説明

パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを用いた筆記具、筆記具セット

【課題】 着色された被筆記面に筆記して形成された筆跡はパステル調の色を有すると共に、筆跡を消色させた際、筆跡箇所に白濁した残像が視認されることなく、良好な筆跡の消去性を示すパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを用いた筆記具、筆記具セットを提供する。
【解決手段】 有色から無色に変色する平均粒子径が0.01〜1.0μmのマイクロカプセル顔料と、白色から無色に変色する平均粒子径が0.01〜1.0μmのマイクロカプセル顔料とを含有してなり、前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料と、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の重量比が1:1〜1:25であるパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物、及びそれを用いた筆記具1、筆記具セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを用いた筆記具、筆記具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度変化により色調が変化する筆跡を形成できる可逆熱変色性筆記具用インキと、それを収容した筆記具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記筆記具により形成された筆跡は、手触等の体温、擦過により生じる摩擦熱、ヘアドライヤー等により筆跡中の可逆熱変色性材料を有色から無色に変色させ、その結果筆跡を消去することができるものの、筆跡が消去された箇所には、白濁した残像(筆跡)が視認される。
前記白濁した残像は被筆記面(紙)が白色の場合は視認され難いものの、着色された被筆記面に筆記すると残像は顕著に視認され、実用性を損なうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−186588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前述した問題点を解消しようとするものであって、即ち、白色の被筆記面のみならず、着色された被筆記面に筆記した際にパステル調の色を有する筆跡を形成することができ、筆跡を消去した際、筆跡箇所に白濁した残像が視認されることのないパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水と、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた有色から無色に変色する平均粒子径が0.01〜1.0μmのマイクロカプセル顔料と、融点が−40℃〜+95℃の範囲にある結晶性の、エステル類、エーテル類、ケトン類から選ばれる化合物を内包させた白色から無色に変色する平均粒子径が0.01〜1.0μmのマイクロカプセル顔料とを含有してなり、前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料と、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の重量比が1:1〜1:25であるパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を要件とする。
更には、前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料は、1.5μm以上の粒子が全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下であり、且つ、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料は1.5μm以上の粒子が全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下であること、前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの範囲にあり、且つ、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの範囲にあること、高分子凝集剤を含んでなること、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物と、水溶性樹脂とを含有してなること、水溶性有機溶剤と、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物と、水溶性樹脂とを含有してなること、前記有機窒素硫黄化合物が2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール、2−(チオシアネートメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾール、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる化合物であること、剪断減粘性付与剤を含んでなること等を要件とする。
更には、前記パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を収容した筆記具、筆記具と、摩擦体とからなる筆記具セットを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、着色された被筆記面に筆記して形成された筆跡はパステル調の色を有すると共に、筆跡を消色させた際、筆跡箇所に白濁した残像が視認されることなく、良好な筆跡の消去性を示す実用性に富むパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図4】本発明の筆記具の一実施例を示す説明図である。
【図5】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図6】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図7】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図8】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図9】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図10】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図11】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物中に含まれる着色剤は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた有色(白色を除く)から無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料である。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を適用できる(図1参照)。
【0009】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物も適用できる(図2参照)。
【0010】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記tとt間の温度域であり、着色状態と消色状態のいずれかの状態を呈することができ、色濃度の差の大きい領域であるtとtの間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0011】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度tを冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度tを摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち45〜95℃、好ましくは50〜90
℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
前記完全消色温度tが45℃以上であれば、夏場のような気温の高い条件下でも変色前の状態を維持でき、また、95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の擦過による摩擦熱で十分に消去することができる。
完全消色温度tが95℃を越える温度の場合、摩擦部材による擦過で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に消去し難くなり、擦過回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて擦過する傾向にあるため、筆記面を傷めてしまう虞がある。
また、完全発色温度tの温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、0℃以下が好適である。
更に、筆記具に充填された状態の可逆熱変色性組成物を発色状態にする必要がある。そのため、筆記具、インキ組成物、或いは、マイクロカプセル顔料を予め冷却して可逆熱変色性組成物を発色させておく必要がある。
製造工程における冷却手段としては汎用の冷凍庫にて冷却することが好ましいが、冷凍庫の冷却能力を考慮すると、−50℃迄が限度である。
【0012】
以下に可逆熱色性組成物の(イ)、(ロ)、(ハ)成分について化合物を例示する。
本発明の(イ)成分である電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができ、4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンを例示できる。
【0013】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0014】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)2−エチルヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0015】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0016】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0017】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0018】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0019】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】

