説明

パラボラアンテナ用着雪着水防止カバー

【課題】着雪による受信電波の減衰や電波の受信不能状態を未然に防止し、イニシャルコストおよびランニングコストを大幅に削減したパラボラアンテナ用着雪着水防止カバーを提供する。
【解決手段】パラボラアンテナの反射板10に装着して用いられるパラボラアンテナ用着雪着水防止カバー100であって、周縁部が反射板10の外縁を跨いで反射板10の裏面側に折り返された状態で、反射板10の反射面12の前方を覆って反射板10に装着可能なカバー体110と、カバー体110の、反射面側となる裏面14に、カバー体110が反射板10に装着された状態において、カバー体110の上下方向に伸びるようにして取り付けられた複数本のガイド体120とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパラボラアンテナ用着雪着水防止カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信あるいは放送衛星からの電波を受信するためには、通常、パラボラアンテナ装置が用られる。このようなパラボラアンテナ装置は、仰角が約30°〜65°方向の上空位置を飛行する通信衛星あるいは放送衛星からの電波を受信するために、反射板が上向きとなるようにした状態で設置される。このため、降雪地帯においてパラボラアンテナ装置を使用する場合には、パラボラアンテナ装置の反射板に着雪や積雪が生じることになる。これら着雪や積雪により反射面の屈折率が変化し、反射面から反射されたアンテナビーム方向がずれてしまうことがある。アンテナビーム方向がずれると、電波信号が減衰し、受信電波から適切な情報を得ることができない場合がある。
【0003】
近年においては、衛星放送受信システムにおけるパラボラアンテナ装置の小形化が促進されたことに伴い、反射板もまた小型化されている。このような小型のパラボラアンテナ装置の回線マージンは、1〜2dB程度ときわめてわずかな回線マージンになっていることが多い。このように、小型のパラボラアンテナ装置における回線マージンの狭小化は、パラボラアンテナ装置の設置箇所における外部環境により受信電波の品質に多大な影響を与える。
【0004】
具体的には、反射板に15cm程度の積雪があると、パラボラアンテナ装置の回線マージンに5〜6dBの減衰が生じることがあるとされている。このようなパラボラアンテナ装置の回線マージンが減衰した状態においては、衛星放送を視聴することがきわめて困難になり不都合である。また、降雨により反射板表面に水膜が形成された場合であっても、反射板への着雪や積雪時と同様に、パラボラアンテナ装置の回線マージンの減衰が生じることも知られている。
このようにパラボラアンテナ装置に対しては、天候条件にかかわらず、通信衛星や放送衛星からの電波受信状態を一定の受信状態に維持することを可能にするための解決策の提案が強く望まれていた。
【0005】
このような着雪による受信電波の減衰や電波の受信不能状態を未然に防止するために、従来のパラボラアンテナ装置では、反射板の背面(裏面)に融雪ヒータを配設し、気象状況に応じて選択的に融雪ヒータを駆動して反射板への着雪を防止したり、温度センサを用いて反射板に配設した融雪ヒータを駆動する構成を付加することが主な解決手段であった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−258515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示されているような従来のパラボラアンテナ装置の構成では、融雪ヒータによって反射板の反射面に着雪した雪を融雪する場合に、融雪時間の遅れや融雪ヒーターの誤動作が起こり易く、信頼性の高い反射板の融雪処理が困難であるという課題がある。
また、反射板の融雪処理をするための手段として電気式ヒータを用いていることから、冬期間におけるパラボラアンテナ装置における電力消費量が嵩むうえに、設備が複雑となり、パラボラアンテナ装置が非常に高価となるという課題もある。特に、通信衛星あるいは放送衛星からの電波を受信する一般家庭向けのBS、CS放送受信用のパラボラアンテナ装置にあっては、システム全体の価格高騰と消費電力の高騰は大きな課題となる。
また、このようなヒータ方式では、降雨時におけるパラボラアンテナ装置の反射板表面に形成される水膜に対してはほとんど効果が期待できないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、パラボラアンテナの反射板に装着して用いられるパラボラアンテナ用着雪着水防止カバーであって、周縁部が反射板の外縁を跨いで反射板の裏面側に折り返された状態で、反射板の反射面の前方を覆って反射板に装着可能なカバー体と、該カバー体の、前記反射面側となる裏面に、前記カバー体が前記反射板に装着された状態において、前記カバー体の上下方向に伸びるようにして取り付けられた複数本のガイド体と、を有することを特徴とするパラボラアンテナ用着雪着水防止カバーである。
