説明

パイプを接続するためのねじ要素及び装置

【課題】
ねじ要素の望まれない緩み、又は、分離を、単純に、効果的に、かつ、機能的に、確実な方法で避けることである。
【解決手段】
ねじ山が備えられ、かつ、少なくとも1つのねじ山のない接触表面が存在する、ねじ要素、特に、パイプを接続する、好ましくは、自動車上に用いられるパイプを接続するためのねじ要素が開示されている。ねじ山の少なくともある部分に、第1の摩擦係数μ1である第1のコーティングが提供されている。接触表面の少なくともある部分に、第2の摩擦係数μ2である第2のコーティングが提供されている。摩擦係数μ1は、第2の摩擦係数μ2より、大きい、特に、かなり大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ要素、特に、パイプ、好ましくは、自動車上に用いられるパイプを接続、又は、結合するためのねじ要素に関し、このパイプは、ねじ止めされた及び少なくとも1つのねじ山のない接触表面が備えている。本発明は、パイプを接続するための装置、特に、自動車上に用いられたパイプに関し、このパイプは、このようなねじ要素を備えている。
【背景技術】
【0002】
パイプを接続するための上記のタイプの様々な種類のねじ要素及び装置が、実際の実務から知られている。特に、ねじ要素は、ねじ込み継ぎ手の形で構成され、パイプ、特に、自動車に用いられたパイプが、ねじ要素とコネクタに接続されていることが知られている。これらの知られたねじ込み継ぎ手は、全ての接続金具を覆うコーティング、特に、さび止めのコーティングとともに通常用いられている。コーティングは、例えば、ディッピング、又は、吹きつけ技術を用いることで供給される。これらの知られたねじ込み継ぎ手を供えたねじ継ぎ手の場合、望まれないねじ継ぎ手の緩みや脱離が起き、特に、パイプを備えたねじ込み継ぎ手の場合に、それが問題となる。そのようなねじ継ぎ手がねじ止めされた場合、パイプもねじられ、その結果、ねじり応力が生成される。パイプ上のこれらのねじり応力は、望まれないねじ継ぎ手の緩みや脱離を引き起こす復元トルクを発生する。特に、ねじ継ぎ手の望まれない緩みや脱離は、例えば、自動車内/自動車上で起きるような振動によっても起きる。
【0003】
少なくとも大部分をねじ止めした後にねじ込み継ぎ手を固定する接着コーティングをねじ付近に備えたねじ止め要素、又は、ねじ込み継ぎ手は、それらを緩めたり、又は、分離するのを防いでいるが、これらは公知である。しかし、このような接着コーティングは、ねじ継ぎ手が後で故意に緩めたり、又は、分離したりする必要がある場合はいつでも、通常逆効果を招くことがわかるだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0997677号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1624183号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述のタイプのねじ止め要素で特化した工学的な課題を基礎としている。それらのねじ要素では、結合されたねじ継ぎ手の望まれない緩み、又は、分離を、単純に、効果的に、かつ、機能的に、確実な方法で避けることが可能である。本発明は、パイプ接続のための対応する装置で特化した工学的な課題を基礎としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
工学的な課題を解決するために、本発明は、ねじ山が備えられ、少なくとも1つのねじ山のない接触表面が存在し、少なくともいくつかのねじ山の部分に、第1の摩擦係数μ1を持った第1のコーティングが備えられ、少なくともいくつかの接触表面の部分が第2の摩擦係数μ2を持った第2のコーティングを備え、かつ、第1の摩擦係数μ1は、第2の摩擦係数μ2より、大きい、特に、かなり大きい、ねじ要素、特に、パイプ、好ましくは、自動車上に用いられるパイプを接続、又は、結合するためのねじ要素を採用することをアドバイスしている。
【0007】
