説明

パターン形成方法及び電気光学装置製造方法並びに電子機器製造方法

【課題】コストアップを招くことなく良質なパターンを形成可能とする。
【解決手段】機能液に対する親液部及び撥液部を有する基板に機能液を塗布してパターンを形成する。親液部Paを有する基板Pに対して、撥液材料を含む液滴を塗布して撥液部Hを形成する第1工程と、親液部Paに機能液を塗布する第2工程とを有する。親液部Paの機能液に対する接触角は20°以下であり、撥液部Hの機能液に対する接触角は50°以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及び電気光学装置製造方法並びに電子機器製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出法(インクジェット方式)を用いてパターンを形成する場合、液状体の液滴(インク)を吐出し、基板上の所定位置に着弾させることによってパターンを形成している。このように、液滴を吐出して基板に着弾させた場合、基板表面の特性によっては着弾した液滴が濡れ拡がり過ぎたり、分離したりする虞がある。この場合、所望の配線パターンを得ることができないという問題が生じる。
【0003】
そこで、特許文献1には、基板のパターン形成面となる面を撥液加工し、この撥液加工面に光触媒を通過した紫外光レーザビームを照射しながら親液パターン形成を行う技術が開示されている。
また、特許文献2には、パターンを形成する基板上に光触媒を含有した撥水性の下地を塗布した後に、マスクを介して露光することにより、露光部分のみを親水化する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−200244号公報
【特許文献2】特開平11−344804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
上記特許文献に記載された技術は、高価な露光機やフォトマスク、レーザ光源を用いるため、コストアップを招くという問題を招いてしまう。また、本来、非パターン面のみに必要な撥液材料を基板全面に塗布するため、省材料という観点からも望ましいものとはいえない。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、コストアップを招くことなく良質なパターンが形成可能なパターン形成方法及び電気光学装置製造方法並びに電子機器製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明のパターン形成方法は、機能液に対する親液部及び撥液部を有する基板に前記機能液を塗布してパターンを形成するパターン形成方法であって、前記親液部を有する基板に対して、撥液材料を含む液滴を塗布して前記撥液部を形成する第1工程と、前記親液部に前記機能液を塗布する第2工程とを有し、前記親液部の前記機能液に対する接触角は20°以下であり、前記撥液部の前記機能液に対する接触角は50°以上であることを特徴とするものである。
従って、本発明のパターン形成方法では、親液部に機能液を塗布することにより、撥液部にはじかれた機能液により、親液部の配置に応じたパターンを基板上の所定位置に高精度に形成することができる。そのため、本発明では、第1工程において撥液材料を含む液滴を塗布することにより撥液部をパターニング形成するため、高価な露光機やフォトマスク、レーザ光源等を用いる必要がなくなり、コストアップを防止することが可能である。
この親液部としては、機能液の液滴に対する接触角が25°を超えるとバルジ(液滴溜まり)が発生しやすくなるため、本発明では、接触角を20°以下とすることでバルジの発生を防止できる。また、撥液部としては、機能液の液滴に対する接触角が50°未満であると、液滴を十分にはじくことが困難になってしまうため、本発明では50°以上とすることで、親液部とのコントラストを十分に確保でき、機能液を親液部に維持させることができる。
【0007】
また、本発明では前記撥液部と前記親液部との前記機能液に対する接触角の差が35°以上である構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、より安定して機能液の液滴をはじいて、親液部に対応するパターンを形成することができる。
【0008】
また、本発明では、前記基板上に着弾した前記撥液材料を含む液滴が、隣り合う前記液滴同士で重なり合うように塗布する手順も好適に採用できる。
これにより、本発明では、一回の走査で撥液材料を含む液滴を塗布して撥液部を形成することが可能になり、生産性の向上に寄与できる。
【0009】
前記撥液材料としては、シラン化合物及びフルオロアルキル基を有する化合物の少なくとも一方を含む構成を採用できる。この場合、前記シラン化合物としては、自己組織化膜である構成を採用できる。
また、前記撥液部としては、前記基板の表面に前記フルオロアルキル基を有する化合物からなる自己組織化膜によって形成される構成も採用できる。
【0010】
一方、前記撥液部としては、前記基板の表面にアルキル基、水素を有する自己組織化膜によって形成される構成も採用できる。
さらに、前記撥液材料としては、フッ素樹脂を含む構成も採用できる。
【0011】
また、本発明では、前記第2工程において前記親液部に前記機能液の液滴を塗布する手順も好適に採用できる。
これにより、本発明では、第1工程及び第2工程の双方を液滴吐出方式で行うことが可能になり、両工程で設備の共用化を図ることができ、生産コストを低減させることができる。
【0012】
また、本発明では、前記機能液が、導電性材料を含む構成も好適に採用できる。
これにより、本発明では、コストアップを招くことなく良質な導電性パターンを形成することができる。
【0013】
そして、本発明では、前記機能液は、めっき触媒材料を含む構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、コストアップを招くことなく形成されためっき触媒に対してめっき処理を施すことにより、緻密で良質なパターンを形成することが可能になる。
また、本発明では、前記機能液が、レジスト材料である構成も好適に採用できる。
これにより、本発明では、レジスト工程のスピン塗布、露光、現像の工程が省略化され、コストアップを防止することができる。
【0014】
また、本発明の電気光学装置製造方法は、先に記載のパターン形成方法によりパターンを形成する工程を有することを特徴とするものである。
また、本発明の電子機器製造方法は、先に記載のパターン形成方法によりパターンを形成する工程を有することを特徴とするものである。
従って、本発明の電気光学装置製造方法及び電子機器製造方法では、コストアップを招くことなく良質なパターンを有する電気光学装置及び電子機器を製造することが可能になる。
【0015】
また、前記電気光学装置としては、導電線によりメッシュ状に形成されたメッシュ部と、前記導電線により前記メッシュ部の周囲に形成された額縁部とを有する電磁波シールドであり、前記メッシュ部及び前記額縁部を、前記パターン形成方法により形成する構成も好適に採用できる。
これにより、本発明では、コストアップを招くことなく良質なパターンを有する電磁波シールドを製造することが可能になる。また、本発明では、撥液性液滴の吐出量及び吐出ピッチを調整して、撥液部の幅、すなわちメッシュ部の線幅を調整することにより、シールド特性及び開口率を容易に調整することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のパターン形成方法及び電気光学装置製造方法並びに電子機器製造方法の実施の形態を、図1乃至図19を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
