説明

パケット転送品質制御システムおよび方法

【課題】特定の映像配信方式や受信端末機能を持つ映像通信形態に限定されることなく、受信端末でのユーザ体感品質を適切に制御する。
【解決手段】廃棄パケット判定部13により、パケット情報を許容受信パケット数で検証することにより受信端末3で廃棄された廃棄パケット数を推定して、当該廃棄パケット数に基づき受信端末3での映像品質の劣化有無を判定し、パケット送信間隔算出部15により、単位時間と許容受信パケット数とから受信端末3に適したパケット送信間隔を算出し、パケット転送品質制御要求部16により、映像品質劣化ありの判定に応じて、パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、当該映像通信の通信経路上に位置する任意のノードに対してパケット転送品質制御を要求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質管理技術に関し、特に受信端末に対するパケット転送品質を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映像系IPサービスは、近年、IPTVサービスとして世界各国で本格的なサービス提供が始まり、市場が拡大しつつある。一方、パケット網の品質が保証されないため、映像通信サービスを実現するアプリケーションの品質管理技術が注目され、品質測定器市場も拡大しつつある。
このような品質管理技術においては、パケット網の品質に留まらず、ユーザ体感品質(QoE:Quality of Experience)を管理することが重要視されつつある(例えば、非特許文献1など参照)。
【0003】
ユーザ体感品質を管理するため、従来より、受信端末に届く映像通信用パケットを制御する技術が検討されている。この1つとして、網で発生するパケット転送揺らぎ、すなわちジッタに応じて、映像配信装置においてレート制御を行い、映像品質の劣化を防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−322995号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ITU-T Recommendation P.10/G.100, "Definition of Quality of Experience(QoE)," Jan., 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、復号した映像フレームのフレーム間隔に関するジッタ量に応じて、映像配信装置の送信レートを制御する方式をとっているため、適用可能な映像通信形態が限定されるという問題点があった。
【0007】
例えば、映像配信サービスでは、通常、映像配信装置からマルチキャストで複数の受信端末へ映像を同時に配信している。この場合、映像配信装置からパケット網まではユニキャストで映像が配信され、パケット網で分離されて各受信端末へ配信される。
したがって、いずれかの受信端末での品質低下に応じて映像配信装置で当該映像の送信レートを低下させた場合、当該映像がマルチキャストで配信されている他の受信端末に対しても送信レートが低下し、映像の乱れに繋がる。このため、マルチキャスト配信方式に対して、従来技術を適用できない。
【0008】
また、従来技術で、送信レートの制御に用いるフレーム間隔のジッタ量は、受信端末でのみ取得できる情報であり、通信サービス提供者により容易に取得できる情報ではない。したがって、フレーム間隔のジッタ量を提供するという一般的ではない機能を持つ受信端末に対してのみ、従来技術を適用可能であり、このような機能を持たない大多数の受信端末には適用できない。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、特定の映像配信方式や受信端末機能を持つ映像通信形態に限定されることなく、受信端末でのユーザ体感品質を適切に制御できるパケット転送品質制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかるパケット転送品質制御システムは、パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信に関する当該受信端末での映像品質劣化に応じて、当該映像通信の通信経路上に位置するノードにおける映像通信用パケットの転送品質を制御するパケット転送品質制御システムであって、パケット網から受信端末へ転送した当該映像通信用の各パケットについて計測したパケット転送時刻を示すパケット情報を記憶するパケット情報記憶部と、単位時間当たりに受信端末で受信可能なパケット数を示す許容受信パケット数を網品質管理閾値として記憶する網品質管理閾値記憶部と、パケット情報を許容受信パケット数で検証することにより受信端末で廃棄された廃棄パケット数を推定して、当該廃棄パケット数に基づき当該受信端末での映像品質の劣化有無を判定する廃棄パケット判定部と、単位時間と許容受信パケット数とから当該受信端末に適したパケット送信間隔を算出するパケット送信間隔算出部と、映像品質劣化ありの判定に応じて、パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、当該映像通信の通信経路上に位置する任意のノードに対してパケット転送品質制御を要求するパケット転送品質制御要求部とを備えている。
【0011】
この際、パケット送信間隔算出部で、許容受信パケット数を単位時間で除算することにより最小パケット送信間隔を算出し、パケット転送品質制御要求部で、最小パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、パケット転送品質制御を要求するようにしてもよい。
【0012】
また、パケット転送品質制御要求部で、ノードに代えて、パケット網を管理する網管理制御サーバに対して、当該ノードにおけるパケット転送品質制御を要求するようにしてもよい。
【0013】
また、網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置をさらに備え、網品質管理閾値算出装置に、パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた映像通信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶部と、通信条件ごとに、受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶部と、条件別パケット情報のうち受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出部と、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成部と、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出部と、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定部とを備えてもよい。
【0014】
また、本発明にかかるパケット転送品質制御方法は、パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信に関する当該受信端末での映像品質劣化に応じて、当該映像通信の通信経路上に位置するノードにおける映像通信用パケットの転送品質を制御するパケット転送品質制御システムで用いられるパケット転送品質制御方法であって、パケット情報記憶部が、パケット網から受信端末へ転送した当該映像通信用の各パケットについて計測したパケット転送時刻を示すパケット情報を記憶するパケット情報記憶ステップと、網品質管理閾値記憶部が、単位時間当たりに受信端末で受信可能なパケット数を示す許容受信パケット数を網品質管理閾値として記憶する網品質管理閾値記憶ステップと、廃棄パケット判定部が、パケット情報を許容受信パケット数で検証することにより受信端末で廃棄された廃棄パケット数を推定して、当該廃棄パケット数に基づき当該受信端末での映像品質の劣化有無を判定する廃棄パケット判定ステップと、パケット送信間隔算出部が、単位時間と許容受信パケット数とから当該受信端末に適したパケット送信間隔を算出するパケット送信間隔算出ステップと、パケット転送品質制御要求部が、映像品質劣化ありの判定に応じて、パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、当該映像通信の通信経路上に位置する任意のノードに対してパケット転送品質制御を要求するパケット転送品質制御要求ステップとを備えている。
