説明

パッド表面上にマイクロ溝を有する研磨パッド

本願明細書において、約5から80マイクロメートルの範囲の直径を有する複数の可溶性繊維、及び不溶性部材を含みうる研磨パッドが提供される。また、パッドが、複数のマイクロ溝を有する第1表面を含んでよく、可溶性繊維が、パッド内にマイクロ溝を形成する。マイクロ溝が、最大約150マイクロメートルの幅及び/又は深さを有してよい。さらに、研磨パッドを形成する方法、及び研磨パッドを用いて表面を研磨する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに係り、特に、マイクロ溝(micro−grooves)を含む研磨パッドに関し、研磨段階の間にそれ自身を再生することが可能である。パッドが、半導体ウエハーのような特定の基板用の化学機械研磨又は他のタイプの研磨に使用されうる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハー、ブランケット・シリコン・ウエハー及びコンピューターハードディスクのようなマイクロエレクトロニクスデバイスの製造における工程段階としてのCMP(化学機械平坦化)に適応される場合、研磨パッドが、デバイス表面の平坦化に作用する研磨剤を含む又は研磨剤を含まないスラリーと共に使用されうる。通常、オングストロームのオーダーで測定されるデバイス表面の高度な平面性を得るために、スラリー流が、デバイス表面とパッドとの間において均一に分配されるべきである。そのようなスラリーの均一な分配を促進するために、複数の溝及びくぼみ構造が、研磨パッド上に提供されうる。複数の溝が、それぞれ、0.010インチから0.050のインチ幅であり、0.010インチから0.080インチの深さであり、及び隣接する溝間の距離が0.12インチから0.25インチである個々の溝を有しうる。
【0003】
一方、溝が、上記の利点を提供しうるが、半導体ウエハー上におけるダイ(又はシングルマイクロチップ)レベルの局部的な平坦化を達成しうるものではない。これは、マイクロチップ上の相互接続のような、溝と、個々の機能との間における比較的大きな差異によるものである。例えば、次世代ULSI及びVLSIマイクロチップが、研磨パッド上の個々の溝の幅及び深さよりも何倍も小さい、0.35マイクロメートル(0.000014インチ)のオーダーの形状を有しうる。さらに、また、マイクロチップ上の機能サイズが、隣接する溝間の距離よりも数千倍小さく、機能サイズレベルでのスラリーの不均一な分配を生じうる。
【0004】
局部的な、機能−スケールでの平坦化の均一性の改善する目的として、CMPパッド製造業者が、場合によっては、パッド表面上に凹凸又は高低領域を提供してきた。これらの凹凸が、20から100マイクロメートル以上の範囲のサイズを有しうる。一方、このような凹凸が、マイクロチップ機能のそれと近いサイズであり、溝と比較し、凹凸が、研磨プロセスの間に、その形状及びサイズが変化し、及び凹凸が、ダイアモンド研磨粒子が取付けられた調整装置を用いて研磨パッド表面を磨耗することによる、連続的な再生を必要としうる。調整装置上のダイアモンド研磨粒子が、連続的に、パッド、スラリー及びデバイス表面の間の摩擦接触の結果として変形された表面の凹凸を削り取り、平坦化の一貫性を維持するように新たな凹凸を露出する。しかしながら、調整プロセスは、変形された凹凸を切断するための鋭利なダイアモンド粒子を用いるので、不安定でありうる。変形された凹凸の切断は、十分に制御されるものではなく、結果として、サイズ、形状及び凹凸の分布の変化を生じ、同様に、平坦化の均一性の変化を引き起こしうる。さらに、また、調整から生じた摩擦熱が、剛性率、硬度及び圧縮率のような特性を含むパッド表面特性を変化させることにより、平坦化の不均一性の一因となりうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、研磨パッドに関する。研磨パッドが、約5から80マイクロメートルの範囲の直径を有する複数の可溶性繊維、及び不溶性部材を含んでよい。また、パッドが、複数のマイクロ溝を有する第1表面を備え、可溶性繊維が、パッド内のマイクロ溝を形成する。マイクロ溝が、最大約150マイクロメートルの幅及び/又は深さを有してよい。
