説明

バーナ用ガスノズル装置

【課題】火力を絞ったときに、ノズル孔からのガス噴出速度の低下で一次空気の吸引不足を生ずることを防止し、絞り性能を可及的に向上できるようにしたバーナ用ガスノズル装置を提供する。
【解決手段】ノズル本体3の先端部に複数のノズル孔41,42,43が開設され、共通のガス供給路5から分岐させた各分岐ガス通路61,62,63を介して各ノズル孔41,42,43に個別に燃料ガスが供給される。これら分岐ガス通路のうちの所定の1つの分岐ガス通路61以外の分岐ガス通路62,63に開閉弁10が介設される。燃料ガスの供給量の減少に応じて開閉弁10を閉弁し、ノズル孔のトータルの有効開口面積を減少させる。また、ノズル本体内にノズル孔に向けて進退自在なニードルを設け、燃料ガスの供給量の減少に応じてニードルをノズル孔側に前進させて、ノズル孔の有効開口面積を減少させるようにしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナの混合管の上流端の流入口に臨むガスノズルを備えるバーナ用ガスノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
元来、この種のガスノズルのノズル本体の先端部にはノズル孔が開設されており、ノズル孔から混合管の流入口に向けて燃料ガスを噴出させ、噴出ガス流によるエゼクタ効果で混合管に一次空気を吸引するようにしている。
【0003】
また、従来、このようなガスノズルにおいて、ノズル本体内に、ノズル孔に流れ込むガス流に乱れを生じさせる障害物を設けたものも知られている。このものでは、ガスノズルへの燃料ガスの供給量の減少でノズル孔からのガス噴出速度が減速しても、ノズル孔から燃料ガスが乱流状態で噴出するため、混合管に一次空気が良好に吸引され、火力を弱火に絞っても失火しないとしている。
【0004】
然し、上記ガスノズルを用いても、最大火力のインプット(燃料ガスの供給量)を大きくするために、ノズル孔の孔径を大きくすると、火力を絞ったときは、ノズル孔の孔径が小さなガスノズルに比しガス噴出速度が低下して、一次空気の吸引不足を生じ、最小絞り時の燃焼状態が不安定になる。そのため、燃焼状態が安定するまでインプットを上げる必要があり、絞り性能の一層の向上を図ることが困難になっている。
【特許文献1】特開平11−211028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、絞り性能を可及的に向上できるようにしたバーナ用ガスノズル装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ガスバーナの混合管の上流端の流入口に臨むガスノズルを備えるバーナ用ガスノズル装置であって、ガスノズルのノズル本体の先端部に開設したノズル孔から流入口に向けて燃料ガスを噴出させ、噴出ガス流によるエゼクタ効果で混合管に一次空気を吸引するものにおいて、燃料ガスが噴出するノズル孔の有効開口面積が、燃料ガスの供給量の減少に応じて減少するように可変されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、燃料ガスの供給量の減少に応じてノズル孔の有効開口面積が減少するため、絞り時においてもガス噴出速度は低下せず、一次空気の吸引性能が良好に維持される。その結果、最大火力のインプットを大きくして、且つ、最小絞り時のインプットをかなり低く設定しても、最小絞り時に安定して燃焼する。従って、絞り性能を可及的に向上できる。
【0008】
ところで、ノズル孔の有効開口面積を可変する具体的な構造の1つとしては、ノズル本体の先端部にノズル孔が複数開設され、共通のガス供給路から分岐させた各分岐ガス通路を介して各ノズル孔に個別に燃料ガスが供給され、これら分岐ガス通路のうちの所定の1つの分岐ガス通路以外の分岐ガス通路に開閉弁が介設され、開閉弁を閉弁することでノズル孔のトータルの有効開口面積を減少させることが挙げられる。
【0009】
この場合、最小絞り時には、所定の分岐ガス通路に対応する所定のノズル孔から燃料ガスが噴出することになる。ここで、所定のノズル孔の孔径は、最小絞り時に一次空気の吸引性能を良好に維持するため、ガス噴出速度が速くなるように小径に設定される。そして、他のノズル孔を全てこのような小径に形成したのでは、最大火力のインプットを大きくするために、ノズル孔の個数を増やすことが必要になる。これに対し、複数のノズル孔のうち所定の分岐ガス通路に対応する所定のノズル孔を除く少なくとも1つのノズル孔の孔径を所定のノズル孔の孔径より大きくすれば、ノズル孔の個数を然程増やさずに最大火力のインプットを大きくすることができ、有利である。
