説明

パウチ容器並びにその製造方法及び賦形方法

【課題】容器形状の自由度を高めることができると共に、充填容量の増量化を容易に図ることができ、また、陳列や梱包等の際の占有スペースの増大化を伴うことなく自立安定性を高めることができ、さらに、省スペース化及び取扱利便性の点でも優れたパウチ容器並びにその製造方法及び賦形方法を提供すること。
【解決手段】フィルム4により形成された容器本体2と、この容器本体2に装着される口部材3とを備え、前記口部材3が、前記容器本体2の上部に設けられた開口7を挿通する筒状部10と、この筒状部10に連設され、該筒状部10から該筒状部10の外方に延びる突出部11とを有し、前記容器本体2における前記開口7の周縁部分が前記突出部11の上面に溶着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、飲料、液体洗剤等の液状物や粉状物等の固形物の収容に用いて好適なパウチ容器並びにその製造方法及び賦形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパウチ容器として、スパウトと、このスパウトが装着される容器本体とを備え、容器本体は、前面フィルムと、背面フィルムと、左右両側に設けられたガセット状の側面フィルムと、底面フィルムとの5枚のフィルムを接着してなり、スタンディングパウチのような形状(側面視略三角形状)を呈するもの(スパウトパウチ)がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このパウチ容器では、前面フィルムと背面フィルムの上端部どうしがスパウトを挟んだ状態でシールされる。そして、スパウトにおいて前面フィルムと背面フィルムとに挟まれてシールされるシール部分は、円形ではなく舟形となっているので、前面フィルムと背面フィルムの上端部どうしのシールは良好に行われることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−15708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のパウチ容器では、スパウトの舟形のシール部分を挟んだ前面フィルムと背面フィルムとの上端部どうしがシールされる構造上、容器本体の形状が限定されてしまい、形状の自由度を高めるのが困難であるという問題がある。
【0006】
また、上記従来のパウチ容器には、容器本体の上部が扁平であるため、充填容量の増量化を図るのが困難である上、パウチ容器はそれ自体が強い保形性を持たない軟包装であって上記のような扁平の上部を持たざるを得ず、商品陳列や梱包、輸送、保管等の際に容器間の隙間が広がって占有スペースが大きくなり、この問題は、パウチ容器の自立安定性の向上を図るために底面フィルムの前後の幅を大きくした場合に一層顕著となる。
【0007】
さらに、上記従来のパウチ容器は、軟包装ではない一般のペットボトルと同じように商品陳列や梱包等を行えないので取り扱う上での効率が悪いという問題もある。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、容器形状の自由度を高めることができると共に、充填容量の増量化を容易に図ることができ、また、陳列や梱包等の際の占有スペースの増大化を伴うことなく自立安定性を高めることができ、さらに、省スペース化及び取扱利便性の点でも優れたパウチ容器並びにその製造方法及び賦形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るパウチ容器は、フィルムにより形成された容器本体と、この容器本体に装着される口部材とを備え、前記口部材が、前記容器本体の上部に設けられた開口を挿通する筒状部と、この筒状部に連設され、該筒状部から該筒状部の外方に延びる突出部とを有し、前記容器本体における前記開口の周縁部分が前記突出部の上面に溶着されている(請求項1)。
【0010】
上記パウチ容器において、前記容器本体の胴部は、4面から構成され、各面は前記開口から前記容器本体の底まで延び、前記4面のうちの互いに対向する一対の面がそれぞれ該胴部が折り畳まれるときに内側に折り込まれるガセット部を有していてもよい(請求項2)。
【0011】
上記パウチ容器において、前記突出部の上面は略水平に延び、また、前記ガセット部が内側に折り込まれるように折り畳まれた状態の前記胴部の上部分は、前記開口の縁を構成する開口縁と、この開口縁の左右に連なり、上側ほど狭まるネック部分のコーナーを形成する略直線状のコーナーラインとを有するように構成され、前記開口縁は、左右の前記コーナーラインの延長線の交点を中心にして前記筒状部の最大外径を有する円を描いたときに該円の外側に位置するように構成されていてもよく(請求項3)、この場合、前記開口縁は、前記交点を中心にして前記筒状部の最大外径の102〜140%の長さの外径を有する円を描いたときにこの円に沿うように構成されているとすることができる(請求項4)。
