説明

バー塗布装置、塗布方法、及び光学フィルムの製造方法

【課題】バー塗布において、塗布液の流動が不安定になり、渦流の発生により塗布ムラが発生するのを防止する。
【解決手段】バー16に接触して走行するポリマーフィルム12の接触部直前に液溜り部30を形成し、該液溜り部30には、前記ポリマーフィルム12に対して平行に整流板40が備えられた、塗布液を前記ポリマーフィルム12に塗布するバー塗布装置10であって、前記整流板40には、該整流板40が撓るのを抑制するために、前記ポリマーフィルム12の幅方向の厚みLが3mm以下の支柱を1以上備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バー塗布装置、バー塗布装置を用いた塗布方法、及び光学フィルムの製造方法に係り、特に液晶表示装置に好適な品質を有する光学フィルムを製造するための塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償フィルム等の光学性機能フィルムの製造における塗布では、塗布液を均一且つ薄層に塗布することが要求される。しかしながら、このような薄層塗布では、縦スジやストリーク故障を生じることが多く、従来から各種対策が検討されている。
【0003】
一般的なバー塗布装置では、バーに対して一次側(ウエブ走行方向の上流側)に塗布液をオーバーフローする液溜り部が設けられている。この一次側の気液界面が乱れると、液溜り部の塗布液の流動に乱れが生じ、液溜り部での内圧力の変動が生じてしまう。特に、塗布速度の速い系では、液溜り部の塗布液の流動が不安定になり、渦流の発生により塗布ムラが発生するという問題があった。これは、液溜まり内のウエブ近傍の位置では、塗布液はウエブの速度に引っ張られるような流速分布を持ち、ウエブから離れるに従い、塗布液の粘性により渦流の発生などが起きることによる。
【0004】
そこで、特許文献1では、バー塗布において、塗布液の流動が不安定になり、渦流の発生により塗布ムラが発生するのを防止することができるバー塗布装置が開示されている。特許文献1のバー塗布装置は、液溜り部に、ウエブに対して平行に整流板を備えるようにし、整流板とウエブとのクリアランスLを0.5mm〜5.0mmの範囲になるようにしたものである。
【0005】
このように、液溜まり内に渦発生を抑制する障害物を設置することで、液溜まり内の塗布液の流れを整流化することができ、一次側の気液界面が乱れるのを抑制することができるので、塗布ムラが発生するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−240996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたバー塗布装置は、特に幅広のウエブに対応したものであると、液溜まり内の塗布液の流れを整流化することができず、一次側の気液界面が乱れてしまい、塗布ムラが発生することがあった。特に、塗布液の液粘度を1.2mPa・s以下としたときにこの問題は顕著であった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、特許文献1に開示されたバー塗布装置において、塗布液の液粘度を特に1.2mPa・s以下とした際、塗布液の流動が不安定になり渦流の発生により塗布ムラが発生するのを防止することができるバー塗布装置、塗布方法、及び光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、バーに接触して走行するポリマーフィルムの接触部直前に液溜り部を形成し、該液溜り部には、前記ポリマーフィルムに対して平行に整流板が備えられた、塗布液を前記ポリマーフィルムに塗布するバー塗布装置であって、前記整流板には、該整流板が撓るのを抑制するために、前記ポリマーフィルムの幅方向の厚みが3mm以下の支柱を1以上備えることを特徴とする。ここで、整流板が撓るのを抑制するとは、前記支柱がない場合に比べて整流板の真直度が小さいことを意味する。
【0010】
本願発明者は、特許文献1に開示されたバー塗布装置においても、特に液粘度が1.2mPa・s以下の塗布液の流動が不安定になり渦流の発生により塗布ムラが発生する原因について鋭意研究したところ、整流板が撓ることで塗布液の流動が不安定になってしまうと知見を得た。そこで、本願発明者は、整流板が撓るのを抑制するために、整流板に支柱を1以上備えるようにした。しかしながら、単に整流板を支柱で支えれば良い訳ではなく、フィルム幅方向の厚みを3mm以下とすることで、塗布ムラが発生するのを防止することができるという知見を得た。ここで、支柱の厚みが3mmを超えてしまうと、塗布液の流動が支柱により大幅に乱れてしまい塗布ムラが発生してしまう。
