説明

パラレルメカニズムを備えた工作機械

【課題】小型のリンクヘッドを有するコンパクトなパラレルメカニズムを備えた工作機械を提供する。
【解決手段】リンクヘッド301を上面部及び下面部に配設された回転ジョイント355に回転可能に接続されたリンク集合体351により、直動ジョイント353を介して支持し、また、リンクヘッド301を上面部及び下面部に配設された回転ジョイント354に回転可能に接続されたリンク集合体350により支持する構成とし、リンクヘッド301の外部に加工ツール501を回転駆動するための回転モータを搭載する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば被加工物(ワーク)を加工するための工具(加工ツール)を変位させる場合に駆動力伝達機構として用いるパラレルメカニズムを備えた工作機械に関する。
【0002】
周知のように、工作機械には研削盤及び旋盤・フライス盤等があり、これら各種の工作機械はその加工内容に応じて選択的に用いられる。
【0003】
このような工作機械においては、砥石,切削工具等の工具を支持する主軸頭や、ワークを支持するテーブル等を所望の位置に移動させたり、所望の角度で回動させたりすることにより、ワークと工具とを相対的に変位させて研削や切削等の加工が行われる。
【0004】
近年、この種の工作機械には、高剛性・高精度・高速性を実現する機構として有効であることから、ベースからリンクヘッドまでが並列に連結されたリンクを有するパラレルメカニズム及びこれを備えた工作機械が知られている(例えば特許文献1)。
【0005】
この工作機械のパラレルメカニズムは、リンクヘッドの3自由度の回動及び移動の少なくとも一方の制御が可能であって、リンクヘッドを駆動するための4個のアクチュエータと、これら4個のアクチュエータにそれぞれ接続される4個のリンクを含み、リンクヘッドに接続されるリンク集合体とを備え、これらリンク集合体とリンクヘッドとの間に介在する回転ジョイントを直動ジョイントを介して接続することにより、リンクヘッドに対して一軸線方向に相対移動可能とされている。
【0006】
このように構成されたパラレルメカニズムにおいては、回転ジョイントがリンクヘッド上で移動可能であるため、各構成部品の加工精度や構成部品同士の組付精度が悪い場合や、またリンクが使用時等の熱変化によって伸縮する場合等の機構パラメータPに起因する各種誤差を吸収することができ、これら寸法誤差に起因する構成部品及びアクチュエータへの過負荷の発生を抑制することができる。
【特許文献1】特開2007−144533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の工作機械によると、砥石等の加工ツールを回転駆動するためのモータはリンクヘッドの内部に配置されたビルトイン型とされており、リンクヘッド自体が大型化してしまう。このため、リンク機構が大型化してコンパクトなパラレルメカニズムを備えた工作機械を構成することが困難であった。
【0008】
従って、本発明の目的は、小型のリンクヘッドを有するコンパクトなパラレルメカニズムを備えた工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明は、上記目的を達成するために、ベッドと、一端が第1の回動部を介して第1の軸線の回りに互いに回動可能に接続され、他端が前記ベッドに対してそれぞれ前記第1の軸線と平行な軸線の回りに回動可能かつ前記第1の軸線と直交する第2の軸線に沿って移動可能に支持された1対のリンクから構成される第1のリンク機構と、前記第1の軸線方向において前記第1のリンク機構の外側に配置され、一端が第2の回動部を介して前記第1の軸線と平行な軸線の回りに互いに回動可能に接続され、他端が前記ベッドに対してそれぞれ前記第1の軸線と平行な軸線の回りに回動可能かつ前記第2の軸線に沿って移動可能に支持された1対のリンクから構成される第2のリンク機構と、前記各リンクの他端を前記ベッドに対して前記第2の軸線に沿ってそれぞれ移動させる駆動機構と、前記第1の回動部が、前記第1の軸線と直交する一軸線方向に、前記第1のリンク機構の前記1対のそれぞれのリンクにより対向する位置から両持ち支持されて、前記第1の軸線と直交する一軸線方向に相対移動可能に接続され、また、前記第2の回動部が、前記第2のリンク機構の前記1対のそれぞれのリンクにより対向する位置から両持ち支持されて、前記第1の回動部の接続位置とは前記第1の軸線と直交する方向にオフセットされた位置で相対移動不能に接続され、回転駆動される加工ツールを備えたリンクヘッドとを有し、前記リンクヘッドは、前記加工ツールを回転駆動するための回転駆動部を前記リンクヘッドの外部に搭載し、また、前記駆動機構を制御することにより、前記リンクヘッドを前記第1の軸線と直交する平面内での移動と前記第1の軸線と平行な軸回りの回転動作を行うことを特徴とするパラレルメカニズムを備えた工作機械を提供する。
