説明

パルス減衰式流体体系

【課題】優れたインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】プリントヘッド集積回路(IC)(28)と、インクを貯蔵するインク供給貯槽(6)と、インク供給貯槽からプリントヘッドIC(28)までの流路を形成するインク供給ライン(3)とを有するインクジェットプリンタを提供する。インク中の圧力パルスの振幅を減衰させるために、流路に沿ってパルスダンパ(16)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷の分野、特にインクジェット印刷に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本発明に関連する様々な方法、システム、及び装置が、本発明の出願人又は譲受人によって出願された以下の米国特許/特許出願に開示されている。
【表1】


【表2】


【表3】


出願は、その整理番号によって列挙されている。これは、出願番号が分かった時点で置き換えられる。これらの出願及び特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷は、広く普及した多能な印刷画法の形態である。譲受人は、MEMSプリントヘッドICを介してインクを噴射するプリンタを開発してきた。これらのプリントヘッドIC(集積回路)は、半導体製造に通常使用されるリソグラフィ式エッチング及び堆積技法を使用して形成される。
【0004】
MEMSプリントヘッドICの微小寸法ノズル構造は、高ノズル密度(単位IC表面積当たりのノズル数)、高印刷解像度、低電力消費、自己冷却作用、及びそれゆえの高印刷速度を可能にする。そのようなプリントヘッドは、本譲受人の特許文献1及び特許文献2に詳細に記載されている。これらの文書の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
小型ノズル構造及び高ノズル密度は、ノズルの目詰まり、デプライミングインク供給などの障害を発生し得る。理想的には、プリンタの構成要素は、印刷品質に悪影響があり得る状態を本来的に回避又は防止するように設計される。しかし、実際には、デプライミング、目詰まり、溢れ、ガス放出などの問題を完全に免れるプリンタはない。これは特に、プリンタが作動することを想定される条件の範囲が与えられていて、使用者がプリンタを変則的な状態で作動させ、又は輸送すると生じる。製造業者は、全てのプリンタがその作動寿命の間に受けるであろう使用者の取扱いを予測することはできず、従って、全ての起こり得る事態を受容するようにプリンタの構成要素を設計することは不可能であり、費用の観点からも実際的でないことは言うまでもない。
【特許文献1】米国特許第6,746,105号
【特許文献2】米国特許出願第11/097,308号
【発明の開示】
【0006】
したがって、本発明は、
印刷媒体上にインクを射出するノズルアレイを有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
インクを貯蔵するインク供給貯槽と、
インク供給貯槽からプリントヘッドICまでの流路を形成するインク供給ラインと、
流路に沿って配置されたパルスダンパであって、作動中、インクの圧力パルスの振幅を減衰させるパルスダンパと
を備えるインクジェットプリンタを提供する。
【0007】
本発明は、通常の問題の発生の危険性を最低限に押さえると共に、もし問題が起きたときには回復処置を取るような対策を組み込んで設計されたプリンタが、実世界では遥に実際的であるとの認識に立っている。この考え方は、あるプリンタでは問題が発生することがあるが、一般的な印刷上の問題を使用者が容易に是正することができるプリンタが結局は使用者にとってより魅力的であることを認める。
【0008】
流体体系にパルスダンパを加えることによって、インクに鋭い圧力パルスが生じ得ることを許容するが、それを減衰することによって、圧力振幅がMEMSプリントヘッドを溢れさせ又はデプライミングする可能性が小さくなる。更に、ダンピング機構の殆どは、色の混合又はデプライミングに対処するパージ機構としても働くことができる。
【0009】
好ましくは、パルスダンパは、使用中、流路内のインクに接する一方の面と、圧縮性流体に接する反対側の面をもつ可動境界を有する。更に好ましい形態では、パルスダンパは流路内のプリントヘッドICに近接している。特に好ましい形態では、パルスダンパは、流路と流体連通しているインクで部分的に満たされ、部分的に空気で満たされているチャンバである。
【0010】
一部の実施形態では、パルスダンパはインクラインの弾性部分である。任意選択的に、プリンタは、プリントヘッドICを支持しプリントヘッドICにインクを分配するインク分配要素と、インク分配要素へのインクの流れを選択的に可能にし又は阻止する、流路中のバルブとを更に備え、パルスダンパがバルブの上流に配置されている。
【0011】
任意選択的に、パルスダンパは蠕動ポンプ機構の一部である。これらの実施形態では、蠕動ポンプが、ある長さの弾性的に変形可能なインク導管と、弾性的に変形可能なインク導管を狭窄して閉止し、弾性的に変形可能なインク導管の下流端まで移動することができる狭窄装置とを有し得、弾性的に変形可能なインク導管がパルスダンパであり、弾性インク導管の下流端位置での狭窄装置がインク分配要素へのインク流れを選択的に閉止するバルブである。
【0012】
好ましくは、インク分配要素は、高密度ポリエチレン(HDPE)より高いヤング率を有する材料から形成される。
【0013】
好ましくは、インク分配要素はモールド成型液晶ポリマー(LCP)である。
【0014】