【0011】
本発明によれば、バーに接触して走行するポリマーフィルムの接触部直前に液溜り部を形成し、該液溜り部には、前記ポリマーフィルムに対して平行に整流板が備えられた、塗布液を前記ポリマーフィルムに塗布するバー塗布装置であって、前記整流板には、該整流板が撓るのを抑制するために、前記ポリマーフィルムの幅方向の厚みが3mm以下の支柱を1以上備えることで、塗布液の流動が不安定になり渦流の発生により塗布ムラが発生するのを防止することができる。
【0012】
本発明において、前記整流板は、前記液溜り部を形成し、ポリマーフィルムの幅方向に設けられたサイド堰に固定されているか、又は、該サイド堰との隙間を1mm以下とすることが好ましい。
【0013】
塗布端部の塗布液の流動を安定にするには、整流板をサイド堰に固定されているか、又は、整流板とサイド堰との隙間を1mm以下とすることが好ましい。
【0014】
本発明では、前記支柱を備えるピッチであって、前記整流板のポリマーフィルム幅方向の長さは、300mm以下であることが好ましい。
【0015】
支柱を備えるピッチが300mm以下として、本発明に係る支柱で整流板を支えることで、塗布ムラが発生するのを防止することができる。
【0016】
前記整流板のポリマーフィルム走行方向の長さが5.0mm以上であることが好ましい。
【0017】
そして、前記整流板の前記ポリマーフィルムに対向する面は、真直度が前記ポリマーフィルムの幅方向において0.5mm/1m以下であることが好ましい。
【0018】
また、前記バーと前記整流板とのクリアランスが1.0mm以上であることが好ましい。
【0019】
これらの条件を付加することで、更に、液溜まり内の流れを整流化することができ、一次側の気液界面が乱れるのを抑制することができるので、更に塗布ムラが発生するのを防止することができる。
【0020】
本発明は、前記目的を達成するために、前記バー塗布装置の何れかを使用して、走行するポリマーフィルムに塗布液を塗布することを特徴とする。
【0021】
本発明の塗布方法によれば、バー塗布後の塗布面に塗布ムラが発現するのを防止することができる。
【0022】
本発明は、前記目的を達成するために、塗布方法で塗布層が形成されたことを特徴とする光学フィルムの製造方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、前記目的を達成するために、ポリマーフィルムに形成された配向膜にラビング処理する工程と、前記ラビング処理された配向膜上に前記バー塗布装置の何れかを使用して液晶ディスコティック化合物を含有する塗布液を塗布する工程と、塗布された前記塗布液を乾燥することにより光学異方性層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする光学フィルムの製造方法を提供する。
【0024】
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、塗布ムラが生じることなく、良好な品質の光学フィルムを得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、バーの一次側での気液界面の乱れに起因する塗布面でのスジ等のムラが生じることがなく、均質な塗布を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るバー塗布装置の概略を示す断面図
【図2】本発明に係るバー塗布装置の一次側の液溜り部の概略を示す斜視図
【図3】本発明に係るバー塗布装置の一次側の液溜り部を上面からみた上面図
【図4】本実施形態のバー塗布装置を組み込んだ光学フィルムの製造ラインを示す概略図
【図5】実施例で用いたバー塗布装置を説明する概念図
【図6】実施例の条件と結果を示す表図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0028】
図1は本発明が適用される実施形態のバー塗布装置の構成を模式的に示す断面図である。バー塗布装置10は、走行方向に沿って連続走行するウエブ(ポリマーフィルム)12に塗布液を塗布する装置であり、バー16を有する塗布ヘッド14と、バー16が接触するようにウエブ12を塗布面と反対側から支持するバックアップローラ18を備えている。
【0029】