【0015】
この際、パケット送信間隔算出ステップに、許容受信パケット数を単位時間で除算することにより最小パケット送信間隔を算出するステップを含み、パケット転送品質制御要求ステップに、最小パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、パケット転送品質制御を要求するステップを含むようにしてもよい。
【0016】
また、パケット転送品質制御要求ステップに、ノードに代えて、パケット網を管理する網管理制御サーバに対して、当該ノードにおけるパケット転送品質制御を要求するステップを含むようにしてもよい。
【0017】
また、網品質管理閾値算出装置が、網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出ステップをさらに備え、網品質管理閾値算出ステップとして、パケット情報記憶部が、パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた映像通信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶ステップと、品質評価結果記憶部が、通信条件ごとに、受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶ステップと、定常値算出部が、条件別パケット情報のうち受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出ステップと、仮定閾値生成部が、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成ステップと、評価正解率算出部が、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出ステップと、網品質管理閾値決定部が、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定ステップとを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特定の映像配信方式や受信端末機能を持つ映像通信形態に限定されることなく、受信端末でのユーザ体感品質を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるパケット転送品質制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】累積廃棄パケット数と映像品質劣化との関係を示す説明図である。
【図3】推定パケット廃棄率とユーザ体感品質値との関係を示す説明図ある。
【図4】パケット情報の構成例である。
【図5】網品質管理閾値の構成例である。
【図6】第1の実施の形態にかかるパケット転送品質制御システムのパケット転送品質制御処理を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値装置の構成を示すブロック図である。
【図8】条件別パケット情報の構成例である。
【図9】端末情報の構成例である。
【図10】品質評価結果の構成例である。
【図11】第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での情報取得処理を示すフローチャートである。
【図12】定常値の構成例である。
【図13】第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での網品質管理閾値決定処理を示すフローチャートである。
【図14】仮定閾値の構成例である。
【図15】第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での評価正解率算出処理を示すフローチャートである。
【図16】評価正解率の算出結果例である。
【図17】評価正解率の算出結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるパケット転送品質制御システムについて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるパケット転送品質制御システムの構成を示すブロック図である。
このパケット転送品質制御システム10は、全体として、一般的なサーバ装置やワークステーションなどの情報処理通信端末からなり、当該映像通信の通信経路上に位置するノードにおける映像通信用パケットの転送品質を制御する機能を有している。
【0021】
映像配信装置1は、全体として、一般的なサーバ装置やワークステーションなどの情報処理通信端末からなり、映像通信における送信端末として動作することにより、映像データをパケットで配信する機能を有している。
受信端末3は、テレビ受像器をデータ通信網に接続して各種通信サービスの利用を可能とするSTB(Set-Top-Box)などの通信端末からなり、インターネットなどからなるパケット網2を介して接続された映像配信装置1と映像通信を行うことによりパケットで映像データを受信し、テレビ受像器などからなる映像表示装置4で再生出力する機能を有している。
【0022】
分岐器5は、タップ(Tap)やハブ(Hub)などの通信機器からなり、パケット網2と受信端末3との間の通信経路上に設置されて、パケット網2から受信端末3へ転送される映像通信用パケットをキャプチャする機能を有している。
ホームゲートウェイ(HGW:Home Gate Way)は、モデムやルータなどの通信機器からなり、受信端末3をパケット網2のアクセス回線に接続する機能と、パケット網2から受信端末3へ転送されるパケットの転送を制御する機能を有している。
【0023】
エッジノード2Aは、パケット網2に設けられたルータなどのパケット転送機器であり、受信端末3が接続されているアクセス回線をパケット網2と接続する機能を有している。
中継ノード2Bは、パケット網に設けられたルータなどのパケット転送機器であり、エッジノード2A間を中継接続する機能を有している。
網管理制御サーバ2Sは、パケット網2で提供する映像通信サービスの通信経路を管理し、当該通信経路上の各ノードにおけるパケット転送制御を行う機能を有している。
【0024】
網品質管理閾値算出装置20は、予め試験的に行った映像通信で得られたパケット情報とそのときの受信端末3での映像品質評価とに基づいて、当該試験に用いたパケット網2に対する網品質管理閾値を算出する機能を有している。
【0025】
図2は、累積廃棄パケット数と映像品質劣化との関係を示す説明図であり、横軸が試験開始からの経過時間を示し、縦軸が受信端末でのバッファオーバーラン現象により発生する廃棄パケット数の累積推定値である。ここでは、映像品質劣化あり条件下における2つ計測結果A,Bと、映像品質劣化なし条件下における2つの計測結果C,Dとがプロットされている。映像品質劣化あり条件とは、受信端末でバッファオーバーラン現象が生じるジッタが網で発生した際の通信条件であり、映像品質劣化が被験者により視認された通信条件を示している。一方、映像品質劣化なし条件とは、受信端末でバッファオーバーラン現象が生じるジッタが網で発生していない際の通信条件であり、映像品質劣化が被験者により視認されていない通信条件を示している。
【0026】
これに対して、任意の単位時間当たりに受信端末で受信可能な許容受信パケット数を設定し、受信端末で受信したパケットの数を単位時間ごとに計数し、許容受信パケット数を越えたパケット数を、受信端末での廃棄パケット数として推定する。そして、その廃棄パケット数の累積値を経過時間を横軸としてプロットすると、図2のような計測結果が得られる。
【0027】
このうち、映像品質劣化あり条件下で計測した計測結果A,Bは、経過時間とともに累積推定廃棄パケット数が増加しており、映像品質劣化なし条件下で計測した計測結果C,Dは、経過時間に関係なく累積推定廃棄パケット数はゼロのままである。したがって、累積推定廃棄パケット数を計数することにより、バッファオーバーラン現象による映像品質の劣化有無を判定できる。
【0028】
図3は、推定パケット廃棄率とユーザ体感品質値との関係を示す説明図あり、横軸が推定パケット廃棄率(%)を示し、縦軸がユーザ体感品質の推定値(MOS)を示している。この推定パケット廃棄率は、前述した累積推定廃棄パケット数を総送信パケット数で除算して求めた値である。ここでは、廃棄パケット率の増加に応じて、ユーザ体感品質値が単調減少しており、バッファオーバーラン現象による廃棄パケットで、ユーザ体感品質値が低下して品質劣化が生じることがわかる。