【0009】
また、前記カバー体が前記反射板に装着された状態を正面視した際において、前記ガイド体が左右対称となる配列で前記カバー体に装着されていることを特徴とする。これにより、カバー体の雪や雨水をさらに落下させやすくすることができる。
【0010】
また、前記ガイド体は、前記カバー体の裏面に形成された袋体の中に、遊動自在に収容されていることを特徴とする。これにより、パラボラアンテナ装置に風が吹いた際に、ガイド体がカバー体を振動させることになり、カバー体の雪や雨水をさらに落下させやすくすることができる。
【0011】
また、前記ガイド体の幅寸法と前記袋体の内部空間における幅寸法の比率は1:3〜1:7であることを特徴とする。これにより、袋体の内部空間においてガイド体が振動しやすくなり、カバー体の表面における着雪着水の防止およびカバー体に付着した雪および雨水の落下を促進させることができる点で好都合である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるパラボラアンテナ用着雪着水防止カバーによれば、きわめて簡易な構造で着雪および着水によるパラボラアンテナの受信感度の低下を防止することが可能になる。また、ガイド体の構成により反射面の前方を覆うカバー体が風により振動すると共に、カバー体の被覆面が所要範囲ごとに区切られて流下路を形成し、カバー体から流下する雪や水が集められることになる。これにより、カバー体からの雪水の流下がさらに促進されることになり、カバー体表面の雪および・または水の残存を可及的に少なくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるパラボラアンテナ用着雪着水防止カバーを反射板に装着したパラボラアンテナ装置の正面図である。
【図2】図1中のA−A線における断面図である。
【図3】他の実施形態の一例を示す参考正面図である。
【図4】他の実施形態の一例を示す参考正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および図2に示すように、パラボラアンテナ用着雪着水防止カバー100の取り付け対象であるパラボラアンテナ装置50は、上空を飛行する通信衛星あるいは放送衛星(いずれも図示せず)からの電波を受信した後に所定方向に電波を反射するパラボラ形状をなす反射板10と、反射板10を保持する保持部20と、保持部20から反射板10の反射面(開口側面)12に延伸するアーム22に保持され、反射板10の反射面12の焦点位置に配設された受信部30と、を有している。受信部30が受信した電波は、図示しないテレビ等の出力装置に送信される。このようなパラボラアンテナ装置50は、保持部20により任意の取付位置に取り付けられる。保持部20は、反射面12の仰角を任意角度に調整可能な仰角調整部24を備えている。
【0015】
本実施形態におけるパラボラアンテナ用着雪着水防止カバー100は、撥水性を備えた布帛により形成されたカバー体110と、カバー体110の片側面に取り付けられたガイド体120と、袋体130とを有している。
カバー体110には、反射板10の反射面12から所要間隔をあけた前方位置を被覆する被覆面112と、反射板10の外縁を跨ぎ、反射板10の裏面14に折り返された状態で反射板10にカバー体110を固定するための折り返し部114とが形成されている。反射板10の外縁を反射板10の反射面側から裏面側に跨いでいる折り返し部114は、カバー体110の外縁部分(反射板10の外縁からはみ出す部分)が所要範囲に折り曲げられて縫製された筒状部116と、筒状部116内の内部空間に挿通される紐や弾性部材等の締結具118とを有している。
【0016】
カバー体110は、反射板10の反射面12から裏面14に回り込ませた折り返し部114の締結具118を締め付けることにより、カバー体110が反射板10に固定されると共に、反射面12における開口端縁位置に平坦な被覆面112を形成することができる。また、カバー体110の被覆面112において裏面側となる反射面12側には、ガイド体120を収容するための袋体130が配設されている。袋体130は、被覆面112の上下方向に伸びる状態でカバー体110に取り付けられている。ガイド体120は、袋体130内に遊動自在な状態で被覆面112の上下方向に沿った状態で収容されている。
【0017】
カバー体110および袋体130を構成する布帛としての薄地の高密度織物には、例えば、東レ株式会社の製品名「キューダスXR(登録商標)」や、帝人ファイバー株式会社の製品名「ツインバリア(登録商標)」等の撥水性を有する高密度織物から選択することができる。これらの高密度織物は、経糸および/または緯糸が捲縮糸で、単糸繊度が1デニール以下でかつ、総繊度が60〜120デニールである糸条で構成されていて、薄地でありながらきわめて高い防水性を有している。