本発明は、ねじ山上の第1のコーティングが、そのねじ山近傍のねじ要素の外側表面を形成する、又は、ねじ山上の最も外部のコーティングである場合に及んでいる。本発明は、少なくとも1つの接触表面上の第2のコーティングが、その接触表面の近傍のねじ要素の外側表面を形成し、又は、その接触表面の最も外側の表面である場合にも及んでいる。全ての、又は、本質的にすべてのねじ山に第1のコーティングが提供された場合に効果的であろう。全ての、又は、本質的に全ての接触表面には、好ましくは、第2のコーティングが提供されている。さらに、本発明は、第1のコーティングが接着コーティング以外である場合に及んでいる。
【0008】
本発明に併せて、特に重要なことが得られる、さらに好ましい実施例によると、ねじ要素は、外部ねじ山を備えたねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手であることである。その場合、少なくともある部分、かつ、好ましくは全ての、又は、本質的に全ての、ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手上の外部ねじ山には、第1のコーティングが提供される。推奨する実施例によると、ねじ要素は、パイプが接続したねじ込み継ぎ手である。好ましい実施例によると、そのパイプは、軸方向に沿って、ねじ込み継ぎ手を通過し、かつ、パイプの端部が重なり、かつ、ねじ込み継ぎ手の端部の終端となっている。その場合、パイプの端部は、口広げ加工(フレア)されていることが推奨される。実施例は、ねじ込み継ぎ手や他のものも含み、関連する実施例は、以下により詳細に記述する。
【0009】
ねじ要素上に少なくとも1つのねじ山のない接触表面、又は、複数のねじ山のない接触表面が軸に直角に、又は、横方向に、又は、本質的に直角に、又は、本質的に横方向に配置されていることが推奨され、この軸に沿って、ねじ止めされているか、一方で、軸上にねじ止めされている。推奨される実施例によれば、ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手の端部は、ねじ山のない接触表面(4、5)を備え、この接触表面(4、5)のある部分は、第2の摩擦係数μ2を持った第2のコーティングでコーティングされている。ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手の端部上のねじ山のない接触表面の全てに、第2のコーティングが供給される、又は、被覆させることが効果的である。
【0010】
本発明は、ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手は、頭部と、その頭部の裏面、すなわち、ねじ山を持たない接触表面を持ったねじ山の直面する面を備え、この頭部の裏面の少なくともある部分は、第2の摩擦係数μ2を持った第2のコーティングでコーティングされている場合にも及んでいる。全ての、又は、本質的に全てのねじ山のない接触表面は、第2のコーティングで被覆されていることが効果的である。
【0011】
本発明の実施例によると、ねじ要素は、内部ねじ山を備えたナットである。この場合、少なくともある部分の、かつ、好ましくは全ての、又は、本質的に全ての、その内部ねじ山は、第1のコーティングで被覆されている。ナットは、ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手でも対応でき、それが、本発明に応じて、ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手でも対応できることが推奨される。ナットは、2つのパイプを結合させるための内部ねじ山を備えたフェルールか、後者に接続されたパイプを接続するための内部ねじ山を備えた相互に連結したブロックでのブラインドホール(止まり穴)のいずれかであってもよい。本発明は、フェルール上の接触フランジが、ねじ山のない接触表面を備えた場合に及び、その場合、少なくともある部分、好ましくは全ての、又は、本質的に全てのその接触表面が第2のコーティングで覆われている。本発明の実施例によると、ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手とナットの両方は、ねじボルトにはめ込まれていて、本発明により被覆されている。
【0012】
第1の摩擦係数μ1は、第2の摩擦係数μ2の、少なくとも2倍、好ましくは3倍、特に好ましくは4倍であることが有益である。ある実施例によると第1の摩擦係数μ1は、少なくとも、第2の摩擦係数μ2の5倍である。
