えないように該変化率を制限するレートリミッタとを有することを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、前記車両の挙動量としての前記車速に応じて前記限界値を設定し、設定した前記限界値を越えないように前記推定バンク角の変化率を制限するので、前記車速が大きく変化(急加速又は急減速)する場合であっても、前記推定バンク角が必要以上に急変することを抑制して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにすることができる。
【0012】
さらに、この発明に係るバンク角制限装置は、車両の旋回方向と、前記車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角とに基づいて、前記路面が逆バンクであるか否かを判定し、前記逆バンクであると判定したときに、前記推定バンク角が所定の限界値を越えないように該推定バンク角を制限するリミッタを有することを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、前記逆バンクの場合に、前記限界値を越えないように前記推定バンク角を制限するので、前記推定バンク角の誤推定を防止して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、車両の挙動量が大きく変化する場合、あるいは、路面が逆バンクである場合に、推定バンク角を制限して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
先ず、この発明の第1実施形態に係るバンク角制限装置10Aについて、図1を参照しながら説明する。
【0017】
このバンク角制限装置10Aは、図示しない車両に搭載されたバンク角推定装置及びヨーレートセンサと、該車両の挙動を制御する制御装置(マイクロコンピュータから構成されるECU)との間に接続され、前記バンク角推定装置が推定した、前記車両が走行する路面の推定バンク角をフィルタリング(制限)して前記ECUに出力することが可能である。この場合、バンク角制限装置10Aは、ローパスフィルタ部12と、車両挙動判定部14とを有する。なお、前記車両に搭載された前記バンク角推定装置、前記ヨーレートセンサ及び前記ECUの構成及び機能は、特許文献1及び2に開示されているので、この明細書では、それらの詳細な説明については省略する。
【0018】
ローパスフィルタ部12は、ローパスフィルタ16と切替スイッチ18とを備える。この場合、車両挙動判定部14から切替スイッチ18の入力ポート18dへの制御信号の入力により、入力ポート18aと出力ポート18cとが接続され、一方で、入力ポート18dへの制御信号の入力停止により、入力ポート18aと出力ポート18cとの接続が、入力ポート18bと出力ポート18cとの接続に切り替わる。また、車両挙動判定部14は、絶対値変換部20と、閾値記憶部22と、判定部24とを備える。
【0019】
次に、このバンク角制限装置10Aの動作について説明する。
【0020】
前記バンク角推定装置は、車速、ヨーレート及び横加速度等の前記車両の挙動量に基づいてバンク角を推定し、推定したバンク角(推定バンク角)をローパスフィルタ部12に出力する。
【0021】
一方、前記ヨーレートセンサが前記車両のヨーレートを検出し、検出したヨーレートの微分値が車両挙動判定部14に入力された場合に、車両挙動判定部14の絶対値変換部20は、前記ヨーレートの微分値を絶対値に変換して判定部24に出力する。
【0022】
判定部24は、閾値記憶部22に記憶された所定の閾値を読み出し、読み出した前記閾値と、前記絶対値とを比較して、前記絶対値が前記閾値よりも大きい場合(絶対値>閾値)には、前記車両の挙動が大きくなって、前記バンク角推定装置が推定した前記推定バンク角の値が不安定に陥っているものと判定し、切替スイッチ18の入力ポート18dに制御信号(所定の振幅レベルの信号)を出力する。切替スイッチ18は、入力ポート18dに制御信号が入力されたときに、入力ポート18aと出力ポート18cとを接続する。これにより、ローパスフィルタ16は、前記推定バンク角のうち、所定のカットオフ周波数以下の低周波成分を通過させる。ローパスフィルタ16から出力された低周波成分の信号(ローパスフィルタ16を通過した推定バンク角)は、入力ポート18a及び出力ポート18cを介して前記車両の挙動の制御に必要な信号として前記ECUに供給される。
【0023】
一方、判定部24は、前記絶対値と前記閾値とを比較して、前記絶対値が前記閾値以下である場合(絶対値≦閾値)には、前記車両の挙動が小さく、前記推定バンク角の値が不安定な値ではないものと判定し、次に、切替スイッチ18の入力ポート18dに対する制御信号の出力を停止する。これにより、切替スイッチ18は、入力ポート18dに対する制御信号の入力停止に起因して、入力ポート18aと出力ポート18cとの接続を、入力ポート18bと出力ポート18cとの接続に切り替える。この結果、前記バンク角推定装置からの推定バンク角(ローパスフィルタ16を通過しない推定バンク角)は、入力ポート18b及び出力ポート18cを介して、前記ECUに直接供給される。