(液滴吐出装置)
まず、本実施形態に係るパターン形成方法に用いる液滴吐出装置について説明する。
図1は、液滴吐出装置の概略的な構成図である。
液滴吐出装置(インクジェット装置)IJは、液滴吐出ヘッドから基板Pに対して液滴を吐出(滴下)するものであって、液滴吐出ヘッド301と、X方向駆動軸304と、Y方向ガイド軸305と、制御装置CONTと、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。ステージ307は、この液滴吐出装置IJによりインク(液体材料)を設けられる基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0018】
液滴吐出ヘッド301は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド301の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルからは、ステージ307に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0019】
X方向駆動軸304には、X方向駆動モータ302が接続されている。X方向駆動モータ302はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX方向の駆動信号が供給されると、X方向駆動軸304を回転させる。X方向駆動軸304が回転すると、液滴吐出ヘッド301はX軸方向に移動する。
Y方向ガイド軸305は、基台309に対して動かないように固定されている。ステージ307は、Y方向駆動モータ303を備えている。Y方向駆動モータ303はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY方向の駆動信号が供給されると、ステージ307をY方向に移動する。
【0020】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド301に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X方向駆動モータ302に液滴吐出ヘッド301のX方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y方向駆動モータ303にステージ307のY方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構308は、液滴吐出ヘッド301をクリーニングするものである。クリーニング機構308には、図示しないY方向の駆動モータが備えられている。このY方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y方向ガイド軸305に沿って移動する。クリーニング機構308の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ315は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ315の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0021】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド301と基板Pを支持するステージ307とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、X方向を非走査方向、X方向と直交するY方向を走査方向とする。
したがって、液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルは、非走査方向であるX方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド301は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド301の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド301の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0022】
図2は、液滴吐出ヘッド301の断面図である。
液滴吐出ヘッド301には、液体材料(配線用インク等)を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室321には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系323を介して液体材料が供給される。
ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させることにより、液体室321が変形し、ノズル325から液体材料が吐出される。
この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0023】
なお、液滴吐出法の吐出技術としては、上記の電気機械変換式の他に、帯電制御方式、加圧振動方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に例えば30kg/cm程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。
【0024】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0025】
続いて、上記の液滴吐出装置IJを用いてパターンを形成する方法について、図3乃至図7を参照して説明する。
ここでは、図3(a)、(b)に示すように、少なくとも表面Paが親液部として親液性を有する基板P上に筋状に複数(ここでは3箇所)の撥液部Hが互いに隙間をあけて設けられ、これら撥液部Hの間に導電性の配線パターン(パターン)Wを形成する場合について説明する。なお、ここで記載する撥液部とは、導電性材料を含む液滴(以下、パターン用液滴と称する)に対する接触角が所定値以上となる領域を示し、親液部とは導電性材料を含む液滴に対する接触角が所定値以下となる領域を示している。
【0026】
基板Pとしては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種の材料を用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0027】
本実施形態に係るパターン形成方法は、上述した配線パターン用のインクを基板P上に塗布することにより配線用のパターンWを形成するものであり、表面処理工程、撥液部形成工程、材料配置工程及び熱処理/光処理工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0028】
(表面処理工程)
表面処理工程では、基板Pの表面Paに対して洗浄処理を行うことにより、親液性を高める処理を実施する。
例えば、基板Pがガラス基板の場合、その表面は配線パターン形成材料(インク)に対して親液性を有しているが、この表面処理によりさらに親液性を高める。
【0029】