式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0020】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】

(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0021】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0022】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】

(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0023】
更に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51−44706号公報、特開2003−253149号公報)加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を適用することもできる(図3参照)。
【0024】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0025】
前記三成分からなる可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して使用される。それは、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性が保持できるためであり、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が0.01〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.65μm、より好ましくは0.1〜0.49μm範囲が実用性を満たす。
平均粒子径が1.0μmを越えると、光を乱反射するマイクロカプセル顔料の比率が多くなるため、筆跡中のマイクロカプセル顔料に内包された可逆熱変色性組成物を有色から無色に変色させ、その結果筆跡を消去した状態における被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁し、残像として視認され易くなる。
また、平均粒子径が0.01μm未満では、残像は視認され難いものの、発色性に乏しいため消去前の筆跡の色濃度が十分ではない。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲を満たす系において、光を乱反射し易い1.5μm以上のマイクロカプセル顔料を全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下に調整することにより、いっそう消去時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
更に、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの場合は、前記マイクロカプセル顔料中の1.5μmを越える粒子を全マイクロカプセル顔料中の15体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下に調整すると、いっそう消色時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
更に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.49μmの場合も前記マイクロカプセル顔料中の1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中の15体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下であることにより、いっそう消色時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
なお、粒子径、粒度分布の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出する。
ここで、可逆熱変色性組成物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たすことが好ましい。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料は、円形断面の形態であっても非円形断面の形態であってもよく、円形断面の形態と非円形断面の形態のマイクロカプセル顔料が混在したものであってもよい。
【0026】
次に、融点が−40℃〜+95℃の範囲にある結晶性の、エステル類、エーテル類、ケトン類から選ばれる化合物を内包させた白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料について説明する。
前記マイクロカプセル顔料は、白色不透明と無色透明の可逆熱変色性を呈するマイクロカプセル顔料であって、内包物は凝固点以下の温度で固体状態の結晶となり、光を散乱して白色状態となり、入射光の透過を妨げ不透明状態を呈し、一方、加温により前記内包物の融点以上に温度を上昇させると該内包物は液状となり、入射光の透過性は増し、透明状態となる。
以下に内包されるエステル類を例示する。
一価の脂肪酸と脂肪族一価アルコール、又は、脂環を有する一価アルコールからなる総炭素数13以上のエステル類として、酢酸ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−ラウリル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリル酸セチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸n−プロピル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−ラウリル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、カプリン酸セチル、カプリン酸ステアリル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ノニル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸ステアリル、カプリル酸n−ヘキシル、カプリル酸n−ヘプチル、カプリル酸n−オクチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸ネオペンチル、ラウリン酸2エチルヘキシル、ラウリン酸n−オクチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−デシル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸ラウリル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸ミリスチル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸ステアリル、ラウリン酸シクロヘキシルメチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−デシル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸ラウリル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ステアリル、ミリスチン酸シクロヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸n−プロピル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−デシル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸ラウリル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸ミリスチルパルミチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸ステアリルパルミチン酸シクロヘキシルメチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸n−アミル、ステアリン酸n−ヘプチル、ステアリン酸ネオペンチル、ステアリン酸n−オクチル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−デシル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸エイコシル、ステアリン酸n−ドコシル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ステアリン酸オレイル、ステアリン酸イソステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、エイコ酸メチル、エイコ酸n−アミル、エイコ酸n−ヘプチル、エイコ酸n−オクチル、エイコ酸n−ノニル、エイコ酸n−デシル、エイコ酸n−ウンデシル、エイコ酸n−トリデシル、エイコ酸n−ペンタデシル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸n−アミル、ベヘン酸n−ヘプチル、ベヘン酸ネオペンチル、ベヘン酸n−オクチル、ベヘン酸n−ノニル、ベヘン酸n−デシル、ベヘン酸n−ウンデシル、ベヘン酸n−トリデシル、ベヘン酸ミリスチル、ベヘン酸n−ペンタデシル、ベヘン酸セチル、シクロヘキシル酢酸ステアリル、2−シクロヘキシルプロピオン酸ステアリル、オクチル酸ネオペンチル等が挙げられる。
【0027】
