パターン形成方法及び半導体装置の製造方法
【課題】半導体リソグラフィ技術を用いて感光性樹脂膜をパターニングする工程の良否を正確且つ簡易に検査することができるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】パターン形成方法は、基板1の主面上の被検査領域に感光性樹脂膜を形成する工程と、投影光学系を用いて、マスクに形成された原版パターンを透過した露光光を感光性樹脂膜の表面に照射する露光工程と、感光性樹脂膜に現像処理を施して原版パターンに対応する被検査パターン2を形成する現像工程とを備える。被検査パターン2は、一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造2sa,2sbを有する。原版パターンは、被検査パターン2の厚み分布に応じた光透過率分布を有する。
【解決手段】パターン形成方法は、基板1の主面上の被検査領域に感光性樹脂膜を形成する工程と、投影光学系を用いて、マスクに形成された原版パターンを透過した露光光を感光性樹脂膜の表面に照射する露光工程と、感光性樹脂膜に現像処理を施して原版パターンに対応する被検査パターン2を形成する現像工程とを備える。被検査パターン2は、一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造2sa,2sbを有する。原版パターンは、被検査パターン2の厚み分布に応じた光透過率分布を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リソグラフィ技術を用いて感光性樹脂膜をパターニングする工程の良否を検査する技術に関し、特に、露光工程や現像工程の良否を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(大規模集積回路;Large Scale Integrated circuit)の品質向上のためにその製造工程では様々な検査が実行される。一般にLSIの製造工程では、半導体ウェハ上に複数層の回路パターンが形成されるが、これら複数層のうち、半導体リソグラフィ工程で使用される投影露光装置の解像限界に近い加工線幅を有する層(レイヤ)は、クリティカルレイヤと呼ばれ、クリティカルレイヤと比べると大きな加工線幅を有する層は、ラフレイヤと呼ばれている。ラフレイヤに対しては、たとえば光学顕微鏡像を用いた目視による簡易検査が一般に行われている。一方、ゲート電極などの微細構造を含むクリティカルレイヤに対しては、たとえば走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)像や透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)像を用いた検査を実行してそのパターン寸法の高精度な管理を行う必要があるが、検査コストが嵩むという問題がある。
【0003】
各層の加工線幅の精度は、たとえば、半導体リソグラフィ工程で形成されるレジストパターンの寸法精度に依存するが、半導体リソグラフィ工程でマスク(レチクル)の原版パターンをレジスト膜に転写するときの露光量が適正量からずれたり、現像の不足または過多(たとえば、現像時間が適正時間からずれること)が生じたりすると所望の寸法精度を持つレジストパターンを形成することができず、LSIの歩留まり低下を招く。このため、半導体リソグラフィ工程のうちの露光工程や現像工程の良否を検査することも重要である。
【0004】
図1(A)は、ポジ型レジスト膜を使用する半導体リソグラフィ工程の一部を概略的に示す断面図である。この半導体リソグラフィ工程では、図1(A)に示されるように塗上面にレジスト膜101が塗布された半導体ウェハ100を投影露光装置のウェハステージ(図示せず)上に配置する。ウェハステージの上方には、原版であるマスク(レチクル)110が配置されている。マスク110は、石英基板110Aと、この石英基板110Aの表面に形成された遮光膜110Bとからなる。露光工程では、マスク110を介して露光光120をレジスト膜101に照射することによりマスク110の原版パターンをレジスト膜101に転写する。この後の現像工程で、現像液を用いて露光部101eを溶解することでレジストパターンが形成される。露光工程での露光量過多や現像工程での現像過多が生じると、図1(B)に示されるように、形成されたレジストパターン101Pの開口部102a,102bのサイズが大きくなり、加工線幅Wdが目標パターンの加工線幅Wtよりも小さくなる。一方、露光量不足や現像不足が生ずると、図1(C)に示されるように、形成されたレジストパターン101Pの開口部102a,102bのサイズが小さくなり、加工線幅Woが目標パターンの加工線幅Wtよりも大きくなる。また、開口部102a,102bの底部にレジスト膜材料101a,101bが残存し、オープン不良(配線の断線)を招くおそれがある。
【0005】
レジストパターンの良否検査に関する先行技術文献としては、たとえば、特開平1−129414号公報(特許文献1)や特開昭60−140346号公報(特許文献2)が挙げられる。特許文献1には、縦横両方向ともに一定間隔で次第に線幅が細くなる複数の検査用フォトレジストパターンを基板上に形成する技術が開示されている。エッチングを受けて残存する検査用レジストパターンの状態をチェックすることにより、露光工程における露光量が適正であるか否かを判断することができる。一方、特許文献2には、同一の基準線上に配列された頂点を有する複数の正方形状の単位パターン(検査用フォトレジストパターン)を所定ピッチで形成する技術が開示されている。単位パターンの頂点同士の接触、非接触を視覚的に認識することにより、露光工程における露光時間が適正であるか否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−129414号公報
【特許文献2】特開昭60−140346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ラフレイヤ用のレジストパターンの良否、すなわちラフレイヤに適用される半導体リソグラフィ工程の良否は、レジストパターンの光学顕微鏡像を限度見本(品質の限界を示す見本)と見比べる簡易検査により判定することができる。しかしながら、この簡易検査では、その判定精度に限界がある。たとえば、特許文献1や特許文献2の検査用レジストパターンを使用しても、上記の目標パターンの線幅に対する加工線幅の誤差が許容範囲内か否かの判定を光学顕微鏡像に基づいて正確に行うことは難しいという問題がある。また、レジストパターンの開口部の底部に残存する薄いレジスト膜を光学顕微鏡像から見つけ出すことも難しかった。特許文献1の技術を用いて、線幅が非常に細い高アスペクト比(レジスト膜厚/パターン線幅)の検査用フォトレジストパターンを形成することが可能であれば、加工線幅の誤差が許容範囲内か否かの判定を行うことができるが、実際に高アスペクト比の検査用フォトレジストパターンを形成しようとすると、露光工程の後に実行される現像工程や乾燥工程の影響を受けてレジストパターンが倒れること(レジスト倒れ)が起きるという問題がある。
【0008】
上述したSEM像やTEM像を用いる検査によれば、レジストパターンの加工線幅の誤差が許容範囲内か否かを正確に判定することができ、レジストパターンの開口部の底部に残存するレジスト膜を容易に検出することができるが、検査コストが大幅に増加するという問題がある。
【0009】
上記に鑑みて本発明の目的は、半導体リソグラフィ技術を用いて感光性樹脂膜をパターニングする工程の良否を正確且つ簡易に検査することができるパターン形成方法及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるパターン形成方法は、基板の主面上の被検査領域に感光性樹脂膜を形成する工程と、投影光学系を用いて、マスクに形成された原版パターンを透過した露光光を前記感光性樹脂膜の表面に投影する露光工程と、前記感光性樹脂膜に現像処理を施して前記原版パターンに対応する被検査パターンを形成する現像工程と、を備え、前記被検査パターンは、当該被検査パターンの前記主面に沿った所定方向一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造を有し、前記原版パターンは、前記被検査パターンの厚み分布に応じた光透過率分布を有することを特徴とする。
【0011】
本発明による半導体装置の製造方法は、半導体ウェハの主面上における半導体素子が形成される素子形成領域と被検査領域とにそれぞれ感光性樹脂膜を同時に形成する工程と、投影光学系を用いて、マスクに形成された検査用原版パターンを透過した露光光を前記被検査領域に形成された当該感光性樹脂膜の表面に投影すると同時に、前記マスクに形成された回路用原版パターンを透過した露光光を前記素子形成領域に形成された当該感光性樹脂膜の表面に照射する露光工程と、前記感光性樹脂膜に現像処理を施して前記検査用原版パターン及び前記回路用原版パターンにそれぞれ対応する被検査パターン及び回路形成用パターンを形成する現像工程と、を備え、前記被検査パターンは、当該被検査パターンの前記主面に沿った所定方向一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造を有し、前記原版パターンは、前記被検査パターンの厚み分布に応じた光透過率分布を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被検査パターンの外観を観察することにより露光工程や現像工程の異常を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】半導体リソグラフィ工程の一部を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の方法で形成された被検査パターンを概略的に示す図である。
【図3】半導体ウェハ(基板)の平面図である。
【図4】実施の形態1の半導体リソグラフィ工程で被検査パターンを形成するために使用されるマスクの検査用原版パターンの一例を概略的に示す図である。
【図5】実施の形態1に係るパターン形成工程の一部を概略的に示す図である。
【図6】実施の形態1に係る露光工程により感光性樹脂膜中に形成された露光部と未露光部を概略的に示す断面図である。
【図7】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態1に係る被検査パターンの一例を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態2の方法で形成された被検査パターン及び基準パターンを概略的に示す図である。
【図9】実施の形態2の半導体リソグラフィ工程で被検査パターン及び基準パターンを形成するために使用されるマスクの原版パターンの一例を概略的に示す図である。
【図10】実施の形態2に係る露光工程により感光性樹脂膜中に形成された露光部と未露光部を概略的に示す断面図である。
【図11】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態2に係る被検査パターン及び基準パターンの一例を概略的に示す断面図である。
【図12】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態2に係る被検査パターン及び基準パターンの他の例を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明に係る実施の形態3の方法で形成された被検査パターンを概略的に示す図である。
【図14】実施の形態3の半導体リソグラフィ工程で被検査パターンを形成するために使用されるマスクの検査用原版パターンの一例を概略的に示す図である。
【図15】実施の形態3に係る露光工程により感光性樹脂膜中に形成された露光部と未露光部を概略的に示す断面図である。
【図16】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態3に係る被検査パターンの一例を概略的に示す断面図である。
【図17】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態3に係る被検査パターンの他の例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
実施の形態1.