具体的には、表面処理工程では、洗浄処理として、UVエキシマ洗浄、低圧水銀灯洗浄、Oプラズマ洗浄、HFや硫酸等を用いた酸洗浄、アルカリ洗浄、超音波洗浄、メガソニック洗浄、コロナ処理、グロー洗浄、スクラブ洗浄、オゾン洗浄、水素水洗浄、マイクロバブル洗浄、フッ素系洗浄等を実施する。
【0030】
ここで、表面(親液部)Paのパターン用液滴に対する接触角が25度を超えるとバルジ(液滴溜まり)が発生しやすくなり、また20度以下であればバルジは生じない。そこで、本実施形態では、洗浄処理条件を調整することにより、基板表面Paのパターン用液滴に対する接触角を20度以下とする。
具体的には、洗浄処理が、例えばUVエキシマ洗浄の場合にはUV光(紫外光)の照射時間、強度、波長、熱処理(加熱)との組み合わせ等によって調整することができ、また、洗浄処理が例えばOプラズマ洗浄の場合には、プラズマ処理時間を調整することにより、親液性(接触角)を調整することができる。この洗浄処理により、表面Paに有機物等の異物が付着していた場合でも、表面Paから除去することが可能になり、清浄度及び親液性を維持することができる。
【0031】
(撥液部形成工程)
続いて、洗浄処理(親液化処理)が行われた基板Pの表面Paの所定領域(パターンWの形成する領域の周囲)に撥液部Hを形成する。
具体的には、上述した液滴吐出装置IJを用い液滴吐出ヘッド301からパターン用液滴に対して撥液性を有する材料を含む液状体の液滴(以下、撥液性液滴と称する)を吐出して、基板P上の所定領域に塗布する。
【0032】
撥液性を有する材料としては、シラン化合物、フルオロアルキル基を有する化合物、フッ素樹脂(フッ素を含む樹脂)、及びこれらの混合物を用いることができる。
シラン化合物としては、(A)一般式(1)
Si X(3−m) …(1)
(式中、R1 は有機基を表し、X およびXは−OR 、−R、−Clを表し、R は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは1から3の整数である。)で表される1種又は2種以上のシラン化合物(成分A)を用いることができる。
【0033】
一般式(1)で表されるシラン化合物は、シラン原子に有機基が置換し、残りの結合手にアルコキシ基またはアルキル基または塩素基が置換したものである。有機基Rの例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等を例示できる。
のアルコキシ基や塩素基、Si−O−Si結合等を形成するための官能基であり、水により加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。
の炭素数は脱離するアルコールの分子量が比較的小さく、除去が容易であり形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1〜4の範囲であることが好ましい。
【0034】
一般式(I)で表されるシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−トリルジメチルクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブチロキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブチロキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブチロキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、10−ウンデセニルジメチルクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルオクタデシルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルイソプロポキシシラン、メチル−n−ブチロキシシラン、メチルトリ−sec−ブチロキシシラン、メチルトリ−t−ブチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルイソプロポキシシラン、エチル−n−ブチロキシシラン、エチルトリ−sec−ブチロキシシラン、エチルトリ−t−ブチロキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、2−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、4−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1,3−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ベンゾオキサシレピンジメチルエステル、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、シアノメチルフェネチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリエトキシシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルジメチルクロロシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、(ジメチルクロロシリル)メチル−7,7−ジメチルノルピナン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシプロポキシ)ジフェニルケトン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、p−(メチルフェネチル)トリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)ジメチルクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−メチルジエトキシシリル−2−ノルボルネン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ヨードプロピルトリメトキシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチル{2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ}−3−プロピオネート、7−オクテニルトリメトキシシラン、R−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、S−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、2−(トリエトキシシリルエチル)−5−(クロロアセトキシ)ビシクロヘプタン、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル―O―メントカルバメート、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシニック無水物、N−〔5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソ−ペンチル〕カプロラクタム、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(トリメトキシシリルエチル)ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