[2]前記回転駆動部は、前記第2の回動部と同心状に配置されて回転する駆動モータであることを特徴とする上記[1]に記載の工作機械であってもよい。
[3]また、前記第2の回動部の前記回動軸は、前記回動軸方向に中空部が形成された中空構造とされ、前記中空部を前記駆動モータのモータ軸が貫通した構成とされていることを特徴とする上記[2]に記載の工作機械であってもよい。
[4]また、前記駆動モータは、前記加工ツールをトラクションドライブ方式により回転駆動することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の工作機械であってもよい。
[5]また、前記リンクヘッドは、前記第1のリンク機構により上下対向する位置から両持ち支持され、また、前記第2のリンク機構により上下対向する位置から両持ち支持されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の工作機械であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、小型のリンクヘッドを有するコンパクトなパラレルメカニズムを備えた工作機械を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(本発明の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る工作機械の全体を説明するために示す平面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る工作機械の要部を説明するために示す斜視図である。図3は、図2におけるリンクヘッド部分のA−A断面を示す断面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る工作機械の制御装置を説明するために示すブロック図である。なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれz軸(第2の軸線)方向(図1における主軸方向)及びx軸(第3の軸線)方向(図1における紙面に平行かつz軸に直交する方向)・y軸(第1の軸線)方向(図1における紙面に垂直でz軸に直交する方向)とする。
【0012】
(工作機械の全体構成)
図1及び図2において、符号1で示す工作機械は、例えば円筒研削盤からなり、工作機械本体2及び制御装置3・付属装置(図示せず)から大略構成されている。
【0013】
(工作機械本体2の構成)
工作機械本体2は、図1に示すように、ワークWを回転駆動可能に支持するワーク支持駆動ユニット100と、砥石等の加工ツール501が着脱可能に装着されるホイール回転主軸ユニット200と、リンクヘッド301をツール取付側に保持するパラレルメカニズム300とを備えている。
【0014】
(ワーク支持駆動ユニット100の構成)
ワーク支持駆動ユニット100は、主軸台ベース101及び左右2つの主軸台103を有し、ベッド(基台)10上の前方端部(図1では下側)に載置されている。主軸台ベース101の背面部(図1では上側)には、左右(z軸)方向に所定の間隔をもって並列し、かつz軸方向に延在する左右2つの主軸台スライドガイド102が配設されている。左右2つの主軸台103は、それぞれが対応する主軸台スライドガイド102上にz軸方向に沿って移動自在に配設されている。そして、各主軸台スライドガイド102上における所定の位置に位置決めされ、その両中心部間でワークWを挟持するように構成されている。左右2つの主軸台103には、それぞれ主軸105を所定の回転数で回転駆動する主軸駆動モータ104が搭載されている。
【0015】
(ホイール回転主軸ユニット200の構成)
ホイール回転主軸ユニット200は、加工ツール501の被把持部を把持可能なホイール回転主軸201及びこのホイール回転主軸201を回転駆動するツール駆動モータ401を有し、リンクヘッド301に搭載されている。そして、ツール駆動モータ401の回転駆動力をトラクションドライブ方式によりホイール回転主軸201に伝達し、さらにホイール回転主軸201上の加工ツール501を所定の回転数で回転駆動するように構成されている。
【0016】
(パラレルメカニズム300の構成)
パラレルメカニズム300は、図2に示すように、1対のリンク集合体(リンク機構)350,351を有する多自由度(直線2軸及び回転1軸の3自由度)リンク機構からなり、ワーク支持駆動ユニット100の後方に配設され、かつベッド10の立ち上がり部(図示せず)にz軸方向に延びるスライダ案内用のレール360,363を介して片持ち支持されている。そして、前述したようにツール取付側にリンクヘッド301を保持するように構成されている。スライダ案内用のレール360,363は、z軸方向に延び、y軸方向に互いに所定の間隔をもって並列する位置に配置されている。