塗布ヘッド14のバー16は、円柱状に形成されており、円周方向に一定間隔で溝が形成されているもの、ワイヤーが密に巻回されているもの、あるいは表面が平滑であるものの何れでもよい。また、バー16は、不図示の回転駆動手段に連結されており、ウエブ12の走行方向と反対方向に、且つウエブ12の走行速度と略同じ速度で回転される。
【0030】
また、バー16は、ウエブ12の走行方向と同方向に回転させてもよく、更にはバー16の周速がウエブ12の走行速度と異なるように回転させてもよい。
【0031】
バー16は、支持部材20によって支持される。支持部材20の上部には、円弧状の溝が形成されており、この溝にバー16が回動自在に支持される。
【0032】
バー16に対してウエブ12の走行方向の上流側(すなわち、ウエブ12の進入側)に、第1ブロック22が支持部材20に対して所定の間隔で平行に設けられる。第1ブロック22と支持部材20との間にスリット24が形成される。第1ブロック22は走行方向の上流側に堰26を備えている。液溜り部30が支持部材20とバー16、及び堰26により構成される。
【0033】
スリット24には、塗布液の供給ライン(不図示)が接続される。供給ラインから供給された塗布液が、スリット24を介して液溜り部30に供給される。液溜り部30の塗布液が回転するバー16にピックアップされ、バー16にラップして連続走行するウエブ12に塗布される。なお、過剰に供給された塗布液は堰26をオーバーフローし、堰26の上流側の面26Aを流下して、回収部(不図示)により回収される。
【0034】
バー16に対してウエブ12の走行方向の下流側には、第2ブロック32が支持部材20に対して所定の間隔で平行に設けられる。第2ブロック32と支持部材20との間にはスリット34が形成される。スリット34には、塗布液の供給ライン(不図示)が接続される。供給ラインから供給された塗布液が、バー16の乾きによる塗布故障を防止するために、バー16の下流側に供給され、バー16表面との間に塗布液ビードが形成される。塗布液の一部は塗布残液として第2ブロック32をオーバーフローして、傾斜面32Aを流下する。
【0035】
しかしながら、このように構成された塗布装置は、上流側でウエブ12と塗布液との気液界面が乱れると、液溜り部30の塗布液の流動に乱れが生じ、液溜り部30での内圧力の変動が生じてしまう。特に、塗布速度の速い系では、液溜り部30の塗布液の流動が不安定になり、渦流の発生により塗布ムラが発生するという問題があった。これは、液溜まり内のウエブ近傍の位置では、塗布液はウエブの速度に引っ張られるような流速分布を持ち、ウエブから離れるに従い、塗布液の粘性により渦流の発生などが起きることによる。
【0036】
そこで、図1に示すように、液溜り部30に、ウエブ12に対して平行に整流板40を備えるようにした。なお、整流板40とウエブ12とのクリアランスLは0.5mm〜5.0mmの範囲になるようにした。このように、液溜まり内に渦発生を抑制する障害物を設置することで、液溜まり内の塗布液の流れを整流化することができ、一次側の気液界面が乱れるのを抑制することができるので、塗布ムラが発生するのを防止することができる。なお、整流板40とウエブ12とのクリアランスLは、好ましくは1.0mm〜3.0mmの範囲である。整流板40は、設置後の鉛直方向下側への自重撓みを相殺するように予め鉛直方向上側へ撓ませておくことが好ましい。
【0037】
ここで、整流板40のウエブ走行方向の長さLは、5.0mm以上であることが好ましい。整流板40のウエブ走行方向の長さLが5.0mm未満であると、液溜まり内の塗布液の流れを整流化することが不十分となり、一次側の気液界面が乱れるのを抑制する効果が低下する。なお、整流板40のウエブ走行方向の長さLの好ましい範囲は5.0mm以上30mm以下である。
【0038】
そして、整流板40のウエブ12に対向する対向面40aは、真直度がウエブ12の幅方向において0.5mm/1m以下であることが好ましい。整流板40の対向面40aの真直度を上述の範囲とすることでクリアランスL部分での塗布液の流れが乱れることを更に抑制できる。
【0039】
また、バー16と整流板40とのクリアランスLは、1.0mm以上であることが好ましい。クリアランスLが1.0mm未満であると、整流板40がバー16と接触しやすくなるが、それだけではなく、液溜まり内の塗布液の流れを整流化することが難しくなる。クリアランスLの好ましい範囲は、2.0mm以上20mm以下である。
【0040】
これらの条件を満たすことで、本発明は更に液溜まり内の流れを整流化することができ、一次側の気液界面が乱れるのを抑制することができるので、更に塗布ムラが発生するのを防止することができる。
【0041】
