パケット送信制御プログラム、パケット送信制御装置、及びパケット送信制御方法
【課題】 ネットワーク全体で、パケットのデッドラインを保証した通信を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】 情報処理装置には周期的な通信タスクの送信順序を制御するパケットスケジューラが設けられる。また情報処理装置には利用可能通信帯域が与えられている。パケットスケジューラは、利用帯域が利用可能通信帯域を超えず、かつ、デッドラインモノトニック法によってデッドラインが保証できると判定された場合に、要求された通信タスクを実行する通信タスクとして登録する。
【解決手段】 情報処理装置には周期的な通信タスクの送信順序を制御するパケットスケジューラが設けられる。また情報処理装置には利用可能通信帯域が与えられている。パケットスケジューラは、利用帯域が利用可能通信帯域を超えず、かつ、デッドラインモノトニック法によってデッドラインが保証できると判定された場合に、要求された通信タスクを実行する通信タスクとして登録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット送信制御プログラム、パケット送信制御装置、及びパケット送信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リアルタイムパケット通信においてデッドラインを考慮して、EDF(Earliest
Deadline First)アルゴリズムに基づいてパケット通信を行う技術が知られている(特許文献1,2)。
【0003】
EDFアルゴリズムとは、デッドラインが最も近い処理を優先して実行するアルゴリズムである。
【特許文献1】特表2002−543520号公報
【特許文献2】特表2003−505931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デッドラインが最も近い処理を優先的に実行するEDF法では、パケットの送信要求の発生タイミングによっては、デッドラインが短く設定されたパケットが頻繁に送信されてしまい、他のパケット送信のデッドラインが保証できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ネットワークに接続されている情報処理装置におけるパケット送信のデッドラインを保証する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段または処理によってデッドラインを保証したパケット通信を行う。
【0007】
本発明に係るパケット送信制御プログラムは、ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御プログラムである。本発明に係るパケット送信制御プログラムは、情報処理装置を、送信要求受付手段と、スケジュール可能性判定手段と、パケット制御手段として機能させる。
【0008】
送信要求受付手段は、各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付ける。
【0009】
スケジュール可能性判定手段は、要求されたパケット送信のデッドライン保証が可能か否か判定し、デッドライン保証可能であれば、要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録する。
【0010】
パケット制御手段は、登録された通信タスクのパケットを、通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信する。
【0011】
スケジュール可能性判定手段は、すでに登録されている通信タスク及び要求されたパケット通信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証する
ようにパケットを送信したときの単位時間あたりのパケットの転送量(データ転送量)が情報処理装置に与えられた所定の最大転送量以内となる場合に、要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録する。
【0012】
このように、本発明に係るパケット送信制御プログラムは、各情報処理装置内でパケット送信のデッドラインを保証できるか否か判定し、さらに、各情報処理装置のパケット転送量が割り当てられた最大転送量以内であるか判定した上で、パケット送信要求を登録するか否か決定するので、ネットワーク内の全ての情報処理装置についてパケット送信のデッドラインを保証することが可能となる。
【0013】
本発明におけるスケジュール可能性判定手段は、デッドラインモノトニック(Deadline
Monotonic)法によって、すでに登録された通信タスク及び要求されたパケット送信の全てについてデッドライン保証が可能であるか判定することが好適である。
【0014】
より具体的には、送信要求受付手段が受け付けるパケット送信要求には、情報として、パケット送信の送信周期、1周期あたりの送信データ量及び各周期におけるデッドラインが含まれることが好ましい。ここで、各周期におけるデッドラインは送信周期と同じか送信周期よりも短い時間である。
【0015】
まず、スケジュール可能性判定手段は、1周期あたりの送信データ量及びネットワークの実効通信速度から、要求されたパケット送信に要する送信所要時間を算出する。次に、スケジュール可能性判定手段は、送信周期、算出した送信所要時間、及びデッドラインを用いてデッドラインモノトニック法によって、スケジュール可能性を判定する。
【0016】
なお、スケジュール可能性判定手段は、送信周期、送信所要時間、及びデッドラインが、デッドライン保証可能な必要十分条件を満たすか否かを判定する必要はなく、デッドライン保証可能なための十分条件を満たすか否かのみを判定するようにしても良い。デッドラインモノトニック法では、必要十分条件の判定は複雑であり処理に時間を要するため、処理の軽い十分条件での判定を用いることも好ましい。
【0017】
本発明に係るパケット送信制御プログラムが設けられている情報処理装置に割り当てられる所定の最大転送量は、設定情報として情報処理装置にあらかじめ与えられたり、各情報処理装置の全体送信量管理サーバから与えられたりすることが好ましい。
【0018】
また、最大転送量は常に同じ値である必要はなく、パケット送信制御プログラムは、すでに登録された通信タスク及び要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が最大転送量を超える場合には、全体送信量管理サーバに対して最大転送量の増加を求めることが好ましい。
【0019】
なお、本発明は、上記処理の少なくとも一部を有するパケット送信制御プログラムとして捉えることができる。また、本発明は、上記手段の少なくとも一部を含むパケット送信制御装置、または、上記処理の少なくとも一部を含むパケット送信制御方法として捉えることができる。上記手段及び処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0020】
