説明

パリレンメンブレンフィルターの使用

本発明は、パリレンメンブレンフィルター(110)、フィルター装置、ならびにそれらを作製する方法、および細胞および粒子のサイズによる機械的分離においてそれらを用いる方法を提供する。高い性能指数および細かく制御された孔のサイズ(125、135)を有するパリレンメンブレンフィルターの提供により、様々な生物の流体および他の流体中の細胞および粒子の、サイズによる分離が可能になる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、流体中の粒子および細胞の機械的濾過に役立つポリマーメンブレンに関する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本出願は、米国特許法第119条 (e)により、2005年4月21日出願の米国仮特許出願第60/673,571号について優先権を主張し;ならびに2006年4月20日出願の米国特許出願、出願番号未定、タイトル:MEMBRANE FILTER FOR CAPTURING CIRCULATING TUMOR CELLS (代理人整理番号:020859-008610US);および2006年4月20日出願の米国特許出願、出願番号未定、タイトル:USES OF PARYLENE MEMBRANE FILTERS (代理人整理番号:020859-008620US)、について優先権を主張し、これらは参照により、その全体がすべての目的のために本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
機械的フィルターは、様々な流体媒質中の粒子および細胞を除去し、濾過し、収集し、濃縮し、および解析するために用いることができる。
【0004】
細胞の濾過は、疾病の診断を支援することができる。例えば、癌の予後診断および対処の最も重要な決定要因の1つは、初診時および処置中における腫瘍細胞の転移性播種の有無である。リンパ節または骨髄への腫瘍細胞の初期の拡散を、それが末梢血中に存在する場合は、循環腫瘍細胞(CTC)と呼ぶ。これらのCTCが原発性腫瘍を完全除去した患者中にさえ存在し得ることは、十分確立されている。CTCの検出は、疾病進行の可能性を決定する有用な手段であることが判明している。同様に、生体体液中に見出される他の種類の細胞(例えば細菌細胞、免疫系細胞、胎児細胞)を、濾過法によって検出し、収集し、または得ることができることは、診断および治療の両方において大きな臨床的価値があると考えられる。
【0005】
さらに、血液およびCTCに関して、赤血球が圧倒的に多いことが、血液中に極めて少ないレベルでしか見出されない細胞の検出または取得を困難にする可能性がある。CTCは、血液中に、100億個の血球細胞あたりおより1個存在する。現在利用できる技術は、循環腫瘍細胞を、必要な感度、効率、および特異性で同定するには不十分である。腫瘍細胞を捕獲するための、磁気ビーズ、密度勾配遠心分離、またはポリカーボネート濾過を用いる既存の技術は通常、回収率が悪く、また何時間もの長い処理時間がかかる。
【0006】
細胞を分離する1つの方法は、サイズによるものである。多くの研究グループが、機械的濾過を用いる細胞分離を今までに報告した。例えば、3.5μのギャップを有する堰型フィルターは、白血球を7%の捕獲効率および>99%の赤血球拒絶率で単離できたことが実証された(Wilding P, et al., Anal Biochem. 257(2):95-100 (1988)(非特許文献1); Yuen PK, et al., Genome Res. 11(3):405-12 (2001)(非特許文献2); およびMohamed H, et al., IEEE Trans Nanobioscience 3(4):251-6 (2004)(非特許文献3)を参照のこと)。この研究は、分離のために特別の緩衝液条件を作製する必要性がないという、そのような装置の魅力的な長所を明らかにした。しかし、捕獲効率を改善するために、一層の研究が必要であることは明らかである。
【0007】
循環腫瘍細胞は、血液中に見出される他の主要な細胞型と、サイズが実質的に異なる可能性があるので、血液中の循環腫瘍細胞に機械的濾過法を適用することができる。

【0008】
ごく少数の関心対象の癌細胞が大容量の血液中に存在する場合に必要とされる、大量の試料の取扱いのためには、メンブレンフィルターは大きな処理能力を必要とする。いくつかのグループが、市販のポリカーボネートフィルタ−による全血からの腫瘍細胞の分離を報告した(Vona G, et al., Am J Pathol. 160(1):51-8 (2002)(非特許文献4); Kahn HJ, et al., Breast Cancer Res Treat;86(3):237-47 (2004)(非特許文献5)を参照のこと)。しかし、血液を機械的に濾過するために用いられてきた既存の市販メンブレンフィルターは、回収率が低い。そのようなフィルターは、しばしばランダムかつまばらに分布する孔を含み、その多くは、顕著に融合されて大きな開口となり、より低い回収率となる可能性がある。
【0009】
正確な幾何学的制御および厚み制御がなされている微細加工されたメンブレンフィルターは、よりよい性能を有する可能性がある。融合した2重孔または3重孔の欠陥なしで、開口率を大きくすることができる。以前に、本発明者らは、粒子を分離するための窒化シリコン/パリレンメンブレンフィルターの製作および使用を実証した。粒子メンブレンフィルター(8×8mm2)は、円形、六角形、または長方形の貫通孔を有する。孔径を6〜12μmまで変えることによって、4〜45%の開口率を達成した(米国特許出願第US2001/0019029号(特許文献1)を参照のこと)。
【0010】
したがって、血液または他の体液中の細胞または他の粒子を除去、単離、捕獲、または検出するために用いることができる改善された濾過システムの必要性が存在する。本発明は、これらの必要性および他の必要性に応えるものである。
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第US2001/0019029号
【非特許文献1】Wilding P, et al., Anal Biochem. 257(2):95-100 (1988)
【非特許文献2】Yuen PK, et al., Genome Res. 11(3):405-12 (2001)
【非特許文献3】Mohamed H, et al., IEEE Trans Nanobioscience 3(4):251-6 (2004)
【非特許文献4】Vona G, et al., Am J Pathol. 160(1):51-8 (2002)
【非特許文献5】Kahn HJ, et al., Breast Cancer Res Treat;86(3):237-47 (2004)
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
第1の局面では、本発明は、パリレン基板を含む新規なメンブレンフィルターおよびパリレンメンブレンフィルターを収容するフィルター装置を提供する。有利なことに、このメンブレンフィルターおよび装置が、それらのサイズと形に応じて、粒子および細胞を捕獲または捕捉するための非常に効率的な手段を提供する。例えば、血液中の低濃度の循環腫瘍細胞(CTC)を、CTCの通過は妨げるが赤血球は通過させる、適切なサイズの孔を持つパリレンメンブレンフィルターに捕捉することができる。第2の局面では、本発明は、粒子および細胞を捕獲または単離するためにパリレンメンブレンフィルターおよびフィルター装置を用いる方法を提供する。
【0013】
したがって、第1の局面では、本発明はパリレンメンブレンフィルターを提供する。フィルターのパリレンメンブレンは、パリレンポリマーを含む基板で作られる。好ましい態様では、極めてコンフォーマルな蒸着プロセスによりパリレンメンブレンを蒸着する。適切な型のパリレンには、パリレンC、F、A、AM、N、およびD、並びに本明細書にさらに記述するパリレンが含まれる。

【0014】
パリレンメンブレンフィルターは、パリレンメンブレンの厚さにおいて形成されかつ貫通している、所定の幾何学的設計の複数の孔を含む。幾何学的設計には、例えば、サイズ、形、および密度が含まれる。ある態様では、メンブレンは、CTCが選択的にメンブレンによって捕獲または保持される一方、血液中の他の細胞および物質がそれらのサイズおよび形によって選択されてメンブレンを通過するような構造である。メンブレンフィルターの効率を、メンブレン上の孔のサイズ、形、および密度を調節することにより最適化することができる。所定の幾何学的設計は、パリレンメンブレンの孔のサイズ、形、密度、均一性、および配置のうちの任意の1つまたはそれ以上に従う。上記のいくつかの態様では、パリレンメンブレンフィルターは0.5〜20ミクロンの厚さである。
【0015】
本発明はまたメンブレンフィルター装置も提供する。これらの装置は、上述のパリレンメンブレンフィルターおよびパリレンメンブレンフィルターを取り付けるハウジングを含む。いくつかの態様では、装置は、パリレンメンブレンフィルターによって隔てられた第1のチャンバーおよび第2のチャンバーを含む。いくつかの態様では、パリレンメンブレンフィルター基板は、外側表面上の金属層に接触している。いくつか態様では、メンブレンフィルター装置は、同一のまたは異なる所定の幾何学的設計の多くの孔を持つ複数のパリレンメンブレンフィルターを有する。
【0016】
本発明の第2の局面では、パリレンメンブレンフィルターおよびパリレンメンブレンフィルター装置を形成する方法を提供する。方法には通常、所定の幾何学的設計の孔のアレイを有するパリレンメンブレンの形成、およびハウジング内のメンブレンの組み立てが含まれる。所定の幾何学的設計には、孔の正確に制御されたサイズ、形、および密度が含まれる。1つの態様では、幾何学的設計には単分散した孔のアレイが含まれる。
【0017】
第3の局面では、本発明は、粒子または細胞を単離するために本発明によるパリレンメンブレンフィルターを用いる方法を提供する。この局面では、本発明は、粒子または細胞を含む試料を得て、そしてパリレンメンブレンフィルターに試料を通すことによる、粒子または細胞を単離するための方法を提供する。孔のサイズおよび形は、例えば、単離するべき細胞と類似したサイズおよび形の1個あるいは複数個の粒子または細胞によるメンブレンの通過を孔が制御する能力を決定することにより、経験的に決定することができる。
【0018】
上記の任意の態様において、単離された細胞をさらに用いてもよいし処理してもよい。例えば、単離された細胞を、検出し、計数し、培養し、特性決定し、濃縮し、またはさらなる使用(例えば細胞に基づく治療での投与)のために得てもよい。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、有害な細胞を含む体液試料を得、所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板を有するメンブレンフィルターに試料を通すことにより有害な細胞を単離し、単離した有害な細胞を検出することにより、有害な細胞によって引き起こされる疾病を有する患者の健康状態をモニターする方法を提供する。
【0020】
いくつかの態様では、本発明は、有益な細胞を含む体液試料を得て、所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板を有するメンブレンフィルターに試料を通すことによって有益な細胞を単離し、単離した有益な細胞を検出することにより、有益な細胞の欠乏によって引き起こされる疾病を有する患者の健康状態をモニターする方法を提供する。
【0021】
別の一組の態様では、本発明は、有害な細胞によって引き起こされる状態の処置の治療有効性を評価する方法であって、処置中または処置後に有害な細胞を含む体液試料を得る段階;および所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板流体を有するメンブレンフィルターに試料を通すことによって有益な細胞を単離する段階;ならびに試料中に保持された有益な細胞を検出する段階を含む方法を提供する。
【0022】
いくつかの態様では、試料から不溶性粒子を単離する。試料は、生体から、環境(空気、水、土壌)から、または人間の製造した物から得ることができる。粒子は、アスベスト、尿酸の結晶、結晶、または非晶性固体でよい。単離した粒子は、続いて計数または特性決定してもよい。
【0023】
いくつかの態様では、本発明は、試料を本発明によるパリレン基板を含むメンブレンフィルターに通すことにより、流体から粒子状混入物を除去する方法を提供する。流体は、培地または飲料水、任意の投与経路(例えば、経口、静脈内、吸入)でヒトへ投与するための薬剤または物質でもよい。
【0024】
図面および特許請求の範囲を含む明細書の残りの部分への参照により、本発明の他の特徴および長所が明らかになると考えられる。本発明のさらなる特徴および長所、ならびに本発明の様々な態様の構造および動作を、添付の図面に関連して詳細に下に記述する。図面中では、同じ参考番号は、同一のまたは機能的に同様の要素を示す。
【0025】
詳細な説明
この明細書および添付した特許請求の範囲中で用いられる単数形には、他の明白な指示がない限り、複数形を指す場合も含まれることをここで指摘しておく。
【0026】
本発明は、新規なパリレンメンブレンフィルターおよびマイクロデバイスを含む装置を提供する。本発明はさらに、細胞および/または粒子の捕獲、単離、検出、および/または特性決定における、それらの使用方法を提供する。したがって、いくつかの態様では、本発明は、パリレンメンブレンフィルターおよびハウジングを含むパリレンメンブレンフィルター装置を提供する。有利なことに、パリレンメンブレンフィルターは、生体体液を含む多くの流体の濾過を可能にする。
【0027】
パリレンメンブレンフィルターおよび装置は、流体中の粒子および細胞を、それらのサイズと形によって捕獲または捕捉するための非常に効率的な手段を提供することができる。例えば、血液中の低濃度の循環腫瘍細胞(CTC)を、CTCの通過を妨げるが赤血球を通過させる適切なサイズの孔を持つパリレンメンブレンフィルターに捕捉することができる。
【0028】
以下に述べるように、パリレンメンブレンフィルターおよび装置は、高い濃縮率で80%を超える回収率を既に実証した。これはこの分野で用いられる現在のほとんどの方法に優る。さらに、1時間を超える時間を必要とする現在の多工程処理と比較して、各CTC捕獲操作が必要とする時間は10分未満である。本発明は、血液中に混合された培養癌細胞を用いるモデルシステムを用いることにより、濃縮装置または細胞捕獲装置であるとして、有利に実証された。新規なパリレンメンブレンフィルターおよび装置は、より高い回収率、より速い処理、および最小限の人の介在に由来する信頼できる結果を有する、CTCをモニターするための低経費の方法を提供することができる。
【0029】
パリレンメンブレンフィルターは、さらに下に規定されるパリレンを含む基板、主としてパリレンからなる基板、またはパリレンからなる基板によって作られる。適当なパリレンには、USPクラスVIの生体適合性ポリマーが含まれる。好ましい態様では、パリレンメンブレンは、極めてコンフォーマルな蒸着プロセスによって蒸着される。適当な型のパリレンには、具体的にパリレンC、F、A、AM、N、およびD、並びに本明細書にさらに記述するパリレンが含まれる。

