説明

パッチ中間転写記録媒体、及びそれを用いた偽造防止媒体

【課題】
画像をインクジェット方式で画像が滲まず、乾燥が早く印画でき、インクジェットインキの定着性がよく耐溶剤性や耐洗濯性などの耐久性に優れるパッチ中間転写記録媒体、及び偽造防止媒体を提供する。、
【解決手段】
透明基材11、ホログラム層15、反射層17及び受容層23からなる転写材10の、転写部をハーフカット処理を施してパッチ21とし、該パッチ21が支持基材31へ剥離性樹脂層33を設けた支持材30の剥離性樹脂層面へ剥離可能に積層され、受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含むことを特徴とし、また、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチ中間転写記録媒体に関し、さらに詳しくは、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用しないインクジェット方式で画像を印画したパッチを転写性よく転写でき、転写後は耐擦傷性や耐溶剤性などに優れるパッチ中間転写記録媒体、及びそれを用いた偽造防止媒体に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「エクストルージョンコーティング」は「EC」、「印字」は「印画」の略語、同意語、機能的表現、通称、又は業界用語である。また、「ホログラム」は「ホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明のパッチ中間転写記録媒体を用いて、パッチの受容層へ個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用しないインクジェット方式で画像を印画した後に、該パッチを被転写体へ転写した偽造防止媒体の主なる用途としては、社員証、会員証、学生証などのIDカード、ギフト券、入場証、通行証、サービスポイントなどの、一定の金額を払い込んだ(プリペイドという)権利や資格などを証明する媒体へ適用できる。
しかしながら、インクジェット方式で画像を印画でき、パッチを転写性よく転写でき、転写後は耐擦傷性や耐溶剤性などに優れる用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)従来、上記の用途の媒体、例えば、一定の金額を払い込んだ(プリペイドという)権利や資格などを証明する媒体が増加している。該媒体は一定の経済的価値や効果を持つため、有効期間や区間、氏名、年齢などの個別情報が改竄されて、不正に偽造、変造、不正使用することが絶えず、種々の改竄防止策が提案され、セキュリティ性の向上が図られている。一方、カード類などには所有者の個人情報を表示するが、この個人情報の漏洩を防止し、かつ、使用時における外力に対する耐久性が必要である。個人情報の表示方法として、熱転写法による印画(表示)が広く使用される様になっている。これらの熱転写方法では、各種の画像が簡便に形成されるので、印刷枚数が比較的少なくてもよい印刷物、例えば、身分証明書等のIDカードの作成等に利用される様になっている。又、顔写真等の如くカラー画像が好ましい場合には、連続した基材フイルム上に、例えば、イエロー、マゼンダ及びシアン(更に必要に応じてブラック)の着色熱転写層を面順次に繰返し多数設けた長尺熱転写フイルムを用いる熱転写方法が行なわれている。この様な熱転写フイルムは溶融転写タイプと、昇華タイプの熱転写フイルムとがあるが、いずれも、専用のインクリボンを用いて印画するので、印画されて抜けた部分があるインクリボンが排出され、該排出インクリボンの抜け部分は秘密にしたい個人情報などであり、該個人情報などが廃棄されるインクリボンから容易に知られてしまうという危険性があった。
また、インクリボンを使用せず、インクジェット方式で画像を形成する中間転写記録媒体もあるが、インクジェット方式による画像では乾燥が遅いため画像形成速度が遅くなったり、また印画が滲んだり、さらに画像形成後の乾燥も遅いので、直ちに被転写体へ転写できず、さらにまた、インクジェット方式のインキの定着性が悪く耐溶剤性や耐洗濯性などの耐久性に欠けるという問題点もあった。
【0005】
従って、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、パッチ中間転写記録媒体のパッチ部分へ、個人情報を印画できて、印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、かつ、カードなどの媒体(被転写体)へ容易に転写できるパッチ中間転写記録媒体が求められ、転写後の媒体(偽造防止媒体)においては、パッチが保護層となって、多数回の繰り返し使用などの過酷な使用条件においても、偽造防止媒体の表面を保護して耐擦傷性に優れ、かつ、インクジェット方式のインキの定着性を向上させることで、耐溶剤性や耐洗濯性などの耐久性に優れる偽造防止媒体が求められている。
【0006】
(先行技術)従来、本出願人は樹脂層を設けたシート基材と、ホログラム形成層と受容層を設けた透明シートが積層され、ホログラム形成層及び受容層を含めて透明シート部にハーフカット処理が施され、樹脂層と透明シートの間で剥離する中間転写記録媒体を開示している(例えば、特許文献1〜2参照。)。また、受像層に昇華性熱転写、溶融性熱転写、インクジェット、または電子写真により画像形成し、基材上に熱転写により転写されたカードが知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、特許文献1〜3のいずれも水溶性樹脂を主体とする受容層であり、インクジェット方式のインキの定着性が悪く、耐溶剤性や耐洗濯性などの耐久性に欠けるという欠点がある。
さらにまた、本出願人は、樹脂層を設けたシート基材と、受容層とホログラム形成層が積層されている設けた透明シートが積層され、受容層を含めて透明シート部にハーフカット処理が施され、樹脂層と透明シートの間で剥離する中間転写記録媒体の、受容層に転写画像を形成し、該画像形成された部分のみを被転写体へ再転写して画像を形成する画像形成方法が知られている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、画像は溶融転写又は昇華タイプの熱転写インクリボンを用いる熱転写方法による転写画像であって、残渣インクリボンに個人情報などの痕跡が残り、セキュリティ性に劣るという欠点がある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−274060号公報
【特許文献2】特開2004−284096号公報
【特許文献3】特開平10−244788号公報