好ましくは、インク供給貯槽は、空気入口バルブと、インク出口バルブと、インク出口バルブの開口に応答して空気入口バルブを開口するバルブアクチュエータとを有するインクカートリッジである。これらの実施形態では、プリンタは、インクカートリッジより下流のインク流ライン中に圧力調節装置を更に備え、使用中、圧力調節装置は付勢されて遮蔽され、上流と下流のインク間の閾値圧力差によって開口する。
【0015】
好ましくは、蠕動ポンプ機構は、インクを、プリントヘッドICに通してノズルアレイから押し出すパージアクチュエータである。
【0016】
プリンタは、パージアクチュエータに応答して、ノズルアレイを通してパージされたインクを収集するプリントヘッドメンテナンスヘッドを更に備え得る。プリンタは、インクサンプを更に有し、メンテナンスヘッドは、収集されたパージインクをインクサンプへ移送するインク移送機構を有する。
【0017】
任意選択的に、プリントヘッドメンテナンスヘッドは、ノズルアレイを大気からシールするためにプリントヘッドICに係合する周辺シールを有する。
【0018】
プリンタは、プリントヘッドICへ流れるインクから粒子及び気泡を除去するフィルタも又有し得る。好ましくは、フィルタはインク分配要素の直ぐ上流にあり、バルブはフィルタの直ぐ上流にある。
【0019】
プリンタは、プリントヘッドメンテナンスヘッドと蠕動ポンプ機構の作動を連携させる制御部も又有し得る。
【0020】
好ましくは、プリントヘッドICはページ幅プリントヘッドICである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次いで、本発明の好ましい実施形態が、添付図面を参照して、単に例として記述される。
【0022】
譲受人によって開発されたページ幅のインクジェットプリントヘッドのタイプを使用するインクジェットプリンタの流体システムが、いくつかの要件を満足する筈である。詳細には、殆どの印刷装置が、プリントヘッドでのインク圧力の何らかの調節、長期間のインク貯蔵に対する対策、プリントヘッドICのメンテナンス、及びインク供給の体積制御を必要とする。
【0023】
この明細書を通して「インク」という言葉は、それが、色付きであるのか、可視画像を形成することを意図しているのか、又は媒体基板上に印を付けることを意図しているのかに関係なく、全てのタイプの印刷可能な流体を包含する機能的流体として解釈されるべきであることに留意することが重要である。プリントヘッドは又、赤外線インク、接着剤、若しくはそれらの成分、薬物、揮発性芳香物質、又は他の任意の機能化流体を噴射することができる。
【0024】
流体システム全体図
図1は、インクジェットプリンタの流体システム1の概略全体図である。システム1は4つの部分に分けられている。即ち、インクカートリッジ2、インクライン及び調整部3、プリントヘッド4、及びメンテナンスシステム5である。各部分は、以下で詳細に説明される。
【0025】
インクタンク
インクタンク6は、プリントヘッドへの供給インクを貯蔵する。タンクは、通常、インク調整部分3に取外し可能に結合するカートリッジの形態である。上流カップリング10と下流カップリング12とは、漏洩、気泡、及び塵のない連結部を形成するのが理想的である。実際には、これを達成するのは難しく、幾らかの異物を、インク調整部分3において処理する必要がある。
【0026】
剛性壁カートリッジ
インクを可撓壁容器又は袋に貯蔵するのにはそれ相当の理由がある。空気へのインクの露出が大幅に少なく(ポリマーインク袋を透過する空気のためにゼロではない)、袋を機械的に付勢して膨らませ、それによって、プリントヘッド内に「負」圧(又は大気圧より低い圧力)を生じさせることができる。可撓性インク袋タイプのカートリッジ、及び負圧を掛けたプリントヘッドの利点は、当譲受人の米国特許出願第11/293,820号に記載されており、その特許出願の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
残念ながら、可撓性袋タイプのカートリッジも又、短所を有する。袋の交換が必要になったときに袋中に残留するインクがかなりの量になり得る。このインクは無駄に棄てられ、カートリッジはそれが「必要」とされるよりも大きくなることを意味する。これは、カートリッジ袋が空になるにつれて、負圧が、デプライム閾値より下がり得るからである。デプライム閾値は、インクがノズルチャンバからカートリッジ中へ吸い戻される圧力である。
【0028】
本システムで使用されるカートリッジは「単純な(dumb)」インクタンクであり、それはインク貯蔵以外の機能は果たさない。インクの負圧化は、インク調整部分3で行われる。図2は、インクカートリッジ2の概略図である。インクタンク6は、インク42を貯蔵する剛性壁容器である。カートリッジ2がプリンタに取り付けられると、下流カップリング12(図1)が、インク出口ボール50を押してそれをインク出口56から離脱させる。それによって、インク出口ボール50が、出口ばね54の作用に逆らって、アクチュエータシャフト52を押し上げる。アクチュエータシャフトは、戻しばね58による付勢に逆らって、空気入口ボール44を内部空気入口48から離脱させる。インク42がプリントヘッドによって使用されるにつれて、空気が、外部入口46を通り、空気入口ボール44を周って、内部入口48を通って引き込まれる。
【0029】
空気入口バルブ8は、流体システム1を通るインク流れに対する抵抗を防止するのに十分な空気を流入させるのに足りる大きさである必要がある。しかし又、カートリッジが取り付けられている間にプリンタが万一逆さにされてもインクの漏洩を回避するのに足りる小ささにすべきでもある。インクの漏洩は、インク流れが以下に述べるシャットオフバルブ22によって閉じられたときのインクの毛細管の長さより空気入口を小さくすることによって、概ね防止することができる。水ベースのインクに関しては、毛細管は通常約2mmである。