【0012】
上記パウチ容器において、前記突出部の上面は略水平に延びているか、または下方に向けて広がる20°以下のテーパ角度を有していてもよい(請求項5)。
【0013】
上記パウチ容器において、前記突出部の上面に凸部が設けられていてもよい(請求項6)。
【0014】
上記パウチ容器において、前記容器本体の底部が、該容器本体の胴部の下端の前後左右に連設され該胴部の内側に向けて延び接合された四つのシート片からなり、各シート片は略左右対称な多角形状に形成され、また、各シート片の左右両縁の傾斜角度が、45°より大きく60°以下であってもよい(請求項7)。
【0015】
この場合、前記各シート片が互いに同じ大きさである二等辺三角形状に形成されているとすることができる(請求項8)。
【0016】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係るパウチ容器の製造方法は、フィルムからなり一端側に開口を有し他端側が開放された略袋状のシート体に対して、前記他端側から該シート体内に口部材を挿入し、該口部材の筒状部が前記開口から該シート体の外部に突出する状態とした後、前記筒状部に連設され該筒状部から該筒状部の外方に延びる突出部の上面に、前記シート体における前記開口の周縁部分を溶着すると共に、前記シート体の他端側を閉塞する(請求項9)。
【0017】
上記パウチ容器の製造方法において、前記突出部の上面は略水平に延びているか、または下方に向けて広がる20°以下のテーパ角度を有していてもよい(請求項10)。
【0018】
上記パウチ容器の製造方法において、前記突出部の上面に凸部が設けられていてもよい(請求項11)。
【0019】
上記パウチ容器の製造方法において、前記シート体の左右に、該シート体が折り畳まれるときに内側に折り込まれるガセット部が設けられ、折り畳まれた状態の該シート体を展開したときに該シート体の下部が底部を形成するように、折り畳まれた状態の該シート体の下部を、略左右対称な多角形状に形成し、かつ、左右両縁の傾斜角度を、45°より大きく60°以下とし、また、折り畳まれた状態の該シート体の下部周縁を接合してもよい(請求項12)。
【0020】
他方、上記目的を達成するために、本発明のパウチ容器の賦形方法は、請求項2〜4の何れか一項に記載のパウチ容器に対し、または請求項9〜12の何れか一項に記載のパウチ容器の製造方法によって得られるパウチ容器に対し、プリヒート工程とブロー工程とを行う(請求項13)。
【0021】
上記パウチ容器の賦形方法において、前記プリヒート工程は、前記パウチ容器の外側から該パウチ容器を加熱する加熱手段を用いて行うことができる(請求項14)。
【0022】
上記パウチ容器の賦形方法において、前記プリヒート工程は、前記パウチ容器内に加熱流体を循環させることにより行うこともできる(請求項15)。
【0023】
上記パウチ容器の賦形方法において、前記ブロー工程が、プリブロー工程と、該プリブロー工程よりも前記パウチ容器の内圧を高める本ブロー工程とを有していてもよい(請求項16)。
【0024】
上記パウチ容器の賦形方法において、前記ブロー工程を、前記パウチ容器を金型に入れた状態で、かつ該金型の温度を調整しながら行うようにしてもよい(請求項17)。
【発明の効果】
【0025】
請求項1〜17に係る発明では、容器形状の自由度を高めることができると共に、充填容量の増量化を容易に図ることができ、また、陳列や梱包等の際の占有スペースの増大化を伴うことなく自立安定性を高めることができ、さらに、省スペース化及び取扱利便性の点でも優れたパウチ容器並びにその製造方法及び賦形方法が得られる。
【0026】
すなわち、請求項1、2、5、9、10に係る発明では、口部材の突出部の上面と容器本体の開口の周縁部分とを溶着する構成により、容器形状の自由度が向上し、また、容器本体に立体的な肩部を持たせることができるので、充填容量の増量化を容易に図れ、加えて、一般のペットボトル等と同様に容器間の隙間をあけずに複数並べることができるので、省スペース化や取扱利便性にも優れたパウチ容器が得られ、しかもこのパウチ容器は構成がシンプルであり低コストで容易に製造することができる。
【0027】
また、請求項3、4に係る発明では、容器本体と口部材とを接合するために容器本体の開口に口部材の筒状部を挿入する際に、筒状部と開口との間に隙間が形成されることになるので、筒状部の挿入操作が行い易くなり、かつその挿入操作を確実に行うことができる。