【0006】
本発明の他の態様は、研磨パッドを提供する方法に関する。研磨パッドが、第1半部及び第2半部を有するモールドと、前記第1半部内に定義された凹部とを提供するこによって形成されてよい。約5から80マイクロメートルの範囲の直径を有する複数の可溶性繊維及び不溶性部材が、モールド凹部内に提供されてよい。モールドが、閉じられ、熱及び圧力が、所定の時間の間にわたって複数の可溶性繊維及び不溶性部材に加えられてよく、この結果、パッドが形成される。また、パッドが、複数のマイクロ溝を有する第1表面を含んでよく、マイクロ溝が、最大約150マイクロメートルの幅及び/又は深さを有してよい。
【0007】
本発明のさらなる態様は、研磨パッドを用いて表面を研磨する方法に関する。この方法が、研磨のための基板を提供する段階、基板表面の少なくとも一部上に水性スラリーを提供する段階、並びに約5から80マイクロメートルの範囲の直径を有する複数の可溶性繊維、及び不溶性部材を含むパッドを提供する段階を含む。基板表面が、パッド、水性スラリー及び基板表面の相互作用によって研磨されてよい。可溶性繊維が、次に、溶解され、パッド表面上の複数のマイクロ溝を形成し、前記マイクロ溝が、最大約150マイクロメートルの幅及び/又は深さを有してよい。
【0008】
添付した図面とともに以下の本発明の実施形態の記載を参照することにより、本発明の上記及び他の特徴と利点、並びにそれらを実現する方法が、さらに明らかになり、本発明が良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ランダムなマイクロ溝を含む研磨パッドの例示的な実施形態の平面図である。
【図2】円状のマイクロ溝を含む研磨パッドの例示的な実施形態の平面図である。
【図3】らせん状のマイクロ溝を含む研磨パッドの例示的な実施形態の平面図である。
【図4】放射線状のマイクロ溝を含む研磨パッドの例示的な実施形態の平面図である。
【図5】中央に向かうマイクロ溝を含む研磨パッドの例示的な実施形態の平面図である。
【図6】交差したマイクロ溝を含む研磨パッドの例示的な実施形態の平面図である。
【図7】ひし形に交差したマイクロ溝を含む研磨パッドの例示的な実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願明細書の記載は、比較的高いマイクロ溝の表面密度を提供する研磨パッドに関する。マイクロ溝は、自己生成型であり、すなわち、これらは、上記のようなCMPに使用されたダイアモンド調整装置の機械的な表面切削動作によって生成されなくてよい。正しくは、これらが、研磨パッド表面領域における特定のサイズの可溶性部材が水性スラリーに露出されることによって形成されてよい。さらに、パッド表面領域におけるマイクロ溝及びそれらの方向性が、特定のCMPアプリケーションの要求を満たすように設計及び最適化されてよい。従って、マイクロ溝の配置が、等方性となるように設計されてよく、又は完全にランダムな方向とされてよく、又は、所定のマイクロチップ設計用の最適な平坦化のために要求された特定のパターンを提供してよい。
【0011】
マイクロ溝が、最大約150マイクロメートルの幅及び深さを有してよく、例えば、5から150マイクロメートル(0.0002インチから0.006インチ)であって、その中の全ての値及び増分値を含み、並びに約10から2000マイクロメートル(0.004インチから0.08インチ)の範囲の隣接するマイクロ溝間の平均距離を有してよく、その中の全ての値及び増分値を含む。溝間の平均距離
【数1】

は、例えば図1から7に示されるような2つの隣接する溝間の平均距離を参照する。従って、マイクロ溝が、平方ミリメートルあたり最大600個のマイクロ溝を有する比較的高い表面密度を示してよく、これは平方ミリメートルあたり1から600個のマイクロ溝を有する範囲における全ての値及び増分値を含む。
【0012】
