パターン形成方法

【課題】ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用して、少ない工程で、且つ安価にパターンを形成することができるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、基板上に高分子膜を形成し、前記高分子膜に対して選択的に第1および第2の条件でエネルギー線を照射することにより、前記高分子膜表面に、表面自由エネルギーの異なる第1および第2の領域を形成し、前記高分子膜上に、第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層を形成し、前記ブロックコポリマーをミクロ相分離させることを特徴とするパターン形成方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体デバイスなどの微細加工に応用できるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSIをはじめとする半導体デバイスの製造プロセスでは、リソグラフィーによる微細加工技術が採用されている。今後、さらに微細な加工が要求されることは確実であり、リソグラフィーにおける光源の短波長化およびレジストの高性能化が進められている。しかし、これらの対策による解像度の向上は困難になってきている。
【0003】
これに対して、ブロックコポリマーの相分離構造を利用する微細加工技術が着目されている。この微細加工技術では、ブロックコポリマーの相分離構造を規則的に並べることが要求され、そのために種々の工夫がなされている。
【0004】
しかし、半導体パターンには、微細パターンを形成する部分のみでなく、広い面積でバターンのない部分も存在する。このため、ブロックコポリマーの相分離を利用した加工方法を用いる場合、パターンの存在しない部分を形成するためには、微細パターン形成の前にレジストなどでパターンの存在しない部分をマスクする必要があった。
【0005】
ブロックコポリマーを修飾するなどして、より少ない工程でパターンを形成するための種々の工夫もなされているが、そのようなブロックコポリマーの合成には多数の工程を要するため、かえってコストが高くなるという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,746,825号明細書
【特許文献2】特開2009−298911号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. O. Kim et ai., Nature, Vol.424, pp.411-414 (2004)
【非特許文献2】R. Ruiz et ai., Science, Vol. 321, pp. 936-939 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用して、少ない工程で、且つ安価にパターンを形成することができるパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、基板上に高分子膜を形成し、前記高分子膜に対して選択的に第1および第2の条件でエネルギー線を照射することにより、前記高分子膜表面に、表面自由エネルギーの異なる第1および第2の領域を形成し、前記高分子膜上に、第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層を形成し、前記ブロックコポリマーをミクロ相分離させることを特徴とするパターン形成方法が提供される。前記第1および第2の領域の表面自由エネルギーに基づいて、前記第1および第2のブロック鎖を前記基板に対して垂直または平行に配向させることにより、前記第1の領域上のブロックコポリマー層と前記第2の領域上のブロックコポリマー層とで異なるミクロ相分離パターンを同時に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るパターン形成方法を説明する断面図。
【図2】実施例におけるブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係るパターン形成方法を示す断面図である。図1を参照して、実施形態に係るパターン形成方法の概略について説明する。
【0013】