、フェニルビニルジエトキシシラン、3−チオシアナートプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフロオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、N−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}フタルアミド酸、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシシラン、1−トリメトキシシリル−2−(クロロメチル)フェニルエタン、2−(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド、β−トリメトキシシリルエチル−2−ピリジン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビニルメチルジエトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルフェニルトリクロロシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、2−(ビシクロヘプチル)ジメチルクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、
t−ブチルフェニルクロロシラン、t−ブチルフェニルメトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、1,3−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジメチルエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、等が挙げられる。
【0035】
フッ素を含有するシラン化合物(撥液性シラン化合物)としては、含フッ素アルキルシラン化合物が挙げられる。すなわち、Siと結合したパ−フルオロアルキル構造C2n+1で表される構造を有するものであり、下記一般式(2)で表される化合物を例示することができる。式(2)中、nは1から18の整数を、mは2から6までの整数をそれぞれ表している。X及びXは−OR、−R、−Clを示し、X及びXに含まれるRは、炭素数1〜4のアルキル基を示し、aは1〜3の整数である。
【0036】
2n+1(CHSiX(3−a) …(2)
のアルコキシ基や塩素基、Si−O−Si結合等を形成するための官能基であり、水により加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。
の炭素数は脱離するアルコールの分子量が比較的小さく、除去が容易であり形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1〜4の範囲であることが好ましい。
含フッ素アルキルシラン化合物を用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向して自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に均一な撥液性を付与することができる。
【0037】
より具体的には、CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OC、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF11−CHCH−Si(OC、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OC、CF(CF−CHCH−Si(C)(OC等が挙げられる。
【0038】
また、撥液部Hの形成にフッ素樹脂を用いる場合には、所定量のフッ素樹脂を所定溶媒に溶解させたものが用いられる。具体的には、住友スリーエム株式会社製「EGC1720」(HFE(ハイドロフルオロエーテル)溶媒にフッ素樹脂を0.1wt%溶解させたもの)を用いることができる。この場合、HFEにアルコール系、炭化水素系、ケトン系、エーテル系、エステル系の溶剤を適宜混合することにより、液滴吐出ヘッド301から安定して吐出可能に調整可能である。この他に、フッ素樹脂としては、旭硝子株式会社製「ルミフロン」(各種溶媒に溶解可能)、ダイキン工業株式会社製「オプツール」(溶媒;PFC、HFE等)、大日本インキ化学工業株式会社製「ディックガード」(溶媒;トルエン、水・エチレングリコール)等を用いることができる。
さらに、フッ素を含む樹脂としては、側鎖にF基、−CF、−CF−、−CFCF、−(CF)nCF、−CFCFCl−が含まれるものを用いることが可能である。
【0039】
そして、図4(a)、(b)に示すように、上記の撥液性材料を含む撥液性液滴Lを液滴吐出ヘッド301から各撥液部Hに対して連続的に吐出する(第1工程)。
このとき、各撥液部Hにおいては、基板Pの表面Paに着弾した撥液性液滴Lが、隣り合う液滴同士で重なり合う位置に吐出・塗布される。これにより、各撥液部Hは、液滴吐出ヘッド301と基板との一回の走査で塗布形成されることになる。
【0040】
ここで、図3(a)に示すように、配線パターンWの幅WAは、撥液部Hの配列ピッチHPと撥液部Hの幅HAとの差で設定される。この配列ピッチHPは、配線パターンWの仕様として決定されるため、配線パターンWの幅WAは撥液部Hの幅HAに依存することになる。この撥液部Hの幅HAは、本実施形態では滴吐出ヘッド301から吐出する撥液性液滴Lの吐出量及び図4(a)に示す吐出ピッチLPにより管理する。
具体的には、例えば液滴Lの吐出量を二通り(La、Lbとする、例えばLa=2.5pl、Lb=4.5pl)とし、各吐出量La、Lb毎に吐出ピッチLPを10、20、30μmでそれぞれ吐出・塗布したときに、基板P上に形成される撥液部Hの幅HAを、吐出量及び吐出ピッチLPに対応させたテーブルとして保持しておき、所望の幅HAで撥液部Hを形成する際には、テーブルから当該幅HAに対応する吐出量及び吐出ピッチLPを呼び出し、撥液性液滴の吐出工程では、この呼び出した吐出量及び吐出ピッチLPで液滴Lを吐出する。
【0041】
そして、基板P上に吐出した撥液性液滴Lを予備乾燥することにより、図5(a)、(b)に示すように、基板P上に直線状の撥液部Hが互いに間隔をあけて数nm〜数十nmの厚さで形成される。
この撥液部Hは、上述した撥液性材料を用いることにより、パターン用液滴に対する接触角を50°以上とする。従って、親液部(表面)Paと撥液部Hとのコントラスト(接触角の差)は30°以上となる。
【0042】
(材料配置工程)
次に、基板Pの表面Paの撥液部H間にパターン用液滴を吐出して、配線パターンWを形成する。
配線パターン形成材料としては、一般に、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液からなる。本実施の形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、後述する液体吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0043】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0044】