たとえば、本発明の一態様としてのパケット送信制御装置は、ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御装置であって、各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付ける送信要求受付手段と、前記要求されたパケット送信のデッドライン保証が可能か否か判定し、デッドライン保証可能であれば、該要求されたパケット送信を、実行する通信タスクと
して登録するスケジュール可能性判定手段と、前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信するパケット制御手段と、を有し、前記スケジュール可能性判定手段は、すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の一態様としてのパケット送信制御方法は、ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御方法であって、前記情報処理装置が、各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付け、すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録し、前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ネットワークに接続されている情報処理装置におけるパケット送信のデッドラインを保証することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
<システム概要>
図1は、本実施形態に係るパケットスケジューラ(パケット送信制御プログラム)を実行する情報処理装置のネットワークシステムを示す図である。複数の情報処理装置1a、1b、1cがネットワーク3を介して接続されており、各情報処理装置は互いにパケット通信を行う。ここで、情報処理装置1cは、各情報処理装置1a,1b,1cのそれぞれが単位時間あたりに送信できるパケットの最大転送量を管理する全体送信量管理サーバとしての機能も兼ねる。
【0025】
図2は、パケットスケジューラを実行する情報処理装置1の構成を示す図である。情報処理装置1は、CPU11,タイマ12,ハードディスク装置などの補助記憶装置13、読み書き可能メモリ(RAM)などのメモリ14、及びネットワーク制御部15を有する。これらの各要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0026】
タイマ12は、情報処理装置1における現在時刻(システム時刻)を刻むものである。パケットスケジューラは、このタイマ12のシステム時刻に基づいてパケット送信の制御を行う。
【0027】
補助記憶装置13には、パケットスケジューラやその他アプリケーションのプログラムが格納されている。これらのソフトウェアは、補助記憶装置13からメモリ14に、必要に応じて適宜読み出され、CPU11によって実行される。なお、メモリ14には、パケットスケジューラが管理する通信タスクについての情報(周期、データ転送量、デッドライン、優先度など)や、情報処理装置1が単位時間あたりに送信(送出)できる最大転送量などが記憶される。
【0028】
情報処理装置1は、ネットワーク制御部15を介してネットワーク3と接続されている
。
【0029】
上述したように図1の情報処理装置1cは全体送信量管理サーバとしての機能も兼ねる。全体送信量管理サーバは、ネットワーク3に接続された各情報処理装置が単位時間あたりに送信できる最大転送量を決定する機能を有する。このように、全体送信量管理サーバは、各情報処理装置の最大転送量を決定することで、ネットワーク全体で、過剰な通信が発生することを防止する。
【0030】
<機能構成>
図3は、パケットスケジューラを実行する情報処理装置1の機能ブロック図である。パケットスケジューラの機能は、送信要求受付部21,最大転送量取得部22,通信速度取得部26,スケジュール可能性判定部23,及びパケット制御部25から構成される。なお、これらの各部は、パケット送信制御プログラムがCPU11によって実行されることによって、その機能が実現される。
【0031】
送信要求受付部21は、アプリケーションプログラム4からパケット送信の要求を受け付ける。パケットスケジューラは、IP(Internet Protocol)層上で機能するプログラムであるので、アプリケーションプログラム4と送信要求受付部21の間には、TCP(Transmission Control Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)などのトランスポート層および、さらにその上位のアプリケーション層が存在し、これらのプロトコル層を実装するプログラムが仲介するが、図3では省略している。
【0032】
送信要求受付部21が受け付けるパケット送信の要求は、一定周期ごとに所定のデータ量を送信する必要があり、送信開始から所定の時間(デッドライン)以内にパケットの送信を完了する必要がある。
【0033】
図4は、周期的なパケット送信の通信タスクを説明する図である。図4(a)に示すように、一定周期Tごとに所定量のパケットを送信する必要がある。また、この送信を完了する制限時間であるデッドラインDが定められている。なお、パケットの送信はデッドライン以内に完了すれば、正しく処理されたものとみなされる。したがって、図4(b)に示すように、複数の通信タスクが存在する状況では、それぞれの通信タスクは1周期内で連続して全てのデータを送信する必要はなく、分割して送信することになってもかまわない。
【0034】
最大転送量取得部22は、情報処理装置1が単位時間あたりに送信することを許可された最大量である最大転送量を、全体送信量管理サーバから取得する。上述したように、全体送信量管理サーバは、各情報処理装置の最大転送量を決定する。本実施形態では、最大転送量は全体送信量管理サーバから情報処理装置1に対して通信によって通知される。
【0035】
通信速度取得部26は、ネットワーク3の実効通信速度を取得する。実効通信速度は、実測によって取得してもよく、あらかじめ定められた設定値を使用することもできる。
【0036】
スケジュール可能性判定部23は、送信要求受付部21が受け付けたパケット送信の要求が、デッドラインを守って送信することができるか否か判定する。デッドライン保証が可能であれば、通信タスク管理テーブル24に、実行すべき通信タスクとして登録する。スケジュール可能性判定部23の機能の詳細については後述する。
【0037】
パケット制御部25は、通信タスク管理テーブル24に格納されている情報に基づいて、パケット送信を行う。パケット送信の通信タスクは、デッドラインが短いものほど優先度が高く設定され、パケット制御部25はこの優先度に基づいて送信するパケットを選択
する。
【0038】
<処理フロー>
(スケジュール可能性判定処理)
