説明

パターン印刷シート

【課題】プロジェクター等を通して、文字データ、画像データ等を投影することのできる映写スクリーンとしての機能、しかも、これに書き込みを行なうことができ、該書き込みをリアルタイムでデジタル情報として取り込み、映写スクリーンに反映させる機能、かつホワイトボードとしても使用できる機能を同時に有する映写スクリーンを提供する。
【解決手段】基材2上に、規則性を有するパターン状印刷層3、プライマー層4、及び表面保護層5をこの順に積層してなるパターン印刷シート1であって、該印刷層を構成するインキが着色剤を含み、該印刷層は、パターンを検知可能な入力端末を用いて、表面保護層側から該パターンを読み取ることで、パターン印刷シート上における入力端末の位置に関する情報を提供可能であり、表面保護層がフィラーを含有する硬化性樹脂組成物を硬化した、60度光沢値が8〜20であるパターン印刷シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
手書きによる筆記形状を、デジタル情報に変換できる手書き情報入力装置において使用される、被書き込み媒体の表面に貼付されて用いられるパターン印刷シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手書きした文字、絵及び記号などを、情報処理装置が扱うことのできる電子データに変換する必要性が高まっており、特に、スキャナーなどの読取装置を経由せず、手書き情報をリアルタイムでコンピューター等へ入力する方式への需要が高まっている。
例えば、特許文献1には、ディスプレイ装置の前面に装着される透明シートであって、入力用電子ペン等による入力軌跡の位置を示すための位置情報を提供可能なドットパターンが印刷された透明シートが開示されている。該透明シートは、所定波長の光を照射することによって読み取り可能な光を発光するインキを用いて該ドットパターンが印刷されており、入力軌跡読取手段によって、これを位置情報として提供する機能を有するものである。しかしながら、特許文献1には、このような透明シートを具現化するインキの種類、或いは印刷面の向きや位置情報の配置の工夫などは記載されておらず、透明シートのアイデアもしくは願望が記載されているに過ぎず、具体的な透明シートの例示はない。
【0003】
これに対し、透明基板の表面に赤外線反射性の規則性を有する透明パターンが印刷されてなる印刷面を有し、画像表示可能なディスプレイ装置の前面に該印刷面が対向して装着される透明シートであって、該透明パターンを構成するインキが赤外線を反射する材料を含み、該透明パターンは、赤外線の照射及び検知が可能な入力端末を用いて、印刷面の裏側から赤外線を照射し、赤外線の反射パターンを読み取ることで、透明シート上における入力端末の位置に関する情報を提供可能である赤外線反射パターン印刷透明シートが提案されている(特許文献2参照)。
また、情報記載面に電子ペンにより情報が記載されると、ペン先が置かれた近傍に印刷されたドットパターンが電子ペンに内蔵された撮像部で読み取られて送信部から外部通信装置に伝送されるデータ入力システムに使用される電子ペン記載用紙であって、前記情報記載面にドットパターン以外の図柄が印刷された場合には、ドットパターンが先に印刷され、その上に図柄が印刷されたことを特徴とする電子ペン記載用紙が提案されている(特許文献3参照)。
特許文献2に開示されるパターン印刷透明シートは、ディスプレイの前面に設置して用いられるものであり、特許文献3に開示される電子ペン記載用紙は、入力パッドとして使用されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−256122号公報
【特許文献2】特開2008−26958号公報
【特許文献3】特開2008−173859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
講義や会議等に際して、インタラクティブな運用を行なうためには、手書きした文字、絵及び記号などを、電子データに変換し、プロジェクター等を通して、映写スクリーンに投影することが必要な場合がある。さらには、映写スクリーンに映った画像に対して、直接書き込みを行ない、それをリアルタイムでデジタル情報として取り込み、プロジェクターを通して、該書き込みを投影させることができれば、非常に有用である。
一方、ブレインストーミング等の上記のようなインタラクティブな会議運営が必要ではない場合、映写スクリーンをホワイトボードのような筆記ボードとして、使用することが有効である。
このような映写スクリーン及びホワイトボードとして、多種の機能を集約した機材は、1つの基材で種々の用途に用いることができるという観点から極めて有用であり、また会議室の省スペース化という観点からも有効である。
【0006】
上記のようなペン入力装置に対して、ホワイトボード機能及び映写スクリーン機能をもたせるためには、単純には、特許文献1〜3に開示されるようなパターン印刷シートの表面に、ホワイトボードシート若しくは映写スクリーンシートをラミネートすればよいと考えられる。しかしながら、実際には、パターン印刷シートの機能を損なわず、ホワイトボードの機能及び/又は映写スクリーンとしての機能を持たせることは容易ではない。
なお、前記特許文献1には、書込対象物のひとつとしてホワイトボードが開示されているが、印刷シートのドットパターンを、ホワイトボードと略同じである白色又は透明のインクによって印刷すればよいと記載されるのみで(特許文献1、段落0016)、具体的な方法については何ら開示がなく、達成手段が開示されているとは言えない。