【0029】
本発明では、このような廃棄パケットとユーザ体感品質との関係に着目し、廃棄パケットによるユーザ体感品質の劣化有りの判定に応じて、受信端末へ転送されるパケットに対して通信経路上で転送制御することにより、受信端末での品質制御を行っている。
【0030】
具体的には、記パケット情報を許容受信パケット数で検証することにより受信端末で廃棄された廃棄パケット数を推定して、当該廃棄パケット数に基づき当該受信端末での映像品質の劣化有無を判定し、単位時間と許容受信パケット数とから当該受信端末に適したパケット送信間隔を算出し、映像品質劣化ありの判定に応じて、パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、当該映像通信の通信経路上に位置する任意のノードに対してパケット転送品質制御を要求する。
【0031】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかるパケット転送品質制御システム10の構成について詳細に説明する。
このパケット転送品質制御システム10には、主な機能部として、パケット情報取得部11、パケット情報記憶部12、廃棄パケット判定部13、網品質管理閾値記憶部14、パケット送信間隔算出部15、およびパケット転送品質制御要求部16が設けられている。
【0032】
パケット情報取得部11は、映像通信サービスが提供されているインサービス環境下で、映像配信装置1と受信端末3との間で行われる品質制御対象の映像通信について、分岐器5でキャプチャされた当該映像通信に関する映像通信用パケットに関するパケット情報を取得する機能と、取得したパケット情報をパケット情報記憶部12へ保存する機能とを有している。
図4は、パケット情報の構成例である。このパケット情報には、少なくともパケットの送信順を示すパケット番号(シーケンス番号)と分岐器5を通過してパケット網2から受信端末3へ転送された各映像通信用パケットの転送時刻とが含まれている。
【0033】
パケット情報のパケット転送時刻については、計測を開始した最初の映像通信用パケットからの相対的な時刻情報で記述されているが、絶対的な時刻情報であってもよい。
また、このパケット転送時刻については、分岐器5でキャプチャされてパケット情報取得部11で受信した各映像通信用パケットの受信時刻を用いてもよく、分岐器5で計測した各映像通信用パケットの転送時刻をパケット情報取得部11が分岐器5から取得してもよい。あるいは、受信端末3で計測した各映像通信用パケットの転送時刻をパケット情報取得部11が受信端末3から取得してもよい。
【0034】
廃棄パケット判定部13は、パケット情報記憶部12から読み出したパケット情報に含まれるパケット転送状況を、網品質管理閾値記憶部14に網品質管理閾値として設定されている単位時間と許容受信パケット数とに基づき検証することにより、受信端末3での廃棄パケット数を推定し、この廃棄パケット数に応じて受信端末3での映像品質の劣化有無を判定する機能を有している。
【0035】
図5は、網品質管理閾値の構成例である。網品質管理閾値は、単位時間と許容受信パケット数とから構成されている。この網品質管理閾値の算出方法については、後述の第2の実施の形態で説明する。
許容受信パケット数は、単位時間当たりに受信端末3で受信可能なパケット数を示す網品質管理閾値である。パケット網2で発生するジッタの影響により、この許容受信パケット数を越える映像通信用パケットが受信端末3に到着した場合、受信端末3でバッファオーバーラン現象が発生し、受信パケットが廃棄されることを示している。
【0036】
パケット送信間隔算出部15は、網品質管理閾値記憶部14に網品質管理閾値として設定されている単位時間と許容受信パケット数とに基づいて、受信端末3がパケットを廃棄することなく、すなわちバッファオーバーラン現象を発生させることなく受信するための映像通信用パケットの送信間隔を算出する機能を有している。
ここでは、許容受信パケット数を単位時間で除算することにより、最小パケット送信間隔を算出する。また、受信端末3でのバッファアンダーラン現象を発生させることなく受信するための制御値として、予め設定されている係数(2以上の整数)をこの最小パケット送信間隔に乗算することにより最大パケット送信間隔を算出する。
【0037】
パケット転送品質制御要求部16は、廃棄パケット判定部13で得られた映像品質劣化判定結果とパケット送信間隔算出部15で得られた最小パケット送信間隔および最大パケット送信間隔と、セッションIDなど当該映像通信を特定するための識別情報とを含む品質情報に基づいて、映像配信装置1から受信端末3までの映像通信経路上に位置するノードに対して、パケット転送品質制御を要求する機能を有している。
【0038】
ホームゲートウェイ2H、エッジノード2A、中継ノード2Bなど、パケット転送機能を有する一般的な通信機器では、受信したパケットを一時的にバッファで保持し、指定された送信間隔でバッファからパケットを読み出して送信するバッファリング機能を有している。
本実施の形態では、映像配信装置1から受信端末3までの映像通信経路上に位置する、ホームゲートウェイ2H、エッジノード2A、中継ノード2Bのいずれかのノードに対して、パケット転送品質制御を要求する。これにより、これらノードのいずれかで、セッションIDなど識別情報で指定された映像通信について、受信端末3へ転送される映像通信用パケットの送信間隔、すなわちパケット転送品質が制御される。
【0039】
なお、映像配信装置からマルチキャストで複数の受信端末へ映像を同時に配信している場合、パケット網2内のノードで映像配信装置からの映像通信用パケットが、各受信端末宛の映像通信用パケットに分配される。したがって、パケット転送品質制御については、映像通信用パケットが分配された後の通信経路で実行する必要がある。一般的な通信経路では、エッジノード2Aやホームゲートウェイ2Hでは、受信端末3に関する個別の映像通信用パケットが転送されるため、これらノードにおいて、パケット転送品質制御を行えばよい。
【0040】
また、パケット転送品質制御システム10から映像通信経路上に位置するノードに対して、直接、パケット転送品質制御を要求するのではなく、パケット網2を管理する網管理制御サーバ2Sに対して、パケット転送品質制御システム10からパケット転送品質制御を要求してもよい。
網管理制御サーバ2Sは、マルチキャスト配信時のパケット分配ノードに関する情報を含む、パケット網2で提供する映像通信サービスの通信経路を管理し、当該通信経路上の各ノードにおけるパケット転送制御を行う機能を有しているため、パケット転送品質制御システム10からこの機能を利用することにより、間接的に、映像通信経路上に位置する適切なノードでのパケット転送品質を制御することができる。
【0041】
また、本実施の形態で用いるパケット転送品質制御要求については、MEGACO(ITU-T勧告 H.248/IETF RFC3015)などの規格に基づいて、RTCP(Real Time Transport Control Protocol)などの網制御用パケットを用いて、対象ノードへ送信すればよい。
また、パケット転送品質制御要求の送信先のうち、ホームゲートウェイ2Hのネットワークアドレスについては、分岐器5や受信端末3で取得した当該映像通信の映像通信用パケットから取得できる。また、UDP(User Datagram Protocol)やICMP(Internet Control Message Protocol)で用いる制御用パケットを用いて、ノードの到達性を確認することにより、ホームゲートウェイ2H、エッジノード2A、中継ノード2Bのネットワークアドレスを取得してもよい。
【0042】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図6を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるパケット転送品質制御システムの動作について説明する。図6は、第1の実施の形態にかかるパケット転送品質制御システムのパケット転送品質制御処理を示すフローチャートである。
【0043】