次に図5を用いて、スケジュール可能性判定部23が行う、スケジュール可能性判定処理について説明する。
【0039】
スケジュール可能性判定部23は、まずステップS101で、送信要求受付部21が受け付けたパケット送信と、すでに実行する通信タスクとして通信タスク管理テーブル24に格納されているタスクとを合計した場合の、単位時間あたりのデータ転送量を算出する。これは、Σ(各送信の送信データ量/周期)によって求めることができる。なお、(送信データ量)/(周期)は、MTU(Maximum Transfer Unit)単位に切り上げる。
【0040】
次に、ステップS102で、算出した単位時間あたりのデータ転送量が、最大転送量取得部22が取得した最大転送量以内であるか判定する。ここで、算出したデータ転送量が、最大転送量を超える転送量となる場合には、ステップS106に進み、受け付けたパケット送信を登録しないで、その実行を拒否する。算出したデータ転送量が、最大転送量以内である場合は、ステップS103に進む。
【0041】
ステップS103では、要求されたパケット送信の1周期の送信に要する送信所要時間を計算する。送信所要時間は、1周期あたりのデータ転送量を、通信速度取得部26が取得したネットワーク3の通信速度で割ることによって求めることができる。(送信所要時間)=(1周期あたりのデータ転送量)/(ネットワークの通信速度)。なお、1周期あたりのデータ転送量は、MTU単位で切り上げて使用する。
【0042】
スケジュール可能性判定部23は、ステップS104で、デッドラインモノトニック法を利用して、すでに登録された通信タスク及び要求されたパケット送信についてデッドラインを保証できるか判定を行う。
【0043】
デッドラインモノトニック法では、各パケット送信の周期、1周期あたりの送信所要時間、及びデッドラインを用いる。これらの情報に基づいてスケジュール可能性を判定する判断方法については、既知の如何なる方法を用いてもかまわない。例えば、スケジュール可能性の必要十分条件となる判定式を用いても良いし、十分条件を用いても良い。
【0044】
スケジュール可能性の十分条件を表す判定式としては、例えば、以下の判定式を用いることができる。
【数1】
なお、Ti,Ci,Diは、それぞれ通信タスクiの周期、送信所要時間、デッドラインである。また、通信タスクiは、i=1の通信タスクが最も優先度が高く、iが大きくなるにしたがって優先度が小さくなる。
また、
【数2】
は、x以上の最小整数を表す。
【0045】
この他の判定式については、例えば、以下の文献などに記載されている。
【0046】
Audsley, Burns, Richardson, Wellings, "Hard Real-Time Scheduling: The Deadline-Monotonic Approach", Proceedings of the 8th IEEE Workshop on Real-Time Operating Systems and Software, 1991
【0047】
このような判定式にしたがってスケジュール可能性の判定を行い、すでに登録された通信タスクと要求された通信タスクの全てについてデッドラインを守ることができる場合には、ステップS105に進んで、要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして、通信タスク管理テーブル24に格納する。デッドラインを保証できない場合には、ステップS106に進み、受け付けたパケット送信を登録せず、その実行を拒否する。
【0048】
(パケット送信処理)
次に、図6を用いて、パケット制御部25が行うパケット送信処理について説明する。パケット制御部25は、通信タスク管理テーブル24に格納されている周期やデッドラインなどの情報に基づいてパケットの送信順序を制御する。
【0049】
パケット制御部25は、ステップS201で、通信タスク管理テーブル24を参照して、最も優先度が高く、かつ、パケット送信が完了していない通信タスクを選択する。なお、上述したように、通信タスクの優先度は、デッドラインが短いものほど優先度が高く設定されている。
【0050】
次に、ステップS202で、パケット制御部25は選択した通信タスクのパケットを1MTU分だけ送信する。1MTU分の送信後は、再びステップS201に戻る。
【0051】
(実施形態の効果)
本実施形態では、各情報処理装置が送信するデータ量は、全体送信量管理サーバによって管理される。さらに、各情報処理装置は、利用可能な転送量の範囲内で、デッドラインモノトニック法によってデッドライン以内に通信を完了することが保証された通信タスクのみを受け入れる。したがって、ネットワークシステム全体で、デッドラインを守ってパケット送信することができる。
【0052】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、スケジュール可能性判定部23が行う処理(図5参照)が異なるだけであり、その他については第1の実施形態と同様であるので、同様の部分については説明を省略する。
【0053】
図7は、第2の実施形態におけるスケジュール可能性判定部23のスケジュール可能性判定処理を示すフローチャートである。図7の処理のうち、第1の実施形態と異なる部分について詳しく説明する。
【0054】
第1の実施形態と同様に、ステップS302で、要求されたパケット送信とすでに登録された通信タスクを合計した場合に必要となる単位時間あたりのデータ転送量が、情報処理装置1に割り当てられた最大転送量以内であるか判断する。必要となる単位時間あたり
のデータ転送量が最大転送量を超える場合には、ステップS303に進む。
【0055】
ステップS303では、最大転送量取得部22が、最大転送量の増加を全体送信量管理サーバに対して要求する。ここで、新たに要求する最大転送量は、ステップS302で求めた必要となる単位時間あたりのデータ転送量以上である。ステップS304で、全体送信量管理サーバへの要求が認められたか否か判定する。要求が認められた場合には、ステップS305に進んで、デッドラインモノトニック法によるスケジュール可能性判定を行う。要求が認められなかった場合には、ステップS308に進んで、要求されたパケット送信を拒否する。
【0056】
全体送信量管理サーバは、ネットワーク全体での単位時間あたりに送信可能なデータ量(利用可能帯域)および、各情報処理装置が単位時間あたりに送信する最大送信データ量を管理しているため、帯域に余裕がある場合には、情報処理装置1からの最大転送量を増加する要求を受け入れることができる。
【0057】
このように、第2の実施形態では、各情報処理装置が単位時間あたりに送信することのできる、データ量を必要に応じて増やすことができるので、より柔軟なスケジューリングが可能となる。
【0058】
なお、このように最大転送量の増加を認める場合には、情報処理装置1が必要とする転送量が最大転送量よりも低くなった場合に、最大転送量を低下させる要求を全体送信量管理サーバに対して通知することが、ネットワーク資源の有効活用の観点から有効であることは言うまでもない。