【0017】
リンクヘッド301は、リンク集合体350,351のリンクヘッド側端部によって保持され、ベッド10に対しy軸と直交する同一の仮想面(移動・回動仮想面)上でy軸回りに回動し、かつx軸・z軸の2方向に移動し得るように構成されている。
【0018】
リンクヘッド301の上面部及び下面部には、加工ツール501の回転軸線Tと平行なリニアガイド352及びこのリニアガイド352上を矢印方向に移動可能な被検出部付きの直動ジョイント(変位機構)353がそれぞれ配設されている。直動ジョイント353には、回転ジョイント354にリンクヘッド301の移動・回動仮想面内で回転軸線Tに沿って並列する第1の回動部(接続部)であって、y軸と平行な軸線の回りに回転する1自由度の回転ジョイント355が配設されている。これにより、回転ジョイント355が直動ジョイント353と共にリニアガイド352上を移動される。また、リンクヘッド301の上面部には、直動ジョイント353の被検出部(スリット)353Aを検出し、両回転ジョイント354,355間の距離Lの誤差を検出するためのリニアスケール等の位置センサ380(図4に示す)が配設されている。
【0019】
図3に示すように、リンクヘッド301の上面部及び下面部において、回転ジョイント355は、リンクヘッド301の上面部及び下面部に設けられたリニアガイド352に立設された直動ジョイント軸371と軸受372、軸受372の内輪間に配置されるスペーサ373、および、軸受372にプリロードをかけて固定する止輪374で構成されている。リンク351A、351Bはそれぞれ軸受372を介して直動ジョイント軸371に回転可能に取付けられている。尚、リンクヘッド301の上面部及び下面部に設けられた直動ジョイント353は、リニアガイド352により上面部及び下面部で独立に移動可能であるが、直動ジョイント軸371をリンクヘッド301を一部中空にしてそこを貫通させて上下共通の軸とすることにより、リンクヘッド301の上面部及び下面部における直動ジョイント353の移動を共通とする構成としてもよい。
【0020】
リンクヘッド301の上面部及び下面部には、回転ジョイント355の配設位置とは直動ジョイント353の移動方向にオフセットされた位置で移動不能な第2の回動部(接続部)であって、y軸と平行な軸線の回りに回転する1自由度の回転ジョイント354がそれぞれ配設されている。
【0021】
すなわち、リンクヘッド301は、上面部及び下面部に配設された回転ジョイント355に回転可能に接続されたリンク集合体351により、直動ジョイント353を介して、上下方向から挟み込まれるように両持ちで支持されている。また、リンクヘッド301は、上面部及び下面部に配設された回転ジョイント354に回転可能に接続されたリンク集合体350により、上下方向から挟み込まれるように両持ちで支持されている。
【0022】
尚、上記したように、リンクヘッド301は、第1のリンク機構(351A、351B)により上下対向する位置から両持ち支持され、また、第2のリンク機構(350A、350B)により上下対向する位置から両持ち支持されているが、それぞれ上または下方向からの片持ち支持であってもよい。片持ち支持の場合は、リンク350A、350B、351A、351Bは後述するような略コの字形状でなくてよい。
【0023】
リンク集合体350,351は、リンクヘッド301の移動・回動仮想面を水平面とする位置に配置され、リンク350A,350B,351A,351Bの重力(y軸)方向寸法が幅広の寸法に設定されている(リンク350A,350Bは、略コの字形状で、351A,351Bと共にy軸方向に厚さをもつ板状部材である)。
【0024】
すなわち、リンク集合体(第1のリンク機構)351と、y軸方向において第1のリンク機構の外側に配置されたリンク集合体(第2のリンク機構)350とが所定の位置関係で配設されており、リンク集合体(第1のリンク機構)351とリンク集合体(第2のリンク機構)350との干渉を回避するために、リンク350A,350Bを略コの字形状で形成することで、リンク集合体(第1のリンク機構)351とリンク集合体(第2のリンク機構)350とが入れ子構造とされている。
【0025】
ここで、スライダ案内用のレール360,363は、重力方向に並設され、スライダ361,362,364,365を水平方向に案内するように構成されている。リンク351A,351Bのヘッドリンク側端部はリンクヘッド301を挟み込むようにして直動ジョイント353を介して回転ジョイント355に移動・回動可能に連結され、そのレール側端部はスライダ案内用のレール363にスライダ364,365及び回転ジョイント383,384を介して移動・回動可能に連結されている。また、リンク350A,350Bのヘッドリンク側端部はヘッドリンク301に回転ジョイント354を介して回動可能に連結され、そのレール側端部はスライダ案内用のレール360にスライダ361,362及び回転ジョイント381,382を介して移動・回動可能に連結されている。
