パルス軸方向場を使用した質量選択的軸方向輸送のための方法および装置
質量分析計システムは、導入端と、放出端と、複数のロッドと、中心長手軸とを有する1組の細長いロッドを有する。質量分析計システムは、以下のステップを実施するように動作可能である。a)第1の複数のイオン群をロッドセットの導入端に導入し、b)複数のロッドの間に領域を生成して、ロッドセット内に第1の複数のイオン群を閉じ込め、c)第1の複数のイオン群内の第1のイオン群のための第1の質量/電荷範囲を選択し、d)第1の放射状励起場を提供して、第1の質量/電荷範囲内の第1のイオン群を中心長手軸から放射状に変位させ、同時に、第1の質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲内にある、第1のイオン群よりも中心長手軸に近い第2のイオン群を保持し、e)軸方向加速場を提供することによって、第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供する。第1の軸方向の力は、ステップd)では提供されない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して質量分析に関し、より具体的には、パルス軸方向場を使用した選択的軸方向輸送のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の質量分析計が知られており、イオン構造を判断するためのトレース分析(trace analysis)のために広く使用されている。このような分析計は、典型的には、イオンの質量対電荷比(「m/z」)に基づいてイオンを分離する。そのような質量分析計システムの1つとして、質量の選択的軸方向放出がある。例えば、2001年1月23日発行の特許文献1(Hager)を参照されたい。本特許は、選択された質量対電荷比のイオンを捕捉する細長いロッドセットを含む線形イオントラップについて説明する。このような捕捉されたイオンは、非特許文献1においてLondryおよびHagerが説明する質量の選択的方法で、軸方向に放出され得る。質量の選択的軸方向放出および他の種類の質量分析計システムにおいて、異なるイオンの軸方向位置を制御するために時として有利となるであろう。
【特許文献1】米国特許第6,177,668号明細書
【非特許文献1】LondryおよびHager、J Am Soc Mass Spectrom 2003,14,1130−1147「Mass Selective Axial Ejection from a Linear Quadrupole Ion Trap」
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の実施形態の態様に従って、質量分析計システムの操作方法が提供される。質量分析計システムは、導入端と、放出端と、複数のロッドと、中心長手軸とを有する細長いロッドセットを備える。本方法は、a)第1の複数のイオン群をロッドセットの導入端に導入し、b)複数のロッド間に領域を生成して、ロッドセット内に第1の複数のイオン群を閉じ込め、c)第1の複数のイオン群内の第1のイオン群のための第1の質量/電荷範囲を選択し、d)第1の放射状励起場を提供して、第1の質量/電荷範囲内の第1のイオン群を中心長手軸から放射状に変位させ、同時に、第1の質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲内にある、第1のイオン群よりも中心長手軸に近い第2のイオン群を保持し、e)軸方向加速場を提供することによって、第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供するステップを含む。第1の軸方向の力は、ステップd)では提供されない。
【0004】
本発明の第2の実施形態の態様に従って、以下を含む質量分析計システムが提供される。a)イオン源と、b)長手軸に沿って延在する複数のロッドと、イオン源からイオンを導入するための導入端と、ロッドセットの長手軸を横断するイオンを放出する放出端とを有するロッドセットと、c)ロッドセットの複数のロッド間にRF手段を生成するための電圧源モジュールと、d)以下のために放射状励起場を提供する電圧源モジュールを制御用コントローラ。i)操作の励起段階において、選択された質量/電荷範囲内の第1のイオン群を中心長手軸から放射状に変位し、同時に、選択された質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲にある、第1のイオン群よりも中心長手軸に近い第2のイオン群を保持し、ii)操作の軸方向加速段階において、軸方向加速場を提供することによって、第1のイオン群に作用する軸方向の力を提供する。コントローラは、電圧源モジュールを制御して、操作の励起段階において軸方向加速場を遮断し、導出された軸方向の力が操作の励起段階において提供されないようにさらに動作可能である。
【0005】
本出願人による教示の上述および他の特徴は、本願明細書において定義される。
【0006】
以下に記載の図面は例示のみを目的するものとであることは、当業者には理解されるであろう。図面は、出願人による教示の範囲を何ら制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1を参照すると、概略図において、1組の四重極ロッド120が図示されており、そこで双極性補助AC信号が、ロッドの対の1つに提供され得る。具体的には、1組の四重極ロッド120は、一対のXロッド122と、一対のYロッド124とを含み、そこにRF電圧源126によってRF電圧を印加し(公知の方法で)、放射状のイオン閉じ込め構造を提供し得る。1組の四重極ロッド120の放出端は、放出端の放出電極に適切な電圧を供給することによって閉塞し得る。
【0008】
RF電圧源126によってすべてのロッドに印加され得るRF電圧に加え、双極性補助信号が、AC電圧源128によって(公知の方法で)、Yロッド124には提供されずに、Xロッド122に提供され得る。
【0009】
本発明のいくつかの態様によると、XロッドおよびYロッドに供給されるRF電圧は、四重極DC成分を含む。Xロッドに印加される四重極DC成分は、Yロッドに印加される四重極DC成分とは反対の極性である。図2から7に関連して以下にさらに詳述されるように、XロッドおよびYロッドに印加される四重極DCは、電流量がロッドの長さに従って変化し得るような方法で印加される。別の場合には、XロッドおよびYロッドに印加される四重極DCは、ロッドの長さに従って一定にしてもよい。
【0010】
具体的には、本発明のいくつかの態様によると、以下に図示および説明されるように、ロッドセット内のロッドペアに従って提供される四重極DC分布は、ロッドセットの導入端での最大量からロッドセットの放出端での最小量へ線形的に低減する一方、ロッドセット内の別のロッドペアに印加される四重極DC分布は、ロッドセットの導入端での最小量からロッドセットの放出端での最大量へ線形的に増加する。本発明のこのような態様においては、1組の四重極ロッドの両方のロッドペアに印加される四重極DC成分は、このような四重極DC電圧の両方を単にゼロと等しくすることによって、ロッドセットの長さに従って一定となり得る。
【0011】
図4から7に関連して以下に説明される本発明の他の態様によると、数組のセグメント化されたロッドが提供される。このような数組のセグメント化されたロッドのいくつかの場合において、数組のロッドに印加される四重極DC電圧は、必ずしもゼロにせずに、ロッドの長さに従って一様にしてもよい。
【0012】
ロッドに印加されたDC四重極電圧内の線形変化によって生じる導出された軸方向の力は、四重極DCの電位への寄与を考慮して、1組の線形四重極ロッドの二次元的中央部に対し計算され得る。終端効果は考慮されない線形イオントラップの中心部分では、二次元的四重極電位は、以下の式で表され得る。
【0013】
【数1】
式中、2r0は、対向するロッド間の最短距離を示し、φ0は、接地に対して測定され、二極のそれぞれに反対の極性が印加された電位を示す。従来、φ0は、DCとRF成分との線形の組み合わせとして以下の式で表されていた。
【0014】
【数2】
式中、Uは、RF駆動部の角振動数を表す。
【0015】
本例では、交流RFの項については考慮せず、四重極DCが最大量である軸方向位置から測定された、軸方向座標zの線形関数としてDC寄与を書き込んでもよく、以下の式で表される。
【0016】
【数3】
式中、U0は、ロッドの導入端に印加された四重極DCのレベルを表し、z0は、その上に四重極DCが印加された軸方向次元を表す。電場の軸方向成分は、以下の式をもたらすために式3を軸方向座標zに関して微分することによって求められ得る。
【0017】
【数4】
式4を考慮することによって、3つの有意義な特徴がもたらされる。第1に、力が軸方向に一様となる(但し、当然ながら、DC四重極電圧は、ロッドの長さに従って線形的に変化する)。第2に、軸方向場の強度は、放射状変位に二次的に依存する。最後に、導出された軸方向の力の符号は、x−z面では正であるが、y−z面では負となる。
【0018】
議論を容易にするため、イオンは正であり、X極ロッドに印加される四重極DCの極性も正と仮定する。本議論は、同様に適用され、イオンの極性が負の場合にX極ロッドに印加される四重極DCの極性は負となる。
【0019】
図2を参照すると、概略図において、本発明の第1の態様によるイオンガイド218が図示される。簡潔にするため、図2に対し図1の説明を繰り返して行わない。代わりに、明確にするために、図1に関連して上述された類似要素は、同一参照番号に100を加えて使用することで指定される。
【0020】
図2に示されるように、四重極DC電圧Ua1は、イオンガイド218の導入端218aでXロッド222に印加され、放出四重極DC電圧Ua2は、イオンガイド218の放出端218bでXロッド222に供給され得る。同様に、導入四重極DC電圧Ub1は、イオンガイド218の導入端218aでYロッド224に供給される一方で、放出四重極DC電圧Ub2は、イオンガイド218の放出端218bでYロッド224に供給され得る。四重極DC電圧Ua1、Ua2、Ub1およびUb2はすべて、コントローラ240によって制御される。
【0021】
図2では、導入電極S1および放出電極S2は図示されていない。電極S1およびS2は、導入および放出障壁を提供されるために使用され得る。以下に詳述するように、4つの四重極ロッドは、セグメント化されたロッドとして作製されるか、または、軸に沿って線形電圧勾配を提供するために半導体被覆を採用してもよい。軸方向加速様式の間、ロッドペアによって生成された軸方向場は、別のロッドペアによって生成された領域を解消し、軸近傍のイオンが軸方向に射出される強大な力に遭遇しないようにする。しかしながら、別のロッドペアよりもロッドの対の1つにより近くなるように励起されたイオンは、軸方向の一方向に射出される領域に遭遇し、それに応じて加速される。このような励起されたイオンが長手方向の十分なエネルギを捉えると、軸方向加速様式は解除され得る。次いで、イオンガイド218の放出端218bの放出障壁S2上の小電圧が、放出端218bへ加速されるイオンを除くトラップ内のすべてのイオンを維持するために使用され得る。
【0022】
選択的軸方向への質量の輸送のための軸方向加速場を押し出す上述の方法は、以下のステップを伴う。第1のステップでは、複数の着目前駆イオンが捕捉され、分離され得る。本ステップでは、Ua1をUa2と等しく、Ub1をUb2と等しくし、軸方向加速場が提供されないようにされ得る。いくつかの実施形態では、Ua1=Ua2=Ub1=Ub2である。同様に、イオンガイドの導入端218aまたは放出端218bからのイオンの逃避を防止するために、S1およびS2は、Ua1よりも大きくすることができ、いくつかの実施形態では実際に大きい。本ステップでは、FNF(Filtered Noise Field)法またはSWIFT(Stored Waveform Inverse Fourier Transforms)法を使用して、着目前駆イオンを分離することが可能である。別様に、RFおよびDCを切り替えることによって(Ua1=Ua2≠Ub1=Ub2となるように)、高および低質量フィルタを使用して、着目前駆イオンを選別することができる。
【0023】
ステップ2では、最小質量/電荷(m/z)を有する前駆イオンが、双極性励起電圧227(同様に、コントローラ240によって制御される)を使用して励起され得る。再び、着目選択イオンを放射状に励起する本ステップの間、Ua1=Ub1およびUa2=Ub2となる。同様に、長手方向にイオンを含むように、S1およびS2は両方Ua1よりも大きくなる。
【0024】
ステップ3では、軸方向加速様式が使用され、ステップ2で励起されたイオンをイオンガイド218の放出端218bへ加速される。上述のように、本ステップでは、Ua1はUa2と等しくはなく、Ub1はUb2と等しくないため、イオンガイド218に沿った非ゼロ四重極DC電圧勾配を、中心軸から放射状に変位するイオンに作用する導出された軸方向の力(式4による)に生じさせるようにする。イオンは軸周辺で振動しているため、イオンに作用する平均的軸方向場は、以下のように表され得る。
【0025】
【数5】
式中、Ezavrは平均的軸方向の力であり、x0は励起振幅を表す。
本発明のいくつかの態様によると、Ua1=Ub2およびUb1=Ua2である。例えば、Ua1およびUb2は両方+5ボルトである一方、Ub1およびUa2は両方−5ボルトであってもよい。このような電圧構造は望ましく、トラップ内に格納されたイオンの質量範囲を拡大するために有利となる低DC電圧を維持することができる。本軸方向加速ステップでは、S1およびS2は、Ua1よりも大きいままであり、イオンガイド218内に軸方向に捕捉されたイオンを維持するために依然として重要である。さらに、本軸方向加速ステップは、励起されたイオンが十分な軸方向エネルギを得て、ステップ4のS2を通過するための十分な時間の間継続されなければならない。加速場のスイッチが入れられた場合に励起されたイオンがごくわずかな速度を有していると仮定すると、時間間隔T後の軸方向の速度は、以下のようになる。
【0026】
【数6】
また、軸方向のイオンのエネルギは、以下のようになる。
【0027】
【数7】
ステップ4では、軸方向加速場は解除されている。つまり、Ua1=Ua2およびUb1=Ub2である。本軸方向加速様式終了後、放出電極に印加される電圧S2を、例えば0.5*(Ua1+Ub1)よりもわずかに高い程度まで低減させ、他のイオンは保持したままで、励起されたイオンを放出電極に通過させトラップから放出させることが可能である。
【0028】
軸方向放出ステップ4に続いて、ステップ2から4を、ステップ1で分離された他の着目前駆イオンに対し繰り替えることができる。連続して高質量のこのような前駆イオンをステップ2で提供された同一周波数の双極性補助信号と共振させるために、RF電圧の振幅を増加させることが可能である。別様に、補助信号の周波数が新しい着目前駆イオンのそれぞれの運動周波数と一致させるために再調整され得る間、RF電圧振幅は維持することができる。ステップ1で最初に選択されたすべてのイオンの処理後、ステップ1から5を、新しいイオン群を使用して繰り替えることが可能である。随意に、イオンは、異なる順番で選択的に放出される質量であってもよい。例えば、ステップ2では、最大のm/zを有する前駆イオンは、双極性励起電圧227を使用して励起され、続いてステップ3および4を使用して放出され得る。次いで、RF電圧の振幅を連続して低減させ、低質量のイオンを低振幅双極性補助信号と共振させることができる。別様に、異なる順番で異なるm/zのイオンを励起するサイクルの間、RF電圧を増減させることができる。