【0028】
さらに、請求項6、11に係る発明では、突出部の上面に設けた凸部により、突出部の上面に対する開口の周縁部分の溶着精度が大いに向上することになる。
【0029】
その上、請求項7、8、12に係る発明では、容器本体の底部の中央部分を底部の周縁部分(接地部分)よりも上方に位置させることにより、パウチ容器の自立安定性を向上させることができ、上記従来のパウチ容器とは異なり、自立安定性の向上に伴って陳列や梱包等の際のパウチ容器の占有スペースが増大化するというようなことはない。
【0030】
請求項13〜17に係る発明では、パウチ容器の賦形性を向上させることができ、所望の形状のパウチ容器とすることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係るパウチ容器の構成を概略的に示す正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】前記パウチ容器の容器本体を形成する4枚のフィルムの構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】上記4枚のフィルムにシール処理を施した状態を概略的に示す斜視図である。
【図5】図4に示す部材の一部にトリミング処理を施した状態を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5に示す部材にスパウトを装着する工程を概略的に示す斜視図である。
【図7】図6の工程後の状態を概略的に示す斜視図である。
【図8】図7に示す部材にシール処理を施した状態を概略的に示す斜視図である。
【図9】図8に示す部材の残部にトリミング処理を施して得られた前記パウチ容器の構成を概略的に示す斜視図である。
【図10】内容物を充填した状態の前記パウチ容器の構成を概略的に示す斜視図である。
【図11】前記パウチ容器の要部の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図12】前記パウチ容器の要部の変形例の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図13】前記パウチ容器の底部の変形例の折り畳み状態の構成を概略的に示す部分拡大正面図である。
【図14】前記パウチ容器の底部の変形例の充填状態の構成を概略的に示す部分拡大説明図である。
【図15】前記4枚のフィルムの変形例の構成を概略的に示す斜視図である。
【図16】図15に示す4枚のフィルムを用いて成形された本発明の変形例に係るパウチ容器の構成を概略的に示す斜視図である。
【図17】図16に示すパウチ容器の構成を概略的に示す底面図である。
【図18】図5に示す部材の要部の構成を概略的に示す説明図である。
【図19】(A)〜(C)は、本発明の一実施の形態に係るパウチ容器の賦形方法を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ここで、図1、図2及び図10に本発明の一実施の形態に係るパウチ容器の構成を概略的に示し、図3〜図9に本発明の一実施の形態に係るパウチ容器の製造方法を示し、図11に前記パウチ容器の要部の構成を概略的に示してある。
【0033】
図1、図2及び図10に示すパウチ容器1は、容器本体2と、この容器本体2に装着される口部材(以下、スパウトという)3とを備えている。そして、このパウチ容器1は、図3〜図10に示すパウチ容器の製造方法(以下、「製造方法」と略記する)によって成形することができるものであり、まず、この製造方法について説明する。
【0034】
前記製造方法は、下記(1)〜(5)の工程を有する。
【0035】
(1)4枚の同寸、同形状(本例では矩形状)のフィルム4A〜4D(以下、各フィルム4A〜4Dの個性に着目しない場合は単にフィルム4という)を用意し、図3及び図4に示すように配置する。
【0036】
すなわち、2枚のフィルム4A,4Bの間に、ガセット部を形成するために折曲された2枚のフィルム4C,4Dを折曲部分が内になるように左右に並べて配置する。
【0037】
ここで、各フィルム4は複数枚のフィルムからなるラミネートフィルムであり、例えば、基材層をなすフィルム、シーラント層をなすフィルム等を積層して構成されている。尚、パウチ容器1の内容物(収容対象)に応じて、ガスバリア層をなすフィルムをラミネートしてフィルム4を構成してもよく、このようにフィルム4の各層の構成やそれらの組合わせについての変更は適宜に行えばよい。
【0038】
