説明

パルス変換装置、制御システム、及び制御方法

【課題】各切換装置に係る複雑な処理なしに、各制御対象の性能を損なうことなく、最大需要電力を抑制する。
【解決手段】
本発明のパルス変換装置1は、制御対象、調節計、及び切換装置を有する制御ループをm個(m>1)含む制御システムの中で、各調節計と各切換装置との間に接続されるパルス変換装置であって、各調節計から各パルス変調信号が入力される入力ポート103と、各制御ループに対応付けられたm桁のデータ列であって、各切換装置の最大同時点弧数がn(n<m)である場合、m桁のうち、各切換装置の点弧を示す値をn桁含むデータ列を出力するデータ列出力部101と、交流電源の電源周期毎に、データ列出力部からデータ列を読み込み、m個の切換装置のうち、n桁の点弧を示す値に対応する切換装置にパルス変調信号を出力し、他の切換装置にパルス変調信号を出力しないように制御する演算部102と、演算部の制御に基づき、各パルス変調信号を各切換装置に出力する出力ポート104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス変調信号を変換するパルス変換装置、このパルス変換装置を備える制御システム、及びこのパルス変換装置を用いた制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス成形溶融炉や半導体基板リフロー炉など、複数のヒータを備える連続炉は、一般的に、次のような温度制御システムを備える場合がある。各ヒータには、それぞれSSR(Solid State Relay)又はSCR(Silicon Controlled Rectifier)などの、各ヒータの電流のON/OFFを切り換える切換装置が接続される。さらに各切換装置には、それぞれ調節計が接続される。各調節計は、炉内温度の測定値と予め設定された温度設定値とを比較し、両者を近づけるような各ヒータの制御量としてデューティ比を求め、求めたデューティ比に基づき各切換装置に対してパルス変調信号を出力する。各切換装置は、交流電源の電源周期毎に、パルス変調信号の値が「1」であれば点弧し、パルス変調信号の値が「0」であれば消弧する。このように、かかる連続炉は、ヒータ毎に独立して温度制御を行う多ループ制御システムを備えている。
【0003】
このような多ループ制御システムにおいて、全ての調節計から出力されるパルス変調信号の値が「1」であるときは、全ての切換装置が同時に点弧することになる。このときの各ヒータの合計電力は最大値となり、すなわち最大需要電力となる。一方、温度制御開始から一定時間が経過し、ヒータの温度がある程度安定すると、各ヒータの合計電力は最大需要電力に比べて大幅に低くなり、例えば最大需要電力の約10%程度にとどまる。しかし、契約電力は、最大需要電力に基づき決定されることから、かかる多ループ制御システムでは、契約電力が、各ヒータの合計電力の平均値と比較して、非常に高くなるという問題がある。
【0004】
最大需要電力の抑制を目的とした従来の多ループ制御システムに係る温度制御方法として、交流電源の半電源周期毎に切換装置の導通角を90°未満に維持しながら制御するという位相制御方法がある。
【0005】
また、他の従来の多ループ制御システムに係る温度制御方法として、交流電源の半電源周期毎に各ヒータに接続する切換装置を点弧するとともに、各半電源周期内での各切換装置の点弧タイミングを互いに重複しないようにずらすという、相補的な位相制御方法がある(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、さらに他の従来の多ループ制御システムに係る温度制御方法として、複数のヒータに接続する切換装置を2つのグループに分け、一方のグループの切換装置を点弧する間、他方のグループの切換装置を消弧するという、相補的なパルス変調制御方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−176292号公報
【特許文献2】特願2010−293811号明細書
【特許文献3】特許第3658623号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、交流電源の半電源周期毎に導通角を90°未満に維持しながら制御するという上記の位相制御方法は、各ヒータに供給される電流が最大値より低い値となるため、各ヒータの性能を十分に発揮できないという問題がある。また、回路が複雑で高コストとなるという問題がある。また、いわゆるゼロクロス制御ではないため、電源高調波や高周波ノイズが発生し環境に悪影響を与えるという問題がある。また、温度制御の開始時では、ヒータの抵抗器、ハロゲンランプ、調光器などは、これらの抵抗値が低いことから、切換装置が同時点弧すると温度制御開始時に過度の電流が発生し、前記機器を故障にいたらしめるという問題がある。
【0009】
また、交流電源の半電源周期毎に各ヒータに接続する切換装置の点弧タイミングを重複しないようにずらすという上記の相補的な位相制御方法では、各調節計において、各切換装置の点弧タイミングを、互いに重複しないように制御する必要があるため、調節計の処理が複雑になるという問題がある。
【0010】
また、複数の切換装置を2つのグループに分け、各グループの点弧タイミングを切換えることによって、両グループの同時点弧を防ぐという上記の相補的なパルス変調制御方法では、少なくとも一方のグループのデューティ比が50%以下となる。よって、ヒータの性能を十分に発揮できないという問題がある。また、一方のグループの切換装置に接続される調節計が、他のグループの切換装置に接続された調節計が出力するパルス変調信号の値を知る必要があるため、対になる調節計間の通信が必要となる。これにより、調節計の処理が複雑になるという問題がある。
【0011】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、各切換装置に係る複雑な処理なしに、各制御対象の性能を損なうことなく、各制御対象に係る消費電力の合計の最大値(最大需要電力)を抑制することが可能なパルス変換装置、制御システム、及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のパルス変換装置は、制御対象、前記制御対象の制御量に基づきパルス変調信号を出力する調節計、及び前記パルス変調信号に基づき前記制御対象と交流電源との間の点弧及び消弧を切り換える切換装置を有する制御ループをm個(m>1)含む制御システムの中で、前記各調節計と前記各切換装置との間に接続されるパルス変換装置であって、前記各調節計から前記各パルス変調信号が入力される入力ポートと、前記各制御ループに対応付けられたm桁のデータ列であって、前記各切換装置の最大同時点弧数がn(n<m)である場合、前記m桁のうち、前記各切換装置の点弧を示す値をn桁含むデータ列を出力するデータ列出力部と、前記交流電源の電源周期毎に、前記データ列出力部から前記m桁のデータ列を読み込み、前記m個の切換装置のうち、前記n桁の点弧を示す値に対応する前記切換装置に前記パルス変調信号を出力し、他の前記切換装置に前記パルス変調信号を出力しないように制御する演算部と、前記演算部の制御に基づき、前記各パルス変調信号を前記各切換装置に出力する出力ポートと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明のパルス変換装置において、前記データ列出力部は、前記演算部による読み込み回数を格納するループカウンタと、前記m桁のデータ列を格納するシフトレジスタと、を有し、前記演算部は、前記電源周期毎に前記シフトレジスタから前記m桁のデータ列を読み込むと、前記ループカウンタの前記読み込み回数を1増加させるとともに前記シフトレジスタの前記m桁のデータ列を1ビットシフトさせ、前記読み込み回数がm回に達した場合、前記ループカウンタに格納された前記読み込み回数及び前記シフトレジスタに格納された前記m桁のデータ列を初期化することを特徴とする。