【0013】
本発明によるねじ要素の実施例のバリエーションとしては、第1の摩擦係数を備えた第1のコーティングが、ねじ山と、少なくとも1つのねじ山のない接触表面との両方で適用されること、及び、第2の摩擦係数μ2を備えた第2のコーティングが、少なくとも1つのねじ山のなく、第1のコーティングに覆われた接触表面に適用されることを特徴としている。全てのねじ要素、又は、少なくともそのねじ山及びねじ山のない接触表面に、本来、第1のコーティングを提供し、かつ、その場合、第2のコーティングがねじ山のない接触表面の外側表面を形成するために、第2のコーティングが、ねじ山のない接触表面、又は、複数のねじ山のない接触表面の近傍に適用されている。その実施例の場合、第1のコーティングは、好ましくは、ディッピング技術を使用して適用される。第2のコーティングは、スプレー技術と共に適用される。
【0014】
本発明の他の実施例は、第1の摩擦係数μ1を備えた第1のコーティングが、もっぱら、ねじ山の少なくともある部分に適用され、かつ、第2の摩擦係数μ2を備えた第2のコーティングが、もっぱら、少なくとも1つのねじ山のない接触表面に適用されている。その実施例の場合、第1のコーティングは、もっぱら、そのねじ山に適用され、少なくとも1つのねじ山のない接触表面には適用されていなく、かつ、第2のコーティングは、干渉する第1のコーティングを挿入することなしに、少なくとも1つのねじ山のない接触表面に適用されている。その実施例の場合、第1と第2のコーティングの両方は、例えば、スプレー技術と併せて適用される。
【0015】
推奨する実施例によると、第1のコーティングは、少なくとも1つの、その摩擦係数を増加させる潤滑油を備え、又は、含んで、アルミニウムを含有しているさび止めコーティングである。第2のコーティングは、好ましくは、少なくとも1つの、その摩擦係数を減少させる潤滑油を備え、その潤滑油は、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び/又は、ジスルフィドモリブデン(MoS2)である。
【0016】
第1のコーティングの第1の摩擦係数μ1は、0.15−0.5の範囲内、好ましくは、0.2−0.45の範囲内、さらに好ましくは0.25−0.45の範囲内であることが推奨される。第1の摩擦係数μ1は、0.3−0.4の範囲内にあり、例えば、0.35であることが証明されて有益である。第2のコーティング(8)の第2の摩擦係数μ2は、0.02−0.2の範囲内、好ましくは0.02−0.15の範囲内、さらに好ましくは0.03−0.1の範囲内であることが推奨される。第2のコーティングの摩擦係数μ2は、0.03−0.08の範囲内にあり、例えば、0.05であることが証明され有益である。
【0017】
第1のコーティング(7)の膜厚は、2μm−25μmの範囲内、好ましくは、3μm−20μmの範囲内であることが有益である。第2のコーティング(8)の膜厚は、5μm−25μmの範囲内、好ましくは、5μm−20μmの範囲内であることが推奨される。
【0018】
本発明は、 ねじ要素、特に、パイプ、好ましくは、自動車上に用いられるパイプを接続するための装置に及んでおり、パイプを接続するための装置は、本発明によるねじ要素を備え、かつ、パイプは、そのねじ要素に付属している。その付属したパイプを備え、それに沿ってあるねじ要素は、パイプ上に、又は、パイプに、ねじ要素をねじ止めすることによって、コネクタに接続されている。好ましい実施例によると、上記ねじ要素は、パイプが付属するねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手である。コネクタは、第2のパイプが付属するフェルールであってもよい。それから、ねじ継ぎ手は、ペアのパイプ、特に、自動車に用いられるパイプを接続する。上述したように、コネクタは、相互接続しているブロックのブラインドホールであってもよく、このブラインドホールに、付属したパイプに沿ってある、ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手がねじ止めされている。
【0019】