【特許文献4】特開2002−274060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、パッチ中間転写記録媒体のパッチ部分へ、個人情報を印画できて、印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、かつ、カードなどの媒体(被転写体)へ容易に転写できるパッチ中間転写記録媒体が求められ、転写後の媒体(偽造防止媒体)においては、パッチが保護層となって、多数回の繰り返し使用などの過酷な使用条件においても、偽造防止媒体の表面を保護して耐擦傷性に優れ、かつ、インクジェット方式のインキの定着性を向上させることで、耐溶剤性や耐洗濯性などの耐久性に優れる偽造防止媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わるパッチ中間転写記録媒体は、(1)透明基材、該透明基材の一方の面にホログラム層、反射層及び受容層からなる転写材と、(2)支持基材へ剥離性樹脂層を設けた支持材とからなり、前記転写材の転写部をハーフカット処理を施してパッチとし、該パッチが前記支持材の剥離性樹脂層面へ剥離可能に積層されているパッチ中間転写記録媒体において、前記受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ前記受容層がインクジェット方式で印画することができるように、したものである。
請求項2の発明に係わるパッチ中間転写記録媒体は、上記受容層のカチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であるように、したものである。
請求項3の発明に係わる偽造防止媒体は、請求項1〜2のいずれかに記載のパッチ中間転写記録媒体のパッチが被転写体へ転写された偽造防止媒体において、前記パッチの受容層にインクジェット方式で印画された情報印字層103を有するように、したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜2の本発明によれば、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、パッチ中間転写記録媒体のパッチ部分へ、個人情報をインクジェット方式で印画できて、印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、かつ、インキの定着性に優れ、カードなどの媒体(被転写体)へ容易に転写できるパッチ中間転写記録媒体が提供される。
請求項3の本発明によれば、転写後の媒体(偽造防止媒体)であって、パッチが保護層となって、多数回の繰り返し使用などの過酷な使用条件においても、偽造防止媒体の表面を保護して耐擦傷性に優れ、かつ、インクジェット方式のインキの定着性が向上することで、耐溶剤性や耐洗濯性などの耐久性に優れるパッチ中間転写記録媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示すパッチ中間転写記録媒体の断面図である。
図2は、本発明のパッチ中間転写記録媒体を用いて転写した本発明の1実施例を示す偽造防止媒体の断面図である。
【0012】
(パッチ中間転写記録媒体)本発明のパッチ中間転写記録媒体20は、図1に示すように、パッチ21が支持材30の剥離性樹脂層33面へ剥離可能に積層されている。パッチ21は転写材10の転写部をハーフカット処理して、パッチ状としたものである。転写材10は(1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面にホログラム層15、反射層17及び受容層23からなり、支持材30は(2)支持基材31へ剥離性樹脂層33を設けてある。パッチ21は透明基材11、ホログラム層15及び受容層23からなっており、受容層23はカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含んでおり、インクジェット方式で印画することができる。
【0013】
(偽造防止媒体)本発明の偽造防止媒体100は、図2に示すように、本発明の上記パッチ中間転写記録媒体20を用いて、転写材30の転写部をハーフカット処理してパッチ状となっているパッチ21を、支持材30から剥離させて、被転写体101へ転写してある。パッチ21は透明基材11、ホログラム層15及び受容層23からなっており、受容層23にはインクジェット方式で画像が滲まず、乾燥性よく印画されている。
【0014】
パッチ中間転写記録媒体20は、次のような効果を奏することができる。(1)パッチ中間転写記録媒体20からパッチ21を被転写体101へ転写する際には、パッチ21はハーフカット処理されているので、容易に支持材30から剥離して、転写性よく転写することができる。(2)受容層23はカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラーを含んでおり、インクジェット方式で個人情報などの画像を、滲まず、乾燥性よく印画することができる。(3)しかも、受容層23は分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体をも含んでおり、インクジェット方式のインキの定着性がよく、耐溶剤性や耐洗濯性などの耐久性に優れる。
【0015】
また、偽造防止媒体100は、次のような効果を奏することができる。(1)偽造防止媒体100にはパッチ21(透明基材11、ホログラム層15及び受容層23からなる)が転写され、偽造防止媒体100の最表面はパッチ21の透明基材11となり、該透明基材11は一旦フィルム用に高強度に成膜されたものであので、多数回の繰り返し使用でも、耐擦傷性や耐溶剤性などの耐久性に優れ、従来の塗布された樹脂による保護層に比較して、媒体の表面を強固に保護することができる。該透明基材11としては、2軸延伸されたフィルムが好ましい。(2)受容層23に印画された情報印字層103はインクジェット方式での印画であるので、該画像は溶融転写又は昇華タイプの熱転写インクリボンを用いる熱転写方法による転写画像と異なって、インクリボンを使用しないので、個人情報などの痕跡が残らず、セキュリティ性に優れる。
【0016】
(転写材)転写材10は透明基材11、該透明基材11の一方の面にホログラム層15、反射層17及び受容層23からなっている。
【0017】
(透明基材)透明基材11/ホログラム層15/反射層17/受容層23からなる転写材10は、ハーフカット処理で切断された部分がパッチ21となって、被転写体101へ転写され、保護層として機能する。透明基材11としては、透明性、耐候性、耐摩擦性、耐薬品性等の耐久性を有するものであれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレートなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系フィルムなどが例示できる。該透明基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。