【0014】
本発明のパルス変換装置において、前記データ列出力部は、複数の要素の離散的配列データを生成する離散的配列データ生成部と、前記離散的配列データを記憶する離散的配列データ記憶部と、前記離散的配列データ記憶部に記憶された前記離散的配列データの各要素に応じた前記m桁のデータ列を生成するデータ列生成部と、を有し、前記電源周期毎に、前記演算部が前記データ列生成部から前記離散的配列データの所定要素に応じた前記m桁のデータ列を読み込むと、前記データ列生成部は、前記離散的配列データにおいて前記所定要素の次の要素に応じた前記m桁のデータ列を生成する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明のパルス変換装置において、前記離散的配列データ生成部は、前記離散的配列データのうちの一部をライブラリ用配列データとして設定し、前記離散的配列データのうちの前記ライブラリ用配列データとは異なる他の部分を乱数判定用データとして設定し、前記ライブラリ用配列データに基づき決定論的非線形予測手法を用いて予測データを生成し、前記予測データと順次取り出した前記乱数判定用データとを比較し、非ランダムな状態が所定回数連続しない場合、前記離散的配列データを前記離散的配列データ記憶部に記憶することを特徴とする。
【0016】
本発明の制御システムは、制御対象、前記制御対象の制御量に基づきパルス変調信号を出力する調節計、及び前記パルス変調信号に基づき前記制御対象と交流電源との間の点弧及び消弧を切り換える切換装置を有する制御ループをm個(m>1)含む制御システムであって、前記各調節計と前記各切換装置との間に、上記のパルス変換装置が接続されることを特徴とする。
【0017】
本発明の制御方法は、上記パルス変換装置を用いた制御方法であって、前記データ列出力部が前記m桁のデータ列を生成するステップと、前記演算部が前記交流電源の新たな電源周期になったか否かを判断するステップと、前記演算部が前記新たな電源周期になったと判断すると、前記演算部が前記m桁のデータ列を読み込むステップと、前記演算部が前記入力ポートに入力される前記各パルス変調信号を読み込み、前記m桁のデータ列に基づき、m個の前記切換装置のうち、n桁の点弧を示す値に対応する前記切換装置に前記パルス変調信号を出力し、他の前記切換装置に前記パルス変調信号を出力しないように制御するステップと、前記データ列出力部が、前記演算部によって前記m桁のデータ列が読み出された後に、次の電源周期で前記演算部が読み込むための新たな前記m桁のデータ列を生成するステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、各切換装置に係る複雑な処理なしに、各制御対象の性能を損なうことなく、各制御対象に係る消費電力の合計の最大値(最大需要電力)を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係るパルス変換装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るパルス変換装置を備えた制御システムを示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るパルス変換装置の処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1に係るパルス変換装置を備えた制御システムにおいて、各調節計から出力されるパルス変調信号と各制御対象の電流と各制御対象の合計電力量との関係を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るパルス変換装置を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係るパルス変換装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係るパルス変換装置を備えた制御システムにおいて、各調節計から出力されるパルス変調信号と各制御対象の電流と各制御対象の合計電力量との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1〜4を参照して、本発明の実施の形態1を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1に係るパルス変換装置1を示すブロック図である。パルス変換装置1は、入力ポート103と、データ列出力部101と、演算部102と、周波数検出部100と、出力ポート104とを備えている。パルス変換装置1は、例えばマイクロコンピュータや、FPGAなどのゲートアレーなどにより構成することができる。これにより、パルス変換装置1の製造コストを安価にすることができる。
【0022】
ここで、パルス変換装置1は、後述するとおり、制御対象、調節計、及び切換装置等を含む制御ループをm個(m>1)含む制御システムの中で、各調節計及び各切換装置の間に接続される。そして、パルス変換装置1は、各調節計から入力されるパルス変調信号を変換して各切換装置に出力するものである。
【0023】
なお、パルス変調信号としては、例えばパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号、パルス密度変調(PDM:Pulse Density Modulation)信号、シグマデルタ変調(ΣΔ変調)信号、又は差分スペクトル符号変調信号等を用いる。
【0024】
例えば、図1は、mが4の場合、すなわちパルス変換装置1が4個の制御ループに接続されている場合を示している。そして、パルス変換装置1は、入力信号PMin1を変換して信号PMout1を出力し、入力信号PMin2を変換して信号PMout2を出力し、入力信号PMin3を変換して信号PMout3を出力し、入力信号PMin4を変換して信号PMout4を出力する。
【0025】
入力ポート103には、各調節計から各パルス変調信号が入力される。例えば、図1に示す例では、制御ループの数mが4であるから、入力ポート103には、4つの制御ループそれぞれに関する入力信号として、パルス変調信号PMin1〜4が入力される。入力ポート103は、入力されたパルス変調信号PMin1〜4を演算部102に出力する。
【0026】