図6のユーザ体感品質推定処理において、パケット転送品質制御システム10は、まず、パケット情報取得部11により、映像通信サービスが提供されているインサービス環境下で、映像配信装置1と受信端末3との間で行われた、品質推定対象の映像通信に関するパケット情報を取得し、パケット情報記憶部12へ保存する(ステップ100)。
【0044】
次に、パケット転送品質制御システム10は、廃棄パケット判定部13により、パケット情報記憶部12から読み出したパケット情報に含まれるパケット転送状況を、網品質管理閾値記憶部14に網品質管理閾値として設定されている単位時間と許容受信パケット数とに基づき検証することにより、受信端末3での廃棄パケット数を推定し(ステップ101)、この推定廃棄パケット数と予め設定されている判定基準値とを比較した比較結果に応じて受信端末3での映像品質の劣化有無を判定する(ステップ102)。
ここで、推定廃棄パケットが判定基準値を超過していない場合(ステップ103:NO)、パケット転送品質の制御が不要であることから、一連のパケット転送品質制御処理を終了する。
【0045】
一方、推定廃棄パケットが判定基準値を超過している場合(ステップ103:YES)、パケット転送品質制御システム10は、パケット送信間隔算出部15により、網品質管理閾値記憶部14に網品質管理閾値として設定されている単位時間と許容受信パケット数とに基づいて、最小パケット送信間隔と最大パケット送信間隔とを算出する(ステップ104)。
【0046】
この後、パケット転送品質制御システム10は、パケット転送品質制御要求部16により、廃棄パケット判定部13で得られた映像品質劣化判定結果とパケット送信間隔算出部15で得られた最小パケット送信間隔および最大パケット送信間隔と、セッションIDなど当該映像通信を特定するための識別情報とを含む品質情報に基づいて、映像配信装置1から受信端末3までの映像通信経路上に位置するノードでの転送品質制御を要求し(ステップ105)、一連のパケット転送品質制御処理を終了する。
【0047】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、廃棄パケット判定部13により、パケット情報を許容受信パケット数で検証することにより受信端末3で廃棄された廃棄パケット数を推定して、当該廃棄パケット数に基づき受信端末3での映像品質の劣化有無を判定し、パケット送信間隔算出部15により、単位時間と許容受信パケット数とから受信端末3に適したパケット送信間隔を算出し、パケット転送品質制御要求部16により、映像品質劣化ありの判定に応じて、パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、当該映像通信の通信経路上に位置する任意のノードに対してパケット転送品質制御を要求するようにしている。
【0048】
これにより、映像配信装置からマルチキャストで複数の受信端末へ映像を同時に配信している場合でも、映像品質の劣化が発生した受信端末に関する映像通信用パケットに対して、パケット転送品質制御を個別に行うことができる。このため、パケット転送品質制御の適用が特定の映像配信方式に限定されることはない。
【0049】
また、受信端末へ転送される映像通信用パケットのパケット転送状況を示すパケット情報から、映像品質の劣化有無を判定するようにしたので、通信サービス提供者により容易に取得できる情報に基づいてパケット転送品質制御を行うことができる。このため、受信端末に対して特別な機能を追加する必要がなくなり、パケット転送品質制御の適用が特定の受信端末に限定されることはない。
【0050】
また、単位時間当たりの許容受信パケット数で映像品質の劣化有無を判定するようにしたので、受信端末でのバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質の劣化有無を的確に捉えることができる。したがって、ユーザ体感品質の劣化に応じたパケット転送品質制御を実現することが可能となる。
【0051】
また、対象となる映像通信のパケット情報に基づいて、受信端末における適切なパケット送信間隔を算出しているため、通信サービス提供者が容易に取得できるパケット情報に基づいて、受信端末でのユーザ体感品質を適切に制御できる。したがって、受信端末に対する特別な機能の追加などのユーザ負担を必要とすることなく、通信サービス提供者側の設備だけで、質の高い映像通信サービスを提供することが可能となる。
【0052】
[第2の実施の形態]
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置について説明する。図7は、第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値装置の構成を示すブロック図である。
この網品質管理閾値算出装置20は、全体として、一般的なサーバ装置やワークステーションなどの情報処理通信端末からなり、予め試験的に行った映像通信で得られたパケット情報とそのときの受信端末3での映像品質評価とに基づいて、当該試験に用いたパケット網2に対する網品質管理閾値を算出する機能を有している。
【0053】
網品質制御装置6は、入力されたパケットに対して任意のジッタ量を与えて出力する試験装置からなり、パケット網2と受信端末3との間の通信経上に設置されて、パケット網2から受信端末3へ転送される映像通信用パケットに、指定された通信条件に応じたジッタ量を与える機能を有している。なお、図7における映像配信装置1、パケット網2、受信端末3、映像表示装置4、分岐器5については、前述した図1と同じまたは同様の構成を有しており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0054】
本実施の形態では、網品質管理閾値として、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間である単位時間と、当該単位時間における受信端末3での許容受信パケット数との組を用い、実際の映像通信で転送される映像通信用パケットが、許容受信パケット数以内で転送されているか否かを検証することにより、当該映像通信について品質劣化が発生しているか否を判定する。
これにより、パケットが予定時刻より早く受信端末3に到着するようなバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響を考慮した網品質管理閾値を算出することができる。
【0055】
網品質管理閾値の算出方法としては、パケット網2でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で予め試験的に映像通信を実施し、これら映像送信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を用意しておくとともに、これら通信条件における受信端末3で再生した映像の品質評価結果を用意しておく。
【0056】
そして、網品質管理閾値算出装置20において、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間である単位時間と、当該単位時間における許容受信パケット数との組からなる網品質管理閾値を複数仮定して、これら仮定網品質管理閾値ごとに、各条件別パケット情報を検証することにより当該通信条件下での映像通信における品質劣化有無を評価し、これら仮定網品質管理閾値のうち各通信条件下での映像通信に関する受信端末3での実際の品質評価結果と最も近い評価が得られる仮定網品質管理閾値を、網品質管理閾値として決定する。
【0057】
[第2の実施の形態の構成]
次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置の構成について詳細に説明する。
図7に示すように、網品質管理閾値算出装置20には、主な機能部として、パケット情報取得部21、パケット情報記憶部22、端末情報取得部23、定常値算出部24、定常値記憶部25、品質評価結果取得部26、品質評価結果記憶部27、仮定閾値生成部30、評価正解率算出部31、および網品質管理閾値決定部32が設けられている。
【0058】
パケット情報取得部21は、網品質制御装置6で発生させた、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に行われる映像通信について、分岐器5でキャプチャされた当該映像通信に関する映像通信用パケットに関する条件別パケット情報を取得する機能と、取得した条件別パケット情報をパケット情報記憶部22へ保存する機能とを有している。
【0059】