本発明の特に好ましい実施例は、ねじ要素は、軸結合を備えたねじ込み継ぎ手(1)を有し、パイプは、このねじ込み継ぎ手貫通し、パイプの端部は、フレアとを備え、かつ、第2のコーティングが備えられるねじ込み継ぎ手の端部は、フレアの底面に隣接していることを特徴としている。本発明は、パイプの端部上のフレアの底面に、第2のコーティングを供給することをにも及んでいる。さらに、本発明は、ねじ込み継ぎ手に第1のコーティングを供給することに及んでいる。ねじ込み継ぎ手の端部の少なくともいくつかは、フレアの底面と対になっていることが有益である。本発明の実施例によると、パイプの端部上のフレアは、パイプ長手方向軸に、直交、又は、本質的に直交しているFフレアであり、かつ、フレアの底面と正確に対になっているねじ込み継ぎ手の端部の少なくとも1つの部分がパイプの長手方向軸に、直交、又は、本質的に直交している。それが、ねじ込み継ぎ手の外周の周りに伸びていることが有益である。本発明の他の実施例によると、パイプ端部のフレアは、底面が円錐形、又は、本質的に円錐形であるEフレアであり、かつ、ねじ込み継ぎ手の表面は、少なくとも1つの円錐形、又は、本質的に円錐形で、フレアの底面に隣接して、かつ、正確にそのフレアの底面と対をなしている部分を備えている。その表面の部分は、ねじ込み継ぎ手の外周の周りに伸びているいることが有益である。パイプの端部のフレアは、一般に、異なった形をしている。どんな場合でも、ねじ込み継ぎ手の少なくともある部分は、パイプの端部でフレアの底面に隣接しており、かつ、正確にそのフレアの底面と対をなしていることが好ましく、かつ、ねじ込み継ぎ手の端部が、ねじ込み継ぎ手の外周の全体に、フレアの底面と隣接し、かつ、正確に対をなしていることが推奨される。
【0020】
本発明の他の推奨される実施例によると、ねじ要素は、軸結合を備えたナットであり、パイプはこのナットをパイプ端部がフレア(口広げ加工)されている場所に貫通している。このナットには、第2のコーティングが供給され、かつ、内部の接触フランジを備え、かつ、パイプのフレアの底面は、接触フランジに隣接している。この接触フランジは、好ましくは、パイプのフレアの底面の少なくともある部分と隣接しており、かつ、好ましくは、フレアの外周の全体で、パイプのフレアの底面の少なくともある部分と隣接している。その実施例のバリエーションによると、フレアは、底面がパイプの長手方向軸と直交、又は、本質的に直交しているFフレアであり、かつ、ナット上のフランジは、そのフランジの表面上で、パイプの長手方向軸と直交、又は、本質的に直交しており、かつ、フレアの底面と隣接し、かつ、そのフレアと対をなしている少なくとも1つの部分を備えている。実施例の他のバリエーションによると、フレアは、底面が円錐形、又は、本質的に円錐形であるEフレアであり、かつ、ナットの接触フランジの表面は、フレアの底面に隣接し、かつ、正確に対をなしている少なくとも1つの円錐形、又は、本質的に円錐形である部分を備えている。本発明は、ナットがコネクタを受け入れるために内部のねじ山を備え、かつ、その内部のねじ山に第1のコーティングを提供する場合にも及んでいる。
【0021】
本発明による好ましい実施例によると、ねじ要素は、ねじ込み継ぎ手であり、かつ、その端部は、パイプ端部上のフレアの底面に隣接しており、一方、パイプを接続するための装置は、完全に組み立てられた状態であること上記で述べた。ねじ込み継ぎ手がきつく締められる場合、フレアの底面上に軸方向の圧縮力Faxが生じ、かつ、トルクMがフレアの底面上に伝達され、かつ、パイプに対しても同様に生じる。そのトルクは測定可能である。ねじ込み継ぎ手上の第2のコーティングの目的は、その伝達されるトルクを最小化することである。本発明は、第2のコーティングがねじ込み継ぎ手の端部に存在するとき、0.2N-mから2.5N-mの範囲、好ましくは0.2から2.2N-mの範囲、特に好ましくは0.2から1.5N-mの範囲のトルクが、Fax=11kNの軸方向の力のために伝達する場合にも及んでいる。ねじ込み継ぎ手の端部に第2のコーティングがなければ、3N-mを超える、又は、3N-Mをかなり超過するトルクが、Fax=11kNの軸方向の力のために伝達するだろう。伝達するトルクは、ねじ込み継ぎ手とフレアが相互に接触する表面の面積に応じて増加することは明白である。上記で述べた意義は、本発明、特に、ねじ山の直径が8mm−16mm、好ましくは10mm−14mmの範囲のねじ込み継ぎ手の場合に、特に、金属のねじ込み継ぎ手、及び、金属のフレアに適用可能である。対のフレアの直径は、対応するねじ山の直径に、ほとんど等しい。
