説明

パラジウム含有触媒、その触媒の製造方法、およびα,β−不飽和カルボン酸の製造方法

【課題】アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を高い生産性で製造するためのパラジウム含有触媒を提供する。
【解決手段】アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有触媒であって、触媒構成元素として、パラジウムと、該パラジウム1.0モルに対して0.001〜0.25モルのロジウムとを含有するパラジウム含有触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有触媒、およびその触媒の製造方法に関する。また、本発明はα,β−不飽和カルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを分子状酸素により液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有触媒の製造方法として、特許文献1にはパラジウム塩を還元剤により還元する方法が提案されている。また、オレフィンを分子状酸素により液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するための触媒として、例えば特許文献2には、パラジウム金属1.0モルに対してテルル金属0.001〜0.40モルを含有するパラジウム含有触媒が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/083299号
【特許文献2】国際公開第2005/118134号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1または2に記載の方法で製造した触媒のα,β−不飽和カルボン酸の生産性は未だ十分ではなく、より高い生産性を実現できるパラジウム含有触媒の開発が望まれている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を高い生産性で製造するためのパラジウム含有触媒、およびその触媒の製造方法、ならびにα,β−不飽和カルボン酸を高い生産性で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有触媒であって、パラジウムと、該パラジウム1.0モルに対して0.001〜0.25モルのロジウムとを含有するパラジウム含有触媒である。
【0007】
また、本発明は前記パラジウム含有触媒を製造する方法であって、酸化状態のパラジウムを含む化合物を還元剤で還元する工程と、酸化状態のロジウムを含む化合物を還元剤で還元する工程とを含むパラジウム含有触媒の製造方法である。
【0008】
さらに、本発明は前記パラジウム含有触媒を用いて、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、α,β−不飽和カルボン酸を高い生産性で製造できるパラジウム含有触媒を得ることができる。また、本発明によれば、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドから高い生産性でα,β−不飽和カルボン酸を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[パラジウム含有触媒]
本発明に係るパラジウム含有触媒は、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有触媒であって、触媒構成元素としてパラジウムとロジウムとを含有する。ロジウムを含むことによって、従来のパラジウム含有触媒に比べてより高い生産性でα,β−不飽和カルボン酸を製造することができる。
【0011】
触媒に含まれる、パラジウムに対するロジウムのモル比(Rh/Pd)は、0.001〜0.25である。このRh/Pdは、パラジウム含有触媒の製造に使用するパラジウムを含む化合物(パラジウム原料)およびロジウムを含む化合物(ロジウム原料)の配合比により調整可能である。パラジウムに対するロジウムのモル比(Rh/Pd)は、0.001〜0.15とすることもできる。
【0012】
アルコールを分子状酸素により液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するために本触媒を用いる場合、パラジウムに対するロジウムのモル比(Rh/Pd)は0.001〜0.07が好ましく、0.005〜0.05がより好ましい。
【0013】
オレフィンを分子状酸素により液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するために本触媒を用いる場合、パラジウムに対するロジウムのモル比(Rh/Pd)は0.001〜0.07が好ましく、0.005〜0.05がより好ましい。
【0014】
α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するために本触媒を用いる場合、パラジウムに対するロジウムのモル比(Rh/Pd)は0.01〜0.25が好ましく、0.05〜0.25がより好ましい。
【0015】
アルコールまたはオレフィンからα,β−不飽和カルボン酸を製造する際には、さらにテルルを含有する触媒が好ましい。触媒に含まれる、パラジウムに対するテルルのモル比(Te/Pd)は、0.001〜0.4が好ましく、0.005〜0.15がより好ましく、0.01〜0.1がさらに好ましい。このTe/Pdは、パラジウム含有触媒の製造に使用するパラジウム原料およびテルル原料の配合比により調整可能である。なお、α,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造する際にも、さらにテルルを含有する触媒を用いることができる。
【0016】
α,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造する際にテルルを含有する触媒を用いる場合、パラジウムに対するロジウムのモル比(Rh/Pd)は0.01〜0.25が好ましく、0.05〜0.25がより好ましく、0.1〜0.20がさらに好ましい。
【0017】