【0029】
図3を参照すると、概略図において、本発明の別の態様によるイオンガイド318が図示される。簡潔にするために、図3に対し図2の説明は繰り返されない。明確にするために、図2と関連して上述された類似要素は、同一参照番号に100を加えて指定される。
【0030】
図3に示されるように、Xロッド322およびYロッド324の両方が、高誘電絶縁層332で被覆され得る。いくつかの実施形態では、このような絶縁層332は最低10ボルトDCを分離することが可能である。それによって、このような絶縁層332は、抵抗薄膜330で被覆され得る。いくつかの実施形態では、このような抵抗薄膜330は、1Ωから100MΩのそれぞれのロッド上に終端間抵抗を提供する。好ましくは、抵抗被膜330および絶縁層332の両方が可能な限り薄いことが望ましい。
【0031】
図3に示すように、四重極DCは、変化DC四重極電圧源328aおよび328bのそれぞれによって、Xロッド322およびYロッド324の一端に印加され得る。変化DC四重極電圧源328aおよび328bによって提供されるDC四重極電圧は、反対の極性である。変化DC四重極電圧源328aおよび328bは、後述するように、コントローラ340によって制御され得る。また、コントローラ340は、Xロッド322およびYロッド324の少なくとも一方に双極性励起電圧を制御自在に加え得る。電圧源328aおよび328bと電位差計331との接地接続は、RF供給源326によって供給されるRF電圧上に載置可能である。このような配列が電気的視点からより複雑であったとしても、ロッド322、324と導電被膜330との間にRF電位差はないため、絶縁層332に対する要件は緩和する。本構造の付加的利点は、導電被膜に供給されるRFおよびDC電圧を源結合する必要がないため、導電被膜が1オームまでの低抵抗を有すること可能であることである。
【0032】
本発明の態様に従うと、図3のイオンガイド318を、パルス四重極DCを用いて質量の選択的軸方向輸送に使用することができる。まず、第1の複数のイオン群がイオンガイド318の導入端に導入される。この複数のイオン群内のそれぞれのイオン群は、異なるm/zを有する。RF閉じ込め場は、公知の方法でXロッド322とYロッド324との間に提供され、ロッドセット内にこの第1の複数のイオン群を放射状に閉じ込め得る。ユーザ/オペレータは、第1の複数のイオン群内の第1のイオン群に対し第1の質量対電荷比(m/z)を選択することができる。次いで、ユーザは、コントローラ340を操作し、双極性励起電圧を使用して第1の放射状励起場を提供することができる。このような第1の放射状励起場は、中心長手軸から第1の選択された質量/電荷範囲を有する第1のイオン群を変位させる。同時に、第1の選択された質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲を有する第2のイオン群は、励起された第1のイオン群よりもイオンガイド318の中心長手軸の近くに保持される。これは、第1のイオン群を双極性電気信号と共鳴させるために、RF手段の第1のRF振幅を選択することによって行われ得る。
【0033】
第1のイオン群が放射状に励起された後、軸方向加速場が提供され、第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供する。軸方向加速場は、DC四重極電圧源328aおよび328bをそれぞれ使用して、第1の四重極DC電圧をXロッド322に、第2の四重極DC電圧をYロッド324に提供することによって提供される可能性があり、いくつかの実施形態では実際に提供される。第1の四重極DC電圧は、第2の四重極DC電圧に対し反対の極性である。第1および第2の四重極DC電圧の両方が、抵抗被膜330に提供される。抵抗被膜330の終端間抵抗によって、Xロッド322およびYロッド324の長さに従って第1の四重極DC電圧および第2の四重極DC電圧の両方の電位における低減が生じる。その結果、第1の四重極DC電圧および第2の四重極電圧によって提供される軸方向加速場は、ロッドセットの長さに従って生成される。これは、上述のように、第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供する。随意に、抵抗被膜330をロッドの一部のみに沿って提供し、軸方向加速場がロッドセットの長さのこの部分のみに従って変化するようにしてもよい。抵抗被膜330の抵抗が実質的に一様であると仮定すると、第1および第2の四重極DC電圧は、イオンガイド318の長さに従って線形的に変化し、第1のイオン群に作用する一定の軸方向の力を生成する。
【0034】
上述のように、軸方向加速場は、十分なモーメントを第1のイオン群に与えるに十分な時間維持され、この第1のイオン群をイオンガイド318の放出端に提供される放出障壁場を通過して軸方向に放出する。同時に、放出障壁場は、放出端からの第2のイオン群の軸方向放出を妨げるのに十分である。
【0035】
いくつかの実施形態では、軸方向加速場によって放射状励起場の効果が歪められ得るため、軸方向加速場は放射状励起場と同時に提供されず、わずかに異なるm/zのイオンがイオンガイド318の長さに沿った異なる地点で放射状に励起されるようにする。故に、第1のイオン群がイオンガイド318内で放射状に励起されている間、第1および第2の四重極DC電圧が排除され、四重極DC勾配がイオンガイド318の長さに沿って提供されないようにされ得る。その結果、この軸方向加速場から導出された軸方向の力は、第1のイオン群の放射状励起の間提供されない。いくつかの実施形態では、放射状励起場は、軸方向加速場が提供される間も遮断される。これは、双極性励起電圧を単に遮断することによって行われ得る。
【0036】
図3に記載される複数組のロッドは、あらゆる方法で構成されてもよい。例えば、所望の最終半径よりも半径において0.003”小さいステンレス製ロッドは、約0.010”厚のアルミナ層で被覆してもよい。続いて、ロッドを所望の半径に機械加工し、0.003”厚のアルミナ層としてもよい。次いで、アルミナで被覆されたロッドをマスク加工し、抵抗被膜330を塗布する。抵抗被膜330は非常に薄いため、恐らく厚さ10ミクロン以下となり得るため、抵抗被膜330の厚さは、ロッドの半径長に著しい影響を及ぼす必要がない。最後に、金属帯をロッド322および324のそれぞれの端部に適用し、一端の変化DC四重極電圧源328aおよび328bからのリード線と、他端のリード線329との良好なオーム接触を促進する。
【0037】
別様かつより単純に、既に標準仕様に機械加工された通常のステンレス製ロッド322および324は、高誘電ポリマー(抵抗被膜330)で被覆し、10ミクロンの層が100ボルトDCにも絶えうるように十分な抵抗性を有してもよい。続いて、わずか数ミクロンの深さまでイオンをポリマー層内に注入し、抵抗被膜330を生成する。上述のように、端部の金属帯によって、抵抗被膜330と、一端の変化DC四重極電圧源328aおよび328bからのリード線と、他端のリード線329との間の良好なオーム接触が確保される。
【0038】
図3のロッドセットを作製する第3の方法は、平均的深さ23μmまでの[2,2]−パラシクロファンパラリン([2,2]−para−cyclophane paralyne)からの絶縁層の化学蒸着(CVD)を伴い、続いて、推定約0.5μmの厚さの水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)膜の抵抗被膜の化学蒸着が行われる。
【0039】
図4を参照すると、概略図において、本発明の第3の態様によるイオンガイド420が図示される。簡潔にするために、図4に対し図3の説明は繰り返されない。明確にするために、図3に関連して上述された類似要素は、同一参照番号に100を加えた番号を使用して指定される。
【0040】
イオンガイド420は、複数のセグメント425に分割される。イオンガイド420の放出端は、図4の右側に位置する。放出電極427aは導入電極427bが導入端に提供される一方で、イオンガイド420の放出端に提供される。同一のRF電圧をイオンガイドのそれぞれのセグメントに印加し、イオンビームを放射状に閉じ込めることができる。複数のセグメント425のそれぞれのセグメントに対し、個別の電圧(例えば、i番目のセグメントにはUi)をRF電圧に付加し得る。それぞれの電圧Uiは、個別に選択され、四重極DC成分電圧を含み、すべての四重極DC電圧が一緒になって、イオンガイド420の軸に沿って所望の分布を提供することを可能にする。例えば、図示されるように、個別の電圧U1およびU2は、独立して制御可能な電源PS1およびPS2によって、そのそれぞれのセグメントに供給される。
【0041】
それぞれの個別の電源PSiは、付随するレジスタ426および付随するコンデンサ428を含み、コントローラ440によって制御される。レジスタ426は、そのそれぞれのセグメントに印加される特定の四重極DC電圧の決定に主に関与する一方、コンデンサ428は、そのそれぞれのセグメントに提供されるAC電圧の決定に主に関与する。このようにして、異なるDCおよびAC電圧をイオンガイド420の異なるセグメントに印加してもよい。故に、例えば、PS1によって第1のセグメントに提供される四重極DCは、PS2によって第2のセグメントに供給される四重極DC電圧をわずかに上回ってもよく、それによって、PS3(図示せず)によって第3のセグメントに供給されるDC四重極電圧をわずかに上回ってもよい。このようにして、提供される全体の四重極DC電圧分布は、ステップ関数によって表されてもよく、四重極DC電圧は、イオンガイド420の複数のセグメント425におけるそれぞれのセグメント上で一定に維持され、次いで新しいセグメントで異なる四重極DC電圧に突然変更される。しかしながら、イオンガイドの軸に沿った複数のセグメント425のそれぞれのセグメントの寸法が可能な限り小さく作製される場合、このステップ関数は直線に近似し、軸方向座標zに対する微分によって、軸方向に一様になるように近似する力をもたらされ得るようにすることができる。
【0042】
概して、それぞれの個別のセグメントに印加される電圧Ui(t)は、図示されるように、時間の関数であり得る。具体的には、Uiの四重極DC成分は、時間の関数であり得る。故に、例えば、複数の着目前駆イオンが捕捉され、分離される第1のステップと、双極性励起を使用して選択された前駆イオンが励起される第2のステップの両方において、同一四重極DC電圧を複数のセグメント425のそれぞれのセグメントに印加し、前駆イオンのいずれかに作用する導出された軸方向の力が存在しないようにすることができる。次いで、ステップ3では、異なる四重極DC電圧が、複数のセグメント425のそれぞれのセグメントに印加され得る。結果として生じる四重極DC電圧勾配は、ステップ2で励起され、それによってロッドの対の1つへ変位された前駆イオンに作用する導出された軸方向の力を生成し、その導出された軸方向の力は、放出されたイオンを放出端へ押し出す。次いで、ステップ4では、同一四重極DC電圧が、複数のセグメント425のすべてのセグメントに再び印加される。
【0043】
図5を参照すると、概略図において、本発明の第4の態様によるイオンガイド520が図示される。明確にするために、同一参照番号に100を加えた番号を使用して、図4に関連して上述された類似要素を指定する。しかしながら、簡潔にするために、図4の説明は、図5に対し繰り返されない。
【0044】
図5のイオンガイド520に印加される四重極DC電圧分布は、電源522、終端レジスタ529およびセグメント間レジスタ526によって決定される。電源522は、コントローラ540によって制御される。セグメント間レジスタ526は、四重極DC電圧分布が単一DC電源522のみによって供給されることが可能なように使用される。四重極DC電圧分布は、イオンガイド520の複数のセグメント525間で、セグメント間レジスタ526の抵抗に基づいて変化する。すべてのレジスタが同一抵抗を有し、複数のセグメント525のすべてのセグメントが同一寸法を有する場合、複数のセグメント525に印加される四重極DC電圧は、イオンガイド520の長さに従って、セグメント毎に一様に変化する。
【0045】
単一RF/AC電圧源524は、複数のセグメント525のそれぞれのセグメントに、コンデンサ528を介してRF/AC電圧を提供する。それぞれのコンデンサ528が適切な電気容量を有すると仮定すると、同一のRF/AC電圧がそれぞれのセグメントに印加される。
【0046】
上述のように、操作の第1の数段階の間、四重極DC電圧源手段522は、いくつかの実施形態では、イオンガイド520の長さに従って四重極DC電圧勾配を提供しない。換言すると、いくつかの実施形態では、複数の着目前駆イオンが、イオンガイド520の導入端に導入され、放射状にイオンを含むためのRF場をロッドに提供するRF/AC電圧源525によって捕捉されている間、DC四重極電圧勾配は、イオンガイド520の長さに従って提供されないが、好適な放出および導入障壁電圧は、放出および導入電極527aと527bのそれぞれに提供され、軸方向にイオンを含む。イオンガイド520の長さに従って四重極DC電圧が一定となる結果、導出された軸方向の力は、捕捉されたイオンに作用しない。次いで、選択されたm/zを有する選択前駆イオン群が励起され、それによってロッドの対の1つに変位された後、四重極DC電圧源手段522を作動させ、四重極DC電圧をイオンガイド520の複数のセグメント525に供給することができる。セグメント間レジスタ526によって、印加される四重極DC電圧は、セグメント毎に変化し、それによって励起されたイオンに作用する導出された軸方向の力を生成する。励起されたイオンが十分にこの導出された軸方向の力によって加速された後、DC電圧源手段522を再び解除し、四重極DC電圧をイオンガイド520の長さに従って一定になるようにすることができる。次いで、放出電極527aに提供される放出障壁電圧S2を、すべてのロッドに供給されるDC電圧よりもわずかに高くなるまで低減させ、励起されていないイオンを保持しながら、励起されたイオンが放出障壁を通過するようにすることができる。
【0047】
図5のイオンガイド520では、四重極DC電圧分布は、レジスタ526の抵抗に基づいて、複数のセグメント525間で変化する。故に、この電圧分布の形状は、典型的には、レジスタ526の抵抗によって定義される。しかしながら、ある場合には、四重極DC電圧分布をより容易に変化させることが望ましい。
【0048】
図6を参照すると、概略図において、本発明の第5の態様によるイオンガイド620が図示される。明確にするために、同一参照番号に100を加えた番号を使用して、図5に関連して上述された類似要素を指定する。しかしながら、簡潔にするために、図5の説明は、図6に対して繰り返されない。
【0049】
図6では、単一RF/AC電源624は、コンデンサ628を介して、イオンガイド620の複数のセグメント625内のそれぞれのセグメントに連結される。この場合、イオンガイド620に提供されるRF/AC電圧分布の形状は、コンデンサ628の値によって予め決定されるが、当然ながら、このようなAC電圧分布の振幅は、AC電源624によって変更され得る。対照的に、独立して制御可能な個別のDC電源は、複数のセグメント625のそれぞれのセグメントに対して提供される。それぞれのDC電源は、コントローラ640によって制御される。このような個別の電源のそれぞれは、レジスタ626によって付随するセグメントに接続される。この場合、イオンガイド620に従って提供されるDC電圧分布は、それぞれのセグメントに対する個別のDC電源を独立して制御することによって変化し得る。
