パターン形成方法
【課題】この発明は、高精細なパターンを被転写媒体に確実且つ安定して転写でき、被転写媒体上に抜けのない良好なパターンを形成できるパターン形成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】トナー粒子55のパターンを原版1の凹部14aからガラス板5に転写する際に、トナー粒子55が凹部14aから良好に剥離してガラス板5に良好に転写されるように、現像工程において凹部14aに充填するトナー粒子55の厚さを制御する。凹部14aに充填するトナー粒子層の厚さt2は、凹部14aの底からガラス板5までの距離Tよりわずかに大きな値まで許容する。
【解決手段】トナー粒子55のパターンを原版1の凹部14aからガラス板5に転写する際に、トナー粒子55が凹部14aから良好に剥離してガラス板5に良好に転写されるように、現像工程において凹部14aに充填するトナー粒子55の厚さを制御する。凹部14aに充填するトナー粒子層の厚さt2は、凹部14aの底からガラス板5までの距離Tよりわずかに大きな値まで許容する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、平面型画像表示装置、配線基板、ICタグなどを製造する際のパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に微細なパターンを形成する技術として、フォトリソグラフィー技術が中心的な役割を果たしてきている。しかし、このフォトリソグラフィー技術は、その解像度やパフォーマンスをますます高めつつある反面、巨大で高額な製造設備を必要とし、製造コストも解像度に応じて高くなりつつある。
【0003】
一方、半導体デバイスはもとより、画像表示装置などの製造分野においては、性能の改良とともに低価格化の要求が高まりつつあり、上記のフォトリソグラフィー技術ではこのような要求を十分に満足できなくなってきている。このような状況下で、デジタル印刷技術を用いたパターン形成技術が注目されつつある。
【0004】
これに対し、例えば、インクジェット技術は、装置の簡便さや非接触パターニングといった特徴を生かしたパターニング技術として実用化され始めているが、高解像度化や高生産性には限界があると言わざるを得ない。この点において、電子写真技術、もしくはトナーを用いた静電記録技術、とりわけ液体トナーを用いた技術は、優れた可能性を有している。
【0005】
例えば、このような電子写真技術を用いて、フラットパネルディスプレイ用の前面基板の蛍光体層やブラックマトリックス、カラーフィルターなどを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
しかし、フラットパネルディスプレイの分野においては、高解像度化の要求は益々高まりつつあり、より高い位置精度で高解像度のパターンを形成することが要請されているが、上述した電子写真方式では、この課題に答えることは困難である。何故ならば、書き込み光学系の解像度は高々1200[dpi]程度であり、解像度や位置合せにおいて不十分であるからである。また、近年の大画面化に対応できる広幅の書き込み光学系を実現できていないという課題もある。
【0007】
これに対し、本願発明者らは、多数の微細なパターン状の凹部を有する凹版を用いたパターン形成装置を提案している。このパターン形成装置では、凹版の凹部内にトナー粒子を集めてパターンを現像し、このパターン像を保持した凹版を被転写媒体に近接対向せしめた状態で両者の間に電界を形成することで、凹部に集めたトナー粒子を被転写媒体の表面上に転写してパターンを形成するようにしている。
【0008】
しかし、このパターン形成装置において、被転写媒体に凹版のパターン像を転写する際に、微細な凹部からトナー粒子が完全に剥離されずに凹部内に残ってしまい、被転写媒体に転写されるパターンに欠陥を生じる場合があった。
【特許文献1】特開2004−30980号公報
【特許文献2】特開平6−265712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、高精細なパターンを被転写媒体に確実且つ安定して転写でき、被転写媒体上に抜けのない良好なパターンを形成できるパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明のパターン形成方法は、凹版の表面にパターン状に形成された凹部内に帯電した現像剤粒子を充填して現像する現像工程と、上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させた状態で上記凹部内の現像剤粒子に電界を作用させて上記被転写媒体へ転写する転写工程と、を有し、上記現像工程では、上記転写工程において上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させたときに上記凹部内に充填されている現像剤粒子間で一定以上の圧力が発生することのない量の現像剤粒子を上記凹部に充填する。
【0011】
上記発明によると、転写工程で凹版に被転写媒体を近接対向させたときに被転写媒体から付与される押圧力によって、凹部内に充填されている現像剤粒子間に一定以上の圧力がかからないように、現像工程における現像剤粒子の充填量を調整しているため、被転写媒体からの圧力で現像剤粒子が凹部内に押し固められて転写不良を生じることを防止できる。つまり、この発明によると、転写電界を付与したときに、凹部内の現像剤粒子を被転写倍体へ確実且つ安定して転写することができ、抜けのない良好なパターンを被転写媒体上に形成できる。
【0012】
また、この発明のパターン形成方法は、凹版の表面にパターン状に形成された凹部内に粘着性を有する現像剤粒子を充填して現像する現像工程と、上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てて上記凹部内に充填されている現像剤粒子をその粘着力により被転写媒体へ転写する転写工程と、を有し、上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の充填量は、上記転写工程で上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てたときの圧力によって上記凹部内に充填されている現像剤粒子間で十分な粘着力を生じ且つ上記凹部内の現像剤粒子と被転写媒体との間でも十分な粘着力を生じる量に設定される。
【0013】
上記発明によると、凹版の表面に被転写媒体を押し当てたときに凹部内の現像剤粒子間で十分な粘着力を生じ且つ現像剤粒子と被転写媒体との間でも十分な粘着力を生じるように、現像時における凹部への現像剤粒子の充填量を調整したため、凹部内に充填された現像剤粒子を被転写媒体へ十分な圧力で粘着転写でき、転写不良を生じることを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のパターン形成方法によると、高精細なパターンを被転写媒体に確実且つ安定して転写でき、被転写媒体上に抜けのない良好なパターンを形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、この発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、この発明の実施の形態に係るパターン形成装置10は、図中時計回り方向(矢印R方向)に回転するドラム素管(後述する)の周面に巻かれた原版1(印刷版、凹版)、この原版1の後述する高抵抗層に電荷を与えて帯電させる帯電器2、原版1に各色(r:赤、g:緑、b:青)の液体現像剤を供給して現像する複数の現像装置3r、3g、3b(以下、総称して現像装置3と称する場合もある)、現像によって原版1に付着した液体現像剤の溶媒成分をエアブローによって気化して乾燥させる乾燥器4、原版1に保持された現像剤粒子を転写してパターンを形成する被転写媒体となるガラス板5を定位置で保持するステージ6、転写に先立ってガラス板5の表面に高抵抗もしくは絶縁性の溶媒を塗布する塗布装置7、転写を終えた原版1をクリーニングするクリーナ8、および原版1の電荷を除去する除電器9を有する。
【0016】
各色の現像装置3r、3g、3bに収納される液体現像剤は、炭化水素系やシリコーン系などの絶縁性溶媒中に帯電した微粒子、すなわちトナー粒子(現像剤粒子)を分散したもので、このトナー粒子が電界で電気泳動することによって現像が行われる。トナー粒子としては、例えば平均粒径4[μm]程度の各色の蛍光体粒子をこれよりも平均粒径が小さい樹脂粒子が取り囲み、樹脂粒子がイオン性帯電サイトを有していて電界中でイオン解離することで電荷を帯びる構成や、樹脂粒子の内部に各色の顔料微粒子を内包する構成、もしくは樹脂粒子の表面に各色の顔料微粒子を担持する構成などが実施可能である。
【0017】
図2(a)に平面図を示すように、原版1は、矩形の薄板状に形成されている。この原版1は、図2(b)に断面図を示すように、厚さ0.05[mm]ないし0.4[mm]、より好ましくは厚さ0.1[mm]ないし0.2[mm]の矩形の金属フィルム12(基体)の表面に、放電防止層11を介して、高抵抗層13を形成して構成されている。本実施の形態では、金属フィルム12の表面に放電防止層11を設けたが、この放電防止層11は、転写電界を低目に設定すれば必須の構成とはならない。
【0018】
金属フィルム12は可撓性を有し、アルミニウム、ステンレス、チタン、アンバーなどの素材で構成可能であるほかに、ポリイミドやPETなどの表面に金属を蒸着したものなどでも良いが、転写パターンを高い位置精度で形成するためには、熱膨張や応力による伸びなどが生じにくい素材で構成することが望ましい。
【0019】
また、高抵抗層13は、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロンなどの体積抵抗率が1010[Ωcm]以上の材料(絶縁体を含む)により形成され、その膜厚は、10[μm]〜40[μm]、より好ましくは20[μm]±5[μm]に形成されている。
【0020】
さらに、放電防止層11は、後述する凹部14aの底に露出する金属フィルム12を少なくとも覆い、現像・転写工程における強電界によって気体分子もしくは液体分子がイオン化され放電の芽が発生したとしても、放電電流が持続しないよう電流制限を行うよう機能する。このため、放電防止層11は、107[Ωcm]以上の体積抵抗を有する材料で構成される。
【0021】
例えば、放電防止層11として、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロン、シリコーンなどの有機膜や、酸化アルミニウム、酸化クロム、各種セラミックス、ポリシラザンなどの無機膜などが使用され、その膜厚は0.5[μm]ないし15[μm]の範囲内、より好ましくは1[μm]ないし7[μm]の範囲内とすることが望ましい。
