説明

バー塗布装置及びバー塗布方法

【課題】塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうのを防止することができるバー塗布装置及びバー塗布方法を提供する。
【解決手段】走行する帯状体40に接触し回転するバー11と、バー11に対して帯状体送り方向の上流側に設けられ、塗布液を帯状体及びバーに供給する液溜まりを形成する堰28と、を備えたバー塗布装置10に、堰28の帯状体の幅方向の外側に、帯状体の幅方向両端部に塗布された塗布液の量を減らす塗布液減量手段50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バー塗布装置及びバー塗布方法に係り、特に、液晶表示装置に好適な品質を有する光学フィルムを製造するための塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償フィルム等の光学性機能フィルムの製造における塗布では、塗布液を均一且つ薄層に塗布することが要求される。しかしながら、このような薄層塗布では、縦スジやストリーク故障を生じることが多く、従来から各種対策が検討されている。
【0003】
たとえば、塗布装置の一次側(ウエブ走行方向の上流側)液溜まりに不規則な渦が発生するのを抑制するため、液溜まりにおけるウエブの走行方向の長さを10mm以上50mm以下とすることが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、バー塗布装置では、バーに対して一次側(帯状体走行方向の上流側)に液溜部から塗布液をオーバーフローさせるため堰が設けられていが、特に、塗布速度の速い系では、堰からのオーバーフローする塗布液とウエブとで形成された気液界面に、同伴エアーの巻き込みやウエブのバタツキにより乱れが生じるおそれがある。一次側の乱れがバーの二次側でのメニスカスの乱れを生じさせ、これによりウエブの塗布面に望ましくないスジ等を発生させる問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献2では、同伴エアー持込防止手段を備えることで、気液界面の乱れに起因して発生するスジ等を解決することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−33702号公報
【特許文献2】特開2002−192050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1や特許文献2のバー塗布では、バーに対して一次側の液溜部から塗布液をオーバーフローさせフィルムに塗布液を塗布することで塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうのを防止することができるバー塗布装置及びバー塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のバー塗布装置は、走行する帯状体に接触し回転するバーと、前記バーに対して前記帯状体送り方向の上流側に設けられ、塗布液を前記帯状体及び前記バーに供給する液溜まりを形成する堰と、を備え、前記堰の帯状体の幅方向の外側に、前記帯状体の幅方向両端部に塗布された塗布液の量を減らす塗布液減量手段が備えられていることを特徴とする。
【0010】
この塗布液減量手段が備えられていることで、塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうのを防止することができる。
【0011】
本発明のバー塗布装置は、前記塗布液減量手段は、前記堰の帯状体の幅方向の外側に設けられ、該堰の高さと略同じ高さの凸部を形成する部材であることが好ましい。
【0012】
堰の高さと略同じ高さの凸部があることで、端部の塗布液の流れをさえぎることができ、端部の塗布液を減らすことができるので、塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうのを防止することができる。
【0013】
本発明のバー塗布装置は、前記部材(堰の高さと略同じ高さの凸部)の帯状体の幅方向の最外部は、帯状体の幅よりも内側にあることが好ましい。
【0014】
凸部が帯状体の外側に出ると、塗布液が帯状体の端部から飛び出し、帯状体の裏面(反塗布面)に塗布液が回り、帯状体の裏面を汚してしまうので、部材(堰の高さよりも0.1mm以上高い凸部)の帯状体の幅方向の最外部は、帯状体の幅よりも内側にあることが好ましい。
【0015】
本発明のバー塗布装置は、前記部材の幅は、0.1mm以上、前記堰の最外部から前記バー端部までの幅以下、であることが好ましい。
【0016】
塗布膜はバー端部において一番厚くなるので、凸部は、部材の帯状体の幅方向の最外部から0.1mm以上バー端部以下の幅として、帯状体の幅方向両端部に塗布された塗布液を掻き取るのが効果的である。