【0030】
インクカートリッジ2を、その設計に圧力調節機能を持たせて複雑にするのではなくて、単純な貯蔵タンクとして構成することによって、製造費が低減され、又、容量変更を取り入れるために設計を容易に変えることができるようになる。
【0031】
上流/下流カップリング
カートリッジ2を取り外すと、入口及び出口バルブの両方が自動的に閉じて、漏洩を防止することが理解されよう。図には、表示を目的として上流及び下流カップリング10及び12の簡単な略図が示されている。しかし、両カップリングとも、プリントヘッドへのインク流れに引き込まれる異物又は気泡を最小限に抑えるように構成される。適切なカップリングの設計が、上記の米国特許出願第11/293,820号に示されている。
【0032】
圧力調節装置
圧力調節装置14は、プリントヘッドIC28での圧力が確実に大気圧より低くなるようにする。プリントヘッドノズルでの負圧は、インクの漏洩を防止するのに必要である。作動していない間中、インクは、ノズルを横断して形成されるインクメニカスの表面張力によってチャンバ内に留められている。メニカスが外側へ膨らんでいる場合、そのメニカスは、それ自体をノズルの縁に「留め」て、インクをチャンバ内に保持することができる。しかし、それがノズル縁上の紙の埃又は他の異物に接触すると、メニカスが縁から外れ得、インクがプリントヘッドからノズルを通って漏れ出る。
【0033】
これに対応して、多くのインクカートリッジは、チャンバ内のインクの静水圧が大気圧より低くなるように設計されている。これにより、ノズルでのメニカスは、凹状になり又は内向きに引かれる。これにより、メニカスがノズルの縁の紙の埃に触れるのが止められ、インクを漏れ出させることになるチャンバ内の僅かな正圧が取り除かれる。
【0034】
チャンバ内の負圧は2つの因子によって制限される。それは、チャンバをデプライムする(即ち、チャンバからインクを吸い出す)程に強くすることはできず、噴出滴噴出アクチュエータが発生する噴出圧より小さくなくてはならない。しかし、負圧が弱すぎる場合、プリントヘッドが揺さぶられたり振られたりするとノズルがインクを漏らすことがあり得る。これは使用中にも起こり得るが、インクを詰めたプリントヘッドの出荷や取扱い中の方がより起こり得る。
【0035】
本システムは、上述の通り、インクカートリッジ2の設計を複雑にする代わりに、圧力調節装置14を用いて負圧を発生させる。図3Aは、上記の米国特許出願第11/293,820号に記載されたプリンタに使用されている圧力調節装置14及び下流カップリング12を示す。図3Bは、説明を明確にするための分解組立透視図である。圧力調節装置14は、ばね66によって付勢されて閉じられる中央入口開口72をもつダイヤフラム64を有する。カートリッジ内のインクの静水圧は、ダイヤフラムの上側又は上流側に働く。ダイヤフラムの上流側に働くインクの水頭は、カートリッジ内のインクがプリントヘッドによって消費されるにつれて変化する。インクの水頭の変化を比較的一定に保つために、インクタンク6は、比較的幅広で平べったい形状要素を有するべきである。
【0036】
ダイヤフラム64の下側又は下流面に作用するのは、調節部出口70でのインク静圧と調節部ばね66とが組み合わされた圧力である。下流の圧力とばねの付勢が上流の圧力を超えている限り、調節部入口72は、スペーサ62の中央ハブ74に当たって封止されたままになる。
【0037】
作動中、プリントヘッドIC28はポンプとして作用する。ノズルアレイにインクを押し通す噴出アクチュエータは、ダイヤフラム64の下流側のインクの静水圧を低下させる。下流の圧力とばねの付勢が上流の圧力より小さくなると直ぐに、入口72は中央ハブ74から離脱し、インクが調節部出口70へ流れる。入口72を通って入る流れが、直ちにダイヤフラム64の両側の流体圧力を等しくし始め、ばね66の力が、再び入口72を中央ハブ74に当てて再封止するのに十分になる。プリントヘッドIC28が作動し続けると、ダイヤフラムの両面間の差圧が、ばね66の力に平衡するのに必要な閾値差圧の周りに微少量だけ振動するにつれて、圧力調節装置の入口72が連続的に開閉する。ダイヤフラムは素早く連続して開閉し、常に微少量だけしが変位しないので、環状ダイヤフラム支持部68は極めて浅くありさえすればよい。バルブが素早く開閉することによって、圧力調節装置14が、下流のインク経路中に比較的一定の負の静水圧を維持することになる。
【0038】
譲受人のプリントヘッドICの殆どについて、デプライム圧の閾値は、−100mm HO〜−200mm HOの範囲である。これにより、圧力調節装置は、ノズルのデプライム閾値を超えない差圧に設定されるべきである(調節部からノズルまでのインクの水頭を考慮し、調節部14から上のインクの水頭が変化することを配慮して)。
【0039】
圧力調節にニードルバルブを使用することもできるが、それらは通常、本譲受人によって開発された高速ページ幅プリントヘッドに必要なインク流量向けには構成されない。ダイヤフラム入口72は、必要な流量、及び使用中のバルブの素早い開閉に容易に対応することができる。
【0040】
又、圧力調節装置14にダイヤフラムバルブを使用することによって、フィルタ60を組み込むために格好の状況も提供される。ダイヤフラム64は、インク流路のその他の部分より必然的に幅が広くなるので、フィルタは、直径が大きくなることにより、全体的にインク流れを妨げることなく比較的細かくすることができる。
【0041】
パルスダンパ