マイクロ溝が、いくつかの配置に配置されてよい。例示的な設計が、図1から7に図示されるが、これらの設計は、本願明細書において意図された設計を制限するものではない。例えば、図1は、例示的な研磨パッド10の実施形態を図示し、ここで、マイクロ溝12が、ランダム状に互いに交差する。図2は、例示的な研磨パッド20の実施形態を図示し、ここで、マイクロ溝22が、円状、同心円状に配置される。図3は、研磨パッド30上にらせん状に配置されたマイクロ溝32の実施形態を図示する。図4は、研磨パッド40上に放射線状に配置されたマイクロ溝42の実施形態を図示する。図5は、研磨パッド50上に中央に向かう状態に配置されたマイクロ溝52の実施形態を図示し、ここで、溝が、パッドの中央からその外周に広がっている。図6は、研磨パッド60の実施形態を図示し、ここで、マイクロ溝62が、直角に交差する状態で配置されており、ラインが実質的に、垂直状に交差する。図7は、研磨パッド70上で交差した状態で配置されたマイクロ溝72の実施形態を図示し、ここで、ラインが、ひし形、又は非−垂直状に交差する。従って、当業者は、様々なデバイスの均一且つ効果的な平坦化のために使用されうるマイクロ溝の可能性のある複数の配置を容易に把握しうることが理解されてよい。
【0013】
さらに、上記のように、本発明におけるマイクロ溝は、平坦化の進行の間において自己生成するものであってよい。このような自己生成が、他の不溶性マトリックス部材B内に可溶性部材Aを結合することにより、パッド構造内に提供されてよく、可溶性部材が、上記に記述され及び図1から7に図示されるそれらのような表面構造を示す3次元構造を有してよい。換言すると、表面からパッドの厚さの少なくとも一部まで、可溶性繊維が配置されてよく、いずれの周囲のもの及び他の不溶性パッドマトリックス部材(例えば、不溶性ポリマー樹脂若しくは不溶性繊維又はこれら2つの混合物)に対して、スラリー内に連続的に溶解され、新たに露出されたパッド表面におけるマイクロ溝パターンの選択的な再生を提供するように繊維が配置される。さらに、可溶性繊維が、パッドの厚さ全体をとおして配置されてもよい。当然のことながら、パッド内において溝パターンが、所望の深さに変化するように、特定の再生溝パターンを生じさせる可溶性繊維が、構成されて良い。従って、研磨サイクルにおける任意の時点で、例えば図1から7に示されるような表面上のパターンが、現われてよい。
【0014】
可溶性部材の原料が、様々な不織布繊維状及び布構造だけでなく、様々な織物及び編物繊維状布構造を含んでよい。可溶性部材の他の原料が、様々な押出に成形された及び型にはめて作られた可溶性ポリマー構造を含んでよい。さらなる、可溶性部材の原料が、蒸着生成物を含んでよく、物理及び/又は化学蒸着、エッチング又はナノ粒子凝集技術が、可溶性部材を作り出すために使用される。
【0015】
可溶性部材が、水溶性物質を含んでよい。例えば、可溶性部材が、水に完全に溶解する又は部分的に溶解する部材を含んでよい。例えば、可溶性部材が、水に100%溶解する、又は50から100%溶解するものでありこの中の全ての値及び増分値を含むものであってよい。さらに、溶解度が、温度への考慮に基づいて選択されてよいと考えられる。例えば、スラリーの温度に従って変化しうるように溶解度が選択されてよい。水溶性物質の例には、制限するものではないが、ポリビニルアルコール(アルコール分解度の変化を伴う、例えば、75から100%ヒドロキシル官能基)を含んでよい。ポリマー鎖上におけるヒドロキシル官能基(−OH)度の変化が、異なる温度において水に溶解しうる部材を可能にすると理解されてよく、例えば、比較的高濃度の−OH官能基が、溶解のために比較的高い温度の水を必要とする。他の水溶性物質が、ポリ(ビニルアルコール)−コ−ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸、マレイン酸、多糖、シクロデキストリン、コポリマー及び上記物質の誘導体だけでなく、様々な水溶性無機塩類、ヒドロゲル、ゴム及び樹脂を含んでよい。
【0016】