【0010】
また、ノズル孔の有効開口面積を可変する具体的な構造の他の1つとしては、ノズル本体内に設けた、ノズル孔に向けて進退自在なニードルと、ニードルを進退駆動する駆動源とを備え、ニードルをノズル孔に挿入することでノズル孔の有効開口面積を減少させることが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照して、1はコンロ等に設置するブンゼン式ガスバーナの混合管を示している。混合管1には、その上流端の流入口1aに臨ませて配置したガスノズル2から燃料ガスが供給される。そして、ガスノズル2からの噴出ガス流によるエゼクタ効果で混合管1に一次空気が吸引されて、混合管1内で燃料ガスと一次空気とが混合され、混合ガスがガスバーナの図示しない炎孔から噴出して燃焼する。
【0012】
ガスノズル2のノズル本体3の先端部には、第1乃至第3の3個のノズル孔41,42,43が開設されている。そして、これら各ノズル孔41,42,43に、共通のガス供給路5から分岐させた第1乃至第3の各分岐ガス通路61,62,63を介して個別に燃料ガスを供給している。各分岐ガス通路61,62,63は、ノズル本体3に各ノズル孔41,42,43に連通するように形成した各通路孔6aと、各通路孔6aに連通するようにノズル本体3の尾端部に配管接続される各分岐管6bとで構成されている。これら分岐管6bは、ノズル本体3の尾端部にかしめ付けた押え板6cによりノズル本体4に抜け止めされている。尚、図1では、3個のノズル孔41,42,43がノズル本体3の径方向に並設されているが、実際には、図2に示す如く、3個のノズル孔41,42,43が周方向に間隔を存して配置されている。
【0013】
ガス供給路5には、火力調節摘み7に連動する電動式の流量調節弁8が介設されている。火力調節摘み7は、最小火力位置から最大火力位置までの複数の位置に回動操作可能である。図示例では、最小火力位置を「1」位置とし、最大火力位置を「5」位置としている。そして、火力調節摘み7の操作位置を検出するポジションセンサ7aを設け、該センサ7aからの信号を流量調節弁8を制御するコントローラ9に入力している。流量調節弁8は、火力調節摘み7の「1」位置で最小開度、「5」位置で最大開度になるように制御される。
【0014】
また、第2と第3の各分岐ガス通路62,63には、コントローラ9で開閉制御される電磁式の開閉弁10が介設されている。そして、火力調節摘み7が「5」位置と「3」位置との間で操作されるときは、第2と第3の両分岐ガス通路62,63に介設した開閉弁10,10を開弁した状態に保持して、第1乃至第3の3つのノズル孔41,42,43から燃料ガスが噴出されるようにしている。また、火力調節摘み7が「2」位置に操作されたときは、第3分岐ガス通路63に介設した開閉弁10を閉弁して、第1と第2の2つのノズル孔41,42から燃料ガスが噴出されるようにし、火力調節摘み7が「1」位置に操作されたときは、第2分岐ガス通路62に介設した開閉弁10も閉弁して、第1ノズル孔41のみから燃料ガスが噴出されるようにする。即ち、第1乃至第3の3つのノズル孔41,42,43のトータルの有効開口面積(燃料ガスが噴出する部分の面積)が燃料ガスの供給量の減少に応じて減少されるようにする。
【0015】
ここで、ノズル孔が1個のみのガスノズルを用いる場合、最大火力でのインプット(バーナへの燃料ガスの供給量)を例えば3450kcal/h(ガス種13A)にするのに必要なノズル孔の孔径(直径)は1.40mmになる。このノズル孔では、最小火力でのインプットを350kcal/h程度にすると、ノズル孔からのガス噴出速度が遅くなりすぎて、一次空気の吸引不足を生じ、燃焼状態が不安定になる。
【0016】
一方、本実施形態では、火力調節摘み7を「1」位置にしたとき、即ち、最小火力に絞ったときは、第1ノズル孔41のみから燃料ガスが噴出する。そして、第1ノズル孔41の孔径を0.48mm程度に設定しておけば、最小火力でのインプットが350kcal/h程度と低くなっても、噴出ガス速度は低下せず、一次空気の吸引性能が良好に維持されて、安定して燃焼する。従って、絞り性能を可及的に向上できる。
【0017】
尚、第2ノズル孔42の孔径は、「2」位置でのインプットが600kcal/h程度である場合、0.42mm程度に設定しておけば良い。また、第3ノズル孔43の孔径は、第1乃至第3の3つのノズル孔41,42,43のトータルで1.40mmになるように、0.64mm程度に設定される。このように、第3ノズル孔43の孔径を第1ノズル孔41の孔径より大きくすることで、ノズル孔の個数を然程増やさずに最大火力のインプットを大きくすることができる。