【0059】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、情報処理装置が、複数のネットワークに接続されている実施形態である。図8に示すように、情報処理装置6は、複数のネットワーク制御部15a,15b,15cを介して複数のネットワークに接続されている。この場合、情報処理装置6を含むネットワークシステムの全体は図9のようになる。図9において、情報処理装置6は、ネットワーク7a,7b,7cに接続されている。これら複数のネットワークとしては、例えば、イーサネット(登録商標)、携帯電話、光通信、無線通信などが挙げられる。
【0060】
この場合、情報処理装置6は、ネットワークごとに通信タスク管理テーブルを有する。スケジュール可能性判定部23は、送信相手先のネットワークに応じた通信タスク管理テーブルを用いて、上記実施形態と同様のスケジュール可能性判定処理を行うことで、それぞれのネットワークでデッドラインを保証した通信を行うことが可能となる。
【0061】
なお、図9では複数のネットワークに接続された情報処理装置は1台だけであるが、複数あってもかまわないことは明らかである。
【0062】
[変形例]
上記実施例においては、情報処理装置が単位時間あたりに送信できるデータ量の最大値は、全体送信量管理サーバから取得していた。しかし、必ずしもそのように構成する必要はなく、最大転送量は設定ファイルなどによる設定情報として、情報処理装置にあらかじめ与えられていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態におけるパケットスケジューラが利用されるネットワークシステムの概要図である。
【図2】第1の実施形態におけるパケットスケジューラを実行する情報処理装置の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるパケットスケジューラの機能ブロック図である。
【図4】周期タスクを説明する模式図である。
【図5】第1の実施形態におけるスケジュール可能性判定処理を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態におけるパケット送信制御を処理を示す図である。
【図7】第2の実施形態におけるスケジュール可能性判定処理を示すフローチャートである。
【図8】第3の実施形態におけるパケットスケジューラを実行する情報処理装置の構成を示す図である。
【図9】第3の実施形態におけるパケットスケジューラが利用されるネットワークシステムの概要図である。
【符号の説明】
【0064】
1 情報処理装置
2 パケットスケジューラ
3 ネットワーク
4 アプリケーション
6 情報処理装置
7 ネットワーク
11 CPU
12 タイマ
13 補助記憶装置
14 メモリ
15 ネットワーク制御部
21 送信要求受付部
22 最大転送量取得部
23 スケジュール可能性判定部
24 通信タスク管理テーブル
25 パケット制御部
26 通信速度取得部
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット送信制御プログラム、パケット送信制御装置、及びパケット送信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リアルタイムパケット通信においてデッドラインを考慮して、EDF(Earliest
Deadline First)アルゴリズムに基づいてパケット通信を行う技術が知られている(特許文献1,2)。
【0003】
EDFアルゴリズムとは、デッドラインが最も近い処理を優先して実行するアルゴリズムである。
【特許文献1】特表2002−543520号公報
【特許文献2】特表2003−505931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デッドラインが最も近い処理を優先的に実行するEDF法では、パケットの送信要求の発生タイミングによっては、デッドラインが短く設定されたパケットが頻繁に送信されてしまい、他のパケット送信のデッドラインが保証できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ネットワークに接続されている情報処理装置におけるパケット送信のデッドラインを保証する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段または処理によってデッドラインを保証したパケット通信を行う。
【0007】
本発明に係るパケット送信制御プログラムは、ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御プログラムである。本発明に係るパケット送信制御プログラムは、情報処理装置を、送信要求受付手段と、スケジュール可能性判定手段と、パケット制御手段として機能させる。
【0008】
送信要求受付手段は、各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付ける。
【0009】
スケジュール可能性判定手段は、要求されたパケット送信のデッドライン保証が可能か否か判定し、デッドライン保証可能であれば、要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録する。
【0010】
パケット制御手段は、登録された通信タスクのパケットを、通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信する。
【0011】
スケジュール可能性判定手段は、すでに登録されている通信タスク及び要求されたパケット通信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証する
ようにパケットを送信したときの単位時間あたりのパケットの転送量(データ転送量)が情報処理装置に与えられた所定の最大転送量以内となる場合に、要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録する。
【0012】
このように、本発明に係るパケット送信制御プログラムは、各情報処理装置内でパケット送信のデッドラインを保証できるか否か判定し、さらに、各情報処理装置のパケット転送量が割り当てられた最大転送量以内であるか判定した上で、パケット送信要求を登録するか否か決定するので、ネットワーク内の全ての情報処理装置についてパケット送信のデッドラインを保証することが可能となる。
【0013】
本発明におけるスケジュール可能性判定手段は、デッドラインモノトニック(Deadline
Monotonic)法によって、すでに登録された通信タスク及び要求されたパケット送信の全てについてデッドライン保証が可能であるか判定することが好適である。
【0014】
より具体的には、送信要求受付手段が受け付けるパケット送信要求には、情報として、パケット送信の送信周期、1周期あたりの送信データ量及び各周期におけるデッドラインが含まれることが好ましい。ここで、各周期におけるデッドラインは送信周期と同じか送信周期よりも短い時間である。