【0050】
図6のイオンガイド620によって、四重極DC電圧分布は、図5のイオンガイド520の場合よりも容易に制御することが可能となるが、これはより複雑となることを犠牲にして達成される。つまり、複数のセグメント625のそれぞれのセグメントに対し独立した制御可能DC電源を提供する。対照的に、図5のイオンガイド520は、単一DC電源522および単一RF/AC電源524のみを必要とする。
【0051】
図7を参照すると、概略図において、本発明の第6の態様によるイオンガイド720が図示される。明確にするために、同一参照番号に100を加えた番号を使用して、図6に関連して上述された類似要素を指定する。しかしながら、簡潔にするために、図6の説明は、図7に対し繰り返されない。
【0052】
図7のイオンガイド720は、RF/AC電圧および四重極DC電圧の複数のセグメント725内のそれぞれのセグメントへの提供に関与する、単一電源721のみ含む。つまり、図7に図示されるように、電源721は、複数のセグメント725の最初と最後のセグメントに直接連結される。最初と最後のセグメントとの間の中間セグメントは、容量分圧器728によってRFパスに沿って結合され、電源721によって供給されるRF電圧は、これらの容量分圧器728を介してこのような個別のセグメントに供給される。このような容量分圧器728の電気容量は、イオンガイド720の長さに従ってRF電圧分布を定義する。理想的には、容量分圧器728の電気容量は、十分に大きくなるように選択され、RF電圧がロッドの長さを超えて著しく低減しないようにする。しかしながら、いくつかの用途では、容量分圧器728の電気容量を増加または変化させることによって、ロッドの長さに従って四重極RFの振幅を変化させることが望ましい。
【0053】
四重極DC電圧は、電源手段721によって、最初と最後のセグメントに直接提供される。最初と最後のセグメントとの間の中間セグメントは、レジスタ726によってDCパスに沿って結合され、電源721によって供給されるDC電圧は、これらのレジスタ726を介して個別のセグメントに供給される。レジスタ726の抵抗は、イオンガイド720の長さに従って、四重極DC電圧分布を定義する。図5に関連して上述したように、一様な四重極DC分布は、供給される四重極DC電圧をゼロボルトと単に等しくすることによって、イオンガイド720の長さに従って提供され得る。
【0054】
図7では、図3から6と同様に、DCおよびRFパスが交差して示されているが、このようなパスは、実際には互いに分離されるべきであることは、当業者には理解されるであろう。
【0055】
図8を参照すると、フローチャートにおいて、本発明の態様によるイオンの分離方法が示される。図8におけるフローチャートのステップ802では、イオンは、ロッドセットの導入端に導入される。次いで、ステップ804では、ロッドセットの放出端に隣接するロッドセットの放出電極に放出手段を生成し、ロッドセットにイオンを放射状に閉じ込めるためのロッドセットのロッドとの間にRF手段を生成することによって、ロッドセット内にイオンを捕捉される。また、ステップ804は、十分な圧力の緩衝ガスを捕捉場内に提供することによって一般的に達成される衝突冷却および集束を含むことができる。ステップ806では、イオンを少なくとも2つの異なるイオン群に分離するための質量対電荷比が選択される。典型的には、選択される質量対電荷比は、前駆イオンのうちの最小質量対電荷比となる。ステップ808では、選択された前駆イオンが、上述のような励起電圧を使用して、放射状次元内で励起される。励起場は、双極性成分、四重極成分、または他の好適な成分、およびそれらの重ね合わせを有することができる。本発明のいくつかの態様によると、それぞれのステップ802、804、806および808の間、四重極DC電圧勾配が、ロッドセットに全くまたは殆ど提供されず、四重極DC成分場、あるいは特に軸方向加速場が、概して提供されないようにする。
【0056】
次いで、ステップ810では、軸方向加速場が提供される。いくつかの実施形態では、双極子励起場は、本軸方向加速場が提供される前に解除される。また、いくつかの実施形態では、軸方向加速場は、四重極DC電圧勾配をロッドセットに提供することによって提供され、四重極DC電圧勾配が導出された軸方向の力を生じさせる。
【0057】
双極子励起場がステップ808で提供されると、ロッドセット内のイオンは、ロッドセットの中心軸から外側へ放射状に移動する第1のイオン群と、励起されず、故に中心軸の周辺に群集したままである第2のイオン群とに分割される。ステップ810では、軸方向加速場または導出された軸方向の力が、第2のイオン群よりも第1のイオン群に非常に大きく作用し、この第1のイオン群をロッドセットの放出端へ加速させる。
【0058】
ステップ812では、放出障壁電圧を十分に低減させ、第1のイオン群が、ステップ810のロッドセットの放出端へ加速され、同時に第2のイオン群を保持するに十分な強固さを維持したまま、放出障壁を通過することを可能にさせる。ステップ814では、軸方向放出後、第1のイオン群は、さらに処理され得る。これは、単に検出によるものであってもよく、別様に、例えば、断片化等のさらなる処理ステップを伴ってもよい。続いて、ステップ816では、第2のイオン群は、ステップ818におけるさらなる処理のために軸方向に放出されてもよい。第2のイオン群のこのような軸方向放出は、第1のイオン群のために採用された方法と実質的に同一方法で進められるであろう。つまり、初めに、上述のような双極性励起電圧を使用して、RF場のRF振幅を変更することによって、第2のイオン群が励起され、第2のイオン群が双極性励起電圧と共振するようにする。再び、上述のように、本発明のいくつかの態様では、この第2のイオン群が励起されている間、四重極DC電圧勾配は、ロッドセットに全くまたは殆ど提供されない。続いて、軸方向加速場が提供され、第2のイオン群を放出障壁へ射出され得る。次いで、ステップ812のように、放出障壁電圧が十分に低減され、第2のイオン群を、他の非加速イオンを保持しながら、放出障壁を通過させることができる。続いて、異なるm/zの付加的イオン群を、類似方法で放出することが可能である。
【0059】
図9を参照すると、ブロック図において、さらに別の本発明の態様によるタンデム質量分析計の配列900が図示される。タンデム質量分析計の配列900は、イオン源902を含み、図3から7のいずれかのイオンガイド等の質量選択的放出トラップ904にイオンを放出する。イオン源902は、任意の好適なイオン源であり得る。例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源、またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)源、あるいは電子衝撃(El)源等である。イオン源は、イオンの継続的ストリームまたはイオンのパルスストリームを提供することが可能である。図8に関連して上述したように、イオンは、質量選択的放出トラップ904内に捕捉される。便利な操作様式の1つは、イオン源がイオンのストリームを生成し、そのパルスが軸方向放出トラップの操作サイクルと同期する場合である。この場合、イオン源によって生成されるイオンは、軸方向放出トラップ内に蓄積され、処理され得る。一方、イオン源が継続的イオンストリームまたは非同期パルスイオンストリームを生成する場合、トラップは、一定の間開放され、イオンを蓄積させ、さらなる処理ステップの間にさらにイオンが流入しないように、その後閉鎖させることができる。処理ステップの間の流入イオンの損失を回避するために、付加的蓄積イオントラップを軸方向放出トラップの上流に載置することができる。蓄積トラップは、軸方向放出トラップが閉鎖されても、イオンの蓄積を継続することが可能である。次いで、蓄積されたイオンは、イオンを受容する準備ができると、軸方向放出トラップに送出される。イオン蓄積間隔の時間およびイオンビームの強度によって、トラップ内に収集されるイオン数が制御される。この数は、一定の制限以下に維持され、トラップの操作における空間電荷効果が影響を受けることを回避するべきである。この制限は、トラップの空間電荷容量と称される場合がある。従って、ビーム強度が高い場合、イオンの一部のみ導入し、残りは拒否し、空間電荷容量制限内のイオン数を維持する必要がある。そのような場合、イオンの利用を向上させる一方法として、イオンストリームを選別し、着目イオンのみ保持する方法がある。従って、着目以外のイオンを格納するために、空間電荷容量が無駄にされることがない。これは、例えば、Filtered Noise Filter(FNF)またはSimulated Waveform Inverse Fourier Transform(SWIFT)技術を適用して、蓄積ステップの間に達成され得る。イオン源からのイオンが直接軸方向放出トラップへ向かう場合、蓄積の間に選別を適用するための適切な電子機器を、軸方向放出トラップに接続することができる。蓄積トラップが軸方向放出トラップの前に使用される場合は、蓄積トラップ内のイオンの選別により有利となり、対応する選別電子機器を蓄積トラップに付設すべきである。
【0060】
トラップ904が充満すると、選択された質量対電荷比のうちから特定のイオン群が選択される。再び、図8に関連して上述したように、このイオン群は、初めに、双極子励起場に曝され、中心軸から放射状に移動する。異なるm/zの他のイオンは、同時に中心軸のより近くに保持される。次いで、四重極DC電圧勾配がロッドセットに提供され、それによって、導出された軸方向の力が生じ、励起されたイオン群が質量選択的放出トラップ904の放出端へ射出される。十分なモーメントがこの選択されたイオン群に提供され、質量選択的放出トラップ904の放出端で障壁を通過し、そこから断片化セル906へ入ることが可能となる。断片化セル906では、選択されたイオン群は断片化され、次いで、軸方向に放出され、質量分析計908内で検出を受け得る。断片化セル906からの第1の選択されたイオン群のフラグメントの放出に続いて、第2の選択されたイオン群が、第1の選択されたイオン群に対し上述された同一方法で、次の断片化および質量分析計908による下流検出のために、質量の選択的トラップ904から断片化セル906へ軸方向に放出され得る。
【0061】
図10を参照すると、概略図において、本発明の第9の態様による線形イオントラップ質量分析計システム1000が図示される。質量分析計システム1000は、4つの細長いロッドの組Q0、T1、T2およびQ2を含み、ロッドセットQ0の後にオリフィス板IQ1、ロッドセットT2の前にIQ2、ロッドの組T2とQ2との間にIQ3、ロッドセットQ2の後にIQ4を有する。短くて太いロッドの付加的組ST1およびST2が、オリフィス板IQ1とロッドセットT1との間、およびロッドセットT1とオリフィス板IQ2との間にそれぞれ提供される。異なる本発明の態様に従って、ロッドセットT1は、図3から7のいずれかのロッドの組または図8の方法の質量の選択的軸方向輸送を実施するために好適な他のロッドセットであってもよい。
【0062】
イオン源からのイオンは、Q0で冷却されてもよく、いくつかの実施形態では実際に冷却され、約8x10−2トルの圧力で維持されてもよく、いくつかの実施形態では実際に維持される。短くて太いロッドST1は、オリフィス板IQ1とロッドセットT1との間に提供され、イオンの流れをロッドセットT1に集束する。いくつかの実施形態では、T1は、長さ10cmあり、約200万の単独で電荷されたイオンの空間電荷容量を有してもよい。T1の圧力は、3x10−5トルで維持され得る。いくつかの実施形態では、T1は、100msの冷却および分離間隔と前駆イオンにつき1サイクル5msの質量の選択的放出サイクルで動作可能である。例えば、20の前駆イオンが選択される場合、100msのサイクルである。いくつかの実施形態では、T1は、20前駆イオンと仮定すると稼働率5Hzを有してもよく、Q2からの最大平均イオン電流は、約10Mイオン/秒となる。
【0063】
ロッドセットT1内では、着目前駆イオンが、ノッチFNFまたはSWIFT励起を使用して分離されることができ、いくつかの実施形態では実際に分離される。別様に、四重極RFおよびDC選別、または両方の組み合わせ、あるいは他の好適な方法を使用して、着目前駆イオンを分離してもよい。続いて、イオンは、T1から、ST2、IQ2、T2およびIQ3を通ってQ2へ軸方向に放出されることができ、いくつかの実施形態では実際に放出される。IQ2は、T1からイオンビームを収容するための大きな楕円形のオリフィスを有する。T2は、励起されたイオンの放射状エネルギの衝突減衰のために使用され得る。さらに、CIDのための高エネルギを達成するための便宜的方法を提供し得る。T2でイオンが捕捉されると、T2のオフセット電圧が所望のレベルまで上昇され得る。T2内に格納されたイオンは、放出障壁(IQ3)が低減し、衝突セルにイオンが放出するまで、そのまま保持される。イオンの軸方向速度は、T2とQ2との間の電位差によって決定される。T2は高RF電圧で動作するため、高オフセット電圧に容易に耐え得る。一方、Q2のオフセット電圧は、質量分析計の後続の段階における制約のため、制限され得る。例えば、Q2が直角注入飛行時間(Time−of−Flight;TOF)計器に結合される場合、Q2オフセット電圧は、TOF質量分析計の他のパラメータに固定および連結され得る。別様に、T2オフセット電圧は、Q2オフセット電圧が低減され、所望の衝突エネルギを得る間、固定電位に維持され得る。捕捉障壁(IQ4)は、イオンがQ2を離れるのを防止するために使用され得る。イオンが断片化し定着すると、Q2のオフセットが、所望のレベルへもたらされ得る。そこでようやく、IQ4障壁が開放され、イオンを計器の後続の段階へ進め、所望のQ2オフセット電位で開始され得る。このような操作の様式は、例えばMALDIによって生成される高質量イオンのように、軸方向エネルギのより高いレベルがCIDに必要な場合、有益である。
【0064】
従って、T1とQ2との間の十分な電位差が、前駆イオンのCID断片化を確実にするために提供され得る。別様に、光開裂、イオン/中性衝突、電子捕獲/移動解離、またはイオン反応等の前駆イオンを変動する他の手段を使用してもよい。イオンがQ2内に入ると、好適な質量分析計によってさらに分析され得る。
【0065】
続いて、フラグメントイオンは、Q2内に蓄積され、T1に戻され得る。フラグメントイオンがT1内に入ると、異なる種類のフラグメントイオンが、上述の方法で放射状励起場およびパルス軸方向加速場を使用して選択的に放出され、さらなる断片化のために軸方向に放出されQ2に戻される。次いで、着目イオンの各フラグメントのための断片化質量スペクトル記録を取得するために、さらに分析され得る。続いて、第2の着目フラグメントイオンが、上述のように放射状励起場およびパルス軸方向加速場を使用して、T1から軸方向に放出され得る。
【0066】
本手段によって、特定の操作において1つのフラグメントのみ分離および断片化される代わりに、一群のフラグメントの断片化質量スペクトルを得ることができる。また、付加的質量分析計を含む装置において、さらなる断片化ステップによって、単一実行から得られることができる情報の増加につながり得る。操作の他の様式では、着目前駆イオンは、T1内で分離され、次いで断片化のためにQ2に直接送られる。フラグメントがQ2内で収集されると、T1に戻され、次いで図8の方法に従って連続的に処理され得る。故に、フラグメントイオンの1組の断片化質量スペクトルが収集され、MS3と称される情報を提供する。
【0067】