Rh/PdおよびTe/Pdは、触媒に含まれるロジウムとパラジウムの質量および原子量、テルルとパラジウムの質量および原子量からそれぞれ算出する。触媒に含まれるパラジウム、ロジウムおよびテルルの質量は、使用するパラジウム原料のパラジウム含有率と配合量、使用するロジウム原料のロジウム含有率と配合量および使用するテルル原料のテルル含有率と配合量から算出する。後述する担持型触媒の場合の各元素の担持率は、前記触媒に含まれる各元素の質量と使用する担体の質量から算出する。
【0018】
パラジウム原料としては例えば、パラジウム塩、酸化パラジウム、酸化パラジウム合金等が挙げられる。中でも、パラジウム塩が好ましい。パラジウム塩としては、例えば、塩化パラジウム(II)(熱分解温度:650℃)、酢酸パラジウム(II)(熱分解温度:230℃)、硝酸パラジウム(II)(熱分解温度:120℃)、テトラアンミンパラジウム硝酸塩(II)(熱分解温度:220℃)、テトラアンミンパラジウム塩酸塩およびビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)(熱分解温度:210℃)等が挙げられる。パラジウム塩は1種のみを用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0019】
なお、パラジウム塩の熱分解温度は熱重量測定により測定できる。ここでは、熱重量測定装置(島津製作所社製、商品名:TGA−50)を用いてパラジウム塩を空気気流中で室温から5.0℃/分で昇温させたときに、10%質量減少したときの温度をパラジウム塩の熱分解温度とする。
【0020】
ロジウム原料中のロジウムは一般に−1〜+6価の酸化数をとりえるが、いずれの酸化数状態のものを用いてもよい。ロジウム原料としては例えば、ロジウム塩、酸化ロジウム等を挙げることができる。具体的には、硝酸ロジウム、フッ化ロジウム、塩化ロジウム、臭化ロジウム、硫化ロジウム、ビス(硫酸)ロジウム(III)酸カリウム、ヘキサクロロロジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサクロロロジウム(III)酸カリウム、トリス(オキサラト)ロジウム酸カリウム等が挙げられる。中でも硝酸ロジウム、塩化ロジウム、臭化ロジウムが好ましい。これらのロジウム原料は1種のみを用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0021】
テルル原料中のテルルは一般に−2〜+6価の酸化数をとりえるが、いずれの酸化数状態のものを用いてもよい。テルル原料としては、テルル金属、テルル塩、テルル酸およびその塩、亜テルル酸およびその塩、酸化テルル等を挙げることができる。テルル塩としては、例えば、テルル化水素、四塩化テルル、二塩化テルル、六フッ化テルル、四ヨウ化テルル、四臭化テルル、二臭化テルル等を挙げることができる。テルル酸塩としては、例えば、テルル酸ナトリウム、テルル酸カリウム等を挙げることができる。亜テルル酸塩としては、例えば、亜テルル酸ナトリウム、亜テルル酸カリウム等を挙げることができる。中でもテルル金属、テルル酸およびその塩、亜テルル酸およびその塩、酸化テルルが好ましい。これらのテルル原料は1種のみを用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0022】
また、本発明に係る触媒は非担持型でもよいが、パラジウムおよびロジウムの少なくとも1種が担体に担持されている担持型であることが好ましい。担体はパラジウム原料を担持できるものであれば特に限定されない。好ましい担体としては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、マグネシア、カルシア、チタニアおよびジルコニア等が挙げられる。中でも、シリカ、チタニアまたはジルコニアがより好ましい。担体は1種のみを用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0023】
担体の比表面積は担体の種類等により異なるので一概に言えないが、担体としてシリカを用いる場合、シリカの比表面積は50m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましい。また、シリカの比表面積は1500m2/g以下が好ましく、1000m2/g以下がより好ましい。担体の比表面積は、小さいほど有用成分がより表面に担持された触媒の製造が可能となり、大きいほど有用成分が多く担持された触媒の製造が可能となる。
【0024】
担体の比表面積は窒素ガス吸着法を用いたBET式により算出することができる。BET式はLangmuirの単分子層吸着理論を多分子吸着に拡張した理論であり、単位質量あたりの全表面積(全比表面積)を知ることができる。ここでは、Micromeritics社製自動比表面積/細孔分布測定装置「TriStar3000」(商品名)を用いて、窒素ガス吸着法に基づく定容法により測定する。
【0025】
パラジウム原料を担体に担持させる方法としては、パラジウム原料の溶解液に担体を浸漬した後に溶媒を蒸発させる方法でもよい。また、担体の細孔容積分のパラジウム原料の溶解液を担体に吸収させた後に溶媒を蒸発させる、いわゆるポアフィリング法でもよい。パラジウム原料を溶解させる溶媒は、パラジウム原料を溶解できる溶媒であれば特に限定されない。
【0026】
必須成分であるロジウム原料や、テルル原料等の他の原料を担体に担持させる工程は、それぞれパラジウム原料を担体に担持させる前に行ってもよく、担持させた後に行ってもよい。また、パラジウム原料、ロジウム原料、テルル原料等の他の原料の全てを同時に担持させることもできるし、それぞれを別々に担時させることもできる。さらに、後述するパラジウム原料の加熱処理の後に担持させてもよい。ロジウム原料、テルル原料等の他の原料を担体に担持させる方法としては、パラジウム原料を担体に担持させる工程と同様に、ロジウム原料、テルル原料等の他の原料の溶解液に担体を浸漬した後に溶媒を蒸発させる方法でもよい。また、担体の細孔容積分のロジウム原料、テルル原料等の他の原料の溶解液を担体に吸収させた後に溶媒を蒸発させる、いわゆるポアフィリング法でもよい。それぞれの原料を溶解させる溶媒は、それぞれの原料を溶解できる溶媒であれば特に限定されない。また、還元されたパラジウム上に還元的に析出させる方法でもよい。ロジウム原料、テルル原料等の他の原料を還元させる還元剤は、ロジウム原料、テルル原料等の他の原料を還元できる還元剤であれば特に限定されない。
【0027】
担持型触媒の場合、担体に対するパラジウムの担持率は、担持前の担体質量に対して0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1.0〜20質量%がさらに好ましい。なお、担持前の担体質量は各元素を担持する前の担体の質量を測定した値とする。