【0015】
まず、スケジュール可能性判定手段は、1周期あたりの送信データ量及びネットワークの実効通信速度から、要求されたパケット送信に要する送信所要時間を算出する。次に、スケジュール可能性判定手段は、送信周期、算出した送信所要時間、及びデッドラインを用いてデッドラインモノトニック法によって、スケジュール可能性を判定する。
【0016】
なお、スケジュール可能性判定手段は、送信周期、送信所要時間、及びデッドラインが、デッドライン保証可能な必要十分条件を満たすか否かを判定する必要はなく、デッドライン保証可能なための十分条件を満たすか否かのみを判定するようにしても良い。デッドラインモノトニック法では、必要十分条件の判定は複雑であり処理に時間を要するため、処理の軽い十分条件での判定を用いることも好ましい。
【0017】
本発明に係るパケット送信制御プログラムが設けられている情報処理装置に割り当てられる所定の最大転送量は、設定情報として情報処理装置にあらかじめ与えられたり、各情報処理装置の全体送信量管理サーバから与えられたりすることが好ましい。
【0018】
また、最大転送量は常に同じ値である必要はなく、パケット送信制御プログラムは、すでに登録された通信タスク及び要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が最大転送量を超える場合には、全体送信量管理サーバに対して最大転送量の増加を求めることが好ましい。
【0019】
なお、本発明は、上記処理の少なくとも一部を有するパケット送信制御プログラムとして捉えることができる。また、本発明は、上記手段の少なくとも一部を含むパケット送信制御装置、または、上記処理の少なくとも一部を含むパケット送信制御方法として捉えることができる。上記手段及び処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0020】
たとえば、本発明の一態様としてのパケット送信制御装置は、ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御装置であって、各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付ける送信要求受付手段と、前記要求されたパケット送信のデッドライン保証が可能か否か判定し、デッドライン保証可能であれば、該要求されたパケット送信を、実行する通信タスクと
して登録するスケジュール可能性判定手段と、前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信するパケット制御手段と、を有し、前記スケジュール可能性判定手段は、すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の一態様としてのパケット送信制御方法は、ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御方法であって、前記情報処理装置が、各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付け、すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録し、前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ネットワークに接続されている情報処理装置におけるパケット送信のデッドラインを保証することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
<システム概要>
図1は、本実施形態に係るパケットスケジューラ(パケット送信制御プログラム)を実行する情報処理装置のネットワークシステムを示す図である。複数の情報処理装置1a、1b、1cがネットワーク3を介して接続されており、各情報処理装置は互いにパケット通信を行う。ここで、情報処理装置1cは、各情報処理装置1a,1b,1cのそれぞれが単位時間あたりに送信できるパケットの最大転送量を管理する全体送信量管理サーバとしての機能も兼ねる。
【0025】
図2は、パケットスケジューラを実行する情報処理装置1の構成を示す図である。情報処理装置1は、CPU11,タイマ12,ハードディスク装置などの補助記憶装置13、読み書き可能メモリ(RAM)などのメモリ14、及びネットワーク制御部15を有する。これらの各要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0026】
タイマ12は、情報処理装置1における現在時刻(システム時刻)を刻むものである。パケットスケジューラは、このタイマ12のシステム時刻に基づいてパケット送信の制御を行う。
【0027】
補助記憶装置13には、パケットスケジューラやその他アプリケーションのプログラムが格納されている。これらのソフトウェアは、補助記憶装置13からメモリ14に、必要に応じて適宜読み出され、CPU11によって実行される。なお、メモリ14には、パケットスケジューラが管理する通信タスクについての情報(周期、データ転送量、デッドライン、優先度など)や、情報処理装置1が単位時間あたりに送信(送出)できる最大転送量などが記憶される。
【0028】
情報処理装置1は、ネットワーク制御部15を介してネットワーク3と接続されている
。
【0029】
上述したように図1の情報処理装置1cは全体送信量管理サーバとしての機能も兼ねる。全体送信量管理サーバは、ネットワーク3に接続された各情報処理装置が単位時間あたりに送信できる最大転送量を決定する機能を有する。このように、全体送信量管理サーバは、各情報処理装置の最大転送量を決定することで、ネットワーク全体で、過剰な通信が発生することを防止する。
【0030】
<機能構成>
図3は、パケットスケジューラを実行する情報処理装置1の機能ブロック図である。パケットスケジューラの機能は、送信要求受付部21,最大転送量取得部22,通信速度取得部26,スケジュール可能性判定部23,及びパケット制御部25から構成される。なお、これらの各部は、パケット送信制御プログラムがCPU11によって実行されることによって、その機能が実現される。
【0031】
送信要求受付部21は、アプリケーションプログラム4からパケット送信の要求を受け付ける。パケットスケジューラは、IP(Internet Protocol)層上で機能するプログラムであるので、アプリケーションプログラム4と送信要求受付部21の間には、TCP(Transmission Control Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)などのトランスポート層および、さらにその上位のアプリケーション層が存在し、これらのプロトコル層を実装するプログラムが仲介するが、図3では省略している。
【0032】
送信要求受付部21が受け付けるパケット送信の要求は、一定周期ごとに所定のデータ量を送信する必要があり、送信開始から所定の時間(デッドライン)以内にパケットの送信を完了する必要がある。