脂肪族二価又は多価カルボン酸と脂肪族一価アルコール又は脂環を有する一価アルコールからなる総炭素数18以上のエステル類として、セバシン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジn−ヘキシル、シュウ酸ジn−ノニル、シュウ酸ジn−デシル、シュウ酸ジn−ウンデシル、シュウ酸ジラウリル、シュウ酸ジn−トリデシル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジn−ペンタデシル、シュウ酸ジセチル、シュウ酸ジn−ヘプタデシル、シュウ酸ジステアリル、マロン酸ジラウリル、マロン酸ジn−トリデシル、マロン酸ジミリスチル、マロン酸ジn−ペンタデシル、マロン酸ジセチル、マロン酸ジn−ヘプタデシル、マロン酸ジステアリル、コハク酸ジn−ノニル、コハク酸ジn−デシル、コハク酸ジn−ウンデシル、コハク酸ジラウリル、コハク酸ジn−トリデシル、コハク酸ジミリスチル、コハク酸ジn−ペンタデシル、コハク酸ジセチル、コハク酸ジヘプタデシル、コハク酸ジステアリル、グルタル酸ジn−デシル、グルタル酸ジn−ウンデシル、グルタル酸ジラウリル、グルタル酸ジn−トリデシル、グルタル酸ジミリスチル、グルタル酸ジn−ペンタデシル、グルタル酸ジセチル、グルタル酸ジn−ヘプタデシル、グルタル酸ジステアリル、アジピン酸ジn−デシル、アジピン酸ジn−ウンデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジn−トリデシル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジn−ペンタデシル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジn−ヘプタデシル、アジピン酸ジステアリル、アジピン酸ジn−ドコシル、ピメリン酸ジn−デシル、ピメリン酸ジn−ウンデシル、ピメリン酸ジラウリル、ピメリン酸ジn−トリデシル、ピメリン酸ジミリスチル、ピメリン酸ジn−ペンタデシル、ピメリン酸ジセチル、ピメリン酸ジn−ヘプタデシル、ピメリン酸ジステアリル、スベリン酸ジn−デシル、スベリン酸ジn−ウンデシル、スベリン酸ジラウリル、スベリン酸ジn−トリデシル、スベリン酸ジミリスチル、セバシン酸ジn−ノニル、セバシン酸ジn−デシル、セバシン酸ジn−ウンデシル、セバシン酸ジラウリル、セバシン酸ジn−トリデシル、セバシン酸ジミリスチル、セバシン酸ジn−ペンタデシル、セバシン酸ジセチル、セバシン酸ジn−ヘプタデシル、セバシン酸ジステアリル、スベリン酸ジn−ペンタデシル、スベリン酸ジセチル、スベリン酸ジn−ヘプタデシル、スベリン酸ジステアリル、アゼライン酸ジn−デシル、アゼライン酸ジn−ウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、アゼライン酸ジn−トリデシル、アゼライン酸ジミリスチル、アゼライン酸ジn−ペンタデシル、アゼライン酸ジセチル、アゼライン酸ジn−ヘプタデシル、アゼライン酸ジステアリル、1,18オクタデシルメチレンジカルボン酸ジn−オクチル、1,18オクタデシルメチレンジカルボン酸ジシクロヘキシル、1,18オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル等が挙げられる。
【0028】
脂肪族二価又は多価アルコール又は脂環を有する二価及び多価アルコールと一価の脂肪酸からなる総炭素数18以上のエステル類として、エチレングリコールジカプリル酸エステル、エチレングリコールジカプリン酸エステル、エチレングリコールジウンデカン酸エステル、エチレングリコールジラウリン酸エステル、エチレングリコールジトリデカン酸エステル、エチレングリコールジミリスチン酸エステル、エチレングリコールジペンタデカン酸エステル、エチレングリコールジパルミチン酸エステル、エチレングリコールジヘプタデカン酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル、1,3−プロパンジオールジカプリル酸エステル、1,3−プロパンジオールジカプリン酸エステル、1,3−プロパンジオールジウンデカン酸エステル、1,3−プロパンジオールジラウリン酸エステル、1,3−プロパンジオールジトリデカン酸エステル、1,3−プロパンジオールジミリスチン酸エステル、1,3−プロパンジオールジペンタデカン酸エステル、1,3−プロパンジオールジパルミチン酸エステル、1,3−プロパンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,3−プロパンジオールジステアリン酸エステル、1,4−ブタンジオールジカプリル酸エステル、1,4−ブタンジオールジカプリン酸エステル、1,4−ブタンジオールジウンデカン酸エステル、1,4−ブタンジオールジラウリン酸エステル、1,4−ブタンジオールジトリデカン酸エステル、1,4−ブタンジオールジミリスチン酸エステル、1,4−ブタンジオールジペンタデカン酸エステル、1,4−ブタンジオールジパルミチン酸エステル、1,4−ブタンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,4−ブタンジオールジステアリン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジカプリン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジウンデカン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジラウリン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジトリデカン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジミリスチン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジペンタデカン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジパルミチン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジステアリン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジカプリン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジウンデカン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジラウリン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジトリデカン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジミリスチン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジペンタデカン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジパルミチン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジステアリン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジカプリン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジウンデカン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジラウリン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジトリデカン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジミリスチン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジペンタデカン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジパルミチン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,7−ペンタンジオールジステアリン酸エステル、1,8−オクタンジオールジカプリン酸エステル、1,8−オクタンジオールジウンデカン酸エステル、1,8−オクタンジオールジラウリン酸エステル、1,8−オクタンジオールジトリデカン酸エステル、1,8−オクタンジオールジミリスチン酸エステル、1,8−オクタンジオールジペンタデカン酸エステル、1,8−オクタンジオールジパルミチン酸エステル、1,8−オクタンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,8−オクタンジオールジステアリン酸エステル、1,9−ノナンジオールジカプリン酸エステル、1,9−ノナンジオールジウンデカン酸エステル、1,9−ノナンジオールジラウリン酸エステル、1,9−ノナンジオールジトリデカン酸エステル、1,9−ノナンジオールジミリスチン酸エステル、1,9−ノナンジオールジペンタデカン酸エステル、1,9−ノナンジオールジパルミチン酸エステル、1,9−ノナンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,9−ノナンジオールジステアリン酸エステル、1,10−デカンジオールジカプリル酸エステル、1,10−デカンジオールジカプリン酸エステル、1,10−デカンジオールジウンデカン酸エステル、1,10−デカンジオールジラウリン酸エステル、1,10−デカンジオールジトリデカン酸エステル、1,10−デカンジオールジミリスチン酸エステル、1,10−デカンジオールジペンタデカン酸エステル、1,10−デカンジオールジパルミチン酸エステル、1,10−デカンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,10−デカンジオールジステアリン酸エステル、1,5−ペンタンジオールジステアレート、1,2,6−ヘキサントリオールジミリステート、ペンタエリストールトリミリステート、ペンタエリストールテトララウレート、1,4−シクロヘキサンジオールジミリスチル、1,4−シクロヘキサンジオールジデシル、1,4−シクロヘキサンジオールジミリスチル、1,4−シクロヘキサンジオールジステアリル、1,4−シクロヘキサンジメタノールのジラウリート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのジミリステート等が挙げられる。
【0029】
芳香環を有する二価アルコールと一価の脂肪酸からなる総炭素数24以上のエステル類として、キシリレングリコールジカプリル酸エステル、キシリレングリコールジカプリン酸エステル、キシリレングリコールジウンデカン酸エステル、キシリレングリコールジラウリン酸エステル、キシリレングリコールジトリデカン酸エステル、キシリレングリコールジミリスチン酸エステル、キシリレングリコールジペンタデカン酸エステル、キシリレングリコールジパルミチン酸エステル、キシリレングリコールジヘプタデカン酸エステル、キシリレングリコールジステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0030】