【0028】
本発明に係る触媒は、パラジウムおよびロジウム以外のその他の金属元素を含んでいてもよい。その他の金属元素としては、例えば、前述のテルル、白金、イリジウム、金、銀、オスミウム、銅、鉛、ビスマス、タリウム、水銀等が挙げられる。他の金属元素は1種または2種以上含有することができる。高い触媒活性を発現させる観点から、触媒に含まれる金属元素のうち、パラジウムおよびロジウムの合計が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0029】
本発明に係る触媒はそのまま用いることもできるが、パラジウム原料を加熱し、酸化パラジウムに変える加熱処理を行うことが好ましい。特に担持型触媒の場合、酸化パラジウムとすることで、パラジウム成分と担体との間に強い相互作用が形成され、パラジウム成分が高分散に担持された触媒が得られる観点から、特に好ましい。
【0030】
加熱処理の温度は、パラジウム原料が酸化物に変化する分解温度以上とすることが好ましい。例えば硝酸パラジウムをパラジウム原料とする場合、加熱処理の温度は硝酸パラジウムの分解温度である120℃以上が好ましい。ただし加熱処理の温度が高温になると、パラジウム成分または担体のシンタリングが促進され、良好な担持状態が形成されないことがあるため、加熱処理の温度は700℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、450℃以下がさらに好ましい。
【0031】
所定の加熱処理温度まで昇温する際の昇温速度は特に限定されないが、パラジウム含有担持触媒において良好な金属の分散状態を得るため、昇温速度は1〜10℃/分が好ましい。所定の温度に達した後の保持時間は、パラジウム原料と担体とが相互作用するのに十分な時間であれば特に限定されないが、1〜12時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。
【0032】
パラジウム原料が酸化パラジウムに変化したことは、XRD(X−ray Diffraction)測定でパラジウム成分の結晶状態を測定することで確認することができる。パラジウム原料の場合、XRDの回折角17°付近に現れる酸化パラジウムに由来するピークを確認することにより、パラジウム原料が酸化パラジウムに変化したことを確認することができる。
【0033】
加熱処理は、パラジウム原料の他に、必須成分であるロジウム原料、テルル原料等の他の成分のうち1種類以上が担体に担持されている状態で行ってもよい。なお、非担持型触媒の製造においても、同様に加熱処理を行ってもよい。
【0034】
本発明に係るパラジウム含有触媒の製造方法は、酸化状態のパラジウムを含む化合物を還元剤で還元する工程と、酸化状態のロジウムを含む化合物を還元剤で還元する工程とを含むことが好ましい。例えば、前記方法により得られる加熱処理された触媒(以下、触媒前駆体と表記する)を還元剤で還元することが好ましい。これにより、担体に担持された状態で存在するパラジウム塩またはパラジウム酸化物を還元することができ、金属パラジウムが存在する触媒となる。なお、触媒前駆体を還元せずにそのまま触媒とすることもできる。
【0035】
前記還元において用いられる還元剤としては特に限定されないが、例えば、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、水素、蟻酸、蟻酸の塩、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1,3−ブタジエン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、アリルアルコール、メタリルアルコール、エチレングリコール、アクロレインおよびメタクロレイン等が挙げられる。還元剤は1種のみを用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0036】
還元は、気相中で行っても液相中で行ってもよい。気相中で還元を行う場合、還元剤としては水素を用いることが好ましい。また、液相中で還元を行う場合、還元剤としてはヒドラジン、ホルムアルデヒド、エチレングリコール、蟻酸または蟻酸の塩を用いることが好ましい。
【0037】
液相中で還元を行う際に使用する溶媒としては水が好ましい。しかしながら、担体の分散性によっては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノールおよびt−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸、n−吉草酸およびイソ吉草酸等の有機酸類;ヘプタン、ヘキサンおよびシクロヘキサン等の炭化水素類等の有機溶媒を用いることができる。これらの溶媒は単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。これらの溶媒と水との混合溶媒を用いることもできる。
【0038】
液相中で還元を行う場合であって還元剤が液体の場合、還元を行う装置に制限はなく、溶媒中に還元剤を添加することで行うことができる。このときの還元剤の使用量は特に限定されないが、触媒前駆体中のパラジウム1モルに対して1〜200モルとすることが好ましい。
【0039】
還元温度および還元時間は還元剤の種類等により適宜設定することができる。還元温度は−5〜150℃が好ましく、15〜80℃がより好ましい。還元時間は0.1〜4時間が好ましく、0.25〜3時間がより好ましく、0.5〜2時間がさらに好ましい。
【0040】
本発明ではパラジウム原料の他にロジウム原料も還元することが好ましい。ロジウム原料の還元方法は、パラジウム原料を還元する方法と同様の方法により行うことができる。ロジウム原料の還元工程はパラジウム原料の還元工程と同時に行ってもよく、それぞれを単独で行っても良い。なお、非担持型触媒の製造においても、同様に酸化状態のパラジウムを含む化合物を還元剤で還元する工程と、酸化状態のロジウムを含む化合物を還元剤で還元する工程とを行ってもよい。
【0041】
還元後、パラジウム金属が担体に担持されたパラジウム含有担持触媒を分離する。この触媒を分離する方法は特に限定されないが、例えば、ろ過、遠心分離等の方法が挙げられる。分離されたパラジウム含有担持触媒は適宜乾燥される。乾燥方法は特に限定されず、種々の方法を用いることができる。