図2(A),(B)は、本発明に係る実施の形態1の方法で形成された被検査パターン2を概略的に示す図である。図2(A)は、半導体ウェハ1の主面に対して垂直な方向から見た被検査パターン2の平面図(上面視図)であり、図2(B)は、図2(A)に示す被検査パターン2のIIb−IIb線に沿った断面図である。この被検査パターン2は、マスク(レチクル)を原版として用いる半導体リソグラフィ工程(以下、単に「リソグラフィ工程」と呼ぶ。)により半導体ウェハまたは基板の主面上に形成される。
【0016】
リソグラフィ工程のうち露光工程を、いわゆるステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(ステッパ)を用いて実行する場合、投影露光装置は、基板の主面上の露光領域(ショット領域と呼ばれる。)を走査しつつ、各ショット領域にマスクを介して露光光を照射する。図3(A)は、半導体ウェハ(基板)1の主面上のショット領域10,10,…の概略を示す平面図である。図3(B)に示されるように各ショット領域10に、1個の半導体チップが形成される素子形成領域12と、グリッドライン(ダイシング領域)11とを設けることができる。グリッドライン11は、半導体チップを半導体ウェハ1から分離(個片化)するための切断領域である。被検査パターン2が形成される被検査領域13は、このグリッドライン11内に設けられている。なお、1つのショット領域10に複数個の素子形成領域12が設けられる場合もある。図3(C)は、1つのショット領域10に設けられた4個の素子形成領域12,12,12,12を示す図である。この場合は、ショット領域10の周縁部を構成するグリッドライン11内に被検査領域13を設けることができる。
【0017】
リソグラフィ工程では、まず、各ショット領域10における素子形成領域12と被検査領域13とにそれぞれ感光性樹脂膜を同時に塗布する。次の露光工程では、マスクを透過した露光光を投影光学系を用いて感光性樹脂に照射することにより、マスクに形成された回路用原版パターン及び検査用原版パターンを感光性樹脂膜に一括して転写する。ここで、回路用原版パターンを透過した露光光は、素子形成領域12の感光性樹脂膜の表面に照射され、検査用原版パターンを透過した露光光は、被検査領域13の感光性樹脂膜に照射される。その後の現像工程で、感光性樹脂膜に現像処理を施すことにより、素子形成領域12にレジストパターンまたは絶縁膜パターンが形成され、被検査領域13には被検査パターン2が形成される。なお、露光光として、たとえばg線やi線を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本実施の形態に係る被検査パターン2は、図2(A),(B)に示されるように、長さL1の長辺と幅W1の短辺とを持つ矩形状の底面2bを有し、X軸方向(半導体ウェハ1の主面に沿った所定方向)一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造2sa,2sbを有する。被検査パターン2は、5つの段差を構成する第1層21、第2層22、第3層23、第4層24及び第5層25からなる。最下層である第1層21は、被検査パターン2の底面2bの長辺方向両端からほぼ垂直に立ち上がる側面21a,21bを有している。これら側面21a,21bは、図2(A)に示されるように光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。同様に、第2層22は側面22a,22bを有し、第3層23は側面23a,23bを有し、第4層24は側面24a,24bを有し、第5層25は側面25a,25bを有しており、これら側面22a,22b,23a,23b,24a,24b,25a,25bは、階段状の段差を形成し、いずれも光学顕微鏡像で視認可能な境界線を構成する。
【0019】
傾斜構造2sa,2sbの側面間隔Lsと層間隔(段差)Hsは、光学顕微鏡像において側面21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24b,25a,25bのエッジパターンを識別することができる大きさであればよい。たとえば、側面間隔Lsを2μm程度、被検査パターン2の層間隔(段差)Hsを2μm程度にすることができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
図4(A),(B)は、本実施の形態のリソグラフィ工程で被検査パターン2を形成するために使用されるマスク3の検査用原版パターンの一例を概略的に示す図である。図4(A)は、マスク3の表面の一部を示す平面図であり、図4(B)は、図4(A)のマスク3のIVb−IVb線に沿った断面図である。マスク3には、検査用原版パターンの他に回路用原版パターンも形成されているが、説明の便宜上、この回路用原版パターンは図示されていない。マスク3は、ガラス基板や石英基板などの透光性基板31と、この透光性基板31の一方の主面上に形成された遮光膜のパターン(遮光パターン)32とを含む。遮光パターン32の構成材料としては、たとえば、クロム、酸化クロムあるいはタンタルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
遮光パターン32は、図4(A)に示されるように透光性基板31上の矩形状の領域に形成されている。この遮光パターン32は、被検査パターン2の傾斜構造2sa,2sbの高さに対応する開口密度(粗密)を有しており、この開口密度は、当該領域の中央部から長辺方向両端部に向かうにつれて段階的に低くなるように設計されている。この遮光パターン32は、形成すべき被検査パターン2の傾斜構造2sa,2sbの厚み分布に応じた光透過率分布(2次元分布)を有する。遮光パターン32は、被検査パターン2の第1層21の高さに対応する光透過率を有する透過領域321a,321bと、第2層22の高さに対応する光透過率を有する透過領域322a,322bと、第3層23の高さに対応する光透過率を有する透過領域323a,323bと、第4層24の高さに対応する光透過率を有する透過領域324a,324bと、第5層25の高さに対応する光透過率を有する透過領域325とを有している。
【0022】
透過領域の321a〜324a,325,321b〜324bの各々においては、図4(A)に示されるように、線状(帯状)の遮光膜が周期的に配列されている。遮光膜と遮光膜との間にはスリット状の開口部すなわち光透過孔が形成される。なお、本実施の形態では、マスク3に形成される開口部の形状はスリット形状であるが、これに限定されるものではない。たとえばドット形状の開口部が形成されるように遮光パターンを設計してもよい。
【0023】
図5は、被検査パターン2を形成するためのリソグラフィ工程の一部を概略的に示す図である。半導体ウェハ1の主面上にポジ型の感光性樹脂膜を塗布した後、この半導体ウェハ1は投影露光装置内に配置される。図5に示されるように、投影露光装置では、露光光源(図示せず)から放射された露光光35がマスク3及び投影光学系4を透過し、投影光学系4によって半導体ウェハ1上の感光性樹脂膜の表面に照射される。図6は、この感光性樹脂膜20の露光部20eと未露光部20nとを概略的に示す断面図である。感光性樹脂膜20は、露光光35の強度に応じた深さまで感光するので、現像液に対する感光性樹脂膜20の可溶領域の深さは、露光光強度に応じて変化する。図6に示されるように、露光工程により、感光性樹脂膜20の中には、現像液に可溶な露光部20eと、階段状の上面を有する未露光部20nとが形成される。その後の現像工程では、現像液に対して露光部20eが溶解し、未露光部20nは溶解しないので、結果として、半導体ウェハ1の被検査領域13に傾斜構造2sa,2sbを有する被検査パターン2(図2(A)及び(B))が形成される。
【0024】
なお、遮光パターン32を設計する際には、投影光学系4の解像限界を考慮して、遮光パターン32を構成する帯状遮光膜のパターンあるいはスリット状開口部のパターンが露光工程で感光性樹脂膜20に完全に転写されないように設計する必要がある。
【0025】
図7(A)は、リソグラフィ工程で露光量不足及び現像不足が生じた場合に形成される被検査パターン2の一例を概略的に示す断面図である。図6(A)に示されるように、主に現像不足に起因して半導体ウェハ1の主面上に被検査パターン2以外の感光性樹脂膜29が残り、被検査パターン2の第1層21の側面21a,21bが感光性樹脂膜29によってほとんど消失している。この被検査パターン2の光学顕微鏡像には、第1層21よりも上層22〜25の側面22a,22b,23a,23b,24a,24b,25a,25bのエッジが明瞭に現れるが、第1層21の側面21a,21bのエッジは明瞭に現れない。このような場合、半導体ウェハ1の素子形成領域12では、図1(C)に示したように開口部102a,102bの底部に感光性樹脂膜101a,101bが残存していると判断することができる。また、露光量がほぼ適正量となるように制御されていても、現像不足が生じた場合には、その現像不足の程度が大きいほど、被検査パターン2の消失する層数は多くなる。たとえば、光学顕微鏡像において2層分の側面24a,24b,25a,25bのエッジしか確認されなかった場合は、4層分の側面22a〜25a,22b〜25bのエッジが確認された場合よりも現像不足の程度が大きいと判断することができる。
【0026】
一方、図7(B)は、リソグラフィ工程で露光量過多及び現像過多が生じた場合に形成される被検査パターン2の一例を概略的に示す断面図である。図7(B)に示されるように、主に露光量過多に起因して、被検査パターン2の層数(段数)は適正条件時の図2(B)の被検査パターン2の層数よりも1つ少ない。このため、この被検査パターン2の光学顕微鏡像には、4層分の側面22a〜25a,22b〜25bのエッジが明瞭に現れる。このような場合、半導体ウェハ1の素子形成領域12では、図1(B)に示したように開口部102a,102bのサイズが大きく、加工線幅Wdが目標パターンの加工線幅Wtよりも小さいと判断することができる。さらなる露光量過多が生じたときは、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン2の層数はさらに少なくなる。したがって、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン2のエッジを観察することで、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを容易且つ正確に判断することができる。
【0027】
以上に説明したように実施の形態1に係る被検査パターン2の光学顕微鏡像を目視で観察することにより、リソグラフィ工程における露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを判断することができる。この判断に基づいて、リソグラフィ工程で素子形成領域12に形成されるレジストパターンや絶縁膜パターンの寸法精度を精確に推定することができ、そのプロセス条件が許容範囲内にあるか否か、あるいは規格に適合しているか否かを低コストで検査することができる。特に、ラフレイヤ用に形成されるレジストパターンや絶縁膜パターンの寸法精度の良否について正確に且つ低コストで外観検査することが可能である。たとえば、ウェハレベルCSP(Wafer−level Chip Scale Packaging)の製造工程において、半導体ウェハ上に再配線層を形成するための絶縁膜パターンの寸法精度の良否を低コストで検査することができる。