例示的な実施形態において、可溶性部材Aが、図1に図示された溝パターンをその後に提供しうるランダムに配向した水溶性ポリビニルアルコール繊維を含む、3次元、ニードルパンチ不織布から形成されてよい。不織布が、商用のモールディングデバイスのモールディング板の凹部領域の内部に配置されてよい。このような従来のモールディングデバイスが、凹部領域を有する底板と、圧力下において底板の最上部に取付けられた頂板と含んでよい。頂板と底板の両方が、両方の板の表面にわたって温度を調節する多分割(multi−zone)加熱素子に取付けられてよい。さらに、板が接触して一緒になる速度、及びこれらが共に接近し留まる間の時間(すなわち、モールド密閉又は滞留時間(mold close or dwell time))が調節されてよい。板の動作及び圧縮が、電気的、水圧又は空気圧手段によって促進されてよい。
【0017】
ポリウレタンプレポリマー及び硬化剤の混合物であって、その中に不溶性マトリックス部材Bを提供するような、高分子液体材料が、その後、不織布、すなわち部材A上の底板の凹部領域の内部に分配されてよい。従って、本願明細書における不溶性部材が、研磨スラリー内における他の不溶性物であるいずれの材料を意味すると理解されてよい。布上の混合物の分配が、一定の方法で完了されてよい。一旦混合物が、布上に分配されると、底板における凹部領域内の所定の空間を残したまま、モールディングデバイスの板が共に接近し、所定のモールド密閉時間の間、特定の温度及び圧力下において、布及び混合物が、囲まれる。板間における圧力下において、ポリウレタンプレポリマー及び硬化剤混合物が、不織布のすき間の少なくとも一部を満たしてよく、その後、化学反応によって固体に硬化される。結果として、不織布の少なくとも一部又は全体が、硬化プレポリマー内に密閉されてよい。
【0018】
研磨パッドを提供するように定められた温度プロファイルが、100°Fから350°Fの範囲でよく、この中の全ての値及び増分値を含む。研磨パッドを提供するように定められた圧力プロファイルが、平方インチあたり20lbsから250lbsの範囲でよく、この中の全ての値及び増分値を含む。“モールド密閉”又は“滞留時間”が、1から30分にわたって変化してよく、この中の全ての値及び増分値を含み、ポリウレタン及び硬化剤のタイプによって決定される。硬化ポリウレタン−密閉−不織布パッドが、結果として、アニールされてよく、所望の分子モルフォロジーを与える。
【0019】
硬化ポリウレタン−密閉−不織布パッドが、次に、デスキニング(de−skinning)操作にさらされてよく、これによって、千分の2から千分の10インチの間で変化する薄層であって、この中の全ての値及び増分値を含む薄層が、布の少なくとも一部を露出するようにパッドの一表面から取り除かれてよい。デスキニング操作が、1つ以上のパッド表面上で発生してよい。接着剤層が、パッド側面に積層されてよい。接着剤層が、両面接着剤でよく、パッドの非−研磨側面に接着してよい。研磨の前に、パッドが、取付けられた両面接着剤を用いてツール表面に接着されてよい。
【0020】
研磨プロセスの間、上記のように、パッドの表面層が、研磨剤を含有した水を含む水性スラリーの連続的な流れに露出され、調整装置の連続的な切削動作にさらされてよい。パッド表面上の可溶性繊維が、水性スラリー内に溶解され、スラリー流及び調整によって取り除かれてよい。従って、溶解された繊維が、マイクロ溝の形状の縦のくぼみを残す。可溶性繊維が、密閉ポリマー部材Bによってパッド内の適所に固定されているため、可溶性繊維の溶解の結果として生成されたマイクロ溝が、同じ位置に備えられてよい。さらに、調整が続くにつれてパッドの最上部表面がすり減り、不織布の新たなランダム配置が、水性スラリーに露出されてよく、この結果、新たな配置のマイクロ溝の生成が続く。
【0021】
一方、ポリマー密閉部材Bが、研磨パッドのバルク特性に貢献し、水溶性不織布部材Aが、パッド表面上のマイクロ溝の配置の自己生成に貢献しうる。従って、異なる研磨アプリケーションに対するパッドの多様性をもたらす、ある程度の設計の融通性が存在しうる。従って、様々な因子を変えることにより研磨パッドの特性を制御しうる。例えば、不織布内における可溶性繊維のサイズ及び直径を、変化させてよく、可溶性繊維の直径が、5から80マイクロメートルの範囲でよく、この中の全ての値及び増分値を含む。上記に示唆したように、水溶性繊維のタイプが、スラリーの特定の化学組成に対する溶解速度に基づいて選択されてよい。