図8は、条件別パケット情報の構成例である。この条件別パケット情報には、少なくとも分岐器5を通過してパケット網2から受信端末3へ転送された各映像通信用パケットについて、当該パケットのパケット番号(シーケンス番号)と転送時刻とが含まれている。
この際、網品質制御装置6によってジッタ量を変動させて、映像品質が劣化し始めるジッタ量を予め検出しておき、その前後のジッタ量をいくつか選択して、通信条件とすればよい。図8の例では、映像品質が劣化し始めるジッタ量が90msで、その前後の60msから120msまでを1ms刻みで通信条件としている。
【0060】
条件別パケット情報のパケット転送時刻については、計測を開始した最初の映像通信用パケットからの相対的な時刻情報で記述されているが、絶対的な時刻情報であってもよい。
また、このパケット転送時刻については、分岐器5でキャプチャされてパケット情報取得部21で受信した各映像通信用パケットの受信時刻を用いてもよく、分岐器5で計測した各映像通信用パケットの転送時刻をパケット情報取得部21が分岐器5から取得してもよい。
【0061】
条件別パケット情報として用いるパケット転送時刻については、受信端末3におけるパケット受信時刻を用いることにより、最も精度の高い網品質管理閾値を算出することができる。しかし、分岐器5から受信端末3までの通信経路で発生するジッタについては、パケット網2で発生するジッタと比較して無視できる程度であるため、分岐器5を設置する地点については、網品質制御装置6と受信端末3との間の通信経路上であれば、例えばパケット網2と受信端末3のアクセス回線との接続点に網品質制御装置6と隣接して設置しても、算出される網品質管理閾値に対する影響は無視できる程度である。
【0062】
網管理運用時に、網品質管理閾値を用いて、映像通信サービスが提供されているインサービス環境下でパケット網2を管理する場合、前出した試験的な映像通信と同様に分岐器5を設けて、実際の映像通信のパケットからパケット情報を取得する必要がある。したがって、分岐器5については、通信サービス提供者が管理しやすいパケット網2のエッジノードに設けるのが望ましく、条件別パケット情報を計測する際にも同様の位置に設けることにより、試験時と網管理運用時との誤差を抑制できる。
【0063】
また、分岐器5から網品質管理閾値算出装置20までの通信経路で発生するジッタについても同様であり、パケット転送時刻については、分岐器5で計測してもパケット情報取得部21で計測しても算出される網品質管理閾値に対する影響は無視できる程度である。
【0064】
端末情報取得部23は、受信端末3での映像通信に用いる各種端末情報を取得する機能を有している。
図9は、端末情報の構成例である。端末情報取得部23で取得する端末情報としては、図9に示すように、受信端末3で1秒当たりに再生するフレーム数を示す映像フレーム表示レートがある。
この映像フレーム表示レートについては、受信端末3で映像再生時に計測した値を利用してもよく、受信端末3の仕様として設定されている値を利用してもよい。
【0065】
端末情報を取得する方法としては、端末情報取得部23と受信端末3との間でのデータ通信や、端末情報が記録されている記録媒体から、端末情報取得部23が端末情報を取得するようにしてもよく、網品質管理閾値算出装置20に設けられているキーボードでオペレータが操作入力した端末情報を端末情報取得部23が取得してもよい。
【0066】
定常値算出部24は、端末情報取得部23で取得した映像フレーム表示レートから、受信端末3で1フレーム分の映像を再生するのに要するフレーム再生所要時間を定常単位時間として算出する機能と、パケット情報記憶部22に保存されている条件別パケット情報のうち、受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、定常単位時間当たりに受信端末3で受信する定常受信パケット数を算出する機能と、これら定常単位時間と定常受信パケット数とを定常値として定常値記憶部25へ保存する機能とを有している。
【0067】
品質評価結果取得部26は、パケット情報取得部21で取得した条件別パケット情報を得た際の試験的な映像通信について、その通信条件ごとに、受信端末3で再生した映像の品質評価結果を取得する機能と、取得した品質評価結果を品質評価結果記憶部27へ保存する機能とを有している。
図10は、品質評価結果の構成例である。品質評価結果については、映像品質の劣化の有無を検知した情報であってもよく、5段階評価等で定量化された評価値(例えば、ITU−T勧告P800で規定されているMOS:Mean Opinion Score)であってもよい。
【0068】
仮定閾値生成部30は、定常値記憶部25から読み出した定常単位時間および定常受信パケット数に基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する機能を有している。
【0069】
評価正解率算出部31は、仮定閾値生成部30で生成した仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、パケット情報記憶部22から読み出した各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価する機能と、これら推定評価を品質評価結果記憶部27から読み出した当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する機能とを有している。
【0070】
この際、評価正解率算出部31は、これら仮定閾値ごとに得られた映像品質の劣化有無を、品質評価結果記憶部27から読み出した当該通信条件での品質評価結果と比較し、両方の評価とも劣化ありまたは劣化なしを示す場合、すなわち両者の評価が一致している場合、当該仮定閾値による推定評価を正解と判定する。また、両方の評価のうち一方が劣化ありで他方が劣化なしを示す場合、すなわち両者の評価が不一致の場合、当該仮定閾値による推定評価を正解と判定する。
この後、評価正解率算出部31は、正解数を条件別パケット情報の数で除算することにより、仮定閾値数ごとの正解率を算出する。
【0071】
網品質管理閾値決定部32は、評価正解率算出部31で得られた仮定閾値数ごとの正解率を比較し、最も正解率の高い仮定閾値数の仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、網品質管理閾値を示す単位時間および許容受信パケット数として決定する機能と、これら単位時間および許容受信パケット数を、、図1に示したユーザ体感品質推定システム10の網品質管理閾値記憶部14へ保存する機能とを有している。
【0072】
網品質管理閾値算出装置20には、通常の情報処理装置に設けられている一般的な構成として、演算処理部、記憶部、データ通信インターフェース部、データ入所津力インターフェース部、操作入力部などの機能部が設けられており、前述した各機能部がこれらを利用して処理動作を行う。
【0073】
前述した網品質管理閾値算出装置20の各機能部のうち、パケット情報取得部21、端末情報取得部23、定常値算出部24、品質評価結果取得部26、仮定閾値生成部30、評価正解率算出部31、網品質管理閾値決定部32については、演算処理部で実現すればよい。
この演算処理部は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部に予め格納されているプログラムを読み出して実行することにより、各種機能部を実現する。
【0074】
また、網品質管理閾値算出装置20の各機能部のうち、パケット情報記憶部22、定常値記憶部25、品質評価結果記憶部27については、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置で実現すればよい。これら記憶部は、それぞれ別個の記憶装置で実現してもよく、いずれか複数あるいはすべての記憶部を1つの記憶装置で実現してもよい。
【0075】
[第2の実施の形態の動作]
次に、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置20の動作について説明する。
網品質管理閾値算出装置20における主な処理動作として、情報取得処理、網品質管理閾値決定処理、および評価正解率算出処理がある。
【0076】
[情報取得処理]
まず、図11を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置20での情報取得処理について説明する。図11は、第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での情報取得処理を示すフローチャートである。