【0028】
さらに、本実施の形態に係る被検査パターン2は傾斜構造2sa,2sbを有するので、上記の特許文献1,2に開示されているような基板の面内方向に展開するレジストパターン群と比べると、被検査パターン2が形成される領域の面積を小さくし、レイアウト設計の自由度を向上させることができる。
【0029】
なお、上記実施の形態1の被検査パターン2は5段の層21〜25を有するが、段数は5段に限定されるものではなく、少なくとも2段あればよい。
【0030】
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図8(A),(B)は、実施の形態2の方法で形成された被検査パターン5及び基準パターン6を概略的に示す図である。図8(A)は、半導体ウェハ1の主面に対して垂直な方向から見た被検査パターン5及び基準パターン6の平面図(上面視図)であり、図8(B)は、図8(A)の基準パターン6のVIIIb−VIIIb線に沿った断面図であり、図8(C)は、図8(A)の被検査パターン5のVIIIc−VIIIc線に沿った断面図である。これら被検査パターン5及び基準パターン6は、実施の形態1の被検査パターン2の場合と同様に、マスク(レチクル)を原版として用いるリソグラフィ工程により半導体ウェハまたは基板の主面上に形成される。また、図3(B)または図3(C)に示したショット領域10内の被検査領域13に本実施の形態に係る被検査パターン5及び基準パターン6を形成することができる。
【0031】
本実施の形態に係る被検査パターン5は、図8(A),(C)に示されるように、長さL2の長辺と幅W2の短辺とを持つ矩形状の底面5bと、この底面5bの長辺方向一端からほぼ垂直に立ち上がる側面5wとを有する。底面5bの長さL2は、たとえば20μm〜30μm程度に、側面5wの高さHwは、たとえば10μm程度にすることができる。また、被検査パターン5は、X軸方向(半導体ウェハ1の主面に沿った所定方向)一端側から他端側に向かって漸次厚みが変化する傾斜構造5sを有している。また、この傾斜構造5sの表面は、一端側から他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する傾斜面を構成している。図8(A)に示されるようにこの傾斜構造5sの一端5gと側面5wとは、光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。
【0032】
一方、基準パターン6は、図8(A),(B)に示されるように、長さL2の長辺と幅W2の短辺とを持つ矩形状の底面6bを有する。図8(A)に示されるように、基準パターン6は、底面6bからほぼ垂直に立ち上がる両側面6wa,6wbを有しており、これら両側面6wa,6wbは、光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。また、図8(B)に示されるようにこの基準パターン6の断面は、長さL2と高さHwとを持つ矩形状を有する。基準パターン6の底面6bの形状は、被検査パターン5の底面5bの形状と同一であり、基準パターン6の高さHwは、被検査パターン5の側面5wの高さHwと同じである。基準パターン6の一方の側面6waと被検査パターン5の側面5wとは一直線上に揃えられ、基準パターン6の他方の側面6wbと被検査パターン5の先端5gも一直線上に揃えられている。これは、被検査パターン5と基準パターン6とを対比観察しやすくするためである。
【0033】
図9(A)〜(C)は、本実施の形態のリソグラフィ工程で被検査パターン5及び基準パターン6を形成するために使用されるマスク7の原版パターンの一例を概略的に示す図である。図9(A)は、このマスク7の表面の一部を示す平面図である。図9(B)は、図9(A)のマスク7のIXb−IXb線に沿った断面図であり、図9(C)は、図9(A)のマスク7のIXc−IXc線に沿った断面図である。マスク7には、検査用原版パターンの他に回路用原版パターンも形成されているが、説明の便宜上、回路用原版パターンは図示されていない。このマスク7は、ガラス基板や石英基板などの透光性基板71と、この透光性基板71の一方の主面上に形成された遮光膜のパターン(遮光パターン)72,73とからなる。一方の遮光パターン72は、被検査パターン5を形成するためのパターンであり、他方の遮光パターン73は、基準パターン6を形成するためのパターンである。遮光パターン72,73の構成材料としては、たとえば、クロム、酸化クロムあるいはタンタルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
一方の遮光パターン72は、図9(A)に示されるように透光性基板71上の矩形状の領域に形成されている。遮光パターン72は、形成すべき被検査パターン5の傾斜構造5sの高さに対応する開口密度(粗密)を有しており、この開口密度は、当該領域の長辺方向一端から他端へ向かうにつれて次第に低くなるように設計されている。この遮光パターン72は、被検査パターン5の傾斜構造5sの厚み分布に応じた光透過率分布(2次元分布)を有する。図9(A)に示されるように、マスク7の長辺方向に沿って線状(帯状)の遮光膜が配列され、遮光パターン72を構成している。遮光膜と遮光膜との間にはスリット状の開口部すなわち光透過孔が形成されている。本実施の形態では、マスク7に形成される開口部の形状はスリット形状であるが、これに限定されず、たとえばドット形状の開口部が形成されるように遮光パターンを設計してもよい。
【0035】
他方の遮光パターン73は、基準パターン6を形成するために図9(B)に示されるように矩形状の領域全体に亘って一定の厚みを有している。
【0036】
被検査パターン5及び基準パターン6は、実施の形態1の被検査パターン2の形成方法と同様の方法により形成される。すなわち、半導体ウェハ1の主面上にポジ型の感光性樹脂膜を塗布した後、この半導体ウェハ1を投影露光装置内に配置する。投影露光装置では、露光光源(図示せず)から放射された露光光がマスク7の遮光パターン72及び投影光学系を透過し、投影光学系によって感光性樹脂膜の表面に照射される。図10は、この感光性樹脂膜50の露光部50eと未露光部50nとを概略的に示す断面図である。感光性樹脂膜50は、露光光の強度に応じた深さまで感光するので、現像液に対する感光性樹脂膜50の可溶領域の深さは、露光光強度に応じて変化する。図10に示されるように、露光工程により、感光性樹脂膜50の中には、現像液に可溶な露光部50eと、傾斜構造を有する未露光部50nとが形成される。その後の現像工程では、現像液に対して露光部50eが溶解し、未露光部50nは溶解しない。結果として、半導体ウェハ1の被検査領域13に傾斜構造5sを有する被検査パターン5と基準パターン6とが形成される。
【0037】
なお、遮光パターン72を設計する際には、投影光学系の解像限界を考慮して、遮光パターン72を構成する帯状遮光膜のパターンあるいはスリット状開口部のパターンが露光工程で感光性樹脂膜50に完全に転写されないように設計する必要がある。
【0038】
図11(A),(B)は、リソグラフィ工程で露光量不足及び現像不足のうち少なくとも一方が生じた場合に形成される被検査パターン5及び基準パターン6の一例を概略的に示す断面図である。図11(A),(B)に示されるように、半導体ウェハ1の主面上に被検査パターン5及び基準パターン6以外の感光性樹脂膜59が残っている。このため、被検査パターン5の全体の長さL2aは、適正なプロセス条件でリソグラフィ工程が実行された場合の長さL2(図8(A))と比べて短い。したがって、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン5を観察することで、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正であるか否かを容易に判定することができる。
【0039】
また、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン5及び基準パターン6の両者を観察することで、正確な判定を下すことができる。すなわち、被検査パターン5の先端と基準パターン6の端面6wbとの差Δaに応じて、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを容易且つ正確に判断することができる。
【0040】
一方、図12(A),(B)は、リソグラフィ工程で主に露光量過多が生じた場合に形成される被検査パターン5及び基準パターン6の一例を概略的に示す断面図である。図12(A),(B)に示されるように、被検査パターン5の全体の長さL2bは、適正なプロセス条件でリソグラフィ工程が実行された場合の長さL2(図8(A))と比べて短い。したがって、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン5を観察することで、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正であるか否かを容易に判定することができる。また、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン5及び基準パターン6の両者を観察し、被検査パターン5の先端と基準パターン6の端面6wbとの差Δbに応じて、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを容易且つ正確に判断することができる。
【0041】
以上に説明したように実施の形態2に係る被検査パターン5の光学顕微鏡像を目視で観察することにより、リソグラフィ工程における露光工程や現像工程のプロセス条件が適正であるか否かを容易に判断することができる。また、被検査パターン5と基準パターン6とを対比観察することで、プロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを正確に判断することができる。この判断に基づいて、リソグラフィ工程で素子形成領域12に形成されるレジストパターンや絶縁膜パターンの寸法精度を精確に推定することができ、そのプロセス条件が許容範囲内にあるか否か、あるいは規格に適合しているか否かを容易に判定することもできる。
【0042】
さらに、本実施の形態に係る被検査パターン5は傾斜構造5sを有するので、上記特許文献1,2に開示されているような半導体ウェハの面内方向に展開するレジストパターン群と比べると、被検査パターン5及び基準パターン6が形成される領域の面積を小さくし、レイアウト設計の自由度を向上させることができる。上記実施の形態2では、被検査パターン5と基準パターン6とは分離しているが、被検査パターン5と基準パターン6とが互いに連続し一体化していてもよい。
【0043】
実施の形態3.