(2)上述のように配置した4枚のフィルム4に、容器本体2を構成する胴部(側壁部)5及び底部(底壁部)6のうちの胴部5(図2参照)となる部分を形成するために、シール処理(本例ではヒートシール)とトリミング処理とを施す(図4、図5参照)。
【0039】
これにより、図6に示すように、4枚のフィルム4からなり一端側に開口7を有し他端側が開放された略袋状(または略筒状)のシート体8が形成される。すなわち、上記シール処理は、別体であった4枚のフィルム4どうしを接合して略袋状(略筒状)とするための処理であり、このシール処理により、4枚のフィルム4にシール部分9が形成される。また、上記トリミング処理は、上述のように配置した4枚のフィルム4から、容器本体2の胴部5となる部分の外側に連なる余分な部分を除去するための処理である。尚、本例ではシール処理後にトリミング処理を行うが、この手順を逆にしてもよい。
【0040】
(3)図6に示すように、シート体8を開き、その開放されている他端側からシート体8内にスパウト3を挿入し、スパウト3の筒状部10を開口7から突出させる(図7参照)。
【0041】
すなわち、スパウト3は、図1、図2、図6及び図7に示すように、開口7を挿通する筒状部10と、この筒状部10に連設され、筒状部10から筒状部10の外方に延びる突出部11とを有している。そして、筒状部10の上部には蓋体12が着脱自在に装着されるねじ部10a(図2参照)が設けられている。
【0042】
また、筒状部10は開口7に挿通可能に構成されているのに対し、突出部11は開口7の周縁に当接して開口7を通過することができないように構成されている。そして、この突出部11は、筒状部10の下端部に連設され、例えば突出幅が3mm以上の鍔状をしており、上面は略水平に延びている。
【0043】
(4)図7に示すように、スパウト3の筒状部10を開口7(図6参照)からシート体8の外部に突出させた状態で、シート体8の開口7の周縁部分を突出部11の上面に溶着するために、シール処理(本例ではヒートシール)を施す。
【0044】
ここで、図6、図11に示すように、突出部11の上面には複数の凸部(本例では環状突起)13が設けられているので、突出部11上面に対する開口7周縁部分の溶着精度は大いに向上することになる。尚、スパウト3は、上記溶着を可能とするための樹脂により成形されている。
【0045】
(5)スパウト3を装着したシート体8の他端側を折り畳み、容器本体2の底部6となる部分を形成するために、シール処理(本例ではヒートシール)とトリミング処理とを施す(図8、図9参照)。
【0046】
これにより、図9、図10に示すパウチ容器1が形成される。すなわち、上記シール処理は、開放されていたシート体8の他端側を接合して閉塞し、底部6とするための処理であり、このシール処理により、シート体8にシール部分14が形成される。また、上記トリミング処理は、シート体8から、容器本体2の底部6となる部分の外側に連なる余分な部分を除去するための処理である。尚、本例ではシール処理後にトリミング処理を行うが、この手順を逆にしてもよい。
【0047】
以上で、製造方法が完了する。そして、上記製造方法により得られるパウチ容器1は、スパウト3の突出部11と容器本体2の開口7周縁部分とを溶着する構成により、容器形状の自由度が向上する上、容器本体2に立体的な肩部を持たせることができるので、充填容量の増量化を容易に図れるのに加えて、一般のペットボトル等と同様にパウチ容器1間の隙間をあけずに複数のパウチ容器1を並べることができるので、省スペース化や取扱利便性にも優れたものとなる。
【0048】
また、上記製造方法により得られるパウチ容器1は、図2、図10に示すように内容物を充填した状態で、容器本体2の底部6の中央部分を底部6の周縁部分(接地部分)よりも上方に位置させることができるように構成されている。
【0049】
詳述すると、容器本体2の底部6は、上記製造方法から理解されるように、容器本体2の胴部5の下端の前後左右に連設され胴部5の内側に向けて延び互いに接合された四つのシート片15(図9の一点鎖線とシール部分14で囲まれた部分参照)からなるといえる。そして、四つのシート片15を、互いに同じ大きさである二等辺三角形状(略左右対称な多角形状の一例)に形成し、各シート片15の左右両縁の傾斜角度(水平軸(図9の一点鎖線参照)を基準(0°)とした角度)θを45度より大きく60度以下としてあるので、各シート片15の縦の長さLは、容器本体2が膨らんだ状態(充填状態)における胴部5の下端に対するシート片15の連設位置(図9の一点鎖線参照)から容器本体2の上下方向に延びる中心軸までの距離よりも長くなる。
【0050】