【0017】
本発明のバー塗布装置は、前記部材と前記帯状体とのクリアランス最狭部は0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0018】
部材と帯状体とのクリアランス最狭部は、0.5mm未満であると帯状体のばたつきでバー塗布装置と接触する可能性が高く、10mmより広いと塗布液の掻き取り効果が弱くなるからである。なお、部材と帯状体とのクリアランス最狭部は0.5mm以上5mm以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明のバー塗布装置は、前記部材の前記帯状体と対向する面と、前記部材の上流側の面と、が成す角度が、90°以下の鋭角であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る部材は、形状を問わず存在することで塗布液の剥離効果が出るが、上流側の形状が90°以下の鋭角だと塗布液の剥ぎ取り効果が高い。
【0021】
前記目的を達成するために、本発明のバー塗布方法は、走行する帯状体にバーで塗布液を塗布するバー塗布方法において、前記バーに対して前記帯状体送り方向の上流側に設けられた堰に溜められた塗布液を前記帯状体に塗布するステップと、前記堰の帯状体の幅方向の外側に設けられた塗布液減量手段で前記帯状体の幅方向両端部に塗布された塗布液の量を減らすステップと、前記バーで前記塗布された塗布液を所望の厚さに計量するステップと、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明のバー塗布方法は、前記塗布液減量手段は、前記堰の帯状体の幅方向の外側に設けられ、該堰の高さと略同じ高さの凸部を形成する部材であることが好ましい。
【0023】
本発明のバー塗布方法は、前記部材の帯状体の幅方向の最外部は、帯状体の幅よりも内側にあることが好ましい。
【0024】
本発明のバー塗布方法は、前記部材の幅は、0.1mm以上、前記堰の最外部から前記バー端部までの幅以下、であることが好ましい。
【0025】
本発明のバー塗布方法は、前記部材と前記帯状体とのクリアランス最狭部は0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0026】
本発明のバー塗布方法は、前記部材の前記帯状体と対向する面と、前記部材の上流側の面と、が成す角度が、90°以下の鋭角であること
なお、本発明のバー塗布方法は、塗布液が光学薄膜を形成する塗布液である場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、塗布液の塗布において、塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るバー塗布装置を示す概略図
【図2】図1のバー塗布装置を上から見た堰の近傍の拡大図
【図3】図1のバー塗布装置を横から見た概略図
【図4】本発明の他の実施形態に係るバー塗布装置を示す概略図
【図5】本実施形態のバー塗布装置を組み込んだ光学フィルムの製造ラインを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0030】
図1はバー塗布装置の一例を模式的に示す断面図である。バー塗布装置10は、走行方向に沿って連続走行するウエブ(帯状体)40に塗布液を塗布する装置である。
【0031】
図1に示すように本発明に係るバー塗布装置10は、バー11が設けられた塗布ヘッド12とオーバーフローした塗布液13を回収する液受け14,15とを備えている。バー11は、両端がベアリング(図示しない)で支持され、そのベアリングの間にある部分はバックアップ16で支持されている。また、液受け14,15には、オーバーフローした塗布液13を排出する排出口17,18がそれぞれ取り付けられている。
【0032】
バー11は、円柱状に形成されており、円周方向に一定間隔で溝が形成されているもの、ワイヤーが密に巻回されているもの、あるいは表面が平滑であるものの何れでもよい。バー11は、不図示の回転駆動手段に連結されており、ウエブ40の走行方向と反対方向に、且つウエブ40の走行速度と略同じ速度で回転される。また、バー11は、ウエブ40の走行方向と同方向に回転させてもよく、さらにはバー11の周速がウエブ40の走行速度と異なるように回転させてもよい。
【0033】
オーバーフローし回収された塗布液13は、塗布液や必要によっては溶媒を加えることにより粘度等が調整される。この塗布液は、再度塗布液13としてバー塗布装置10に供給される。塗布液13は、バー塗布装置10に設けられた1次側(上流側)マニホールド23と2次側(下流側)マニホールド24に供給される。
【0034】