しかしながら、上記のバー塗布装置では、特に幅広のウエブ12に対応したものであると、液溜まり内の塗布液の流れを整流化することができず、一次側の気液界面が乱れてしまい、塗布ムラが発生することがあった。特に、塗布液の液粘度を1.2mP・s以下としたときにこの塗布ムラの発生が顕著化した。
【0042】
塗布液の流動が不安定になり渦流の発生により塗布ムラが発生する原因について鋭意研究したところ、整流板40が撓ることで塗布液の流動が不安定になってしまうと知見を得た。そこで、本願発明者は、整流板40が撓るのを抑制するために、図1〜3に示すように、整流板に支柱60を1以上備えるようにした。なお、図2は、本発明に係るバー塗布装置の一次側の液溜り部の概略を示す斜視図であり、図3は、本発明に係るバー塗布装置の一次側の液溜り部を上面からみた上面図である。
【0043】
しかし、単に整流板40を支柱で支えれば良い訳ではなく、支柱のウエブ幅方向の厚みL(図3参照)を3mm以下とすることで、塗布ムラが発生するのを防止することができるという知見を得た。なお、支柱の厚みLが3mmを超えてしまうと、塗布液の流動が支柱により大幅に乱れてしまい塗布ムラが発生してしまう。ここで、支柱の厚みLは、より好ましくは1mm以下である。
【0044】
本発明において、整流板は、ウエブ幅方向に設けられた液溜り部を形成するサイド堰50に固定されているか、又は、サイド堰50との隙間Lを1mm以下とすることが好ましい(図2及び図3参照)。
【0045】
整流板がサイド堰に固定されているか、又は、整流板とサイド堰との隙間Lを1mm以下とすることで、塗布端部の塗布液の流動を安定にすることができる。なお、この場合、整流板がサイド堰に固定されていて隙間Lが0mmであることがより好ましい。
【0046】
本発明では、支柱60を備えるピッチであって、整流板40のポリマーフィルム幅方向の長さは、300mm以下であることが好ましい。支柱を備えるピッチを300mm以下として、本発明に係る支柱で整流板を支えることで、塗布ムラが発生するのを防止することができる。
【0047】
次に、本発明に係るバー塗布装置10の適用例について説明する。図4は、本発明のバー塗布装置10を組み込んだ光学フィルム(以下、光学補償フィルムという。)の製造ライン80である。
【0048】
光学補償フィルムの製造ライン80は、図4に示されるように、送出機82から予め配向膜形成用のポリマー層が形成された透明支持体であるウエブ12が送り出される。
【0049】
次に、ウエブ12はガイドローラ84によってガイドされてラビング処理装置86に送りこまれる。そして、ウエブ12のポリマー層には、ラビングローラ88によりラビング処理が施される。ラビングローラ88の下流には除塵機90が設けられており、ウエブ12の表面に付着した塵を取り除く。
【0050】
除塵機90の下流には本発明に係る塗布ヘッド14が設けられている。塗布ヘッド14に対し、ウエブ12の走行方向の上流及び下流側に、ウエブ12をバーにラップさせるためのガイドローラ84が設けられている。また、塗布ヘッド14の上方向で、堰26の近傍にバックアップローラ18が設けられている。これにより、塗布ヘッド14の一次側での乱れが抑制され、二次側でのスジ等の塗布ムラが抑制される。塗布ヘッド14によりディスコネマティック液晶を含む塗布液がウエブ12に塗布される。塗布ヘッド14の下流には、乾燥ゾーン92、加熱ゾーン94が順次設けられており、ウエブ12上の塗布液が乾燥・加熱されて液晶層が形成される。更に、この下流には紫外線ランプ96が設けられており、紫外線照射により、液晶を架橋させ、所望のポリマーが形成される。これにより、光学補償フィルムが製造され、製造された光学補償フィルムは巻取機98に巻き取られる。
【0051】
このように、本発明に係るバー塗布装置10を、光学補償フィルムの液晶層の塗布(ディスコネマティック液晶を含む塗布液の塗布)に用いるので、縦スジ等のムラのない良好な面質のフィルムを製造できる。
【0052】
本発明に使用されるウエブ12としては、紙、プラスチックフィルム、レジンコーティッド紙、合成紙等が包含される。プラスチックフィルムの材質は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル重合体、6,6−ナイロン、6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ヘルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロースアセテート等が使用される。またレジンコーティッド紙に用いられる樹脂としては、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィンが代表的であるが、必ずしもこれに限定されない。ウエブの厚さも特に限定されないが、0.01mm〜1.0mm程度のものが取扱い、汎用性の見地から有利である。