芳香環を有する一価のカルボン酸と脂肪族一価アルコール又は脂環を有する一価アルコールからなる総炭素数15以上のエステル類として、3,5−ジメチル安息香酸ヘキシル、2−メチル安息香酸デシル、2−メチル安息香酸ラウリル、2−メチル安息香酸ミリスチル、2−メチル安息香酸ステアリル、4−tert−ブチル安息香酸セチル、4−シクロヘキシル安息香酸ベヘニル、4−フェニル安息香酸ミリスチル、4−オクチル安息香酸ラウリル、3−エチル安息香酸ステアリル、4−イソプロピル安息香酸デシル、4−ベンゾイル安息香酸ステアリル、4−クロロ安息香酸ステアリル、3−ブロモ安息香酸ミリスチル、2−クロロ−4−ブロモ安息香酸ステアリル、3,4−ジクロロ安息香酸デシル、2,4−ジブロモ安息香酸オクチル、3−ニトロ安息香酸セチル、4−アミノ安息香酸シクロヘキシルメチル、4−ジエチルアミノ安息香酸セチル、4−アニリノ安息香酸ステアリル、4−メトキシ安息香酸デシル、4−メトキシ安息香酸セチル、4−ブトキシ安息香酸オクチル、4−ヒドロキシ安息香酸セチル、p−クロロフェニル酢酸ステアリル、p−クロロフェニル酢酸セチル、サリチル酸ネオペンチル、2−ナフトエ酸ステアリル、ベンジル酸セチル、ベンジル酸ステアリル、3−ベンゾイルプロピオン酸デシル、安息香酸ステアリル、安息香酸ミリスチル、2−ベンゾイルプロピオン酸シクロヘキシルメチル、ケイ皮酸シクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0031】
芳香環を有する一価のカルボン酸と芳香環を有する一価アルコールからなる総炭素数14以上のエステル類として、サリチル酸ベンジル、サリチル酸4−メトキシメチルフェニルメチル、安息香酸4−クロロフェニルメチル、ケイ皮酸ベンジル、4−tert−ブチル安息香酸フェニル、2−メチル安息香酸4−クロロベンジル、安息香酸4−メトキシフェニルメチル等が挙げられる。
【0032】
一価の脂肪酸と芳香環を有する一価アルコールからなる総炭素数15以上のエステル類として、カプリル酸4−クロロフェニルメチル、カプリン酸4−クロロフェニルメチル、ラウリン酸4−メトキシフェニルメチル、ミリスチン酸4−メトキシフェニルメチル、ステアリン酸4−ニトロフェニルメチル、カプリン酸4−メチルフェニルメチル、ミリスチン酸2−クロロフェニルメチル、11−ブロモラウリン酸4−クロロフェニル、ステアリン酸4−イソプロピルフェニル、2−ナフトエ酸ステアリル、ベンジル酸セチル、ベンジル酸ステアリル、カプロン酸ベンジル、パルミチン酸ベンジル、ステアリン酸3−フェニルプロピル、11−ブロモラウリン酸フェニル等が挙げられる。
【0033】
二価の脂肪酸と芳香環を有する一価アルコールからなる総炭素数16以上のエステル類として、セバシン酸ジベンジル、4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジネオペンチル等が挙げられる。
【0034】
次に、エーテル類について例示する。
総炭素数16以上の脂肪族エーテル類としては、ジオクチルエーテル、ジニエチルヘキシルエーテル、ジデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジヘプタデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル等が挙げられる。
総炭素数11以上の芳香環を有するエーテル類としては、ベンジルイソアミルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、ジイソプロピルベンジルエーテル等が挙げられる。
【0035】
次に、ケトン類について例示する。
総炭素数10以上の脂肪族ケトン類として、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、6−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロン、シクロデカノン等が挙げられる。
総炭素数10以上の芳香環もしくは脂環を有するケトン類として、ベンジルアセトフェノン、ベンジルフェニルケトン、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、n−トリデカノフェノン、ラウロフェノン、n−ウンデカノフェノン、n−デカノフェノン、4’−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4’−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4’−n−ヘキシルアセトフェノン、4’−シクロヘキシルアセトフェノン、2−メチルベンゾフェノン、ジシクロヘキシルケトン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタノフェノン、4’−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジリデンシクロヘキサノン、ベンゾフェノン、シクロデカノン、2−n−ヘプチルシクロヘキサノン、2−シクロヘキシルシクロヘキサノン、2−(1−シクロヘキシル)シクロヘキサノン、ベンジルn−ブチルケトン、4’−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、シクロペンチルフェニルケトン、4−フェニルシクロヘキサノン、1−アセトテフタノン、2−アセトテフタノン、4−n−ペンチルシクロヘキサノン、ベンジルイソプロピルケトン、4’−n−プロピルアセトフェノン、2’,4’,6’−トリメチルアセトフェノン、シクロブチルフェニルケトン、2’,4’−ジメチルアセトフェノン、2’,5’−ジメチルアセトフェノン、4’−エチルアセトフェノン、イソプロピルフェニルケトン、4’−メチルプロピオフェノン、1−フェニル−2−ブタノン、フェニルn−プロピオケトン、シクロプロピルフェニルケトン、フェニルプロペニルケトン、2−アミノ−4’−クロロベンゾフェノン、2−アミノ−5−クロロベンゾフェノン、4−フルオロベンゾフェノン、2−アミノ−2’,5−クロロベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、2,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、2,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、2,3,4,5,6,−ペンタフルオロベンゾフェノン、デカフルオロベンゾフェノン、3−3’ジアミノベンゾフェノン、3−4ジアミノベンゾフェノン、4,4’ジアミノベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、3,4−ジメトキシフェニルシセトン、2’,3’,4’−トリメトキシアセトフェノン、3’,4’,5’−トリメトキシアセトフェノン等が挙げられる。
【0036】
前記融点が−40℃〜+95℃の範囲にある結晶性の、エステル類、エーテル類、ケトン類から選ばれる化合物をマイクロカプセルに内包する方法は前述の有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料と同様の方法が挙げられる。
前記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が0.01〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.65μm、より好ましくは0.1〜0.49μm範囲が実用性を満たす。
平均粒子径が1.0μmを越えると、光を乱反射するマイクロカプセル顔料の比率が多くなるため、筆跡中のマイクロカプセル顔料に内包された融点が−40℃〜+95℃の範囲にある結晶性の、エステル類、エーテル類、ケトン類から選ばれる化合物を白色から無色に変色させ、その結果筆跡を消去した状態における被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁し、残像として視認され易くなる。
また、平均粒子径が0.01μm未満では、残像は視認され難いものの、発色性に乏しいため消去前の十分なパステル調の筆跡が得られ難い。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲を満たす系において、光を乱反射し易い1.5μm以上のマイクロカプセル顔料を全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下に調整することにより、いっそう消去時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
更に、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの場合は、前記マイクロカプセル顔料中の1.5μmを越える粒子は全マイクロカプセル顔料中の15体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下に調整すると、いっそう消色時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
更に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.49μmの場合も前記マイクロカプセル顔料中の1.5μmを越える粒子は全マイクロカプセル顔料中の15体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下であることにより、いっそう消色時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
なお、粒子径、粒度分布の測定は前述の有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料と同様の方法により測定される。
ここで、融点が−40℃〜+95℃の範囲にある結晶性の、エステル類、エーテル類、ケトン類から選ばれる化合物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たすことが好ましい。
内包される化合物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の化合物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
【0037】
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料と、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の重量比は、1:1〜1:25、好ましくは1:5〜1:25、より好ましくは1:5〜1:20である
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料に対して白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料が1未満では、パステル調を呈する筆跡が得られ難く、一方、25を越えると、淡白色の筆跡となるため実用性に乏しくなる。