【0030】
パリレンメンブレンフィルターは、パリレンメンブレン中に形成されかつ貫通している、所定の幾何学的設計の複数の孔を含む。幾何学的設計には、例えば、サイズ、形、および密度が含まれる。ある態様では、メンブレンの設計は、CTCが選択的にメンブレンによって捕獲または保持される一方、血液中の他の細胞および物質がそれらのサイズと形によって選択されてメンブレンを通過するような形になっている。メンブレンフィルターの効率は、メンブレン上の孔のサイズ、形、および密度を変化させることにより調節することができる。いくつかの好ましい態様では、本発明のフィルターは890までの性能指数を有する。他の態様では、パリレンメンブレンフィルターは約800〜約890の性能指数を有する。好ましい態様では、孔は単分散している。
【0031】
所定の幾何学的設計は、パリレンメンブレンの孔のサイズ、形、密度、均一性、および配置のうちの任意の1つまたは複数に従う。いくつかの態様では、孔自体は、丸みのあるまたは鋭い角を持つことができる。孔は、規則的な形(例えば、円形、卵形、楕円形、正方形、長方形、対称および非対称多角形、棒状)または他の不規則な形状が非限定的に含まれる所望の他の形でよい。孔は種々のサイズおよび形であり得る。孔はすべて一定のサイズおよび/または形であり得る。好ましい態様では、孔は所定範囲のサイズおよび/または形に制限されてもよい。いくつかの態様では、メンブレンフィルターは、円形、楕円形、対称多角形、非対称多角形、不規則な形状、およびそれらの組合せからなる群より選択される孔形を有する。いくつかの態様では、孔を、一様な格子状またはアレイ状に配列することができる(例えば、1またはそれ以上の行および/もしくは列、同心円、またはその他)。好ましくは、孔はすべて同じ形およびサイズであり、さらにまた端を除いて、メンブレン上で一様な密度であるかまたはパターンであってよい。孔のサイズおよび形は、例えば、単離するべき細胞と類似のサイズおよび形の1個あるいは複数個の粒子または細胞によるメンブレンの通過を孔が制御する能力を決定することによって、経験的に決定することができる。
【0032】
したがって、孔は、関心対象の粒子または細胞が通過する能力を決定しうる任意のサイズおよび形であってよい。例えば、いくつかの態様では、孔は1、2、3、4、5、8、10、12、14、16、18、20、24、28、30、32、36、40、45、または50ミクロンの最小または最大断面長を有してよい。いくつかの態様では、孔は円形、卵形、または多角形である。いくつかのさらなる態様では、円孔は、2、4、8、10、14、20、30、40、または50ミクロンの直径を有する。他のさらなる態様では、孔は卵形であり、独立して2、4、6、8、10、14、20、30、40、または50ミクロンより選ばれる種々の長さおよび幅を有する。例えば、いくつかのさらなる態様では、孔は、直径6〜10、5〜12、10〜20、8〜40、または6〜60ミクロンの円であってよい。他の実施態様では、孔は、サイズが4〜10ミクロン×11〜20ミクロン、8〜20ミクロン×8〜20ミクロン、8〜20ミクロン×8〜40ミクロン、または8〜80ミクロン×8〜80ミクロンである卵形であってよい。上記のうちの任意のいくつかの態様では、孔の最小幅は2、4、6、8、または10ミクロンである。上記のうちの任意のいくつかの態様では、孔の最大長は50ミクロン、100ミクロン、または200ミクロンである。
【0033】
孔は、断面積および/または形によって定義してもよい。形は上述の任意のものでよい。いくつかの態様では、断面積は、約1〜1000平方ミクロン、1〜10平方ミクロン、10〜100平方ミクロン、25〜500平方ミクロン、50〜400平方ミクロン、75〜150平方ミクロン、75〜約500平方ミクロン、または200〜1000平方ミクロンの範囲である。上記のいずれでも、孔は単分散であってよい。上記のいずれでも、パリレンメンブレンフィルターは890までの性能指数、好ましくは800〜890の性能指数を有してよい。
【0034】
いくつかの態様では、パリレンメンブレンフィルターは、1平方ミリメートルあたりの孔が1,000〜10,000、2,000〜20,000;2,000〜30,000、5,000〜40,000;10,000〜40,000;10,000〜30,000;20,000〜30,000;20,000〜40,000;または30,000〜40,000個の孔密度を有する。そのような孔密度はある程度孔のサイズに依存し、より小さな孔はより大きな密度を可能にする。密度は、孔が製作中に互いに融合せず、パリレンメンブレンの強さが適当に保たれることが保証されるように調節することができる。より厚いメンブレンを用いて、より高い孔密度においてメンブレンを強固にすることができる。
【0035】
ある場合には、孔の数およびサイズが、試料がメンブレンを通過することができる速度およびメンブレンの強度に影響を与える。孔の密度は通常は、1平方ミリメートルあたり1,000〜40,000個の範囲であると考えられる。複数の孔によって、4%〜25%、5%〜25%、10%〜25%、15%〜30%、5%〜45%、10%〜50%、15%〜45%、20%〜40%、25%〜50%、および45%〜60%の範囲を含む、4%〜60%の開口面積率が得られる。
【0036】
上記のいくつかの態様では、パリレンメンブレンフィルターは厚さが0.5〜20ミクロンである。好ましい態様では、メンブレンは厚さが少なくとも1ミクロンである。他の態様では、メンブレンフィルターは厚さが1〜10ミクロンであり、より好ましい態様では、メンブレンフィルターの厚さは1〜4ミクロンである。メンブレンフィルターの厚さは、メンブレン強度とメンブレンを通過する流動抵抗の兼ね合いで決まる。したがって、孔密度の増大はメンブレンの強度を減少させるので、より多数の孔を持つメンブレンは、通常、より少数の同じ孔を有するメンブレンよりも厚いメンブレンである必要がある。
【0037】
上記のいくつかの態様では、パリレンメンブレンフィルター自体またはメンブレンフィルターの表面積は、様々なサイズおよび形で提供される。メンブレンフィルターまたはメンブレンの各濾過表面は、円形、卵形、対称または非対称の多角形、正方形、長方形、または不規則な形状であることができる。メンブレンフィルターまたはメンブレンの各濾過表面は、4平方ミリメートル〜10平方センチメートル、10平方ミリメートル〜100平方ミリメートル、25平方ミリメートル〜625平方ミリメートル、25平方ミリメートル〜250平方ミリメートル、または25平方ミリメートル〜100平方ミリメートルの表面積を有してよい。メンブレンフィルターの断面またはそのフィルター表面部分は、部分的には、濾過される流体の量、流体中に保持されている粒子または細胞の濃度、加える圧力、およびメンブレンの厚みの強度により定められるか、またはそれらに合わせられる。ある場合には、複数のメンブレンフィルターをハウジング内に別々に、平行に取り付ける。
【0038】
本発明はまた、メンブレンフィルター装置も提供する。これらの装置は、上述のパリレンメンブレンフィルターおよびパリレンメンブレンフィルターを取り付けるハウジングを含む。いくつかの態様では、装置はパリレンメンブレンフィルターによって隔てられた第1のチャンバーおよび第2のチャンバーを含む。いくつかの態様では、パリレンメンブレンフィルター基板は外部の金属層に接触している。いくつかのさらなる態様では、金属は、Au、Pt、Ag、Pd、Cu、Ir、Zn、Ni、Fe、Ru、Rh、およびSiからなる群より選択される。いくつかの態様では、金属はSiを含まない。
【0039】
いくつかの態様では、メンブレンフィルター装置は、同一のまたは異なる所定の幾何学的設計の孔のアレイを持つ複数のパリレンメンブレンフィルターを有する。例えば、第1のメンブレンフィルターは円形の孔を有し、第2のメンブレンフィルターは卵形の孔を有してもよい。いくつかの態様では、複数のパリレンメンブレンフィルターを実質的に平行に配置する。装置は1つまたはそれ以上の、複数のメンブレンフィルターの積み重ねを有してよい。いくつかの好ましい態様では、ハウジングに複数のパリレンメンブレンフィルターを順次配置する。例えば、フィルター装置は、第1の所定の幾何学的設計の孔のアレイを持つ第1のパリレンメンブレンフィルター;および第2の所定の幾何学的設計の孔のアレイを持つ第2のパリレンメンブレンフィルターを含んでよく、第1のメンブレンフィルターは前記第2のメンブレンフィルターの上方に配置される。いくつかの態様では、装置は、さらに前記第1のメンブレンフィルターと前記第2のメンブレンフィルターの間に配置されたサンドイッチ層を含んでもよい。サンドイッチ層は不活性の層でよい。いくつかの態様では、サンドイッチ層はSiを含まない。
【0040】
本発明の第2の局面では、パリレンメンブレンフィルターおよびパリレンメンブレンフィルター装置を形成するための方法を提供する。方法には通常、パリレンメンブレンのある領域中の所定の幾何学的設計の孔のアレイの形成、およびハウジング内のメンブレンの組立てが含まれる。所定の幾何学的設計には、正確に制御されたサイズ、孔の形、および密度が含まれる。ある態様では、幾何学的設計には単分散した孔のアレイが含まれる。
【0041】
この製造プロセスは、様々なメンブレンフィルターに用いることができる。好ましい孔形には、円形、六角形、および/または、長方形が含まれる。8×8平方ミリメートルのサイズのフィルターを製作することができる。他の因子が一定であれば、開口面積率は、孔のサイズが増加するとともに増加する。孔のサイズは、さらに濾過閾値、すなわちフィルターによって阻止される粒子の最小のサイズを規定する。
【0042】
例えば、直径10.6ミクロンの孔を持つフィルターは、およそ12 1/2%の開口面積率を有する。六角形の孔は、より高い開口面積率を提供することができるが、メンブレン中により高い応力集中を引き起こす角部を作り出す。これは事実上、フィルター強度を低下させる。長方形の孔は、濾過閾値を変化させずに、広い範囲の開口面積率を提供することができる。いくつかの態様では、長方形の孔の一辺の長さを一定にしておかなければならない。
【0043】
複雑な小型化システム、即ち「マイクロデバイス」を現在製作することができる。この技術は、微細加工、マイクロ流体工学、マイクロ電気機械システム、化学、生物学、および工学を含むいくつかの専門分野の組合せである。小型化装置は、微小電極および信号変換器などの電気的なもの;フォトダイオードおよび光導波路などの光学的なもの;そしてポンプなどの機械的なものであり得る。マイクロ流体工学の新分野では、自動化微小流動装置およびセンサーの組込みによって、マイクロチッププラットホーム上の微小流を極めて正確に制御することが可能になる(Gravesen et al. (1993) J. Micromech. Microeng. 3:168-182; Shoji and Esashi (1994) J. Micromech. Microeng. 4:157-171)。同一チップ上で、多くの様々な流れをあらゆる方式で組み合わせ、混合することができる。また既存の技術によって、交差するチャネル、反応室、ミキサー、フィルター、ヒーター、および検知器を統合して、高度に制御され自動化された方式により、ナノリットル未満の体積中でオンチップ反応を行ない、統合されたデータ収集および分析をすることが可能となる(Colyer et al. (1997) Electrophoresis 18:1733-1741; Effenhauser et al. (1997) Electrophoresis 12:2203-2213)。
【0044】
いくつかの態様では、パリレンメンブレンフィルターを、試料の濾過のため「マイクロデバイス」の一部として、組込むことができる。用語「マイクロデバイス」は、化学的試料または生化学的試料を処理するために必要な極微版の装置を統合し、それにより完全に自動化されコンピュータ制御された微小スケールの分析(通常は100μl以下の試料体積を扱う)を達成する小型化検知装置およびシステムを記述するために用いられる。マイクロデバイスは、2つの群に分類できる。1つはMEMS (微小電気機械システム)であり、それは機械的な流量制御装置(例えばマイクロバルブ、マイクロポンプ、または遠心ポンプ)によって制御される加圧流を用いる。もう1つの型は、機械的要素によらず電動流体処理を用いる。統合されたこれらの様々な装置は当技術分野において周知である。例えば、