図1(a)に示すように、基板11上に、エネルギー線の照射により表面自由エネルギーが変化する高分子膜12を形成する。その後、形成した高分子膜12上に、選択的にエネルギー線を照射する。選択的なエネルギー線の照射は、例えば図1(a)に示すように、エネルギー線を照射したくない部分をマスク13で遮蔽することにより行うことができる。その結果、図1(b)に示すように、高分子膜12上に表面自由エネルギーの異なる第1の領域12aおよび第2の領域12bが形成される。続いて、高分子膜12上に、ブロックコポリマー層14を形成する(図1(c))。ブロックコポリマーは、性質の異なる第1のブロック鎖および第2のブロック鎖を含む。ブロックコポリマー層14の形成後、加熱してアニーリングすることにより、ブロックコポリマーをミクロ相分離させる。その結果、図1(d)に示すように、高分子膜表面の自由エネルギーに応じて第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が基板11に対して垂直または平行に配向し、ブロックコポリマーのミクロ相分離パターンが形成される。図1(d)においては、高分子膜の第1の領域12a上のブロックコポリマーは、第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が基板に対して平行に配向したことを表している。その結果として、第1のブロック鎖の層14aおよび第2のブロック鎖の層14bが基板11に対して平行に交互に積層されたラメラ相が形成されている。一方、高分子膜の第2の領域12b上のブロックコポリマーは、第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が基板に対して垂直に配向している。その結果として、第1のブロック鎖の層14aおよび第2のブロック鎖14bの層が、基板11に対して垂直に交互に積層されたラメラ相が形成されている。
【0014】
上記で説明したパターン形成方法の各工程および各部材について、さらに詳細に説明する。
【0015】
基板としては、半導体デバイスに用いられる任意の基板を用いることができる。このような基板の例としては、シリコンウエハー、ドーピングされたシリコンウエハー、表面に絶縁層または電極もしくは配線となる金属層が形成されたシリコンウエハー、マスクブランク、GaAs、AlGaAsなどのIII−V族化合物半導体ウエハーを挙げることができる。他の基板の例として、クロムまたは酸化クロム蒸着基板、アルミニウム蒸着基板、ホスホシリケートガラス(PSG)コートなどのパッシベーション酸化膜基板、スピンオングラス(SOG)コート基板、SiNコート基板も挙げることができる。
【0016】
なお、基板の表面に付着した有機不純物を除去するために、基板への紫外線照射などの前処理を行うことが好ましい。
【0017】
高分子膜を形成する材料は、エネルギー線の照射により表面自由エネルギーが変化する材料であれば特に限定されないが、表面自由エネルギーの変化において体積収縮を伴わない材料が望ましい。Si−Si結合を持つ分子は、エネルギー線の照射により結合が開裂し、架橋反応や酸化反応により表面自由エネルギーを変化させる。そのため、高分子膜を形成する材料は、Si−Si結合をもつケイ素系材料であることが望ましい。製膜性の点から、Si−Si結合からなるオリゴマーおよび/またはポリマーであるポリシランが特に好ましい。ポリシランを使用する場合、ポリシラン主鎖が架橋した高分子であっても架橋していない鎖状高分子であってもかまわない。使用するポリシランは、塗布特性、高分子膜を製膜した後でブロックコポリマー層を製膜する際の溶剤耐性等によって適宜選択することができる。ポリシランの置換基は特に限定されないが、溶解性の観点から、水素原子、メチル基、フェニル基、フェノール基等であることが好ましい。
【0018】
高分子膜の製膜方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、気相成長などを用いることができる。
【0019】
スピンコーティングでは、高分子膜の材料を溶剤で希釈して基板上にスピンコートし、必要に応じてホットプレートなどの上でベークして形成する。
【0020】
ディップコーティングでは、高分子膜の材料を溶剤で希釈し、その希釈溶液中に基板を一定時間浸漬し、高分子膜を形成する。
【0021】
気相成長では、気圧を下げるか温度を上げるかまたはその両方によって高分子膜を形成する材料を気体状態とし、その中へ基板を導入し、一定時間曝露して基板表面に高分子膜を形成する。
【0022】
スピンコーティングにおいて、高分子膜を形成する材料を溶剤で希釈する濃度は0.5〜30wt%であることが好ましいが、特に限定されない。基板に対する塗れ広がりの程度に応じてその濃度を調整することが好ましい。用いる溶剤は、高分子膜形成材料によっても異なるが、高分子膜形成材料と反応を起こさないものが好ましい。このような溶剤としては、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンなどのシクロアルカン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルキルアルコール類などが挙げられる。上述した溶剤以外にも、反応性、基板との濡れ性、揮発性の観点から、一般的なフォトレジストの溶剤に用いられるケトン類、セロソルブ類、およびエステル類といった有機溶媒も使用することができる。