【0018】
また、該透明基材11は、延伸又は未延伸のフィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。厚は、通常2.5〜50μm程度が適用できるが、2.5〜25μmが好適である。該透明基材11は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えてもよい。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートのフィルムが、耐熱性、機械的強度がよいため好適に使用され。
【0019】
(ホログラム層)ホログラム層15としては、電離放射線硬化樹脂を主成分とし、必要に応じてシリコーンやフィラーなどの添加物を含ませてもよい。電離放射線硬化樹脂は電離放射線硬化性樹脂の硬化物で、該電離放射線硬化性樹脂としては、好ましくは、(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂を用い、好ましくはポリエチレンワックスを含ませて、塗布し乾燥して電離放射線で硬化させて、電離放射線硬化樹脂とすればよい。
【0020】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では電離放射線硬化性樹脂組成物Mと呼称する)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂などが例示できる。具体的には、MHX405ニス(ザ・インクテック(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)、ユピマーUV・V3031(三菱化学(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)が例示できる。
【0021】
(ホログラム層の形成)ホログラム層15の形成は、上記の電離放射線硬化性樹脂、必要に応じて、シリコーンやフィラー、光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、ホログラムを賦型後に電離放射線で反応(硬化)させればよい。ホログラム層15の厚さは、通常、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μmである。
【0022】
(ホログラム)本発明の転写材10では、ホログラム層15の受容層23側の表面に、光回折性の微細な凹凸を形成してホログラム層15とし、微細な凹凸面に反射層17を設けることで、ホログラムの持つ高意匠性及び偽造防止性を付与することができる。
【0023】
(ホログラム)次に、ホログラム層15の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定の微細な凹凸(レリーフ構造)を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
【0024】
ホログラム層15面へ、レリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記樹脂層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。
【0025】
また、ホログラム層15に形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。ホログラム層15は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、紫外線や電子線などの電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(微細な凹凸=レリーフ構造=ホログラム)となる。
【0026】
(反射層)反射層17は、所定のレリーフ構造を設けたホログラム層15面のレリーフ面へ、反射層17へ設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、ホログラム層15の反射率のより高れば、特に限定されない。該反射層17としては、真空薄膜法などによる金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層は部分的に設け、透明反射層は被転写体へ形成されている画像の面へ転写しても、画像が観察できるので好ましい。透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム層15よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したもの等が例示できる。またアルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると、透明性が出て使用できる。透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム層15のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。
【0027】
(受容層)透明反射層層17面へ、必要に応じてプライマー層を介して、受容層23を設け、該受容層23はパッチ中間転写記録媒体20の最表面となり、該受容層23にはインクジェット方式によって画像が印画される。受容層23はインクジェット用受容層組成物を塗布したもので、該インクジェット用受容層組成物は、少なくともカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー、及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含ませる。
【0028】
カチオン性ウレタン系樹脂としてはカチオン性基を有するポリカーボネート系ポリウレタン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系ポリウレタン、ポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリブチレンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタン、ポリノナンジオールアジペート/ポリオクタンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタンなどのウレタン系樹脂で、好ましくは自己乳化性又は水性で、カチオン性親水基を有するポリカーボネート系又はポリエステル系のポリオールと脂肪族イソシアネートの反応物が好ましい。カチオン性基としては1〜3級アミン或いは4級アンモニウム塩基などが例示できる。