【0022】
界面活性剤、触媒、pHバッファー等のような化学物質が、繊維に組み込まれ、その後、研磨段階の間における繊維の溶解において、スラリー内に放出されうる。従って、このような物質が、研磨プロセスに役立つように使用されてよい。当然のことながら、可溶性部材Aの不溶性部材Bに対する体積又は重量比が、10:90から90:10の間で変化してよく、この中のいずれの値を含み、パッド表面上に形成される所望のマイクロ溝の表面密度により調節されてよい。例えば、可溶性部材の重量パーセントが、約10から90%を示し、不溶性部材の重量パーセントが、約90から10%を示してよく、この中の全ての値及び増分値を含む。さらに、不織布部材が、研磨パッドの厚さの少なくとも一部または全体に広がるように、パッド内における不織布の厚さ及び深さが、変化されてよい。
【0023】
上記のように、不織布部材Aが、特に、水溶性及び不水溶性繊維を含んでよい。例示的な水溶性繊維材料が、制限されるものではないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリル酸、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、レーヨン(再生セルロース)及び様々な天然繊維(例えば、綿、絹)を含んでよい。パッド表面上におけるこのような繊維の存在が、半導体デバイスのような、研磨デバイスにおけるスクラッチングの欠陥を減少することが示されている。
【0024】
さらに他の実施形態において、不織布部材A内における水溶性及び不水溶性繊維の混合物が、水溶性繊維よりも低い融点を有する繊維の群から選択された不水溶性繊維を含んでよい。従って、水溶性繊維が、融点Tmを有し、不溶性が、融点Tmを有してよく、ここで、Tm<Tmである。また、このような水溶性繊維が、制限されるものではないが、個々の繊維内に、比較的低融点及び高融点部材から構成される複合ポリエステル及びポリオレフィン繊維を含む(すなわち、一方の繊維部材が、他方の部材よりも低い融点を有する)。従って、複合繊維が、第1の融点Tcを有する第1部材と第2の融点Tcを有する第2部材を含んでよく、ここで、Tc<Tcである。さらに、このような繊維が、比較的低融点部材のみを含むバインダー繊維を含んでよい。
【0025】
上記の実施形態において、ポリマー部材(バインダーとしての)が、パッドを形成するために必要でなくてもよい。むしろ、水溶性繊維と不溶性部材を構成する不水溶性繊維との混合物から構成される不織布が、熱及び低融点繊維を溶解する間に布を圧迫しうる圧力にさらされてよい。布内のすき間を満たしうる溶解された繊維が、その後、冷却硬化し、研磨パッド内に布と共に結合されてよい。
【0026】
上記に示唆するような他の実施形態が、パッド表面上において円状、らせん状、中央に向かう状態、直角又はひし形状に交差したパターンを有するマイクロ溝を形成するように設計された不織布又は織物を使用してよい。例えば、平織物、すなわち、一方が上で他方が下の(one−up−one down)不織布が、水溶性繊維で作られてよく、直角、交差パターンを有するマイクロ溝構造を生じさせてよい。
【0027】
マイクロ溝に加え、複数のマクロ溝が、パッド表面内に提供されてよい。先に記述したように、マクロ溝が、0.010インチから0.050インチの幅であり、この中の全ての値及び増分値を含み、0.010インチから0.080インチの深さであり、この中の全ての値及び増分値を含み、及び0.12インチから0.25インチの隣接する溝間の距離であり、この中の全ての値及び増分値を含む個々の溝を有してよい。このような溝が、効果的なスラリー流、熱放散及び破片除去を改善する。従って、マクロ溝の存在及び数又は設計が、所定のアプリケーション、スラリーのタイプ及び研磨される基板の特性によって決定されてよい。