図11を参照すると、概略図において、本発明の第10の態様による線形イオントラップ質量分析計システム1100が図示される。簡潔にするために、図10の説明は、図11に対し繰り返されない。
【0068】
図11の線形イオントラップ質量分析計システム1100は、図10の線形イオントラップ質量分析計1000に類似している。しかしながら、線形イオントラップ質量分析計システム1100は、付加的細長いロッドセットT3を含み、線形イオントラップ質量分析計システム1000内のT2の代わりとなる。質量分析計システム1100のT2は、質量分析計システム1000(図10)のT1に類似している。線形イオントラップ質量分析計システム1100では、複数の前駆イオンがT1内で分離され得る。次いで、T2がイオンの他の部分を質量選択的に放出している間、異なるRF電圧が、独立してT1およびT2に印加され、T1内で前駆イオンを格納および分離する。このような構成は、軸方向放出トラップ内の負荷サイクル損失を回避可能であるため、高強度継続的イオンビームと動作する場合は特に有益である。実際に、イオンが図10に示されるT1から質量選択的に放出される場合、T1への導入端は閉塞され、イオンはQ0内に収容され得る。しかし、イオン流動が多い場合、イオンがQ0の空間電荷容量にすぐに充満する。対照的に、図11に示される構成によって、T1内における着目イオンの継続的蓄積および分離を可能にする。T1内のイオンは分離され得る(つまり、望ましくないイオンは除去され得る)ため、空間電荷蓄積率を低減することができる。従って、T1は、T2内のすべての着目イオンを処理するために十分な時間の間、イオンを蓄積可能である。このようにして、図11の質量分析計システム1100は、継続的イオンビームを処理するために使用され得る一方、着目イオンの損失を低減する。
【0069】
本発明の他の変形および改良が可能である。例えば、提供される四重極DC成分場の代わりに、他の好適な手段を採用し、質量分析計の中心軸からの変位に対してイオンに力を及ぼす軸方向加速場を提供してもよい。例えば、補助電極をロッドセットに加えてもよい。このような電極は、勾配をつけ(Loboda A,Krutchinsky A.,Loboda O.,McNabb J.,Spicer V.,Ens W.,Standing K.G.Eur.J.Mass Spectrom.2000;6:531参照)、軸方向場を生成することができる。このような電極に対向する対に反対の極性の電圧を印加することによって、軸方向場が軸近傍でゼロに維持され得る。同時に、軸方向場が軸から離れて非ゼロであるため、励起されたイオンは、正味軸方向加速を受けることになる。他の実施形態では、1組の主要ロッドによって生成された軸方向場は、補助電極によって生成された軸方向場によって反作用し、ロッドセットの中心の軸方向場がゼロに維持される一方、ロッドセットの中心から離れた軸方向場が非ゼロになるようにし、従って、高振幅または放射状振動を有するイオン群を加速することができる。そのような改良または変形のすべては、本願に添付の請求項によって定義される本発明の領域および範囲内であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、概略図において、四重極ロッドセットを示しており、双極性補助信号がロッドペアの1つに提供される。
【図2】図2は、概略図において、本発明の第1の態様による、イオンガイドの端部を示す。
【図3】図3は、概略図において、本発明の第2の態様による、イオンガイドを示す。
【図4】図4は、概略図において、本発明の第3の態様による、イオンガイドの一ロッドを示す。
【図5】図5は、概略図において、本発明の第4の態様による、イオンガイドの一ロッドを示す。
【図6】図6は、概略図において、本発明の第5の態様による、イオンガイドの一ロッドを示す。
【図7】図7は、概略図において、本発明の第6の態様による、イオンガイドの一ロッドを示す。
【図8】図8は、フローチャートにおいて、本発明の第7の態様による、軸方向に選択されたイオン群を連続的に放出するパルス軸方向加速場を提供する方法を示す。
【図9】図9は、ブロック図において、本発明の第8の態様による、MS/MS法の配列を示す。
【図10】図10は、概略図において、本発明の第9の態様による、第2のMS/MS法の配列を示す。
【図11】図11は、概略図において、本発明の第10の態様による、第3のMS/MS配列を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して質量分析に関し、より具体的には、パルス軸方向場を使用した選択的軸方向輸送のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の質量分析計が知られており、イオン構造を判断するためのトレース分析(trace analysis)のために広く使用されている。このような分析計は、典型的には、イオンの質量対電荷比(「m/z」)に基づいてイオンを分離する。そのような質量分析計システムの1つとして、質量の選択的軸方向放出がある。例えば、2001年1月23日発行の特許文献1(Hager)を参照されたい。本特許は、選択された質量対電荷比のイオンを捕捉する細長いロッドセットを含む線形イオントラップについて説明する。このような捕捉されたイオンは、非特許文献1においてLondryおよびHagerが説明する質量の選択的方法で、軸方向に放出され得る。質量の選択的軸方向放出および他の種類の質量分析計システムにおいて、異なるイオンの軸方向位置を制御するために時として有利となるであろう。
【特許文献1】米国特許第6,177,668号明細書
【非特許文献1】LondryおよびHager、J Am Soc Mass Spectrom 2003,14,1130−1147「Mass Selective Axial Ejection from a Linear Quadrupole Ion Trap」
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の実施形態の態様に従って、質量分析計システムの操作方法が提供される。質量分析計システムは、導入端と、放出端と、複数のロッドと、中心長手軸とを有する細長いロッドセットを備える。本方法は、a)第1の複数のイオン群をロッドセットの導入端に導入し、b)複数のロッド間に領域を生成して、ロッドセット内に第1の複数のイオン群を閉じ込め、c)第1の複数のイオン群内の第1のイオン群のための第1の質量/電荷範囲を選択し、d)第1の放射状励起場を提供して、第1の質量/電荷範囲内の第1のイオン群を中心長手軸から放射状に変位させ、同時に、第1の質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲内にある、第1のイオン群よりも中心長手軸に近い第2のイオン群を保持し、e)軸方向加速場を提供することによって、第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供するステップを含む。第1の軸方向の力は、ステップd)では提供されない。
【0004】
本発明の第2の実施形態の態様に従って、以下を含む質量分析計システムが提供される。a)イオン源と、b)長手軸に沿って延在する複数のロッドと、イオン源からイオンを導入するための導入端と、ロッドセットの長手軸を横断するイオンを放出する放出端とを有するロッドセットと、c)ロッドセットの複数のロッド間にRF手段を生成するための電圧源モジュールと、d)以下のために放射状励起場を提供する電圧源モジュールを制御用コントローラ。i)操作の励起段階において、選択された質量/電荷範囲内の第1のイオン群を中心長手軸から放射状に変位し、同時に、選択された質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲にある、第1のイオン群よりも中心長手軸に近い第2のイオン群を保持し、ii)操作の軸方向加速段階において、軸方向加速場を提供することによって、第1のイオン群に作用する軸方向の力を提供する。コントローラは、電圧源モジュールを制御して、操作の励起段階において軸方向加速場を遮断し、導出された軸方向の力が操作の励起段階において提供されないようにさらに動作可能である。
【0005】
本出願人による教示の上述および他の特徴は、本願明細書において定義される。
【0006】
以下に記載の図面は例示のみを目的するものとであることは、当業者には理解されるであろう。図面は、出願人による教示の範囲を何ら制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1を参照すると、概略図において、1組の四重極ロッド120が図示されており、そこで双極性補助AC信号が、ロッドの対の1つに提供され得る。具体的には、1組の四重極ロッド120は、一対のXロッド122と、一対のYロッド124とを含み、そこにRF電圧源126によってRF電圧を印加し(公知の方法で)、放射状のイオン閉じ込め構造を提供し得る。1組の四重極ロッド120の放出端は、放出端の放出電極に適切な電圧を供給することによって閉塞し得る。
【0008】
RF電圧源126によってすべてのロッドに印加され得るRF電圧に加え、双極性補助信号が、AC電圧源128によって(公知の方法で)、Yロッド124には提供されずに、Xロッド122に提供され得る。
【0009】
本発明のいくつかの態様によると、XロッドおよびYロッドに供給されるRF電圧は、四重極DC成分を含む。Xロッドに印加される四重極DC成分は、Yロッドに印加される四重極DC成分とは反対の極性である。図2から7に関連して以下にさらに詳述されるように、XロッドおよびYロッドに印加される四重極DCは、電流量がロッドの長さに従って変化し得るような方法で印加される。別の場合には、XロッドおよびYロッドに印加される四重極DCは、ロッドの長さに従って一定にしてもよい。
【0010】
具体的には、本発明のいくつかの態様によると、以下に図示および説明されるように、ロッドセット内のロッドペアに従って提供される四重極DC分布は、ロッドセットの導入端での最大量からロッドセットの放出端での最小量へ線形的に低減する一方、ロッドセット内の別のロッドペアに印加される四重極DC分布は、ロッドセットの導入端での最小量からロッドセットの放出端での最大量へ線形的に増加する。本発明のこのような態様においては、1組の四重極ロッドの両方のロッドペアに印加される四重極DC成分は、このような四重極DC電圧の両方を単にゼロと等しくすることによって、ロッドセットの長さに従って一定となり得る。
【0011】
図4から7に関連して以下に説明される本発明の他の態様によると、数組のセグメント化されたロッドが提供される。このような数組のセグメント化されたロッドのいくつかの場合において、数組のロッドに印加される四重極DC電圧は、必ずしもゼロにせずに、ロッドの長さに従って一様にしてもよい。
【0012】
ロッドに印加されたDC四重極電圧内の線形変化によって生じる導出された軸方向の力は、四重極DCの電位への寄与を考慮して、1組の線形四重極ロッドの二次元的中央部に対し計算され得る。終端効果は考慮されない線形イオントラップの中心部分では、二次元的四重極電位は、以下の式で表され得る。
【0013】
【数1】
式中、2r0は、対向するロッド間の最短距離を示し、φ0は、接地に対して測定され、二極のそれぞれに反対の極性が印加された電位を示す。従来、φ0は、DCとRF成分との線形の組み合わせとして以下の式で表されていた。
【0014】
【数2】
式中、Uは、RF駆動部の角振動数を表す。
【0015】
本例では、交流RFの項については考慮せず、四重極DCが最大量である軸方向位置から測定された、軸方向座標zの線形関数としてDC寄与を書き込んでもよく、以下の式で表される。
【0016】
【数3】
式中、U0は、ロッドの導入端に印加された四重極DCのレベルを表し、z0は、その上に四重極DCが印加された軸方向次元を表す。電場の軸方向成分は、以下の式をもたらすために式3を軸方向座標zに関して微分することによって求められ得る。
【0017】
【数4】
式4を考慮することによって、3つの有意義な特徴がもたらされる。第1に、力が軸方向に一様となる(但し、当然ながら、DC四重極電圧は、ロッドの長さに従って線形的に変化する)。第2に、軸方向場の強度は、放射状変位に二次的に依存する。最後に、導出された軸方向の力の符号は、x−z面では正であるが、y−z面では負となる。
【0018】
議論を容易にするため、イオンは正であり、X極ロッドに印加される四重極DCの極性も正と仮定する。本議論は、同様に適用され、イオンの極性が負の場合にX極ロッドに印加される四重極DCの極性は負となる。
【0019】
図2を参照すると、概略図において、本発明の第1の態様によるイオンガイド218が図示される。簡潔にするため、図2に対し図1の説明を繰り返して行わない。代わりに、明確にするために、図1に関連して上述された類似要素は、同一参照番号に100を加えて使用することで指定される。
【0020】
図2に示されるように、四重極DC電圧Ua1は、イオンガイド218の導入端218aでXロッド222に印加され、放出四重極DC電圧Ua2は、イオンガイド218の放出端218bでXロッド222に供給され得る。同様に、導入四重極DC電圧Ub1は、イオンガイド218の導入端218aでYロッド224に供給される一方で、放出四重極DC電圧Ub2は、イオンガイド218の放出端218bでYロッド224に供給され得る。四重極DC電圧Ua1、Ua2、Ub1およびUb2はすべて、コントローラ240によって制御される。
【0021】
図2では、導入電極S1および放出電極S2は図示されていない。電極S1およびS2は、導入および放出障壁を提供されるために使用され得る。以下に詳述するように、4つの四重極ロッドは、セグメント化されたロッドとして作製されるか、または、軸に沿って線形電圧勾配を提供するために半導体被覆を採用してもよい。軸方向加速様式の間、ロッドペアによって生成された軸方向場は、別のロッドペアによって生成された領域を解消し、軸近傍のイオンが軸方向に射出される強大な力に遭遇しないようにする。しかしながら、別のロッドペアよりもロッドの対の1つにより近くなるように励起されたイオンは、軸方向の一方向に射出される領域に遭遇し、それに応じて加速される。このような励起されたイオンが長手方向の十分なエネルギを捉えると、軸方向加速様式は解除され得る。次いで、イオンガイド218の放出端218bの放出障壁S2上の小電圧が、放出端218bへ加速されるイオンを除くトラップ内のすべてのイオンを維持するために使用され得る。
【0022】
選択的軸方向への質量の輸送のための軸方向加速場を押し出す上述の方法は、以下のステップを伴う。第1のステップでは、複数の着目前駆イオンが捕捉され、分離され得る。本ステップでは、Ua1をUa2と等しく、Ub1をUb2と等しくし、軸方向加速場が提供されないようにされ得る。いくつかの実施形態では、Ua1=Ua2=Ub1=Ub2である。同様に、イオンガイドの導入端218aまたは放出端218bからのイオンの逃避を防止するために、S1およびS2は、Ua1よりも大きくすることができ、いくつかの実施形態では実際に大きい。本ステップでは、FNF(Filtered Noise Field)法またはSWIFT(Stored Waveform Inverse Fourier Transforms)法を使用して、着目前駆イオンを分離することが可能である。別様に、RFおよびDCを切り替えることによって(Ua1=Ua2≠Ub1=Ub2となるように)、高および低質量フィルタを使用して、着目前駆イオンを選別することができる。
【0023】