次に、本発明に係る実施の形態3について説明する。図13(A),(B)は、実施の形態3の方法で形成された被検査パターン8を概略的に示す図である。図13(A)は、半導体ウェハ1の主面に対して垂直な方向から見た被検査パターン8の平面図(上面視図)であり、図13(B)は、図13(A)の被検査パターン8のXIIIb−XIIIb線に沿った断面図である。この被検査パターン8は、実施の形態1の被検査パターン2の場合と同様に、マスク(レチクル)を原版として用いるリソグラフィ工程により半導体ウェハまたは基板の主面上に形成される。また、図3(B)または図3(C)に示したショット領域10内の被検査領域13に本実施の形態に係る被検査パターン8を形成することができる。
【0044】
本実施の形態に係る被検査パターン8は、図13(A),(B)に示されるように、長さL3の長辺と幅W3の短辺とを持つ矩形状の底面8bと、この底面8bの長辺方向一端からほぼ垂直に立ち上がる側面8wとを有する。底面8bの長さL3は、たとえば20μm〜30μm程度にし、側面8wの高さHvは、たとえば10μm程度にすることができる。また、被検査パターン8は、X軸方向(半導体ウェハ1の主面に沿った所定方向)一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造(傾斜面)8sを有している。また、傾斜構造8sの表面は、一端側から他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する複数の傾斜面8aa,8ab,8acを含み、これら傾斜面8aa,8ab,8acのうち隣り合う傾斜面間に段差が形成されている。図13(A)に示されるように、この傾斜構造8sの先端8gと側面8wとは、光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。
【0045】
被検査パターン8の傾斜構造8sは階段形状を有している。この傾斜構造8sは、段差を構成する2つの側面8d,8eを有し、先端8gと側面8dとの間に第1の傾斜面8aaを有し、側面8d,8e間に第2の傾斜面8abを有し、側面8eと側面8wとの間に第3の傾斜面8acを有する。リソグラフィ工程のプロセス条件が適正条件であるとき、これら傾斜面8aa,8ab,8acの水平方向(X軸方向)長さΔL1,ΔL2,ΔL3は同一である。図13(A)に示されるように、被検査パターン8の傾斜構造8sの側面8d,8eは、光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。
【0046】
図14(A),(B)は、本実施の形態のリソグラフィ工程で被検査パターン8を形成するために使用されるマスク9の検査用原版パターンの一例を概略的に示す図である。図14(A)は、このマスク9の表面の一部を示す平面図であり、図14(B)は、図14(A)のマスク9のXIVb−XIVb線に沿った断面図である。マスク9には、検査用原版パターンの他に回路用原版パターンも形成されているが、説明の便宜上、回路用原版パターンは図示されていない。このマスク9は、ガラス基板や石英基板などの透光性基板91と、この透光性基板91の一方の主面上に形成された遮光膜のパターン(遮光パターン)92とからなる。遮光パターン92の構成材料としては、たとえば、クロム、酸化クロムあるいはタンタルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
遮光パターン92は、図14(A)に示されるように透光性基板91上の矩形状の領域に形成されている。遮光パターン92は、形成すべき被検査パターン8の傾斜構造8sの高さに対応する開口密度(粗密)を有しており、この開口密度は、当該領域の長辺方向一端から他端へ向かうにつれて次第に低くなるように設計されている。この遮光パターン92は、被検査パターン8の傾斜構造8sの厚み分布に応じた光透過率分布(2次元分布)を有する。図14(A)に示されるように、遮光パターン92は、被検査パターン8の傾斜面8aaの高さ分布に対応する光透過率分布を有する透過領域921と、傾斜面8abの高さ分布に対応する光透過率分布を有する透過領域922と、傾斜面8acの高さ分布に対応する光透過率分布を有する透過領域923とを含む。これら透過領域921〜923の各々においては、線状(帯状)の遮光膜がマスク9の長辺方向に配列され、遮光膜と遮光膜との間にはスリット状の開口部すなわち光透過孔が形成されている。なお、本実施の形態では、マスク9に形成される開口部の形状はスリット形状であるが、これに限定されず、たとえばドット形状の開口部が形成されるように遮光パターンを設計してもよい。
【0048】
被検査パターン8は、実施の形態1の被検査パターン2の形成方法と同様の方法により形成される。すなわち、半導体ウェハ1の主面上の被検査領域13にポジ型の感光性樹脂膜を塗布した後、この半導体ウェハ1を投影露光装置内に配置する。投影露光装置では、露光光源(図示せず)から放射された露光光がマスク9の遮光パターン92及び投影光学系を透過し、投影光学系によって感光性樹脂膜の表面に照射される。図15は、この感光性樹脂膜80の露光部80eと未露光部80nとを概略的に示す断面図である。感光性樹脂膜80は、露光光の強度に応じた深さまで感光するので、現像液に対する感光性樹脂膜80の可溶領域の深さは、露光光強度に応じて変化する。図15に示されるように、露光工程により、感光性樹脂膜80の中には、現像液に可溶な露光部80eと、傾斜構造を有する未露光部80nとが形成される。その後の現像工程では、現像液に対して露光部80eが溶解し、未露光部80nは溶解しない。結果として、半導体ウェハ1の被検査領域13に傾斜構造8sを有する被検査パターン8が形成される。
【0049】
なお、遮光パターン92を設計する際には、投影光学系の解像限界を考慮して、遮光パターン92を構成する帯状遮光膜のパターンあるいはスリット状開口部のパターンが露光工程で感光性樹脂膜80に完全に転写されないように設計する必要がある。
【0050】
図16(A),(B)は、リソグラフィ工程で露光量不足及び現像不足が生じた場合に形成される被検査パターン8の一例を概略的に示す断面図である。図16(A)に示されるように、半導体ウェハ1の主面上に被検査パターン8以外の感光性樹脂膜88が残り、主に現像不足に起因して被検査パターン8の傾斜面8aaの水平方向長さΔL1は傾斜面8abの水平方向長さΔL2よりも短い。このときの被検査パターン8の光学顕微鏡像においては、先端8g及び側面8d,8e,8wの各エッジが現れ、先端8gと側面8dの間の距離ΔL1は、側面8d,8e間の距離ΔL2よりも短い。さらなる現像不足が生じたときは、図16(B)に示されるように、感光性樹脂膜89が残ることにより傾斜面8aaは消失し、側面8dの大部分が消失している。このときの被検査パターン8の光学顕微鏡像では、先端8gのエッジは現れず、側面8d,8e,8wの各エッジが現れる。また、側面8dのエッジは、側面8e,8wのエッジと比べて不明瞭となる。
【0051】
一方、図17(A),(B)は、リソグラフィ工程で露光量過多及び現像過多が生じた場合に形成される被検査パターン8の一例を概略的に示す断面図である。図17(A)に示されるように、被検査パターン8の傾斜面8aaの水平方向長さΔL1は傾斜面8abの水平方向長さΔL2よりも短い。このときの被検査パターン8の光学顕微鏡像においては、先端8g及び側面8d,8e,8wの各エッジが現れ、先端8gと側面8dの間の距離ΔL1は、側面8d,8e間の距離ΔL2よりも短い。さらなる露光量過多及び現像過多が生じたときは、図17(B)に示されるように、先端8g及び傾斜面8aaが消失している。このときの被検査パターン8の光学顕微鏡像では、先端8gのエッジは現れず、側面8d,8e,8wの各エッジが現れる。
【0052】
以上に説明したように実施の形態3に係る被検査パターン8の光学顕微鏡像を目視で観察することにより、リソグラフィ工程における露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを容易且つ正確に判断することができる。この判断に基づいて、リソグラフィ工程で素子形成領域12に形成されるレジストパターンや絶縁膜パターンの寸法精度を精確に推定することができ、そのプロセス条件が許容範囲内にあるか否か、あるいは規格に適合しているか否かを容易に判定することもできる。また、被検査パターン8は、半導体ウェハ1の主面に対して傾斜する傾斜構造8sを有するので、上記特許文献1,2に開示されているような半導体ウェハの面内方向に展開するレジストパターン群と比べると、被検査パターン8が形成される領域の面積を小さくし、レイアウト設計の自由度を向上させることができる。
【0053】
さらに、本実施の形態に係る被検査パターン8の傾斜構造8sは、傾斜面8aa,8ab,8acと、段差を構成する側面8d,8eとを有するので、実施の形態1,2に係る被検査パターン2,5と比べると、適正条件からのずれをより正確に判断することができる。
【0054】
実施の形態1〜3の変形例.