【0053】
本発明に用いられる塗布液は特に限定はなく、高分子化合物の水又は有機溶媒液、顔料分散液、コロイド溶液等が適用できる。特に、薄層塗布を均一且つ高精度に行うことが求められる各種光学フィルムの塗布液、たとえば、液晶性ディスコティック塗布液等が好適である。また、塗布液の粘度が高い場合、塗布膜厚や塗布速度、塗布後の乾燥速度等にもよるが、ワイヤー目あるいは溝の目が消えずにバー筋故障となるため、0.5mPa・s以下が望ましい。
【0054】
以上、本発明に係るバー塗布装置及び塗布方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0055】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。本発明に係るバー塗布装置及び従来のバー塗布装置を組み込んだ図4の光学補償フィルムの製造ライン80において、塗布直後の縦スジ故障への影響を評価した。
【0056】
ウエブ12は、厚さ100μmのトリアセチルセルロース(フジタック、富士フイルム(株)製)の表面に長鎖アルキル変性ポバールの2重量%溶液をフィルム1m2当たり25mlになるように塗布後、60℃で1分間乾燥させて配向膜用樹脂層を形成したものを使用した。このウエブ12を、送出機82から送り出すと共に50m/分で搬送しながらラビング処理装置86によって配向膜用樹脂層表面にラビング処理を行って配向膜を形成した。ラビング処理におけるラビングローラ88の押し付け圧力を、配向膜樹脂層の1cm2あたり10kgf/cm2にすると共に、回転周速を5.0m/秒とした。
【0057】
そして、配向膜用樹脂層をラビング処理して得られた配向膜上に、図1に示す実施形態に係るバー塗布装置10を使用して塗布液を塗布した。塗布液は、下記に示すディスコティック化合物TE−8のR(1)とR(2)の重量比で4:1の混合物に対し、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V♯360、大阪有機科学(株)製)を10重量%、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)を0.6重量%、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を3重量%、増感剤(カヤキュアーDET−X、日本化薬(株)製)を1重量%、添加し、最終的にその混合物の32重量%メチルエチルケトン溶液とした。その液晶性化合物を含む液に、更にフッ素系界面活性剤(フルオロ脂肪族基含有共重合体、メガファックF780、大日本インキ(株)製)を0.3重量%添加し、塗布液として使用した。なお、塗布液の粘度は1.2mPa・sであった。ここで、塗布液の粘度の測定は、B型粘度計(BL型、東京計器(株)製)で25℃にて行った。
【0058】
【化1】

【0059】
そして、図5に示すバー塗布装置10において、支持部材20により、バー径8mm、線径80μmのワイヤーのバー16を支持し、ウエブ12を走行速度20〜56m/minで走行させながらバー16も同速で順回転させ、塗布ヘッド14から塗布液をウエブ1m2当たり5ml(湿潤膜厚5μm)になるように配向膜上に塗布した。
【0060】
なお、図5(a)に示すように、本実施例においては、整流板40がサイド堰50に固定されていない場合であり、整流板とサイド堰との隙間Lを0mmとして実験1〜18を行った(図6の(表1)参照のこと)。したがって、整流板40の両端には必ず支柱60を備えているので支柱数は2個以上となる。
【0061】
ここで、液溜り部30にウエブに対して平行に、液溜り部30の幅1500mmと同じ幅W2である整流板40を設けたもので、整流板40の両端の支柱の2個以外に支柱を設けたものと設けなかったものについて実験を行った。この際、支柱60の厚みLを変化させ実験を行った。
【0062】
更に、液溜り部30の幅300mm又は350mmと同じ幅W2である整流板40を設けたもので、整流板40の両端の支柱の2個以外に支柱を設けたものと設けなかったものについて実験を行った。そして、液溜り部30の幅300mmに対し、整流板40とサイド堰50との隙間Lを変化させたものについて実験を行った(図6の(表2)参照のこと)。
【0063】
(評価方法)