【0022】
また、原版1の高抵抗層13の表面13aには、図3に部分的に拡大して示すような矩形の凹部14aを多数整列配置したパターン14が形成されている。本実施の形態では、例えば平面型画像表示装置の前面基板に形成する蛍光体スクリーンを製造する凹版として、1色分の画素に相当する凹部14aだけを高抵抗層13の表面13aから凹ませて形成し、図3中に破線で示す他の2色分の領域14bには凹部を形成しないでスペースだけを確保してある。
【0023】
図4には、1つの凹部14aを拡大した原版1の断面図を示してある。本実施の形態では、凹部14aの底には放電防止層11の表面11aが露出しており、凹部14aの深さは、高抵抗層13の層厚に概ね相当する。なお、凹部14aの底にある放電防止層11の表面11a、および高抵抗層13の表面13aを含む原版1の表面全体には、厚さ0.5[μm]ないし2[μm]程度の表面離型層がコーティングされており、転写性が高められている。
【0024】
図5には、上記構造のフィルム状の原版1をドラム素管31に巻きつける様子を描いた概略断面図を示してある。ドラム素管31の図中上部の切り込み部31aには、原版1の一端を固定するクランプ32と他端を固定するクランプ33が設けられている。原版1をドラム素管31の周面上に巻き付ける場合、まず、原版1の一端をクランプ32に固定し、その後、原版1を架張しつつその他端34をクランプ33で固定する。これにより、たるみ無く原版1をドラム素管31周面の規定位置に巻き付けることができる。
【0025】
図6には、上述した原版1の高抵抗層13の表面13aを帯電器2によって帯電する帯電工程を説明するための部分構成図を示してある。帯電器2は、周知のコロナ帯電器であり、コロナワイヤー42とシールドケース43で基本的に構成されているが、メッシュ状のグリッド44を設けることで帯電の均一性を向上できる。例えば、原版1の金属フィルム12とシールドケース43を接地し、コロナワイヤー42に不図示の電源装置によって+5.5[kV]の電圧を印加し、更にグリッド44に+500[V]の電圧を印加して原版1を図中矢印R方向に移動させると、高抵抗層13の表面13aは略+500[V]に均一に帯電される。
【0026】
同図に示した除電器9は、帯電器2とほぼ同様の構造であるが、コロナワイヤー46に例えば実効電圧6[kV]、周波数50[Hz]の交流電圧を印加すべく不図示の交流電源に接続し、シールドケース47とグリッド48を接地すると、帯電器2による帯電に先立って原版1の高抵抗層13の表面13aを略0[V]となるよう除電することが可能で、高抵抗層13の繰り返し帯電特性を安定化させることができる。
【0027】
図7には、上記のように帯電された原版1に対する現像動作を説明するための図を示してある。現像時には、現像する色の現像器3を原板1に対向させて、その現像ローラ51とスクイズローラ52を原版1に近接させ、原版1に上述した液体現像剤を供給する。現像ローラ51は、搬送される原版1の高抵抗層13の表面13aに対して80〜150[μm]程度のギャップを介してその周面が対向する位置に配置され、原版1の回転方向と同じ方向(図中反時計回り方向)に1.5倍ないし4倍程度の速度で回転する。
【0028】
不図示の供給系によって現像ローラ51周面に供給される液体現像剤53は、絶縁性液体としての溶媒54に現像剤粒子としての帯電したトナー粒子55を分散させて構成されており、現像ローラ51の回転に伴って原版1の周面に供給される。この状態で、現像ローラ51に図示しない電源装置によって例えば+250[V]の電圧(現像バイアス)を印加すると、接地電位の原版1の金属フィルム12との間に電位差が形成される。これにより、正に帯電しているトナー粒子55は、金属フィルム12に向かって溶媒54中を泳動し、原版1の凹部14a内に集められる。このとき、高抵抗層13の表面13aは、+500[V]程度に帯電されているので正帯電したトナー粒子55は表面13aから反発されて付着しない。なお、このとき、現像バイアスをコントロールすることで、凹部14a内に集めるトナー粒子55の充填量を制御できる。
【0029】
このようにして原版1の凹部14a内にトナー粒子55が集められた後、トナー粒子55の濃度が薄くなった液体現像剤53が引き続いてスクイズローラ52と原版1が対向するギャップに進入する。ここでは、ギャップ(高抵抗層13の表面13aとスクイズローラ52表面の間の距離)が30[μm]ないし50[μm]、スクイズローラの電位が+250[V]で、スクイズローラ52は原版1とは逆向きに原版1の速度の3倍から5倍程度の速度で移動するように設定されているため、現像をさらに促進しつつ、同時に原版1に付着している溶媒56の一部を絞り取る効果を奏する。このようにして、原版1の凹部14aにトナーによるパターン57が形成される。
【0030】
この後、必要に応じて、凹版1の凹部14a内に充填されたトナー粒子55を僅かに凝集させる。この凝集工程では、例えば図1の乾燥器4で液体成分の一部を揮発させ固形成分の比率を高めることによってトナー粒子同士の凝集性を強めるようにして、トナー粒子55の隙間を僅かに小さくする。この際、トナー粒子55同士を強固に押し固めてしまうと後述する転写工程において転写電界を付与したときに転写不良を生じてしまうため、転写不良を生じることのない程度に押し固める必要がある。これにより、現像工程で凹部14a内に泳動により集められたトナー粒子55が1つにまとめられ、ガラス板5の表面5aに転写した際に画素のエッジを際立たせることができる。なお、この凝集工程は必須の工程ではなく、後述する転写条件によっては不要となる場合がある。
【0031】
ところで、ガラス板5上に3色の蛍光体のパターンを形成する場合、図8に示すように、まず、青色蛍光体粒子を含む液体現像剤を収納する現像器3bが原版1の直下に移動し、ここで図示しない昇降機構によって現像器3bが上昇して原版1に近接させる。この状態で、原版1が矢印R方向に回転して凹部14aによるパターンが現像される。青色パターンの現像が終了すると、現像器3bが下降して原版1から離間する。
【0032】
この青色現像プロセスの間に、図示しない搬送装置によって予め搬送されてステージ6上に保持されているガラス板5のステージ6から離間した表面に沿って塗布装置7が図中の破線矢印T1方向に移動し、ガラス板5の表面に溶媒が塗布される。この溶媒の役割と材料組成については後述する。
【0033】
しかる後に、青色のパターンを周面に担持した原版1が回転しつつ図中の破線矢印T2に沿って移動(この動作を転動と称する)し、青色のパターン像がガラス板5の表面5aに転写される。転写の詳細についても後述する。青パターンの転写を終えた原版1は図中左方に平行移動し、現像時の初期位置に戻る。このとき、ガラス板5を保持したステージ6が下降して初期位置に戻る原版1との接触が避けられる。
【0034】
次に、3色の現像器3r、3g、3bが図中左方に移動し、緑色の現像器3gが原版1の直下に位置するところで停止し、青色の現像のときと同様にして現像器3gの上昇、現像、下降が行われる。引き続いて上記と同様の操作で緑パターンが原版1からガラス板5の表面5aに転写される。このとき、緑色のパターンのガラス板5表面上の転写位置は、上述した青色のパターンから1色分ずらされることは言うまでもない。
【0035】
そして、上記の動作を赤色の現像についても繰り返し、ガラス板5の表面上に3色パターンを並べて転写して3色のパターン像をガラス板5の表面5aに形成する。このように、ガラス板5を定位置に保持して固定し、原版1をガラス板5に対して移動させることで、ガラス板5の往復移動が不要になり、大きな移動スペースの確保や装置の大型化を抑制できる。
【0036】
図9には、上述した原版1をガラス板5に沿って転動させるための転動機構の要部の構造を示してある。原版1を周面上に巻き付けたドラム素管31の軸方向両端には、ピニオンと呼ばれる歯車71が取り付けられている。原版1は、この歯車71とモーター72の駆動歯車73のかみ合わせによって回転するとともに、ステージ6の両端に設置されている直線軌道のラック74とピニオン(歯車71)の噛み合わせによって図中右方向に並進する。このとき、ステージ6上に保持されたガラス板5の表面と原版1の周面との間に相対的なズレを生じることのないように、転動機構の各部の構造が設計されている。特許請求の範囲では、このように回転しながらガラス板5に沿って平行に移動する動作を転動と称している。
【0037】
このようなラック・アンド・ピニオン機構によれば、駆動伝達用のアイドラが無いため、バックラッシュの無い高精度の回転・並進駆動を実現でき、ガラス板5上に例えば±5[μm]といった位置精度の高い高精細パターンを転写することが可能となる。
【0038】
一方、ガラス板5(図9では図示していない)は、図8に示すように、ステージ6の平らな接触面6aに対してその裏面5b(原版1から離間した側の面)の略全面を面接させるようにステージ6上に配置される。その上、ガラス板5には、ステージ6を貫通して接触面6aまで延びた吸気口76に、接続パイプ75から主パイプ77を経由して不図示の真空ポンプを接続することによって、吸気口76の接触面6aに開口した図示しない吸着孔を介して負圧が作用され、ステージ6の接触面6a上に吸着される。この吸着機構によって、ガラス板5は、高い平面度を持った接触面6aにその裏面5bの略全面を押圧させて密着され、平面性が高い状態でステージ6上に保持される。このように平らな接触面6aにガラス板5を押し付けることにより、ガラス板5の歪み等をも矯正でき、原版1との間の相対位置を高精度に維持できる。
【0039】
図10には、原版1からガラス板5に各色のトナー粒子55を転写する際の様子を説明するための要部断面図を示してある。ガラス板5の表面5aには、例えば導電性高分子などで構成される導電層81が塗布されている。そして、原版1は、この導電層81の表面81aと原版1の高抵抗層13の表面13aとが0[μm]ないし40[μm]程度のギャップを介して近接対向する位置関係を保って、ガラス板5の表面5aに沿って転動される。つまり、転写工程において、原版1の表面と導電層81が接触する場合もある。
【0040】
この状態で、電源装置82を介して導電層81に例えば−500[V]の電圧(転写バイアス)を印加すると、接地電位の金属フィルム12との間に500[V]の電位差が形成され、この電界によって凹部14a内のトナー粒子55にクーロン力が作用される。このクーロン力により、トナー粒子55が凹部14aから剥離されて溶媒54中を電気泳動されて導電層81の表面81aに転写される。