【0007】
具体的に、公知のドットパターンシートに対してホワイトボード機能をもたせようとした場合、機能性シートをラミネートする手法が考えられるが、以下のような問題点がある。
すなわち、白色系のホワイトボードシートを用いると、その下に存在するドットパターンを読み取ることができず、書き込みを行ない、それをリアルタイムでデジタル情報として取り込むという基本的な機能が損なわれる。
一方、透明のホワイトボードシートを用いる場合には、ホワイトボードとしての機能を持たせるために、表面の艶が高いものを用いることが必要であるが、シートの光反射によって、電子ペンでの読み取り適性が低下する。さらには、表面の艶が高いと、映写スクリーンとしての機能を満足させることができないために、ホワイトボードと映像スクリーンの兼用シートとして用いることはできない。
【0008】
さらには、ホワイトボードと映像スクリーンの兼用シートを目的に、フッ素を含有する、いわゆるフッ素フィルムなどの艶消しのマットシートを用いることも考えられるが、表面の耐擦傷性に問題がある。すなわち、電子ペンの使用による表面の傷や、ドットパターンが傷つくことによって読み取り性が悪化するという問題がある。また、既存のフッ素フィルムは、60度グロス値で30程度の値であり、この程度の艶であると、好適な映写機能を発揮することはできない。フッ素フィルムの艶をさらに下げるためには、エンボス処理を施すことが一般的であるが、エンボス処理による形状変化に伴って、ドットパターンが変形し、適正な読み取りができなくなるという問題点がある。また、ホワイトボード用として使用することを考慮した場合には、エンボス処理によって、マーカー消去性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、プロジェクター等を通して、文字データ、画像データ等を投影することのできる映写スクリーンとしての機能を有し、しかも、これに書き込みを行なうことができ、該書き込みをリアルタイムでデジタル情報として取り込み、映写スクリーンに反映させることのできる機能を有し、かつホワイトボードとしても使用できる機能を同時に有する映写スクリーンを得るための、パターン印刷シート及び該パターン印刷シートを用いた多機能の映写スクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、基材上に、規則性を有するパターン状印刷層、プライマー層、及び表面保護層をこの順に積層してなるパターン印刷シートであって、印刷層のパターンにより、入力端末の位置情報を提供可能とし、かつ表面の60度光沢値を特定の範囲に制御することで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は、基材上に、規則性を有するパターン状印刷層、プライマー層、及び表面保護層をこの順に積層してなるパターン印刷シートであって、該印刷層を構成するインキが着色剤を含み、該印刷層は、パターンを検知可能な入力端末を用いて、表面保護層側から該パターンを読み取ることで、パターン印刷シート上における入力端末の位置に関する情報を提供可能であり、表面保護層がフィラーを含有する硬化性樹脂組成物を硬化したものであり、かつ60度光沢値が8〜20であることを特徴とするパターン印刷シート、を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパターン印刷シートを用いた映写スクリーンは、プロジェクター等を通して、文字データ、画像データ等を投影する機能を有し、書き込みを行ない、該書き込みをリアルタイムでデジタル情報として取り込み、映写スクリーンに反映させる機能を有し、かつホワイトボードとしての機能を同時に有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のパターン印刷シートの一態様の断面を示す概念図である。
【図2】接着層及び貼合基材を有する本発明のパターン印刷シートの一態様の断面を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のパターン印刷シートの構成について、図1及び図2を用いて、以下詳細に説明する。
本発明のパターン印刷シート1は、基材2上に、印刷層3、プライマー層4、及び表面保護層5をこの順に積層してなる。図2に示すパターン印刷シート1は、基材2上に、印刷層3、プライマー層4、及び表面保護層5をこの順に積層し、さらに、裏面側に接着層6及び貼合基材7をこの順に積層してなる。
【0014】
基材2としては、通常印刷シートとして使用されるものであれば特に制限はなく、一般には、プラスチックフィルムを好適に用いることができる。プラスチックとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のアクリル樹脂;ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース樹脂;セロファン;ポリスチレン;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂等が挙げられる。