換言すれば、上記工程(4)を経て得られたシート体8は、図8に示すように、その左右に、シート体8が折り畳まれるときに内側に折り込まれるガセット部4C,4Dが設けられており、上記工程(5)において、折り畳まれた状態のシート体8を展開したときにシート体8の下部(四つのシート片15)が底部6を形成するように、折り畳まれた状態のシート体8の下部を、二等辺三角形状に形成し、かつ、左右両縁の傾斜角度θを、45°より大きく60°以下とし、また、折り畳まれた状態のシート体8の下部周縁を接合する。そして、このとき、シート体8の下部の縦方向の長さL(図9参照)は、展開した状態のガセット部4C,4Dの横幅の半分よりも長くなる。
【0051】
底部6を上記のように構成してあるので、パウチ容器1を膨らませた状態(充填状態)としたときに、底部6の全体が水平には広がらず、底部6の中央部分が周縁部分よりも下方に突出することになる。そして、底部6の中央部分を押し上げることにより、底部6の中央部分を底部6の周縁部分(接地部分)よりも上方に位置させることができ(図2参照)、このようにすることで、陳列や梱包等の際のパウチ容器1の占有スペースの増大化を伴うことなく、パウチ容器1の自立安定性を向上させることができる。
【0052】
また、上記製造方法によって得られるパウチ容器1では、容器本体2の胴部5が4面から構成され、各面は開口7から容器本体2の底まで延び、前記4面のうちの互いに対向する一対の面がそれぞれガセット部を有することになる(図9、図10参照)。そして、図9及び図18に示すように、ガセット部が内側に折り込まれるように折り畳まれた状態の胴部5の上部分は、開口7の縁を構成する開口縁16と、この開口縁16の左右に連なり、上側ほど狭まるネック部分5a(図10参照)のコーナーを形成する略直線状のコーナーライン(シール部分9の内方ライン)17とを有するように構成されている。
【0053】
そして、上記工程(3)において筒状部10を開口7に挿通可能とするためには、図18に示すように、開口縁16は、左右のコーナーライン17の延長線の交点Pを中心にして筒状部10の最大外径を有する円Cを描いたときに円Cの外側に位置するように構成してあればよい。本例では、上記工程(2)のトリミング処理において、交点Pを中心とし筒状部10の最大外径よりも若干大きな径を有する円C’に沿うように開口縁16を形成することにより、工程(4)において開口7に筒状部10を挿入する際に筒状部10と開口7との間に若干の隙間が形成されるようにし、筒状部10の挿入操作を行い易くしてある。ここで、円C’の径は、突出部11が開口7の周縁に当接して開口7を通過することができないようにすることのできる範囲で適宜に定めればよく、例えば円Cの径の102〜140%(好ましくは105〜112%)の長さとすれば、開口7に対する筒状部10の挿入操作を行い易い上、開口7の周縁部分を突出部11の上面に確実に溶着することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々に変形して実施することができる。そこで、以下にその変形例について説明する。
【0055】
例えば、上記実施の形態では、4枚のフィルム4によって容器本体2を形成しているが、これに限らず、例えば筒状に形成した1枚のフィルム(シート状のフィルムの左右両端どうしを接合して筒状にしたフィルムと、成形により最初から筒状になっているフィルムの両方を含む)を用いて容器本体2を形成することもできる。この場合、筒状のフィルムの左右をガセット部として内側に折り込んで折り畳む工程を、上記工程(1)に代えて行えばよい。さらに、2枚または3枚等、他の枚数のフィルムによって容器本体2を形成することもできる。つまり、容器本体2は、ガセット状の左右側面と、フラット状の前後側面の計4面からなる側面を有していればよい。
【0056】
上記工程(2)、(4)、(5)におけるシール処理は、ヒートシールに限らず、例えば超音波シールにより行ってもよい。
【0057】
突出部11の上面は、略水平に延びておらず、図12に示すように、下方に向けて広がるテーパ状となっていてもよい。この場合のテーパ角度としては、水平方向に延びている場合を0°とすると0°より大きい20°以下の範囲の角度を採用することができる。また、この場合の突出部11の形状としては、例えば、円錐台状(丸形の鍔状)や角錐台状(角形の鍔状)が挙げられる。そして、突出部11の上面をテーパ状とすると、工程(3)においてスパウト3を開口7に挿入する際に、このテーパ面によりスパウト3が案内され、その位置決めが容易になると共に、工程(4)におけるシール処理の効率を向上させることができる。
【0058】
また、突出部11の上面に設けた複数の凸部13は互いに同心円状となっていたが、これに限らず、例えばアヤメ状やダイアモンド状となっていてもよく、さらに、各凸部13は環状突起に限らず他の形状であってもよい。