【0038】
前記インキ組成物に用いられる媒体としては、水と必要により水溶性有機溶剤が用いられる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が用いられる。
なお、ヒステリシス幅の大きい可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料については比重が概ね1を越えるため、適用する水溶性有機溶剤は1.1を超えるものが好適である。
前記インキ組成物としては、剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキ、ビヒクル中に水溶性高分子凝集剤を含み、顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキ等を挙げることができる。
【0039】
前記剪断減粘性付与剤を添加することにより、顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。
更に、前記インキ組成物を充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとボール抱持部の間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類。N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0040】
前記水溶性高分子凝集剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
なお、前記高分子凝集剤は二種以上を併用することもできる。
【0041】
前記高分子凝集剤と共に、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤及び有機窒素硫黄化合物を併用することにより、前記高分子凝集剤によるマイクロカプセル顔料のゆるい凝集体の分散性を向上させることができる。
前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤としては、側鎖に複数のカルボキシル基を有する櫛型高分子化合物であれば特に限定されるものではないが、側鎖に複数のカルボキシル基を有するアクリル高分子化合物が好適であり、前記化合物として日本ルーブリゾール社製の商品名:ソルスパース43000を例示できる。
【0042】
前記有機窒素硫黄化合物を併用するとインキ組成物を筆記具に充填して実用に供する際、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降をいっそう抑制する。
これは、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体を側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤によって分散させる分散性をより向上させるものである。
前記有機窒素硫黄化合物としては、チアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイソチアゾール系化合物から選ばれる化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物として具体的には、2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール(TBZ)、2−(チオシアネートメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾール(TCMTB)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられ、好ましくは2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール(TBZ)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物としては、(株)パーマケム・アジア製、商品名:トップサイド88、同133、同170、同220、同288、同300、同400、同500、同600、同700Z、同800、同950、北興産業(株)製、商品名:ホクスターHP、同E50A、ホクサイドP200、同6500、同7400、同MC、同369、同R−150を例示できる。
なお、前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物の質量比率は1:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:5であり、前記範囲を満たすことにより、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体の分散性、及び、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降抑制を十分に発現させることができる。
【0043】
更に、水溶性樹脂を添加すると紙面への固着性や粘性を付与できると共に、前述の側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物のインキ中での安定性を高める機能を付与できる。
前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコールが用いられる。
更に、前記ポリビニルアルコールとしてけん化度が70〜89モル%の部分けん化度型ポリビニルアルコールを用いると、インキ組成物が酸性域でも可溶性に富むため、より好適に用いられる。
前記水溶性樹脂の添加量としては、インキ組成物中に0.3〜3.0質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%の範囲で添加される。
【0044】
また、前記水溶性高分子凝集剤を含有しないインキ組成物、具体的には、水溶性有機溶剤と、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物と、水溶性樹脂とを含有することによって、マイクロカプセル顔料の分散性に優れたインキ組成物を得ることができる。
前記水溶性有機溶剤として好ましくはグリセリンが用いられ、インキ組成物全量に対し、5〜40重量%、好ましくは25〜40重量%、より好ましくは30〜35重量%配合することができる。
側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤、有機窒素硫黄化合物、水溶性樹脂については、前記と同様の化合物が用いられる。
【0045】
また、前記インキ組成物をボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗を防止することが好ましい。
【0046】
その他、必要に応じて炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
更に、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその塩等の硫黄系極圧添加剤を含有させることにより、インキのpHが酸性或いはアルカリ領域であっても、一度凍結したインキが再度解凍された後に生じるマイクロカプセル顔料の分散不良や凝集を抑制でき、インキ粘度の上昇やそれに伴う筆跡カスレや淡色化を防止することができると共に、ボールの腐食を防止することもできる。
【0047】
前記インキ組成物は、ペン体を筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペン等の筆記具に充填して用いられる。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したペン体に連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
前記ボールペン体について更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるペン体、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるペン体、金属又はプラスチック製ボール抱持部内部に樹脂製のボール受け座を設けたペン体、或いは、前記ペン体に抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
又、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3〜3.0mm、好ましくは0.4〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.0mm径程度のものが適用できる。
前記インキ組成物を収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
前記インキ収容管にはペン体を直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とペン体を連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを樹脂製、金属製等の軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にペン体を装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
また、前記インキ組成物を出没式のボールペンに収容する場合、出没式ボールペンの構造、形状は特に限定されるものではなく、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧にすることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
【0048】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等が挙げられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、前記増粘剤としては表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等を挙げることができる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0049】
前記インキ組成物をマーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるマーキングペン体を直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、前記インキ吸蔵体とペン体が連結されてなるマーキングペンの前記インキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、ペン体の押圧により開放する弁体を介してペン体とインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