これらのうち、熱や物理的衝撃に対して、後述するパターンを保護するとの観点から、ある程度の強度を有することが必要であり、その点で、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、上述のポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに加えて、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが、ハンドリングが容易で、コストの観点から特に好ましい。
【0015】
基材2の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、25〜400μmの範囲が好適である。この範囲であると、後述する入力端末として、先端が硬質な電子ペンなどのペン先で筆記した場合の筆圧による凹みがつき難い点で好ましい。また鋼板やマグネットシート等の基材とのラミネート等における作業性が良好となる点においても好ましい。以上の観点から、基材2の厚さは75〜250μmの範囲であることがさらに好ましい。
また、基材2に用いられる合成樹脂には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。
なお、本発明のパターン印刷シートは、種々の用途に使用することが可能であるが、最も好ましい用途であるホワイトボード及び映写スクリーンとして用いる場合には、基材2は白色であることが好ましく、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルクなどの着色剤を配合することが好ましい。また、基材2として透明又は半透明のものを用いて、その裏面側(印刷層3の反対側)に、接着層6及び貼合基材7を積層する態様も好ましい。
また、基材2の表面は、後述するパターンの印刷適性の観点から、平滑性が高いことが好ましい。
【0016】
本発明のパターン印刷シートは、基材2上に、印刷層3が形成され、該印刷層は規則性を有するパターン状のものである。該パターンは入力端末が、パターン形成部とパターン非形成部とのコントラストを検知可能な材料であれば、その材料については特に制限はなく、化粧シートなどにおいて、着色剤として通常用いられるものを使用することができる。
具体的には、着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄色酸化鉄、黄鉛、チタン黄、弁柄、クロムバーミリオン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、フェロシアン化物、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等であり、これらを単独若しくは併用して使用することができる。
【0017】
印刷層3の形成に用いられるインキとしては、バインダーに上記着色剤を含有し、さらに体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
また、印刷層3の印刷方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、孔版印刷法、インキジェット印刷法等が挙げられるが、これらのうち、後述するドットの再現性、インキの転移性の観点から、インキジェット印刷法及びフレキソ印刷法が特に好ましい。
【0018】
また、印刷層3における規則性を有するパターンは、例えば、多数個の独立したドットにより構成され、基材2に分散して配置される(以下「ドットパターン」と記載することがある)。これらのドットはあらかじめ定められた規則に従って配置されており、その配置関係からパターン印刷シート上での位置が特定される。このようなドットパターンの具体例としては、アノト社の規格による、いわゆるアノトパターンが挙げられる。
また、本発明における規則性を有するパターンは、特許文献1にも例示されており、例えばドットの形状を複数設定し、平面内に於いて、所定範囲内に配置されたこれら複数形状のドットの組み合わせをパターン化したもの、縦横に配置した罫線の太さを変えて、所定範囲内の前記罫線の重なり部分の大きさの組み合わせをパターン化したようなもの、x、y座標の値を直接ドットの縦横の大きさと結びつけたもの等が挙げられるが、特に簡素で好適なものとしては、縦横に等間隔に並ぶ基準点を設定して、この基準点に対して上下左右に変位したドットを配置し、これらドットの当該基準点からの相対的な位置関係を利用する方法が挙げられる。この方法はドットのサイズを小さく一定にできるため入力装置の高分解能化に有利である。
【0019】
また、ドットパターンのドット形状は隣接するドットと容易に区別できれば特に制限はなく、通常は、平面視形状が、円、楕円、多角形などの形状が用いられる。またドットの立体形状についても特に制限はなく、略円盤状、半球状、凹面状、多角形状などが挙げられる。
【0020】
次に、本発明のパターン印刷シートにおいては、パターン状印刷層3の保護、表面保護層と下層との密着性を向上させるためにプライマー層4を設ける。密着性が向上することで、ドットパターンに基材密着性に乏しい水性インキ、1液硬化型インキを使用した場合でも、表面摩擦によるドットの剥離を予防することができる。
【0021】