ケトン類としては、シクロヘキサノン、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。セロソルブル類としては、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどが挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、γ−ブチロラクトン、3−メトキシプロピオン酸メチルなどが挙げられる。溶剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。基板表面の官能基との反応性の観点から、脱水溶剤を用いることが好ましい。ホットプレートなどの上でベークするときの温度は、使用した溶剤を気化させ、流動性をなくす観点から100〜200℃であることが好ましい。
【0023】
ディップコーティングにおいて、高分子膜形成材料を溶剤で希釈する濃度は1〜30wt%であることが好ましい。用いる溶剤は、スピンコーティングで用いる溶剤と同様に、高分子膜形成材料と反応を起こさないものが好ましい。このような溶剤としては、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンなどのシクロアルカン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルキルアルコール類などが挙げられる。基板表面の官能基との反応性の観点から、脱水溶剤を用いることが好ましい。希釈溶液への基板の浸漬後に、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを吹き付けて溶剤を吹き飛ばし、場合によってはホットプレート上で加熱して溶剤を除去することが好ましい。
【0024】
気相成長では、高分子膜形成材料を気体状態にするために、その材料の蒸気圧特性に応じて、気圧を下げるか温度を上げるかまたはその両方を行う。用いる高分子膜形成材料の沸点に依存するが、材料の安定性の観点から、減圧して気体状態に変わるまで温度を上げることが好ましい。気体状態の高分子膜形成材料が存在する空間に基板を入れるかまたは予め入れておき、1〜5時間基板表面を曝露することが好ましい。基板を曝露した後、必要に応じて、高分子膜の範囲を超えて吸着されている余分な高分子膜形成材料を溶剤で洗い流してもよい。用いる溶剤は、上記スピンコーティングに関連して記載したものが好ましい。
【0025】
高分子膜に照射するエネルギー線は、高分子膜を形成する材料が感度をもつ波長を有するものであれば特に限定されない。具体的には、紫外線、水銀ランプのi線、h線またはg線、キセノンランプ光、深紫外光(例えば、KrFもしくはArFなどのエキシマーレーザー光)、X線、シンクロトロンオービタルラジエーション(SR)、電子線、γ線およびイオンビームなどが挙げられる。
【0026】
高分子膜表面の自由エネルギーは、高分子膜へのエネルギー線の照射により調整する。エネルギー線の照射は、高分子膜上に形成するブロックコポリマー層に含まれるブロックコポリマーが、目的とするミクロ相分離パターンに応じて配向するように調整する。例えば、表面自由エネルギーを低く維持したい領域をマスクで覆ってエネルギー線を部分的に遮蔽したり、エネルギー線の照射時間を変化させたり、領域によって使用するエネルギー線を変えることによって、高分子膜表面の自由エネルギーを調整することができる。
【0027】
表面自由エネルギーを低く維持したい領域をマスクで覆い、表面自由エネルギーを大きくしたい領域のみにエネルギー線を照射した場合、エネルギー線照射部の表面自由エネルギーが選択的に上昇する。その結果、照射部および未照射部で表面自由エネルギーが異なることによるパターンが高分子膜上に形成される。表面自由エネルギーを小さくするほど高分子膜表面は疎水性になり、表面自由エネルギーを大きくするほど高分子膜表面は親水性になる。
【0028】
高分子膜上に形成するブロックコポリマー層に含まれるブロックコポリマーは、第1のブロック鎖と第2のブロック鎖が異なる反応性イオンエッチング(RIE)耐性を有するというように、なんらかの方法で一方のブロック鎖を除去できるものである。たとえば、ポリスチレンとポリブタジエンとのブロックコポリマーを用いた場合には、オゾン処理によりポリスチレンブロックのみを残すことができる。また、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとのブロックコポリマーを用いた場合には、O、CFなどの反応性ガスを用いたRIEによりポリスチレンブロックのみを残すことができる(K. Asakawa et al., APS March Meeting,2000)。
【0029】