また、撥液部Hがシラン化合物、フルオロアルキル基を有する化合物を用いて形成される場合(例えば、オクタデシルトリエトキシシラン;ODSを用いる場合)には、パターン用液滴に対して十分に撥液性を発現させるために、溶媒(分散媒)としては極性溶媒を用いることが好ましい。このような極性溶媒として具体的には、上述した水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒または無機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであってもよい。
【0045】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0046】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0047】
そして、図6(a)、(b)に示すように、上記の配線パターン形成材料を含むパターン用液滴WLを液滴吐出ヘッド301から撥液部H間の隙間に対して連続的に吐出して塗布する(第2工程)。具体的には、撥液部H(親液部Pa)の長さ方向(配線パターンの形成方向)に沿って、液滴吐出ヘッド301と基板Pとを相対移動させつつ、所定のピッチでパターン用液滴WLを複数吐出する。
【0048】
ここで、基板Pの表面Paは、パターン用液滴WLに対して接触角が20°以下となっているため、塗布されたパターン用液滴WLは、分断されたりバルジを生じさせることなく撥液部Hの間を濡れ拡がる。また、撥液部Hと表面Paとのパターン用液滴WLに対する接触角の差(コントラスト)が30°以上あるため、パターン用液滴WLは、この濡れ性の差に基づいて撥液部Hからはじかれて撥液部Hの間の表面Paに導入されて溜まる。このコントラストとしては、30°以上で十分であるが、後述する実施例を考慮した場合、35度以上であることがより好ましい。
【0049】
なお、上記の撥液部Hは、厚さが数nm〜数十nmと微少量であるため、塗布されたパターン用液滴WLの位置を規定する隔壁としての機能を有しておらず、パターン用液滴WLは上述した接触角(濡れ性)の差に起因して親液部Paに配置されることになる。
【0050】
(熱処理/光処理工程)
次に、熱処理/光処理工程では、基板上に配置された液滴に含まれる分散媒あるいはコーティング剤を除去する。すなわち、基板上に配置された導電膜形成用の液体材料は、微粒子間の電気的接触をよくするために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング剤がコーティングされている場合には、このコーティング剤も除去する必要がある。
【0051】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
【0052】
例えば、有機物からなるコーティング剤を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。ここでは、250℃、60分で焼成した。
熱処理及び/又は光処理は、例えばホットプレート、電気炉などの加熱手段を用いた一般的な加熱処理の他に、ランプアニールを用いて行ってもよい。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態例では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
上記熱処理及び/又は光処理により、微粒子間の電気的接触が確保され、導電膜に変換される。
以上説明した一連の工程により、基板P上に図3(a)に示した線状の配線パターンWが形成される。
【0053】
(実施例)
溶媒−金属をグリコール系−ITO、エーテル系−ITO、グリコール系−Ni、水系−Ag、炭化水素系−Agとし、撥液部Hの幅HA=100μm、配線パターンWの幅WA=40μmとしたときに、撥液部H、親液部Paの接触角、コントラスト、描画結果の関係を図7に示す。
この図に示すように、親液部の接触角が20°以下であればバルジが生じず、また撥液部の接触角が50°以上で、コントラストが30°以上(好ましくは35°以上)であれば、良好に均一な配線パターンを成膜することができた。
【0054】
以上のように、本実施の形態では、親液部の表面Paを有する基板Pに対して、シラン化合物やフルオロアルキル基を有する化合物、フッ素樹脂等を含む撥液性液滴Lを塗布することにより撥液部Hをパターニング形成するため、高価な露光機やフォトマスク、レーザ光源等を用いる必要がなくなり、コストアップを防止することが可能になる。また、本実施形態では、パターン用液滴WLに対する親液部Paの接触角が20°以下であるため、バルジの発生を防止でき、またパターン用液滴WLに対する撥液部Hの接触角が50°以上であるため、確実、且つ安定してパターン用液滴WLを親液部Paに保持させることができる。特に、本実施形態では、上述したコントラストを35°以上とすることにより、より安定してパターン用液滴WLをはじいて、親液部Paに維持させることにより、当該親液部Paに対応するパターンを安定的に形成することができる。さらに、本実施形態では、撥液性液滴Lの吐出量及び吐出ピッチを調整することにより、撥液部Hの幅HA、すなわち配線パターンWの幅を容易に調整することができる。特に、本実施形態では、上記吐出量及び吐出ピッチと撥液部Hの幅HAとの相関関係を示すテーブルを用いているため、形成すべき配線パターンWの幅WAに応じて設定する撥液性液滴Lの吐出量及び吐出ピッチを容易、且つ迅速に選定することが可能になり、生産性の向上に寄与することができる。
【0055】
また、本実施形態では、基板P上に着弾した撥液性液滴Lが、隣り合う液滴L同士で重なり合うように塗布されるため、液滴吐出ヘッド301と基板Pとの走査において、一回の走査で各撥液部Hを形成することが可能になり、一層の生産性の向上に寄与できる。
加えて、本実施形態では、撥液部形成工程及び材料配置工程の双方を液滴吐出方式で行うことが可能になり、両工程で設備の共用化を図ることができ、生産コストを低減させることができる。
【0056】
(電気光学装置)
次に、上記パターン形成方法を用いて製造される電気光学装置の一例であるプラズマ型表示装置について、図8乃至図11を参照して説明する。
図8は本実施形態のプラズマ型表示装置(電気光学装置)500の分解斜視図を示している。
プラズマ型表示装置500は、互いに対向して配置されたガラス基板501、502、及びこれらの間に形成される放電表示部510を含んで構成される。
【0057】
ガラス基板501の上面には所定の間隔でストライプ状にアドレス電極511が形成され、アドレス電極511とガラス基板501の上面とを覆うように誘電体層519が形成されている。誘電体層519上には、アドレス電極511、511間に位置しかつ各アドレス電極511に沿うように隔壁515が形成されている。 また、隔壁515によって区画されるストライプ状の領域の内側には蛍光体517が配置されている。蛍光体517は、赤、緑、青の何れかの蛍光を発光するもので、赤色放電室516(R)の底部および側面には赤色蛍光体517(R)が、緑色放電室516(G)の底部および側面には緑色蛍光体517(G)が、青色放電室516(B)の底部および側面には青色蛍光体517(B)が各々配置されている。
【0058】
一方、ガラス基板502側には、先のアドレス電極511と直交する方向に複数の透明導電膜からなる表示電極512がストライプ状に所定の間隔で形成されるとともに、抵抗の高い表示電極512を補うために表示電極512上にバス電極512aが形成されている。またこれらを覆って誘電体層513が形成され、更にMgOなどからなる保護膜514が形成されている。