プライマー層4を構成する樹脂組成については特に制限が無いが、上記の密着性向上目的と、最終製品としてのドット読み取り性の観点から、無色、若しくは半透明乳白色の2液硬化型樹脂が望ましく、特に2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤としポリイソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂であるが、ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、ポリイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートが用いられる。或いはまた、ポリイソシアネートとしては、上記各種ポリイソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等も用いられる。
【0022】
またプライマー層4には後述するシート性能を損なわない限り、時間経過によるシートの変色を防止することを目的として、耐侯性を向上させる耐候性改善剤を添加することが可能であり、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
耐候性改善剤の配合量は、プライマー層4を形成する樹脂組成物全量基準で、1〜50質量%程度であり、3〜40質量%が好ましく、5〜25質量%がよ
り好ましい。
【0023】
プライマー層4の厚さについては特に制限はないが、1〜10μmの範囲が好ましい。1μm以上であると、表面摩耗に対する印刷層3の保護の点で有利であり、10μm以下であると、プライマー層中に含まれる無機添加剤の隠蔽作用やプライマー層を構成する樹脂の屈折率によるドットパターンへの悪影響を抑えることができ、位置情報に対する、電子ペンによる認識を損なうことがない。以上の観点から、プライマー層3の厚さは、1〜5μmの範囲がより好ましい。
また、プライマー層4の塗工方法としては、特に制限はなく、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式を用いることができる。
【0024】
次に、表面保護層5は、フィラーを含有する硬化性樹脂組成物を硬化させたもので構成される。硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂組成物、特に電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)などを例示することができる。
【0025】
電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0028】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0030】
また、本発明における硬化性樹脂組成物には、フィラーを含有することが特徴である。フィラーの材質及び含有量は、使用する基材、プライマー層を構成する樹脂組成などとの関係で決定されるものであり、本発明のパターン印刷シートの表面の60度光沢値が8〜20の範囲となるように選択される。
このような60度光沢値の条件を満たす範囲であれば、フィラーの材質は特に限定されず、無機フィラー及び有機フィラーのいずれを用いることもできる。
【0031】
無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン等が挙げられる。
なお、これらの無機フィラーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
有機フィラーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;フッ素系樹脂;スチレン系樹脂;エポキシ系樹脂;メラミン系樹脂;尿素系樹脂;アクリル系樹脂;フェノール系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂等が挙げられ、また、上記樹脂の共重合体を用いることもできる。これらのうち、ホワイトボードとしての性能の観点から、より具体的には、筆記、消去を行った際にマーカーによるフィラーの染色汚染を防止する観点から、尿素樹脂により形成された有機フィラーが好適である。
また、硬化性樹脂の硬化後のフィラーの安定性の観点から、硬化性樹脂中の反応基を有する化学組成を有したものが望ましい。
さらに、映写スクリーンとしての機能を十分に得るとの観点から、有機フィラーは不定形のフィラーであることが好ましく、十分な吸油量を有するものが望ましい。
なお、これらの有機フィラーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
硬化性樹脂組成物中のフィラーの含有量は、上述のように、パターン印刷シートの表面の60度光沢値が8〜20の範囲となるように選択され、用いる材料等によって、その最適範囲は異なる。通常、60度光沢値は、フィラーの含有量が高いほど低下し、フィラーの含有量が低いほど増大する傾向を示す。
より具体的な好適範囲としては、硬化性樹脂100質量部に対して、通常、1〜50質量部の範囲であり、特に、有機フィラーの場合には、硬化性樹脂100質量部に対して、10〜18質量部の範囲が好ましく、無機フィラーの場合には、5〜30質量部の範囲が好ましい。
一方、パターン印刷シートの表面の艶を低下させる方法としては、基材2として透明又は半透明のものを用いて、その裏面側に接着層6及び貼合基材7をこの順に積層する方法も好ましく用いられる。その場合、貼合基材7の艶に応じて、表面保護層5におけるフィラーの含有量を調節することができ、例えば、貼合基材7として60度光沢値が4のものを用いると、硬化性樹脂100質量部に対して、有機フィラー9〜18質量部を含有する硬化性樹脂組成物を用いて表面保護層5を設けた場合であっても、パターン印刷シートの表面の60度光沢を8〜20の範囲とすることが可能であるため、映写スクリーンとしての好適な機能を維持しつつ、フィラーの含有量を低減し、イレーサーによるマーカー消去時におけるマーカー残りを低減し得るため好ましい。