周波数検出部100は、外部の交流電源10に接続されており、交流電源10の電源周期を演算部102に出力する。具体的には、周波数検出部100は、例えば、交流電源10の電源電圧のゼロクロス点に基づき交流電源10の電源周波数を検出する。そして、周波数検出部100は、当該電源周波数に基づき電源周期を算出し、算出した電源周期を演算部102に出力する。
【0027】
データ列出力部101は、制御ループ数mに相当するm桁(ビット)の(例えば2進数の)データ列を、演算部102に対して出力する。そして、データ列出力部101は、演算部102によってデータ列が読み出されると、新たなm桁のデータ列を生成する。
【0028】
データ列出力部101が出力するデータ列の各桁の値は、各制御ループに対応付けられている。例えば、図1の場合、パルス変換装置1は4個の制御ループに接続されているため、データ列出力部101は、4桁からなる2進数のデータ列を演算部102に対して出力する。そして、データ列の1桁目の値はPMin1〜PMout1に関する制御ループ、2桁目の値はPMin2〜PMout2に関する制御ループ、3桁目の値はPMin3〜PMout3に関する制御ループ、4桁目の値はPMin4〜PMout4に関する制御ループに対応付けられている。
【0029】
また、データ列出力部101は、毎回、データ列を、「1」と「0」との割合を一定にして出力する。データ列出力部101が出力するデータ列に係る「1」と「0」との割合は、例えば、出力ポート104の先に接続された切換装置の最大同時点弧数や、最大需要電力等に応じて、使用者等により予め設定されている。ここで、データ列の「1」と「0」のいずれか一方は、各切換装置の点弧を示す値であり、各切換装置の最大同時点弧数がn(n<m)である場合、データ列は、m桁のうち点弧を示す値をn桁含む。例えば、4つの制御ループのうち、各切換装置の最大同時点弧数nが3である場合には、データ列は、「1110」のように、4桁のうち点弧を示す値「1」を3桁含み、「1」と「0」との割合は3対1となる。
【0030】
演算部102は、電源周期毎に、データ列出力部101からデータ列を読み込み、読み込んだデータ列に基づき、入力ポート103からのパルス変調信号PMin1〜4を変換し、変換後のパルス変調信号PMout1〜4を出力ポート104に出力する。ここで、演算部102は、m個の切換装置のうち、n桁の点弧を示す値に対応する切換装置にパルス変調信号を出力し、他の切換装置にパルス変調信号を出力しないように制御する。
【0031】
例えば、データ列における点弧を示す値が「1」であるとすると、演算部102は、データ列出力部101から読み込んだデータ列のうち、値が「1」の桁に対応した制御ループについては入力ポート103からのパルス変調信号をそのまま出力ポート104に出力し、値が「0」の桁に対応した制御ループについては出力ポート104に対して信号の出力を行わない。具体的には、図1の例で説明すると、演算部102は、データ列出力部101が出力するデータ列の1桁目の値が「1」であれば、入力ポート103からの第1のパルス変調信号PMout1を出力ポート104に出力する。一方、データ列の1桁目の値が「0」であれば、演算部102は、第1のパルス変調信号PMout1を出力ポート104に出力しない。入力ポート103からの第2〜4のパルス変調信号PMin2〜4についても、演算部102は、同様にデータ列の2〜4桁目の値に応じて、出力ポート104への出力を制御する。
【0032】
出力ポート104は、演算部102の制御に基づき、各パルス変調信号を各切換装置に出力する。例えば、図1の場合、出力ポート104は、演算部102で変換されたパルス変調信号PMout1〜4を演算部102から入力されると、パルス変調信号PMout1〜4をそれぞれ対応する制御ループの切換装置に出力する。
【0033】
図2は、実施の形態1に係るパルス変換装置1を備えた制御システム60を示すブロック図である。制御システム60は、図1のパルス変換装置1と、交流電源10と、制御対象21〜24と、測定器51〜54と、調節計41〜44と、切換装置31〜34とを備える。
【0034】
なお、本明細書では、図2の例において、調節計41、パルス変換装置1、切換装置31、制御対象21、及び測定器51を備える制御ループを制御ループL1と呼び、調節計42、パルス変換装置1、切換装置32、制御対象22、及び測定器52を備える制御ループを制御ループL2と呼び、調節計43、パルス変換装置1、切換装置33、制御対象23、及び測定器53を備える制御ループを制御ループL3と呼び、調節計44、パルス変換装置1、切換装置34、制御対象24、及び測定器54を備える制御ループを制御ループL4と呼ぶ。
【0035】
パルス変換装置1は、各調節計41〜44と各切換装置31〜34との間に電気的に接続される。具体的には、調節計41〜44の出力側が、パルス変換装置1の入力ポート103に接続される。また、パルス変換装置1の出力ポート104が、切換装置31〜34の入力側に接続される。そして、パルス変換装置1は、調節計41〜44から入力されるパルス変調信号PMin1〜4を変換して、変換後のパルス変調信号PMout1〜4を切換装置31〜34に出力する。このように、制御システム60は、既存の制御システムに係る調節計と切換装置との間に、パルス変換装置1を接続するだけで、容易に実現することができる。
【0036】
切換装置31〜34は、その入力側にパルス変換装置1の出力ポート104が接続されており、出力側で交流電源10と各制御対象21〜24との間の点弧及び消弧を切り換えることができる。そして、切換装置31〜34は、パルス変換装置1から入力されるパルス信号に基づき、交流電源10と各制御対象21〜24との間の点弧及び消弧を切り換えることにより、制御対象21〜24への電流のON/OFFを切り換える。
【0037】
例えば、図2の例における制御ループL1について説明すると、切換装置31は、パルス変換装置1から「1」の値を持つパルス変調信号PMout1の値が入力されると、交流電源10と制御対象21との間を点弧する。これにより、制御対象21の電流がONする。一方、パルス変換装置1から「0」の値を持つパルス変調信号PMout1が入力されると、切換装置31は交流電源10と制御対象21との間を消弧する。これにより、制御対象21の電流がOFFする。
【0038】
なお、切換装置31〜34は、例えばSSR、SCR、又はSSR以外のリレー等により構成することができる。
【0039】
交流電源10に接続される制御対象21〜24は、例えばヒータ又はモータなどである。なお、制御対象21〜24は、図2に示すように交流電源10に対して並列に接続されてもよいし、又は、それぞれ別個の交流電源10と直列に接続されてもよい。また、制御対象21〜24は、消費電力が同等なものでもよいし、互いに異なるものでもよい。
【0040】
調節計41〜44は、その入力側に測定器51〜54の出力側が接続されており、その出力側にパルス変換装置1の入力ポート103が接続されている。そして、調節計41〜44は、測定器51〜54から入力される測定値に基づき制御対象21〜24の制御量を求め、この制御量に基づきパルス変換装置1に対してパルス変調信号を出力する。具体的には、図1及び図2に示す例で説明すると、調節計41〜44は、パルス変調周期毎に、測定器51〜54から出力される測定値と、予め内部に設定される設定値とを比較し、測定値と設定値との差を小さくするように、制御対象21〜24の制御量としてデューティ比を求める。その後、調節計41〜44は、求めたデューティ比に基づき、それぞれパルス変調信号PMin1〜4をパルス変換装置1に出力する。なお、調節計41〜44に予め設定される設定値は、同一でもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0041】