基板上に形成された高分子膜上にブロックコポリマーを塗布する方法は特に限定されない。例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード法、カーテンコーティング、その他の方法が用いられる。ブロックコポリマー溶液を塗布した後、必要に応じて、ホットプレート上で加熱して溶剤を除去してもよい。このときの加熱温度は70〜120℃が好ましい。
【0030】
ブロックコポリマーを相分離させるには、一般的に、ブロックコポリマーのガラス転移点温度以上の温度でアニールする。ブロックコポリマーの相分離速度はアニール温度に対して相関性があることが知られている(A. M. Welander et al., Macromolecules, 41, 2759−2761, 2008)。アニール温度が秩序・無秩序転移温度(ODT)を超えて高くなると、無秩序構造になり、相分離構造が得られない。このため、適度な相分離速度が得られる適度な温度でアニールすることが好ましい。ブロックコポリマーの分子量や種類にもよるが、アニール温度は130〜280℃であることが好ましい。アニールはオーブンやホットプレートを用いて行う。オーブンを用いる場合には低温で長時間アニールする。ホットプレートを用いる場合には高温で短時間アニールする。
【0031】
なお、酸素などの反応性ガスが微量に存在する雰囲気でアニールする場合、アニール温度が高温になるとブロックコポリマーが分解することがある。そこで、ブロックコポリマーの分解を防ぐ観点から、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気でアニールすることが好ましい。必要に応じて、約3%の水素を含むフォーミングガス雰囲気でアニールしてもよい。
【0032】
ブロックコポリマーにおける第1のブロック鎖と第2のブロック鎖の自由エネルギーの違いにより、相分離による微細構造や配向を制御することができる。親水性ブロックと疎水性ブロックからなるブロックコポリマーでは、親水性ブロックは親水性材料と親和し、疎水性ブロックは疎水性材料と親和する。そのため、エネルギー線の照射により高分子膜表面に親水性の領域と疎水性の領域のパターンを形成することにより、ブロックコポリマーの相分離パターンをコントロールすることができる。
【0033】
高分子膜上の表面自由エネルギーが高い領域、すなわち親水性の領域では、ブロックコポリマーをミクロ相分離させると、ブロックコポリマーの親水性部分が高分子膜と親和し、疎水性部分が高分子膜から離れるように配向する。一方、高分子膜上の表面自由エネルギーが低い領域、すなわち疎水性の領域では、ブロックコポリマーの疎水性部分が高分子膜と親和し、親水性部分は高分子膜から離れるように配向する。従って、高分子膜表面を親水性または疎水性にした場合、その上に形成されるブロックコポリマー層をミクロ相分離させると、ブロックコポリマーの第1のブロック鎖および第2のブロック鎖は基板に対して平行に配向する。その結果、ブロックコポリマーの第1のブロック鎖の層および第2のブロック鎖の層が基板に対して平行に交互に積層されたラメラ相が形成される(以下、基板に対して平行なラメラ相とも称する)。ポリマーの相分離にはゆらぎが存在するため、実際には完全な平行にならなくても構わない。
【0034】
このような相分離パターンを得るためには、高分子膜の表面自由エネルギーを、ブロックポリマーの第1のブロック鎖が持つ表面自由エネルギーまたは第2のブロック鎖が持つ表面自由エネルギーのどちらかと近い表面自由エネルギーとすることが好ましい。
【0035】
例えば、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとのブロックコポリマーを用いる場合、高分子膜表面を水の接触角が例えば90°になるようなエネルギー状態にすると、ポリスチレン層が高分子膜と接し、ポリスチレン層とポリメチルメタクリレート層が基板に対して平行に交互に積層されたラメラ相が形成される。これは、高分子膜における表面エネルギーをポリスチレンの表面自由エネルギーと近い状態にしたことによる。また、高分子膜表面を水の接触角が例えば75°になるようなエネルギー状態にすると、ポリメチルメタクリレート層が高分子膜と接し、ポリメチルメタクリレート層とポリスチレン層が基板に対して平行に交互に積層されたラメラ相が形成される。これは、高分子膜における表面エネルギーをポリメチルメタクリレートの表面自由エネルギーと近い状態にしたことによる。
【0036】
ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとのブロックコポリマーを用いる場合、高分子膜表面の所定の領域を水の接触角が75〜80°または90°以上になるようなエネルギー状態にすることにより、その領域に積層されたブロックコポリマーを基板に対して平行に配向させることができる。
【0037】