また、高密度織物に撥水処理を施すことにより、接触角が少なくとも110°以上の撥水性を有している。また、このような高密度織物は撥水性の経時的変化が少なく、長期にわたる屋外環境に耐える特性を有している。
【0018】
カバー体110および袋体130に前述のような薄地の布帛を適用することにより、微風時においても反射板10に装着したカバー体110および袋体130を振動させることができる。このようなカバー体110の振動により、カバー体110の被覆面112に雪や雨等による水滴が付着したとしても容易に落下させることができる。また、カバー体110に風が吹き付けられてカバー体110および袋体130が振動すると、袋体130の内部空間に収容されているガイド体120も振動させることができる。このようにガイド体120が振動することにより、カバー体110(被覆面112)に衝撃が与えられることにもなり、カバー体110の被覆面112に付着した雪や水滴をより確実に落下させることができる。ガイド体120は先述にもあるように、袋体130の内部空間内で遊動自在に収容されているから、わずかな振動によってもガイド体120が動くことになり、被覆面112に振動が付与されて好都合である。
【0019】
ところで、反射板10の仰角は、通常の場合、地表面(水平面)に対して30°〜65°に設置することがほとんどである。すなわち、地表面と被覆面112の裏面側までの角度が30°〜65°となる。よって、地表面から被覆面112の表面側までの角度が115°以上に設定されることになる。先にも説明したとおり、カバー体110に施された撥水加工は接触角度が110°以上であるので、反射板10を通常の状態で配設すれば、カバー体110の表面に付着した水滴の接触角度がカバー体110の撥水加工における接触角度を上回ることになり、カバー体110の被覆面112に付着した雪や水を容易に落下させることができる。
【0020】
ガイド体120は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンのいずれか単数または複数を含む発泡樹脂等により長尺で軽量な棒状体(柱状体や筒状体も含まれている)に形成されている。
ガイド体120の幅寸法と袋体130の内部空間における幅寸法の比率は、ガイド体120が袋体130の内部空間内で遊動可能であれば特に限定されるものではない。好ましくは、ガイド体120の幅寸法と袋体130の内部空間における幅寸法の比率が1:3〜1:7程度であり、より好ましくは1:4〜1:6の幅寸法比率の範囲であり、さらに好ましくは1:5の幅寸法の比率である。
また、ガイド体120の長手方向における長さ寸法は、袋体130の長手方向における内部空間の長さ寸法よりも短く形成されている。本実施形態における袋体130は、カバー体110と同じ布帛材料により形成されているが、この布帛材料に限定されるものではない。
このようにして形成された袋体130の内部空間においては、ガイド体120が任意の方向に移動自在に収容されている。
【0021】
図1からも明らかなように、ガイド体120はカバー体110の3か所に配設されている。また、反射板10に装着された状態のカバー体110を正面視した際に、ガイド体120はカバー体110の被覆面112において左右対称の配列で取り付けられている。本実施形態においては、被覆面112のほぼ中央位置において配設されたガイド体120の軸線に対して左右のガイド体120の軸線が傾斜した状態(非平行の状態)で配設されている。
【0022】
より詳細には、中央位置におけるガイド体120と左右のガイド体120との離間状態は、被覆面112の上方位置よりも下方位置の方が離間距離が長くなる配列(末広がり状態の配列)で配設されている。これにより被覆面112は、被覆面112に取り付けられたガイド体120によって所要範囲に区切られた状態になり、被覆面112には雪や水滴が流下する流下路140が形成されることになる。このようにして形成された流下路140は、下流側の方が流路断面積が大きくなっているから、被覆面112からの雪や水滴の流下が促進される点で好都合である。
また、流下路140は、雪や水の流下方向と直交方向における断面形状がわずかではあるが放物線形状をなしているので、カバー体110(被覆面112)の雪や水滴の落下(流下)ルートは、流下路140に沿わせることができる。これにより被覆面112上の雪や水滴が分離してしまうことがなく、かたまり(フロック)にさせた状態で流下路140に沿わせながら落下させることができる点において好都合である。
【0023】
以上、本願発明にかかるパラボラアンテナ用着雪着水防止カバーについて、実施形態に基づいて具体的に説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の改変を施すことができる。例えば、図1に示す形態の他に、図3や図4に示すような実施形態を採用することもできる。