を参照のこと。これらのすべては、参照により本明細書に組み入れられる。
【0045】
第3の局面では、本発明により、粒子または細胞を単離するために本発明によるパリレンメンブレンフィルターを用いる方法が提供される。この局面において、本発明は、粒子または細胞を含む試料を得てその試料をパリレンメンブレンフィルターに通すことにより、粒子または細胞を単離するための方法を提供する。孔のサイズおよび形を、例えば、単離するべき細胞と類似したサイズおよび形の1個または複数個の粒子または細胞によるメンブレンの通過を孔が制御する能力を決定することによって、経験的に決定することができる。
【0046】
いくつかの態様では、試料を、一連のメンブレンフィルター(各メンブレンフィルターは複数の孔を持つパリレンメンブレンを含み、後方の各パリレンメンブレンの孔は前方のメンブレンフィルターのパリレンメンブレンの孔より小さな断面積である)に通過させ、細胞または粒子を一連のメンブレンフィルターのうちの1つの上に保持する。いくつかの態様では、試料が最初のメンブレンフィルターを通過した後、細胞または粒子が次のメンブレンフィルターの上流面上に保持される。2、3、4、5、またはそれ以上のそのようなメンブレンを連続して配列してもよい。いくつかの態様では、連続したメンブレンフィルターは、形、密度、配置、または開口面積率について、先行するメンブレンと異なる所定の幾何学的設計の複数の孔を有するパリレンメンブレンを含む。
【0047】
例えば、試料は、第2の所定の幾何学的設計の第2の複数の孔を有する第2のパリレンメンブレンを含む第2のメンブレンフィルター(第2のパリレンメンブレンの複数の孔の各々は、第1のパリレンメンブレンのそれぞれの孔の断面積より小さい断面積を有する)に通すことができ、細胞または粒子は、第1のメンブレンフィルターを通過して、第2のメンブレンフィルターの表面上に保持される。
【0048】
いくつかの態様では、細胞を単離する。これらの態様では、細胞を含む試料を得て、その試料を、細胞を保持する一方で試料の他の成分を通過させるメンブレンフィルターに通す。例えば、メンブレンフィルターは、細胞のメンブレン通過を阻止するが、一方でより小さな粒子または可溶性成分を通過させる、所定の幾何学的設計の第1の複数の孔を有するパリレン基板を含むことができる。例えば、細胞は、大きすぎて孔を通過できないサイズおよび形であってよい。細胞が、所定の幾何学的設計の最大断面積より大きい最小断面積を有する場合は、細胞はメンブレンフィルターによって保持されうる。いくつかの態様では、変形可能な細胞の達成可能な最小断面が、第1の所定の設計の各孔の最大断面より大きくてもよい。
【0049】
細胞を単離する他の態様では、細胞を含む試料を得て、試料の他の成分を保持するが細胞は保持しない本発明によるメンブレンフィルターを通す。例えば、そのメンブレンフィルターは、細胞が孔を通過できる、所定の幾何学的設計の第1の複数の孔を有するパリレン基板を含むことができる。例えば、細胞は、孔を通過できるほど十分に小さい、すなわちメンブレンフィルターによって保持されるには小さすぎる、サイズおよび形でありうる。細胞が、所定の幾何学的設計の最大断面積より小さい最小断面積を有する場合は、メンブレンを通過することができる。
【0050】
いくつかの態様では、試料は、第1の型の細胞および第2の型の細胞を含むことができ、所定の幾何学的設計は、第2の型の細胞を選択的にメンブレンフィルターを通過させるが、一方で第1の型の細胞の通過を選択的に制限する。
【0051】
試料は、体液または細胞を含む任意の流体であり得る。試料は、例えば、尿、脳脊髄液、唾液、腹水、心臓液、心膜液、胸水、血液、または血漿、精液、傷または感染からの体液、体排泄物、または粘液であり得る。試料は、固形腫瘍の分解部分を含む、組織の分解部分であり得る。単離するべき細胞は、バクテリア、酵母、真核生物、原核生物、および哺乳動物の細胞を非限定的に含む、任意の細胞型であり得る。好ましい態様では、細胞は体液中に見出された腫瘍細胞である。例えば、細胞は血液中に見出された循環腫瘍細胞である。循環腫瘍細胞は、さらに固形腫瘍からのもの、または固形腫瘍細胞型のものでもよい。
【0052】
いくつかの態様では、試料は、哺乳動物(例えば霊長類、ヒト、マウス、ラット、ウサギ)からの試料である。さらにそのような態様では、細胞は、癌細胞、胎児細胞、幹細胞(例えば心臓幹細胞、肝臓幹細胞、ニューロン幹細胞、造血幹細胞、内皮幹細胞)であってよい。いくつかのそのような態様では、試料は、血液または血液製剤、骨髄(例えば吸引され分解された骨髄)、あるいは臍帯血である。
【0053】
哺乳動物細胞は、任意の細胞型、組織型、または器官の細胞であってよい。それは、上皮細胞、内皮細胞、神経、免疫系、形質転換細胞、または肺、肝臓、血液、肝臓、腎臓、筋肉、心臓、脳、前立腺、乳房、膀胱、食道、胃、結腸、粘膜、胃腸管からの細胞であってよい。細胞は、赤血球、白血球、単球、樹状細胞、T細胞、B細胞であり得る。いくつかの態様では、細胞は、上述のものを含む任意の組織に由来する腫瘍細胞または循環腫瘍細胞である。細胞は、白血病細胞またはリンパ腫細胞、あるいは癌細胞であり得る。
【0054】
「癌」とは、ヒトの癌および癌腫、肉腫、腺癌、リンパ腫、白血病、その他を指し、固形腫瘍およびリンパ癌、腎臓、乳房、肺、腎臓、膀胱、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、胃、脳、頭および首、皮膚、子宮、睾丸、食道、および肝臓の癌、非ホジキンおよびホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、白血病、ならびに多発性骨髄腫を含む。「泌尿生殖器癌」とは、腎臓、膀胱、尿路、尿道、前立腺、陰茎、睾丸、陰門、膣、子宮頚部、および卵巣組織を非限定的に含む、ヒトの尿路および生殖器の組織の癌を指す。
【0055】
いくつかの試料では、細胞はバクテリアである。いくつかのさらなるそのような態様では、試料は、尿、血液、唾液、唾液、粘膜液、脳脊髄液、外傷または感染からの浸出液、あるいは体液である。
【0056】
試料は淡水または塩水であってよく、細胞は、単細胞または多細胞生物(例えば、プランクトン、バクテリア、菌類、原虫、藻類、アメーバ、ゾウリムシ、原生生物)でよい。いくつかのそのような態様では、本発明は、飲料水から有害な生物体を除去する方法を提供する。
【0057】
「試料」とは、その中の既知または未知の被検物質の量または効果を決定するために、検査、処理、測定、あるいは加工をするべき、合成のまたは自然の関心対象物質を含む媒体である。濾過するべき試料は「生体試料」であってよい。生体試料には、生検試料および剖検試料などの組織の切片が含まれ、それらは、濾過および流体媒質中への懸濁に先立って分解される。そのような試料には、血液および血液の分画または生成物(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球、その他)、痰、組織、たとえば初代培養などの培養細胞、外植片、形質転換細胞、大便、尿、その他が含まれる。生体試料を、通常は真核生物から、最も好ましくは、霊長類(例えばチンパンジー、ヒト);ウシ;ネコ;げっ歯動物(例えばモルモット、ラット、マウス、ウサギ)などの哺乳動物;または鳥;爬虫類;あるいは魚から得る。
【0058】
試料が液体である場合は、直接濾過しても、または適当な液体媒質中に懸濁するか希釈してもよい。細胞のための好ましい媒体は、外来粒子が存在せず、生理学的適合性を有する水溶液および緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水、生きた細胞を単離する場合は増殖培地)である。粒子用の好ましい媒体は、外来粒子がなく、関心対象の粒子を溶解せず、パリレンメンブレンフィルターと適合性を有する媒体である。ほとんどの非水溶性の粒子のための特に好ましい媒体は水である。流体媒質は、粒子または細胞の検出を可能にするか、または粘度を低下させる成分を含んでいてもよい。媒体は他の成分を含んでいてもよいし、または当業者に公知であるように、細胞の凝集を防ぐために機械的に攪拌してもよい。例えば、血液または血液試料を濾過するときには、媒体または試料は、抗凝固剤(ヘパリン、クエン酸塩などのキレート試薬、その他当業者に公知のもの)を含んでもよい。
【0059】
「生検」とは、診断的評価または予後評価のために、組織試料を取り出す過程、および組織標本自体を指す。当技術分野で周知の任意の生検技術を、本発明の診断および予後診断の方法に適用することができる。適用される生検技術は、とりわけ、評価される組織の型(すなわち、前立腺、リンパ節、肝臓、骨髄、血球)、腫瘍のサイズおよび型(すなわち、固体または懸濁液(すなわち血液または腹水))に依存すると考えられる。代表的な生検技術には、切除生検、切開生検、針生検、外科生検および骨髄生検が含まれる。「切除生検」とは、全腫瘤およびそれを取囲む正常組織の少量の縁の切除を指す。「切開生検」とは、腫瘍の断面直径を含む組織を楔形に除去することを指す。内視鏡検査または蛍光透視法によってなされる診断または予後診断には、腫瘤の「太針生検」、または一般に腫瘤の内部から細胞の懸濁液を得る「細針吸引生検」が必要な場合がある。生検技術については、例えば、Harrison's Principles of Internal Medicine, Kasperら編集、第16版、2005、70章、およびパートV全体で議論されている。当業者に公知であるように、濾過に先立って、試料を酵素によって分解してもよい。
【0060】
「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子のフレームワーク領域またはその断片を含み、抗原を特異的に結合し認識する、ポリペプチドを指す。認知されている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、υ、およびμの定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、またはυとして分類され、それらは次にそれぞれ、免疫グロブリンクラス、すなわちIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを規定する。通常は、抗体の抗原結合領域が、結合の特異性および親和性において、最も重要であると考えられる。
【0061】
例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は四量体を含む。各四量体は、同一の2対のポリペプチド鎖から成り、各対は、1本の「軽」鎖(約25kD)および1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を指す。
【0062】
抗体は、例えば、元のままの免疫グロブリン、または様々なペプチダーゼによる消化によって生成された多数の十分に特性決定された断片として存在する。例えばペプシンは、抗体をヒンジ領域のジスフィルド結合の下で消化して、F(ab)'2 (ジスルフィド結合によるFab (VH-CH1に連結された軽鎖)の2量体)を生成する。F(ab)'2 は、ヒンジ領域のジスフィルド結合を壊す穏和な条件下で還元することができ、ダイマーのF(ab)'2はFab'モノマーへ変換される。Fab'モノマーは、本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである(Fundamental Immunology Paul ed., 3d ed. 1993を参照のこと)。様々な抗体断片が未処理の抗体の消化の観点から規定されているが、当業者は、化学的にまたは組換えDNA法を用いてそのような断片を新たに合成できることを認識すると考えられる。したがって、本明細書に用いられる抗体という用語にはまた、全抗体の改変によって生成された抗体断片、または組換えDNA法を用いて、新たに合成された断片(例えば一本鎖Fv)、あるいはファージディスプレーライブラリーを用いて同定された断片(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと)が含まれる。
【0063】
抗体(例えば、組換え抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体)を調製するために、本技術分野で公知の多くの技術を用いることができる(例えば、 Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983); Cole et al., pp. 77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985); Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988); および Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed. 1986)を参照のこと)。関心対象の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を、細胞からクローニングすることができ、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマからクローニングして、組換えモノクローナル抗体を生成するために用いることができる。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーを、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製することもできる。重鎖および軽鎖の遺伝子産物の任意の組合せが、種々の抗原特異性を有する抗体の大きなプールを生成する(例えば Kuby, Immunology (3rd ed. 1997)を参照のこと)。一本鎖抗体または組換え抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)を、本発明のポリペプチドに対する抗体を生成するために応用することができる。さらに、遺伝子組換えマウス、または、他の哺乳動物などの他の生物をヒト化抗体またはヒト抗体を発現するために用いることができる(例えば、米国特許第5,545,807号; 第5,545,806号; 第5,569,825号; 第5,625,126号; 第5,633,425号; 第5,661,016号; Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368:856-859 (1994); Morrison, Nature 368:812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14:845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996); およびLonberg & Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)を参照のこと)。または、ファージディスプレー技術を、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定するために用いることができる(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990); Marks et al., Biotechnology 10:779-783 (1992)を参照のこと)。抗体はまた二重特異性にすることができる、すなわち、2つの異なる抗原を認識することができる(例えば、WO 93/08829, Traunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991); およびSuresh et al., Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照のこと)。抗体はまた、ヘテロ接合体、例えば2つの共有結合で連結された抗体、または免疫毒素であってもよい(例えば、米国特許第4,676,980号、WO 91/00360; WO 92/200373; およびEP 03089を参照のこと)。
【0064】