また、高分子膜表面を親水性と疎水性の中間のエネルギー状態とすると、ブロックコポリマーの第1および第2のブロック鎖は、いずれも同一の条件で高分子膜と接することになる。この状態を利用すると、ブロックコポリマーの第1のブロック鎖および第2のブロック鎖は基板に対して垂直に配向する。その結果、ブロックコポリマーの第1のブロック鎖の層および第2のブロック鎖の層が、基板に対して垂直に並んだミクロ相分離パターンが形成される。ポリマーの相分離にはゆらぎが存在するため、実際には完全な垂直にならなくても構わない。
【0038】
このような相分離パターンを得るためには、高分子膜の表面自由エネルギーを、ブロックコポリマーの第1のブロック鎖が持つ表面自由エネルギーと第2のブロック鎖が持つ表面自由エネルギーの中間のエネルギー状態とすることが好ましい。このようなエネルギー状態の領域においては、第1のブロック鎖と高分子膜表面のエネルギー関係と、第2のブロック鎖と高分子膜表面のエネルギー関係が等しくなり、ブロック鎖が基板に対して垂直に配向しやすくなる。
【0039】
例えば、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとのブロックコポリマーを用いる場合、高分子膜表面の所定の領域を水の接触角が80°より大きく90°未満になるようなエネルギー状態にすることにより、その領域に積層されたブロックコポリマーを基板に対して垂直に配向させることができる。
【0040】
ここで形成される基板に対して垂直なミクロ相分離パターンは、ブロックコポリマーの第1のブロック鎖の層および第2のブロック鎖の層が基板に対して垂直に交互に積層されたラメラ相(以下、基板に対して垂直なラメラ相とも称する)であるか、あるいはシリンダー相であることが好ましい。
【0041】
ブロックコポリマーのミクロ相分離によりラメラ相が形成される場合、基板に対して垂直なラメラ相における第1および第2のブロック鎖の層は、基板に対して平行なラメラ相と基板に対して垂直なラメラ相の界面に対して垂直に並ぶことが好ましい。あるいは、基板に対して垂直なラメラ相における第1および第2のブロック鎖の層は、基板に対して平行なラメラ相と基板に対して垂直なラメラ相の界面に対して平行に並ぶことが好ましい。
【0042】
以上のように、高分子膜表面の自由エネルギーを制御する、すなわち、高分子膜表面に疎水性、親水性および/またはその中間のエネルギー状態の領域を作ることにより、ブロックコポリマーの第1および第2のブロック鎖の層が基板に対して垂直に並んだミクロ相分離パターンと基板に対して平行に並んだミクロ相分離パターンを同時に形成することができる。
【0043】
ブロックコポリマーを上記のように相分離させた後、第1および第2のブロック鎖のうち一方を除去して他方を残すと、ライン・アンド・スペースパターンを形成することができる。また、残ったパターンをマスクとして、下地層すなわち基板自体または基板上に形成された金属層もしくは絶縁層をエッチングし、微細なライン・アンド・スペースパターンを形成することもできる。
【0044】
第1のブロック鎖の層と第2のブロック鎖の層が基板に対して平行に積層されたミクロ相分離パターンを示す領域については、エッチング耐性の異なるブロック鎖の層が基板と平行に交互に積層されることになる。エッチングにより一方のブロック鎖を除去すると、この領域では、エッチング耐性の強いブロック鎖の層が表面に現れたところでエッチングが止まる。従って、この領域には微細パターンは形成されない。一方、第1のブロック鎖の層と第2のブロック鎖の層が基板に対して垂直に並んだミクロ相分離パターンを示す領域については、エッチングにより一方のブロック鎖を除去すると、ナノ構造のパターンが形成される。
【0045】
本実施形態の方法によれば、微細パターンを形成する領域と形成しない領域のブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを同時に形成することができる。従って、少ない工程でパターンを形成することができる。また、従来の方法によると、第1または第2のブロック鎖のいずれかを除去して微細パターンを形成する工程の前に、微細パターンを形成しない領域をレジストでマスクする必要があった。しかし、本実施形態の方法では、微細パターンを形成しない領域に、ブロックコポリマーの第1のブロック鎖の層と第2のブロック鎖の層が基板に対して平行に積層されるようにミクロ相分離パターンを形成することができる。そのため、第1または第2のブロック鎖のいずれかを除去する工程の後で、この領域には基板と平行なブロック鎖の層が残る。従って、微細パターンを形成しない領域をレジストでマスクする必要がない。また、微細パターンを形成しない領域に基板と平行なブロック鎖の層を残すことで、この領域のブロックコポリマーを相分離させない従来の方法と比較して、エッチングコントラストが高くなる。相分離させずに混合状態のまま形成したブロックコポリマー層から第1または第2のブロック鎖のいずれか一方を除去した場合、ブロックコポリマー層の表面に凹凸ができてしまうからである。