【0022】
本発明は、2つの実施例に基づいて、以下に、より詳しく記述される。
【0023】
第1の実施例によると、ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手の全ての表面、又は、本質的に全ての表面には、第1のコーティングが初めに供給されており、そのコーティングは、さび止めコーティングであり、かつ、アルミニウムを含んでいることが推奨される。第1のコーティングは、その摩擦係数に影響する少なくとも1つの潤滑油も含まれている。第1のコーティングは、10μm−20μm、例えば、15μmの範囲内の薄膜厚さで適用されることが推奨される。第1のコーティングの摩擦係数μ1は、優先的には、0.25−0.45の範囲内に、好ましくは、0.3−0.4の範囲内、例えば、0.35に等しい。第2の摩擦係数μ2である第2のコーティングは、続いて、ねじ山のない接触表面の近隣、つまり、ねじ山のないボルト、又は、ねじ込み継ぎ手の端部に、かつ、ねじ山のないボルト、又は、ねじ込み継ぎ手のヘッドの底面、すなわち、そのねじ山に面するヘッドの側にもっぱら適用される。第2のコーティングは、それゆえ、ねじ山のない接触表面の近隣で、第1のコーティングを覆っている。本発明は、第2のコーティングが、その摩擦係数を減少させる少なくとも1つの潤滑油を備えている場合にも及んでいる。その潤滑油は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び/又は、ジスルフィドモリブデン(MoS2)であるのであれば有益である。第2のコーティングは、ポリテトラフルオロエチレン、及び、ジスルフィドモリブデンの両方を含んでいることが推奨される。第2のコーティングは、優先的には、5μm−15μmの範囲内、例えば、10μmに等しい薄膜厚さで適用される。第2のコーティングの摩擦係数μ2は、有益には、0.02−0.08の範囲内に、好ましくは、0.03−0.07の範囲内、例えば、0.05に等しい。
【0024】
第2の実施例と併せて、最初に、さび止めコーティングがねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手に適用されている。さび止めコーティングがねじ込み継ぎ手の全表面に適用され、かつ、好ましくは、電解でそれに適用される。当該さび止めコーティングは、亜鉛ニッケルコーティングであることが推奨される。さび止めコーティングの薄膜厚さは、優先的には4μm−12μm、好ましくは6μm−10μm、例えば、8μmの範囲内で適用されることが推奨される。本発明は、摩擦係数に影響する少なくとも1つの潤滑油を備える、又は、含む第1のコーティングに及んでいる。より小さい第2の摩擦係数μ2である第2のコーティングは、ねじ山のない接触表面、つまり、ねじ込む継ぎ手の端部、及び、ねじ込み継ぎ手のヘッドの底面に適用される。第2のコーティングは、その摩擦係数を低減するために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び/又は、ジスルフィドモリブデン(MoS2)を含んでいる。第2のコーティングの薄膜厚さは、有益には10μm−20μm、例えば、15μmに等しい。第2の実施例の場合、前述の第2のコーティングが、選択的に第一に適用され、かつ、前述の第1のコーティングは、選択的にその後に適用される。
【0025】
本発明は、本発明による提言による、又は、本発明に応じたねじ要素のコーティングによる認識を基本としていて、関連するねじ継ぎ手を、意図的でなく緩めること、又は、分離させることを、例えば効果的で、かつ、機能的に安全な方法で防止することが可能である。本発明に従った様々なコーティングの応用のおかげで、本発明の取り扱うエンジニアの問題を、驚くべき効果的な方法で解決することが可能である。本発明は、このように、より高い摩擦係数を持った、ねじ山付近に適用されるコーティングは、効果的に、ねじ継ぎ手を意図的でなく緩めることをより少なくさせている。しかしながら、より低い摩擦係数を持ち、接触表面の付近に適用されるコーティングは、接続される要素、又は、パイプの端部に伝達されるねじれ応力を減少させ、又は、伝達することを妨げている。これは、前述の復元トルクを減少させ、又は、すべて排除させさえもしている。ねじ要素の様々な部分に選択的に適用されるコーティングの応用を、簡単かつ正確な方法で達成し、本発明の目的を容易に実現するという意味も含んでいる。本発明によるねじ要素は、パイプ、特に、自動車に用いられるパイプを接続するのに適しており、ここで自動車に持ち入れれるパイプとは、主に、燃料経路、又は、ブレーキラインを意味している。