【0026】
一方のリンク集合体(第1のリンク機構)351は、ヘッドリンク301の移動・回動仮想面(リンク集合体351が配置される仮想面と平行な仮想面)と平行な仮想面上で揺動可能な2つのリンク351A,351Bを有し、この2つのリンクのy軸方向の中心はリンク集合体350のy軸方向の中心と略一致するよう配設されている。
【0027】
リンク351Aは、一方側のリンク端部がスライダ案内用のレール363にスライダ364及び回転ジョイント383を介して移動・回動可能に連結され、他方側のリンク端部がリンクヘッド301に直動ジョイント353及び回転ジョイント355を介して移動・回動可能に連結されている。そして、アクチュエータ358によってスライダ案内用のレール363上を、また直動ジョイント353及び回転ジョイント355を介してリニアガイド352上をそれぞれ移動し得るように構成されている。ここで、回転ジョイント383は、y軸と平行な軸線の回りに回転する1自由度のジョイントとして機能する。
【0028】
リンク351Bは、一方側のリンク端部がスライダ案内用のレール363にスライダ365及び回転ジョイント384を介して移動・回動可能に連結され、他方側のリンク端部がリンクヘッド301に直動ジョイント353及び回転ジョイント355を介して移動・回動可能に連結されている。そして、アクチュエータ359によってスライダ案内用のレール363上を移動し、かつリンク351A(回転ジョイント383)に対して接近・離間し得るように、また直動ジョイント353及び回転ジョイント355を介してリニアガイド352上を移動し得るようにそれぞれ構成されている。ここで、回転ジョイント384は、y軸と平行な軸線の回りに回転する1自由度のジョイントとして機能する。
【0029】
他方のリンク集合体(第2のリンク機構)350は、リンクヘッド301の移動・回動仮想面と平行な仮想面上で揺動可能な2つのリンク350A,350Bを有している。
【0030】
リンク350Aは、一方側のリンク端部がベッド10上におけるスライダ案内用のレール360にスライダ361及び回転ジョイント381を介して移動・回動可能に連結され、他方側のリンク端部が回転ジョイント354に回動可能に連結されている。そして、アクチュエータ356によってスライダ案内用のレール360上を移動し得るように構成されている。ここで、回転ジョイント381は、y軸と平行な軸線の回りに回転する1自由度のジョイントとして機能する。
【0031】
リンク350Bは、一方側のリンク端部がスライダ案内用のレール360にスライダ362及び回転ジョイント382を介して移動・回動可能に連結され、他方側のリンク端部が回転ジョイント354に回動可能に連結されている。そして、アクチュエータ357によってスライダ案内用のレール360上を移動し、リンク350A(回転ジョイント381)に対して接近・離間し得るように構成されている。ここで、回転ジョイント382は、y軸と平行な軸線の回りに回転する1自由度のジョイントとして機能する。
【0032】
図3に示すように、リンクヘッド301の上面部において、リンクヘッドハウジング302には中空部が形成された中空構造の回動軸391が固定されている。回転ジョイント354は、回動軸391、軸受392、軸受392の内輪間に配置されるスペーサ393、および、軸受392にプリロードをかけて固定する止輪394で構成されている。リンク350A、350Bは、軸受392を介して回動軸391を中心として回転可能に連結されている。
【0033】
一方、リンクヘッド301の下面部においては、中空部を有しない回動軸395がリンクヘッドハウジング302に固定され、上面部と同様に、回転ジョイント354が、回動軸395、軸受396、軸受396の内輪間に配置されるスペーサ397、および、軸受396にプリロードをかけて固定する止輪398で構成されている。下面部側においても、同様に、リンク350A、350Bは、軸受396を介して回動軸395を中心として回転可能に連結されている。
【0034】
リンクヘッド301の上面部において、加工ツール501を回転駆動するための回転駆動部としてのツール駆動モータ401が、回動軸391と同心状(同軸)に固定された状態でリンクヘッド301の外部に搭載されている。ツール駆動モータ401のモータ軸402は、その先端部に回転駆動力を伝達するためのテーパ面403が形成されており、モータ軸402は回動軸391の中空部を貫通し、テーパ面403は後述するホイール回転主軸201のテーパ面202と接する構成とされている。
【0035】