測定器51〜54は、制御対象21〜24に関連する測定値を調節計41〜44に出力する。具体的には、測定器51〜54は、制御対象21〜24がヒータである場合、例えば制御対象21〜24付近の炉内温度、又は炉内で制御対象21〜24によって加熱される物(ガラス、半田など)の温度を、測定値として出力する。一方、測定器51〜54は、制御対象21〜24がモータである場合、例えば制御対象21〜24の回転数又は回転位置を測定値として出力する。
【0042】
次に、図3を参照して、パルス変換装置1の処理を説明する。図3は、実施の形態1に係るパルス変換装置1の処理を示すフローチャートである。まず、データ列出力部101は、m桁のデータ列を生成する(ステップS1)。
【0043】
次に、演算部102は、周波数検出部100の出力に基づき、新たな電源周期になったか否かを判断する(ステップS2)。演算部102は、新たな電源周期になったと判断するまで、定期的にS2の処理を繰り返す。
【0044】
S2で新たな電源周期になったと判断した後、演算部102は、この新たな電源周期でのパルス変調信号の変換に用いるためのデータ列を、データ列出力部101から読み込む(ステップS3)。
【0045】
S3の後、演算部102は、S3で読み込んだデータ列に基づき、m個の切換装置31〜34のうち、n桁の点弧を示す値に対応する切換装置31〜34にパルス変調信号を出力し、他の切換装置31〜34にパルス変調信号を出力しないように、制御する(ステップS4)。例えば、図1の場合、データ列における点弧を示す値が「1」であるとすると、演算部102は、データ列のうち値が「1」である桁に対応する入力ポート103からのパルス変調信号PMin1〜4を、変換後のパルス変調信号PMout1〜4として出力ポート104に出力する。出力ポート104は、演算部102からパルス変調信号PMout1〜4を入力されると、これらを外部の切換装置31〜34に出力する。なお、S3で読み込んだデータ列のうち値が「0」である桁に対応する入力ポート103からのパルス変調信号PMin1〜4については、出力ポート104に対する信号の出力を行わない。
【0046】
次に、データ列出力部101は、次の電源周期で演算部102が読み込むための新たなm桁のデータ列を生成する(ステップS5)。
【0047】
S5の後、演算部102は、S2に戻って新たな電源周期になったか否かを判断する。
【0048】
図4は、実施の形態1に係るパルス変換装置1を備えた制御システム60において、各調節計41〜44から出力されるパルス変調信号と各制御対象21〜24の電流と各制御対象21〜24の合計電力量との関係を示す説明図である。図4の電力量の波形において、破線はパルス変換装置1によるパルス変調信号の変換を行わない場合での各制御対象21〜24の合計電力量の波形を示し、実線はパルス変換装置1によるパルス変調信号の変換を行う場合での各制御対象21〜24の合計電力量の波形を示している。
【0049】
図4の例では、調節計41〜44が、それぞれ制御対象21〜24のデューティ比を「50%」に設定しており、パルス変換装置1に対して同一のパルス変調信号を出力している。なお、この例では、調節計41〜44は、パルス変調信号としてPWM信号を出力している。各パルス変調信号は、8電源周期分の長さのパルス変調周期のうち、前半の4つの電源周期の間は「1」の値を持ち、後半の4電源周期の間は「0」の値を持つ。また、この例では、各制御対象21〜24の消費電力は同等である。
【0050】
また、図4の例では、制御ループ数mは4、最大同時点弧数nは3である。すなわち、2進数のデータ列において点弧を示す値が「1」であるとすると、パルス変換装置1のデータ列出力部101は、電源周期毎に、4桁からなるデータ列を、「1」と「0」の割合を3対1に維持しつつ出力している。例えば、データ列出力部101は、電源周期1においてデータ列「1110」を出力し、電源周期2においてデータ列「1101」を出力し、電源周期3においてデータ列「1011」を出力し、電源周期4においてデータ列「0111」を出力する。この場合、パルス変換装置1は、各調節計41〜44から入力される4つのパルス変調信号のうち、3つのパルス変調信号をそれぞれ対応する切換装置31〜34に出力する。そして、出力ポート104からパルス変調信号が入力される切換装置31〜34のうち、「1」の値を持つパルス変調信号が入力される3個の切換装置31〜34が点弧し、その他の1個の切換装置31〜34が消弧する。これにより、4個の制御対象21〜24のうち、点弧する切換装置31〜34に対応する3個の制御対象21〜24の電流がONされ、その他の1個の制御対象21〜24の電流がOFFされる。
【0051】
すると、切換装置31〜34の最大同時点弧数が3個に抑制されることから、図4の制御対象の電流の波形で示すように、同時に電流がONされる制御対象21〜24の数が最大3個に抑制される。したがって、パルス変換装置1によるパルス変調信号の変換を行う場合の制御対象21〜24の合計電力の最大値(実線波形のピーク値)は、パルス変調信号の変換を行わない場合の制御対象21〜24の合計電力の最大値(破線波形のピーク値)と比べて、3/4倍に抑制される。
【0052】
なお、パルス変換装置1は、交流電源10の電源電圧のゼロクロス点に応じて切換装置31〜34を点弧するという、ゼロクロス制御方式を用いることで、高調波や高周波のノイズを低減することができる。
【0053】
また、パルス変換装置1のデータ列出力部101は、図4の例のように電源周期毎にデータ列を変化させて出力することで、電源周期毎に点弧する切換装置31〜34を巡回して変化させることができる。これにより、各切換装置31〜34のうち常に同じ3個のみが同時に点弧されるのを防止し、各切換装置31〜34を均一な確率で点弧することができる。
【0054】
以上より、実施の形態1に係るパルス変換装置1は、m(m>1)個の調節計41〜44からのパルス変調信号のうち予め設定されたn(n<m)個のパルス変調信号のみを、各切換装置31〜34へ出力することにより、切換装置31〜34の最大同時点弧数がn個となるように制御するものである。これにより、各制御対象21〜24における消費電力の合計の最大値(最大需要電力)を抑制することができる。また、パルス変換装置1は、調節計41〜44と切換装置31〜34との間に接続されるので、調節計41〜44間の通信を行う必要がなく、各調節計41〜44における複雑な処理が不要になる。また、切換装置31〜34の位相制御を行う必要が無いので、各制御対象21〜24の性能を損なうことがない。
【0055】
なお、実施の形態1のパルス変換装置1は、切換装置の導通角を制御する位相制御にも適用することができる。これにより、位相制御開始時の過度の電流の発生を抑制することができる。
【0056】
実施の形態2.