パルスダンパ16は、インクライン中の衝撃波又は共振パルスによって生じるインク圧力のスパイクを取り除く。衝撃波は、プリント作業又はページの終了時など、プリントヘッドへのインクの流れが急に停止されたときに生じる。当譲受人の高速ページ幅プリントヘッドICは、作動中、高流量のインク供給を必要とする。したがって、カートリッジからノズルへのインクライン中のインクの質量は比較的大きく、かなりの速度で移動している。この流れを突然止めると、インクラインは剛性構造であるので、衝撃波が発生する。LCPモールディング26(図1参照)は特に堅く、ライン中のインク柱が止められるとき殆ど撓みを生じない。インクラインに弾力性が全くないと、衝撃波が、ラプラス圧力(ノズル開口でインクをノズルチャンバ内に留めようとするインクの表面張力によってもたらされる圧力)を超えることが起こり得、プリントヘッドIC28の前面をインクで溢れさせる。ノズルが溢れると、インクが噴出することができず、印刷に模様が出る。
【0042】
インクの共振パルスは、ノズルの射出回数がインクラインの共振周波数に合致すると生じる。やはり、インクラインを形成する堅い構造のために、1つの色に関する複数のノズルの大部分が同時に射出することによって、インクライン中に持続的な波動又は共振パルスを生じさせ得る。これにより、ラプラス圧力を超えた場合に、ノズルの溢れが生じ、又はスパイク後の急な圧力降下のために逆にノズルのデプライムが生じ得る。
【0043】
これに対処するために、本流体システムは、パルスダンパ16を組み込んで、インクラインから圧力スパイクを取り除く。図4に示されるように、圧力スパイク76は持続時間が限られている。減衰されたパルス78では、最大圧力は低くなるが持続時間が長くなる。しかし、両方のシステムで消散されるエネルギー(面積A及びBによって表される)は等しい。
【0044】
ダンパ16は、インクによって圧縮することができる封じ込められた空間でもよい。或いは、ダンパは、弾性的に撓み圧力パルスを吸収することができる、インクラインの弾力性を有する部分でもよい。他の形態では、ダンパ16は、乱流を発生させ、渦粘性を利用してエネルギーを消散させる開口プレート又は内部バッフルであり得る。
【0045】
理想的には、パルスダンパ16は、インクライン中のインク柱の大部分を速やかに捕捉できるように、物理的にLCPモールディング26の近くに配置される。A4のページ幅のプリントヘッドに対しては、ダンパは、LCPモールディング26から約50mm以内とするべきである。
【0046】
インクラインを減衰させ、それによって、ノズルでの公称負圧周りの大きな振動を取り除くことによって、プリントヘッドでの公称負圧を、無減衰システムより低くすることができる。負圧の低い方が、取付け又は取扱い中にプリントヘッドがぶつけられたり激しく揺さぶられたりした場合にノズルからのインク漏洩の可能性が低くなるので、有利である。
【0047】
シャットオフバルブ
シャットオフバルブ22は、デプレイム及び色の混交を防止する。それは、プリントヘッドのパージング操作中にも使用される。このバルブは、プリントヘッドをインクラインのその他の部分から流体的に切り離す限りは、多くの様々な形態を取ることができる。デプライミング、色の混交、及びパージングにおけるバルブの役割が以下に説明される。
【0048】
上記で説明したとおり、ページ幅プリントヘッドは、取扱い及び取付け中に漏洩又は損傷しないように十分堅牢でなければならない。ページ幅プリントヘッドは、その向き及び中程度であれば衝撃にも関係なく、インクが詰まった状態に止まるべきである。インクラインが下流カップリング12まで開放されている場合、ページ幅プリントヘッドは、比較的デプライムし易い。小さな機械的衝撃、又、それらを垂直に保持するだけでも、ラプラス閾値圧力に打ち勝ちデプライミングを起こすのに十分な静水頭を生じ得る。
【0049】
直ぐ上流のシャットオフバルブ22が、プリントヘッドIC28及びLCPモールディング26中のインクを切り離す。これにより、ノズル位置に作用するインクの質量、従ってその運動量が大幅に低下することになる。これが、プリントヘッドの取付け前の取扱い中の震動及び揺さぶりによる漏洩を防止する。
【0050】
色の混交は、そのインクラインに、ある色のインクが別のインクラインからノズルを介して流入したときに生じる。これは、プリントヘッドが短時間(1時間未満)休止している間に起こる。プリントヘッドIC28のノズル面が、ビード状インク又は他の流体によって濡れている場合、異なる色のノズル間に流体の経路が存在し得る。その異なる色のノズルに通じるインクライン間に圧力差があれば、高い圧力のラインからのインクが、圧力が均衡するまで低い圧力のラインへ流れる。混交が数時間続くと、色の混合は回復不能になりえる。
【0051】
高ノズル密度のプリントヘッドIC(本譲受人のもののように)は、適切な対策を取らないと色の混合を非常に起こし易い。ノズル面に埃粒子が唯1つだけでもあれば、異なる色のノズルからのインクのビードを繋ぎ止め、効果的にその2つの間の流体架橋になり得る。同様に、全てのインクライン中の圧力を完全に等しくすることも又、実際上は不可能である。
【0052】
インクラインそれぞれのシャットオフバルブは、色の混合を効果的に抑える。各ライン中のシャットオフバルブからノズルまでのインクの体積は小さく、圧力が均衡するまでに極めて少量の色の混合しか生じない。
【0053】
インクパージ