ツール駆動モータ401およびモータ軸402と直交する方向には、加工ツール501を回転駆動するためのホイール回転主軸201が軸受412を介してリンクヘッドハウジング302に回転可能に取付けられている。ホイール回転主軸201は、段付き形状とされ、両端を軸受412で支持され、止輪413で軸受412にプリロードをかけた状態で軸方向の固定がされている。また、ホイール回転主軸201には、回転駆動力が伝達されるテーパ面202が形成され、このテーパ面202は、モータ軸402のテーパ面403と接する位置に所定の角度関係で形成されている。
【0036】
(工作機械1の加工ツールの回転駆動)
工作機械1がワークWを加工する場合において、ツール駆動モータ401の回転駆動力は、トラクションドライブ方式により加工ツール501に伝達される。トラクションドライブ方式は、テーパ面403とテーパ面202との間における油膜を介した転がりによる動力伝達方式であり、ツール駆動モータ401の回転がテーパ面403、202を介してホイール回転主軸201に伝達されて、ホイール回転主軸201に装着された砥石軸等の加工ツール501は所定の回転数で回転駆動され、ワークWに種々の加工を施す。尚、ツール駆動モータ401からホイール回転主軸201への回転駆動力の伝達はこれに限られず、油膜を介さずに摩擦により回転動力を伝達するフリクションドライブ方式や、ギヤ、ベルト等による動力伝達方式であってもよい。
【0037】
(制御装置3の構成)
制御装置3は、図4に示すように、CPU(中央演算処理装置)71及びメモリ72・インターフェイス(I/F)73〜75を備え、直交座標系で与えられるリンクヘッド301の移動位置情報に対応する指令値Uを機構パラメータPに基づいてアクチュエータ356〜359の出力値に変換し、これら各アクチュエータ356〜359を駆動制御するように構成されている。
【0038】
(CPU71の構成)
CPU71は、メモリ72あるいは外部記憶装置78に記憶された加工プログラムを読み出し解析し、直交座標系で与えられるリンクヘッド301の移動位置・姿勢情報を機構パラメータPに基づき各アクチュエータ356〜359への駆動指令値に変換してサーボモータユニット80へ出力する。
【0039】
(メモリ72の構成)
メモリ72には、加工ツール501による実加工処理を実行するための加工プログラムや機構パラメータP等の各種情報が記憶されている。
【0040】
(インターフェース73〜75の構成)
インターフェース73には、アクチュエータ(サーボモータ)356〜359を駆動するサーボモータユニット80(81〜84)が接続されている。サーボモータユニット81〜84は、CPU71からの指令値に基づいてアクチュエータ356〜359をそれぞれ駆動し、これら各アクチュエータ356〜359のモータ回転検出用エンコーダ31〜34からの出力によってフィードバック制御を実行する。インターフェース74には、加工データ等を入力するためのキーボード(KB)76及び加工データや工作機械1の状態等を表示する画像表示装置(CRT)77・加工データを記憶する外部記憶装置78が接続されている。インターフェース75には位置センサ380が接続されている。
【0041】
(付属装置の構成)
付属装置は、オイル供給装置・冷却装置・エア供給装置・クーラント供給装置と、これら装置を工作機械本体2に接続するダクト装置等とから構成されている。
【0042】
(工作機械1のリンクヘッドの動作)
次に、本実施の形態に係る工作機械の動作につき、図5〜図8を用いて説明する。図5は、本発明の形態に係る工作機械におけるリンクヘッドのx軸平行動作を説明するために示す平面図である。図6は、本発明の形態に係る工作機械におけるリンクヘッドの回動動作を説明するために示す平面図である。図7は、本発明の形態に係る工作機械におけるリンクヘッドのx−z軸平行動作を説明するために示す平面図である。図8は、本発明の形態に係る工作機械におけるリンクヘッドのx−z軸平行・回動動作を説明するために示す平面図である。
【0043】
(x軸平行動作)
図5に実線で示す初期位置から回転ジョイント381,382(スライダ361,362)を同一の移動量z1で互いに離間する方向にスライダ案内用のレール360に沿って移動させるとともに、回転ジョイント383,384(スライダ364,365)を同一の移動量z2で互いに離間する方向にスライダ案内用のレール363に沿って移動させると、加工ツール501の回転軸線Tを基準線Oに合致させた状態でリンクヘッド301がx軸方向に移動して図5に2点鎖線で示す位置に配置される。移動量z1、z2は、各リンク350A,350B,351A,351Bのリンク長(RL1,RL2,RL3,RL4)から、リンクヘッド301がx軸方向に移動するように決定される。
【0044】
(回動動作)
図6に実線で示す初期位置から回転ジョイント381,382(スライダ361,362)を、例えば、互いに異なる移動量z1,z2で移動させるとともに、回転ジョイント383,384(スライダ364,365)を互いに異なる移動量z3,z4で移動させると、リンクヘッド301がy軸を中心に時計方向に回動して例えば加工ツール501の回転軸線Tを基準線Oと直角にした状態で図6に2点鎖線で示す位置に配置される。移動量z1〜z4は、各リンク350A,350B,351A,351Bのリンク長(RL1,RL2,RL3,RL4)から、リンクヘッド301がy軸を中心に時計方向に回動するように決定される。また、反時計方向に回動させることも可能である。