前記ペン体は、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30〜70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40〜90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体は、従来より汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0050】
更に、前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のペン体を装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させた複合筆記具(両頭式やペン先繰り出し式等)であってもよい。
【0051】
前記筆記具により形成される筆跡は、指による擦過や加熱又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、消しカスが殆ど発生しない前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れる。
キャップを備える筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
出没式の筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は質量部である。
実施例1
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.0μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−30℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中26体積%であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0053】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.0μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−30℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中26体積%であり、温度変化により白色から無色に変色する。
【0054】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−30℃以下に冷却して青色に発色させたもの)3.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−30℃以下に冷却して白色に発色させたもの)22.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水47.78部を混合してパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0055】
筆記具の作製(図4参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、ホルダー5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペン体3(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記軸筒後端部には摩擦部材7としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0056】
前記筆記具を用いて白色の紙面上にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調青色を呈しており、軸筒に装着した摩擦部材を用いて筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で青色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0057】
実施例2
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.8μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中12体積%であり、温度変化によりピンク色から無色に変色する。
【0058】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.8μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−42℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中12体積%であり、温度変化により白色から無色に変色する。
【0059】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調整
前記マイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却してピンク色に発色させたもの)6.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却し白色に発色させたもの)24.0部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.4部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン35.0部、消泡剤0.02部、水33.08部を混合してパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0060】
筆記具の作製(図5参照)
前記インキ組成物8と、撹拌体9(SUS−304フェライト系ステンレス鋼球、直径3mm)を軸筒4内に内蔵し、ホルダー5を介して先端部にペン体3(チゼル型)を取り付け、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構10を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、筆記時のペン体への筆圧で弁が開く構造である。
前記軸筒後端部には摩擦部材7としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0061】
前記筆記具を用いて紙面上にパステル調ピンク色の筆跡を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調ピンク色を呈しており、軸筒に装着した摩擦部材を用いて筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調ピンク色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)でピンク色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0062】
実施例3
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.5μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中2体積%であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0063】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.5μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中2体積%であり、温度変化により白色から無色に変色する。
【0064】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して青色に発色させたもの)5.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して白色に発色させたもの)20.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水52.9部からなるパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0065】
筆記具の作製(図6参照)
ポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に樹脂製ホルダー5を介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したペン体3と連結させた。
前記インキ組成物8をインキ収容管内に充填し、次いで、インキ後端にインキ逆流防止体12(液栓)を充填し、更に尾栓13をインキ収容管の後部に嵌合させてレフィル14を得た。
更に、前記レフィルを軸筒4(先軸筒と後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップ6を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記後軸筒後部に摩擦部材7としてSEBS製ゴムを装着してなる。
【0066】
前記筆記具を用いて紙面上にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調青色を呈しており、軸筒に装着した摩擦部材を用いて筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で青色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0067】
実施例4
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.45μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中1体積%であり、温度変化によりピンク色から無色に変色する。
【0068】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.45μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中1体積%であり、温度変化により白色から無色に変色する。