【0026】
本発明は、1つの実施例を描写する図に基づいて、以下に、より詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ねじ込み継ぎ手の形で構成された、本発明によるねじ止め要素の外観を示したものである。
【図2】図1で示された要素の他の実施例を示したものである。
【図3】パイプを接続するための装置の第1の実施例を示したものである。
【図4】図3で示した装置の第2の実施例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、ねじ込み継ぎ手1の形で、本発明によるねじ止め要素を描いたものであり、このねじ止め要素は、好ましくは、示された実施例のように備えられ、パイプ2を接続するための目的のために備えられている。このパイプ2は、自動車に用いられたパイプである。ねじ込み継ぎ手1は、ねじ山3と、ねじ山のない接触表面4、5を備えている。1つのねじ山のない接触表面4は、ねじ込み継ぎ手1の端部に配置されており、かつ、他のねじ山のない接触表面5は、その頭部6の裏面、つまりそのねじ山に直面する側に配置されている。ねじ山3、又は、外部ねじ山は、好ましくは、すべて示された実施例の形によって覆われており、より大きい第1の摩擦係数μ1を持った第1のコーティング7によって、すべてを覆われている。表面4,5に接した一対のねじ山のないすべての表面は、選択的に示された実施例の場合に備えられ、より小さい摩擦係数μ2を持った第2のコーティング8を備えている。好ましい実施例により、及び、示された実施例では、第1の摩擦係数μ1は、第2の摩擦係数の少なくとも5倍、好ましくは少なくとも6倍である。
【0029】
図1は、本発明によるねじ込み継ぎ手1の第1の実施例を示している。この場合、最初に、第1の摩擦係数μ1を持った第1のコーティング7は、ねじ込み継ぎ手1の全ての表面に適用される。第1のコーティングは、最初のステップでは、ねじ山のない接触表面4,5にも適用される。特に、第1のコーティング7は、ディッピング技術と併せて適用されてもよい。第1のコーティングがアルミニウムを含んだサビ止めコーティングであれば有効であり、それに、第1のコーティングの摩擦係数に影響する少なくとも1つの潤滑剤が加えられ、かつ、示された実施例の場合、第1のコーティングはそのようなコーティングである。第1のコーティングの摩擦係数μ1は、好ましくはある範囲にあり、かつ、示された実施例の場合には、範囲0.33−0.37の範囲内にあり、例えば、0.35に等しい。この実施例の場合では、第2のステップでは、より小さい第2の摩擦係数μ2を持った第2のコーティングは、ねじ山のない接触表面4,5にのみ適用される。第2のコーティングは、例えば、スプレー技術と併せて適用されてもよい。第2のコーティング8の摩擦係数は好ましくはある範囲にあり、かつ、この実施例では、0.03−0.07の範囲内にあり、例えば、0.05に等しい。
【0030】
図2で示された実施例の場合、サビ止めコーティング9はねじ込み継ぎ手1の全ての表面に適用される。サビ止めコーティングが好ましくは必要とされ、かつ、示された実施例の場合では、サビ止めコーティングは、亜鉛ニッケルサビ止めコーティングである。そのサビ止めコーティングは、好ましくは、かつ、示された実施例では、電解で適用された亜鉛ニッケルサビ止めコーティングである。第2のステップでは、より大きい摩擦係数μ1を持った第1のコーティング7は、ねじ山3付近のサビ止めコーティングに適用される。それから、第1のコーティング7は、ねじ山3付近のねじ込み継ぎ手1の外部表面を形成する。第3のステップでは、より小さい摩擦係数μ2を持った第2のコーティングは、ねじ山のない接触表面4,5付近で、サビ止めコーティング9に適用される。それから、第2のコーティングは、ねじ山のない接触表面4,5の付近で、ねじ込み継ぎ手の外部表面を形成する。
【0031】