【0045】
(x−z軸平行動作)
図7に実線で示す初期位置から回転ジョイント381,382(スライダ361,362)を互いに異なる移動量z1,z2でそれぞれ移動させるとともに、回転ジョイント383,384(スライダ364,365)を互いに異なる移動量z3,z4でそれぞれ移動させると、リンクヘッド301が斜方に移動して図7に2点鎖線で示す位置に平行移動して配置される。移動量z1〜z4は、各リンク350A,350B,351A,351Bのリンク長(RL1,RL2,RL3,RL4)から、リンクヘッド301が平行移動するように決定される。
【0046】
(x−z軸平行・回動動作)
図8に実線で示す移動位置から回転ジョイント381,382(スライダ361,362)を互いに異なる移動量z1,z2でそれぞれ移動させるとともに、回転ジョイント383,384(スライダ364,365)を互いに異なる移動量z3,z4でそれぞれ移動させると、リンクヘッド301が斜方に移動するとともに、y軸を中心に時計方向に回動して図8に2点鎖線で示す位置に配置される。この場合、回転ジョイント384(スライダ365)の移動量z4は、(x−z軸平行動作)の場合における回転ジョイント384(スライダ365)の移動量z4より大きい移動量に設定されている。また、移動量z1〜z4は、各リンク350A,350B,351A,351Bのリンク長(RL1,RL2,RL3,RL4)から、リンクヘッド301が平行移動及び回転移動するように決定される。
【0047】
このように、本実施の形態においては、リンクヘッド301をx軸及びz軸に沿って移動させるとともに、y軸回りに回動させることにより、リンクヘッド301の位置及び姿勢を制御し、左右2つの主軸台103によって挟持されたワークWに対する加工を行うことができる。
【0048】
この場合、スライダ361,362,364,365を位置決めすると、リンクヘッド301上の回転ジョイント354,355の位置がそれぞれ決定されるため、リンクヘッド301の移動・回動位置(加工ツール501の先端位置)が決定される。このため、リンクヘッド301を所望の移動・回動位置に位置決めするには、これら移動・回動位置から特定の演算式(逆変換式)に基づいてスライダ361,362,364,365の位置を演算し、これら演算値に対応する位置にスライダ361,362,364,365を移動させる。
【0049】
図9は、本発明の実施の形態に係る工作機械におけるスライダの位置を求める手順を説明するために示す平面図である。特定の逆変換式を用いてスライダ361,362,364,365の位置(移動量)を求める手順について説明する。ここで、加工ツール501の先端位置の座標を(x,z,B)とすると、回転ジョイント354の座標(x1,z1)及び回転ジョイント355の座標(x2,z2)を求めると、次に示すようになる。
【0050】
【数1】

【0051】
これより、アクチュエータ356〜359によるスライダ361,362,364,365の移動量(アクチュエータの座標)U=(U1,U2,U3,U4)は、次のように求められる。
【0052】
【数2】

【0053】
なお、スライド原点位置(SLO1x,SLO1z,SLO2x,SLO2z,SLO3x,SLO3z,SLO4x,SLO4z)及びスライド角度(SLA1,SLA2,SLA3,SLA4)・リンク長(RL1,RL2,RL3,RL4)は、図9に示すようなパラレルメカニズム300の機構パラメータPである。但し、本実施例では、上記の一般式において、スライダ361,362,364,365は、それぞれスライダ案内用のレール360,363上を移動する構成としているので、スライド角度(SLA1,SLA2,SLA3,SLA4)はゼロである。
【0054】
このようにして求められるアクチュエータ座標Uにスライダ361,362,364,365を位置決めすることにより、リンクヘッド301の位置及び姿勢、すなわち、(x、z、B)を制御することができる。この場合、回転ジョイント354と回転ジョイント355のx−z平面での距離Lを逆変換式の中で定数としているため、直動ジョイント353(図2に示す)はリンクヘッド301に対して理論上は変位しない。ところが、現実には、パラレルメカニズム300を構成する各構成部品の製造誤差,組付誤差あるいは温度変化等の使用環境や長期使用による経年変化等により機構パラメータPは理論値通りではなく誤差を含むため、直動ジョイント353は変位してこれら誤差を吸収する。
【0055】