ここで、図3に示す実施形態は、図1の変形例であり、被覆面112の中央位置に配設したガイド体120と、このガイド体120の軸線を対称軸として左右に配設されているガイド体120との配列状態が、被覆面112の上方位置におけるガイド体120どうしの離間距離が被覆面112の下方位置におけるガイド体120どうしの離間距離よりも長くなっている。このように流下路140の下流側をすぼませることにより、流下路140を流下する雪や水滴が流下路140の側壁部分に衝突しながら流下することになり、雪や水滴の流下速度を低減させることができる。このような実施形態は、大型の反射板10を有するパラボラアンテナ装置50において好都合である。
【0024】
また、図4に示す状態は、ガイド体120の軸線どうしがすべて平行になる配列で被覆面112に取り付けた実施形態である。ガイド体120の配設による被覆面112への振動付与だけであっても落雪の促進は十分に可能である。
この他にも特に図示はしないが、ガイド体120は、必ずしも被覆面112の左右方向における中心位置に配設されていなくてもよいし、袋体130に収容された状態でなく、被覆面112の裏面側(反射板10の反射面側)に直接取り付けた形態を採用することも可能である。
【0025】
さらに本実施形態においては、カバー体110を取り付ける反射板10の反射面が凹状表面に形成されているが、反射板10の表面がハードカバー等により平坦面形成されている反射板10であっても、本願発明を適用することができるのはもちろんである。このように反射面がハードカバーされた反射板10の場合、カバー体110を反射板10に装着した際に、反射面12とカバー体110との間に隙間を形成することができるように、カバー体110の裏面側(ガイド体120が取り付けられている面側)に図示しないスペーサを配設すればよい。このスペーサはカバー体110側および反射板10側のいずれに取り付けしてもよい。また、スペーサの部材厚さ(高さ)は、ガイド体120の部材厚さ(高さ)よりも厚く(高く)しておくことが必要である。
【0026】
さらにまた、カバー体110および袋体130を構成する布帛として具体的な商品名を例示しているが、カバー体110および袋体130を構成する布帛は、実施形態に例示した布帛に限定されるものではなく、他の撥水性を備えた布帛により構成されていてもよい。
さらには、被覆面112にガイド体120を取り付けることにより被覆面112の固有振動数を適宜調整することもできる。被覆面112の固有振動数をパラボラアンテナ用着雪着水防止カバー100の設置地域における平均風速に適合させておけば、カバー体110への着雪着水を防止するうえで好適である。
【符号の説明】
【0027】
10 反射板
12 反射面
14 裏面
20 保持部
22 アーム
24 仰角調整部
30 受信部
50 パラボラアンテナ装置
100 パラボラアンテナ用着雪着水カバー
110 カバー体
112 被覆面
114 折り返し部
116 筒状部
118 締結具
120 ガイド体
130 袋体
140 流下路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラボラアンテナの反射板に装着して用いられるパラボラアンテナ用着雪着水防止カバーであって、
周縁部が反射板の外縁を跨いで反射板の裏面側に折り返された状態で、反射板の反射面の前方を覆って反射板に装着可能なカバー体と、
該カバー体の、前記反射面側となる裏面に、前記カバー体が前記反射板に装着された状態において、前記カバー体の上下方向に伸びるようにして取り付けられた複数本のガイド体と、
を有することを特徴とするパラボラアンテナ用着雪着水防止カバー。
【請求項2】
前記カバー体が前記反射板に装着された状態を正面視した際において、前記ガイド体が左右対称となる配列で前記カバー体に装着されていることを特徴とする請求項1記載のパラボラアンテナ用着雪着水防止カバー。
【請求項3】
前記ガイド体は、前記カバー体の裏面に形成された袋体の中に、遊動自在に収容されていることを特徴とする請求項1または2記載のパラボラアンテナ用着雪着水防止カバー。
【請求項4】
前記ガイド体の幅寸法と前記袋体の内部空間における幅寸法の比率は1:3〜1:7であることを特徴とする請求項3記載のパラボラアンテナ用着雪着水防止カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−70273(P2012−70273A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214279(P2010−214279)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(391039601)中村製作所株式会社 (25)
【Fターム(参考)】