【0041】
このとき、凹部14a内のトナー粒子55が強固に押し固められていると、クーロン力によってトナー粒子55が凹部14aから良好に剥離されずに凹部14aに残ってしまい転写不良を生じる可能性がある。このため、上述した現像工程(或いは凝集工程)においては、トナー粒子55間の隙間を十分に確保して凹部14a内で固まることのない程度にトナー粒子55を“フワッとさせた状態”で凹部14a内に充填することが重要となる。
【0042】
以上のように、本実施の形態によると、トナー粒子55は非接触状態でも転写が可能なので、オフセット印刷やフレキソ印刷の場合のように、ブランケットやフレキソ版といった弾性体を介在させる必要がなく、常に位置精度の高い転写を実現することが可能となる。なお、ガラス板5の表面5aに塗布された導電層81は、トナー粒子55の転写後、ガラス板5を図示しないベーク炉へ投入して焼成することで消失させる。
【0043】
なお、本実施の形態の転写工程のように、電界転写を用いる場合、転写ギャップに溶媒が存在することが必須条件となるため、転写に先立ってガラス板上を溶媒でプリウェットしておくことでより良好な転写を実現できる。プリウェット溶媒としては絶縁性もしくは高抵抗であれば良いが、液体現像剤に用いられている溶媒と同一の溶媒、もしくはこれに帯電制御剤などが添加されたものであればなお好適である。
【0044】
ところで、図10に示す例では、原版1の凹部14aの深さt1(すなわち原版1の高抵抗層13の厚さに相当)に対し、トナー粒子55をt1より薄い厚さt2で充填した例を図示してあるが、この状態であれば何等問題なく凹部14a内のトナー粒子55を電界によってガラス板5へ転写できる。つまり、この状態では、原版1とガラス板5を近接対向させたときに凹部14a内のトナー粒子55がガラス板5に接触することがないため、トナー粒子55がガラス板5から不所望な押圧力を付与されることがなく押し固められることがない。このため、図10の状態では、上述した凝集工程を経たとしても、トナー粒子55間には十分な隙間があり、トナー粒子55は“フワッとした状態”で充填されているものと考えられる。
【0045】
このように、トナー粒子55を“フワッとさせた状態”で凹部14a内に充填した場合、原版1とガラス板5を近接対向させた状態で、転写電界を付与してトナー粒子55にクーロン力を作用させたとき、各トナー粒子55が凹部14aから良好且つ容易に剥離され、殆ど全てのトナー粒子55が凹部14aに残ることなくガラス板5の表面5a上に良好に転写される。
【0046】
これに対し、例えば、図11に例示するように、後述する一定の許容値を超えた量のトナー粒子55が原版1の凹部14a内に充填された状態では、電界によるクーロン力をトナー粒子55に作用させても全てのトナー粒子55がガラス板5へ良好に転写できなくなってしまう場合がある。つまり、図11のように一定の許容値を超えたトナー粒子55が現像工程において凹部14a内に充填されてしまうと、凹部14aの周りにある高抵抗層13の表面13aおよび側面に塗布されている表面離型層の作用により、凹部14aの中央が凸となる形状のトナー粒子層が形成され、トナー粒子55の一部が凹部14aからはみ出た形状のトナー粒子層が形成されてしまう。
【0047】
このように、中央が凸をなす形状で比較的多量のトナー粒子55が凹部14a内に充填されてしまうと、原版1とガラス板5を近接対向させたときに、凹部14aからはみ出たトナー粒子55がガラス板に接触して、ガラス板5からトナー粒子55に対して不所望な押圧力が作用し、場合によっては、凹部14a内のトナー粒子55が押し固められてしまう場合がある。この場合、特に、凹部14a内のトナー粒子55は、その中央部付近が周辺部に比べて強固に押し固められてしまうことになり、凹部14aに対してもトナー粒子55が付着してしまう。
【0048】
しかしながら、上述したように凹部14aからはみ出る量のトナー粒子55が充填されたとしても、トナー粒子層の中央がガラス板5に向けて凸となるケースが多いので、凹部14aの周辺部近くにはトナー粒子55が存在しない空間が残っているケースが多い。このため、トナー粒子層の中央がガラス板5によって押圧されたとき、凹部14a周辺付近の空間を利用してトナー粒子55が再配置され、トナー粒子55同士が押し固められる程度の押圧力が作用しない場合がある。このような場合には、たとえ凹部14aからトナー粒子55がはみ出た状態で現像工程を経た場合であっても、転写工程でトナー粒子55が押し固められることがなく良好な転写が可能となる。
【0049】
まとめると、図10に例示したように、現像工程において一定の許容値を超えない適切な量のトナー粒子55が凹部14a内に充填されている場合には、このトナー粒子55をガラス板5に転写したとき、例えば、図12に示すように、凹部14aの形状と略一致するパターンを表面5a上に形成できる。しかし、図11に例示したように、現像工程において一定の許容値を超える量のトナー粒子55を凹部14a内に充填してしまうと、このトナー粒子55をガラス板5に転写したとき、例えば、図13に示すように、中央が白抜けした欠陥を有するパターンが表面5a上に形成されてしまう場合がある。つまり、ここで言う一定の許容値とは、転写工程でガラス板5と原版1とを近接対向させたときに、転写不良を引き起こす程度に、ガラス板5から付与される押圧力によってトナー粒子55が押し固められるトナーの量とすることができる。
【0050】
本実施の形態では、このような“中央抜け”の転写不良を防止するため、現像工程において適切な量のトナー粒子55を凹部14aに充填するようにした。以下、現像工程における凹部14aに対するトナー粒子55の適切な充填量について実験結果に基づいて考察する。
【0051】
大雑把に言うと、トナー粒子55の適切な充填量は、転写時において凹部14a内のトナー粒子55が“フワッとした状態”で充填されている量とすることができる。このように、トナー粒子55を押し固めていない状態で凹部14a内に充填することで、転写電界によるクーロン力を作用させたときに各トナー粒子55が比較的自由に移動でき、凹部14aから確実に剥離でき、原版1とガラス板5との間を満たした溶媒中を泳動できる。
【0052】
トナー粒子55の種類や転写条件などの違いにより、この適切な充填量を定量化することは難しいが、上述した実施の形態に沿って適切な充填量を調べたところ次のような結果が得られた。つまり、図10に示すように、原版1の凹部14aの底からガラス板5の表面5aまでの距離を転写ギャップTとし、凹部14aに充填するトナー粒子層の厚さをt2とした場合、t2≦1.2Tが成り立つときに良好な転写が行われることを実験により確認した。なお、ここでは、トナー粒子層の厚さt2を層の最も厚い部位で測定した。
【0053】
トナー粒子層の厚さt2が転写ギャップTを超えた時点で凹部14a内のトナー粒子55がガラス板5に接触することになるが、比較的多量のトナー粒子55を凹部14a内に充填した場合、上述したように、凹部14a周辺近くに空間ができ、トナー粒子55がガラス板5によって押圧されたときに、その押圧力によってトナー粒子55が凹部14a内で再配置され、トナー粒子55同士が押し固められたり凹部14aの壁部に付着したりする程度の不所望な押圧力が作用することがない。このため、トナー粒子層の厚さt2が転写ギャップTを超えた場合であっても、必ずしも転写不良を生じるものではなく、トナー粒子55の凹部14aからの僅かな突出は許容されるものと考えられる。
【0054】
同様にして、現像工程において凹部14a内に充填するトナー粒子層の体積V1(厳密にはトナー粒子層の表面と凹部14aの壁面によって規定される領域の体積であり、トナー粒子55間の隙間も含む)と凹部14aの容積V2との大小関係と、転写の状態と、の関係を調べたところ、トナー粒子層の体積V1が凹部14aの容積V2以下である場合に良好な転写が行えることを実験により確認した。
【0055】
なお、上述した各実験において、凹部14a内に充填したトナー粒子55の状態、すなわち、トナー粒子層の厚さt2、およびトナー粒子層の体積V1は、以下のように測定した。
【0056】
まず、現像バイアスを適当な値に設定した状態で原版1の凹部14aにトナー粒子55を充填し、ドライヤーを用いて原版1に付着している溶媒を簡単に乾燥させる。この後、原版1をドラム素管31から取り外して、この原版1の凹部14a付近、すなわちトナー粒子55が付着した部位を3次元レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製、VK−9510)で観察する。
【0057】
そして、この観察結果に基づいて、原版1の高抵抗層13の表面13aとトナー粒子層の表面との間の距離Δtを計測し、予め測定しておいた高抵抗層13の厚さt1との差(t1−Δt)を算出する。すなわち、この算出結果をトナー粒子層の厚さt2とした。
【0058】
また、トナー粒子層の体積V1は、例えば上記の3次元レーザー顕微鏡であれば自動的に計測可能であるが、別法として、トナー層をスキャンニングすることでトナー層の高さ分布を測定できる測定器を用いれば、スキャンニングラインの間隔dとトナー層の断面積の積を多数のスキャンニングラインについて足し合わせてゆくプログラムを組むことで近似的なトナー層体積V1を計測できる。
【0059】
以上のように、本実施の形態によると、現像工程において現像バイアスを適切な値に制御して原版1の凹部14aに充填するトナー粒子55の量をコントロールすることにより、凹部14a内の殆ど全てのトナー粒子55をガラス板5に転写することができ、例えば図13に示すような白抜けの無い良好なパターンを形成できる。
【0060】
次に、この発明の第2の実施の形態について、図14を参照して説明する。第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態のように転写電界を用いずに、トナー粒子55の粘着性を利用してガラス板にパターンを転写する粘着転写を利用するようにした。
【0061】
このため、本実施の形態では、基本的に、現像工程において原版100の凹部14aに充填するトナー粒子55の厚さを凹部14aの深さより厚くして、トナー粒子55を凹部14aから溢れさせるようにした。そして、転写工程において原版100とガラス板5を近接対向させた際に、凹部14a内のトナー粒子55をガラス板5に一定の圧力で接触させ、トナー粒子55の粘着力を利用してパターンをガラス板5に転写するようにした。
【0062】
このような粘着転写では、原版100の表面に塗布した表面離型層、および転写工程におけるトナー粒子55の凝集圧力(すなわちトナー粒子55の充填量および凹部14aの底からガラス板5までの距離(転写ギャップT))が転写性を左右するものと考えられる。本実施の形態では、凹部14aに対するトナー粒子55の充填量をコントロールすることで、転写性を改善するようにした。