図2〜5を参照して、実施の形態2に係るパルス変換装置1の構成を詳細に説明する。なお、実施の形態1と同様の部分については、その詳細の説明を省略し、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0057】
実施の形態2は、パルス変換装置1のデータ列出力部101が、後述するシフトレジスタ105とループカウンタ106を備える点で、実施の形態1と異なる。実施の形態2に係るパルス変換装置1を備えた制御システム60は、図2に示すものと同じであるので、詳細の説明を省略する。
【0058】
図5は、実施の形態2に係るパルス変換装置1を示すブロック図である。図5に示すパルス変換装置1は、データ列出力部101の構成のみが図1と異なるので、その他のブロックの詳細の説明を省略する。データ列出力部101は、シフトレジスタ105とループカウンタ106を有し、これらにより巡回シフトレジスタを構成している。そして、データ列出力部101は、制御ループ数mに相当するm桁(ビット)の(例えば2進数の)データ列を、電源周期毎に、各桁の値を左方向又は右方向に1ビットずつシフトしつつ、演算部102に対して出力する。なお、データ列出力部101をシフトレジスタ105とループカウンタ106で構成することにより、パルス変換装置1の製造コストを安価にすることができる。
【0059】
データ列出力部101が出力するデータ列は、実施の形態1と同様に、各制御ループに対応付けられたm桁のデータ列であって、各切換装置31〜34の最大同時点弧数がn(n<m)である場合、m桁のうち、各切換装置31〜34の点弧を示す値をn桁含むデータ列である。
【0060】
例として、4つの制御ループのうち、各切換装置31〜34の最大同時点弧数nが3であり、データ列における点弧を示す値が「1」である場合について説明する。この場合、データ列出力部101は、電源周期1においてデータ列「1110」を出力し、電源周期2においてデータ列「1101」を出力し、電源周期3においてデータ列「1011」を出力し、電源周期4においてデータ列「0111」を出力する。その後も、データ列出力部101は、同様にしてこの4つのデータ列を同じ順番で繰り返して出力する。このように、データ列出力部101は、データ列を1ビットずつシフトしつつ出力するため、データ列の「1」と「0」との割合を一定に維持しつつ出力することができる。
【0061】
ループカウンタ106は、演算部102がシフトレジスタ105からデータ列を読み込んだ回数を格納する。具体的に、ループカウンタ106は、演算部102がシフトレジスタ105からデータ列を読み込む毎に、演算部102によって読み込み回数が1回ずつ増加される。そして、読み込み回数が制御ループ数mに相当するm回に達した場合、演算部102によって読み込み回数が初期化され、すなわち0回に戻される。このように、ループカウンタ106は、演算部102の操作により、制御ループ数mに相当するm回まで繰り返してカウントする。
【0062】
シフトレジスタ105は、制御ループ数mに相当するm桁にそれぞれ「1」又は「0」の値を記憶しており、これによりm桁の2進数のデータ列を格納する。このm桁のデータ列は、各切換装置31〜34の点弧を示す値を、最大同時点弧数nに相当するn桁含む。ここで、シフトレジスタ105の各桁に記憶される「1」と「0」との割合は、例えば、出力ポート104の先に接続される切換装置31〜34の最大同時点弧数や制御対象21〜24の最大需要電力に応じて、使用者等により予め設定されている。
【0063】
そして、シフトレジスタ105は、演算部102によって電源周期毎に各桁に記憶する値が左方向又は右方向に1ビットずつシフトされてデータ列が読み出される。また、シフトレジスタ105は、ループカウンタ106の読み込み回数が制御ループ数mに相当するm回に達した場合、演算部102によって、m桁のデータ列が初期化され、すなわち各桁に記憶する値が初期の値に戻される。
【0064】
シフトレジスタ105が出力するデータ列の各桁の値は、各制御ループに対応付けられている。例えば、図5の場合、パルス変換装置1は、4個の制御ループに接続されているため、シフトレジスタ105は、4桁からなる2進数のデータ列を格納する。そして、データ列の1桁目の値はPMin1〜PMout1に関する制御ループL1、2桁目の値はPMin2〜PMout2に関する制御ループL2、3桁目の値はPMin3〜PMout3に関する制御ループL3、4桁目の値はPMin4〜PMout4に関する制御ループL4に対応付けられている。
【0065】
演算部102は、電源周期毎に、シフトレジスタ105からデータ列を読み込み、読み込んだデータ列に基づき、実施の形態1と同様にパルス変調信号の出力の制御を行う。さらに、演算部102は、シフトレジスタ105からデータ列を読み込んだ後、ループカウンタ106の読み込み回数が制御ループ数mに相当するm回に達していない場合は、シフトレジスタ105のm桁のデータ列を1ビットずつ左方向又は右方向にシフトさせることにより、シフトレジスタ105に新たなデータ列を生成させる。さらに、演算部102は、ループカウンタ106の読み込み回数を1回増加させる。一方、ループカウンタ106の読み込み回数がm回に達している場合は、演算部102は、シフトレジスタ105に格納されたm桁のデータ列を初期化することにより、シフトレジスタ105に新たなデータ列を生成させる。さらに、演算部102は、ループカウンタ106に格納された読み込み回数を初期化する。
【0066】
次に、図3を参照して、実施の形態2に係るパルス変換装置1の処理を説明する。まず、データ列出力部101のシフトレジスタ105は、m桁のデータ列を格納することによりデータ列を生成する(ステップS1)。
【0067】
次に、演算部102は、周波数検出部100の出力に基づき、新たな電源周期になったか否かを判断する(ステップS2)。演算部102は、新たな電源周期になったと判断するまで、定期的にS2の処理を繰り返す。
【0068】
S2で新たな電源周期になったと判断した後、演算部102は、この新たな電源周期でパルス変調信号の変換に用いるためのデータ列を、データ列出力部101のシフトレジスタ105から読み込む(ステップS3)。
【0069】
S3の後、演算部102は、S3で読み込んだデータ列に基づき、m個の切換装置31〜34のうち、n桁の点弧を示す値に対応する切換装置31〜34にパルス変調信号を出力し、他の切換装置31〜34にパルス変調信号を出力しないように制御する(ステップS4)。このS4は実施の形態1で説明したものと同様である。
【0070】