ガラス基板501とガラス基板502とは、前記アドレス電極511…と表示電極512…を互いに直交させるように対向させて相互に貼り合わされている。
放電表示部510は、複数の放電室516が集合されたものである。複数の放電室516のうち、赤色放電室516(R)、緑色放電室516(G)、青色放電室516(B)の3つの放電室516が対になった部分と、一対の表示電極に囲まれた領域が1画素を構成するように配置されている。
前記アドレス電極511と表示電極512は図示略の交流電源に接続されている。各電極に通電することにより、放電表示部510において蛍光体517が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0059】
本実施形態では、表示電極512、バス電極512a、およびアドレス電極511が先に示したパターン形成方法を用いて形成されている。
なお、アドレス電極511については、上述した配線パターンWと同様に、ガラス基板501に対する表面処理工程、撥液部形成工程、材料配置工程及び熱処理/光処理工程で形成されるため、ここではその説明を省略する。
【0060】
以下、表示電極512及びバス電極512aを形成する手順について、図9乃至図11を参照して説明する。
まず、上述した配線パターンWと同様に、ガラス基板502の親液部及び第1パターン形成面である表面502aに対する表面処理工程を実施した後に、図9(a)、(b)に示すように、表示電極512を形成する領域の周囲を囲む撥液部500Hを形成する。この撥液部500Hも、上述したODSを芳香族炭化水素の混合物に混合した撥液性液滴を、例えば液滴吐出量2.5pl、吐出ピッチ50μmで吐出・塗布することにより形成した。そして、撥液部500Hの間の隙間にITO微粒子を含有するパターン用液滴を吐出・塗布し、300℃、1時間の条件で焼成することにより、表示電極512が成膜される。また、撥液部500Hを加熱することにより、当該撥液部500Hの撥液性が除去される。
【0061】
続いて、このように表示電極512が成膜されたガラス基板502に対して、図10(a)、(b)に示すように、バス電極512aを形成する領域を囲む(挟む)ように、撥液部500Hの形成時と同様に、上述したODSを芳香族炭化水素の混合物に混合した撥液性液滴を吐出・塗布することにより、撥液部512Hを形成する。このとき、バス電極512aを形成する領域には、表示電極512の一部が露出する。
【0062】
そして、撥液部512Hの間の隙間に、露出する表示電極512の一部と接続させて、Ag微粒子を含有するパターン用液滴を吐出・塗布し、300℃、1時間の条件で焼成することにより、図11(a)、(b)に示すように、表示電極512と導通するバス電極512aが成膜される。
上記表示電極512、バス電極512a、およびアドレス電極511の形成時においても、その幅は撥液部の幅を、予め保持したテーブルに基づく吐出量及び吐出ピッチを調整することにより行われる。
【0063】
このように、本実施形態でも、高価な露光機やフォトマスク、レーザ光源等を用いることなく、表示電極512、バス電極512a、およびアドレス電極511等のパターンを形成することができ、コストアップを防止することが可能になるとともに、形成すべきパターンの幅に応じて設定する撥液性液滴の吐出量及び吐出ピッチを容易、且つ迅速に選定することが可能になり、生産性の向上に寄与することができる。
【0064】
なお、表示電極512を形成する透明導電膜形成材料としては、上述したITOの他に、透明導電膜形成用金属酸化物の各成分金属(インジウム、錫、アンチモン、アルミニウム及び亜鉛)の少なくとも1種の金属の微粒子や、この成分金属から選ばれた2種以上の金属からなる少なくとも1種の合金の微粒子や、これらの金属微粒子と合金微粒子との混合微粒子を用いることができる。
【0065】
また、表示電極512を形成する別の手順としては、まず透明導電膜形成材料として、上述したITOや、透明導電膜形成用金属酸化物の各成分金属(インジウム、錫、アンチモン、アルミニウム及び亜鉛)の少なくとも1種の金属の微粒子や、この成分金属から選ばれた2種以上の金属からなる少なくとも1種の合金の微粒子や、これらの金属微粒子と合金微粒子との混合微粒子を用い、図12(a)に示すように、ガラス基板502上に、表示電極512となるベタ膜512’を全面的にIJ法にて形成し、300℃、1時間の条件で焼成する。なお、スパッタ法等で表示電極ベタ膜512’を形成してもよい。次いで、図9(a)、(b)(及び図12(a))に示したように、表示電極512を形成する領域の周囲を囲む撥液部500Hを形成する。この撥液部500Hも、上述したODSを芳香族炭化水素の混合物に混合した撥液性液滴を、例えば液滴吐出量2.5pl、吐出ピッチ50μmで吐出・塗布することにより形成した。そして、撥液部500Hの間の隙間にレジスト材料Rを機能液として吐出・塗布し、硬化させる。その後、エッチング工程でレジスト材料Rをマスクとして撥液部500Hを除去するとともに、露出したベタ膜512’を除去し、レジスト剥離工程を経て、図12(b)に示すように、表示電極512が形成される。
このように、機能液としてレジスト材料を選択的に吐出・塗布することにより、レジスト形成工程のスピン塗布、露光、現像の工程が省略化され、コストアップを防止することが可能になる。
【0066】
(電磁波シールド)
次に、上記パターン形成方法を用いて製造される電気光学装置の一例である電磁波シールドについて、図13を参照して説明する。
図13(a)は、電磁波シールドの平面図であり、図13(b)は側面図である。
この図に示す電磁波シールド(電気光学装置)SLは、透明樹脂やガラス基板等の透明基板P上に導電線によりパターンPTが形成された構成となっている。
【0067】
このパターンPTは、複数の直線配線が互いに間隔をあけて交差するメッシュ状に形成されたメッシュ部MSと、このメッシュ部MSの周囲に形成された額縁部GBとから構成されている。これらメッシュ部MS及び額縁部GBは、いずれも上述した金属(Au、Ag、Cu、パラジウム、ニッケル、ITO等)により形成されている。メッシュ部MSを構成する配線は、幅が大きい程シールド性能が向上するが、開口率が小さくなるため、電磁波シールドSLとして要求される仕様に応じて適宜設定される。本実施形態では、配線幅が30μm以下、配線ピッチを250〜400μmとする。
【0068】
上記の電磁シールドSLを形成する際には、上述した配線パターンWと同様に、ガラス基板Pに対する表面処理工程、撥液部形成工程、材料配置工程及び熱処理/光処理工程で形成される。この撥液部形成工程においては、上述したODSを芳香族炭化水素の混合物に混合した撥液性液滴を、形成するメッシュ部MSの線幅(すなわち、形成する親液部の幅)に応じて選択した、例えば吐出量2.5pl、吐出ピッチ50μmで、メッシュ部MSの開口部となる領域に吐出・塗布することにより、撥液部513Hを形成する。そして、撥液部513Hの間の隙間に露出する親液部(ガラス基板Pの表面)及び基板端縁部に、上記金属微粒子を含む液滴を、例えば吐出量2.2pl、吐出ピッチ30μmで吐出・塗布し、300℃、1時間の条件で焼成することにより、メッシュ部MS及び額縁部GBを有する電磁波シールドSLを形成することができる。
このような電磁波シールドSLを用いることにより、人体の健康障害の影響だけでなく、電子機器から発生する高周波電磁波ノイズ影響を軽減し、画面の乱れやスピーカーのノイズ等も軽減可能になる。
