説明

パターン化した基板上の(Al,In,Ga,B)N装置

0<x<1かつ0≦y<1である、InGa1−xNおよびInGa1−yNの交互層の少なくとも2つの周期を有する窒化物中間層と、窒化物中間層上に少なくとも1つの量子井戸構造を有する窒化物に基づく活性領域とを備える、パターン化した基板上の窒化物発光ダイオードである。本発明は、発光効率を改善することによって、窒化物に基づく素子構造の電子効率特性の改善をもたらし、その結果、窒化物半導体素子の応用を種々の商品に展開することができる。また、本発明は、パターン化した基板上に成長させた多重量子井戸構造の活性層性質を改善することによって、光出力特性を大幅に増強する。この改善は、LED素子の光取り出しの改善が示された、パターン化した基板の使用の拡大をもたらし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、同時係属であって同一人に譲渡された米国仮特許出願第60/973,671号(2007年9月19日出願、名称「(Al,In,Ga,B)N DEVICE STRUCTURES ON A PATTERNED SUBSTRATE」、発明者(Michael Iza、Hitoshi Sato、Eu Jin Hwang、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamura)、代理人整理番号30794.243−US−P1(2007−773−1))の米国特許法第119条第(e)項の優先権の利益を主張し、この出願は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
本願は、次の同時係属であって同一人に譲渡された米国特許出願に関連している:
米国実用特許出願第12/102,612号(2008年4月14日出願、名称「METHOD FOR DEPOSITION OF (Al,In,Ga,B)N」、発明者(Michael Iza、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamura)、代理人整理番号30794.219−US−U1(2007−338))であって、この出願は、米国仮特許出願第60/911,323号(2007年4月12日出願、名称「METHOD FOR DEPOSITION OF (Al,In,Ga,B)N」、発明者(Michael Iza,Steven P.DenBaars and Shuji Nakamura)、代理人整理番号30794.219−US−P1(2007−338))の米国特許法第119条第(e)項の優先権の利益を主張し、この出願は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0003】
(発明の分野)
(1.技術分野)
本発明は、パターン化した基板上の窒化物に基づく発光ダイオード(LED)構造等の、強化された性能を有する、パターン化した基板上の窒化物に基づく素子に関する。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の説明)
(注:本出願は、明細書の全体を通して示されるように、角括弧内の1つ以上の参照番号、例えば[x]によって多数の異なる出版物を参照する。これらの参照番号による順序で示されるこれらの異なる出版物の一覧は、以下の「参考文献」という表題の項に見出すことができる。これらの出版物のそれぞれは、参照することにより本明細書に組み込まれる。)
窒化ガリウム(GaN)、およびアルミニウムおよびインジウムを組み込んだその三元および四元化合物(AlGaN、InGaN、AlInGaN)の有用性が、可視および紫外光電子素子および高出力の電子素子の製造について実証されてきた。これらの素子は、一般的に、分子ビームエピタキシ(MBE)、金属有機化学蒸着(MOCVD)、および水酸化物気相エピタキシ(HVPE)を含む成長手法を使用して、エピタキシャルに成長させる。
【0005】
窒化物に基づく光電子素子は、高品質のGaNを堆積させる前の薄い核形成層の用法の出現によって、急速に商業化へと進み始めた。この手法は、GaN成長に利用できる天然基板の不足に起因して用いられている。マグネシウムドーピングに続く高温焼鈍によるp型GaNの開発等の、その後の手法も不可欠であることが判明した。しかしながら、短波長素子のための活性層としてのInGaNの使用が進展することによって、窒化物に基づく発光ダイオード(LED)およびレーザダイオード(LD)は、多数の他の研究ベンチャーを凌ぐことができるようになり、今では、可視光半導体の応用に使用される主要な材料系になってきている。
【0006】
LEDの外部量子効率または全効率(η)は、以下の式によって定義することができる。
【0007】
η=ηintηinjηext
式中、抽出効率ηextは、取り出した光子の量として定義され、注入効率ηinjは、素子の活性領域内に注入されるキャリアの量として定義され、また、内部量子効率ηintは、デバイスの活性領域内で発生する光子の量として定義される。素子の内部量子効率は、欠陥および不純物等の非放射中心の数を低減することによって最大化することができる。すでに、窒化物に基づく青色LEDの内部量子および注入効率は、素子層の堆積状態を最適化することによって、高いレベルにまで改善されてきた。したがって、素子の外部効率におけるさらなる改善には、取り出し効率の改善が必要となる。
【0008】
サファイア上に成長させた窒化物に基づく素子の取り出し効率は、窒化物膜とサファイアとの間の屈折率の差によって阻害される。この屈折差は、次に、活性領域内で発生する光を「閉じ込める」可能性のある内面反射を引き起こす。したがって、発生する光の大部分は、窒化物膜を通って伝播し、そして有用な光として使用することができない。
【0009】
窒化物素子からの光取り出しを改善する1つの手法は、素子がその後に成長させられるパターン化した基板を使用することである。パターン化した基板は、縞、半円、角錐、異なる形状のメサ等(これに限定されない)が挙げられる表面特徴を生成するように処理された、任意の基板として定義される。基板上のパターンは、光干渉の抑制によって、素子の活性領域からの発光を取り出すことを支援する。Tadatomo他によるパターン化したサファイアウエハ上に成長させる初期の研究では、最初に、異なる結晶成長方向に沿って、パターン化した溝または縞上に成長させることによって、窒化物膜の転位密度を低減しようと試みた[1(非特許文献1)]。これは、一般的に横方向エピタキシャル過成長(LEO)と称される2ステップの成長手順を避けるために行われたものであり、縞の最上部に成長させる窒化物膜の転位密度を低減するために、成長させたままの窒化物膜の最上部に堆積させた、パターン化したSiO縞を使用する。LEOプロセスは、SiO縞を堆積させるために、ウエハを反応器から取り除き、次いで、パターン化した窒化物膜の最上部に窒化物膜を再成長させるために、反応器内に再導入しなければならない、という事実のために扱い難いものである。パターン化した基板上に成長させる利点は、LEOプロセスの2つのステップと比較して、1つの堆積ステップで実行できることである。
【0010】