いくつかの態様では、捕獲するべき細胞を最初に改変して、その有効サイズを変更する。ある態様では、パリレンメンブレンフィルターを通過できないサイズの粒子に細胞を共有結合によりまたは非共有結合により接着させることによって細胞を改変する。このようなやり方で、捕獲するべき細胞を、その他の関心対象の細胞と同様のまたはそれより小さなサイズの細胞または粒子から、単離することができる。それは、捕獲するべき細胞を有する試料をパリレンメンブレンフィルターに通すと、これら他の細胞はフィルターを通過するからである。例えば、細胞を、捕獲するべき細胞に選択的または特異的であり、かつ、その粒子に共有結合でまたは非共有結合で接着された抗体または抗体断片あるいは別の結合剤(例えば捕獲するべき細胞上の細胞表面レセプターに対するリガンド)に接触させることができる。いくつかの態様では、粒子は、ポリマー、セラミック、ガラス、または金属であってよく、かつビーズの形をしているか、不規則な形状を有していてよい。いくつかの態様では、後の処理(例えば適当に不安定なリンカーの酵素的、化学的、光分解的切断;接着を破断する競合的結合リガンドの添加など)によって容易に切断されるように、接着を構築してもよい。そのような態様では、接着を切断されると、捕獲された細胞は、フィルターを通過した同様のサイズの粒子から単離されて、パリレンメンブレンフィルターを通過することができる。
【0065】
多くのカップリング剤が当技術分野において公知であり、本発明の方法で、抗体およびリガンドと標識を固定するために用いることができる。カップリング剤の例として、2機能性の架橋試薬(すなわちスペーサーによって分離された、または繋がれた2つの反応基を含む試薬)が挙げられる。これらの反応性末端は、N-ヒドロキシスクシンアミドなどのアミノ反応性末端、活性エステル、イミドエステル、アルデヒド、エポキシド、ハロゲン化スルホニル、イソシアネート、イソチオシアネート、ハロゲン化ニトロアリール、および二硫化ピリジルなどのチオール反応性末端、マレイミド、チオフタルイミド、および活性ハロゲンを非限定的に含む多数の任意の官能基のいずれかであってよい。
【0066】
米国特許第4,824,529号に記述されているように、ヒドロキシル官能基は一般にガラス、半導体、金属酸化物、金属およびポリマーの表面へ導入される。例えば、これらのヒドロキシル基は、(3‐アミノプロピル)トリエチルオキシシランなどの市販のリンカーと、またはチオール末端シランと反応する。これらのアミノ末端またはチオール末端のシランに、次に、所望のペプチド、タンパク質、脂質、またはグリコシド部分を、グルタルアルデヒドなどのホモ2機能性架橋剤によって、またはヘテロ2機能性架橋剤によって接合してもよい。
【0067】
タンパク質および核酸は、多くの方法によって固体支持体上に固定されてきた。それらを固定するために用いられた方法が、次の参照文献およびその他に記述されている(Mosbach (1976) Meth. Enzymol. 44:2015-2030; Weetall (1975) Immobilized Enzymes, Antigens, Antibodies and Peptides; Hermanson, G. T. (1996) Bioconjugate Techniques (Academic Press, NY); Bickerstaff, G. (ed) (1997). Immobilization of Enzymes and Cells (Humana Press, NJ); Cass and Ligler (eds) Immobilized Biomolecules in Analysis,(Oxford University Press); Watson et al. (1990) Curr. Opin. Biotech. 609:614; Ekins, R. P. (1998) Clin. Chem. 44:2105-2030; Roda et al. (2000) Biotechniques 28:492-496; Schena et al. (1998) Trends in Biotechnol. 16:301-306; Ramsay, G. (1998) Nat. Biotechnol. 16:40-44; Sabanayagam et al. (2000) Nucl. Acids Res. 28:E33; 米国特許第5,700,637号(Southern, 1997); 米国特許第5,736,330号(Fulton, 1998); 米国特許第5,770,151号(Roach and Jonston, 1998); 米国特許第5,474,796号(Brenman, 1995); 米国特許第5,667,667号(Southern, 1997); これらのすべては、参照により、本明細書に組み入れられる)。
【0068】
極めて多数の架橋剤が市販されている(例えば、Pierce Chemical Company (Rockford, Ill.)から)。架橋剤は、2つの反応基を有し、それにより、共有結合でタンパク質、核酸、または他の分子を接続させる分子である。通常は反応基の間にスペーサー基がある。スペーサーの組成または長さの変更により、表面による生体分子の活性に対する立体的干渉を改善することができる。架橋剤には2つの群、すなわちホモ2機能性架橋剤およびヘテロ2機能性架橋剤が存在する。ヘテロ2機能性架橋剤では、反応基は特異性の異なる非類似の機能性を有する。他方、ホモ2機能性架橋剤の反応基は同一である。架橋の全体的概説を、Wong, 1993, Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking, CRC Press, Boca Raton に見出すことができる。2機能性の架橋試薬を以下:官能基および化学的特異性;架橋の長さ;2つの架橋官能基が類似しているか(ホモ2機能性)または異なっているか(ヘテロ2機能性);官能基が化学的または光化学的に反応するかどうか;試薬を開裂できるかどうか;および、試薬を放射性標識できるかどうかまたは別の標識のタグを付けることができるかどうか、に基づいて分類することができる(Pierce Chemical Co. 1994)。
【0069】
本明細書では、用語「標識」は、直接または信号生成システムの別の一員との相互作用によって、検知可能な信号を提供することができる試薬または構成部分を指すために用いる。直接に検知可能で、本発明で用いられる標識には、例えば、蛍光性標識(関心対象の蛍光剤には、フルオレセイン(FITC、DTAF)(励起最大波長492nm/発光最大波長516〜525nm);テキサスレッド(励起最大波長595/発光最大波長615〜620);Cy-5 (励起最大波長649/発光最大波長670);RBITC (ローダミン-Bイソチオシアネート)(励起最大波長545〜560nm/発光最大波長585nm)、および、例えば、Haugland, R. P. (1992) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 5th ed., Molecular Porbes, Eugene, Oreg.に概説されているその他のものが、非限定的に含まれる);および32S、32P、3Hなどの放射性同位元素が含まれる。他の標識には、化学発光化合物、酵素、および基質;色原体、金属、ナノ粒子、リポソーム、または検知できる物質を含む他の小胞が含まれ得る。標識に適したコロイド金属および色素粒子が、米国特許第4,313,734号および米国特許第4,373,932号に開示されている。超高感度分析が可能な化学発光標識および蛍光標識が好ましい。標識を、分光測光法、放射化学、電気化学、化学発光、およびその他の手段によって検出することができる。標識は、共有結合によって結合ペアのメンバーに結合していてもよい。
【0070】
標識は、当技術分野において周知の従来手法(上記参照のこと)を用いて、直接生体認識分子に、またはこれらの分子に結合するプローブに、結合していてもよい。多重標識化方式が当技術分野において知られており、それにより複数の結合分析を同じ反応小胞中で同時に行なうことが可能である。種々の標識は、放射性、酵素的、化学発光性、蛍光性、またはその他であってよい。複数の識別可能な標識を、生体分子に直接接着してもよいし、またはそれらを生体分子が固定された表面に接着してもよい。例えば、ビーズまたは他の粒子は、種々の標識、例えば、各ビーズを独立に同定することを可能にする種々の色彩蛍光性色素の組み合せを有してもよい。例えば、Fultonら、1997, Clin. Chem. 43: 1749-1756は、それぞれの異なる型のマイクロスフェアに蛍光色素の独自の組合せのタグが付けられた64のマイクロスフェアの標準セットについて記述している。種々の生体分子を各マイクロスフェアの型に固定し、異なる色彩の蛍光色素で標識されたそれらの結合剤と反応させる。検知器が、各ビーズ型および捕獲されたリガンドを、種々の着色蛍光色素によって生成された蛍光プロフィールに基づいて、同時に同定する。
【0071】
好ましい検知可能な標識には、基質を検知可能な生成物に変換することができる酵素部分が含まれる。酵素が標識を増幅し(1つの標識が多くの信号をもたらす)、超高感度分析の開発を容易にする。例えば、アルカリホスファターゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼは一般に使用される酵素標識であり、これらの酵素による化学発光分析において、アトモル〜ゼプトモルの検出限界が通常達成される。アルカリホスファターゼについては、堅牢な1,2-ジオキセタンアクリルリン酸基質が超高感度分析を提供する(Bronstein et al. (1989) J. Biolumin. Chemilumin. 4:99-111)。また西洋ワサビペルオキシダーゼについては、4-ヨードフェノール強化ルミノール反応が最も高感度である(Thorpe, et al, (1986) Methods Enzymol. 133:331-353)。酵素標識を用いて、基質を検知可能な生成物に変換する態様においては、好ましくは、適切な基質を、結合剤が表面上で捕獲された後に加える。
【0072】
蛍光標識は、本発明のいくつかの態様において、特に有用である。光学的技術(例えば、共焦点スキャナー、CCDカメラ、フローサイトメーター)の使用によって、表面上に(例えば、それぞれが異なる被検体と結合するマイクロドットとして)分布した、または(例えば、種々の組合せの蛍光色素を有するビーズで)区別して標識化された生体認識要素のアレイの分析が可能になる。
【0073】
さらに、ビオチン化された結合剤を、蛍光体または他の標識に結合したアビジンまたはストレプトアビジン(それらはビオチンと結合する)を用いて、第2の工程で標識化してもよい。この標識化法は一般に当技術分野において用いられる。
【0074】
任意の上記の態様において、単離した細胞をさらに使用してもよいし、処理してもよい。例えば、単離した細胞を、検出し、計数し、培養し、特性決定し、濃縮し、またはさらなる使用(細胞に基づいた治療での投与)のために保有してもよい。単離した細胞を、パリレンメンブレンフィルター上で検出し、計数し、培養し、特性決定してもよい。検出および特性決定に関しては、細胞を組織学的染色剤と接触させることにより、または保持された細胞を、標識を有する組織特異的または細胞型特異的な抗体と接触させることにより、細胞を検出し、かつ/または特性決定してもよい。抗体はモノクローナル抗体であってよい。細胞を、タンパク質(例えば、腫瘍関連抗原)またはタンパク質をコードする核酸(例えば、腫瘍関連抗原をコードする核酸)の発現を検出することができる試薬に接触させてもよい。いくつかの態様では、細胞を、それらの侵襲的にまたは転移性になる能力について、特性決定する。いくつかの態様では、細胞を、治療薬剤に対する感度または応答性について特性決定する。いくつかの態様では、細胞を、さらなる研究、または同種移植もしくは異種移植のために培養する。
【0075】
上記のさらなる態様では、本発明は、有害な細胞を含む体液試料を得て、その試料を、所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板を有するメンブレンフィルターに通して有害な細胞を単離し;単離した有害な細胞を検出することにより、有害な細胞によって引き起される疾病に罹患している患者の健康状態をモニターするための方法を提供する。有害な細胞は、例えば癌細胞もしくはバクテリア、または免疫系細胞であり得る。いくつかのさらなる態様では、検出された細胞数を計数する。
【0076】
いくつかの態様では、単離された細胞を、単離された細胞数または試料中の濃度、および/または表現型により特性決定して、転移または悪性腫瘍の存在の可能性を決定する。いくつかのそのような態様では、体液試料は、血液または尿である。それらの転移の可能性について細胞の表現型を特性決定する方法は、当技術分野において周知である。
【0077】
上記のいくつかの態様では、本発明は、有益な細胞を含む体液試料を得て、その試料を、所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板を有するメンブレンフィルターに通して有益な細胞を単離し;単離した有益な細胞を検出することにより、有益な細胞の欠除によって引き起される疾病に罹患している患者の健康状態をモニターするための方法を提供する。有益な細胞は、例えば免疫系細胞または幹細胞であり得る。いくつかのさらなる態様では、検出された細胞数を計数する。
【0078】
態様の別の一組では、本発明は、有害な細胞によって引き起こされる状態の処置の治療有効性を評価する方法であって、処置中または処置後に有害な細胞を含む体液試料を得る段階;および、試料を、所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板流体を有するメンブレンフィルターに通すことにより、有害な細胞を単離し、試料中の保持された有害な細胞を検出する段階を含む方法を提供する。さらなる態様では、有害な細胞を含む体液の試料をさらに処置の前にも得て、処置前試料を準備してもよく;そして処置前試料を所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板を有するメンブレンフィルターに通すことにより、有害な細胞を単離することができ;さらに処置前試料の中の単離された有害な細胞を、処置中または処置後に得られた試料中の単離された有害な細胞と比較することができる。細胞を、数、生存能力、または表現型について比較してもよい。有害な細胞は、癌または免疫系の細胞である可能性がある。いくつかのさらなる態様では、処置は、免疫療法、化学療法、放射線治療、腫瘍の切除、アポトーシスの誘導、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される。いくつかの態様では、治療は抗生物質治療であり、有害な細胞はバクテリアである。
【0079】
いくつかの態様では、不溶性粒子を試料から単離する。試料を、生体から、環境(空気、水、土壌)から、または人間の製作物から得てもよい。粒子は、アスベスト、尿酸、結晶、または非晶質固体であってよい。単離した粒子を、続いて計数または特性決定してもよい。
【0080】
いくつかの態様では、本発明は、試料を本発明によるパリレン基板を含むメンブレンフィルターに通すことにより、流体から粒子状混入物質を除去する方法を提供する。流体は、培養液または飲用水、任意の投与経路(例えば、経口、静脈内、吸入)によりヒトへ投与するための医薬物もしくは物質であってよい。
【0081】
「パリレン」メンブレンフィルターに関して本明細書で用いる用語「パリレン」は、式I、II、およびIII (下記を参照のこと)を有するポリマーまたはそれらの組合せを指す。ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ポリマー混合物、またはそれらの組合せであり得る。R1、R2、R7、およびR8は各々独立に、H、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはハロゲンである。アルキルは、C1〜C6の炭化水素ラジカルであり得る。ハロゲンは、Cl、F、Br、またはIである。ヘテロアルキルは、O、S、N、Si、またはPなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含むアルキル置換基である。