【0029】
(カチオン性フィックス剤)カチオン性フィックス剤としては、ポリアミン誘導体や第4級アンモニウム塩などの染料固着剤が例示できる。
【0030】
(フィラー)フィラーとしては、箔切れ性を良くし、透明性を害さない程度に含有させ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等で、マイクロシリカが好ましい。
【0031】
(アジリジニン誘導体)アジリジル誘導体としては分子内に2個以上のアジリジニル基を有する化合物を用い、好ましくは、
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又はR2−OCH2−で、R25は水素原子、塩素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアルコール基、アクリル酸アルキル基、アルキルフェノール基で、同一でも異なってもよい。)
【化2】

(式中、R610は水素原子、塩素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアルコール基、アクリル酸アルキル基、アルキルフェノール基で、同一でも異なってもよい。nは1〜3の整数)
一般式1におけるR35のうち2個以上が一般式2の構造を有する化合物、即ち、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジル誘導体である。
【0032】
分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体、例えば、トリメチロールプロパン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、トリメチロールプロパン−トリス−(α−エチル−α−アジリジニルアセテート)、トリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールブタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、モノエトキシトリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(2−メチル-1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、テトラメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、ジトリメチロールプロパン−ヘキサキス−(β−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ペンタキス−(β−(2−メチルアジリジニルプロピオナート)等が挙げられる。
【0033】
好ましくは、トリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールブタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(2−メチル-1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(2,2−ジメチル−1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(α−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、トリメチロールプロパン−トリス−(β−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2−プロピル−1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2,2−ジメチル−1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2,2−ジエチル−1−アジリジニルプロピオナート)テトラメチロールメタン−テトラキス−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−β−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ヘキサキス−(β−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ペンタキス−(β−(2−メチルアジリジニルプロピオナート)が好ましく、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−(β−アジリジニルプロピオナート)である。
【0034】
分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体について市販されているものとしては、例えば、相互薬工社製のTAZM(トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオナート)、TAZO(テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)))日本触媒製のケミタイトPZ−33(トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオナート))等が挙げられる。
3個のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体が、硬化する反応性の速さ、硬化後に網目状となるので耐久性の高さ点で、特に好ましい。
【0035】
カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とマイクロシリカと分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体との割合が質量基準でカチオン性ウレタン系樹脂:カチオン性フィックス剤:マイクロシリカ:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:5〜20:1〜10:1〜15である。
カチオン性フィックス剤の含有割合が上記範囲未満では定着性が悪く、上記範囲を越えると洗濯中に溶出して堅牢性を低下させる。
マイクロシリカの含有割合が上記範囲未満ではインキ定着性が悪く、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0036】