パターン化した基板上に成長させたLED素子のさらなる改善は、各種パターン設計を用いることによって、光取り出しが高められたことを示した[2(非特許文献2)]。これらの素子は、パターン化していない基板上に成長させたLED素子と比較して、出力および発光効率の増加を呈した。しかしながら、これらの素子は、標準LED構造の使用を用いた。標準LED構造は、サファイアまたは炭化ケイ素基板と、GaNまたはAlGaNでできている緩衝層と、シリコンをドープしたGaNでできているn接触層と、InGaNを含有する単一量子井戸(QW)または多重量子井戸(MQW)でできている活性層と、AlGaNでできている電子阻止層と、マグネシウムをドープしたGaNでできているp接触層とを備える構造として説明される。この素子構造は、20mAの順方向電流において良好に機能することが示され、450nmで発光し、出力は10〜15mWであった。
【0011】
この標準素子構造は、パターン化していない基板に対して良好に機能したが、この標準構造は、パターン化した基板とともに使用した時に、同等の駆動電流での出力において不利益な性能を呈した。したがって、パターン化した基板上に堆積させた窒化物に基づくLEDの性能を向上させるためには、素子構造を改善する必要がある。本発明は、素子の活性領域に隣接して配置される窒化物に基づく中間層を含む素子構造を使用することによって、この問題に対処する。
【0012】
上述のように、パターン化した基板上の窒化物LEDの素子構造に使用される現在の技術は、窒化物に基づく中間層の使用を用いていない。本発明は、パターン化した基板上に成長させた高出力LEDを実現できるようにする。窒化物中間層の使用は、従来のパターン化していない基板上に成長させたLEDの出力を増強することが示されたが、これが生じる理由については科学的な合意に達していなかった[3(非特許文献3)]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】K.Tadatomo,H.Okagawa,Y.Ohuchi,T.Tsunekawa,T.Jyouichi,Y.Imada,M.Kato,H.Kudo,and T.Taguchi,phys.stat.sol.(a)188,No.1,pp.121−125(2001)
【非特許文献2】Motokazu Yamada,Tomotsugu Mitani,Yukio Narukawa,Shuji Shioji,Isamu Niki,Shinya Sonobe、Kouichiro Deguchi,Masahiko Sano,and Takashi Mukai,Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41(2002),pp.L1431−L1433,Part2、No.12B,15 December 2002.
【非特許文献3】Shuji Nakamura,Takashi Mukai,Masayuki Senoh,Shin−ichi Nagahama,and Naruhito Iwasa,J.Appl.Phys.Vol.74、No.6(1993),pp.3911−3915,15 September 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、発光素子の性能を改善するために、パターン化した基板上に窒化物中間層を使用することによって、それ自体と上述した素子設計とを区別する。その結果、素子構造が、パターン化した基板上に堆積させた従来の発光素子構造に存在する悪影響を最小化する、素子設計を改善した、パターン化した基板上の構造に対する必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の従来技術の制限を克服し、かつ本明細書を読み取って理解した時に明らかになる他の制限を克服するために、本発明は、窒化物に基づく素子構造の発光出力を増強する、パターン化した基板上の窒化物に基づく発光ダイオード(LED)等の、パターン化した基板上の窒化物に基づく素子構造を開示する。発光効率を改善することによって、窒化物に基づく素子構造の電子効率特性の改善をもたらし、その結果、窒化物半導体素子の応用を種々の商品に展開することができる。
【0016】
また、本発明は、パターン化した基板上に成長させた多重量子井戸構造の活性層性質を改善することによって、光出力特性を大幅に増強する。この改善は、LED素子の光取り出しの改善が示された、パターン化した基板の使用の拡大をもたらし得る。
【0017】
本発明の第一の窒化物半導体素子は、パターン化した基板を備え、かつ少なくともいくらかのインジウムを含有する窒化物中間層を組み込んでいる。この窒化物中間層は、素子の任意の部分に配置することができ、好ましくは素子の活性領域より上側に、より好ましくは素子の活性領域より下側に配置することができる。活性層は、少なくともいくらかのインジウムを含有する窒化物半導体でできている、好ましくは単一または多重量子井戸を有するInGaNでできていることにも留意されたい。少なくとも1つの量子井戸のバンドギャップは、窒化物中間層のバンドギャップ未満であってもよい。
【0018】
さらに、本発明の第一の窒化物半導体素子は、パターン化した基板上に複数の窒化物半導体膜を有するn領域を備える。n領域の窒化物半導体層のうちの少なくとも1つは、n側多層膜を有し、インジウムを含有する第一の窒化物半導体膜、および第一の窒化物半導体膜とは異なる組成を有する第二の窒化物半導体膜を交互に備える。第一の窒化物半導体膜のそれぞれ、および第二の窒化物半導体膜のそれぞれは、交互に積層され、第一の窒化物半導体膜および第二の窒化物半導体膜のうちの少なくとも1つは、100オングストローム未満の厚さを有し、総多層膜厚は、300nm未満である。以下、これらの第一および第二の交互層を、窒化物中間層膜と称する。
【0019】
さらに、第一の窒化物半導体素子では、窒化物中間層膜は、代替として、少なくともいくらかのインジウムを含有し、総多層膜厚が300nm未満である、単一窒化物膜から成ることができる。
【0020】
窒化物LEDは、n型層およびp型層と、n型層とp型層との間にあり、異なるインジウム(In)組成を有するIn含有層の少なくとも2つの周期の交互層を有する、窒化物中間層と、少なくとも1つの量子井戸構造を含む、窒化物中間層の上またはそれより上側で、かつn型層とp型層との間に形成される、窒化物に基づく活性領域とを備え得る。
【0021】
本発明の第一の窒化物半導体素子では、窒化物中間層膜は、InGa1−xN(0<x<1)、好ましくはx<0.3、より好ましくはx=0.05、でできていることが好ましい。
【0022】
2つの周期の交互層は、少なくとも2つの第二の窒化物層と交互配置される、少なくとも2つの第一の窒化物層を備え得る。本発明の第一の窒化物半導体素子では、窒化物中間層膜は、InGa1−xN(0<x<1)およびInGa1−yN(0≦y<1、y<x)、好ましくはx<0.3およびy<0.3、より好ましくはx=0.05およびy=0の交互層でできていることが好ましい。しかしながら、本発明は、特定のxおよびyの値に限定されず、例えば、0≦y<1を用いてもよい。例えば、第一の層は、インジウムを含有する場合があり、第二の層は、実質的にインジウムを全く含有しない場合がある。