さらに、本実施形態の方法によるとブロックコポリマーを保護基等で修飾する必要もないため、安価且つ容易にパターンを形成することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。以下の実施例においては、エネルギー線の露光時間を変えることにより、高分子膜表面における水の接触角を85°から60°の範囲で任意に変化させることができた。水滴の接触角が大きくなることは、高分子膜表面の自由エネルギーが低くなる、すなわち疎水化されたことを意味する。一方、接触角が小さくなることは、高分子膜表面の自由エネルギーが高くなる、すなわち親水化されたことを意味する。
【0047】
(実施例1)
シリコンウエハーの表面をUV洗浄機で5分間処理した。シラノール置換架橋型ポリシラン(大阪ガスケミカル社製 オグソールSI−20)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解して1w/w%溶液を調製し、この溶液をスピンコートによりシリコンウエハー上に塗布することにより高分子膜を形成した。水銀ランプを照射し、高分子膜上に露光部および未露光部のパターンを形成した後、250℃で30分、ベーカーにより加熱した。
【0048】
次に、前記露光部および未露光部における水滴の接触角を測定し、露光部が親水性となることを確認した。露光部における水の接触角は76°であり、未露光部における水の接触角は83°であった。水の接触角は、θ/2法で測定した。重力の影響を受けないように、直径1.4mm程度の水滴を高分子膜上に落下させた後、30秒後の角度を測定した。
【0049】
別途、ブロックコポリマーの溶液を調製した。ブロックコポリマーとして、Polymer Source社から購入したポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)のブロック共重合体(PS−b−PMMA)であるP189−SMMAを用いた。
【0050】
P189−SMMAは、PSブロックとPMMAブロックの数平均分子量(Mn)がそれぞれ46900および39600であり、分散度(Mw/Mn)は1.08である。
【0051】
ブロックコポリマーのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を0.2μmのメンブレンフィルターで濾過し、それをポリシラン膜上に塗布し、ホットプレート上において110℃で90秒間ベークしてブロックコポリマー層を形成した。
【0052】
次いで、窒素雰囲気のオーブン中において180℃で10時間アニール処理することにより、ブロックコポリマーをミクロ相分離させた。それぞれのサンプル表面の500nm×500nmの領域について、形成されたミクロ相分離パターンを原子間力顕微鏡(AFM)(Nanoscope III)を用いて評価した。カンチレバーにスーパーシャープシリコンチップ[SSS−NCH−50]を使用し、タッピングモードで測定して、得られた位相像からパターンを評価した。その結果、ポリシランの露光部分では、PSブロックの層とPMMAブロックの層が基板に対して平行に交互に積層された相分離パターン(以下、基板に平行なラメラ相とも称する)を形成しており、未露光部分では、PSブロックの層とPMMAブロックの層が基板に対して垂直に交互に並んだ相分離パターン(以下、基板に垂直なラメラ相とも称する)を形成していた。
【0053】
得られたサンプルをRIE装置に入れ、パワー50W、酸素ガス圧力1.0Pa、流量50sccmの条件でエッチングすることにより、PMMAブロックが選択的にエッチングされ、PSブロックが残り、パターンが形成される。
【0054】
(実施例2)
シリコンウエハーの表面をUV洗浄機で5分間処理した。シラノール置換架橋型ポリシラン(大阪ガスケミカル社製 オグソールSI−20)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解して1%溶液を調製し、この溶液をスピンコートによりシリコンウエハー上に塗布し、110℃で90秒加熱した。その後、10および100μm角のマスク部を配置したレチクルをポリシラン膜上に配置し、水銀ランプで10秒露光して、露光部および未露光部のパターンを形成した。露光部における水の接触角は80°であり、未露光部における水の接触角は83°であった。その後、250℃で30分、ベーカーにより加熱した。
【0055】
別途、ブロックコポリマーの溶液を調製した。ブロックコポリマーとして、Polymer Source社から購入したポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)のブロック共重合体(PS−b−PMMA)であるP189−SMMAを用いた。
【0056】