【0069】
このように、本実施形態でも、高価な露光機やフォトマスク、レーザ光源等を用いることなく、メッシュ部MS及び額縁部GBからなるパターンPTを形成することができ、コストアップを防止することが可能になるとともに、形成すべきパターンの幅に応じて設定する撥液性液滴の吐出量及び吐出ピッチを容易、且つ迅速に選定することが可能になり、生産性の向上に寄与することができる。
【0070】
(液晶表示装置)
続いて、上記パターン形成方法を用いて製造される電気光学装置の一例である液晶表示装置について、図14乃至図18を参照して説明する。
図14は、本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図15は図1のH−H’線に沿う断面図である。図16は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図で、図17は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0071】
図14及び図15において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されてなり、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0072】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0073】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0074】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図16に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0075】
画素電極19は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図15に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0076】
図17は、ボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板P上には、上記実施形態のパターン形成方法によりゲート配線61が形成されている。
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層63が積層されている。このゲート配線部分に対向する半導体層63の部分がチャネル領域とされている。半導体層63上には、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積層されており、チャネル領域の中央部における半導体層63上には、チャネルを保護するためのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲート絶縁膜62、半導体層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジスト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニングされる。
【0077】
さらに、接合層64a、64b及びITOからなる画素電極19も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパターニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上にそれぞれバンク66…を突設し、これらバンク66…間に上述した液滴吐出装置IJを用いて、銀化合物の液滴を吐出することでソース線、ドレイン線を形成することができる。
【0078】
なお、図18に示すように、ゲート絶縁膜62に凹部を設けて、この凹部内にゲート絶縁膜62の表面と略面一に半導体層63を形成し、その上に接合層64a、64b、画素電極19、エッチストップ膜65を形成することもできる。この場合、バンク66間の溝底部を図16に比較して略フラットにすることで、これら各層及びソース線、ドレイン線の屈曲部が減り、平坦性が向上した高特性のTFTとすることができる。
このように、本実施形態では、高品質で薄型、高集積化が可能な液晶表示装置100を得ることができる。
【0079】
上記構成のTFTでは、上述した液滴吐出装置IJを用いて、撥液性液滴を塗布して撥液部及び親液部をパターニングした後に、例えば銀化合物の液滴を親液部に吐出することで、高価な露光機やフォトマスク、レーザ光源等を用いることなく、ゲート線、ソース線、ドレイン線等を形成することができるため、コストアップを防止することが可能になるとともに、形成すべきパターンの幅に応じて設定する撥液性液滴の吐出量及び吐出ピッチを容易、且つ迅速に選定することが可能になり、生産性の向上に寄与することができる。
【0080】
なお、上記実施の形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。
本発明における電気光学装置の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものであり、所望の特性が実現され、短絡等の不良が生じない高品質の有機ELデバイスを得ることができる。
【0081】
(非接触型カード媒体)
続いて、非接触型カード媒体の実施形態について説明する。図19に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。
【0082】
本実施形態では、上記アンテナ回路412が、上記実施形態に係るパターン形成方法によって形成されている。
本実施形態の非接触型カード媒体製造方法によれば、コストアップを防止し、また生産性の向上に寄与することができる。
なお、本発明に係る電気光学装置としては、上記の他に、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0083】
(電子機器)
続いて、本発明に係る電子機器の具体例について説明する。
図20(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図20(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図20(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図20(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図20(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図20(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図20(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置を備えたものであるので、コストアップを防止し、また生産性を向上させて製造することが可能になる。
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能であり、例えば撥液部を親液部が取り囲むような形状であっても適用可能である。
【0085】