【0069】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料(予め−20℃以下に冷却して青色に発色させたもの)7.5部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−22℃以下に冷却して白色に発色させたもの)17.5部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水52.9部からなるパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0070】
筆記具の作製(図7参照)
前記インキ組成物8を先端にペン体3を固着したポリプロピレン製軸筒4に充填し、次いで、インキ追従体12を充填し、尾栓13を嵌合させた。
更に、ゴムシール15を内在したキャップ6を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記ペン体は、金属材料をドリルによる切削加工により形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものであり、前記キャップは先端部に摩擦部材7としてSEBS製ゴムを装着してなる。
【0071】
前記筆記具を用いて紙面に筆記してパステル調ピンク色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調ピンク色を呈しており、キャップに装着した摩擦部材を用いて筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調ピンク色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)でピンク色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0072】
実施例5
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.65μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中7体積%であり、温度変化によりピンク色から無色に変色する。
【0073】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.65μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃であり、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中7体積%、温度変化により白色から無色に変色する。
【0074】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却してピンク色に発色させたもの)5.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して白色に発色させたもの)20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水54.88部を混合してパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0075】
筆記具の作製(図8参照)
前記インキ組成物8を軸筒4内に直接収容し、軸筒内の前方に櫛溝状のインキ調節部材16を有し、且つ、マーキングペンチップ3(チゼル型)を接続部材5を介して嵌合して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記筆記具には着脱自在のキャップを備えてなり、且つ、軸筒後端部には摩擦部材7としてSEBS樹脂を設けてなる。
【0076】
前記筆記具を用いて紙面上にパステル調ピンク色の筆跡を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調ピンク色を呈しており、軸筒に装着した摩擦部材を用いて筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調ピンク色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)でピンク色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0077】
実施例6
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.7μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中7体積%、温度変化により青色から無色に変色する。
【0078】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.7μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中7体積%、温度変化により白色から無色に変色する。
【0079】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して橙色に発色させたもの)5.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して白色に発色させたもの)25.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水49.88部を混合してパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0080】
筆記具の作製(図9参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、接続部材5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(チゼル型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0081】
前記筆記具を用いて紙面上にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調青色を呈しており、キャップ頂部で筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で青色であり、キャップ頂部で摩擦すると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0082】
実施例7
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.0μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−30℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中20体積%であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0083】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.0μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−30℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中20体積%であり、温度変化により白色から無色に変色する。
【0084】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−30℃以下に冷却して青色に発色させたもの)5.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−30℃以下に冷却して白色に発色させたもの)20.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック70〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部を混合してパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0085】
筆記具の作製(図10参照)
前記インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒4内に組み込み、出没式の筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒側面に設けられたクリップ形状の出没機構(スライド機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材7を設けてなる。
【0086】
前記筆記具を用いて紙面上にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調青色を呈しており、軸筒に装着した摩擦部材を用いて筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で青色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0087】
実施例8
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.5μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中1体積%であり、温度変化によりピンク色から無色に変色する。
【0088】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.5μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中1体積%であり、温度変化により白色から無色に変色する。
【0089】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して青色に発色させたもの)5.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して白色に発色させたもの)20.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック70〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部を混合してパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0090】
筆記具の作製(図11参照)
前記インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒4内に組み込み、出没式の筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、出没機構には、SEBS樹脂製の摩擦部材7を設けてなる。
【0091】