1次側マニホールド23内に一定流量で供給された塗布液13は、狭隘なスロット25を介して液溜め26にウエブ40の幅方向に均一に押し出される。堰28が取り付けられることで、バー11と堰28との間に液溜め26に塗布液13が溜まることができる。本発明において、液溜め26のサイズは、ウエブ40の走行方向において、バー11がウエブ40に接触する位置と堰28との間隔L1(mm)が、10≦L1≦50であることが好ましい。10mmより短い場合には渦流を完全に消去することができず、50mmより長い場合には、ウエブ40と塗布液13の接触時間が長くなることによって、塗布液13中の溶媒によってウエブ40が膨潤して変形したり、ウエブ中の成分の塗布液中へ抽出したりするなどの弊害が生ずる。
【0035】
液溜め26内の塗布液13は、バー11によってウエブ40に塗布される。また、過剰な塗布液13は、ウエブ40と堰28の隙間であるオーバーフロー部30よりオーバーフローして流れ、液受け14を通って排出口17から排出される。また、本発明においては、ウエブ40と堰28の隙間L2(mm)は、0.2mm〜4.0mmであることが好ましい。0.2mmより狭い場合はウエブ40と堰28と接触し、ウエブが損傷してしまうからである。一方、4.0mmより広い場合は、必要とする液溜まりを均一に形成することが難しくなるからである。
【0036】
2次側マニホールド24には、回転しているバー11とバックアップ16との間に空気を巻き込まないように,狭隘なスロット29を介して塗布液13を供給する。塗布液13の一部は、オーバーフローして液受け15に流れ、排出口18を通り、再生される。なお、本発明において、塗布液13のマニホールド23,24への供給は、中央からの給液でも、サイドからの給液など公知のいずれの供給装置を用いることができる。
【0037】
次に、図1に示したバー塗布装置10の作用を説明する。従来のバー塗布装置は、回転するバーと接触しながら走行しているウエブの接触部の直前に液溜めが強制的に形成されるように塗布液を供給し、供給された塗布液の一部がバーとウエブとの隙間を通過して塗布していた。しかしながら、塗布速度を上げていくと液溜めでの液流動が活発になり渦流を生ずる。この渦流を解消する方法として本発明に係るバー塗布装置10のように、液溜め26を大きくすることによって、渦流を乱すことができる。しかし、これだけでは渦流を完全に解消することができない。そこで、完全に解消するために、堰28を乗り越えて塗布液13の一部をオーバーフローさせることによって渦流を解消できると共に、塗布スジの発生を抑えることができる。
【0038】
しかしながら、このようなバー塗布装置10において、バーに対して一次側の液溜まりから塗布液をオーバーフローさせフィルムに塗布液を塗布することで塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうという問題があった。
【0039】
そこで、本発明のバー塗布装置は、堰28のウエブ幅方向の外側に、ウエブ40の幅方向両端部に塗布された塗布液の量を減らす塗布液減量手段を備えるようにした。この塗布液減量手段が備えられていることで、塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうのを防止することができる。
【0040】
図2は、図1のバー塗布装置10を上から見た堰28の近傍の拡大図であり、図3は、図1のバー塗布装置10を横から見た概略図である。そして、図2及び3は、塗布液減量手段の一例として、堰28と略同じ高さの凸部を形成する部材50を示したものである。
【0041】
図2や図3に示したように、部材50は堰28のウエブ幅方向の外側に備えられる。そして、部材50は、堰28の高さ(堰上面28a)と略同じ高さの凸部となるように備えられる(図3(a)、(b)参照)。
【0042】
このような部材50をバー塗布装置10の堰28のウエブ幅方向の外側に備えることで、ウエブ端部の塗布液の流れをさえぎることができ、端部の塗布液を減らすことができるので、塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうのを防止することができる。
【0043】
図2の(a)〜(c)に示したように、部材50のウエブの幅方向の最外部51は、ウエブ40の幅(ウエブ端部)よりも内側にあることが好ましい。部材50の凸部がウエブ40の外側に出ると、塗布液がウエブの端部から飛び出し、ウエブの裏面(反塗布面)に塗布液が回り、ウエブの裏面を汚してしまう。よって、部材(堰の高さよりも0.1mm以上高い凸部)の帯状体の幅方向の最外部は、帯状体の幅よりも内側にあることが好ましい。
【0044】
本発明のバー塗布装置において、部材50の幅aは、0.1mm以上、堰の最外部51からバー端部11aまでの幅以下、となるようにすることが好ましい(図2(a)、(c)参照)。塗布膜はバー端部において一番厚くなるので、凸部は、部材の帯状体の幅方向の最外部から0.1mm以上バー端部以下の幅として、帯状体の幅方向両端部に塗布された塗布液を掻き取るのが効果的である。なお、図2(b)のようにバー端部11aより広くすると、バー端部11aよりも外側にも塗布液がウエブに付着する可能性がある。