【0033】
図4は、周期的なパケット送信の通信タスクを説明する図である。図4(a)に示すように、一定周期Tごとに所定量のパケットを送信する必要がある。また、この送信を完了する制限時間であるデッドラインDが定められている。なお、パケットの送信はデッドライン以内に完了すれば、正しく処理されたものとみなされる。したがって、図4(b)に示すように、複数の通信タスクが存在する状況では、それぞれの通信タスクは1周期内で連続して全てのデータを送信する必要はなく、分割して送信することになってもかまわない。
【0034】
最大転送量取得部22は、情報処理装置1が単位時間あたりに送信することを許可された最大量である最大転送量を、全体送信量管理サーバから取得する。上述したように、全体送信量管理サーバは、各情報処理装置の最大転送量を決定する。本実施形態では、最大転送量は全体送信量管理サーバから情報処理装置1に対して通信によって通知される。
【0035】
通信速度取得部26は、ネットワーク3の実効通信速度を取得する。実効通信速度は、実測によって取得してもよく、あらかじめ定められた設定値を使用することもできる。
【0036】
スケジュール可能性判定部23は、送信要求受付部21が受け付けたパケット送信の要求が、デッドラインを守って送信することができるか否か判定する。デッドライン保証が可能であれば、通信タスク管理テーブル24に、実行すべき通信タスクとして登録する。スケジュール可能性判定部23の機能の詳細については後述する。
【0037】
パケット制御部25は、通信タスク管理テーブル24に格納されている情報に基づいて、パケット送信を行う。パケット送信の通信タスクは、デッドラインが短いものほど優先度が高く設定され、パケット制御部25はこの優先度に基づいて送信するパケットを選択
する。
【0038】
<処理フロー>
(スケジュール可能性判定処理)
次に図5を用いて、スケジュール可能性判定部23が行う、スケジュール可能性判定処理について説明する。
【0039】
スケジュール可能性判定部23は、まずステップS101で、送信要求受付部21が受け付けたパケット送信と、すでに実行する通信タスクとして通信タスク管理テーブル24に格納されているタスクとを合計した場合の、単位時間あたりのデータ転送量を算出する。これは、Σ(各送信の送信データ量/周期)によって求めることができる。なお、(送信データ量)/(周期)は、MTU(Maximum Transfer Unit)単位に切り上げる。
【0040】
次に、ステップS102で、算出した単位時間あたりのデータ転送量が、最大転送量取得部22が取得した最大転送量以内であるか判定する。ここで、算出したデータ転送量が、最大転送量を超える転送量となる場合には、ステップS106に進み、受け付けたパケット送信を登録しないで、その実行を拒否する。算出したデータ転送量が、最大転送量以内である場合は、ステップS103に進む。
【0041】
ステップS103では、要求されたパケット送信の1周期の送信に要する送信所要時間を計算する。送信所要時間は、1周期あたりのデータ転送量を、通信速度取得部26が取得したネットワーク3の通信速度で割ることによって求めることができる。(送信所要時間)=(1周期あたりのデータ転送量)/(ネットワークの通信速度)。なお、1周期あたりのデータ転送量は、MTU単位で切り上げて使用する。
【0042】
スケジュール可能性判定部23は、ステップS104で、デッドラインモノトニック法を利用して、すでに登録された通信タスク及び要求されたパケット送信についてデッドラインを保証できるか判定を行う。
【0043】
デッドラインモノトニック法では、各パケット送信の周期、1周期あたりの送信所要時間、及びデッドラインを用いる。これらの情報に基づいてスケジュール可能性を判定する判断方法については、既知の如何なる方法を用いてもかまわない。例えば、スケジュール可能性の必要十分条件となる判定式を用いても良いし、十分条件を用いても良い。
【0044】
スケジュール可能性の十分条件を表す判定式としては、例えば、以下の判定式を用いることができる。
【数1】
なお、Ti,Ci,Diは、それぞれ通信タスクiの周期、送信所要時間、デッドラインである。また、通信タスクiは、i=1の通信タスクが最も優先度が高く、iが大きくなるにしたがって優先度が小さくなる。
また、
【数2】
は、x以上の最小整数を表す。
【0045】
この他の判定式については、例えば、以下の文献などに記載されている。
【0046】
Audsley, Burns, Richardson, Wellings, "Hard Real-Time Scheduling: The Deadline-Monotonic Approach", Proceedings of the 8th IEEE Workshop on Real-Time Operating Systems and Software, 1991
【0047】
このような判定式にしたがってスケジュール可能性の判定を行い、すでに登録された通信タスクと要求された通信タスクの全てについてデッドラインを守ることができる場合には、ステップS105に進んで、要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして、通信タスク管理テーブル24に格納する。デッドラインを保証できない場合には、ステップS106に進み、受け付けたパケット送信を登録せず、その実行を拒否する。
【0048】
(パケット送信処理)
次に、図6を用いて、パケット制御部25が行うパケット送信処理について説明する。パケット制御部25は、通信タスク管理テーブル24に格納されている周期やデッドラインなどの情報に基づいてパケットの送信順序を制御する。
【0049】
パケット制御部25は、ステップS201で、通信タスク管理テーブル24を参照して、最も優先度が高く、かつ、パケット送信が完了していない通信タスクを選択する。なお、上述したように、通信タスクの優先度は、デッドラインが短いものほど優先度が高く設定されている。
【0050】
次に、ステップS202で、パケット制御部25は選択した通信タスクのパケットを1MTU分だけ送信する。1MTU分の送信後は、再びステップS201に戻る。
【0051】
(実施形態の効果)
本実施形態では、各情報処理装置が送信するデータ量は、全体送信量管理サーバによって管理される。さらに、各情報処理装置は、利用可能な転送量の範囲内で、デッドラインモノトニック法によってデッドライン以内に通信を完了することが保証された通信タスクのみを受け入れる。したがって、ネットワークシステム全体で、デッドラインを守ってパケット送信することができる。
【0052】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、スケジュール可能性判定部23が行う処理(図5参照)が異なるだけであり、その他については第1の実施形態と同様であるので、同様の部分については説明を省略する。
【0053】