R3〜R6は各々独立に、H、アルキル、アリール、ハロゲン、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アロイルアミノ、カルバモイルアミノ、アリールオキシ、アシル、チオ、アルキルチオ、シアノ、アルコキシである。アルキル基は、29までの炭素原子を有する置換アルキルであってよい。置換アルキルは、いずれの場合も29までの炭素原子を有するモノ-またはポリ不飽和アルケニルまたはアルキニルラジカル、すなわち置換C1〜C29アルキル、C2〜C29アルケニル、またはC2〜C29アルキニルラジカルであり得る。適当な置換体はまた、環状ラジカルである。置換アルキルは、1つまたは複数の同一または異なるラジカルを所持するメチルラジカル、エチルラジカル、またはプロピルラジカルであり得る。置換基の性質に依存して、単結合または多重結合によってまたはスピロ形式でこれらを結合することができる。好ましい置換基は、Cl、F、Br、またはIなどのハロゲン、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、特にベンゾイルアミノなどのアロイルアミノ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシアミノ、特にフェノキシアミノなどのアロキシアミノ基である。低級アルキルチオには、C1〜C6アルキルチオ−ルが含まれる。アリールオキシカルボニルには、フェノキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ヒドロキシアミノカルボニル、アミノアシルアミノ、カルバモイル、アミジノが含まれる。アリールオキシはフェニルオキシ、アミノカルボニルオキシ、オキソ、アミノスルホニル、および低級アルキルスルホニル-アミノであり得る。ヘテロアルキルは、アルキル置換基に1つまたはそれ以上のヘテロ原子を有するアルキル置換基、特に、29までの炭素原子を有するメルカプトアルキル、アミノアルキル、ホスフィノアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、またはシリルアルキルである。好ましくは、パリレンは式Iによって表わされる構造を有する。上記の好ましい態様では、R1、R2、R7、およびR8は、独立に水素またはC1〜C6アルキルである。上記の他の態様では、R3〜R6は独立に水素またはC1〜C6アルキルである。上記の他の態様では、R1、R2、R7、およびR8は、独立に水素またはC1〜C6アルキルであり、またR3〜R6の少なくとも1つまたは複数は、官能基(例えばアミノ、チオ、ヒドロキシ、ハロ)を含むか、あるいは官能基(例えばアミノ、チオ、ヒドロキシ、ハロ)である。いくつかのさらなる態様では、ハロ基は、クロロまたはフルオロである。任意の上記のいくつかの態様では、R1〜R8メンバーそれ自身は置換されていない。
【0082】
機能化パリレンポリマーもまた考慮される。機能化パリレンには、式(I)(式中、R3〜R6メンバーの少なくとも1つは官能基である)を有するパリレンが含まれる。適当な官能基には、任意で置換された、アミノ、ヒドロキシル、ヒドロキシアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、メルカプト、ホルミル、アルカノイル、カルボキシレート、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、ヒドロキシカルボニル、ハロゲン化、シアノ、アミド、カルバモイル、チオカルバモイル、ウレイド、およびチオウレイドが非限定的に含まれる。ヘテロアルキルとは、N、O、およびSより選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含むアルキル基(または環)を指し、窒素および硫黄原子は任意で酸化され、および窒素原子は任意で4級化される。ヘテロ原子は、炭素原子と二重結合を形成することができる。ヘテロアルキル基を、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。ヘテロアリールとは、N、O、およびSより選ばれる1〜5のヘテロ原子を含むアリール基を指し、窒素および硫黄原子は任意で酸化され、かつ1つまたは複数の窒素原子は任意で4級化される。上記の好ましい態様では、R1、R2、R7、およびR8は各々水素またはC1〜C3アルキルである。いくつかの態様では、R3〜R6メンバーの1つのみが官能基である。
【0083】
機能化パリレンメンブレンは、捕獲されるべき細胞または粒子の検出または保持を促進するために、その官能基を通じて共有結合的に修飾されてよい。いくつかの態様では、機能化パリレンメンブレンフィルターは、共有結合によりまたは非共有結合により結合された抗体または抗体断片を所持することによってさらに修飾される。いくつかの態様では、抗体または断片は、単離するべき細胞を特異的に認識することができる。他の態様では、機能化パリレンメンブレンフィルターの表面を、そのフィルターによって保持されるべき細胞の表面上のレセプターに結合できるリガンドに、共有結合的にまたは非共有結合的に結合させることができる。上述の共役化学を、機能化パリレンメンブレンフィルターにリガンドまたは抗体を結合させるために用いることができる。
【0084】
好ましい型のパリレンには、市販のパリレンC、F、A、AM、N、およびDが含まれる。以下に示す3つの最も一般的なパリレンのうち、パリレンCが産業において、恐らく最も広範に使用される。パリレンメンブレン基板のさらなる長所には、強度および柔軟性(例えばヤング率 約4GPa)、コンフォーマルで微小な孔のない室温蒸着、低誘電率(約3)、高い体積抵抗率(>1016Ωcm)、透明度、および反応性イオンエッチング(RIE)などの、標準微細加工技術を用いる加工の容易さが挙げられる。