【0023】
さらに、本発明の第一の窒化物半導体素子では、第一の窒化物半導体膜は、互いに厚さが異なる場合があり、および/もしくは第二の化物半導体膜は、互いに厚さが異なる場合がある。したがって、多層膜が、複数の第一および第二の窒化物半導体膜で交互に積層される場合、第二(第一)の窒化物半導体膜を挟む2つの第一(第二)の窒化物半導体膜は、互いに異なる厚さを有し得る。
【0024】
2つの周期の交互層は、窒化物の臨界弾性厚さよりも小さい厚さを有し得、よって、窒化物中間層は、交互層が臨界厚さよりも大きい厚さで成長させられる時の場合と比較して、活性領域の結晶品質を改善するための緩衝層の役割を果たす。第一の層の厚さは、交互層の屈折率を変動させるために、第一の層から活性層までの距離が減少するにつれて増加または減少し得る。
【0025】
さらに、本発明の第一の窒化物半導体素子では、第一の窒化物半導体膜は、互いにIII族元素含有量が異なる場合があり、および/もしくは第二の窒化物半導体膜は、互いにIII族元素含有量が異なる場合がある。したがって、多層膜が、複数の第一および第二の窒化物半導体膜で交互に積層される場合、第二(第一)の窒化物半導体膜を挟む2つの第一(第二)の窒化物半導体膜は、異なる組成比のIII族元素を有し得る。第一の層のインジウム組成は、交互層の屈折率を変動させるために、第一の層から活性層までの距離が減少するにつれて増加または減少し得る。
【0026】
さらに、本発明の第一の窒化物半導体素子では、n側窒化物中間層膜は、活性層から離間され得るが、好ましくは、出力特性を改善するために、活性層と接触して形成される。
【0027】
さらに、本発明の第一の窒化物半導体素子では、第一の窒化物半導体膜および第二の窒化物半導体膜は、どちらも不純物でドープされない。「非ドープ」という用語は、意図的にドープされない状態を表し、本発明に従って、隣接する窒化物半導体層から不純物が拡散する場合を含む。このような拡散した不純物による不純物濃度は、しばしば層内に濃度勾配を有する。
【0028】
さらに、本発明の第一の窒化物半導体素子では、n型不純物は、第一の窒化物半導体膜および第二の窒化物半導体膜のうちのいずれかでドープされる。これは変調ドーピングと称され、変調ドープすることによって、出力を改善することもできる。n型不純物は、IV族から選択することができ、Si、Ge、Sn、およびS、好ましくはSiまたはSn等のIV族元素が、n型不純物に用いられることに留意されたい。
【0029】
さらに、本発明の第一の窒化物半導体素子では、n型不純物は、第一の窒化物半導体膜および第二の窒化物半導体膜内の両方にドープされる。n型不純物がドープされる場合、濃度は、5×1021/cm以下、好ましくは1×1020/cm以下に調整される。5×1021/cmを超える場合、窒化物半導体膜は、不十分な結晶品質を有し、よって、出力が低減される傾向がある。これは、変調ドーピングが使用される場合にも適合される。
【0030】
本発明は、透明導電酸化物(TCO)の使用を通して、パターン化した基板上の活性領域の光出力を改善し、かつ発光ダイオードの光取り出し効率を増大する。p接触層は、一般的に、ニッケルおよび/もしくは金を含有する複数の薄い金属層から成る。これらの層の代表的な厚さは、20nm未満である。これらの層は、p型GaNに対するオーミック接触を形成することができるが、素子から発せられる光の一部を吸収し、それによって、素子の全効率を大幅に減少させることも分かっている。
【0031】
第二の窒化物半導体素子は、素子の光取り出し効率を増大し、それによって素子の全効率を改善するために構造化される。本発明の第二の窒化物半導体素子は、上記の説明で述べたように、第一の素子の組み合わせを含み、素子のp型窒化物膜の最上部に積層されるTCO膜の追加を伴う。
【0032】
加えて、第二の窒化物半導体素子は、透明な接触膜として機能するために、p型窒化物に隣接して配置されるTCOからさらに成る。したがって、TCO層は、p型窒化物層に対するp型接触として使用することができる。
【0033】
加えて、TCOは、酸化亜鉛、ZnO、または酸化インジウムスズ(ITO)等の、透明導電酸化物から成るものとすることができる。
【0034】
さらに、本発明の第二の素子では、TCO膜および第二の窒化物半導体膜は、不純物でドープされない。「非ドープ」という用語は、意図的にドープされない状態を表し、本発明に従って、隣接する窒化物半導体層から不純物が拡散する場合を含む。このような拡散した不純物による不純物濃度は、しばしば層内に濃度勾配を有する。
【0035】
さらに、本発明の第二の素子では、TCO膜は、種々の組成の複数の層から成ることができる。
【0036】
さらに、第二の素子のTCOは、光取り出しを増大させるために、パターン化する、または成形することができる。
【0037】
加えて、本発明は、p形半導体とTCOとの間に配置されるトンネル接合層の使用を通して、本発明の第三の窒化物素子を備える、TCOを伴うパターン化した基板上の発光ダイオード素子の順電圧Vを低減する。
【0038】
さらに、トンネル接合層は、少なくともいくらかのガリウムを含有する窒化物層を含み得る。この窒化物層は、意図せずにドープすることができるが、好ましくは、シリコン等のn型不純物で、1×1018/cm超、より好ましくは5×1019/cm超のドーピング濃度でドープされる。
【0039】
さらに、トンネル接合層は、少なくともいくらかのインジウムを含有する窒化物層を含み得る。この窒化物層は、意図せずにドープすることができるが、好ましくは、シリコン等のn型不純物で、1×1018/cm超、より好ましくは5×1019/cmのドーピング濃度でドープされる。
【0040】
本発明は、本発明の第四および第五の窒化物半導体素子によって説明されるように、TCOをパターン化または成形することによって、LEDの光取り出しを増加させる。成形は、物理的および/もしくは化学的プロセスによって達成することができ、かつ種々の形状または寸法から成り得る。
【0041】
本発明の第一、第二、第三、第四、および第五の素子は、パターン化した、またはパターン化していないTCOおよび/もしくはトンネル接合と組み合わせることもできる、パターン化した基板上に堆積させた窒化物中間層を組み込む、窒化物発光素子構造を説明する。パターン化した基板は、あらゆるパターン、形状、または設計から成り得る。当該構造は、パターン化した基板上に窒化物中間層を組み込み(または備え)、また、TCOおよび/もしくはトンネル接合も組み込む(または備える)場合もある、窒化物膜の最上部に成長させたあらゆる素子または構造からさらに成り得る。
【0042】
さらに、本発明は、第一の素子について上記に説明したように、パターン化した基板上に成長させた窒化物中間層を組み込んだ、第一、第二、第三、第四、および第五の素子のあらゆる組み合わせも含む。
【0043】
窒化物中間層膜は、変動または勾配組成層を有する複数の層、異なる(Al、Ga、In、B)N組成の層を備えるヘテロ構造、または異なる(Al、Ga、In、B)N組成の1つ以上の層を備え得る。窒化物中間層は、鉄、マグネシウム、シリコン、酸素、炭素、および/もしくは亜鉛等の元素で、意図せずにドープした、または意図的にドープした層から成り得る。窒化物中間層膜は、HVPE、MOCVD、またはMBEを含む堆積法を用いて成長させられ得る。