本システムは、インクパージをメンテナンスサイクルの一部として用いる。インクをパージすることにより、乾いたインク及び色の汚れたインク、並びに他の異物粒子をノズルから取り除く。インクのパージは又、ガス放出に対処する効果的な態様である。ガス放出は、溶解ガス(通常は窒素)が溶液から離脱することによってインクライン中に気泡を形成することを指す。インク中のガス放出は、プリンタが1日程度休止していると発生する。LCPモールディング中の気泡は、プリントヘッドICに対して特に有害な現象であり得、ノズルの射出を妨げる。しかし、比較的小体積のインクをパージすることによって気泡が取り除かれる。パージは、プリントヘッドICをインクで溢れさせ、続いて、噴出されたインクを洗い流すことを含む。本譲受人のA4ページ幅プリントヘッドの場合、約0.017mm(一色当たり)のパージ体積で十分である。パージングインクは、インクラインに連結された別個のパージ空間18中に貯蔵することができる。パージアクチュエータ20が、インクをラインに押し込んで、プリントヘッドICを溢れさせる。これを行うために、インクラインはパージアクチュエータ20の上流で閉じられる必要がある。第2のシャットオフバルブ(図示せず)が、これを達成する好都合な態様である。
【0054】
図5A及び5Bは、パージ機構の2つのオプションを示す。図5Aでは、パージ機構は、2つのシャットオフバルブ82及び84を使用する。パージを開始するために、制御部は、第1シャットオフバルブ82を開き、次いで第2シャットオフバルブ84を閉じる。ソレノイド又はカム(図示せず)が、ダイヤフラムプランジャ86、プランジャ戻しばね80、及びダイヤフラム88を備えるパージアクチュエータ20を駆動する。プランジャ86の内側端部は、パージ貯槽18の出口92に当たって封止するバルブステム90を有する。プランジャ86を押すことにより、同時に、バルブステム90を出口92から離脱させ、ダイヤフラム88でパージ貯槽を圧縮することによって、設定された体積のパージインクを噴出させる。
【0055】
プランジャ86が押されている間に、制御部は第1シャットオフバルブ82を閉じ、第2シャットオフバルブ84を開く。戻しばね80がプランジャを引き込むにつれて、ダイヤフラム88がパージ貯槽18を膨張させ、その結果、パージ貯槽18は新しいインクで再充填される。
【0056】
パージ後は、両方のバルブ82及び84とも、印刷の間は開かれ、プリンタの搬送の間は閉じられる。
【0057】
蠕動的パージ
図5Bに示される蠕動的パージ機構は、シャットオフバルブを必要とせず、それによりインクライン中の構成要素の数が減り、インクラインが制御部にとってより簡単になるという利点を有する。
【0058】
パージを開始するために、ダイヤフラムプランジャ86を押して圧力調節装置14を閉じる。次いで、蠕動プランジャ94が弾性体パージ貯槽18を押してパージインクを噴出させる。圧力調節装置が逆流を阻止することにより、パージインクはLCPモールディングに導き入れられプリントヘッドICを貫通する。次いで、圧力調節装置は再び開放され、蠕動プランジャ94が徐々に引き戻されて弾性体パージ貯槽を再充填する。この結果、システムは再び印刷準備ができている。上記で説明した通り、圧力調節装置は、ダイヤフラム64(図3B参照)の両面間に十分な圧力差があるときにのみ開く。プリンタを搬送するためには、ダイヤフラムプランジャ86は、圧力調節装置を閉止するように作動させられる。
【0059】
この代替形態は、他の構成要素を利用してシャットオフバルブを省いている(特に、シャットオフバルブ22が圧力調節装置14で置き替えられている)一方で、インクラインは、搬送されているときに、その中にかなりの弾力性を有している。先に説明したように、流体システムがシャットオフバルブ22の下流では完全に剛体で動くことがなく、且つシャットオフバルブがLCPモールディングの直ぐ上流にあれば、プリントヘッドICは最も漏洩しにくい。
【0060】
これらの問題点は、シャットオフバルブ22、及び蠕動ポンプを用いたパージ機構を設けることによって対処される。弾性的に変形可能なインクラインの部分がローラ又はカムによって圧搾される。弾性インクラインはローラによってつぶされて閉止され、そのローラは次いで少しの距離だけ下流に移動して小体積のインクをプリントヘッドに押し込む。ローラがそれに沿って移動する弾性インクライン部分は、パージ貯槽18であり、ローラはパージアクチュエータ20である。次いで、ローラが弾性インクラインの下流端で留まる場合、それは又実効上のシャットオフバルブ22である。シャットオフバルブの下流のインクラインに弾力性があり、又は剛性が欠如すると、デプライムの危険性が高まるので、ローラはインクラインの弾性部分の端ぎりぎりまで移動するのが理想的である。
【0061】
フィルタ
プリントヘッドIC28の上流の全ての構成要素が、異物の源になり得る。このことに照らして、フィルタ24は、プリントヘッドIC上流の可能な限り近くに取り付けるべきである。フィルタにプリントヘッドICを取り付けるのが理想的であるが実際的ではない。したがって、現実には、フィルタにとって最も実際的な場所は、LCPモールディング26の上流面上である。
【0062】
フィルタのサイズは、プリントヘッドIC28の構造中に捕捉される程の大きさの粒子は取り除くことと、流れに過剰な抵抗を負荷しないこととの兼ね合いである。本譲受人のプリントヘッドの試験では、3ミクロン(孔寸法)のフィルタが、流体流れに悪影響を及ぼさず、プリントヘッドIC28内に留まり得る粒子のほぼ全部を取り除く。
【0063】
フィルタ24は、効果的な気泡トラップとしても働く。上記で説明した通り、気泡は、カートリッジを交換したとき、又はガス放出の結果として、インクライン中に入り込み得る。3ミクロンのフィルタは、効果的な気泡トラップとして働く。
【0064】
LCPモールディング
モールディング26は、数多くの利点を提供する液晶ポリマー(LCP)から製作される。液晶ポリマーは、その熱膨張係数(CTE)が珪素の熱膨張係数と同様になるように成型することができる。プリントヘッドIC28とその基盤になるモールディングとのCTEの大幅な差は、構造全体を湾曲させ得ることは理解されよう。但し、LCPの鋳造方向のCTEは、非鋳造方向のCTEより大幅に小さい(約20ppm/℃に比較して約5ppm/℃)ので、LCPモールディングの鋳造方向が、確実に一定方向になり、プリントヘッド集積回路(IC)28の長手延在方向と確実に整合するように注意しなければならない。LCPは又、ポリカーボネート、スチレン、ナイロン、PET、ポリプロピレンなどの「標準のプラスチック」の係数の典型的には5倍の係数をもつ比較的高い剛性を有する。