P189−SMMAは、PSブロックとPMMAブロックの数平均分子量(Mn)がそれぞれ46900および39600であり、分散度(Mw/Mn)が1.08である。
【0057】
ブロックコポリマーのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を0.2μmのメンブレンフィルターで濾過してポリシラン上に塗布し、ホットプレート上において110℃で90秒間ベークしてブロックコポリマー層を形成した。
【0058】
次いで、窒素雰囲気のオーブン中において180℃で10時間アニール処理することにより、ブロックコポリマーをミクロ相分離させた。それぞれのサンプル表面の500nm×500nmの領域について、形成されたミクロ相分離パターンを原子間力顕微鏡(Nanoscope III)を用いて評価した。カンチレバーにスーパーシャープシリコンチップ[SSS−NCH−50]を使用し、タッピングモードで測定して、得られた位相像からパターンを評価した。マスクにより遮光された部分では、基板に垂直なラメラ相が観察され、露光部では基板に平行なラメラ相が観察された。
【0059】
(実施例3)
露光時間を120秒とした以外は、実施例2と同様に実験を行った。露光部における水の接触角は79°であり、未露光部における水の接触角は83°であった。その結果、マスクにより遮光された部分では、基板に垂直なラメラ相が観察され、露光部では基板に平行なラメラ相が観察された。
【0060】
(実施例4)
用いるブロックコポリマーをP2813−SMMAとした以外は、実施例3と同様に実験を行った。P2813−SMMAは、PSブロックとPMMAブロックの数平均分子量(Mn)がそれぞれ130000および133000であり、分散度(Mw/Mn)は1.1である。露光部における水の接触角は79°であり、未露光部における水の接触角は83°であった。このように実験を行うと、マスクに遮光された部分では、基板に垂直なラメラ相が観察され、露光部では基板に平行なラメラ相が観察される。
【0061】
(実施例5)
用いるブロックコポリマーをP3964−SMMAとした以外は、実施例3と同様に実験を行った。
【0062】
P3964−SMMAは、PSブロックとPMMAブロックのMnがそれぞれ21000および21000であり、Mw/Mnは1.07である。露光部における水の接触角は79°であり、未露光部における水の接触角は83°であった。その結果、マスクに遮光された部分は、垂直配向のラメラ相が観測され、露光部は平行配向のラメラ相が観察される。
【0063】
(実施例6)
水銀ランプでの露光の代わりにArFエキシマレーザーステッパーを用い、透過部と不透過部が1μmの間隔で交互かつライン状に形成されたマスクを通じて露光量500mJ/cmで露光する以外は、実施例2と同様に実験を行うと、露光部における水の接触角は76°であり、未露光部における水の接触角は83°となる。その結果、図2(a)に示すように、マスクに遮光された未露光部分22では基板に垂直なラメラ相が形成され、PSブロックの層22aとPMMAブロックの層22bとが交互に並んでいることが確認できる。一方、露光部21では基板に平行なラメラ相が形成される。
【0064】
基板に垂直なラメラ相は、隣接する基板に平行なラメラ相のエネルギー状態によって安定構造が変化する。露光部21における基板に平行なラメラ相の側面の自由エネルギーが、PSブロックの層22aの自由エネルギーとPMMAブロックの層22bの自由エネルギーの中間のエネルギーである場合は、図2(a)に示すような構造となる。露光部21における基板に平行なラメラ相の側面の自由エネルギーが、PSブロックの層22aの自由エネルギーと同等である場合は、図2(b)に示すような構造となる。露光部21における基板に平行なラメラ相の側面の自由エネルギーが、PMMAブロックの層22bの自由エネルギーと同等である場合は、図2(b)において、PSブロックの層22aとPMMAブロックの層22bが逆に並んだ構造となる。また、露光部21における基板に平行なラメラ相の側面の自由エネルギーが、PSブロックの層22aおよびPMMAブロックの層22bに影響を与えない場合は、配向が制御されず、図2(c)に示すようなミクロ相分離構造となる。
【0065】
(実施例7)
水銀ランプでの露光の代わりにKrFエキシマレーザーステッパーを用い、透過部と不透過部が1μmの間隔で交互かつライン状に形成されたマスクを通じて露光量500mJ/cmで露光する以外は、実施例2と同様に実験を行うと、露光部における水の接触角は76°であり、未露光部における水の接触角は83°となる。その結果、図2(a)に示すような相分離パターンとなる。
【0066】