【0044】
当該構造は、従来のc面配向の窒化物半導体結晶の上、またはa面もしくはm面等の無極性の面の上、あるいは任意の半極性の面の上等の、任意の結晶学的窒化物内で成長させた窒化物中間層をさらに備え得、パターン化した基板は、c面、r面、またはa面によって表されるその主表面を有する、パターン化したサファイア基板である。
【0045】
パターン化した基板は、尖晶石(MgAl)のパターン化したサファイア絶縁基板、またはSiC(6H、4H、または3Cを含む)、Si、ZnO、GaAs、またはGaNでできているパターン化した半導体基板であり得る。パターン化した基板は、窒化ガリウム(GaN)の半極性または無極性の表面から成り得る。
【0046】
本発明は、上述の構造を使用して強化した特性を有する素子も開示する。
【0047】
本発明は、パターン化した基板上に窒化物発光ダイオードを製造する方法であって、n型層とp型層との間に窒化物中間層を形成するステップであって、窒化物中間層は、異なるインジウム(In)組成を有するIn含有層の少なくとも2つの周期の交互層を有する、ステップと、窒化物中間層の上またはそれより上側で、かつn型層とp型層との間に、窒化物に基づく活性領域を形成するステップであって、窒化物に基づく活性層は、少なくとも1つの量子井戸構造を含む、ステップとを含む方法をさらに開示する。本発明は、パターン化した基板上の窒化物発光ダイオードから発光する方法であって、窒化物中間層の上、またはそれより上側で、かつn型層とp型層との間で、窒化物に基づく活性領域から発光するステップであって、窒化物に基づく活性層は、少なくとも1つの量子井戸構造を含む、ステップを含む方法をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
以下、同じ参照符号が対応する要素を示す、複数の図面を参照する。
【図1】図1は、パターン化した基板から成り、かつ少なくともいくらかのインジウムを含有する窒化物中間層を組み込んだ、本発明の第一の窒化物半導体素子の概略断面図である。
【図2】図2は、p型窒化物膜の最上部に積層されるTCO膜と、図1に示されるような第一の素子との組み合わせから成る、本発明の第二の窒化物半導体素子の概略断面図である。
【図3】図3は、p形半導体とTCOとの間に配置されるトンネル接合層の用法を示す概略断面図である。
【図4】図4は、TCOのパターン化または成形を示す、LEDの概略断面図である。
【図5】図5は、TCOのパターン化または成形を示す、別のLEDの概略断面図である。
【図6】図6は、パターン化したサファイア基板(PSS)上、およびパターン化していないサファイア基板上の両方に、いくらかのインジウムを含有する超格子(SL)を伴う、および伴わないLEDについて測定した出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の発明を実施するための最良の形態では、本発明の一部を形成し、本発明を実施することが可能な特定の実施形態を図示するために示される添付図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が用いられてもよく、また、構造的な変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0050】
(概要)
本発明は、パターン化した基板上にMOCVDを介して堆積させた窒化物中間層を組み込む、窒化物発光素子構造を説明する。発光素子内に組み込まれる、窒化物に基づく中間層構造の使用は、窒化物発光素子の性能を改善する手段を提供する。窒化物という用語は、化学式GanAlInNを有し、式中、
0≦n≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、およびn+x+y+z=1
である、(Ga、Al、In、B)N半導体のあらゆる合金組成を指す。
【0051】
現在のパターン化した基板上に堆積させた窒化物発光素子構造は、窒化物中間層を伴わない構造から成る。これらの構造は、定電流での出力に対して素子性能の大幅な低下を示す。窒化物中間層を組み込む窒化物発光素子構造は、定電流での素子の出力を大幅に増大することによって、窒化物LEDの性能を増大させる手段を提供する。本発明は、パターン化した基板上に蒸着される窒化物LEDの窒化物素子の性能を増強する。
【0052】
(技術的説明)
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による、窒化物半導体素子(LED素子)100の構造を示す概略断面図である。このLED100は、パターン化したサファイア基板102を備え、かつ以下の順序で連続的に基板102上に堆積される。GaNでできている第一の緩衝層104(基板102の表面106に最も近い)、シリコンでドープしたGaNでできているn接触層108、InGaN/GaN超格子構造110でできているn側多層膜(層110aおよび110bを含み得る)、InGaN/GaNでできている多重量子井戸構造を備える活性層112(層112aおよび112bを含み得る)、マグネシウムでドープしたp側AlGaN電子阻止層114、マグネシウムでドープしたGaNを含むp接触層116、薄い透明なp接触層118、および基板102のパターン化した表面106から最も遠い、厚いpパッド層120。
【0053】
LED素子100は、第一の緩衝層104、n接触層108、およびn側窒化物多層膜110を備えるn領域と、p側AlGaN電子阻止層114およびp接触層116を備えるp領域との間に挟まれる、多重量子井戸構造の活性層112を有する。
【0054】
窒化物半導体素子100は、n領域内の活性層112の下にn側多層膜110を備え、図1内の拡大図Aに示されているように、Inを含有する第一の窒化物半導体膜110a、および第一の窒化物半導体膜110aとは異なる組成の第二の窒化物半導体膜110bを堆積させる。n側多層膜110は、第一の窒化物半導体膜110aおよび第二の窒化物半導体膜110bのそれぞれのうちの少なくとも1つを備え、好ましくは合計で4つ以上、より好ましくは膜110aおよび110bのそれぞれのうちの少なくとも2つ、すなわち合計で5つ以上の膜を備える。
【0055】
図2は、多層膜110が、一連の第二の窒化物半導体膜110bi−1、110b、110bi+1と交互配置される、一連の第一の窒化物半導体膜110ai−1、110a、110ai+1を備え得ることを示しており、iは、膜の番号を示す整数である。しかしながら、個々の膜110a、110ai−1、および110ai+1(110b、110bi−1、および110bi+1)の性質が類似している場合は、膜110a、110ai−1、および110ai+1(110b、110bi−1、および110bi+1)は、図1に示されているように、全体として110a(110b)と呼ばれる。
【0056】
図1に示されているように、n側多層膜110が、活性層112と接触して形成される場合、活性層112の最初の層(障壁層112aまたは井戸層112b)との接触が保たれる窒化物半導体膜110aおよび110bのうちの1つは、第一の窒化物半導体膜110aまたは第二の窒化物半導体膜110bのいずれかとなり得る。