【0065】
製造後のLCPモールディングからの粒子の剥落を最小限に抑えることも又重要である。これに関しては、LCP並びに鋳造プロセスとのインクの適合性を考慮する必要がある。
【0066】
プリントヘッドIC
プリントヘッドIC28は、ポリマーシーリングフィルム(図示せず)によってLCPモールディング26の下側に取り付けられる。このフィルムは、PETやポリスルホンフィルムなどの熱可塑性フィルムでもよく、又はAL Technologies and Rogers Corporation製のものなどの熱硬化性フィルムの形態でもよい。ポリマーシーリングフィルムは、中央のフィルムの両側に接着層を有するラミネートフィルムであり、LCPモールディングの下側に貼り付けられる。複数の孔が、プリントヘッドIC28とLCPモールディング中のチャネルとの間の流体連通のために、中央に配置されたインク供給点に一致するように接着フィルムを貫通してレーザ穿孔されている。
【0067】
ポリマーシーリングフィルムの厚さは、それが実施するインクシールの効果に対して極めて重要である。ポリマーシーリングフィルムは、プリントヘッドICの非噴射面上にエッチングされたチャネルを封止する。ポリマーシーリングフィルムは又、LCPモールディング上のコンジットも封止する。しかし、フィルムがプリントヘッドICの複数のチャネルの開口端に跨って封止するとき、フィルムは又、LCPモールディングの開口の中に向かって膨らみ又は撓むことが起こり得る。フィルムの撓んだ部分がプリントヘッドICにエッチングされたチャネルの幾つかを跨いで通り、インクの色の相互汚染を起こさせる空隙を生じる可能性がある。
【0068】
プリントヘッドIC28のインク噴出側では、表面は平坦である。平坦な表面では、メンテナンス体系に、拭き取り及びぬぐい取り手順を組み込むことができる。これらの手順は有効なメンテナンス技法であるが、それには、プリントヘッドICが堅牢な平坦面を有する必要がある。しかし、ワイヤボンドを覆うカプセルが平坦なノズル表面から盛り上がっており、埃及び乾いたインクがそれに沿って集まり得る稜線を生成する。これに対処するために、プリントヘッドICは、ノズル周りのぬぐい取り又は拭き取りが妨げられないように、ワイヤボンドの傍らに余分に広い部分を有し得る。プリントヘッドICが大きい程、各シリコンウェハからのチップの歩留まりが低下し、それによって製造コストが増加するので、これは折衷的解決策である。
【0069】
プリントヘッドメンテナンス
プリントヘッドメンテナンスは、乾燥、汚染、溢れ、デプライミングを起こさせ得る数多くの非プリント時のプリントヘッド状態を防止し修正する。本流体システムのメンテナンス装置には、周辺シール、シャットオフバルブ、パージ、拭き取り及び/又はぬぐい取り機構、及び湿潤保持ドットが含まれる。
【0070】
周辺シールは、プリンタが長い間休止しているとき、乾燥を遅らせる。周辺シールは、使用していないときノズル面を埃から守る。周辺シールは機能するのにインクを使用せず、従ってインク使用効率に悪影響がないことにも又留意するべきである。しかし、周辺シールは、特に高温気候では、プリントヘッドの水和状態を無限に保つわけではない。シールは汚染を防止する助けにはなり得るが、汚染がひとたび生じるとそれを元に戻すことはできない。同様に、周辺シールは、乾燥したプリントヘッド又はデプライムされたプリントヘッドを直すことはできない。
【0071】
上記の「シャットオフバルブ」の節で説明したように、シャットオフバルブは、ノズルを通って異なる静水圧のインクラインへの色の混合を抑制することができる。シャットオフバルブは又、取付け又は取扱い中にぶつけたり激しく揺さぶったりすることによるデプライミングに対する付加的抵抗性をプリントヘッドに与える。しかし、シャットオフバルブは、インクが乾燥すると大幅にその体積が減少しインクがプリントヘッドIC中へ後退するので、デプライミングを助長することもあり得る。これに照らして、シャットオフバルブは、周辺シール(キャッパ)及び再プライミング機構と共に使用するのが最もよい。
【0072】
パージングは、プリントヘッドを再プライミングする(又は言い換えると、プリントヘッドをデプライムから回復する)1つの手順である。パージングは又、粒状異物を取り除き、乾燥してしまったプリントヘッドを回復するのに用いることができる。残念ながら、インクパージは必然的にインクを消費し、消費インクはサンプへ移送する必要がある。更に、インクパージングは、インクの色の混交を生じ得る。これに照らして、インクパージは、控えめに用いられるべきである。蠕動ポンプは、比較的精密な体積をプリントヘッドICへ正確に送出するので、パージインクの流れを供給するのに最も適している。それにより、各パージでは、必要な量だけのインクを使用し、消耗が最低限に保たれる。
【0073】
パージインクは、別の機構によって清掃されるまで、プリントヘッドICのノズル面に残留する。パージは粒状異物を取り除くので、清掃機構はインクと共に粒状負荷も処置する必要がある。広範囲の機構がこの能力を有するが、回転ベルト機構が有効であることが分かっている。しかし、その機構は比較的複雑であり、消耗品のフィルム(ベルトに使用される)を使用する。
【0074】