【0018】
次に、図3に示す第2実施形態について説明する。尚、図3において、上記第1実施形態と同様の部材には上記と同一の符号を付している。第2実施形態では、ノズル本体3の先端部に、大径のノズル孔4が1個だけ開設されている。ノズル本体3内には、ノズル孔4に向けて進退自在なニードル11が設けられている。そして、ニードル11をコントローラ9で制御される駆動源12により進退駆動するようにしている。尚、駆動源12としては、電磁ソレノイドを用いることができ、また、電動モータと該モータの回転をニードル11の直線運動に変換する送りねじ機構とで駆動源12を構成しても良い。また、駆動源12にガス供給路5が干渉しないように、ノズル本体3の周壁部に流入ポート13を開設し、この流入ポート13にガス供給路5の下流端を接続している。
【0019】
ニードル11は、先端の小径部11aと小径部11aより大径の大径部11bとから成る段付き形状に形成されている。大径部11bは、ノズル孔4の孔径より所定量だけ小径に形成される。
【0020】
火力調節摘み7が最大火力の「5」位置と「3」位置との間で操作されるときは、ニードル11は小径部11aがノズル孔4に挿入されない後退位置(図3の実線示の位置)に保持される。火力調節摘み7が「2」位置に操作されたときは、ニードル11が駆動源12により所定ストローク前進して、小径部11aがノズル孔4に挿入され、燃料ガスが噴出するノズル孔4の有効開口面積が減少する。火力調節摘み7が「1」位置に操作されたときは、ニードル11が更に前進して、図3に仮想線で示す如く、大径部11bがノズル孔4に挿入され、ノズル孔4の有効開口面積が更に減少する。これにより、インプットを絞ったときの噴出ガス速度の低下が防止され、一次空気の吸引性能が良好に維持される。従って、上記第1実施形態と同様に絞り性能を可及的に向上できる。
【0021】
尚、ニードル11にテーパを付けて、ノズル孔4の有効開口面積を無段階に可変することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態のガスノズル装置を示す切断側面図。
【図2】第1実施形態のガスノズルを示す斜視図。
【図3】本発明の第2実施形態のガスノズル装置を示す切断側面図。
【符号の説明】
【0023】
1…混合管、1a…流入口、2…ガスノズル、3…ノズル本体、4,41,42,43…ノズル孔、5…ガス供給路、61,62,63…分岐ガス通路、10…開閉弁、11…ニードル、12…駆動源。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナの混合管の上流端の流入口に臨むガスノズルを備えるバーナ用ガスノズル装置であって、
ガスノズルのノズル本体の先端部に開設したノズル孔から流入口に向けて燃料ガスを噴出させ、噴出ガス流によるエゼクタ効果で混合管に一次空気を吸引するものにおいて、
燃料ガスが噴出するノズル孔の有効開口面積が、燃料ガスの供給量の減少に応じて減少するように可変されることを特徴とするバーナ用ガスノズル装置。
【請求項2】
前記ノズル本体の先端部に前記ノズル孔が複数開設され、共通のガス供給路から分岐させた各分岐ガス通路を介して各ノズル孔に個別に燃料ガスが供給され、これら分岐ガス通路のうちの所定の1つの分岐ガス通路以外の分岐ガス通路に開閉弁が介設され、開閉弁を閉弁することでノズル孔のトータルの有効開口面積を減少させることを特徴とする請求項1記載のバーナ用ガスノズル装置。
【請求項3】
前記複数のノズル孔のうち前記所定のガス供給路に対応する所定のノズル孔を除く少なくとも1つのノズル孔の孔径を所定のノズル孔の孔径より大きくすることを特徴とする請求項2記載のバーナ用ガスノズル装置。
【請求項4】
前記ノズル本体内に設けた、前記ノズル孔に向けて進退自在なニードルと、ニードルを進退駆動する駆動源とを備え、ニードルをノズル孔に挿入することでノズル孔の有効開口面積を減少させることを特徴とする請求項1記載のバーナ用ガスノズル装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−19434(P2010−19434A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177717(P2008−177717)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】