【0059】
上記工程(5)の後に、シール部9、14を容器本体2の外面にライン状に沿わせたり、ピンポイント的に沿わせたりするための接着工程を設けてもよい。この接着工程は、例えばヒートシールや超音波シールにより行うことができる。そして、シール部9,14を容器本体2の外面に沿わせることによりリブ効果が得られ、容器本体2の強度が向上する。
【0060】
上記実施の形態では、シート片(シート体8の下部)15を二等辺三角形状としているが、これは、容器本体2の底部6が、容器本体2の胴部5の下端の前後左右に連設され胴部5の内側に向けて延び互いに接合された四つのシート片15からなり、各シート片15は略左右対称な多角形状に形成され、また、各シート片15の左右両縁を、傾斜角度(水平軸を基準(0°)とした角度)が45°より大きく60°以下である部分のみによって構成する場合(つまり、各シート片15の左右両縁の傾斜角度が45°より大きく60°以下である場合)の一例に過ぎない。
【0061】
従って、シート片15を、例えば図13や図17に示すように構成することもできる(図17の例については後述する)。すなわち、図13に示すシート片15の左右両縁は、上側から順に、傾斜角度θ1が略45°である縁部H1と、傾斜角度θ2が略60°である縁部H2と、傾斜角度θ3が略45°である縁部H3とからなる多段状をしている。そして、このように構成されたパウチ容器1の底部6は、パウチ容器1を膨らませた状態(充填状態)とすると、図14に示すように、縁部H1、H3に対応する部分は略水平に延び、その間の縁部H2に対応する部分のみが傾斜することになり、この場合も、底部6の中央部分が周縁部分(接地部分)よりも上方に位置するので、自立安定性が良好となる。
【0062】
上記実施の形態では、容器本体2を形成する4枚のフィルム4を同寸、同形状としているが、これに限らず、例えば図15に示すように、2枚のフィルム4A,4Bの横幅を、他の2枚のフィルム4C,4Dの横幅よりも大きくしてもよい。この場合、形成されるパウチ容器1は図16に示すものとなる。
【0063】
このとき、図17に示すように、フィルム4C,4Dによって形成されるシート片15を図1等に示すシート片15と同様の構成としつつ、フィルム4A,4Bによって形成されるシート片15Aを二等辺三角形状とせず等脚台形状とする。ここで、シート片15Aの左右両縁H4の傾斜角度θは45°より大きく60°以下であり、この左右両縁H4に、水平に延びる(傾斜角度が0°の)下縁H5が連なる。そして、このように構成されたパウチ容器1の底部6は、パウチ容器1を膨らませた状態(充填状態)とすると、底部6の中央部分を周縁部分(接地部分)よりも上方に位置させることができるので、自立安定性を向上させることができる。
【0064】
上記の実施の形態のパウチ容器1は、適宜の柔軟性を有しており、図10に示すように膨らませた状態として自立させることができるだけでなく、図9に示すように折り畳むこともできるものである。そして、この変形を可能とするために、パウチ容器1を構成する各フィルム4の厚みは、一般的なパウチ容器を構成するシート(フィルム)の厚みと同等程度(例えば100〜250μm)としてある。しかし、パウチ容器1を賦形して、パウチ容器1が、一般的なペットボトルと同等程度の賦形性を持ち、図10に示す形状をより強力に保つことができるようにしてもよい。
【0065】
そのような賦形方法としては、例えば、各フィルム4の厚みを10〜400μmとし、上記工程(1)〜(5)を実施して得られるパウチ容器1に対し、ブロー工程と、このブロー工程におけるブロー延伸のためのプリヒート工程とを行う方法が挙げられる。そこで、以下、パウチ容器1の賦形方法について述べる。
【0066】
プリヒート工程には、パウチ容器1を外部から加熱する外部加熱手段や、パウチ容器1を内部から加熱する内部加熱手段を用いることができ、両手段を併用することもできる。
【0067】
外部加熱手段としては、例えば、ベルトコンベア等の搬送手段により搬送されるパウチ容器1を外側から加熱するように配置されたオーブン方式や熱風方式等の加熱装置や、温度調整が可能でありパウチ容器1が収容される金型等を挙げることができる。
【0068】
内部加熱手段としては、蓋体12が装着されていない状態のスパウト3からパウチ容器1内に挿入されるノズル部材(図示していない)を備え、このノズル部材によってパウチ容器1内に加熱流体(例えばホットエアや加熱された不活性ガス等の気体、湯等の加熱された液体)を循環させるように構成された循環装置を挙げることができる。
【0069】