図3及び図4は、すべて組み立てられた状態で、かつ、使用の準備のできた本発明によるねじ込み継ぎ手1、又は、本発明によるねじ込み継ぎ手1を備えた接続パイプのための装置を示している。パイプ2は、軸方向に、ねじ込み継ぎ手1を貫通している。パイプ2の端部は、示された実施例では、フレア10の形態で構成された構成要素を備えている。本発明は、フレアが、好ましくは、示された実施例では、パイプ端部に一体的に形成された金属のフレア10である場合に及んでいる。図3及び図4で示された実施例では、ねじ込み継ぎ手1は、不可欠な第2のパイプ13を備えた相互接続ブロック12の形態で構成されている相互連結している構成要素にねじ込まれている。ねじ込み継ぎ手の端部上のシール面11は、フレア10を相互接続ブロック12上のあわせ面14に対して押し付け、そこで、ねじ込み継ぎ手1及びそのねじ山3、又は、外部ねじ山は、その目的のために、相互接続ブロック12内の止まり穴15にねじ込まれている。止まり穴15は、明らかに、あわせ内部ねじ山を備えている。ねじ込み継ぎ手上のねじ山3、又は、外部ねじ山に、第1のコーティングが提供されている。ねじ込み継ぎ手1の端部上のねじ山のない接触表面4は、それに適用される第2のコーティング8を備えている。
【0032】
図3で示された例示的な実施例では、パイプ端部のフレア10は、F-フレアであり、このF-フレアの底面は、パイプの長手軸に、直交、又は、横に配置されている。第2のコーティング8が提供されているねじ込み継ぎ手1の端部は、その表面にあわせ面17を備えており、そのあわせ面17は、パイプの長手軸Lに直交して配置され、かつ、F-フレアの底面に隣接しており、かつ、それと正確にはめ込まれる(対をなす)。
【0033】
図4で示される例示的な実施例では、パイプ端部のフレア10は、E-フレアであり、このE-フレアの底面は、円錐形である。関連したねじ込み継ぎ手1の端部は、その表面上に、E-フレアの底面に隣接し、かつ、それと正確にはめ込まれる(対をなす)円錐部18を備えている。第2のコーティング8は、図3による例示的な実施例と、図4による例示的な実施例の両方の場合に、フレア10の隣接部付近で備えられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ要素、特に、パイプ、好ましくは、自動車上に用いられるパイプを接続するためのねじ要素において、
ねじ山(3)が備えられ、少なくとも1つのねじ山のない接触表面(4、5)が存在し、少なくともいくつかのねじ山(3)の部分に、第1の摩擦係数μ1を持った第1のコーティング(7)が備えられ、少なくともいくつかの接触表面(4、5)の部分が第2の摩擦係数μ2を持った第2のコーティング(8)を備え、かつ、
第1の摩擦係数μ1は、第2の摩擦係数μ2より、大きい、特に、かなり大きいことを特徴とするねじ要素。
【請求項2】
請求項1に記載のねじ要素において、
ねじ要素は、外部ねじ山(3)を備えたねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手であることを特徴とするねじ要素。
【請求項3】
請求項2に記載のねじ要素において、
ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手(1)の端部は、ねじ山のない接触表面(4、5)を備え、
この接触表面(4、5)のある部分は、第2の摩擦係数μ2を持った第2のコーティングでコーティングされていることを特徴とするねじ要素。
【請求項4】
請求項2、又は、3に記載のねじ要素において、
ねじボルト、又は、ねじ込み継ぎ手(1)は、頭部(6)と、その頭部(6)の裏面、すなわち、ねじ山を持たない接触表面(4、5)を持ったねじ山の直面する面を備え、
この頭部(6)の裏面の少なくともある部分は、第2の摩擦係数μ2を持った第2のコーティングでコーティングされていることを特徴とするねじ要素。
【請求項5】
請求項1に記載のねじ要素において、
ねじ要素は、内部ねじ山(3)を備えたナットであることを特徴とするねじ要素。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のねじ要素において、
第1の摩擦係数μ1は、第2の摩擦係数μ2の、少なくとも2倍、好ましくは3倍、特に好ましくは4倍であることを特徴とするねじ要素。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のねじ要素において、