又、大量のインクを高速で移送することができる2重ローラ機構も開発されている。このパージインク除去機構は同時係属の出願(出願者側整理番号FNE010US)に詳細に記載されており、同出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。この機構は、パージインクを除去するのにプリントヘッドICのノズル面に実質的に接触することがなく、従って、ローラによるノズル損傷又はノズル汚染の危険性がないという利点を有する。その機構は又、堆積を防止するためにドクターブレードを用いて処理することができる粒状負荷を除去する。
【0075】
湿潤保持ドットは、印刷中、又はプリンタの電源は入っているがその時点では作動していないとき、プリントヘッドICノズルを水和状態に保つために、やはりメンテナンス体系に組み込まれている。湿潤保持ドットの使用及び実施は、ノズルのデキャップ時間及び環境条件に関連することを当業者は容易に理解するであろう。話を簡潔にするためにここでは詳しい説明を行わないが、更なる情報については米国特許出願第11/097,308号を参照されたい。
【0076】
メンテナンス体系において個々の構成要素を連携させて作動させるためには制御部が必要である。制御部は、関連する機械的駆動機構及びプリントヘッドICを以下のモードで作動させる必要がある。
・ 長期間貯蔵−数日間又は数年間に渡る貯蔵、及びそれに続くプリンタの電源投入に対して、制御部は、周辺シールを閉じ、シャットオフバルブを閉じ、次いで、シャットオフバルブを開き1回又は複数回のパージを行った後に一過性混合色の射出を行う起動サイクルを開始する必要がある。
・ 短期間貯蔵−数分間から数時間に渡る貯蔵(例えば、印刷作業間)に対して、制御部は、周辺シールを閉じ、シャットオフバルブを閉じ、次いで、シャットオフバルブを開き1回又は複数回のパージを行った後に一過性混合色の射出を行う起動サイクルを開始する必要がある。
・ 印刷中−制御部は湿潤保持滴を必要に応じて射出する。
・ 使用者の要求−使用者が発した要求に応答して、又はデプライミング若しくは粒子汚染が切っ掛けとなり、制御部は、シャットオフバルブを閉じ、1回又は複数回のパージとそれに続く一過性の混合色の射出による洗浄サイクルを開始する。
【0077】
インク移送
パージング及び混合色インクの射出によって廃棄インクが発生する。プリンタ内ではインクを非管理状態に置くことはできないので、廃棄インクは積極的にサンプに移送しなければならない。したがって、インク移送機構は、廃棄インク発生に関して「最悪ケース」の作動状態中に生じるインクの量を収集し移送できる容量を有さなければならない。収集フェーズは、プリントヘッドICのノズルプレートからのインクの除去であり、移送フェーズでは、収集されたインクをサンプへ移動させる。
【0078】
パージング又は色混合インクの射出によって生じた廃棄インクは、ノズルを汚染しないプロセスを用いてプリントヘッドICから素早く除去されるべきである。問題を複雑にするのは、プリントヘッドの近隣が殆ど利用できないことである。その近傍は、一般に、媒体供給機構及びキャッピング構造などで一杯である。したがって、インクを収集する機構は、通常、カートリッジの寿命を通して発生する廃棄インクの量に対処することはできない。
【0079】
FNE010USの2重ローラ設計における多孔質又は軟質ローラは、プリントヘッドICに実質的には接触せずに効率の良いインクの除去が可能である。軟質ローラは、吸収体によって部分的に囲まれている平行する硬質ローラに押し付けられている。プリントヘッドICから除去されたインクは、両ローラ間のニップに達するまで、軟質ローラの表面に張り付いている。そこで、インクは硬質ローラ(磨きステンレス鋼)に移り、その表面に引き延ばされ、サンプ中の吸収材に引き込まれる。
【0080】
サンプ
サンプは廃棄インクの貯蔵を管理するのに必要である。しかし、サンプは容量が有限であるので、サンプを交換可能にするべきか、その容量がプリンタの予想作動寿命を超えるような大きさにするべきか決定する必要がある。
【0081】
蒸発してインクの量が減るので、比較的小型の交換式サンプでも、プリンタの寿命の間に数回交換する必要があり得るだけである。但し、SOHOのプリンタの作動環境状態は広く変わり得る。吸収材が大気から追加の湿気を引きこむこともあり得る。
【0082】
サンプは単純に容器であってもよい。しかし、インクを更によくあらゆる方向に保持するために、気泡充填構造が好ましい。同様に、セルロース吹取紙又は吸湿性ポリマーは、移送ローラからインクをたやすく吸い取る。
【0083】
カートリッジからサンプまでの流体システムが、例示としてのみ本明細書に記述されてきた。上記で説明された特定の実施形態に対して多くの修正及び改変を当業者は思い付くであろう。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明によるプリンタ用流体システムの概略全体図である。
【図2】インクカートリッジの概略断面図である。
【図3A】圧力調節装置の断面図である。
【図3B】圧力調節装置の分解組立透視図である。
【図4】減衰及び非減衰流体システムの圧力パルスの例示的グラフである。
【図5A】第1のタイプのパージアクチュエータの構成図である。
【図5B】第2のタイプのパージアクチュエータの構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上にインクを射出するノズルアレイを有するプリントヘッドICと、
インクを貯蔵するインク供給貯槽と、
前記インク供給貯槽から前記プリントヘッドICまでの流路を形成するインク供給ラインと、
前記流路に沿って配置されたパルスダンパであって、使用中、インクの圧力パルスの振幅を減衰させるパルスダンパと、