アジリジン誘導体の添加量は、本発明の効果を阻害しない量であれば特に制限されないが、通常カチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15が好ましく、さらに好ましくは100:3〜10である。アジリジン誘導体は水溶性の硬化剤として機能するので、アジリジン誘導体の含有割合が上記範囲未満では、硬化が不足するために耐水性や耐アルコール性などの耐溶剤性などの耐久性が充分ではなく、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0037】
受容層23の形成は、上記の材料を溶媒へ分散又は溶解して、必要に応じて添加剤を添加し、媒体101の少なくとも一方の面へ、必要に応じてコロナ処理やプライマ層を設けて、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥すればよい。そのの厚さとしては、通常は1μm〜15μm程度、好ましくは2μm〜10μm程度である。
【0038】
(他の層)層間及び/又は層表面へ必要に応じて設ける層としては、プライマ層、印刷層、帯電防止層、背面滑性層などがあり、それぞれ公知のものでよい。特に、印刷層としては、着色インキや蛍光インキなどを用いて、公知のスクリーン印刷やグラビア印刷法で印刷すればよい。
【0039】
(プライマ層)必要に応じて、接着力を向上させるために、プライマ層16を設けることが好ましい。該プライマ層16としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレンと酢酸ビニル或いはアクリル酸などとの共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ゴム系化合物などを使用することができ、好ましくは、酸素若しくは窒素を有するもの、若しくはイソシアネート化合物を反応性のもの、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ゴム系樹脂等の従来の接着剤として既知のものである。該プライマ層は膜厚が薄いので必ずしも含有しなくてもよいが、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。
【0040】
(支持材)支持材30は支持基材31へ剥離性樹脂層33が設けられている。
【0041】
(支持基材)支持基材31としては、特に限定されず、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、コート紙、合成樹脂またはエマルジョン含浸紙、あるいは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレートなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系フィルムなどのフィルムが例示できる。上記の支持基材31上に後述さる剥離性樹脂層33を設ける際に、接着性を向上させるために、支持基材31表面をコロナ放電処理したり、プライマー層を設けてもよい。
【0042】
支持材30は10μm〜100μmの厚みのものが好ましく、シート基材が薄すぎると得られるパッチ中間転写記録媒体20のいわゆるコシがなくなり、熱転写プリンターで搬送できなかったり、パッチ中間転写記録媒体20にカールやシワが発生したりする。一方、支持材30が厚すぎると、得られるパッチ中間転写記録媒体20が厚くなりすぎ、熱転写プリンタで搬送駆動させる力が大きくなりすぎて、熱転写プリンタに故障が生じたり、正常に搬送できなかったりする。
【0043】
(剥離性樹脂層)剥離性樹脂層33としては、粘着剤層や簡易接着層やエクストルージョンコーティング(EC)層により形成する。
【0044】
粘着剤層は、従来公知の溶剤系及び水系のいずれの粘着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系樹脂などが挙げられる。粘着剤層の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、ロールコート、コンマコート等の方法で、塗布し乾燥して粘着剤層を形成する。また、粘着剤層の粘着力は、透明基材11と粘着剤層との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、5〜1,000g程度の範囲にすることが望ましい。以上の如き粘着剤の種類や、塗工量は、前記支持基材31上に粘着剤層を形成する際に、その剥離強度が前記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。また、支持基材31上に粘着剤層を設け、透明基材11と粘着剤層を積層するには、粘着剤層のドライラミネーションやホットメルトラミネーション等の方法が採用できる。
【0045】
簡易接着層は、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)やポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂のラテックスや、ゴム系レジン、ワックス類及びそれらの混合物を用いて、支持基材31上に従来公知の塗工方式で形成し、透明基材11と簡易接着層とを加熱しながらドライラミネーションして積層すればよい。そして、透明基材11と支持基材31を剥がした後の簡易接着層は、粘着性が低下し、再度、透明基材11と支持基材31を貼り合わせることはできない。このような簡易接着層を用いる場合、支持基材31と簡易接着層との間にプライマー層を設けてもよい。
【0046】
また、剥離性樹脂層33として、支持基材31上にEC層で設けてもよい。EC層を形成する熱可塑性樹脂は透明基材11には本質的に接着せず、EC加工特性のある樹脂であれば特に限定されないが、透明基材11に一般的に利用されるPETフィルムに対して、本質的な接着性を有さず加工性も優れる、ポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。具体的には、LDPE、MDPE、HDPE、PP樹脂等を使用できる。これらの樹脂をEC加工する際の冷却ロールをマットロールを使用して、EC層表面にマット面が転写されて凹凸形状を賦形して不透明としたり、ポリオレフィン系樹脂に炭酸カルシウム、酸化チタン等の白色顔料を練り混んで、不透明としたり、してもよい。また、該EC層は単層でも、複数層でもよい。透明基材11からの剥離強度は、EC加工時の加工温度、樹脂種によって調整することができる。このように、支持基材31上にEC層をEC加工と同時に、いわゆるECラミネーションで支持基材31と透明基材11をEC層を介して積層させればよい。
【0047】