【0063】
このため、上述した3次元レーザー顕微鏡を用いてトナー粒子層を観察しながらトナーパターンの転写性を確認する実験をしたところ、本実施の形態では、凹部14aの底からガラス板5までの転写ギャップTに対し、トナー粒子層の厚さを、t2>1.2Tに設定した場合に良好な転写性を示すことがわかった。また、トナー粒子層の厚さの上限は、t2<1.8Tであることも実験により判明した。
【0064】
つまり、凹部14aに充填するトナー粒子層の厚さt2が1.2Tより少なくなると、ガラス板5を押し付けた際に、凹部14a内に充填されたトナー粒子55に対して十分な圧力を付与できなくなり、転写不良を生じるものと考えられる。また、トナー粒子層の厚さt2が1.8Tを超えると、ガラス板5に押し付けた際にトナー粒子のパターン形状が歪んでしまい、正常なパターン形状を維持できなくなってしまうことが考えられる。
【0065】
また、上述した第1の実施の形態と同様にして、転写性を良好にするための最適なトナー粒子層の体積V1について調べたところ、凹部14aの容積V2より少なくとも大きくすることで良好な転写性を得ることができることがわかった。
【0066】
以上のように、本実施の形態においても、現像バイアスを制御して原版100の凹部14aに充填するトナー粒子55の量をコントロールすることで、転写性を向上させることができ、ガラス板上に良好なパターンを形成できる。
【0067】
図15には、上述した第2の実施の形態におけるパターン形成方法をより具体的に説明するためのフローチャートを示してある。
粘着転写を用いてトナー粒子5によるパターンをガラス板5の表面5a上に形成する場合、まず、凹部14aに対するトナー粒子55の充填量が上述した範囲になるように現像バイアスを制御し、原版100のパターンを現像する(ステップ1)。
【0068】
この後、原版100の表面を乾燥器4によって乾燥させ、凹部14a内のトナー粒子55を濡らしている溶媒成分を概ね蒸発させておく(ステップ2)。このステップ2の操作は必須ではないが、溶媒成分を乾燥させておくことにより確実な粘着転写が可能となる。
【0069】
同時に、例えば塗布装置7を用いてガラス板5の表面5aに粘着層を塗布しておく(ステップ3)。さらに、原版100の凹部14a内に充填されているトナー粒子層を100[℃]程度の温度で加熱して僅かに溶融させておく(ステップ4)。
【0070】
ステップ3でガラス板5の表面5aに粘着層を形成しておくことにより、原版100の表面に塗布した表面離型層と協同して、凹部14aからのトナー粒子層の剥離を促進するとともにガラス板5に対する粘着性を高めることができ、転写性を向上させることができる。また、ステップ4で凹部14aのトナー粒子層を僅かに溶融させておくことで、トナー粒子層の粘着力を増すことができ、転写性を向上させることができる。
【0071】
そして、上記のステップを経た原版100およびガラス板5を近接対向せしめて原版100の表面をガラス板5の表面5aに押し付けた状態で、原版100をガラス板5に沿って転動させ、凹部14aに保持したトナー粒子によるパターンをその粘着力を利用してガラス板5の表面5a上に転写する(ステップ5)。
【0072】
なお、上述したステップ2〜ステップ4の処理は必須ではなく、ステップ1の現像工程における凹部14aに対するトナー粒子55の充填量をコントロールすることが重要であるが、ステップ2〜ステップ4の処理を実施することでより転写性を向上させることができる。
【0073】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0074】
例えば、上述した第1および第2の実施の形態では、液体現像剤を用いたパターン形成方法について説明したが、これに限らず、周知の乾式トナーを用いたパターン形成に本発明を適用することもできる。
【0075】
また、上述した第1の実施の形態では、現像剤粒子を正に帯電させてパターン形成方法を動作させる場合について説明したが、これに限らず、全ての構成を逆極性に帯電させて動作させても良い。
【0076】
さらに、上述した実施の形態では、平面型画像表示装置の前面基板に蛍光体層やカラーフィルターを形成する装置に本発明を適用した場合についてのみ説明したが、本発明は、他の技術分野における製造装置として広く利用できる。
【0077】
例えば、液体現像剤の組成を変更すれば回路基板やICタグなどにおける導電パターンを形成する装置に本発明を適用することも可能である。この場合には、液体現像剤を、例えば、平均粒径0.3[μm]の樹脂粒子と、その表面に付着している平均粒径0.02[μm]の金属微粒子(例えば銅、パラジウム、銀など)と、金属石鹸のような電荷制御剤から構成すれば、上述した実施の形態と同様の手法により、例えばシリコンウェハー上に現像剤による配線パターンを形成することもできる。一般に、このような現像剤のみで十分な導電性を有する回路パターンを形成することは容易ではないので、パターン形成後に上記の金属微粒子を核としてメッキを施すことが望ましい。このようにして、導電性回路や、コンデンサー、抵抗などのパターニングを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係るパターン形成装置を示す概略図。
【図2】図1のパターン形成装置で使用する原版を示す平面図(a)、および断面図(b)。
【図3】図2の原版を部分的に拡大して示す部分拡大平面図。
【図4】図2の原版の1つの凹部の構造を説明するための部分拡大斜視図。
【図5】図2の原版をドラム素管に巻き付けた状態を示す概略図。
【図6】図2の原版の高抵抗層の表面を帯電させるための構成を示す概略図。
【図7】図2の原版に液体現像剤を供給してトナー粒子によるパターンを形成するための構成を示す概略図。
【図8】図2の原版に形成したパターンをガラス板に転写するための構成を示す概略図。
【図9】図2の原版をガラス板に沿って転動させるための転動機構の要部の構造を示す概略図。
【図10】図2の原版の凹部に集めたトナー粒子をガラス板に転写する動作を説明するための動作説明図。
【図11】図2の原版の凹部に多量のトナー粒子を充填した状態を示す要部断面図。
【図12】図10に示す程度に凹部にトナー粒子を充填したときにガラス板に転写されるパターンの一例を示す図。
【図13】図11に示す程度に凹部にトナー粒子を充填したときにガラス板に転写されるパターンの一例を示す図。
【図14】この発明の第2の実施の形態に係る粘着転写時における動作を説明するための動作説明図。
【図15】図14とともにより具体的なパターン形成動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0079】
1…原版、3r、3g、3b…現像装置、5…ガラス板、6…ステージ、10…パターン形成装置、11…放電防止層、12…金属フィルム、13…高抵抗層、14a…凹部、55…トナー粒子。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、平面型画像表示装置、配線基板、ICタグなどを製造する際のパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に微細なパターンを形成する技術として、フォトリソグラフィー技術が中心的な役割を果たしてきている。しかし、このフォトリソグラフィー技術は、その解像度やパフォーマンスをますます高めつつある反面、巨大で高額な製造設備を必要とし、製造コストも解像度に応じて高くなりつつある。
【0003】
一方、半導体デバイスはもとより、画像表示装置などの製造分野においては、性能の改良とともに低価格化の要求が高まりつつあり、上記のフォトリソグラフィー技術ではこのような要求を十分に満足できなくなってきている。このような状況下で、デジタル印刷技術を用いたパターン形成技術が注目されつつある。
【0004】
これに対し、例えば、インクジェット技術は、装置の簡便さや非接触パターニングといった特徴を生かしたパターニング技術として実用化され始めているが、高解像度化や高生産性には限界があると言わざるを得ない。この点において、電子写真技術、もしくはトナーを用いた静電記録技術、とりわけ液体トナーを用いた技術は、優れた可能性を有している。
【0005】
例えば、このような電子写真技術を用いて、フラットパネルディスプレイ用の前面基板の蛍光体層やブラックマトリックス、カラーフィルターなどを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
しかし、フラットパネルディスプレイの分野においては、高解像度化の要求は益々高まりつつあり、より高い位置精度で高解像度のパターンを形成することが要請されているが、上述した電子写真方式では、この課題に答えることは困難である。何故ならば、書き込み光学系の解像度は高々1200[dpi]程度であり、解像度や位置合せにおいて不十分であるからである。また、近年の大画面化に対応できる広幅の書き込み光学系を実現できていないという課題もある。
【0007】
これに対し、本願発明者らは、多数の微細なパターン状の凹部を有する凹版を用いたパターン形成装置を提案している。このパターン形成装置では、凹版の凹部内にトナー粒子を集めてパターンを現像し、このパターン像を保持した凹版を被転写媒体に近接対向せしめた状態で両者の間に電界を形成することで、凹部に集めたトナー粒子を被転写媒体の表面上に転写してパターンを形成するようにしている。
【0008】
しかし、このパターン形成装置において、被転写媒体に凹版のパターン像を転写する際に、微細な凹部からトナー粒子が完全に剥離されずに凹部内に残ってしまい、被転写媒体に転写されるパターンに欠陥を生じる場合があった。
【特許文献1】特開2004−30980号公報
【特許文献2】特開平6−265712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、高精細なパターンを被転写媒体に確実且つ安定して転写でき、被転写媒体上に抜けのない良好なパターンを形成できるパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明のパターン形成方法は、凹版の表面にパターン状に形成された凹部内に帯電した現像剤粒子を充填して現像する現像工程と、上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させた状態で上記凹部内の現像剤粒子に電界を作用させて上記被転写媒体へ転写する転写工程と、を有し、上記現像工程では、上記転写工程において上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させたときに上記凹部内に充填されている現像剤粒子間で一定以上の圧力が発生することのない量の現像剤粒子を上記凹部に充填する。