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形態を採用することもできる。上記実施の形態1〜3では、被検査パターン2,5,8をグリッドライン11内の被検査領域13に形成することができるが、この代わりに、素子形成領域12内に、回路形成用のレジストパターンまたは絶縁膜パターンとともに被検査パターン2,5,8を形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 半導体ウェハ、 2,5,8 被検査パターン、 4 投影光学系、 6 基準パターン、 2sa,2sb,5s,8s 傾斜構造、 3,7,9 マスク(レチクル)、 10 ショット領域、 11 グリッドライン(ダイシング領域)、 12 素子形成領域、 13 被検査領域、 31,71,91 透光性基板、 32,72,73,92 遮光パターン(検査用原版パターン)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リソグラフィ技術を用いて感光性樹脂膜をパターニングする工程の良否を検査する技術に関し、特に、露光工程や現像工程の良否を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(大規模集積回路;Large Scale Integrated circuit)の品質向上のためにその製造工程では様々な検査が実行される。一般にLSIの製造工程では、半導体ウェハ上に複数層の回路パターンが形成されるが、これら複数層のうち、半導体リソグラフィ工程で使用される投影露光装置の解像限界に近い加工線幅を有する層(レイヤ)は、クリティカルレイヤと呼ばれ、クリティカルレイヤと比べると大きな加工線幅を有する層は、ラフレイヤと呼ばれている。ラフレイヤに対しては、たとえば光学顕微鏡像を用いた目視による簡易検査が一般に行われている。一方、ゲート電極などの微細構造を含むクリティカルレイヤに対しては、たとえば走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)像や透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)像を用いた検査を実行してそのパターン寸法の高精度な管理を行う必要があるが、検査コストが嵩むという問題がある。
【0003】
各層の加工線幅の精度は、たとえば、半導体リソグラフィ工程で形成されるレジストパターンの寸法精度に依存するが、半導体リソグラフィ工程でマスク(レチクル)の原版パターンをレジスト膜に転写するときの露光量が適正量からずれたり、現像の不足または過多(たとえば、現像時間が適正時間からずれること)が生じたりすると所望の寸法精度を持つレジストパターンを形成することができず、LSIの歩留まり低下を招く。このため、半導体リソグラフィ工程のうちの露光工程や現像工程の良否を検査することも重要である。
【0004】
図1(A)は、ポジ型レジスト膜を使用する半導体リソグラフィ工程の一部を概略的に示す断面図である。この半導体リソグラフィ工程では、図1(A)に示されるように塗上面にレジスト膜101が塗布された半導体ウェハ100を投影露光装置のウェハステージ(図示せず)上に配置する。ウェハステージの上方には、原版であるマスク(レチクル)110が配置されている。マスク110は、石英基板110Aと、この石英基板110Aの表面に形成された遮光膜110Bとからなる。露光工程では、マスク110を介して露光光120をレジスト膜101に照射することによりマスク110の原版パターンをレジスト膜101に転写する。この後の現像工程で、現像液を用いて露光部101eを溶解することでレジストパターンが形成される。露光工程での露光量過多や現像工程での現像過多が生じると、図1(B)に示されるように、形成されたレジストパターン101Pの開口部102a,102bのサイズが大きくなり、加工線幅Wdが目標パターンの加工線幅Wtよりも小さくなる。一方、露光量不足や現像不足が生ずると、図1(C)に示されるように、形成されたレジストパターン101Pの開口部102a,102bのサイズが小さくなり、加工線幅Woが目標パターンの加工線幅Wtよりも大きくなる。また、開口部102a,102bの底部にレジスト膜材料101a,101bが残存し、オープン不良(配線の断線)を招くおそれがある。
【0005】
レジストパターンの良否検査に関する先行技術文献としては、たとえば、特開平1−129414号公報(特許文献1)や特開昭60−140346号公報(特許文献2)が挙げられる。特許文献1には、縦横両方向ともに一定間隔で次第に線幅が細くなる複数の検査用フォトレジストパターンを基板上に形成する技術が開示されている。エッチングを受けて残存する検査用レジストパターンの状態をチェックすることにより、露光工程における露光量が適正であるか否かを判断することができる。一方、特許文献2には、同一の基準線上に配列された頂点を有する複数の正方形状の単位パターン(検査用フォトレジストパターン)を所定ピッチで形成する技術が開示されている。単位パターンの頂点同士の接触、非接触を視覚的に認識することにより、露光工程における露光時間が適正であるか否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−129414号公報
【特許文献2】特開昭60−140346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ラフレイヤ用のレジストパターンの良否、すなわちラフレイヤに適用される半導体リソグラフィ工程の良否は、レジストパターンの光学顕微鏡像を限度見本(品質の限界を示す見本)と見比べる簡易検査により判定することができる。しかしながら、この簡易検査では、その判定精度に限界がある。たとえば、特許文献1や特許文献2の検査用レジストパターンを使用しても、上記の目標パターンの線幅に対する加工線幅の誤差が許容範囲内か否かの判定を光学顕微鏡像に基づいて正確に行うことは難しいという問題がある。また、レジストパターンの開口部の底部に残存する薄いレジスト膜を光学顕微鏡像から見つけ出すことも難しかった。特許文献1の技術を用いて、線幅が非常に細い高アスペクト比(レジスト膜厚/パターン線幅)の検査用フォトレジストパターンを形成することが可能であれば、加工線幅の誤差が許容範囲内か否かの判定を行うことができるが、実際に高アスペクト比の検査用フォトレジストパターンを形成しようとすると、露光工程の後に実行される現像工程や乾燥工程の影響を受けてレジストパターンが倒れること(レジスト倒れ)が起きるという問題がある。
【0008】
上述したSEM像やTEM像を用いる検査によれば、レジストパターンの加工線幅の誤差が許容範囲内か否かを正確に判定することができ、レジストパターンの開口部の底部に残存するレジスト膜を容易に検出することができるが、検査コストが大幅に増加するという問題がある。
【0009】
上記に鑑みて本発明の目的は、半導体リソグラフィ技術を用いて感光性樹脂膜をパターニングする工程の良否を正確且つ簡易に検査することができるパターン形成方法及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるパターン形成方法は、基板の主面上の被検査領域に感光性樹脂膜を形成する工程と、投影光学系を用いて、マスクに形成された原版パターンを透過した露光光を前記感光性樹脂膜の表面に投影する露光工程と、前記感光性樹脂膜に現像処理を施して前記原版パターンに対応する被検査パターンを形成する現像工程と、を備え、前記被検査パターンは、当該被検査パターンの前記主面に沿った所定方向一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造を有し、前記原版パターンは、前記被検査パターンの厚み分布に応じた光透過率分布を有することを特徴とする。
【0011】
本発明による半導体装置の製造方法は、半導体ウェハの主面上における半導体素子が形成される素子形成領域と被検査領域とにそれぞれ感光性樹脂膜を同時に形成する工程と、投影光学系を用いて、マスクに形成された検査用原版パターンを透過した露光光を前記被検査領域に形成された当該感光性樹脂膜の表面に投影すると同時に、前記マスクに形成された回路用原版パターンを透過した露光光を前記素子形成領域に形成された当該感光性樹脂膜の表面に照射する露光工程と、前記感光性樹脂膜に現像処理を施して前記検査用原版パターン及び前記回路用原版パターンにそれぞれ対応する被検査パターン及び回路形成用パターンを形成する現像工程と、を備え、前記被検査パターンは、当該被検査パターンの前記主面に沿った所定方向一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造を有し、前記原版パターンは、前記被検査パターンの厚み分布に応じた光透過率分布を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被検査パターンの外観を観察することにより露光工程や現像工程の異常を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】半導体リソグラフィ工程の一部を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の方法で形成された被検査パターンを概略的に示す図である。
【図3】半導体ウェハ(基板)の平面図である。
【図4】実施の形態1の半導体リソグラフィ工程で被検査パターンを形成するために使用されるマスクの検査用原版パターンの一例を概略的に示す図である。
【図5】実施の形態1に係るパターン形成工程の一部を概略的に示す図である。
【図6】実施の形態1に係る露光工程により感光性樹脂膜中に形成された露光部と未露光部を概略的に示す断面図である。
【図7】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態1に係る被検査パターンの一例を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態2の方法で形成された被検査パターン及び基準パターンを概略的に示す図である。
【図9】実施の形態2の半導体リソグラフィ工程で被検査パターン及び基準パターンを形成するために使用されるマスクの原版パターンの一例を概略的に示す図である。
【図10】実施の形態2に係る露光工程により感光性樹脂膜中に形成された露光部と未露光部を概略的に示す断面図である。
【図11】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態2に係る被検査パターン及び基準パターンの一例を概略的に示す断面図である。
【図12】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態2に係る被検査パターン及び基準パターンの他の例を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明に係る実施の形態3の方法で形成された被検査パターンを概略的に示す図である。
【図14】実施の形態3の半導体リソグラフィ工程で被検査パターンを形成するために使用されるマスクの検査用原版パターンの一例を概略的に示す図である。
【図15】実施の形態3に係る露光工程により感光性樹脂膜中に形成された露光部と未露光部を概略的に示す断面図である。
【図16】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態3に係る被検査パターンの一例を概略的に示す断面図である。
【図17】半導体リソグラフィ工程のプロセス条件が適正ではない場合に形成される実施の形態3に係る被検査パターンの他の例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
実施の形態1.
図2(A),(B)は、本発明に係る実施の形態1の方法で形成された被検査パターン2を概略的に示す図である。図2(A)は、半導体ウェハ1の主面に対して垂直な方向から見た被検査パターン2の平面図(上面視図)であり、図2(B)は、図2(A)に示す被検査パターン2のIIb−IIb線に沿った断面図である。この被検査パターン2は、マスク(レチクル)を原版として用いる半導体リソグラフィ工程(以下、単に「リソグラフィ工程」と呼ぶ。)により半導体ウェハまたは基板の主面上に形成される。
【0016】
リソグラフィ工程のうち露光工程を、いわゆるステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(ステッパ)を用いて実行する場合、投影露光装置は、基板の主面上の露光領域(ショット領域と呼ばれる。)を走査しつつ、各ショット領域にマスクを介して露光光を照射する。図3(A)は、半導体ウェハ(基板)1の主面上のショット領域10,10,…の概略を示す平面図である。図3(B)に示されるように各ショット領域10に、1個の半導体チップが形成される素子形成領域12と、グリッドライン(ダイシング領域)11とを設けることができる。グリッドライン11は、半導体チップを半導体ウェハ1から分離(個片化)するための切断領域である。被検査パターン2が形成される被検査領域13は、このグリッドライン11内に設けられている。なお、1つのショット領域10に複数個の素子形成領域12が設けられる場合もある。図3(C)は、1つのショット領域10に設けられた4個の素子形成領域12,12,12,12を示す図である。この場合は、ショット領域10の周縁部を構成するグリッドライン11内に被検査領域13を設けることができる。