【0024】
以上説明したように、第1実施形態に係るバンク角制限装置10Aは、ローパスフィルタ16を備えるローパスフィルタ部12と、車両の挙動量(ヨーレートの微分値)が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する車両挙動判定部14とを有し、ローパスフィルタ部12は、前記挙動量が前記閾値よりも大きいと車両挙動判定部14が判定したときに、前記車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角をローパスフィルタ16を介して出力し、一方で、前記挙動量が前記閾値以下であると車両挙動判定部14が判定したときに、前記推定バンク角を直接出力する。
【0025】
これにより、前記車両の挙動量が前記閾値よりも大きい場合には、前記推定バンク角をローパスフィルタ16を介して出力するので、前記挙動量が大きく変化する場合であっても、前記推定バンク角を制限して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにすることができる。
【0026】
一方、前記車両の挙動量が前記閾値以下である場合には、前記推定バンク角をローパスフィルタ16を介することなく直接出力するので、前記推定バンク角の位相遅れを抑制することができる。
【0027】
この場合、前記車両に搭載されたヨーレートセンサが検出したヨーレートの微分値を前記車両の挙動量とすれば、前記車両が大きく旋回したときに、前記推定バンク角を確実に制限することができる。
【0028】
次に、第2実施形態に係るバンク角制限装置10Bについて、図2を参照しながら説明する。
【0029】
このバンク角制限装置10Bは、推定バンク角の時間変化量(時間変化率)が所定の限界値を越えないように制限するレートリミッタ30と、車両に搭載された車速センサが検出した車速に応じて前記限界値を設定する限界値設定部33(上限値設定部32及びゲインアンプ34)とを有する。
【0030】
次に、このバンク角制限装置10Bの動作について説明する。
【0031】
前記車速センサは、車速を検出して上限値設定部32に出力する。上限値設定部32は、前記車速に応じた限界値としての前記時間変化量の上限値(前記車両の急加速に伴って前記推定バンク角が急激に増加するときの正の時間変化量の上限)を決定し、決定した前記上限値をレートリミッタ30及びゲインアンプ34に出力する。ゲインアンプ34は、入力された前記上限値に(−1)をかけた値を、前記車速に応じた前記時間変化量の下限値(前記車両の急減速に伴って前記推定バンク角が急激に減少するときの負の時間変化量の下限)としてレートリミッタ30に出力する。
【0032】
一方、前記バンク角推定装置は、推定した推定バンク角をレートリミッタ30に出力する。
【0033】
レートリミッタ30は、推定バンク角の時間変化量が前記限界値を越えないように制限し、制限後の推定バンク角を前記車両の挙動の制御に必要な信号として前記ECUに供給する。
【0034】
具体的に、レートリミッタ30は、前記推定バンク角の時間変化量が前記上限値を上回る場合(時間変化量>上限値)には、前記車両の急加速により、時間経過に対して前記推定バンク角が急激に増加するものと判断し、次に、前記時間変化量を前記上限値に強制的に制限して、制限後の推定バンク角を前記ECUに供給する。
【0035】
また、レートリミッタ30は、前記時間変化量が前記下限値を下回る場合(時間変化量<下限値)には、前記車両の急減速により、時間経過に対して前記推定バンク角が急激に減少するものと判断し、次に、前記時間変化量を前記下限値に強制的に制限して、制限後の推定バンク角を前記ECUに供給する。
【0036】
さらに、レートリミッタ30は、前記時間変化量が前記上限値と前記下限値との間にある場合(下限値≦時間変化量≦上限値)には、前記車速が変化しても、時間経過に対して前記推定バンク角は急変しないものと判断し、前記推定バンク角に対する制限は行わず、該推定バンク角をそのまま前記ECUに供給する。
【0037】
以上説明したように、第2実施形態に係るバンク角制限装置10Bは、車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角の変化率の限界値(時間変化量に対する上限値及び下限値)を車速に応じて設定する限界値設定部33と、前記推定バンク角の時間変化量が前記限界値を越えないように該変化率を制限するレートリミッタ30とを有する。
【0038】
これにより、前記車両の挙動量としての前記車速に応じて前記限界値を設定し、設定した前記限界値を越えないように前記推定バンク角の時間変化量を制限するので、前記車速が大きく変化(急加速又は急減速)する場合であっても、前記推定バンク角が必要以上に急変することを抑制して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにすることができる。
【0039】
次に、第3実施形態に係るバンク角制限装置10Cについて、図3A〜図5を参照しながら説明する。
【0040】
図3A〜図4Bは、カーブ40におけるバンクを説明するための図である。
【0041】