【0034】
また、フィラーの平均粒径についても、パターン印刷シートの表面の60度光沢値が8〜20の範囲となるように選択されるが、通常、0.5〜10μmの範囲内であることが好ましい。平均粒子径が0.5μm以上であると、表面保護層の十分なつや消し効果を得ることができ、映写スクリーンとしての十分な機能を発揮し得る。一方10μm以下であると、表面保護層を形成した際の表面凹凸を滑らかにできるため、ホワイトボードマーカーの筆記をスムーズに行なえる点や、イレーサーによるマーカー消去時にマーカー残りを防止し得る。以上の観点から、フィラーの平均粒径は、1〜7μmの範囲であることが、さらに好ましい。
【0035】
接着層6は、基材2の裏面側に貼合基材7を設ける場合に、基材2と貼合基材7との間に設けられる層である。
接着層6で使用する接着剤は、公知又は市販の接着剤の中から、基材2や貼合基材7を構成する成分などに応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂のほか、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、エマルションの状態で使用してもよい。なかでも、耐熱性の観点からウレタン系樹脂接着剤が好ましい。ウレタン系樹脂接着剤は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする2液硬化型ウレタン樹脂が好ましく挙げられる。
【0036】
接着方法としては、用いる接着剤の種類などに応じて公知の方法に従って実施すればよい。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂にイソシアネート、アミンなどの架橋剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、アザビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの重合促進剤などを必要により添加した接着剤を塗工し、ドライラミネートする方法を採用することができる。また、本発明においては、熱圧着できる接着剤を使用し、熱圧着によって基材2と貼合基材7とを積層することもできる。
接着層6の厚さは、使用する接着剤の種類などに応じて異なるが、通常は0.1〜30μm程度とすればよい。
【0037】
貼合基材7は、図2に示すように、基材2の裏面側に貼り合せられる。
貼合基材7としては、基材2側の表面の60度光沢値が、好ましくは7以下、より好ましくは5以下のものが用いられ、その場合、前述のように、表面保護層5のフィラーの含有量が比較的少ない場合であっても、パターン印刷シート全体における表面の60度光沢値を8〜20の範囲内とすることができる。
【0038】
貼合基材7としては、前記基材2と同様のものを用いることができる。
また、貼合基材7は、着色剤を含有させるなどして、着色されたものを用いてもよい。貼合基材7に用いられる着色剤としては、入力端末が、印刷層3のパターン形成部と貼合基材7とのコントラストを認識し得るものであれば特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、アンチモン白、黄色酸化鉄、黄鉛、チタン黄、弁柄、クロムバーミリオン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、フェロシアン化物、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等を、入力端末が読み取る波長に応じて使用することができ、前記基材2と同様に、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルクなどの白色のものが好ましい。
【0039】
また、本発明のパターン印刷シートは、さらに絵柄層(図示せず)を設けることで、任意の絵柄を有するものとすることもできる。
絵柄層は、印刷層3とプライマー層4との間、基材2と接着層6との間、接着層6と貼合基材7との間等に設けると、印刷層3を形成する際に、パターンの再現性を損なうことがないため好ましい。
絵柄層を形成する具体的な方法としては、種々の模様をインキと印刷機を使用して、印刷層3上、基材2の裏面及び貼合基材7上のいずれか一箇所以上に印刷する方法が挙げられる。
【0040】
絵柄層の形成に用いられる着色剤としては、入力端末が、印刷層3のパターン形成部と貼合基材7とのコントラストを認識し得るものであれば特に限定されず、例えば、チタン白、アンチモン白、黄色酸化鉄、黄鉛、チタン黄、弁柄、クロムバーミリオン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、フェロシアン化物、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等から、入力端末の検知光、印刷層3を形成する着色剤、基材2や貼合基材7が含有する着色剤等に応じて選択することができる。
【0041】