ステップ2では、最小質量/電荷(m/z)を有する前駆イオンが、双極性励起電圧227(同様に、コントローラ240によって制御される)を使用して励起され得る。再び、着目選択イオンを放射状に励起する本ステップの間、Ua1=Ub1およびUa2=Ub2となる。同様に、長手方向にイオンを含むように、S1およびS2は両方Ua1よりも大きくなる。
【0024】
ステップ3では、軸方向加速様式が使用され、ステップ2で励起されたイオンをイオンガイド218の放出端218bへ加速される。上述のように、本ステップでは、Ua1はUa2と等しくはなく、Ub1はUb2と等しくないため、イオンガイド218に沿った非ゼロ四重極DC電圧勾配を、中心軸から放射状に変位するイオンに作用する導出された軸方向の力(式4による)に生じさせるようにする。イオンは軸周辺で振動しているため、イオンに作用する平均的軸方向場は、以下のように表され得る。
【0025】
【数5】
式中、Ezavrは平均的軸方向の力であり、x0は励起振幅を表す。
本発明のいくつかの態様によると、Ua1=Ub2およびUb1=Ua2である。例えば、Ua1およびUb2は両方+5ボルトである一方、Ub1およびUa2は両方−5ボルトであってもよい。このような電圧構造は望ましく、トラップ内に格納されたイオンの質量範囲を拡大するために有利となる低DC電圧を維持することができる。本軸方向加速ステップでは、S1およびS2は、Ua1よりも大きいままであり、イオンガイド218内に軸方向に捕捉されたイオンを維持するために依然として重要である。さらに、本軸方向加速ステップは、励起されたイオンが十分な軸方向エネルギを得て、ステップ4のS2を通過するための十分な時間の間継続されなければならない。加速場のスイッチが入れられた場合に励起されたイオンがごくわずかな速度を有していると仮定すると、時間間隔T後の軸方向の速度は、以下のようになる。
【0026】
【数6】
また、軸方向のイオンのエネルギは、以下のようになる。
【0027】
【数7】
ステップ4では、軸方向加速場は解除されている。つまり、Ua1=Ua2およびUb1=Ub2である。本軸方向加速様式終了後、放出電極に印加される電圧S2を、例えば0.5*(Ua1+Ub1)よりもわずかに高い程度まで低減させ、他のイオンは保持したままで、励起されたイオンを放出電極に通過させトラップから放出させることが可能である。
【0028】
軸方向放出ステップ4に続いて、ステップ2から4を、ステップ1で分離された他の着目前駆イオンに対し繰り替えることができる。連続して高質量のこのような前駆イオンをステップ2で提供された同一周波数の双極性補助信号と共振させるために、RF電圧の振幅を増加させることが可能である。別様に、補助信号の周波数が新しい着目前駆イオンのそれぞれの運動周波数と一致させるために再調整され得る間、RF電圧振幅は維持することができる。ステップ1で最初に選択されたすべてのイオンの処理後、ステップ1から5を、新しいイオン群を使用して繰り替えることが可能である。随意に、イオンは、異なる順番で選択的に放出される質量であってもよい。例えば、ステップ2では、最大のm/zを有する前駆イオンは、双極性励起電圧227を使用して励起され、続いてステップ3および4を使用して放出され得る。次いで、RF電圧の振幅を連続して低減させ、低質量のイオンを低振幅双極性補助信号と共振させることができる。別様に、異なる順番で異なるm/zのイオンを励起するサイクルの間、RF電圧を増減させることができる。
【0029】
図3を参照すると、概略図において、本発明の別の態様によるイオンガイド318が図示される。簡潔にするために、図3に対し図2の説明は繰り返されない。明確にするために、図2と関連して上述された類似要素は、同一参照番号に100を加えて指定される。
【0030】
図3に示されるように、Xロッド322およびYロッド324の両方が、高誘電絶縁層332で被覆され得る。いくつかの実施形態では、このような絶縁層332は最低10ボルトDCを分離することが可能である。それによって、このような絶縁層332は、抵抗薄膜330で被覆され得る。いくつかの実施形態では、このような抵抗薄膜330は、1Ωから100MΩのそれぞれのロッド上に終端間抵抗を提供する。好ましくは、抵抗被膜330および絶縁層332の両方が可能な限り薄いことが望ましい。
【0031】
図3に示すように、四重極DCは、変化DC四重極電圧源328aおよび328bのそれぞれによって、Xロッド322およびYロッド324の一端に印加され得る。変化DC四重極電圧源328aおよび328bによって提供されるDC四重極電圧は、反対の極性である。変化DC四重極電圧源328aおよび328bは、後述するように、コントローラ340によって制御され得る。また、コントローラ340は、Xロッド322およびYロッド324の少なくとも一方に双極性励起電圧を制御自在に加え得る。電圧源328aおよび328bと電位差計331との接地接続は、RF供給源326によって供給されるRF電圧上に載置可能である。このような配列が電気的視点からより複雑であったとしても、ロッド322、324と導電被膜330との間にRF電位差はないため、絶縁層332に対する要件は緩和する。本構造の付加的利点は、導電被膜に供給されるRFおよびDC電圧を源結合する必要がないため、導電被膜が1オームまでの低抵抗を有すること可能であることである。
【0032】
本発明の態様に従うと、図3のイオンガイド318を、パルス四重極DCを用いて質量の選択的軸方向輸送に使用することができる。まず、第1の複数のイオン群がイオンガイド318の導入端に導入される。この複数のイオン群内のそれぞれのイオン群は、異なるm/zを有する。RF閉じ込め場は、公知の方法でXロッド322とYロッド324との間に提供され、ロッドセット内にこの第1の複数のイオン群を放射状に閉じ込め得る。ユーザ/オペレータは、第1の複数のイオン群内の第1のイオン群に対し第1の質量対電荷比(m/z)を選択することができる。次いで、ユーザは、コントローラ340を操作し、双極性励起電圧を使用して第1の放射状励起場を提供することができる。このような第1の放射状励起場は、中心長手軸から第1の選択された質量/電荷範囲を有する第1のイオン群を変位させる。同時に、第1の選択された質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲を有する第2のイオン群は、励起された第1のイオン群よりもイオンガイド318の中心長手軸の近くに保持される。これは、第1のイオン群を双極性電気信号と共鳴させるために、RF手段の第1のRF振幅を選択することによって行われ得る。
【0033】
第1のイオン群が放射状に励起された後、軸方向加速場が提供され、第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供する。軸方向加速場は、DC四重極電圧源328aおよび328bをそれぞれ使用して、第1の四重極DC電圧をXロッド322に、第2の四重極DC電圧をYロッド324に提供することによって提供される可能性があり、いくつかの実施形態では実際に提供される。第1の四重極DC電圧は、第2の四重極DC電圧に対し反対の極性である。第1および第2の四重極DC電圧の両方が、抵抗被膜330に提供される。抵抗被膜330の終端間抵抗によって、Xロッド322およびYロッド324の長さに従って第1の四重極DC電圧および第2の四重極DC電圧の両方の電位における低減が生じる。その結果、第1の四重極DC電圧および第2の四重極電圧によって提供される軸方向加速場は、ロッドセットの長さに従って生成される。これは、上述のように、第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供する。随意に、抵抗被膜330をロッドの一部のみに沿って提供し、軸方向加速場がロッドセットの長さのこの部分のみに従って変化するようにしてもよい。抵抗被膜330の抵抗が実質的に一様であると仮定すると、第1および第2の四重極DC電圧は、イオンガイド318の長さに従って線形的に変化し、第1のイオン群に作用する一定の軸方向の力を生成する。
【0034】
上述のように、軸方向加速場は、十分なモーメントを第1のイオン群に与えるに十分な時間維持され、この第1のイオン群をイオンガイド318の放出端に提供される放出障壁場を通過して軸方向に放出する。同時に、放出障壁場は、放出端からの第2のイオン群の軸方向放出を妨げるのに十分である。
【0035】
いくつかの実施形態では、軸方向加速場によって放射状励起場の効果が歪められ得るため、軸方向加速場は放射状励起場と同時に提供されず、わずかに異なるm/zのイオンがイオンガイド318の長さに沿った異なる地点で放射状に励起されるようにする。故に、第1のイオン群がイオンガイド318内で放射状に励起されている間、第1および第2の四重極DC電圧が排除され、四重極DC勾配がイオンガイド318の長さに沿って提供されないようにされ得る。その結果、この軸方向加速場から導出された軸方向の力は、第1のイオン群の放射状励起の間提供されない。いくつかの実施形態では、放射状励起場は、軸方向加速場が提供される間も遮断される。これは、双極性励起電圧を単に遮断することによって行われ得る。
【0036】
図3に記載される複数組のロッドは、あらゆる方法で構成されてもよい。例えば、所望の最終半径よりも半径において0.003”小さいステンレス製ロッドは、約0.010”厚のアルミナ層で被覆してもよい。続いて、ロッドを所望の半径に機械加工し、0.003”厚のアルミナ層としてもよい。次いで、アルミナで被覆されたロッドをマスク加工し、抵抗被膜330を塗布する。抵抗被膜330は非常に薄いため、恐らく厚さ10ミクロン以下となり得るため、抵抗被膜330の厚さは、ロッドの半径長に著しい影響を及ぼす必要がない。最後に、金属帯をロッド322および324のそれぞれの端部に適用し、一端の変化DC四重極電圧源328aおよび328bからのリード線と、他端のリード線329との良好なオーム接触を促進する。
【0037】
別様かつより単純に、既に標準仕様に機械加工された通常のステンレス製ロッド322および324は、高誘電ポリマー(抵抗被膜330)で被覆し、10ミクロンの層が100ボルトDCにも絶えうるように十分な抵抗性を有してもよい。続いて、わずか数ミクロンの深さまでイオンをポリマー層内に注入し、抵抗被膜330を生成する。上述のように、端部の金属帯によって、抵抗被膜330と、一端の変化DC四重極電圧源328aおよび328bからのリード線と、他端のリード線329との間の良好なオーム接触が確保される。
【0038】
図3のロッドセットを作製する第3の方法は、平均的深さ23μmまでの[2,2]−パラシクロファンパラリン([2,2]−para−cyclophane paralyne)からの絶縁層の化学蒸着(CVD)を伴い、続いて、推定約0.5μmの厚さの水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)膜の抵抗被膜の化学蒸着が行われる。
【0039】
図4を参照すると、概略図において、本発明の第3の態様によるイオンガイド420が図示される。簡潔にするために、図4に対し図3の説明は繰り返されない。明確にするために、図3に関連して上述された類似要素は、同一参照番号に100を加えた番号を使用して指定される。
【0040】
イオンガイド420は、複数のセグメント425に分割される。イオンガイド420の放出端は、図4の右側に位置する。放出電極427aは導入電極427bが導入端に提供される一方で、イオンガイド420の放出端に提供される。同一のRF電圧をイオンガイドのそれぞれのセグメントに印加し、イオンビームを放射状に閉じ込めることができる。複数のセグメント425のそれぞれのセグメントに対し、個別の電圧(例えば、i番目のセグメントにはUi)をRF電圧に付加し得る。それぞれの電圧Uiは、個別に選択され、四重極DC成分電圧を含み、すべての四重極DC電圧が一緒になって、イオンガイド420の軸に沿って所望の分布を提供することを可能にする。例えば、図示されるように、個別の電圧U1およびU2は、独立して制御可能な電源PS1およびPS2によって、そのそれぞれのセグメントに供給される。
【0041】
それぞれの個別の電源PSiは、付随するレジスタ426および付随するコンデンサ428を含み、コントローラ440によって制御される。レジスタ426は、そのそれぞれのセグメントに印加される特定の四重極DC電圧の決定に主に関与する一方、コンデンサ428は、そのそれぞれのセグメントに提供されるAC電圧の決定に主に関与する。このようにして、異なるDCおよびAC電圧をイオンガイド420の異なるセグメントに印加してもよい。故に、例えば、PS1によって第1のセグメントに提供される四重極DCは、PS2によって第2のセグメントに供給される四重極DC電圧をわずかに上回ってもよく、それによって、PS3(図示せず)によって第3のセグメントに供給されるDC四重極電圧をわずかに上回ってもよい。このようにして、提供される全体の四重極DC電圧分布は、ステップ関数によって表されてもよく、四重極DC電圧は、イオンガイド420の複数のセグメント425におけるそれぞれのセグメント上で一定に維持され、次いで新しいセグメントで異なる四重極DC電圧に突然変更される。しかしながら、イオンガイドの軸に沿った複数のセグメント425のそれぞれのセグメントの寸法が可能な限り小さく作製される場合、このステップ関数は直線に近似し、軸方向座標zに対する微分によって、軸方向に一様になるように近似する力をもたらされ得るようにすることができる。
【0042】
概して、それぞれの個別のセグメントに印加される電圧Ui(t)は、図示されるように、時間の関数であり得る。具体的には、Uiの四重極DC成分は、時間の関数であり得る。故に、例えば、複数の着目前駆イオンが捕捉され、分離される第1のステップと、双極性励起を使用して選択された前駆イオンが励起される第2のステップの両方において、同一四重極DC電圧を複数のセグメント425のそれぞれのセグメントに印加し、前駆イオンのいずれかに作用する導出された軸方向の力が存在しないようにすることができる。次いで、ステップ3では、異なる四重極DC電圧が、複数のセグメント425のそれぞれのセグメントに印加され得る。結果として生じる四重極DC電圧勾配は、ステップ2で励起され、それによってロッドの対の1つへ変位された前駆イオンに作用する導出された軸方向の力を生成し、その導出された軸方向の力は、放出されたイオンを放出端へ押し出す。次いで、ステップ4では、同一四重極DC電圧が、複数のセグメント425のすべてのセグメントに再び印加される。
【0043】
図5を参照すると、概略図において、本発明の第4の態様によるイオンガイド520が図示される。明確にするために、同一参照番号に100を加えた番号を使用して、図4に関連して上述された類似要素を指定する。しかしながら、簡潔にするために、図4の説明は、図5に対し繰り返されない。
【0044】
図5のイオンガイド520に印加される四重極DC電圧分布は、電源522、終端レジスタ529およびセグメント間レジスタ526によって決定される。電源522は、コントローラ540によって制御される。セグメント間レジスタ526は、四重極DC電圧分布が単一DC電源522のみによって供給されることが可能なように使用される。四重極DC電圧分布は、イオンガイド520の複数のセグメント525間で、セグメント間レジスタ526の抵抗に基づいて変化する。すべてのレジスタが同一抵抗を有し、複数のセグメント525のすべてのセグメントが同一寸法を有する場合、複数のセグメント525に印加される四重極DC電圧は、イオンガイド520の長さに従って、セグメント毎に一様に変化する。
【0045】