前記筆記具を用いて紙面上にパステル調ピンク色の筆跡を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調ピンク色を呈しており、軸筒に装着した摩擦部材を用いて筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調ピンク色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)でピンク色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0092】
実施例9
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.7μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中5体積%、温度変化により青色から無色に変色する。
【0093】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.7μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−40℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中5体積%、温度変化により白色から無色に変色する。
【0094】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して橙色に発色させたもの)5.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−40℃以下に冷却して白色に発色させたもの)25.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水49.88部を混合してパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0095】
筆記具の作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、接続部材を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップを装着して筆記具(マーキングペン)を得た。
【0096】
筆記具セットの作製
前記筆記具と、長方形のSEBS樹脂製摩擦体を組み合わせて筆記具セットを得た。
前記筆記具を用いて紙面に筆記してパステル調青色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調青色を呈しており、摩擦体を用いて文字を摩擦すると、該文字は消色して無色となり、この状態は室温下では保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で青色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0097】
比較例1
有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.3μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−20℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中80体積%であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0098】
白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の調製
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3.0部、カプリン酸ステアリル50.0部からなる組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.3μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−20℃、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中80体積%であり、温度変化により白色から無色に変色する。
【0099】
パステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−20℃以下に冷却して青色に発色させたもの)3.0部、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料(予め−20℃以下に冷却して白色に発色させたもの)22.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水47.78部を混合してパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0100】
筆記具の作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、ホルダーを介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペン体(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップを装着して筆記具(マーキングペン)を得た。
前記軸筒後端部には摩擦部材としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0101】
前記筆記具を用いて白色の紙面上にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でパステル調青色を呈しており、軸筒に装着した摩擦部材を用いて筆跡を摩擦すると消色して無色となり、この状態は室温下で保持された。
また、前記筆記具を用いて黒色の用紙にパステル調青色の筆跡を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で青色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色するものの、筆記箇所に白濁の残像が視認された。
【符号の説明】
【0102】
加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 筆記具
2 インキ吸蔵体
3 ペン体
4 軸筒
5 ホルダー
6 キャップ
7 摩擦部材
8 インキ組成物
9 攪拌体
10 弁機構
11 インキ収容管
12 インキ逆流防止体
13 尾栓
14 レフィル
15 ゴムシール
16 インキ調節部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた有色から無色に変色する平均粒子径が0.01〜1.0μmのマイクロカプセル顔料と、融点が−40℃〜+95℃の範囲にある結晶性の、エステル類、エーテル類、ケトン類から選ばれる化合物を内包させた白色から無色に変色する平均粒子径が0.01〜1.0μmのマイクロカプセル顔料とを含有してなり、前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料と、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の重量比が1:1〜1:25であるパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料は、1.5μm以上の粒子が全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下であり、かつ、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料は1.5μm以上の粒子が全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下である請求項1記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項3】
前記有色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの範囲にあり、且つ、白色から無色に変色するマイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの範囲にある請求項1又は2記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項4】
高分子凝集剤を含んでなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項5】
側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物と、水溶性樹脂とを含有してなる請求項4記載のパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項6】
水溶性有機溶剤と、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物と、水溶性樹脂とを含有してなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記載のパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項7】
前記有機窒素硫黄化合物が2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール、2−(チオシアネートメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾール、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる化合物である請求項5又は6記載のパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項8】
剪断減粘性付与剤を含んでなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のパステル調可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を収容した筆記具。
【請求項10】
摩擦部材を備えてなる請求項9記載の筆記具。
【請求項11】
請求項9記載の筆記具と、摩擦体とからなる筆記具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−77260(P2012−77260A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226325(P2010−226325)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】