他の態様において、本発明は、パリレンメンブレンフィルターおよびハウジングを含むパリレンメンブレン濾過装置を提供する。有利なことに、パリレンメンブレンフィルターにより、下に詳述する生体体液を含む多くの流体を濾過することができる。
【0085】
本明細書に用いられる用語「単分散の」とは、メンブレンフィルター上の開口または孔が、実質的に同一のサイズ、寸法、および形を有することを指す。
【0086】
図1は本発明によって製作されたパリレンメンブレンフィルター100を示す。示されるように、所望の結果を達成するために所定の種々の幾何学的設計を有するメンブレンフィルターを作製することができる。幾何学的設計には、メンブレン上の開口のサイズ、形、および密度の設計が含まれる。図1Aは、50個のパリレンメンブレンフィルターがその上に形成されたパリレンメンブレンを示す。代表的なメンブレンフィルター110を示す。上述のように種々ある。ある態様では、正方形の孔が単分散している。別の態様では、孔は一定間隔を置いて配置されている。図1Bは、円形の開口125を有する1つのメンブレン装置の一部を示す。ある態様では、円孔が単分散している。別の態様では、孔は一定間隔を置いて配置されている。図1Cは、卵形の開口135を有する1つのメンブレン装置の一部を示す。ある態様では、卵形の孔が単分散している。別の態様では、孔は一定間隔を置いて配置されている。メンブレン上の孔の形には、円形、卵形、対称な多角形、非対称な多角形、不規則な形状、およびそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、メンブレンフィルターは、円形、長方形、または六角形の孔を有する。
【0087】
図1Bは、単分散の、一定間隔を置いて配置された10μmの円孔を有するメンブレンを図示する。図1Cは、単分散の、一定間隔を置いて配置された8μm×14μmの卵形の孔を有するメンブレンを図示する。反応性イオンエッチング(RIE)技術(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,598,750号を参照のこと)を用いて、孔のサイズを正確に制御することができる。孔の寸法および開口率は、それぞれ0.1ミクロン〜12ミクロンまたはそれ以上、および4〜45%の間を変化し得る。好ましくは、いくつかの態様では、孔の寸法は5ミクロン〜12ミクロンである。いくつかの態様では、孔の密度を1平方ミリメートルあたり40,000個の孔まで正確に制御することができる。パリレンメンブレンの厚さもまた制御することができる。一般に、孔の密度が高ければ、より厚いメンブレンが必要である。約0.1ミクロンまたは1ミクロンから15ミクロン以上までの様々な厚さを有するパリレンメンブレンが考慮される。ある態様では、10ミクロンの厚さのパリレンメンブレンを用いる。
【0088】
いくつかの態様では、一定間隔を置いて配置された孔を有するパリレンメンブレンフィルターを調製する。他の態様では、単分散した孔のアレイを有するパリレンメンブレンフィルターを調製する。単分散し、一様に分布した孔を備えたメンブレンは、ランダムに分布し、多分散の孔を備えたメンブレンよりも高い細胞捕獲効率を有する。
【0089】
図2は、パリレンメンブレンフィルター装置200の1つの局面を例示する。装置は、ハウジングの内部に取り付けられたパリレンメンブレン250を含む。ハウジングは、様々なサイズおよび形を採用することができ、それらには管状、球状、および立方体状の形状が非限定的に含まれる。ある態様では、ハウジングは挿入ポート270を有する上部チャンバー220、および出口ポート280を有する底部チャンバー230で作られる。様々な物質をチャンバーの構築に用いることができる。その物質にはポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、多糖、ならびにそれらのコポリマーおよび組合せが非限定的に含まれる。ある態様では、チャンバーの構築に用いられる物質はポリジメチルシロキサン(PDMS)である。ある態様では、上部チャンバー、底部チャンバー、およびパリレンメンブレンを、2対の治具(210a、210b;240a、240b)によって固定する。上部治具210aおよび210bを、ポリアクリレート、ポリケトン、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびその他で作ることができる。底部治具をは、ポリケトン、ポリスルホン、ポリスルフィド、またはポリイミドを非限定的に含む工業材料で作られる。ある態様では、底部治具はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。治具を、ボルト、ファスナー、ねじ、ラッチ、リンク、継手、ロック、またはユニオンなどの、適当な手段260および265によって留め合わせる。
【0090】
いくつかの態様では、メンブレンフィルターは、本出願と同日出願された米国特許出願(出願番号未定)、タイトル「MEMBRANE FILTER FOR CAPTURING CIRCULATING TUMOR CELLS」(代理人整理番号020589-008610US)の明細書の詳細な説明で述べられた任意のメンブレンフィルターであり、上記出願は、そのようなメンブレンフィルター、更にその適当なメンブレン基板に関して、参照により本明細書にその全体が特に組み入れられる。
【0091】
循環腫瘍細胞を検出しようとするときには、本発明の基板として様々なパリレンおよびパリレン様物質を用いることができる。この用途には、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアクリレート、セルロース、テフロン、およびポリカーボネートなどの他の物質もまた適当なフィルター基板でありうる。この用途では、本発明で用いられる基板は、上に議論した物質に限定されず、パリレンと実質的に同じ機能を、パリレンと実質的に同じ方式で遂行し、パリレンと実質的に同じ結果を達成する他の物質を含む。好ましくは、これらは約890の性能指数を有し、かつ/またはヤング率 約4GPaを有する。性能指数は、濾過装置の効率の尺度を与える。大きな性能指数は、高い濾過効率を表す。性能指数は、時間で割った回収率として定義される。回収率は、標的粒子の総数で割った回収された粒子であると定義される。性能指数の計算中で用いられる時間は、テストを行なう全処理時間である。
【0092】
別の態様では、様々な幾何学的設計の複数のメンブレンを有するフィルターを、血液中のCTC細胞を他の細胞および粒子と分離するために用いることができる。連続したメンブレンのそれぞれは、同一のまたは異なる幾何学的設計を有していてよい。例えば、各メンブレン層で、孔のサイズ、形、および密度が異なっていてもよい。任意の2つのメンブレンフィルターの間に、任意で活性サンドイッチ層を置くことができる。または、サンドイッチ層は不活性な層でもよい。図3は、2メンブレンフィルター装置300のある態様を示す。上部フィルター350および底部フィルター355は、パリレンメンブレンまたはパリレン様メンブレンである。上部フィルターおよび底部フィルターは、同一のまたは異なる幾何学的設計を有してよい。ある態様では、上部フィルターは円孔を有し、また底部フィルターは卵形の孔を有する。別の態様では、上部フィルター上の孔の寸法はおよそ10μmであり、また底部フィルター上の孔の寸法は8×14ミクロンである。好ましい態様では、各メンブレンは単一分散した孔のアレイを有する。別の好ましい態様では、各メンブレンは一定間隔を置いて配置された孔のアレイを有する。パリレンメンブレン355および355をハウジングの内部に取り付ける。ハウジングは、様々なサイズおよび形を採用することができ、それらには管状、球状、および立方体状の形状が非限定的に含まれる。図3では、ハウジングは、挿入ポート370を有する上部チャンバー320、および出口ポート380を有する底部チャンバー330で作製される。様々な物質をチャンバーの構築に用いることができる。その物質にはポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、多糖、ならびにそれらのコポリマーおよび組合せが非限定的に含まれる。ある態様では、チャンバーの構築に用いられる物質はポリジメチルシロキサン(PDMS)である。ある態様では、上部チャンバー、底部チャンバー、およびパリレンメンブレンを2対の治具(310a、310b;340a、340b)によって固定する。上部治具310aおよび310bを、ポリアクリレート、ポリケトン、ポリスチレン、ポリプロピレン、その他で作ることができる。底部治具は、ポリケトン、ポリスルホン、ポリスルフィド、またはポリイミドを非限定的に含む工業材料で作られる。ある態様では、底部治具はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。治具を、ボルト、ファスナー、ねじ、ラッチ、リンク、継手、ロック、またはユニオンなどの適当な手段360および365によって、留め合わせる。
【0093】
さらに別の態様では、本発明は、バクテリアまたはウィルスなどの微粒子の分離のために、ハウジングの内部に組み立てられた複数のメンブレンフィルターを有するメンブレンフィルター装置を提供する。上部のメンブレンの各々は、隣接したより下部のメンブレンの各々とは異なる幾何学的設計を有する。幾何学的設計は、孔のサイズ、形、および密度が異なる。各メンブレン上の孔は、一連の各層が所望の細胞または粒子のみを捕捉し、不要な物質を通過させるように設計される。例えば、第1のフィルターを通り抜ける細胞またはバクテリアが、続く第2または第3の異なる幾何学的設計を有するフィルターによって捕獲されることができる。
【0094】
別の局面では、本発明に使用するためのメンブレン基板はポリイミドであってもよい。別の態様では、複数のメンブレンフィルターの少なくとも1つはパリレンメンブレンフィルターを含む。
【0095】
図4は、本発明のフィルター装置のSEM像を示す(図4B〜4D)。図4Aは、市販のフィルター装置中のランダムに分布した孔および融合した孔を示す。本発明の装置は、正確に制御された孔425、438、および455のアレイの所定の幾何学的設計を有し、それが腫瘍細胞435および458(図4B〜4D)の効率的で良好な捕獲を可能にした。ある態様では、前立腺癌細胞がメンブレンフィルターに捕獲される。
【0096】
本発明の装置を、公知技術であるスピンコーティング技術を用いて製作することができる。最初に、フォトレジスト材料をシリコンウェーハ上にスピンコーティングする。次に、基板の薄層をフォトレジスト材料の上に蒸着する。最後に、反応性イオンエッチング(RIE)によりパターンを生成する。または、基板の薄層を直接シリコンウェーハ上に蒸着することができる。フィルムを、水または有機溶媒を用いて剥がす。フィルムを剥がすのに適した通常の有機溶媒には、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロルメタン、クロロホルム、C1〜C8炭化水素の溶剤が含まれるが、それらに限定されない。パリレンメンブレンは、蒸着技術によって調製することができる(米国特許第6,598,750号を参照のこと)。いくつかの態様では、用いるフォト材料はAZ1518であり;基板はパリレンであり、好ましい基板はパリレンCである。8×8平方ミリメートルのサイズのパリレンメンブレンフィルターを製作することができる。
【0097】
本発明による使用のための装置はまた、濾過過程を促進するために、任意で流体に加えることができる圧力を提供する。ある態様では、流体に加える圧力を重力が生成する。別の態様では、流体に加える圧力は、例えば電気浸透などの電気運動およびラチェットポンプにより生成される。さらに別の態様では、液圧を、空気または磁気流体力学ポンプを用いて生成する。なおさらなる態様では、機械的装置が、流体に加える圧力を生成する。有用な機械的圧力生成装置の一例は、スクリュー式ポンプ装置またはペリスタルティックポンプである。
【0098】
CTCは、それが臨床病期、疾病再発、腫瘍転移、および治療後の患者の生存期間に関連しているので、予後診断のためのみでなく診断のためにも重要である。血液中の極めて少数(>1010の血球あたり約1)のCTC、および必要な大量の試料(5〜7.5mlの全血)を取り扱う、微細製造された装置を設計するためには、特別な配慮が必要である。最も一般的な上皮癌のCTCの平均のサイズは、血球の多くより有意に大きいので、サイズに基づいた分離が非常に有効であり得る(Vona, G. et al., American Journal Of Pathology 156: 57-63 (2000))。メンブレンフィルターが大量の血液試料の処理を可能にする一方で;パリレンは、その柔軟性および生体適合性により、独自のフィルター基板を提供する。
【0099】
したがって、いくつかの好ましい態様では、本発明によるフィルターおよび装置は、末梢血中の無症状の腫瘍細胞の沈着物の捕獲、検出、および特性決定に用いられることになる。腫瘍学者は、これらの、発明の特有な方法を、個々の患者の癌再発リスクの評価を向上させるため、治療をより有効に調整するため、および治療に対する応答をモニターするために、用いることができる。癌の予後診断および対処の最も重要な決定要因の1つは、初診時および処置中における腫瘍細胞の転移性播種の有無である(Lugo TG, et al., J Clin Oncol. 21(13):2609-15 (2003)を参照のこと)。リンパ節または骨髄(BM)への腫瘍細胞のこの初期の拡散を、「播種腫瘍細胞」(DTC)といい、または末梢血(PB)中の場合は「循環腫瘍細胞」(CTC)という。これらのDTCまたはCTCは、原発腫瘍の完全除去を経験した患者中にさえも存在することが可能であること、およびこの現象は、これらの患者におけるその後の顕性転移発症の基礎であることが、十分に確立されている。実際、初期腫瘍播種が存在する可能性は、原発性腫瘍の最終的な処置を受けた患者に、全身性アジュバント化学療法を用いるための論理的根拠である(Schabel FM, Jr., Cancer 39(6 Suppl): 2875-82 (1977))。DTCの検出は、疾病進行の可能性を決定するための有用な手段であることが証明されている(Braun S, N Engl J Med. 353(8):793-802 (2005))。
【0100】
DTCおよびCTCの捕獲および同定に用いられる現在の技術は、複数の手続き工程、比較的大量の試料の処理、人の実質的な介在、非常に高いコスト、そして重要なことに、現在までの腫瘍細胞検出の陽性マーカーに基づいた検出方法に対する信頼性および標準化の不足を含む、重大な障壁を有する。BMの吸引によるDTCの検出は侵襲的処置を含む(したがって、合併症、および患者と内科医の両方のコンプライアンスの不足を引き起こす可能性がはるかに高い)が、PB採取は比較的侵襲性の少ない選択肢を提供する。したがって、BM中のDTCの検出率はPB中のCTCの検出率にはるかに勝るにもかかわらず、標的区画としてのPBの研究が、近年、より多くの注目を集めている(Pierga JY, et al., Clin Cancer Res. 10(4): 1392-400 (2004); および Redding WH, et al., Lancet 2(8362): 1271-4 (1983)を参照のこと)。
【0101】
血液中のCTCの検出率が比較的低い理由の1つは、血液からのCTCの捕獲において次善的な現在の方法の限界であると考えられる。フローサイトメトリー、磁気的細胞分離、および誘電泳動などの方法の開発が、PB中の収率を増大させるために提案されている(Gilbey AM, et al., J Clin Pathol. 57(9):903-11 (2004)を参照のこと)。長年の開発において、これらの方法はいまだに研究の場でしか本質的には利用可能でなく、自動化の高価さおよびPBでの効率性の不足のゆえに、それらの臨床的応用の可能性は大きく制限されている。したがって、PB中への腫瘍の最も初期の転移性拡散(CTC)を検出することができる装置の開発が、疾病対処の手法を変革できることが明らかである。実際、PB中の循環腫瘍細胞(CTC)の検出は、疾病対処の予測因子であることに加えて、転移性乳癌の治療を受けている患者での、治療のモニタリングにおける重要な要素であることが示されている(Cristofanilli M, et al., N Engl J Med. 351(8):781-91 (2004),および Cristofanilli M, et al., J Clin Oncol. 23(7):1420-30 (2005))。
【0102】
議論されているように、DTC検出のための採取源としてのBMは、PBと比較して陽性の試料がより高頻度であると実証されている(Pierga JY, et al., Clin Cancer Res. 10(4): 1392-400 (2004) および Redding WH, et al., Lancet. 2(8362): 1271-4 (1983))。BM中のDTCの存在が、様々な腫瘍において臨床的に有意であると証明された(乳癌についての公表されたデータの要約に関しては表2を、肺癌については表3を参照のこと)。しかしBMの収集には問題があり、患者にとって不快であり、内科医にとって不便かもしれない特別の侵襲的処置が必要である。
【0103】
(表2) 乳癌および骨髄腫瘍細胞
DT:播種腫瘍細胞
DTCBM-:骨髄にDTCなし
DTCBM+:骨髄にDTCあり
* 推定2年再発率
【0104】
(表1) 乳癌および骨髄腫瘍細胞
DT:播種腫瘍細胞
DTCBM-:骨髄にDTCなし
DTCBM+:骨髄にDTCあり
* 推定2年再発率