【0017】
リソグラフィ工程では、まず、各ショット領域10における素子形成領域12と被検査領域13とにそれぞれ感光性樹脂膜を同時に塗布する。次の露光工程では、マスクを透過した露光光を投影光学系を用いて感光性樹脂に照射することにより、マスクに形成された回路用原版パターン及び検査用原版パターンを感光性樹脂膜に一括して転写する。ここで、回路用原版パターンを透過した露光光は、素子形成領域12の感光性樹脂膜の表面に照射され、検査用原版パターンを透過した露光光は、被検査領域13の感光性樹脂膜に照射される。その後の現像工程で、感光性樹脂膜に現像処理を施すことにより、素子形成領域12にレジストパターンまたは絶縁膜パターンが形成され、被検査領域13には被検査パターン2が形成される。なお、露光光として、たとえばg線やi線を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本実施の形態に係る被検査パターン2は、図2(A),(B)に示されるように、長さL1の長辺と幅W1の短辺とを持つ矩形状の底面2bを有し、X軸方向(半導体ウェハ1の主面に沿った所定方向)一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造2sa,2sbを有する。被検査パターン2は、5つの段差を構成する第1層21、第2層22、第3層23、第4層24及び第5層25からなる。最下層である第1層21は、被検査パターン2の底面2bの長辺方向両端からほぼ垂直に立ち上がる側面21a,21bを有している。これら側面21a,21bは、図2(A)に示されるように光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。同様に、第2層22は側面22a,22bを有し、第3層23は側面23a,23bを有し、第4層24は側面24a,24bを有し、第5層25は側面25a,25bを有しており、これら側面22a,22b,23a,23b,24a,24b,25a,25bは、階段状の段差を形成し、いずれも光学顕微鏡像で視認可能な境界線を構成する。
【0019】
傾斜構造2sa,2sbの側面間隔Lsと層間隔(段差)Hsは、光学顕微鏡像において側面21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24b,25a,25bのエッジパターンを識別することができる大きさであればよい。たとえば、側面間隔Lsを2μm程度、被検査パターン2の層間隔(段差)Hsを2μm程度にすることができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
図4(A),(B)は、本実施の形態のリソグラフィ工程で被検査パターン2を形成するために使用されるマスク3の検査用原版パターンの一例を概略的に示す図である。図4(A)は、マスク3の表面の一部を示す平面図であり、図4(B)は、図4(A)のマスク3のIVb−IVb線に沿った断面図である。マスク3には、検査用原版パターンの他に回路用原版パターンも形成されているが、説明の便宜上、この回路用原版パターンは図示されていない。マスク3は、ガラス基板や石英基板などの透光性基板31と、この透光性基板31の一方の主面上に形成された遮光膜のパターン(遮光パターン)32とを含む。遮光パターン32の構成材料としては、たとえば、クロム、酸化クロムあるいはタンタルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
遮光パターン32は、図4(A)に示されるように透光性基板31上の矩形状の領域に形成されている。この遮光パターン32は、被検査パターン2の傾斜構造2sa,2sbの高さに対応する開口密度(粗密)を有しており、この開口密度は、当該領域の中央部から長辺方向両端部に向かうにつれて段階的に低くなるように設計されている。この遮光パターン32は、形成すべき被検査パターン2の傾斜構造2sa,2sbの厚み分布に応じた光透過率分布(2次元分布)を有する。遮光パターン32は、被検査パターン2の第1層21の高さに対応する光透過率を有する透過領域321a,321bと、第2層22の高さに対応する光透過率を有する透過領域322a,322bと、第3層23の高さに対応する光透過率を有する透過領域323a,323bと、第4層24の高さに対応する光透過率を有する透過領域324a,324bと、第5層25の高さに対応する光透過率を有する透過領域325とを有している。
【0022】
透過領域の321a〜324a,325,321b〜324bの各々においては、図4(A)に示されるように、線状(帯状)の遮光膜が周期的に配列されている。遮光膜と遮光膜との間にはスリット状の開口部すなわち光透過孔が形成される。なお、本実施の形態では、マスク3に形成される開口部の形状はスリット形状であるが、これに限定されるものではない。たとえばドット形状の開口部が形成されるように遮光パターンを設計してもよい。
【0023】
図5は、被検査パターン2を形成するためのリソグラフィ工程の一部を概略的に示す図である。半導体ウェハ1の主面上にポジ型の感光性樹脂膜を塗布した後、この半導体ウェハ1は投影露光装置内に配置される。図5に示されるように、投影露光装置では、露光光源(図示せず)から放射された露光光35がマスク3及び投影光学系4を透過し、投影光学系4によって半導体ウェハ1上の感光性樹脂膜の表面に照射される。図6は、この感光性樹脂膜20の露光部20eと未露光部20nとを概略的に示す断面図である。感光性樹脂膜20は、露光光35の強度に応じた深さまで感光するので、現像液に対する感光性樹脂膜20の可溶領域の深さは、露光光強度に応じて変化する。図6に示されるように、露光工程により、感光性樹脂膜20の中には、現像液に可溶な露光部20eと、階段状の上面を有する未露光部20nとが形成される。その後の現像工程では、現像液に対して露光部20eが溶解し、未露光部20nは溶解しないので、結果として、半導体ウェハ1の被検査領域13に傾斜構造2sa,2sbを有する被検査パターン2(図2(A)及び(B))が形成される。
【0024】
なお、遮光パターン32を設計する際には、投影光学系4の解像限界を考慮して、遮光パターン32を構成する帯状遮光膜のパターンあるいはスリット状開口部のパターンが露光工程で感光性樹脂膜20に完全に転写されないように設計する必要がある。
【0025】
図7(A)は、リソグラフィ工程で露光量不足及び現像不足が生じた場合に形成される被検査パターン2の一例を概略的に示す断面図である。図6(A)に示されるように、主に現像不足に起因して半導体ウェハ1の主面上に被検査パターン2以外の感光性樹脂膜29が残り、被検査パターン2の第1層21の側面21a,21bが感光性樹脂膜29によってほとんど消失している。この被検査パターン2の光学顕微鏡像には、第1層21よりも上層22〜25の側面22a,22b,23a,23b,24a,24b,25a,25bのエッジが明瞭に現れるが、第1層21の側面21a,21bのエッジは明瞭に現れない。このような場合、半導体ウェハ1の素子形成領域12では、図1(C)に示したように開口部102a,102bの底部に感光性樹脂膜101a,101bが残存していると判断することができる。また、露光量がほぼ適正量となるように制御されていても、現像不足が生じた場合には、その現像不足の程度が大きいほど、被検査パターン2の消失する層数は多くなる。たとえば、光学顕微鏡像において2層分の側面24a,24b,25a,25bのエッジしか確認されなかった場合は、4層分の側面22a〜25a,22b〜25bのエッジが確認された場合よりも現像不足の程度が大きいと判断することができる。
【0026】
一方、図7(B)は、リソグラフィ工程で露光量過多及び現像過多が生じた場合に形成される被検査パターン2の一例を概略的に示す断面図である。図7(B)に示されるように、主に露光量過多に起因して、被検査パターン2の層数(段数)は適正条件時の図2(B)の被検査パターン2の層数よりも1つ少ない。このため、この被検査パターン2の光学顕微鏡像には、4層分の側面22a〜25a,22b〜25bのエッジが明瞭に現れる。このような場合、半導体ウェハ1の素子形成領域12では、図1(B)に示したように開口部102a,102bのサイズが大きく、加工線幅Wdが目標パターンの加工線幅Wtよりも小さいと判断することができる。さらなる露光量過多が生じたときは、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン2の層数はさらに少なくなる。したがって、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン2のエッジを観察することで、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを容易且つ正確に判断することができる。
【0027】
以上に説明したように実施の形態1に係る被検査パターン2の光学顕微鏡像を目視で観察することにより、リソグラフィ工程における露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを判断することができる。この判断に基づいて、リソグラフィ工程で素子形成領域12に形成されるレジストパターンや絶縁膜パターンの寸法精度を精確に推定することができ、そのプロセス条件が許容範囲内にあるか否か、あるいは規格に適合しているか否かを低コストで検査することができる。特に、ラフレイヤ用に形成されるレジストパターンや絶縁膜パターンの寸法精度の良否について正確に且つ低コストで外観検査することが可能である。たとえば、ウェハレベルCSP(Wafer−level Chip Scale Packaging)の製造工程において、半導体ウェハ上に再配線層を形成するための絶縁膜パターンの寸法精度の良否を低コストで検査することができる。
【0028】
さらに、本実施の形態に係る被検査パターン2は傾斜構造2sa,2sbを有するので、上記の特許文献1,2に開示されているような基板の面内方向に展開するレジストパターン群と比べると、被検査パターン2が形成される領域の面積を小さくし、レイアウト設計の自由度を向上させることができる。
【0029】
なお、上記実施の形態1の被検査パターン2は5段の層21〜25を有するが、段数は5段に限定されるものではなく、少なくとも2段あればよい。
【0030】
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図8(A),(B)は、実施の形態2の方法で形成された被検査パターン5及び基準パターン6を概略的に示す図である。図8(A)は、半導体ウェハ1の主面に対して垂直な方向から見た被検査パターン5及び基準パターン6の平面図(上面視図)であり、図8(B)は、図8(A)の基準パターン6のVIIIb−VIIIb線に沿った断面図であり、図8(C)は、図8(A)の被検査パターン5のVIIIc−VIIIc線に沿った断面図である。これら被検査パターン5及び基準パターン6は、実施の形態1の被検査パターン2の場合と同様に、マスク(レチクル)を原版として用いるリソグラフィ工程により半導体ウェハまたは基板の主面上に形成される。また、図3(B)または図3(C)に示したショット領域10内の被検査領域13に本実施の形態に係る被検査パターン5及び基準パターン6を形成することができる。
【0031】
本実施の形態に係る被検査パターン5は、図8(A),(C)に示されるように、長さL2の長辺と幅W2の短辺とを持つ矩形状の底面5bと、この底面5bの長辺方向一端からほぼ垂直に立ち上がる側面5wとを有する。底面5bの長さL2は、たとえば20μm〜30μm程度に、側面5wの高さHwは、たとえば10μm程度にすることができる。また、被検査パターン5は、X軸方向(半導体ウェハ1の主面に沿った所定方向)一端側から他端側に向かって漸次厚みが変化する傾斜構造5sを有している。また、この傾斜構造5sの表面は、一端側から他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する傾斜面を構成している。図8(A)に示されるようにこの傾斜構造5sの一端5gと側面5wとは、光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。
【0032】
一方、基準パターン6は、図8(A),(B)に示されるように、長さL2の長辺と幅W2の短辺とを持つ矩形状の底面6bを有する。図8(A)に示されるように、基準パターン6は、底面6bからほぼ垂直に立ち上がる両側面6wa,6wbを有しており、これら両側面6wa,6wbは、光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。また、図8(B)に示されるようにこの基準パターン6の断面は、長さL2と高さHwとを持つ矩形状を有する。基準パターン6の底面6bの形状は、被検査パターン5の底面5bの形状と同一であり、基準パターン6の高さHwは、被検査パターン5の側面5wの高さHwと同じである。基準パターン6の一方の側面6waと被検査パターン5の側面5wとは一直線上に揃えられ、基準パターン6の他方の側面6wbと被検査パターン5の先端5gも一直線上に揃えられている。これは、被検査パターン5と基準パターン6とを対比観察しやすくするためである。