【0045】
さらに、本発明のバー塗布装置は、部材50とウエブ40とのクリアランス最狭部L3が、0.5mm以上10mm以下であることが好ましい(図3参照)。部材と帯状体とのクリアランス最狭部が0.5mm未満であると、ウエブのばたつきでバー塗布装置と接触する可能性が高く、10mmより広いと塗布液の掻き取り効果が弱くなる。なお、部材と帯状体とのクリアランス最狭部L3は0.5mm以上5mm以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明のバー塗布装置において、図3(b)に示すように、部材のウエブと対向する面50aと、部材の上流側の面50bと、が成す角度θが、90°以下の鋭角であることが好ましい。本発明に係る部材50は、形状を問わず存在することで塗布液の剥離効果が出るが、上流側の形状が90°以下の鋭角だと塗布液の剥ぎ取り効果が高い。
【0047】
なお、本発明において、部材50は、図示したような四角い形状に限られず、堰の高さと略同じ高さの凸部を形成する部材であれば、例えば円形状であっても良い。部材50は、棒状でも角柱のようなものならエッジの部分で掻き落とすことができる。
【0048】
ただし、丸棒であると曲面で掻き落とすことになるので、掻き落とし効果は落ちるが、ウエブに引っかかることがないのでウエブの接合によるテープの引っかかりの影響を排除したときは有効である。ただし、部材50のウエブ搬送方向の長さは、本発明の効果についてはあまり関係がない。
【0049】
部材の材料としては、SUS、高密度ポリエチレン、テフロン(登録商標)が望ましい。また、ウエブに接触して塗布液を掻き落とす場合には、やわらかい材料を用いることが必要である。やわらかい材料として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、テトラフルオロエチレンなどが考えられる。
【0050】
また、ここで、本発明のバー塗布装置において、塗布液減量手段は、ウエブにエアーを吹き付けるエアーノズルであっても良いし、塗布液を吸引する吸引ノズルであっても良い。しかしながら、乾燥ムラに厳しい光学フィルムを製造する場合には、塗布液の塗布直後の下流側で気流の乱れを誘発することがあり乾燥ムラになりやすいので、エアーノズルや吸引ノズルよりも、ウエブに非接触な部材50により塗布液の掻き落としを行うことが好ましい。
【0051】
なお、本発明は、バーに対してウエブ送り方向の上流側に塗布液減量手段を設けることを特徴としている。上流側の液溜りで大量の塗布液がウエブに付着するので、なるべく上流側でしっかりとウエブ端部の厚塗りを解消することが必要である。よって、下流側にも塗布液減量手段を設け、さらに塗布液の掻き落としを行っても良い。
【0052】
下流側だけに塗布液減量手段を設けると、上流側で予めウエブ端部の液を減量しておく場合に比べて、掻き落とし部材との間隔を狭くする必要があり、ウエブとの接触でウエブを切断してしまう危険性がある。
【0053】
上記の通り、クリアランス最狭部L3が0.5mm以上10mm以下であることが好ましいので、部材50はウエブ40に接触させないのが基本である。部材をウエブに接触させるとベコができて振動が発生し、 塗布面に段状ムラができ易い。ウエブ端部は、カールや局所的な凹凸があったりするので、間隔が狭すぎると ウエブに接触する恐れがあるので過度に近づけないほうが好ましい。但し、ウエブと部材の最接近位置のウエブ背面にバックアップロールがある等、ウエブのベコを伸ばすことができるのならば、部材をウエブに接触させることも可能である。このときは、部材として、ウエブを傷つけず振動を起こさないようにするため、PET、テフロン(登録商標)等柔らかい材質を用いることが必要である。
【0054】
また、堰28(ウエブ幅方向の堰)の幅は、0.1mm以上30mm以下が好ましい。0.1mm未満では、堰の形状を維持することができず不安定であり、30mmより広いと堰の上面で塗布液が乾き塗布膜のスジが発生しやすくなる。なお、堰28(ウエブ幅方向の堰)の幅は、0.5mm以上15mm以下がより好ましい。0.5mm以上15mm以下では、堰に流れる塗布液の量を制御する効果が良く、堰の上面で塗布液の乾きも発生しないので安定して塗布液を塗布することができる。
【0055】
さらに、部材50の位置は、バー11に近いほうが好ましい。部材50がバー11から離れていると、掻き落とし後に再度液溜め26の塗布液がウエブ端部に回り込み付着してしまうからである。具体的には、堰28(ウエブ搬送方向)の長さの2分の1以内に近づけることが好ましい。また、部材50の位置は、バー11に近いほうが好ましいが、部材がバーを傷つける可能性があるので2mm以上離して設置することが好ましい。但し、部材がバーを傷つけない材料であれば、バーと接触させても良い。