S4の後、データ列出力部101は、次の電源周期で演算部102が読み込むための新たなm桁のデータ列を生成する(ステップS5)。ここで、ループカウンタ106の読み込み回数が、制御ループ数mに相当するm回に達していない場合は、演算部102は、シフトレジスタ105のm桁のデータ列を1ビットずつ左方向又は右方向にシフトさせることにより、シフトレジスタ105に新たなデータ列を生成させる。さらに、演算部102は、ループカウンタ106の読み込み回数を1回増加させる。一方、ループカウンタ106の読み込み回数がm回に達している場合は、演算部102は、シフトレジスタ105に格納されたm桁のデータ列を初期化することにより、シフトレジスタ105に新たなデータ列を生成させる。さらに、演算部102は、ループカウンタ106に格納された読み込み回数を初期化する。
【0071】
S5の後、演算部102は、S2に戻って新たな電源周期になったか否かを判断する。
【0072】
なお、実施の形態2に係るパルス変換装置1を備えた制御システム60において、各調節計41〜44から出力されるパルス変調信号と各制御対象21〜24の電流と各制御対象21〜24の合計電力量との関係は、実施の形態1で説明した図4と同様になる。図4の例では、制御ループ数mが4であり、各切換装置31〜34の最大同時点弧数nが3である。データ列における点弧を示す値が「1」であるとすると、データ列出力部101は、電源周期1においてデータ列「1110」を出力し、電源周期2においてデータ列「1101」を出力し、電源周期3においてデータ列「1011」を出力し、電源周期4においてデータ列「0111」を出力する。その後も、データ列出力部101は、同様にしてこれら4つのデータ列を同じ順番で繰り返して出力する。
【0073】
すると、実施の形態1で説明したように切換装置31〜34の最大同時点弧数が3個に抑制されることから、図4の制御対象の電流の波形で示すように、同時に電流がONされる制御対象21〜24の数が最大3個に抑制される。したがって、パルス変換装置1によるパルス変調信号の変換を行う場合の制御対象21〜24の合計電力の最大値(実線波形のピーク値)は、パルス変調信号の変換を行わない場合の制御対象21〜24の合計電力の最大値(破線波形のピーク値)と比べて、3/4倍に抑制される。
【0074】
さらに、上記のようにデータ列出力部101が電源周期毎に4つのデータ列を同じ順番で繰り返して出力することで、電源周期毎に点弧する切換装置31〜34を巡回して変化させることができる。これにより、各切換装置31〜34を均一な確率で点弧することができる。
【0075】
以上より、実施の形態2に係るパルス変換装置1は、データ列出力部101をシフトレジスタ105及びループカウンタ106で構成することにより、電源周期毎に点弧する切換装置31〜34を巡回して変化させるものである。これにより、実施の形態1の効果に加えて、各切換装置31〜34をより均一な確率で点弧することができる。また、パルス変換装置1の製造コストを安価にすることができる。
【0076】
また、実施の形態2のパルス変換装置1は、切換装置の導通角を制御する位相制御にも適用することができる。これにより、位相制御開始時の過度の電流の発生を抑制することができる。
【0077】
実施の形態3.
図2、3、6、及び7を参照して、本発明の実施の形態3を説明する。なお、実施の形態1と同様の部分については、その詳細の説明を省略し、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0078】
実施の形態2は、データ列出力部101を巡回シフトレジスタで構成することにより、電源周期毎に点弧する切換装置を巡回して変化させるものである。このように、同時に点弧する切換装置の組み合わせを一定の周期性を持つ順番で変化させることにより、数百ミリHz〜数Hz程度の低周波ノイズが発生する場合がある。これにより、例えば各制御対象の電力量を等分散したいという場合に、各切換装置の点弧時間を同等にしても、各制御対象の電力量を等分散することができないおそれがある。このような低周波ノイズの発生を抑制するために、実施の形態3では、同時に点弧する切換装置の組み合わせを、一定の周期性を持たないランダムな順番で、電源周期毎に変化させるものである。
【0079】
実施の形態3は、パルス変換装置1のデータ列出力部101が、後述する離散的配列データ記憶部110、離散的配列データ生成部111、及びデータ列生成部112を備える点で、実施の形態1と異なる。実施の形態3の制御システム60は、図2に示すものと同じであるので、詳細の説明を省略する。
【0080】
図6は、実施の形態3に係るパルス変換装置を示すブロック図である。実施の形態3のパルス変換装置1は、データ列出力部101の構成のみが実施の形態1と異なるので、その他のブロックの詳細の説明を省略する。データ列出力部101は、離散的配列データ記憶部110と、離散的配列データ生成部111と、データ列生成部112とを備える。離散的配列データ生成部111及びデータ列生成部112は、その処理内容が記述されたプログラムを予めコンピュータに記憶させ、このコンピュータの中央演算処理装置(CPU)にそのプログラム実行させることにより、実現される。そして、データ列出力部101は、制御ループ数mに相当するm桁(ビット)の(例えば2進数の)データ列を、電源周期毎に、「1」と「0」の割合を一定に維持しつつ、「1」と「0」の並び順をランダムな順番で変化させて、演算部102に対して出力する。
【0081】
データ列出力部101が出力するデータ列は、実施の形態1と同様に、各制御ループに対応付けられたm桁のデータ列であって、各切換装置31〜34の最大同時点弧数がn(n<m)である場合、m桁のうち、各切換装置31〜34の点弧を示す値をn桁含むデータ列である。
【0082】
例として、4つの制御ループのうち、各切換装置31〜34の最大同時点弧数nが3であり、データ列における点弧を示す値が「1」である場合について説明する。この場合、データ列出力部101は、電源周期1においてデータ列「1101」を出力し、電源周期2においてデータ列「1011」を出力し、電源周期3においてデータ列「1110」を出力し、電源周期4においてデータ列「0111」を出力する。その後も、データ列出力部101は、電源周期毎に、4桁のデータ列を、「1」と「0」の割合を一定に維持しつつ、一定の周期性を持たないランダムな順番で変化させながら出力する。
【0083】
離散的配列データ生成部111は、複数の要素の離散的配列データを生成し、生成した離散的配列データを離散的配列データ記憶部110に記憶させる。離散的配列データ生成部111は、例えば特許文献2に開示された擬似乱数生成装置により構成することができる。離散的配列データは、例えば複数の塩基の塩基配列データである。塩基配列データは、核酸塩基であるDNA(cDNA、cpDNA、gDNA、msDNA、mtDNAを含む)又はRNA(mRNA (pre-mRNA/hnRNA)、tRNA、rRNA、aRNA、gRNA、miRNA、ncRNA、piRNA、shRNA、siRNA、stRNA、snRNA、snoRNA、stRNA、ta-siRNA、tmRNAを含む)の値の集合である。塩基配列データを用いることにより、優れたランダム性を得ることができる。