ここで、前記加熱流体の温度は例えば50〜100℃、加熱流体をパウチ容器1内に供給する時間は例えば10〜300秒とすることができる。尚、加熱流体をパウチ容器1内に循環させるために、ノズル部材からパウチ容器1内に供給された加熱流体は、例えばノズル部材と同様にスパウト3からパウチ容器1内に挿入された排出管により、スパウト3からパウチ容器1外へと排出されるように構成してある。従って、パウチ容器1の内圧は殆ど高まることがなく、この内部加熱手段を用いた場合でも外部加熱手段を用いた場合と同様にパウチ容器1は殆ど変形しない。
【0070】
一方、ブロー工程は、スパウト3のみが外部に露出する状態でパウチ容器1が入れられる(セットされる)金型18と、スパウト3からパウチ容器1内に挿入され、パウチ容器1内にエアを供給するノズル部材19と、ノズル部材19からパウチ容器1内に供給されたエアがパウチ容器1外に逃げないようにパウチ容器1に密閉処理を施すためのバルブ等の密閉手段とを用いて実施することができる(図19(A)〜(C)参照)。
【0071】
また、このブロー工程として、プリブロー工程と、プリブロー工程よりもパウチ容器1の内圧が高まることになる本ブロー工程とをこの順に行うことができる。詳述すると、プリブロー工程は、本ブロー工程よりも低圧のエアを用いて、短時間で行うもので、パウチ容器1内に例えば50〜100℃、0〜0.2atmのエアを10〜300秒間供給して行うものである。これに対して本ブロー工程は、プリブロー工程により膨張状態(ある程度膨らんだ状態)となったパウチ容器1内に例えば50〜100℃(一例としては70℃)、0.2〜1atm(一例としては1atm)のエアを1〜120秒間(一例としては5秒間)供給して行うものである。
【0072】
上記ブロー工程により、パウチ容器1は金型18の内面に密着して所定の形状を有する状態に賦形される(図19(B)及び(C)参照)。
【0073】
ここで、上記ブロー工程(プリブロー工程、本ブロー工程の一方または両方)を、パウチ容器1を金型18に入れた状態で、金型18の温度を調整しながら行うようにしてもよく、この場合は、プリヒート工程とブロー工程とが同時に行われることになる。
【0074】
また、上記ブロー工程では、パウチ容器1に対する良好なブロー処理(本ブロー工程)を確実に行うためにプリブロー工程を行っているが、このプリブロー工程を省略してもよい。
【0075】
そして、上記ブロー工程の後に、熱固定(ヒートセット)工程を行い、さらに、冷却工程を行うようにしてもよい。
【0076】
熱固定工程は、例えば、パウチ容器1を金型18に入れた状態で、60〜80℃の設定温度で10〜120秒間行うものである。
【0077】
また、冷却工程は、蓋体12が装着されていない状態のスパウト3からパウチ容器1内に挿入されるノズル部材(図示していない)を備え、このノズル部材によってパウチ容器1内に冷却用流体(例えば室温のエア)を循環させるように構成された循環装置を用いて、パウチ容器1内に冷却用流体を例えば10〜120秒間供給して行うことができる。尚、冷却用流体をパウチ容器1内に循環させるために、ノズル部材からパウチ容器1内に供給された冷却用流体は、例えばノズル部材と同様にスパウト3からパウチ容器1内に挿入された排出管により、スパウト3からパウチ容器1外へと排出されるように構成してある。
【0078】
尚、ブロー工程で用いるノズル部材19を、上記プリヒート工程の内部加熱手段のノズル部材や、上記冷却工程のノズル部材に兼用してもよく、プリヒート工程の内部加熱手段の循環装置を冷却工程の循環装置に兼用してもよい。そして、例えば、プリヒート工程を内部加熱手段を用いて行う場合には、プリヒート工程、ブロー工程、熱固定工程及び冷却工程の全てを、パウチ容器1を金型18に入れた状態で連続して行うようにすることもでき、このようにすればパウチ容器1の賦形を極めて効率良く行える。
【0079】
また、図6〜図9では、蓋体12が装着されている状態のスパウト3を示してあるが、蓋体12がスパウト3に装着されていると、内部加熱手段を用いる場合のプリヒート工程やブロー工程、冷却工程を実施する際に、蓋体12が邪魔になりノズル部材をパウチ容器1内に挿入することができないので、これらの工程を行う場合には、これらの工程の完了後に蓋体12をスパウト3に装着するようにすればよい。
【0080】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1 パウチ容器
2 容器本体
3 口部材(スパウト)
4 フィルム
5 胴部
6 底部
7 開口
8 シート体
10 筒状部
11 突出部
13 凸部