【0028】
従って、本願明細書に記載された、上記の追加的な特徴の一つ又はそのいずれかの組み合わせを備えた、自己形成マイクロ溝が、研磨された基盤の改善された平坦化を提供しうると理解されることが出来る。マイクロ溝が、スラリー及び研磨された基板内の研磨剤粒子間における、緊密かつ均一な接触のための比較的細かな流通経路の相互接続網を提供し、局部的な熱上昇を減らし、研磨破片及び副生成物を除去しうる。さらに、マイクロ溝の存在が、スラリー使用量を改善しうる。従来の研磨パッドでは、パッド表面及びマクロ溝をスライドするにつれて、高いパーセンテージのスラリーが、研磨基板と相互作用することなく、失われうる。本願明細書にてここで使用されたマイクロ溝が、従って、保持力を増加させ、微細にスラリーを分配し、それ故に、研磨された基板との接触を最大化し、一方、比較的スラリーの消費削減及びコスト削減を可能にする。本発明のパッドを使用することにより、スラリー使用量の20から40%の削減が達成されることが期待されうる。
【0029】
さらに、マクロ溝が存在しない又は減少することにより、本願明細書に記載した研磨パッドの耐用年数が、マクロ溝のみを含む従来のパッドのそれよりも長くなりうる。また、マクロ溝が存在しない又は減少することにより、研磨の間に現われた研磨表面が増加し、従って、新たな表面を露出させるための調整の必要性が減少されうる。調整が減少することにより、研磨パッドの磨耗が減少し、従って、パッドの耐用年数が引き伸ばされうる。
【0030】
本発明のいくつかの方法及び実施形態の先の記載が、説明目的のために示された。これは、本発明を網羅的なものにする又は公開されたまさにその段階及び/又は構造に本発明を制限することを目的とするものではなく、当然、上記教示を考慮し、多くの修正及び変更が可能である。本発明の範囲がここに添付した特許請求の範囲によって定義されることを意味する。
【符号の説明】
【0031】
10、20、30、40、50、60、70 研磨パッド
12、22、32、42、52、62、72 マイクロ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5から80マイクロメートルの範囲の直径を有する複数の可溶性繊維、及び
不溶性部材、を含む研磨パッドであって、
前記パッドが、複数のマイクロ溝を有する第1表面を含み、
前記可溶性繊維が、前記パッド内に、最大約150マイクロメートルの範囲の幅及び/又は深さを有する前記マイクロ溝を形成する研磨パッド。
【請求項2】
前記溝間に存在する平均距離をさらに有し、
前記平均距離が、10から2000マイクロメートルの範囲である請求項1の研磨パッド。
【請求項3】
前記不溶性部材が、ポリマー部材を含む請求項1の研磨パッド。
【請求項4】
前記可溶性繊維の重量パーセントが、約10から90%であり、
前記不溶性部材の重量パーセントが、約90から10%である請求項1の研磨パッド。
【請求項5】
前記不溶性部材が、不溶性繊維を含む請求項1の研磨パッド。
【請求項6】
前記可溶性繊維が、第1融点Tmを有し、
前記不溶性繊維が、第2融点Tmを有し、
Tm<Tmである請求項5の研磨パッド。
【請求項7】
前記不溶性繊維が、バインダー繊維である請求項5の研磨パッド。
【請求項8】
前記不溶性繊維が、第1融点Tcを有する第1部材、及び第2融点Tcを有する第2部材から構成された複合繊維であり、Tc<Tcである請求項5の研磨パッド。
【請求項9】
前記パッドが、第2表面と前記第2表面上に存在する接着剤とをさらに含む請求項1の研磨パッド。
【請求項10】
前記可溶性繊維内に組み込まれた化学物質をさらに含み、
前記化学物質が、界面活性剤、触媒及びpHバッファーから構成された群から選択される請求項1の研磨パッド。
【請求項11】
前記パッドが、厚さを有し、前記可溶性繊維が、前記厚さの少なくとも一部に広がる請求項1の研磨パッド。
【請求項12】
前記不溶性部材が、不溶性ポリマー樹脂及び不溶性繊維を含む請求項1の研磨パッド。
【請求項13】
前記パッド内の前記マイクロ溝が、5から150マイクロメートルの範囲の幅及び/又は深さを有する請求項1の研磨パッド。