【0011】
上記発明によると、転写工程で凹版に被転写媒体を近接対向させたときに被転写媒体から付与される押圧力によって、凹部内に充填されている現像剤粒子間に一定以上の圧力がかからないように、現像工程における現像剤粒子の充填量を調整しているため、被転写媒体からの圧力で現像剤粒子が凹部内に押し固められて転写不良を生じることを防止できる。つまり、この発明によると、転写電界を付与したときに、凹部内の現像剤粒子を被転写倍体へ確実且つ安定して転写することができ、抜けのない良好なパターンを被転写媒体上に形成できる。
【0012】
また、この発明のパターン形成方法は、凹版の表面にパターン状に形成された凹部内に粘着性を有する現像剤粒子を充填して現像する現像工程と、上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てて上記凹部内に充填されている現像剤粒子をその粘着力により被転写媒体へ転写する転写工程と、を有し、上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の充填量は、上記転写工程で上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てたときの圧力によって上記凹部内に充填されている現像剤粒子間で十分な粘着力を生じ且つ上記凹部内の現像剤粒子と被転写媒体との間でも十分な粘着力を生じる量に設定される。
【0013】
上記発明によると、凹版の表面に被転写媒体を押し当てたときに凹部内の現像剤粒子間で十分な粘着力を生じ且つ現像剤粒子と被転写媒体との間でも十分な粘着力を生じるように、現像時における凹部への現像剤粒子の充填量を調整したため、凹部内に充填された現像剤粒子を被転写媒体へ十分な圧力で粘着転写でき、転写不良を生じることを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のパターン形成方法によると、高精細なパターンを被転写媒体に確実且つ安定して転写でき、被転写媒体上に抜けのない良好なパターンを形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、この発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、この発明の実施の形態に係るパターン形成装置10は、図中時計回り方向(矢印R方向)に回転するドラム素管(後述する)の周面に巻かれた原版1(印刷版、凹版)、この原版1の後述する高抵抗層に電荷を与えて帯電させる帯電器2、原版1に各色(r:赤、g:緑、b:青)の液体現像剤を供給して現像する複数の現像装置3r、3g、3b(以下、総称して現像装置3と称する場合もある)、現像によって原版1に付着した液体現像剤の溶媒成分をエアブローによって気化して乾燥させる乾燥器4、原版1に保持された現像剤粒子を転写してパターンを形成する被転写媒体となるガラス板5を定位置で保持するステージ6、転写に先立ってガラス板5の表面に高抵抗もしくは絶縁性の溶媒を塗布する塗布装置7、転写を終えた原版1をクリーニングするクリーナ8、および原版1の電荷を除去する除電器9を有する。
【0016】
各色の現像装置3r、3g、3bに収納される液体現像剤は、炭化水素系やシリコーン系などの絶縁性溶媒中に帯電した微粒子、すなわちトナー粒子(現像剤粒子)を分散したもので、このトナー粒子が電界で電気泳動することによって現像が行われる。トナー粒子としては、例えば平均粒径4[μm]程度の各色の蛍光体粒子をこれよりも平均粒径が小さい樹脂粒子が取り囲み、樹脂粒子がイオン性帯電サイトを有していて電界中でイオン解離することで電荷を帯びる構成や、樹脂粒子の内部に各色の顔料微粒子を内包する構成、もしくは樹脂粒子の表面に各色の顔料微粒子を担持する構成などが実施可能である。
【0017】
図2(a)に平面図を示すように、原版1は、矩形の薄板状に形成されている。この原版1は、図2(b)に断面図を示すように、厚さ0.05[mm]ないし0.4[mm]、より好ましくは厚さ0.1[mm]ないし0.2[mm]の矩形の金属フィルム12(基体)の表面に、放電防止層11を介して、高抵抗層13を形成して構成されている。本実施の形態では、金属フィルム12の表面に放電防止層11を設けたが、この放電防止層11は、転写電界を低目に設定すれば必須の構成とはならない。
【0018】
金属フィルム12は可撓性を有し、アルミニウム、ステンレス、チタン、アンバーなどの素材で構成可能であるほかに、ポリイミドやPETなどの表面に金属を蒸着したものなどでも良いが、転写パターンを高い位置精度で形成するためには、熱膨張や応力による伸びなどが生じにくい素材で構成することが望ましい。
【0019】
また、高抵抗層13は、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロンなどの体積抵抗率が1010[Ωcm]以上の材料(絶縁体を含む)により形成され、その膜厚は、10[μm]〜40[μm]、より好ましくは20[μm]±5[μm]に形成されている。
【0020】
さらに、放電防止層11は、後述する凹部14aの底に露出する金属フィルム12を少なくとも覆い、現像・転写工程における強電界によって気体分子もしくは液体分子がイオン化され放電の芽が発生したとしても、放電電流が持続しないよう電流制限を行うよう機能する。このため、放電防止層11は、107[Ωcm]以上の体積抵抗を有する材料で構成される。
【0021】
例えば、放電防止層11として、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロン、シリコーンなどの有機膜や、酸化アルミニウム、酸化クロム、各種セラミックス、ポリシラザンなどの無機膜などが使用され、その膜厚は0.5[μm]ないし15[μm]の範囲内、より好ましくは1[μm]ないし7[μm]の範囲内とすることが望ましい。
【0022】
また、原版1の高抵抗層13の表面13aには、図3に部分的に拡大して示すような矩形の凹部14aを多数整列配置したパターン14が形成されている。本実施の形態では、例えば平面型画像表示装置の前面基板に形成する蛍光体スクリーンを製造する凹版として、1色分の画素に相当する凹部14aだけを高抵抗層13の表面13aから凹ませて形成し、図3中に破線で示す他の2色分の領域14bには凹部を形成しないでスペースだけを確保してある。
【0023】
図4には、1つの凹部14aを拡大した原版1の断面図を示してある。本実施の形態では、凹部14aの底には放電防止層11の表面11aが露出しており、凹部14aの深さは、高抵抗層13の層厚に概ね相当する。なお、凹部14aの底にある放電防止層11の表面11a、および高抵抗層13の表面13aを含む原版1の表面全体には、厚さ0.5[μm]ないし2[μm]程度の表面離型層がコーティングされており、転写性が高められている。
【0024】
図5には、上記構造のフィルム状の原版1をドラム素管31に巻きつける様子を描いた概略断面図を示してある。ドラム素管31の図中上部の切り込み部31aには、原版1の一端を固定するクランプ32と他端を固定するクランプ33が設けられている。原版1をドラム素管31の周面上に巻き付ける場合、まず、原版1の一端をクランプ32に固定し、その後、原版1を架張しつつその他端34をクランプ33で固定する。これにより、たるみ無く原版1をドラム素管31周面の規定位置に巻き付けることができる。
【0025】
図6には、上述した原版1の高抵抗層13の表面13aを帯電器2によって帯電する帯電工程を説明するための部分構成図を示してある。帯電器2は、周知のコロナ帯電器であり、コロナワイヤー42とシールドケース43で基本的に構成されているが、メッシュ状のグリッド44を設けることで帯電の均一性を向上できる。例えば、原版1の金属フィルム12とシールドケース43を接地し、コロナワイヤー42に不図示の電源装置によって+5.5[kV]の電圧を印加し、更にグリッド44に+500[V]の電圧を印加して原版1を図中矢印R方向に移動させると、高抵抗層13の表面13aは略+500[V]に均一に帯電される。
【0026】
同図に示した除電器9は、帯電器2とほぼ同様の構造であるが、コロナワイヤー46に例えば実効電圧6[kV]、周波数50[Hz]の交流電圧を印加すべく不図示の交流電源に接続し、シールドケース47とグリッド48を接地すると、帯電器2による帯電に先立って原版1の高抵抗層13の表面13aを略0[V]となるよう除電することが可能で、高抵抗層13の繰り返し帯電特性を安定化させることができる。
【0027】
図7には、上記のように帯電された原版1に対する現像動作を説明するための図を示してある。現像時には、現像する色の現像器3を原板1に対向させて、その現像ローラ51とスクイズローラ52を原版1に近接させ、原版1に上述した液体現像剤を供給する。現像ローラ51は、搬送される原版1の高抵抗層13の表面13aに対して80〜150[μm]程度のギャップを介してその周面が対向する位置に配置され、原版1の回転方向と同じ方向(図中反時計回り方向)に1.5倍ないし4倍程度の速度で回転する。
【0028】
不図示の供給系によって現像ローラ51周面に供給される液体現像剤53は、絶縁性液体としての溶媒54に現像剤粒子としての帯電したトナー粒子55を分散させて構成されており、現像ローラ51の回転に伴って原版1の周面に供給される。この状態で、現像ローラ51に図示しない電源装置によって例えば+250[V]の電圧(現像バイアス)を印加すると、接地電位の原版1の金属フィルム12との間に電位差が形成される。これにより、正に帯電しているトナー粒子55は、金属フィルム12に向かって溶媒54中を泳動し、原版1の凹部14a内に集められる。このとき、高抵抗層13の表面13aは、+500[V]程度に帯電されているので正帯電したトナー粒子55は表面13aから反発されて付着しない。なお、このとき、現像バイアスをコントロールすることで、凹部14a内に集めるトナー粒子55の充填量を制御できる。
【0029】
このようにして原版1の凹部14a内にトナー粒子55が集められた後、トナー粒子55の濃度が薄くなった液体現像剤53が引き続いてスクイズローラ52と原版1が対向するギャップに進入する。ここでは、ギャップ(高抵抗層13の表面13aとスクイズローラ52表面の間の距離)が30[μm]ないし50[μm]、スクイズローラの電位が+250[V]で、スクイズローラ52は原版1とは逆向きに原版1の速度の3倍から5倍程度の速度で移動するように設定されているため、現像をさらに促進しつつ、同時に原版1に付着している溶媒56の一部を絞り取る効果を奏する。このようにして、原版1の凹部14aにトナーによるパターン57が形成される。