本実施の形態においては、リンクヘッドがx軸平行動作・z軸平行動作・y軸回りの回動動作を行うことができる。すなわち、リンクヘッド301は3自由度をもって動作することが可能である。図10(a)及び(b)は、リンクが3つである場合と比べてリンクが4つである場合の利点について説明するために示す平面図である。リンクヘッド301が3自由度の動作を達成するためには、図10(a)に示すように3つのリンク350A,350B,351Aをそれぞれ駆動する3つの駆動機構(アクチュエータ)を備えることが必要十分条件である。これに対して、本実施の形態におけるパラレルメカニズム300は、図10(b)に示すように4つのリンク350A,350B,351A,351Bをそれぞれ駆動する4つの駆動機構(アクチュエータ356〜359)を備えている。これには冗長な駆動機構が存在する。冗長な駆動機構を備えた他の理由は、パラレルメカニズムの課題である特異点が存在しないためである。冗長な自由度をもたない図10(a)の構成では、U1軸,U2軸を固定し、U3軸がリンクヘッド301を回動させようとした場合、2つの回転ジョイント354,355を結ぶ線分にリンク351Aが整列する状態においてU3軸を移動させることができない、いわゆる過可動特異点が存在する。これに対して、本実施の形態においては、図10(b)に示すように冗長な駆動軸(この状態ではU4軸)を有するため、特異点が存在しない。
【0056】
(本発明の実施の形態の効果)
以上説明した本発明の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0057】
(1)加工ツール501を回転駆動するためのツール駆動モータ401は、回動軸391と同心状(同軸)に固定された状態でリンクヘッド301の外部に搭載されており、リンクヘッドハウジング302の内部に組み込まれたビルトイン型ではない。このため、リンクヘッド301は小型形状にできてコンパクトなパラレルメカニズムが可能となり、このパラレルメカニズムを備えた工作機械により、リンクヘッド301(加工ツール501)の加工時の回転半径が小さくでき、加工範囲の大きな工作機械が可能となる。
(2)ツール駆動モータ401の回転駆動力は、トラクションドライブ方式により加工ツール501に伝達される構成としているので、加工精度および加工動力に優れた工作機械が可能となる。
(3)請求項5に記載した構成、すなわち、リンクヘッド301を回転ジョイント354および回転ジョイント355によりそれぞれ上下対向する位置から両持ち支持する構成としているので、ツール駆動モータ401をリンクヘッド301の外部に搭載していても剛性に優れたパラレルメカニズムを備えた工作機械が可能となる。
【0058】
以上、本発明の工作機械を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0059】
(1)実施の形態では、リンク350A,350B,351A,351Bが水平面内で移動する構成としたが、上記示したパラレルメカニズム300全体を傾け、リンク350A,350B,351A,351Bが垂直面内で移動する構成としてもよい。
【0060】
(2)実施の形態では、各スライダ案内用のレール360,365をy軸方向のみならずx軸方向にも離間させて平行に配置する場合について説明したが、本発明はx軸方向には離間させる必要はなく、ベッド10(立ち上がり部)の同一平面状に両スライダ案内用のレール360,365を取り付けるようにしてもよい。
【0061】
(3)実施の形態では、砥石又はエンドミルを加工ツール501とする工作機械1に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば旋削用電着ホイール等の旋削工具あるいはレーザ焼入れヘッド等の熱処理工具・表面仕上げ工具等を加工ツールとする他の工作機械に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る工作機械の全体を説明するために示す平面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る工作機械の要部を説明するために示す斜視図である。
【図3】図3は、図2におけるリンクヘッド部分のA−A断面を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る工作機械の制御装置を説明するために示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の形態に係る工作機械におけるリンクヘッドのx軸平行動作を説明するために示す平面図である。
【図6】図6は、本発明の形態に係る工作機械におけるリンクヘッドの回動動作を説明するために示す平面図である。
【図7】図7は、本発明の形態に係る工作機械におけるリンクヘッドのx−z軸平行動作を説明するために示す平面図である。