15 シート片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムにより形成された容器本体と、この容器本体に装着される口部材とを備え、前記口部材が、前記容器本体の上部に設けられた開口を挿通する筒状部と、この筒状部に連設され、該筒状部から該筒状部の外方に延びる突出部とを有し、前記容器本体における前記開口の周縁部分が前記突出部の上面に溶着されているパウチ容器。
【請求項2】
前記容器本体の胴部は、4面から構成され、各面は前記開口から前記容器本体の底まで延び、前記4面のうちの互いに対向する一対の面がそれぞれ該胴部が折り畳まれるときに内側に折り込まれるガセット部を有する請求項1に記載のパウチ容器。
【請求項3】
前記突出部の上面は略水平に延び、
また、前記ガセット部が内側に折り込まれるように折り畳まれた状態の前記胴部の上部分は、前記開口の縁を構成する開口縁と、この開口縁の左右に連なり、上側ほど狭まるネック部分のコーナーを形成する略直線状のコーナーラインとを有するように構成され、前記開口縁は、左右の前記コーナーラインの延長線の交点を中心にして前記筒状部の最大外径を有する円を描いたときに該円の外側に位置するように構成されている請求項2に記載のパウチ容器。
【請求項4】
前記開口縁は、前記交点を中心にして前記筒状部の最大外径の102〜140%の長さの外径を有する円を描いたときにこの円に沿うように構成されている請求項3に記載のパウチ容器。
【請求項5】
前記突出部の上面は略水平に延びているか、または下方に向けて広がる20°以下のテーパ角度を有している請求項1または2に記載のパウチ容器。
【請求項6】
前記突出部の上面に凸部が設けられている請求項1〜5の何れか一項に記載のパウチ容器。
【請求項7】
前記容器本体の底部が、該容器本体の胴部の下端の前後左右に連設され該胴部の内側に向けて延び接合された四つのシート片からなり、各シート片は略左右対称な多角形状に形成され、また、各シート片の左右両縁の傾斜角度が、45°より大きく60°以下である請求項1〜6の何れか一項に記載のパウチ容器。
【請求項8】
前記各シート片が互いに同じ大きさである二等辺三角形状に形成されている請求項7に記載のパウチ容器。
【請求項9】
フィルムからなり一端側に開口を有し他端側が開放された略袋状のシート体に対して、前記他端側から該シート体内に口部材を挿入し、該口部材の筒状部が前記開口から該シート体の外部に突出する状態とした後、前記筒状部に連設され該筒状部から該筒状部の外方に延びる突出部の上面に、前記シート体における前記開口の周縁部分を溶着すると共に、前記シート体の他端側を閉塞するパウチ容器の製造方法。
【請求項10】
前記突出部の上面は略水平に延びているか、または下方に向けて広がる20°以下のテーパ角度を有している請求項9に記載のパウチ容器の製造方法。
【請求項11】
前記突出部の上面に凸部が設けられている請求項9または10に記載のパウチ容器の製造方法。
【請求項12】
前記シート体の左右に、該シート体が折り畳まれるときに内側に折り込まれるガセット部が設けられ、折り畳まれた状態の該シート体を展開したときに該シート体の下部が底部を形成するように、折り畳まれた状態の該シート体の下部を、略左右対称な多角形状に形成し、かつ、左右両縁の傾斜角度を、45°より大きく60°以下とし、また、折り畳まれた状態の該シート体の下部周縁を接合する請求項9〜11の何れか一項に記載のパウチ容器の製造方法。
【請求項13】
請求項2〜4の何れか一項に記載のパウチ容器に対し、または請求項9〜12の何れか一項に記載のパウチ容器の製造方法によって得られるパウチ容器に対し、プリヒート工程とブロー工程とを行うパウチ容器の賦形方法。
【請求項14】
前記プリヒート工程を、前記パウチ容器の外側から該パウチ容器を加熱する加熱手段を用いて行う請求項13に記載のパウチ容器の賦形方法。
【請求項15】
前記プリヒート工程を、前記パウチ容器内に加熱流体を循環させることにより行う請求項13に記載のパウチ容器の賦形方法。
【請求項16】
前記ブロー工程が、プリブロー工程と、該プリブロー工程よりも前記パウチ容器の内圧を高める本ブロー工程とを有する請求項13〜15の何れか一項に記載のパウチ容器の賦形方法。
【請求項17】
前記ブロー工程を、前記パウチ容器を金型に入れた状態で、かつ該金型の温度を調整しながら行う請求項13〜16の何れか一項に記載のパウチ容器の賦形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−1125(P2011−1125A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115554(P2010−115554)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】