第1のコーティングの第1の摩擦係数μ1は、0.15−0.5の範囲内、好ましくは、0.2−0.45の範囲内、さらに好ましくは0.25−0.4の範囲内であることを特徴とするねじ要素。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のねじ要素において、
第2のコーティング(8)の第2の摩擦係数μ2は、0.02−0.2の範囲内、好ましくは0.02−0.15の範囲内、さらに好ましくは0.03−0.1の範囲内であることを特徴とするねじ要素。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のねじ要素において、
第1のコーティング(7)の膜厚は、2μm−25μmの範囲内、好ましくは、3μm−20μmの範囲内であることを特徴とするねじ要素。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のねじ要素において、
第2のコーティング(8)の膜厚は、5μm−25μmの範囲内、好ましくは、5μm−20μmの範囲内であることを特徴とするねじ要素。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかによるねじ要素を備えたパイプ(2)、特に、自動車に用いられるパイプを接続するための装置において、
パイプ(2)は、ねじ要素に接続され、かつ、ねじ要素は、パイプ上にねじ要素をねじ込むことによって接続されることを特徴とするパイプを接続するための装置。
【請求項12】
請求項11に記載のパイプを接続するための装置において、
ねじ要素は、軸結合を備えたねじ込み継ぎ手(1)を有し、
パイプ(2)は、このねじ込み継ぎ手(1)貫通し、
パイプ(2)の端部は、フレア(10)とを備え、かつ、
第2のコーティング(8)が備えられるねじ込み継ぎ手(1)の端部は、フレアの底面に隣接していることを特徴とするパイプを接続するための装置。
【請求項13】
請求項11、又は、12に記載のパイプを接続するための装置において、
ねじ要素は、軸結合を備えたナットを有し、
パイプ(2)は、このナットを貫通し、
パイプ(2)の端部は、フレア(10)とを備え、
ナットは、第2のコーティング(8)を備えた内部の接触フランジを備え、かつ、
パイプ上のフレア(10)の底面は、接触フランジに隣接していることを特徴とするパイプを接続するための装置。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかに記載のパイプを接続するための装置において、
フレア(10)は、F-フレアであり、このF-フレアの底面は、パイプの長手軸Lに垂直に、又は、実質的に垂直にに配置され、かつ、
ねじ込み継ぎ手(1)の端部、及び/又は、ナット上の接触フランジの表面は、 パイプの長手軸Lに垂直に、又は、本質的に垂直に配置された少なくとも1つの部分(17)を備え、
この部分(17)は、フレアの底面に隣接し、それにはめ込まれることを特徴とするパイプを接続するための装置。
【請求項15】
請求項11乃至13のいずれかに記載のパイプを接続するための装置において、
フレア(10)は、E-フレアであり、このE-フレアの底面は円錐形、又は、本質的に円錐形であり、かつ、
ねじ込み継ぎ手(1)の端部、及び/又は、ナット上の接触フランジの表面は、 少なくとも1の円錐形、又は、本質的に円錐形である部分(18)を備え、この部分(18)は、フレアの底面に隣接し、それにはめ込まれることを特徴とするパイプを接続するための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−299895(P2009−299895A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−138804(P2009−138804)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(504117534)テーイー・アウトモティーフェ(ハイデルベルク)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【Fターム(参考)】