カーブ40におけるバンクには、図3A及び図4Aに示すように、該カーブ40の内側が低く且つ外側が高いバンクと、図3B及び図4Bに示すように、カーブ40の内側が高く且つ外側が低い、いわゆる逆バンクとがある。
【0042】
ここで、車両42がカーブ40に沿って走行し、実際のバンク角がθ又は−θである場合に、図3B及び図4Bの逆バンクのバンク角−θ又はθを推定すると、バンク角θ(−θ)が誤推定されて、推定バンク角の値が不安定になるおそれがある。
【0043】
なお、図3A〜図4Bでは、カーブ40の左側において、水平方向と路面との成す角をバンク角θ又は−θとし、左回転方向を正方向(+θ)、右回転方向をの負方向(−θ)としている。また、図3A〜図4Bで車両42の前後方向に沿った一点鎖線の軸に対して左回りの方向(図3A及び図3B参照)をヨーレートの正方向(+u)とし、一方で、前記一点鎖線の軸に対して右回りの方向(図4A及び図4B参照)をヨーレートの負方向(−u)とする。
【0044】
そこで、第3実施形態に係るバンク角制限装置10Cは、図5の概略ブロック図に示す構成を採用することで、推定バンク角の誤推定を防止して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにしている。
【0045】
すなわち、バンク角制限装置10Cは、カーブ40が逆バンク(図3B及び図4B参照)である場合に推定バンク角が所定の限界値を越えないように制限するリミッタ70と、前記限界値を設定する限界値設定部71(上限値設定部52、56、下限値設定部50、58、許容値出力部54、60、68、閾値記憶部62、判定部64及び切替スイッチ66)とを有する。
【0046】
次に、このバンク角制限装置10Cの動作について説明する。
【0047】
車両42に搭載されたヨーレートセンサがヨーレートを検出し、検出したヨーレートを、上限値設定部56、下限値設定部50及び判定部64に出力する。
【0048】
下限値設定部50は、前記ヨーレートに応じた限界値としての該推定バンク角の下限値(カーブ40が図3Bの逆バンクである場合での推定バンク角の負方向の限界値)を決定し、決定した前記下限値を許容値出力部54に出力する。
【0049】
また、上限値設定部56は、前記ヨーレートに応じた限界値としての該推定バンク角の上限値(カーブ40が図4Aの逆バンクである場合での推定バンク角の正方向の限界値)を決定し、決定した前記上限値を許容値出力部60に出力する。
【0050】
さらに、上限値設定部52には、推定バンク角の上限(限界値)がない旨の条件が記憶され、一方で、下限値設定部58には、推定バンク角の下限(限界値)がない旨の条件が記憶されている。
【0051】
従って、許容値出力部54は、下限値設定部50からの下限値と、上限値設定部52から読み出した上限がない旨の条件とを切替スイッチ66の入力ポート66aに出力する。また、許容値出力部60は、上限値設定部56からの上限値と、下限値設定部58から読み出した下限がない旨の条件とを切替スイッチ66の入力ポート66bに出力する。
【0052】
判定部64は、前記ヨーレートセンサからのヨーレートと、閾値記憶部62に記憶された閾値としての0(車両42が直進する場合)とを比較して、ヨーレートが0以上であれば(ヨーレート≧0)、車両42が正方向(図3A及び図3B参照)に旋回するものと判断し、切替スイッチ66の入力ポート66dに制御信号を出力する。切替スイッチ66は、入力ポート66dに制御信号が入力されたときに、入力ポート66aと出力ポート66cとを接続して、許容値出力部54からの下限値及び上限がない旨の条件を許容値出力部68に出力する。
【0053】
また、判定部64は、ヨーレートが0を下回るのであれば(ヨーレート<0)、車両42が負方向(図4A及び図4B参照)に旋回するものと判断し、入力ポート66dに対する制御信号の出力を停止する。切替スイッチ66は、入力ポート66dに対する制御信号の入力停止に起因して、入力ポート66aと出力ポート66cとの接続を、入力ポート66bと出力ポート66cとの接続に切り替えて、許容値出力部60からの上限値及び下限がない旨の条件を許容値出力部68に出力する。
【0054】
許容値出力部68は、許容値出力部54から切替スイッチ66を介して入力された下限値及び上限がない旨の条件をリミッタ70に出力するか、あるいは、許容値出力部60から切替スイッチ66を介して入力された上限値及び下限がない旨の条件をリミッタ70に出力する。
【0055】
リミッタ70は、許容値出力部68から入力された、上限がない旨の条件及び下限値(ヨーレート>0であって車両42が正方向に旋回するときの限界値)、あるいは、上限値及び下限がない旨の条件(ヨーレート<0であって車両42が負方向に旋回するときの限界値)と、推定バンク角とに基づいて、カーブ40が逆バンクであるか否かを判定し、逆バンクであると判定したときに、推定バンク角が限界値を越えないように該推定バンク角を制限し、制限後の推定バンク角を前記車両の挙動の制御に必要な信号として前記ECUに供給する。
【0056】
具体的に、リミッタ70は、許容値出力部68から入力された限界値が、上限がない旨の条件及び下限値であり、且つ、推定バンク角が負の値である場合(図3B参照)に、逆バンクであると判定し、前記推定バンク角の値が前記下限値を下回る場合(推定バンク角<下限値)には、前記推定バンク角の値を前記下限値に強制的に制限して、制限後の推定バンク角を前記ECUに供給する。