【0030】
この後、必要に応じて、凹版1の凹部14a内に充填されたトナー粒子55を僅かに凝集させる。この凝集工程では、例えば図1の乾燥器4で液体成分の一部を揮発させ固形成分の比率を高めることによってトナー粒子同士の凝集性を強めるようにして、トナー粒子55の隙間を僅かに小さくする。この際、トナー粒子55同士を強固に押し固めてしまうと後述する転写工程において転写電界を付与したときに転写不良を生じてしまうため、転写不良を生じることのない程度に押し固める必要がある。これにより、現像工程で凹部14a内に泳動により集められたトナー粒子55が1つにまとめられ、ガラス板5の表面5aに転写した際に画素のエッジを際立たせることができる。なお、この凝集工程は必須の工程ではなく、後述する転写条件によっては不要となる場合がある。
【0031】
ところで、ガラス板5上に3色の蛍光体のパターンを形成する場合、図8に示すように、まず、青色蛍光体粒子を含む液体現像剤を収納する現像器3bが原版1の直下に移動し、ここで図示しない昇降機構によって現像器3bが上昇して原版1に近接させる。この状態で、原版1が矢印R方向に回転して凹部14aによるパターンが現像される。青色パターンの現像が終了すると、現像器3bが下降して原版1から離間する。
【0032】
この青色現像プロセスの間に、図示しない搬送装置によって予め搬送されてステージ6上に保持されているガラス板5のステージ6から離間した表面に沿って塗布装置7が図中の破線矢印T1方向に移動し、ガラス板5の表面に溶媒が塗布される。この溶媒の役割と材料組成については後述する。
【0033】
しかる後に、青色のパターンを周面に担持した原版1が回転しつつ図中の破線矢印T2に沿って移動(この動作を転動と称する)し、青色のパターン像がガラス板5の表面5aに転写される。転写の詳細についても後述する。青パターンの転写を終えた原版1は図中左方に平行移動し、現像時の初期位置に戻る。このとき、ガラス板5を保持したステージ6が下降して初期位置に戻る原版1との接触が避けられる。
【0034】
次に、3色の現像器3r、3g、3bが図中左方に移動し、緑色の現像器3gが原版1の直下に位置するところで停止し、青色の現像のときと同様にして現像器3gの上昇、現像、下降が行われる。引き続いて上記と同様の操作で緑パターンが原版1からガラス板5の表面5aに転写される。このとき、緑色のパターンのガラス板5表面上の転写位置は、上述した青色のパターンから1色分ずらされることは言うまでもない。
【0035】
そして、上記の動作を赤色の現像についても繰り返し、ガラス板5の表面上に3色パターンを並べて転写して3色のパターン像をガラス板5の表面5aに形成する。このように、ガラス板5を定位置に保持して固定し、原版1をガラス板5に対して移動させることで、ガラス板5の往復移動が不要になり、大きな移動スペースの確保や装置の大型化を抑制できる。
【0036】
図9には、上述した原版1をガラス板5に沿って転動させるための転動機構の要部の構造を示してある。原版1を周面上に巻き付けたドラム素管31の軸方向両端には、ピニオンと呼ばれる歯車71が取り付けられている。原版1は、この歯車71とモーター72の駆動歯車73のかみ合わせによって回転するとともに、ステージ6の両端に設置されている直線軌道のラック74とピニオン(歯車71)の噛み合わせによって図中右方向に並進する。このとき、ステージ6上に保持されたガラス板5の表面と原版1の周面との間に相対的なズレを生じることのないように、転動機構の各部の構造が設計されている。特許請求の範囲では、このように回転しながらガラス板5に沿って平行に移動する動作を転動と称している。
【0037】
このようなラック・アンド・ピニオン機構によれば、駆動伝達用のアイドラが無いため、バックラッシュの無い高精度の回転・並進駆動を実現でき、ガラス板5上に例えば±5[μm]といった位置精度の高い高精細パターンを転写することが可能となる。
【0038】
一方、ガラス板5(図9では図示していない)は、図8に示すように、ステージ6の平らな接触面6aに対してその裏面5b(原版1から離間した側の面)の略全面を面接させるようにステージ6上に配置される。その上、ガラス板5には、ステージ6を貫通して接触面6aまで延びた吸気口76に、接続パイプ75から主パイプ77を経由して不図示の真空ポンプを接続することによって、吸気口76の接触面6aに開口した図示しない吸着孔を介して負圧が作用され、ステージ6の接触面6a上に吸着される。この吸着機構によって、ガラス板5は、高い平面度を持った接触面6aにその裏面5bの略全面を押圧させて密着され、平面性が高い状態でステージ6上に保持される。このように平らな接触面6aにガラス板5を押し付けることにより、ガラス板5の歪み等をも矯正でき、原版1との間の相対位置を高精度に維持できる。
【0039】
図10には、原版1からガラス板5に各色のトナー粒子55を転写する際の様子を説明するための要部断面図を示してある。ガラス板5の表面5aには、例えば導電性高分子などで構成される導電層81が塗布されている。そして、原版1は、この導電層81の表面81aと原版1の高抵抗層13の表面13aとが0[μm]ないし40[μm]程度のギャップを介して近接対向する位置関係を保って、ガラス板5の表面5aに沿って転動される。つまり、転写工程において、原版1の表面と導電層81が接触する場合もある。
【0040】
この状態で、電源装置82を介して導電層81に例えば−500[V]の電圧(転写バイアス)を印加すると、接地電位の金属フィルム12との間に500[V]の電位差が形成され、この電界によって凹部14a内のトナー粒子55にクーロン力が作用される。このクーロン力により、トナー粒子55が凹部14aから剥離されて溶媒54中を電気泳動されて導電層81の表面81aに転写される。
【0041】
このとき、凹部14a内のトナー粒子55が強固に押し固められていると、クーロン力によってトナー粒子55が凹部14aから良好に剥離されずに凹部14aに残ってしまい転写不良を生じる可能性がある。このため、上述した現像工程(或いは凝集工程)においては、トナー粒子55間の隙間を十分に確保して凹部14a内で固まることのない程度にトナー粒子55を“フワッとさせた状態”で凹部14a内に充填することが重要となる。
【0042】
以上のように、本実施の形態によると、トナー粒子55は非接触状態でも転写が可能なので、オフセット印刷やフレキソ印刷の場合のように、ブランケットやフレキソ版といった弾性体を介在させる必要がなく、常に位置精度の高い転写を実現することが可能となる。なお、ガラス板5の表面5aに塗布された導電層81は、トナー粒子55の転写後、ガラス板5を図示しないベーク炉へ投入して焼成することで消失させる。
【0043】
なお、本実施の形態の転写工程のように、電界転写を用いる場合、転写ギャップに溶媒が存在することが必須条件となるため、転写に先立ってガラス板上を溶媒でプリウェットしておくことでより良好な転写を実現できる。プリウェット溶媒としては絶縁性もしくは高抵抗であれば良いが、液体現像剤に用いられている溶媒と同一の溶媒、もしくはこれに帯電制御剤などが添加されたものであればなお好適である。
【0044】
ところで、図10に示す例では、原版1の凹部14aの深さt1(すなわち原版1の高抵抗層13の厚さに相当)に対し、トナー粒子55をt1より薄い厚さt2で充填した例を図示してあるが、この状態であれば何等問題なく凹部14a内のトナー粒子55を電界によってガラス板5へ転写できる。つまり、この状態では、原版1とガラス板5を近接対向させたときに凹部14a内のトナー粒子55がガラス板5に接触することがないため、トナー粒子55がガラス板5から不所望な押圧力を付与されることがなく押し固められることがない。このため、図10の状態では、上述した凝集工程を経たとしても、トナー粒子55間には十分な隙間があり、トナー粒子55は“フワッとした状態”で充填されているものと考えられる。
【0045】
このように、トナー粒子55を“フワッとさせた状態”で凹部14a内に充填した場合、原版1とガラス板5を近接対向させた状態で、転写電界を付与してトナー粒子55にクーロン力を作用させたとき、各トナー粒子55が凹部14aから良好且つ容易に剥離され、殆ど全てのトナー粒子55が凹部14aに残ることなくガラス板5の表面5a上に良好に転写される。
【0046】
これに対し、例えば、図11に例示するように、後述する一定の許容値を超えた量のトナー粒子55が原版1の凹部14a内に充填された状態では、電界によるクーロン力をトナー粒子55に作用させても全てのトナー粒子55がガラス板5へ良好に転写できなくなってしまう場合がある。つまり、図11のように一定の許容値を超えたトナー粒子55が現像工程において凹部14a内に充填されてしまうと、凹部14aの周りにある高抵抗層13の表面13aおよび側面に塗布されている表面離型層の作用により、凹部14aの中央が凸となる形状のトナー粒子層が形成され、トナー粒子55の一部が凹部14aからはみ出た形状のトナー粒子層が形成されてしまう。
【0047】
このように、中央が凸をなす形状で比較的多量のトナー粒子55が凹部14a内に充填されてしまうと、原版1とガラス板5を近接対向させたときに、凹部14aからはみ出たトナー粒子55がガラス板に接触して、ガラス板5からトナー粒子55に対して不所望な押圧力が作用し、場合によっては、凹部14a内のトナー粒子55が押し固められてしまう場合がある。この場合、特に、凹部14a内のトナー粒子55は、その中央部付近が周辺部に比べて強固に押し固められてしまうことになり、凹部14aに対してもトナー粒子55が付着してしまう。
【0048】
しかしながら、上述したように凹部14aからはみ出る量のトナー粒子55が充填されたとしても、トナー粒子層の中央がガラス板5に向けて凸となるケースが多いので、凹部14aの周辺部近くにはトナー粒子55が存在しない空間が残っているケースが多い。このため、トナー粒子層の中央がガラス板5によって押圧されたとき、凹部14a周辺付近の空間を利用してトナー粒子55が再配置され、トナー粒子55同士が押し固められる程度の押圧力が作用しない場合がある。このような場合には、たとえ凹部14aからトナー粒子55がはみ出た状態で現像工程を経た場合であっても、転写工程でトナー粒子55が押し固められることがなく良好な転写が可能となる。
【0049】