【0057】
n側多層膜110における窒化物膜110aおよび110bの堆積順序は、任意に選択してもよい。また、図示の実施形態では、n側多層膜110が、活性層112と直接接触して形成されているが、n型窒化物半導体でできている別の層が、n側多層膜110と活性層112との間に介在してもよい。
【0058】
厚さ122aを有する少なくとも1つの第一の窒化物半導体膜110a、および厚さ122bを有する少なくとも1つの第二の窒化物半導体膜110bは、100オングストローム以下、好ましくは70オングストローム以下、より好ましくは50オングストローム以下の、膜厚122a、122bを有するように設計される。例えば、厚さ122aおよび122bは、異なっていてもよい。図2に示されているように、膜110aが厚さ122aを有し、膜110bが厚さ122bを有し、厚さ122aおよび122bが、どちらも上述の範囲内にある場合は、膜110aおよび110bが、臨界弾性厚さよりも薄いので、そのような薄膜110b(110a)上に堆積される第一(または第二)の窒化物半導体膜110ai+1(または110b)の結晶品質を改善することができ、それによって、総じてn側多層膜110の結晶品質を改善して、素子100の出力能力を増加させることができる。層110は、厚さ122cを有する。
【0059】
少なくとも1つの第一の窒化物半導体膜110aは、In、好ましくは化学式InGa1−xN(0<x<1)で表される三元化合物を含有する窒化物半導体でできており、式中、xは、好ましくは0.5以下、より好ましくは、0.1以下である。
【0060】
一方で、少なくとも1つの第二の窒化物半導体膜110bは、膜110bの窒化物半導体材料が、少なくとも1つの第一の窒化物半導体膜110aに使用される窒化物半導体と異なっていれば、あらゆる好適な窒化物半導体でできていてもよい。しかしながら、少なくとも1つの第二の窒化物半導体膜110bが優れた結晶品質を保つためには、少なくとも1つの第一の窒化物半導体膜110aよりも高いバンドギャップを有する二元または三元化合物を使用すべきであるが、本発明は、これらの化合物だけに限定されない。種々の窒化物半導体の中から、少なくとも1つの第二の窒化物半導体膜110bのための材料としてGaNを選択した場合、優れた結晶品質を有する多層膜を形成することができる。したがって、少なくとも1つの第一の窒化物半導体膜110aに対するInGa1−xNの使用、式中、xは、0.5以下である、および少なくとも1つの第二の窒化物半導体膜110bに対するGaNの使用が、材料の好適な組み合わせである。
【0061】
一実施形態では、第一および第二の窒化物半導体膜110aおよび110bのうちのいずれか1つは、100オングストローム以下、好ましくは70オングストローム以下、より好ましくは50オングストローム以下の膜厚122a、122bを有する。第一および第二の窒化物半導体膜110aおよび110bのそれぞれに対する100オングストローム以下の膜厚122a、122bの選択は、それぞれの窒化物半導体膜110aおよび110bが、臨界弾性厚さ以下の膜厚122a、122bを有することができ、したがって、膜110aおよび110bを厚膜に成長させる場合と比較して、優れた結晶品質を有する窒化物半導体110a、110bを成長させることができることを意味する。70オングストローム以下の膜厚122a、122bの選択は、多層膜110を超格子構造に作製する時に有効であり、したがって、続いて活性層112を、優れた結晶品質を有するこの超格子多層膜110上にさせる時に、多層膜110は、緩衝層のそれに類似する機能を有することができ、優れた結晶品質を有する活性層112を成長させることができるようになる。
【0062】
別の実施形態では、第一の窒化物半導体膜110aは、異なる厚さ122aを有し得、また、第二の窒化物半導体膜110bは、異なる厚さ122bを有し得る。例えば、第一(第二)の窒化物半導体膜110a(110b)のうちの少なくとも1つは、次の隣接する第一(第二)の窒化物半導体膜110ai−1(110bi−1)および110ai+1(110bi+1)とは異なる膜厚122a(122b)を有することができる(すなわち、膜110a(110b)の厚さ122a(122b)は、第一(第二)の窒化物半導体膜110a(110b)の配列において、それぞれ膜110a(110b)より下側および上側にある、膜110ai−1(110bi−1)の厚さ122ai−1(122bi−1)、および/もしくは膜110ai+1(110ai+1)の厚さ122ai+1(122bi+1)と異なるものとすることができる)。さらなる実施例として、第一の窒化物半導体膜110aがInGaNでできており、また、第二の窒化物半導体膜110bがGaNでできていると仮定すると、隣接するGaN層110bと110bi−1との間に介在するInGaN層110aは、層110aから活性層112までの距離が減少するにつれて、増加または減少する変動膜厚122aを有し得る。その際に、多層膜110は、異なる屈折率を有する窒化物半導体膜110aおよび110bによって変動屈折率を有することができ、結果的に、多層膜110は、勾配組成の窒化物半導体層と実質的に同じ効果を呈することができる。したがって、ビーム導波路の使用を必要とするタイプの半導体レーザ等の半導体素子では、多層膜110は、レーザビームのモードを調整するために、ビーム導波路を提供することができる。
【0063】
層110bの厚さも、活性層112までの距離が減少するにつれて変動し得る。
【0064】
また、第一(第二)の窒化物半導体膜110a(110b)のうちの少なくとも1つは、次の隣接する第一(第二)の窒化物半導体膜110a(110b)における組成とは異なるIII族元素の組成を含有し得る。例えば、膜110a(110b)の組成は、第一(第二)の窒化物半導体膜110a(110b)の配列において、それぞれ膜110a(110b)より下側および上側にある、膜110ai−1(110bi−1)および/もしくは膜110ai+1(110ai+1)の組成と異なるものとすることができる。さらなる実施例として、第一の窒化物半導体膜110aがInGaNでできており、また、第二の窒化物半導体膜110bがGaNでできていると仮定すると、隣接するGaN層110bと110bi−1との間に介在するInGaN層110aに含有されるInの量は、層110aから活性層112までの距離が減少するにつれて、増加または減少し得る。そのような場合は、上述の異なる膜厚を用いる場合と同様に、多層膜110は、異なる屈折率を有する窒化物半導体膜110aおよび110bによって変動屈折率を有することができ、結果的に、多層膜110は、勾配組成の窒化物半導体層と実質的に同じ効果を呈することができる。屈折率は、使用するInの量の減少とともに減少する傾向があることに留意されたい。
【0065】