(耐熱滑性層)パッチ中間転写記録媒体20では、必要に応じて、支持基材31の剥離性樹脂層33面と反対面に耐熱滑性層を設けてもよい。パッチ中間転写記録媒体20を用いて被転写体101へ再転写はサーマルヘッドやヒートロール等の熱転写プリンタが用いるので、その熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層を設けてもよい。耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0048】
また、耐熱滑性層に添加、又は上塗りする滑り性付与剤としては、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及び燐酸エステル系化合物からなる層であり、更に充填剤を添加することがより好ましい。耐熱滑性層は、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、支持基材31の背面に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等で塗布し乾燥して形成すればよい。
【0049】
(パッチ)パッチ中間転写記録媒体20は支持材30面にパッチ21が剥離可能に積層されている。パッチ21は透明基材11/ホログラム層15/反射層17/受容層23からなる転写材10の転写部をハーフカット処理してパッチ状であり、支持基材31/剥離性樹脂層33からなる支持材30面に剥離可能に積層されている。
【0050】
(ハーフカット)ハーフカット処理法としては、カッター刃を取り付けた上型と台座の間に、カット前の積層状態のパッチ中間転写記録媒体20を挿入して、上型を上下動させる方法や、シリンダータイプのロータリーカッター方法、レーザー加工手段により熱処理加工方法等、ハーフカットできる方法であれば特に制限はない。パッチ21部分とそれ以外部分を除去しなくてもよいが、図1に示すパッチ中間転写記録媒体20の断面のように、ハーフカットしてパッチ21部分のみを残して、それ以外部分を予め剥離し除去しておく(当業者はカス取りという)のが好ましい。被転写体へパッチ21を転写する際に、ハーフカット処理された部分で透明基材11部が切断されることがなく、確実に転写することができる。
【0051】
なお、ハーフカットは、一般的には、パッチ21の回り一周分単位で連続的にカットを施す、四隅等の部分的にアンカット(全くカットがない)部分、ミシン目部分を設けたりして、熱転写プリンター搬送中等取扱で、ハーフカットの部分が剥離するトラブルを防ぐことができる。なお、支持材30の少なくとも1部はカットされず連続状にしておく。ハーフカット処理で切断の深さが深過ぎると、支持基材31まで切断されて、プリンター搬送中にハーフカット加工部で切断され、搬送トラブルが発生しやすくなる。
【0052】
パッチ21の形状としては、特に限定されないが、例えば矩形、楕円形、丸形、ドーナッツ形などが例示できる。ハーフカット処理されたパッチ21部分が被転写体の転写される全面の大きさよりも小さくてもよく、また、パッチ21部分が、被転写体に対して、部分的に抜けている部分があってもよく、さらに、パッチ中間転写記録媒体20の全幅が、被転写体の転写される面の幅よりも広くてもよい。
【0053】
(パッチ中間転写記録媒体)本発明のパッチ中間転写記録媒体20は、支持基材31/剥離性樹脂層33からなる支持材30面に、透明基材11/ホログラム層15/反射層17/受容層23からなる転写材10の転写部をハーフカット処理したパッチ21が、剥離可能に積層されている。
【0054】
(偽造防止媒体)本発明の偽造防止媒体100は、図2に示すように、本発明のパッチ中間転写記録媒体20を用いて、転写材30の転写部をハーフカット処理してパッチ状としたパッチ21を、支持材30から剥離させて、被転写体101へ転写してある。パッチ21は透明基材11、ホログラム層15及び受容層23からなる。受容層23にはインクジェット方式で情報印字層103が印画されている。
【0055】
(転写方法)被転写体への転写する転写方法としては、公知の転写法でよく、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、熱ロールによる転写、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用できる。また、パッチ21の形状に合わせて加熱し転写してもよい。
【0056】
(被転写体)被転写体101としては、特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布等いずれのものでもよく、用途によって、適宜選択すればよい。また、被転写体101の媒体はその少なくとも1部が、画像、着色、印刷、その他の加飾が施されていてもよい。
【0057】
(インクジェット)受容層23への画像としては、特に限定されないが、文字、数字、顔写真などのような画像が形成される。画像の形成法としては、インクリボンの残渣が残る熱熔融転写方式、熱昇華転写方式ではなく、インクジェット方式を用いる。インクジェット方式には熱インパクト法などがあるが特に限定されず、インクジェットインキも水性や油性インキなどがあるが特に限定されない。画像103を印画する際にも、受容層23にはカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤及びフィラーとを含むので、インクジェット方式で印画しても画像が滲まず、乾燥が早いので効率よく印画することができる。
【0058】
(画像)また、インクジェット方式で形成する画像103も、円形や星形などのスポット状、文字、数字、イラスト、写真などの任意の形状でよく、その色調も単独、複数、フルカラー用など限定されるものではない。好ましくは、オンデマンドで可変情報をインクジェット方式で印画することである。
【0059】
(定着性)従来のインクジェット方式による画像としては、身分証明書等のIDカードを作成する場合、画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。従来のインクジェット用受容層はポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を主体とするもので、耐水性は著しく悪く、また、多孔質質のフィラーを用いたり、受容層塗工液の溶媒として良溶媒と貧溶媒を用いて、乾燥中に相分離、ゲル化させて多孔質の網目構造とさせたり、していたが、画像の定着性が充分でなく、洗濯時に画像が淡くなる問題点もあった。
【0060】