まとめると、図10に例示したように、現像工程において一定の許容値を超えない適切な量のトナー粒子55が凹部14a内に充填されている場合には、このトナー粒子55をガラス板5に転写したとき、例えば、図12に示すように、凹部14aの形状と略一致するパターンを表面5a上に形成できる。しかし、図11に例示したように、現像工程において一定の許容値を超える量のトナー粒子55を凹部14a内に充填してしまうと、このトナー粒子55をガラス板5に転写したとき、例えば、図13に示すように、中央が白抜けした欠陥を有するパターンが表面5a上に形成されてしまう場合がある。つまり、ここで言う一定の許容値とは、転写工程でガラス板5と原版1とを近接対向させたときに、転写不良を引き起こす程度に、ガラス板5から付与される押圧力によってトナー粒子55が押し固められるトナーの量とすることができる。
【0050】
本実施の形態では、このような“中央抜け”の転写不良を防止するため、現像工程において適切な量のトナー粒子55を凹部14aに充填するようにした。以下、現像工程における凹部14aに対するトナー粒子55の適切な充填量について実験結果に基づいて考察する。
【0051】
大雑把に言うと、トナー粒子55の適切な充填量は、転写時において凹部14a内のトナー粒子55が“フワッとした状態”で充填されている量とすることができる。このように、トナー粒子55を押し固めていない状態で凹部14a内に充填することで、転写電界によるクーロン力を作用させたときに各トナー粒子55が比較的自由に移動でき、凹部14aから確実に剥離でき、原版1とガラス板5との間を満たした溶媒中を泳動できる。
【0052】
トナー粒子55の種類や転写条件などの違いにより、この適切な充填量を定量化することは難しいが、上述した実施の形態に沿って適切な充填量を調べたところ次のような結果が得られた。つまり、図10に示すように、原版1の凹部14aの底からガラス板5の表面5aまでの距離を転写ギャップTとし、凹部14aに充填するトナー粒子層の厚さをt2とした場合、t2≦1.2Tが成り立つときに良好な転写が行われることを実験により確認した。なお、ここでは、トナー粒子層の厚さt2を層の最も厚い部位で測定した。
【0053】
トナー粒子層の厚さt2が転写ギャップTを超えた時点で凹部14a内のトナー粒子55がガラス板5に接触することになるが、比較的多量のトナー粒子55を凹部14a内に充填した場合、上述したように、凹部14a周辺近くに空間ができ、トナー粒子55がガラス板5によって押圧されたときに、その押圧力によってトナー粒子55が凹部14a内で再配置され、トナー粒子55同士が押し固められたり凹部14aの壁部に付着したりする程度の不所望な押圧力が作用することがない。このため、トナー粒子層の厚さt2が転写ギャップTを超えた場合であっても、必ずしも転写不良を生じるものではなく、トナー粒子55の凹部14aからの僅かな突出は許容されるものと考えられる。
【0054】
同様にして、現像工程において凹部14a内に充填するトナー粒子層の体積V1(厳密にはトナー粒子層の表面と凹部14aの壁面によって規定される領域の体積であり、トナー粒子55間の隙間も含む)と凹部14aの容積V2との大小関係と、転写の状態と、の関係を調べたところ、トナー粒子層の体積V1が凹部14aの容積V2以下である場合に良好な転写が行えることを実験により確認した。
【0055】
なお、上述した各実験において、凹部14a内に充填したトナー粒子55の状態、すなわち、トナー粒子層の厚さt2、およびトナー粒子層の体積V1は、以下のように測定した。
【0056】
まず、現像バイアスを適当な値に設定した状態で原版1の凹部14aにトナー粒子55を充填し、ドライヤーを用いて原版1に付着している溶媒を簡単に乾燥させる。この後、原版1をドラム素管31から取り外して、この原版1の凹部14a付近、すなわちトナー粒子55が付着した部位を3次元レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製、VK−9510)で観察する。
【0057】
そして、この観察結果に基づいて、原版1の高抵抗層13の表面13aとトナー粒子層の表面との間の距離Δtを計測し、予め測定しておいた高抵抗層13の厚さt1との差(t1−Δt)を算出する。すなわち、この算出結果をトナー粒子層の厚さt2とした。
【0058】
また、トナー粒子層の体積V1は、例えば上記の3次元レーザー顕微鏡であれば自動的に計測可能であるが、別法として、トナー層をスキャンニングすることでトナー層の高さ分布を測定できる測定器を用いれば、スキャンニングラインの間隔dとトナー層の断面積の積を多数のスキャンニングラインについて足し合わせてゆくプログラムを組むことで近似的なトナー層体積V1を計測できる。
【0059】
以上のように、本実施の形態によると、現像工程において現像バイアスを適切な値に制御して原版1の凹部14aに充填するトナー粒子55の量をコントロールすることにより、凹部14a内の殆ど全てのトナー粒子55をガラス板5に転写することができ、例えば図13に示すような白抜けの無い良好なパターンを形成できる。
【0060】
次に、この発明の第2の実施の形態について、図14を参照して説明する。第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態のように転写電界を用いずに、トナー粒子55の粘着性を利用してガラス板にパターンを転写する粘着転写を利用するようにした。
【0061】
このため、本実施の形態では、基本的に、現像工程において原版100の凹部14aに充填するトナー粒子55の厚さを凹部14aの深さより厚くして、トナー粒子55を凹部14aから溢れさせるようにした。そして、転写工程において原版100とガラス板5を近接対向させた際に、凹部14a内のトナー粒子55をガラス板5に一定の圧力で接触させ、トナー粒子55の粘着力を利用してパターンをガラス板5に転写するようにした。
【0062】
このような粘着転写では、原版100の表面に塗布した表面離型層、および転写工程におけるトナー粒子55の凝集圧力(すなわちトナー粒子55の充填量および凹部14aの底からガラス板5までの距離(転写ギャップT))が転写性を左右するものと考えられる。本実施の形態では、凹部14aに対するトナー粒子55の充填量をコントロールすることで、転写性を改善するようにした。
【0063】
このため、上述した3次元レーザー顕微鏡を用いてトナー粒子層を観察しながらトナーパターンの転写性を確認する実験をしたところ、本実施の形態では、凹部14aの底からガラス板5までの転写ギャップTに対し、トナー粒子層の厚さを、t2>1.2Tに設定した場合に良好な転写性を示すことがわかった。また、トナー粒子層の厚さの上限は、t2<1.8Tであることも実験により判明した。
【0064】
つまり、凹部14aに充填するトナー粒子層の厚さt2が1.2Tより少なくなると、ガラス板5を押し付けた際に、凹部14a内に充填されたトナー粒子55に対して十分な圧力を付与できなくなり、転写不良を生じるものと考えられる。また、トナー粒子層の厚さt2が1.8Tを超えると、ガラス板5に押し付けた際にトナー粒子のパターン形状が歪んでしまい、正常なパターン形状を維持できなくなってしまうことが考えられる。
【0065】
また、上述した第1の実施の形態と同様にして、転写性を良好にするための最適なトナー粒子層の体積V1について調べたところ、凹部14aの容積V2より少なくとも大きくすることで良好な転写性を得ることができることがわかった。
【0066】
以上のように、本実施の形態においても、現像バイアスを制御して原版100の凹部14aに充填するトナー粒子55の量をコントロールすることで、転写性を向上させることができ、ガラス板上に良好なパターンを形成できる。
【0067】
図15には、上述した第2の実施の形態におけるパターン形成方法をより具体的に説明するためのフローチャートを示してある。
粘着転写を用いてトナー粒子5によるパターンをガラス板5の表面5a上に形成する場合、まず、凹部14aに対するトナー粒子55の充填量が上述した範囲になるように現像バイアスを制御し、原版100のパターンを現像する(ステップ1)。
【0068】
この後、原版100の表面を乾燥器4によって乾燥させ、凹部14a内のトナー粒子55を濡らしている溶媒成分を概ね蒸発させておく(ステップ2)。このステップ2の操作は必須ではないが、溶媒成分を乾燥させておくことにより確実な粘着転写が可能となる。
【0069】
同時に、例えば塗布装置7を用いてガラス板5の表面5aに粘着層を塗布しておく(ステップ3)。さらに、原版100の凹部14a内に充填されているトナー粒子層を100[℃]程度の温度で加熱して僅かに溶融させておく(ステップ4)。
【0070】
ステップ3でガラス板5の表面5aに粘着層を形成しておくことにより、原版100の表面に塗布した表面離型層と協同して、凹部14aからのトナー粒子層の剥離を促進するとともにガラス板5に対する粘着性を高めることができ、転写性を向上させることができる。また、ステップ4で凹部14aのトナー粒子層を僅かに溶融させておくことで、トナー粒子層の粘着力を増すことができ、転写性を向上させることができる。
【0071】
そして、上記のステップを経た原版100およびガラス板5を近接対向せしめて原版100の表面をガラス板5の表面5aに押し付けた状態で、原版100をガラス板5に沿って転動させ、凹部14aに保持したトナー粒子によるパターンをその粘着力を利用してガラス板5の表面5a上に転写する(ステップ5)。
【0072】
なお、上述したステップ2〜ステップ4の処理は必須ではなく、ステップ1の現像工程における凹部14aに対するトナー粒子55の充填量をコントロールすることが重要であるが、ステップ2〜ステップ4の処理を実施することでより転写性を向上させることができる。
【0073】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0074】
例えば、上述した第1および第2の実施の形態では、液体現像剤を用いたパターン形成方法について説明したが、これに限らず、周知の乾式トナーを用いたパターン形成に本発明を適用することもできる。
【0075】
また、上述した第1の実施の形態では、現像剤粒子を正に帯電させてパターン形成方法を動作させる場合について説明したが、これに限らず、全ての構成を逆極性に帯電させて動作させても良い。
【0076】
さらに、上述した実施の形態では、平面型画像表示装置の前面基板に蛍光体層やカラーフィルターを形成する装置に本発明を適用した場合についてのみ説明したが、本発明は、他の技術分野における製造装置として広く利用できる。
【0077】