【0042】
最終的に得られるパラジウム含有触媒の物性等は、XRD測定、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)測定、XRF(X−ray Fluorescence)測定、TEM(Transmission Electron Microscope)観察等により確認できる。
【0043】
パラジウム含有触媒におけるパラジウム粒子の結晶子径は、パラジウム質量に対して反応活性点の数を多くする観点から、6nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。また、パラジウム含有触媒におけるパラジウム粒子の結晶子径は、初期活性が高すぎて局所的に発生する反応熱によってパラジウム粒子の凝集が促進されることを防ぐ観点から、0.5nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましい。
【0044】
なお、パラジウム粒子の結晶子径はXRDにより測定する。XRD観察対象の結晶子径は、一般に以下のScherrerの式により見積もることができる。
【0045】
D=(Kλ)/(βcosθ)
Dは結晶子径、Kは定数、λは測定X線波長、βはピークの半値幅、θは回折線のブラッグ角度を表す。ここでは、K=0.9、λ=1.54Åとし、θはXRD測定により観測されるパラジウムの(111)面に対応する回折ピークの値(約20°)を用いて、結晶子径を見積もる。
【0046】
[α,β−不飽和カルボン酸の製造方法]
次に、本発明に係るパラジウム含有触媒を用いて、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素で液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する方法について説明する。
【0047】
原料のアルコールとしては、例えば、2−プロパノール、t−ブチルアルコール、2−ブタノール等が挙げられる。中でも、2−プロパノールおよびt−ブチルアルコールが好適である。原料のアルコールは1種のみを用いることもでき、2種以上を併用することもできる。原料のアルコールには、不純物として水や飽和炭化水素および/または低級飽和アルデヒドを少量含んでも良い。アルコールを原料とする方法では、脱水反応を経由してα,β−不飽和カルボン酸が得られる。例えば、原料が2−プロパノールの場合はプロピレンを経由するため、プロピレンと同一骨格を有するアクリル酸が得られる。原料がt−ブチルアルコールの場合はイソブチレンを経由するため、イソブチレンと同一骨格を有するメタクリル酸が得られる。
【0048】
液相酸化の原料としてアルコールを用いる場合、溶媒中に酸性物質を添加することが好ましい。酸性物質を添加することで、アルコールを脱水して効率よくオレフィンを生成させることができる。酸性物質としては、例えば無機酸、ヘテロポリ酸およびその塩、並びに固体酸等が挙げられる。酸性物質は1種のみを用いることもでき、2種以上を併用することもできる。
【0049】
原料のオレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブチレンおよび2−ブテン等が挙げられる。原料のオレフィンは1種のみを用いることもでき、2種以上を併用することもできる。また、原料のα,β−不飽和アルデヒドとしては、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド(β−メチルアクロレイン)およびシンナムアルデヒド(β−フェニルアクロレイン)等が挙げられる。原料のα,β−不飽和アルデヒドは1種のみを用いることもでき、2種以上を併用することもできる。原料のオレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドには、不純物として飽和炭化水素および/または低級飽和アルデヒド等が少量含まれていてもよい。
【0050】
液相酸化の原料としてオレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを用いる場合も、反応系中に酸性物質が共存していても差し支えない。酸性物質としては、無機酸、ヘテロポリ酸およびその塩、並びに固体酸等が挙げられる。酸性物質は1種のみを用いることもでき、2種以上を併用することもできる。
【0051】
原料がオレフィンの場合、製造されるα,β−不飽和カルボン酸はオレフィンと同一炭素骨格を有するα,β−不飽和カルボン酸である。また、原料がα,β−不飽和アルデヒドの場合、製造されるα,β−不飽和カルボン酸はα,β−不飽和アルデヒドのアルデヒド基がカルボキシル基に変化したα,β−不飽和カルボン酸である。
【0052】
本発明に係る製造方法は、プロピレンまたはアクロレインからアクリル酸、イソブチレンまたはメタクロレインからメタクリル酸を製造する液相酸化に好適である。
【0053】
液相酸化に用いる分子状酸素源としては空気が経済的であるが、純酸素または純酸素と空気の混合ガスを用いることもできる。また、必要であれば空気または純酸素を窒素、二酸化炭素、水蒸気等で希釈した混合ガスを用いることもできる。
【0054】
液相酸化に用いる溶媒は特に限定されないが、例えば、水;ターシャリーブタノールおよびシクロヘキサノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸およびiso−吉草酸等の有機酸類;酢酸エチルおよびプロピオン酸メチル等の有機酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサンおよびトルエン等の炭化水素類を用いることができる。中でも、炭素数2〜6の有機酸類、炭素数3〜6のケトン類、またはターシャリーブタノールが好ましい。なお、アルコールを原料としてα,β−不飽和カルボン酸を製造する場合、原料のアルコールをそのまま溶媒として使用することができる。溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。また、アルコール類、ケトン類、有機酸類および有機酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用する場合は、水との混合溶媒とすることが好ましい。その際の水の量は特に限定されないが、混合溶媒の質量に対して2〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。溶媒は均一であることが望ましいが、不均一な状態で用いても差し支えない。