【0033】
図9(A)〜(C)は、本実施の形態のリソグラフィ工程で被検査パターン5及び基準パターン6を形成するために使用されるマスク7の原版パターンの一例を概略的に示す図である。図9(A)は、このマスク7の表面の一部を示す平面図である。図9(B)は、図9(A)のマスク7のIXb−IXb線に沿った断面図であり、図9(C)は、図9(A)のマスク7のIXc−IXc線に沿った断面図である。マスク7には、検査用原版パターンの他に回路用原版パターンも形成されているが、説明の便宜上、回路用原版パターンは図示されていない。このマスク7は、ガラス基板や石英基板などの透光性基板71と、この透光性基板71の一方の主面上に形成された遮光膜のパターン(遮光パターン)72,73とからなる。一方の遮光パターン72は、被検査パターン5を形成するためのパターンであり、他方の遮光パターン73は、基準パターン6を形成するためのパターンである。遮光パターン72,73の構成材料としては、たとえば、クロム、酸化クロムあるいはタンタルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
一方の遮光パターン72は、図9(A)に示されるように透光性基板71上の矩形状の領域に形成されている。遮光パターン72は、形成すべき被検査パターン5の傾斜構造5sの高さに対応する開口密度(粗密)を有しており、この開口密度は、当該領域の長辺方向一端から他端へ向かうにつれて次第に低くなるように設計されている。この遮光パターン72は、被検査パターン5の傾斜構造5sの厚み分布に応じた光透過率分布(2次元分布)を有する。図9(A)に示されるように、マスク7の長辺方向に沿って線状(帯状)の遮光膜が配列され、遮光パターン72を構成している。遮光膜と遮光膜との間にはスリット状の開口部すなわち光透過孔が形成されている。本実施の形態では、マスク7に形成される開口部の形状はスリット形状であるが、これに限定されず、たとえばドット形状の開口部が形成されるように遮光パターンを設計してもよい。
【0035】
他方の遮光パターン73は、基準パターン6を形成するために図9(B)に示されるように矩形状の領域全体に亘って一定の厚みを有している。
【0036】
被検査パターン5及び基準パターン6は、実施の形態1の被検査パターン2の形成方法と同様の方法により形成される。すなわち、半導体ウェハ1の主面上にポジ型の感光性樹脂膜を塗布した後、この半導体ウェハ1を投影露光装置内に配置する。投影露光装置では、露光光源(図示せず)から放射された露光光がマスク7の遮光パターン72及び投影光学系を透過し、投影光学系によって感光性樹脂膜の表面に照射される。図10は、この感光性樹脂膜50の露光部50eと未露光部50nとを概略的に示す断面図である。感光性樹脂膜50は、露光光の強度に応じた深さまで感光するので、現像液に対する感光性樹脂膜50の可溶領域の深さは、露光光強度に応じて変化する。図10に示されるように、露光工程により、感光性樹脂膜50の中には、現像液に可溶な露光部50eと、傾斜構造を有する未露光部50nとが形成される。その後の現像工程では、現像液に対して露光部50eが溶解し、未露光部50nは溶解しない。結果として、半導体ウェハ1の被検査領域13に傾斜構造5sを有する被検査パターン5と基準パターン6とが形成される。
【0037】
なお、遮光パターン72を設計する際には、投影光学系の解像限界を考慮して、遮光パターン72を構成する帯状遮光膜のパターンあるいはスリット状開口部のパターンが露光工程で感光性樹脂膜50に完全に転写されないように設計する必要がある。
【0038】
図11(A),(B)は、リソグラフィ工程で露光量不足及び現像不足のうち少なくとも一方が生じた場合に形成される被検査パターン5及び基準パターン6の一例を概略的に示す断面図である。図11(A),(B)に示されるように、半導体ウェハ1の主面上に被検査パターン5及び基準パターン6以外の感光性樹脂膜59が残っている。このため、被検査パターン5の全体の長さL2aは、適正なプロセス条件でリソグラフィ工程が実行された場合の長さL2(図8(A))と比べて短い。したがって、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン5を観察することで、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正であるか否かを容易に判定することができる。
【0039】
また、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン5及び基準パターン6の両者を観察することで、正確な判定を下すことができる。すなわち、被検査パターン5の先端と基準パターン6の端面6wbとの差Δaに応じて、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを容易且つ正確に判断することができる。
【0040】
一方、図12(A),(B)は、リソグラフィ工程で主に露光量過多が生じた場合に形成される被検査パターン5及び基準パターン6の一例を概略的に示す断面図である。図12(A),(B)に示されるように、被検査パターン5の全体の長さL2bは、適正なプロセス条件でリソグラフィ工程が実行された場合の長さL2(図8(A))と比べて短い。したがって、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン5を観察することで、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正であるか否かを容易に判定することができる。また、光学顕微鏡像に現れる被検査パターン5及び基準パターン6の両者を観察し、被検査パターン5の先端と基準パターン6の端面6wbとの差Δbに応じて、露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを容易且つ正確に判断することができる。
【0041】
以上に説明したように実施の形態2に係る被検査パターン5の光学顕微鏡像を目視で観察することにより、リソグラフィ工程における露光工程や現像工程のプロセス条件が適正であるか否かを容易に判断することができる。また、被検査パターン5と基準パターン6とを対比観察することで、プロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを正確に判断することができる。この判断に基づいて、リソグラフィ工程で素子形成領域12に形成されるレジストパターンや絶縁膜パターンの寸法精度を精確に推定することができ、そのプロセス条件が許容範囲内にあるか否か、あるいは規格に適合しているか否かを容易に判定することもできる。
【0042】
さらに、本実施の形態に係る被検査パターン5は傾斜構造5sを有するので、上記特許文献1,2に開示されているような半導体ウェハの面内方向に展開するレジストパターン群と比べると、被検査パターン5及び基準パターン6が形成される領域の面積を小さくし、レイアウト設計の自由度を向上させることができる。上記実施の形態2では、被検査パターン5と基準パターン6とは分離しているが、被検査パターン5と基準パターン6とが互いに連続し一体化していてもよい。
【0043】
実施の形態3.
次に、本発明に係る実施の形態3について説明する。図13(A),(B)は、実施の形態3の方法で形成された被検査パターン8を概略的に示す図である。図13(A)は、半導体ウェハ1の主面に対して垂直な方向から見た被検査パターン8の平面図(上面視図)であり、図13(B)は、図13(A)の被検査パターン8のXIIIb−XIIIb線に沿った断面図である。この被検査パターン8は、実施の形態1の被検査パターン2の場合と同様に、マスク(レチクル)を原版として用いるリソグラフィ工程により半導体ウェハまたは基板の主面上に形成される。また、図3(B)または図3(C)に示したショット領域10内の被検査領域13に本実施の形態に係る被検査パターン8を形成することができる。
【0044】
本実施の形態に係る被検査パターン8は、図13(A),(B)に示されるように、長さL3の長辺と幅W3の短辺とを持つ矩形状の底面8bと、この底面8bの長辺方向一端からほぼ垂直に立ち上がる側面8wとを有する。底面8bの長さL3は、たとえば20μm〜30μm程度にし、側面8wの高さHvは、たとえば10μm程度にすることができる。また、被検査パターン8は、X軸方向(半導体ウェハ1の主面に沿った所定方向)一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造(傾斜面)8sを有している。また、傾斜構造8sの表面は、一端側から他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する複数の傾斜面8aa,8ab,8acを含み、これら傾斜面8aa,8ab,8acのうち隣り合う傾斜面間に段差が形成されている。図13(A)に示されるように、この傾斜構造8sの先端8gと側面8wとは、光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。
【0045】
被検査パターン8の傾斜構造8sは階段形状を有している。この傾斜構造8sは、段差を構成する2つの側面8d,8eを有し、先端8gと側面8dとの間に第1の傾斜面8aaを有し、側面8d,8e間に第2の傾斜面8abを有し、側面8eと側面8wとの間に第3の傾斜面8acを有する。リソグラフィ工程のプロセス条件が適正条件であるとき、これら傾斜面8aa,8ab,8acの水平方向(X軸方向)長さΔL1,ΔL2,ΔL3は同一である。図13(A)に示されるように、被検査パターン8の傾斜構造8sの側面8d,8eは、光学顕微鏡像で識別可能な境界線(エッジ)を構成する。
【0046】
図14(A),(B)は、本実施の形態のリソグラフィ工程で被検査パターン8を形成するために使用されるマスク9の検査用原版パターンの一例を概略的に示す図である。図14(A)は、このマスク9の表面の一部を示す平面図であり、図14(B)は、図14(A)のマスク9のXIVb−XIVb線に沿った断面図である。マスク9には、検査用原版パターンの他に回路用原版パターンも形成されているが、説明の便宜上、回路用原版パターンは図示されていない。このマスク9は、ガラス基板や石英基板などの透光性基板91と、この透光性基板91の一方の主面上に形成された遮光膜のパターン(遮光パターン)92とからなる。遮光パターン92の構成材料としては、たとえば、クロム、酸化クロムあるいはタンタルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
遮光パターン92は、図14(A)に示されるように透光性基板91上の矩形状の領域に形成されている。遮光パターン92は、形成すべき被検査パターン8の傾斜構造8sの高さに対応する開口密度(粗密)を有しており、この開口密度は、当該領域の長辺方向一端から他端へ向かうにつれて次第に低くなるように設計されている。この遮光パターン92は、被検査パターン8の傾斜構造8sの厚み分布に応じた光透過率分布(2次元分布)を有する。図14(A)に示されるように、遮光パターン92は、被検査パターン8の傾斜面8aaの高さ分布に対応する光透過率分布を有する透過領域921と、傾斜面8abの高さ分布に対応する光透過率分布を有する透過領域922と、傾斜面8acの高さ分布に対応する光透過率分布を有する透過領域923とを含む。これら透過領域921〜923の各々においては、線状(帯状)の遮光膜がマスク9の長辺方向に配列され、遮光膜と遮光膜との間にはスリット状の開口部すなわち光透過孔が形成されている。なお、本実施の形態では、マスク9に形成される開口部の形状はスリット形状であるが、これに限定されず、たとえばドット形状の開口部が形成されるように遮光パターンを設計してもよい。
【0048】
被検査パターン8は、実施の形態1の被検査パターン2の形成方法と同様の方法により形成される。すなわち、半導体ウェハ1の主面上の被検査領域13にポジ型の感光性樹脂膜を塗布した後、この半導体ウェハ1を投影露光装置内に配置する。投影露光装置では、露光光源(図示せず)から放射された露光光がマスク9の遮光パターン92及び投影光学系を透過し、投影光学系によって感光性樹脂膜の表面に照射される。図15は、この感光性樹脂膜80の露光部80eと未露光部80nとを概略的に示す断面図である。感光性樹脂膜80は、露光光の強度に応じた深さまで感光するので、現像液に対する感光性樹脂膜80の可溶領域の深さは、露光光強度に応じて変化する。図15に示されるように、露光工程により、感光性樹脂膜80の中には、現像液に可溶な露光部80eと、傾斜構造を有する未露光部80nとが形成される。その後の現像工程では、現像液に対して露光部80eが溶解し、未露光部80nは溶解しない。結果として、半導体ウェハ1の被検査領域13に傾斜構造8sを有する被検査パターン8が形成される。
【0049】
なお、遮光パターン92を設計する際には、投影光学系の解像限界を考慮して、遮光パターン92を構成する帯状遮光膜のパターンあるいはスリット状開口部のパターンが露光工程で感光性樹脂膜80に完全に転写されないように設計する必要がある。