別の実施形態では、第一および第二の窒化物半導体層110aおよび110bは、同じ半導体材料でできているものとすることができ、したがって、上述の膜110aおよび110bから成る多層膜110と同じ総厚さ122cの単一の層110を作製することができる。窒化物多層膜110は、In、好ましくは化学式InGa1−xN(0<x<1)で表される三元化合物を含有する窒化物半導体でできており、式中、xは、好ましくは0.5以下、より好ましくは、0.1以下である。この膜厚は、膜110aおよび110bから成る多層膜と比較して、単一の膜しか組み込まないので、膜110を堆積する、より簡単な方法を可能にする。
【0066】
ここでも、本実施形態の実施に際して、第一および第二の窒化物半導体膜110aおよび110bのうちの一方または両方は、ドープされないもの、またはn型不純物でドープされるもののいずれかであってもよい。結晶品質を高めるために、第一および第二の窒化物半導体膜110aおよび110bは、好ましくはドープされないが、変調ドープされてもよく、または第一および第二の窒化物半導体膜110aおよび110bの両方が、n型不純物でドープされてもよい。第一および第二の窒化物半導体膜110aおよび110bが、どちらもn型不純物でドープされる場合、1つ以上の第一の窒化物半導体膜110a内のn型不純物の濃度は、1つ以上の第二の窒化物半導体膜110b内の濃度と異なっていてもよい。
【0067】
別の実施形態では、透明なp電極118が、p接触層116の最上面のほぼ全体に形成され、結合のためのpパッド電極120が、p電極118上の一部に形成される。また、発光素子100は、n側窒化物半導体層108の表面が露出されて、その上にn電極124が形成される部分を有する。
【0068】
(実施形態2)
実施形態2による窒化物半導体発光素子126は、図2に示されているように、実施形態2における透明なp接触層128が、TCO等の新規なp接触から成り、それによって、実施形態1において説明されている薄い半透明のp電極層118を置き換えていることを除いて、実施形態1と同じ構造を有する。
【0069】
具体的には、TCO128は、ZnOまたはITO等の元素から成るものであってもよい。
【0070】
これらの層128は、MOCVD反応器内等の、原位置に堆積させることができ、または別々の蒸着プロセスによって続いて積層することができる。TCO128は、適切なプロセスを用いて、構造的に結合することもできる。
【0071】
また、TCO膜または膜128は、複数の異なる層および組成を含み得る。それらは、導電性および構造組成等の膜128の性質を調整するために、種々の元素によって、意図せずにドープするか、または意図的にドープすることもできる。TCO層128は、p型窒化物層116に対するp型接触として使用され得る。
【0072】
TCO膜128は、種々の厚さ130を含み得る。
【0073】
(実施形態3)
実施形態3による窒化物半導体発光ダイオード132は、図3に示されているように、トンネル接合層134が、p型GaN接触層116とTCO128との間に積層されることを除いて、実施形態2と同じ構造を有する。
【0074】
トンネル接合層134は、層134の導電性を制御するために、シリコンまたはマグネシウムの元素等の、n型またはp型不純物で意図的にドープした窒化物半導体からなり得る。トンネル接合層134は、種々の厚さ136および組成から成るものとすることができる。層134は、複数の異なる層から成るものとすることもできる。層134は、勾配組成でドープする、または変調ドープすることもできる。
【0075】
例えば、トンネル接合層134は、GaNを含む、窒化物に基づく層であってもよく、または、例えば、トンネル接合層は、少なくともいくらかのインジウムを含有してもよい。
【0076】
(実施形態4)
実施形態4による窒化物半導体発光ダイオード138は、図4に示されているように、素子140からの光取り出しを増大するために、TCO128が成形される(すなわち、凸凹のある、またはパターン化した表面140を備える)ことを除いて、実施形態2と同じ構造を有する。140の成形は、物理的または化学的プロセスによって達成することができる。140の成形は、種々の形状および寸法から成るものとすることもできる。
【0077】
(実施形態5)
実施形態5による窒化物半導体発光ダイオード142は、図5に示されているように、素子142からの光取り出しを増大するために、TCO128が成形される(すなわち、凸凹のある、またはパターン化した表面140を備える)ことを除いて、実施形態3と同じ構造を有する。140の成形は、物理的または化学的プロセスによって達成することができる。140の成形は、種々の形状および寸法から成るものとすることもできる。
【0078】
(実施形態6)
図1〜5で説明されている全ての層が必要であるというわけではない。例えば、実施形態6は、パターン化した基板102上に窒化物発光ダイオードまたはレーザダイオードを備え、当該ダイオードは、n型層108およびp型層116と、n型層108とp型層116との間にあり、異なるインジウム(In)組成を有するIn含有層の少なくとも2つの周期の交互層110aおよび110bを有する(1つの周期は、層110a上の層110bの(または層110b上の層110aの)積層を含み、2つの周期は、層110bi−1上の層110a、層110a上の層110b、および層110b上の層110a+1を含む積層等の、2つの層110bと交互配置される、2つの層110aを備える)窒化物中間層110と、窒化物中間層110の上またはそれより上側で、かつn型層108とp型層116との間に形成される窒化物に基づく活性領域112であって、少なくとも1つの量子井戸構造(障壁層112aおよび量子井戸層112b)を含み得る活性層112とを備える。例えば、交互層は、第一の層110aと、第二の層110bとを備えてもよく、第一の層は、InGa1−xNであり、第二の層は、InGa1−yNであり、0<x<1および0≦y<1である。
【0079】
(プロセスステップ)
以下、本発明による、素子構造を製造するための方法の一実施例を説明し、かつ図1〜5によって示す。
【0080】
最初に、パターン化した基板102を反応器内に装填して洗浄する。本実施例では、パターン化したサファイア基板102(C面)は、金属有機気相エピタキシー(MOVPE)反応器内に設置し、基盤102の温度を、基板102を洗浄するために、水素フローによって1150℃まで上昇させた。C面サファイア基板102の代わりに、基板102は、RまたはA面によって表されるその主表面を有する、パターン化したサファイア基板102、例えば尖晶石(MgAl)のパターン化した絶縁基板102、または、例えばSiC(6H、4H、または3Cを含む)、Si、ZnO、GaAs、またはGaNでできているパターン化した半導体基板102であってもよい。パターン化した基板は、窒化ガリウム(GaN)の半極性または無極性の表面106から成るものであってもよい。
【0081】
基板102を洗浄するために用いた上述の温度上昇に続いて、温度を570℃に下げ、約200オングストロームの厚さ144を有する、GaNでできている第一の緩衝層104を、搬送ガスとして水素を使用し、また、材料ガスとしてアンモニアおよびTMG(トリメチルガリウム)を使用して、基板102上に成長させた。低温で成長させられるこのような緩衝層104は、基板102の種類、成長方法等に応じて省略されてもよい。
【0082】