【0055】
液相酸化は、連続式、バッチ式の何れの形式で行ってもよいが、生産性を考慮すると工業的には連続式が好ましい。
【0056】
液相酸化の原料として用いるアルコールの使用量は、反応器内に存在する液量100質量部中、0.5質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また95質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい。液相酸化の原料として用いるオレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドの使用量は、溶媒100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、1〜35質量部がより好ましい。
【0057】
分子状酸素の使用量は、原料であるアルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒド1モルに対して0.1〜30モルが好ましく、0.3〜25モルがより好ましく、0.5〜20モルがさらに好ましい。
【0058】
触媒は、液相酸化を行う反応液に懸濁させた状態で使用することが好ましいが、固定床で使用してもよい。触媒の使用量は、反応器内に存在する溶液100質量部に対して、反応器内に存在する触媒として0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部がさらに好ましい。
【0059】
液相酸化の反応温度および反応圧力は、用いる溶媒および反応原料によって適宜選択される。反応温度は30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。反応圧力は大気圧(0MPa:ゲージ圧、以下圧力は全てゲージ圧で表記する)〜10MPaが好ましく、0.5〜7MPaがより好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明について実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。Rh/Pd、Te/Pdの算出に用いるロジウム、パラジウムおよびテルルの質量は、それぞれ、使用するロジウム原料のロジウム含有率と配合量、使用するパラジウム原料のパラジウム含有率と配合量および使用するテルル原料のテルル含有率と配合量から算出した。
【0061】
(原料および生成物の分析)
原料および生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。なお、α,β−不飽和カルボン酸の生産性は、以下のように定義される。
【0062】
α,β−不飽和カルボン酸の生産性(g/gPd/h)=(A/B/C)
ここで、Aは生成したα,β−不飽和カルボン酸の質量(g)、Bは触媒中のパラジウム金属の質量(g)、Cは反応時間(h)である。なお、Bは使用するパラジウム原料のパラジウム含有率と配合量から算出した。
【0063】
実施例1〜3および比較例1、2では、イソブチレンからメタクリル酸を製造する反応を行った。したがってAは生成したメタクリル酸の質量(g)である。実施例4〜23および比較例3〜14では、メタクロレインからメタクリル酸を製造する反応を行った。したがってAは生成したメタクリル酸の質量(g)である。
【0064】
[実施例1]
(触媒調製)
硝酸ロジウム(三津和化学薬品(株)製)0.0190g、テルル酸(添川理化学(株)製)0.0755gを少量の水に溶解し、硝酸パラジウム(II)硝酸溶液(エヌ・イー・ケムキャット(株)製、パラジウム濃度23.50質量%)2.98gを加えた。その後、溶液をさらに水で希釈し、溶液質量を28.0gとした。次にシリカ担体(比表面積480m2/g、BJH法による全細孔容積0.68cc/g、メディアン径56μm)7.00gに上記の溶液を加えた。その後、エバポレーションを行うことにより、硝酸パラジウム(II)、硝酸ロジウム、およびテルル酸が担持されたシリカ担体を得た。これをステンレスバット(15cm×20cm)に薄く均一に広げ、熱処理を行った。熱処理としては、空気中で300℃まで1℃/分で昇温して3時間保持した。その後、室温まで降温し、触媒前駆体を得た。
【0065】
この触媒前駆体をパラジウム質量に換算して0.5g量りとり、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)20.0gを滴下した。これを70℃に加熱して2時間攪拌保持し、吸引ろ過した後、純水500gでろ過洗浄することで触媒を得た。得られた触媒を減圧下50℃で2時間乾燥させた後XRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.01、0.05であった。
【0066】
(反応評価)
上記方法で得られた触媒と、反応溶媒として75質量%t−ブタノール水溶液100gと、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.020gと、酸性物質として三酸化モリブデン0.05gとをオートクレーブ(容積330mL)に入れ、オートクレーブを密封した。次いで、イソブチレンを6.5g導入し、攪拌(回転数1000rpm)を開始し、110℃まで昇温した。昇温完了後、圧縮空気を内圧4.8MPaまで導入した。反応中に内圧が0.1MPa低下した時点(内圧が4.7MPaになった時点)で、酸素を0.1MPa導入する操作を繰り返した。反応開始から酸素の消費量が合計1.8MPaとなるまで繰り返したところで反応を終了した。
【0067】
反応終了後、氷浴でオートクレーブ内を冷却した。オートクレーブのガス出口にガス捕集袋を取り付け、ガス出口を開栓して出てくるガスを回収しながら反応器内の圧力を開放した。オートクレーブから触媒入りの反応液を取り出し、メンブレンフィルターで触媒と反応液とを分離した。得られた反応液と捕集したガスとをガスクロマトグラフィーにより分析し、メタクリル酸(MAA)の生産性を算出した。
【0068】
[実施例2]
硝酸ロジウムの質量を0.0380gとした以外は実施例1と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.02、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0069】