評価項目は、バーの塗布直後において下流側のウエブの塗布面に発生する塗布ムラを目視により評価した。
【0064】
評価レベルは、光学補償フィルムにおいて、目視評価において塗布ムラの発生がないレベルを◎、塗布ムラはあるが品質上問題がないレベルを○、塗布ムラの品質許容限度レベルを△、塗布ムラの品質許容限度レベル以下のレベルを×とした4段階評価を行った。
【0065】
実験結果を図6の表1,2に示す。なお、図6の表1に記載している真直度Sは、図5(b)に示したように、整流板40の撓み具合を計測したものである。
【0066】
表1から分かるように、本発明において、支柱の厚みLが3mm以下であることが好ましく、表2から分かるように、整流板とサイド堰との隙間Lを1mm以下とすることが好ましい。また、支柱を備えるピッチが300mm以下であり、また、ウエブの走行速度は55m/min以下であるときに本発明に係る支柱で整流板を支えることで、塗布ムラが発生するのを防止することができる。特にウエブの走行速度が遅いときには、支柱の厚みLの許容範囲は広がるが、実験11,12又は実験15,16から分かるように、走行速度が速いときには、厚みLaが3mm以下であることが必要である。
【符号の説明】
【0067】
10…バー塗布装置、12…ウエブ(ポリマーフィルム)、14…塗布ヘッド、16…バー、18…バックアップローラ、20…支持部材、22…第1ブロック、22a…第1ブロックの対向面、24…第1スリット、26…堰、26A…面、30…液溜り部、32…第2ブロック、32A…傾斜面、34…第1スリット、40…整流板、40a…整流板の対向面、50…サイド堰、60…支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーに接触して走行するポリマーフィルムの接触部直前に液溜り部を形成し、該液溜り部には、前記ポリマーフィルムに対して平行に整流板が備えられた、塗布液を前記ポリマーフィルムに塗布するバー塗布装置であって、
前記整流板には、該整流板が撓るのを抑制するために、前記ポリマーフィルムの幅方向の厚みが3mm以下の支柱を1以上備えることを特徴とするバー塗布装置。
【請求項2】
前記整流板は、前記液溜り部を形成し、ポリマーフィルムの幅方向に設けられたサイド堰に固定されているか、又は、該サイド堰との隙間を1mm以下とすることを特徴とする請求項1に記載のバー塗布装置。
【請求項3】
前記支柱を備えるピッチであって、前記整流板のポリマーフィルム幅方向の長さは、300mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバー塗布装置。
【請求項4】
前記整流板のポリマーフィルム走行方向の長さが5.0mm以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のバー塗布装置。
【請求項5】
前記整流板の前記ポリマーフィルムに対向する面は、真直度が前記ポリマーフィルムの幅方向において0.5mm/1m以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載のバー塗布装置。
【請求項6】
前記バーと前記整流板とのクリアランスが1.0mm以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載のバー塗布装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1に記載のバー塗布装置を使用して、走行するポリマーフィルムに塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項8】
請求項7に記載の塗布方法で塗布層が形成されたことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
ポリマーフィルムに形成された配向膜にラビング処理する工程と、
前記ラビング処理された配向膜上に請求項1〜6の何れか1に記載のバー塗布装置を使用して液晶ディスコティック化合物を含有する塗布液を塗布する工程と、
塗布された前記塗布液を乾燥することにより光学異方性層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−143721(P2012−143721A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4979(P2011−4979)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】