緩衝層104が成長した後に、TMGだけを止めて、温度を1185℃に上昇させた。3×1019/cmにSiでドープしたGaNでできており、かつ4μmの厚さ146を有するn接触層108を、上述のステップと同じように材料ガスとしてアンモニアおよびTMGを使用し、また不純物ガスとしてシランガスを使用して成長させた。このn接触層108は、InAlGaN(0≦x、0≦y、x+y<1)でできていてもよい。組成は、その組成に特に限定されないが、好ましくは、GaNおよびAlGa1−xN(xは、0.2以下)であってもよい。そのような場合は、最小化された結晶欠陥を有する窒化物半導体層108を、容易に得ることができる。
【0083】
n接触層108の厚さ146は、任意の厚さ146に特に限定されないが、厚さ146は、一般的に、n電極124がその上に形成されるので、4μm以上である。さらに、n型不純物は、望ましくは、窒化物半導体108の結晶品質を低下させない程度の高濃度、好ましくは1×1018/cmと5×1021/cmとの間でドープされてもよい。
【0084】
次に、温度を910℃に下げ、非ドープのIn0.03Ga0.97Nでできていて、かつ25オングストロームの厚さ122aを有する第一の窒化物半導体膜(層110a)を、TMG、TMI(トリメチルインジウム)、およびアンモニアを使用して成長させた。続いて、TMIを遮断し、GaNでできていて、かつ25オングストロームの厚さ122bを有する第二の窒化物半導体膜(層110b)を、第一の膜110aの上に成長させた。次いで、これらの操作を繰り返し、第一の膜110a、第二の膜110b、第一の膜110a等の順序で、それぞれ50回、第一の膜110aおよび第二の膜110bを交互に積層することによって、250nmの厚さ122cを有する超格子構造のn側多層膜(窒化物中間層膜)110を形成した。
【0085】
次に、非ドープのGaNでできていて、200オングストロームの厚さ148aを有する障壁層112aを、880℃で成長させ、非ドープのIn0.4Ga0.6Nでできていて、25オングストロームの厚さ148bを有する井戸層112bを、TMG、TMI、およびアンモニアを使用して成長させた。図1内の拡大図Bに示されているように、150オングストロームの総厚さ148cを有する多重量子井戸構造の活性層112を、障壁層112a、井戸層112b、障壁層112a等の順序で、7つの障壁層、層112a、および6つの井戸層、層112bを交互に積層して、障壁層112aで終了することによって成長させた。活性層112は、最初に第一の障壁層112aを積層することによって成長させたが、井戸層112bを最初に、および最後にも積層することによって成長させてもよい。活性層112は、井戸層112bを最初に、かつ障壁層112aを最後に積層することによって成長させてもよく、または、順序は、障壁層112aから開始して、井戸層112bで終了してもよい。したがって、障壁112aおよび井戸層112bを堆積する順序は、特定の順序に特に限定されない。
【0086】
井戸層112bは、100オングストローム以下、好ましくは70オングストローム以下、より好ましくは50オングストローム以下の厚さ148bを有するように設定した。100オングストロームを超える厚さ148bは、素子100の出力増加を困難にし得る。
【0087】
一方で、障壁層112aは、300オングストローム以下、好ましくは250オングストローム以下、より好ましくは200オングストローム以下の厚さ148aを有するように設定した。
【0088】
量子井戸112bは、窒化物中間層110のバンドギャップ未満のバンドギャップを有し得る。
【0089】
次に、TMG、TMA(トリメチルアルミニウム)、アンモニアを使用して、意図せずにドープしたAl0.2Ga0.8Nでできていて、(例えば)200オングストロームの厚さ150を有する、第三の窒化物半導体膜114を成長させた。このAlGaN電子阻止層114は、InAlGaN(0≦x、0≦y、x+y<1)でできていてもよい。当該組成は、この組成に特に限定されないが、好ましくはAlGa1−xN(xは、0.2以下)であってもよい。
【0090】
続いて、910℃で、TMG、アンモニア、およびCpMgを使用して、Mgで1×1020/cmにドープしたp型GaNでできていて、(例えば)700オングストロームの厚さ152を有する、p接触層116を成長させた。p接触層116は、InAlGa1−x−yN(0≦x、0≦y、x+y<1)でできていてもよい。当該組成は、この組成に特に限定されないが、好ましくはGaNであってもよい。そのような場合は、最小化された結晶欠陥を有する窒化物半導体層116を得ることができ、かつp電極材料118との優れたオーミック接触を達成することができる。
【0091】
反応器が冷却された時点で、窒化物ダイオード100を取り出し、p型GaN116を活性化するために、700℃で15分間、水素欠乏の雰囲気中で焼鈍した。
【0092】
(可能な変更)
上述の開示において説明されている層厚および組成は例示的なものであり、本発明は、これらの特定の層厚および組成に限定されない。実際に、本発明は、(好ましくはパターン化した)基板上に窒化物中間層(好ましくは多層膜)を備える、窒化物膜の最上部に成長させた素子または構造(例えば、活性層)を対象にする。しかしながら、中間層はまた、活性層より上側にあってもよい。
【0093】
(利点および改善点)
図6は、パターン化した102およびパターン化していない両者のサファイア基板上の、いくらかのインジウムを含有する超格子110を伴う、および伴わないLEDについて測定した、「オンウエハ」出力を示している。LEDの出力は、基板102の後部154を通して、シリコン光検出器を使用して光出力を測定することによって評価した。これは、一般に「オンウエハ」測定と称される。図6は、パターン化していないサファイア基板およびパターン化したサファイア基板(PSS)102上の試料について、超格子(SL)110を使用することによる出力の増加を示している。しかしながら、図6から、パターン化した基板102上での超格子110の使用は、約158%という大幅な出力の増加をもたらすことも明らかである。これは、超格子110が、パターン化していないサファイア基板に用いられた時の、わずか42%の出力の増加とは対照的であ。
【0094】
(参考文献)
以下の参考文献は、参照することにより本明細書にその全体が組み込まれる。
【0095】
[1]K.Tadatomo、H.Okagawa、Y.Ohuchi、T.Tsunekawa、T.Jyouichi、Y.Imada、M.Kato、H.Kudo、and T.Taguchi、phys.stat.sol.(a)188、No.1、pp.121−125(2001)。
【0096】
[2]Motokazu Yamada、Tomotsugu Mitani、Yukio Narukawa、Shuji Shioji、Isamu Niki、Shinya Sonobe、Kouichiro Deguchi、Masahiko Sano、and Takashi Mukai、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41(2002)pp.L1431−L1433、Part2、No.12B、15 December 2002.