[実施例3]
硝酸ロジウムの質量を0.0950gとした以外は実施例1と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.05、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0070】
[比較例1]
硝酸ロジウムを加えなかった以外は実施例1と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のTe/Pdは0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0071】
[比較例2]
硝酸ロジウム0.4479g、テルル酸0.0539gを少量の水に溶解し、硝酸パラジウム(II)硝酸溶液(パラジウム濃度23.50質量%)2.13gを加えた。その後、溶液をさらに水で希釈し、溶液質量を20.0gとした。次にシリカ担体(比表面積480m2/g、BJH法による全細孔容積0.68cc/g、メディアン径56μm)5.00gに上記の溶液を加えた。この後は実施例1と同様の方法で触媒調製を行った。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.33、0.05であった。反応評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0072】
実施例1〜3および比較例1〜2における触媒調製条件および反応評価結果を表1にまとめて示す。
【0073】
【表1】

【0074】
[実施例4]
(触媒調製)
実施例1と同様の方法で触媒調製を行い、触媒前駆体を得た。この触媒前駆体をパラジウム質量に換算して0.1g量りとり、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)20.0gを滴下した。これを70℃に加熱して2時間攪拌保持し、吸引ろ過した後、純水500gでろ過洗浄することで触媒を得た。得られた触媒を減圧下50℃で2時間乾燥させた後XRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。
【0075】
(反応評価)
上記方法で得られた触媒と、反応溶媒として88質量%酢酸水溶液65gと、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.065gと、メタクロレイン13.0gとをオートクレーブ(容積200mL)に入れ、密封した。次いで攪拌(回転数1000rpm)を開始し、90℃まで昇温した。昇温完了後、圧縮空気を内圧3.2MPaまで導入した。反応開始から30分経過したところで反応を終了した。
【0076】
反応終了後、氷浴でオートクレーブ内を冷却した。オートクレーブのガス出口にガス捕集袋を取り付け、ガス出口を開栓して出てくるガスを回収しながら反応器内の圧力を開放した。オートクレーブから触媒入りの反応液を取り出し、メンブレンフィルターで触媒と反応液を分離した。得られた反応液と捕集したガスとをガスクロマトグラフィーにより分析し、メタクリル酸の生産性を算出した。
【0077】
[実施例5]
実施例2と同様の方法で触媒調製を行い、触媒前駆体を得た。その後、実施例4と同様の方法で触媒調製を行った。また、反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0078】
[実施例6]
実施例3と同様の方法で触媒調製を行い、触媒前駆体を得た。その後、実施例4と同様の方法で触媒調製を行った。また、反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0079】
[実施例7]
硝酸ロジウムの質量を0.1900gとした以外は実施例1と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.10、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0080】
[実施例8]
硝酸ロジウムの質量を0.2851gとした以外は実施例1と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.15、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0081】
[実施例9]
硝酸ロジウムの質量を0.3801gとした以外は実施例1と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.20、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0082】
[比較例3]
比較例1と同様の方法で触媒調製を行い、触媒前駆体を得た。その後、実施例4と同様の方法で触媒調製を行った。また、反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0083】
[比較例4]
硝酸ロジウム硝酸溶液(田中貴金属(株)製、ロジウム濃度8.042質量%)1.6834g、テルル酸(添川理化学(株)製)0.0539gを少量の水に溶解し、硝酸パラジウム(II)硝酸溶液(エヌ・イー・ケムキャット(株)製、パラジウム濃度22.88質量%)2.19gを加えた。その後、溶液をさらに水で希釈し、溶液質量を20.0gとした。次にシリカ担体(比表面積480m2/g、BJH法による全細孔容積0.68cc/g、メディアン径56μm)5.00gに上記の溶液を加えた。その後は、実施例1と同様の方法で触媒調製を行い、触媒前駆体を得た。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.28、0.05であった。その後、実施例4と同様の方法で触媒調製を行った。また、反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0084】
[比較例5]
比較例2と同様の方法で触媒調製を行い、触媒前駆体を得た。その後、実施例4と同様の方法で触媒調製を行った。また、反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0085】
実施例4〜9および比較例3〜5における触媒調製条件および反応評価結果を表2にまとめて示す。
【0086】
【表2】