上記実施形態または実施例によれば、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用して、少ない工程で、且つ安価にパターンを形成することができるパターン形成方法を提供することができる。また、エッチングコントラストの改善されたパターン形成方法を提供することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
11…基板、12…高分子膜、12a…高分子膜の第1の領域、12b…高分子膜の第2の領域、13…マスク、14…ブロックコポリマー層、14a…第1のブロック鎖の層、14b…第2のブロック鎖の層、21…露光部分、22…未露光部分、22a…PSブロックの層、22b…PMMAブロックの層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に高分子膜を形成し、
前記高分子膜に対して選択的に第1および第2の条件でエネルギー線を照射することにより、前記高分子膜表面に、表面自由エネルギーの異なる第1および第2の領域を形成し、
前記高分子膜上に、第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層を形成し、
前記ブロックコポリマーをミクロ相分離させ、前記第1および第2の領域の表面自由エネルギーに基づいて、前記第1および第2のブロック鎖を前記基板に対して垂直または平行に配向させることにより、前記第1の領域上のブロックコポリマー層と前記第2の領域上のブロックコポリマー層とで異なるミクロ相分離パターンを同時に形成する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記ミクロ相分離パターンは、前記第1および第2のブロック鎖の配向により形成される第1および第2のブロック鎖のミクロ相分離層を含むラメラ相またはシリンダー相であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記ミクロ相分離パターンは、前記第1の領域上では、前記第1および第2のブロック鎖の層が前記基板に対して垂直に交互に積層されたラメラ相であり、前記第2の領域上では、前記第1および第2のブロック鎖の層が前記基板に対して平行に交互に積層されたラメラ相であることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記第1のブロック鎖はポリスチレンからなり、前記第2のブロック鎖はポリメチルメタクリレートからなり、前記第1の領域上における水の接触角は80°より大きく90°未満であり、前記第2の領域上における水の接触角は75〜80°または90°以上であることを特徴とする、請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記第1または第2のブロック鎖のパターンを選択的に除去し、残存した前記第2または第1のブロック鎖のパターンをエッチングマスクとして用いることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記高分子は、ケイ素系材料であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記ケイ素系材料は、ポリシランであることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
基板と、
基板上に形成された高分子膜と、
第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマーの層であって、前記第1および第2のブロック鎖の配向により形成される第1および第2のブロック鎖の層が前記基板に対して垂直に交互に積層された第1のラメラ相と、前記第1および第2のブロック鎖の層が前記基板に対して平行に交互に積層された第2のラメラ相とを含むブロックコポリマー層と
を具備することを特徴とする、請求項3に記載のパターン形成方法により得られる構造体。
【請求項9】
前記第1のラメラ相における前記第1および第2のブロック鎖の層は、前記第1のラメラ相と前記第2のラメラ相の界面に対して垂直に並ぶことを特徴とする請求項8に記載の構造体。
【請求項10】
前記第1のラメラ相における前記第1および第2のブロック鎖の層は、前記第1のラメラ相と前記第2のラメラ相の界面に対して平行に並ぶことを特徴とする請求項8に記載の構造体。
【請求項11】
前記高分子は、ケイ素系材料であることを特徴とする請求項8に記載の構造体。
【請求項12】
前記ケイ素系材料は、ポリシランであることを特徴とする請求項11に記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−174984(P2012−174984A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37273(P2011−37273)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】