【0084】
離散的配列データ生成部111は、ネットワークに接続されており、インターネット上に配備されるゲノム・データベースから、ネットワークを介して離散的配列データを必要に応じてダウンロードすることができる。ゲノム・データベースは、例えばインターネット上の塩基配列データバンク(DDBJ:DNA Data Bank of Japan)のデータベースである。そして、離散的配列データ生成部111は、後述の処理によりこの離散的配列データのランダム性が十分であると判断した場合に、この離散的配列データを離散的配列データ記憶部110に記憶させる。
【0085】
離散的配列データ生成部111は、ゲノム・データベースからダウンロードした離散的配列データの一部をライブラリ用配列データとして設定し、離散的配列データの他の部分を乱数判定用データとして設定する。その後、離散的配列データ生成部111は、このライブラリ用配列データに基づき、例えば特許文献3に開示されたいわゆる決定論的非線形予測手法を用いて、予測データを生成する。
【0086】
次に、離散的配列データ生成部111は、予測データと順次取り出した乱数判定用データとを比較し、非ランダムな状態がP回連続しなければ、この離散的配列データのランダム性が十分であると判断して、当該離散的配列データを離散的配列データ記憶部110に記憶させる。一方、離散的配列データ生成部111は、非ランダムな状態がP回連続した場合、この離散的配列データのランダム性が失われたと判断し、ゲノム・データベースから新たな離散的配列データをダウンロードし、上記処理を始めから繰り返す。なお、このパラメータP(P≧1)は、ランダム性の程度を意味するものであり、使用者が任意に設定することができる。
【0087】
離散的配列データ記憶部110は、離散的配列データ生成部111が生成する離散的配列データを記憶する。
【0088】
データ列生成部112は、離散的配列データ記憶部110が記憶する離散的配列データの各要素に応じたm桁の2進数のデータ列を生成する。そして、データ列生成部112が生成したデータ列は、演算部102によって読み出される。m桁のデータ列は、各切換装置31〜34の点弧を示す値を、最大同時点弧数nに相当するn桁含む。
【0089】
例えば、制御ループ数mが4、最大同時点弧数nが3、点弧を示す値が「1」であるとした場合につき説明する。この場合、データ列生成部112は、例えば、要素「G」に対してはデータ列「1101」を割り当て、要素「C」に対してはデータ列「1011」を割り当て、要素「A」に対してはデータ列「1110」を割り当て、要素Tに対してはデータ列「0111」を割り当てる。なお、このような各要素と各データ列との対応関係を規定する情報は、予めデータ列出力部101に記憶される。また、各データ列の「1」と「0」の割合は、例えば、切換装置31〜34の最大同時点弧数や制御対象21〜24の最大需要電力に応じて、使用者等により予め設定される。
【0090】
また、データ列生成部112は、演算部102がデータ列生成部112から離散的配列データの所定要素に応じたm桁のデータ列を読み込むと、離散的配列データにおいてこの所定要素の次の要素に応じたm桁のデータ列を生成する。このように、データ列生成部112は、演算部102がデータ列を読み込む毎に、m桁のデータ列を生成する。
【0091】
なお、データ列生成部112から演算部102によって読み出されるデータ列の各桁の値は、各制御ループに対応付けられている。例えば、図6の場合、パルス変換装置1は、4個の制御ループに接続されているため、データ列生成部112は、4桁からなる2進数のデータ列を生成する。そして、データ列の1桁目の値はPMin1〜PMout1に関する制御ループL1、2桁目の値はPMin2〜PMout2に関する制御ループL2、3桁目の値はPMin3〜PMout3に関する制御ループL3、4桁目の値はPMin4〜PMout4に関する制御ループL4に対応付けられている。
【0092】
次に、図3を参照して、実施の形態3に係るパルス変換装置1の演算部102の処理を説明する。なお、予め離散的配列データ記憶部110には、離散的配列データ生成部111によって生成された離散的配列データが記憶されているものとする。まず、データ列出力部101のデータ列生成部112は、離散的配列データ記憶部110に記憶された離散的配列データの所定要素に応じたm桁のデータ列を生成する(ステップS1)。
【0093】
次に、演算部102は、周波数検出部100の出力に基づき、新たな電源周期になったか否かを判断する(ステップS2)。演算部102は、新たな電源周期になったと判断するまで、定期的にS2の処理を繰り返す。
【0094】
S2で新たな電源周期になったと判断した後、演算部102は、この新たな電源周期でのパルス変調信号の変換に用いるためのデータ列を、データ列出力部101のデータ列生成部112から読み込む(ステップS3)。
【0095】
S3の後、演算部102は、S3で読み込んだデータ列に基づき、m個の切換装置31〜34のうち、n桁の点弧を示す値に対応する切換装置31〜34にパルス変調信号を出力し、他の切換装置31〜34にパルス変調信号を出力しないように制御する(ステップS4)。このS4は実施の形態1で説明したものと同様である。
【0096】
S4の後、データ列出力部101は、次の電源周期で演算部102が読み込むための新たなm桁のデータ列を生成する(ステップS5)。ここで、データ列生成部112は、上記離散的配列データの上記所定要素の次の要素に応じたm桁のデータ列を生成する。
【0097】
S5の後、演算部102は、S2に戻って新たな電源周期になったか否かを判断する。
【0098】
図7は、実施の形態3に係るパルス変換装置1を備えた制御システム60において、各調節計41〜44から出力されるパルス変調信号と各制御対象21〜24の電流と各制御対象21〜24の合計電力量との関係を示す説明図である。
【0099】
図7の例では、実施の形態1で説明した図4の例と同様に、制御ループ数mが4であり、各切換装置31〜34の最大同時点弧数nが3である。データ列における点弧を示す値が「1」であるとすると、データ列出力部101は、電源周期1においてデータ列「1101」を出力し、電源周期2においてデータ列「1011」を出力し、電源周期3においてデータ列「1110」を出力し、電源周期4においてデータ列「0111」を出力する。その後も、データ列出力部101は、電源周期毎に、4桁のデータ列を、「1」と「0」の割合を一定に維持しつつ、一定の周期性を持たないランダムな順番で変化させながら出力する。
【0100】