【図8】図8は、本発明の形態に係る工作機械におけるリンクヘッドのx−z軸平行・回動動作を説明するために示す平面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る工作機械におけるスライダの位置を求める手順を説明するために示す平面図である。
【図10】図10(a)及び(b)は、リンクが3つである場合と比べてリンクが4つである場合の利点について説明するために示す平面図である。
【符号の説明】
【0063】
1…工作機械
2…工作機械本体
3…制御装置
10…ベッド
10A…立ち上がり部
31〜34…モータ回転検出用エンコーダ
71…CPU
72…メモリ
73〜75…インターフェース
76…キーボード
77…画像表示装置
78…外部記憶装置
80〜84…サーボモータユニット
100…ワーク支持駆動ユニット
101…主軸台ベース
102…主軸台スライドガイド
103…主軸台
104…主軸駆動モータ
105…主軸
200…ホイール回転主軸ユニット
201…ホイール回転主軸
300…パラレルメカニズム
301…リンクヘッド
302…リンクヘッドハウジング
350,351…リンク集合体
350A,350B,351A,351B…リンク
352…リニアガイド
353…直動ジョイント
353A…被検出部
354,355,381〜384…回転ジョイント
356〜359…アクチュエータ
360,363…スライダ案内用のレール
361,362,364,365…スライダ
371…直動ジョイント軸
372、392、396、412…軸受
373、393、397…スペーサ
374、394、398、413…止輪
380…位置センサ
391、395…回動軸
401…ツール駆動モータ
402…モータ軸
403,202…テーパ面
501…加工ツール
O…基準線
T…回転軸線
W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
一端が第1の回動部を介して第1の軸線の回りに互いに回動可能に接続され、他端が前記ベッドに対してそれぞれ前記第1の軸線と平行な軸線の回りに回動可能かつ前記第1の軸線と直交する第2の軸線に沿って移動可能に支持された1対のリンクから構成される第1のリンク機構と、
前記第1の軸線方向において前記第1のリンク機構の外側に配置され、一端が第2の回動部を介して前記第1の軸線と平行な軸線の回りに互いに回動可能に接続され、他端が前記ベッドに対してそれぞれ前記第1の軸線と平行な軸線の回りに回動可能かつ前記第2の軸線に沿って移動可能に支持された1対のリンクから構成される第2のリンク機構と、
前記各リンクの他端を前記ベッドに対して前記第2の軸線に沿ってそれぞれ移動させる駆動機構と、
前記第1の回動部が、前記第1の軸線と直交する一軸線方向に、前記第1のリンク機構の前記1対のそれぞれのリンクにより対向する位置から両持ち支持されて、前記第1の軸線と直交する一軸線方向に相対移動可能に接続され、また、前記第2の回動部が、前記第2のリンク機構の前記1対のそれぞれのリンクにより対向する位置から両持ち支持されて、前記第1の回動部の接続位置とは前記第1の軸線と直交する方向にオフセットされた位置で相対移動不能に接続され、回転駆動される加工ツールを備えたリンクヘッドとを有し、
前記リンクヘッドは、前記加工ツールを回転駆動するための回転駆動部を前記リンクヘッドの外部に搭載し、また、前記駆動機構を制御することにより、前記リンクヘッドを前記第1の軸線と直交する平面内での移動と前記第1の軸線と平行な軸回りの回転動作を行うことを特徴とするパラレルメカニズムを備えた工作機械。
【請求項2】
前記回転駆動部は、前記第2の回動部と同心状に配置されて回転する駆動モータであることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第2の回動部の前記回動軸は、前記回動軸方向に中空部が形成された中空構造とされ、前記中空部を前記駆動モータのモータ軸が貫通した構成とされていることを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記駆動モータは、前記加工ツールをトラクションドライブ方式により回転駆動することを特徴とする請求項2または3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記リンクヘッドは、前記第1のリンク機構により上下対向する位置から両持ち支持され、また、前記第2のリンク機構により上下対向する位置から両持ち支持されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−23056(P2009−23056A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189603(P2007−189603)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】