これに対して、本発明のパッチ中間転写記録媒体20の受容層23は分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体をも含んでおり、、インクジェット方式によって印画された画像103であっても、高画質で定着性がよく、印画された画像は耐擦傷性、耐水性や耐アルコール性などの耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性に優れるようになる。定着性と洗濯堅牢度の両立は定かではないが、カチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー、及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含むことで、塗膜の表面が微細な凹凸状となったり、塗膜自身の凝集状態も密ではなくかなり粗状になっていたり、また、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体が他の成分を反応して、網目状や凝集状態の安定化したりするために、画像成分との密着性が向上し、特に、耐アルコール性が向上させることができる。また、画像を構成する染料などがカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体と硬化などの反応や相互に作用すると推測される。
【0061】
(画像の耐久性)本発明の偽造防止媒体100における情報印字層103は、転写材10と被転写体101との間に挟まれるが、断面は露出しており、断面からの浸水による耐水性にも優れている。例えば、本発明のパッチ中間転写記録媒体20の受容層23を有する塩化ビニル製クレジットカード(インクジェット用画像記録媒体)は、JIS X6301に準拠したカードの耐薬品浸漬性に合格し、具体的には実施例で述べる。即ち、80℃の雰囲気に240時間の暴露試験でも層間及び/又は被貼着材からの剥離のない耐熱性を有している。40℃の温水に96時間の浸漬試験でも層間及び/又は被貼着材からの剥離のない耐温水性を有している。シートクリナーを用いて20kPaで加圧しながら常温で100回の拭取り試験で著しい傷が付かない耐摩擦性を有している。低温(−40℃)、高温(80℃)及び高湿度(40℃90%RH)の条件を8時間毎に1サイクル(1日)として5サイクル(5日)の冷熱サイクル試験でも著しい変形や剥離のない耐冷熱繰り返し性を有している。
【0062】
(印画と転写)パッチ中間転写記録媒体20の受容層23へインクジェットプリンタで、画像となる情報印字層103を印画し、該情報印字層103を含むパッチ21を転写すれば、偽造防止媒体100となる。インクジェットプリンタでの印画に引き続き、同一プランタ内のインライン方式で、該情報印字層103を含むパッチ21を転写してもよく、印画と転写とを1回の走行で処理できるので、極めて効率的である。
【0063】
(耐久性) このようにして、パッチ中間転写記録媒体20を用いた偽造防止媒体100は、情報印字層103上に耐久性の高いパッチ(透明基材11が保護層となる)を形成し、過酷な使用条件においても、熱転写画像の各種耐久性に優れ、また、パッチは被転写体101へ容易に転写でき、転写された媒体においては、セキュリティ性に優れるホログラムを有し、かつ、使用時耐久性を有し、多数回の繰り返し使用でも、媒体の表面と保護する耐擦傷性や耐溶剤性などに優れる。多数回の繰り返し使用でも、媒体の表面と保護し、機械的化学的な損傷から長期間にわたって保護できるので、極めて過酷な環境で使用されるガソリンスタンドカードや工事現場カード、及び、使用期限がなかったり、長期にわたる入退室カードやポイントカード、金融機関などの多数のセキュリティ管理された部屋への入退室を繰り返す入退室カードなどにも好適に使用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0065】
(実施例1)透明基材11として厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、下記のホログラム層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが2μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた。
・<ホログラム層組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名)100部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−1602) 0.5部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 2部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5部
酢酸エチル 300部
次に、該層面へ、2光束干渉法による回折格子から2P法で複製した擬似連続絵柄としたプレス型を複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、ホログラム層15を形成した。
該ホログラム層15のレリーフ面へ、厚さ50nmの酸化チタンを真空蒸着法で形成して、透明反射層17とした。
該透明反射層17面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が0.5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた後に、該プライマ層面へ下記の受容層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が1μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、受容層23を形成して、透明基材11/剥離層13/ホログラム層15/透明反射層17/プライマ層/受容層23の層構成からなる転写材10を得た。
・<プライマ層組成物途工液>
ポリエステル樹脂 20質量部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)80質量部
・<受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1部
ケミタイトPZ−33(日本触媒製、アジリジン誘導体商品名) 3部
溶媒(水) 80部
別途、支持体31として厚さ38μmのPETフィルムを用い、該支持体31と先に製造した転写材10とを積層する。支持体31面へ下記剥離性樹脂層組成物を、乾燥後の塗布量が3μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた後に、転写材10の透明基材11面とを加圧するドライラミネーション法により積層品を得た。
・<剥離性樹脂層組成物(簡易接着層タイプ)>
アクリル系樹脂ラテックス(日本ゼオン(株)製、LX874) 30部
溶媒(水:イソプロピルアルコール=1:1) 70部