Dearnaley DPら、Eur J Cancer 27(3):236-9 (1991)。
Mansi JLら、Eur J Cancer 27(12):1552-5 (1991)。
Cote RJら、J Clin Oncol. 9(10):1749-56 (1991)。
Diel IJら、J Clin Oncol. 10(10):1534-9 (1992)。
Diel IJら、J Natl Cancer Inst. 88(22):1652-8 (1996)。
Braun Sら、N Engl J Med. 342(8):525-33 (2000)。
Gebauer Gら、J Clin Oncol. 19(16):3669-74 (2001)。
Gerber Bら、J Clin Oncol. 19(4):960-71 (2001)。
【0105】
(表3) 肺癌および骨髄腫瘍細胞

Pantel Kら、Lancet 347(9002):649-53 (1996)。
Ohgami Aら、Ann Thorac Surg. 64(2):363-7 (1997)。
Leonard RCら、Cancer Res. 50(20):6545-8 (1990)。
【0106】
末梢血(PB)は、あらゆる解剖学的部位に腫瘍細胞を運ぶベクターとして作用する。腫瘍細胞播種は多相性の転移過程における初期の事象と考えられるので、遠隔の顕性転移の臨床的証拠以前にPB中に腫瘍細胞が検出されるという予想は、10年以上関心を持たれてきた。残念なことに、PBからのCTCの収率は極めて低い(Pierga JY, et al., Clin Cancer Res. 10(4): 1392-400 (2004)および Redding WH, et al., Lancet. 2(8362): 1271-4 (1983)を参照のこと)。Reddingらは、乳癌の28.2%の患者がBM中に外来性癌細胞を示すことを見出した。しかし、これらの患者の2.7%のみがそのPB中に検知できる細胞を有していた。血液中で初期の転移の存在を探す研究の大半が、分子的方法の使用に集中した。それにもかかわらず、多くの研究が、PB中のCTCの検出のためにICCも利用しようと努力し(Bischoff J, et al., Recent Results Cancer Res. 162:135-40 (2003)を参照のこと)、濃縮技術を用いる必要性がより明白になった。
【0107】
しかし、濃縮技術には時間がかかり、また処理中に細胞を失わないという保証はない。このため、最小の手続き工程によりPBから直接細胞を抽出する手順が、この予後診断指標を臨床の場において実際化するために肝要である。したがって、ある局面では本発明はパリレンメンブレンフィルター、装置、方法、および/またはパリレンフィルターメンブレンが装置中に設置された、細胞分画が勾配分離を必要としない統合システムを提供する。これにより、PBからの細胞の収率の増大が可能になる。
【0108】
本発明者らは、133人の病期II、II、またはIVの乳癌患者からのPB試料を、他の方法を用いて解析した。この予備的データは、DTCおよびCTCの頻度が一般に低いことを示す。BM吸引液中の転移性乳癌でさえも、出現率は40%であった。本発明者らのデータはさらに、Reddingら(Redding WH, et al., Lancet. 2(8362): 1271-4 (1983))による、DTCの頻度はBM中でPB中よりも高いという発見を支持する。これらの発見は、有効な濃縮方法の必要性を示す。

【0109】
好ましい態様では、前立腺癌、膀胱癌、および乳癌の患者からのPB中のCTCを検出するためにパリレンメンブレンフィルターを用いる。本検出は、これらの病気の診断および予後診断、または治療に対する応答の評価において用いることができる。乳癌は最も多く診断される種類の癌であり、女性における2番目に多い癌関連死の原因である。患者の認識の向上およびスクリーニング技術の改善により、現在、局所的で切除可能な腫瘍の早期発見が可能になっているにもかかわらず、多くの女性がいまだに再発乳癌で死亡しており、それは相当数の患者が診断時に既に遠隔のDTCを有することを示唆する。BMへのDTCの臨床的重要性が、本発明者らおよび他の人々によって長年にわたり確立されてきた(Braun S, N Engl J Med. 353(8):793-802 (2005) および Cote RJ, et al., J Clin Oncol. 9(10): 1749-56 (1991) (3, 20)を参照のこと)。
【0110】
前立腺癌は、男性で最も多く診断される種類の癌であり、男性において肺癌に次いで2番目に多い癌関連死の原因である。全体として、前立腺癌と診察された男性の99%が少なくとも5年間生存する。癌の発見時に既に身体の遠隔部に拡散していた男性についても、34%が少なくとも5年間生存する。多くの治療の選択枝があるが、改良の必要性がいまだに存在する。DTCおよびCTCの臨床的関連が、多くのこれまでの研究において示された(Freeman JA, et al., J Urol. 154(2 Pt 1):474-8 (1995); Weckermann D, et al., J Clin Oncol. 17(11):3438-43 (1999); Allard WJ, et al., Clin Cancer Res. 15;10(20): 6897-904 (2004); および Chen et al., Urology 65(3):616-21 (2005)を参照のこと)。
【0111】
膀胱癌:移行上皮癌は、米国で2番目に多い生殖泌尿器の悪性腫瘍であり、生殖泌尿器の腫瘍中で3番目に多い死因である。潜在的な患者の一部のみが、治療に応答すると考えられる。膀胱癌の潜在性転移拡散の、この疾病の臨床的対処における重要性は、既に10年以上認識されてきた。膀胱癌の5年生存率(全体の治癒率を反映する)は、病理的段階に比例するが、転移性疾病で死亡する患者については、およそ50%である(Lerner SP, et al., Urol Clin North Am. 19(4):713-23 (1992)およびHofmann T, et al., J Urol. 169(4):1303-7 (2003)を参照のこと)。
【0112】
乳癌試験片の複数マーカー分析で、多くのマーカーを用いることができる。乳癌は、CTC上での種々のマーカーの発現について多く研究された疾病である。例えば、原発腫瘍中のエストロゲン(ER)およびプロゲステロン(PR)に対するホルモンレセプターの存在が、乳癌患者の転帰と正の相関があることが示されており、現在乳癌の最も強力な予後因子である。Her2 neu:HER-2/neuは、上皮成長因子レセプターファミリーに属する膜貫通型レセプターをコードする癌原遺伝子である。通常HER-2遺伝子増幅に起因するHer-2/neu (Her-2)過剰発現が、乳癌患者の20〜25%で生じ、予後不良に結びつく。最近、原発腫瘍でHer-2 neu過剰発現を有さない患者の>30%さえも、CTC上にこの特性を獲得しており、標的療法の必要性を示すことが立証された。推定乳癌幹細胞表現型はCD44+CD24-/低と規定されてきた。この表現型を備えた細胞は、自己複製および腫瘍形成が可能な細胞として同定されている。固形腫瘍は腫瘍幹細胞から生ずるという仮説が近年重要性を増しており、推定幹細胞の表現型を反映している表面マーカーを用いて推定幹細胞集団を濃縮し、これらの細胞をさらに特性決定することができる。
【0113】
幹細胞抗原-1(Sca1):幹細胞抗原1(Sca-1)は、乳房幹細胞および/または始原細胞中で優先的に発現されると考えられる。乳癌では、Sca1が上方制御される証拠がある。Sca1を、解離細胞前立腺再生システムにおいて、基底細胞および管腔細胞系統を含む管状構造を再生することができるマウス前立腺細胞を、濃縮するために用いることができる。
【0114】
増殖およびアポトーシスマーカーもまた、本発明の方法に従って用いることができる。サバイビン:サバイビン発現は癌組織で上方制御されており、種々の癌細胞系統に存在する。サバイビンの役割は、癌細胞生存の延長、および治療に対する抵抗性に関連付けられてきた。それは、アポトーシス阻害剤ファミリーの一員である。それはさらに、発癌に重要な役割を果たしている可能性がある。M30:M30は、アポトーシス細胞の1つの特徴である断片化されたCK18を検出する抗体であることが示され、腫瘍組織中のアポトーシスを実証するために用いられてきた。Ki67:Ki67は増殖している細胞を表示する抗原である。循環腫瘍細胞は、BM中のDTCと同様に、低レベルのKi67を発現していることが示された。CTC内に亜集団がある可能性があるとすれば、このマーカーは、特にマーカーパネルのメンバーとして、CTCの特性決定およびプロファイリングのために有用でありうる。
【0115】
様々な免疫細胞化学(ICC)技術を、DTCおよびCTCに用いることができる。例えば、微量に存在する転移性細胞の免疫学的検出には一般に、低分子量サイトケラチン(CK)タンパク質に対して特異的な抗体を使用して、上皮腫瘍の沈着を、正常なリンパ節構成要素およびBMまたはPBから区別する。2つの抗CK抗体、すなわちAElおよびCAM5.2 (それらは組み合わされて、単純上皮細胞中の主要な中間径フィラメントタンパク質を認識する)のカクテルを用いることができる(Chaiwun B, et al., Diag Oncol 2:267-76 (1992)を参照のこと)。DTCを検出するための現在のICC技術に関する主要な難点の1つは、それらは労力および時間を要し、すなわち一般的な利用可能性を制限する要因となることである。さらに、この技術は単細胞上の複数マーカーを評価するためには用いることができない。
【0116】
さらに、量子ドット(QD)に基づくICCを用いてもよい。QDおよびスペクトルイメージングの最も最近の研究により、単細胞上で複数マーカーの評価を可能にすることにより、ICCの有用性を広がった(Jaiswal JK, et al., Nat Methods. 1(1):73-8 (2004)を参照のこと)。QDを様々な無機化合物から作製することができる(Gao X, et al., Curr Opin Biotechnol. 16(1):63-72 (2005)を参照のこと)。ICC用に通常用いられるQDナノ結晶を、10nmのカドミウムおよびセレン(CdSe)コアから作製し、それを次に半導体層(ZnS)で覆って材料の光学品質を改善する。このコアおよび半導体層の粒子を、次に追加のポリマーシェルで覆う。この追加の外側ポリマーシェルによって、ナノ結晶が、その光学的性質を維持しながら同時に、生体分子と結合することが可能になる。これらのQD結合体は、多価であるので、1つのQDに複数の生体分子を結合させることができる。免疫蛍光色素と比較して、QDは明るく、光退色の傾向がなく、広範囲の色彩を持ち、それらの発光は、粒子のサイズを調節することにより任意の所望の波長に調整することができる。QDはまた、より多くの色彩を最小のチャネルオーバーラップで用いることを可能にする狭い発光スペクトルを有し、単一光源により同時に複数の色彩を発光することができる。QDの特性は、Watson A, et al., Biotechniques 34(2): 296-300, 2-3 (2003)により概説されている。
【0117】
QDは、細胞イメージングのための最も有望な技術であると予告されているが、しかしQDが細胞以下のレベルで、特異的、効果的に分子マーカーを標識化することができたかどうかについては疑問があった。QDに基づくプローブは、複数標的の検出における細胞イメージングに有効である。スペクトルイメージング技術は、さらにICCにおけるQDの有効性を高めることができる。後でさらに詳細に記述するこの技術は、色差に基づいており、テストする多くのマーカーそれぞれに異なる色原体が使用され、特別に設計されたソフトウェアが、顕微鏡画像から所与の色原体を順次「消去」して、色差が肉眼には認識できない場合にも、各マーカーを個別に評価する。この技術は、具体的な個々の細胞上の複数のマーカーの状態について情報を与えることができる。
【0118】
DTCの検出のための、潜在的により高感度な分子的手法は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)であり、これは様々なマーカー転写物を標的として用いて、いくつかの悪性腫瘍に適用されてきた。1991年のSmithおよびその同僚による最初の研究以来、多くの著者が、癌患者のリンパ節、血液、およびBMでの分子的診断を報告した。所属リンパ節およびセンチネルリンパ節におけるRT-PCRの適用が、メラノーマ、結腸直腸癌、および前立腺癌、乳癌、および肺癌を含む多くの癌について記述されている (Smith B, et al., Lancet 338(8777): 1227-9 (1991); Shariat SF, et al., J Urol. 170(3): 985-9 (2003); Sakaguchi M, et al., Ann Surg Oncol. 10(2): 117-25 (2003); Wallace MB, et al., Am J Respir Crit Care Med. 167(12):1670-5 (2003); Blaheta HJ, et al., J Invest Dermatol. 114(4):637-42 (2000); Shariat SF, et al. J Clin Oncol. 22(6): 1014-24 (2004))およびCorradini P, et al., Ann Oncol. 12(12): 1693-8 (2000)を参照のこと)。これらの多くは、感度について、ICCに基づく検出とRT-PCRとを比較し、標的マーカーが十分に特異的ならば、RT-PCRが検出の向上をもたらしうると結論している。RT-PCR分析の様々な様式(Burchill SA, et al., Br J Cancer 71(2):278-81 (1995); Aquino A, et al., J Chemother. 14(4):412-6 (2002); および Wiedswang G, et al. J Clin Oncol. 21(18):3469-78 (2003)を参照のこと)はまた、乳房、結腸、肺、その他の癌患者のBM中のDTCの検出に用いられてきた。乳癌に対するマスピンまたはマンマグロビン、または膀胱癌に対するウロプラキンのような器官特異的なマーカーをいくつかの例外として、これらのRT-PCR分析に用いられる分子標的のほとんどは、非標的造血細胞中で異常に発現されるために、必要な特異性を欠くことが、本発明者らおよび他の多くの研究者によって示された(Grunewald K, Lab Invest. 82(9):1147-53 (2002); Bostick PJ, et al., N Engl J Med. 339(22): 1643-4 (1998); Osman I, et al. Int J Cancer 111(6):934-9 (2004); Pelkey TJ, et al., Clin Chem. 42(9): 1369-81 (1996); Raj GV, et al., Cancer 82(8): 1419-42 (1998); およびGhossein RA, et al., Clin Cancer Res. 5(8): 1950-60 (1999)を参照のこと)。RT-PCRは、前立腺癌、乳癌、胃腸管癌、メラノーマ、結腸直腸癌、頭頸部癌などを含む様々な癌のPB中での検出感度を高めるためにも用いられてきた(Partridge M, et al., Clin Cancer Res.;9(14):5287-94 (2003); Palmieri G, et al., J Clin Oncol 21(5):767-73 (2003); Yokoyama S, Yamaue H. Arch Surg. 137(9): 1069-73 (2002); およびLi SM, et al., J Urol. 162(3 Pt 1):931-5 (1999)を参照のこと)。しかし、上述の非標的造血細胞中の標的遺伝子の異常な転写による非特異性についての同一の懸念が存在し、それが日常的な臨床診断でのこれらの分析の使用を妨げてきた。
【0119】
ICCによる腫瘍細胞の同定は、伝統的に上皮細胞を同定する単一マーカーまたはマーカーのカクテルで構成されてきた。すべてのマーカーが、通常は試料中に存在する造血細胞上で、ある程度共発現する。これが腫瘍細胞の存在を評価する際に主観性および不一致をもたらしてきた。陽性および陰性の選択子がこの問題を処理する。陽性マーカーが上皮細胞を同定し、一方陰性マーカーが造血細胞を同定する。腫瘍細胞は造血性マーカーを共発現しないと断定することができる。このようにして、陰性の選択子を発現するすべての細胞を、それらが陽性の選択子を発現するかどうかにかかわらず、非腫瘍細胞として分類することができる(設計中の図13)。陰性および陽性の選択子を用いるICCは、偽陽性を同定し、従来の単一の陽性選択ICCよりも、選択性を大幅に増大させる。以前は、形態学のみに基づいて偽陽性が真陽性から区別されたが、それはこれらのタイプの細胞検体においては困難な主観的評価である。
【0120】
当業者に公知であるように、様々な上皮抗原(陽性選択子)が適切である。例えば、サイトケラチン(CK)は、上皮細胞骨格の正常な構成成分である中間フィラメントタンパク質であり、したがって一般に非上皮区画の癌腫を同定するために用いられる。ICCにおけるDTCの検出に通常用いられる抗体カクテルを、酸性CKおよび塩基性CKの両方からのペプチドに対して作製する;この抗体カクテルは、たとえば、本発明者ら((64)付録を参照のこと)および他の多くの研究者(27および64〜66)によって用いられた抗体AE-1 (CK-10、14、16、および19と反応する)とCAM 5.2 (CK-7およびCK-8と反応する)との組合せなどである。
【0121】
上皮成長因子受容体(EGF-R)もまた用いることができる。上皮成長因子受容体(EGF-R、c-erbB-1癌原遺伝子の生成物)の過剰発現は、癌患者の予後不良に関連しており、乳癌、膀胱癌、胃癌、頚部癌、卵巣癌、およびNSC肺癌を同定し、それは有意な予後因子となる。EGF-Rは造血細胞中では発現されないので、癌患者中の循環腫瘍細胞の検出に特に適したマーカーである。
【0122】
上皮細胞接着分子(EpCAM)もまた適している。EpCAMは、ヒト上皮抗原(HEA)、BerEP4:GA-733.2、または17-1Aとして様々に知られており、この表面抗原に対する抗体は、単層上皮から層化されケラチン化されていない扁平上皮の基底層および表皮までのヒトの上皮組織との、非常に広いパターンの反応性を示す。それはリンパ組織を含む間葉組織とは反応しない。
【0123】
様々な造血性抗原(陰性選択子)もまた適している。CD45はICC用の造血細胞マーカーである:CD45はまた、白血球共通抗原(LCA)前駆体として知られており、180〜220kDaのサイズの範囲のレセプター糖タンパク質である。この抗原はすべてのヒト白血球の表面に存在する。CD45に対する抗体は、血液およびBM中に存在する大多数の白血球(WBC)と免疫反応をする(75)。CD68は主として細胞内の110kDaのリソソーム糖タンパク質であり、それはまた、マクロファージ、単球、好中球、好酸球、および大リンパ球の表面で見出すことができる。
【0124】
さらに、腫瘍限定/組織限定マーカーもまた適している。マンマグロビン:マンマグロビン遺伝子はヒトの乳癌関連遺伝子である。この遺伝子は10kDaの糖タンパク質をコードし、上皮分泌タンパク質ファミリーと遠い関係にある。マンマグロビンはウテログロビンファミリーの乳房特異的なメンバーであり、ヒトの乳癌において過剰発現されることが公知である。それは、マスピンと共に、乳癌患者からのPB中の循環腫瘍細胞を検出するための可能性のあるマーカーとして、転写物レベルで現在研究中である。
【0125】
PSA:前立腺特異的抗原(PSA)は、形質転換された前立腺組織の古典的指標である。それは、主な精液タンパク質、精漿の流動性阻害剤前駆体、またはセミノジェリンIを加水分解するセリンプロテアーゼであって、精液の液化をもたらす。4ng/mlを越える血清PSAレベルは、前立腺癌の早期発見を助ける。PSA発現はDTC/CTCの検出に役立つ。
【0126】
ウロプラキンファミリーマーカー:単一の型の上皮に特異的な分子マーカーは希少である。膀胱上皮は、独特に膜貫通型タンパク質ウロプラキン(UP)ファミリーを発現する。UP発現を、原発膀胱癌組織ならびに転移性集団において、RNAおよびタンパク質レベルの両方で追跡することができる。循環性および転移性の尿路上皮癌細胞におけるUP転写物の発現を検出することができる。ウロプラキンIIは、根治的膀胱切除術後の膀胱周囲への拡張およびリンパ節の状態の評価のための、および転写物レベルでのPB中の尿路上皮癌細胞の検出のための、特異的なマーカーとなり得る。UPII転写物は、膀胱癌試験片の好ましいマーカーである。
【実施例】
【0127】
実施例
以下の実施例を、本発明を説明するために提示するが、それらは特許請求する発明を制限するものではない。
【0128】
実施例1:パリレンメンブレンの性能
本発明によるパリレンメンブレンフィルター装置の設計、製造、およびテストについて記述する。大幅に最適化しないでも、装置は、89%の回収率および9 log 10倍の濃縮を実証した。これはこの分野で用いられている最も最近の方法を凌駕する(Lara, O.,et al., Experimental Hematology, vol. 32: 891-904 (2004)を参照のこと)。さらに、1時間を超える時間を必要とする現在の多工程処理と比較して、各試料の分離に10分未満しか必要としないことが可能である。
【0129】
図1に示す2つのフィルターを、この最初の研究でテストした。第1のパリレンメンブレンフィルターは、直径10ミクロンの円孔のアレイを有し、第2のパリレンメンブレンフィルターは8×14ミクロンの卵形の孔のアレイを有していた。これらのメンブレンフィルターを製作するために、シリコンウェーハ上にフォトレジストAZ1518をスピンコーティングし、続いて10ミクロンのパリレンC蒸着およびRIEによるパターン形成を行った。最後に、終夜アセトンに曝してフィルム全体を剥がした。個々のメンブレンフィルターを、2つのPDMSチャンバーの間に挟み、治具で強固に固定した(図2)。図3は、希少な腫瘍細胞の検出に用いられる市販のポリカーボネートメンブレンフィルターのSEM写真(図3A)と、マイクロ製作したこれらの2つのパリレンメンブレンフィルターのSEM写真(図3B、C、D)とを比較する。市販のメンブレンフィルターは、その多くが顕著に融合して大きな開口となり、適合度の低下がもたらされる、ランダムかつまばらに分布した孔を示した。
【0130】
テストのために、第1のPDMSチャンバーに達する上部ポートへ第1の注射器を挿入し、第2のPDMSチャンバーに達する底部ポートへ第2の注射器を各々挿入した。試料を、上部注射器に装填し、手動で注入してフィルターを通過させた。通過した流れを、底部注射器によって集めた。さらに、同様にして緩衝食塩水によるすすぎを行なった。
【0131】
前立腺癌細胞の濾過を、記述したように各注射器を上部および底部チャンバーのポートに挿入することにより行った。試料を上部注射器に装填し、手動で投与してフィルターを通過させた。濾液を底部注射器で集めた。前立腺癌細胞は、ヒトの転移性前立腺腺癌(LNCaP)に由来する培養細胞であった。これらの細胞をヘマトキシリンで染色し、緩衝食塩水で逐次薄めて、装置のテストのために望ましい数にした。LNCaP細胞の平均直径は19ミクロン×3ミクロンと測定された。
【0132】
円形および卵形の孔を持つパリレンメンブレンフィルターをテストした。円形および卵形の設計の回収率は、それぞれ87.3%±7.0%、および89.1%±7.0%であった(表1および2)。検出限界テストについては、細胞数は1ミリリットルあたり細胞10個未満まで下げられた。表3および4は、装置が1ミリリットルあたりわずか4個の腫瘍細胞を捕獲することができることを実証している。
【0133】
(表1) 円孔設計についての回収テスト