例えば、液体現像剤の組成を変更すれば回路基板やICタグなどにおける導電パターンを形成する装置に本発明を適用することも可能である。この場合には、液体現像剤を、例えば、平均粒径0.3[μm]の樹脂粒子と、その表面に付着している平均粒径0.02[μm]の金属微粒子(例えば銅、パラジウム、銀など)と、金属石鹸のような電荷制御剤から構成すれば、上述した実施の形態と同様の手法により、例えばシリコンウェハー上に現像剤による配線パターンを形成することもできる。一般に、このような現像剤のみで十分な導電性を有する回路パターンを形成することは容易ではないので、パターン形成後に上記の金属微粒子を核としてメッキを施すことが望ましい。このようにして、導電性回路や、コンデンサー、抵抗などのパターニングを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係るパターン形成装置を示す概略図。
【図2】図1のパターン形成装置で使用する原版を示す平面図(a)、および断面図(b)。
【図3】図2の原版を部分的に拡大して示す部分拡大平面図。
【図4】図2の原版の1つの凹部の構造を説明するための部分拡大斜視図。
【図5】図2の原版をドラム素管に巻き付けた状態を示す概略図。
【図6】図2の原版の高抵抗層の表面を帯電させるための構成を示す概略図。
【図7】図2の原版に液体現像剤を供給してトナー粒子によるパターンを形成するための構成を示す概略図。
【図8】図2の原版に形成したパターンをガラス板に転写するための構成を示す概略図。
【図9】図2の原版をガラス板に沿って転動させるための転動機構の要部の構造を示す概略図。
【図10】図2の原版の凹部に集めたトナー粒子をガラス板に転写する動作を説明するための動作説明図。
【図11】図2の原版の凹部に多量のトナー粒子を充填した状態を示す要部断面図。
【図12】図10に示す程度に凹部にトナー粒子を充填したときにガラス板に転写されるパターンの一例を示す図。
【図13】図11に示す程度に凹部にトナー粒子を充填したときにガラス板に転写されるパターンの一例を示す図。
【図14】この発明の第2の実施の形態に係る粘着転写時における動作を説明するための動作説明図。
【図15】図14とともにより具体的なパターン形成動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0079】
1…原版、3r、3g、3b…現像装置、5…ガラス板、6…ステージ、10…パターン形成装置、11…放電防止層、12…金属フィルム、13…高抵抗層、14a…凹部、55…トナー粒子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹版の表面にパターン状に形成された凹部内に帯電した現像剤粒子を充填して現像する現像工程と、
上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させた状態で上記凹部内の現像剤粒子に電界を作用させて上記被転写媒体へ転写する転写工程と、を有し、
上記現像工程では、上記転写工程において上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させたときに上記凹部内に充填されている現像剤粒子間で一定以上の圧力が発生することのない量の現像剤粒子を上記凹部に充填することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
上記転写工程の前に、上記現像工程で上記凹部内に充填した現像剤粒子をわずかに凝集させる凝集工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させた状態における上記凹部の底と被転写媒体との間の距離をTとした場合、上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の厚さは、1.2T以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子間の空隙を含む容積は、上記凹部の容積以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
凹版の表面にパターン状に形成された凹部内に粘着性を有する現像剤粒子を充填して現像する現像工程と、
上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てて上記凹部内に充填されている現像剤粒子をその粘着力により被転写媒体へ転写する転写工程と、を有し、
上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の充填量は、上記転写工程で上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てたときの圧力によって上記凹部内に充填されている現像剤粒子間で十分な粘着力を生じ且つ上記凹部内の現像剤粒子と被転写媒体との間でも十分な粘着力を生じる量に設定されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てた状態における上記凹部の底と被転写媒体との間の距離をTとした場合、上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の厚さは、1.2Tより大きいことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てた状態における上記凹部の底と被転写媒体との間の距離をTとした場合、上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の厚さは、1.2Tより大きく且つ1.8Tより小さいことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子間の空隙を含む容積は、上記凹部の容積より大きいことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
上記凹版の表面には、良好な離型性を有する離型層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
上記転写工程の前に、被転写媒体が上記凹版に対向する表面に粘着層を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
上記転写工程の前に、上記凹部内に充填した現像剤粒子を加熱して溶融する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項1】
凹版の表面にパターン状に形成された凹部内に帯電した現像剤粒子を充填して現像する現像工程と、
上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させた状態で上記凹部内の現像剤粒子に電界を作用させて上記被転写媒体へ転写する転写工程と、を有し、
上記現像工程では、上記転写工程において上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させたときに上記凹部内に充填されている現像剤粒子間で一定以上の圧力が発生することのない量の現像剤粒子を上記凹部に充填することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
上記転写工程の前に、上記現像工程で上記凹部内に充填した現像剤粒子をわずかに凝集させる凝集工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
上記凹版の表面に被転写媒体を近接対向させた状態における上記凹部の底と被転写媒体との間の距離をTとした場合、上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の厚さは、1.2T以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子間の空隙を含む容積は、上記凹部の容積以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
凹版の表面にパターン状に形成された凹部内に粘着性を有する現像剤粒子を充填して現像する現像工程と、
上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てて上記凹部内に充填されている現像剤粒子をその粘着力により被転写媒体へ転写する転写工程と、を有し、
上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の充填量は、上記転写工程で上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てたときの圧力によって上記凹部内に充填されている現像剤粒子間で十分な粘着力を生じ且つ上記凹部内の現像剤粒子と被転写媒体との間でも十分な粘着力を生じる量に設定されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てた状態における上記凹部の底と被転写媒体との間の距離をTとした場合、上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の厚さは、1.2Tより大きいことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
上記凹版の表面に被転写媒体を押し当てた状態における上記凹部の底と被転写媒体との間の距離をTとした場合、上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子の厚さは、1.2Tより大きく且つ1.8Tより小さいことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
上記現像工程で上記凹部内に充填する現像剤粒子間の空隙を含む容積は、上記凹部の容積より大きいことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
上記凹版の表面には、良好な離型性を有する離型層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
上記転写工程の前に、被転写媒体が上記凹版に対向する表面に粘着層を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
上記転写工程の前に、上記凹部内に充填した現像剤粒子を加熱して溶融する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−131957(P2009−131957A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265649(P2006−265649)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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