【0087】
[実施例10]
テルル酸を加えなかった以外は実施例1と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pdは0.01であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0088】
[実施例11]
硝酸ロジウムの質量を0.0380gとした以外は実施例10と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pdは0.02であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0089】
[実施例12]
硝酸ロジウムの質量を0.0950gとした以外は実施例10と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pdは0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0090】
[実施例13]
硝酸ロジウムの質量を0.1900gとした以外は実施例10と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pdは0.10であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0091】
[実施例14]
硝酸ロジウムの質量を0.3801gとした以外は実施例10と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pdは0.20であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0092】
[比較例6]
硝酸ロジウムを加えなかった以外は実施例10と同様の方法で触媒調製を行った。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0093】
[比較例7]
硝酸ロジウム硝酸溶液(田中貴金属(株)製、ロジウム濃度8.042質量%)1.6834g、硝酸パラジウム(II)硝酸溶液(エヌ・イー・ケムキャット(株)製、パラジウム濃度22.88質量%)2.19gを加えた。その後、溶液をさらに水で希釈し、溶液質量を20.0gとした。次にシリカ担体(比表面積480m2/g、BJH法による全細孔容積0.68cc/g、メディアン径56μm)5.00gに上記の溶液を加えた。その後は、実施例4と同様の方法で触媒調製を行い、触媒前駆体を得た。触媒のRh/Pdは0.28であった。その後、実施例4と同様の方法で触媒調製を行った。また、反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0094】
[比較例8]
硝酸ロジウムの質量を0.6271gとした以外は実施例10と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pdは0.33であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0095】
実施例10〜14および比較例6〜8における触媒調製条件および反応評価結果を表3にまとめて示す。
【0096】
【表3】

【0097】
[比較例9]
硝酸ロジウムの代わりに、塩化ルテニウムを0.0682g添加した以外は、実施例10と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRu/Pdは0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0098】
実施例12および比較例9における触媒調製条件および反応評価結果を表4にまとめて示す。
【0099】
【表4】

【0100】
[実施例15]
シリカ担体を3.50gとした以外は実施例12と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pdは0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0101】
[比較例10]
硝酸ロジウムの代わりに、硝酸銅を0.0617g添加した以外は、実施例15と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のCu/Pdは0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0102】
[比較例11]
硝酸ロジウムの代わりに、硝酸銀を0.0559g添加した以外は、実施例15と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のAg/Pdは0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例4と同様の方法で行った。
【0103】
実施例15および比較例10、11における触媒調製条件および反応評価結果を表5にまとめて示す。
【0104】
【表5】

【0105】
[実施例16]
(触媒調製)
硝酸ロジウム硝酸溶液(田中貴金属(株)製、ロジウム濃度8.042%)0.3006g、テルル酸(添川理化学(株)製)0.0539gを少量の水に溶解し、硝酸パラジウム(II)硝酸溶液(エヌ・イー・ケムキャット(株)製、パラジウム濃度22.88質量%)2.19gを加えた。その後、溶液をさらに水で希釈し、溶液質量を20.0gとした。次にシリカ担体(比表面積480m2/g、BJH法による全細孔容積0.68cc/g、メディアン径56μm)5.00gに上記の溶液を加えた。その後は、実施例1と同様の方法で触媒調製を行い、触媒前駆体を得た。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.05、0.05であった。
【0106】
この触媒前駆体をパラジウム質量に換算して0.2g量りとり、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)20.0gを滴下した。これを70℃に加熱して2時間攪拌保持し、吸引ろ過した後、純水500gでろ過洗浄することで触媒を得た。得られた触媒を減圧下50℃で2時間乾燥させた後XRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。
【0107】
(反応評価)