【0077】
この情報取得処理は、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に映像通信を行う際に実行される。この際、網品質制御装置6によってジッタ量を変動させて、映像品質が劣化し始めるジッタ量を予め検出しておき、その前後のジッタ量をいくつか選択して、通信条件とすればよい。
【0078】
図11の情報取得処理において、網品質管理閾値算出装置20は、まず、パケット情報取得部21により、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に行われる映像通信について、分岐器5でキャプチャされた当該映像通信に関する映像通信用パケットに関する条件別パケット情報を取得し、取得した条件別パケット情報をパケット情報記憶部22へ保存する(ステップ200)。
【0079】
次に、網品質管理閾値算出装置20は、品質評価結果取得部26により、パケット情報取得部21で取得した条件別パケット情報を得た際の試験的な映像通信について、その通信条件ごとに、受信端末3で再生した映像の品質評価結果を取得し、取得した品質評価結果を品質評価結果記憶部27へ保存する(ステップ201)。
【0080】
また、網品質管理閾値算出装置20は、端末情報取得部23により、受信端末3での映像通信に用いる各種端末情報を取得する(ステップ202)。
続いて、網品質管理閾値算出装置20は、定常値算出部24により、受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常単位時間と定常受信パケット数とを定常値として算出し、定常値記憶部25へ保存する(ステップ203)。
【0081】
この際、定常値算出部24は、端末情報取得部23で取得した映像フレーム表示レートから、受信端末3で1フレーム分の映像を再生するのに要するフレーム再生所要時間を定常単位時間として算出する。また、パケット情報記憶部22に保存されている条件別パケット情報のうち、受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、定常単位時間当たりに受信端末3で受信する定常受信パケット数を算出する。
【0082】
図12は、定常値の構成例である。定常値のうち定常単位時間については、端末情報取得部23で取得した映像フレーム表示レートの逆数で算出できる。定常受信パケット数については、定常パケット情報に含まれる各パケットのうち、最初のパケットの転送時刻から定常単位時間長の時間区間を順に設け、これら時間区間ごとに、転送時刻が当該時間区間に含まれるパケットの数を計数し、各時間区間におけるパケット数を平均することにより、定常受信パケット数を算出すればよい。
これにより、網品質管理閾値算出装置20は、一連の情報取得処理を終了する
【0083】
[網品質管理閾値決定処理]
次に、図13を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置20での網品質管理閾値決定処理について説明する。図13は、第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での網品質管理閾値決定処理を示すフローチャートである。
【0084】
図13の網品質管理閾値決定処理において、網品質管理閾値算出装置20は、まず、仮定閾値生成部30により、定常値記憶部25から読み出した定常単位時間および定常受信パケット数に基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する(ステップ210)。
【0085】
図14は、仮定閾値の構成例である。ここでは、仮定単位時間として、その検証範囲を定常単位時間の9倍までとして、定常単位時間×n(nは1〜9の整数)で求められる9種類の値を用いている。また仮定許容受信パケット数については、その検証範囲を定常受信パケット数の80%増しから5%刻みで100%増しまでとし、定常単位時間×(n+x)(xは80%,85%,90%,95%,100%のいずれか)で求められる5種類の値を用いている。これにより、仮定閾値の45(=9×5)通りとなる。
【0086】
次に、網品質管理閾値算出装置20は、評価正解率算出部31により、仮定閾値生成部30で生成した仮定閾値ごとに、後述するステップ212,113を繰り返し実行する仮定閾値ループを開始する(ステップ211)。
この仮定閾値ループにおいて、評価正解率算出部31は、まず、仮定閾値ループの先頭で選択された仮定閾値を仮定閾値生成部30から取得し(ステップ212)、この仮定閾値に基づいて評価正解率を算出するため、後述する評価正解列処理を実行する(ステップ213)。
【0087】
このようにして、仮定閾値生成部30で生成したすべての仮定閾値について、評価正解率算出部31により評価正解率を算出した後、網品質管理閾値算出装置20は、網品質管理閾値決定部32により、これら仮定閾値数の正解率を比較する(ステップ214)。
そして、網品質管理閾値決定部32は、最も正解率の高い仮定閾値数の仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、網品質管理閾値を示す単位時間および許容受信パケット数として決定する(ステップ215)。
【0088】
この後、網品質管理閾値決定部32は、これら単位時間および許容受信パケット数からなる網品質管理閾値を、ユーザ体感品質推定システム10の網品質管理閾値記憶部14へ保存し(ステップ216)、一連の網品質管理閾値決定処理を終了する。
【0089】
[評価正解率算出処理]
次に、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置20での評価正解率算出処理について説明する。図15は、第2の実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での評価正解率算出処理を示すフローチャートである。
【0090】
図15の評価正解率算出処理において、網品質管理閾値算出装置20は、まず、評価正解率算出部31により、通信条件ごとに、後述するステップ221〜128を繰り返し実行する通信条件ループを実行する(ステップ220)。
【0091】
この仮定閾値ループにおいて、評価正解率算出部31は、まず、通信条件ループの先頭で選択された通信条件と対応する条件別パケット情報を、パケット情報記憶部22から読み出し(ステップ221)、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮想単位時間ごとにパケット数を計数する(ステップ222)。
【0092】
この際、評価正解率算出部31は、当該条件別パケット情報に記述されている先頭パケットから仮想単位時間ごとに順に時間区間を設定し、これら時間区間ごとに当該時間区間内に転送されたパケット数を計数してもよい。また、当該条件別パケット情報に記述されているパケットごとに、当該パケットの転送時間を開始時間として時間区間をそれぞれ設定してもよい。
【0093】
この後、評価正解率算出部31は、これら時間区間のうち、計数したパケットが、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在するか検証する(ステップ223)。
【0094】
検証の結果、仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在する場合(ステップ223:YES)、評価正解率算出部31は、映像品質の劣化ありと推定評価し(ステップ224)、仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在しない場合(ステップ223:NO)、評価正解率算出部31は、映像品質の劣化なしと推定評価する(ステップ225)。
【0095】
このようにして、映像品質の劣化有無を推定した後、評価正解率算出部31は、ループ処理で選択された通信条件と対応する品質評価結果を、品質評価結果記憶部27から読み出し(ステップ226)、この品質評価結果と推定評価結果とを比較する(ステップ227)。
ここで、両方の評価結果がともに劣化ありまたは劣化なしを示しており、両者の評価結果が一致している場合(ステップ227:YES)、評価正解率算出部31は、当該仮定閾値による推定評価が正解であることから、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮想閾値に関する推定評価の正解数を1だけ計数する(ステップ228)。