本発明のパターン印刷シートは、映写スクリーンとしての機能を確保するとの観点から、表面の艶の程度が、60度光沢値の値として8〜20の範囲であることが必須である。映写スクリーンとしてより高い機能を求める場合には、60度光沢値が11〜15の範囲であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明のパターン印刷シートは、表面の鉛筆硬度が2B以上であることが好ましい。鉛筆硬度が2B以上であると、良好な耐擦傷性が得られるとともに入力端末である先端が硬質な電子ペンなどのペン先で筆記した場合の筆圧による凹みがつき難い。以上の観点から、鉛筆硬度はB以上がさらに好ましい。
【0043】
本発明で用いることができる入力端末としては、印刷層3のパターン形成部とパターン非形成部とのコントラストを認識し得るものであれば、特に限定はなく、従来公知のセンサーが備えられていればよい。
入力端末で読み取った連続的な撮像データから位置情報が算出され、それを時間情報と組み合わせ、情報処理装置で扱える入力軌跡データとして提供される。なお、これらの処理装置としては、特に限定されず、プロセッサ、メモリ、通信インタフェース及びバッテリ等の部材を具備していれば良い。
また、読取データ処理装置は、入力端末に内蔵されていてもよいし、また、外部の情報処理装置に内蔵されていてもよい。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)シート表面性能(表面の艶)
各実施例及び比較例にて製造したパターン印刷シートについて、表面の艶をグロスメーター(Gardner社製「micro−TRI−gloss」)を使用し、入射光60度の条件で測定した(60度光沢値)。
(2)プロジェクター映写性試験
各実施例及び比較例にて製造したパターン印刷シートについて、シートを垂直面にシワ無く張り合わせた状態で、プロジェクターとして「CANON製LV7365」を用い、ホットスポット、光のぎらつき、色のくすみの有無を目視にて確認、それぞれの評価を以下の評価基準で行った。
(2−1)ホットスポット
◎;プロジェクターの照射光が非常にぼやけた状態となり、全くまぶしさを感じないもの
○;プロジェクターの照射光がぼやけた状態となり、まぶしさを感じないもの
×;プロジェクターの照射光が円状の光として確認され、まぶしさを感じるもの
(2−2)色のギラツキ
◎:赤、黄、青色の光を投影した際に、原色どおりの色が再現されるもの
○:赤、黄、青色の光を投影した際に、色の再現性がよいもの
△:赤、黄、青色の光を投影した際に、映写幕での色調が若干メタリック調になるもの
×:赤、黄、青色の光を投影した際に、映写幕での色調がメタリック調になるもの
(2−3)色のくすみ
◎;白色の光を投影した際に、原色どおりの色調が再現されるもの
○;白色の光を投影した際に、色の再現性がよいもの
×;白色の光を投影した際に、映写幕での色調がグレーになるもの
【0045】
(3)ホワイトボード性能(マーカー消去性)
各実施例及び比較例にて製造したパターン印刷シートについて、ぺんてる(株)製ホワイトボードマーカーで筆記後、1分間室温にて乾燥した後、表面をOHTO製メラミンフォームイレーサーにて、荷重500gで1往復消去した後の外観を下記の基準で評価した。
◎;マーカーカスが残らず、マーカーの拭き取りが容易に可能である
○;マーカーカスが残らず、マーカーの拭き取りが可能である
△;表面にマーカーカスが付着し、2往復以上の消去でマーカーが拭き取れる
【0046】
(4)ドットパターン読み取り性能
各実施例及び比較例にて製造したパターン印刷シートについて、アノトパターン検出装置「TECHKON製 APA DMS910IR」、及び専用ソフトウェア 「Anoto Pattern Analyzer」を使用し、ドットパターンの読み取りが行えるか否かの確認をした。
○;ドットパターンの読み取りが行えた
×;ドットパターンの読み取りが行えなかった
(5)鉛筆硬度
電子線硬化性樹脂の塗工面に対して、JIS−K−5600−5−4に準拠し鉛筆硬度試験を行なった。使用する鉛筆の硬度を3H〜2Bとし、シート表面に傷、食い込み等が生じない最大の鉛筆硬度にて評価した。
(6)耐摩耗性
試験機としてテスター産業(株)製学振型摩擦試験機を用い、摩耗用基材としてOHTO製メラミンイレーサーを使用し、表面保護層の表面に対して、荷重4kgにて500往復摺動試験を行なった際の外観変化について下記の基準で評価を行なった。
○:外観上変化ないもの
×:電子線硬化樹脂の剥離により、ドット部分の脱落が見られるもの
【0047】
実施例1
厚さ125μmの白色PETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製「U2 L92W」)の表面に水性アクリル樹脂(インクテック(株)製「オーデKR991墨」及び「オーデミキサー」を質量比90:10で混合したもの)を用いて、フレキソ印刷法にてアノトパターンを印刷し、規則性を有するパターン状印刷層を積層させた。次いで、アクリルポリオール系樹脂(昭和インク工業(株)製「EBFプライマー」)を、グラビアコーター法にて塗工量2.0g/m2で塗工し、プライマー層を積層させた。
次に、電子線硬化性アクリレート樹脂及び多官能モノマーを主成分とする電子線硬化性樹脂 (ザ・インクテック(株)製「WBWハード(平均官能基数4.0)100質量部に対して、シリコーンアクリレートプレポリマー(ザ・インクテック(株)「WBWシリコーン添加剤」)3質量部、及び平均粒径5μmの尿素系樹脂からなる有機フィラーを18質量部添加した電子線硬化性樹脂組成物をグラビアダイレクトコータ法により、2.0g/m2塗工し、表面保護層(未硬化)を積層させた。塗工後、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層とし、パターン印刷シートを作製した。