【0134】
(表2) 卵形孔設計についての回収テスト

【0135】
(表3) 円孔設計についての捕獲限界テスト

【0136】
(表4) 卵形孔設計についての捕獲限界テスト

【0137】
健康なドナーからの末梢血中の既知数のLNCaP細胞をスパイク注入することにより、装置の性能についてもテストした。捕獲細胞は、パリレンメンブレンフィルター上に捕獲されたものである(図5を参照のこと)。緩衝食塩水での実験と同様に、卵形のフィルター設計は血液からの89.0%±9.5%の回収率をもたらした(表5)。
【0138】
(表5)全血1ml中のスパイク注入された腫瘍細胞の卵形孔設計による回収率

【0139】
実施例2:尿中の膀胱癌細胞の捕獲および検出
実施例の背景:膀胱癌は重要な公衆衛生上の問題である。膀胱癌は、その増加し続ける発生率により、現在米国で5番目に多い癌であり、2002年に推定56,500人の新しい患者が予測され、そのうち12,600人の患者がこの疾病で死亡すると予想される。膀胱鏡検査は、膀胱癌を検出するための、侵襲的で比較的高価な技術である。この方法は、ある場合は、特に膀胱炎の患者には、不確かである可能性がある。膀胱癌の再発を検出するためのより簡便で非侵襲的な分析が必要である。
【0140】
臨床的に有用な尿マーカー分析は、実行が容易で、試料処理のための要件が最小で、かつ診断において高度に敏感で特異的でなければならない。尿細胞診は、それが単純で、非侵襲的で、かつ安価であるため、スクリーニングのための優れたテストとして役立つことができる。しかし、一般に、腫瘍の検出、特に感度が一様でない低悪性度腫瘍の検出において尿細胞診に限界があることが、当該分野における経験により実証されている。他の研究者らは、膀胱腫瘍の追跡調査における超音波と尿細胞診の組合せの性能を、膀胱鏡検査の性能と比較して評価した際、その組合せは膀胱鏡検査の代替として、表在性腫瘍または低悪性度膀胱腫瘍の系統的な監視に十分であることを見出した。
【0141】
血尿症の患者、膀胱癌の履歴のある患者、または膀胱癌発病の危険が大きい患者(芳香族アミンまたはカドミウムに曝された労働者のスクリーニング)の尿路上皮の腫瘍形成を検出するために、尿細胞診が伝統的に用いられる。
【0142】
文献に報告された1つの大規模研究での尿路細胞診の全体の感度は、83パーセントであった(文献に報告された感度は47〜97パーセントの間で変化している)。感度は、腫瘍の悪性度によって相当変化する。パピローマおよび病期Iの癌を高い信頼性で診断することはできない。(疑わしい、および陽性の)病期IIの癌の感度は80パーセントであり、(疑わしい、および陽性の)病期IIIの癌は94パーセントである。尿路細胞診は、上皮内癌にインサイチューで特別の役割を有する。これらの腫瘍は、膀胱鏡検査で視覚化することがしばしば困難であるが、容易に細胞を脱落させる。上皮内癌に対する感度は、インサイチューで98パーセントである。
【0143】
尿路細胞診の特異度は良好であり、3パーセントの偽陽性率を有すると報告されている。腫瘍細胞を探すための沈殿物の検査に加えて、腎臓実質性疾患患者の尿中の円柱、尿細管上皮細胞、異形成赤血球細胞、および結晶を見ることもできる。
【0144】
実施例:したがって、この実施例については、膀胱癌に罹患しているかまたは疑いのある患者から尿の試料を得る。試料を、膀胱腫瘍細胞(例えば、インサイチューで脱落上皮内癌細胞)を捕獲することができる所定の幾何学的設計の孔を含むパリレンメンブレンフィルターに通す。捕獲された細胞を、膀胱癌で過剰発現される膀胱腫瘍抗原(例えばUPII (ウロプラキンII))に結合することができる1つまたは複数の標識抗体で染色する。染色された細胞を同定し計数する。膀胱癌細胞であると陽性に同定される細胞の有無および/または数を、患者の予後または診断を決定するために用いる。細胞を、転移の潜在的可能性を評価するために、表現型に関してさらに特性決定してもよい。
【0145】
実施例3:血液中の循環内皮細胞の富化および捕獲
この実施例において、循環内皮始原細胞を捕獲し、検出する。
【0146】
実施例の背景:個人の血液中の循環内皮始原細胞(血管内部を内側から覆う細胞の前駆細胞)の数は、心臓血管の健康全体の指標である可能性がある。血管を内側から覆う内皮細胞は、血管自体と循環している血球との間の重要な伝達を提供して、血液を滑らかに流す。アテローム性動脈硬化症のような疾病では、しかし、内皮層が損傷され、血管が効率的に機能しない。最近まで、科学者は、損傷を受けた血管の修復を支援するため、あるいは塞がった血管を迂回する新しい血管の形成または傷の修復を支援するために、近接の内皮細胞が動員されると信じていた。しかし、現在は、恐らくは骨髄中で生成された内皮始原細胞が血流中を循環し、新しい血管を形成するかまたは損傷を受けた血管を修復するために動員されることが、証拠によって示されている。骨髄中で生成された内皮細胞が、血管の内皮層の持続的修復に寄与する。したがって、これらの細胞の不足が、血管機能障害および心臓血管疾患の進行をもたらす可能性がある。
【0147】
循環内皮始原細胞(CEC)は、恐らく細胞0.5〜2個/mlの頻度で、一般に健康な血液中に存在する。しばしば10倍またはそれ以上までの増大したCECの数が、内皮始原細胞の減少とは反対に、血管の変動または損傷に関連した疾病および状態において見出される。さらに、癌患者の末梢血中で内皮細胞の数の増大が観察される。これらの循環内皮始原細胞(CEC)は、腫瘍中の血管の形成に寄与するか、あるいは処置または腫瘍成長によって引き起こされた血管損傷を反映している可能性がある。
【0148】
実施例:したがって、この実施例では、血管障害(例えば動脈硬化症、大血管または微小血管の障害)または癌を有する疑いのある患者から血液試料を得る。試料を、CECを捕獲することができる所定の幾何学的設計の孔を含むパリレンメンブレンフィルターに通す。捕獲された細胞を、CECに選択的に結合することができる1つまたは複数の標識抗体で染色する。染色された細胞を同定し計数する。血管障害については、CECの数の減少は、血管内皮の損傷を治癒させる能力の減少をさらに示唆する。数の増加は、血管傷害または悪性腫瘍の症状をさらに示す。
【0149】
実施例4:臍帯血中の造血幹細胞
実施例の背景:造血幹細胞は、増殖および特定の型の細胞への分化の両方の能力を有する原始細胞である。身体の白血球、赤血球、および血小板が、これらの幹細胞からの派生細胞のいくつかの例である。白血病のような悪性疾患に罹患している患者は、その体内で生きている癌細胞を破壊するために放射線または化学療法による治療を受ける場合がある。放射線および化学療法の治療は多くの場合癌細胞の破壊に成功するが、しかしその過程で、それらはまた患者の正常細胞および骨髄をも破壊する可能性がある。
【0150】
骨髄は血球の生産にとって不可欠である。悪性、非悪性、または遺伝的な障害のいずれかにより、骨髄が破壊される場合は、幹細胞移植が必要となる。移植された幹細胞は、骨髄に再増殖し、身体による細胞の供給を補充する。また、臍帯血中にこれらの造血幹細胞を見出すことができる。
【0151】
実施例:したがって、ある局面では、赤血球が通過できる第1のメンブレン、および造血幹細胞を捕獲する第2のメンブレンを含む、一連の積み重ねたパリレンメンブレンを含むパリレンメンブレン装置に、臍帯血を通す。捕獲された細胞の生存能力を傷つけない無菌の生理学的に許容されるすすぎ媒体を、装置に通す。捕獲された幹細胞を装置から回収し、任意でエクスビボで培養し、それらを必要とする患者に投与する。
【0152】
実施例5:細胞または粒子のサイズ分布の決定
実施例の背景:複数のパリレンメンブレンフィルターを平行に所持するフィルター装置を用いて、サイズの分布を決定することができる。各フィルターは、独自の臨界分離閾値サイズを与える幾何学的設計により、他のフィルターと区別される。各フィルターの出口で粒子数を数えることにより、試料中の粒子または細胞のサイズの分布を測定することができる。
【0153】
各々が次第に小さくなる粒子サイズの保持領域を定めるように、より大きな孔からより小さな孔へと進む、直列に積み重ねられた複数のパリレンメンブレンフィルターを有するフィルター装置を用いて、粒度分布を測定することができる。各フィルターは、孔の形および断面積が他のフィルターと異なり、臨界分離特性が異なる。試料中の粒子または細胞の分布を、各領域に保持されたかまたは各領域から回収された粒子を数えることにより、測定することができる。この設計は、異なるサイズの細胞を異なる領域に選別するように、種々の閾値孔径を有する複数のフィルターを直列に積み重ねたものに似ていると考えられる。
【0154】
実施例:結果として、サイズによって分別する必要がある種々のサイズの粒子または細胞を有する可能性のある試料を得る。各フィルターが次第に小さくなる粒子サイズ保持領域を定めるように、より大きな孔からより小さな孔へと進む直列に積み重ねられた複数のパリレンメンブレンフィルターを有するパリレンフィルター装置に試料を通す。様々なメンブレンにおける細胞の保持が、サイズ分布に従う細胞または粒子の数を提供する。
【0155】
本明細書に引用された、各刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、参照により、その全体がすべての目的のために、それが本開示と矛盾しない範囲で組み入れられる。特に、本明細書に引用されたすべての出版物は、本発明に関連して用いられる可能性のある、出版物で報告された方法、試薬、および道具について記述し開示する目的で、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先の発明を根拠にそのような開示より先行する権利がないことを認めるものとして解釈されない。
【0156】
本明細書に記述された実施例および態様は説明のみを目的とするものであり、それらに関する様々な改変または変更は、当業者に対して示唆され、本出願の精神および範囲、ならびに添付された特許請求の範囲の内に含まれるべきであると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】製作されたメンブレンフィルター装置を示す。図1Aは、50の装置を有するパリレンフィルムを示す。図1Bおよび1Cは、50の装置の1つの一部を示す。
【図2】典型的なパリレンメンブレンフィルター装置アセンブリーを図示する。
【図3】複数のパリレンメンブレンを有するフィルター装置アセンブリーの構成を示す。
【図4】市販のメンブレンフィルターおよび本発明のメンブレンフィルターの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図4Aは、市販のメンブレンフィルターのSEM像を示し;図4Bは、微細加工されたパリレンメンブレンフィルターの画像を示し;図4Cおよび4Dは、細胞を捕えているパリレンメンブレンフィルターの画像を示す。
【図5】パリレンメンブレンフィルターの表面上に捕えられたヘマトキシリン染色腫瘍細胞を示す。
【図6】腫瘍細胞の捕獲および検出のための集積化オンチップパリレンメンブレンフィルターの設計案を提示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幾何学的設計の孔のアレイを有するパリレン基板を含むメンブレンフィルター;および
該メンブレンフィルターが取り付けられるハウジングを含む、
メンブレンフィルター装置。
【請求項2】
ハウジングが、第1のチャンバー、第2のチャンバー、ならびに該第1のチャンバーと該第2のチャンバーとを接続するための手段からなる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
メンブレンフィルターが、サイズ、形、および密度を含む所定の幾何学的設計を有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
メンブレンフィルターが890までの性能指数を有する、請求項1記載の装置。
【請求項5】
メンブレンフィルターが約800〜約890の性能指数を有する、請求項4記載の装置。
【請求項6】
メンブレンフィルターが、複数の一定間隔で配置された孔を有する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
メンブレンフィルターが、約5μm〜約12μmの範囲の孔の寸法を有する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
メンブレンフィルターが、円形、楕円形、対称多角形、非対称多角形、不規則な形状、およびそれらの組合せからなる群より選択される孔の形状を有する、請求項1記載の装置。
【請求項9】
メンブレンフィルターが1平方ミリメートルあたり孔が約40,000までの孔密度を有する、請求項1記載の装置。
【請求項10】
メンブレンの厚さが少なくとも約1μmである、請求項1記載の装置。
【請求項11】
パリレン基板が金属層に接触している、請求項1記載の装置。
【請求項12】
金属が、Au、Pt、Ag、Pd、Cu、Ir、Zn、Ni、Fe、Ru、Rh、およびSiからなる群より選択される、請求項11記載の装置。
【請求項13】
第1の所定の幾何学的設計の孔のアレイを有するパリレン基板を含む第1のメンブレンフィルターを含む、メンブレンフィルター装置。
【請求項14】
第2の所定の幾何学的設計の孔のアレイを有するパリレン基板を含む第2のメンブレンフィルターを含み、第1のメンブレンフィルターが該第2のメンブレンフィルターの上方に配置されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
第1のメンブレンおよび第2のメンブレンを取り付けるハウジングをさらに含む、請求項14記載の装置。
【請求項16】
第1のメンブレンフィルターと第2のメンブレンフィルターの間にサンドイッチ層が配置されてもよい、請求項14記載の装置。
【請求項17】
サンドイッチ層が不活性な層である、請求項14記載の装置。
【請求項18】
第1のメンブレンフィルターが第2のメンブレンフィルターと実質的に平行である、請求項14記載の装置。
【請求項19】
第1のメンブレンが円形の孔を有し、第2のメンブレンが卵形の孔を有する、請求項14記載の装置。
【請求項20】
パリレンメンブレンのある領域に、所定の幾何学的設計の孔のアレイを形成する段階;および
該メンブレンをハウジング内に取り付けて、メンブレンフィルター装置を形成する段階を含む、
メンブレンフィルター装置を形成する方法。
【請求項21】
幾何学的設計が単分散の孔のサイズを有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
細胞を含む試料を得る段階;および
試料を請求項1記載の装置に通す段階を含む、
細胞を単離するための方法。
【請求項23】
(i)細胞を含む試料を得る段階;および
(ii)試料を、少なくとも、所定の幾何学的設計の第1の複数の孔を有するパリレン基板を含む第1のメンブレンフィルターに通す段階を含む、
細胞を単離するための方法。
【請求項24】
細胞が、第1の複数の孔の各々より大きな断面積を有し、メンブレンフィルターによって保持される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
細胞が、メンブレンフィルターによって保持されないほど小さい、請求項23記載の方法。
【請求項26】
細胞が第1の型であり、試料がさらに第2の型の細胞を含み、かつ所定の幾何学的設計が、第2の型の細胞がメンブレンフィルターを通過することを選択的に可能にし、一方で第1の型の細胞の通過を選択的に制限する、請求項23記載の方法。
【請求項27】
第1の複数の孔がアレイの形状にある、請求項23記載の方法。
【請求項28】
第1の複数の孔が第1のメンブレンに1%〜15%の開口面積率を与える、請求項23記載の方法。
【請求項29】
所定の幾何学的設計を有する孔が円である、請求項23記載の方法。
【請求項30】
円の直径が10ミクロンまでである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
円が直径10〜20ミクロンである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
所定の幾何学的設計の孔が卵形である、請求項23記載の方法。
【請求項33】
卵形が4〜10ミクロン×11〜20ミクロンである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
孔が多角形である、請求項23記載の方法。
【請求項35】
複数の孔の各々が約75平方ミクロン〜約500平方ミクロンの範囲の断面積を有する、請求項23記載の方法。
【請求項36】
1平方ミリメートルあたり2,000〜20,000個の孔が存在する、請求項23記載の方法。
【請求項37】
試料が尿である、請求項23記載の方法。
【請求項38】
試料が脳脊髄液である、請求項23記載の方法。
【請求項39】
試料が血液である、請求項23記載の方法。
【請求項40】
細胞が循環腫瘍細胞である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
循環腫瘍細胞が固形腫瘍からのものである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
細胞の最小断面積が、第1の所定の設計の孔の各々の最大断面積より大きい、請求項23記載の方法。
【請求項43】
流体が第1のメンブレンフィルターを通過した後、細胞がメンブレンフィルターの上流側表面上に保持される、請求項23記載の方法。
【請求項44】
保持された細胞の検出をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
試料が、第2のメンブレンフィルターであって、第2の所定の幾何学的設計の第2の複数の孔を有する第2のパリレンメンブレンを含み、第2のパリレンメンブレンの複数の孔の各々が第1のパリレンメンブレンの孔の各々の断面積より小さい断面積を有する第2のメンブレンフィルターを通過し、細胞が、第1のメンブレンフィルターを通過して第2のメンブレンフィルターの表面上で保持される、請求項23記載の方法。
【請求項46】
試料が、一連のメンブレンフィルターであって、各メンブレンフィルターが複数の孔を有するパリレンメンブレンを含み、後続する各パリレンメンブレンの孔が先行するメンブレンフィルターのパリレンメンブレンのものより小さな断面積である一連のメンブレンフィルターを通過し、細胞が、連続するメンブレンフィルターの1つの上で保持される、請求項23記載の方法。
【請求項47】
パリレンメンブレンの上流側表面に、細胞に結合することができる抗体が接着している、請求項23の方法。
【請求項48】
保持された細胞を、標識を有する組織特異的抗体または細胞型特異的抗体と接触させることにより、保持された細胞を検出する、請求項44記載の方法。
【請求項49】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
保持された細胞を組織染色剤に接触させる、請求項48記載の方法。
【請求項51】
保持された細胞を、腫瘍関連抗原を検出することができる、または腫瘍関連抗原をコードする核酸を検出することができる試薬と接触させる、請求項48記載の方法。
【請求項52】
細胞が循環腫瘍細胞であり、流体が血液である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
循環腫瘍細胞が固形腫瘍からの細胞である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
細胞が白血病細胞またはリンパ腫細胞である、請求項23記載の方法。
【請求項55】
請求項23記載の方法により細胞を単離する段階を含む、患者由来の試料中の細胞を得るための方法。
【請求項56】
得られた細胞が培養液中で増殖される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
細胞が幹細胞である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
細胞が単球である、請求項56記載の方法。
【請求項59】
細胞が癌細胞である、請求項56記載の方法。
【請求項60】
細胞がバクテリア細胞である、請求項23記載の方法。
【請求項61】
有害な細胞を含む体液の試料を得る段階;
所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板を有するメンブレンフィルターに試料を通すことにより、有害な細胞を単離する段階;および
単離された有害な細胞を検出する段階を含む、
有害な細胞によって引き起された疾病を有する患者の健康状態をモニターするための方法。
【請求項62】
有害な細胞が癌細胞である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
検出された細胞数がカウントされる、請求項61記載の方法。
【請求項64】
有害な細胞が癌細胞である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
転移の可能性が決定される、請求項64記載の方法。
【請求項66】
悪性度を診断する、請求項64記載の方法。
【請求項67】
体液試料が血液である、請求項61記載の方法。
【請求項68】
体液試料が尿である、請求項61記載の方法。
【請求項69】
処置中または処置後に、有害な細胞を含む体液試料を得る段階;および
所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板流体を有するメンブレンフィルターに試料を通すことにより、有害な細胞を単離する段階;および
保持された試料中の有害な細胞を検出する段階を含む、
有害な細胞によって引き起こされた状態の処置の治療効率を評価するための方法。
【請求項70】
処置前に有害な細胞を含む体液試料を得て、処置前試料を用意する段階;
所定の幾何学的設計の複数の孔を持つパリレン基板を有するメンブレンフィルターに処置前試料を通過させることにより、有害な細胞を単離する段階;および
処置前試料中の単離された有害な細胞を、処置中または処置後に得られた試料中の単離された有害な細胞と比較する段階をさらに含む、
請求項69記載の方法。
【請求項71】
有害な細胞が癌細胞である、請求項61記載の方法。
【請求項72】
処置が、免疫療法、化学療法、放射線療法、腫瘍の切除、アポトーシスの誘導、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項71記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−538509(P2008−538509A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507986(P2008−507986)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/015501
【国際公開番号】WO2006/116327
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507348595)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (1)
【出願人】(507141114)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (2)
【Fターム(参考)】