図7は、第2の実施形態におけるスケジュール可能性判定部23のスケジュール可能性判定処理を示すフローチャートである。図7の処理のうち、第1の実施形態と異なる部分について詳しく説明する。
【0054】
第1の実施形態と同様に、ステップS302で、要求されたパケット送信とすでに登録された通信タスクを合計した場合に必要となる単位時間あたりのデータ転送量が、情報処理装置1に割り当てられた最大転送量以内であるか判断する。必要となる単位時間あたり
のデータ転送量が最大転送量を超える場合には、ステップS303に進む。
【0055】
ステップS303では、最大転送量取得部22が、最大転送量の増加を全体送信量管理サーバに対して要求する。ここで、新たに要求する最大転送量は、ステップS302で求めた必要となる単位時間あたりのデータ転送量以上である。ステップS304で、全体送信量管理サーバへの要求が認められたか否か判定する。要求が認められた場合には、ステップS305に進んで、デッドラインモノトニック法によるスケジュール可能性判定を行う。要求が認められなかった場合には、ステップS308に進んで、要求されたパケット送信を拒否する。
【0056】
全体送信量管理サーバは、ネットワーク全体での単位時間あたりに送信可能なデータ量(利用可能帯域)および、各情報処理装置が単位時間あたりに送信する最大送信データ量を管理しているため、帯域に余裕がある場合には、情報処理装置1からの最大転送量を増加する要求を受け入れることができる。
【0057】
このように、第2の実施形態では、各情報処理装置が単位時間あたりに送信することのできる、データ量を必要に応じて増やすことができるので、より柔軟なスケジューリングが可能となる。
【0058】
なお、このように最大転送量の増加を認める場合には、情報処理装置1が必要とする転送量が最大転送量よりも低くなった場合に、最大転送量を低下させる要求を全体送信量管理サーバに対して通知することが、ネットワーク資源の有効活用の観点から有効であることは言うまでもない。
【0059】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、情報処理装置が、複数のネットワークに接続されている実施形態である。図8に示すように、情報処理装置6は、複数のネットワーク制御部15a,15b,15cを介して複数のネットワークに接続されている。この場合、情報処理装置6を含むネットワークシステムの全体は図9のようになる。図9において、情報処理装置6は、ネットワーク7a,7b,7cに接続されている。これら複数のネットワークとしては、例えば、イーサネット(登録商標)、携帯電話、光通信、無線通信などが挙げられる。
【0060】
この場合、情報処理装置6は、ネットワークごとに通信タスク管理テーブルを有する。スケジュール可能性判定部23は、送信相手先のネットワークに応じた通信タスク管理テーブルを用いて、上記実施形態と同様のスケジュール可能性判定処理を行うことで、それぞれのネットワークでデッドラインを保証した通信を行うことが可能となる。
【0061】
なお、図9では複数のネットワークに接続された情報処理装置は1台だけであるが、複数あってもかまわないことは明らかである。
【0062】
[変形例]
上記実施例においては、情報処理装置が単位時間あたりに送信できるデータ量の最大値は、全体送信量管理サーバから取得していた。しかし、必ずしもそのように構成する必要はなく、最大転送量は設定ファイルなどによる設定情報として、情報処理装置にあらかじめ与えられていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態におけるパケットスケジューラが利用されるネットワークシステムの概要図である。
【図2】第1の実施形態におけるパケットスケジューラを実行する情報処理装置の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるパケットスケジューラの機能ブロック図である。
【図4】周期タスクを説明する模式図である。
【図5】第1の実施形態におけるスケジュール可能性判定処理を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態におけるパケット送信制御を処理を示す図である。
【図7】第2の実施形態におけるスケジュール可能性判定処理を示すフローチャートである。
【図8】第3の実施形態におけるパケットスケジューラを実行する情報処理装置の構成を示す図である。
【図9】第3の実施形態におけるパケットスケジューラが利用されるネットワークシステムの概要図である。
【符号の説明】
【0064】
1 情報処理装置
2 パケットスケジューラ
3 ネットワーク
4 アプリケーション
6 情報処理装置
7 ネットワーク
11 CPU
12 タイマ
13 補助記憶装置
14 メモリ
15 ネットワーク制御部
21 送信要求受付部
22 最大転送量取得部
23 スケジュール可能性判定部
24 通信タスク管理テーブル
25 パケット制御部
26 通信速度取得部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御プログラムであって、
前記情報処理装置を、
各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付ける送信要求受付手段と、
前記要求されたパケット送信のデッドライン保証が可能か否か判定し、デッドライン保証可能であれば、該要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録するスケジュール可能性判定手段と、
前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信するパケット制御手段
として機能させ、
前記スケジュール可能性判定手段は、すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録する
ことを特徴とするパケット送信制御プログラム。
【請求項2】
前記パケット送信の実行要求には、送信周期、1周期あたりの送信データ量、及び各周期におけるデッドラインが含まれ、
前記スケジュール可能性判定手段は、1周期あたりの送信データ量及び前記ネットワークにおける実効通信速度から、要求されたパケット送信に要する送信所要時間を算出し、前記送信周期、前記送信所要時間、及び前記デッドラインを用いて、デッドラインモノトニック法によって、前記すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについて前記デッドライン保証が可能か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のパケット送信制御プログラム。
【請求項3】
前記所定の最大転送量は、設定情報として前記情報処理装置にあらかじめ与えられることを特徴とする請求項1又は2に記載のパケット送信制御プログラム。
【請求項4】