【0096】
一方、両方の評価のうち一方が劣化ありで他方が劣化なしを示しており、両者の評価結果が不一致の場合(ステップ227:NO)、評価正解率算出部31は、当該仮定閾値による推定評価が不正解であることから、正解数は計数しない。
【0097】
このようにして、推定評価の正解/不正解に応じて正解数の計数処理を行った後、評価正解率算出部31は、ステップ220で選択した通信条件に関するループ処理を終了し、ステップ220へ戻って、次の通信条件に関するループ処理へ移行する。
また、すべての通信条件に関するループ処理が終了した場合、評価正解率算出部31は、一連の評価正解率算出処理を終了する。
【0098】
図16は、評価正解率の算出結果例である。図17は、評価正解率の算出結果を示すグラフである。ここでは、仮定単位時間が33msで仮定許容受信パケット率が85%の場合、評価正解率が100%で最も大きい。したがって、この例では、網品質管理閾値として、単位時間=33ms、仮定許容受信パケット数=94個が選択される。
【0099】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、定常値算出部24により、条件別パケット情報のうち受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間である定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出し、仮定閾値生成部30により、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成しておく。
【0100】
そして、評価正解率算出部31により、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出し、網品質管理閾値決定部32により、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定している。
【0101】
したがって、網品質管理閾値として、単位時間と許容受信パケット数とが用いられるため、実際の映像通信で転送される映像通信用パケットが、許容受信パケット数以内で転送されているか否かを検証することにより、当該映像通信について品質劣化が発生しているか否を判定していることになる。
これにより、パケットが予定時刻より早く受信端末3に到着するようなバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響を考慮した網品質管理閾値を算出することができる。
【0102】
また、本実施の形態では、定常値算出部24により、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末3で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出してもよく、コンテンツに対する依存性が排除された網品質管理閾値を算出することができる。
【0103】
また、本実施の形態では、定常値算出部24において、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる定常単位時間を用いるようにしたので、各フレームとパケット転送状況を検証する際のパケット区切りとをほぼ同期させることができる。
したがって、評価正解率算出部31において、受信端末3での映像品質評価との同等の条件で、映像品質劣化の有無を推定評価することができ、網品質管理閾値の算出精度を高めることができる。
【0104】
また、本実施の形態では、仮定閾値生成部30により、定常単位時間に対して検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、各仮定単位時間を生成し、さらには、各仮定単位時間に対応する仮定許容受信パケット数を算出する際、定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた整数を乗算し、この乗算結果に検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の仮定単位時間をそれぞれ生成するようにしたので、各フレームとパケット転送状況を検証する際のパケット区切りとをほぼ同期させることができる。
したがって、評価正解率算出部31において、受信端末3での映像品質評価との同等の条件で、映像品質劣化の有無を推定評価することができ、網品質管理閾値の算出精度を高めることができる。
【0105】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0106】
また、第1の実施の形態では、パケット送信間隔算出部15で最大パケット送信間隔を算出する際、最小パケット送信間隔に係数を乗算して整数倍することにより最大パケット送信間隔を算出する場合を例として説明したが、この係数としては整数に限定されるものではなく、1より大きい実数を用いてもよい。
また、最小パケット送信間隔および最大パケット送信間隔については、単位時間と許容受信パケット数とにより求められることから、単位時間と許容受信パケット数とが更新された時点で、最小パケット送信間隔および最大パケット送信間隔を算出して、記憶部で保持しておき、パケット転送品質制御を要求する際、パケット転送品質制御要求部16が記憶部から最小パケット送信間隔および最大パケット送信間隔を取得するようにしてもよい。
【0107】
また、最大パケット送信間隔は、受信端末3でのバッファアンダーラン現象を発生させることなく受信するための制御値であることから、受信端末3でのバッファオーバーラン現象を回避するためのパケット転送品質制御では、変更する必要がない場合もある。したがって、このような場合には、パケット転送品質制御を要求する際、品質情報から最大パケット送信間隔を省くことも可能である。
また、最小パケット送信間隔と最大パケット送信間隔の関係を示す係数を用いて、パケット転送品質制御の要求先ノードで、最小パケット送信間隔または最大パケット送信間隔のいずれか一方から、他方を算出するようにしてもよい。
【0108】
また、第2の実施の形態では、定常値算出部24で定常受信パケット数を算出する場合、条件別パケット情報を計測する対象となる映像通信から、定常受信パケット数を算出する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。
【0109】
例えば、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末3で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出してもよく、コンテンツに対する依存性が排除された網品質管理閾値を算出することができる。
また、提供サービスによっては、当該サービスポリシに基づいて、平均値に代えて、各コンテンツ別定常受信パケット数のうちの最低値を定常受信パケット数として選択してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…映像配信装置(送信端末)、2…パケット網、2A…エッジノード、2B…中継ノード、2H…ホームゲートウェイ(HGW)、2S…網管理制御サーバ、3…受信端末、4…映像表示装置、5…分岐器、6…網品質制御装置、10…パケット転送品質制御システム、11…パケット情報取得部、12…パケット情報記憶部、13…廃棄パケット判定部、14…網品質管理閾値記憶部、15…パケット送信間隔算出部、16…パケット転送品質制御要求部、20…網品質管理閾値算出装置、21…パケット情報取得部、22…パケット情報記憶部、23…端末情報取得部、24…定常値算出部、25…定常値記憶部、26…品質評価結果取得部、27…品質評価結果記憶部、30…仮定閾値生成部、31…評価正解率算出部、32…網品質管理閾値決定部、33…画面表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信に関する当該受信端末での映像品質劣化に応じて、当該映像通信の通信経路上に位置するノードにおける映像通信用パケットの転送品質を制御するパケット転送品質制御システムであって、
前記パケット網から前記受信端末へ転送した当該映像通信用の各パケットについて計測したパケット転送時刻を示すパケット情報を記憶するパケット情報記憶部と、