【0057】
また、リミッタ70は、許容値出力部68から入力された限界値が、上限値及び下限値がない旨の条件であり、且つ、推定バンク角が正の値である場合(図4B参照)に、逆バンクであると判定し、前記推定バンク角の値が前記上限値を上回る場合(推定バンク角>上限値)には、前記推定バンク角の値を前記上限値に強制的に制限して、制限後の推定バンク角を前記ECUに供給する。
【0058】
さらに、リミッタ70は、通常のバンク(図3A及び図4A参照)と判定した場合や、逆バンク(図3B及び図4B参照)と判定しても、推定バンク角の値が下限値を下回ることがなく、あるいは、推定バンク角の値が上限値を上回ることがない場合(一般の道路に存在しうる逆バンクの範囲内である場合)には、推定バンク角に対する制限は行わず、該推定バンク角をそのまま前記ECUに供給する。
【0059】
以上説明したように、第3実施形態に係るバンク角制限装置10Cは、車両の旋回方向と、前記車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角とに基づいて、前記路面(カーブ40)が逆バンクであるか否かを判定し、前記逆バンクであると判定したときに、前記推定バンク角が所定の限界値(上限値又は下限値)を越えないように該推定バンク角を制限するリミッタ70を有する。
【0060】
これにより、逆バンクの場合に、前記限界値を越えないように推定バンク角を制限するので、前記推定バンク角の誤推定を防止して、該推定バンク角の値が不安定に陥らないようにすることができる。
【0061】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書及び図面の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施形態に係るバンク角制限装置の概略ブロック図である。
【図2】第2実施形態に係るバンク角制限装置の概略ブロック図である。
【図3】図3A及び図3Bは、カーブにおけるバンクを説明するための図である。
【図4】図4A及び図4Bは、カーブにおけるバンクを説明するための図である。
【図5】第3実施形態に係るバンク角制限装置の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
10A〜10C…バンク角制限装置 12…ローパスフィルタ部
14…車両挙動判定部 16…ローパスフィルタ
18、66…切替スイッチ
18a、18b、18d、66a、66b、66d…入力ポート
18c、66c…出力ポート 20…絶対値変換部
22、62…閾値記憶部 24…判定部
30…レートリミッタ 32…上限値設定部
33、71…限界値設定部 34…ゲインアンプ
40…カーブ 42…車両
50、58…下限値設定部 52、56…上限値設定部
54、60、68…許容値出力部 64…判定部
70…リミッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローパスフィルタを備えるローパスフィルタ部と、車両の挙動量が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する車両挙動判定部とを有し、
前記ローパスフィルタ部は、前記挙動量が前記閾値よりも大きいと前記車両挙動判定部が判定したときに、前記車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角を前記ローパスフィルタを介して出力し、一方で、前記挙動量が前記閾値以下であると前記車両挙動判定部が判定したときに、前記推定バンク角を直接出力することを特徴とするバンク角制限装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記挙動量は、前記車両のヨーレートの微分値であることを特徴とするバンク角制限装置。
【請求項3】
車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角の変化率の限界値を車速に応じて設定する限界値設定部と、
前記推定バンク角の変化率が前記限界値を越えないように該変化率を制限するレートリミッタと、
を有することを特徴とするバンク角制限装置。
【請求項4】
車両の旋回方向と、前記車両に搭載されたバンク角推定装置が推定した路面の推定バンク角とに基づいて、前記路面が逆バンクであるか否かを判定し、前記逆バンクであると判定したときに、前記推定バンク角が所定の限界値を越えないように該推定バンク角を制限するリミッタを有することを特徴とするバンク角制限装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−116105(P2010−116105A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292187(P2008−292187)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】