当該シートについて上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
【0048】
実施例2〜4及び比較例1〜3
実施例1において、有機フィラーの含有量を第1表に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0049】
実施例5
実施例1において、有機フィラーに代えて、無機フィラーである表面処理シリカ(平均粒径5μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0050】
実施例6
実施例1において、有機フィラーに代えて、無機フィラーである表面未処理シリカ(平均粒径5μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0051】
実施例7
実施例1において、有機フィラーに代えて、無機フィラーである表面未処理シリカ(平均粒径7.5μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0052】
実施例8
実施例1において、基材として用いる白色PETフィルムとして、50μmの白色PETフィルム(SKC(株)製「SW84G」を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0053】
実施例9
実施例1において、基材として厚さ60μmの白色ポリプロピレンフィルム(PP、三菱樹脂(株)製「PB023 W23」)用いたこと以外は、実施例1と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0054】
実施例10
実施例1において、基材として厚さ140μmの白色ポリプロピレンフィルム(PP、三菱樹脂(株)製「PB020 W22」)用いたこと以外は、実施例1と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0055】
比較例4
実施例1において、尿素フィラーの含有量を16質量部とし、プライマー層を積層しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、パターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0056】
実施例11
厚さ125μmの透明PETフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4300」)の表面に水性アクリル樹脂(インクテック(株)製「オーデKR991墨」及び「オーデミキサー」を質量比90:10で混合したもの)を用いて、フレキソ印刷法にてアノトパターンを印刷し、規則性を有するパターン状印刷層を積層させた。次いで、アクリルポリオール系樹脂(昭和インク工業(株)製「EBFプライマー」)を、グラビアコーター法にて塗工量2.0g/m2で塗工し、プライマー層を積層させた。
次に、電子線硬化性アクリレート樹脂及び多官能モノマーを主成分とする電子線硬化性樹脂(ザ・インクテック(株)製「WBWハード(平均官能基数4.0)100質量部に対して、シリコーンアクリレートプレポリマー(ザ・インクテック(株)「WBWシリコーン添加剤」)3質量部、及び平均粒径5μmの尿素系樹脂からなる有機フィラーを12質量部添加した電子線硬化性樹脂組成物をグラビアダイレクトコータ法により、2.0g/m2塗工し、表面保護層(未硬化)を積層させた。塗工後、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層とした。
上述のようにして得た透明PETフィルム/印刷層/プライマー層/表面保護層の積層体を、厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(三菱化学MKV(株)製「PB−013」(商品名))の低艶面(60°グロス値=4)上に置き、上記方法にて積層体表面の艶を測定したところ、60°グロス値は24であった。
次に上記積層体の裏面に接着剤であるポリエステルウレタン樹脂(大日精化工業(株)製「E−295L)」(商品名))を介して、厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(三菱化学MKV(株)製「PB−013」(商品名))の低艶面(60°グロス値=4)を貼付し、パターン印刷シートを作製した。
実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
【0057】
実施例12
実施例11において、パターン印刷シートの裏面に接着したシートを厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(三菱化学MKV(株)製「PB−013」(商品名))の高艶面(60°グロス値=7)とした以外は実施例11と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
また、実施例11と同様にして、透明PETフィルム/印刷層/プライマー層/表面保護層の積層体表面の艶を測定したところ、60°グロス値は24であった。
【0058】
実施例13