単一RF/AC電圧源524は、複数のセグメント525のそれぞれのセグメントに、コンデンサ528を介してRF/AC電圧を提供する。それぞれのコンデンサ528が適切な電気容量を有すると仮定すると、同一のRF/AC電圧がそれぞれのセグメントに印加される。
【0046】
上述のように、操作の第1の数段階の間、四重極DC電圧源手段522は、いくつかの実施形態では、イオンガイド520の長さに従って四重極DC電圧勾配を提供しない。換言すると、いくつかの実施形態では、複数の着目前駆イオンが、イオンガイド520の導入端に導入され、放射状にイオンを含むためのRF場をロッドに提供するRF/AC電圧源525によって捕捉されている間、DC四重極電圧勾配は、イオンガイド520の長さに従って提供されないが、好適な放出および導入障壁電圧は、放出および導入電極527aと527bのそれぞれに提供され、軸方向にイオンを含む。イオンガイド520の長さに従って四重極DC電圧が一定となる結果、導出された軸方向の力は、捕捉されたイオンに作用しない。次いで、選択されたm/zを有する選択前駆イオン群が励起され、それによってロッドの対の1つに変位された後、四重極DC電圧源手段522を作動させ、四重極DC電圧をイオンガイド520の複数のセグメント525に供給することができる。セグメント間レジスタ526によって、印加される四重極DC電圧は、セグメント毎に変化し、それによって励起されたイオンに作用する導出された軸方向の力を生成する。励起されたイオンが十分にこの導出された軸方向の力によって加速された後、DC電圧源手段522を再び解除し、四重極DC電圧をイオンガイド520の長さに従って一定になるようにすることができる。次いで、放出電極527aに提供される放出障壁電圧S2を、すべてのロッドに供給されるDC電圧よりもわずかに高くなるまで低減させ、励起されていないイオンを保持しながら、励起されたイオンが放出障壁を通過するようにすることができる。
【0047】
図5のイオンガイド520では、四重極DC電圧分布は、レジスタ526の抵抗に基づいて、複数のセグメント525間で変化する。故に、この電圧分布の形状は、典型的には、レジスタ526の抵抗によって定義される。しかしながら、ある場合には、四重極DC電圧分布をより容易に変化させることが望ましい。
【0048】
図6を参照すると、概略図において、本発明の第5の態様によるイオンガイド620が図示される。明確にするために、同一参照番号に100を加えた番号を使用して、図5に関連して上述された類似要素を指定する。しかしながら、簡潔にするために、図5の説明は、図6に対して繰り返されない。
【0049】
図6では、単一RF/AC電源624は、コンデンサ628を介して、イオンガイド620の複数のセグメント625内のそれぞれのセグメントに連結される。この場合、イオンガイド620に提供されるRF/AC電圧分布の形状は、コンデンサ628の値によって予め決定されるが、当然ながら、このようなAC電圧分布の振幅は、AC電源624によって変更され得る。対照的に、独立して制御可能な個別のDC電源は、複数のセグメント625のそれぞれのセグメントに対して提供される。それぞれのDC電源は、コントローラ640によって制御される。このような個別の電源のそれぞれは、レジスタ626によって付随するセグメントに接続される。この場合、イオンガイド620に従って提供されるDC電圧分布は、それぞれのセグメントに対する個別のDC電源を独立して制御することによって変化し得る。
【0050】
図6のイオンガイド620によって、四重極DC電圧分布は、図5のイオンガイド520の場合よりも容易に制御することが可能となるが、これはより複雑となることを犠牲にして達成される。つまり、複数のセグメント625のそれぞれのセグメントに対し独立した制御可能DC電源を提供する。対照的に、図5のイオンガイド520は、単一DC電源522および単一RF/AC電源524のみを必要とする。
【0051】
図7を参照すると、概略図において、本発明の第6の態様によるイオンガイド720が図示される。明確にするために、同一参照番号に100を加えた番号を使用して、図6に関連して上述された類似要素を指定する。しかしながら、簡潔にするために、図6の説明は、図7に対し繰り返されない。
【0052】
図7のイオンガイド720は、RF/AC電圧および四重極DC電圧の複数のセグメント725内のそれぞれのセグメントへの提供に関与する、単一電源721のみ含む。つまり、図7に図示されるように、電源721は、複数のセグメント725の最初と最後のセグメントに直接連結される。最初と最後のセグメントとの間の中間セグメントは、容量分圧器728によってRFパスに沿って結合され、電源721によって供給されるRF電圧は、これらの容量分圧器728を介してこのような個別のセグメントに供給される。このような容量分圧器728の電気容量は、イオンガイド720の長さに従ってRF電圧分布を定義する。理想的には、容量分圧器728の電気容量は、十分に大きくなるように選択され、RF電圧がロッドの長さを超えて著しく低減しないようにする。しかしながら、いくつかの用途では、容量分圧器728の電気容量を増加または変化させることによって、ロッドの長さに従って四重極RFの振幅を変化させることが望ましい。
【0053】
四重極DC電圧は、電源手段721によって、最初と最後のセグメントに直接提供される。最初と最後のセグメントとの間の中間セグメントは、レジスタ726によってDCパスに沿って結合され、電源721によって供給されるDC電圧は、これらのレジスタ726を介して個別のセグメントに供給される。レジスタ726の抵抗は、イオンガイド720の長さに従って、四重極DC電圧分布を定義する。図5に関連して上述したように、一様な四重極DC分布は、供給される四重極DC電圧をゼロボルトと単に等しくすることによって、イオンガイド720の長さに従って提供され得る。
【0054】
図7では、図3から6と同様に、DCおよびRFパスが交差して示されているが、このようなパスは、実際には互いに分離されるべきであることは、当業者には理解されるであろう。
【0055】
図8を参照すると、フローチャートにおいて、本発明の態様によるイオンの分離方法が示される。図8におけるフローチャートのステップ802では、イオンは、ロッドセットの導入端に導入される。次いで、ステップ804では、ロッドセットの放出端に隣接するロッドセットの放出電極に放出手段を生成し、ロッドセットにイオンを放射状に閉じ込めるためのロッドセットのロッドとの間にRF手段を生成することによって、ロッドセット内にイオンを捕捉される。また、ステップ804は、十分な圧力の緩衝ガスを捕捉場内に提供することによって一般的に達成される衝突冷却および集束を含むことができる。ステップ806では、イオンを少なくとも2つの異なるイオン群に分離するための質量対電荷比が選択される。典型的には、選択される質量対電荷比は、前駆イオンのうちの最小質量対電荷比となる。ステップ808では、選択された前駆イオンが、上述のような励起電圧を使用して、放射状次元内で励起される。励起場は、双極性成分、四重極成分、または他の好適な成分、およびそれらの重ね合わせを有することができる。本発明のいくつかの態様によると、それぞれのステップ802、804、806および808の間、四重極DC電圧勾配が、ロッドセットに全くまたは殆ど提供されず、四重極DC成分場、あるいは特に軸方向加速場が、概して提供されないようにする。
【0056】
次いで、ステップ810では、軸方向加速場が提供される。いくつかの実施形態では、双極子励起場は、本軸方向加速場が提供される前に解除される。また、いくつかの実施形態では、軸方向加速場は、四重極DC電圧勾配をロッドセットに提供することによって提供され、四重極DC電圧勾配が導出された軸方向の力を生じさせる。
【0057】
双極子励起場がステップ808で提供されると、ロッドセット内のイオンは、ロッドセットの中心軸から外側へ放射状に移動する第1のイオン群と、励起されず、故に中心軸の周辺に群集したままである第2のイオン群とに分割される。ステップ810では、軸方向加速場または導出された軸方向の力が、第2のイオン群よりも第1のイオン群に非常に大きく作用し、この第1のイオン群をロッドセットの放出端へ加速させる。
【0058】
ステップ812では、放出障壁電圧を十分に低減させ、第1のイオン群が、ステップ810のロッドセットの放出端へ加速され、同時に第2のイオン群を保持するに十分な強固さを維持したまま、放出障壁を通過することを可能にさせる。ステップ814では、軸方向放出後、第1のイオン群は、さらに処理され得る。これは、単に検出によるものであってもよく、別様に、例えば、断片化等のさらなる処理ステップを伴ってもよい。続いて、ステップ816では、第2のイオン群は、ステップ818におけるさらなる処理のために軸方向に放出されてもよい。第2のイオン群のこのような軸方向放出は、第1のイオン群のために採用された方法と実質的に同一方法で進められるであろう。つまり、初めに、上述のような双極性励起電圧を使用して、RF場のRF振幅を変更することによって、第2のイオン群が励起され、第2のイオン群が双極性励起電圧と共振するようにする。再び、上述のように、本発明のいくつかの態様では、この第2のイオン群が励起されている間、四重極DC電圧勾配は、ロッドセットに全くまたは殆ど提供されない。続いて、軸方向加速場が提供され、第2のイオン群を放出障壁へ射出され得る。次いで、ステップ812のように、放出障壁電圧が十分に低減され、第2のイオン群を、他の非加速イオンを保持しながら、放出障壁を通過させることができる。続いて、異なるm/zの付加的イオン群を、類似方法で放出することが可能である。
【0059】
図9を参照すると、ブロック図において、さらに別の本発明の態様によるタンデム質量分析計の配列900が図示される。タンデム質量分析計の配列900は、イオン源902を含み、図3から7のいずれかのイオンガイド等の質量選択的放出トラップ904にイオンを放出する。イオン源902は、任意の好適なイオン源であり得る。例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源、またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)源、あるいは電子衝撃(El)源等である。イオン源は、イオンの継続的ストリームまたはイオンのパルスストリームを提供することが可能である。図8に関連して上述したように、イオンは、質量選択的放出トラップ904内に捕捉される。便利な操作様式の1つは、イオン源がイオンのストリームを生成し、そのパルスが軸方向放出トラップの操作サイクルと同期する場合である。この場合、イオン源によって生成されるイオンは、軸方向放出トラップ内に蓄積され、処理され得る。一方、イオン源が継続的イオンストリームまたは非同期パルスイオンストリームを生成する場合、トラップは、一定の間開放され、イオンを蓄積させ、さらなる処理ステップの間にさらにイオンが流入しないように、その後閉鎖させることができる。処理ステップの間の流入イオンの損失を回避するために、付加的蓄積イオントラップを軸方向放出トラップの上流に載置することができる。蓄積トラップは、軸方向放出トラップが閉鎖されても、イオンの蓄積を継続することが可能である。次いで、蓄積されたイオンは、イオンを受容する準備ができると、軸方向放出トラップに送出される。イオン蓄積間隔の時間およびイオンビームの強度によって、トラップ内に収集されるイオン数が制御される。この数は、一定の制限以下に維持され、トラップの操作における空間電荷効果が影響を受けることを回避するべきである。この制限は、トラップの空間電荷容量と称される場合がある。従って、ビーム強度が高い場合、イオンの一部のみ導入し、残りは拒否し、空間電荷容量制限内のイオン数を維持する必要がある。そのような場合、イオンの利用を向上させる一方法として、イオンストリームを選別し、着目イオンのみ保持する方法がある。従って、着目以外のイオンを格納するために、空間電荷容量が無駄にされることがない。これは、例えば、Filtered Noise Filter(FNF)またはSimulated Waveform Inverse Fourier Transform(SWIFT)技術を適用して、蓄積ステップの間に達成され得る。イオン源からのイオンが直接軸方向放出トラップへ向かう場合、蓄積の間に選別を適用するための適切な電子機器を、軸方向放出トラップに接続することができる。蓄積トラップが軸方向放出トラップの前に使用される場合は、蓄積トラップ内のイオンの選別により有利となり、対応する選別電子機器を蓄積トラップに付設すべきである。
【0060】
トラップ904が充満すると、選択された質量対電荷比のうちから特定のイオン群が選択される。再び、図8に関連して上述したように、このイオン群は、初めに、双極子励起場に曝され、中心軸から放射状に移動する。異なるm/zの他のイオンは、同時に中心軸のより近くに保持される。次いで、四重極DC電圧勾配がロッドセットに提供され、それによって、導出された軸方向の力が生じ、励起されたイオン群が質量選択的放出トラップ904の放出端へ射出される。十分なモーメントがこの選択されたイオン群に提供され、質量選択的放出トラップ904の放出端で障壁を通過し、そこから断片化セル906へ入ることが可能となる。断片化セル906では、選択されたイオン群は断片化され、次いで、軸方向に放出され、質量分析計908内で検出を受け得る。断片化セル906からの第1の選択されたイオン群のフラグメントの放出に続いて、第2の選択されたイオン群が、第1の選択されたイオン群に対し上述された同一方法で、次の断片化および質量分析計908による下流検出のために、質量の選択的トラップ904から断片化セル906へ軸方向に放出され得る。
【0061】
図10を参照すると、概略図において、本発明の第9の態様による線形イオントラップ質量分析計システム1000が図示される。質量分析計システム1000は、4つの細長いロッドの組Q0、T1、T2およびQ2を含み、ロッドセットQ0の後にオリフィス板IQ1、ロッドセットT2の前にIQ2、ロッドの組T2とQ2との間にIQ3、ロッドセットQ2の後にIQ4を有する。短くて太いロッドの付加的組ST1およびST2が、オリフィス板IQ1とロッドセットT1との間、およびロッドセットT1とオリフィス板IQ2との間にそれぞれ提供される。異なる本発明の態様に従って、ロッドセットT1は、図3から7のいずれかのロッドの組または図8の方法の質量の選択的軸方向輸送を実施するために好適な他のロッドセットであってもよい。
【0062】
イオン源からのイオンは、Q0で冷却されてもよく、いくつかの実施形態では実際に冷却され、約8x10−2トルの圧力で維持されてもよく、いくつかの実施形態では実際に維持される。短くて太いロッドST1は、オリフィス板IQ1とロッドセットT1との間に提供され、イオンの流れをロッドセットT1に集束する。いくつかの実施形態では、T1は、長さ10cmあり、約200万の単独で電荷されたイオンの空間電荷容量を有してもよい。T1の圧力は、3x10−5トルで維持され得る。いくつかの実施形態では、T1は、100msの冷却および分離間隔と前駆イオンにつき1サイクル5msの質量の選択的放出サイクルで動作可能である。例えば、20の前駆イオンが選択される場合、100msのサイクルである。いくつかの実施形態では、T1は、20前駆イオンと仮定すると稼働率5Hzを有してもよく、Q2からの最大平均イオン電流は、約10Mイオン/秒となる。
【0063】