【請求項14】
研磨パッドを提供する方法であって、
第1半部及び第2半部を有するモールド、並びに前記第1半部内に定義された凹部を提供する段階;
約5から80マイクロメートルの範囲の直径を有する複数の可溶性繊維及び前記凹部内に不溶性部材を提供する段階;
前記モールドを閉じ、所定の時間にわたって、前記複数の可溶性繊維及び前記不溶性部材に熱及び圧力を与える段階;及び
パッドを形成する段階を含み、
前記パッドが、複数のマイクロ溝を有する第1表面を含み、前記マイクロ溝が、最大約150マイクロメートルの幅及び/又は深さを有する研磨パッドを提供する方法。
【請求項15】
前記不溶性部材が、プレポリマー及び硬化剤の混合物を含み、前記布上に前記混合物を分散させる請求項14の方法。
【請求項16】
前記不溶性部材が、不溶性繊維を含む請求項14の方法。
【請求項17】
前記可溶性繊維が、第1融点Tmを有し、
前記不溶性繊維が、第2融点Tmを有し、
Tm>Tmである請求項16の方法。
【請求項18】
前記不溶性繊維が、バインダー繊維である請求項16の方法。
【請求項19】
前記不溶性繊維が、第1融点Tcを有する第1部材、及び第2融点Tcを有する第2部材から構成された複合繊維であり、Tc<Tcである請求項16の方法。
【請求項20】
前記パッドをアニーリングする段階をさらに含む請求項14の方法。
【請求項21】
千分の2から千分の20インチの範囲の層を、前記パッド表面の少なくとも一部から取り除く段階をさらに含む請求項14の方法。
【請求項22】
前記パッド表面の一部に接着剤を積層させる段階をさらに含む請求項14の方法。
【請求項23】
前記パッドが厚さを有し、前記可溶性繊維が、前記厚さの少なくとも一部に広がる請求項14の方法。
【請求項24】
前記不溶性部材が、不溶性ポリマー樹脂及び不溶性繊維を含む請求項14の方法。
【請求項25】
前記パッド内の前記マイクロ溝が、5から150マイクロメートルの範囲の幅及び/又は深さを有する請求項14の方法。
【請求項26】
研磨パッドを用いて表面を研磨する方法であって、
表面を有する研磨用の基板を提供する段階;
前記基板の前記表面の少なくとも一部上に水性スラリーを提供する段階;
約5から80マイクロメートルの範囲の直径を有する複数の可溶性繊維、及び不溶性部材を含むパッドを提供し、及び前記パッド、水性スラリー及び基板の相互作用により、前記表面を研磨する段階;
及び、前記可溶性繊維を溶解し、前記パッド表面上に複数のマイクロ溝を形成する段階を含み、
前記マイクロ溝が、最大約150マイクロメートルの幅及び/又は深さを有する研磨パッドを用いて表面を研磨する方法。
【請求項27】
前記パッドの新たに露出させる表面を形成する段階であって、前記パッドが、厚さを有し、前記可溶性繊維が、前記厚さの一部まで位置される、前記パッドの新たに露出させる表面を形成する段階、
及び、前記パッドの前記新たに露出される表面上に前記パッド厚さの一部まで前記マイクロ溝を生成する段階をさらに含む請求項26の方法。
【請求項28】
前記可溶性繊維を溶解する前記スラリー内に化学物質を放出する段階をさらに含む請求項26の方法。
【請求項29】
前記パッド内の前記マイクロ溝が、5から150マイクロメートルの範囲の幅及び/又は深さを有する請求項26の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−543709(P2009−543709A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521007(P2009−521007)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/073921
【国際公開番号】WO2008/011535
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(507255732)イノパッド,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】