すると、実施の形態1で説明したように切換装置31〜34の最大同時点弧数が3個に抑制されることから、図7の制御対象の電流の波形で示すように、同時に電流がONされる制御対象21〜24の数が最大3個に抑制される。したがって、パルス変換装置1によるパルス変調信号の変換を行う場合の制御対象21〜24の合計電力の最大値(実線波形のピーク値)は、パルス変調信号の変換を行わない場合の制御対象21〜24の合計電力の最大値(破線波形のピーク値)と比べて、3/4倍に抑制される。
【0101】
さらに、同時に点弧する切換装置31〜34の組み合わせが、一定の周期性を持たないランダムな順番で、電源周期毎に変化する。これにより、低周波ノイズを低減することができるため、例えば各制御対象の電力量を等分散したいという場合に、各切換装置31〜34の平均点弧時間を同等にするだけで、各制御対象21〜24の電力量を等分散することができる。
【0102】
以上より、実施の形態3は、データ列出力部101が、電源周期毎に、離散的配列データの各要素に応じたm桁のデータ列を出力することにより、同時に点弧する切換装置31〜34の組み合わせを、一定の周期性を持たないランダムな順番で変化させるものである。これにより、実施の形態2の効果に加えて、低周波ノイズを低減することができる。
【0103】
なお、実施の形態3のパルス変換装置は、切換装置の導通角を制御する位相制御にも適用することができる。これにより、位相制御開始時の過度の電流の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 パルス変換装置
10 交流電源
21〜24 制御対象
31〜34 切換装置
41〜44 調節計
51〜54 測定器
60 制御システム
100 周波数検出部
101 データ列出力部
102 演算部
103 入力ポート
104 出力ポート
105 シフトレジスタ
106 ループカウンタ
110 離散的配列データ記憶部
111 離散的配列データ生成部
112 データ列生成部
L1〜L4 制御ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象、前記制御対象の制御量に基づきパルス変調信号を出力する調節計、及び前記パルス変調信号に基づき前記制御対象と交流電源との間の点弧及び消弧を切り換える切換装置を有する制御ループをm個(m>1)含む制御システムの中で、前記各調節計と前記各切換装置との間に接続されるパルス変換装置であって、
前記各調節計から前記各パルス変調信号が入力される入力ポートと、
前記各制御ループに対応付けられたm桁のデータ列であって、前記各切換装置の最大同時点弧数がn(n<m)である場合、前記m桁のうち、前記各切換装置の点弧を示す値をn桁含むデータ列を出力するデータ列出力部と、
前記交流電源の電源周期毎に、前記データ列出力部から前記m桁のデータ列を読み込み、前記m個の切換装置のうち、前記n桁の点弧を示す値に対応する前記切換装置に前記パルス変調信号を出力し、他の前記切換装置に前記パルス変調信号を出力しないように制御する演算部と、
前記演算部の制御に基づき、前記各パルス変調信号を前記各切換装置に出力する出力ポートと、
を備えたことを特徴とするパルス変換装置。
【請求項2】
前記データ列出力部は、
前記演算部による読み込み回数を格納するループカウンタと、
前記m桁のデータ列を格納するシフトレジスタと、を有し、
前記演算部は、
前記電源周期毎に前記シフトレジスタから前記m桁のデータ列を読み込むと、前記ループカウンタの前記読み込み回数を1増加させるとともに前記シフトレジスタの前記m桁のデータ列を1ビットシフトさせ、前記読み込み回数がm回に達した場合、前記ループカウンタに格納された前記読み込み回数及び前記シフトレジスタに格納された前記m桁のデータ列を初期化することを特徴とする請求項1に記載のパルス変換装置。
【請求項3】
前記データ列出力部は、
複数の要素の離散的配列データを生成する離散的配列データ生成部と、
前記離散的配列データを記憶する離散的配列データ記憶部と、
前記離散的配列データ記憶部に記憶された前記離散的配列データの各要素に応じた前記m桁のデータ列を生成するデータ列生成部と、を有し、
前記電源周期毎に、前記演算部が前記データ列生成部から前記離散的配列データの所定要素に応じた前記m桁のデータ列を読み込むと、前記データ列生成部は、前記離散的配列データにおいて前記所定要素の次の要素に応じた前記m桁のデータ列を生成する、ことを特徴とする請求項1に記載のパルス変換装置。
【請求項4】
前記離散的配列データ生成部は、
前記離散的配列データのうちの一部をライブラリ用配列データとして設定し、前記離散的配列データのうちの前記ライブラリ用配列データとは異なる他の部分を乱数判定用データとして設定し、
前記ライブラリ用配列データに基づき決定論的非線形予測手法を用いて予測データを生成し、
前記予測データと順次取り出した前記乱数判定用データとを比較し、非ランダムな状態が所定回数連続しない場合、前記離散的配列データを前記離散的配列データ記憶部に記憶することを特徴とする請求項3に記載のパルス変換装置。
【請求項5】
制御対象、前記制御対象の制御量に基づきパルス変調信号を出力する調節計、及び前記パルス変調信号に基づき前記制御対象と交流電源との間の点弧及び消弧を切り換える切換装置を有する制御ループをm個(m>1)含む制御システムであって、
前記各調節計と前記各切換装置との間に、請求項1〜4に記載のパルス変換装置が接続されることを特徴とする制御システム。
【請求項6】
請求項1〜4に記載のパルス変換装置を用いた制御方法であって、
前記データ列出力部が前記m桁のデータ列を生成するステップと、
前記演算部が前記交流電源の新たな電源周期になったか否かを判断するステップと、
前記演算部が前記新たな電源周期になったと判断すると、前記演算部が前記m桁のデータ列を読み込むステップと、
前記演算部が前記入力ポートに入力される前記各パルス変調信号を読み込み、前記m桁のデータ列に基づき、m個の前記切換装置のうち、n桁の点弧を示す値に対応する前記切換装置に前記パルス変調信号を出力し、他の前記切換装置に前記パルス変調信号を出力しないように制御するステップと、
前記データ列出力部が、前記演算部によって前記m桁のデータ列が読み出された後に、次の電源周期で前記演算部が読み込むための新たな前記m桁のデータ列を生成するステップと、
を備えたことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−212361(P2012−212361A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78277(P2011−78277)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【Fターム(参考)】