を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記パルスダンパが、使用中、前記流路内のインクに接する一方の面と、圧縮性流体に接する反対側の面とが形成された可動境界を有する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記パルスダンパが前記流路内の前記プリントヘッドICに近接している、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記パルスダンパが、前記流路と流体連通しているインクで部分的に満たされ、部分的に空気で満たされているチャンバである、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記パルスダンパが前記インクラインの弾性部分である、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インクジェットプリンタは、
前記プリントヘッドICを支持し、前記プリントヘッドICにインクを分配するインク分配要素と、
前記インク分配要素へのインクの流れを選択的に可能にする又は阻止する前記流路中のバルブと、
を更に備え、
前記パルスダンパが前記バルブの上流に配置されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記パルスダンパが蠕動ポンプ機構の一部である、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記蠕動ポンプ機構が、
ある長さの弾性的に変形可能なインク導管と、
前記弾性的に変形可能なインク導管を狭窄して閉止し、前記弾性的に変形可能なインク導管の下流端まで移動することができる狭窄装置と、
を有し、
前記弾性的に変形可能なインク導管が、前記パルスダンパであり、
前記弾性的に変形可能なインク導管の前記下流端位置での前記狭窄装置が、インク分配要素へのインクの流れを選択的に閉止するバルブである、請求項7に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インク分配要素が、高密度ポリエチレン(HDPE)より高いヤング率を有する材料から形成される、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記インク分配要素がモールド成型液晶ポリマー(LCP)である、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記インク供給貯槽は、
空気入口バルブと、インク出口バルブと、前記インク出口バルブの開口に応答して前記空気入口バルブを開口するバルブアクチュエータと、を有するインクカートリッジ、
である請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記インクジェットプリンタは、前記インクカートリッジより下流の前記インク流ライン中に圧力調節装置を更に備え、使用中、前記圧力調節装置は、付勢されて遮蔽され、上流と下流のインク間の閾値圧力差によって開口する、請求項11に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項13】
前記蠕動ポンプ機構が、インクを、前記プリントヘッドICに通して前記ノズルアレイから押し出すパージアクチュエータである、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項14】
前記インクジェットプリンタは、
前記パージアクチュエータに応答して、前記ノズルアレイを通してパージされたインクを収集するプリントヘッドメンテナンスヘッド、
を更に備える、請求項13に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項15】
前記インクジェットプリンタは、インクサンプを更に備え、
前記メンテナンスヘッドは、前記収集されたパージインクを前記インクサンプへ移送するインク移送機構を有する、請求項14に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項16】
前記プリントヘッドメンテナンスヘッドが、前記ノズルアレイを大気からシールするために前記プリントヘッドICに係合する周辺シールを有する、請求項14に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項17】
前記インクジェットプリンタは、前記プリントヘッドICへ流れるインクから粒子及び気泡を除去するフィルタを更に備える、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項18】
前記フィルタが前記インク分配要素の直ぐ上流にあり、前記バルブが前記フィルタの直ぐ上流にある、請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項19】
前記インクジェットプリンタは、前記プリントヘッドメンテナンスヘッドと前記蠕動ポンプ機構の作動を連携させる制御部、を更に備える、請求項14に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項20】
前記プリントヘッドICがページ幅プリントヘッドICである、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−513397(P2009−513397A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538225(P2008−538225)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000974
【国際公開番号】WO2007/098524
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】