ロッドセットT1内では、着目前駆イオンが、ノッチFNFまたはSWIFT励起を使用して分離されることができ、いくつかの実施形態では実際に分離される。別様に、四重極RFおよびDC選別、または両方の組み合わせ、あるいは他の好適な方法を使用して、着目前駆イオンを分離してもよい。続いて、イオンは、T1から、ST2、IQ2、T2およびIQ3を通ってQ2へ軸方向に放出されることができ、いくつかの実施形態では実際に放出される。IQ2は、T1からイオンビームを収容するための大きな楕円形のオリフィスを有する。T2は、励起されたイオンの放射状エネルギの衝突減衰のために使用され得る。さらに、CIDのための高エネルギを達成するための便宜的方法を提供し得る。T2でイオンが捕捉されると、T2のオフセット電圧が所望のレベルまで上昇され得る。T2内に格納されたイオンは、放出障壁(IQ3)が低減し、衝突セルにイオンが放出するまで、そのまま保持される。イオンの軸方向速度は、T2とQ2との間の電位差によって決定される。T2は高RF電圧で動作するため、高オフセット電圧に容易に耐え得る。一方、Q2のオフセット電圧は、質量分析計の後続の段階における制約のため、制限され得る。例えば、Q2が直角注入飛行時間(Time−of−Flight;TOF)計器に結合される場合、Q2オフセット電圧は、TOF質量分析計の他のパラメータに固定および連結され得る。別様に、T2オフセット電圧は、Q2オフセット電圧が低減され、所望の衝突エネルギを得る間、固定電位に維持され得る。捕捉障壁(IQ4)は、イオンがQ2を離れるのを防止するために使用され得る。イオンが断片化し定着すると、Q2のオフセットが、所望のレベルへもたらされ得る。そこでようやく、IQ4障壁が開放され、イオンを計器の後続の段階へ進め、所望のQ2オフセット電位で開始され得る。このような操作の様式は、例えばMALDIによって生成される高質量イオンのように、軸方向エネルギのより高いレベルがCIDに必要な場合、有益である。
【0064】
従って、T1とQ2との間の十分な電位差が、前駆イオンのCID断片化を確実にするために提供され得る。別様に、光開裂、イオン/中性衝突、電子捕獲/移動解離、またはイオン反応等の前駆イオンを変動する他の手段を使用してもよい。イオンがQ2内に入ると、好適な質量分析計によってさらに分析され得る。
【0065】
続いて、フラグメントイオンは、Q2内に蓄積され、T1に戻され得る。フラグメントイオンがT1内に入ると、異なる種類のフラグメントイオンが、上述の方法で放射状励起場およびパルス軸方向加速場を使用して選択的に放出され、さらなる断片化のために軸方向に放出されQ2に戻される。次いで、着目イオンの各フラグメントのための断片化質量スペクトル記録を取得するために、さらに分析され得る。続いて、第2の着目フラグメントイオンが、上述のように放射状励起場およびパルス軸方向加速場を使用して、T1から軸方向に放出され得る。
【0066】
本手段によって、特定の操作において1つのフラグメントのみ分離および断片化される代わりに、一群のフラグメントの断片化質量スペクトルを得ることができる。また、付加的質量分析計を含む装置において、さらなる断片化ステップによって、単一実行から得られることができる情報の増加につながり得る。操作の他の様式では、着目前駆イオンは、T1内で分離され、次いで断片化のためにQ2に直接送られる。フラグメントがQ2内で収集されると、T1に戻され、次いで図8の方法に従って連続的に処理され得る。故に、フラグメントイオンの1組の断片化質量スペクトルが収集され、MS3と称される情報を提供する。
【0067】
図11を参照すると、概略図において、本発明の第10の態様による線形イオントラップ質量分析計システム1100が図示される。簡潔にするために、図10の説明は、図11に対し繰り返されない。
【0068】
図11の線形イオントラップ質量分析計システム1100は、図10の線形イオントラップ質量分析計1000に類似している。しかしながら、線形イオントラップ質量分析計システム1100は、付加的細長いロッドセットT3を含み、線形イオントラップ質量分析計システム1000内のT2の代わりとなる。質量分析計システム1100のT2は、質量分析計システム1000(図10)のT1に類似している。線形イオントラップ質量分析計システム1100では、複数の前駆イオンがT1内で分離され得る。次いで、T2がイオンの他の部分を質量選択的に放出している間、異なるRF電圧が、独立してT1およびT2に印加され、T1内で前駆イオンを格納および分離する。このような構成は、軸方向放出トラップ内の負荷サイクル損失を回避可能であるため、高強度継続的イオンビームと動作する場合は特に有益である。実際に、イオンが図10に示されるT1から質量選択的に放出される場合、T1への導入端は閉塞され、イオンはQ0内に収容され得る。しかし、イオン流動が多い場合、イオンがQ0の空間電荷容量にすぐに充満する。対照的に、図11に示される構成によって、T1内における着目イオンの継続的蓄積および分離を可能にする。T1内のイオンは分離され得る(つまり、望ましくないイオンは除去され得る)ため、空間電荷蓄積率を低減することができる。従って、T1は、T2内のすべての着目イオンを処理するために十分な時間の間、イオンを蓄積可能である。このようにして、図11の質量分析計システム1100は、継続的イオンビームを処理するために使用され得る一方、着目イオンの損失を低減する。
【0069】
本発明の他の変形および改良が可能である。例えば、提供される四重極DC成分場の代わりに、他の好適な手段を採用し、質量分析計の中心軸からの変位に対してイオンに力を及ぼす軸方向加速場を提供してもよい。例えば、補助電極をロッドセットに加えてもよい。このような電極は、勾配をつけ(Loboda A,Krutchinsky A.,Loboda O.,McNabb J.,Spicer V.,Ens W.,Standing K.G.Eur.J.Mass Spectrom.2000;6:531参照)、軸方向場を生成することができる。このような電極に対向する対に反対の極性の電圧を印加することによって、軸方向場が軸近傍でゼロに維持され得る。同時に、軸方向場が軸から離れて非ゼロであるため、励起されたイオンは、正味軸方向加速を受けることになる。他の実施形態では、1組の主要ロッドによって生成された軸方向場は、補助電極によって生成された軸方向場によって反作用し、ロッドセットの中心の軸方向場がゼロに維持される一方、ロッドセットの中心から離れた軸方向場が非ゼロになるようにし、従って、高振幅または放射状振動を有するイオン群を加速することができる。そのような改良または変形のすべては、本願に添付の請求項によって定義される本発明の領域および範囲内であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、概略図において、四重極ロッドセットを示しており、双極性補助信号がロッドペアの1つに提供される。
【図2】図2は、概略図において、本発明の第1の態様による、イオンガイドの端部を示す。
【図3】図3は、概略図において、本発明の第2の態様による、イオンガイドを示す。
【図4】図4は、概略図において、本発明の第3の態様による、イオンガイドの一ロッドを示す。
【図5】図5は、概略図において、本発明の第4の態様による、イオンガイドの一ロッドを示す。
【図6】図6は、概略図において、本発明の第5の態様による、イオンガイドの一ロッドを示す。
【図7】図7は、概略図において、本発明の第6の態様による、イオンガイドの一ロッドを示す。
【図8】図8は、フローチャートにおいて、本発明の第7の態様による、軸方向に選択されたイオン群を連続的に放出するパルス軸方向加速場を提供する方法を示す。
【図9】図9は、ブロック図において、本発明の第8の態様による、MS/MS法の配列を示す。
【図10】図10は、概略図において、本発明の第9の態様による、第2のMS/MS法の配列を示す。
【図11】図11は、概略図において、本発明の第10の態様による、第3のMS/MS配列を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長いロッドセットを有する質量分析計システムを操作する方法であって、前記ロッドセットは、導入端と、放出端と、複数のロッドと、中心長手軸とを有し、前記方法は、
a)第1の複数のイオン群を前記ロッドセットの導入端へ導入するステップと、
b)前記複数のロッドの間に電界を生成し、前記第1の複数のイオン群を前記ロッドセット内に閉じ込めるステップと、
c)前記第1の複数のイオン群内の第1のイオン群に対する第1の質量/電荷範囲を選択するステップと、
d)第1の放射状励起場を提供し、前記中心長手軸から前記第1の質量/電荷範囲内の前記第1のイオン群を放射状に変位させ、同時に前記第1のイオン群よりも前記中心長手軸に近くに第2のイオン群を保持するステップであって、前記第2のイオン群は、前記第1の質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲内にあるステップと、
e)軸方向加速場を提供することによって、前記第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供するステップと
を含み、
前記第1の軸方向の力はステップd)の間には提供されない、方法。
【請求項2】
ステップd)およびe)が異なる時間で生じることによって、前記第1の放射状励起場がステップe)の間に提供されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)は、第1の双極性補助信号を前記ロッドセットのうちのロッドペアに適用し、前記RF場の第1のRF振幅を選択し、前記第1のイオン群を前記第1の双極性補助信号と共振させ、前記第1のイオン群を前記放射状方向に前記ロッドペアに向けて移動させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数のロッドは、第1の組のロッドと、第2の組のロッドとを含み、ステップ(e)は、第1のDC電圧を前記第1の組のロッドに、第2のDC電圧を前記第2の組のロッドに提供することによって、前記軸方向加速場を提供するステップを含み、前記第1のDC電圧は、前記第2のDC電圧に対し反対の極性であり、
前記軸方向加速場は、前記ロッドセットの長さの少なくとも一部に従って変化し、前記第1のイオン群に作用する前記第1の軸方向の力を提供する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
ステップb)は、前記ロッドセットの前記放出端に放出障壁場を提供し、前記放出端から前記第2のイオン群の軸方向放出を妨害するステップを含み、
ステップe)は、十分なモーメントを前記第1のイオン群に提供し、前記第1のイオン群が前記放出障壁を通過して押し出すステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
f)前記第1のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出した後、第2の放射状励起場を提供し、前記中心長手軸から前記第2の質量/電荷範囲内で前記第2のイオン群を放射状に変位させ、同時に前記第2のイオン群よりも前記中心長手軸の近くに第3のイオン群を保持するステップであって、前記第3のイオン群は、前記第1の質量/電荷範囲および前記第2の質量/電荷範囲から離れた第3の質量/電荷範囲内にある、ステップと、
g)前記軸方向加速場を提供し、前記第2のイオン群に作用する第2の軸方向の力を提供し、十分なモーメントを前記第2のイオン群に提供し、前記第2のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出すステップと
をさらに含み、
前記第2の軸方向の力はステップf)の間に提供されない、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
ステップd)およびe)が異なる時間で生じることによって、前記第1の放射状励起場がステップe)の間に提供されず、
ステップf)およびg)が異なる時間で生じることによって、前記第2の放射状励起場がステップg)で提供されない、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、
ステップ(e)の後に前記放出障壁を低減し、前記第1のイオン群の軸方向放出を促進するステップと、
前記第1のイオン群の軸方向放出後、前記放出障壁を増加させるステップと、
ステップ(g)の後、前記放出障壁を低減し、前記第2のイオン群の軸方向放出を促進するステップと、
前記第2のイオン群の軸方向放出後、前記放出障壁を増加させるステップと。
をさらに含む、方法。
【請求項9】
前記第1の軸方向の力および前記第2の軸方向の力は、前記中心長手軸からの放射状変位に伴い増加する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記質量分析計システムは、ステップ(a)で前記第1の複数のイオン群を分離するための上流イオントラップをさらに含み、ステップ(a)は、前記第1の複数のイオン群を前記上流イオントラップから放出し、前記第1の複数のイオン群を前記ロッドセットの導入端へ導入するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の複数のイオン群を前記上流イオントラップから放出した後、前記上流イオントラップ内の第2の複数のイオン群を分離するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記質量分析計システムは、前記第1の複数のイオン群および前記第2の複数のイオン群の次の分離に対し気相イオンを前記上流イオントラップに提供するために、i)エレクトロスプレーイオン化モジュールと、ii)高質量マトリックス支援レーザー脱離イオン化モジュールとのうちの1つをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法であって、
ステップa)の前に、第1の前駆イオン群をイオン試料から分離し、前記第1の前駆イオン群を断片化し、前記第1の複数のイオン群を提供するステップと、
ステップe)で前記第1のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出した後、前記第1のイオン群を検出するステップと、
ステップg)で前記第2のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出した後、前記第2のイオン群を検出するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項4に記載の方法であって、ステップ(b)は、
前記複数のロッドの間にRF場を提供し、前記ロッドセット内に前記第1の複数のイオン群を放射状に閉じ込めるステップと、
前記ロッドセットの前記放出端に放出障壁場を、前記ロッドセットの前記導入端に導入障壁場を提供し、前記ロッドセット内に前記第1の複数のイオン群を軸方向に閉じ込めるステップと
を含む、方法。
【請求項15】
質量分析計システムであって、
a)イオン源と、
b)ロッドセットであって、前記ロッドセットは、長手軸に沿って延在する複数のロッドと、イオン源からイオンを導入するための導入端と、ロッドセットの長手軸を横断するイオンを放出する放出端とを有するロッドと、
c)前記ロッドセットの前記複数のロッドの間にRF場を生成する電圧源モジュールと、
d)放射状励起場を提供するための前記電圧源モジュールを制御するコントローラであって、i)操作の励起段階の間、前記中心長手軸から選択された質量/電荷範囲内に第1のイオン群を放射状に変位させ、同時に前記第1のイオン群よりも前記中心長手軸の近くに第2のイオン群を保持し、前記第2のイオン群は、前記選択された質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲内にあり、次いでii)操作の軸方向加速段階の間、軸方向加速場によって提供される前記第1のイオン群に作用する軸方向の力を提供するコントローラと