上記方法で得られた触媒と、反応溶媒として88質量%酢酸水溶液65gと、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.065gと、メタクロレイン13.0gとをオートクレーブ(容積200mL)に入れ、密封した。次いで攪拌(回転数1000rpm)を開始し、90℃まで昇温した。昇温完了後、圧縮空気を内圧3.20MPaまで導入した。以後、反応中に内圧が0.05MPa低下した時点で、圧縮空気(酸素濃度20.9%)を0.25MPa導入する作業を繰り返した。この作業を繰り返し、内圧が5.00MPa以上となった時点で、圧縮空気の供給を停止した。つまり、3.20MPaで反応を開始した場合、内圧の変化の様子は3.20MPa→3.15MPa→3.40MPa→3.35MPa→・・・→5.00MPaとなる。反応開始から60分経過したところで反応を終了した。内圧が5MPaに達する前に60分が経過した場合は、その時点で反応を終了した。反応終了後の生成物分析は、実施例4と同様の方法で行った。
【0108】
[実施例17]
硝酸ロジウム硝酸溶液の質量を0.6012gとした以外は実施例16と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.10、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0109】
[実施例18]
硝酸ロジウム硝酸溶液の質量を0.9018gとした以外は実施例16と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.15、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0110】
[実施例19]
硝酸ロジウム硝酸溶液の質量を1.2025gとした以外は実施例16と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.20、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0111】
[実施例20]
テルル酸の質量を0.0270gとした以外は実施例16と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.05、0.025であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0112】
[実施例21]
テルル酸の質量を0.1078gとした以外は実施例16と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.05、0.10であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0113】
[実施例22]
テルル酸の質量を0.0270gとした以外は実施例18と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.15、0.025であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0114】
[実施例23]
テルル酸の質量を0.1078gとした以外は実施例18と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.15、0.10であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0115】
[比較例12]
硝酸ロジウム硝酸溶液を添加しなかった以外は、実施例16と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のTe/Pdは0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0116】
[比較例13]
硝酸ロジウム硝酸溶液の質量を1.6834gとした以外は実施例16と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.28、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0117】
[比較例14]
硝酸ロジウム硝酸溶液の質量を1.9841gとした以外は実施例16と同様の方法で触媒調製を行った。触媒のRh/Pd、Te/Pdはそれぞれ0.33、0.05であった。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、触媒中に金属パラジウムが生成していることが確認された。反応評価は実施例16と同様の方法で行った。
【0118】
実施例16〜23および比較例12〜14における触媒調製条件および反応評価結果を表6にまとめて示す。
【0119】
【表6】

【0120】
以上の実施例、比較例の結果から、本発明によればより高い生産性でα,β−不飽和カルボン酸を製造できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有触媒であって、触媒構成元素として、パラジウムと、該パラジウム1.0モルに対して0.001〜0.25モルのロジウムとを含有するパラジウム含有触媒。
【請求項2】
パラジウム1.0モルに対して0.001〜0.15モルのロジウムを含有する請求項1に記載のパラジウム含有触媒。
【請求項3】
触媒構成元素の少なくとも1種が担体に担持されている請求項1または2に記載のパラジウム含有触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のパラジウム含有触媒を製造する方法であって、酸化状態のパラジウムを含む化合物を還元剤で還元する工程と、酸化状態のロジウムを含む化合物を還元剤で還元する工程とを含むパラジウム含有触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のパラジウム含有触媒を用いて、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。

【公開番号】特開2012−166188(P2012−166188A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104459(P2011−104459)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】