上記の積層品に対して、転写材10部分に角丸の矩形状のカッター刃を取り付けた上型と台座とのプレス方式でハーフカット処理を行い、カス取りを行って、パッチが剥離可能に積層された連続巻取状の実施例1のパッチ中間転写記録媒体20を得た。
【0066】
(実施例2)下記の受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2のパッチ中間転写記録媒体20を得た。
・<受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製、アジリジン誘導体) 5部
溶媒(水) 300部
【0067】
(実施例3)下記の受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例3のパッチ中間転写記録媒体20を得た。
・<インクジェット用受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製、アジリジン誘導体) 10部
溶媒(水) 300部
【0068】
(比較例1)下記の受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1のパッチ中間転写記録媒体20を得た。
・<インクジェット用受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
溶媒(水) 300部
【0069】
(比較例2)下記の受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例2のパッチ中間転写記録媒体20を得た。
・<インクジェット用受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製、アジリジン誘導体) 20部
溶媒(水) 300部
【0070】
(実施例4〜6、比較例3〜4)実施例1〜3及び比較例1〜2のパッチ中間転写記録媒体20の受容層23へ、600dpiのカラーインクジェットプリンターで、公知の水性インクジェット用インクを用いて、オンデマンド方式で画像103として氏名とカラー顔写真を印画した後に、被転写体101としてクレジットカード用で厚さが0.76mmの4層ポリ塩化ビニル製のシート面へ、加熱ロール方式転写装置で転写し、基材11を離型層13と共に剥離し徐去して、実施例4〜6及び比較例3〜4の偽造防止媒体100を得た。
【0071】
(評価試験)
実施例4〜6及び比較例3〜4の偽造防止媒体100について、JIS X6301に準拠して、カードの耐薬品浸漬性で評価した。5%食塩水、5%酢酸水、5%炭酸ナトリウム水溶液、10%砂糖水、50%エチレングリコール、60%エタノールの各薬品に、24時間浸漬した後に、画像を目視で観察した。実施例4〜6及び比較例3〜4の偽造防止媒体100の耐薬品浸漬性の結果を表1に示す。「◎印」は画像103にほとんど変化が認められず、「○印」は著しい変化が認められず実用上支障なく合格とし、「×印」は画像103が歪んだり、欠けたり、喪失したりして、不合格とした。なお、実施例1〜3及び比較例1〜2のパッチ中間転写記録媒体20の受容層23へのインクジェット方式での印画はいずれも問題なかった。
【0072】
【表1】

【0073】
(評価結果)表1に示すように、実施例4では5%酢酸水、10%砂糖水、50%エチレングリコール、60%エタノールで「○」で、他は「◎」であり、実施例5では60%エタノールで「○」で、他は「◎」であり、実施例6では、すべて「◎」であり、クレジットカード規格を満足していた。また、比較例3では10%砂糖水で「×」で、60%エタノールで「××」で画像が喪失しており規格を満足しなかった。比較例4ではすべて「◎」であるが、過剰性能であり、高コストである。
【0074】
さらに、実施例4〜6及び比較例3〜4の偽造防止媒体100を80℃の雰囲気に240時間の暴露試験でも層間及び/又は被貼着材からの剥離のない耐熱性を有していた。40℃の温水に96時間の浸漬試験でも層間及び/又は被貼着材からの剥離のない耐温水性を有していた。シートクリナーを用いて20kPaで加圧しながら常温で100回の拭取り試験で著しい傷が付かない耐摩擦性を有していた。低温(−40℃)、高温(80℃)及び高湿度(40℃90%RH)の条件を8時間毎に1サイクル(1日)として5サイクル(5日)の冷熱サイクル試験でも著しい変形や剥離のない耐冷熱繰り返し性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の1実施例を示すパッチ中間転写記録媒体の断面図である。
【図2】本発明のパッチ中間転写記録媒体を用いて転写した本発明の1実施例を示す偽造防止媒体の断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10:転写材
11:基材
15:ホログラム層
17:反射層
20:パッチ中間転写記録媒体
21:パッチ
23:受容層
30:支持材
31:支持基材
33:剥離性樹脂層
100:偽造防止媒体
101:被転写体
103:情報印字層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)透明基材、該透明基材の一方の面にホログラム層、反射層及び受容層からなる転写材と、(2)支持基材へ剥離性樹脂層を設けた支持材とからなり、前記転写材の転写部をハーフカット処理を施してパッチとし、該パッチが前記支持材の剥離性樹脂層面へ剥離可能に積層されているパッチ中間転写記録媒体において、前記受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ前記受容層がインクジェット方式で印画することができることを特徴とするパッチ中間転写記録媒体。
【請求項2】
上記受容層のカチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であることを特徴とする請求項1に記載のパッチ中間転写記録媒体。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のパッチ中間転写記録媒体のパッチが被転写体へ転写された偽造防止媒体において、前記パッチの受容層にインクジェット方式で印画された情報印字層を有することを特徴とする偽造防止媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−274291(P2009−274291A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126643(P2008−126643)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】