を含み、
前記コントローラは、前記操作の励起段階の間前記電圧源モジュールを制御して、前記軸方向加速場を遮断し、前記導出された軸方向の力が前記操作の励起段階で提供されないようにさらに動作可能である、システム。
【請求項16】
前記操作の軸方向加速段階の間、前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御し、四重極DC成分場を前記ロッドセットの前記複数のロッドの間に生成された前記RF場に追加するように動作可能である、請求項15に記載の質量分析計システム。
【請求項17】
前記操作の軸方向加速段階の間、前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御して前記放射状励起場を遮断するようにさらに動作可能である、請求項15に記載の質量分析計システム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御することによって前記放射状励起場を提供し、i)選択された双極性補助信号を前記第1のイオン群と同一極性を有する前記ロッドセット内のロッドペア、およびii)前記RF場の選択されたRF振幅に適用し、前記第1のイオン群を前記選択された双極性補助信号と共振させ、前記第1のイオン群を前記放射状方向に前記ロッドペアに向けて移動するように動作可能である、請求項15に記載の質量分析計システム。
【請求項19】
前記コントローラは、ユーザから前記選択された質量/電荷範囲を受信するためのユーザ入力サブモジュールを含み、前記コントローラは、前記選択された質量/電荷範囲に基づいて前記RF場の前記選択されたRF振幅を決定するように動作可能である、請求項18に記載の質量分析計システム。
【請求項20】
請求項15に記載の質量分析計システムであって、前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御して、
前記ロッドセットの放出端に放出障壁場を提供し、前記放出端から前記第2のイオン群の軸方向放出を妨害し、
十分なモーメントを前記第1のイオン群に提供し、前記第1のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出すようにさらに動作可能である、システム。
【請求項21】
請求項20に記載の質量分析計システムであって、前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御して、
前記操作の軸方向加速段階後に前記放出障壁を低減し、前記第1のイオン群の軸方向放出を促進し、
前記第1のイオン群の軸方向放出後前記放出障壁を増加させ、前記第2のイオン群を保持するようにさらに動作可能である、システム。
【請求項22】
前記第1の軸方向の力および前記第2の軸方向の力は、前記中心長手軸からの放射状変位に伴って増加する、請求項15に記載の質量分析計システム。
【請求項1】
細長いロッドセットを有する質量分析計システムを操作する方法であって、前記ロッドセットは、導入端と、放出端と、複数のロッドと、中心長手軸とを有し、前記方法は、
a)第1の複数のイオン群を前記ロッドセットの導入端へ導入するステップと、
b)前記複数のロッドの間に電界を生成し、前記第1の複数のイオン群を前記ロッドセット内に閉じ込めるステップと、
c)前記第1の複数のイオン群内の第1のイオン群に対する第1の質量/電荷範囲を選択するステップと、
d)第1の放射状励起場を提供し、前記中心長手軸から前記第1の質量/電荷範囲内の前記第1のイオン群を放射状に変位させ、同時に前記第1のイオン群よりも前記中心長手軸に近くに第2のイオン群を保持するステップであって、前記第2のイオン群は、前記第1の質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲内にあるステップと、
e)軸方向加速場を提供することによって、前記第1のイオン群に作用する第1の軸方向の力を提供するステップと
を含み、
前記第1の軸方向の力はステップd)の間には提供されない、方法。
【請求項2】
ステップd)およびe)が異なる時間で生じることによって、前記第1の放射状励起場がステップe)の間に提供されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)は、第1の双極性補助信号を前記ロッドセットのうちのロッドペアに適用し、前記RF場の第1のRF振幅を選択し、前記第1のイオン群を前記第1の双極性補助信号と共振させ、前記第1のイオン群を前記放射状方向に前記ロッドペアに向けて移動させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数のロッドは、第1の組のロッドと、第2の組のロッドとを含み、ステップ(e)は、第1のDC電圧を前記第1の組のロッドに、第2のDC電圧を前記第2の組のロッドに提供することによって、前記軸方向加速場を提供するステップを含み、前記第1のDC電圧は、前記第2のDC電圧に対し反対の極性であり、
前記軸方向加速場は、前記ロッドセットの長さの少なくとも一部に従って変化し、前記第1のイオン群に作用する前記第1の軸方向の力を提供する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
ステップb)は、前記ロッドセットの前記放出端に放出障壁場を提供し、前記放出端から前記第2のイオン群の軸方向放出を妨害するステップを含み、
ステップe)は、十分なモーメントを前記第1のイオン群に提供し、前記第1のイオン群が前記放出障壁を通過して押し出すステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
f)前記第1のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出した後、第2の放射状励起場を提供し、前記中心長手軸から前記第2の質量/電荷範囲内で前記第2のイオン群を放射状に変位させ、同時に前記第2のイオン群よりも前記中心長手軸の近くに第3のイオン群を保持するステップであって、前記第3のイオン群は、前記第1の質量/電荷範囲および前記第2の質量/電荷範囲から離れた第3の質量/電荷範囲内にある、ステップと、
g)前記軸方向加速場を提供し、前記第2のイオン群に作用する第2の軸方向の力を提供し、十分なモーメントを前記第2のイオン群に提供し、前記第2のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出すステップと
をさらに含み、
前記第2の軸方向の力はステップf)の間に提供されない、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
ステップd)およびe)が異なる時間で生じることによって、前記第1の放射状励起場がステップe)の間に提供されず、
ステップf)およびg)が異なる時間で生じることによって、前記第2の放射状励起場がステップg)で提供されない、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、
ステップ(e)の後に前記放出障壁を低減し、前記第1のイオン群の軸方向放出を促進するステップと、
前記第1のイオン群の軸方向放出後、前記放出障壁を増加させるステップと、
ステップ(g)の後、前記放出障壁を低減し、前記第2のイオン群の軸方向放出を促進するステップと、
前記第2のイオン群の軸方向放出後、前記放出障壁を増加させるステップと。
をさらに含む、方法。
【請求項9】
前記第1の軸方向の力および前記第2の軸方向の力は、前記中心長手軸からの放射状変位に伴い増加する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記質量分析計システムは、ステップ(a)で前記第1の複数のイオン群を分離するための上流イオントラップをさらに含み、ステップ(a)は、前記第1の複数のイオン群を前記上流イオントラップから放出し、前記第1の複数のイオン群を前記ロッドセットの導入端へ導入するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の複数のイオン群を前記上流イオントラップから放出した後、前記上流イオントラップ内の第2の複数のイオン群を分離するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記質量分析計システムは、前記第1の複数のイオン群および前記第2の複数のイオン群の次の分離に対し気相イオンを前記上流イオントラップに提供するために、i)エレクトロスプレーイオン化モジュールと、ii)高質量マトリックス支援レーザー脱離イオン化モジュールとのうちの1つをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法であって、
ステップa)の前に、第1の前駆イオン群をイオン試料から分離し、前記第1の前駆イオン群を断片化し、前記第1の複数のイオン群を提供するステップと、
ステップe)で前記第1のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出した後、前記第1のイオン群を検出するステップと、
ステップg)で前記第2のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出した後、前記第2のイオン群を検出するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項4に記載の方法であって、ステップ(b)は、
前記複数のロッドの間にRF場を提供し、前記ロッドセット内に前記第1の複数のイオン群を放射状に閉じ込めるステップと、
前記ロッドセットの前記放出端に放出障壁場を、前記ロッドセットの前記導入端に導入障壁場を提供し、前記ロッドセット内に前記第1の複数のイオン群を軸方向に閉じ込めるステップと
を含む、方法。
【請求項15】
質量分析計システムであって、
a)イオン源と、
b)ロッドセットであって、前記ロッドセットは、長手軸に沿って延在する複数のロッドと、イオン源からイオンを導入するための導入端と、ロッドセットの長手軸を横断するイオンを放出する放出端とを有するロッドと、
c)前記ロッドセットの前記複数のロッドの間にRF場を生成する電圧源モジュールと、
d)放射状励起場を提供するための前記電圧源モジュールを制御するコントローラであって、i)操作の励起段階の間、前記中心長手軸から選択された質量/電荷範囲内に第1のイオン群を放射状に変位させ、同時に前記第1のイオン群よりも前記中心長手軸の近くに第2のイオン群を保持し、前記第2のイオン群は、前記選択された質量/電荷範囲から離れた第2の質量/電荷範囲内にあり、次いでii)操作の軸方向加速段階の間、軸方向加速場によって提供される前記第1のイオン群に作用する軸方向の力を提供するコントローラと
を含み、
前記コントローラは、前記操作の励起段階の間前記電圧源モジュールを制御して、前記軸方向加速場を遮断し、前記導出された軸方向の力が前記操作の励起段階で提供されないようにさらに動作可能である、システム。
【請求項16】
前記操作の軸方向加速段階の間、前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御し、四重極DC成分場を前記ロッドセットの前記複数のロッドの間に生成された前記RF場に追加するように動作可能である、請求項15に記載の質量分析計システム。
【請求項17】
前記操作の軸方向加速段階の間、前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御して前記放射状励起場を遮断するようにさらに動作可能である、請求項15に記載の質量分析計システム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御することによって前記放射状励起場を提供し、i)選択された双極性補助信号を前記第1のイオン群と同一極性を有する前記ロッドセット内のロッドペア、およびii)前記RF場の選択されたRF振幅に適用し、前記第1のイオン群を前記選択された双極性補助信号と共振させ、前記第1のイオン群を前記放射状方向に前記ロッドペアに向けて移動するように動作可能である、請求項15に記載の質量分析計システム。
【請求項19】
前記コントローラは、ユーザから前記選択された質量/電荷範囲を受信するためのユーザ入力サブモジュールを含み、前記コントローラは、前記選択された質量/電荷範囲に基づいて前記RF場の前記選択されたRF振幅を決定するように動作可能である、請求項18に記載の質量分析計システム。
【請求項20】
請求項15に記載の質量分析計システムであって、前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御して、
前記ロッドセットの放出端に放出障壁場を提供し、前記放出端から前記第2のイオン群の軸方向放出を妨害し、
十分なモーメントを前記第1のイオン群に提供し、前記第1のイオン群を前記放出障壁を通過させ押し出すようにさらに動作可能である、システム。
【請求項21】
請求項20に記載の質量分析計システムであって、前記コントローラは、前記電圧源モジュールを制御して、
前記操作の軸方向加速段階後に前記放出障壁を低減し、前記第1のイオン群の軸方向放出を促進し、
前記第1のイオン群の軸方向放出後前記放出障壁を増加させ、前記第2のイオン群を保持するようにさらに動作可能である、システム。
【請求項22】
前記第1の軸方向の力および前記第2の軸方向の力は、前記中心長手軸からの放射状変位に伴って増加する、請求項15に記載の質量分析計システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−517815(P2009−517815A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542568(P2008−542568)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001692
【国際公開番号】WO2007/062498
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508153855)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ, ア ビジネス ユニット オブ エムディーエス インコーポレイテッド, ドゥーイング ビジネス スルー イッツ サイエックス ディビジョン (17)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001692
【国際公開番号】WO2007/062498
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508153855)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ, ア ビジネス ユニット オブ エムディーエス インコーポレイテッド, ドゥーイング ビジネス スルー イッツ サイエックス ディビジョン (17)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】
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