単位時間当たりに前記受信端末で受信可能なパケット数を示す許容受信パケット数を網品質管理閾値として記憶する網品質管理閾値記憶部と、
前記パケット情報を前記許容受信パケット数で検証することにより前記受信端末で廃棄された廃棄パケット数を推定して、当該廃棄パケット数に基づき当該受信端末での映像品質の劣化有無を判定する廃棄パケット判定部と、
前記単位時間と前記許容受信パケット数とから当該受信端末に適したパケット送信間隔を算出するパケット送信間隔算出部と、
前記映像品質劣化ありの判定に応じて、前記パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、当該映像通信の通信経路上に位置する任意のノードに対してパケット転送品質制御を要求するパケット転送品質制御要求部と
を備えることを特徴とするパケット転送品質制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のパケット転送品質制御システムにおいて、
前記パケット送信間隔算出部は、前記許容受信パケット数を前記単位時間で除算することにより最小パケット送信間隔を算出し、
前記パケット転送品質制御要求部は、前記最小パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、前記パケット転送品質制御を要求する
ことを特徴とするパケット転送品質制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載のパケット転送品質制御システムにおいて、
前記パケット転送品質制御要求部は、前記ノードに代えて、前記パケット網を管理する網管理制御サーバに対して、当該ノードにおけるパケット転送品質制御を要求することを特徴とするパケット転送品質制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載のパケット転送品質制御システムにおいて、
前記網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置をさらに備え、
前記網品質管理閾値算出装置は、
前記パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた前記映像通信ごとに、当該パケット網から前記受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶部と、
前記通信条件ごとに、前記受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶部と、
前記条件別パケット情報のうち前記受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出部と、
前記定常単位時間と前記定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成部と、
前記仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、前記各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における前記品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出部と、
前記各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定部とを備える
ことを特徴とするパケット転送品質制御システム。
【請求項5】
パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信に関する当該受信端末での映像品質劣化に応じて、当該映像通信の通信経路上に位置するノードにおける映像通信用パケットの転送品質を制御するパケット転送品質制御システムで用いられるパケット転送品質制御方法であって、
パケット情報記憶部が、前記パケット網から前記受信端末へ転送した当該映像通信用の各パケットについて計測したパケット転送時刻を示すパケット情報を記憶するパケット情報記憶ステップと、
網品質管理閾値記憶部が、単位時間当たりに前記受信端末で受信可能なパケット数を示す許容受信パケット数を網品質管理閾値として記憶する網品質管理閾値記憶ステップと、
廃棄パケット判定部が、前記パケット情報を前記許容受信パケット数で検証することにより前記受信端末で廃棄された廃棄パケット数を推定して、当該廃棄パケット数に基づき当該受信端末での映像品質の劣化有無を判定する廃棄パケット判定ステップと、
パケット送信間隔算出部が、前記単位時間と前記許容受信パケット数とから当該受信端末に適したパケット送信間隔を算出するパケット送信間隔算出ステップと、
パケット転送品質制御要求部が、前記映像品質劣化ありの判定に応じて、前記パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、当該映像通信の通信経路上に位置する任意のノードに対してパケット転送品質制御を要求するパケット転送品質制御要求ステップと
を備えることを特徴とするパケット転送品質制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパケット転送品質制御方法において、
前記パケット送信間隔算出ステップは、前記許容受信パケット数を前記単位時間で除算することにより最小パケット送信間隔を算出するステップを含み、
前記パケット転送品質制御要求ステップは、前記最小パケット送信間隔を含む品質情報に基づいて、前記パケット転送品質制御を要求するステップを含む
ことを特徴とするパケット転送品質制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載のパケット転送品質制御方法において、
前記パケット転送品質制御要求ステップは、前記ノードに代えて、前記パケット網を管理する網管理制御サーバに対して、当該ノードにおけるパケット転送品質制御を要求するステップを含むことを特徴とするパケット転送品質制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載のパケット転送品質制御方法において、
網品質管理閾値算出装置が、前記網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出ステップをさらに備え、
網品質管理閾値算出ステップは、
パケット情報記憶部が、前記パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた前記映像通信ごとに、当該パケット網から前記受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶ステップと、
品質評価結果記憶部が、前記通信条件ごとに、前記受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶ステップと、
定常値算出部が、前記条件別パケット情報のうち前記受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出ステップと、
仮定閾値生成部が、前記定常単位時間と前記定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成ステップと、
評価正解率算出部が、前記仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、前記各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における前記品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出ステップと、
網品質管理閾値決定部が、前記各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定ステップとを備える
ことを特徴とするパケット転送品質制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−10238(P2011−10238A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154232(P2009−154232)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】