実施例11において、有機フィラーの含有量を第2表に示すように変更したこと以外は、実施例11と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
また、実施例11と同様にして、透明PETフィルム/印刷層/プライマー層/表面保護層の積層体表面の艶を測定したところ、60°グロス値は14であった。
【0059】
実施例14
実施例11において、有機フィラーの含有量を第2表に示すように変更したこと以外は、実施例11と同様にしてパターン印刷シートを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
また、実施例11と同様にして、透明PETフィルム/印刷層/プライマー層/表面保護層の積層体表面の艶を測定したところ、60°グロス値は37であった。
【0060】
実施例15
実施例3において、プライマー層4として、アクリルポリオール樹脂に対して、トリアジン系紫外線吸収剤7質量%(チバジャパン製チヌビン479 4質量%及びチヌビン400 3質量%)並びにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・ジャパン製、商品名チヌビン123)2質量%を添加したもの((株)DICグラフィックス製「SG−3)])を使用した事以外は実施例3と同様にしてパターン印刷シートを作成した。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
また、以下に示す耐候性試験を行ったところ、シートが殆ど変色しなかった(ΔE=3以下)。
(耐候性試験)
スガ試験機(株)製 紫外線オートフェードメーター U48AUを用い、シート表面に対して24時間促進耐侯劣化処理を施こした後、シートの変退色を色差計(ミノルタ社製 スペクトロフォトメーター CM3700d)にて確認した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のパターン印刷シートによれば、プロジェクター等を通して、文字データ、画像データ等を投影することのできる映写スクリーンとしての機能を有し、しかも、これに書き込みを行なうことができ、該書き込みをリアルタイムでデジタル情報として取り込み、映写スクリーンに反映させることのできる機能を有し、かつホワイトボードとしても使用できる機能を同時に有する映写スクリーンを得ることができる。
さらには、本発明のパターン印刷シートの背面部に、プラスチックフィルム、木製合板、鋼板、マグネットシート、吸着シートを張り合わせて使用することもできる。プラスチックフィルム、木製合板、鋼板等の機材と組み合わせることで、従来の移動式ホワイトボードやパーテーション、壁面等の建材製品の一部として利用することが可能である。
またマグネットシートや吸着シートを張り合わせた場合には、すでに設置されている黒板や、壁に対してこれまでに述べた様な性能を付与することができるとともに、シート形状であるため容易に人が持ち運びでき、空間の制限にとらわれない利用が可能である。
さらに、本発明のパターン印刷シートは、電子ペンとしての使用を行わずに、映写兼用ホワイトボードシートとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:パターン印刷シート
2:基材
3:印刷層
4:プライマー層
5:表面保護層
6:接着層
7:貼合基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、規則性を有するパターン状印刷層、プライマー層、及び表面保護層をこの順に積層してなるパターン印刷シートであって、該印刷層を構成するインキが着色剤を含み、該印刷層は、パターンを検知可能な入力端末を用いて、表面保護層側から該パターンを読み取ることで、パターン印刷シート上における入力端末の位置に関する情報を提供可能であり、表面保護層がフィラーを含有する硬化性樹脂組成物を硬化したものであり、かつ60度光沢値が8〜20であることを特徴とするパターン印刷シート。
【請求項2】
前記表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである請求項1に記載のパターン印刷シート。
【請求項3】
前記フィラーの含有量が、硬化性樹脂100質量部に対して、1〜50質量部である請求項1又は2に記載のパターン印刷シート。
【請求項4】
前記フィラーが有機フィラーである請求項1〜3のいずれかに記載のパターン印刷シート。
【請求項5】
前記有機フィラーが尿素樹脂からなる請求項4に記載のパターン印刷シート。
【請求項6】
前記基材の厚さが、25〜400μmである請求項1〜5のいずれかに記載のパターン印刷シート。
【請求項7】
前記基材の裏面側に、さらに接着層及び貼合基材をこの順に積層してなる請求項1〜6のいずれかに記載のパターン印刷シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のパターン印刷シートを用いた多機能映写スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−95706(P2011−95706A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79756(P2010−79756)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】