【0056】
なお、本発明のバー塗布装置は、図4に示すような過剰に供給された塗布液が堰63をオーバーフローせず、排液路66から排出されるように構成されたバー塗布装置にも適応させることができる。
【0057】
図4のバー塗布装置10’は堰63と第1ブロック61で構成される排液路66を備える。排液路26が、液溜部30に過剰に供給された塗布液を外部に排出する。排出された塗布液は、回収部(不図示)により回収される。
【0058】
バー11に対してウエブ40の走行方向の下流側には、第2ブロック62が支持部材60に対して所定の間隔で平行に設けられる。第2ブロック62と支持部材60によりスリット64が形成される。スリット64には、塗布液の供給ライン(不図示)が接続される。供給ラインから供給された塗布液が、バー11の乾きによる塗布故障を防止するために、バー11の下流側に供給される。これにより、バー11表面との間に塗布液ビードが形成される。塗布液の一部は塗布残液として第2ブロック62をオーバーフローして、傾斜面を流下する。
【0059】
次に、本発明に係るバー塗布装置10(10’)の適用例について説明する。図5は、本発明のバー塗布装置10(10’)を組み込んだ光学補償フィルムの製造ライン80である。
【0060】
光学補償フィルムの製造ライン80は、図5に示されるように、送出機82から予め配向膜形成用のポリマー層が形成された透明支持体であるウエブ40が送り出される。
【0061】
次に、ウエブ40はガイドローラ84によってガイドされてラビング処理装置86に送りこまれる。そして、ウエブ40のポリマー層には、ラビングローラ88によりラビング処理が施される。ラビングローラ88の下流には除塵機90が設けられており、ウエブ40の表面に付着した塵を取り除く。
【0062】
除塵機90の下流には本発明に係るバー塗布装置10(10’)が設けられている。バー塗布装置10に対し、ウエブ40の走行方向の上流及び下流側に、ウエブ40をバーにラップさせるためのガイドローラ84が設けられている。塗布ヘッド12によりディスコネマティック液晶を含む塗布液がウエブ40に塗布される。バー塗布装置10(10’)の下流には、乾燥ゾーン92、加熱ゾーン94が順次設けられており、ウエブ40上の塗布液が乾燥・加熱されて液晶層が形成される。更に、この下流には紫外線ランプ96が設けられており、紫外線照射により、液晶を架橋させ、所望のポリマーが形成される。これにより、光学補償フィルムが製造され、製造された光学補償フィルムは巻取機98に巻き取られる。
【0063】
このように、本発明に係るバー塗布装置10(10’)を、光学補償フィルムの液晶層の塗布(ディスコネマティック液晶を含む塗布液の塗布)に用いるので、縦スジ等のムラのない良好な面質のフィルムを製造できる。そして、塗布膜の端部が厚塗りとなってしまうのを防止することができる。
【0064】
本発明に使用されるウエブ40としては、紙、プラスチックフィルム、レジンコーティッド紙、合成紙等が包含される。プラスチックフィルムの材質は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル重合体、6,6−ナイロン、6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ヘルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロースアセテート等が使用される。またレジンコーティッド紙に用いられる樹脂としては、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィンが代表的であるが、必ずしもこれに限定されない。ウエブの厚さも特に限定されないが、0.01mm〜1.0mm程度のものが取扱い、汎用性の見地から有利である。
【0065】
本発明に用いられる塗布液は特に限定は無く、ウエブ上に塗布膜を形成するためのものであれば、公知のいずれの塗布液を用いることができる。本発明に用いられる塗布液は特に限定は無く、高分子化合物の水又は有機溶媒液、顔料分散液、コロイド溶液等が適用できる。特に、薄層塗布を均一且つ高精度に行うことが求められる各種光学フィルムの塗布液、例えば、液晶性ディスコティック塗布液等が好適である。この液晶から形成された層は、配向膜上に形成される。本発明の液晶層は、液晶性ディスコティック(円盤状)化合物を配向後冷却固化させる、あるいは重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られる負の複屈折を有する層である。
【0066】