また、例えば、上記実施形態では、機能液として導電材料を含む液状体として説明したが、機能液とは、金属や半導体、セラミックス、有機材料、顔料、光学材料を機能性液体として用い、基板上の所望の位置に配置して焼成工程を経て、薄膜を得る材料である。機能とは、導電性、絶縁性、半導体特性、集光性、光選択吸収性、蛍光あるいはリン光等のルネッセンス性、液晶分子の配向性制御などが挙げられる。
【0086】
また、上記実施形態では、機能液により配線本体を形成するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えばパラジウム等のめっき触媒材料を含む液滴を塗布してめっき触媒膜を形成してもよい。この場合、後工程でめっき処理を行う際に、めっき処理を行うことにより、緻密性の高い配線(Cu等)を容易、且つ安価に成膜することが可能になる。
【0087】
また、上記実施形態では、基板Pに対して親液性を高めるために、表面処理工程として洗浄処理を実施するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば機能液(パターン用液滴)に対して親液性を示すシランカップリング剤やチタンカップリング剤を表面Paに塗布しておく構成や、酸化チタン微粒子を塗布しておく構成を採ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】液滴吐出装置の概略的な構成図である。
【図2】液滴吐出ヘッド301の断面図である。
【図3】基板上に形成された撥液部、配線パターンを示す図である。
【図4】パターン形成工程を示す図である。
【図5】パターン形成工程を示す図である。
【図6】パターン形成工程を示す図である。
【図7】撥液部、親液部の接触角、コントラスト、描画結果の関係を示す図である。
【図8】プラズマ型表示装置の分解斜視図である。
【図9】表示電極及びバス電極を形成する手順を示す図である。
【図10】表示電極及びバス電極を形成する手順を示す図である。
【図11】表示電極及びバス電極を形成する手順を示す図である。
【図12】表示電極及びバス電極を形成する別の手順を示す図である。
【図13】電磁波シールドを示す図である。
【図14】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図15】図14のH−H’線に沿う断面図である。
【図16】液晶表示装置の等価回路図である。
【図17】同、液晶表示装置の部分拡大断面図である。
【図18】別形態の液晶表示装置の部分拡大断面図である。
【図19】非接触型カード媒体の分解斜視図である。
【図20】電子機器の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
GB…額縁部、 H…撥液部、 L…液滴、 MS…メッシュ部、 P…基板、 Pa…表面(親液部)、 SL…電磁波シールド(電気光学装置)、 W…配線パターン(パターン)、 100…液晶表示装置(電気光学装置)、 400…非接触型カード媒体(電子機器)、 500…プラズマ型表示装置(電気光学装置)、 600…携帯電話本体(電子機器)、 700…情報処理装置(電子機器)、 800…時計本体(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液に対する親液部及び撥液部を有する基板に前記機能液を塗布してパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記親液部を有する基板に対して、撥液材料を含む液滴を塗布して前記撥液部を形成する第1工程と、
前記親液部に前記機能液を塗布する第2工程とを有し、
前記親液部の前記機能液に対する接触角は20°以下であり、
前記撥液部の前記機能液に対する接触角は50°以上であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1記載のパターン形成方法において、
前記撥液部と前記親液部との前記機能液に対する接触角の差が35°以上であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のパターン形成方法において、
前記基板上に着弾した前記撥液材料を含む液滴が、隣り合う前記液滴同士で重なり合うように塗布することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のパターン形成方法において、
前記撥液材料は、シラン化合物及びフルオロアルキル基を有する化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項4記載のパターン形成方法において、
前記シラン化合物は、自己組織化膜であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項4または5記載のパターン形成方法において、
前記撥液部は、前記基板の表面に前記フルオロアルキル基を有する化合物からなる自己組織化膜によって形成されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項4または5記載のパターン形成方法において、
前記撥液部は、前記基板の表面にアルキル基、水素を有する自己組織化膜によって形成されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載のパターン形成方法において、
前記撥液材料は、フッ素樹脂を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のパターン形成方法において、
前記第2工程では、前記親液部に前記機能液の液滴を塗布することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のパターン形成方法において、
前記機能液は、導電性材料を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のパターン形成方法において、
前記機能液は、めっき触媒材料を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載のパターン形成方法において、
前記機能液は、レジスト材料を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のパターン形成方法によりパターンを形成する工程を有することを特徴とする電気光学装置製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の電気光学装置製造方法において、
前記電気光学装置は、導電線によりメッシュ状に形成されたメッシュ部と、前記導電線により前記メッシュ部の周囲に形成された額縁部とを有する電磁波シールドであり、
前記メッシュ部及び前記額縁部を、前記パターン形成方法により形成することを特徴とする電気光学装置製造方法。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載のパターン形成方法によりパターンを形成する工程を有することを特徴とする電子機器製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−6228(P2009−6228A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168605(P2007−168605)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】