[3]Shuji Nakamura、Takashi Mukai、Masayuki Senoh、Shin−ichi Nagahama、and Naruhito Iwasa、J.Appl.Phys.Vol.74、No.6(1993)pp.3911−3915、15 September 1993。
【0097】
(結び)
本節は、本発明の好適な実施形態の説明を結ぶものである。本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、図解および説明のために示したものである。本記述は、本発明を完全なものとすること、または開示された精密な形態に限定することを意図するものではない。上述の教示を考慮すれば、多数の修正および変更が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるのではなく、むしろ本明細書に添付された請求項によって限定されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化した基板上の窒化物発光ダイオードであって、
n型層およびp型層と、
該n型層と該p型層との間にあり、異なるインジウム(In)組成を有するIn含有層の少なくとも2つの周期の交互層を有する、窒化物中間層と、
少なくとも1つの量子井戸構造を含む、該窒化物中間層の上またはそれより上側に、かつ該n型層と該p型層との間に形成される、窒化物に基づく活性領域と
を備える、窒化物発光ダイオード。
【請求項2】
前記2つの周期の交互層は、少なくとも2つの第二の窒化物層と交互配置される、少なくとも2つの第一の窒化物層を備える、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項3】
前記第一の層はインジウムを含有し、前記第二の層は実質的に全くインジウムを含有しない、請求項2に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項4】
前記2つの周期の交互層は、窒化物の臨界弾性厚さよりも小さい厚さを有し、それにより、前記窒化物中間層は、該交互層が該臨界厚さよりも大きい厚さで成長させられた構造と比較して、前記活性領域の結晶品質を改善するための緩衝層の役割を果たす、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項5】
前記交互層は、第一の層と第二の層とを備え、第一の層の厚さは、該交互層の屈折率を変動させるために、該第一の層から前記活性層までの距離が減少するにつれて増加または減少する、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項6】
前記交互層は、第一の層と第二の層とを備え、第一の層のインジウム組成は、該交互層の屈折率を変動させるために、該第一の層から前記活性層までの距離が減少するにつれて増加または減少する、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項7】
前記交互層は、少なくとも2つの第一の層と、少なくとも2つの第二の層とを備え、該第一の層は、InGa1−xNであり、該第二の層は、InGa1−yN、0<x<1かつ0≦y<1である、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項8】
前記少なくとも1つの量子井戸のバンドギャップは、前記窒化物中間層のバンドギャップ未満である、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項9】
前記窒化物発光ダイオードの前記p型窒化物層の最上部に形成される、少なくとも1つの透明導電酸化物(TCO)層と、該p型窒化物層と該TCO層との間に、またはそれらに隣接して配置される、トンネル接合層とをさらに備える、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項10】
前記透明導電酸化物層は、前記p型窒化物層に対するp型接触として使用される、請求項9に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項11】
前記パターン化した基板は、c面、r面、またはa面によって表される、その主表面を有する、パターン化したサファイア基板である、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項12】
前記パターン化した基板は、尖晶石(MgAl)のパターン化したサファイア絶縁基板、または、SiC(6H、4H、または3Cを含む)、Si、ZnO、GaAs、またはGaNでできているパターン化した半導体基板である、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項13】
前記パターン化した基板は、窒化ガリウム(GaN)の半極性または無極性の表面から成る、請求項1に記載の窒化物発光ダイオード。
【請求項14】
パターン化した基板上に窒化物発光ダイオードを製造する方法であって、
n型層とp型層との間に窒化物中間層を形成することであって、該窒化物中間層は、異なるインジウム(In)組成を有するIn含有層の少なくとも2つの周期の交互層を有する、ことと、
該窒化物中間層の上またはそれより上側で、かつ該n型層と該p型層との間に、窒化物に基づく活性領域を形成することであって、該窒化物に基づく活性層は、少なくとも1つの量子井戸構造を含む、ことと
を含む、方法。
【請求項15】
パターン化した基板上の窒化物発光ダイオードから発光する方法であって、
n型層とp型層との間に窒化物中間層を形成することであって、該窒化物中間層は、異なるインジウム(In)組成を有するIn含有層の少なくとも2つの周期の交互層を有する、ことと、
該窒化物中間層の上またはそれより上側で、かつ該n型層と該p型層との間で、窒化物に基づく活性領域から発光することであって、該窒化物に基づく活性層は、少なくとも1つの量子井戸構造を含む、ことと
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−539731(P2010−539731A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526007(P2010−526007)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/077064
【国際公開番号】WO2009/039402
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】