前記所定の最大転送量は、前記ネットワークに接続された前記情報処理装置の送信量を管理する全体送信量管理サーバから与えられることを特徴とする請求項1又は2に記載のパケット送信制御プログラム。
【請求項5】
前記すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについて前記デッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が前記最大転送量を超える場合には、前記全体送信量管理サーバに対して前記所定の最大転送量の増加を求めることを特徴とする請求項4に記載のパケット送信制御プログラム。
【請求項6】
ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御装置であって、
各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付ける送信要求受付手段と、
前記要求されたパケット送信のデッドライン保証が可能か否か判定し、デッドライン保証可能であれば、該要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録するスケジュール可能性判定手段と、
前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信するパケット制御手段と、
を有し、
前記スケジュール可能性判定手段は、すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録する
ことを特徴とするパケット送信制御装置。
【請求項7】
ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御方法であって、
前記情報処理装置が、
各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付け、
すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録し、
前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信する
ことを特徴とするパケット送信制御方法。
【請求項1】
ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御プログラムであって、
前記情報処理装置を、
各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付ける送信要求受付手段と、
前記要求されたパケット送信のデッドライン保証が可能か否か判定し、デッドライン保証可能であれば、該要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録するスケジュール可能性判定手段と、
前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信するパケット制御手段
として機能させ、
前記スケジュール可能性判定手段は、すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録する
ことを特徴とするパケット送信制御プログラム。
【請求項2】
前記パケット送信の実行要求には、送信周期、1周期あたりの送信データ量、及び各周期におけるデッドラインが含まれ、
前記スケジュール可能性判定手段は、1周期あたりの送信データ量及び前記ネットワークにおける実効通信速度から、要求されたパケット送信に要する送信所要時間を算出し、前記送信周期、前記送信所要時間、及び前記デッドラインを用いて、デッドラインモノトニック法によって、前記すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについて前記デッドライン保証が可能か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のパケット送信制御プログラム。
【請求項3】
前記所定の最大転送量は、設定情報として前記情報処理装置にあらかじめ与えられることを特徴とする請求項1又は2に記載のパケット送信制御プログラム。
【請求項4】
前記所定の最大転送量は、前記ネットワークに接続された前記情報処理装置の送信量を管理する全体送信量管理サーバから与えられることを特徴とする請求項1又は2に記載のパケット送信制御プログラム。
【請求項5】
前記すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについて前記デッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が前記最大転送量を超える場合には、前記全体送信量管理サーバに対して前記所定の最大転送量の増加を求めることを特徴とする請求項4に記載のパケット送信制御プログラム。
【請求項6】
ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御装置であって、
各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付ける送信要求受付手段と、
前記要求されたパケット送信のデッドライン保証が可能か否か判定し、デッドライン保証可能であれば、該要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録するスケジュール可能性判定手段と、
前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信するパケット制御手段と、
を有し、
前記スケジュール可能性判定手段は、すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録する
ことを特徴とするパケット送信制御装置。
【請求項7】
ネットワークに接続された情報処理装置における、パケットの送信を制御するパケット送信制御方法であって、
前記情報処理装置が、
各周期においてデッドラインが定められた周期的なパケット送信の実行要求を受け付け、
すでに登録された通信タスク及び前記要求されたパケット送信の全てについてデッドラインを保証でき、かつ、全てのデッドラインを保証するようにパケットを送信したときの単位時間あたりの転送量が所定の最大転送量以内となる場合に、前記要求されたパケット送信を、実行する通信タスクとして登録し、
前記登録された通信タスクのパケットを、該通信タスクのデッドラインに応じた優先度で送信する
ことを特徴とするパケット送信制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2007−74218(P2007−74218A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257783(P2005−257783)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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