前述したディスコティック化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.、71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.、122巻、141頁(1985年)、Physicslett.、A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.、Commun.、1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.、116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。
【0067】
ディスコティック化合物は、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子化合物になるのもであっても良い。
【0068】
以上、本発明に係るバー塗布装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【符号の説明】
【0069】
10、10’・・・バー塗布装置、11・・・バー、12・・・塗布ヘッド、13・・・塗布液、14,15・・・液受け、17,18・・・排出口、23・・・1次側マニホールド、24・・・2次側マニホールド、25・・・スロット、26・・・液溜め(液溜まり)、28・・・堰、29・・・スロット、30・・・オーバーフロー部、31・・・バックアップロール、40・・・ウエブ(帯状体)、50・・・部材(塗布液減量手段)、80・・・光学補償フィルムの製造ライン、L1・・・液溜め(液溜まり)長さ、L2・・・隙間、L3・・・クリアランス最狭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する帯状体に接触し回転するバーと、
前記バーに対して前記帯状体送り方向の上流側に設けられ、塗布液を前記帯状体及び前記バーに供給する液溜まりを形成する堰と、を備え、
前記堰の帯状体の幅方向の外側に、前記帯状体の幅方向両端部に塗布された塗布液の量を減らす塗布液減量手段が備えられていることを特徴とするバー塗布装置。
【請求項2】
前記塗布液減量手段は、前記堰の帯状体の幅方向の外側に設けられ、該堰の高さと略同じ高さの凸部を形成する部材であることを特徴とする請求項1に記載のバー塗布装置。
【請求項3】
前記部材の帯状体の幅方向の最外部は、帯状体の幅よりも内側にあることを特徴とする請求項2に記載のバー塗布装置。
【請求項4】
前記部材の幅は、0.1mm以上、前記堰の最外部から前記バー端部までの幅以下、であることを特徴とする請求項2又は3に記載のバー塗布装置。
【請求項5】
前記部材と前記帯状体とのクリアランス最狭部は0.5mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項2〜4の何れか1に記載のバー塗布装置。
【請求項6】
前記部材の前記帯状体と対向する面と、前記部材の上流側の面と、が成す角度が、90°以下の鋭角であることを特徴とする請求項2〜5の何れか1に記載のバー塗布装置。
【請求項7】
走行する帯状体にバーで塗布液を塗布するバー塗布方法において、
前記バーに対して前記帯状体送り方向の上流側に設けられた堰に溜められた塗布液を前記帯状体に塗布するステップと、
前記堰の帯状体の幅方向の外側に設けられた塗布液減量手段で前記帯状体の幅方向両端部に塗布された塗布液の量を減らすステップと、
前記バーで前記塗布された塗布液を所望の厚さに計量するステップと、を備えることを特徴とするバー塗布方法。
【請求項8】
前記塗布液減量手段は、前記堰の帯状体の幅方向の外側に設けられ、該堰の高さと略同じ高さの凸部を形成する部材であることを特徴とする請求項7に記載のバー塗布方法。
【請求項9】
前記部材の帯状体の幅方向の最外部は、帯状体の幅よりも内側にあることを特徴とする請求項8に記載のバー塗布方法。
【請求項10】
前記部材の幅は、0.1mm以上、前記堰の最外部から前記バー端部までの幅以下、であることを特徴とする請求項8又は9に記載のバー塗布方法。
【請求項11】
前記部材と前記帯状体とのクリアランス最狭部は0.5mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項8〜10の何れか1に記載のバー塗布方法。
【請求項12】
前記部材の前記帯状体と対向する面と、前記部材の上流側の面と、が成す角度が、90°以下の鋭角であることを特徴とする請求項8〜11の何れか1に記載のバー塗布方法。
【請求項13】
前記塗布液は光学薄膜を形成する塗布液であることを特徴とする請求項7〜12の何れか1に記載のバー塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−5412(P2011−5412A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150892(P2009−150892)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】