【0050】
図16(A),(B)は、リソグラフィ工程で露光量不足及び現像不足が生じた場合に形成される被検査パターン8の一例を概略的に示す断面図である。図16(A)に示されるように、半導体ウェハ1の主面上に被検査パターン8以外の感光性樹脂膜88が残り、主に現像不足に起因して被検査パターン8の傾斜面8aaの水平方向長さΔL1は傾斜面8abの水平方向長さΔL2よりも短い。このときの被検査パターン8の光学顕微鏡像においては、先端8g及び側面8d,8e,8wの各エッジが現れ、先端8gと側面8dの間の距離ΔL1は、側面8d,8e間の距離ΔL2よりも短い。さらなる現像不足が生じたときは、図16(B)に示されるように、感光性樹脂膜89が残ることにより傾斜面8aaは消失し、側面8dの大部分が消失している。このときの被検査パターン8の光学顕微鏡像では、先端8gのエッジは現れず、側面8d,8e,8wの各エッジが現れる。また、側面8dのエッジは、側面8e,8wのエッジと比べて不明瞭となる。
【0051】
一方、図17(A),(B)は、リソグラフィ工程で露光量過多及び現像過多が生じた場合に形成される被検査パターン8の一例を概略的に示す断面図である。図17(A)に示されるように、被検査パターン8の傾斜面8aaの水平方向長さΔL1は傾斜面8abの水平方向長さΔL2よりも短い。このときの被検査パターン8の光学顕微鏡像においては、先端8g及び側面8d,8e,8wの各エッジが現れ、先端8gと側面8dの間の距離ΔL1は、側面8d,8e間の距離ΔL2よりも短い。さらなる露光量過多及び現像過多が生じたときは、図17(B)に示されるように、先端8g及び傾斜面8aaが消失している。このときの被検査パターン8の光学顕微鏡像では、先端8gのエッジは現れず、側面8d,8e,8wの各エッジが現れる。
【0052】
以上に説明したように実施の形態3に係る被検査パターン8の光学顕微鏡像を目視で観察することにより、リソグラフィ工程における露光工程や現像工程のプロセス条件が適正条件からどの程度ずれているのかを容易且つ正確に判断することができる。この判断に基づいて、リソグラフィ工程で素子形成領域12に形成されるレジストパターンや絶縁膜パターンの寸法精度を精確に推定することができ、そのプロセス条件が許容範囲内にあるか否か、あるいは規格に適合しているか否かを容易に判定することもできる。また、被検査パターン8は、半導体ウェハ1の主面に対して傾斜する傾斜構造8sを有するので、上記特許文献1,2に開示されているような半導体ウェハの面内方向に展開するレジストパターン群と比べると、被検査パターン8が形成される領域の面積を小さくし、レイアウト設計の自由度を向上させることができる。
【0053】
さらに、本実施の形態に係る被検査パターン8の傾斜構造8sは、傾斜面8aa,8ab,8acと、段差を構成する側面8d,8eとを有するので、実施の形態1,2に係る被検査パターン2,5と比べると、適正条件からのずれをより正確に判断することができる。
【0054】
実施の形態1〜3の変形例.
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形態を採用することもできる。上記実施の形態1〜3では、被検査パターン2,5,8をグリッドライン11内の被検査領域13に形成することができるが、この代わりに、素子形成領域12内に、回路形成用のレジストパターンまたは絶縁膜パターンとともに被検査パターン2,5,8を形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 半導体ウェハ、 2,5,8 被検査パターン、 4 投影光学系、 6 基準パターン、 2sa,2sb,5s,8s 傾斜構造、 3,7,9 マスク(レチクル)、 10 ショット領域、 11 グリッドライン(ダイシング領域)、 12 素子形成領域、 13 被検査領域、 31,71,91 透光性基板、 32,72,73,92 遮光パターン(検査用原版パターン)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面上の被検査領域に感光性樹脂膜を形成する工程と、
投影光学系を用いて、マスクに形成された原版パターンを透過した露光光を前記感光性樹脂膜の表面に照射する露光工程と、
前記感光性樹脂膜に現像処理を施して前記原版パターンに対応する被検査パターンを形成する現像工程と、
を備え、
前記被検査パターンは、当該被検査パターンの前記主面に沿った所定方向一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造を有し、
前記原版パターンは、前記被検査パターンの厚み分布に応じた光透過率分布を有する、
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、前記傾斜構造の表面は、階段形状を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成方法であって、前記傾斜構造の段差の数は2以上であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、前記傾斜構造の表面は、前記一端側から前記他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する傾斜面を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、
前記傾斜構造の表面は、前記一端側から前記他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する複数の傾斜面を含み、
前記複数の傾斜面のうち隣り合う傾斜面間に段差が形成されている、
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のパターン形成方法であって、前記被検査パターンは、前記主面からほぼ垂直に立ち上る側面を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1項に記載のパターン形成方法であって、
前記基板は半導体ウェハであり、
前記被検査用領域は、半導体素子が形成されるべき素子形成領域以外の領域に設けられる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載のパターン形成方法であって、被検査用領域は、前記半導体ウェハのダイシング領域上に形成されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
半導体ウェハの主面上における半導体素子が形成される素子形成領域と被検査領域とにそれぞれ感光性樹脂膜を同時に形成する工程と、
投影光学系を用いて、マスクに形成された検査用原版パターンを透過した露光光を前記被検査領域に形成された当該感光性樹脂膜の表面に照射すると同時に、前記マスクに形成された回路用原版パターンを透過した露光光を前記素子形成領域に形成された当該感光性樹脂膜の表面に照射する露光工程と、
前記感光性樹脂膜に現像処理を施して前記検査用原版パターン及び前記回路用原版パターンにそれぞれ対応する被検査パターン及び回路形成用パターンを形成する現像工程と、
を備え、
前記被検査パターンは、当該被検査パターンの前記主面に沿った所定方向一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造を有し、
前記原版パターンは、前記被検査パターンの厚み分布に応じた光透過率分布を有する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、前記傾斜構造の表面は、階段形状を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、前記傾斜構造の表面は、前記一端側から前記他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する傾斜面を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記傾斜構造の表面は、前記一端側から前記他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する複数の傾斜面を含み、
前記複数の傾斜面のうち隣り合う傾斜面間に段差が形成されている、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板の主面上の被検査領域に感光性樹脂膜を形成する工程と、
投影光学系を用いて、マスクに形成された原版パターンを透過した露光光を前記感光性樹脂膜の表面に照射する露光工程と、
前記感光性樹脂膜に現像処理を施して前記原版パターンに対応する被検査パターンを形成する現像工程と、
を備え、
前記被検査パターンは、当該被検査パターンの前記主面に沿った所定方向一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造を有し、
前記原版パターンは、前記被検査パターンの厚み分布に応じた光透過率分布を有する、
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、前記傾斜構造の表面は、階段形状を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成方法であって、前記傾斜構造の段差の数は2以上であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、前記傾斜構造の表面は、前記一端側から前記他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する傾斜面を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、
前記傾斜構造の表面は、前記一端側から前記他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する複数の傾斜面を含み、
前記複数の傾斜面のうち隣り合う傾斜面間に段差が形成されている、
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のパターン形成方法であって、前記被検査パターンは、前記主面からほぼ垂直に立ち上る側面を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1項に記載のパターン形成方法であって、
前記基板は半導体ウェハであり、
前記被検査用領域は、半導体素子が形成されるべき素子形成領域以外の領域に設けられる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載のパターン形成方法であって、被検査用領域は、前記半導体ウェハのダイシング領域上に形成されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
半導体ウェハの主面上における半導体素子が形成される素子形成領域と被検査領域とにそれぞれ感光性樹脂膜を同時に形成する工程と、
投影光学系を用いて、マスクに形成された検査用原版パターンを透過した露光光を前記被検査領域に形成された当該感光性樹脂膜の表面に照射すると同時に、前記マスクに形成された回路用原版パターンを透過した露光光を前記素子形成領域に形成された当該感光性樹脂膜の表面に照射する露光工程と、
前記感光性樹脂膜に現像処理を施して前記検査用原版パターン及び前記回路用原版パターンにそれぞれ対応する被検査パターン及び回路形成用パターンを形成する現像工程と、
を備え、
前記被検査パターンは、当該被検査パターンの前記主面に沿った所定方向一端側から他端側に向かうにつれて厚みが変化する傾斜構造を有し、
前記原版パターンは、前記被検査パターンの厚み分布に応じた光透過率分布を有する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、前記傾斜構造の表面は、階段形状を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、前記傾斜構造の表面は、前記一端側から前記他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する傾斜面を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記傾斜構造の表面は、前記一端側から前記他端側に向かうにつれて漸次高さが変化する複数の傾斜面を含み、
前記複数の傾斜面のうち隣り合う傾斜面間に段差が形成されている、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−233749(P2011−233749A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103418(P2010−103418)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】
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